説明

改質アクリロニトリル重合体繊維、並びにその製造方法および用途

本発明は、改質アクリロニトリル重合体繊維、並びにその製造方法および用途に関するものである。当該繊維は動物毛の微粉末を改質組成分とし、アクリロニトリル重合体を繊維マトリックスとし、配合(重量%)は以下の通りである。アクリロニトリルモノマーは50.0〜98.9%であり、開始剤は0.1〜0.4%であり、動物毛の微粉末は1.0〜50.0%であり、各組成分の重量%の和は100%である。当該繊維の製造方法は下記のプロセスを含んでいる。1.動物毛の微粉末懸濁液の調製;2.改質アクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液の調製;3.改質アクリロニトリル重合体繊維の製造。本発明に係る繊維は人工合成毛髪の製造に適し、その外観および品質と性能は人毛により近く、自然的効果がよく、良好な人毛の代替性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維の製造技術に関し、より詳細には、動物毛の微粉末を改質成分とし、アクリロニトリル重合体を繊維マトリクッスとする、改質アクリロニトリル重合体繊維、並びにその製造方法および用途に関する。国際特許主分類番号はD01F 8/02(2006.01)。
【背景技術】
【0002】
合成毛髪は人毛の代替品であり、主に婦人用ウィッグおよび紳士用かつらなどに作製されている。一般に合成毛髪は重合体繊維を原料として作られている。前世紀70年代から各種の合成毛髪は十分に重視されている。現在、既に産業化した合成毛髪は、テレフタル酸ポリエチレン(ダクロン)、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル(アクリル繊維)の合成毛髪などを含んでいるが、これらの合成毛髪はいかなる蛋白質の成分をも含有していない。
【0003】
合成毛髪が、更に人間用に適し且つ人工毛髪製品市場を占有するためには、全部または大部分の人毛の性能を有するべきである。既に多数の特許出願は、合成毛髪の最適な製造技術を発見することを試みた。発明者は検索できる範囲で、本発明に係る従来技術として発見されたのは以下の通りである。国際特許出願WO2005/033384にはポリ塩化ビニルを用いた合成毛髪の新プロセスが開示され、当該合成毛髪は難燃性で一般の合成毛髪より優れている。国際特許出願WO2006/035868にもポリアルキレンテレフタレートに多種の難燃剤成分を添加することによって合成毛髪を製造するプロセスが開示されている。米国特許出願US2006/0024497にも特殊の断面構造を有し、光沢上で人毛により近いアクリロニトリル基の合成毛髪の製造技術が開示されている。上述の特許文献に記載されている合成毛髪は共通の欠点を有する。即ち、配合組成分は全てポリマー材料であり、いかなる蛋白質の組成分をも含有せず、本物の人毛の品質との相違が大きく、光沢、触感およびカール保持性などの外観指標方面でも人毛との相違を有している。
【0004】
国際特許出願WO2006/002572では、独自に羊毛蛋白質とポリビニルアルコールとを混合して生体蛋白質を含有する紡績繊維を製造する技術が開示されたが、当該羊毛蛋白質によって改質するポリビニルアルコール繊維は主に衣類用繊維のため、合成毛髪の製品に適していない。当該繊維の高い親水性はセットした後、防水性を有していないので、髪型を保持することができず、カール保持性は人毛に匹敵するほどの良さが見られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点に対して、本発明の解決しようとする課題は、改質アクリロニトリル重合体繊維、並びにその製造方法および用途を提案することにある。当該繊維は改質成分として動物毛の微粉末を用い、アクリロニトリル重合体を繊維マトリックスとし、配合組成分と品質性能とも人毛に近い改質アクリロニトリル重合体繊維を製造する。当該繊維の製造方法は簡単であり、生産コストが低く、特別な設備は必要がなく、容易に広く実施できる。当該繊維は特に人工合成毛髪に適し、人工毛の代替品として作られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、前記繊維の技術課題を解決する技術方案は以下の通りである。
改質アクリロニトリル重合体繊維を提案し、その改質繊維は動物毛の微粉末を改質組成分とし、アクリロニトリル重合体を繊維マトリックスとし、その配合(重量%)は以下の通りである。
アクリロニトリルモノマー 50.0〜98.9%
開始剤 0.1〜0.4%
動物毛の微粉末 1.0〜50.0%
なお、各組成分の重量%の和は100%である。
【0007】
前記アクリロニトリルモノマーは、少なくともアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびブテンニトリルの中の一種である。前記アクリロニトリル重合体の分子量は15,000〜120,000である。
【0008】
前記開始剤は、遊離基開始剤である、少なくともアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソへプトニトリルもしくは過酸化ベンゾイルの中の一種を含んでいる、または、酸化-還元開始剤である、少なくとも過硫酸カリウム-亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム-亜硫酸水素ナトリウム、塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウムもしくは次亜塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウムの中の一種を含んでいる。
【0009】
前記動物毛の微粉末は、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維から機械的な加工法によって作られた微粉末である。動物毛の微粉末粒子の平均直径は0.01〜10μmである。
【0010】
本発明では、前記繊維製造方法の技術課題を解決する技術方案が以下の通りである。
改質アクリロニトリル重合体繊維製造方法を提案し、その改質繊維は本発明に係る改質アクリロニトリル重合体繊維の配合(重量%)に基づき、以下のプロセスを用いて製造する。
【0011】
1.動物毛の微粉末懸濁液の調製
まず、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む動物毛を機械的な加工法によって動物毛の微粉末に作らせている。得られた動物毛の微粉末をアクリロニトリル重合体の溶剤に均一に混合させ、動物毛の微粉末懸濁液が作られている。
【0012】
