説明

改質ポリアクリロニトリル繊維、並びにその製造方法および用途

本発明は、改質ポリアクリロニトリル繊維、並びにその製造方法及び用途に関するものである。当該繊維は生体蛋白質を改質組成分とし、配合(重量%)は以下の通りである。アクリロニトリルモノマーは50.0〜98.9%であり、開始剤は0.1〜0.4%であり、生体蛋白質は1.0〜50.0%であり、各組成分の重量%の和は100%である。当該繊維の製造方法は、本発明に係る改質ポリアクリロニトリル繊維の配合(重量%)に基づき、以下のプロセスを用いて製造される。1.生体蛋白質溶液の調製;2.改質ポリアクリロニトリル繊維原液の調製;3.改質ポリアクリロニトリル繊維の製造。当該繊維の単糸繊度を30〜100dtexにする。ヘアピースなどの合成毛髪製品の製造に適し、自然な人の毛髪に近似する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維および製造技術に関し、より詳細には、生体蛋白質を改質成分としてのポリアクリロニトリル繊維、並びにその製造方法および用途に関する。国際特許分類番号は、D01F 8/02(2006.01)。
【背景技術】
【0002】
人毛は婦人用ウィッグや紳士用かつらに作製されるために、既に何百年もの歴史を持つ。中国、インドネシア、インドおよび幾つかの欧州国の人々からの人毛は、異なる色、美しい外観、優れた快適性、触感、光沢と編織性および設計可能なカール保持性とセット保持性によって、人毛製品の需要、工業的発展および幅広い応用を促進した。
【0003】
需要量の増大および人毛資源の相対的な不足によって、人毛の価格は次第に上昇する傾向にある。合成毛髪は重合体繊維を原料として人毛の代替品として作られている。機能的および経済的原因のため、前世紀70年代から各種の合成毛髪の研究開発は十分に重視されている。例えば、1972年8月に米国特許第3,687,752号にはアクリロニトリルの合成毛髪の構造を固定する技術が開示された。
【0004】
従来の重合体繊維合成毛髪が必ず全部または大部分の人毛の性能を有すれば、ウィッグおよびかつらの市場を有効的に占有することができることは間違いないであろう。国際特許出願WO2005/033384には、ポリ塩化ビニルを用いた合成毛髪の新プロセスが開示されている。当該合成毛髪のプロセス技術要旨は合成毛髪の難燃性を向上し、一般の合成毛髪より優れている。国際特許出願WO2006/035868にもポリアルキレンテレフタレートに多種の難燃剤成分を添加することによって合成毛髪を製造するプロセスが開示され、合成毛髪の難燃性能を向上することを目的とする。米国特許出願US2006/0000482には合成毛髪の製造技術が開示され、当該技術は普通重合体繊維の表面に脂肪族ポリウレタンの架橋層が一層形成され、合成毛髪の外観から見ると、より人毛に似ているが、その成分はポリウレタンである。米国特許出願US2006/0024497には特殊の断面構造のアクリロニトリル基の合成毛髪の製造技術が開示され、合成毛髪は光沢で人毛により近いが、光沢だけで人毛に似ている。より重要であるのは、上述の特許出願に記載されている合成毛髪製造技術は合成毛髪の外観の品質に着目し、合成毛髪より人毛に似ているが、その成分はすべてポリマー材料であり、人毛の内部成分との差が大きいので、品質や特性で人毛とは比べものにならない。
【0005】
国際特許出願WO2006/002572では、独自に羊毛蛋白質とポリビニルアルコールとを混合して生体蛋白質を含有する紡績繊維を製造する技術が開示されたが、当該羊毛蛋白質によって改質するポリビニルアルコール繊維は主に衣類用繊維のため、合成毛髪の製品に適していない。当該繊維の高い親水性はセットした後、防水性を有していないので、髪型を保持することができず、カール保持性は人毛に匹敵するほどの良さが見られない。また、普通の紡織または衣類用の蛋白質繊維の紡糸原液の濃度は一般に20重量%(重量%であり、以下は同じ)を超えることがなく、したがって20重量%の原液濃度によって合成毛髪に必要な単糸繊度が30〜100dtexである繊維を製造できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠点に対して、本発明の解決する課題は、改質ポリアクリロニトリル繊維、並びにその製造方法および用途を提案することにある。当該改質ポリアクリロニトリル繊維は改質成分として生体蛋白質を用い、組成分および品質性能ともに人毛により近く、人毛の品質特徴を有する。当該ポリアクリロニトリル繊維の製造方法は簡単であり、可制御性が良く、生産性が高いという利点を有する。当該ポリアクリロニトリル繊維は特に合成毛髪に適し、かつらなどの人工毛髪製品を製造するため、自然的効果が優れている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、前記改質ポリアクリロニトリル繊維の技術課題を解決する技術方案は以下の通りである。
改質ポリアクリロニトリル繊維を提案し、その繊維は生体蛋白質を改質組成分とし、その配合(重量%)は以下の通りであり、
アクリロニトリルモノマー 50.0〜98.9%
開始剤 0.1〜0.4%
生体蛋白質 1.0〜50.0%
各組成分の重量%の和は100%である。
【0008】
前記アクリロニトリルモノマーは、少なくともアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびブテンニトリルの中の一種である。
【0009】
前記開始剤は、少なくとも遊離基開始剤中のアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリル、過酸化ベンゾイルの中の一種であり、または、少なくとも酸化-還元開始剤中の過硫酸カリウム-亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム-亜硫酸水素ナトリウム、塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウムの中の一種である。
【0010】
前記生体蛋白質は、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維であり、機械的または化学的方法によって生体蛋白質が加工、調製されている。
【0011】
本発明では、前記改質ポリアクリロニトリル繊維製造方法の技術課題を解決する技術方案は以下の通りである。
改質ポリアクリロニトリル繊維製造方法を提案し、その繊維は本発明に係る改質ポリアクリロニトリル繊維の配合(重量%)に基づき、以下のプロセスを用いて製造する。
【0012】
1.生体蛋白質溶液の調製
羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維を機械的または化学的方法によって生体蛋白質に加工、調製させている。得られた生体蛋白質を精製した後、濃度15〜45重量%の硝酸、塩化亜鉛またはチオシアン酸ナトリウムの中の一種の溶液に溶解させ、精製を通じて、生体蛋白質溶液が得られた。前記生体蛋白質を加工する化学的方法は、酸とアルカリ処理法、還元法および酸化法である。
【0013】
2.改質ポリアクリロニトリル繊維の原液の調製
30〜70℃の温度で、配合に記載された開始剤を利用して、前記生体蛋白質溶液中でアクリロニトリルモノマーとの重合反応を開始させ、反応時間は2〜10時間であり、生体蛋白質を含有する改質アクリロニトリル重合体の原液が得られる。当該原液の濃度は10〜50重量%である。
【0014】
3.改質ポリアクリロニトリル繊維の製造
得られた改質アクリロニトリル重合体の原液で溶液紡糸の技術によって前記改質ポリアクリロニトリル繊維が作られている。
【0015】
本発明では、前記改質ポリアクリロニトリル繊維用途の技術課題を解決する技術方案は以下の通りである。
改質ポリアクリロニトリル繊維の用途を提案し、その繊維は当該改質ポリアクリロニトリル繊維から合成毛髪を作り、人工毛髪製品を製造するためであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
