説明

改質ジルコニア微粒子の製造方法、改質ジルコニア微粒子を含む透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材

【課題】屈折率が高く、分散性、安定性に優れた改質ジルコニア微粒子の製造方法、該改質ジルコニア微粒子を含む透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材を提供する。
【解決手段】(a)ジルコニア微粉末を焼成する工程、(b)アルカリ金属を含むアルカリ存在下で粉砕する工程、(c)洗浄する工程、(d)洗浄した微粉末を分散させた水分散液をイオン交換樹脂で処理してアルカリを除去する工程、(e)アルコールに溶媒置換する工程、(f)式(1) Rn-SiX4-nで表される有機ケイ素化合物(式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)で表面処理する工程を経て改質ジルコニア微粒子を製造し、塗膜形成用塗布液に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率が高く、分散性、安定性に優れた改質ジルコニア微粒子の製造方法、改質ジルコニア微粒子を含む透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化スズ、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニアなどのコロイド粒子が、光学材料として屈折率を調整するために被膜等に配合して用いられている。
【0003】
例えば、シリカは低屈折材料として、アルミナは中程度の屈折率材料として、チタニア、ジルコニア等は高屈折率材料として用いられている。このとき、チタニア粒子は高屈折率ではあるものの、分散安定性や、用法、用途によっては光触媒活性のために耐光性、耐候性等に問題があった。このため他の成分、例えばシリカ成分などを複合化することによって分散安定性や、耐光性、耐候性等を向上させることが行われている(特開平8−48940号公報)が、複合化成分によっては屈折率を低下させることになることに加えて、光触媒活性を完全に抑制することが困難で、このため耐光性、耐候性等が不充分となることがあった(特許文献1:特開平8−48940号公報)
一方、ジルコニア粒子は、光触媒活性は実質的に有しておらず、耐光性、耐候性等には優れているものの、チタニア粒子に較べて屈折率が低く、また、分散性、安定性に優れたコロイド領域のジルコニアゾルを得ることが困難であった。
【0004】
本願出願人は、ジルコニウム塩の加水分解物をカルボン酸等の粒子成長抑制剤の存在下で水熱処理する分散性に優れたジルコニアゾルの製造方法を開示している(特許文献2:特開2006−143535号公報)。
【0005】
また、炭酸ジルコニウムアンモニウムをカルボン酸等の存在下で加熱加水分解する安定性に優れたジルコニアゾルの製造方法が開示されている(特許文献3:特開平3−174325号公報)。
【0006】
一方、水酸化ジルコニウムを高温で焼成し、これを粉砕して微粒子としたジルコニア微粒子は、屈折率は高いものの粒子径が大きすぎたり、粒子径分布が不均一であったり、凝集粒子が存在して分散性に劣る等の点から透明被膜に用いるには不向きであった。また、この方法では、粉砕時にアルカリ等(粉砕助剤)を添加することによって粒子径をより小さくしたり、粒子径分布を均一化できる等の効果が知られている。
【特許文献1】特開平8−48940号公報
【特許文献2】特開2006−143535号
【特許文献3】特開平3−174325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された方法で得られるジルコニア微粒子は屈折率が必ずしも高くなく、高屈折率の透明被膜に用いるには満足のいくものではなかった。
また、従来、各種金属酸化物ゾルの分散性、安定性を向上するためにシランカップリング剤で表面処理することが行われているが、上記、焼成、粉砕して得たジルコニア微粒子は、アルカリ共存下のアルカリ領域では安定に分散するものの、洗浄や精製を行い、アルカリ成分を除去すると、表面電位が低下し分散性が著しく低下する問題があった。特に、
アルカリ存在下で処理したジルコニア微粒子はアルカリイオンの共存のために表面へのシランカップリング剤処理が不均一になるためか、得られる表面処理したジルコニア微粒子の分散性、安定性は必ずしも充分ではなかった。
【0008】
また、各種金属酸化物微粒子のシランカップリング剤との反応性を高めるためにアルカリ処理することが知られているが、ジルコニア微粒子の場合は上記した問題があり、他の方法として金属酸化物粒子の表面をTEOSなどの加水分解物で被覆して反応性を高めた後、シランカップリング剤で表面処理することもできるが、この場合は屈折率の低いシリカで被覆することになるので得られる粒子の屈折率が低下し、本発明の目的と乖離し、採用ができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を鋭意検討した結果、焼成後、アルカリ存在下で粉砕処理したジルコニア微粒子を洗浄した後、NH4型イオン交換樹脂で処理すると効率的にシランカ
ップリング剤で表面処理できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、屈折率が高く、分散性、安定性に優れた改質ジルコニア微粒子の製造方法、該改質ジルコニア微粒子を含み、高屈折率で耐光性、耐候性等に優れた透明被膜を形成するための透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材を提供することを目的としている。
【0011】
本発明の要旨は、
[1]下記の工程(a)〜(f)からなることを特徴とする改質ジルコニア微粒子の製造方
法。
(a)ジルコニア微粉末を300〜800℃で焼成する工程
(b)焼成ジルコニア微粉末を、アルカリ金属を含むアルカリ存在下で粉砕する工程
(c)粉砕後に洗浄する工程
(d)洗浄した微粉末を分散させたジルコニア微粒子水分散液をNH4型イオン交換樹脂
で処理してアルカリを除去する工程
(e)脱アルカリ処理後のジルコニア微粒子分散液をアルコールに溶媒置換する工程
(f)下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理する工程
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
[2]前記ジルコニア微粉末がジルコニアゾルを乾燥したものである[1]の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
[3]前記工程(b)で得られるジルコニア微粒子の平均粒子径が5〜120nmの範囲に
ある[1]または[2]の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
[4]前記工程(c)後のジルコニア微粒子中のアルカリの含有量がM(M:アルカリ金属
)として100〜10,000ppmの範囲にあり、前記工程(d)後のジルコニア微粒子中のアルカリの含有量がM(M:アルカリ金属)として1〜1,000ppmの範囲にある[1]〜[3]の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
[5]前記工程(d)における分散液のpHが8〜12の範囲にあり、前記工程(f)にお
ける表面処理時の分散液のpHが8〜12の範囲にある[1]〜[4]の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
[6]前記有機ケイ素化合物が(メタ)アクリル系シランカップリング剤である[1]〜[5]の
改質ジルコニア微粒子の製造方法。
[7]前記工程(f)についで、下記工程(g):表面処理ジルコニア微粒子分散液を有機
溶媒置換する工程を行う[1]〜[6]の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
[8]有機ケイ素化合物の含有量がRni4-n/2で表して1〜30重量%の範囲にある[1]
〜[7]の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
