説明

改質剤、樹脂組成物、及び樹脂成形体

【課題】改質剤として、ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含むゴム成分にビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体を含むゴム粒子と、該ゴム粒子上に設けられた難燃剤と、を含有した構成としない場合に比べて、優れた衝撃強度と、優れた難燃性と、の双方を実現した改質剤を提供する。
【解決手段】ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含むゴム成分に、ビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体を含むゴム粒子と、前記ゴム粒子上に付着した難燃剤と、を含有した改質剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質剤、樹脂組成物、及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラス転位温度の異なる複数のゴム成分からなるポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムに1種以上のビニル系単量体がグラフト重合されてなるアクリルゴム系グラフト共重合体を含む、アクリルゴム系衝撃強度改質剤が提案されている。
【0003】
特許文献2には、分子末端が炭素数10〜20のアルキルフェノールで封止されたポリカーボネート樹脂を含むポリカーボネート系樹脂100質量部に対して、官能基含有シリコーン化合物0.1〜10質量部及びコア/シェルタイプグラフトゴム状弾性体0.2〜10質量部を含有してなるポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。
【0004】
特許文献3には、三次元架橋構造を有するガラス転位温度0℃以下のポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなるゴム質核、およびガラス転位温度60℃以上の硬質樹脂を含む粘着性のない殻からなるコアシェル構造のビーズ状熱可塑性重合体粒子であって、ガラス転位温度60℃以上の硬質樹脂が、ゴム質核よりも殻に多く含まれたビーズ状熱可塑性重合体粒子が提案されている。
【0005】
特許文献4には、非ハロゲン系のゴム強化スチレン系樹脂、非ハロゲン系のポリフェニレンエーテル系樹脂、特定の芳香族リン酸エステル及びノボラック型フェノール樹脂、及び衝撃強度改質剤を含む樹脂組成物が提案されている。そして、この衝撃強度改質剤としては、ビニル基含有シリコーン化合物、ポリスチレンとポリブタジエンとポリイソプレンとからなるブロック共重合体であるスチレン系熱可塑性型エラストマー、マレイン酸変性樹脂、フェノキシ樹脂、及びシリコン化合物が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3376283号明細書
【特許文献2】特開2002−12754号公報
【特許文献3】特開2007−70624号公報
【特許文献4】特開2000−290450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含むゴム成分にビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体を含むゴム粒子と、該ゴム粒子上に設けられた難燃剤と、を含有した構成としない場合に比べて、優れた衝撃強度と、優れた難燃性と、の双方を実現した改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含むゴム成分に、ビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体を含むゴム粒子と、前記ゴム粒子上に付着した難燃剤と、を含有した改質剤である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記ゴム粒子100質量部に対する前記難燃剤の付着量が1質量部以上65質量部以下である請求項1に記載の改質剤である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記難燃剤は、前記ゴム粒子上に設けられた中間被覆物を介して該ゴム粒子上に付着してなる請求項1または請求項2に記載の改質剤である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記中間被覆物が、アルコキシシランから生成されたオルガノシラン化合物、ポリシロキサン、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも1種からなる請求項3に記載の改質剤である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記難燃剤が、リン系難燃剤である請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の改質剤である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の改質剤と、熱可塑性樹脂と、を含有した樹脂組成物である。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート系樹脂である請求項6に記載の樹脂組成物である。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項6または請求項7に記載の樹脂組成物を含む樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含むゴム成分にビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体を含むゴム粒子と、該ゴム粒子上に設けられた難燃剤と、を含有した構成としない場合に比べて、優れた衝撃強度と、優れた難燃性と、の双方を実現した改質剤が提供される。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、難燃剤の付着量が本発明に係る範囲外である場合に比べて、更に優れた衝撃強度と、更に優れた難燃性と、の双方が実現される。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、難燃剤が中間被覆物を介さずに直接ゴム粒子上に付着した場合に比べて、ゴム粒子と難燃剤との接着性が向上される。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、中間被覆物として、アルコキシシランから生成されたオルガノシラン化合物、ポリシロキサン、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも1種を用いない場合に比べて、ゴム粒子と難燃剤との接着性が確実に向上される。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、難燃剤としてリン系難燃剤を用いない場合に比べて、難燃性に優れるという効果が得られる。
【0021】
