説明

改良物品

【課題】傷および引っ掻き耐性であり、かつ少なくとも望ましくない光学的問題を低減する物品の提供。
【解決手段】組成物がナノ粒子、フッ素化合物、および該組成物を硬化させる化合物を含み、該組成物は支持膜の第1面に隣接し並びに接着剤が支持膜の第2面に隣接する物品である。フッ素化合物がフッ化ポリエーテル等および、フッ化ポリエーテルが組み込まれるポリウレタンからなり、ナノ粒子が表面処理されたナノ粒子、ニートのナノ粒子およびそれらの混合物の、分散体から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は引っ掻き(scratch)および傷(mar)耐性物品を対象とする。より具体的には、本発明は光学特性が改良されている引っ掻きおよび傷耐性物品を対象とする。
【背景技術】
【0002】
「傷」および「引っ掻き」は機械的および化学的摩耗の結果生じる物理的変形を指す。「傷耐性」は小規模な機械的応力によって生じる外見の劣化に耐える物質の能力の尺度である。「引っ掻き耐性」は当該技術分野において傷と呼ばれるものよりも深刻な損傷に耐える物質の能力である。これら2つは当該技術分野においては異なるものとみなされる。上述のように、傷および引っ掻きは製造および環境的要因並びに使用から生じ得る。傷および引っ掻きは、多くの点で、異なる程度の、同じ種類の欠陥ではあるが、傷耐性を改善するコーティングは引っ掻き耐性の改善においては有効ではない可能性があり、その逆も同様である。
【0003】
傷および引っ掻きはあらゆる物品に関して望ましくないものであるが、それらは光学物品に関して特に望ましいものではなく、画像の審美性を損なったり、画像を歪曲する可能性がある。例えば、そのような光学物品の表面における欠陥は、光を好ましくなく散乱させ、かつ物品の表面から反射させることがあり、またはその欠陥の場所で物品の屈折率を変化させて物品を通過する光の透過率を変化させ、それにより画像を歪曲させることがある。光学物品、例えば、コンピュータ画面、タッチスクリーンディスプレイ、窓および明瞭な視覚画像が望ましい他の物品を保護するため、膜コーティング、例えば、多層膜が開発されている。そのような多層膜は衝撃耐性および、一般には、望ましい光学特性を有する。
【0004】
多層膜は、一緒に形成されることがあり(例えば、同時押出し)、別々の予備形成膜層から多層膜構造に積層されることがあり、または一緒に配置され、かつ光学的特性を有し得る接着層を用いて接触した状態に保たれる。しかしながら、多層膜を構成する1以上の構成要素がそれらの膜の光学的特性、例えば、透明性、透過率に否定的な影響を及ぼす可能性があり、または二重映像発生、ハロー発生のような否定的な光学効果を生じ、もしくは界面反射のために光学物品の反射を増加させる可能性がある。
【0005】
別の光学的な問題は色「縁」の形成である。かかる色縁は裸眼で多数の色として観察することができる。この現象はコーティングの有無に関わらず生じ得る。理論によって拘束されるものではないが、この現象は光が光学的物品、例えば、ガラス窓またはコーティングを有する他のそのような光学的物品を通過するときに形成される干渉縞によるものと考えられる。これはその物品の最適性能を妨害することがあるため、非常に望ましくないものである。
【0006】
米国特許出願公開番号第2003/0224174号は、改善された傷および引っ掻き耐性を有するとされるコーティング組成物を開示する。このコーティングは修飾されたナノ粒子を有する膜形成樹脂で構成される。これらのナノ粒子はそれらの表面上に少なくとも1つの反応性基を含み、その主張によると、これはナノ粒子をその樹脂と不適合なものとし、したがって、それらをそうでない場合よりもより表面活性にする。次いで、ナノ粒子はコーティングした後にコーティングの表面に上昇し硬化し、傷および引っ掻き耐性の向上をもたらすものと考えられる。このコーティングは透明プラスチック基体、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、およびエラストマー基体、例えば、熱可塑性ポリオレフィンに適用することができる。
【特許文献1】米国特許出願公開番号第2003/0224174号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
傷および引っ掻き耐性の問題に取り組むコーティングおよび物品は存在するものの、傷および引っ掻き耐性であり、かつ少なくとも望ましくない光学的問題を低減する物品に対する必要性は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
物品は組成物を含み、該組成物はナノ粒子、1以上のフッ化化合物、および該組成物を硬化させる1以上の化合物を含有し、該組成物は支持硬化コーティング膜の第1面に隣接し、並びに接着剤が支持膜の第2面に隣接する。物品は様々な基体に適用されて保護コーティングとして機能することができる。物品は干渉縞の形成も抑制する。かかる干渉縞は光が透明基体、例えば、ガラスおよび透明ポリマー物質を通過するときに光縁として観察され得る。この色縁は、それらがその基体の最適性能を損なうため、望ましいものではない。
【0009】
別の側面において、物品は組成物を含み、該組成物はナノ粒子、1以上のフッ化化合物、およびその組成物を硬化させる1以上の化合物を含有し、該組成物は支持膜の第1面に隣接し、並びに接着剤が支持膜の第2面に隣接し、該接着剤は剥離可能な接着剤である。
【0010】
これらの組成物は1以上の任意添加物を含有することもできる。そのような添加物には、これらに限定されるものではないが、膜形成ポリマー、酸化防止剤、着色剤、反射防止物質、UV吸収剤、安定化剤、可塑剤、平滑剤、スリップ剤、界面活性剤、接着促進剤および希釈剤が含まれる。
【0011】
さらなる側面において、方法は、組成物を含む物品を提供すること、ここで該組成物はナノ粒子、1以上のフッ化化合物、該組成物を硬化させる1以上の化合物を含有し、該組成物は支持膜の第1面に隣接し、および接着剤が支持膜の第2面に隣接している;並びに、該物品を基体に適用して該基体を保護し、および干渉縞の形成を抑制することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書を通して用いられる場合、その文脈が他に指示しない限り、以下の略語は以下の意味を有する:℃=摂氏度;UV=紫外線;Tg=ガラス転移温度;gm=グラム;mg=ミリグラム;L=リットル;mL=ミリリットル;cm=センチメートル;mm=ミリメートル;μm=ミクロン;nm=ナノメートル;ナノ=10−9;ミル=0.001インチ=25.4ミクロン;mJ=ミリジュール;psi=ポンド/インチ=0.06805atm(気圧);1atm=1.01325×l0ダイン/cm;Mrad=メガラド;1rad=10−2グレイ;DSC=示差走査熱量測定;GPC=ガス圧クロマトグラフィー(gas pressure chromatography);Mw=重量平均分子量;Mn=数平均分子量;およびASTM=アメリカ標準試験法。
