説明

改質こんにゃく粉、それを用いたゲル化物及び食品

【課題】高いゲル強度を有し、pHの低いゲル化物を容易に得ることができる改質こんにゃく粉、それを用いたゲル化物及び食品を提供する。
【解決手段】こんにゃく粒の膨潤を抑制した状態で、こんにゃく粉がアルカリ溶液とともに加熱処理されて改質された改質こんにゃく粉であって、水に分散して分散液とした後に加熱処理又は撹拌処理されるとゲル化するように調製されている改質こんにゃく粉である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いゲル強度を有し、pHの低いゲル化物を容易に製造することができる改質こんにゃく粉、それを用いたゲル化物及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
こんにゃくは、カロリーが低く、食物繊維が豊富であり、ダイエット食品としても人気の食品である。こんにゃく粉をゲル化させゲル化物を製造する方法としては、例えば、(1)こんにゃく粉を水に分散させ、膨潤させた後にアルカリを添加し、さらにその後、加熱処理を行い、ゲル化させる方法、(2)こんにゃく粉と水と弱アルカリ性の凝固剤の混合物からなり、加熱によりゲル化させる方法(特許文献1)、及び(3)微粉化コンニャク粉を多糖類で造粒したコンニャク素材とアルカリ性物質との適当含水混合物を、温度条件として下限は該混合物が凍結しない程度、上限は50℃未満に調整し、放置処理後加熱又は乾燥することにより水難溶性ゲル又は水難膨潤性になる加工物を得、該化工物を他の物質と混合し、それを加熱又は冷凍又は乾燥することにより多種多様な用途のある水難溶化食品又は水難膨潤化食品として取得する方法(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−69948号
【特許文献2】特開2008−237173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、(1)の方法については、こんにゃくの主成分であるグルコマンナンが、官能基としてアセチル基を含んでおり、こんにゃく粉を膨潤させた溶液をアルカリ処理することにより脱アセチル化を生じさせゲル化させているので、アルカリの添加量を多くする必要がある。このため、製造されたこんにゃくのpHが高くなってしまい、こんにゃく臭が強くなり、さらにメイラード反応により、こんにゃくの色調が褐変し、苦味を有するという問題がある。アルカリによる変性は、こんにゃくそのもののみに限らず、他の素材をこんにゃくに練りこんだ場合も同様であり、その風味が損なわれてしまう。(2)の方法については、中性のゲル化物が得られるものの、そのゲル強度は十分ではないという問題がある。また、(1)の方法においても(2)の方法においても酸性のこんにゃくは作製できないという問題がある。(3)の方法については、得られるこんにゃくのpHは高くなるため、製品の風味が損なわれてしまう。また、製造時に50℃以下で処理しなければならない、他の多糖類と造粒しなければならないなど、製造工程が煩雑であるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、高いゲル強度を有し、pHの低いゲル化物を容易に得ることができる改質こんにゃく粉、それを用いたゲル化物及び食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、こんにゃく粒の膨潤を抑制した状態で、こんにゃく粉がアルカリ溶液とともに加熱処理されて改質された改質こんにゃく粉であって、水に分散して分散液とした後に加熱処理又は撹拌処理されるとゲル化するように調製されることにより、高いゲル強度を有し、かつpHの低いゲル化物を容易に得ることができることを見出した。すなわち、本発明は、こんにゃく粒の膨潤を抑制した状態で、こんにゃく粉がアルカリ溶液とともに加熱処理されて改質された改質こんにゃく粉であって、水に分散して分散液とした後に加熱処理又は撹拌処理されるとゲル化するように調製されていることを特徴とする改質こんにゃく粉である。また、本発明は、前記改質こんにゃく粉をゲル化させたことを特徴とするゲル化物である。さらに、本発明は、前記改質こんにゃく粉が用いられた食品である。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、高いゲル強度を有し、pHの低いゲル化物を容易に得ることができる改質こんにゃく粉、それを用いたゲル化物及び食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る改質こんにゃく粉は、こんにゃく粉の膨潤を抑制した状態で、こんにゃく粉がアルカリ溶液とともに加熱処理(以下、第1加熱処理という場合がある。)することにより得ることができる。こんにゃく粉は、グルコマンナンを主成分とする粉状物を用いることができる。こんにゃく粉の膨潤を抑制した状態で加熱処理するには、例えば、少量のアルカリ溶液をこんにゃく粉に噴霧したり、こんにゃく粉の良溶媒と貧溶媒の混合溶媒にこんにゃく粉を分散させた状態で加熱処理すればよい。特に、この状態で少なくとも一部のこんにゃく粉の粒が目視可能であることが好ましい。少量のアルカリ溶液をこんにゃく粉に噴霧する場合は、こんにゃく粉100重量部に対して、アルカリ溶液を1〜1000重量部とするのが好ましく、1〜100重量部とするのがさらに好ましい。良溶媒としては、例えば、水が挙げられる。貧溶媒としては、例えば、アルコールが挙げられる。アルコールは、具体的には、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、及びブチレングリコールが挙げられ、エタノールが好ましい。良溶媒と貧溶媒との重量比は、1:0.01〜1:1000であることが好ましく、1:0.1〜1:100であることがさらに好ましい。さらに膨潤を抑制するために、これら溶媒に、DE=10以下のデキストリンを添加してもよい。
【0009】
こんにゃく粉に添加するアルカリ溶液に用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、クエン酸3ナトリウム、リン酸2カリウム、リン酸3カリウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムが挙げられ、水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ溶液のpHは、アルカリ溶液が添加されたこんにゃく粉を含む溶液のpHが規定値になれば特に限定されないが、13.00〜13.55であることが好ましく、13.30〜13.50であることがさらに好ましい。こんにゃく粉の良溶媒と貧溶媒の混合溶媒にこんにゃく粉を分散させた状態で加熱処理する場合において、アルカリ溶液が添加されたこんにゃく粉を含む溶液のpHは、7.0〜11.0であることが好ましく、7.1〜10.7であることがさらに好ましい。pHが低すぎると、こんにゃく粉のアセチル基の遊離が不十分となり、加熱処理又は撹拌処理しても溶液のままである。pHが高すぎると、加熱処理又は撹拌処理した際に不溶化したこんにゃく粉同士が結着せずゲル化しない。
【0010】
第1加熱処理の加熱温度は40〜150℃であることが好ましく、60〜150℃であることがさらに好ましい。加熱時間は、5分〜24時間であることが好ましく、5分〜12時間であることがさらに好ましい。加熱温度や時間がこれらの範囲外であると、改質こんにゃく粉の着色、分解、及び不溶化が生じることがあり、好ましくない。第1加熱処理後、乾燥を行ってもよい。これにより、粉体状の改質こんにゃく粉を得ることができる。
【0011】
本発明に係る改質こんにゃく粉は、水に分散して分散液とした後に加熱処理又は撹拌処理されるとゲル化する。分散液を加熱処理(以下、第2加熱処理という場合がある。)又は撹拌処理されるとゲル化するようにこんにゃく粉を改質するには、こんにゃく粉に添加するアルカリ溶液の量やpH、アルカリ溶液が添加されたこんにゃく粉含有溶液のpH、及び第1加熱処理の際の加熱温度や加熱時間などを調整すればよい。
【0012】
分散液のpHは、7.1〜10.0であることが好ましく、7.2〜9.5であることがさらに好ましい。本発明に係る改質こんにゃく粉は、前述のように改質されているので、このような低いpHであってもゲル化する。一般的なこんにゃくの製造方法である、こんにゃく粉を水に分散させ、膨潤させた後にアルカリを添加し、さらにその後、加熱処理を行い、ゲル化させる方法では、このような低いpHではゲル化しない。分散液のpHが前記範囲より低いと、改質こんにゃく粉がゲル化しないでゾル状態となることがあり、高いと改質こんにゃく粉が膨潤しないで粉体状態となることがあり好ましくない。
【0013】
第2加熱処理の加熱温度は40〜150℃であることが好ましく、60〜130℃であることがさらに好ましい。加熱時間は5分〜24時間とすることができる。改質こんにゃく粉1重量部に対して、30〜1000重量部の水に分散させた状態で加熱処理することが好ましい。
【0014】
撹拌処理は通常の撹拌に使用される器具を用いた手撹拌による方法、また、撹拌処理に用いる撹拌機としては、高速撹拌機(TKホモミキサー、バーミックス、及びアイコーミキサーなど)が挙げられる。撹拌速度は、50〜20000rpmであることが好ましく、200〜10000rpmであることがさらに好ましい。撹拌処理は、熱劣化しやすい風味を有する場合やテーブルサイドで用時調整したい場合など、加熱処理ができない場合において特に有効である。
