説明

改良型複合材料

【課題】改良された導電性を有し、標準の複合材料と比較してほとんど又は全く重量増加のない複合材料を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の高分子樹脂及び少なくとも1種の繊維強化材を含む少なくとも1種のプリプレグと、前記高分子樹脂中に分散した導電性粒子とを含む複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合材料に関し、それのみに限定されるものではないが、特に繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、金属と比較してこの材料が持つ魅力的な機械的性質並びに軽量であることにより、多くの分野の構造的用途にますます使用されている。複合体は、構造上有利なラミネート型材料を得るために、材料を層状にしたものから成ることがこの分野において知られている。しかし、導電性が金属の最も明白な属性の1つであるのに対して、繊維補強材をベースにした複合材料(粘着フィルム、表面フィルム、及び予備含浸(プリプレグ)材料など)の導電性は通常はるかに低い。
【0003】
従来の複合材料は、一般に、通常長繊維又は短繊維を含む補強材相と、通常熱硬化性又は熱可塑性のポリマーであるマトリックス相とから成る。複合体製造用の最も初期の第一世代マトリックスポリマーは本質的に脆かったので、より強化したものを開発することが必要であった。航空宇宙用途において一次構造として使用される複合材料は、いわゆる第二世代又は第三世代の強化材料である。
【0004】
いくつかの用途では、導電性を示す複合材料が特に必要である。これらの用途には、落雷、静電散逸(ESI)、及び電磁妨害(EMI)からの保護のための使用が含まれる。炭素繊維をベースにした材料など以前の複合材料は、通常炭素繊維の黒鉛の性質に伴うある程度の導電性を有することが知られている。しかし、得られる導電性のレベルは、例えば落雷の破壊的な影響から複合材料を保護するには不十分である。
【0005】
第二世代の強化複合体は、マトリックス材料内に強化相を組み込むことにより以前の第一世代の材料を上回る改良が見られる。これには、エキスパンデッドフォイル、メタルメッシュ、又は織り込まれたワイヤーによって組立体中に金属を組み込むことが含まれている。この目的に使用される典型的な金属はとしては、アルミニウム、青銅、及び銅が挙げられる。これらの複合材料はよりよい導電性を提供することができる。しかし、これらの材料は、一般に、重く、且つその機械的、審美的特性は著しく低い。これらの複合体は、通常その材料の最初の1〜2プライに使用されているため、全体的な表面仕上げが不十分な結果をもたらすことが多い。
【0006】
第二世代の複合体上に落雷した場合には、通常損傷は表面の保護層に限定される。落雷のエネルギーは、通常、金属のいくらかを蒸発させ、メッシュに小さな穴を開けるのに十分なものである。損傷は表面の1〜2プライに限定され、下にある複合体への損傷を最小にすることができる。しかしながら、こうした落雷の後、損傷部位を切り取り、新規の金属保護と、必要なら新規の複合体を作製することが必要となろう。
【0007】
既に言及したように、炭素繊維を入れた材料はある程度の導電性を持つ。しかし、導電経路は繊維の方向のみであり、繊維補強材面に直角の方向(z方向)の電流散逸能は限定されている。炭素繊維強化材料はインタリーフ構造を含むことが多いが、この場合、インタリーフの電気絶縁特性によりz方向の導電性は本質的に低い。稲妻によって破損された場合、こうした配置の結果は、破滅的な結果をもたらすことがある。何故ならば、この放電は、インタリーフに入り、その中の樹脂を蒸発させ、全体的な層間剥離を引き起こし、複合材料を貫通する恐れがあるからである。
【0008】
いわゆる第三世代の強化複合材料は、樹脂層が繊維強化プライと交互になっているインタリーフ技術に基づくものであり、衝撃からの保護を提供する。しかし、これらの樹脂層は電気的絶縁体として働くので、材料のz方向(即ち、繊維の方向に直角な方向)の導電性は不十分である。複合材料への落雷は、複数のプライのラミネートを貫通して穴を開け、構成部品の破局的故障をもたらす恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、本明細書に記載されたような従来の試みと比較して改良された導電性を有し、標準の複合材料と比較してほとんど又は全く重量増加のない複合材料を提供するものである。本発明はまた、材料の機械的性能を低下させることなく導電性を改良した複合材料を提供するものである。本発明は、さらに、改良された導電性を有する複合材料の製造方法を提供するものである。
【0010】
さらなる目的は、製造、使用及び修理に便利な耐落雷性の複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、i)少なくとも1種の高分子樹脂及び少なくとも1種の繊維強化材を含む少なくとも1種のプリプレグと、ii)前記高分子樹脂中に分散した導電性粒子とを含む複合材料が提供される。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、i)少なくとも1種の高分子樹脂及び少なくとも1種の繊維強化材を含む少なくとも1種のプリプレグを準備するステップと、ii)導電性粒子を前記高分子樹脂中に分散させるステップとを含む複合材料の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、複合材料を構成する高分子樹脂の初期バルク抵抗率を低下させるための導電性粒子の使用が提供される。但し、前記複合材料はプリプレグを含み、前記プリプレグは前記高分子樹脂及び少なくとも1種の繊維状物質を含み、前記導電性粒子は前記高分子樹脂中に分散している。
【0014】
驚いたことに、プリプレグの高分子樹脂中に導電性粒子を使用することによりバルク抵抗率が低下し、これにより複合材料中のz方向の導電性が向上することが分かった。さらに、樹脂配合物中に導電性粒子を分散しその後プリプレグ化しても、対応する元のプリプレグと比較して実質上同じような取扱い特性を有するプリプレグが得られることが分かった。
【0015】
複合材料と言う場合、繊維補強材を含む材料ではあるが、その高分子樹脂は繊維に接しているが繊維には含浸していないような材料も含まれることを理解されたい。複合材料という用語には、樹脂が繊維中に部分的に埋め込まれているか部分的に含浸しているような別の形態のものも含まれている。これは当技術分野ではプリプレグとして公知である。プリプレグは、完全に含浸した繊維強化材層を持つこともある。複合材料には、複数の繊維−樹脂−繊維層を有する多層材料も含まれる。
【0016】
「インタリーフ構造」とは、繊維−樹脂−繊維構造を有する多層材料を指すことを理解されたい。「インタリーフ」という用語は、繊維層の間に存在し、且つ介挿された高分子樹脂を指す。「インタリーフ厚み」とは、下側繊維プライの最上面から上側繊維プライの最下面へ測定したインタリーフ層の平均距離である。したがって、インタリーフ厚みは介挿された高分子樹脂層の厚みと同等であり、インタリーフ厚みと高分子樹脂厚みは交換可能である。
【0017】
本明細書で使用する、中間層、インタリーフ樹脂層、相互作用樹脂層及び繊維を含まない層という用語は、すべて交換可能であり、高分子樹脂層を指す。
【0018】
本明細書で使用する高分子樹脂という用語は高分子系を指す。
【0019】
「高分子樹脂」及び「高分子系」という用語は、本出願において交換可能に使用され、鎖長が異なる樹脂の鎖長の混合物を指すものと理解されたい。したがって、「高分子の」という用語は、存在する樹脂が、単量体、二量体、三量体、又は3を越える鎖長を有する樹脂のいずれかを含む樹脂混合物の形をしている実施形態を含んでいる。硬化の結果得られる高分子樹脂は、樹脂が架橋したマトリックスを形成する。
【0020】
体積抵抗率とは、半導体材料の「バルク」又は「体積」抵抗率の測定値を指す。「初期バルク抵抗率」とは、導電性粒子添加前の高分子樹脂のバルク抵抗率に関するものであることを理解されたい。オーム−mの値が、所与の材料の固有抵抗である。三次元材料の導電率の測定にはオーム−m(Ωm)を使用する。材料のバルク電気抵抗率ρは、通常下式により定義される:
【数1】