[9]屈折率が1.8〜2.15の範囲にある[1]〜[8]の改質ジルコニア微粒子の製造方法

[10][1]〜[9]の改質ジルコニア微粒子とマトリックス形成成分とからなることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
[11]基材と、基材の少なくとも一方の表面上に形成された透明被膜とからなり、該透明被膜が[1]〜[9]の改質ジルコニア微粒子とマトリックス成分とからなることを特徴とする透明被膜付基材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高屈折率で、均一な粒子径分布を有し、分散性、安定性に優れた改質ジルコニア微粒子の製造方法、改質ジルコニア微粒子を含む透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材を提供することができる。
【0013】
改質ジルコニア微粒子は透明被膜形成用塗布液中で均一に分散し、塗布液は安定性に優れ、高屈折率の透明被膜の形成に好適に用いることができ、得られる透明被膜付基材は、干渉縞が生じることもなく、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れるとともに耐光性、耐候性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、まず本発明に係る改質ジルコニア微粒子の製造方法について説明する。
[改質ジルコニア微粒子の製造方法]
本発明に係る改質ジルコニア微粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(f)からなることを特徴としている。
(a)ジルコニア微粉末を300〜800℃で焼成する工程
(b)焼成ジルコニア微粉末を、アルカリ金属を含むアルカリ存在下で粉砕する工程
(c)粉砕後に洗浄する工程
(d)洗浄した微粉末を分散させたジルコニア微粒子水分散液をNH4型イオン交換樹脂
で処理してアルカリを除去する工程
(e)脱アルカリ処理後のジルコニア微粒子分散液をアルコールに溶媒置換する工程
(f)有機ケイ素化合物で表面処理する工程
【0015】
工程(a)
まず、ジルコニア微粉末を300〜800℃、好ましくは500〜700℃で焼成する。
本発明に用いるジルコニア微粉末としては、従来公知のジルコニア微粉末を用いることができるが、後に粉砕を必要とすることから、できるだけ微細な粉末を用いることが好ましい。なかでも、特開2006−143535号公報、特開平3−174325号公報等に記載されたジルコニアゾルは平均粒子径が120nm以下で、粒子径分布が均一なジルコニアゾルであることからこれを乾燥したジルコニア微粉末が好適に用いることができる。
【0016】
ジルコニアゾルを乾燥する方法としては従来公知の方法を採用することができ、例えば、ロータリーエバポレーターを用いて、あるいは加熱して濃縮し、通常100℃〜200℃で乾燥して分散媒を除去する。
【0017】
この焼成工程によって、ジルコニアの結晶性が高められ、屈折率の高い粒子が得られる。
ジルコニア微粉末の焼成温度が低いと結晶化不充分なため、屈折率が充分高いものが得
られない場合があり、焼成温度が高すぎると、屈折率は高くなるが粒子径が大きくなりすぎて、後の粉砕工程で所望の微細な粉末(平均粒子径が5〜120nm)とすることが困難になる場合がある。また、過度に粉砕すると結晶性が低下し、屈折率の高い粒子が得られない場合がある。
【0018】
工程(b)
焼成したジルコニア微粉末を、アルカリ金属を含むアルカリ存在下で粉砕する。
アルカリとしては、NaOH、KOH等が用いられる。なかでも、KOHは後の洗浄、精製工程で比較的除去しやすいので好ましい。また、これらのアルカリとともに、あるいは、アルカリの代わりに4級アンモニウム塩を含むアルカリを使用してもよい。
【0019】
アルカリ存在下で粉砕することによって、凝集することなく、分散性が良く、同時に表面にOH基が増加した(活性化した)ジルコニア粒子がえられる。そして、有機ケイ素化合物による表面処理効果を高めることができる。
【0020】
アルカリの使用量は、ジルコニア微粉末(ZrO2)1重量部当たり、アルカリをM2Oとして0.01〜0.3重量部、さらには0.05〜0.2重量部の範囲にあることが好ましい。
【0021】
アルカリの使用量が少ないと、粉砕効果が不充分であり、また、粒子の活性化効果が不充分で後工程の有機ケイ素化合物で表面処理効果が充分得られず、さらに、分散液のpHがアルカリ領域とならないことがあり、分散液の安定性が不充分となることがある。
【0022】
アルカリの使用量が多すぎると、粉砕効果、粒子の活性化効果、分散液の安定性などの問題はなくなるものの、工程(c)の洗浄効率が低下したり、工程(d)のNH4型イオ
ン交換樹脂の使用量が増大するとともにアルカリイオンの除去効率が低下することがある。
【0023】
粉砕方法としては、従来公知の乾式、湿式粉砕方法を採用することができるが、ボールミル粉砕機、衝撃微粉砕機、コロイドミル粉砕機などの湿式粉砕法が好適に採用される。
粉砕処理後、遠心分離等により、粉砕が不充分な粒子を除去することもできる。
【0024】
粉砕後のジルコニア微粒子の平均粒子径は5〜120nm、さらには10〜100nmの範囲に調整されることが好ましい。粉砕後のジルコニア微粒子の平均粒子径が5〜120nmの範囲を外れるものは、本発明の高屈折率の透明被膜には、透明性、ヘーズ、強度、耐擦傷性等の点から必ずしも望ましくはない。なお、平均粒子径の調整方法は、粉砕方法や粉砕条件を適宜選択したり、遠心分離などによる分級操作など公知の方法によって、調整することが可能である。
【0025】
工程(c)
ついで、洗浄してアルカリをできるだけ除去する。洗浄方法としてはアルカリを低減できれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。
【0026】
例えばデカンテーション法、限外濾過膜法等を採用することができる。
なお、アルカリの低減だけであれば、酸洗浄、イオン交換樹脂(H型イオン交換樹脂)の使用が可能であるが、この場合、pHが酸性領域となりジルコニア微粒子が凝集することがある。
【0027】
洗浄後のジルコニア微粒子中のアルカリの含有量はM(M:アルカリ金属またはアンモニウム)は、上限が10,000pm以下、さらには1,000ppm以下とすることが
好ましい。前記上限を超えると、工程(d)のNH4型イオン交換樹脂の使用量が増大す
るとともにアルカリイオンの除去効率が低下することがある。また、アルカリ含有量の下限は特に制限されず、少なければ少ない方がよいが、通常1ppmである。なお洗浄後のアルカリ含有量をこの範囲よりも少なくするのは難しく、また効率的でないこともある。
【0028】
工程(d)
ついで、ジルコニア微粒子水分散液をNH4型イオン交換樹脂で処理して残存するアル
カリを除去する。ジルコニア微粒子水分散液の濃度は、イオン交換樹脂で処理することができれば特に制限はないが、通常0.1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
【0029】
本工程においては、分散液をアルカリ領域に維持することが重要である。そのために、本発明ではイオン交換樹脂としてはNH4型イオン交換樹脂を用いる。NH4型イオン交換樹脂を用いるとアルカリイオンとNH4イオンとがイオン交換してアルカリを低減できる
とともに、アルカリ領域を保持できる為、ジルコニア粒子表面の電荷が保持され、分散性が保持できる。
【0030】
このように(d)工程によるNH4型イオン交換樹脂処理によって、少なくとも一部のNH4イオンが表面に付加されて、表面OH…NH4+を形成していることが考えられ。OH基が有機ケイ素化合物の加水分解物のOH基と脱水反応によって結合する基点となり、NH4が有機ケ
イ素化合物の加水分解を促進する(触媒効果)と考えられ、OH(NH4+)により、効率的に後述する工程(f)での有機ケイ素化合物の表面処理ができるものと考えられる。その結果、
分散性、安定性に優れたジルコニア微粒子を得ることができる。
【0031】