【0015】
分散液が第2加熱処理又は撹拌処理されて得られるゲル化物のpHは、10以下であることが好ましく、8.5以下であることがさらに好ましく、8.0以下であることが特に好ましい。一般的なこんにゃくの製造方法においては、高いpHにしないとゲル化しないので、pH10以下のゲル化物を得るのは困難である。
【0016】
本発明に係るゲル化物は、本発明に係る改質こんにゃく粉をゲル化させたものであれば制限されない。例えば、改質こんにゃく粉を水に分散させてその分散液を第2加熱撹拌処理又は撹拌処理してゲル化させたものでもよいし、水に他の成分を加えてゲル化させてもよい。他の成分としては、例えば、酸、アルカリ、水溶性多糖類、糖類、ゲル化剤、果汁、牛乳、及び食塩が挙げられる。酸としては、クエン酸、酢酸、リン酸、フィチン酸、リンゴ酸、乳酸、及びGDLなどが挙げられる。アルカリとしては、炭酸ナトリウム、重曹、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸2カリウム、及びリン酸3カリウムなどが挙げられる。水溶性多糖類としては、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、タマリンドガム、サイリウム、及びCMCなどが挙げられる。糖類としては、ショ糖、マルトース、デキストリン、果糖、ブドウ糖、乳糖、トレハロース、ソルビトール、エリスリトール、パラチノース、マンニトール、及びキシリトールなどが挙げられる。ゲル化剤としては、カラギーナン、キサンタン、寒天、ジェランガム、ゼラチン、カードラン、及び澱粉などが挙げられる。他の成分を加えてゲル化させることにより、粘弾性や耐熱性などの物理物性や食感の異なったゲル化物を得ることができる。特に、本発明に係る改質こんにゃく粉を用いると、低いpHであってもゲル化させることができるので、ゲル化剤等を組み合わせて酸性のゲル化物も製造することができる。
【0017】
本発明に係る食品としては、例えば、蒲鉾、はんぺん、及びさつま揚げなどの魚肉製品、ゼリー状食品、ゼリー状調味料、ドレッシング、マヨネーズ風調味料、飲料、洋菓子のスポンジ生地、レトルト対応のあんかけ、咀嚼・嚥下食品、ゼリー状経腸栄養剤、ハンバーグ、ミートボール、餃子、カレーパン等の具材(フィリング)、肉まん等の具材、ナタデココ状食品、パン、麺類、焼き菓子、生菓子、及びたれなどが挙げられる。本発明に係る食品に含まれる改質こんにゃく粉は、食品の種類等にもよるが、例えば、0.01〜10重量%とすることができる。
【実施例】
【0018】
次に、本発明に係る改質こんにゃく粉の実施例について説明する。以下、特に説明がない限り、部は重量部を示す。
【0019】
(実施例1乃至6)
まず、こんにゃく精粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)100部に対して、水酸化ナトリウム0.4部、エタノール15部、及びイオン交換水15部からなるアルカリ溶液を添加した。アルカリ溶液の添加後、85℃で3時間、加熱処理して、実施例1に係る改質こんにゃく粉1を得た。水酸化ナトリウム0.4部の代わりに、それぞれ1.0部、1.2部、1.5部、2.0部、及び2.4部とした以外は同様にして、実施例2乃至6に係る改質こんにゃく粉2乃至6を得た。添加したアルカリ溶液のpH(以下、pHαという)を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
(実験例1乃至6)
表2に示した3部の改質こんにゃく粉1乃至6をイオン交換水100部に分散させ、分散液のpHを確認した(pHγ)。この分散液を袋に充填して、1時間沸騰水中に入れて実施例1に係るゲル化物を得た。製造したゲル化物のpHを確認した(pHδ)。
【0022】
ゲル化の評価(*1)は、次の基準で目視により行った。◎:ゲル化した。○:概ねゲル化した。△:一部ゲル化しなかった。×:ゲル化しなかった。結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
実験例1乃至6より、本発明に係る改質こんにゃく粉1乃至6は、水に分散させた分散液を加熱処理することによりゲル化させることができることが分かる。
【0025】
(実験例7)
改質こんにゃく粉3を3部、イオン交換水100部に分散させ、分散液のpHを確認した(pHγ)。この分散液を袋に充填して、1時間沸騰させてゲル化させ、実験例7に係るゲル化物を製造した。製造したゲル化物(ゲル化していないものを含む)のpHを確認した(pHδ)。結果を表3に示す。
【0026】
(比較実験例1)
こんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を3部、水酸化ナトリウム0.036部(改質こんにゃく粉3と同量のNaOH)を含むイオン交換水100部に分散させ、分散液のpHを確認した(pHγ)。この分散液を1時間沸騰させ、ゲル化を試み、比較実験例1に係るゲル化物を製造した。製造したゲル化物(ゲル化していないものを含む)のpHを確認した(pHδ)。結果を表3に示す。
【0027】
(比較実験例2)
こんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を3部、イオン交換水100部に分散させ、分散液のpH(pHγ)が8.25(実験例7と同じ)となるように水酸化ナトリウムを添加し、1時間沸騰させ、ゲル化を試み、比較実験例2に係るゲル化物を製造した。製造したゲル化物(ゲル化していないものを含む)のpHを確認した(pHδ)。また、実験例1と同様にゲル化の評価を行った。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
実験例7並びに比較実験例1及び2より、本発明に係る改質こんにゃく粉は、水に分散せて加熱処理すればゲル化することが分かる。一方、通常のこんにゃく粉を用いた場合は、ゲル化せず、中性のこんにゃくは得られないことが分かる。
【0030】
(実験例8)
改質こんにゃく粉3を1部、イオン交換水100部に分散させ、ハンドミキサー(バーミックス;(株)チェリーテラス製)を用いて3分間激しく撹拌してゲル化を試みた。ゲル化の評価は実験例1と同様に行った。また、得られたゲル化物(撹拌物)を10倍量のイオン交換水へ入れ、5分間沸騰させ、溶解するか否の保形性を評価した。
【0031】
ゲル化物の保形性の評価(*2)は、次の基準で目視により行った。○:溶解しなかった。×:溶解した。結果を表4に示す。
【0032】
(実験例9)
改質こんにゃく粉3を1部用いる代わりに、2部用いた以外は、実験例8と同様に行った。結果を表4に示す。
【0033】
(比較実験例3)
改質こんにゃく粉3を用いる代わりに、こんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を用いた以外は、実験例8と同様に行った。結果を表4に示す。
【0034】
(比較実験例4)
改質こんにゃく粉3を1部用いる代わりに、こんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を2部用いた以外は実験例8と同様に行った。結果を表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
実験例8及び9並びに比較実験例3及び4より、本発明に係る改質こんにゃく粉を用いた場合、撹拌によってもゲル化し、水に入れて加熱しても溶解せず、熱不可逆性を有するゲル化物が得られることが分かる。一方、未処理のこんにゃく粉を用いた場合、ゲル化しないことが分かる。
【0037】
(比較実験例5)
特開平11−69948号に記載の製造方法を用いてゲル化物を製造した。具体的には、こんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を3%でイオン交換水に分散して、膨潤させた後に混練し、弱アルカリ溶液を9%添加し、水溶液のpHを確認した(pHγ)。その後、2時間沸騰加熱することにより比較実験例5に係るゲル化物を製造した。なお、弱アルカリ溶液は10%炭酸ナトリウム溶液にリン酸水素2ナトリウムとクエン酸(1:1混合物)を添加することによりpHを8.5に調整したものを用いた。また、製造したゲル化物のpHを確認した(pHδ)。
【0038】
得られたゲル化物はレオメーター(SUN REOMETER CR−100;サンレオテック製)を用いて破断強度(*3)を測定した。進入速度は20mm/分、測定温度は10℃の条件で行った。結果を表5に示す。
【0039】
(実験例10)
3部の改質こんにゃく粉3をイオン交換水100部に分散させ、分散液のpHを確認した(pHγ)。その後混練し、袋に充填して85℃で1時間加熱して、実験例10に係るゲル化物を製造した。また、製造したゲル化物のpH(pHδ)及び破断強度を比較実験例5と同様に確認した。結果を表5に示す。
【0040】
(実験例11)
3部の改質こんにゃく粉3の代わりに、2.85部の改質こんにゃく粉3、及びカラギーナン(イナゲルE−150;伊那食品工業(株)製)0.15部を用いた以外は、実験例10と同様に行った。また、製造したゲル化物のpH(pHδ)及び破断強度を比較実験例5と同様に確認した。結果を表5に示す。
【0041】
【表5】