従来技術と比較して、本発明の改質ポリアクリロニトリル繊維の成分には適量の生体蛋白質が含まれ、その組成分かまたは品質か性能かにかかわらず、人毛により近く、良好の代替性を有する。しかもプロセスが簡単であり、技術が熟達しており、特殊の設備および処理の必要がなく、工業的に実施や推進がしやすい。本発明の改質ポリアクリロニトリル繊維は特に合成毛髪の製造に適し、改質ポリアクリロニトリル繊維の合成毛髪中に生体蛋白質が含まれ、且つ人毛の品質と機能により近いことによって、ウィッグおよびかつらなどの人毛の代替品または装飾品により適し、人毛を模倣、代替する効果が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例を併せて本発明についてより詳細に説明する。
本発明の改質ポリアクリロニトリル繊維(以下繊維を言う)は、生体蛋白質を改質組成分とし、その配合(重量%)は以下の通りである。
アクリロニトリルモノマー 50.0〜98.9%
開始剤 0.1〜0.4%
生体蛋白質 1.0〜50.0%
なお、各組成分の重量%の和は100%である。
【0018】
前記配合は本発明に係る繊維の基礎配合である。前記繊維基礎配合では、開始剤の含有量は極めて低く、ある配合の比例で、それらを加えて100%を超える時、前記配合の中に相応に比例するアクリロニトリルモノマーまたは生体蛋白質の何れかの一種または二種の成分を任意に増減でき、前記配合の重量%の和が100%であることを達成する。
【0019】
本発明に係る繊維中のアクリロニトリルモノマーは、少なくともアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびブテンニトリルの中の一種である。異なるアクリロニトリルモノマーを選択すると、本発明の実施には影響を及ぼさないが、各種のアクリロニトリルモノマーの価格は異なるため、主に最終製品の価格に影響を及ぼす。
【0020】
得られた改質ポリアクリロニトリル繊維に良い難燃性、カール保持性および自然な光沢などの品質を持たせるように、本発明の配合の中にアクリロニトリルモノマーと共重合する第二モノマーを含有することができる。第二モノマーを加えた後、本発明に係る繊維の配合(重量%)を以下のように調整する。
アクリロニトリルモノマー 30.0〜96.9%
開始剤 0.1〜0.4%
生体蛋白質 1.0〜50.0%
第二モノマー 2.0〜20.0%
なお、各組成分の重量%の和は100%である。
【0021】
前記第二モノマーは、少なくともアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、スチレン、メチルスチレン、酢酸ビニル、メチレン琥珀酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンおよび弗化ビニリデンの中の一種である。
【0022】
前記第二モノマーが選択された物質は、全面的または部分的に前記性能を改良する要求を満たすことができる。全原料中には第二モノマーが2.0〜20.0重量%であり、3.0〜18.0重量%が好ましく、5.0〜15.0重量%がより好ましい。第二モノマーの比例(割合)が低すぎると、ポリアクリロニトリル繊維の構造および性能を改良できないが、第二モノマーの比例(割合)が高すぎると、改質ポリアクリロニトリル繊維の性能とポリアクリロニトリル繊維の性能との相違が大き過ぎてしまい、ポリアクリロニトリル繊維の触感および嵩高性などの特性を失う。
【0023】
本発明に係る繊維は前記第二モノマーの種類および用量を制御する方法によって、スムーズに前記改質ポリアクリロニトリル繊維の成分および構造を制御でき、難燃性、カール保持性および自然な光沢を有する改質ポリアクリロニトリル繊維が作られる。
【0024】
第二モノマーとして少なくとも塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンおよび弗化ビニリデンなどの中の一種を選択する場合、作られた改質ポリアクリロニトリル繊維は良い難燃性を有し、その限界酸素指数は第二モノマーの含有量の違いによって高く22〜28%に達することができ、難燃性は合成毛髪の品質にとって極めて重要である。従って、本発明はこれらの第二モノマーが好ましい。勿論、製品の用途に応じて前記他の種類の第二モノマーを用いてもよい。
【0025】
前記繊維の調整した配合では、第二モノマーを加える時、前記基礎配合の中に相応に比例するアクリロニトリルモノマーまたは生体蛋白質中の何れかの一種または二種成分を任意に増減でき、前記配合の重量%の和が100%であることを達成する。
【0026】
本発明に係る繊維の配合の中に第三モノマーを提案してもよい。第三モノマーを加えた後、本発明に係る繊維の配合(重量%)を以下のように調整する。
アクリロニトリルモノマー 20.0〜96.8%
開始剤 0.1〜0.4%
生体蛋白質 1.0〜50.0%
第二モノマー 2.0〜20.0%
第三モノマー 0.1〜10.0%
なお、各組成分の重量%の和は100%である。
【0027】
前記第三モノマーは、染料親和基を含有する物質を選択し、例えば、少なくともメタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニールスルホン酸ナトリウム、エチレンスルホン酸ナトリウム、スルフォアルキルアクリレートおよびスルフォアルキルメタクリルアミドなどの中の一種である。第三モノマーを加える目的は主に本発明に係る繊維の染色性を改良するためである。
【0028】
配合系の全原料中には前記第三モノマーの含有量は0.1〜10.0重量%であればよいが、含有量は0.4〜4.0重量%が好ましく、0.5〜3.0重量%がより好ましい。前記繊維の調整した配合では、第三モノマーを加える時、前記配合の中に相応に比例するアクリロニトリルモノマー、第二モノマーまたは生体蛋白質中の何れかの一種、二種または三種成分を任意に増減でき、前記配合の重量%の和が100%であることを達成する。容易に理解できるが、需要に応じて本発明に係る基礎配合の中に単独に前記第三モノマーを加え、前記各組成分の重量%の和が100%となるように合理的に調整してもよい。
【0029】
前記生体蛋白質、開始剤、第二モノマー、第三モノマーおよび連鎖移動剤の含有量は、より好ましい含有量の範囲にある時、前記アクリロニトリルモノマーの含有量が20.0〜89.2重量%であり、前記配合の重量%の和が100%であることを達成している。
【0030】
本発明に係る繊維は配合の組成分の物質およびその含有量の選択によって系列の改質したポリアクリロニトリル繊維が製造された。
【0031】
同時に、本発明は前記改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法を提案し、その繊維は本発明に係る改質ポリアクリロニトリル繊維の配合(重量%)に基づき、以下のプロセスを用いて製造する。
【0032】
1.生体蛋白質溶液の調製
まず、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維を機械的または化学的方法によって生体蛋白質に加工、調製させている。得られた生体蛋白質を精製した後、濃度15〜45重量%(重量%であり、以下は同じ)の硝酸、塩化亜鉛またはチオシアン酸ナトリウムの中の一種の溶液に溶解させ、生体蛋白質溶液が得られる。前記生体蛋白質を加工する化学的方法は、酸とアルカリ処理法、還元法および酸化法を含む。
【0033】
2.改質ポリアクリロニトリル繊維の原液の調製
30〜70℃の温度で、配合に記載された開始剤を利用して、前記生体蛋白質溶液中でアクリロニトリルモノマーとの重合反応を開始させ、反応時間は2〜10時間であり、精製を通じて、生体蛋白質を含有するアクリロニトリル重合体の原液が得られ、当該原液の濃度を10〜50重量%にする。
【0034】
前記配合を調整する時、第二モノマーを加えるか、または第二モノマーと第三モノマーを同時に加えることを提案した時、配合に記載された前記開始剤を利用して、前記生体蛋白質溶液中でアクリロニトリルモノマーとの重合反応を同様に開始させることができ、ただ提案された比例によって生体蛋白質溶液中で開始させると同時に第二モノマーを加えるか、または開始させると同時に第二モノマーと第三モノマーを加えればよい。換言すれば、配合の組成分および含有量を調整するのは、本発明に係る繊維の製造方法の実施に影響を及ぼさない