NH4型イオン交換樹脂の使用量は、ジルコニア微粒子(ZrO2)1重量部当たり、NH4型イオン交換樹脂が2〜30重量部、さらには5〜20重量部の範囲にあることが好
ましい。
【0032】
NH4型イオン交換樹脂の使用量が少ないと、(c)工程の処理量にもよるが、アルカリ除去が不十分になるうえ、ジルコニア微粒子表面へのNH4イオン付加も不充分となる。
NH4型イオン交換樹脂の使用量が多すぎてもさらにアルカリが低減することもなく、
後述する有機ケイ素化合物での表面処理効率が向上したり、得られる表面処理ジルコニア微粒子の分散性、安定性がさらに向上することもない。
【0033】
NH4型イオン交換樹脂で処理した後のジルコニア微粒子中のアルカリ含有量は、(c)工程での残存量によるが、M(M:アルカリ金属)として1〜1,000ppmの範囲にあることが好ましい。
【0034】
ジルコニア微粒子水分散液をNH4型イオン交換樹脂で処理する際の分散液のpHは8
〜12、さらには8.5〜11の範囲にあることが好ましい。
ジルコニア微粒子水分散液をNH4型イオン交換樹脂で処理する際の分散液のpHが8
未満の場合はジルコニア微粒子の表面が充分に帯電しないためジルコニア微粒子が凝集することがある。なお、必要に応じてアンモニアを用いて、pHを調整してもよい。
【0035】
ジルコニア微粒子水分散液をNH4型イオン交換樹脂で処理する際の分散液のpHが1
2を越えるとイオン交換が充分に起きないためアルカリイオンが1,000ppmを越えて残存することがあり、最終的に得られる表面処理ジルコニア微粒子の分散性、安定性が不充分となることがある。
【0036】
なお、本発明に用いるNH4型イオン交換樹脂はH型イオン交換樹脂をNH4イオン交換して用いることができ、H型イオン交換樹脂とNH4イオンを同時に用いることによって
も同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、分散液のpHの調製は、NH4型イオン交換樹脂の使用量、NH4型イオン交換樹脂とH型イオン交換樹脂の併用、あるいはNH4イオンの使用量によって調整することが
できる。
【0038】
工程(e)
ついで、ジルコニア微粒子水分散液をアルコールに溶媒置換する。アルコールに分散させることで、表面処理が効率的に行うことができる。
【0039】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を用いることができるが、通常メタノール、エタノールを用いられる。
溶媒置換する方法としてはアルコールによっても異なるが、溶媒置換できれば特に制限はなく、蒸留法、限外濾過膜法等が挙げられる。本発明では限外濾過膜法が推奨される。
【0040】
得られる、ジルコニア微粒子アルコール分散液の濃度は概ね1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、工程(f)の表面処理を好適に実施することができる。
【0041】
工程(f)
ついで、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理する。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
このような有機ケイ素化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプ
ロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(β-グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
有機ケイ素化合物の使用量は、得られる改質ジルコニア微粒子中の有機ケイ素化合物がRn-SiO4-n/2として1〜50重量%、さらには2〜30重量%となる範囲にあることが好ましい。
【0043】
有機ケイ素化合物の使用量が少ないと、表面処理が不充分で、分散安定性向上効果が充分得られないことがある。有機ケイ素化合物の使用量が多すぎても分散安定性は良くなるものの、得られる改質ジルコニア微粒子の屈折率が低下し、屈折率が所望の範囲以下となることがあり、屈折率が低い粒子であれば本発明によらずとも従来公知の方法で容易に得ることができる。
【0044】
ジルコニア微粒子のアルコール分散液に、所定量の有機ケイ素化合物または有機ケイ素化合物のアルコール溶液を加え、これに、水を加え、必要に応じて加水分解触媒を加え、有機ケイ素化合物を加水分解する。
【0045】
水の添加量は水のモル数(MH)と有機ケイ素化合物の(加水分解性官能基の)モル数
(MO)とのモル比(MH)/(MO)が1〜50、さらには5〜20の範囲にあることが
好ましい。
モル比(MH)/(MO)が1未満の場合は、加水分解が不充分となり表面処理が充分できないため得られるジルコニア微粒子の分散性、安定性が不充分となる。
モル比(MH)/(MO)が50を越えても、さらに加水分解が進むこともなく、過剰の水であることから不要である。
【0046】
有機ケイ素化合物で表面処理する際の分散液のpHは8〜12、さらには8.5〜10の範囲にあることが好ましい。pHが低いと、ジルコニア微粒子が凝集することがあり、ジルコニア微粒子表面に均一な表面処理を施すことができない場合がある。pHが高いと、有機ケイ素化合物の加水分解が早くなりすぎるためか得られる表面処理ジルコニア微粒子の分散性、安定性が不充分となることがある。このようにして本発明の改質ジルコニア微粒子は製造することができる。
【0047】
工程(g)
本発明では、必要に応じて、表面処理ジルコニア微粒子分散液を所望の有機溶媒置換することができる。有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒を用いることができ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン等およびこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0048】
本発明では、後述する透明被膜形成用塗布液の溶媒と同様の有機溶媒を用いることが好ましく、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が好適に用いられる。
【0049】
溶媒置換する方法としては有機溶媒によっても異なるが、溶媒置換できれば特に制限は
なく、蒸留法、限外濾過膜法、ロータリーエバポレーター等が挙げられる。本発明では限外濾過膜法が推奨される。得られる改質ジルコニア微粒子分散液の濃度は、目的及び用途に応じて適宜選択されるが、固形分として1〜50重量%、さらには2〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
【0050】
このようにして得られる改質ジルコニア微粒子は、有機ケイ素化合物の含有量がRni4-n/2で表して1〜50、さらには2〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
また、改質ジルコニア微粒子の屈折率は1.8〜2.15、さらには1.9〜2.15の範囲にある。屈折率は、有機ケイ素化合物の量、粉砕工程における焼成温度、粉砕の程度(粒子径)を調整することによって調整できる。
ついで、本発明に係る透明被膜形成用塗布液について説明する。
【0051】
[透明被膜形成用塗布液]
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、前記調製した改質ジルコニア微粒子とマトリックス形成成分とからなることを特徴としている。
【0052】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては有機樹脂マトリックスが用いられる。
有機樹脂マトリックス形成成分として、具体的には塗料用樹脂として公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のいずれも採用することができる。たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。なお、熱硬化性樹脂の場合、マトリックス形成成分は、硬化前のモノマー、プレポリマーが使用され、さらに、反応開示剤、安定剤などが含まれていても良い。