【0042】
実験例10及び11並びに比較実験例5より、特開平11−69948号に記載の製造方法に基づいてゲル化物を製造するとゲル強度が低いことが分かる。実験例10に係るゲル化物は、本発明に係る改質こんにゃく粉を用いているので、比較実験例5に係るゲル化物よりもゲル強度が高いゲル化物であることが分かる。また、実験例11より、カラギーナンと併用することでさらにゲル強度を高くすることができることが分かる。
【0043】
(比較実験例6)
特開平11−69948号に記載の製造方法を用いてこんにゃくを製造した。具体的には、精製こんにゃく粉(「レオレックスRS」;清水化学製)を3%と、ショ糖15%を粉体混合し、50%ブドウ果汁にクエン酸を1.5%溶解した溶液に分散して、膨潤させた後に混練し、弱アルカリ溶液を9%添加して、水溶液のpHを確認した(pHγ)。その後、2時間沸騰加熱させることにより比較実験例6に係るゲル化物の製造を試みた。なお、弱アルカリ溶液は10%炭酸ナトリウム溶液にリン酸水素2ナトリウムとクエン酸(1:1混合物)を添加することによりpHを8.5に調整したものを用いた。また、製造したゲル化物のpHを確認した(pHδ)。さらに、ゲル化の評価を実験例1と同様に行った。結果を表6に示す。
【0044】
(実験例12)
2.85部の改質こんにゃく粉3とカラギーナン(イナゲルE−150;伊那食品工業(株)製)0.15部をショ糖15部と一緒に粉体混合し、50%ブドウ果汁にクエン酸を0.2%溶解した溶液82部に分散させ、分散液のpHを確認した(pHγ)。その後混練し、袋に充填して85℃で1時間加熱して、実施例12に係るゲル化物を製造した。また、製造したゲル化物のpHを確認した(pHδ)。さらに、ゲル化の評価を実験例1と同様に行った。結果を表6に示す。
【0045】
【表6】

【0046】
比較実験例6より、特開平11−69948号に係る製造方法に基づいてゲル化物の製造を試みると、酸性条件下ではゾルのままでゲル化するものは製造できないことが分かる。一方、実験例12においては、本発明に係る改質こんにゃく粉を用いているので、酸性条件下でもしっかりとしたゲル化物を製造できることが分かる。このゲル化物は、水に入れた後に沸騰5分間、加熱処理をしても溶解することは無く、熱不可逆性を有するゲル化物であった。
【0047】
(実施例7乃至9、比較例1)
こんにゃく精粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)100部に、水酸化ナトリウム0.6部、エタノール180部、及び水270部からなるアルカリ溶液を添加した。アルカリ溶液が添加された混合液のpH(pHβ)を測定した。アルカリ溶液の添加後、80℃で1時間、加熱処理した後に、ろ過し、85℃にてろ過物を乾燥させ、実施例7に係る改質こんにゃく粉7を得た。水酸化ナトリウム0.6部の代わりに、それぞれ0.9部、及び1.2部とした以外は同様にして、実施例8及び9に係る改質こんにゃく粉8及び9を得た。さらに水酸化ナトリウムを添加しない以外は同様にして、比較例1に係る改質こんにゃく粉10を得た。前記アルカリ溶液のpH(pHα)を表7に示す。
【0048】
【表7】

【0049】
(実験例13乃至15、比較実験例7)
表8に示した改質こんにゃく粉3部をイオン交換水100部に分散させ、分散液のpHを確認した(pHγ)。この水溶液を袋に充填して、85℃で1時間加熱処理してゲル化物の製造を試みた。ゲル化の評価は実験例1と同様に行った。結果を表8に示す。
【0050】
【表8】

【0051】
実験例13乃至15及び比較実験例7より、アルカリ溶液とともに加熱処理して改質こんにゃく粉を製造しないと、中性でゲル化するこんにゃくを製造できないことが分かる。
【0052】
(実施例10乃至18)
こんにゃく精粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)100部に水酸化ナトリウム1.2部、エタノール15部、及びイオン交換水15部からなるアルカリ溶液を添加した。アルカリ溶液の添加後、120℃で5分間、加熱処理することで実施例10に係る改質こんにゃく粉11を得た。表9に示す加熱処理条件とした以外は改質こんにゃく粉11と同様にして、実施例11乃至18に係る改質こんにゃく粉12乃至19を得た。
【0053】
【表9】

【0054】
(実験例16乃至24)
表10に示した改質こんにゃく粉3部をイオン交換水100部に分散させ、分散液のpHを確認した(pHγ)。この分散液を袋に充填して、1時間沸騰させてゲル化を試み、製造したゲル化物のpHを確認した(pHδ)。得られたゲル化物はレオメーター(SUN REOMETER CR−100;サンレオテック製)を用いて破断強度(*3)を測定した。進入速度は20mm/分、測定温度は10℃の条件で行った。結果を表10に示す。
【0055】
【表10】