【0035】
3.改質ポリアクリロニトリル繊維の製造
得られたアクリロニトリル重合体の原液で溶液紡糸の技術によって前記改質ポリアクリロニトリル繊維が作られている。
【0036】
本発明に係る繊維重合反応は、前記遊離基開始剤または酸化-還元開始剤を用いて開始させる。前記生体蛋白質溶液中で前記アクリロニトリルモノマーとの重合反応を開始させ、アクリロニトリルモノマーおよび第二モノマーとの重合反応を開始させるか、またはアクリロニトリルモノマー、第二モノマーおよび第三モノマーとの重合反応を開始させる。前記遊離基開始剤として好ましくは少なくともアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリルおよび過酸化ベンゾイルなどの中の一種であり、また酸化-還元開始剤として好ましくは少なくとも過硫酸カリウム-亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム-亜硫酸水素ナトリウム、塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウムなどの中の一種である。本発明に係る繊維重合反応の開始剤として、これらの開始剤が更に適している。研究実験により以下のことが明らかになった。前記開始剤の用量は全原料の総重量の0.1〜0.4重量%(重量%であり、以下は同じ)であり、0.1〜0.35%が好ましく、0.1〜0.3%がより好ましい。開始剤の用量が低すぎると、重合反応の誘導期は長く、生産性向上に不利であり、開始剤の用量が高すぎると、反応速度が速すぎ、爆発的に重合を引き起こし、重合反応過程に対して有効的に制御することができなくなる。
【0037】
生成したアクリロニトリル重合体の分子量分布をよりよく制御するため、本発明に係るアクリロニトリルモノマーと、アクリロニトリルモノマーおよび第二モノマーと、またはアクリロニトリルモノマー、第二モノマーおよび第三モノマーとの前記重合反応の過程(または配合)では、一定量の連鎖移動剤を加えてよい。前記連鎖移動剤は、少なくともドデシルメルカプタン、N-オクチルメルカプタン、β-メルカプトエタノールおよびイソプロパノールの中の一種を選択できる。
【0038】
前記連鎖移動剤の用量は、全原料の総重量の0.1〜0.6重量%であり、0.1〜0.5重量%が好ましく、0.2〜0.4重量%がより好ましい。研究実験により以下のことが明らかになった。連鎖移動剤の用量が0.2重量%(重量%であり、以下は同じ)より小さい時、アクリロニトリル重合体の分子量分布に対して有効的に制御することは容易ではなく、その用量が0.4%より大きい時、容易に浪費になることだけでなく、重合体分子量が低下することになり、アクリロニトリル重合体の品質は低下する。前記繊維の調整した配合では、加えられた連鎖移動剤の含有量が極めて小さく、ある配合比例で、連鎖移動剤を加えて100%を超える時、前記配合の中に相応に比例するアクリロニトリルモノマー、第二モノマー、第三モノマーまたは生体蛋白質中の何れかの一種または二種または多種成分を任意に増減でき、前記配合の重量%の和が100%であることを達成する。
【0039】
本発明に係る繊維の前記生体蛋白質は、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛(長髪、短髪または髪屑)を含む天然動物繊維(以下は毛髪という)を原料として、機械的または化学的方法によって加工、調製された生体蛋白質である。前記天然動物繊維は前記動物毛を含むことだけでなく、前記動物の絨毛を含んでいる。
【0040】
前記機械的方法によって生体蛋白質を加工、調製するプロセスは以下の通りである。
まず、毛髪を80〜250℃に加熱させ、0.1〜25MPaの圧力で、高圧加水分解、高圧膨潤または押出しの方法によってジスルフィド結合を破壊し、前記生体蛋白質が作られた。研究により以下のことが発見された。加熱温度は90〜220℃が好ましく、100〜210℃がより好ましい。圧力範囲は0.2〜22.0MPaが好ましく、0.3〜20.0MPaがより好ましい。加熱温度が低すぎると、毛髪中のジスルフィド結合を破壊するのに不利であるが、加熱温度が高すぎると、毛髪の生体蛋白質の分解を生じやすくなる。同様に、圧力が低すぎると、毛髪中のジスルフィド結合を破壊するのに不利であるが、圧力が高すぎると、毛髪の蛋白質の分解を生じやすくなり、設備投資は増加してしまう。
【0041】
本発明に係る化学的方法によって生体蛋白質を加工、調製する技術は、酸とアルカリ処理法、還元法および酸化法の三種を含む。この三種の加工方法は本発明の目的のために用いることができ、本発明の実施に顕著な影響を及ぼさない。
【0042】
前記酸とアルカリ処理法は、以下の通りのプロセスである。
まず、酸溶液で毛髪を1〜20時間溶解し膨潤させ、そして弱アルカリ溶液で毛髪を溶解させ、濾過した後にろ液を収集し、更に生体蛋白質を抽出する。一般に用いられる酸は1〜30重量%(重量%であり、以下は同じ)の塩酸、硫酸または硝酸などの溶液中の一種である。一般に用いられるアルカリは1〜30%の水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウムなどの弱溶液中の一種である。前記酸溶液によって毛髪を膨潤する時間は2〜15時間であれば効果よく、膨潤時間は3〜10時間であれば効果はよりよい。膨潤時間が短すぎると、毛髪の浸潤が不十分であり、溶解に不利である。膨潤時間が長すぎると、生産性が低下する事態を招く。前記酸濃度の範囲は2〜28%が好ましく、3〜26%がより好ましい。酸濃度が低すぎると、毛髪の浸潤は不十分であり、溶解に不利である。酸濃度が高すぎると、後からの溶解用アルカリが浪費される事態を招いてしまう。前記アルカリ濃度の範囲は2〜28%が好ましく、3〜26%がより好ましい。アルカリ濃度が低すぎると、毛髪の溶解が困難である。アルカリ濃度が高すぎると、必要以上に浪費になる事態を招き、また繊維を損なう。毛髪の溶解時間を溶解状況によって具体的に把握すべきである。90重量%以上の毛髪は溶解された後、蛋白質を分離し始めるべきであり、さもなければ溶解時間が長すぎると、蛋白質は更にアミノ酸に分解されてしまう。蛋白質を分離する方法は濾過した未溶解の毛髪を収集した後、新たに溶解させることである。明らかであるが、好ましいプロセスの条件が得られるため、前記酸溶液濃度、アルカリ溶液濃度および溶解と膨潤時間を適応して、調整および変更する必要がある。また、毛髪の酸膨潤およびアルカリ溶解は一定温度に適応すべきであり、酸処理およびアルカリ溶解の温度範囲は40〜95℃であり、温度範囲は45〜90℃が好ましく、50〜85℃がより好ましい。温度が低すぎると、毛髪の浸潤または溶解が不十分であり、生産性が低下する事態を容易に招く。温度が高すぎると、毛髪はアミノ酸に大量分解されるが、アミノ酸は水溶性を有し、後からの溶液紡糸の過程では、水に溶解され、凝固浴槽と水洗槽に拡散し、繊維中に保存し難く、繊維を改質する意味はなくなる。
【0043】
前記還元法は以下の通りのプロセス方法である。
