説明

改良型質量フィルターとイオン検出装置を有する質量分析器

【課題】改良された質量分析器が説明されている。
【解決手段】1つの実施形態によれば、該質量分析器は、フリンジング効果を無視すれば主に単一の座標面(即ち、y−z面)内で振動する、回転せず振動する電界をイオンに印加することによって、イオンをその質量電荷比(m/Q)に基づいて検出するためにイオンを選択するイオン選択室を備えている、独自の質量フィルター設計を使用している。該イオンは、m/Q分解能を所望のレベルに上げるために、該イオン選択室内へ、該選択室の入口に対して相当な角度で且つ単一の座標面内で注入することができる。該質量分析器の更なる実施形態によれば、イオン検出面は、所定の流出角度範囲内に収まるイオンが検出され、別の流出角度を有するイオンが概ね排除されるように、該イオン選択室の出口に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には質量分析器に関する。より具体的には、本発明は、改良型質量フィルター及び/又はイオン検出装置を有する質量分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析法の特性は、様々な分析法の中で質量分析法を突出した地位にまで引き上げた。質量分析法は、優れた感度と検出限界を有しており、原子物理学、反応物理学、反応動力学、地質年代学、生体臨床医学、イオン分子反応、及び熱力学パラメーター(ΔG0f、Kaなど)の決定の様な幅広い用途に使用することができる。このようにして、質量分析技術は、その使用が広く認識されるようになるにつれ、非常に急激に進化し始めてきた。このことが、全く新しい機器及び用途の開発に繋がった。しかしながら、開発の傾向は、高度に特殊化された構成要素と狭い製作公差を要求するような、益々複雑な質量分析器の設計の方向に行ってしまった。更に、質量分析器の構成要素の小型化に向けた重要な前進は、実際に実現されてはいない。
【0003】
既存の質量分析器を改良する1つの試みが、1998年3月10日にスミス他宛に発行された米国特許第5,726,448号に示されている。この´448号特許は、その称するところでは、イオンサンプルの分離のために回転するRF電界を利用した質量フィルター室を有する質量分析器について記載している。電界の回転は、向かい合う平行な対で作動する少なくとも4つの電極を使用して実現される。第1のRF信号が第1の平行な電極対に加えられると同時に、第2のRF信号が第2の平行な電極対に加えられる。第1及び第2のRF信号は、位相がπ/2だけ異なっており、それによって所望の電界回転が生成される。
【0004】
2つの質量分析器の実施形態が、´448号特許で特定されている。第1の実施形態では、質量フィルター室が用いられており、その中には第1及び第2電極対の両方が質量フィルター室に沿ってずれることなく配列されている。第2の実施形態では、第2電極対が、質量フィルター室に沿って長さ方向に第1電極対からずれて配列されている。各実施形態では、少なくとも2つの相異なる電界がイオンに作用するように、第2電極対で作られた電界は、第1電極対で作られた電界からπ/2だけ位相がずれている。上記のように、各実施形態を作動させるために、少なくとも2つの直交する電界が必須とされている。
【0005】
イオンは質量フィルター室の出口端部に達する過程で、所与の質量電荷比m/Qを有するイオンの各組毎に円を形成する。サンプルの特性を求めるために分析するのは、この円形パターンである。従って、´448号特許に記載されているイオン検出器は、各衝突するイオン毎に必ず(選択の余地無く)2つの座標値を有して処理する二次元デバイスアレイとして構成されている。´448号特許の図6に示されているように、イオン検出器は、イオンのm/Q値に関係なく、質量フィルター室から出てくる実質的に全てのイオンを確実に検出できるようにするため、質量フィルター室のイオン出口端に直接隣接し、これと同じ広がりを持つようにして配置されている。
【0006】
本発明人は、既存の質量分光測定装置を様々な方法で改良できるものと認識した。例えば、1つ以上の構成要素の複雑さの低減は、例えば、質量フィルターに単一の回転しないRF電界を使用することによって、実現することができる。或いは、以上のことに代えて、又は以上のことに加えて、選択されたm/Q値を有するイオンの質量フィルターからの所定のイオン流出角度を利用する独自のイオン検出装置を開発することによって、改良を実現することができる。そのような改良は、製造、質量分解能、及び/又は質量感度の目標を維持するか又はそれを超えながら、実現することができる。
【特許文献1】米国特許第5,726,448号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
改良型の質量分析器について説明する。1つの実施形態に基づくと、本質量分析器は、独自の質量フィルター設計を採用している。この質量フィルターは、分析するために、サンプルのイオンに電界が掛けられるイオン選択室を備えている。少なくとも一対の電極が、イオン選択室内に配置されている。電極対の各電極は、例えば平坦な面を有している。電極は、又、イオン選択室内で、それらの平坦な面が、中心軸回りに互いに平行に且つ対向するように配置されている。RF信号生成器は、イオン選択室内に電界を作るため、電極対に接続されている。具体的には、電極とRF信号生成器は、協働して、フリンジング効果を無視すれば主として単一の座標面(即ち、y−z面)内で振動する、回転せず振動する電界を室内に発生させる。
【0008】
イオン化装置/イオン注入器を使って、被分析試料のサンプルをイオン化し、そのイオンをイオン選択室に注入してもよい。イオン注入器は、イオンを、電極対の一方又は両方の電極の平坦な面に向かわせるのが望ましい。イオン注入器は、イオン選択室のイオン入口で、別の座標面(即ち、x−y面)に対して相当な角度でイオンを注入するようになっているのが更に望ましい。角度は少なくとも40°であるのが望ましく、少なくとも60°であれば更に望ましい。