【0056】
実験例16乃至24より、種々の加熱処理条件により改質こんにゃく粉を製造しても、高いゲル強度を有するゲル化物が得られることが分かる。
【0057】
(実験例25)
3部の改質こんにゃく粉3を20℃のイオン交換水100部に分散し、スリーワンモーターを用いて50rpmで5分間撹拌して実験例26に係るゲル化物を得た。これを4℃で1晩静置後、ゲル化の状態(*4)を目視により測定した。評価は、次のように行った。◎:強くゲル化している。○:ゲル化している。△:弱く保形している。×:ゲル化していない。結果を表11に示す。
【0058】
(実験例26及び27)
スリーワンモーターを用いて50rpmで撹拌する代わりに、200rpm及び600rpmでそれぞれ撹拌する以外は、実験例25と同様にして、実験例26及び27に係るゲル化物を得て、同様にゲルの状態を測定した。結果を表11に示す。
【0059】
(比較実験例8乃至10)
改質こんにゃく粉11の代わりに、こんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を用いた以外は実験例25乃至27と同様にして、比較実験例8乃至10に係るゲル化物を得て、同様にゲルの状態を測定した。結果を表11に示す。
【0060】
【表11】

【0061】
実験例25乃至27及び比較実験例8乃至10より、本発明に係る改質こんにゃく粉を用いると、加熱処理しなくても撹拌処理のみでゲル化させることができることが分かる。
【0062】
(実験例28)
3部の改質こんにゃく粉3を20℃のイオン交換水100部に分散し、スリーワンモーターを用いて50rpmで5分間撹拌し、85℃で1時間加熱処理して実験例28に係るゲル化物を得た。これを4℃で1晩静置後、ゲル化の状態(*4)を実験例25と同様に測定した。結果を表12に示す。
【0063】
(実験例29及び30)
スリーワンモーターを用いて50rpmで撹拌する代わりに、200rpm及び600rpmでそれぞれ撹拌する以外は、実験例28と同様にして、実験例29及び30に係るゲル化物を得て、同様にゲルの状態を測定した。結果を表12に示す。
【0064】
(比較実験例11乃至13)
改質こんにゃく粉3の代わりに、こんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を用いた以外は実験例28乃至30と同様にして、比較実験例11乃至13に係るゲル化物を得て、同様にゲルの状態を測定した。結果を表12に示す。
【0065】
【表12】

【0066】
実験例28乃至30及び比較実験例11乃至13より、本発明に係る改質こんにゃく粉を用いると、撹拌処理及び加熱処理でゲル化させることができることが分かる。
【0067】
(実験例31)
3部の改質こんにゃく粉3を20℃のイオン交換水100部に分散し、TKホモミキサーを用いて2000rpmで5分間撹拌し、85℃で1時間加熱処理して実験例31に係るゲル化物を得た。これを4℃で1晩静置後、レオメーター(SUN REOMETER CR−100;サンレオテック製)を用いて破断強度(*3)を測定した。進入速度は20mm/分、測定温度は10℃の条件で行った。結果を表13に示す。
【0068】
(実験例32及び33)
2000rpmで撹拌する代わりに、それぞれ5000rpm及び10000rpmで撹拌した以外は実験例31と同様にして、実験例32及び33に係るゲル化物を得て、同様にゲルの破断強度を測定した。結果を表13に示す。
【0069】
【表13】

【0070】
実験例31乃至33より、本発明に係る改質こんにゃく粉を用いると、加熱処理しなくても撹拌処理のみでゲル化させることができることが分かる。
【0071】
(実験例34)
こんにゃく精粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)100部に、水酸化ナトリウム1.2部、及び水40部のアルカリ溶液をままこにならぬように留意しながら噴霧した。アルカリ溶液の噴霧後は、粉体状態であった。このアルカリ化こんにゃく精粉を、水分を12%に調整するために送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze;ISUZU社製)させ、その後、密閉状態にて85℃で2時間、加熱処理し改質こんにゃく粉20を得た。
【0072】
3部の改質こんにゃく粉20をイオン交換水100部に分散させ、分散液のpHを確認した(pHγ)。この水溶液を袋に充填して、85℃で1時間加熱処理してゲル化物の製造を試みた。ゲル化の評価は実験例1と同様に行った。結果は、pHγ=8.76、ゲル化:◎であった。実験例34より、貧溶媒を使用せずに、こんにゃく粉に少量のアルカリ溶液を噴霧しても、改質こんにゃく粉を作製できることが分かる。
【0073】
(実験例35)ナタデココ状食品
2部の改質こんにゃく粉3をイオン交換水100部に分散させ混練後、袋に充填して85℃で1時間加熱して、ゲル化物を製造した。このこんにゃくを1cm角の立方体にカットした後に、0.3%クエン酸、0.2%クエン酸ナトリウム、15%ショ糖のシロップとともに袋へ充填し、85℃で30分間ボイル殺菌を行った。この袋を−20℃の冷凍庫にて1晩冷凍し、翌日、解凍し、実験例35に係るナタデココ状食品を得た。このナタデココ状食品の食感は特異で、弾力のある繊維質のようであり、ナタデココに似たものであった。
【0074】
(実験例36)ナタデココ状食品
改質こんにゃく粉3の代わりに、改質こんにゃく粉20を用いた以外は実験例35と同様にして、実験例36に係るナタデココ状食品を得た。このナタデココ状食品の食感は特異で、弾力のある繊維質のようであり、ナタデココに似たものであった。
【0075】
(実験例37)ゼリー状食品
2部の改質こんにゃく粉3をイオン交換水100部に分散させ混練後、袋に充填して85℃で1時間加熱して、ゲル化物を製造した。このゲル化物を1cm角の立方体にカットした後に、0.5%寒天(伊那寒天S−7;伊那食品工業(株)製)、15%ショ糖、0.3%クエン酸、0.2%クエン酸ナトリウムを加熱溶解した溶液へ投入し、ゼリー容器へ充填後、85℃で30分間殺菌を行った。これを冷却して実験例37に係るゼリー状食品を得た。このゼリー状食品の周りは瑞々しいゼリーで、中に弾力のあるこんにゃくゼリーを有したものとなった。
【0076】
(実験例38)ゼリー状食品
改質こんにゃく粉3の代わりに、改質こんにゃく粉20を用いた以外は実験例37と同様にして、実験例38に係るゼリー状食品を得た。このゼリー状食品の周りは瑞々しいゼリーで、中に弾力のあるこんにゃくゼリーを有したものとなった。
【0077】
(実験例39、比較実験例14)牛乳ゲル化物
1部の改質こんにゃく粉3、15部のグラニュー糖、及び0.6部のリンゴ酸を粉体混合させたものを100部の牛乳(4℃)に分散し、5分後に、粘調な実験例39に係る牛乳ゲル化物を得た。改質こんにゃく粉3の代わりに、こんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を用いた以外は実験例39と同様にして、比較実験例14に係る牛乳ゾル化物を得た。比較実験例14に係る牛乳ゾル化物は糊状感が強いのに対して、実験例39に係る牛乳ゲル化物はさっぱりとした食感に仕上がった。
【0078】
(実験例40)ヨーグルト状食品
実験例39に係る牛乳ゲル化物をバーミックス;チェリーテラス製を用いて3分間、撹拌して実験例40に係るヨーグルト状食品を得た。実験例40に係るヨーグルト状食品は滑らかで、保形性も有していた。
【0079】
(実験例41乃至47)蒲鉾
改質こんにゃく粉3、7、又は20を水に膨潤させ、そこにすり身及び氷水を添加して、フードミキサー(ブラウン マルチクイック プロファッショナル;プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社製)で1分間擂潰した。さらに、それに食塩及び調味料を添加して、フードミキサー(同上)で1分間擂潰した。その後、容器に充填し、4℃で1晩坐らせた。その後、85℃で60分間蒸すことによって実験例41乃至47に係る蒲鉾を得た。それぞれに用いられた原料及び配合比(質量%)は、表14に示す。実験例41乃至47に係る蒲鉾は、いずれもつるっとした新食感の蒲鉾であった。
【0080】
【表14】

