説明

改質された着色顔料の調製方法

本発明は、付加された少なくとも1つの有機基を有する顔料を含む改質された着色顔料を調製する方法に関する。本方法は、任意の順番で、a)溶媒中の有機着色剤の溶液、b)有機基を含む少なくとも1つの芳香族アミン、c)少なくとも1つのジアゾ化剤、d)水性媒体、e)所望により少なくとも1つの酸、及びf)所望により少なくとも1つの第2の溶媒を混合して、改質された着色顔料を生成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加された少なくとも1つの有機基を有する顔料を含む改質された着色顔料を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染料、炭素質材料、及び有機着色顔料などの着色剤を改質するための様々な方法が開示されている。概して、これらの方法は、媒体中で着色剤の分散体を調製すること、及びこの着色剤の表面と様々な種類の試薬とを反応させることを含む。得られる生成物は、少なくとも1つのイオン基、イオン化可能基、またはそれらの混合物を含む有機基などの、付加された少なくとも1つの有機基を有する着色剤を含む改質された着色剤である。このように着色剤を改質することによって、所望の全体的特性を有する材料を生成することが示されている。
【0003】
例えば、改質顔料は、米国特許第5,554,739号、同第5,707,432号、同第5,837,045号、同第5,851,280号、同第5,885,335号、同第5,895,522号、同第5,900,029号、同第5,922,118号、及び同第6,042,643号、並びに国際公開第WO99/23174号に記載されている方法を用いて調製され得る。上記の方法は、例えばポリマー及び/または界面活性剤を使用する分散剤タイプの方法と比較して、顔料への基のより安定した付加を提供する。改質顔料を調製する他の方法は、利用可能な官能基を有する顔料と、例えば米国特許第6,723,783号に記載されるような有機基を含む試薬とを反応させることを含む。そのような機能顔料は、上記の参照文献に記載される方法を用いて調製され得る。さらに、付加された官能基を含む改質されたカーボンブラックがまた、米国特許第6,831,194号及び同第6,660,075号、米国特許出願公開第2003−0101901号及び同第2001−0036994号、カナダ国特許第2,351,162号、欧州特許第1 394 221号、並びに国際公開第WO04/63289号、並びにN.Tsubokawa,Polym.Sci.,17,417,1992に記載される方法によって調製され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機着色顔料については、これらの着色剤が概して溶媒中の反応によって調製されて、その溶媒中の溶液として有機着色剤が生成されることが当技術分野で知られている。次いで、着色剤は、沈殿などによって溶媒から取り出され、また、粉砕などのさらなる工程が施されることもある。有機着色剤が溶媒中で調製されるので、沈殿などによって顔料を分離する前に、溶液中でこの着色剤を改質することが望ましい。これは、改質前に顔料を再分散する必要を無くし、それによって、より効率的な全体のプロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、付加された少なくとも1つの有機基を有する顔料を含む改質された着色顔料を調製する方法に関する。本方法は、任意の順番で、a)溶媒中の有機着色剤の溶液、b)有機基を含む少なくとも1つの芳香族アミン、c)少なくとも1つのジアゾ化剤、d)水性媒体、e)所望により少なくとも1つの酸、及びf)所望により少なくとも1つの第2の溶媒を混合して、改質された着色顔料を生成する工程を含む。本方法の様々な実施態様が記載され、例えば、有機基が少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能基、またはそれらの混合物を含む実施態様が記載される。また、本発明の方法は、改質された着色顔料を生成する前または生成した後に、粒径を調整する工程をさらに含むことができる。
【0006】
前述の概要及び次の詳細な説明の両方とも、典型例であって説明のためのみであり、特許請求の範囲の本発明についてさらなる説明を提供することを目的とする、と理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、溶媒中の有機着色剤の溶液を用いて、改質された着色顔料を調製する方法に関する。
【0008】