請求項6、7に係る発明によれば、本発明における改質剤を含まない場合に比べて、優れた衝撃強度と、優れた難燃性と、の双方が実現される。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、本発明における改質剤を含まない場合に比べて、優れた衝撃強度と、優れた難燃性と、の双方が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の成形体を備える電子・電気機器の部品の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施の形態の改質剤、樹脂組成物、及び成形体について説明する。
【0025】
<改質剤>
本実施の形態に係る改質剤は、ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含むゴム成分に、ビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体を含むゴム粒子と、ゴム粒子上に付着した難燃剤と、を含有する。
【0026】
本実施の形態に係る改質剤は、上記の構成であることにより、優れた衝撃強度と、優れた難燃性と、の双方を実現した改質剤として機能する。
【0027】
上記効果が奏される理由は明らかとなっていないが、以下のように推測される。しかしながら、下記推測によって本発明は限定されない。
樹脂組成物においては、衝撃強度を向上させる材料として、上記グラフト共重合体を含むゴム粒子を用いることが重要であることが明らかとなった。また、更なる鋭意検討によって、このゴム粒子表面に難燃剤を付着させることで、衝撃強度を向上すると同時に樹脂に効果的に難燃性を付与することが可能となり、樹脂組成物に添加する難燃剤の使用量を低減できると考えられる。また、粒子表面の難燃剤が混合される樹脂に優れた流動性を与え、その結果、衝撃強度と、難燃性と、の双方の特性を向上させる改質剤が提供されるものと考えられる。
【0028】
以下、各成分の詳細について説明する。
【0029】
(ゴム粒子)
本実施の形態に係る改質剤は、ゴム粒子を含んでいる。
このゴム粒子は、ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含むゴム成分に、ビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体を含む粒子である。
【0030】
―ゴム成分―
本実施の形態におけるグラフト共重合体に含まれるゴム成分は、ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含む。
ゴム成分は、ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含む構成であればよいが、このゴム成分100質量%に含まれる、ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の総量が、5質量%以上100質量%以下であることが望ましく、25質量%以上90質量%以下であることがさらに望ましい。
【0031】
ポリシロキサンゴム成分としては、例えば、ポリジメチルポリシロキサン、ポリジエチルポリシロキサン、ポリジプロピルポリシロキサン、ポリジブチルポリシロキサン、ポリジペンチルポリシロキサン、等のポリジアルキルポリシロキサンや、ポリジメチルポリシロキサン−ジフェニルポリシロキサン共重合体、側鎖アルキル基の一部が水素原子に置換されたポリオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。上記の中でも、ポリジアルキルポリシロキサンが望ましい。更に、前記ジアルキルポリシロキサンの2つのアルキル部分の炭素数は、それぞれ独立に1以上6以下が望ましい。なお、これらのポリシロキサンゴム成分は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
これらのポリシロキサンゴム成分の中でも、溶融混練における分散性が良好であるという理由から、ポリジメチルポリシロキサン、ポリジエチルポリシロキサン、ポリジプロピルポリシロキサン等が望ましい。
【0032】
アクリルゴム成分は、(メタ)アクリル酸アルキルを含有する第1の組成物から重合して得られる。なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸またはメタクリル酸を表す。
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、炭素数2以上10以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが望ましい。例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アルキル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル等から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0033】
アクリルゴム成分は、第1の組成物中に含まれる単量体成分100質量%に対して、上記(メタ)アクリル酸アルキルを70質量%以上99.9質量%以下で含有する第1の組成物から重合して得られる。第1の組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルを70質量%以上99.9質量%以下含有することが望ましく、75質量%以上95質量%以下含有することが更に望ましい。第1の組成物中に含まれる(メタ)アクリル酸アルキルの含有量を上記範囲に調整すると、より優れた耐久性を付与できるという効果が得られる。
【0034】
第1の組成物は、前記(メタ)アクリル酸アルキル以外の他の単量体を30質量%以下含有してもよい。この他の単量体としては、共重合可能な他のビニル系単量体であればよいが、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレンが挙げられる。これらのその他の単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
第1の組成物の重合方法は、特に制限されず、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法が適用される。なお、重合に際して第一の組成物には、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒、乳化剤、分散安定剤、pH調整剤、架橋剤などを添加する。
この架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸エチレン、シアノ酸トリアクリル、イソシアノ酸トリアリル等の多官能性単量体が挙げられる。
【0036】
本実施の形態におけるグラフト共重合体に含まれるゴム成分としては、上記ポリシロキサンゴム成分と上記アクリルゴム成分の少なくとも一方を含むことが必須であるが、これらの成分のうちポリシロキサンゴム成分を少なくとも含むことが望ましく、上記ポリシロキサンゴム成分と上記アクリルゴム成分の双方を含むことが特に望ましい。
ゴム成分が、上記ポリシロキサンゴム成分と上記アクリルゴム成分の双方を含むゴム成分とすると、各々の単独重合体を用いた場合に比べて、耐衝撃改良効果が高い。
【0037】
