説明

改質キサンタンガム、改質アラビアガム、及び改質タマリンドシードガム、並びにキサンタンガム、アラビアガム、及びタマリンドシードガムの架橋方法

【課題】天然多糖類であるキサンタンガム、アラビアガム、又はタマリンドシードガムに放射線を照射することによりそれらを架橋させた改質キサンタンガム、改質アラビアガム、及び改質タマリンドシードガム、並びにキサンタンガム、アラビアガム、及びタマリンドシードガムの架橋方法を提供することを目的とする。
【解決手段】キサンタンガムを10〜70重量%含む溶液に、線量5〜200kGyを照射して架橋させたことを特徴とする改質キサンタンガムである。アラビアガムを10〜50重量%含む溶液に、線量5〜200kGyを照射して架橋させたことを特徴とする改質アラビアガムである。タマリンドシードガムを10〜50重量%含む溶液に、線量5〜50kGyを照射して架橋させたことを特徴とする改質アラビアガムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の多糖類であるキサンタンガム、アラビアガム、又はタマリンドシードガムを放射線により架橋させた改質多糖類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、放射線を照射することにより、ラジカルが発生し、加水分解反応や架橋反応が起きることが知られている。例えば、セルロースの誘導体のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース、澱粉の誘導体であるカルボキシメチルスターチ、キトサンの誘導体であるカルボキシメチルキトサンに、放射線を照射することにより架橋することが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−160602
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、セルロース等の天然多糖類に官能基を導入した誘導体を製造するためには、コストや時間がかかり、また官能基の導入工程等において、多糖類の構造に変化を生じる可能性があるという問題を有する。そこで、本発明は、天然多糖類であるキサンタンガム、アラビアガム、又はタマリンドシードガムに放射線を照射することによりそれらを架橋させた改質キサンタンガム、改質アラビアガム、及び改質タマリンドシードガム、並びにキサンタンガム、アラビアガム、及びタマリンドシードガムの架橋方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、キサンタンガム、アラビアガム、又はタマリンドシードガムを所定量含む溶液中において放射線を所定量照射することにより、キサンタンガム、アラビアガム、又はタマリンドシードガムを架橋させることができることを見出した。すなわち、本発明は、キサンタンガムを10〜70重量%含む溶液に、線量5〜200kGyを照射して架橋させたことを特徴とする改質キサンタンガムである。また、本発明は、アラビアガムを10〜50重量%含む水溶液に、線量5〜200kGyを照射して架橋させたことを特徴とする改質アラビアガムである。またさらに、本発明は、タマリンドシードガムを10〜50重量%含む水溶液に、線量5〜50kGyを照射して架橋させたことを特徴とする改質タマリンドシードガムである。またさらに、本発明は、キサンタンガムを10〜70重量%含む水溶液に、線量5〜200kGyを照射して架橋させることを特徴とするキサンタンガムの架橋方法である。またさらに、本発明は、アラビアガムを10〜50重量%含む水溶液に、線量5〜200kGyを照射して架橋させることを特徴とするアラビアガムの架橋方法である。またさらに、本発明は、タマリンドシードガムを10〜50重量%含む水溶液に、線量5〜50kGyを照射して架橋させることを特徴とするタマリンドシードガムの架橋方法である。
【発明の効果】
【0005】
以上のように、本発明によれば、天然多糖類であるキサンタンガム、アラビアガム、又はタマリンドシードガムに放射線を照射することによりそれらを架橋させた改質キサンタンガム、改質アラビアガム、及び改質タマリンドシードガム、並びにキサンタンガム、アラビアガム、及びタマリンドシードガムの架橋方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に係る改質キサンタンガムに用いられるキサンタンガムは、溶液中に、10〜70重量%、好ましくは20〜50重量%含まれる。本発明に係る改質アラビアガムに用いられるアラビアガムは、溶液中に、10〜50重量%、好ましくは30〜50重量%含まれる。本発明に係る改質タマリンドシードガムに用いられるタマリンドシードガムは、溶液中に、10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは20〜40重量%、特に好ましくは30〜40重量%含まれる。キサンタンガム、アラビアガム、及びタマリンドシードガムが上記範囲外においては、架橋反応が十分に進まないか、分解反応が起こる。
【0007】
キサンタンガム、アラビアガム、又はタマリンドシードガムを含む溶液に照射される放射線としては、特に限定されず、例えば、α線、β線、γ線、エックス線などの電離性放射線、及び紫外線が挙げられる。線種については、重イオンなどの大きな粒子線では、キサンタンガム、アラビアガム、若しくはタマリンドシードガムの分子に与える影響にムラができる可能性があることから、橋かけ反応を完了させる為には放射線を使用するのが好ましく、電離性放射線を使用するのがさらに好ましい。電離性放射線は、工業的によく用いられているコバルト−60からのγ線又は加速器による電子線が好ましい。電子加速器は、被照射試料を透過するエネルギーを有する電子線を発生できるものであればよい。被照射試料の厚さが1mm以上あるような厚い場合は、加速電圧1MeV以上の中エネルギー〜高エネルギーの電子加速器が好ましい。被照射試料の厚さが1mm未満のような薄い場合は、1MeV以下の低エネルギー電子加速器であってもよい。
【0008】