【0081】
(実験例48乃至53)包餡機対応こんにゃく
改質こんにゃく粉3、7、又は20を水に膨潤させ、フードミキサー(ブラウン マルチクイック プロファッショナル;プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社製)で1分間撹拌した。その後、包餡機(火星人CN500;レオン自動機株式会社製)にて団子状に成型し、0.15%水酸化カルシウム溶液に2時間浸漬して、最後に85℃で60分加熱することにより実験例48乃至53に係る包餡機対応こんにゃくを得た。それぞれに用いられた原料及び配合比(質量%)は、表15に示す。なお、キサンタンは、CPケルコ製、カードランは、武田キリン食品製のものを用いた。実験例48乃至53に係る包餡機対応こんにゃくは、いずれも成型性及び食感の優れた包餡機対応こんにゃくであった。
【0082】
【表15】

【0083】
(実験例54乃至62)低カロリーソーセージ
改質こんにゃく粉1、3、7、又は20を水に膨潤させ、フードミキサー(ブラウン マルチクイック プロファッショナル;プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社製)で30秒間撹拌した。その後、表16に記載の残りの原料をそこに混合し、さらにフードミキサー(同上)で撹拌した。その後、ケーシングに充填し、70℃で30分間加熱して実験例54乃至62に係る低カロリーソーセージを得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(g)は、表16に示す。実験例54乃至62に係る低カロリーソーセージは、いずれも保型性、食感、及びドリップに優れていた。
【0084】
【表16】

【0085】
(実験例62乃至67)ゼリー状調味料
水に改質こんにゃく粉1及びキサンタンガム(ケルトロール;CPケルコ社製)を添加し分散させた。これに残りの成分を加え、市販の泡立器(ホテイ印)を使用して2分間撹拌し実験例62乃至67に係るゼリー状調味料を500mLビーカーに300g得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(%)は、表17に示す。
【0086】
【表17】

【0087】
(比較実験例15乃至21)ゼリー状調味料
改質こんにゃく粉1の代わりに、こんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を使用、またはキサンタンガムを単独で使用した以外は実験例62乃至67と同様にして、比較実験例15乃至21に係るゼリー状調味料を500mLビーカーに300g得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(%)は、表18に示す。
【0088】
【表18】

【0089】
撹拌終了後20℃で10分間放置し、放置後のゲル形成性とゲル強度、粘弾性、及び離水を測定した。耐熱性は121℃で20分間殺菌しゲルの状態を調べ殺菌後もゲルを形成しているものを○とした。
【0090】
ゲル形成性の評価は、次の基準で目視にて観察し○、×で示した。○:ゲルを形成している。×:ゲルを形成していない。
【0091】
ゲル強度(g/cm)の評価は、ゲルを形成したものについて、作製したゲルの強度をテクスチャーアナライザー(英弘精機社製,測定温度;20℃、プランジャー断面積;1cmの円柱状、進入速度;20mm/分)を用いて測定し、ゲルが破壊した時点の強度をゲル強度とした。
【0092】
離水の評価は、ゲルを形成したものについて、作製した組成物の離水をビーカーに注ぎ入れ重量を測ることにより離水量(g)を測定した。
【0093】
粘弾性の評価は、ゲルを形成したものについて、破断歪を測定することにより求めた。破断歪はゲル強度測定において、破断した時点における歪を式(破断歪=破断したときのプランジャーの進入距離(mm)/ゲル高さ(mm))により求めた。これらの結果を表19及び20に示す。
【0094】
【表19】

【0095】
【表20】

【0096】
実験例62乃至67及び比較実験例15乃至21より、改質こんにゃく粉を使用すると用時調整ができるゼリー状調味料を作製することができたが、通常のこんにゃく粉を使用してもゲル化せずゼリー状調味料を作製することはできなかったことが分かる。また、改質こんにゃく粉とキサンタンガムを併用することにより粘弾性のあるゲルを作製することができた。
【0097】
(実験例68乃至71)ゼリー状ドレッシング
水に改質こんにゃく粉3及水溶性カラギナン((Na−κタイプ):MV−101;MRCポリサッカライド社製)を添加し分散させた。これに残りの成分を加え、市販の泡立器(Multi quick Professional MR 5555 M CA、泡立て器 目盛6;BRAUN社製)を使用して2分間撹拌し実験例68乃至71に係るゼリー状ドレッシングを500mLビーカーに300g得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(%)は、表21に示す。
【0098】
(比較実験例22乃至25)ゼリー状ドレッシング
改質こんにゃく粉3の代わりにこんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を使用、またはキサンタンガムを単独で使用した以外は実験例68乃至71と同様にして、比較実験例22乃至25に係るゼリー状ドレッシングを500mLビーカーに300g得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(%)は、表21に示す。
【0099】
【表21】

【0100】
実験例62乃至67及び比較実験例15乃至21と同様にしてゲル形成性とゲル強度、粘弾性、及び離水を測定した。結果を表22に示す。
【0101】
【表22】

【0102】
実験例68乃至71及び比較実験例22乃至25より、改質こんにゃく粉を使用すると用時調整ができるゼリー状ドレッシングを作製することができたが、通常のこんにゃく粉を使用してもゼリー状にならず糊状感のあるドレッシングとしては適さない食感であった。また、Na−κタイプのカラギナンを併用することにより離水が少なく粘弾性のあるゲルを作製することができた。
【0103】
(実験例72、比較実験例26)マヨネーズ風調味料
水に改質こんにゃく粉4及びタマリンドガム(グリロイド3S;大日本住友製薬社製)を添加し分散させた。これに残りの成分を加え、市販の泡立器(Multi quick Professional MR 5555 M CA、泡立て器 目盛6;チェリーテラス社製)を使用して2分間撹拌し実験例72に係るマヨネーズ風調味料を300g得た。改質こんにゃく粉4の代わりにこんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を使用した以外は実験例72と同様にして、比較実験例26に係るマヨネーズ風調味料を300g得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(重量%)は、表23に示す。なお、キサンタンガムは、ケルトロール(CPケルコ社製)を用いた。
【0104】
【表23】

【0105】
実験例62乃至67及び比較実験例15乃至21と同様にしてゲル形成性とゲル強度、粘弾性、及び離水を測定した。結果を表24に示す。
【0106】
【表24】

【0107】
実験例72及び比較実験例26より、改質こんにゃく粉を使用すると用時調整ができるマヨネーズ風調味料を作製することができたが、通常のこんにゃく粉を使用した場合はゼリー状にならず糊状感があり、マヨネーズ風調味料としては適さない食感であった。
【0108】
(実験例73、比較実験例27)ゼリー状飲料
水に改質こんにゃく粉4及びアラビアガム(アラビアガムA;伊那食品工業(株)製)を添加し分散させた。これに残りの成分を加え、市販の泡立器(チェリーテラス社製、バーミックス)を使用して2分間撹拌し実験例73に係るゼリー状飲料を500g得た。改質こんにゃく粉4の代わりにこんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を使用した以外は実験例73と同様にして、比較実験例27に係るゼリー状飲料を500g得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(重量%)は、表25に示す。なお、エリスリトールは、三菱化学フーズ社製のものを用いた。
【0109】
【表25】