前記アクリロニトリル重合体の溶剤は、濃度50〜70重量%(重量%であり、以下は同じ)の塩化亜鉛、濃度60〜73%の硝酸もしくは濃度45〜58%のチオシアン酸ナトリウム水溶液中の一種であり、または、N, N-ジメチルホルムアミド、N, N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、エチレンカーボネートの中の一種である。
【0013】
2.改質アクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液の調製
30〜70℃の温度で、前記配合の開始剤を利用して、前記動物毛の微粉末懸濁液中でアクリロニトリルモノマーと、または存在可能な第二モノマーまたは/および第三モノマーとの重合反応を開始させ、反応時間は2〜10時間であり、動物毛の微粉末を含有する改質アクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液が調製されている。または得られた動物毛の微粉末懸濁液を濾過して、ウェットケーキとして得られた後、またアクリロニトリルモノマーの重合体と、または存在可能な第二モノマーまたは/および第三モノマーの共重合体の溶液とを配合に記載された比例(割合)に基づき、均一に混合させ、改質アクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液が調製されている。前記改質アクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液の濃度は15〜45重量%である。
【0014】
3.改質アクリロニトリル重合体繊維の製造
得られた改質アクリロニトリル重合体の紡糸原液で溶液紡糸のプロセスによって前記改質アクリロニトリル重合体繊維が作られている。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比較して、本発明の改質アクリロニトリル重合体繊維の配合成分に適量の動物毛の微粉末を含有し、且つアクリロニトリル重合体を繊維マトリックスとし、その組成分かまたは品質か性能かにかかわらず、人毛により近く、自然的効果がよく、良好な人毛の代替性を有する。しかも製造のプロセスが簡単であり、コストが低く、特殊の設備による加工処理は必要がなく、工業的に実施しやすい。本発明の改質アクリロニトリル重合体繊維は特にウィッグおよびかつらなどの人毛の代替品または装飾品により適し、本物の人毛の外観および品質により近く、人毛を模倣、代替する効果が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施例を併せて本発明についてより詳細に説明する。
本発明の改質アクリロニトリル重合体繊維(以下改質繊維と言う)は、動物毛の微粉末を改質組成分とし、アクリロニトリル重合体を繊維マトリックスとし、その配合(重量%)は以下の通りである。
アクリロニトリルモノマー 50.0〜98.9%
開始剤 0.1〜0.4%
動物毛の微粉末 1.0〜50.0%
なお、各組成分の重量%の和は100%である。
【0017】
前記アクリロニトリルモノマーは、少なくともアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびブテンニトリルの中の一種である。前記アクリロニトリル重合体の分子量は15,000〜120,000である。
【0018】
前記開始剤は遊離基開始剤であってもよく、少なくともアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソへプトニトリルもしくは過酸化ベンゾイルの中の一種を含んでいる、または、酸化-還元開始剤であってもよく、少なくとも過硫酸カリウム-亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム-亜硫酸水素ナトリウム、塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウムもしくは次亜塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウムの中の一種を含んでいる。
【0019】
前記動物毛の微粉末は、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維であり、機械的な加工法によって微粉末が作られている。動物毛の微粉末粒子平均直径は0.01〜10μmである。
【0020】
前記改質繊維の配合は本発明の基礎配合である。前記改質繊維の基礎配合の中での開始剤の含有量は極めて小さく、ある配合の比例(割合)で、それらを加え100%を超える時、前記配合の中に相応に比例するアクリロニトリルモノマーまたは動物毛の微粉末の何れかの一種または二種の成分を任意に増減でき、前記配合の重量%の和は100%であることを達成する。
【0021】
本発明に係る改質繊維中の前記アクリロニトリルモノマーは、少なくともアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびブテンニトリルの中の一種である。異なるアクリロニトリルモノマーを選択するのは、本発明の実施に影響を及ぼさないが、各種のアクリロニトリルモノマーの価格は異なることによって、主に最終製品のコストと価格には影響を及ぼす。
【0022】
改質繊維に良い難燃性、カール保持性および自然な光沢などの品質を持たせるように、本発明の前記改質繊維の基礎配合の中にアクリロニトリルモノマーと共重合する第二モノマーが含有されることができる。前記第二モノマーは、少なくともアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、スチレン、メチルスチレン、ビニルアセテート、メチレン琥珀酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンおよび弗化ビニリデンの中の一種である。
【0023】
第二モノマーを加えた後、本発明に係る改質繊維の配合(重量%)を以下のように調整する。
アクリロニトリルモノマー 30.0〜96.9%
開始剤 0.1〜0.4%
動物毛の微粉末 1.0〜50.0%
第二モノマー 2.0〜20.0%
なお、各組成分の重量%の和は100%である。
【0024】
全原料中には第二モノマーが2.0〜20.0重量%であり、3.0〜18.0重量%が好ましく、5.0〜15.0重量%がより好ましい。第二モノマーの比例(割合)が低すぎると、アクリロニトリル重合体繊維の構造および性能を改良できないが、第二モノマーの比例(割合)が高すぎると、改質繊維の性能とアクリロニトリル重合体繊維の性能との相違が大き過ぎてしまい、アクリロニトリル重合体繊維の本来の触感および嵩高性などの特性を失う。
【0025】