なお、ゴム成分が、上記ポリシロキサンゴム成分と上記アクリルゴム成分の双方を含む場合には、ゴム成分中における、ポリシロキサンゴム成分と、アクリルゴム成分と、の配合比率は、質量比で、5:95以上95:5以下であることが望ましく、20:80以上80:20以下であることが更に望ましい。
【0038】
なお、ゴム成分は、その他のゴム成分を含んでいてもよい。
その他のゴム成分としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。上記その他のゴム成分の含有量は、30質量%以下であることが望ましい。
【0039】
また更に、ゴム成分においては、その他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤、耐候剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(タルク、クレー、マイカ等)等が挙げられる。上記その他の添加剤の含有量は、10質量%以下であることが望ましい。
【0040】
ゴム成分の作製方法は、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
例えば、ゴム成分が、上記ポリシロキサンゴム成分と上記アクリルゴム成分の双方を含む場合には、まず、上記ポリシロキサンゴム成分を用意する。次に、ポリシロキサンゴム成分に、上記アクリルゴム成分を構成する単量体を浸透させる。この状態で、アクリルゴム成分の重合を行うことで、ゴム成分が得られる。
【0041】
具体的には、まず、ポリシロキサンゴム成分ラテックス中に、アクリルゴム成分を構成する単量体を添加、含浸させた後、ラジカル重合開始剤の存在下で重合させる方法等が挙げられる。重合の進行にともない、ポリシロキサンゴム成分とアクリルゴム成分が複合化した状態のゴム成分のラテックスが得られる。その他、アクリルゴム成分をポリシロキサンゴム成分の存在下で滴下重合したり、あるいは、複合化したゴムを酸または塩等で肥大化したりする方法等を用いて製造してもよい。
【0042】
上記方法によりゴム成分が得られる。なお、ポリシロキサンゴム成分またはアクリルゴム成分のみを含むゴム成分とする場合には、各々の成分を構成する単量体を重合させることでゴム成分を調整すればよい。
【0043】
上記作製工程を経て、ゴム成分が粒子形状で得られる。
得られた粒子状のゴム成分の質量平均粒子径は、0.01μm以上1μm以下であることが望ましく、0.02μm以上0.6μm以下であることがさらに望ましい。
ゴム成分の質量平均粒子径が上記範囲内であることにより、より高い耐衝撃性を付与できるという利点があると考えられる。
【0044】
ここで、上記質量平均粒子径(dw)は以下の方法により測定され、本明細書に記載の値は該方法によって測定したものである。
得られたゴム成分を含有するラテックスを蒸留水で濃度3%に希釈したものを試料として、米国MATEC社製、CHDF2000型粒度分布計を用いて測定する。測定条件は、MATEC社が推奨する標準条件で行う。即ち、標準条件(専用の粒子分離用キャピラリー式カートリッジおよびキャリア液を使用、液性:中性、流速:1.4ml/min、圧力:4000psi、および温度:35℃)を保ちながら、濃度3%の希釈ラテックス試料0.1mlを測定に用いる。なお、標準粒子径物質として米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンを0.02μm以上0.8μm以下の範囲内で合計12点用いる。
【0045】
―ビニル単量体―
ビニル単量体としては、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル(以下「エステル系ビニル単量体」と称する場合がある。)、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体が挙げられる。
前記エステル系ビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸と炭素数が1以上18以下のアルカノールとのエステルなどが挙げられる。代表的なものとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0046】
芳香族ビニル単量体としては、未置換のスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンや、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等のアルキル鎖を持つアルキル置換スチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン等の塩素置換スチレン、4−フルオロスチレン、2,5−ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン等が挙げられる。
【0047】
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル、等が挙げられる。
【0048】
上記ビニル単量体のなかでも、炭素数1以上2以下のアルキルの(メタ)アクリル酸エステル、未置換のスチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが望ましい。
前記ビニル単量体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
(グラフト共重合体)
本実施形態に係るグラフト共重合体は、前記ゴム成分に前記ビニル単量体をグラフト重合することにより得られる。
グラフト共重合において、ゴム成分は20質量%以上95質量%以下で用いることが望ましく、25量%以上80質量%以下がさらに望ましく、30質量%以上75質量%以下がより望ましい。ここで、ゴム成分とビニル単量体の合計は100質量%である。上記範囲内にある場合、分散性が良好で加工性に優れる。
【0050】
前記ゴム成分に前記ビニル単量体をグラフト重合する方法は、公知の方法が適用される。
具体的には、グラフト共重合体は、ビニル単量体をゴム成分のラテックスに加え、ラジカル重合によって一段または多段で重合させて得られる。グラフト共重合体は、このグラフト共重合体ラテックスを、硫酸、塩酸などの酸、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、または硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固し分離、回収することにより粒子として得られる。この際、炭酸ナトリウムや硫酸ナトリウム等の塩類を併用してもよい。また、スプレードライ法などの直接乾燥法等でも得られる。
また、必要に応じて前記その他の成分を加えることで、グラフト共重合体を含むゴム粒子が得られる。
【0051】
得られたグラフト共重合体を含むゴムは、粒子の形状で得られる(ゴム粒子)。このグラフト共重合体を含むゴム粒子の質量平均粒径は、0.01μm以上1.0μm以下であることが望ましく、0.05μm以上0.8μm以下であることがより望ましく、0.1μm以上0.7μm以下であることが更に望ましい。
【0052】
なお、ゴム粒子は、上記ゴム粒子表面を被覆層で覆った構成のコア−シェル構造としてもよい。この場合には、コア−シェル構造のシェル部分(被覆層)としては、アクリル樹脂や、アクリロ二トリル、メタクリロ二トリル等のシアン化ビニル化合物や、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物等が挙げられる。