本発明の方法は、第1の溶媒中の有機着色剤の溶液、少なくとも1つの芳香族アミン、少なくとも1つのジアゾ化剤、水性媒体、並びに所望により酸及び/または第2の溶媒を混合する工程を含む。これらの成分は、任意の順番で混合され得る。例えば、芳香族アミン、ジアゾ化剤、及び所望による酸を、第2の溶媒とともにまたは第2の溶媒無しで、混合して、ジアゾニウム試薬を生成し、次いで、ジアゾニウム試薬は、第1の溶媒中の有機着色剤の溶液と混合されて混合物を生成することができる。次いで、以下により詳細に説明されるが、溶媒の種類及び相対量に依存して溶液または分散体の形態であることができる混合物が、水性媒体と混合されて、改質された着色顔料を生成することができる。別法では、芳香族アミン、ジアゾ化剤、所望による酸、及び水性媒体を、第2の溶媒とともにまたは第2の溶媒無しで、混合して、ジアゾニウム試薬の水溶液を生成することができる。次いで、この水溶液が、第1の溶媒中の有機着色剤の溶液と混合され、それによって改質された着色顔料を生成することができる。他の組み合わせもまた可能である。
【0009】
様々な種類の有機着色剤が、本発明の方法に用いられ得る。本明細書では、有機着色剤は、顔料の主要な構成である発色材料である。それは溶媒中に可溶であるが、水などの水性媒体と混合されると顔料を生成する。有機着色剤は、青色着色剤、黒色着色剤、茶色着色剤、シアン着色剤、緑色着色剤、白色着色剤、紫色着色剤、マゼンタ着色剤、赤色着色剤、橙色着色剤、黄色着色剤、またはそれらの混合物であることができる。有機着色剤の好適な例には、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジスアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環イエロー、キノロノキノロン、イソインドロン、インダントロン、キナクリドン、及び(チオ)インジゴイドが含まれる。以下により詳細に記載されるが、特に、本発明の方法に用いられる他の成分を阻害し得る反応物質の存在のために、有機着色剤は非アゾ着色剤である。
【0010】
有機着色剤は第1の溶媒中の溶液であり、溶媒が着色剤を溶解することができる限りは、例えば有機着色剤の種類に依存して、様々な種類の溶媒が第1の溶媒として用いられ得る。さらに、本発明の方法に用いられる有機着色剤は、水性媒体と混合されると、顔料を生成するので、有機着色剤の溶液用の第1の溶媒は好ましくは非水性溶媒、すなわち50質量%未満の水を含む溶媒である。例えば、第1の溶媒は30質量%未満の水を含むことができ、例えば20質量%未満、10質量%未満、または5質量%未満の水を含むことができる。第1の溶媒はまた無水物であることができる。好適な第1の溶媒の例には、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、クロロホルム、芳香族溶剤(例えばベンゼン若しくはトルエン)、または炭化水素溶媒(例えばヘキサン、オクタン、若しくはシクロヘキサン)、並びにポリリン酸または硫酸などの強酸が含まれる。第1の溶媒は水混和性であることができるが、好ましくは非水性溶媒である。特定の有機着色剤用の特定の溶媒は当業者に公知であろう。例えば、有機着色剤がキナクリドンである場合、第1の溶媒は、ポリリン酸などの酸であることができる。さらに、有機着色剤が銅フタロシアニンなどのフタロシアニンである場合は、第1の溶媒は硫酸であることができる。
【0011】
第1の溶媒中の有機着色剤の溶液は、当技術分野で公知の任意の方法によって調製され得る。例えば、着色顔料は、不溶性顔料をその構成有機着色剤まで分解する加熱処理またはせん断加工を用いてまたは用いずに、第1の溶媒中に溶解され得る。別法では、溶液は、第1の溶媒中に有機着色剤を生成することによって調製され、着色剤の溶液をもたらすことができる。例えば、当技術分野で知られているように、水不溶性有機着色剤を含む着色顔料は、概して溶液反応としての、様々な有機着色剤の前駆体の反応によって、調製される。したがって、有機着色剤の溶液は、第1の溶媒中の様々な有機着色剤の前駆体の反応の生成物であることができ、そして、第1の溶媒から有機着色剤を分離すること無く、芳香族アミン、ジアゾ化剤、所望による酸及び第2の溶媒、並びに水性媒体と混合され得る。第1の溶媒中の溶液として有機着色剤を生成する工程が、概して着色顔料の調製における最終の合成工程であるため、それゆえに、本発明の方法は、着色顔料を生成する前に、有機着色剤から改質された着色顔料を調製する方法である。
【0012】