【0009】
別の実施形態に基づくと、質量分析器は、イオン化装置/イオン注入器、質量フィルター及びイオン検出器を備えている。質量フィルターは、イオン化装置/イオン注入器からサンプルイオンを受け取るように構成されており、イオン入口とイオン出口を有している。質量フィルターのイオン入口は、イオン化装置/イオン注入器に近接して配置されており、イオン出口は、特定のm/Qを有するイオンが通過する開口部となっている。イオン検出器は、質量フィルターのイオン出口に近接して配置されており、主として、実質的に所定の流出角度θeで質量フィルターのイオン出口から流出するイオンを検出し、別の流出角度を有するイオンは概ね排除するように配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の一実施形態に基づいて構成された質量分析システムのブロック図である。
【図2】図2は図1に示す質量分析システムで使用するのに適したエレクトロスプレーイオン化装置の一実施形態の説明図である。
【図3】図3は図1の質量分析器の一実施形態の選択された部分の側面図である。
【図4】図4は図3に示す実施形態の構成要素の配列と、それらの対応する作動を説明するのに用いられる直交座標系の斜視図である。
【図5】図5は選択されたm/Qを有するイオンが、イオン選択室を通ってイオン検出面と接触する際の、イオンの軌跡を示している。
【図6】図6は選択されたm/Qを実質的に上回るm/Qを有しているイオンの軌跡を示している。
【図7】図7は選択されたm/Qを実質的に下回るm/Qを有しているイオンの軌跡を示している。
【図8】図8は選択されたm/Qをごく僅かに上回るm/Qを有しているイオンの軌跡を示している。
【図9】図9は選択されたm/Qをごく僅かに下回るm/Qを有しているイオンの軌跡を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の1つの実施形態に従って構成された質量分析器の基本構成要素を、図1にブロック図型式で示す。図示のように、分析器20は、サンプル供給源25、イオン化装置/イオン注入器30、質量フィルター35及びイオン検出器40を備えている。この質量分析器20の構成要素は、1以上のプログラム可能な制御システム45によって自動化することもできる。例えば、制御システム45は、下記の自動化作業のうちの1つ以上を実行するのに用いることができる:
a)イオン化及びイオン注入パラメーター(即ち、イオンビームの焦点合わせ、質量フィルター35へのイオンビームの流入角度、イオン注入のタイミング、イオン化エネルギー、イオンの流出速度など)の制御;
b)検出を目的とするm/Q範囲のイオンだけを選択するための、質量フィルター35内の電界パラメーターの制御;
c)所定の流出角度θeで質量フィルター35を出るイオンを検出し易くし、他の流出角度を有するイオンを概ね排除するための、質量フィルター35のイオンの出口に対するイオン検出器40のイオン検出部分の位置の制御;
d)質量分析器20から受け取ったデータの、ユーザーへの提示、又は後のデータ処理のための分析。
【0012】
以上の自動化作業の内の1つ以上を実行するのに用いられるパラメーターは、人間のオペレーターによって、例えばユーザーインターフェース50を使って制御システム45に入力される。また、ユーザーインターフェース50は、システムの監視または同様の目的で人間のオペレーターに情報を表示するのに使用することもできる。そのようなものとして、ユーザーインターフェース50には、キーボード、ディスプレイ、スイッチ、ランプ、タッチディスプレイ又はそれらのもののどのような組み合わせが含まれてもよい。
【0013】
分析対象の材料は、サンプル供給源ユニット25を通して分析器20に供給される。サンプル供給源ユニット25は、サンプル材料(分析対象を含む)を幾つかの方法で導入することができ、最も一般的なのは、直接挿入探針によるか、又は毛管カラムを介して注入するかである。従って分析器20のイオン化装置/イオン注入器30は、サンプル供給源ユニット25の出力におけるサンプルの形態がどの様なものであっても、それと直接インタフェースを取るようになっている。例えば、それは、気体クロマトグラフィー装置、液体クロマトグラフィー装置及び毛管電気泳動装置の出力と直接インターフェースを取るようにすることができる。当然、サンプル供給源ユニット25がイオン化装置/イオン注入器30に連結されている点までのサンプル材料のどのような処置も、特定の分析要件次第である。
【0014】
イオン化装置/イオン注入器ユニット30は、受け取ったサンプル内に含まれている分析対象の分子をイオン化し、イオン化された分析対象の分子を、収束ビームとして質量フィルター35に注入するように作動する。イオン化と注入は、数多くの技法の内のどれを使って実現してもよい。例えば、サンプル材料のイオン化と、凝縮相から気体相への移行を可能にさせる1つの方法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)として知られている。もう一つの技法は、高速原子/イオン衝撃(FAB)として知られており、Xe原子Csイオンの高エネルギービーム、又は多価のグリセリンNHクラスターを使用して、サンプル供給源ユニット25から受け取ったサンプルとマトリックスをスパッタする。マトリックスは、通常は、中にサンプルが溶解している不揮発性溶剤である。図示の実施形態のイオン化及びイオン注入の過程は、単一のユニットで起こるように示しているが、当然、これらの過程は、2つ以上の別々のユニットで実行することもできる。
【0015】