前記改質繊維の調整した配合は、第二モノマーを加える時、前記基礎配合に相応に比例するアクリロニトリルモノマーまたは動物毛の微粉末中の何れかの一種または二種成分を任意に増減でき、前記配合の重量%の和が100%であることを達成する。
【0026】
前記第二モノマーが選択された物質は全面的または部分的に前記難燃性を改良する要求を満たすことができる。第二モノマーは少なくとも塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンおよび弗化ビニリデンなどの中の一種を選択する場合、作られた改質繊維はより良い難燃性を有し、その極限酸素指数は第二モノマーの含有量の違いによって高く22〜28重量%に達することができ、或いは更に高い。難燃性は改質繊維の人工合成毛髪にとって極めて重要である。従って、本発明はこれらの第二モノマーが好ましい。勿論、製品の用途に応じて前記他の種類の第二モノマーを用いてもよい。
【0027】
本発明に係る改質繊維は前記第二モノマーの種類および用量を制御する方法によって、前記改質繊維の成分および構造をスムーズに制御でき、難燃性、カール保持性および自然な光沢を有する改質繊維の系列製品が作られている。
【0028】
本発明に係る改質繊維の配合の中に第三モノマーを提案してもよい。第三モノマーを加えた後、本発明に係る改質繊維の配合(重量%)を以下のように調整する。
アクリロニトリルモノマー 20.0〜96.8%
開始剤 0.1〜0.4%
動物毛の微粉末 1.0〜50.0%
第二モノマー 2.0〜20.0%
第三モノマー 0.1〜10.0%
なお、各組成分の重量%の和は100%である。
【0029】
前記第三モノマーは、染料親和基を含有する物質を選択し、例えば、少なくともメタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、エチレンスルホン酸ナトリウム、スルフォアルキルアクリレートおよびスルフォアルキルメタクリルアミドの中の一種である。第三モノマーを加える目的は主に、本発明に係る改質繊維の染色性を改良するためである。
【0030】
前記改質繊維の調整した配合では、第三モノマーを加える時、前記配合に相応に比例するアクリロニトリルモノマー、第二モノマーまたは動物毛の微粉末中の何れかの一種または二種または三種成分を任意に増減でき、前記配合の重量%の和が100%であることを達成する。
【0031】
配合系の全原料中には前記第三モノマーの含有量が0.1〜10.0重量%であればよいが、含有量は0.4〜4.0重量%が好ましく、0.5〜3.0重量%がより好ましい。
【0032】
容易に理解できることだが、本発明に係る基礎配合に単独に前記第三モノマーを加え、または、第二モノマーおよび第三モノマーを同時に加えても実施でき、ただ前記配合を合理的、適当的に調製すればよい。第三モノマーを加えるとき、本発明に係る改質繊維は、配合の組成分の物質の改良およびその含有量の選択によって改質繊維の系列製品が様々に造られる。
【0033】
同時に、本発明は前記改質繊維の製造方法を提案し、その改質繊維は本発明に係る改質繊維の配合(重量%)に基づき、以下のプロセスを用いて製造する。
【0034】
1.動物毛の微粉末懸濁液の調製
まず、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維から機械的な加工法によって粒子平均直径が0.01〜10μmである動物毛の微粉末が作られている。また得られた動物毛の微粉末をアクリロニトリル重合体の溶剤と均一に混合させ、動物毛の微粉末懸濁液が調製されている。前記アクリロニトリル重合体の溶剤は濃度50〜70重量%の塩化亜鉛、濃度60〜73重量%の硝酸もしくは濃度45〜58重量%のチオシアン酸ナトリウム水溶液中の一種であり、または、N, N-ジメチルホルムアミド、N, N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、エチレンカーボネートの中の一種である。
【0035】
2.改質繊維の紡糸原液の調製
30〜70℃の温度で、本発明に係る改質繊維の配合に記載された開始剤を利用して、前記動物毛の微粉末懸濁液中でアクリロニトリルモノマーとの重合反応を開始させ、反応時間は2〜10時間であり、動物毛の微粉末を含有する改質繊維の紡糸原液が調製されているか、または得られた動物毛の微粉末懸濁液を濾過して、ウェットケーキとして得られた後、またアクリロニトリルモノマーの重合体の溶液を配合に記載された比例(割合)に基づき、均一に混合させ、改質繊維の紡糸原液が調製されている。前記改質繊維の紡糸原液の濃度は15〜45重量%である。
【0036】
前記改質繊維の配合を調整する時、即ち第二モノマーまたは第三モノマーを単独に加えるか、または第二モノマーと第三モノマーを同時に加えることを提案する時、前記配合に記載された開始剤を利用して、動物毛の微粉末懸濁液中でアクリロニトリルモノマーとの重合反応を同様に開始させることができ、ただ提案した比例(割合)の要求によって動物毛の微粉末懸濁液中で開始させると同時に第二モノマーを加えるか、または開始させると同時に第二モノマーと第三モノマーを同時に加えればよい。または、まずアクリロニトリルモノマーの重合体溶液が調製されるか、または第二モノマーもしくは第三モノマーを単独に加えたアクリロニトリルモノマーの共重合体溶液が調製されるか、または第二モノマーおよび第三モノマーを同時に加えたアクリロニトリルモノマーの共重合体溶液が調製されている。そして前記改質繊維の紡糸原液の配合(重量%)によって前記動物毛の微粉末懸濁液を加え、改質繊維の紡糸原液が調製されている。簡略に言えば、前記パラメータの範囲内で前記配合の組成分および含有量を調整するのは、本発明に係る改質繊維の製造方法の実施に影響を及ぼさない
【0037】
3.改質アクリロニトリル重合体繊維の製造
得られた改質繊維の紡糸原液で溶液紡糸の技術によって前記改質繊維が作られている。
【0038】
本発明に係る改質繊維の製造方法に記載されたアクリロニトリル重合物の重合過程では、前記遊離基開始剤または酸化-還元開始剤を用いて開始させる。前記遊離基開始剤として好ましくは少なくともアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソへプトニトリル、もしくは過酸化ベンゾイルの中の一種であるか、または、前記酸化-還元開始剤として好ましくは少なくとも過硫酸カリウム-亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム-亜硫酸水素ナトリウム、塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウム、もしくは次亜塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウムの中の一種である。これらの開始剤は更に本発明に係る改質繊維の共重合反応の開始剤に適用している。研究実験により以下のことが明らかになった。前記開始剤の用量は全原料の総重量の0.1〜0.4重量%(重量%であり、以下は同じ)であり、0.1〜0.35%が好ましく、0.1〜0.3%がより好ましい。開始剤の用量が低すぎると、重合反応の誘導期は長く、生産性の向上に不利であり、開始剤の用量が高すぎると、反応速度が速すぎ、爆発的に重合を引き起こし、重合反応過程を効果的に制御することができなくなる。