但し、
ρは静的抵抗率(オームメーターで測定)であり、
Rは、材料からの均一な試験片の電気抵抗(オームで測定)であり、
lは試験片の長さ(メートルで測定)であり、
Aは、試験片の横断面積である(平方メートルで測定)。
【0021】
本発明では、体積抵抗はz方向にのみ(複合材料の厚みを貫通して)測定する。計算においては厚みが常に考慮されるので、すべての場合において、この値は「体積」抵抗率と呼ばれる。
【0022】
本発明の目的は、プリプレグを形成する高分子樹脂に導電性を付与するにはそれ自体では全く不十分な水準の低体積分率の導電性粒子を、プリプレグのインタリーフ領域に組み込むことにより達成される。
【0023】
さらに、炭素粒子又は銀被覆ガラス球体などの導電性粒子を複合材料に添加することによりバルク抵抗率が低下し、これにより当然予想された以上の電気電導度水準が得られることが分かった。
【0024】
本発明のさらなる利点はプリプレグの熱伝導率の上昇である。これにより、加熱時間が短縮され、硬化発熱中に発生した熱の散逸が改善される。さらなる利点は、複合材料の電気抵抗が温度の変動によって本質的に変わらないことである。
【0025】
バルク抵抗率の低下及び導電率の上昇により、落雷性能が向上する。したがって、本発明によって達成されたこの向上は、使用された導電性粒子が低水準であること、及びインタリーフ樹脂自体が通常示す高い電気抵抗率を考慮すると驚くべきことである。
【0026】
本明細書で使用する「抵抗率」及び「伝導率」という用語は、電気抵抗率及び導電率をそれぞれ指すことを想定している。
【0027】
本明細書で使用する用語「粒子」とは、別個の、個々の単位として扱われ、他の個々の添加剤から分離可能な個別の三次元形状の添加剤を指すが、これは添加剤が互いに接触することを排除するものではない。この用語は、本明細書に記述され定義された導電性粒子の形状及び寸法を包含する。
【0028】
本明細書で使用する用語「アスペクト比」とは、三次元体の最長寸法と最短寸法の比を指すものと理解されたい。この用語は、本明細書で使用する任意の形状及び寸法の添加剤に適用可能である。この用語を球体又は実質上の球体に対して使用する場合、アスペクト比は、この球体の最大断面直径と最小断面直径の比となる。したがって、完全な球体のアスペクト比は1:1であることが理解されるであろう。導電性粒子について本明細書で規定したアスペクト比は、任意の金属被覆を施した粒子の寸法に基づくものである。
【0029】
導電性粒子の寸法とは、その粒子の最大断面直径である。
【0030】
適切な導電性粒子の例としては、球体、ミクロスフェア、樹枝状結晶、ビーズ、粉体、その他の適切な三次元添加剤、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0031】
本発明で使用する導電性粒子は、任意の適切な導電性粒子を含むことができる。これには、複合材料のバルク抵抗率を低下させることにより導電性を上昇させることができる任意の適切な導電性粒子が含まれることが理解されるであろう。
【0032】
導電性粒子は、金属被覆導電性粒子、非金属導電性粒子、又はこれらの組み合わせから選択することができる。
【0033】
導電性粒子は高分子樹脂に分散している。「分散した」という用語には、導電性粒子が、実質上高分子樹脂の全体にわたって存在しており、高分子樹脂の任意の部分において他の部分より実質的に高い濃度で存在することがない状態が含まれていることが想定されている。さらに、「分散した」という用語には、低いバルク抵抗率が複合材料の特定の領域でのみ必要な場合には、導電性粒子が高分子樹脂の局部的領域に存在する状態も含んでいる。
【0034】
金属被覆導電性粒子は、適切な金属によって実質的に覆われたコア粒子を含むことができる。
【0035】
コア粒子は任意の適切な粒子であってよい。適切な粒子の例としては、ポリマー、ゴム、セラミックス、ガラス、鉱物、又はフライアッシュなどの耐火物から形成されたものが挙げられる。
【0036】
ポリマーは、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーである任意の適切なポリマーであってよい。「熱可塑性ポリマー」及び「熱硬化性ポリマー」という用語は本明細書に記述する通りである。
【0037】
ガラスから形成されるコア粒子は、中実又はガラスのミクロスフェアを作るために使用される任意の種類であってよい。
【0038】
ガラス微粒子を含む適切なシリカの例としては、ソーダガラス、ホウケイ酸塩、及び石英が挙げられる。或は、ガラスは実質的にシリカを含まないものであってもよい。適切なシリカを含まないガラスの例としては、カルコゲナイドガラスが挙げられる。
【0039】
コア粒子は、多孔性でも中空でもよく、又はそれ自体がコア−シェル構造、例えばコア−シェルポリマー粒子であってもよい。コア粒子は、最初に、活性化層、接着促進層、下塗り層、半導体層、又は他の層で被覆した後、金属被覆する。
【0040】
コア粒子は、好ましくはガラスから形成された中空粒子である。ガラスから形成された中空コア粒子の使用は、重量減少が特に重要な用途において有利であり得る。
【0041】
コア粒子の混合物を使用して、例えば、より低密度又は他の有用な特性を得ることができる。例えば、ある割合の中空な金属被覆ガラス粒子を、ある割合の金属被覆ゴム粒子と共に使用してより低比重の強化層を得ることができる。
【0042】
コア粒子を被覆するのに適している金属の例としては、銀、金、ニッケル、銅、スズ、アルミニウム、白金、パラジウム、及び高い導電性を持つことが知られているその他の任意の金属が挙げられる。
【0043】
金被覆銅又は銀被覆銅などの多層金属被覆を使用してコア粒子を被覆することができる。金属を同時に堆積させて混合金属被膜を作ることも可能である。
【0044】
金属被覆は、粒子被覆で公知の任意の手段で行うことができる。適切な被覆方法の例としては、化学蒸着、スパッタリング、電気めっき、又は無電解蒸着が挙げられる。
【0045】
金属は、バルク金属、多孔性金属、円柱状、微晶質、繊維状、樹枝状、又は金属被覆で公知の任意の形態として存在してよい。金属被膜は、平滑であってもよく、又は比表面積を増加させ界面接合を改善するために、フィブリル又は隆起などの表面凹凸を含んでもよい。
【0046】
その後、金属被膜は、高分子樹脂との界面接合を改善するために、当技術分野で公知の任意の処理剤、例えば、シラン、チタン酸塩、ジルコン酸塩で処理することができる。
【0047】
金属被膜の電気抵抗率は、好ましくは3×10−5Ωm未満、より好ましくは1×10−7Ωm未満、特に好ましくは3×10−8Ωm未満である。
【0048】
金属被覆導電性粒子は、任意の適切な形状、例えば、球状、楕円体、回転楕円面状、円盤状、樹枝状、棒状、円盤状、針状、立方形、又は多角体であってもよい。微細チョップド又はミルドファイバ、例えば金属被覆ミルドガラス繊維も使用することができる。粒子は、輪郭が明確な形状であってもよく、形状が不規則であってもよい。
【0049】
金属被覆導電性粒子のアスペクト比は、<100であり、好ましくは<10、特に好ましくは<2である.
【0050】
金属被覆導電性粒子の粒度分布は、単分散であってもよく、多分散であってもよい。好ましくは、金属被覆粒子の少なくとも90%は、0.3μm〜100μmの範囲内の大きさであり、より好ましくは1μm〜50μm、特に好ましくは5μm〜40μmである。
【0051】
導電性粒子は、非金属導電性粒子であってもよい。これには、金属被覆を有しておらず、且つ複合材料のバルク抵抗率を低下させることによりその導電性を改善することができる、任意の適切な非金属粒子が含まれることを理解されたい。
【0052】
適切な非金属導電性粒子の例としては、片状黒鉛、黒鉛粉末、黒鉛微粒子、グラフェンシート、フラーレン、カーボンブラック、固有導電性高分子(ICP−例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、及びポリアニリン)、電荷移動錯体、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0053】
非金属導電性粒子の適切な組み合わせの一例としては、ICPとカーボンブラック及び黒鉛微粒子の組み合わせが挙げられる。
【0054】
非金属導電性粒子粒度分布は、単分散であってもよく、多分散であってもよい。好ましくは、非金属導電性粒子の少なくとも90%は、0.3μm〜100μmの範囲内の大きさであり、より好ましくは1μm〜50μm、特に好ましくは5μmと40μmの間である。
【0055】
導電性粒子の大きさは、高分子樹脂中に存在する少なくとも50%の粒子が、高分子樹脂層の厚みから10μm以内の大きさを有する。言いかえれば、樹脂層の厚みと導電性物の大きさの差は10μm未満である。好ましくは、導電性粒子の大きさは、高分子樹脂中に存在する少なくとも50%の粒子が、高分子樹脂層の厚みから5μm以内の大きさを有する。
【0056】
したがって、少なくとも50%の導電性粒子の大きさは、これらの粒子がインタリーフ厚み(高分子樹脂層)の端から端までにわたるような大きさである。また、これらの粒子は、高分子樹脂層の周りに配置された上側の繊維強化材プライ及び下側の繊維強化材プライと接触している。
【0057】
導電性粒子は、複合材料の0.2体積%〜20体積%の範囲で存在することができる。より好ましくは、導電性粒子は、0.4体積%〜15体積%の範囲で存在する。特に好ましくは、導電性粒子は、0.8体積%〜10体積%の範囲で存在する。
【0058】
代替実施形態では、導電性粒子は、高分子樹脂層の10体積%未満の量で存在することができる。
【0059】
導電性粒子の好ましい範囲は体積%で表わされていることが分かる。これは、粒子の重量は、密度の変動により大きく変動する恐れがあるからである。
【0060】
導電性粒子は、単独で使用してもよく、任意の適切な組み合わせで使用してもよい。
【0061】
必要以上に理論に束縛されたくはないが、本発明の利点は、インタリーフ厚みの端から端までの(即ち、高分子樹脂層の端から端までの、且つ繊維強化材層の間の)導電ブリッジとして働くことにより、繊維強化材プライ同士を接続し、z方向の導電性を上昇させる(金属被覆又は非金属の)導電性粒子によってもたらされることが分かった。
【0062】
さらに、インタリーフ厚みと実質的に等しい大きさを有する導電性粒子を使用すると、複合材料の端から端までの(z平面内の)導電性が比較的低い添加量で好都合に得られることが分かった。導電性粒子のこのような低添加量は、高分子樹脂自体を導電性にするために通常必要とされる量より少ない。
【0063】
したがって、導電性粒子は複合材料のバルク抵抗率を低下させることにより導電性を上昇させる。
【0064】
複合材料はさらにカーボンナノ材料を含んでもよい。カーボンナノ材料は、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーから選択することができる。カーボンナノ材料は、任意の適切なカーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーとすることができる。
【0065】
カーボンナノ材料の直径は、10〜500nmの範囲とすることができる。好ましいカーボンナノ材料の直径は、100〜150nmの範囲とすることができる。
【0066】
カーボンナノ材料の長さは、好ましくは1〜10μmの範囲の長さとすることができる。