【0053】
分散媒
本発明に用いる分散媒としては前記マトリックス形成成分、必要に応じて用いる重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに改質ジルコニア微粒子を均一に分散することができれば特に制限はなく、従来公知の溶媒を用いることができる。
【0054】
具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0055】
これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用することもできる。
透明被膜形成用塗布液は、改質ジルコニア微粒子とマトリックス形成成分との合計濃度が固形分として1〜50重量%、さらには20〜40重量%の範囲にあることが好ましい。合計濃度が少ないと一回の塗布で所望の厚みの透明被膜を得ることができない場合があり、多すぎても、均一な膜を得ることが困難であったり、膜にムラ・白化等が発生する場合がある。
【0056】
また、透明被膜形成用塗布液中の改質ジルコニア微粒子の濃度は、透明被膜中の改質ジルコニア微粒子の濃度が1〜80重量%、好ましくは2〜50重量%となるように用いるが、固形分として0.1〜36重量%、さらには0.5〜32重量%の範囲にあることが好ましい。改質ジルコニア微粒子の濃度が少ないと、耐擦傷性、膜の強度が不充分となったり所望の屈折率を有する透明被膜を得ることができない場合があり、改質ジルコニア微粒子の濃度が高すぎても透明被膜の透明性、平滑性が不充分となったり透明被膜の強度や耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0057】
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は、樹脂を固形分として1〜40重量%、さらには2〜30重量%の範囲にあることが好ましい。マトリックス形成成分濃度が少ないと一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、塗布、乾燥を繰り返すと密着性等が不充分となったり、経済性が不十分となることがある。マトリックス形成成分の濃度が多すぎても、得られる透明被膜の厚さが不均一になる傾向がある。
【0058】
上記した透明被膜形成用塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
ついで、本発明に係る透明被膜付基材について説明する。
【0059】
[透明被膜付基材]
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と、基材の少なくとも一方の表面上に形成された透明被膜とを含み、該透明被膜が前記とマトリックス成分とからなることを特徴としている。
【0060】
基材
本発明に用いる基材としては、特に制限されるものではなく、従来公知のガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等を用いることができる。これらのうち、透明性、加工性の面からPET、TACのプラスチックシートが好適に用いられる。また、本発明では、眼鏡レンズを基材とすることも好適である。
【0061】
透明被膜
改質ジルコニア微粒子としては前記した改質ジルコニア微粒子が用いられる。
マトリックス成分としては、前記したマトリックス形成成分から誘導されるものがあげられる。熱可塑性樹脂の場合は、前記したマトリックス形成成分がそのままマトリックス成分となり、熱硬化性樹脂の場合、重合体となっている。なおマトリックス成分は、2種
以上組合わせても良く、さらにこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
【0062】
透明被膜中の改質ジルコニア微粒子の含有量は1〜80重量%、さらには2〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜中の改質ジルコニア微粒子の含有量が1重量%未満の場合は、所望の屈折率を有する透明被膜を得ることができない場合があり、透明被膜中の改質ジルコニア微粒子の含有量が80重量%を越えると透明性、平滑性が不充分となったり透明被膜の強度や耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0063】
透明被膜中のマトリックス成分の含有量は20〜99重量%、さらには50〜98重量%の範囲にあることが好ましい。マトリックス成分の含有量が少ないと、透明被膜の基材との密着性、強度や耐擦傷性が不充分となる場合があり、マトリックス成分の含有量が多いと耐擦傷性、膜の強度が不充分となったり所望の屈折率を有する透明被膜を得ることができない場合がある。
【0064】
また、透明被膜の膜厚は、用途によっても異なるが、例えば、ハードコート膜である場合は、0.1〜30μm、さらには0.2〜20μm、特に0.2〜10μmの範囲にある
ことが好ましい。
【0065】
ハードコート膜の厚さが前記範囲の下限未満の場合は、ハードコート膜が薄いためにハードコート膜表面に加わる応力を充分吸収することがでないために、ハードコート機能が不充分となる。ハードコート膜の厚さが前記範囲の上限を越えると、膜の厚さが均一になるように塗布したり、均一に乾燥することが困難となり、さらに収縮が大きくなるのでカーリング(ハードコート膜付基材が湾曲)が生じることがある。また、膜厚が厚すぎて透明性が不充分となることがある。
【0066】
このようなハードコート膜の屈折率は基材の屈折率と同程度であることが好ましく、少なくとも屈折率の差が0.3以下、さらには0.2以下であることが好ましい。ハードコート膜の屈折率と基材の屈折率との差が0.3を越えると干渉縞を生じる問題がある。
【0067】
本発明では、特定の製造方法で得られた改質ジルコニア微粒子が使用されているので、いままで得られなかったような、ジルコニア微粒子が透明被膜形成用塗布液中で均一に分散でき、このため、塗布液は安定性に優れ、特に高屈折率の透明被膜の形成に好適に用いることができる。そして、得られる透明被膜は、高屈折率基材に対して干渉縞を生じることもないという、従来のジルコニア微粒子では考えらないような性質を有している。
【0068】
[実施例]
以下、実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
改質ジルコニア微粒子(1)分散液の調製
焼成ジルコニア粉末(1)の調製
純水1,302gにオキシ塩化ジルコニウム8水和物(ZrOCl2・8H2O)35gを溶解し、これに濃度10重量%のKOH水溶液122.8gを添加してジルコニウム水酸化物ヒドロゲル(ZrO2濃度1重量%)を調製した。ついで、限外濾過膜法で電導度が0.5μS/cm以下になるまで洗浄した。
【0070】
得られたジルコニウム水酸化物ヒドロゲルに酒石酸0.96gを加えて充分に攪拌を行った。ついで、pH11.0になるまで濃度10重量%のKOH水溶液を加え、超音波を1時間照射してヒドロゲルの分散処理をした後、限外濾過膜を用いて電導度が0.35ms/cm以下になるまで洗浄した。つぎに、陰イオン交換樹脂(ROHM AND HAAS社製:DUOLITE UP5000)を2.6g加え、洗浄を行った。ついで、樹脂を分離した後、得られたジルコニウム水酸化物ヒドロゲル(固形分濃度5.0重量%)をオートクレーブに充填し、165℃で6時間水熱処理を行った。このときpHは10.7であった。ついで、水熱処理して得られた分散液を乾燥した後650℃で2時間焼成して焼成ジルコニア粉末(1)を得た。得られた焼成ジルコニア粉末(1)は立方晶,単斜晶の混晶体であった。
【0071】
ジルコニア微粒子分散液(1)の調製
純水161.9gに酒石酸4.4gを溶解した水溶液に焼成ジルコニア粉末(1)36g
を加え、ついで、濃度10重量%のKOH水溶液30gを加えてpH12.3のジルコニア粉末分散液とした。ジルコニア粉末(1)分散液を分散機(カンペ(株)製:BATCH SAND)にて分散させた後、限外濾過膜を用いて電導度が100μs/cm程度になるまで洗浄し、ついで、陰イオン交換樹脂(ROHM AND HAAS社製:DUOLITE UP5000)40gを加えて洗浄処理を行い、樹脂を分離し、ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(1)を調製した。