線量は、キサンタンガムを含む溶液に対しては5〜200kGy、好ましくは10〜50kGyであり、アラビアガムを含む溶液に対しては5〜200kGy、好ましくは50〜200kGyであり、タマリンドシードガムを含む溶液に対しては5〜50kGy、好ましくは10〜50kGyである。放射線の照射量が上記範囲外においては、架橋反応が十分に進まないか、分解反応が起こる。
【0009】
放射線照射前のキサンタンガムは、キサンタンガム6重量%水溶液において、粘度が3,000〜10,000mPa・sであることが好ましい。このようなキサンタンガムは、放射線を照射してキサンタンガムを分解することにより得ることができる。放射線による分解は、酸分解と比べて酸のような添加物を加える必要が無い。放射線照射により、キサンタンガムが分解され、分子量が小さくなるため、溶液中に高濃度で溶解が可能となり、例えば良好なフィルム原料として用いることができる。フィルム原料として用いる場合は、溶液は水溶液が好ましい。
【0010】
放射線照射前のアラビアガムは、6重量%水溶液において、粘度が3,000〜10,000mPa・sであることが好ましい。このようなアラビアガムは、放射線を照射してアラビアガムを架橋することにより得ることができる。放射線照射により、アラビアガムが架橋され、分子量が大きくなるため、溶液の作業性が向上し、例えば良好なフィルム原料として用いることができる。通常のアラビアガム溶液でフィルムを作製すると鱗片状に崩れてしまうのに対して、架橋したアラビアガムは強度が向上してフィルムとして回収する事が出来る。フィルム原料として用いる場合は、溶液は水溶液が好ましい。
【0011】
放射線照射前のタマリンドシードガムは、6重量%水溶液において、粘度が3,000〜10,000mPa・sであることが好ましい。このようなタマリンドシードガムは、放射線を照射してタマリンドシードガムを分解することにより得ることができる。放射線照射により、タマリンドシードガムが分解され、分子量が小さくなるため、溶液中に高濃度で溶解が可能となり、例えば良好なフィルム原料として用いることができる。フィルム原料として用いる場合は、溶液は水溶液が好ましい。
【0012】
溶液は、キサンタンガムを含む乳化物を得たい場合は、水が30〜90体積%、油が10〜70体積%の混合溶液であることが好ましく、水が40〜80体積%、油が20〜60体積%の混合溶液であることがさらに好ましい。このように得られた乳化物は、乳化安定性が高い。
【0013】
溶液は、アラビアガムを含む乳化物を得たい場合は、水が30〜90体積%、油が10〜70体積%の混合溶液であることが好ましく、水が40〜80体積%、油が20〜60体積%の混合溶液であることがさらに好ましい。このように得られた乳化物は、乳化安定性が高い。
【0014】
溶液は、タマリンドシードガムを含む乳化物を得たい場合は、水が30〜90体積%、油が10〜70体積%の混合溶液であることが好ましく、水が30〜50体積%、油が50〜70体積%の混合溶液であるのがさらに好ましい。このように得られた乳化物は、乳化安定性が高い。
【0015】
放射線が照射される溶液のpHは、特に限定されないが、低い方が架橋が進む。そのため、架橋反応を生じさせたい場合は、pH5以下とすることが好ましい。
【0016】
放射線が照射される溶液には、キサンタンガム、アラビアガム、又はタマリンドシードガムの架橋を妨げない範囲で、キサンタンガム、アラビアガム、及びタマリンドシードガム以外に、他の増粘多糖類等を含んでもよい。他の増粘多糖類等としては、例えば、ローカストビーンガム、タラガム、グアーガム、グルコマンナン、カシアガム、フェヌグリークガム、カラヤガム、サイリウムシードガム、アラビノガラクタン、寒天、カラギナン、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、ペクチン、大豆多糖類、セルロース誘導体、ゼラチン、及び澱粉が挙げられる。
【実施例】
【0017】
実験例1−1
次に、本発明に係る改質キサンタンガム、改質アラビアガム、及び改質タマリンドシードガムの実施例について説明する。先ず、キサンタンガム(イナゲルV−10,伊那食品工業社製)30gを70gのイオン交換水に添加し混合した後、袋に充填した。充填した後、レトルト殺菌機を用いて120℃で20分間加熱を行って、キサンタンガムを溶解させた。その後、γ線を10kGy/時間で3時間(線量:30kGy)照射することにより、実施例1に係る改質キサンタンガムを得た。
【0018】
キサンタンガムの代わりにアラビアガム(イナゲル アラビアガムA,伊那食品工業社製)及びタマリンドシードガム(グリロイド6C,大日本住友製薬社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る改質アラビアガム、及び実施例3に係る改質タマリンドシードガムを得た。
【0019】
キサンタンガムの代わりに表1記載の試料を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1乃至13に係る改質試料を得た。
【0020】
実施例1乃至3によって得られた改質キサンタンガム、改質アラビアガム、及び改質タマリンドシードガム、並びに比較例1乃至13によって得られた改質試料について、以下のように強度又は粘度、及び膨潤倍率を求めた。結果を表1に示す。
【0021】
(強度)
レオメーター(サンレオテック製)を用いて、破断強度(g/cm)を測定した。進入速度は20mm/分、測定温度は10℃、プランジャーはφ3mmを使用した。
(粘度)
B型粘度計を用いて、粘度(mPa・s)を測定した。回転速度は測定上限に併せて最も早い回転数になるように60rpm、30rpm、12rpm、6rpmのうちから選択した。測定温度10℃、ローターは測定上限に併せて最も小さい番手のもの(No.2又はNo.4)になるように選択した。
(膨潤倍率)
85℃のイオン交換水100mlに1gの改質キサンタンガム等の改質試料を浸漬し、85℃で2時間静置した。これを12000rpmで15分間、遠心を行い、得られた沈殿物の量を測定した。膨潤倍率は以下の式より求めた。
(膨潤倍率)=(沈殿物の重量)/(改質試料の重量)/(分散倍率)
【0022】
【表1】