【0067】
カーボンナノ材料は、さらにインタリーフを端から端まで橋架けすることにより、複合材料の端から端まで(z平面内に)追加の導電経路を形成することができる。繊維補強材は、多くの繊維ストランドを含む層又はプライの形で配置される。複合材料は、高分子樹脂層の両側に配置された少なくとも2つの繊維強化材プライを含む。これらのプライは、材料のx面及びy面の導電性を与えると同時に、材料構造体の支持層としての役割を果たし、且つ実質的に高分子樹脂を含んでいる。
【0068】
プリプレグの繊維強化材は、合成若しくは天然繊維、又はこれらの組み合わせを含むハイブリッド若しくは混合繊維系から選択することができる。繊維補強材は導電性であり、したがって導電性繊維から形成される。
【0069】
繊維強化材は、金属被覆ガラス、炭素、黒鉛、金属被覆ポリマー繊維(連続的若しくは不連続金属層を有する)などの任意の適切な材料から選択することが好ましい。この場合、ポリマーは高分子樹脂に可溶であってもよく、不溶性であってもよい。これらの繊維の任意の組み合わせを選択することができる。これらの繊維と非導電性繊維(例えばグラスファイバー)との混合物も使用することができる。
【0070】
繊維補強材は、実質的に炭素繊維から形成されることが最も好ましい。
【0071】
繊維強化材は、亀裂の入った(即ち、延伸破壊した)繊維若しくは選択的に短い繊維、又は長繊維を含むことができる。亀裂の入った繊維若しくは選択的に短い繊維の使用は、本発明による完全硬化前の硬化複合材料のレイアップを促進することができ、且つその被成形能力を改善することができることを想定している。
【0072】
繊維強化材は、織布、非捲縮、不織布、単向性、又は多軸の織物テープ若しくはトウの形とすることができる。
【0073】
織りの形は、平織、朱子織、又は綾織のスタイルから選択することが好ましい。非捲縮及び多軸の形には多くのプライ及び繊維方向があり得る。
【0074】
こうしたスタイル及び形の繊維強化材は、複合補強材分野で周知であり、Hexcel Reinforcements of Villeurbanne,Franceを含む多くの会社から市販されている。
【0075】
プリプレグの高分子樹脂は、好ましくは、少なくとも1種の熱硬化性又は熱可塑性樹脂を含む。
【0076】
「熱硬化性樹脂」という用語は、可塑性があり、硬化前は通常液状、粉状又は展性があり、最終の形に成形されるように設計されている任意の適切な材料を含む。熱硬化性樹脂は、任意の適切な熱硬化性樹脂とすることができる。一旦硬化すると、熱硬化性樹脂は溶融及び再成形に適していない。本発明に好適な熱硬化性樹脂材料としては、それだけに限らないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(メラミン)樹脂、ビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾキサジン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、不飽和ポリエステル、シアン酸エステル樹脂、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミド、ビニルエステル、ベンゾキサジン、及びフェノール樹脂から選択されることが好ましい。
【0077】
「熱可塑性樹脂」という用語は、加熱すると可塑性又は変形可能であり、溶融して液状になり、十分冷却すると凍結して脆くなりガラス状態を形成する任意の適切な材料を含む。熱可塑性樹脂は、一旦成形して硬化しても、溶融及び再成形に適している。本発明に使用するのに好適な熱可塑性ポリマーとしては、以下のいずれかが挙げられ、これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる:ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエステル、重合性大環状分子(例えば、環状ブチレンテレフタレート)、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリエーテルイミド、アラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルフィド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド(PPO)及び変性PPO、或はこれらの任意の組み合わせ。
【0078】
高分子エポキシ樹脂には、好ましくは、ビスフェノールA(BPA)ジグリシジルエーテル及びビスフェノールF(BPF)ジグリシジルエーテルの少なくとも1種及びその誘導体;4,4’−ジアミノジフェニルメタン(TGDDM)のテトラグリシジル誘導体;アミノフェノールのトリグリシジル誘導体、並びに当技術分野において周知の他のグリシジルエーテル及びグリシジルアミンが含まれる。
【0079】
高分子樹脂は繊維強化材に適用される。繊維強化材は、高分子樹脂で完全に含浸してもよいし、部分的に含浸してもよい。代替の実施形態では、高分子樹脂は、繊維強化材に近接しこれと接触しているが、前記繊維強化材に実質的には含浸していない、別個の層とすることもできる。
【0080】
複合材料は、少なくとも1種の硬化剤を含むことができる。硬化剤は、実質的に高分子樹脂中に存在することができる。「実質的に存在する」という用語は、硬化剤の少なくとも90重量%、好ましくは硬化剤の95重量%を想定している。
【0081】
エポキシ樹脂については、本発明の硬化剤は、本発明のエポキシ官能性化合物の硬化を促進し、特に、こうしたエポキシ化合物の開環重合を促進するものである。特に好ましい実施形態では、こうした硬化剤には、その開環重合において、1種又は複数種のエポキシ官能性化合物と重合する化合物が含まれる。
【0082】
こうした硬化剤を2種以上併用して使用することができる。
【0083】
適切な硬化剤としては、無水物、特にポリカルボン酸無水物、例えば、無水ナジン酸(NA)、メチル無水ナジン酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、又はトリメリト酸無水物が挙げられる。
【0084】
その他の適切な硬化剤には、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族アミンを含むアミン、並びに、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)及び3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)などのポリアミノスルホンがある。
【0085】
さらに、適切な硬化剤としては、平均分子量が約550〜650のフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、平均分子量が約600〜700のp−t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、及び平均分子量が約1200〜1400のp−n−オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂などのフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を挙げることができる。
【0086】
フェノール酸基を含むその他の適切な樹脂を使用することができる。これには、レゾルシノール系樹脂、及びジシクロペンタジエン−フェノール共重合体などの、カチオン重合で形成された樹脂がある。その他の適切な樹脂は、メラミン−フォルムアルデヒド樹脂及び尿素ホルムアルデヒド樹脂である。
【0087】
種々の市販の組成物を本発明で硬化剤として使用することができる。こうした組成物の1つは、Ajinomoto USA Inc.から市販されているAH−154であり、ジシアンジアミドタイプの配合物である。その他の適切なものとしてはAncamide1284が挙げられるが、これは4,4’−メチレンジアニリンと1,3−ベンゼンジアミンの混合物である。この配合物は、Pacific Anchor Chemical,Performance Chemical Division,Air Products and Chemicals,Inc.,Allentown,USAから市販されている。
【0088】
硬化剤は、適切な温度で複合材料と組み合わせた場合、複合材料の樹脂成分を硬化させるように選択される。樹脂成分を適切に硬化させるのに必要な硬化剤の量は、硬化する樹脂の種類、所望の硬化温度、及び硬化時間を含むいくつか要因に応じて異なる。典型的な硬化剤としては、シアノグアニジン、芳香族及び脂肪族アミン及び酸無水物、ルイス酸、置換尿素、イミダゾール、及びヒドラジンが挙げられる。個々の特別な状況において必要な硬化剤の特定量は、確立した型通りの実験作業によって決定することができる。
【0089】
典型的な好ましい硬化剤としては、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)及び3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)が挙げられる。
【0090】
硬化剤が存在する場合は、複合材料の45重量%〜2重量%の範囲で存在することができる。より好ましくは、硬化剤は30重量%〜5重量%の範囲で存在することができる。特に好ましくは、硬化剤は25重量%〜5重量%の範囲で存在することができる。
【0091】
促進剤は、存在する場合は、典型的にはウロン類である。適切な促進剤(単独でも組み合わせても使用することができる)としては、N,N−ジメチル−N’−3,4−ジクロロフェニル尿素(ジウロン)、N,N−ジメチル−N’−3−クロロフェニル尿素(モニュロン)、及び好ましくはN,N−(4−メチル−m−フェニレンビス[N’,N’−ジメチル尿素](TDIウロン)が挙げられる。
【0092】
複合材料は、さらに性能増強剤又は変性剤などの追加の成分を含むことができる。性能増強剤又は変性剤の例は、可撓性付与剤、強化剤/粒子、追加の促進剤、コアシェル型ゴム、難燃剤、湿潤剤、顔料/染料、難燃剤、可塑剤、UV吸収剤、抗菌化合物、充填剤、粘性調整剤/フロー制御剤、粘着性付与剤、安定剤、及び重合防止剤から選択することができる。
【0093】
強化剤/粒子は、一例として、以下のいずれかを単独で又は組み合わせて含むことができる:ポリアミド、コポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、高機能炭化水素ポリマー、液晶ポリマー、PTFE、エラストマー、及びセグメント化エラストマー。
【0094】
強化剤/粒子が存在する場合は、複合材料の45重量%〜0重量%の範囲で存在することができる。より好ましくは、それらは25重量%〜5重量%の範囲で存在することができる。特に好ましくは、それらは15重量%〜10重量%の範囲で存在することができる。
【0095】
適切な強化剤/粒子の例としては、Sumikaexcel 5003Pがある。これは、Sumitomo Chemicals of Tokyo,Japanから市販されている。5003Pの代替品としてはSolvay polysulphone 105P及びSolvay 104P がある。これらは、Solvay of Brussels,Belgiumから市販されている。
【0096】