まず、チオグリコール酸ナトリウムまたはチオグリコール酸アンモニウムのアルカリ溶液によって毛髪を1〜20時間処理し、2〜15時間が好ましく、2〜10時間がより好ましい。そして溶液に一定量の尿素を加え、毛髪を膨潤させ、そして0〜95℃の温度で3〜50時間反応させ、未溶解の毛髪が濾過され、濾過、分離した後に前記生体蛋白質が作られる。前記チオグリコール酸ナトリウムまたはチオグリコール酸アンモニウム溶液の濃度は0.1〜10mol/Lであり、濃度は0.2〜9 mol/L が好ましく、0.3〜8 mol/Lがより好ましい。濃度が低すぎると、溶解効果が低下する。濃度が高すぎると、分解速度が速すぎ、例えば各成分のアミノ酸などの他の副生成物を生成しやすくなると共に、必要以上に浪費になる。前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム溶液であり、溶液のpH値は8〜14であり、pH値の範囲は8〜13が好ましく、8〜12がより好ましい。pH値が低すぎると、溶解効果が低下するか、または溶解時間が長すぎてしまう。pH値が高すぎると、分解速度が速すぎ、同様に、例えば各成分のアミノ酸の他の副生成物を生成しやすくなると同時に、必要以上に浪費になる。前記一定量の尿素は前記アルカリ溶液中に尿素を加えるものであり、尿素の濃度は0.1〜10mol/Lであり、尿素の濃度は0.2〜9 mol/Lが好ましく、0.3〜8 mol/Lがより好ましい。濃度が低すぎると、溶解効果が低下するか、または溶解時間が長すぎる。濃度が高すぎると、分解速度が速すぎ、同様に、例えば各成分のアミノ酸などの他の副生成物を生成しやすくなると共に、必要以上に浪費になる。前記一定の温度は溶液の温度が0〜95℃に制御するものであり、0〜90℃が好ましく、0〜85℃がより好ましい。温度が低すぎると、溶解効果が低下するか、または溶解時間が長すぎる。温度が高すぎると、分解速度が速すぎ、例えば各成分のアミノ酸などの他の副生成物を生成しやすくなる。前記反応または溶解時間は、上記のチオグリコール酸ナトリウムまたはチオグリコール酸アンモニウムの濃度、アルカリ溶液のpH値、尿素濃度および溶液温度などに関連し、溶解時間を溶解状況によって具体的に把握すべきである。90重量%の毛髪が溶解された後、生体蛋白質を分離、濾過、抽出し始めるべきであり、濾過した未溶解の毛髪を収集してから新たに溶解する。一般に研究実験により溶解時間が3〜50時間であることが明らかになった。
【0044】
前記酸化法は以下の通りのプロセス方法である。
まず、一定濃度の過酸化水素、ペルオキシ酢酸、次亜塩素酸ナトリウムまたは塩素酸ナトリウム溶液によって毛髪を1〜20時間浸漬させ、2〜15時間が好ましく、2〜10時間がより好ましい。毛髪中のジスルフィド結合を酸化させ、そして一定濃度のアルカリ溶液を加え、一定温度で溶解させ、生体蛋白質溶液が調製されたことができる。一定濃度の過酸化水素、ペルオキシ酢酸、次亜塩素酸ナトリウムまたは塩素酸ナトリウム溶液は、少なくとも溶液に1〜50重量%(重量%であり、以下は同じ)の前記物質中の一種を含有し、濃度範囲は2〜45%が好ましく、2〜40%がより好ましい。濃度が低すぎると、毛髪中のジスルフィド結合の酸化時間が長すぎてしまい、または溶解効果が低下する。濃度が高すぎると、酸化速度が速すぎることになりやすく、ジスルフィド結合の酸化が不均一になり、溶解効果に影響を及ぼす。前記アルカリ溶液は、少なくとも水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム溶液中の一種であり、前記一定濃度のアルカリ溶液は、1〜50%の前記アルカリ溶液であり、アルカリ溶液の濃度範囲は2〜45%が好ましく、2〜40%がより好ましい。濃度が低すぎると、溶解時間が長すぎることになり、溶解効果が低下する。濃度が高すぎると、アルカリ溶液の浪費および副反応が発生することになりやすい。前記一定温度は溶解反応の温度が30〜95℃に制御し、温度範囲は30〜90℃が好ましく、30〜85℃がより好ましい。温度が低すぎると、溶解効果が低下するか、または溶解時間が長すぎてしまう。温度が高すぎると、分解速度が速すぎてしまい、他の副生成物例えば各種アミノ酸を生成しやすくなる。前記浸漬溶解時間は上記の酸化剤の濃度、酸化時間、アルカリ溶液の濃度および溶解時間などに関連する。溶解時間は溶解状況によって具体的に制御すべきである。90重量%の毛髪が溶解された後、生体蛋白質を分離し始めるべきであり、濾過した未溶解の毛髪を収集した後に新たに溶解させる。実験により前記溶解時間は一般に3〜50時間に制御する。
【0045】
機械的方法かまたは何れかの化学的方法によって生体蛋白質を調製することにかかわらず、精製する必要がある。生体蛋白質を精製するのは、例えば等電点法、電気透析法および半透膜法などの従来技術中の多種の方法を用いることができる。異なる生体蛋白質の精製方法を用いることは、設備投資および生産コストなどにのみ影響し、本発明に係る繊維およびその特性を達成することに顕著な影響を及ぼさない。
【0046】
本発明の目的を達成するため、前記精製された生体蛋白質を濃度15〜45重量%の硝酸、塩化亜鉛またはチオシアン酸ナトリウム中の一種の溶液に溶解させ、生体蛋白質が作られ、再び前記配合に比例するアクリロニトリル、第二モノマー、または第二モノマーと第三モノマーを混入した後、前記開始剤、または前記開始剤と連鎖移動剤を加え、30〜70℃の温度で2〜10時間反応させ、生体蛋白質を含有するアクリロニトリルと第二モノマーとの共重合体の溶液、または生体蛋白質を含有するアクリロニトリルと第二モノマーおよび第三モノマーとの共重合体の溶液が得られ、そして従来の溶液または湿式の紡糸技術によって当該溶液を用いてファイバーを紡糸する。
【0047】
前記重合反応の温度が30℃より低いと、重合反応の速度は容易に遅すぎてしまい、更に当該反応温度は遊離基開始剤の分解温度より低いため、重合する過程を開始しにくい可能性があり、反応温度が70℃より高いと、反応温度がアクリロニトリルモノマーの沸点に近すぎることによって、アクリロニトリルモノマーの揮発を加速し、アクリロニトリルモノマーの浪費になることだけでなく、更に安全上の問題を生じてしまう。従って、反応温度は35〜68℃が好ましく、40〜65℃がより好ましい。
【0048】
前記重合反応の時間が2時間より短いと、アクリロニトリルモノマー、第二モノマー、第三モノマーの転換効率が低くなり、反応時間が10時間より長いと、原液の色は濃くなりやすく、生体蛋白質分解などの問題を容易に生じてしまう。反応時間は3〜9時間が好ましく、4〜8時間がより好ましい。本発明に係る技術を製造に応用する場合、プロセスパラメーターは原料の配合比の変化によって具体的に調整し、経済的、高効率的に目的を達成する。前記プロセスパラメーターを具体的に調整するのは、本領域の一般的技術者にとって経験的範囲内にあるものだけである。
【0049】
本発明に係る繊維配合の中の生体蛋白質は全原料の総重量の1.0〜50.0重量%(重量%であり、以下は同じ)、2.0〜45.0%が好ましく、5.0〜40.0%がより好ましい。生体蛋白質の含有量は5.0%より小さいと、改質効果は明らかではなく、本発明の意味はなくなる。生体蛋白質の含有量が40.0%より大きいと、紡糸プロセスは困難になりやすく、作られた合成毛髪の物理力学的性能が低下する。但し、生体蛋白質の含有量が40.0%以上であれば本発明に係る繊維を製造できない意味ではない。
【0050】
本発明の紡糸原液中の生体蛋白質および改質ポリアクリロニトリルモノマーの濃度(通俗原液濃度をいう)は10〜50重量%(重量%であり、以下は同じ)であり、濃度は15〜45%が好ましく、20〜40%がより好ましい。原液濃度が低すぎると、作られた合成毛髪に複数の細孔が含有されることになりやすく、生産性は低下するが、原液濃度が高すぎると、紡糸過程における原液粘度が高すぎてしまい、加工プロセスの制御は困難になる。普通紡織用蛋白質繊維を含む原液の濃度は一般に20%を超えないので、本発明は従来技術と明らかな相違を有している。
【0051】
本発明に係る繊維の紡糸原液中の硝酸、塩化亜鉛またはチオシアン酸ナトリウムの濃度は生体蛋白質により改質したポリアクリロニトリルの溶解の需要を満たすよう、一般に15〜45重量%に制御し、原液中の他の成分は水である。
【0052】
前記原液は順調に紡糸するため、本発明に係るプロセスでは、湿式紡糸プロセスおよび設備に対して適切に調整するが、当該調整は従来技術の範囲を超えないので、湿式紡糸プロセスおよび設備を熟知した本領域の一般的専門技術者は、創造性の工夫をしなくても本発明を実施することが可能である。
【0053】
本発明に係る繊維は、特に合成毛髪に適用している。配合で蛋白質繊維の人工合成毛髪と呼ばれるものを提案することによって、更にウィッグまたはかつら、または玩具人形の髪などの製品に加工されている。人毛の直径は、人種、性別、遺伝および年齢などの要素に関連し、一般にその繊度は30〜100dtexであるが、一般に紡織用繊維の単糸繊度は10dtex以下である。本発明に係る繊維の合成毛髪の外観および性能は、人毛により近いため、繊維の繊度も人毛に近いべきである。本発明によって作られる繊維の単糸繊度を30〜100dtexにして、ニーズによって選択と調節できる。簡単に言えば、得られた改質ポリアクリロニトリル繊維を合成毛髪に適用することを保証するため、本発明は高濃度(濃度は20〜40%がより好ましい)および高繊度(30〜100dtex)の生体蛋白質の原液の提案を用いたので、緻密な構造である、人毛によく似ている蛋白質繊維の人工合成毛髪が得られた。研究実験により以下のことが明らかになった。触感、光沢、難燃性、染色性などの面で人毛に十分に似ていることだけでなく、組成および内部品質上でも人毛により近く、従来の合成毛髪より明らかに優れているので、その開発、応用に対して広々とした前途がある。製品のニーズがあれば、本発明に係る繊維は単糸繊度を30〜100dtex範囲以外にしてもよく、これは技術上でも困難ではないことが明らかである。