【0023】
表1より、キサンタンガム、アラビアガム、及びタマリンドシードガムに放射線を照射することにより、強度が高く、又は粘度が高くなっており、架橋されたことが分かる。それ以外の試料については、強度が低く、又は粘度が低くなっており、分解されたことが分かる。
【0024】
実験例1−2
次に、粘度が異なる3種類のキサンタンガム、イナゲルV−10(伊那食品工業社製),イナゲルV−7(伊那食品工業社製),イナゲルSAP(伊那食品工業社製)を表2記載の含有量となるようにイオン交換水に添加し混合した後、袋に充填した。充填した後、レトルト殺菌機を用いて120℃で20分間加熱を行って、キサンタンガムを溶解させた。その後、γ線を10kGy/時間で1時間(線量:10kGy)照射した。得られた改質キサンタンガムについて、以下のようにキサンタンガム濃度が1及び5重量%においては粘度を、キサンタンガム濃度が10、20、30、50、及び70重量%においては強度を測定した。結果を表2乃至4に示す。
【0025】
(強度)
レオメーター(サンレオテック製)を用いて、破断強度(g/cm)を測定した。進入速度は20mm/分、測定温度は10℃、プランジャーは強度に併せてφ3mm又はφ20mmを使用した。
(粘度)
B型粘度計を用いて、粘度(mPa・s)を測定した。回転速度は60rpm、測定温度10℃、ローターは粘度に併せてNo.3又はNo.4を選択した。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】
表2乃至4より、キサンタンガムの濃度が10〜70重量%の範囲においては、放射線を照射することにより強度が高くなっており、キサンタンガムが架橋されたことが分かる。
【0030】
実験例1−3
次に、キサンタンガム(イナゲルV−10,伊那食品工業社製/粉体、水分値9.0%)に、γ線を10kGy/時間で1時間〜5時間(線量:10〜50kGy)照射した。得られた改質キサンタンガムについて、20℃のイオン交換水に濃度がそれぞれ0.5重量%、2.0重量%、及び6.0重量%となるように溶解させ、1時間静置後、粘度を測定した。また、この溶液を80℃まで加熱し、粘度を測定した。粘度は、実験例1−2と同様に測定した。結果を表5に示す。
【0031】
【表5】