適切な充填剤の例としては、以下のいずれかを単独で又は組み合わせて使用することができる:シリカ、アルミナ、チタニア、ガラス、炭酸カルシウム、及び酸化カルシウム。
【0097】
複合材料は、上に定義された少なくとも1種の熱硬化性又は熱可塑性樹脂である追加の高分子樹脂を含むことができる。
【0098】
大多数の導電性粒子が複合材料の高分子樹脂内にあることが望ましいが、わずかな割合のこうした粒子が繊維強化材内に分布しても一般に不利ではない。導電性粒子は、通常の混合又はブレンド操作によってプリプレグの高分子樹脂内に適切に分散させることができる。
【0099】
必要な添加剤及び導電性粒子をすべて含んだ混合樹脂は、任意の公知の方法、例えば、いわゆるラッカープロセス、樹脂フィルムプロセス、押出、スプレー、印刷又は他の公知の方法によってプリプレグに組み込むことができる。
【0100】
ラッカープロセスでは、樹脂成分のすべてを溶媒に溶解又は分散し、繊維強化材を溶媒に浸漬した後、熱で溶媒を除去する。樹脂フィルムプロセスでは、ラッカー又はホットメルト樹脂のいずれかから、剥離剤で処理された基板上に、高分子樹脂を連続フィルムとしてキャストする。次いで、塗布されたフィルムを繊維強化材と接触させ、熱及び圧力の力を借りて、樹脂フィルムは溶融し繊維内へ流れる。多数のフィルムを使用することができ、繊維層の片側又は両側をこの方法で含浸することができる。
【0101】
プリプレグをフィルム又はラッカープロセスで作る場合、大多数の導電性粒子は、強化繊維によって「ろ過され」、繊維強化材に入り込むことが実質上妨げられることになる。何故ならば、粒子サイズは強化繊維同士間の距離より大きいからである。スプレー又は印刷などの他のプロセスによって、導電性粒子を繊維強化材上に直接配置することができる。繊維同士間への前記粒子の浸透性は非常に低い。金属被覆中空粒子を使用する場合は、低剪断混合装置を使用することにより、混合によって導電性粒子に生じる可能性のある変形効果を弱めることが必要であろう。
【0102】
プリプレグは、連続したテープ、トウプレグ、ファブリック、ウェブ、又は切断された長さのテープ、トウプレグ、ファブリック、若しくはウェブの形とすることができる。プリプレグは、接着性フィルム又はサーフェーシングフィルムとすることができ、さらに織編、不織両方の様々な形の埋め込まれた担体を有することができる。
【0103】
本発明によって調合されたプリプレグは、任意の公知の方法、例えば、マニュアルレイアップ、自動テープレイアップ(ATL)、自動繊維配置、真空バギング、オートクレーブ硬化、オートクレーブ以外の硬化、流体援用加工、圧力支援プロセス、マッチモールドプロセス、単純プレス硬化、プレスクレーブ硬化、又は連続バンドプレスを使用して最終構成部品を製造することができる。
【0104】
一実施形態において、複合材料は、導電性繊維強化材からなる単一プライを含むことができる。これは、導電性粒子を含む高分子樹脂層の片側に適用されている。複合材料は、単一プライの実施形態で製造し、引き続きレイアップによって多層に成形してインタリーフ構造を形成することができる。したがって、インタリーフ構造は、繊維−樹脂−繊維の構成が生じるレイアップ中に形成される。
【0105】
したがって、複合材料は単一のプリプレグを含むことができる。或は、複合材料は複数のプリプレグを含んでもよい。
【0106】
プリプレグの高分子樹脂層の厚みは、好ましくは、1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜50μm、特に好ましくは5μm〜50μmの範囲である。
【0107】
多層の導電性組成物材料を使用することができる。したがって、一例として、12プライの標準複合材料と、本発明の導電性粒子を含む4プライの複合材料とを使用して組立体を作製することができる。このようにして最終組立体の導電性を上昇させることができる。さらに別の実施例として、12プライの標準複合材料と、導電性粒子を含み炭素繊維補強材のない複合材料とからラミネート組立体を作製することもできる。任意選択で、本発明の複合材料が使用される場合、電気的絶縁層を炭素繊維プライと樹脂表面の間に置くことができる。例えば、ガラス強化繊維層を絶縁層として使用することができる。使用することができる多くの可能な組立体があること、並びに、本明細書に記述したものは単に例として挙げたものであることを理解されたい。
【0108】
さらなる利点は、本発明の複合材料は、完全に硬化するまで十分に柔軟であり、自動テープレイアッププロセスに適しているということである。このプロセスは、航空宇宙産業において大型の複合構造体の製造における使用が増大している。
【0109】
本発明の複合材料は、当技術分野で公知の任意の適切な温度、圧力、及び時間条件を使用して、完全に又は部分的に硬化することができる。
【0110】
複合材料は、UV−可視光線、マイクロ波放射、電子ビーム、ガンマ線、又は他の適切な熱若しくは非熱の放射線から選択された方法を使用して硬化することができる。
【0111】
したがって、本発明の第4の態様によれば、第2の態様のステップを含み、引き続き複合材料を硬化するステップを含む硬化複合材料の製造方法が提供される。
【0112】
第4の態様の硬化ステップは、任意の公知の方法を使用することができる。本明細書に記述した硬化方法が特に好ましい。
【0113】
したがって、本発明の第5の態様によれば、本発明の第1態様による複合材料を含む硬化複合材料が提供される。但し、前記複合材料は硬化している。
【0114】
以下の議論の大部分は落雷保護に的をしぼっているが、バルク抵抗率が低く導電率が高い複合材料には多くの潜在的な用途があることは容易に理解されるであろう。したがって、本発明によって達成される導電率の水準により、得られる複合材料は、電磁遮蔽、静電気保護、電流リターン、及び導電性の改善が必要なその他の用途における使用に適したものになるであろう。
【0115】
さらに、議論の多くは航空宇宙部品に集中しているが、本発明を、風力タービン、建物、船舶、列車、自動車、及び他の関連分野の落雷及び他の電気的な管理問題に適用することも可能である。
【0116】
本発明は、これを航空宇宙部品に使用した場合、一次構造用途(即ち、飛行機の完全性の維持に重要な構造の部品)にも、二次構造用途にも使用することができることが想定される。
【0117】
したがって、本発明の第6の態様によれば、硬化複合材料から航空宇宙用品を製造する方法が提供される。この方法は、第4の態様の方法に従って硬化複合材料を製造するステップと、前記硬化複合材料を使用して公知の方法によって航空宇宙用品を製造するステップとを含む。
【0118】
したがって、本発明の第7の態様によれば、第5の態様の硬化複合材料を含む航空宇宙用品が提供される。
【0119】
本明細書に記述されたすべての特徴は、任意の組み合わせで、上記の態様のうちのどれとも組み合わせることができる。
【0120】
次に、本発明をより容易に理解するために、例として以下の説明及び添付図面に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】シミュレートした落雷の後の、損傷したパネルの上面の写真である。
【図2】シミュレートした落雷の後の、図1の損傷したパネルの下面の写真である。
【図3】図1及び図2の損傷したパネルの超音波C−走査である。
【図4】シミュレートした落雷の後の、損傷した本発明のパネルの上面の写真である。
【図5】シミュレートした落雷の後の、図4の損傷した本発明のパネルの下面の写真である。
【図6】図4及び図5の損傷したパネルの超音波C−走査である。
【図7】図4及び図5のパネルの、研摩した断面の顕微鏡写真である。
【図8】シミュレートした落雷の後の、損傷した本発明のパネルの上面の写真である。
【図9】シミュレートした落雷の後の、図8の損傷した本発明のパネルの下面の写真である。
【図10】図8及び図9の損傷したパネルの超音波C−走査である。
【実施例】
【0122】
以下の実施例において、「純樹脂」とは、強化繊維の不存在下でプリプレグの製造に使用される基本高分子マトリックス樹脂を指す。
【0123】
HexPly(登録商標)M21は介挿されたエポキシ樹脂プリプレグ材であり、Hexcel Composites、Duxford、Cambridge、英国から市販されている。
【0124】
LY1556は、Hunstman Advanced Materials、Duxford、Cambridge、英国から市販されているエポキシ樹脂である。
【0125】
表記のすべての試験及び物性は、本明細書又は参照された試験方法及び手順に記載されていない限り、大気圧及び室温(即ち20℃)で測定されたことを理解されたい。
【0126】
(比較例1)(純樹脂)
すべての成分を均一にブレンドし、サーモスタットで制御された180℃の炉で2時間硬化することにより、M21の純エポキシ樹脂試料を製造した。実施例1の試料は導電性粒子を含まないので、これは本発明の範囲以内にはなく、比較の目的のために表記した。次いで、Monroe Electronicsからの抵抗率計モデル272を使用して、純樹脂試験片の表面に円板電極を置き、計器盤上に測定され表示された値を読み取ることにより、硬化樹脂シートの表面抵抗率を測定した。試験片とプローブ間の接触が良好であることが重要である。したがって、純樹脂試料は水平、平滑、及び均一であることが望ましい。結果を表1に示した。
【0127】
(実施例2)
銀被覆中実ガラス球体(大きさ20μm)を以下の水準で含む樹脂(M21)の試料:
2−1 1.0体積%(2.5重量%に相当)
2−2 2.0体積%(5.0重量%に相当)
2−3 3.0体積%(7.5重量%に相当)
2−4 4.0体積%(10.0重量%に相当)
を作製し、180℃の炉で2時間硬化した。次いで、実施例1に詳述したものと同じ抵抗率計及び手順を使用して表面抵抗率を測定した。結果を表1に示した。
【0128】
(実施例3)
銀被覆ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(大きさ20μm)を以下の水準で含む樹脂(M21)の試料:
3−1 2.5体積%(2.5重量%に相当)
3−2 5.0体積%(5.0重量%に相当)
3−3 7.5体積%(7.5重量%に相当)
3−4 10.0体積%(10.0重量%に相当)
を作製し、180℃の炉で2時間硬化した。次いで、実施例1に詳述した抵抗率計及び手順を使用して表面抵抗率を測定した。結果を表1に示した。
【0129】
(実施例4)
銀被覆中空ガラス球体(大きさ20μm)を以下の水準で含む樹脂(M21)の試料:
4−1 2.5体積%(2.5重量%に相当)
4−2 5.0体積%(5.0重量%に相当)
4−3 7.5体積%(7.5重量%に相当)
4−4 10.0体積%(10.0重量%に相当)
を作製し、180℃の炉で2時間硬化した。次いで、実施例1に詳述した抵抗率計及び手順を使用して表面抵抗率を測定した。結果を表1に示した。
【0130】
表面抵抗率は、均一の厚みを有する薄膜の抵抗率の尺度である。表面抵抗率は、オーム/正方形(Ω/□)で測定される。また、表面抵抗率は二次元系の抵抗率に相当する。したがって、この用語は、材料の中を通って流れる電流に対する抵抗率(これはバルク抵抗率として表わされる)ではなく、表面に沿って流れる電流に対する抵抗率の尺度である。表面抵抗率はシート抵抗とも呼ばれる。
【0131】
表1:導電性粒子で変性した樹脂M21の表面抵抗率
【表1】