また、本発明の方法に用いられる芳香族アミンは、式H2N−Arを有するアミン化合物であり、Arは芳香族基である。芳香族アミンは、少なくとも1つの有機基をさらに含み、それゆえに置換された芳香族アミンである。有機基は、見かけ上の電荷(apparent charge)を有さない基である非イオン有機基であることができる。したがって、芳香族アミンは、式H2N−Ar−NIを有するアミン化合物であることができ、NIは非イオン基である。非イオン基の例には、限定されるものではないが、アルキル基(例えば−R”)、カルボン酸エステル(例えば−COOR”または−OCOR”)、アミド(例えば−CONHR”、−C0NR”2、−NHCOR”、または−NR”COR”)、アルキレンオキシド、グリコール、アルコール、エーテル(例えば−OR”)、ケトン(例えば−COR”)、ハロゲン、及びニトリルが含まれる。上式において、R”は、1〜20個の炭素原子を有する、分枝状または非分枝状アルキルまたはアルキレン基である。
【0013】
有機基はまた、少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能基、または少なくとも1つのイオン基と少なくとも1つのイオン化可能基との混合物を含む基であるイオン有機基であることができ、これらはいくつかの最終使用用途に好ましく、以下により詳細に説明する。イオン基は、アニオン性またはカチオン性であり、Na+、K+、Li+、NH4+、NR’4+アセテート、NO3-、SO4-2、R’SO3-、R’OSO3-、OH-、及びCl-(式中、R’は、水素、または置換若しくは非置換アリール及び/若しくはアルキル基などの有機基を表す)などの無機または有機の対イオンを含む反対の電荷の対イオンを伴う。イオン化可能基は、使用媒体中でイオン基を生成することができるものである。アニオン化可能基はアニオンを生成し、カチオン化可能基はカチオンを生成する。有機イオン基には、その明細書が参照によって本明細書に完全に組み込まれる米国特許第5,698,016号に記載されるものが含まれる。したがって、芳香族アミンは、式H2N−Ar−Iを有するアミン化合物であることができ、Iはイオン基、イオン化可能基、またはそれらの混合物である。
【0014】
イオン基またはイオン化可能基は、アニオン基またはアニオン化可能基であることができる。アニオン基は、酸性置換基などの、アニオンを生成することができるイオン化可能置換基を有する基(アニオン化可能基)から生成され得る負に帯電したイオン基である。それらはまた、イオン化可能置換基の塩中のアニオンであることができる。アニオン基の代表的な例には、−COO-、−SO3-、−OSO3-、−HPO3-、−OPO3-2、及び−PO3-2が挙げられる。アニオン化可能基の代表的な例には、−COOH、−SO3H、−PO32、−R’SH、−R’OH、及び−SO2NHCOR’(式中、R’は、水素、または置換若しくは非置換アリールおよび/若しくはアルキル基などの有機基を表す)が挙げられる。具体例として、芳香族アミンは、少なくとも1つのスルホン酸基、カルボン酸基、またはその塩を含む。
【0015】
他の例として、有機基は、少なくとも1つのP−OまたはP=O結合を有する少なくとも1つのリン含有基、例えば少なくとも1つのホスホン酸基、少なくとも1つのホスフィン酸基、少なくとも1つの亜ホスフィン酸基、少なくとも1つの亜リン酸基、少なくとも1つのリン酸、二リン酸、三リン酸、若しくはピロリン酸基、その部分エステル基、またはその塩を含む。このように、有機基は、少なくとも1つのホスホン酸基、その部分エステル基、またはその塩を含むことができる。また、有機基は、これらの基の少なくとも2つを含んでもよく、例えば少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル基、またはその塩を含むことができる。「その部分エステル」とは、ホスホン酸基が、式−PO3RHを有する部分ホスホン酸エステル基、またはその塩(式中、Rは、アリール、アルカリール、またはアルキル基である)であることができることを意味する。有機基が、少なくとも2つのホスホン酸基またはその塩を含む場合、ホスホン酸基のいずれかまたは両方が、部分ホスホン酸エステル基であることができる。またホスホン酸基の1つが、式−PO32を有するホスホン酸エステルであることができるが、一方で、他のホスホン酸基が、部分ホスホン酸エステル基、ホスホン酸基、またはその塩であることができる。しかしながら、この例については、ホスホン酸基の少なくとも1つが、ホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩であることが好ましい。「その塩」とは、ホスホン酸基が、カチオン性対イオンを有する部分的にまたは完全にイオン化された形態であることができることを意味する。有機基が、少なくとも2つのホスホン酸基を含む場合、ホスホン酸基のいずれかまたは両方が、部分的にまたは完全にイオン化された形態であることができる。したがって、有機基が少なくとも2つのホスホン酸基を含むことができ、そのいずれかまたは両方が、式−PO32、−PO3-+(一塩基塩)、または−PO3-2+2(二塩基塩)を有することができる(式中、M+はNa+、K+、Li+、またはNR4+などのカチオンであり、Rは、同じであるかまたは異なってもよく、水素、または置換若しくは非置換アリール及び/若しくはアルキル基などの有機基を表す)。