【0039】
生成したアクリロニトリル重合体の分子量分布をよりよく制御するため、本発明に係るアクリロニトリルモノマーと、アクリロニトリルモノマーおよび第二モノマーまたは第三モノマーと、またはアクリロニトリルモノマー、第二モノマーおよび第三モノマーとの重合反応の過程(または配合)では、一定量の連鎖移動剤を加えてよい。前記連鎖移動剤は、少なくともドデシルメルカプタン、N-オクチルメルカプタン、β-メルカプトエタノールおよびイソプロパノールの中の一種を選択できる。
【0040】
前記連鎖移動剤の用量は、全原料の総重量の0.1〜0.6重量%であり、0.1〜0.5重量%が好ましく、0.2〜0.4重量%がより好ましい。研究実験により以下のことが明らかになった。連鎖移動剤の用量が0.2重量%(重量%であり、以下は同じ)より小さい時、アクリロニトリル共重合体の分子量分布を効果的に制御することが容易ではなく、その用量が0.4%より大きい時、容易に浪費になるだけでなく、重合体分子量が低下することになり、アクリロニトリル共重合体の品質が低下する。前記繊維の調整した配合では、加えられた連鎖移動剤の含有量が極めて小さく、ある配合比例で、連鎖移動剤を加えて100%を超える時、前記配合に相応に比例するアクリロニトリルモノマー、第二モノマー、第三モノマーまたは動物毛の微粉末中の何れかの一種または二種または多種成分を任意に増減でき、前記配合の重量%の和が100%であることを達成する。
【0041】
前記動物毛は前記動物毛を含むことだけでなく、前記動物の絨毛も含んでいる。本発明の動物毛の微粉末は任意の長さ、任意の直径の毛髪を用いて製造でき、具体的には収集された人毛または髪屑を選別して、不純物を除去した後、水洗、乾燥、あら粉砕して、そして微粉末に研磨されている。
【0042】
本発明に係る動物毛の微粉末粒子の平均直径は0.01〜10μmに制御すべきであり、0.03〜5μmが好ましく、0.05〜3μmがより好ましい。動物毛の微粉末粒子直径が0.05μmより小さい時、その特大の比表面積によって改質ポリアクリロニトリル溶液との混合は困難になり、凝集粒子を容易に生じ、同時に、加工難度およびコストが増加する。動物毛の微粉末粒子直径が3μmより大きい時、紡糸溶液の濾過が困難になり、紡糸板を閉塞する事態を招く。
【0043】
本発明に係る改質繊維中の動物毛の微粉末の含有量が1.0〜50.0重量%(重量%であり、以下は同じ)であり、5.0〜45.0%が好ましい。動物毛の微粉末の含有量が5.0%より小さいと、改質効果は明らかではなく、本発明の意味を失う。動物毛の微粉末の含有量が45%より大きいと、紡糸プロセスの困難さは増加され、作られた改質繊維の物理力学的性能が低下する。しかし、動物毛の微粉末の含有量が45%以上である改質繊維を製造できないという意味ではない。
【0044】
本発明に係る動物毛の微粉末の機械的な加工法は、気流粉砕法、ボールミル法または研磨法などの多種の方法を含む。その中の研磨法は攪拌ボールミル法、振動ボールミル法、高圧ローラーミル法またはコロイドミル法などは本発明に係る動物毛の微粉末の加工要求を更に満足できる。これらの設備は動物毛の微粉末を加工する時、特別の改装は必要がなく、ただ加工する動物毛の種類によって研磨プロセスを調整することだけが必要である。この調整は所定粒径の動物毛の微粉末を加工できることを目的とし、一般の専門技術者の知識および技能範囲を超えていない。
【0045】
本発明に係る改質繊維の動物毛の微粉末懸濁液を調製する過程では、前記アクリロニトリル重合体の溶剤はアクリロニトリル重合体の無機溶剤であってもよく、例えば、濃度50〜70重量%の塩化亜鉛、濃度60〜73重量%の硝酸、または濃度45〜58重量%のチオシアン酸ナトリウム水溶液中の一種であってもよく、有機溶剤であってもよく、例えばN, N-ジメチルホルムアミド、N, N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、エチレンカーボネートなどの中の一種であってもよい。前記塩化亜鉛水溶液の濃度は53〜67重量%が好ましく、硝酸水溶液の濃度は63〜70重量%が好ましく、チオシアン酸ナトリウム水溶液の濃度は48〜55重量%が好ましい。前記水溶液の濃度が高すぎると、容易に浪費になり、溶剤回収プロセスが複雑化になり、濃度が低すぎると、溶解能力の不足を容易に生じ、原液の安定性を低下させる。前記有機溶剤にいかなる水分を含有してはならず、さもなければ溶解能力の低下を引き起こす。
【0046】
本発明に係る改質繊維の紡糸原液の濃度を15〜45重量%にする。作られた前記改質繊維を人工合成毛髪に用いる時、その紡糸原液の濃度は一般のアクリロニトリル重合体の紡糸原液の濃度より高いことが要求されている。従って、アクリロニトリル重合体および動物毛の微粉末などの成分が紡糸溶液中における含有量が通常21〜40重量%であり、23〜38重量%が好ましく、25〜35重量%がより好ましい。原液濃度が25重量%より低いと、その粘度が低くなり、内部に隙間がなく、緻密な構造である人工合成毛髪を形成しにくい。原液濃度が35重量%より大きいと、原液の凝集化を容易に生じる傾向がひどくなって、安定性が低下する事態を招く。
【0047】
本発明に係る改質繊維の紡糸原液の製造方法は以下の二つである。一つ目は30〜70℃の温度で、前記配合開始剤を利用して、前記動物毛の微粉末懸濁液中でアクリロニトリルモノマーとの重合反応を開始させ、反応時間が2〜10時間であり、動物毛の微粉末を含有する改質繊維の紡糸原液が調製されている。二つ目は30〜70℃の温度で、得られた動物毛の微粉末懸濁液を濾過して、ウェットケーキとして得られた後、またアクリロニトリルモノマーの重合体の溶液を配合に記載された比例(割合)に基づき、均一に混合させ、直接に改質繊維の紡糸原液が調製されている。
【0048】
本発明に係る改質繊維は特に人工合成毛髪に適用され、ウィッグおよびかつらなどの人毛の代替品または装飾品の製造に用いれている。
【0049】