分析対象を質量フィルター35に導入するためにイオン化装置/イオン注入器ユニット30によって実施される更に別の技法は、エレクトロスプレーイオン化である。基本的なエレクトロスプレーイオン化装置/イオン注入器ユニット30の1つの実施形態を、図2に示している。図示のように、イオン化装置/イオン注入器ユニット30は、イオン化されて質量フィルター35に注入されるサンプルの液体60が通る導電性の毛管チップ55を有する毛管を備えている。サンプルの液体60は、通常、或る量のサンプル分析対象が入っている溶媒から成っている。毛管チップ55に相対して対向電極65が配置されており、電源装置70によって両者の間に電界が作られる。
【0016】
作動時には、導電性の毛管チップ先端55は、溶媒とサンプルの分析対象を酸化させ、その結果、対向電極65に向かって引っ張られる液体のメニスカスができる。液体の小滴は、メニスカスの先端から現れて、対向電極65に向かって移動する。液滴が、電界の影響を受けて対向電極65へ前進するにつれて、溶媒が蒸発して、イオン化された検体から成っている帯電した気体イオン75だけを残す傾向となる。これらの多数の帯電した気体イオン75は、対向電極65の開口部80を通って加速され、そこでは収束レンズ85がそれらのイオンを細いイオンビーム90に整列させる。細いイオンビーム90は、イオンをそのm/Q値に基づいて分けるために質量フィルターユニット35の入口に送られる。
【0017】
質量フィルターユニット35は、電界内の帯電粒子の運動の原理に基づくイオンフィルターとして作動する。本例の帯電粒子は、イオン化装置/イオン注入ユニット35から受け取った1以上の正味電荷を有するイオン化分子である。イオンの電荷は、正でも負でもよい。装置に入るイオンは、そのm/Q値に従ってろ過される。適切な、調整することのできる計器パラメーターが、イオンが質量フィルター35を通過してイオン検出器40のイオン検出部分と衝突するように設定されている場合は、特定のm/Qを有するイオンを検出することができる。
【0018】
本発明の1つの態様に従って構成された質量フィルターユニット35の実施形態を、図3に示す。分かり易くするために、図4に示す直交するx、y、z座標系を使用する。このため、第3の座標軸方向の位置に関係なく特定の座標面に言及する場合、その用語は、第3座標軸の値が異なる複数の面を含んでいるものとする。
【0019】
再度図3を参照すると、この実施形態の質量フィルターユニット35は、全体を95で示し、第1の面102に在るイオン入口100と、第2の面107に在るイオン出口105とを有するイオン選択室を含んでいる。具体的には、イオン入口100とイオン出口105は、それぞれz軸方向の異なる位置のx−y面にある。複数の電極が、z軸に沿ってイオン選択室95の中心部を通って伸張する中心軸110の回りに配置されている。図示の実施形態では2つの電極115と120が用いられており、それぞれ他方の電極の相当する平坦な面に向かい合う平坦な面を有している。図示のように、電極115と120は、一対の相対する導電性平行プレートの形態であってもよい。寸法dは、電極115と120の間の距離であり、例えばy軸に沿っていてもよい。
【0020】
イオン化装置/イオン注入器30は、イオンビーム90を、イオン入口100の面102に対して所定の角度θinitで供給してもよい。その場合、イオンビーム90は、電極115の平坦な面に向かって効果的に方向付けられ(イオンビーム90は、電極120の平坦な面に向かって同様に方向付けられてもよいのであるが)、主にy−z面内の運動成分を有する。角度θinitの実質的な値は、質量分析器20が高いm/Q分解能を持つことを確実にする値であることが望ましい。例えば、流入角度θinitの値は、少なくとも40°、より望ましくは少なくとも60°であってもよい。
【0021】
電極115と120は、それぞれRF信号生成器125の様な電源装置の互いに反対の極に接続されている。RF信号生成器は、時間に依存した電圧を供給し、電極115と120の間の間隙領域に、概ね対称的な変動電界を作る。同一且つ逆極性の電荷を有する電極115と120の間の電界の強さEは、
E=V/d (式1)
で表すことができ、ここで、VはRF信号生成器125が印可する電圧の振幅、dは電極115と120の間のy軸方向の距離である。RF信号生成器125が供給する様な時間依存性電圧源の場合、与えられた任意の時刻tにおける電界内のイオンに作用する電界は、
E=(V/d)cos(ωt−α) (式2)
で表すことができ、ここで、VはRF電圧の振幅、ωはRF周波数の2π倍に等しい角周波数、−αはイオンが電界に入るときのRF電圧の位相である。電極115と120の形状とそれらの相対配向によって、イオン選択室95内に、回転せずに振動する電界が生じる。図示の実施形態では、電界は、主にy−z面内で振動するので、イオン選択室95に入るイオンは、単一の座標面内で振動する単一の電界を受けるのみである。
【0022】
式2を質量フィルターユニット35の形状に当てはめると、イオンがz軸の方向に動くときのy軸方向の電界は、
=−(V/d)cos(ωt−α) (式3)
によって与えられる。負の記号は、電圧Vが上部電極115に任意に与えられているという事実を説明している。このとき、電界Eは、負のy方向にある。
【0023】
フリンジング効果を無視すると、図示の実施形態は、x軸又はz軸の何れに沿う電界も付与しない。従って、E電界だけが、イオン選択室95内のイオンの軌跡に影響を与える。特定のイオンのy軸に対する位置を求めるには、
F=ma 又は a=F/m (式4)
が用いられ、ここで、Fはイオンに作用する力、mはイオンの質量、aはイオンの加速度である。具体的には、電界内でイオンに作用する力は、
F=QE (式5)
と表すことができ、ここで、Qはイオンの電荷、Eは電界の強さである。上記の式を当てはめると、イオンの加速度を表す式は、
a=dy/dt=−QE/m=−(QV/md)cos(ωt−α) (式6)
となる。
【0024】
式6を積分すると、イオンのy軸に沿う速度を表す式
=dy/dt=−(QV/dmω)sin(ωt−α)+C (式7)