【0032】
表5より、キサンタンガムの濃度が91重量%においては、放射線を照射することにより粘度が低くなっており、キサンタンガムが分解されたことが分かる。
【0033】
実験例1−4
キサンタンガム(イナゲルV‐10,伊那食品工業社製)を予めHCl若しくはNaOHでpH調整した溶液へそれぞれ10重量%、15重量%、20重量%となるように分散し、混錬後、一晩静置した。これを袋へ充填し、γ線を10kGy、30kGy、50kGy照射した。得られた改質試料について、以下のように強度、及び膨潤倍率を求めた。結果を表6乃至8に示す。
【0034】
(強度)
レオメーター(サンレオテック製)を用いて、破断強度(g/cm)を測定した。進入速度は20mm/分、測定温度は10℃、プランジャーは強度に併せて選択(φ20mm又はφ3mm)した。
(膨潤倍率)
イオン交換水又は1.0%NaCl溶液100mlに1gの改質試料を浸漬し、20℃で1晩静置した。これを12000rpmで15分間、遠心を行い、得られた沈殿物の量を測定した。膨潤倍率は以下の式より求めた。
(膨潤倍率)=(沈殿物の重量)/(改質試料の重量)/(分散倍率)
【0035】
【表6】

【0036】
【表7】

【0037】
【表8】

【0038】
表6乃至8より、pH5以下においては、架橋反応が促進されていることが分かる。pHが低いと膨潤倍率が大きく、照射量が多いと膨潤倍率は小さい傾向にあることが分かる。
【0039】
参考実験例1−1
γ線が30kGy照射されたキサンタンガム(イナゲルV‐10,伊那食品工業社製)6重量%溶液にグリセリン1.2重量%となるようにイオン交換水に添加し、加熱溶解させ、80℃で1晩放置し、脱泡を行った。このドープを用いてキャスト法にてフィルムを作製した。作製したフィルムの水分は12重量%であったが、このフィルムに30重量%分の水を加え、20kGyのガンマ線を照射した。得られたフィルムについて、以下のように強度を求めた。結果を表9に示す。
【0040】
(強度)
テクスチャーアナライザー(英弘精機製)を用いて、引っ張り強度試験を行った。引っ張り速度は50mm/分、測定温度20℃、強度は破断強度(N)にて評価した。
【0041】
【表9】