【0013】
「ポリマー」および「コポリマー」という用語は本明細書を通して交換可能に用いられる。「オリゴマー」という用語は2〜10個の反復単位を有するポリマーを意味する。「(メタ)アクリレート」はメタクリレートおよびアクリレートの両者を含む。「(メタ)アクリル酸」はメタクリル酸およびアクリル酸の両者を含む。「ガラス転移温度」は、非晶質物質(例えば、ガラス)が脆いガラス質状態から可塑性状態に変化する温度である。「希釈剤」という用語は坦体またはビヒクル、例えば、溶媒または固体充填剤を意味する。「黄色度(Yellowness Index)」は、比色分析または分光光度分析による決定での無色の黄色への偏りである。「曇り」(透過における)は、それを通して見る対象のコントラストの低下の原因となる、検体による光の散乱;またはその方向が入射光線の方向から規定された角度を上回って偏るように散乱する透過光のパーセントである。
【0014】
他に注記されない限り、すべてのパーセンテージは重量基準であり、かつ乾燥重量(溶媒非含有重量)に基づく。すべての数値範囲は境界値を含み、かかる数値範囲が合計で100%に拘束されることが当然である場合を除いて、任意の順番で組み合わせ可能である。
【0015】
物品は組成物を含み、該組成物はナノ粒子、1以上のフッ化化合物、および該組成物を硬化させる1以上の化合物を含有し、該組成物は支持膜の第1面に隣接し、並びに接着剤が支持膜の第2面に隣接する。組成物は様々な基体に適用されて保護コーティング、すなわち、傷および引っ掻き耐性コーティングとして機能することができる。物品は干渉縞の形成も抑制する。そのような干渉縞は、光が透明基体、例えばガラス、および透明ポリマー物質を通過するときに色縁として観察可能であるものと考えられる。色縁は、それらがその基体の最適性能を損なうため、望ましいものではない。物品が基体に適用された場合、色縁は、偏光フィルターなしでも偏光フィルターありでも観察不可能である。
【0016】
任意の好適なナノ粒子を組成物において用いることができる。ナノ粒子は結晶性または非晶質の金属またはセラミックス並びに粘土であり得る。ナノ粒子は表面処理されたナノ粒子または処理されていないナノ粒子(すなわち、ニート)の分散体であり得る。コロイド状ナノ粒子を用いることもできる。無機ナノ粒子の例には、酸化物、硫化物、硫酸塩、シリカ、ケイ酸塩、炭酸塩、水酸化物および粘土が含まれる。酸化物の例には、金属酸化物、例えば、ジルコニア、チタニア、セリア、アルミナ、酸化鉄、酸化クロム、酸化マグネシウム、酸化コバルト、酸化アンチモン、酸化カドミウム、酸化ヒ素、酸化鉛および酸化亜鉛が含まれる。好適な硫化物および硫酸塩には、亜鉛、鉛、チタン、アンチモン、カドミウム、鉄、ヒ素、マグネシウム、アルミニウム、コバルト、およびクロムが含まれる。好適なシリカの例はコロイド状シリカである。典型的には、チタニア、アルミナおよびシリカが組成物において用いられる。より典型的には、チタニア、例えば、コロイド状二酸化チタン、およびコロイド状シリカが用いられる。最も典型的には、コロイド状シリカが用いられる。ナノ粒子は商業的に入手可能であり、または文献において知られている方法によって調製することができる。ナノ粒子を調製する方法の例は米国特許第5,472,477号および第5,876,683号に開示される。
【0017】
典型的には、表面処理されたナノ粒子の分散体が組成物において用いられる。そのような表面処理されたナノ粒子の例は、Clariantから商業的に入手可能な、(メタ)アクリルモノマーおよび有機溶媒中のナノシリカの分散体であるHIGHLINK NanO G(登録商標);両者ともhanse chemieから商業的に入手可能な、(メタ)アクリルモノマー中のナノシリカの分散体であるNANOCRYL(登録商標)およびエポキシモノマー中のナノシリカの分散体であるNANOPOX(登録商標);Nissan Chemicalから商業的に入手可能である、様々な有機溶媒中のナノシリカ分散体であるORANGOSILICASOL(登録商標);Nanophaseから商業的に入手可能である、有機溶媒および水中のアルミナの分散体であるNANODUR(登録商標);並びに米国イリノイ州ネーパービルのNalco Chemical Co.から入手可能な、コロイド状シリカであるNALCO COLLOIDAL SILICAS(商標)1040、1050、1060、2327および2329である。
【0018】
1つのタイプのナノ粒子を組成物中で用いることができ、または2以上を互いに混合して組成物を望ましい特性に仕立てることができる。組成物は20重量%〜80重量%のナノ粒子、または、例えば、30重量%〜60重量%のナノ粒子、または、例えば、40重量%〜50重量%のナノ粒子を含む。
【0019】
これらのナノ粒子は、粘度の増加(ブルックフィールド粘度計)に対する最小限の影響、引っ掻き耐性の改善(0000スチールウール摩擦、テーバー摩擦試験機)、強靱性の増加、モジュラスの増加(Instron、ナノインデンテーション、カンチレバービーム)、遮蔽特性の改善(検圧セル(manometric cell)法(ASTM D1434)および電量法(ASTM D3985)によって測定される気体透過性が用いられる)、水分および蒸気透過性の減少(ASTM E96およびASTM F372法が用いられる)並びに耐候性の増加(例えば、光、闇、水噴霧、温度および湿度条件)(Atlas Weather−O−Meterによる測定)をもたらし、幾つかのナノ粒子(例えばシリカ)については、透明性の損失の限定(UVおよび可視光分光光度計、Gardner透過率計)をもたらすものと考えられる。これらのナノ粒子はサイズが5nm〜500nm、または、例えば、10nm〜150nm、または、例えば、10nm〜75nmの範囲にある。
【0020】
組成物中でナノ粒子の凝集を生じることがなく、かつ望ましい光学的特性を妨害することのない、任意の好適なフッ化化合物を用いることができる。そのような化合物には、これらに限定されるものではないが、フッ化ポリエチレン;フルオロカーボン(メタ)アクリレート;フルオロ脂肪族ポリマーエステル;およびフッ化ポリエーテルと合体されているポリウレタン;並びにそれらの組み合わせが含まれる。典型的には、これらのフッ化化合物は1以上のフッ化ポリエーテル;フルオロカーボン(メタ)アクリレート;過フッ化炭素4基(C)を有するフルオロ脂肪族ポリマーエステル;およびオキセタンモノマーから誘導されるフッ化ポリエーテルと合体されているポリウレタン;から選択される。より典型的には、フッ化化合物は1以上のフッ化ポリエーテル、例えば、ヒドロキシ末端フッ化ポリエーテル;(メタ)アクリレート末端フッ化ポリエーテル;およびオキセタンモノマーから誘導されるフッ化ポリエーテルと合体されているポリウレタン;から選択される。最も典型的には、フッ化化合物は1以上のヒドロキシ末端フッ化ポリエーテルおよびアクリレート末端フッ化ポリエーテルから選択される。
【0021】