これらの結果は、10体積%以下の導電性銀粒子の添加が硬化した純エポキシ樹脂の表面抵抗率に影響し、一般に複合材料の導電率を改善することを実証するものである。
【0132】
(実施例5)(純樹脂)
純エポキシ樹脂試料を製造した。これは、LY1556(50.0g)にElectrovac of Austria製のカーボンナノファイバー(直径150nm)を加えたものである。この繊維を、Flaktec Speedmixerを使用して、2500rpmで15分間この樹脂に分散した。この混合物に、銀被覆ビーズ(20μm)2.0体積%、カーボンナノファイバー(110nm)2.0重量%、及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを加え、撹拌してブレンドした。この配合物を、サーモスタットで制御された180℃の炉で2時間硬化した。次いで、Monroe Electronicsからの抵抗率計モデル272を使用して、硬化シートの表面抵抗率を測定した。結果は表2に要約して示した。
【0133】
表2:銀被覆ガラス球体及びカーボンナノファイバー(CNF)を含む複合体の表面抵抗率
【表2】


これらの結果は、銀被覆中実ガラス球体のみを含むエポキシ樹脂と比較した場合、銀被覆ガラス球体とカーボンナノファイバーの組み合わせは、エポキシ樹脂の表面抵抗率をさらに低下させることを示す。
【0134】
以下の実施例において、「炭素複合体」とは、強化炭素繊維の存在下でプリプレグ製造に使用される基本マトリックス樹脂を指す。
【0135】
(実施例6)(炭素複合体)
M21樹脂を、Z−ブレードミキサー(Winkworth Machinery Ltd,Reading,England)で構成成分をブレンドすることにより製造した。この樹脂をシリコーン離型紙上に薄膜として塗布した後、(Hexcel Composites,Duxford,UK)から市販されている中間弾性率の炭素繊維IM7にホットプレスを使用して樹脂重量35%で含浸させ、一方向プリプレグを作った。約10cm×10cmの5プライのプリプレグを一方向にレイアップし、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。接触抵抗が低いことを確かめるために、長方形の試料の両側の正方形に金をスパッタリングすることによって、この複合体のz方向の電気抵抗値をまず測定した。次いで、試験片の金スパッタリング領域にプローブを適用し、電圧又は電流のいずれかを変えることができる動力源(TTi EL302P Programmable 30V/2A Power Supply Unit,Thurlby Thandar Instruments,Cambridge,UK)の使用により抵抗率を測定した。
【0136】
(実施例7)(炭素複合体)
M21樹脂を、この樹脂の0.8〜2.4体積%の範囲の銀被覆ガラス球体(20μm)で変性し、これらの成分をWinkworthミキサーでブレンドした。この樹脂をシリコーン離型紙上に薄膜として塗布した後、中間弾性率の炭素繊維IM7にホットプレスを使用して樹脂重量35%で含浸させ、一方向プリプレグを作った。約10cm×10cmの5プライのプリプレグを一方向にレイアップし、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。実施例5の方法に従って、z方向の電気抵抗値を測定した。結果は表3に要約して示した。
【0137】
表3:銀被覆ガラス球体で変性した炭素複合体の体積抵抗率
【表3】