ゴム粒子をコア−シェル構造とすると、コア部分が軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部分が硬質な樹脂状態とされ、コア−シェル構造のゴム粒子自体は、粒子状とされる。このコア−シェル構造のゴム粒子は、後述する熱可塑性樹脂(特に、アクリロニトリル系及びスチレン系の混合樹脂)と溶融混合した後であっても、その粒子状態の大部分がもとの形態を保つことから、表層剥離(粒子が樹脂表面から剥がれる状態)が生じにくい。
【0053】
シェル部分に用いられるアクリル樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。また、シアン化ビニル化合物としては、アクリロ二トリル、メタクリロ二トリル等が挙げられる。これらの中でも、樹脂中での分散性が良好である理由からメタクリル酸エステルが望ましい。
【0054】
このコア−シェル構造の製法としては、上記ゴム粒子上に上記シェルが設けられる方法であればどのような製法であってもよく、公知の製法が利用され、例えば、湿式製法、特に乳化重合凝集法が挙げられる。
【0055】
コア−シェル構造とされたゴム粒子としては、様々なものが挙げられるが、市販品としては、例えば、ハイブレンB621(日本ゼオン株式会社製)、KM330(ローム&ハース株式会社製)、メタブレンシリーズ(W450A、S2001、C323A:三菱レイヨン株式会社製)等が挙げられる。
【0056】
―難燃剤―
ゴム粒子上に付着した難燃剤としては、具体的には、ハロゲン系難燃剤や、非ハロゲン系難燃剤が挙げられる。なお、「付着」とは、難燃剤が、ゴム粒子上に直接または後述する中間被覆物等の他の成分を介して化学的に結合または静電作用等により、ゴム粒子上に保持された状態を示す。
【0057】
ここで、ハロゲン系難燃剤は樹脂に難燃性を付与する反面、成形時に熱分解してハロゲン化水素を発生して、成形金型や成形機、周辺機器、電気・電子部品の金属部分を腐食させることがある。このような腐食性ガスを回収する方法も考えられるが、特別な装置が必要となる。また燃焼時の発煙量が多く、さらにハロゲン化水素が毒性を有するため、作業環境を悪化させるばかりでなく、燃焼により人体に悪影響を与える場合がある。したがって、難燃剤としては、非ハロゲン系の難燃剤を用いることが望ましい。
【0058】
非ハロゲン系の難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの無機系金属化合物、無機系金属化合物以外の難燃剤が挙げられる。中でも、添加量を抑制しつつ且つ難燃性を付与する観点から、無機系金属化合物以外の非ハロゲン系の難燃剤が望ましい。
【0059】
この非ハロゲン系の難燃剤としては、有機リン系難燃剤が望ましい。
有機リン系難燃剤としては、特に限定されないが、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどの低分子のリン酸エステルや、リン酸トリス(2,6−ジメチルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジエチルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジ−n−プロピルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジイソプロピルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジ−sec−ブチルフェニル)、リン酸トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)、リン酸トリス〔(2,3,6−、2,4,6−)トリメチルフェニル〕、リン酸トリス〔(2,3,6−、2,4,6−)トリエチルフェニル〕およびリン酸トリス〔(2,3,6−、2,4,6−)トリ−n−プロピルフェニル〕、ならびにこれらのリン酸エステル単量体の縮合物であるレゾルシンビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、レゾルシンビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕、レゾルシンビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕、ヒドロキノンビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、ヒドロキノンビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕、ヒドロキノンビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕、ビスフェノールAビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、ビスフェノールAビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕、ビスフェノールAビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕、ビスフェノールSビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、ビスフェノールSビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕、ビスフェノールSビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕、ビフェノールビス〔リン酸ビス(2,6−ジメチルフェニル)〕、ビフェノールビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)クレジル〕およびビフェノールビス〔リン酸(2,6−ジメチルフェニル)フェニル〕などの芳香族リン酸エステル等が挙げられる。
【0060】
ゴム粒子上に付着した難燃剤の付着量は、ゴム粒子100質量部に対して、1質量部以上200質量部以下であることが望ましく、1質量部以上150質量部以下であることが更に望ましく、1質量部以上65質量部以下であることが特に望ましい。
【0061】
ゴム粒子上に付着した難燃剤の付着量が上記範囲内であると、ゴム粒子に表面に難燃剤が均一に付着(ゴム粒子上を全体的に覆うように被覆)しやすく、また、付着した難燃剤がゴム粒子上に安定して保持されると考えられ、結果的に、後述する熱可塑性樹脂における改質剤の相溶性の低下や、成形品の表面剥離が抑制されると考えられる。
【0062】
(中間被覆物)
改質剤において、上記難燃剤は、ゴム粒子上に設けられた中間被覆物を介してゴム粒子に付着されていることが望ましい。
【0063】
この中間被覆物としては、難燃剤と、ゴム粒子と、を強固に接着する機能を有する材料であればよいが、例えば、アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はポリシロキサンなどの有機化合物のほか、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物などの無機化合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらを使用することにより、結果として耐衝撃性が向上される。