用いることができる好適なヒドロキシ末端フッ化ポリエーテルの例には、オキセタンモノマーから誘導されるヒドロキシ末端フッ化ポリエーテルが含まれる。そのようなヒドロキシ末端フッ化ポリエーテルは非対称に一置換したペンダントフッ化アルコキシアルキレン基を有する。そのようなヒドロキシ末端ポリエーテルの例には、これらに限定されるものではないが、下式を有する化合物が含まれる。
【0022】
【化1】

【0023】
式中、nは1〜3の整数であり、典型的には、nは1〜2であり、より典型的には、nは1であり;Rは(C−C)アルキル、例えば、メチルおよびエチルであり、典型的には、Rはメチルであり;Rは直鎖もしくは分岐鎖過フッ化(C−C20)アルキル、または4〜20個の炭素を有するオキサ過フッ化ポリエーテルであり、典型的には、Rは直鎖過フッ化(C−C)アルキルであり、より典型的には、Rは−CF、−C、または−Cであり、最も典型的には、Rは−CFであり;xは1〜100であり、典型的には、xは1〜20であり、より典型的には、xは1〜8であり、最も典型的には、xは3〜6であり;yは0〜150であり、典型的には、yは0〜20であり、より典型的には、yは0〜10であり、最も典型的には、yは0であり;Rは同じであっても異なっていてもよく、典型的には、Rは同じであり、および水素、2〜5個の炭素を有するアルキルアルコール残基、またはSOMであり、ここで、Mは対イオン、例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはアンモニウム(NH)であり、典型的には、Rは水素またはSOMであり、より典型的には、Rは水素である。
【0024】
フッ化ポリエーテルと合体されているポリウレタンは下式を有する反復単位の化合物であり得る。
【0025】
【化2】

【0026】
式中n、RおよびRは上で定義され;uは10〜200、典型的には、15〜50、より典型的には、20〜30、最も典型的には、20であり;zは1〜10、より典型的には、1〜2、最も典型的には、1であり;並びにRは二価ヒドロカルビル基であり、その例には以下の構造が含まれる。
【0027】
【化3】

【0028】
式(II)を有するポリウレタンを作るのに用いられる架橋剤には、これらに限定されるものではないが、低分子量ポリオールまたはポリアミン、例えば、トリメチルプロパン、ペンタエリスリトール、ISONOL(商標)93、トリメチロールエタン、トリエタノールアミン、ジェファミン(Jeffamine)、1,4−ブタンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、メチレンジアニリン、およびジエタノールアミンが含まれる。典型的には、架橋剤はトリメチロールプロパン、ISONOL(商標)93、メチレンジアニリンおよびジェファミンである。
【0029】
他の好適なフッ化ポリエーテルの例は下式を有する。
【0030】
【化4】

【0031】
式中、n、R、およびRは上に定義され;並びにmは1〜50であり、典型的には、mは1〜25であり、より典型的には、mは15〜25である。典型的には、これらのポリマーは水素またはSOMでエンドキャップされている。
【0032】
フッ化ポリエーテルは商業的に入手可能であり、または当該技術分野において公知の方法によって調製することができる。多くのフッ化ポリエーテルは、米国オハイオ州フェアローンのOmnova Solutions Inc.からPOLYFOX(商標)の商品名で商業的に入手することができる。そのような化合物の調製方法は米国特許5,650,483号、米国特許5,468,841号、米国特許5,654,450号、米国特許5,663,289号、米国特許5,668,250号および米国特許5,668,251号に開示されている。
【0033】
好適なフルオロカーボン(メタ)アクリレートの例には、ペンタデカフルオロオクチルアクリレート、ウンデカフルオロヘキシルアクリレート、ノナフルオロペンチルアクリレート、ヘプタフルオロブチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ペンタフルオロプロピルアクリレート、トリフルオロアクリレート、トリイソフルオロイソプロピルメタクリレートおよびトリフルオロエチルメタクリレートが含まれる。そのような化合物は文献における方法に従って作ることができ、または商業的に入手することができる。商業製品の例はCytec/Surface Specialties製のEBECRYL 381である。EBECRYL 381は、1〜4炭素過フッ化基を有するフルオロカーボンアクリレート25重量%とプロポキシ化グリセロールトリアクリレート75重量%との混合物である。
【0034】
フルオロ脂肪族ポリマーエステルも文献に開示される方法から作ることができ、または商業的に入手することができる。商業的に入手可能な、脂肪族基中に4個の炭素を有するフルオロ脂肪族ポリマーエステルの例はNOVECであり、これは3M Companyから入手可能である。
【0035】
フッ化化合物は組成物中に0.01重量%〜5重量%、または、例えば、0.025重量%〜3重量%、または、例えば、0.05重量%〜1.5重量%の量で含まれる。
【0036】
組成物は当該技術分野において知られている任意の好適な方法によって硬化させることができる。硬化の例には、電子ビーム、UV光、可視光、熱硬化、湿気硬化およびフリーラジカル開始剤によるものが含まれる。通常の硬化性化合物を組成物中に用いることができる。そのような硬化性化合物の例には、不飽和モノマー、オリゴマー、エポキシ化合物、光開始剤および熱開始剤が含まれる。一般には、硬化性化合物は、組成物中にその組成物の0.01重量%〜80重量%、または、例えば、0.5重量%〜60重量%、または、例えば、1重量%〜50重量%、または、例えば、5重量%〜20重量%の量で含まれる。
【0037】
エポキシ化合物並びに不飽和モノマーおよびオリゴマーの例には、エポキシ化合物、例えば、ビスフェノールAベースの物質および脂環式エポキシド、ビニルエーテル、例えば、ジビニルエーテル、脂肪族ウレタンジビニルエーテル、(メタ)アクリルモノマー、例えば、単一および多官能性(メタ)アクリレートモノマー、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、(メタ)アクリル酸、オリゴマー、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート並びに官能性ポリマー、例えば、アクリル官能性アクリルポリマーが含まれる。典型的には、そのような硬化性化合物は、その組成物の10重量%〜80重量%、または、例えば、20重量%〜60重量%の量で用いることができる。
【0038】