本発明に係る溶液紡糸技術は湿式紡糸、乾式紡糸および乾湿式紡糸などの通常の紡糸方法を含む。これらの方法はすべて本発明の改質繊維の製造に適用している。本発明に係る改質繊維の紡糸プロセスは一般の改質ポリアクリロニトリル繊維の紡糸プロセスと同じであり、紡糸温度、繊維の水洗、延伸および熱処理を含むプロセスなどは、一般の改質ポリアクリロニトリル繊維の紡糸プロセスと明らかな区別がない。しかし、本発明に係る改質繊維は人工合成毛髪に用いられる時、その紡糸原液の濃度が高いので、紡糸孔の直径がより大きい紡糸板を選択すべきである。さもなければ原液の押出しが困難になりやすい。一般の衣類用繊維の溶液紡糸の紡糸板の孔径が0.05〜0.15mmであるが、本発明の人工合成毛髪の改質繊維を製造する過程のための紡糸板の孔径が一般に0.15〜0.60mmであり、0.18〜0.55mmが好ましく、0.20〜0.50mmがより好ましい。実施過程では、紡糸孔の孔径は紡糸成形の状況によって調整すべきであり、この調整は専門技術者の知識および技能の範囲を超えない。
【0050】
周知のように、一般の紡織用繊維の繊度は10dtex以下である。人毛の直径は人種、性別、遺伝および年齢などの要素に関連しているが、一般にその繊度が30〜100dtexである。前記改質繊維の人工合成毛髪の外観および性能は人毛により近いため、まず、その繊度は人毛に近いべきである。本発明の改質繊維を人工合成繊維として用いられる時、その繊度が30〜100dtexにして、且つ製品の設計要求によって調節できる。しかし、それは単糸繊度30〜100dtex範囲以外の改質繊維が本発明に係る配合および製造方法を利用して製造できない意味ではない。緻密な構造である、高繊度の、動物毛の微粉末に改質された繊維の人工合成毛髪が得られることを保証するため、本発明は高濃度の紡糸原液を採用したが(上述したように)、通常の紡織用繊維の原液濃度は一般に20%を超えない。
【0051】
本発明に係る改質繊維の溶液紡糸方法は、アクリロニトリル重合体の分子量の大きさおよび分子量の分布状況に関連する。本発明の目的を達成するため、特に人工合成毛髪に用いられる時、前記重合体の分子量が15,000〜120,000にして、20,000〜100,000が好ましく、25,000〜90,000がより好ましい。重合体の分子量が25,000より小さい時、溶液の粘度が低く、形成された繊維の物理力学的性能が悪く、分子量が90,000より大きい時、溶液粘度が高すぎになりやすく、紡糸は困難になる事態を招く。
【0052】
研究実験により以下のことが明らかになった。本発明の技術によって作られた人工合成毛髪は配合組成で人毛に近く、触感、光沢、難燃性、染色性などの面で天然人毛に非常に近く、一般の合成毛髪より明らかに優れており、自然的効果がよいので、人工合成毛髪と呼ばれている。ウィッグおよびかつらなどの人毛の代替品または装飾品を製造するため、人体および皮膚にとって親和性を有し、同時にその加工方法が簡単であり、コストが安く、その開発、応用に対して広々とした前途がある。
なお、本発明に関して未説明の部分は、従来技術に関する説明が適用される。
【実施例】
【0053】
以下、人工合成毛髪の具体実施例によって更に本発明を説明するが、本発明の保護範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
人毛の屑(長さ1〜5mm)中の不純物を除去し、15Lの攪拌ボールミルに水洗、乾燥した人毛屑2000gを投入し、それぞれΦ5mmとΦ2mmの酸化ジルコニウムの研磨球1000gと2000g及び脱イオン水を加え、室温で攪拌ボールミル6時間を行った。得られた混合液を濾過して、酸化ジルコニウム研磨球を取除いた後、顕微鏡で観察し、大部分の人毛は既に球状粉末に研磨されたが、少量の棒状粒子が存在している時、引続きコロイドミルで研磨を2時間行い、球状粒子が得られた。そして濾過して含水の人毛の微粉末3500gが得られた。試料採取と分析の結果、その中に人毛の微粉末1900gを含有し、粒子の直径は0.05〜2.1μmであり、大体球状粉末であった。余分の水分を濾過、除去して、人毛の微粉末のウェットケーキとして得られた。
【0055】
機械的攪拌器と還流凝縮管を備える15Lの重合釜にそれぞれ脱イオン水1500g、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、窒素ガスを通じて反応釜を洗浄した後、それぞれアクリロニトリル5000g、臭化ビニリデン2000g、メタリルスルホン酸ナトリウム215gおよびドデシルメルカプタン29gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸アンモニウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム30gを加え、45℃の温度で3時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止する。上記得られた人毛の微粉末を反応釜に投入し、均一に攪拌して、人毛の微粉末を含有する人工合成毛髪の紡糸原液が得られた。70℃の温度で真空脱気を行った後、1.20ml/回転の定量ポンプによって計量して、72孔×0.3mmの紡糸板中に押出され、20重量%の塩化亜鉛水溶液に進入して、凝固させ、且つ通常プロセスの水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、巻取って前記人工合成毛髪が得られた。
【0056】
当該人工合成毛髪の繊度は93dtexであり、人毛の微粉末21.2重量%を含有し、極限酸素指数は28である。その触感、外観、染色およびカール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらの製品は良好な、自然的効果を有し、良好な内部品質および外観風合いを有している。
【0057】
(実施例2)
実施例1と同様なプロセスによって人毛の微粉末のウェットケーキを作製し、そして脱イオン水1200gを加える。機械的攪拌器と還流凝縮管を備える15Lの重合釜に人毛の微粉末を投入し、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、窒素ガスを通じて反応釜を洗浄した後、それぞれメタクリロニトリル5000g、塩化ビニリデン2000g、アリルスルホン酸ナトリウム215gおよびイソプロパノール29gを加え、均一に攪拌した後、また過酸化ベンゾイル45gを加え、55℃の温度で5時間攪拌して反応させ、人毛の微粉末を含有する紡糸原液が得られ、70℃の温度で真空脱気を行った後、1.20ml/回転の定量ポンプによって計量して、72孔×0.3mmの紡糸板中に押出され、10cmの空気層を通じて凝固させた後、20重量%の塩化亜鉛水溶液中に進入して、凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、巻取って前記人工合成毛髪が得られた。
【0058】