【0072】
ジルコニア微粒子を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無
く、平均粒子径30nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.1であった。
【0073】
NH4型イオン交換樹脂で処理
ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(1)100gにNH4+型イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SK−1BHをアンモニアで処理した樹脂)を28g加え、30分間攪拌を行った後、樹脂を分離した。得られたゾルのpHは11.0であった。ついで、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換し、固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(1)を得た。
【0074】
表面処理
つぎに、固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(1)119gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-503)0.60
gを加え、50℃で16時間熟成し、固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(1)分
散液を調製した。得られた改質ジルコニア微粒子(1)の平均粒子径および屈折率を以下の
方法で測定し、結果を表に示した。
【0075】
平均粒子径
透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察し、改質ジルコニア微粒子(1)30個の粒子径を測定して平均値を求め、平均粒子径とした。
【0076】
屈折率
屈折率は標準屈折液としてCARGILL製のSeriesA、AAを用い、以下の方法で測定し、
結果を表に示した。
(1)改質ジルコニア微粒子(1)分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを80℃で12時間乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率を改質ジルコニア微粒子(1)の屈折率とする。
【0077】
ハードコート膜形成用塗布液(1)の調製
アクリル系樹脂(大日本インキ(株)製:17-824-9、樹脂濃度:79.8重量%、溶媒
:酢酸ブチル)をイソプロピルアルコール/メチルイソブチルケトン=1:1で希釈して樹
脂濃度30重量%のハードコート膜形成用樹脂成分(1)を調製した。
このハードコート膜形成用樹脂成分(1)10gに、改質ジルコニア微粒子(1)分散液10gを混合してハードコート膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0078】
ハードコート膜付基材(1)の製造
ハードコート膜形成用塗布液(1)を、PETフィルム(東洋紡製コスモシャイン A4100、厚さ:188μm、屈折率:1.67、基材ヘーズ0.8%)にバーコーター法(#10)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜付基材(1)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
【0079】
得られたハードコート膜の全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により測定し結果を表1に示した。さらに、耐擦傷性を以下の方法で測定し、結果を表に示した。
【0080】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重1000g/cm2で20回摺動し、膜の表面
を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる :○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0081】
分散性
ヘーズおよび透明被膜の外観観察結果から改質ジルコニア微粒子の透明被膜中の分散性を下記のように評価した。
【0082】
評価基準
基材のヘーズと同等 :◎
若干ヘーズが増加するが、目視では区別できない :○
ヘーズが増加し、目視で白化が認められる :△
ヘーズが大きく増加し、目視で顕著な白化が認められる :×
【0083】
[実施例2]
改質ジルコニア微粒子(2)分散液の調製
ジルコニア微粒子分散液(2)の調製
実施例1において、濃度10重量%のKOH水溶液60gを加えてpH13.0のジルコニア粉末分散液とした以外は同様にしてZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散
液(2)を調製した。
【0084】
ジルコニア微粒子(2)を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無く、平均粒子径30nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.1であった。
【0085】
NH4型イオン交換樹脂で処理
ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(2) 100gを用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(2)を得た。
【0086】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(2)を用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(2)分散液を調製した。
【0087】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(2)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を
表1に示した。
【0088】
ハードコート膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(2)分散液10gを用いた以外は同様にして
ハードコート膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0089】
ハードコート膜付基材(2)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(2)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(2)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評
価し、結果を表1に示した。
【0090】
[実施例3]
改質ジルコニア微粒子(3)分散液の調製
ジルコニア微粒子分散液(3)の調製
実施例1において、濃度10重量%のKOH水溶液15gを加えてpH10.0のジルコニア粉末分散液とした以外は同様にしてZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散
液(3)を調製した。
【0091】
ジルコニア微粒子(3)を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無く、平均粒子径40nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.1であった。
【0092】
NH4型イオン交換樹脂で処理
ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(3) 100gを用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(2)を得た。