組成物を硬化させるのに任意の好適な光開始剤を用いることができる。そのような光開始剤の例には、カチオン性光開始剤、例えば、スルホニウム塩およびヨードニウム塩、フリーラジカル開始剤、例えば、アリールケトン、ジアリールケトンおよびアリールホスフィンオキシド含有光開始剤が含まれる。そのような光開始剤は当該技術分野においてよく知られており、容易に商業的に入手可能であるか、または文献に記載される方法によって作ることができる。商業的に入手可能なアリールケトンの例にはDAROCUR(商標)184およびIRGACURE(商標)1173が含まれ;並びに、商業的に入手可能なアリールホスフィンオキシド含有光開始剤の例にはIRGACURE(商標)500、819および1850が含まれる。
【0039】
オニウム塩である好適な光開始剤の例には、オニウムカチオンがヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、オキシスルホニウム、オキシスルホキソニウム、スルホキソニウム、アンモニウム、ジアゾニウム、セロノニウム、アルソニウムであるオニウム塩;並びにアニオンがハロゲン、例えば、クロライドまたは非求核性アニオン、例えば、トリフレート、テトラフルオロボレートおよびトリフルオロメチルアセテートであるオニウム塩が含まれる。
【0040】
光開始剤は、典型的には、組成物中に0.01重量%〜10重量%、または、例えば、0.5重量%〜5重量%の量で含まれる。
【0041】
他の好適な硬化性化合物には熱開始剤およびレドックス開始剤が含まれる。そのような化合物は通常の量で用いることができる。
【0042】
ナノ粒子、1以上のフッ化化合物、1以上の硬化性化合物に加えて、組成物は1以上の任意の添加物を含むことができる。そのような添加物には、これらに限定されるものではないが、膜形成ポリマー、UV吸収剤、UV安定化剤、酸化防止剤、着色剤、界面活性剤、および希釈剤が含まれる。
【0043】
任意の好適な膜形成ポリマーを用いることができる。好適な膜形成ポリマーには、これらに限定されるものではないが、(メタ)アクリレートポリマー、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタン、ポリエステル−ポリエーテル−ポリウレタン、無水マレイン酸エステルコポリマー、およびブタジエン−スチレンコポリマーが含まれる。典型的には、膜形成ポリマーは組成物に、それらが、例えば噴霧または刷毛塗りのための、塗料として配合されるときに、添加される。組成物に添加されるとき、膜形成ポリマーは1重量%〜60重量%、または、例えば、5重量%〜40重量%、または、例えば、10重量%〜20重量%の量で含めることができる。そのようなポリマーは当該技術分野においてよく知られており、または文献から調製することができる。多くは商業的に入手可能である。
【0044】
任意の好適な酸化防止剤を用いることができる。含めることができる好適な酸化防止剤は、例えば、芳香族アミン化合物、例えば、N,N−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、ヒドロキノン化合物、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノン、キノリン化合物、例えば、トリメチルジヒドロキノリンポリマーおよびフェノール化合物、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールである。多くの酸化防止剤が商業的に入手可能であり、またはそれらは文献に開示される方法に従って作ることができる。商業的に入手可能なフェノールの例はIRGANOX(商標)、例えば、IRGANOX(商標)1010である。酸化防止剤が組成物において用いられるとき、それらは0.01重量%〜5重量%、または、例えば、0.5重量%〜2重量%の量で含めることができる。
【0045】
任意の好適な安定化剤を用いることができる。好適な安定化剤には、これらに限定されるものではないが、様々なUV吸収剤が含まれる。例えば、ヒンダードアミン、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートおよびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ブチルプロパンジオールヒドロキシフェニル;ベンゾトリアゾール、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;ベンゾフェノンUV吸収剤およびサリチル酸誘導体が挙げられる。ベンゾフェノンUV吸収剤の例は2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンであり、サリチル酸誘導体の例はp−オクチルフェニルサリチレートである。多くの安定化剤は商業的に入手可能であり、または文献において知られた方法によって調製することができる。商業的に入手可能なヒンダートアミンの例には、Ciba−Geigy Corporationから入手可能なTINUVIN(商標)622が含まれる。安定化剤が配合物に含まれるとき、それらは0.01重量%〜5重量%、または、例えば、0.05重量%〜2重量%の量で含めることができる。
【0046】
好適な着色剤の例は染料および顔料である。染料の例には、ロイコ色素およびそれらの誘導体、フタロシアニン型、アゾ型、並びにアントラキノン型染料が含まれる。好適な顔料の例には、カーボンブラック、メタン型、キノフタロン型、およびアントラピリドン型顔料が含まれる。着色剤は、例えば、組成物の0.1重量%〜10重量%、または、例えば、1重量%〜5重量%の量で用いることができる。
【0047】
様々な界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびイオン性界面活性剤も含めることができる。そのような界面活性剤は当該技術分野においてよく知られており、商業的に入手可能であるか、または文献に記載される方法に従って作ることができる。典型的には、そのような界面活性剤は組成物の0.01重量%〜5重量%、または、例えば、0.5重量%〜2重量%の量で用いることができる。
【0048】
任意の好適な希釈剤を用いることができる。典型的には、希釈剤は組成物を100重量%にするのに十分な量で添加される。希釈剤は固体充填剤、水もしくは有機溶媒またはそれらの混合物であり得る。充填剤の例にはカルボキシメチルセルロースおよびそれらの誘導体が含まれる。好適な有機希釈剤の例には、アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが含まれる。
【0049】
組成物に含めることができるさらなる任意の添加物には、これらに限定されるものではないが、反射防止物質、平滑剤、可塑剤、接着促進剤およびスリップ剤が含まれる。そのような添加物は当該技術分野においてよく知られており、通常の量で用いることができる。
【0050】
これらの成分は任意の順番で互いに混合または配合することができる。典型的には、成分は室温で互いに混合する。任意に、成分を希釈剤中に可溶化または分散するのに十分な熱および粉砕技術を適用することができる。
【0051】