【0016】
さらに具体的には、有機基は、少なくとも1つの、ジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩を含んでもよく、すわなち、有機基は、同じ炭素原子に直接結合する少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩を含むことができる。そのような基はまた、1,1−ジホスホン酸、その部分エステル、またはその塩と称されることもできる。したがって、例えば、有機基は、式−CQ(PO322を有する基、その部分エステル、またはその塩を含むことができる。Qは、ジェミナル位に結合され、H、R、OR、SR、またはNR2であることができる(式中、Rは、同じかまたは異なってもよく、H、C1−C18の飽和若しくは不飽和、分枝状若しくは非分枝状のアルキル基、C1−C18の飽和若しくは不飽和、分枝状若しくは非分枝状のアシル基、アラルキル基、アルカリール基、またはアリール基である)。例えば、Qは、H、R、OR、SR、またはNR2であることができる(式中、Rは、同じかまたは異なってもよく、H、C1−C6アルキル基、またはアリール基である)。したがって、Qは、H、OH、またはNH2であることができる。さらに、有機基は、式−(CH2n−CQ(PO322を有する基、その部分エステル、またはその塩を含んでもよい(式中、Qは上述のものと同様であり、nは0〜9であり、例えば1〜9、0〜3、1〜3、0、または1である)。
【0017】
イオン基またはイオン化可能基はまた、カチオン基またはカチオン化可能基であることができる。カチオン基は、プロトン化アミンなどのカチオンを生成することができるイオン化可能置換基(カチオン化可能基)から生成され得る正に帯電した有機イオン基である。例えば、アルキルまたはアリールアミンは、酸性媒体中でプロトン化され、アンモニウム基−NR’2+を生成することができる(式中、R’は、置換または非置換アリール及び/またはアルキル基などの有機基を表す)。カチオン基はまた、正に帯電した有機イオン基であることができる。例には、4級アンモニウム基(−NR’3+)及び4級ホスホニウム基(−PR’3+)が含まれる。ここで、R’は、水素、または置換若しくは非置換のアリール及び/若しくはアルキル基などの有機基を表す。具体例として、芳香族アミンは、少なくとも1つのアミン基若しくはその塩、または少なくとも1つの4級アンモニウム基を含むことができる。
【0018】
したがって、芳香族アミンは、式H2N−Ar−IまたはH2N−Ar−NIを有するアミン化合物であることができる。基Arは好ましくは、アリーレン若しくはヘテロアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレン、若しくはビフェニレン)またはアルカリーレン基(例えばアミノベンジルアミンなど)を表す。基Arは、アミン基に直接付加され、上に詳述したI基またはNI基でさらに置換される。式H2N−Ar−Iを有する芳香族アミンの具体例には、p−アミノ安息香酸、及びスルファニル酸が含まれる。式H2N−Ar−NIを有する芳香族アミンの具体例には、アミノベンジルカルボン酸エステル、アミノベンジルカルボン酸アミドが含まれる。
【0019】
芳香族アミンの芳香族基は、1以上のさらなる官能基でさらに置換されてもよい。官能基の例には、限定されるものではないが、R”、OR”、COR”、COOR”、OCOR”、カルボキシレート、ハロゲン、CN、NR”2、SO3H、スルホネート、サルフェート、NR”(COR”)、CONR”2、NO2、PO32、ホスホネート、ホスフェート、N=NR”、SOR”、NSO2R”が含まれる(式中、R”は、同じであるか異なってもよく、独立して水素、または分枝状若しくは非分枝状、置換若しくは非置換、飽和若しくは不飽和のC1−C20炭化水素基、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、置換若しくは非置換アリール、置換若しくは非置換ヘテロアリール、置換若しくは非置換アルカリール、または置換若しくは非置換アラルキル基である)。
【0020】
ジアゾ化剤はまた、本発明の方法に組み合わせられる。ジアゾ化剤は、アミン基と反応してジアゾニウム塩を生成する任意の試薬である。例には、亜硝酸及び亜硝酸塩が含まれる。好ましくは、ジアゾ化剤は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、または亜硝酸カルシウムなどの亜硝酸対イオンを有する塩である。ジアゾ化剤はまた、4級アンモニウム基などのカチオン基を含む芳香族アミンであることができ、4級アンモニウム基の対イオンは亜硝酸塩である。