なお、本発明に関して未説明の部分は、従来技術に関する説明が適用される。
【実施例】
【0054】
以下、具体実施例によって更に本発明を説明するが、本発明の保護範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
長さ1.0〜3.0mmの人毛の短髪1000gを1mol/Lのチオグリコール酸ナトリウム溶液に加え、3時間の前処理をさせ、尿素を加え、溶液の濃度を8mol/Lにして、25℃の温度で37時間反応させ、クエン酸を加え、pH値を7.0に制御し、電気透析法によって溶液中の生体蛋白質を分離する。試料採取と分析の結果により、その中に分子量が40,000〜80,000である生体蛋白質900gが含まれている。
【0056】
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水3500gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、それぞれ含水の生体蛋白質1900g、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にアクリロニトリル1500g、アクリル酸メチル100g、メタリルスルホン酸ナトリウム41.5gおよびβ-メルカプトエタノール32gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸アンモニウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム29gを加え、50℃の温度で3時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な生体蛋白質によって改質したアクリロニトリルの紡糸原液が得られた。得られた原液を脱気、濾過した後、2.4ml/回転の定量ポンプによって計量して、100孔×0.35mmの紡糸板に進入し紡糸させ、脱イオン水中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が99.9dtexである繊維束が作られた。
【0057】
得られた繊維は35重量%(重量%であり、以下は同じ)の生体蛋白質を含有し、触感、外観、カール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらなどの人工毛髪製品は良好な、自然的効果を有し、人毛の風合いに似ている。
【0058】
(実施例2)
実施例1と同様な方法によって生体蛋白質を調製する。
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水3500gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、それぞれ含水の生体蛋白質1900g、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にアクリロニトリル1600g、アクリル酸メチル142gおよびイソプロパノール32gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸アンモニウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム29gを加え、50℃の温度で3時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な生体蛋白質によって改質したアクリロニトリルの紡糸原液が得られた。得られた原液を脱気、濾過した後、2.4ml/回転の定量ポンプによって計量して、100孔×0.35mmの紡糸板に進入し紡糸させ、脱イオン水中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が99.9dtexである繊維束が作られた。
【0059】
得られた繊維は第三モノマーを含有せず、繊維の染色性は実施例1によって得られた繊維より悪いが、依然としてウィッグまたはかつらに適用している。
【0060】
(実施例3)
実施例1と同様な方法によって生体蛋白質を調製する。
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水3500gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、それぞれ含水の生体蛋白質1900g、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にアクリロニトリル1500g、メタリルスルホン酸ナトリウム41.5gおよびドデシルメルカプタン32gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸アンモニウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム29gを加え、50℃の温度で3時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な生体蛋白質によって改質したアクリロニトリルの紡糸原液が得られた。得られた原液を脱気、濾過した後、2.4ml/回転の定量ポンプによって計量して、100孔×0.35mmの紡糸板に進入し紡糸させ、脱イオン水中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が99.9dtexである繊維束が作られた。
【0061】
得られた繊維は第二モノマーを含有せず、繊維の触感は実施例1によって得られた繊維より粗く硬いが、依然としてウィッグまたはかつらに適用している。
【0062】
(実施例4)
実施例1と同様な方法によって生体蛋白質を調製する。
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水3500gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、それぞれ含水の生体蛋白質1900g、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にアクリロニトリル1600g、アクリル酸メチル132gおよびメタリルスルホン酸ナトリウム41.5gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸アンモニウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム29gを加え、50℃の温度で3時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な生体蛋白質によって改質したアクリロニトリルの紡糸原液が得られた。得られた原液を脱気、濾過した後、2.4ml/回転の定量ポンプによって計量して、100孔×0.35mmの紡糸板に進入し紡糸させ、脱イオン水中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が99.9dtexである繊維束が作られた。
【0063】
得られた繊維は35重量%の生体蛋白質を含有し、触感、外観、カール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらなどの人工毛髪製品は良好な、自然的効果を有し、人毛の風合いに似ている。当該実施例中の紡糸板の紡糸可能な時間は、実施例1より半分近く短縮するが、繊維の物理力学的性能のばらつきは実施例1によって得られた繊維より大きい。
【0064】