【0110】
評価は目視でゲル化を確認した。また90℃、20分殺菌して冷却した後のゲル化状態も確認した。また10人のパネラーで飲み心地を調べ次の基準で示す評価の合計点で示した。非常に良好:3点、良好:2点、糊状感があり飲みにくい:1点。結果を表26に示す。
【0111】
【表26】

【0112】
実験例73及び比較実験例27より、改質こんにゃく粉を使用すると、耐熱性があり且つ飲み心地のよいゼリー状飲料を作製することができた。通常のこんにゃく粉を使用した場合は糊状感のある飲料となった。
【0113】
(実験例74及び75、比較実験例28及び29)バターロールパン
小麦粉(強力粉「カメリア」;日清製粉社製)、上白糖、食塩、脱脂粉乳(明治乳業社製)、ドライイースト(オリエンタル酵母工業社製)などの粉類に対し、配合中の1/3〜半量の水と全卵に改質こんにゃく粉5、またはこんにゃく粉を分散させたものを加え、さらに残りの水を加えてドウミキサー(キッチンマシーン.シェフクラシックKM4000;愛工舎製作所製)にて低速3分、無塩バターを加えて中速12分、更に高速5分で混捏した。捏ね上げ温度は28℃であった。捏ね上げ生地を50分発酵させた後ガス抜きをした。得られた生地を重量50gに分割し、丸め成型を行い、20分のベンチタイムをとった後、38℃、湿度85%で40〜60分間発酵させた。その後、190℃のバッチ式オーブンで20分焼成した。それぞれに用いられた原料及び配合量(g)は、表27に示す。なお、タラガムは、タラガムA(伊那食品工業(株)製)を用いた。
【0114】
【表27】

【0115】
生地作製時の作業性と焼成時のだれの確認、および焼成後のパンについて5人のパネラーによる食感の官能試験を行った。食感の官能検査は、5人のパネラーの食感評価の得点の合計で示し、食感評価は、次の基準で行った。弾力があり且つ歯切れが良い:5点、ややべたつきがある:3点、べたつきがある:1点。また菜種法によりパン体積を測定した。結果を表28に示す。
【0116】
【表28】

【0117】
実験例74及び75並びに比較実験例28及び29より、実験例74及び75のバターロールは、比較実験例28及び29に比べ、作業性も良く、だれずに焼成出来、ボリュームが得られた。また食感も歯切れが良く良好なものとなった。
【0118】
(実験例76、比較実験例30乃至32)米粉食パン
米粉(ル・マロニエ;日の本穀粉社製)、グルテン(A−グルG;グリコ栄養食品社製)、イースト、上白糖、脱脂粉乳、食塩などの粉類に対し、配合中の1/3〜半量の水に改質こんにゃく粉6、こんにゃく粉を分散させたものを加え、さらに残りの水を加えてドウミキサーにて低速3分、中速4分、無塩バターを加えて低速3分、更に中速5分で混捏した。捏ね上げ温度は28℃であった。捏ね上げ生地を50分発酵させた。得られた生地を分割し、20分のベンチタイムをとった後、38℃、湿度85%で40〜60分間発酵させた。その後、190℃のバッチ式オーブンで20分焼成した。それぞれに用いられた原料及び配合量(g)は、表29に示す。
【0119】
【表29】

【0120】
生地作製時の作業性と焼成時のだれの確認、および焼成後のパンについて5人のパネラーによる食感の官能試験を行った。食感の官能検査は、5人のパネラーの食感評価の得点の合計で示し、食感評価は、次の基準で行った。弾力があり且つ歯切れが良い:5点、ややべたつきがある:3点、べたつきがある:1点。また菜種法によりパン体積を測定した。結果を表30に示す。
【0121】
【表30】

【0122】
実験例76及び比較実験例30乃至32より、実験例76の米粉食パンは、比較実験例30乃至32に比べ、作業性も良く、だれずに焼成出来、ボリュームが得られた。また食感も歯切れが良く良好なものとなり、4日後の食感も良好であった。
【0123】
(実験例77及び78、比較実験例33及び34)カレーパンのフィリング
水の中に小麦粉、改質こんにゃく粉3、こんにゃく粉、キサンタンガムを分散させ加熱した。いったん火を止めてからカレールウ(とろけるカレー;エスビー食品社製)を入れ、充分に溶かし再び弱火で煮込んだ。これを一般的なカレーパン用生地に包み込み、パン粉をまぶした後ホイロに移した。油の温度を180℃に調整して、生地の表を下にして3〜4分かけて表裏きつね色に仕上げた。それぞれに用いられた原料及び配合量(g)は、表31に示す。
【0124】
【表31】

【0125】
5人のパネラーによるカレーパンのフィリング食感の官能試験を焼成直後と1日経過したものについて行った。また経時的なフィリングからのパン生地への水分移行を目視にて観察した。食感の官能検査は5人のパネラーにより行い、食感評価の得点の合計で示した。食感評価は、次の基準で行った。糊状感が無くカレーの風味が良い:5点、やや糊状感ありカレーの風味が弱い:3点、糊状感がありカレーの風味が弱い:1点。結果を表32に示す。
【0126】
【表32】

【0127】
実験例77及び78並びに比較実験例33及び34より、実験例77及び78のフィリングは食感も良く、パン生地への水分移行も観察されなかったが、比較実験例33及び34のフィリングは糊状感があり風味も悪くパン生地への水分移行があった。
【0128】
(実験例79乃至82、比較実験例35乃至36)介護食、ミキサー食
こんにゃく精粉(イナゲル「マンナン100」;伊那食品工業(株)製)100部に、水酸化ナトリウム1.2部、及び水40部のアルカリ溶液をままこにならぬように留意しながら霧吹き器で噴霧した。アルカリ溶液の噴霧後は、粉体状態であった。このアルカリ化こんにゃく精粉を、水分を12%に調整するために送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze;ISUZU社製)させ、その後、密閉状態にて65℃で1時間、加熱処理し改質こんにゃく粉21を得た。
【0129】
60℃の5部粥および3部粥をそれぞれ各1000g用意し、これに改質こんにゃく粉21を5g、または7.5g添加し、軽くかき混ぜ分散した後に、バーミックス(チェリーテラス社製)を用いて1分間撹拌した。これを直径30mm高さ15mmの円柱形の容器に充填し、冷蔵庫(4℃)にて1時間冷却した後に70℃の恒温槽に1時間入れ、実験例79乃至82に係る粥を得た。改質こんにゃく粉21を添加しないこと以外は同様にして、比較実験例35及び36に係る粥を得た。
【0130】
物性の測定法は厚生労働省の「えん下困難者用食品の規格基準」に準じて行った。即ち、レオメーター(COMPAC−100;サン科学社製)を使用し、測定速度10mm/秒、進入深度10mm、プランジャーφ20mmの円柱状で2回反復の圧縮試験を行った。結果を表33に示す。
【0131】
【表33】