【0021】
本発明の方法に用いられる水性媒体は、50質量%を越える水、例えば60質量%を越える、75質量%を越える、または95質量%を越える水を含む、任意の媒体である。水性媒体はまた、水であることができる。したがって、水性媒体は、例えば、水、またはアルコールなどの水混和性溶媒と水との混合物であることができる。
【0022】
本発明の方法においては、所望による第2の溶媒を用いてもよい。これは、例えば、有機着色剤の溶液中の、芳香族アミン及び/またはジアゾ化剤の改良された溶解性を提供することができる。成分の溶解特性に依存して、様々な種類の溶媒を第2の溶媒として用いることができる。さらに、第2の溶媒は、第1の溶媒と同じであってもよい。したがって、第2の溶媒は、非水性溶媒であることができ、あるいはまた、水などの水性溶媒であることができる。
【0023】
さらに、所望による酸を本発明の方法に用いてもよい。任意の酸を用いることができ、特に、HCl及び硝酸などの水溶性の酸が用いられるが、メタンスルホン酸などの有機酸もまた用いられ得る。そのような酸は、ジアゾニウム塩を生成するために組み合わせるとき、芳香族アミンとジアゾ化剤との反応のための活性化剤として特に有益であることができる。別法では、酸は、有機着色剤の溶液中の芳香族アミンの溶解性を高めるために用いられ得る。酸は、別個の成分として含まれてもよく、あるいは水性媒体に添加されてもよい。したがって、水性媒体は任意のpHであることができるが、特に酸性であることができる。このように、酸は、低pHの水性媒体を生成するために水性媒体に添加され得る。
【0024】
各成分の量は、水性分散体中の安定性などの所望の全体的特性を有する改質された着色顔料を得るために、変化し得る。例えば、有機着色剤の溶液は概して、約1〜約75質量%の有機着色剤を含む。芳香族アミンの量は概して、有機着色剤の量よりもずっと少なく、好ましくは有機着色剤のモル量の15%未満であり、さらに好ましくは10%未満、例えば有機着色剤のモル量の1%〜7%である。ジアゾ化剤は、芳香族アミンと同じモル量にて、あるいは若干過剰に用いられ得る。所望による酸が用いられる場合、酸は、概して芳香族アミンのモル量と比較して約2モル当量であるジアゾニウム塩を生成するために十分である当技術分野で知られた量で用いられる。芳香族アミンがまた、酸性基を有する場合、所望による酸の必要性は低い。用いられる水溶液の量は、着色剤の沈殿物を発生させるのに十分な量であり、概して用いられる第1の溶媒の種類に依存する。例えば、第1の溶媒が、ポリリン酸または硫酸などの酸である場合、水溶液を、有機着色剤の溶液の体積の約10%を越える量で用いることができ、好ましくは有機着色剤の溶液の体積に対して過剰に用いることができる。例えば、水溶液/有機着色剤の溶液の体積比は、約0.1/1〜約20/1であることができ、例えば約1/1〜約10/1であることができる。水溶液は、約10%の少ない量にて有機着色剤の沈殿物を発生させることができるので、所望による第2の溶媒が用いられる場合、着色剤の沈殿物を避けるために、概して第2の溶媒の量は少ない。したがって、第2の溶媒の量は、好ましくは、有機着色剤溶液の体積の10%未満である。これは、第2の溶媒が水であってジアゾニウム塩の水溶液を生成するために用いられるときに、特に当てはまる。
【0025】
第1の溶媒中の有機着色剤の溶液、芳香族アミン、ジアゾ化剤、水性媒体、並びに所望による酸及び第2の溶媒を混合すると、改質された顔料が得られる。改質された顔料は、付加された少なくとも1つの有機基を有する顔料を含む。顔料は、第1の溶媒中の溶液としての有機着色剤と水性媒体との組み合わせから得られる顔料である。有機基は、芳香族アミンについて上述したもののいずれかである。改質顔料は、組み合わされる成分の相対量に依存して、水性分散体などの分散体の形態であるか、あるいはプレスケーキなどの湿潤固体(wet solid)であることができる。
【0026】
本発明の方法は、改質された着色顔料の粒径を調整する工程をさらに含むことができる。例えば、改質された着色顔料の粒径を、ミル粉砕(ソルトミリングを含む)などの当技術分野で公知の方法を用いて、小さくすることができる。また、所望により、改質された着色顔料の粒径を、例えば、オストワルド熟成によって、すわわち、0.5〜15時間、適切な溶媒を用いて、50〜200℃にて加熱することなどによって、大きくすることができる。粒径調整の様式は、顔料の目的とする用途に依存する得られる顔料の所望の大きさによって決まる。概して、インクジェット用途の場合、得られる改質された着色顔料は、粒径が小さくされたものである。
【0027】
