説明

改良型多機能標本ケース

本発明による改良型多機能標本ケースは、ケース体1を含んでおり、前記ケース体1の開口上にケースカバー2が設けられ、前記ケースカバー2に対し自由回転できる固定回転軸4が前記ケースカバー2に設けられ、前記固定回転軸4の下にサンプル採取スクープ5が設けられ、前記ケース体1内において、ケースカバー2に垂直な方向に濾過網3が設けられており、前記濾過網3は前記ケース体1を注液チャンバー11及び吸液チャンバー12に分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用検査容器に関し、具体的に改良型多機能標本ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
病院で患者に対する三つのルーチン検査には、大便のルーチン検査(物理顕微鏡検査)が必須検査項目の一つである。患者に対し必要な大便ルーチン検査を行うほか、患者の病状の相違により、患者の大便標本に対し必要な化学検査(例えば、大便潜出血検査)をさらに行う必要があり、これにより、患者に対し診断を正確にする。現在、標本採集から検査終了後の標本処理までの大便物理・化学検査の手順は以下の通りである。患者が綿棒又は他の物品を用いて大便標本をケース、ビニール袋又は紙袋内につけ、化学検査シートと共に化学検査室に送り、検査員が化学検査シートの検査項目の要求に基づき、大便標本に対し塗布を行い、顕微鏡検査を行うほか、さらに一定量の大便標本の稀釈液を作り化学検査を行い、院内感染及び実験室の汚染を防止するために、検査が完了した後に、大便標本を載せた容器及び他の用具に対して特殊な消毒及び処理を行わなければならない。さらに、操作及び検査が開放空間で行われているので、標本の臭気は実験室内の空気を汚染してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の解決しようとする技術的課題は、注液、攪拌及び濾過機能を備えた改良型多機能標本ケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的課題を解決するために、本発明に係る改良型多機能標本ケースは、ケース体を含んでおり、前記ケース体の開口上にケースカバーが設けられ、前記ケースカバーに対し自由回転できる固定回転軸が前記ケース体に設けられ、前記固定回転軸の下にサンプル採取スクープが設けられ、前記ケース体内において、ケースカバーに垂直な方向に濾過網が設けられ、前記濾過網は前記ケース体を注液チャンバー及び吸液チャンバーに分ける。
【0005】
好ましくは、前記固定回転軸に回転ジョイントが設けられている。
【0006】
より好ましくは、前記回転ジョイントが円錐状である。
【0007】
好ましくは、前記ケースカバーと前記ケース体とは密接に接続する。
【0008】
好ましくは、前記ケースカバーに、粘着ペーパーで密封される挿入孔が設けられており、前記挿入孔は前記吸液チャンバーの上に位置し、前記固定回転軸は前記注液チャンバーの上に位置する。
【0009】
好ましくは、前記濾過網として、一方向浸透しかできない非対称膜が使用される。
【0010】
より好ましくは、前記ケースカバー上に注液針がさらに設けられており、前記注液針及び前記固定回転軸は、何れも前記加液チャンバー内に位置する。
【0011】
本発明は、ケース体を含んでおり、前記ケース体の開口上にケースカバーが設けられ、前記ケースカバーに対し自由回転できる固定回転軸が設けられ、前記固定回転軸の下にサンプル採取スクープが設けられ、前記ケース体内において、ケースカバーに垂直な方向に濾過網が設けられており、前記濾過網及び前記仕切り板は、前記ケース体を注液チャンバー及び吸液チャンバーに分ける。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、使用される時、先ず、サンプル採集者によりケースカバーを開け、この時、ケースカバーはサンプル採取スクープのハンドルに相当し、サンプル採取スクープで適量の標本を採取し、ケースカバーを固く閉めると、作業室に送ることができる。