【0042】
γ線を照射することで、フィルムの強度が向上することが分かる。
【0043】
参考実験例1−2
γ線が30kGy照射されたキサンタンガム(イナゲルV‐10,伊那食品工業社製)4重量%溶液に、表10に示す多糖類等2重量%及びグリセリン1.2重量%となるようにイオン交換水に添加し、加熱溶解させ、80℃で1晩放置し、脱泡を行った。このドープを用いてキャスト法にてフィルムを作製した。このフィルムに30重量%分の水を加え、20kGyのガンマ線を照射した。得られたフィルムについて、参考実験例1−1と同様に強度を求めた。結果を表10に示す。
【0044】
【表10】

【0045】
照射したキサンタンガムに、プルラン、HMペクチン、CMCナトリウム、及びグアーガム以外の増粘多糖類等をブレンドしても、γ線を照射することにより、強度を向上させることができることが分かる。
【0046】
参考実験例1−3
キサンタンガム(イナゲルV−10、V−7、及びSAP,それぞれ伊那食品工業社製)とローカストビーンガム(イナゲルL−85,伊那食品工業社製)を所定の割合(75:25、50:50、25:75)で混合した。その後、混合物が30重量%となるように水へ分散させ、加熱溶解後、袋に充填することにより試料を作製した。この試料にγ線を10kGy、30kGy、50kGyの線量で照射した。得られた試料について、実験例1−4と同様に強度及び膨潤倍率を求めた。結果を表11乃至13に示す。
【0047】
【表11】

【0048】
【表12】

【0049】
【表13】

【0050】
実験例2−1
次に、アラビアガム(イナゲル アラビアガムA,伊那食品工業社製)20gを80gのイオン交換水に添加し混合した後、袋に充填して20重量%溶液を作成した。同様に、アラビアガム50gを50gのイオン交換水に溶かして50重量%溶液を作成した。充填した後、レトルト殺菌機を用いて120℃で20分間加熱を行って、アラビアガムを溶解させた。その後、γ線を10kGy/時間で5時間〜20時間(線量:50〜200kGy)照射した。得られた改質アラビアガムについて、以下のようにアラビアガム濃度が20重量%においては粘度を、キサンタンガム濃度が50重量%においては粘度又は強度、及び膨潤率を測定した。結果を表14に示す。
【0051】
(強度)
レオメーター(サンレオテック製)を用いて、破断強度(g/cm)を測定した。進入速度は20mm/分、測定温度10℃、プランジャーはφ10mmを使用した。
(粘度)
B型粘度計を用いて粘度を測定した。回転速度は60rpm、測定温度10℃、ローターは粘度に併せてNo.2、No.3、及びNo.4のうちから選択した。
(膨潤率)
20℃のイオン交換水に改質アラビアガム1gを投入し、24時間静置した。これを16メッシュでろ過して重量を測定することにより重量増加の倍率を算出して膨潤率(倍)を求めた。
【0052】
【表14】

【0053】
表14より、アラビアガムの濃度が20重量%又は50重量%においては、放射線を照射することにより粘度又は強度が高くなっており、アラビアガムが架橋されたことが分かる。
【0054】
実験例2−2
次に、アラビアガム(イナゲル アラビアガムA,伊那食品工業社製)1gを99gの水と油(体積比50:50)の混合液に添加し混合した後、袋に充填して1重量%溶液を作成した。同様に、アラビアガム5gを95gの混合溶液に溶かして5重量溶液を、アラビアガム10gを90gの混合溶液に溶かして10重量溶液を、アラビアガム20gを80gの混合溶液に溶かして20重量溶液を作成した。これら溶液にTKホモジェナイザーを用いて10000rpmで10分間、撹拌した。その後、γ線を10kGy/時間で5時間〜20時間(線量:50〜200kGy)照射した。得られた乳化組成物について、以下のように粘度又は強度、及び膨潤率を測定した。結果を表15に示す。
【0055】
(強度)
レオメーター(サンレオテック製)を用いて、破断強度(g/cm)を測定した。進入速度は20mm/分、測定温度は10℃、プランジャーはφ10mmを使用した。
(粘度)
B型粘度計を用いて粘度を測定した。回転速度は60rpm、測定温度10℃、ローターは粘度に併せてNo.2、No.3、及びNo.4のうちから選択した。
(膨潤率)
20℃のイオン交換水に改質アラビアガム1gを投入し、24時間静置した。これを16メッシュでろ過して重量を測定することにより重量増加の倍率を算出して膨潤率(倍)を求めた。
【0056】
【表15】