この粒径を小さくする工程は、混合工程の前または後に行われ得るが、水性媒体を添加した後である。例えば、本発明の方法は、第1の溶媒中で有機着色剤の溶液を生成する工程、及び次いで有機着色剤の溶液と水性媒体とを混合して着色顔料を含む混合物を生成する工程を含むことができる。この着色顔料は、混合物から分離されないが、代わりに改質された着色顔料を生成するために直接用いられる。したがって、この混合物は、任意の順番で、少なくとも1つの有機基を含む少なくとも1つの芳香族アミン、少なくとも1つのジアゾ化剤、水性媒体、及び所望により少なくとも1つの酸及び/または少なくとも1つの第2の溶媒と混合されて、改質された着色顔料を含む混合物を生成することができ、次いで、さらに加工されて顔料の粒径が調整され、例えばミル粉砕などによって改質顔料の粒径が小さくされ得る。別法では、着色顔料を含む混合物は、加工されて着色顔料の粒径が調整され、次いで上述の成分と混合されて、改質された着色顔料を生成することができる。粒径の調整はまた、着色顔料を含む混合物を生成した後及び改質された着色顔料を生成した後の両方で行われ得る。
【実施例】
【0028】
本発明の方法の具体例として、150℃にて3時間攪拌しながら、6質量部のポリリン酸(PPA)に溶解させた1質量部の2,5−ビス−(p−トリルアミノ)テレフタル酸(当技術分野で公知の方法を用いて調製される)を加熱することによって、マゼンタ有機着色剤の溶液が調整され得る。得られたPPA中の2,9−ジメチルキナクリドンの溶液は、60℃に冷却され、4−スルホフェニルジアゾニウム塩の水溶液(スルファニル酸と、化学量論量または若干過剰の亜硝酸ナトリウムと、水中の1.2当量の塩酸とを混合することによって調整される)と混合され、2時間攪拌され得る。ジアゾニウム塩溶液の体積は、有機着色剤の沈殿が最小化され得るように、PPAの体積の10%未満であるべきである。別法では、これらの成分のそれぞれが、別個に、有機着色剤の溶液に添加され得る。スルファニル酸の量、それによって得られるジアゾニウム塩の量は、最終の改質顔料の所望の特性に依存し、例えば、1モルの2,5−ビス−(p−トリルアミノ)テレフタル酸について、0.3モルであることができる。次いで、改質されたマゼンタ顔料を含む混合物は、水性媒体としての過剰の冷水(例えば、有機着色剤の溶液の体積の10倍)と混合され、改質されたマゼンタ顔料の沈殿を得ることができる。別法では、水性媒体が、PPA中の2,9−ジメチルキナクリドンの溶液に添加され、マゼンタ顔料を含む混合物を生成することができ、次いで、沈殿したマゼンタ顔料の分離または精製無しに、ジアゾニウム塩溶液、またはジアゾニウム塩を生成するために用いられる成分が、この混合物に添加され得る。
【0029】
さらなる例として、10質量部の62%の硫酸中に1質量部の銅フタロシアニンを溶解させることによって調製されるシアン有機着色剤の溶液を、3時間、50〜70℃にて、4−カルボキシフェニルジアゾニウム塩の水溶液(p−アミノ安息香酸、PABAと、化学量論量または若干過剰の水中の亜硝酸ナトリウム及び2.2当量の硝酸とを混合することよって調製される)と混合することができ、それによって改質されたシアン顔料を含む混合物を生成することができる。別法では、これらの成分のそれぞれが、別個に、有機着色剤の溶液に添加され得る。PABAの量、それによって得られるジアゾニウム塩の量は、最終の改質顔料の所望の特性に依存し、例えば、1モルの銅フタロシアニンについて、0.1モルであることができる。次いで、改質されたシアン顔料を含む混合物は、水性媒体としての10質量部の冷水と混合され、改質されたシアン顔料の沈殿物を得ることができる。別法では、水性媒体が、硫酸中の銅フタロシアニンの溶液に添加され、シアン顔料を含む混合物を生成することができ、次いで、沈殿したシアン顔料の分離または精製無しに、ジアゾニウム塩溶液、またはジアゾニウム塩を生成するために用いられる成分が、この混合物に添加され得る。
【0030】
上述のように、一実施態様において、本発明の方法は、有機着色剤の溶液と様々な特定の成分とを混合して、改質された着色顔料を生成する工程を含む。したがって、本発明の方法は、有機着色剤を顔料に転換する前に、有機着色剤から、改質された着色顔料を調製する方法である。得られる改質された着色顔料は、分散体中の着色顔料を改質することによって調製された改質された着色顔料とは大きく異なると期待される。というのは、この場合は、表面のみが改質されるためである。本発明の方法によって調製された改質された着色顔料は、表面の改質並びにバルクの改質の両方が期待される。そのような顔料は、減少した色ずれ(color shift)を有すると期待される。
【0031】
さらに、最初に着色顔料の形成及び分離/精製すること無しに、改質された着色顔料が、有機着色剤の溶液から生成され得るとは期待されていなかった。特に、有機着色剤は概して、有機着色剤の前駆体の反応によって生成されて、次いで水性媒体を用いて沈殿されるため、有機着色剤を調製するために用いられる反応媒体の成分が、改質された着色顔料の形成を阻害すると予想されていた。