【0093】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(3)を用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(3)分散液を調製した。
【0094】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(3)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を
表1に示した。
【0095】
ハードコート膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(3)分散液10gを用いた以外は同様にして
ハードコート膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0096】
ハードコート膜付基材(3)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(3)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(3)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評
価し、結果を表1に示した。
【0097】
[実施例4]
NH4型イオン交換樹脂で処理
実施例1と同様にしてNH4+型イオン交換樹脂で処理し、ついで、樹脂を分離した後、H+型イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SK−1BH)10gを加え、30分間撹拌
を行った。得られたゾルのpHは8.5であった。ついで、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換し、固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(4)を得た

【0098】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(4)を用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(4)分散液を調製した。
【0099】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(4)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を
表1に示した。
【0100】
ハードコート膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(4)分散液10gを用いた以外は同様にして
ハードコート膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0101】
ハードコート膜付基材(4)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(4)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(4)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評
価し、結果を表1に示した。
【0102】
[実施例5]
改質ジルコニア微粒子(5)分散液の調製
焼成ジルコニア粉末(5)の調製
実施例1において、水熱処理して得られた分散液を乾燥した後、450℃で2時間焼成した以外は同様にして焼成ジルコニア粉末(5)を得た。得られた焼成ジルコニア粉末(5)は立方晶,単斜晶の混晶体であった。
【0103】
ジルコニア微粒子分散液(5)の調製
実施例1において、焼成ジルコニア粉末(5)を用いた以外は同様にしてZrO2濃度2重
量%のジルコニア微粒子分散液(5)を調製した。
ジルコニア微粒子を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無
く、平均粒子径20nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.0であった。
【0104】
NH4型イオン交換樹脂で処理
ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(5) 100gを用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(5)を得た。
【0105】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(5)を用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(5)分散液を調製した。
【0106】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(5)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を
表にした。
【0107】
ハードコート膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(5)分散液10gを用いた以外は同様にして
ハードコート膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0108】
ハードコート膜付基材(5)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(5)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(5)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評
価し、結果を表1に示した。
【0109】
[実施例6]
改質ジルコニア微粒子(6)分散液の調製
焼成ジルコニア粉末(6)の調製
実施例1において、水熱処理して得られた分散液を乾燥した後750℃で2時間焼成した以外は同様にして焼成ジルコニア粉末(6)を得た。得られた焼成ジルコニア粉末(6)は立方晶,単斜晶の混晶体であった。
【0110】
ジルコニア微粒子分散液(6)の調製
実施例1において、焼成ジルコニア粉末(6)を用いた以外は同様にしてZrO2濃度2重
量%のジルコニア微粒子分散液(6)を調製した。
【0111】
ジルコニア微粒子を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無
く、平均粒子径50nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.2であった。
【0112】
NH4型イオン交換樹脂で処理
ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(6) 100gを用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(6)を得た。
【0113】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(6)を用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(6)分散液を調製した。
【0114】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(6)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を
表1に示した。
【0115】
ハードコート膜形成用塗布液(6)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(6)分散液10gを用いた以外は同様にして
ハードコート膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0116】