組成物は当該技術分野における任意の好適な方法によって支持膜に適用し、支持膜上にコーティングを形成することができる。そのような方法の例には、スプレーコーティング、刷毛塗り、組成物の浴中への基体の浸漬、リバースロール、ナイフオーバーロール(knife over roll)、グラビア、ロッドおよびスロットが含まれる。膜上にコーティングが形成された後、それを硬化させる。硬化したコーティングの厚みは0.05ミル〜5ミル、または、例えば、0.2ミル〜2ミルの範囲であり得る。
【0052】
支持膜は3000psi以上、または、例えば、3000psi〜7000psiの引張破断強度を有する(ASTM D882)。かかる支持膜には、これらに限定されるものではないが、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル、アクリロニトリル−スチレンポリマー、塩化ビニリデン、アクリロニトリルアクリルスチレンポリマー、アクリロニトリルエチレン−プロピレン−ターポリマースチレンポリマー、ポリウレタン、ポリビニルブチラールポリマー、ポリ−4−メチルペンテン−1ポリマー、ポリブテン−1ポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)ポリマー、ポリフッ化ビニルポリマー、ポリカーボネート、コポリエステルカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリエステル、例えば、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル、グリコール化ポリエステル、ポリアリレート並びにそれらの混合物のポリマー膜が含まれる。
【0053】
支持膜は0.5ミル〜10ミル、または、例えば、2ミル〜8ミル、または、例えば、3ミル〜5ミルの厚みを有し得る。そのような支持膜は光学的に透明であり、1000psi以上、または、例えば、2000psi〜5000psiの引張降伏強度を有する(ASTM D882)。
【0054】
支持膜の引張伸びは300%以下、または、例えば、300%から175%以下である(ASTM D882)。引張弾性率は50,000psi以上、または、例えば、100,000psiから200,000psi以上である(ASTM D882)。
【0055】
支持膜は、ナノ粒子を含む組成物が適用される側の反対に接着剤を含む。好適な接着剤は透明であり、典型的には、80%以上、または、例えば、80%から90%以上の可視スペクトルにおける光透過率を有する。典型的には、使用前の環境から接着剤を保護するため、保護裏材を接着剤上に含む。
【0056】
透明であり、かつ偏光フィルター用いる場合も用いない場合も干渉縞の形成を防止する、任意の好適な接着剤を用いることができる。典型的には、接着剤は1.4〜1.65、または、例えば、1.45〜1.6の屈折率を有する(ASTM D542A)。好適な接着剤の例には、永久接着剤、半永久接着剤、再配置可能な接着剤、剥離可能な接着剤、感圧性接着剤および冷凍分野の接着剤が含まれる。そのような接着剤の多くはホットメルト、ホットメルト感圧性および感圧性接着剤として分類することができる。また、多くの剥離可能な接着剤は感圧性である。接着剤は水ベース、溶媒ベース、100%固体であり得、これらは非硬化性であっても硬化性であってもよい。接着剤の厚みは0.05ミル〜5ミル、または、例えば、0.1ミル〜3ミル、または、例えば、0.3ミル〜2ミルの範囲であり得る。そのような接着剤は当該技術分野においてよく知られており、商業的に入手することができるか、または文献に従って作ることができる。
【0057】
好適な接着剤は、典型的には、3以下、または、例えば、3から1以下の黄色度を有する(ASTM D1925)。接着剤は3%以下、または、例えば、3%から1%以下の曇りを有することもできる(ASTM D1300)。
【0058】
典型的には、接着剤は剥離可能な接着剤である。剥離可能な接着剤は、典型的には、感圧性接着剤である。そのような剥離可能な感圧性接着剤の例は、アクリル;ポリウレタン;ポリ−アルファ−オレフィン;シリコーン;アクリレート感圧性接着剤と熱可塑性エラストマーベースの感圧性接着剤の組み合わせ;並びに粘着力強化天然および合成ゴムである。
【0059】
例示的な感圧性接着剤にはアクリルおよびシリコーンベースの接着剤が含まれる。シリコーンベースの感圧性接着剤の例には、ポリマー鎖末端にシラノール官能基を含むポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリマーおよびポリマー鎖末端にシラノール官能基を含むポリジメチルジフェニルシロキサン(PDMDPS)ポリマーが含まれる。これらはしばしばMQ樹脂と呼ばれる。MQという名称は、その構造が三次元Q単位(SiO)のコアを有し、それがM単位(CHSiO)のシェルによって取り囲まれているという事実に由来する。また、この樹脂は表面上に所定レベルのシラノール官能基を有する。M:Qの比は、典型的には、0.6〜1.21の範囲にある。好適なアクリル感圧性接着剤は−5℃以下、または、例えば、−5℃〜−60℃のTgを有する。典型的には、Tgは−5℃〜−15℃であり、より典型的には、Tgは−40℃〜−60℃である。
【0060】
好適なポリウレタン型の剥離可能な接着剤の例には、長鎖ポリオールを主成分として含むソフトセグメント並びにジイソシアネート化合物および鎖延長剤を含むハードセグメントを有するポリウレタンエラストマーが含まれる。典型的には、長鎖ポリオールはポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールである。ジイソシアネート化合物は、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)であり得る。鎖延長剤は、例えば、低分子量ポリオール、および芳香族ジアミンであり得る。
【0061】
そのようなポリウレタンエラストマーには、これらに限定されるものではないが、(1)長鎖ポリオールおよびジイソシアネート、例えば、TDIまたはMDIを重合することによって生成される熱可塑性ポリウレタンエラストマーを有機溶媒で希釈する、一成分型;並びに(2)硬化反応が架橋剤、例えば、ポリイソシアネートをポリウレタンエラストマーまたはそれらのプレポリマーに添加することによって行われる、二成分型が含まれる。典型的には架橋促進剤も添加される。
【0062】
典型的には、一成分型とは対照的に、二成分型ポリウレタンエラストマーが用いられる。ポリイソシアネートが架橋剤として用いられるとき、それは脂肪族または脂環式ポリイソシアネートである。これは耐候性の改善をもたらす。
【0063】
さらに、ポリウレタンエラストマーは、イソシアネートを空気中の水分と反応させる湿気硬化型、または熱硬化性押出型、すなわち、ホットメルトのものであってもよい。
【0064】