【0057】
表15より、アラビアガムの濃度が10重量%以上の範囲においては、放射線を照射することにより粘度又は強度が高くなっており、アラビアガムが架橋されたことが分かる。
【0058】
実験例2−3
次に、アラビアガム(イナゲル アラビアガムA,伊那食品工業社製)20gを80gの水と油(体積比90:10,80:20,50:50)の3種類の混合液に添加し混合した後、袋に充填して20重量%溶液を作成した。これら溶液にTKホモジェナイザーを用いて10000rpmで10分間、撹拌した。その後、γ線を10kGy/時間で5時間〜20時間(線量:50〜200kGy)照射した。得られた乳化組成物について、実験例2−2と同様に粘度又は強度を測定した。結果を表16に示す。
【0059】
【表16】

【0060】
表16より、油が20体積%含まれている溶液においては、放射線を200kGy照射することにより粘度又は強度が特に高くなっており、アラビアガムが架橋されたことが分かる。
【0061】
実験例3−1
次に、タマリンドシードガム(グリロイド6C,大日本住友製薬製)30gを70gのイオン交換水に添加し混合した後、袋に充填して30重量%溶液を作成した。充填した後、レトルト殺菌機を用いて120℃で20分間加熱を行って、タマリンドシードガムを溶解させた。その後、γ線を10kGy/時間で1時間〜22時間(線量:10〜220kGy)照射した。得られた改質タマリンドシードガムについて、以下のように強度を測定した。結果を表17に示す。
【0062】
(強度)
レオメーター(サンレオテック製)を用いて、破断強度(g/cm)を測定した。進入速度は20mm/分、進入深度は10mm、プランジャーはφ3mm、測定温度は10℃で行った。
【0063】
【表17】

【0064】
γ線を10kGy、50kGy照射することにより、未照射に比べ強度が向上しており、架橋していることが分かる。
【0065】
実験例3−2
タマリンドシードガム(グリロイド6C,大日本住友製薬製)を予めHCl若しくはNaOHでpH調整した溶液へ15重量%となるように分散し、混錬後、一晩静置した。これを袋へ充填し、γ線を10kGy、30kGy、50kGy照射した。得られた改質試料について、実験例1−4と同様に強度及び膨潤倍率を求め、実験例1−2と同様に粘度を求めた。結果を表18に示す。
【0066】
【表18】

【0067】
表18より、架橋反応していることが分かる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガムを10〜70重量%含む溶液に、線量5〜200kGyを照射して架橋させたことを特徴とする改質キサンタンガム。
【請求項2】
キサンタンガムを10〜70重量%含む溶液に、放射線量5〜200kGyを照射して架橋させることを特徴とするキサンタンガムの架橋方法。
【請求項3】
アラビアガムを10〜50重量%含む水溶液に、放射線量5〜200kGyを照射して架橋させたことを特徴とする改質アラビアガム。
【請求項4】
アラビアガムを10〜50重量%含む水溶液に、放射線量5〜200kGyを照射して架橋させることを特徴とするアラビアガムの架橋方法。
【請求項5】
タマリンドシードガムを10〜50重量%含む溶液に、放射線量5〜50kGyを照射して架橋させたことを特徴とする改質タマリンドシードガム。
【請求項6】
タマリンドシードガムを10〜50重量%含む水溶液に、放射線量5〜50kGyを照射して架橋させることを特徴とするタマリンドシードガムの架橋方法。


【公開番号】特開2010−121028(P2010−121028A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295572(P2008−295572)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】