ハードコート膜付基材(6)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(6)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(6)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評
価し、結果を表1に示した。
【0117】
[実施例7]
改質ジルコニア微粒子(7)分散液の調製
NH4型イオン交換樹脂で処理
実施例1と同様にして調製したZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(1) 1
00gにNH4+型イオン交換樹脂56g加え、30分間攪拌を行った後、樹脂を分離した。得られたゾルのpHは11.6であった。ついで、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置換し、固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(7)を得た。
【0118】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(7)を用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(7)分散液を調製した。
【0119】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(7)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を
表1に示した。
【0120】
ハードコート膜形成用塗布液(7)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(7)分散液10gを用いた以外は同様にして
ハードコート膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0121】
ハードコート膜付基材(7)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(7)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(7)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評
価し、結果を表1に示した。
【0122】
[実施例8]
改質ジルコニア微粒子(8)分散液の調製
ジルコニア微粒子分散液(8)の調製
実施例1において、濃度10重量%のNaOH水溶液21.4gを加えてpH12.3のジルコニア粉末分散液とした以外は同様にしてZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒
子分散液(8)を調製した。
【0123】
ジルコニア微粒子を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無
く、平均粒子径30nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.1であった。
【0124】
NH4型イオン交換樹脂で処理
ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(8) 100gを用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(8)を得た。
【0125】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(8)を用いた以外は実施例1と
同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(8)分散液を調製した。
【0126】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(8)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を
表1に示した。
【0127】
ハードコート膜形成用塗布液(8)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(8)分散液10gを用いた以外は同様にして
ハードコート膜形成用塗布液(8)を調製した。
【0128】
ハードコート膜付基材(8)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にしてハード
コート膜付基材(8)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(8)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評
価し、結果を表1に示した。
【0129】
[比較例1]
改質ジルコニア微粒子(R1)分散液の調製
ジルコニア粉末(R1)の調製
実施例1において、650℃で2時間焼成することなく、水熱処理して得られた分散液を乾燥してジルコニア粉末(R1)を得た。得られたジルコニア粉末(R1)は立方晶であった。
【0130】
ジルコニア微粒子分散液(R1)の調製
実施例1において、ジルコニア粉末(R1)36gを用いた以外は同様にしてZrO2濃度
2重量%のジルコニア微粒子分散液(R1)を調製した。
ジルコニア微粒子を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子等は無
く、平均粒子径10nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶であった。また、屈折率は1.8であった。
【0131】
NH4型イオン交換樹脂で処理
ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(R1) 100gを用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(R1)を得た。
【0132】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(R1)を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(R1)分散液を調製した。
【0133】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(R1)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を表1に示した。
【0134】
ハードコート膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(R1)分散液10gを用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0135】
ハードコート膜付基材(R1)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R1)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(R1)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評価し、結果を表1に示した。
【0136】
[比較例2]
改質ジルコニア微粒子(R2)分散液の調製
焼成ジルコニア粉末(R2)の調製
実施例1において、水熱処理して得られた分散液を乾燥した後、1000℃で2時間焼成した以外は同様にして焼成ジルコニア粉末(R2)を得た。得られた焼成ジルコニア粉末(R2)は立方晶,単斜晶の混晶体であった。
【0137】
ジルコニア微粒子分散液(R2)の調製
純水161.9gに酒石酸4.4gを溶解した水溶液にジルコニア粉末(R2)36gを加え、ついで、濃度10重量%のKOH水溶液30gを加えてpH12.3のジルコニア粉末分散液とした。ジルコニア粉末(R2)分散液を分散機(カンペ(株)製:BATCH SAND)に
て分散させた後、遠心分離器にセットし、2,500rpmで5分間遠心分離処理を行な
った後、限外濾過膜を用いて電導度が100μs/cm程度になるまで洗浄し、ついで、陰イオン交換樹脂(ROHM AND HAAS社製:DUOLITE UP5000)40gを加えて洗浄処理を行