加えて、他のポリウレタンの剥離可能な接着剤には、例えば、2〜2.6の平均官能基数を有する1以上のポリオールの混合物を過剰の有機ジイソシアネートと反応させることによって生成される末端イソシアネート基を有するプレポリマーを、2以上の平均官能数を有する1以上のポリオールの混合物と、0.65〜1.15の−N=C=Oの−OHに対する当量比で反応させることによって生成されるポリウレタンが含まれ;ここで、ポリオール混合物の平均官能基数およびプレポリマー成分としてのポリオール混合物の平均官能基数の合計は4より多く5未満である。
【0065】
ポリオール混合物には、これらに限定されるものではないが、プロピレングリコール;エチレングリコール;プロピレンオキシドもしくはエチレンオキシドのプロピレングリコールもしくはエチレングリコールへの付加重合によって生成されるポリマー;ポリエーテルジオール、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール;低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび1,4−ブタンジオール)と有機酸(例えば、アジピン酸およびフタル酸)との脱水縮合によって生成されるポリエステルグリコール;グリセロール;トリメチロールプロパン;ペンタエリスリトール;アラビトール;ソルビトール;並びに、プロピレンオキシドもしくはエチレンオキシドの、開始剤としてのこれら1以上への付加重合によって生成されるポリマー;が含まれる。上述のポリオール中でのビニルモノマー(例えば、アクリロニトリルおよびスチレン)の重合によって生成されるポリマーポリオールを用いることもできる。
【0066】
好適な有機ジイソシアネートには、これらに限定されるものではないが、芳香族ジイソシアネート、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートおよびそれらの混合物、粗製トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートおよび1,5−ナフチレンジイソシアネート;脂肪族もしくは脂環式ジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、およびキシリデンジイソシアネート;並びにそれらの二量体、三量体、およびカルボジイミド修飾化合物が含まれる。有機ジイソシアネートのうち、脂肪族および脂環式ジイソシアネートが、それらの耐候性のため、典型的に用いられる。
【0067】
さらなるポリウレタンの剥離可能な接着剤には、これらに限定されるものではないが、ポリイソシアネート化合物と、極性基をその分子骨格中に有することがなく、かつ末端ヒドロキシル基、500〜5,000の数平均分子量および分子あたり1.5〜8個のヒドロキシル基を有する低分子量オレフィン型ポリオールとを含むポリウレタンが含まれる。
【0068】
接着剤は当該技術分野において知られている任意の好適な方法によって支持膜に適用することができる。例えば、接着剤を好適な溶媒に溶解し、それを支持膜に、例えば、ホットメルト押出によって適用すること;接着剤を好適な媒体中に分散または乳化し、それをベース膜に適用すること;流延またはカレンダーロールもしくはナイフによるもの;および接着剤を剥離ライナー上に形成し、それを支持膜に転写することが挙げられる。
【0069】
支持膜と接着剤層との固定力が不十分であるとき、支持膜の表面をコロナ放電で処理することができ、またはプライマー層をそれらに適用することができる。かかるプライマー層は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、または塩素化ポリオレフィン樹脂を含むことができ、必要に応じて、充填剤を含むことができる。そのような充填剤の例には、これらに限定されるものではないが、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、焼成粘土、ベントナイト、ゼオライト、タルクおよび珪藻土が含まれる。
【0070】
物品の基体への適用前の環境および偶発的な接着から接着剤を保護する保護裏材は、これらに限定されるものではないが、セルロース、ポリエステルのポリマーおよびコポリマー、ポリウレタン、ビニルコポリマー、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、エポキシポリマー並びにそれらの組み合わせを含むが物質で構成され得る。
【0071】
物品を適用することができる基体には、これらに限定されるものではないが、ガラス、例えば、鏡、窓、レンズ、地上車両や航空機や船舶の風防;他の、輸送手段の構成要素、例えば、フェンダー、フード、ドア、バンパー;物品の側板;温室およびサンルーム;家庭用品、例えば、洗濯機および乾燥機、オーブンおよびストーブ、冷蔵庫;家具;織物;並びに防具、例えば、ヘルメットのバイザーを含むヘルメットが含まれる。一般には、組成物および物品は、ガラス、ポリマー物質、金属および木材をはじめとする物質に適用することができる。
【0072】
典型的には、物品は、例えば、窓、風防、鏡、およびレンズに用いられるような、ガラスおよび透明ポリマーに適用される。これらの物品は400nm〜700nmの波長範囲の可視光の少なくとも70%を通過させる。典型的には、物品は可視光の85%〜90%を通過させる。剥離可能な接着剤を有する物品は、基体に適用し、かつ、所望に応じて、基体を損傷または汚すことなしに、剥がすことができる。
【0073】
上述の他の特性に加えて、これらの物品は3以下、または、例えば、3から1以下の黄色度を有する(ASTM D1925)。曇りは3%以下、または、例えば、3%から1%以下の範囲である(ASTM D1300)。
【0074】
組成物および物品は基体に傷および引っ掻き耐性コーティングを提供し、および典型的には色縁によって観察可能である干渉縞を抑制する。加えて、これらの配合物の多くは環境に優しいフッ化化合物を含有する。典型的には、RがCF、C、C、またはCであるフッ化化合物が環境に優しい。
【実施例】
【0075】
実施例1
Tg=−45℃、Mn=7376およびMw=7951を有するポリ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)−3−メチルオキセタンを、Mw=965を有するウレタンアクリレートオリゴマー;フリーラジカル光開始剤IRGACURE(商標)184を含有するアリールホスフィンオキシド;およびトリプロピレングリコールジアクリレート中に50重量%分散したコロイド状シリカ粒子;と、室温で混合して液体混合物を形成する。コロイド状シリカ粒子の平均サイズは50nmである。この混合物は0.5重量%のポリ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)−3−メチルオキセタン、30.5重量%のウレタンアクリレートオリゴマー、64重量%のコロイド状シリカナノ粒子分散体および5重量%のフリーラジカル光開始剤を含む。
【0076】