となり、ここで、Cは積分から生じる定数である。順に、式7に記載されている速度の式を積分すると、イオンのイオン選択室95の電界内の時刻tにおけるy方向の位置が、
y=(QV/dmω)cos(ωt−α)+Ct+C (式8)
で与えられ、ここで、Cは積分から生じるもう1つの定数である。t=0とすると、CとCの解が与えられる。t=0におけるy方向の速度は、
y0=v0sin(θinit)=−(QV/dmω)sin(−α)+C
=(QV/dmω)sin(α)+C1 (式9)
と表される。
従って、
=v0sin(θinit)−(QV/dmω)sin(α) (式10)
であり、ここで、vは、イオンがイオン化装置/イオン注入器30によって加速された後で、イオン選択室95に入るときのイオンの初期速度である。上記vy0項は、その初期速度のy成分である。
【0025】
について解くと、時刻t=0におけるy方向の位置が、
=0=(QV/dmω)cos(−α)+C
=QV/dmω)cos(α)+C (式11)
で表される。
従って、
=−(QV/dmω)cos(α) (式12)
となる。
イオンが、電極115と120の間のz軸の方向に移動するときのイオンのy方向の位置を表す単一の式を導き出すために上記の値を使えば、
y=(QV/dmω)cos(ωt−α)+[v0sin(θinit
−(QV/dmω)sin(α)]t
−(QV/dmω)cos(α) (式13)
となる。
【0026】
特定のイオンの時刻tにおけるz軸に沿う位置は、イオンの初期速度vのz成分vz0を使用し、時間対距離の式を使用することによって求めることができる。時刻t=0におけるz方向の速度は、
z0=vcos(θinit) (式14)
で表され、時間対距離の式によれば、
z=vz0t (式15)
であるので、
z=vtcos(θinit) (式16)
であり、ここで、zは、イオンが時間t内にz方向に移動した距離である。フリンジング効果を無視すると、速度のz成分は、概ねy方向の力によって影響されることはない。従って、電極115と120の間に生成される電界は、イオンがイオン選択室95を通って移動する時間に、概ね何の影響も与えない。更に、イオンの運動は、実質的にy−z面に限られるので、yとzの値が分かれば、イオンがイオン選択室95を通って移動しているときの任意の時刻のイオンの位置を作図することができる。式16からわかるように、所与の初期速度vでは、流入角度θinitの値が大きいほど、イオンの、イオン選択室95を通る移動時間が長くなる。従って、イオンは、所与の周波数では、より多くのRFサイクルを受け、それによって質量フィルター35の分解能が上がることになる。
【0027】
分析器20全体としてのもう1つの特徴は、イオン検出器40とイオン選択室95の出口105の間の関係である。具体的には、イオン検出器40は、出口105の面(ここではx−y面)に対して実質的に所定の流出角度θで流出するイオンを主に検出し、流出角度が異なるイオンを概ね排除するように配置されているイオン検出面130を有することができる。このために、イオン検出面130は、出口105の開口部の面積よりも小さい表面積を有している。更に、イオン検出面130は、長手方向軸110から±y方向に、及び/又は、イオン出口105からz方向に距離Sだけ離して、配置されている。距離Sは、値が大きくなるほど値が小さい場合よりもm/Q分解能が大きくなるので、大きい方が望ましい。しかしながら、距離Sの最大値は、具体的な設計条件の中で分析器20に課される全体的寸法制約によって決まる。
【0028】
図示の実施形態で用いられている電界は本質的にy−z座標面内に在るので、イオン検出面130のx軸方向の位置は、入ってくるイオンビーム90のx方向の位置と実質的に同じである。しかしながら、別の電界形状を使用し、それによって別な流出角度の向きを利用するときは、イオン検出面130は、x軸方向にずらして配置される。
【0029】
イオン検出面130の位置は、イオン出口105に対して固定してもよいが、図示の実施形態では、イオン検出面130の位置を変えられるようになっている。このために、イオン検出器40は、イオン検出面130をx、y又はz軸の内の1つ以上の方向に動かすためにイオン検出面130に接続されている1つ以上の自動化されたアクチュエータ135を含んでいる。これによって、分析器20のイオン検出感度とm/Q分解能を微調整することができる。更に、イオン検出面130の位置を調整することにより、分析器20が、試験基準の異なる広範囲の分析処理を実施できるようになる。アクチュエータ135は、イオン検出面130を所望の位置に置くように、制御システム45によって駆動することができる。制御システム45に用いられる具体的な位置パラメーターは、ユーザーインターフェース50を介して位置の座標値を表現するように入力してもよいし、替わりに、システムプログラミングを通して別の分析パラメーターから間接的に導き出してもよい。
【0030】
所与の試験要件下におけるイオン検出面130の適切な位置は、実験データから導き出してもよいし、流出角度θを直接計算して導き出してもよい。流出角度θは、イオンの初期速度v、イオンが出口面107を通ってイオン出口105を出る時間、及び流出時のイオンの速度のz及びy成分(vとv)を知ることによって求めることができる。イオンが電界内に滞在する時間は、式:
=L/[vcos(θinit)] (式17)
を解くことによって求められ、ここで、tはイオンがイオン選択室95内で費やす時間、Lはイオン選択室95の長さ、vはイオン入口100におけるイオンの初期速度である。式の分母は、初期速度vのz成分vz0を示している。
【0031】
イオンがイオン選択室95を通過する間に、イオンに対してz方向に作用する実質的な力は無いので、速度のz成分vz0は、図示の実施形態では一定である。しかしながら、速度vのy成分は変化し、所与の時刻と位置におけるイオン選択室95内の電界の強さに依存する。時刻tにおけるこれの値は、