い、樹脂を分離し、ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(R2)を調製した。
【0138】
ジルコニア微粒子を透過型電子顕微鏡写真(TEM)で観察したところ、粗大粒子が存在
し、平均粒子径100nmのジルコニア微粒子であった。また、ジルコニア微粒子は立方晶、単斜晶の混晶体であった。また、屈折率は2.15であった。
【0139】
NH4型イオン交換樹脂で処理
ZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(R2)100gを用いた以外は実施例1
と同様にして固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(R2)を得た。
【0140】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(R2)を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(R2)分散液を調製した。
【0141】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(R2)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を表1に示した。
【0142】
ハードコート膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(R2)分散液10gを用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R2)を調製した。
【0143】
ハードコート膜付基材(R2)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R2)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(R2)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評価し、結果を表1に示した。
【0144】
[比較例3]
改質ジルコニア微粒子(R3)分散液の調製
実施例1と同様にして調製したZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(1)を、NH4型イオン交換樹脂で処理することなく、限外濾過膜を用いて溶媒をメタノールに置
換し、固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(R3)を得た。
【0145】
表面処理
固形分濃度5重量%のジルコニア微粒子アルコール分散液(R3)を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度5重量%の改質ジルコニア微粒子(R3)分散液を調製した。
【0146】
粒子の評価
得られた改質ジルコニア微粒子(R3)について平均粒子径および屈折率を測定し、結果を表1に示した。
【0147】
ハードコート膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例1において、改質ジルコニア微粒子(R3)分散液10gを用いた以外は同様にしてハードコート膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0148】
ハードコート膜付基材(R3)の製造
実施例1において、ハードコート膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にしてハードコート膜付基材(R3)を製造した。このときのハードコート膜の厚さは3μmであった。
得られたハードコート膜(R3)の全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性および分散安定性を評
価し、結果を表1に示した。
【0149】
[比較例4]
改質ジルコニア微粒子(R4)分散液の調製
H型イオン交換樹脂で処理
実施例1と同様にして調製したZrO2濃度2重量%のジルコニア微粒子分散液(1) 1
00gにH+型イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオン SK−1BH)を2
8g加え、30分間攪拌を行った。ついで、樹脂を分離したが、分散液のpHは3.5となり、ジルコニア微粒子は凝集・沈降した。このため、以下、表面処理、ハードコート膜形成用塗布液の調製、ハードコート膜付基材の製造およびこれらの評価は実施しなかった。
【0150】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)〜(f)からなることを特徴とする改質ジルコニア微粒子の製造方法。
(a)ジルコニア微粉末を300〜800℃で焼成する工程
(b)焼成ジルコニア微粉末を、アルカリ金属を含むアルカリ存在下で粉砕する工程
(c)粉砕後に洗浄する工程
(d)洗浄した微粉末を分散させたジルコニア微粒子水分散液をNH4型イオン交換樹脂
で処理してアルカリを除去する工程
(e)脱アルカリ処理後のジルコニア微粒子分散液をアルコールに溶媒置換する工程
(f)下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理する工程
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
【請求項2】
前記ジルコニア微粉末がジルコニアゾルを乾燥したものであることを特徴とする請求項1に記載の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記工程(b)で得られるジルコニア微粒子の平均粒子径が5〜120nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記工程(c)後のジルコニア微粒子中のアルカリの含有量がM(M:アルカリ金属)として100〜10,000ppmの範囲にあり、前記工程(d)後のジルコニア微粒子中のアルカリの含有量がM(M:アルカリ金属)として1〜1,000ppmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記工程(d)における分散液のpHが8〜12の範囲にあり、前記工程(f)における表面処理時の分散液のpHが8〜12の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記有機ケイ素化合物が(メタ)アクリル系シランカップリング剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記工程(f)についで、下記工程(g):表面処理ジルコニア微粒子分散液を有機溶媒置換する工程を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
【請求項8】
有機ケイ素化合物の含有量がRni4-n/2で表して1〜30重量%の範囲にあること
を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
【請求項9】
屈折率が1.8〜2.15の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子とマトリックス形成成分とを含むことを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
【請求項11】
基材と、基材の少なくとも一方の表面上に形成された透明被膜とからなり、該透明被膜が請求項1〜9のいずれかに記載の改質ジルコニア微粒子とマトリックス成分とからなることを特徴とする透明被膜付基材。

【公開番号】特開2009−132819(P2009−132819A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310706(P2007−310706)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】