この混合物を、厚さ5ミルの光学的に透明なメチルメタクリレート−ブチルアクリレートコポリマー支持膜上にドローダウンして支持膜上にコーティングを形成する。このコポリマーはMw=100,000を有する。このコーティングにBバルブを備えるキセノンパルスランプを用いてUV光を空気中で9秒間(100mJ/cm)適用し、それを硬化させる。コーティングは0.5ミル厚である。
【0077】
DSCによる決定で−43℃のTgを有する2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニルおよびメタクリル酸のコポリマーを支持膜の硬化したコーティングの側とは反対の側に適用する。この接着剤は1ミル厚の層が形成されるようにグラビアを用いて水ベースで塗布する。
【0078】
ポリエステル剥離ライナーを接着剤の上に配置し、使用前の環境から保護する。このポリエステルはジクロロ酢酸溶液中、25℃で6.75mL/gの固有粘度を有する。このポリエステルは50%エチレングリコールおよび50%プロピレングリコールのジヒドロキシアルコールから誘導されるコポリマーである。
【0079】
次に、ナノ粒子を含むこの物品のコーティングを0000ゲージのスチールウールで5秒間磨く。傷つきおよび引っ掻きはないことが期待される。また、光がその物品を通過するとき、偏光フィルターの有無に関わらず、色縁が見られないことも期待される。
【0080】
実施例2
Mn=7376、Mw=7951およびTg=−45℃を有するポリ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)−3−メチルオキセタンを、Mw=965を有するウレタンアクリレートオリゴマー、Mw=8000を有するメチルメタクリレートとブチルアクリレートのアクリルコポリマー、フリーラジカル光開始剤IRGACURE(商標)184およびIRGACURE(商標)819、並びにプロピレングリコールメチルエーテルアセテート中の25nmの平均サイズを有する30重量%アルミナナノ粒子の分散体と組み合わせることによって混合物を調製する。分子量はGPCによって決定される。フッ化ポリマーは配合物の0.5重量%を構成し、ウレタンポリマーは40重量%を構成し、アクリルコポリマーは30重量%を構成し、ナノ粒子分散体は3重量%を構成し、IRGACURE(商標)819は2重量%を構成し、およびIRGACURE(商標)184は4重量%を構成する。残部はプロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶媒である。
【0081】
この混合物を実施例1におけるように5ミル透明支持膜上にコートする。溶媒を加熱強制通気オーブンで追い出す。実施例1に記載されるようにUV光をコーティングに適用してそれを硬化させる。硬化後、実施例1と同様の配合を有する接着剤を透明支持膜のコーティングが適用されている側とは反対に適用する。
【0082】
物品の、アルミナナノ粒子を有する膜コーティングがなされている側をゲージ0000のスチールウールで10秒間磨く。傷つきおよび引っ掻きはないことが期待される。また、光がその物品を通過するとき、偏光フィルターの有無に関わらず、色縁が観察できないことも期待される。
【0083】
実施例3
アクリレート官能基およびアクリレート末端フッ化ポリエーテルを有するフッ化オリゴマー(POLYFOX(商標)PF−3320)を、Mw=1000を有するエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、Mw=10,000を有する(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレートモノマーから誘導されるアクリルコポリマー、90nmの平均サイズを有する二酸化チタンのナノ粒子、および有機溶媒メチルエチルケトンと混合する。フッ化オリゴマーは混合物の0.05重量%を構成し、アクリルコポリマーは20重量%を構成し、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートは20重量%を構成し、ナノ粒子は20重量%を構成し、および残部はその配合物を100重量%にするメチルエチルケトン有機溶媒で構成される。
【0084】
この混合物をTg=140℃のポリエチレンテレフタレートで構成される5ミル厚支持膜上にスプレーコートして支持膜上にコーティングを形成する。このコーティングを強制通気オーブン内で加熱して有機溶媒を追い出す。次に、電子ビームを6Mラドの照射量で用いて、コーティングをポリエチレンテレフタレート支持膜上で硬化させる。硬化したコーティングは2ミル厚である。実施例1の配合を有する接着剤をポリエチレンテレフタレート膜に塗布する。
【0085】
ナノ粒子を含む硬化したコーティングを0000ゲージのスチールウールで15秒間磨く。表面上に傷生成および引っ掻き生成はないことが期待される。また、光がその物品を通過するとき、偏光フィルターの有無に関わらず、光縁が見られないことも期待される。
【0086】
実施例4
トリアクリレートモノマー中に分散されているフッ化炭化水素アクリレート(EBECRYL 381)を、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、50nmの平均サイズを有するシリカのコロイド状ナノ粒子、並びにフリーラジカル光開始剤IRGACURE(商標)184と混合する。フッ化炭化水素アクリレートは組成物の2重量%を構成し、トリプロピレングリコールジアクリレートは組成物の40重量%を構成し、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートは組成物の25重量%を構成し、ナノ粒子は27重量%を構成し、およびフリーラジカル光開始剤は組成物の6重量%を構成する。
【0087】
この組成物を5ミルポリカーボネート支持膜上にローラーコートして支持膜上に1ミルコーティングを形成する。このポリカーボネート膜はDSCによる決定でTg=143℃を有する。
【0088】
キセノンランプ(100mJ/cm)を用いてコーティングを空気中で10秒間UV硬化させる。この膜コーティングは0.5ミル厚である。硬化後、2ミル厚のポリウレタン接着剤を支持膜の硬化コーティングの反対側にホットメルト押出によって適用し、物品を形成する。このポリウレタンは1g/25mmの接着力を有する。
【0089】
次に、この物品を3cm厚ガラス窓の一方の側に適用する。窓のこの物品を含む側を日光に露出する。400nm〜700nmの可視スペクトルの光の少なくとも80%が、偏光フィルターの有無に関わらず観察可能な色縁なしに、この物品を通過するものと期待される。
【0090】
実施例5
=Cを有するフルオロ脂肪族ポリマーエステル(NOVEC FC−4434)を、直鎖ポリカプロラクトンポリオールであるTone Polyol 0301、25nmの平均粒子サイズを有する脂環式エポキシ中の40%ナノシリカ(NANOPOX C620)、およびトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(CYRACURE UVI−6976)と混合する。フルオロ脂肪族ポリマーは混合物の1重量%を構成し、ナノ粒子の分散体は80重量%を構成し、ポリオールは15重量%を構成し、およびオニウム塩硬化剤は4重量%を構成する。