【0064】
中間被覆物として用いられる上記アルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物(以下、「オルガノシラン化合物」という。)の原料であるアルコキシシランとしては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0065】
これらのなかでも、難燃剤の付着効果や離脱率の低さを考慮すると、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物が好ましく、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランから生成するオルガノシラン化合物が望ましい。
【0066】
中間被覆物として用いられるポリシロキサンとしては、具体的には、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物、下記一般式(2)で表されるポリシロキサン、下記一般式(3)で表される変性ポリシロキサン、下記一般式(4)で表される末端変性ポリシロキサン並びに下記一般式(5)で表されるフルオロアルキルシラン又はこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
【化1】

【0068】
上記一般式(1)中、Rは、−C、−CHCH(CH、n−C2m+1−からなる群より選択される1種を表す。また、Xは、各々独立に、−OCHまたは−OCを表す。また、aは、0〜3の整数を表し、mは1〜18の整数を表す。
【0069】
【化2】



【0070】
上記一般式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。また、上記一般式(2)中、vは、25〜450の整数を表す。
【0071】
【化3】



【0072】
【化4】

【0073】
一般式(3)中、wは1〜50の整数を表し、xは1〜300の整数を表す。また、一般式(3)中、Rは、上記式(3a)〜(3c)を表す。また、p及びqは、1〜15の整数を表す。また、R、R、及びRは、各々独立に−(CH−を表す。lは、1〜15の整数を表す。なお、R、R、及びRは、同じであっても異なっていてもよい。また、R、及びRは、各々独立に、−(−CH−)−,または−CHを表す。Rは、−OH、―COOH、−CH=CH、または−(CHCHを表す。また、m及びnは0〜15の整数を表す。
【0074】
【化5】



【0075】
上記一般式(4)中、R及びR10は、各々独立に−OH、−R12OH、または−R13COOHを表す。なお、R及びR10は、同じであっても異なっていてもよい。R11は、−CH、または−Cを表す。R12及びR13は、各々独立に、−(−CH−)−を表す。またpは1〜15の整数を表し、yは1〜200の整数を表し、zは0〜100の整数を表す。
【0076】
【化6】



【0077】
上記一般式(5)中、Rは、メチル基またはエチル基を表し、mは0〜15の整数を表し、nは1〜3の整数を表す。
【0078】
中間被覆物として用いられる酸化アルミニウムとしては、具体的には、褐色溶融アルミナ、スピネル型アルミナ、コランダム型アルミナ、βアルミナ等が挙げられる。また、中間被覆物として用いられるアルミニウムの水酸化物としては水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0079】
中間被覆物として用いられるケイ素の酸化物としては具体的には、金属シリコンを酸素と反応させて得られる球状シリカ粉体、破砕シリカを溶融して得られる球状シリカ粉体、シリカ破砕物等が挙げられる中間被覆物として用いられるケイ素の水酸化物としては、具体的には、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が挙げられる。
【0080】
中間被覆物のゴム粒子の被覆量は、ゴム粒子100質量部に対して、0.1質量部以上45質量部以下が望ましく、0.2質量部以上40質量部以下がさらに望ましい。
中間被覆物のゴム粒子の被覆量が上記の範囲内であると、ゴム粒子への難燃剤の付着効果や離脱率の抑制が効果的に実現されると考えられる。
【0081】
(改質剤)
改質剤は、上記難燃剤を、ゴム粒子上に直接付着、または、上記中間被覆物を介してゴム粒子上に付着させることによって得られる。
【0082】
まず、ゴム粒子上に中間被覆物を設ける方法を説明する。
ゴム粒子上に中間被覆物を設ける方法としては、公知の方法を用いればよいが、例えば、ゴム粒子と、中間被覆物と、必要に応じてその他の成分とを混合攪拌機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0083】
この混合攪拌機としては、粉体層にせん断力を加える装置が挙げられ、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機が挙げられる。これらの中でも、混合攪拌機としては、ホイール型混練機がより効果的に使用される。
【0084】
ホイール型混練機としては、具体的には、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、望ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より望ましくはエッジランナーである。上記ボール型混練機としては、具体的に、振動ミル等があげられる。上記ブレード型混練機としては、具体的に、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウタミキサー等が挙げられる。上記ロール型混練機としては、具体的には、エクストルーダー等が挙げられる。
【0085】
混合攪拌時における条件は、ゴム粒子上に前記中間被覆物ができるだけ均一に被覆されるように、線荷重は19.6N/cm以上1960N/cm以下(2kg/cm以上200kg/cm以下)、望ましくは98N/cm以上1470N/cm以下(10kg/cm以上150kg/cm以下)、より望ましくは147N/cm以上980N/cm以下(15kg/cm以上100kg/cm以下)、処理時間は1分以上120分以下、望ましくは2分以上90分以下の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、攪拌速度は2rpm以上2000rpm以下、望ましくは5rpm以上1000rpm以下、より望ましくは10rpm以上800rpm以下の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0086】
一方、上記難燃剤を、ゴム粒子上に直接付着、または、上記中間被覆物を介してゴム粒子上に付着させて改質剤を調整する方法としては、ゴム粒子または中間被覆物によって被覆されたゴム粒子と、難燃剤と、必要に応じてその他の成分とを上記混合攪拌機を用いて混合することによって、改質剤を調整する方法が挙げられる。そして、必要により更に、乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。
【0087】