ye=vy0−[QV/dmω][cos(ωt−α)−cos(α)] (式18)
と表され、ここで、vyeは、イオンがイオン選択室95を出てイオン出口105の出口面107を通過する際の速度のy成分である。
【0032】
式17と18を組み合わせると、流出角度θに関する以下の式、
tan(θ)=vye/v、又は、θ=arctanvye/v (式19)
を導き出すことができ、従って、
θ=arctan([vsin(θinit)−[QV/dmω]
・[cos(ωt−α)−cos(α)]] /vcos(θinit)) (式20)
である。
【0033】
これは、イオン入口100における電界の位相がα=0のときに、イオンをイオン選択室95に導入することによって単純化することができる。そのような場合には、式20は以下のように単純化されて、
θ=arctan([vsin(θinit)−[QV/dmω]
・[cos(ωt)−1]]/vcos(θinit)) (式21)
となる。
【0034】
所与の分析条件(即ち、V、ω、α、L,d、S等の分析パラメーターが一定の条件)の下での分析器20の作動を、図5から図9に示している。どの場合にも、イオン選択室95の変動する電界に流入するイオンは、イオンがイオン入口100の入口面102を通過するときの電界の方向によって、電極115又は電極120のどちらか一方に向かって加速される。所与の周波数ωで、イオン選択室95に流入するイオンは、図5から図9に示す3つの条件の内の1つを経験する。イオンが何れの条件を経験するかは、その質量、電荷及び速度によって決まる。
【0035】
図5を参照すると、選択されたm/Q(即ち、検出するために分析器20の様々なパラメーターが設定されているm/Q値)と速度を有するイオンは、イオン選択室95を通る軌跡が安定している。そのような選択されたイオンは、最終的に、イオン出口105の出口面107を所定の流出角度θで通過し、イオン検出面130に衝突する。イオン検出面130は、他のシステム設計基準(即ち、分解能、感度等)と同様に、所定の流出角度θにも基づいて、イオン出口105に対して所定の位置に正確に配置されている。図示の実施形態では、所定の流出角度はθ=0°であり、イオン検出面130は、イオン出口105のx−y面から距離Sだけ離して配置されている。更に、イオン検出面130は、検出面の一部分が電極120より上の領域に露出し、検出面の別の部分が電極120より下の領域に露出するように、中心軸110からy軸方向の負の方向にずらして配置されていることが分かる。この特定の構成の場合、イオンは、電界によってy軸方向に与えられる加速度が、初期速度vy0のy成分を実質的に相殺するときには常に、安定した軌跡に沿って移動し、検出面130に衝突する。そのような条件の下では、イオンは、電界が強さと方向を変えるにつれて、電極115と120に向かう方向及びそこから離れる方向に交互に加速される。イオンの速度のz成分vは、イオンを検出器40に向かって運ぶ。図示の実施形態では、選択されたイオンは、図5に示す軌跡を辿り、電極115と120に実質的に平行なz軸方向の経路と平行には振動せずに移動しながら、y−z面内で振動する。
【0036】
図6は、選択されたm/Qを大幅に上回るm/Qを有するイオンの軌跡を示しており、一方、図7は、選択されたm/Qを大幅に下回るm/Qを有するイオンの軌跡を示している。どちらの場合も、イオンは、不安定な軌跡を有しており、電極115と120の内の1つに接触する前にイオン選択室95を通過することはできない。図示の通り、そのようなイオンは、z軸と電極115及び120に対して相当に傾斜した軌跡の輪郭を有している。
【0037】
図8は、選択されたm/Qをごく僅かに上回るm/Qを有するイオンの軌跡を示しており、図9は、選択されたm/Qをごく僅かに下回るm/Qを有するイオンの軌跡を示している。図示の通り、その様なイオンでもイオン選択室95を通過することができるが、選択されたイオンとは僅かに異なる軌跡を辿り、イオン出口105の出口面107を所定の流出角度θとは異なるそれぞれ角度θaboveと角度θbelowで通過するので、イオン検出面130に当たらない。図示の実施形態のイオン検出装置は、イオン運動のこの特性を巧みに利用し、分析器20の分解能を著しく増大させる。このために、分析器20の分解能は、検出面130の面積に間接的に比例し、距離Sに直接的に比例することがわかる。
【0038】
実際には、RF電圧Vは一定に保持されており、サンプルの質量スペクトルは、RF信号生成器125を使用して、一連の所定の周波数ωで走査することによって取得する。概説するならば、数百キロヘルツの範囲の周波数を、使用可能な数百ボルトの範囲の電圧で、使用することができる。周波数走査は、制御システム45の制御下に置かれてもよい。各周波数ωにおいて、選択されたm/Q範囲内のイオンだけが、図5に示している安定した軌跡を辿る。分析器20のパラメーターは、軌跡が安定しているイオンが、イオン検出器40に向け移動する際に電極115と120にできるだけ接近するように調整されなければならない。その結果、所定の周波数で選択されなかったm/Q値を有するイオンは、イオン選択室95を通る移動を完了する前に電極115と120の内の一方に衝突するか、或いは、その代わりに、検出器40のイオン検出面130を外してしまう。この観点で調整できるパラメーターの1つは、流入角度θinitialである。このために、大きな流入角度θinitialが、小さい流入角度よりも望ましく、少なくとも40°の角度が望ましく、少なくとも60°以上の角度にすれば、m/Qの選択性と分解能が一層高まる。同様に、装置のアスペクト比を上げると分解能が高くなる。
【0039】
上記システムには、その基本的な教示から逸脱することなく数多くの変更を加えることができる。本発明を、1つ以上の特定の実施形態に関連付けて十分詳細に説明してきたが、当業者には分かるとおり、特許請求の範囲に記載している本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析器において:
入口面に在るイオン入口と出口面に在るイオン出口とを有しているイオン選択室と;
前記イオン選択室の前記イオン入口と前記イオン出口の間に配置されている複数の電極と;
前記イオン選択室内に回転せずに振動する電界を作るために、前記複数の電極に接続されているRF信号生成器と;
イオンを前記イオン選択室内へ前記入口面に対して相当な(substantial)角度で注入するために、前記イオン選択室の前記イオン入口に連結されているイオン注入器と、
を備えている質量分析器。
【請求項2】
前記イオン注入器は、液体クロマトグラフィー装置からサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質は少なくとも1つのイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項3】
前記イオン注入器は、電気泳動装置からサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質は少なくとも1つのイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項4】
前記イオン注入器はエレクトロスプレー装置を備えている、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項5】
前記イオン注入器は、直接挿入プローブからサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質はイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項6】
前記イオン注入器は、毛管カラムからサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質はイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項7】
前記イオン注入器は、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化プロセスを用いて被分析試料のイオンを生成するように構成されたイオン化装置を有する、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項8】
前記イオン注入器は、エレクトロスプレープロセスを用いて被分析試料のイオンを生成するように構成されたイオン化装置を有する、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項9】
前記複数の電極が;
平坦な面を有する第1電極と;
平坦な面を有する第2電極であって、前記第2電極の平坦な面が、前記第1電極の平坦な面に相対し、概ねそれと平行になっている第2電極と、
から成っている、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項10】
前記イオン注入器は、イオンを前記イオン選択室内へ前記入口面に対して少なくとも60°の角度で注入するように前記イオン選択室の前記入口に連結されている、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項11】
前記イオン注入器は、イオンを前記イオン選択室内へ前記入口面に対して少なくとも40°の角度で注入するように前記イオン選択室の前記入口に連結されている、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項12】
更に、前記イオン選択室の前記イオン出口に近接したイオン検出面を備えており、前記イオン検出面は、前記出口面に対して実質的に所定の流出角度で出てくるイオンを主に検出し、別の流出角度を有するイオンを概ね排除するように配置されている、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項13】
イオン選択室と;
前記イオン選択室内に配列された第1電極であって、平坦な面を有する第1電極と;
平坦な面を有する第2電極であって、前記第1及び第2電極は前記イオン選択室内で、前記平坦な面を、お互いに平行で且つ向かい合うように設置された第2電極と;
前記イオン選択室内に、回転せずに、振動する電解を生じさせるように前記第1及び第2電極と接続されたRF信号生成器と;
前記第1又は第2電極のいずれかの平坦な面に向かって、前記イオン選択室の中にイオンを注入するように構成されたイオン注入器と、
から成る質量分析器。
【請求項14】
前記イオン注入器は、液体クロマトグラフィー装置からサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質は少なくとも1つのイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項15】
前記イオン注入器は、電気泳動装置からサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質は少なくとも1つのイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項16】
前記イオン注入器はエレクトロスプレー装置を備えている、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項17】
前記イオン注入器は、直接挿入プローブからサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質はイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項18】