そして、改良型多機能標本ケースを改良型多機能標本ケースのホルダー上に固定する。注液針から稀釈液を加え、回転ジョイントを回転コネクタに接続させ、サンプル採取スクープは固定回転軸と連動して回転し、この時のサンプル採取スクープは、混合羽根に相当し、改良型多機能標本ケースに対する攪拌・均一混合を実現できる。改良型多機能標本ケースのケース体が透明材質により作られるので、攪拌の過程中に標本のカラー及び性状を同時に観測できる。また、稀釈・均一混合後の液体では、大粒の不純物が濾過網に衝突する時、濾過網により滞留するので、大粒の不純物が検査器の管路を閉塞することを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の実施例1の構成図である。
【図2】図2は本発明の平面図である。
【図3】図3は本発明の実施例2の構成図である。
【符号の説明】
【0014】
1、 ケース体
2、 ケースカバー
3、 濾過網(非対称膜)
4、 固定回転軸
5、 サンプル採取スクープ
6、 注液針
7、 仕切り板
11、 注液チャンバー
12、 吸液チャンバー
21、 挿入孔
22、 粘着ペーパー
41、 回転ジョイント
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明に係る改良型多機能標本ケースを詳細に説明する。
【0016】
本発明は、医用標本に用いられ、特に大便標本の検査に用いられる。
【実施例1】
【0017】
図1に示すように,本発明は、平底のケース体1を含めており、ケース体1の開口上にはケース体1に適合したケースカバー2を設けており、ケースカバー2には、上下に貫通する挿入孔21を設けるとともに、注液針6と、ケースカバー2に対して回転自在にこのケースカバー2に遊嵌する固定回転軸4と、を設置している。ケース体1及び注液針6は、それぞれケース体2と密接に接続する必要がある。
【0018】
ケース体1の内部に、ケースカバー2に垂直な濾過網3を設置しており,この濾過網3の四周は何れもケース体1及びケースカバー2と密接に接続する。濾過網3はケース体1を注液チャンバー11及び吸液チャンバー12に分けている。
【0019】
濾過網3として、非対称膜3を選用するのが好ましい。医用標本における細胞、虫卵等の物質が非対称膜3の片側から浸透膜の他方側に一方向浸透することしかできなく、逆方向に浸透することができない。医用標本にある大粒の不純物は非対称膜3を通過できない。非対称膜3は市販で購入できる。非対称膜3の横断面は折尺のような形状を持ち、図2に示すように、このような形状であれば、製造が容易であり、コストも低くなる。
【0020】
サンプル吸入針は非対称膜3の片側にある吸液チャンバー12に位置し、サンプル採取スクープ5及び注液針6は非対称膜3の他方側にある注液チャンバー11に位置する。
【0021】
固定回転軸4は、自身の重力作用でケース体1内に滑落しないように、上部がT字形を成す。図1及び図2に示すように、固定回転軸4の上部には、開口が上向きである円錐状の回転ジョイント41を設けている。
【0022】
固定回転軸4の下にサンプル採取スクープ5を設けている。サンプル採取スクープ5は杓子の形状を成す。
【0023】
ケース体1は透明材質の材料で作られ、固定回転軸4の材質は不透明の射出成形材料とする。ケースカバー2は透明の射出成形体とする。
【0024】
標本採集が完了した後検査室に送られる前に、ケース体1内の標本の揮発により周囲環境を汚染することを防止するために、挿入孔21上に粘着ペーパー22を貼り付けている。粘着ペーパー22は、密封作用を発揮し、標本の臭気の拡散を有効に防止でき、また、粘着ペーパー22の生地が柔らかいであるため、検査器のサンプル吸入針が順調に標本ケースに挿入することを容易にし、さらに退去過程においてサンプル吸入針を拭く。
【0025】
本発明は使用時の操作手順が次の通りである。
【0026】
まず、サンプル採集者は、サンプル採取スクープ5の手柄に相当するケースカバー2を開け、サンプル採取スクープ5により適量な標本を採取し、ケースカバー2を密接に閉めると、作業室に送る。