【0132】
厚生労働省の規格基準における許可基準IIは硬さ1000〜15000(N/m)、付着性<1000(J/m)、凝集性0.2〜0.9であり、改質こんにゃく粉21を加えた実験例79乃至82はミキサー粥はこれらをすべて満たしていたが、改質こんにゃく粉21を添加しない比較実験例35及び36はこれらをすべて満たさずえん下困難者用食品として不適であった。
【0133】
(実験例83乃至86、比較実験例37及び38)介護食、ミキサー食
こんにゃく精粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)100部に、水酸化ナトリウム1.2部、及び水40部のアルカリ溶液をままこにならぬように留意しながら噴霧した。アルカリ溶液の噴霧後は、粉体状態であった。このアルカリ化こんにゃく精粉を、水分を12%に調整するために送風乾燥(Hot Air Rapid Drying Oven,Soyokaze;ISUZU社製)させ、その後、密閉状態にて65℃で1時間、加熱処理し改質こんにゃく粉22を得た。
【0134】
60℃の5部粥、3部粥1000gにこの改質こんにゃく粉22を5g、または7.5g添加し、軽くかき混ぜ分散した後に、バーミックス(チェリーテラス製)を用いて1分間シェアをかけながら混合した。これを直径30mm高さ15mmの円柱形の容器に充填し、冷蔵庫にて1時間冷却した。その後に70℃の恒温槽に1時間入れ実験例83乃至86に係る粥を得た。改質こんにゃく粉22を添加しないこと以外は同様にして、比較実験例35及び36に係る粥を得た。
【0135】
物性の測定法は厚生労働省の「えんげ困難者用食品の規格基準」に準じて行った。即ち、測定速度10mm/秒、進入深度10mm、プランジャーφ20mm、2回反復の圧縮試験を行った。結果を表34に示す。
【0136】
【表34】

【0137】
厚生労働省の規格基準における許可基準IIは硬さ1000〜15000(N/m)、付着性<1000(J/m)、凝集性0.2〜0.9であり、改質こんにゃく粉22を加えた実験例83乃至86はミキサー粥はこれらをすべて満たしていたが、改質こんにゃく粉22を添加しない比較実験例37及び38はこれらをすべて満たさずえん下困難者用食品として不適であった。
【0138】
(実験例87及び88、比較実験例39)ハンバーグ
合挽き肉500gに改質こんにゃく粉21を2g分散し、これに氷水190gを加え、フードミキサー(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社製、商品名:ブラウン マルチクイック プロファッショナル)を用いてミキシングを行った。これにソテーした玉ねぎ200g、卵白60g、食塩3g、コンソメ8g、パン粉30g、ナツメグ1g、ブラックペッパー1.5g、粒状大豆タンパク10gを加え、更にミキシングし、得られたものを成型した。成型後、250℃で6分30秒間焼成を行い、実験例87に係るハンバーグ1を得た。
【0139】
合挽き肉500gに水190gに改質こんにゃく粉21を2g分散し、予め膨潤させた後に加え、フードミキサー(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社製、商品名:ブラウン マルチクイック プロファッショナル)を用いてミキシングを行った。これにソテーした玉ねぎ200g、卵白60g、食塩3g、コンソメ8g、パン粉30g、ナツメグ1g、ブラックペッパー1.5g、粒状大豆タンパク10gを加え、更にミキシングし、得られたものを成型した。成型後、250℃で6分30秒間焼成を行い、実験例88に係るハンバーグ2を得た。
【0140】
改質こんにゃく粉21を添加しないこと以外は同様にして、比較実験例39に係るハンバーグ3を得た。
【0141】
実験例87及び88並びに比較実験例39について、評価は歩留まりを確認することで行った。歩留まりは焼成後の重量を焼成前の重量で割った百分率で示した。比較実験例39に係るハンバーグ3の歩留まりは74%であるのに対して、実験例87に係るハンバーグ1は81%、実験例88に係るハンバーグ2は83%と歩留まりが向上した。また食感的にも実験例87及び88のほうがジューシー感があり美味しいものであった。
【0142】
(実験例89及び90、比較実験例40)ミートボール
鳥挽き肉1000gに改質こんにゃく粉21を4gまぶし、これに玉ねぎ250g、パン粉100g、食塩2g、砂糖10g、醤油15g、生姜5g、酢5gを加え、フードミキサー(ブラウン マルチクイック プロファッショナル;プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社製)を用いてミキシングを30秒間行った。得られたものを15gずつ成型し170℃30秒間油で揚げた。油調後、団子3個を醤油60g、砂糖60g、ケチャップ60g、水320gのたれと一緒に充填して85℃で40分間ボイル殺菌を行い、実験例89に係るミートボール1を得た。
【0143】
鳥挽き肉1000gに改質こんにゃく粉21を4gまぶし、更に水200gを混合した。これに玉ねぎ250g、パン粉100g、食塩2g、砂糖10g、醤油15g、生姜5g、酢5gを加え、フードミキサー(ブラウン マルチクイック プロファッショナル;プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社製)を用いてミキシングを30秒間行った。得られたものを15gずつ成型し170℃30秒間油で揚げた。油調後、団子3個を醤油60g、砂糖60g、ケチャップ60g、水320gのたれと一緒に充填して85℃で40分間ボイル殺菌を行い、実験例90に係るミートボール2を得た。
【0144】
改質こんにゃく粉21を添加しないこと以外は同様にして、比較実験例40に係るミートボール3を得た。即ち、鳥挽き肉1000gに玉ねぎ250g、パン粉100g、食塩2g、砂糖10g、醤油15g、生姜5g、酢5gを加え、フードミキサー(ブラウン マルチクイック プロファッショナル;プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン社製)を用いてミキシングを30秒間行った。得られたものを15gずつ成型し170℃30秒間油で揚げた。油調後、団子3個を醤油60g、砂糖60g、ケチャップ60g、水320gのたれと一緒に充填して85℃で40分間ボイル殺菌を行い、比較実験例40に係るミートボール3を得た。
【0145】
評価として柔らかさとジューシー感をパネラー20名による官能検査により行った。官能検査は、各被験者の判定した結果を平均したもので示し、判定は、次の基準で行った。1:非常に不良。2:不良。3:普通。4:良好。5:非常に良好。また、歩留まりはボイル殺菌後の重量を油調前の重量で割った百分率で示した。結果を表35に示す。
【0146】
【表35】

【0147】
実験例89及び90並びに比較実験例40より、改質こんにゃく粉を使用した実験例89及び90は柔らかさとジューシー感に優れており美味しいという評価であった。
【0148】
(実験例91、比較実験例41)餃子
中華だしのもと1gを水1000gに溶解した後に改質こんにゃく粉21を7g分散し、良く撹拌した。これに残りの素材をよく混ぜ合わせ、得られたものを餃子の具として餃子の皮に包み成型した。成型後、焼成を行い、実験例91に係る餃子1を得た。改質こんにゃく粉21を除いた添加しないこと以外は実験例91と同様にして比較実験例41に係る餃子2を得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(g)は、表36に示す。
【0149】
【表36】

【0150】
実験例91及び比較実験例41より、実験例91に係る餃子1はジューシーな餃子を作製出来たのに対して、比較実験例41に係る餃子2は、具の水分が多すぎて皮がふやけてしまった。これにより餃子どうしが付着してしまったり、持ち上げる際に皮が破れて具が出てしまった。
【0151】
(実験例92乃至97)ゼリー
20℃の水1000gに食塩を10g又は50gを溶解した溶液に、改質こんにゃく粉22を1.5gとキサンタンガム(イナゲルV−10T;伊那食品工業社製)3.5gを混合した粉体を家庭用泡立器を使用して手で撹拌分散した。これを容器に注ぎ、冷蔵庫で1時間静置し実験例92乃至97に係るゼリーを得た。得られたゼリーをレオメーター(SUN REOMETER CR−100;サンレオテック製)を用いて破断強度を測定した。進入速度は20mm/分、測定温度は10℃の条件で行った。結果を表37に示す。
【0152】
【表37】