表3の結果は、実施例6の純樹脂材料と比較した場合にz方向体積抵抗が減少すること、及び銀被覆ガラス球体の量が材料中で増加した場合に抵抗率が低下することを明白に示している。
【0138】
(実施例8)(炭素複合体)
M21樹脂を、この樹脂の2.5〜10.0体積%の範囲の銀被覆中空ガラス球体(20μm)で変性し、これらの構成成分をWinkworthミキサーでブレンドした。この樹脂をシリコーン離型紙上に薄膜として塗布した後、中間弾性率の炭素繊維IM7にホットプレスを使用して樹脂重量35%で含浸させ、一方向プリプレグを作った。約10cm×10cmの5プライのプリプレグを一方向にレイアップし、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。実施例6の方法に従って、z方向の電気抵抗値を測定した。結果は表4に要約して示した。
【0139】
表4:実施例8による銀被覆中空ガラス球体で変性した炭素複合体の体積抵抗率
【表4】


表4の結果は、材料中の銀被覆ガラス球体の量が増加した場合にz方向体積抵抗率が低下することを明白に示している。
【0140】
(実施例9)(炭素複合体)
M21樹脂を、この樹脂の2.5〜10.0体積%の範囲の銀被覆ポリメチルメタクリレート粒子(20μm)で変性した。この樹脂は、Winkworthミキサーでこれらの構成成分をブレンドすることにより製造した。この樹脂をシリコーン離型紙上に薄膜として塗布した後、中間弾性率の炭素繊維IM7にホットプレスを使用して樹脂重量35%で含浸させ、一方向プリプレグを作った。約10cm×10cmの5プライのプリプレグを一方向にレイアップし、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。実施例6の方法に従って、z方向の電気抵抗値を測定した。結果は表5に要約して示した。
【0141】
表5:銀被覆PMMA球体で変性した炭素複合体の体積抵抗率
【表5】