【0027】
第二に、本発明に組合せて使用される検査器のサンプル吸入針は、挿入孔21上にある密封用の粘着ペーパー22を貫通して、さらにケース体1内に挿入する。サンプル吸入針は非対称膜3の片側にある吸液チャンバー12に位置し、サンプル採取スクープ5及び注液針6は非対称膜3の他方側にある注液チャンバーに位置する。
【0028】
第三に、注液針6によりケース体1内に適量の稀釈液を入れる。検査器の標準回転ジョイントは、固定回転軸4上にある回転ジョイント41とプレス嵌めし、標準回転ジョイントと回転ジョイント41との摩擦力により固定回転軸4を回転させ、これとともにサンプル採取スクープ5も回転し、標本を稀釈して均一に混合する。標本が均一に稀釈し混合された後、大粒の不純物は非対称膜3を通過できなく、注液チャンバー11に滞留することにより、大粒の不純物はサンプル吸入針内に入ることがなく、検査器の管路の閉塞を防止する。これに対して、細胞、虫卵等の物質は非対称膜3を通過でき、サンプル吸入針が設けられた片側にある吸液チャンバー12に到達し、逆方向に浸透不可能であるという非対称膜3の特性により、細胞、虫卵等の物質は再び注液チャンバー11に浸透して戻ることができないため、非対称膜3の設置は吸液チャンバー12の標本液の濃度を増加させ、検査の感度を向上させることができる。
【0029】
第四に、検査器は異なる管路によりサンプル吸入針を用いてサンプル吸入を負圧で行い、均一に稀釈・混合された標本をサンプル吸入針内に吸入し、吸出した標本液を計数盤に送り検査を行う。異なる管路により化学検査室に吸入して相応の化学検査を行ってもよい。
【0030】
改良型多機能標本ケースによれば、サンプル採集や、標本の稀釈、均一混合及び検査はいずれも、改良型多機能標本ケース内に行われ、従来の大便標本の採集、収容及び最後の標本の消毒と比べて大いに優れており、操作を便利にするとともに、大便標本に対する不適当な処理・消毒に原因する好ましくない結果を有効に予防できる。
【0031】
改良型多機能標本ケースは、従来の標本検査における標本の採集から物理化学検査までの操作及び標本の最終処理が実験室の空間を汚染するという問題を解決し、且つ大便標本の不適当な処理による病院内の感染を有効に防止できる。
【0032】
非対称膜3の設置により、濾過網3の機能を果たすとともに、検査される細胞、虫卵等の標本液における濃度を増加させ、検査の感度を向上させる。
【実施例2】
【0033】
実施例2と実施例1との相違点は、濾過網3の設置にある。実施例1における濾過網3は、上方でケースカバー2と連結し、下方でケース体1の底面と連結しているのに対し、実施例2においては、図3に示すように、濾過網3の下に濾過網3の両側の稀釈液の流通を遮断する仕切り板7が設けられている。濾過網3は仕切り板7と上下に接続し、且つケース体1を左右の二部である注液チャンバー11及び吸液チャンバー12に分ける。実施例2のほかの技術的特徴は実施例1と同じである。
【0034】
実施例2では、注液時には、二回注液法が使用される。サンプル採取スクープ5でサンプルを加えた後、濾過網3の以下まで注液し、固定回転軸を回転させることでサンプル採取スクープ5を連動させて回転させ、これにより、ケース体1内の標本液を攪拌・均一混合する。標本液を攪拌・均一混合した後、第二回の注液を行い、緩慢に注液しながら攪拌し、稀釈液が仕切り板7の上且つ濾過網3の適当な位置まで加えられる。これにより、標本液の均一混合及び濾過を実現する。
【0035】
濾過網3の下方に仕切り板7を設けることで、以下の有利な効果をもたらすことができる。稀釈液が濾過網3を通過する速度は、細胞及び虫卵等の有形成分の拡散速度を大いに上回るので、実施例1において、稀釈液がケース体1内に加えられた後、一定の時間を経て標本を均一に攪拌でき、この一定の時間内で、稀釈液が迅速に濾過網3を通過して濾過網3の他方側にある注液チャンバー11に到達する。これに対して、実施例2においては、在濾過網3の下に仕切り板7を設けることにより、第一回で加えられた稀釈液は濾過網3の位置に到達しなく、有効に稀釈液を注液チャンバー11内に保持することで、稀釈液を入れると、稀釈液の一部が濾過網3を通過して吸液チャンバー11に到達することを防止する。また、攪拌・均一混合を1回行った後、稀釈液を注液チャンバー11に入れ、稀釈液を濾過網3の適当な位置に加え、この時、注液しながら攪拌する。これにより、吸液チャンバー11内の標本液の濃度が低くなりすぎることなく、吸液チャンバー11及び注液チャンバー11内にある細胞及び虫卵等の有形成分を比較的均一にさせる。