(実施例5)
実施例1と同様な方法によって生体蛋白質を調製する。
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水3500gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、それぞれ含水の生体蛋白質1900g、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にアクリロニトリル1774gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸アンモニウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム29gを加え、50℃の温度で3時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な生体蛋白質によって改質したアクリロニトリルの紡糸原液が得られた。得られた原液を脱気、濾過した後、2.4ml/回転の定量ポンプによって計量して、100孔×0.35mmの紡糸板に進入し紡糸させ、脱イオン水中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が99.9dtexである繊維束が作られた。
【0065】
当該実施例では、35重量%の生体蛋白質を含有し、紡糸板の紡糸可能な時間は、実施例1より半分近く短縮するが、繊維の物理力学的性能のばらつきは実施例1によって得られた繊維より大きく、繊維の触感と外観は実施例1によって得られた繊維より悪いが、依然として合成毛髪に適用し、ウィッグおよびかつらに作られている。
【0066】
(実施例6)
実施例1と同様な方法によって生体蛋白質を調製する。
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水3500gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、それぞれ含水が50重量%である生体蛋白質800g、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を60℃に制御し、1.5時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にメタクリロニトリル2000g、塩化ビニリデン200g、臭化ビニリデン100g、アリルスルホン酸ナトリウム30g、メタリルスルホン酸ナトリウム15gおよびドデシルメルカプタン32gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸アンモニウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム29gを加え、60℃の温度で4時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な生体蛋白質によって改質したメタクリロニトリルの紡糸原液が得られた。得られた原液を脱気、濾過した後、1.2ml/回転の定量ポンプによって計量して、200孔×0.15mmの紡糸板に進入し紡糸させ、脱イオン水中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が76.6dtexである繊維束が得られた。
【0067】
当該繊維は15重量%の生体蛋白質を含有し、限界酸素指数は24%に達成している。触感、外観、カール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらなどの製品は良好な、自然的効果を有し、人毛の風合いに似ている。
【0068】
(実施例7)
高圧反応釜中に長さ0.2〜0.8mmの人毛の屑1000gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を20分間洗浄した後、0.6MPaまで加圧させ、且つ徐々に140℃まで昇温させ、温度と圧力を30秒維持したまま、常圧まで速やかに減圧させると、人毛が膨潤され、ふんわりとした蛋白質の粉末に分解されている。試料採取と分析の結果により、当該生体蛋白質の分子量が30,000〜60,000である。
【0069】
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水3800gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、それぞれ生体蛋白質200g、チオシアン酸ナトリウム2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、3時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にブテンニトリル2000g、酢酸ビニル500g、スチレンスルホン酸ナトリウム41.5gおよびドデシルメルカプタン32gを加え、均一に攪拌した後、また過酸化ベンゾイル29gを加え、65℃の温度で4時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な生体蛋白質によって改質したポリブテンニトリルの紡糸原液が得られた。当該原液を脱気、濾過した後、1.2ml/回転の定量ポンプによって計量して、400孔×0.10mmの紡糸板に進入し紡糸させ、20重量%のチオシアン酸ナトリウムと脱イオン水の溶液に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が31.4dtexである繊維束が得られた。
【0070】
当該繊維は5重量%の生体蛋白質を含有し、触感、外観、カール保持性および染色性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらなどの製品は良好な、自然的効果を有し、人毛の風合いに似ている。
【0071】
(実施例8)
実施例7と同様な方法によって生体蛋白質を調製する。
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水3500gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、それぞれ生体蛋白質1000g、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を60℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にアクリロニトリル1500g、ブテンニトリル500g、メタクリロニトリル45g、臭化ビニリデン500g、アリルスルホン酸ナトリウム45gおよびN-オクチルメルカプタン32gを加え、均一に攪拌した後、またアゾビスイソブチロニトリル40gを加え、60℃の温度で4時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な生体蛋白質によって改質したアクリロニトリルの紡糸原液が得られた。得られた原液を脱気、濾過した後、1.2ml/回転の定量ポンプによって計量して、200孔×0.15mmの紡糸板に進入し紡糸させ、脱イオン水中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が54.3dtexである繊維束は得られた。
【0072】
当該繊維は28重量%の生体蛋白質を含有し、限界酸素指数は28%に達成している。触感、外観、カール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらなどの製品は良好な、自然的効果を有し、人毛の風合いに似ている。
【0073】
(実施例9)
反応釜中に長さ0.5〜1.8mmの人毛の屑1000gを加え、25重量%の塩酸1500mlを加え、4時間処理させた後、30重量%の水酸化ナトリウム溶液2000mlで4時間処理させ、得られた溶液は半透膜法によって分離を行うと、含水の生体蛋白質1910gが得られた。試料採取と分析の結果により、その中には49重量%の生体蛋白質が含まれている。
【0074】