【0032】
このように、本発明の方法は、驚くべきことに、付加された少なくとも1つの有機基を有する顔料を含む改質された着色顔料を生成することができ、この顔料は、表面改質並びにバルク改質の両方がされたものである。さらに、得られる改質された着色顔料は、例えばプラスチック組成物、水性インク、水性塗料、ゴム組成物、紙組成物、及び繊維組成物などの様々な種類の用途に有益であると期待される。特に、これらの顔料は、例えば自動車及び工業塗料、ペンキ、トナー、接着剤、ラテックス、並びにインク、特にインクジェットインクなどの水性組成物に用いられ得る。
【0033】
本発明の好ましい実施態様の先の記載は、例証及び説明の目的のために示された。余すところなく述べることや、本発明を開示された厳密な形態に限定することは意図していない。改良及び改変は、上記教示に照らして可能であり、または本発明の実施から得ることができる。本発明の原理及びその実用的な用途を説明して、当業者が種々の実施態様において、及び熟考された特定の使用に適する種々の改良を用いて、本発明を利用できるように、実施態様を選択及び記載した。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等なものによって規定されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加された少なくとも1つの有機基を有する顔料を含む改質された着色顔料を調製する方法であって、任意の順番で、a)第1の溶媒中の有機着色剤の溶液、b)該有機基を含む少なくとも1つの芳香族アミン、c)少なくとも1つのジアゾ化剤、d)水性媒体、e)所望により少なくとも1つの酸、及びf)所望により少なくとも1つの第2の溶媒を混合して、改質された着色顔料を生成する工程を含む、方法。
【請求項2】
該有機基が少なくとも1つのイオン基、少なくとも1つのイオン化可能基、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
a)該芳香族アミン、該ジアゾ化剤、該所望による酸、及び該所望による第2の溶媒を混合して、ジアゾニウム試薬を生成する;
b)該ジアゾニウム試薬と該第1の溶媒中の該有機着色剤の溶液とを混合して、混合物を生成する;並びに
c)該混合物と該水性媒体とを混合して、該改質された着色顔料を生成する、
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
a)該芳香族アミン、該ジアゾ化剤、該所望による酸、該所望による第2の溶媒、及び該水性媒体を混合して、ジアゾニウム試薬の水溶液を生成する;並びに
b)該ジアゾニウム試薬の水溶液と該第1の溶媒中の該有機着色剤の溶液とを混合して、該改質された着色顔料を生成する、
方法。
【請求項5】
該有機着色剤の溶液が、該第1の溶媒中の溶液として該有機着色剤を生成することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該有機着色剤が、該芳香族アミン、該ジアゾ化剤、該所望による酸、該所望による第2の溶媒、及び該水性媒体と混合する前に、該第1の溶媒から分離されない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該有機着色剤の溶液が、該第1の溶媒中に該有機着色剤を溶解させることによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該第1の溶媒が非水性溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該第1の溶媒が酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該有機着色剤が、青色着色剤、黒色着色剤、茶色着色剤、シアン着色剤、緑色着色剤、白色着色剤、紫色着色剤、マゼンタ着色剤、赤色着色剤、橙色着色剤、黄色着色剤、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
該有機着色剤が、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジスアゾ着色剤、モノアゾ着色剤、ピラントロン、ペリレン、複素環黄色着色剤、キノロノキノロン、イソインドロン、インダントロン、キナクリドン、または(チオ)インジゴイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