【0036】
上記設計の実施例は、本発明を説明するのに用いられるだけであり、特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者に想到できる他の実質的に等同である手段は何れも、本発明の特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体(1)を含んでおり、前記ケース体(1)の開口上にケースカバー(2)が設けられ、前記ケースカバー(2)に対し自由回転できる固定回転軸(4)が前記ケースカバー(2)に設けられ、前記固定回転軸(4)の下にサンプル採取スクープ(5)が設けられ、前記ケース体(1)内において、ケースカバー(2)に垂直な方向に濾過網(3)が設けられ、前記濾過網(3)は前記ケース体(1)を注液チャンバー(11)及び吸液チャンバー(12)に分けることを特徴とする改良型多機能標本ケース。
【請求項2】
前記固定回転軸(4)に回転ジョイント(41)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の改良型多機能標本ケース。
【請求項3】
前記回転ジョイント(41)が円錐状であることを特徴とする請求項2に記載の改良型多機能標本ケース。
【請求項4】
前記ケースカバー(2)と前記ケース体(1)とは、密接に接続することを特徴とする請求項1に記載の改良型多機能標本ケース。
【請求項5】
前記ケースカバー(2)には、粘着ペーパー(22)で密封される挿入孔(21)が設けられており、前記挿入孔(21)は、前記吸液チャンバー(12)の上に位置し、前記固定回転軸(4)は、前記注液チャンバー(11)内に位置することを特徴とする請求項1に記載の改良型多機能標本ケース。
【請求項6】
前記濾過網(3)として、一方向浸透しかできない非対称膜(3)が使用されることを特徴とする請求項1に記載の改良型多機能標本ケース。
【請求項7】
前記ケースカバー(2)上には注液針(6)がさらに設けられており、前記注液針(6)及び前記固定回転軸(4)は何れも前記加液チャンバー(11)内に位置することを特徴とする請求項6に記載の改良型多機能標本ケース。
【請求項8】
ケース体(1)を含んでおり、前記ケース体(1)の開口上にケースカバー(2)が設けられ、前記ケースカバー(2)に対し自由回転できる固定回転軸(4)が前記ケースカバー(2)に設けられ、前記固定回転軸(4)の下にサンプル採取スクープ(5)が設けられ、前記ケース体(1)内において、ケースカバー(2)に垂直な方向に濾過網(3)が設けられており、前記濾過網(3)の下には仕切り板(7)が接続され、前記濾過網(3)及び前記仕切り板(7)はケース体(1)を注液チャンバー(11)及び吸液チャンバー(12)に分けることを特徴とする請求項1に記載の改良型多機能標本ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−500478(P2013−500478A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521944(P2012−521944)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/CN2010/073492
【国際公開番号】WO2011/012020
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512024288)蘇州海路生物技術有限公司 (2)
【Fターム(参考)】