なお、上記混合時において、難燃剤は、少量ずつ時間をかけながら、5分間以上60分間以下程度の時間をかけて添加するのが望ましい。混合攪拌時における条件は、難燃剤が均一に付着するように、線荷重は19.6N/cm以上1960N/cm以下(2kg以上200kg以下/cm)、望ましくは98N/cm以上1470N/cm以下(10kg/cm以上150kg/cm以下)、より望ましくは147N/cm以上980N/cm以下(15kg/cm以上100Kg/cm以下)、処理時間は5分以上120分以下、望ましくは10分以上90分以下の範囲で処理条件を適宜調整すれがよい。なお、攪拌速度は2rpm以上2000rpm以下、望ましくは5rpm以上1000rpm以下、より望ましくは10rpm以上800rpm以下の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0088】
上記製法によって、本実施の形態の改質剤が得られる。
【0089】
<樹脂組成物>
本実施の形態の樹脂組成物は、上記改質剤と、熱可塑性樹脂と、を含有した樹脂組成物である。
【0090】
この樹脂組成物における上記改質剤の含有量は、含有する熱可塑性樹脂の種類や、形成される成形体に要求される難燃性や耐衝撃性の程度によって異なるが、例えば、0.5質量部以上30質量部以下、好ましくは1質量部以上20質量部以下の範囲が挙げられる。上記改質剤は、ゴム粒子表面に均一に難燃剤を付着させた構造であることから、上記ゴム粒子上に上記難燃剤が設けられていない構成の改質剤を添加する場合に比べて、少ない添加量(含有量)で、良好な難燃性が付与される。また、該少ない添加量で、良好な難燃性が維持されつつ、衝撃強度の向上が図れると考えられる。
【0091】
熱可塑性樹脂としては、従来公知の樹脂が用いられる。具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリーレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、液晶樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリパラバン酸樹脂、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂、ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂、シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂が、改質剤におけるグラフト成分との相溶性に優れ、且つゴム粒子との組合せによって優れた難燃性を発現する観点から望ましい。
【0092】
ここで、ポリカーボネート(以下、「PC」ともいう)系樹脂としては、例えば、芳香族ポリカーボネート、ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂環式ポリカーボネートなどが挙げられる。上記の中でも、芳香族ポリカーボネートが望ましい。
【0093】
また、上記ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート系樹脂の少なくとも1種と、スチレン系樹脂の少なくとも1種と、を組み合わせたアロイ樹脂として用いてもよい。
上記スチレン系樹脂としては、例えば、GPPS樹脂(一般ポリスチレン樹脂)、HIPS樹脂(耐衝撃性ポリスチレン)、SBR樹脂(スチレンブタジエンゴム)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、MS樹脂(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)などが挙げられる。上記の中でも、HIPS樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等が望ましい。
【0094】
ポリカーボネート/スチレン系アロイ樹脂の市販品としては、帝人化成社製のPC/ABSアロイ樹脂である「TN7300」、出光興産社製のPC/HIPSアロイ樹脂である「NN2710AS」、UMGABS社製のPC/ABSアロイ樹脂である「ZFJ61」、SABIC社製のPC/ABSアロイ樹脂である「C6600」等が挙げられる。
【0095】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物中における上記熱可塑性樹脂の含有量は、全熱可塑性樹脂組成物に対して10質量%以上90質量%以下であることが望ましい。
【0096】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、更にその他の成分を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂組成物中における上記その他成分の含有量は0質量%以上10質量%以下であることが望ましく、0質量%以上5質量%以下であることがより望ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まない形態を意味する。
該その他の成分としては、例えば、各種顔料、ドリップ防止剤、相溶化剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐候剤、耐加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミナ、ボロンナイトライド等)等が挙げられる。また、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、その他の成分として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を、例えば0.1質量%以上1質量%含んでいてもよい。
【0097】
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも、前述の本実施形態に係る改質剤と、前記熱可塑性樹脂と、を用い、更に例えば、前記その他の成分等を用いて、溶融混練することにより製造される。
ここで、溶融混練の手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、二軸押出し、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
【0098】
<樹脂成形体>
本実施形態に係る樹脂成形体は、前述の本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物を含んで構成される。
即ち、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物を成形して得られるものである。例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーテイング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などの成形方法により本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物を成形し、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。
【0099】
前記射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行う。