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水1300gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、それぞれ含水の生体蛋白質2500g、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を40℃に制御し、3.0時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にアクリロニトリル1500g、メタクリロニトリル500g、スチレン500g、p-スチレンスルホン酸ナトリウム45gおよびβ-メルカプトエタノール32gを加え、均一に攪拌した後、また塩素酸ナトリウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム25gを加え、40℃の温度で4時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な生体蛋白質によって改質したアクリロニトリルの紡糸原液が得られた。得られた原液を脱気、濾過した後、2.4ml/回転の定量ポンプによって計量して、100孔×0.35mmの紡糸板に進入し紡糸させ、10重量%の塩化亜鉛と脱イオン水の溶液中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が81.3dtexである繊維束が得られた。
【0075】
当該繊維は40重量%の生体蛋白質を含有し、触感、外観、カール保持性は、人毛に十分に近く、加工されたウィッグおよびかつらなどの製品は良好な、自然的効果を有し、人毛の風合いに似ている。
【0076】
(実施例10〜14)
それぞれ羊毛、駱駝毛、兎毛、馬毛およびヤク毛を実施例1中の人間の短髪に代替し、前記生体蛋白質が作られる以外は、実施例1と同様である。
【0077】
(実施例15〜19)
それぞれ駱駝毛、羊毛、兎毛、馬毛およびヤク毛を実施例7中の人毛の屑に代替し、前記生体蛋白質が作られる以外は、実施例7と同様である。
【0078】
(実施例20〜23)
それぞれ羊毛、ヤク毛、兎毛、馬毛および駱駝毛を実施例9中の人毛の屑に代替し、前記生体蛋白質が作られる以外は、実施例9と同様である。
【0079】
(実施例24〜29)
それぞれ羊毛、ヤク毛、兎毛、馬毛、駱駝毛および人毛1000gを20重量%(重量%であり、以下は同じ)のペルオキシ酢酸の溶液中に2時間浸漬させ、そして18%の水酸化ナトリウム溶液を加え、50℃の温度で5時間攪拌、溶解させ、半透膜法によって溶液中の生体蛋白質を分離する。試料採取と分析の結果により、その中には分子量が60,000〜80,000の生体蛋白質900gが含まれている。
実施例1と同じ原料およびプロセスを用いて合成毛髪を製造する以外は、実施例1と同様である。
【0080】
(比較例)
機械的攪拌器、還流凝縮管を備える15Lの重合釜に脱イオン水3500gを加え、乾燥した窒素ガスを用いて反応釜を洗浄した後、塩化亜鉛2500gを加え、均一に攪拌し、反応釜中の温度を50℃に制御し、2時間攪拌した後に均一な溶液が形成され、溶液中にアクリロニトリル1500g、アクリル酸メチル100g、メタリルスルホン酸ナトリウム41.5gおよびイソプロパノール32gを加え、均一に攪拌した後、また過硫酸アンモニウム15gおよび亜硫酸水素ナトリウム29gを加え、50℃の温度で3時間攪拌して反応させた後、攪拌を停止すると、均一な改質したアクリロニトリルの紡糸原液が得られた。得られた原液を脱気、濾過した後、1.20ml/回転の定量ポンプによって計量して、200孔×0.15mmの紡糸板に進入し紡糸させ、脱イオン水の溶液中に凝固させ、且つ水洗、延伸、乾燥、成形を通じて、単糸繊度が54.9dtexである繊維束が得られた。
【0081】
当該繊維は実施例1によって得られた繊維と比較すると、少しも生体蛋白質の成分も含まれていないので、その触感と外観は人毛と明らかな相違を有し、低級の合成毛髪の製品にしか適用できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質ポリアクリロニトリル繊維であって、その繊維は生体蛋白質を改質組成分とし、その配合(重量%)は以下の通りであり、
アクリロニトリルモノマー 50.0〜98.9%
開始剤 0.1〜0.4%
生体蛋白質 1.0〜50.0%
各組成分の重量%の和は100%であり、
前記アクリロニトリルモノマーは、少なくともアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびブテンニトリルの中の一種であり、
前記開始剤は、少なくとも遊離基開始剤中のアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリル、もしくは過酸化ベンゾイルの中の一種、または、少なくとも酸化-還元開始剤中の過硫酸カリウム-亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム-亜硫酸水素ナトリウム、塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウム、もしくは次亜塩素酸ナトリウム-亜硫酸水素ナトリウムの中の一種であり、
前記生体蛋白質は、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維であり、機械的または化学的方法によって生体蛋白質が加工・調製されている、
ことを特徴とする改質ポリアクリロニトリル繊維。
【請求項2】
前記配合(重量%)の中に第二モノマーを更に含有し、その配合(重量%)は以下の通りに調整されているものであり、
アクリロニトリルモノマー 30.0〜96.9%
開始剤 0.1〜0.4%
生体蛋白質 1.0〜50.0%
第二モノマー 2.0〜20.0%
各組成分の重量%の和は100%であり、
前記第二モノマーは、少なくともアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、スチレン、メチルスチレン、酢酸ビニル、メチレン琥珀酸、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンおよび弗化ビニリデンの中の一種である、
ことを特徴とする請求項1記載の改質ポリアクリロニトリル繊維。
【請求項3】
前記配合(重量%)の中に第三モノマーを更に含有し、その配合(重量%)は以下の通りに調整されているものであり、
アクリロニトリルモノマー 20.0〜96.8%
開始剤 0.1〜0.4%
生体蛋白質 1.0〜50.0%
第二モノマー 2.0〜20.0%
第三モノマー 0.1〜10.0%
各組成分の重量%の和は100%であり、
前記第三モノマーは、少なくともメタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、エチレンスルホン酸ナトリウム、スルフォアルキルアクリレートおよびスルフォアルキルメタクリルアミドの中の一種である、
ことを特徴とする請求項2記載の改質ポリアクリロニトリル繊維。
【請求項4】
前記配合(重量%)中に0.1〜0.6の連鎖移動剤を含有し、前記連鎖移動剤は、少なくともドデシルメルカプタン、N-オクチルメルカプタン、β-メルカプトエタノールおよびイソプロパノールの中の一種である、
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の改質ポリアクリロニトリル繊維。
【請求項5】
前記アクリロニトリルモノマーの含有量が20.0〜89.2重量%であり、
前記生体蛋白質の含有量が5.0〜40.0重量%であり、
前記開始剤の含有量が0.1〜0.3重量%であり、
前記第二モノマーの含有量が5.0〜15.0重量%であり、
前記第三モノマーの含有量が0.5〜3.0重量%であり、
前記連鎖移動剤の含有量が0.2〜0.4重量%であり、
前記第二モノマーは、少なくとも塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデンおよび弗化ビニリデンの中の一種である、
ことを特徴とする請求項4記載の改質ポリアクリロニトリル繊維。
【請求項6】