当該人工合成毛髪の繊度は94dtexであり、人毛の微粉末22重量%を含有し、極限酸素指数は28である。その触感、外観、染色およびカール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらの製品は良好な、自然的効果を有し、良好な内部品質を有している。
【0059】
(実施例3)
実施例1と同様なプロセスによって人毛の微粉末のウェットケーキを作製し、そして脱イオン水2000gを加え、懸濁液が作られている。
機械的攪拌器と還流凝縮管を備える15Lの重合釜に人毛の微粉末懸濁液を投入し、チオシアン酸ナトリウム2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、窒素ガスを通じて反応釜を洗浄した後、それぞれアクリロニトリル5000g、メタクリロニトリル2000g、アリルスルホン酸ナトリウム215gおよびドデシルメルカプタン29gを加え、均一に攪拌した後、またアゾビスイソブチロニトリル45gを加え、55℃の温度で5時間攪拌して反応させ、人毛の微粉末を含有する紡糸原液が得られ、70℃の温度で真空脱気を行った後、1.20ml/回転の定量ポンプによって計量して、72孔×0.4mmの紡糸板中に押出され、20重量%のチオシアン酸ナトリウム水溶液中に進入して、凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、巻取って前記人工合成毛髪が得られた。
【0060】
当該人工合成毛髪の繊度は98dtexであり、人毛の微粉末20重量%を含有し、極限酸素指数は20である。その触感、外観、染色およびカール保持性は、人毛に近く、加工されたウィッグおよびかつらの製品は良好な、自然的効果を有し、良好な品質および風合いを有している。
【0061】
(実施例4)
羊毛中の不純物を除去し、15Lの攪拌ボールミルに水洗、乾燥した羊毛2000gを投入し、それぞれΦ6mmとΦ3mmの三酸化二アルミニウムの研磨球1000gと2000g及びN, N-ジメチルホルムアミド4000gを加え、室温で攪拌ボールミル10時間を行った。得られた混合液を濾過して、三酸化二アルミニウムの研磨球を取除いた後、顕微鏡で観察し、大部分の羊毛は既に球状粉末に研磨された時、引続きコロイドミルで研磨を3時間行い、球状粒子が得られた。そして濾過してN, N-ジメチルホルムアミドを含有する羊毛の微粉末3500gが得られた。試料採取と分析の結果、その中に羊毛の微粉末1900gを含有し、粒子の直径は0.06〜2.3μmであり、大体は球状粉末であった。
【0062】
機械的攪拌器と還流凝縮管を備える15Lの重合釜に羊毛の微粉末懸濁液を投入し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、窒素ガスを通じて反応釜を洗浄した後、それぞれアクリロニトリル5215g、塩化ビニリデン2000gおよびN-オクチルメルカプタン29gを加え、均一に攪拌した後、また過酸化ベンゾイル45gを加え、55℃の温度で5時間攪拌して反応させ、羊毛の微粉末を含有する紡糸原液が得られ、70℃の温度で真空脱気を行った後、1.20ml/回転の定量ポンプによって計量して、72孔×0.3mmの紡糸板中に押出され、10cmの空気層を通じて凝固させた後、40重量%のN, N-ジメチルホルムアミド水溶液中に進入して、凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、巻取って前記人工合成毛髪が得られた。
【0063】
当該人工合成毛髪の繊度は120dtexであり、羊毛の微粉末20重量%を含有し、極限酸素指数は29である。その触感、外観およびカール保持性は、人毛に十分に近く、第三モノマーを含有せず、染色性は悪いが、加工されたウィッグおよびかつらの製品は良好な品質および風合いを有している。
【0064】
(実施例5)
実施例4と同様なプロセスによって羊毛の微粉末100gを作製する。
機械的攪拌器と還流凝縮管を備える15Lの重合釜にジメチルスルホキシド3000gを加え、反応釜中の温度を50℃に制御し、窒素ガスを通じて反応釜を洗浄した後、それぞれアクリロニトリル3000g、メタクリロニトリル1000g、ブテンニトリル1000g、弗化ビニリデン2000g、p-スチレンスルホン酸ナトリウム300gおよびドデシルメルカプタン29gを加え、均一に攪拌した後、またアゾビスイソへプトニトリル45gを加え、60℃の温度で5時間攪拌して反応させ、アクリロニトリル重合体の溶液が得られ、上述の羊毛の微粉末を加え、60℃の温度で均一に攪拌し、羊毛の微粉末を含有する紡糸原液が得られ、70℃の温度で真空脱気を行った後、2.40ml/回転の定量ポンプによって計量して、108孔×0.3mmの紡糸板中に押出され、10cmの空気層を通じて凝固させた後、40重量%のジメチルスルホキシド水溶液中に進入して、凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、巻取って前記人工合成毛髪が得られた。
【0065】
当該人工合成毛髪の繊度は95dtexであり、羊毛の微粉末5重量%を含有し、極限酸素指数は26である。その触感、外観、染色性およびカール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらの製品は良好な、自然的効果を有し、良好な品質および風合いを有している。
【0066】
(実施例6)
駱駝毛中の不純物を除去し、水洗、乾燥した駱駝毛1600gを15Lの振動ボールミルで粉砕し、200メッシュの駱駝毛の微粉末1500gが得られ、N, N-ジメチルアセトアミド2200gに混入された後、引続きコロイドミルで研磨を2時間行った。そして濾過してN, N-ジメチルアセトアミドを含有する駱駝毛の微粉末3000gが得られ、試料採取と分析の結果、その中に駱駝毛の微粉末1400gを含有し、粒子の直径は0.08〜2.9μmであり、全部は球状粉末であった。駱駝毛の微粉末を濾過して、ウェットケーキとして得られた。
【0067】
機械的攪拌器と還流凝縮管を備える15Lの重合釜にN, N-ジメチルアセトアミド3500gを加え、反応釜中の温度を65℃に制御し、窒素ガスを通じて反応釜を洗浄した後、それぞれアクリロニトリル5000g、弗化ビニリデン2000g、メタリルスルホン酸ナトリウム200g、スチレンスルホン酸ナトリウム15gおよびβ-メルカプトエタノール24gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸カリウム30g、亜硫酸水素ナトリウム10gを加え、50℃の温度で4時間攪拌して反応させ、攪拌を停止する。反応釜に上述の駱駝毛の微粉末ウェットケーキを投入し、均一に攪拌して、駱駝毛の微粉末を含有する紡糸原液が得られ、原液の温度を65℃に制御し、2.40ml/回転の定量ポンプによって計量して、98孔×0.25mmの紡糸板中に押出され、45重量%のN, N-ジメチルアセトアミド水溶液中に進入して、凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、巻取って前記人工合成毛髪が得られた。