この際、シリンダ温度としては、220℃以上280℃以下とすることが望ましく、230℃以上270℃以下とすることがより望ましい。また、金型温度としては、40℃以上80℃以下とすることが望ましく、50℃以上70℃以下とすることがより望ましい。
【0100】
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。
【0101】
図1は、本実施形態に係る成形体を備える電子・電気機器の部品の一例である画像形成装置を、前側から見た外観斜視図である。
図1の画像形成装置100は、本体装置110の前面にフロントカバー120a,120bを備えている。これらのフロントカバー120a,120bは、操作者が装置内を操作するよう開閉自在となっている。これにより、操作者は、トナーが消耗したときにトナーを補充したり、消耗したプロセスカートリッジを交換したり、装置内で紙詰まりが発生したときに詰まった用紙を取り除いたりする。図1には、フロントカバー120a,120bが開かれた状態の装置が示されている。
【0102】
本体装置110の上面には、用紙サイズや部数等の画像形成に関わる諸条件が操作者からの操作によって入力される操作パネル130、および、読み取られる原稿が配置されるコピーガラス132が設けられている。また、本体装置110は、その上部に、コピーガラス132上に原稿を搬送する自動原稿搬送装置134を備えている。更に、本体装置110は、コピーガラス132上に配置された原稿画像を走査して、その原稿画像を表わす画像データを得る画像読取装置を備えている。この画像読取装置によって得られた画像データは、制御部を介して画像形成ユニットに送られる。なお、画像読取装置および制御部は、本体装置110の一部を構成する筐体150の内部に収容されている。また、画像形成ユニットは、着脱自在なプロセスカートリッジ142として筐体150に備えられている。プロセスカートリッジ142の着脱は、操作レバー144を回すことによって行われる。
【0103】
本体装置110の筐体150には、トナー収容部146が取り付けられており、トナー供給口148からトナーが補充される。トナー収容部146に収容されたトナーは現像装置に供給されるようになっている。
【0104】
一方、本体装置110の下部には、用紙収納カセット140a,140b,140cが備えられている。また、本体装置110には、一対のローラで構成される搬送ローラが装置内に複数個配列されることによって、用紙収納カセットの用紙が上部にある画像形成ユニットまで搬送される搬送経路が形成されている。なお、各用紙収納カセットの用紙は、搬送経路の端部近傍に配置された用紙取出し機構によって1枚ずつ取り出されて、搬送経路へと送り出される。また、本体装置110の側面には、手差しの用紙供給部136が備えられており、ここからも用紙が供給される。
【0105】
画像形成ユニットによって画像が形成された用紙は、本体装置110の一部を構成する筐体152によって支持された相互に接触する2個の定着ロールの間に順次移送された後、本体装置110の外部に排紙される。本体装置110には、用紙供給部136が設けられている側と反対側に用紙排出部138が複数備えられており、これらの用紙排出部に画像形成後の用紙が排出される。
【0106】
画像形成装置100において、例えば、フロントカバー120a,120b、プロセスカートリッジ142の外装、筐体150、および筐体152に、本実施形態に係る樹脂成形体が用いられている。
【実施例】
【0107】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に基準を示さない限り質量基準である。
【0108】
<樹脂組成物の原料>
樹脂組成物を調整するための成分として、以下の原料を準備した。
【0109】
−熱可塑性樹脂−
・PC/ABS樹脂:PC/ABSアロイである「TN7300」(帝人化成社製)(以下、「PC/ABS−1」と称す)。
・芳香族ポリカーボネート樹脂::「タフロンA2200」(出光興産社製、粘度平均分子量22000のビスフェノールAポリカーボネート)(以下、「PC−1」と称す)。
【0110】
・リサイクル材1:PC/ABSアロイである「TN7300」(帝人化成社製)の複写機カバー(約3年使用)を回収し、金属部品を取り除き、粉砕機を用いて8mm程度の大きさまで粉砕した、粉砕物(ASTM D1238 に準拠して、シリンダ温度260℃、荷重2.16kgの条件にて測定されたMI:1.5倍未満、芳香環を有する縮合リン酸エステルの含有量:13%、加水分解率:5%)(以下、「リサイクル材−1」と称す)。なお、縮合リン酸エステルの定量は、ガスクロマトグラフ(GC:HP6890、Agilent社製)と質量分析計(MS:JMS−Q1000GC K9、日本電子社製)とを連結させて行った。キャピラリーカラムはHP−5(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、温度条件は100℃から320℃まで10℃/minで昇温させた。イオン化電圧は70eV、スキャン範囲はm/z=29から900とした。また、縮合リン酸エステルは加水分解により酸性リン酸エステルを生成するため、これを中和滴定することで、縮合リン酸エステルの加水分解率を測定した。具体的には、MIL規格のH−19457に準拠し、粉砕物/蒸留水(質量比:75/25)を密栓ガラス瓶に入れ、93℃で48時間加熱し、有機相と水相の酸価をアルカリ溶液(水酸化カリウム溶液)で測定し、合算して全酸価とした。
【0111】
・リサイクル材2:PC/PSアロイである「NN2710AS」(出光興産社製)の複写機カバー(約3年使用)を回収し、金属部品を取り除き、粉砕機を用いて8mm程度の大きさまで粉砕した、粉砕物(ASTM D1238 に準拠して、シリンダ温度260℃、荷重2.16kgの条件にて測定されたMI:1.5倍未満、芳香環を有する縮合リン酸エステルの含有量:13%、加水分解率:5%)(以下、「リサイクル材−2」と称す)。
【0112】
―その他の成分―
・ドリップ防止剤:メタブレンA−3800(三菱レイヨン社製)
【0113】
―難燃剤―
・難燃剤1:下記(I)式の芳香族リン酸エステル難燃剤(商品名PX−200、大八化学工業株式会社製)。
・難燃剤2:下記(II)式の芳香族リン酸エステル難燃剤(商品名PX−202、大八化学工業株式会社製)。
【0114】
【化7】



【0115】
・難燃剤3:水酸化マグネシウム(協和化学製、商品名キスマ5A、体積平均粒子径:1μm)
【0116】
―改質剤―
(改質剤A1の調整)
2−エチルヘキシルアクリレートとn−ブチルアクリレートとからなるアクリルゴム系グラフト共重合体(ゴム粒子)に、シェルとして、メチルメタクリレートをグラフト重合させたアクリルゴム系のゴム粒子(コアーシェル構造)(商品名:メタブレンW−450A、三菱レイヨン株式会社)200部を、超遠心粉砕機(製品名:ZM−200、レッチェ製)を用いて15,000rpmで粉砕し、質量平均粒径0.53μmのゴム粒子A1(190部)を得た。
【0117】
次に、中間被覆物の塗布液として、メチルトリエトキシシラン(商品名:TSL8123:東芝シリコーン株式会社製)2部を、4部のエタノールで混合希釈して、メチルトリエトキシシラン溶液を調整した。
そして、エッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に上記ゴム粒子A1を100部投入し、エッジランナーを稼動させながら、中間被覆物の塗布液として調整した上記メチルトリエトキシシラン溶液をさらに添加し、撹拌速度40rpm、線荷重は200N/cmで20分間混合攪拌を行った。これによって、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランによる被覆膜の設けられたゴム粒子B1を得た。