前記イオン注入器は、毛管カラムからサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質はイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項19】
前記イオン注入器は、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化プロセスを用いて被分析試料のイオンを生成するように構成されたイオン化装置を有する、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項20】
前記イオン注入器は、エレクトロスプレープロセスを用いて被分析試料のイオンを生成するように構成されたイオン化装置を有する、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項21】
前記イオン注入器は、イオンを前記イオン選択室内へ前記入口面に対して少なくとも60°の角度で注入するように前記イオン選択室の前記入口に連結されている、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項22】
前記イオン注入器は、イオンを前記イオン選択室内へ前記入口面に対して少なくとも40°の角度で注入するように前記イオン選択室の前記入口に連結されている、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項23】
更に、前記イオン選択室の前記イオン出口に近接したイオン検出面を備えており、前記イオン検出面は、前記出口面に対して実質的に所定の流出角度で出てくるイオンを主に検出し、別の流出角度を有するイオンを概ね排除するように配置されている、請求項13に記載の質量分析器。
【請求項24】
イオン選択室であって、イオン入口面にあるイオン入口と、実質的に前記入口面に平行なイオン出口面にあるイオン出口と、前記入口及び出口面の間を、それらに垂直に延びる中心軸とを有するイオン選択室と;
前記イオン選択室内で、前記中心軸を挟んで配列された一対の平行平板電極と;
RF信号生成器であって、前記イオン選択室内に電界を生じさせるように前記一対の平行平板電極に接続され、前記電界が前記入口及び出口面に実質的に垂直な座標面内で振動するRF信号生成器と;
イオン注入器であって、前記イオン選択室内にイオンを、当該イオンの主な速度成分が前記座標平面内にあるように注入するように構成されたイオン注入器と、
から成る質量分析器。
【請求項25】
前記イオン注入器は液体クロマトグラフィー装置からサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質は少なくとも1つのイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項26】
前記イオン注入器は、電気泳動装置からサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質は少なくとも1つのイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項27】
前記イオン注入器は、エレクトロスプレー装置を備えている、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項28】
前記イオン注入器は、直接挿入プローブからサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質はイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項29】
前記イオン注入器は、毛管カラムからサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質はイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項30】
前記イオン注入器は、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化プロセスを用いて被分析試料のイオンを生成するように構成されたイオン化装置を有する、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項31】
前記イオン注入器は、エレクトロスプレープロセスを用いて被分析試料のイオンを生成するように構成されたイオン化装置を有する、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項32】
前記イオン注入器は、イオンを前記イオン選択室内へ前記入口面に対して少なくとも60°の角度で注入するように前記イオン選択室の前記入口に連結されている、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項33】
前記イオン注入器は、イオンを前記イオン選択室内へ前記入口面に対して少なくとも40°の角度で注入するように前記イオン選択室の前記入口に連結されている、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項34】
更に、前記イオン選択室の前記イオン出口に近接したイオン検出面を備えており、前記イオン検出面は、前記出口面に対して実質的に所定の流出角度で出てくるイオンを主に検出し、別の流出角度を有するイオンを概ね排除するように配置されている、請求項24に記載の質量分析器。
【請求項35】
イオンを、少なくとも前記イオンの質量電荷比に基づいて選択的に通過させるための電界を生じるように作られているイオン選択室であって、入口面に在るイオン入口と出口面に在るイオン出口とを有しているイオン選択室と;