【0068】
当該人工合成毛髪の繊度は86dtexであり、動物毛の微粉末16.3重量%を含有し、極限酸素指数は27である。その触感、外観、染色性およびカール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらの製品は良好な、自然的効果を有し、良好な品質および風合いを有している。
【0069】
(実施例7)
実施例6と同様なプロセスおよび組成によって駱駝毛の微粉末を含有する紡糸原液を調製し、そして紡糸原液は98孔×0.25mmの紡糸板を通じて温度が150℃にした紡糸糸道に進入させ、乾燥して、溶剤を除去した後、前記人工合成毛髪が得られた。
【0070】
当該人工合成毛髪の繊度は85dtexであり、動物毛の微粉末16.3重量%を含有し、極限酸素指数は27である。その触感、外観、染色性およびカール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらの製品は良好な、自然的効果を有し、良好な品質および風合いを有している。
【0071】
(実施例8)
実施例6と同様なプロセスおよび組成によって駱駝毛の微粉末を含有する紡糸原液を調製し、そして紡糸原液は98孔×0.25mmの紡糸板を通じて直接にN, N-ジメチルアセトアミド45重量%を含有する水溶液に進入して、凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、巻取って前記人工合成毛髪が得られた。
【0072】
当該人工合成毛髪の繊度は86dtexであり、動物毛の微粉末16.3重量%を含有し、極限酸素指数は27である。その触感、外観、染色性およびカール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらの製品は良好な、自然的効果を有し、良好な品質および風合いを有している。
【0073】
(実施例9〜13)
それぞれ羊毛、駱駝毛、兎毛、馬毛およびヤク毛を実施例1中の人毛の屑に代替し、前記動物毛の微粉末が作られる以外は、実施例1と同様である。
【0074】
(実施例14〜18)
それぞれ人毛、駱駝毛、兎毛、馬毛およびヤク毛を実施例4中の羊毛に代替し、前記動物毛の微粉末が作られる以外は、実施例4と同様である。
【0075】
(実施例19〜23)
それぞれ人毛の屑、羊毛、兎毛、馬毛およびヤク毛を実施例6中の駱駝毛に代替し、前記動物毛の微粉末が作られる以外は、実施例6と同様である。
【0076】
(比較例)
機械的攪拌器と還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水1500gを加え、窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にアクリロニトリル1500g、アクリル酸メチル100g、メタリルスルホン酸ナトリウム41.5gおよびイソプロパノール32gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸アンモニウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム29gを加え、50℃の温度で3時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な改質したアクリロニトリルの紡糸原液が得られた。2.40ml/回転の定量ポンプによって計量して、200孔×0.15mmの紡糸板に進入し紡糸させ、脱イオン水の溶液中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が76 dtexである繊維束が得られた。
【0077】
当該繊維の組成、触感および外観品質は、人毛と明らかな相違を有し、低級のウィッグおよびかつらの人工合成毛髪の製品にしか適用できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質アクリロニトリル重合体繊維であって、その改質繊維は動物毛の微粉末を改質組成分とし、アクリロニトリル重合体を繊維マトリクッスとし、その配合(重量%)は以下の通りであり、
アクリロニトリルモノマー 50.0〜98.9%
開始剤 0.1〜0.4%
動物毛の微粉末 1.0〜50.0%
各組成分の重量%の和は100%であり、
前記アクリロニトリルモノマーは、少なくともアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびブテンニトリルの中の一種であり、前記アクリロニトリル重合体の分子量は15,000〜120,000であり、
前記開始剤は、遊離基開始剤である、少なくともアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソへプトニトリル、もしくは過酸化ベンゾイルの中の一種を含み、または、酸化-還元開始剤である、少なくとも過硫酸カリウム-亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム-亜硫酸水素ナトリウム、塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウム、もしくは次亜塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウムの中の一種を含み、
前記動物毛の微粉末は、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維から機械的方法によって加工、作製された微粉末であり、前記動物毛の微粉末粒子の平均直径は0.01〜10μmである、
ことを特徴とする改質アクリロニトリル重合体繊維。
【請求項2】
前記配合(重量%)の中に第二モノマーを更に含有し、その配合(重量%)は以下の通りに調整されているものであり、
アクリロニトリルモノマー 30.0〜96.9%
開始剤 0.1〜0.4%
動物毛の微粉末 1.0〜50.0%
第二モノマー 2.0〜20.0%
各組成分の重量%の和は100%であり、
前記第二モノマーは、少なくともアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、スチレン、メチルスチレン、酢酸ビニル、メチレン琥珀酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンおよび弗化ビニリデンの中の一種である、