表5の結果は、材料中の銀被覆ガラス球体の量が増加した場合にz方向体積抵抗率が低下することを明白に示している。
【0142】
(実施例10)(炭素複合体)
M21樹脂を、この樹脂の0.30体積%の添加量の樹枝状銀/銅(40μm)で変性した。この樹脂は、Winkworthミキサーでこれらの構成成分をブレンドすることにより製造した。この樹脂をシリコーン離型紙上に薄膜として塗布した後、中間弾性率の炭素繊維IM7にホットプレスを使用して樹脂重量35%で含浸させ、一方向プリプレグを作った。約10cm×10cmの5プライのプリプレグを一方向にレイアップし、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。実施例6の方法に従って、z方向の電気抵抗値を測定した。結果は表6に要約して示した。
【0143】
(実施例11)(炭素複合体)
M21樹脂を、この樹脂の1.0体積%の添加量の銀被覆ガラスビーズ(100μm)で変性した。プリプレグ及び複合体を実施例9に従って製造した。Z方向電気抵抗値を実施例6に従って測定した。結果は表6に要約して示した。
【0144】
(実施例12)(炭素複合体)
M21樹脂を、この樹脂の1.25重量%の添加量の銀被覆ガラス繊維(190μm)で変性した。プリプレグ及び複合体を実施例9に従って製造した。Z方向電気抵抗値を実施例6に従って測定した。結果は表6に要約して示した。
【0145】
表6:種々の導電性粒子で変性した炭素複合体の体積抵抗率
【表6】


表6の結果は、一般に導電性粒子量の増加と共にz方向の体積抵抗率が低下することを示している。さらに、これらの結果では、高分子樹脂層の厚みと実質的に等しい大きさを有する銀被覆ガラス球体を使用した実施例11における低下が特に大きい。
【0146】
(実施例13)(炭素複合体)
実施例12に従ってM21プリプレグを製造した。大きさ約10cmx10cmの6プライ疑似等方性(QI)ラミネートを作製し、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。この複合体のガラス転移温度(Tg)は、貯蔵弾性率E’のトレースから動的熱分析によって194.5℃であることが分かった。硬化したパネルから正方形の試料を切り出し、以下のようにz方向の抵抗率を測定した。十分な電気的コンタクトを確保するために、複合体の適切な部分には、電源との接続が行われる近辺に金を真空めっきした。次いで、電源から1アンペアの電流を流し、得られた電圧を測定することにより抵抗率を求めた。
【0147】
表7:実施例16の複合体の体積抵抗率
【表7】

【0148】
(実施例14)(炭素複合体)
M21樹脂を20μmの銀被覆ガラスビーズ(2体積%、5重量%)で変性し、実施例13の方法に従ってプリプレグを製造した。大きさ約10cmx10cmの6プライ疑似等方性ラミネートを作製し、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。この複合体のガラス転移温度(Tg)は、比較例14と同様にして、196.0℃と測定された。したがって、銀被覆ビーズの添加はTgに有害な影響を与えない。硬化したパネルから正方形の試料を切り出し、実施例13と同様にして、z方向抵抗率を測定した。抵抗率は著しく改善されている。
【0149】
表8:実施例14の複合体の体積抵抗率
【表8】

【0150】
(実施例15)(炭素複合体)
M21樹脂を20μmの銀被覆ガラスビーズ(2体積%、5重量%)及び樹脂の2重量%のカーボンナノファイバー(直径150nm)で変性した。比較例13に従ってプリプレグを製造した。大きさ約10cmx10cmの12プライ疑似等方性ラミネートを作製し、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。この複合体のガラス転移温度(Tg)は、比較例14と同様にして、196.5℃と測定された。したがって、銀被覆ビーズの添加はTgに有害な影響を与えていない。硬化したパネルから正方形の試料を切り出し、実施例13と同様にしてz方向抵抗率を測定した。抵抗率は著しく改善されている。
【0151】
表9:実施例15の複合体の体積抵抗率
【表9】

【0152】
(実施例16)(シミュレートした落雷)
Winkworthミキサーを使用してM21樹脂を製造した後、シリコーン離型紙上にその膜を形成した。次いで、この樹脂膜を、パイロットスケールのUDプリプレグ装置を使用して、単向性の中間弾性率炭素繊維に含浸させた。この装置で、樹脂35重量%で268g/mの面積重量を有するプリプレグを製造した。約60cm×60cmの2つの6プライプリプレグを製造した(レイアップ0/90)。これらを、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。
【0153】
これらのパネルは、ゾーン1Aで試験を行った。ゾーン1Aは、最初の電光閃光が襲う(入射又は出射)可能性が高く、閃光が滞留する可能性が低い、レドーム及びリーディングエッジなどの飛行機の表面である。ゾーン1Aは前駆放電が襲う領域も含む。ゾーン1A試験は、3つの波形成分、高電流成分A(2×10A、<500μs)、中間電流成分B(平均2kA、<5ms)及び持続的電流成分C(200C、<1s)を有する。パネルの両面は、縁部の周りを研磨して外部フレームへの十分な接続を確保した。電極を、細い銅線によってパネルに接続した。銅線は、電流の経路を提供し、試験で蒸発する。発生させる電圧は大気を裂くには十分ではないので、これは必要である。
【0154】
図1及び図2は、シミュレートした落雷後の実施例16の損傷したパネルを示す。金属被覆粒子を含まないパネル10は、図1に示した上面11及び図2に示した下面12の両方にひどい損傷を示した。
【0155】
さらに超音波c−走査20を行い、これを図3に示した。図1及び図2に示した損傷したパネル10の超音波C−走査20は、OlympusのR/D Tech Omniscan MXを使用して行った。この走査20によれば、未変性パネル10の損傷領域が非常に大きいことが分かる。
【0156】
表10:実施例16の落雷試験の試験パラメーター
【表10】

【0157】
表11:落雷試験後の損傷領域の説明
【表11】

【0158】
c−走査20の白い領域21は、実施例16の剥離がシミュレートした落雷試験の後に生じた場所である。これにより、損傷領域は、金属被覆粒子を含まない実施例16のパネル10で大きいことが分かる。
【0159】
(実施例17)(シミュレートした落雷)
M21樹脂を、銀被覆ガラス球体(樹脂の2体積%、5重量%)で変性し、Winkworthミキサーを使用してブレンドした後、シリコーン離型紙上にその膜を形成した。この樹脂膜を、単向性の中間弾性率炭素繊維に含浸させ、樹脂35重量%で268g/mの面積重量を有するプリプレグを製造した。約60cm×60cmの2つの6プライプリプレグを製造した(レイアップ0/90)。これらを、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。次いで、比較例16の方法に従って落雷試験を行った。
【0160】
図4及び図5は、シミュレートした落雷後に損傷したパネル30を示す。図4は、パネル30の上面31を示す。また、図5は、パネル30の下面32を示す。シミュレートした落雷は、本発明の複合体パネル30を貫通していないことがはっきり分かる。
【0161】
超音波c−走査40を、OlympusのR/D Tech Omniscan MXを使用して、落雷したパネル30で行った。走査40は図6に示した。走査40は、図1及び図2の未変性の実施例16と比較すると、変性したパネル30の白い領域41が減少していることを示している。
【0162】
したがって、図1及び図2に示した比較例のパネルと比較した場合、金属被覆粒子を有するパネル30の損傷領域は非常に減少している。
【0163】
表12:実施例17の落雷試験の試験パラメーター
【表12】