【0153】
実験例92乃至97より、食塩を含有した場合においても家庭用泡立器(マドラー)を使用してゲル化させることが可能であった。
【0154】
(実験例98、比較実験例42)経腸栄養液をゲル化させた嚥下食
水50gに改質こんにゃく粉3を0.5gとキサンタンガム(エコーガム;CPケルコ社製)を0.05g加え膨潤させた。これに経腸栄養液(エンシュア・H;アボットジャパン社製)250mLを加えた後、バーミックス(チェリーテラス社製)を使用して30秒間撹拌した。冷蔵庫(4℃)にて1時間冷却した後に70℃の恒温槽に1時間入れ、実験例98に係る物性測定用のサンプル(経腸栄養液をゲル化させた嚥下食)を得た。また、121℃で20分間レトルト殺菌した後、20℃に冷却し、硬さ(レオメーター)と状態を目視にて観察した。
改質こんにゃく粉3の変わりにこんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を使用した以外は、実験例98と同様にして、比較実験例42に係る物性測定用のサンプル(経腸栄養液をゲル化させた嚥下食)を得た。
【0155】
物性の測定法は厚生労働省の「えん下困難者用食品の規格基準」に準じて行った。即ち、レオメーター(COMPAC−100;サン科学社製)を使用し、測定速度10mm/秒、進入深度10mm、プランジャーφ20mmの円柱状で2回反復の圧縮試験を行った。結果を表38に示す。
【0156】
【表38】

【0157】
厚生労働省の規格基準における許可基準IIは硬さ1000〜15000(N/m)、付着性<1000(J/m)、凝集性0.2〜0.9であり、改質こんにゃく粉を使用した実験例98はこれらをすべて満たしていたが、こんにゃく粉を使用した比較実験例42は硬さが弱く温時飲食時において、えん下困難者用食品として不適であった。また、レトルト殺菌後は実験例98が均一なゲルであったのに対し、比較実験例42は経腸栄養液中のタンパク質が分離していた。
【0158】
(実験例99、比較実験例43)わらび餅風生菓子
水400gに改質こんにゃく粉2を分散させ、これに、寒天(伊那寒天UP−37;伊那食品工業(株)製)を水200gに加え沸騰溶解させた溶液と砂糖を加え、ミキサー(キッチンマシーン.シェフクラシックKM4000;愛工舎製作所製)にて60℃にて高速で3分間撹拌し、実験例99に係るわらび餅風生菓子を得た。容器に充填し4℃で冷却後、60℃にてゲル強度と食感(官能試験)を調べた。改質こんにゃく粉2の代わりにこんにゃく粉(マンナン100;伊那食品工業(株)製)を使用した以外は実験例99と同様にして、比較実験例43に係るわらび餅風生菓子を得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(g)は、表39に示す。別に121℃で20分間レトルト殺菌した後、20℃に冷却した検体の強度を測定した。結果を表40に示す。ゲル強度はレオメーター(COMPAC−100,サン科学社製:プランジャー面積1cm円柱状,進入速度20mm/分)を使用して測定した。
【0159】
【表39】

【0160】
【表40】

【0161】
実験例99及び比較実験例43より、改質こんにゃく粉を使用した実験例99は60℃においてもわらび餅風の食感を有し、加熱殺菌にもゲル強度を維持していたのに対し、こんにゃく粉を使用した比較実験例43はゲル強度が弱くわらび餅状態にはならなかった。
【0162】
(実験例100、比較実験例44及び45)麺
中力粉(白鈴;昭和産業社製)と改質こんにゃく粉5を混合した。これに水に溶かした塩水を加え5分間練り合わせ(万能手打めん機M305型P;さぬき麺機社製)切断し、実験例100に係るうどんを得た。改質こんにゃく粉5の代わりにこんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を使用した以外は実験例100と同様にして、比較実験例27に係るうどんを得た。また、改質こんにゃく粉5を添加しなかったこと以外は実験例100と同様にして、比較実験例45に係るうどんを得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(g)は、表41に示す。
【0163】
【表41】

【0164】
このうどんを熱水中で7分間茹で上げ茹でた状態と食感(60℃、20℃)を確認した。茹でた時の溶け出しはお湯の濁りにより判定した。結果を表42に示す。
【0165】
【表42】

【0166】
実験例100並びに比較実験例44及び45より、改質こんにゃく粉を使用したうどん(実験例100)は温時でも冷時でもコシがあり美味しいものであったがこんにゃく粉を使用したもの(比較実験例44)や無添加のもの(比較実験例45)はコシがなくつるみにも弱いものであった。また茹でた時の溶け出しも実験例100のほうが少なかった。
【0167】
(実験例101、比較実験例46)スポンジケーキ
具体的には卵をボールに割り入れてほぐし、湯せんにかけながら白っぽくなるまで泡立器で良く泡たて、これにグラニュー糖を3回に分けて入れさらに泡立てた。これに薄力粉(日清フーズ社製)とベーキングパウダー(オリエンタル酵母工業社製)と改質こんにゃく粉1を混ぜ合わせたものと加温したバターと牛乳を入れゴムべらで撹拌し混ぜ合わせた。500Wの電子レンジで4分加熱し、実験例101に係るスポンジケーキを得た。改質こんにゃく粉の代わりにこんにゃく粉(イナゲル「マンナン180」;伊那食品工業(株)製)を使用した以外は実験例101と同様にして、比較実験例46に係るスポンジケーキを得た。それぞれに用いられた原料及び配合量は、表43に示す。
【0168】
【表43】

【0169】
加熱処理した結果、実験例101は冷後においてもスポンジの縮みが少なかったのに対し、比較実験例46は冷後スポンジが縮んで商品価値が低いものになった。また実験例101は比較実験例46に比べケービングも少なく美味しいものであった。
【0170】
(実験例102、比較実験例47)レトルト用あんかけ
水に改質こんにゃく粉2を膨潤させ、これに残りの成分を加えた後、バーミックス(チェリーテラス社製)を使用し1分間撹拌させた。これを容器に入れ121℃、20分間レトルト殺菌し実験例102に係るあんかけ用のタレを得た。改質こんにゃく粉2の代わりにこんにゃく粉(イナゲル「マンナン100」;伊那食品工業(株)製)を使用したこと以外は同様にして、比較実験例47に係るあんかけ用のタレを得た。それぞれに用いられた原料及び配合量(g)は、表44に示す。
【0171】
【表44】

【0172】
実験例102及び比較実験例47より、実験例102はレトルト殺菌後においても適度な粘度を有しあんかけ用のタレとして適していたのに対し、比較実験例47はゲルが分離していたり離水が多くあんかけ用のタレとしては不適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
こんにゃく粒の膨潤を抑制した状態で、こんにゃく粉がアルカリ溶液とともに加熱処理されて改質された改質こんにゃく粉であって、水に分散して分散液とした後に加熱処理又は撹拌処理されるとゲル化するように調製されていることを特徴とする改質こんにゃく粉。
【請求項2】
前記分散液のpHが7.1〜10.0であることを特徴とする請求項1記載の改質こんにゃく粉。
【請求項3】
請求項1又は2記載の改質こんにゃく粉をゲル化させたことを特徴とするゲル化物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の改質こんにゃく粉が用いられた食品。