ことを特徴とする請求項1記載の改質アクリロニトリル重合体繊維。
【請求項3】
前記配合(重量%)の中に第三モノマーを更に含有し、その配合(重量%)は以下の通りに調整されているものであり、
アクリロニトリルモノマー 20.0〜96.8%
開始剤 0.1〜0.4%
動物毛の微粉末 1.0〜50.0%
第二モノマー 2.0〜20.0%
第三モノマー 0.1〜10.0%
各組成分の重量%の和は100%であり、
前記第三モノマーは、少なくともメタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、エチレンスルホン酸ナトリウム、スルフォアルキルアクリレートおよびスルフォアルキルメタクリルアミドの中の一種である、
ことを特徴とする請求項2記載のアクリロニトリル重合体繊維。
【請求項4】
前記配合(重量%)中に更に0.1〜0.6%の連鎖移動剤を含有し、前記連鎖移動剤は、少なくともドデシルメルカプタン、N-オクチルメルカプタン、β-メルカプトエタノールおよびイソプロパノールの中の一種である、
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の改質アクリロニトリル重合体繊維。
【請求項5】
前記繊維の単糸繊度が30〜100dtexであり、
前記アクリロニトリルモノマーの含有量が20.0〜89.2重量%であり、
前記開始剤の含有量が0.1〜0.3重量%であり、
前記動物毛の微粉末の含有量が5.0〜45.0重量%であり、その微粉末粒子の平均直径が0.05〜3μmであり、
前記第二モノマーは、少なくとも塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンおよび弗化ビニリデンの中の一種であり、その含有量が5.0〜15.0重量%であり、
前記第三モノマーの含有量が0.5〜3.0重量%であり、
前記アクリロニトリル重合体の分子量が25,000〜90,000である、
ことを特徴とする請求項3記載の改質アクリロニトリル重合体繊維。
【請求項6】
前記連鎖移動剤の含有量は0.2〜0.4重量%であることを特徴とする請求項4記載の改質アクリロニトリル重合体繊維。
【請求項7】
改質アクリロニトリル重合体繊維の製造方法であって、請求項1、2、3、5または6記載の改質アクリロニトリル重合体繊維の配合(重量%)に基づき、以下の各プロセスを経て製造されること、即ち、
(1)動物毛の微粉末懸濁液の調製:
まず、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維を機械的な加工法によって粒子平均直径が0.01〜10μmである微粉末にし、得られた動物毛の微粉末をアクリロニトリル重合体の溶剤と均一に混合させ、動物毛の微粉末懸濁液が調製され、前記アクリロニトリル重合体の溶剤は、濃度53〜67重量%の塩化亜鉛、濃度63〜70重量%の硝酸または濃度48〜55重量%のチオシアン酸ナトリウム水溶液中の一種であり、または、N, N-ジメチルホルムアミド、N, N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、エチレンカーボネートの中の一種であり、
(2)改質アクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液の調製:
30〜70℃の温度で、前記配合の開始剤を利用して、前記動物毛の微粉末懸濁液中でアクリロニトリルモノマーと、または存在可能な第二モノマーまたは/および第三モノマーとの重合反応を開始させ、反応時間は2〜10時間であり、動物毛の微粉末を含有する改質アクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液が調製され、または得られた動物毛の微粉末懸濁液を濾過して、ウェットケーキとして得られた後、またアクリロニトリルモノマーの重合体または存在可能な第二モノマーまたは/および第三モノマーの共重合体の溶液を配合に記載された割合に基づき、均一に混合させ、改質アクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液が調製され、前記改質アクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液の濃度は15〜45重量%であり、
(3)改質アクリロニトリル重合体繊維の製造:
得られた改質ポリアクリロニトリル重合体繊維の紡糸原液で溶液紡糸のプロセスによって前記改質アクリロニトリル重合体繊維が作られる、
ことを特徴とする改質アクリロニトリル重合体繊維の製造方法。
【請求項8】
前記改質アクリロニトリル重合体繊維の原液濃度が23〜38重量%であり、溶液紡糸のプロセスに使用された紡糸板の孔径が0.18〜0.55mmであり、
前記塩化亜鉛水溶液の濃度が53〜67重量%であり、
前記硝酸水溶液の濃度が63〜70重量%であり、
前記チオシアン酸ナトリウム水溶液の濃度が48〜55重量%である、
ことを特徴とする請求項7記載の改質アクリロニトリル重合体繊維の製造方法。
【請求項9】
前記改質アクリロニトリル重合体繊維の原液濃度は25〜35重量%であり、溶液紡糸のプロセスに使用された紡糸板の孔径は0.20〜0.50mmであり、
前記塩化亜鉛水溶液の濃度は53〜67重量%であり、
前記硝酸水溶液の濃度は63〜70重量%であり、
前記チオシアン酸ナトリウム水溶液の濃度は48~55重量%である、
ことを特徴とする請求項7記載の改質アクリロニトリル重合体繊維の製造方法。
【請求項10】
前記改質アクリロニトリル重合体繊維からは人工合成毛髪が作られ、人毛の代替品または装飾品として使用されていることを特徴とする請求項1、2、3、5または6記載の改質アクリロニトリル重合体繊維の用途。
【請求項11】
前記改質アクリロニトリル重合体繊維からは人工合成毛髪が作られ、人毛の代替品または装飾品として使用されていることを特徴とする請求項4記載の改質アクリロニトリル重合体繊維の用途。

【公表番号】特表2010−512469(P2010−512469A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540579(P2009−540579)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/CN2007/003281
【国際公開番号】WO2008/071063
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509162621)ヒキン グループ カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】