【0164】
表13:落雷試験後の損傷領域の説明
【表13】

【0165】
図7は、図4及び図5に示したパネル30の研摩した横断面の顕微鏡写真50を示す。銀被覆ガラス球体53が樹脂インタリーフ52内に位置しており、炭素プライ51と接触していることがはっきり分かる。
【0166】
(実施例18)(シミュレートした落雷)
M21樹脂を、銀被覆ガラス球体(樹脂の2体積%、5重量%)とカーボンナノファイバー(直径150nm、樹脂の2重量%)で変性し、Winkworthミキサーを使用してブレンドした後、シリコーン離型紙上にその膜を形成した。この樹脂膜を、単向性の中間弾性率炭素繊維に含浸させ、樹脂35重量%で268g/mの面積重量を有するプリプレグを製造した。約60cm×60cmの2つの6プライプリプレグを製造した(レイアップ0/90)。これらを、圧力7バール、177℃で2時間、真空テーブル上で硬化した。次いで、実施例16の方法に従って落雷試験を行った。
【0167】
図8及び図9は、シミュレートした落雷後に損傷したパネル60を示す。図8は、パネル60の上面61を示す。また、図9は、パネル60の下面62を示す。シミュレートした落雷は、本発明の複合体パネル60を貫通していないことがはっきり分かる。
【0168】
超音波c−走査70を、OlympusのR/D Tech Omniscan MXを使用して、落雷したパネル60で行った。走査70は図10に示した。走査40は、図1及び図2の未変性のパネル10と比較すると、変性したパネル60の白い領域41が減少していることを示している。
【0169】
したがって、図1及び2に示した実施例16と比較した場合、金属被覆粒子とカーボンナノファイバーを有するパネル60の損傷領域は非常に減少している。
【0170】
表14:実施例18の落雷試験の試験パラメーター
【表14】

【0171】
表15:落雷試験後の損傷部位の説明
【表15】

【0172】
したがって、複合材料の高分子樹脂中に導電性粒子を使用すると抵抗率が低下することが分かる。この抵抗率の低下により、実施例16〜18に示したように、落雷時の複合材料の性能が向上する。
【0173】
本発明は、上記実施形態の詳細には限定されないことを理解されたい。これらは単に実施例として記述されたものである。多くの変形物が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インタリーフ構造を有する複合材料であって、
i)少なくとも2プライの導電性繊維強化材と、
ii)前記2プライ間に配置された少なくとも1種の高分子樹脂の層と、
iii)前記高分子樹脂中に分散し、前記複合材料の0.2体積%〜20体積%の範囲で存在する導電性粒子とを含み、
前記高分子樹脂の層が所定の厚みを有し、前記導電性粒子の少なくとも50%が前記厚みから10μm以内の大きさを有する複合材料。
【請求項2】
前記導電性粒子が、金属被覆導電性粒子又は非金属導電性粒子を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記金属被覆導電性粒子が、適切な金属によって実質的に覆われたコア粒子を含む、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記金属被覆導電性粒子が<100のアスペクト比を有する、請求項2又は3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記金属被覆導電性粒子の少なくとも90%が0.3μm〜100μmの範囲の大きさを有する、請求項2から4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記コア粒子が、ポリマー、ゴム、セラミックス、ガラス、鉱物、又は耐火物から選択される、請求項3から5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記コア粒子が、多孔性又は中空であるか、又はコア−シェルの構造を有する、請求項3から6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記コア粒子を被覆するのに適している金属が、銀、金、ニッケル、銅、スズ、アルミニウム、白金、又はパラジウムを含む、請求項3から7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記コア粒子を被覆するために多層の金属被膜が使用される、請求項2から8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記金属被膜の電気抵抗率が3×10−5Ωm未満である、請求項2から9のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項11】
非金属導電性粒子が、片状黒鉛、黒鉛粉末、黒鉛微粒子、グラフェンシート、フラーレン、カーボンブラック、固有導電性高分子(ICP−ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンを含む)、電荷移動錯体、又はこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項2に記載の複合材料。
【請求項12】
前記非金属導電性粒子の少なくとも90%が、0.3μm〜100μmの範囲の大きさを有する、請求項11に記載の複合材料。
【請求項13】
前記複合材料がカーボンナノ材料を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項14】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の複合材料。
【請求項15】
前記導電性粒子が、前記複合材料の0.4体積%〜15体積%の範囲で存在する、請求項1から14のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項16】
前記導電性繊維強化材が、合成若しくは天然繊維、又はこれらの組み合わせを含むハイブリッド若しくは混合繊維系から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項17】
前記導電性繊維強化材が、金属被覆ガラス、炭素、黒鉛、金属被覆ポリマー繊維から選択される、請求項16に記載の複合材料。
【請求項18】
前記高分子樹脂が、少なくとも1種の熱硬化性又は熱可塑性樹脂を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項19】
前記複合材料が少なくとも1種の硬化剤を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項20】
前記硬化剤が、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−DDS)又は3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−DDS)である、請求項19に記載の複合材料。
【請求項21】
前記硬化剤が、前記複合材料の45重量%〜2重量%の範囲で存在する、請求項19又は20に記載の複合材料。
【請求項22】
前記複合材料が、可撓性付与剤、強化剤/粒子、追加の促進剤、コアシェル型ゴム、難燃剤、湿潤剤、顔料/染料、難燃剤、可塑剤、UV吸収剤、抗菌化合物、充填剤、粘性調整剤/フロー制御剤、粘着性付与剤、安定剤、及び重合防止剤から選択される追加の成分を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項23】
前記強化剤/粒子が、ポリアミド、コポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、高機能炭化水素ポリマー、液晶ポリマー、PTFE、エラストマー、及びセグメント化エラストマーのいずれか1種を単独で又は組み合わせて含む、請求項22に記載の複合化合物。
【請求項24】
複合材料を構成する高分子樹脂の初期バルク抵抗率を低下させるための導電性粒子の使用であって、前記複合材料が、
少なくとも2プライの導電性繊維強化材と、
前記2プライ間に配置された少なくとも1種の高分子樹脂の層と、
前記高分子樹脂中に分散し、前記複合材料の0.2体積%〜20体積%の範囲で存在する導電性粒子とを含み、
前記高分子樹脂の層が所定の厚みを有し、前記導電性粒子の少なくとも50%が前記厚みから10μm以内の大きさを有する、導電性粒子の使用。
【請求項25】
複合材料の製造方法であって、
i)少なくとも2プライの導電性繊維強化材、及び前記2プライ間に配置された少なくとも1種の高分子樹脂の層を準備するステップと、
ii)前記複合材料の0.2体積%〜20体積%の範囲で、前記高分子樹脂中に導電性粒子を分散させるステップとを含み、
前記高分子樹脂の層が所定の厚みを有し、前記導電性粒子の少なくとも50%が前記厚みから10μm以内の大きさを有する方法。
【請求項26】
請求項25のステップと、引き続き前記複合材料を硬化させるステップとを含む、硬化複合材料の製造方法。
【請求項27】
請求項1に記載の複合材料を含み、前記複合材料が硬化している、硬化複合材料。
【請求項28】
請求項27の硬化複合材料を含む航空宇宙用品。
【請求項29】
硬化複合材料から航空宇宙用品を製造する方法であって、
請求項26の方法に従って硬化複合材料を製造するステップと、
前記硬化複合材料を使用して任意の公知の方法によって航空宇宙用品を製造するステップとを含む方法。
【請求項30】
複合材料であって、
i)少なくとも1種の高分子樹脂の層、及び少なくとも1種の導電性繊維強化材と、
ii)前記高分子樹脂中に分散し、前記複合材料の0.2体積%〜20体積%の範囲で存在する導電性粒子とを含む複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−168792(P2011−168792A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88803(P2011−88803)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【分割の表示】特願2009−535128(P2009−535128)の分割
【原出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(504132032)ヘクセル コンポジット、リミテッド (20)
【Fターム(参考)】