該有機着色剤が、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、またはキナクリドンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該有機基が、少なくとも1つの−COO-、−SO3-、−OSO3-、−HPO3-、−OPO3-2、−PO3-2、アミン、またはアンモニウム基を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
該有機基が、少なくとも1つのスルホン酸基、カルボン酸基、またはその塩を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
該有機基が、少なくとも2つのホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
該有機基が、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、その部分エステル、またはその塩を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
該ジアゾ化剤が亜硝酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
該水性媒体が水である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
該改質された着色顔料が水性分散体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
該水性分散体がインクジェットインク組成物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該改質された着色顔料がプレスケーキの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
該改質された着色顔料がさらに加工されて所望の粒径を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
付加された少なくとも1つの有機基を有する顔料を含む改質された着色顔料を調製する方法であって、
i)第1の溶媒中で有機着色剤の溶液を生成する工程;
ii)該有機着色剤の溶液と水性媒体とを混合して、着色顔料を含む混合物を生成する工程;
iii)任意の順番で、a)該着色顔料を含む混合物、b)該有機基を含む少なくとも1つの芳香族アミン、c)少なくとも1つのジアゾ化剤、d)水性媒体、e)所望により少なくとも1つの酸、及びf)所望により少なくとも1つの第2の溶媒を混合して、該改質された着色顔料を含む混合物を生成する工程;並びに
iv)該混合物中の該改質された着色顔料の大きさを小さくする工程、
を含む、方法。
【請求項24】
該着色顔料が、工程ii)で生成される該混合物から分離されない、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
付加された少なくとも1つの有機基を有する顔料を含む改質された着色顔料を調製する方法であって、
i)第1の溶媒中で有機着色剤の溶液を生成する工程;
ii)該有機着色剤の溶液と水性媒体とを混合して着色顔料を含む混合物を生成する工程;
iii)該混合物中の該着色顔料の粒径を調整する工程;並びに
iv)任意の順番で、a)該着色顔料、b)該有機基を含む少なくとも1つの芳香族アミン、c)少なくとも1つのジアゾ化剤、d)水性媒体、e)所望により少なくとも1つの酸、及びf)所望により少なくとも1つの第2の溶媒を混合して、該改質された着色顔料を生成する工程、
を含む、方法。
【請求項26】
該着色顔料が、工程ii)で生成される該混合物から分離されない、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程iii)が粒径を小さくする工程である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
工程iv)で生成される該改質された着色顔料が水性分散体の形態である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
工程iv)で生成される該改質された着色顔料がプレスケーキの形態である、請求項25に記載の方法。

【公表番号】特表2011−510155(P2011−510155A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544335(P2010−544335)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/000432
【国際公開番号】WO2009/094178
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】