【0091】
この組成物を8ミル厚ポリカーボネート支持膜上にスプレーコートする。このポリカーボネート支持膜はDSCによる決定でTg=147℃を有する。
【0092】
混合物をフュージョン(Fusion)Dランプを用いて空気中、500mJ/cmで硬化させ、支持膜上に1ミルの厚みを有するコーティングを形成する。ポリウレタン接着剤を、このポリカーボネート膜の膜コーティングが適用されている側の反対側に適用する。これは通常のホットメルト法によって塗布する。この接着剤は0.5ミル厚であり、50g/25mmの接着力を有する。
【0093】
この物品を5cm厚のガラス窓上に配置する。この物品を有する側を直射日光に露出し、可視光の85%〜90%がこの物品および窓を通過するものと期待される。色縁は見られないものと期待される。
【0094】
次に、この物品の表面を0000ゲージスチールウールで5秒間磨く。傷および引っ掻きはないものと期待される。
【0095】
実施例6
Tg=−45℃、Mn=7376およびMw=7951を有するポリ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)−3−メチルオキセタンを、Mw=965を有するウレタンアクリレートオリゴマー;フリーラジカル光開始剤IRGACURE(商標)184を含むアリールホスフィンオキシド;並びにトリプロピレングリコールジアクリレート中に50重量%分散されているコロイド状シリカ粒子;と室温で混合し、液体混合物を形成する。コロイド状シリカ粒子の平均サイズは50nmである。この混合物は0.5重量%のポリ−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)−3−メチルオキセタン、30.5重量%のウレタンアクリレートオリゴマー、64重量%のコロイド状シリカナノ粒子、および5重量%のフリーラジカル光開始剤を含む。
【0096】
この混合物を厚さ5ミルの光学的に透明なメチルメタクリレート−ブチルアクリレートコポリマー支持膜上にドローダウンし、支持膜上にコーティングを形成する。このコポリマーはMw=100,000を有する。Bバルブを備えるキセノンパルスランプを用いてUV光を空気中で9秒間(100mJ/cm)コーティングに適用してそれを硬化させる。このコーティングは0.5ミル厚である。
【0097】
直鎖ポリシロキサンポリマーとTg=−90℃を有するシリケート粘着性樹脂(MQ樹脂)とから作られるシリコーン感圧性接着剤を転写コーティングにより支持膜の硬化コーティングの側とは反対側に適用する。接着剤層は1ミル厚である。
【0098】
ポリエステルライナーを接着剤層の上に配置し、使用前の環境から保護する。このポリエステルはジクロロ酢酸中、25℃で6.75mL/gの固有粘度を有する。このポリエステルは50%エチレングリコールおよび50%プロピレングリコールのジヒドロキシアルコールから誘導されるコポリマーである。
【0099】
次に、この物品を実験室の外部に持ち出し、ポリエステルライナーを除去する。その後、その物品をピックアップトラックの清浄なフロントガラス上に貼付する。次いで、その物品の表面を0000ゲージウールで10秒間磨く。傷および引っ掻きがないことが期待される。また、偏光フィルターの有無に関わらず、その物品が貼付されているフロントガラスを通して色縁が見えないことが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を含む物品であって、該組成物はナノ粒子、1以上のフッ化化合物、および該組成物を硬化させる1以上の化合物を含み、該組成物は支持膜の第1面に隣接し、並びに接着剤が該支持膜の第2面に隣接する物品。
【請求項2】
フッ化化合物が、1以上のフッ化ポリエーテル;フルオロカーボン(メタ)アクリレート;フルオロ脂肪族ポリマーエステル;および、フッ化ポリエーテルが組み込まれるポリウレタン;から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ナノ粒子が表面処理されたナノ粒子、ニートのナノ粒子およびそれらの混合物の、分散体から選択される請求項1記載の物品。
【請求項4】
支持膜が1以上のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル、アクリロニトリル−スチレンポリマー、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリルアクリルスチレンポリマー、アクリロニトリルエチレン−プロピレンターポリマースチレンポリマー、ポリウレタン、ポリブチラールポリマー、ポリ−4−メチルペンテン−1ポリマー、ポリブテン−1ポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)ポリマー、フッ化ポリビニルポリマー、ポリカーボネート、コポリエステルカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリエステル、グリコール化ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル、およびポリアリレートから選択される請求項1記載の物品。
【請求項5】
接着剤が永久接着剤、半永久接着剤、再配置可能な接着剤、剥離可能な接着剤、感圧性接着剤および冷凍分野の接着剤から選択される請求項1記載の物品。
【請求項6】
組成物を含む物品であって、該組成物はナノ粒子、1以上のフッ化化合物、および該組成物を硬化させる1以上の化合物を含み、該組成物は支持膜の第1面に隣接し、並びに接着剤が該支持膜の第2面に隣接し、該接着剤は剥離可能な接着剤である物品。
【請求項7】
フッ化化合物が1以上のフッ化ポリエーテルから選択される請求項6記載の物品。
【請求項8】
a)組成物を含む物品であって、該組成物はナノ粒子および1以上のフッ化化合物、および該組成物を硬化させる1以上の化合物を含み、該組成物は支持膜の第1面に隣接し、および接着剤が該支持膜の第2面に隣接する物品を提供すること;並びに
b)該物品を基体に適用して該基体を保護し、および干渉縞の形成を抑制すること、
を含む方法。
【請求項9】
基体がガラスおよび透明ポリマーから選択される請求項8記載の方法。
【請求項10】
基体が窓、風防、レンズまたは鏡である請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2007−23270(P2007−23270A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−165744(P2006−165744)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】