イオンを前記イオン選択室の前記電界内へ注入するように作られているイオン注入器であって、前記イオン選択室の前記イオン出口に近接してイオン検出面が配置されており、前記イオン検出面は、前記出口面に対して実質的に所定の流出角度θeで出てくるイオンを主に検出し、別の流出角度を有するイオンを概ね排除するように配置されている、イオン注入器と、
を備えている質量分析器。
【請求項36】
前記イオン検出面は、前記イオン選択室の前記イオン出口の面積より実質的に小さい検出表面積を有している、請求項35に記載の質量分析器。
【請求項37】
更に、前記イオン検出面を複数の検出位置に駆動するように接続された1つ以上のアクチュエータを備えている、請求項35に記載の質量分析器。
【請求項38】
前記イオン検出面は、所定の流出角度θe=0°で出てくるイオンを主に検出するように配置されている、請求項35に記載の質量分析器。
【請求項39】
イオン注入器と;
前記イオン注入器からイオンを受け取るように構成されたイオン選択室であって、イオン入口面にあるイオン入口とイオン出口面にあるイオン出口を有するイオン選択室と;
前記イオン選択室内に配置された複数の電極と;
前記イオン選択室内に、回転せずに振動する電界を作るために、前記複数の電極に接続されているRF信号生成器と;
前記イオン選択室の前記イオン出口に近接して配置されたイオン検出器であって、前記出口面に対して実質的に所定の角度θeで出てくるイオンを主に検出し、別の流出角度を有するイオンを概ね排除するように配置されている検出面を有するイオン検出器と、
を備えている質量分析器。
【請求項40】
前記イオン検出器は、前記検出面を複数の位置の間で移動させるための1つ以上の自動駆動機構を有する、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項41】
前記1つ以上の自動駆動機構が、前記検出面を、前記イオン出口と前記検出面の間の直線間隔を調節するために移動させる、請求項40に記載のイオン検出器。
【請求項42】
前記1つ以上の自動駆動機構が、前記検出面を、前記イオン出口と前記検出面の間の角度を調節するために移動させる、請求項40に記載のイオン検出器。
【請求項43】
前記1つ以上の自動駆動機構が、前記検出面を、前記質量フィルターの長さ方向軸に垂直に移動させる、請求項40に記載のイオン検出器。
【請求項44】
前記イオン注入器は、液体クロマトグラフィー装置からサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質は少なくとも1つのイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項45】
前記イオン注入器は、電気泳動装置からサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質は少なくとも1つのイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項46】
前記イオン注入器はエレクトロスプレー装置を備えている、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項47】
前記イオン注入器は、直接挿入プローブからサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質はイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項48】
前記イオン注入器は、毛管カラムからサンプル物質を受け取るように構成されたイオン化装置を有し、前記サンプル物質はイオン化する被分析試料を含んでいる、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項49】
前記イオン注入器は、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化プロセスを用いて被分析試料のイオンを生成するように構成されたイオン化装置を有する、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項50】
前記イオン注入器は、エレクトロスプレープロセスを用いて被分析試料のイオンを生成するように構成されたイオン化装置を有する、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項51】
前記イオン注入器は、イオンを前記イオン選択室内へ前記入口面に対して少なくとも60°の角度で注入するように前記イオン選択室の前記入口に連結されている、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項52】
前記イオン注入器は、イオンを前記イオン選択室内へ前記入口面に対して少なくとも40°の角度で注入するように前記イオン選択室の前記入口に連結されている、請求項39に記載の質量分析器。
【請求項53】
前記複数の電極が;
平坦な面を有する第1電極と;
平坦な面を有する第2電極であって、前記第2電極の平坦な面が、前記第1電極の平坦な面に相対し、概ねそれと平行になっている第2電極と、
から成っている、請求項39に記載の質量分析器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−518923(P2006−518923A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503864(P2006−503864)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005574
【国際公開番号】WO2004/077489
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505320780)べックマン コールター,インコーポレイテッド. (1)
【氏名又は名称原語表記】BECKMAN COULTER, INC.
【Fターム(参考)】