改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法であって、請求項1、2または3記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の配合(重量%)に基づき、以下の各プロセスを経て製造されること、即ち、
(1)生体蛋白質溶液の調製:
まず、羊毛、牛毛、馬毛、兎毛、駱駝毛、ヤク毛または/および人毛を含む天然動物繊維を機械的または化学的方法によって生体蛋白質に加工、調製し、得られた生体蛋白質を精製した後、濃度15〜45重量%の硝酸、塩化亜鉛またはチオシアン酸ナトリウム中の一種の溶液に溶解させ、生体蛋白質溶液が得られ、前記生体蛋白質を加工する化学的方法は、酸とアルカリ処理法、還元法および酸化法であり、
(2)改質ポリアクリロニトリル繊維の原液の調製:
30〜70℃の温度で、前記配合に記載された開始剤を利用して、前記生体蛋白質溶液中でアクリロニトリルモノマーとの重合反応を開始させるか、アクリロニトリルモノマー及び前記第二モノマーとの重合反応を開始させるか、または、アクリロニトリルモノマー、前記第二モノマー及び第三モノマーとの重合反応を開始させ、反応時間は2〜10時間であり、生体蛋白質を含有するアクリロニトリル重合体の原液が得られ、当該原液の濃度は10〜50重量%であり、
(3)改質ポリアクリロニトリル繊維の製造:
得られたアクリロニトリル重合体の原液で溶液紡糸の技術により前記改質ポリアクリロニトリル繊維が作られる、
ことを特徴とする改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項7】
当該製造方法は、請求項5記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の配合(重量%)に基づくと共に、前記原液の濃度は20〜40重量%である、
ことを特徴とする請求項6記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項8】
前記機械的方法によって生体蛋白質を加工、調製するプロセスは、まず、毛髪を80〜250℃に加熱させ、0.1〜25MPaの圧力で、高圧加水分解、高圧膨潤または押出しの方法によって毛髪中のジスルフィド結合を破壊し、前記生体蛋白質が得られるものである、
ことを特徴とする請求項6記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項9】
前記加熱温度は100〜210℃であり、前記圧力範囲は0.3〜20MPaである、ことを特徴とする請求項8記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項10】
前記酸とアルカリ処理法は、以下のプロセスであること、即ち、
40〜95℃の温度で、まず、濃度1〜30重量%の酸溶液で毛髪を1〜20時間膨潤させ、そして濃度1〜30重量%の弱アルカリ溶液で毛髪を溶解させ、前記酸は塩酸、硫酸または硝酸溶液中の一種であり、前記アルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウムの弱アルカリ溶液中の一種であり、重量の90%以上の毛髪は溶解された後、生体蛋白質を分離し始め、濾過した後にろ液を収集し、更に生体蛋白質を抽出する、
ことを特徴とする請求項6記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項11】
前記酸濃度は3〜26重量%であり、溶液による毛髪の膨潤時間は3〜10時間であり、前記アルカリ濃度は3〜26重量%であり、前記酸による毛髪の膨潤およびアルカリによる毛髪の溶解温度は50〜85℃である、
ことを特徴とする請求項10記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項12】
前記還元法は、以下のプロセスであること、即ち、
まず、濃度0.1〜10mol/L、pH値8〜14のチオグリコール酸ナトリウムまたはチオグリコール酸アンモニウムのアルカリ溶液によって毛髪を1〜20時間処理させ、そして前記アルカリ溶液中に尿素を加え、尿素の濃度は0.1〜10mol/Lであり、毛髪を膨潤させ、そして、0〜95℃の温度で3〜50時間反応させ、重量の90%以上の毛髪が溶解された後、生体蛋白質を分離し始め、濾過した後にろ液を収集し、更に生体蛋白質を抽出し、前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム溶液である、
ことを特徴とする請求項6記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項13】
前記チオグリコール酸ナトリウムまたはチオグリコール酸アンモニウムのアルカリ溶液の濃度は0.3〜8mol/Lであり、pH値は8〜12であり、毛髪の処理時間は2〜10時間であり、アルカリ溶液における前記尿素の濃度は0.3〜8mol/Lであり、前記反応温度は0〜85℃である、ことを特徴とする請求項12記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項14】
前記酸化法は、以下のプロセスであること、即ち、
30〜85℃の温度で、まず、濃度1〜50重量%の過酸化水素、ペルオキシ酢酸、次亜塩素酸ナトリウムまたは塩素酸ナトリウム溶液によって毛髪を1〜20時間浸漬させ、そして濃度1〜50重量%のアルカリ溶液を加え、30〜95℃の温度で、3〜50時間溶解させ、重量の90%以上の毛髪が溶解された後、生体蛋白質を分離し始め、濾過した後にろ液を収集し、更に生体蛋白質を抽出し、前記アルカリ溶液は、少なくとも水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム溶液中の一種である、
ことを特徴とする請求項6記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項15】
前記過酸化水素、ペルオキシ酢酸、次亜塩素酸ナトリウムまたは塩素酸ナトリウム溶液の濃度は2〜40%であり、毛髪の浸漬時間は2〜10時間であり、前記アルカリ溶液濃度は2〜40%であり、前記溶解温度は30〜85℃である、ことを特徴とする請求項14記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項16】
前記重合反応の反応時間は4〜8時間であり、反応温度は40〜65℃である、ことを特徴とする請求項6記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項17】
当該製造方法は請求項5記載の配合に基づくことを特徴とする請求項6記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項18】
当該製造方法は請求項4記載の配合に基づくことを特徴とする請求項7記載の改質ポリアクリロニトリル繊維の製造方法。
【請求項19】
当該改質ポリアクリロニトリル繊維の単糸繊度を30〜100dtexにして、当該改質ポリアクリロニトリル繊維により合成毛髪が作られ、人工毛髪製品に用いられていることを特徴とする請求項1、2または3記載の改質ポリアクリロニトリル繊維のその用途。
【請求項20】
当該改質ポリアクリロニトリル繊維の単糸繊度を30〜100dtexにして、当該改質ポリアクリロニトリル繊維により合成毛髪が作られ、人工毛髪製品に用いられていることを特徴とする請求項5記載の改質ポリアクリロニトリル繊維のその用途。

【公表番号】特表2010−512468(P2010−512468A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540578(P2009−540578)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/CN2007/003280
【国際公開番号】WO2008/071062
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509162621)ヒキン グループ カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】