【0118】
得られたゴム粒子B1を精秤して中間被覆物による表面被覆率を算出したところ1.8質量%であり、透過型電子顕微鏡による観察でも均一に被覆されていることが確認された。
【0119】
次に、さらに上記ゴム粒子B1の入った状態のエッジランナーを稼動させながら10分間かけて、上記難燃剤1を50部添加し、更に撹拌速度25rpm、線荷重は200N/cmで20分間、混合攪拌を行った。これによって、上記ゴム粒子B1におけるメチルトリエトキシシラン被覆膜(中間被覆物)の上に、上記難燃剤1を被覆させて、改質剤A1を調整した。
【0120】
得られた改質剤A1を精秤して、難燃剤1の付着量を算出したところ28.8質量%であり、透過型電子顕微鏡による観察でも難燃剤1が均一に被覆されていることが確認された。
【0121】
(改質剤A2の調整)
ポリシロキサンゴムとポリメチルメタクリレートとからなる複合ゴム系グラフト共重合体(ゴム粒子)に、シェルとして、メチルメタクリレートをグラフト重合させたゴム粒子(コアーシェル構造)(商品名:メタブレンS−2001、三菱レイヨン株式会社)200部を、改質剤1の調整時と同様にして、超遠心粉砕機を用いて粉砕し、質量平均粒径0.48μmのゴム粒子A2を得た。
【0122】
次に、中間被覆物の塗布液として改質剤1の調整時に用いたメチルトリエトキシシランに代えて、ジメチルポリシロキサン(商品名:TSF451:東芝シリコーン株式会社製)5部を、4部のエタノールで混合希釈して、ジメチルポリシロキサン溶液を調整した。
【0123】
そして、改質剤A1の調整時と同様にして、エッジランナーに上記ゴム粒子A2を100部投入し、エッジランナーを稼動させながら、中間被覆物の塗布液として調整した上記ジメチルポリシロキサン溶液をさらに添加し、撹拌速度22rpm、線荷重は588N/cmで30分間混合攪拌を行った。これによって、コア−シェル型のゴム粒子A2上に中間被覆物として、ジメチルポリシロキサンによる被覆膜の設けられたゴム粒子B2を得た。
【0124】
得られたゴム粒子B2を精秤して中間被覆物による表面被覆率を算出したところ1.9質量%であり、透過型電子顕微鏡による観察でも均一に被覆されていることが確認された。
【0125】
次に、さらに上記ゴム粒子B2の入った状態のエッジランナーを稼動させながら10分間かけて、上記難燃剤2を50部添加し、更に撹拌速度25rpm、線荷重は200N/cmで30分間、混合攪拌を行った。これによって、上記ゴム粒子B2におけるジメチルポリシロキサン被覆膜(中間被覆物)の上に、上記難燃剤2を被覆させて、改質剤A2を調整した。
【0126】
得られた改質剤A2を精秤して、難燃剤2の付着量を算出したところ29.1質量%であり、透過型電子顕微鏡による観察でも難燃剤1が均一に被覆されていることが確認された。
【0127】
(比較改質剤B1の調整)
上記改質剤A1の調整において、難燃剤1の被覆していない状態の粒子、すなわち、改質剤A1の調整において調整されたゴム粒子B1(コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物としてメチルトリエトキシシランによる被覆膜の設けられたゴム粒子B1)を、比較改質剤B1として用いた。
【0128】
(比較改質剤B2の調整)
上記改質剤A2の調整において、難燃剤2の被覆していない状態の粒子、すなわち、改質剤A2の調整において調整されたゴム粒子B2(コア−シェル型のゴム粒子A2上に中間被覆物の設けられたゴム粒子B2)を、比較改質剤B2として用いた。
【0129】
(比較改質剤B3の調整)
上記改質剤A1の調整において、難燃剤1および中間被服膜の被覆していない状態の粒子(商品名:メタブレンW−450A、三菱レイヨン株式会社)を比較改質剤B3として用いた。
【0130】
(改質剤A3〜A14の調整)
(改質剤A3の調整)
前記改質剤A1の調整において、コアシェル型のゴム粒子A1に代えて、コアシェル型でないゴム粒子として、質量平均粒子径が0.4μmのn−ブチルアクリレート系ゴム粒子を使用し、その上に中間被覆物としてメチルトリエトキシシラン、さらにその上に難燃剤2による被覆膜の設けられたゴム粒子を改質剤A3として用いた。
【0131】
(改質剤A4の調整)
前記改質剤A1の調整において、中間被覆物の被覆していない状態の粒子、すなわち、改質剤A1の調整において、コア−シェル型のゴム粒子A1上に直接難燃剤1による被覆膜の設けられたゴム粒子を、改質剤A4として用いた。
【0132】
(改質剤A5の調整)
難燃剤として、りん系以外の難燃剤(難燃剤3)を用いた改質剤A5を調整した。
詳細には、前記改質剤A1の調整において、難燃剤1に代えて、りん系以外の難燃剤として水酸化マグネシウム(協和化学製、商品名キスマ5A、体積平均粒子径:1μm)(難燃剤3)を使用し、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランによる被覆膜の設けられたゴム粒子B1上に、改質剤A1と同様の方法によって、難燃剤3による被覆膜の設けられたゴム粒子A5を、改質剤A5として用いた。
【0133】
(改質剤A6の調整)
前記改質剤A1の調整において、改質剤A1の調整時と同様にして、エッジランナーに前記ゴム粒子A1を100部投入し、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランによる被覆の設けられたゴム粒子B1を得た。
次に、さらに上記ゴム粒子B1の入った状態のエッジランナーを稼動させながら10分間かけて、前記難燃剤1を1.2部添加し、更に撹拌速度25rpm、線荷重は200N/cmで30分間、混合攪拌を行った。これによって、前記ゴム粒子B1におけるメチルトリエトキシシラン被覆膜(中間被覆物)の上に、前記難燃剤1を被覆させて、改質剤A6を調整した。
得られた改質剤A6を精秤して、難燃剤1の付着量を算出したところ1.1質量%であった。
【0134】
(改質剤A7の調整)
上記改質剤A6の調整において、改質剤A1の調整時と同様にして、エッジランナーに前記ゴム粒子A1を100部投入し、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランによる被覆膜の設けられたゴム粒子B1を得た。
次に、さらに上記ゴム粒子B1の入った状態のエッジランナーを稼動させながら10分間かけて、前記難燃剤1を200部添加し、更に撹拌速度25rpm、線荷重は200N/cmで30分間、混合攪拌を行った。これによって、前記ゴム粒子B1におけるメチルトリエトキシシラン被覆膜(中間被覆物)の上に、前記難燃剤1を被覆させて、改質剤A7を調整した。
得られた改質剤A7を精秤して、難燃剤1の付着量を算出したところ63.2質量%であった。
【0135】
(改質剤A8の調整)
上記改質剤A6の調整において、改質剤A1の調整時と同様にして、エッジランナーに前記ゴム粒子A1を100部投入し、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランによる被覆膜の設けられたゴム粒子B1を得た。
次に、さらに上記ゴム粒子B1の入った状態のエッジランナーを稼動させながら10分間かけて、前記難燃剤1を100部添加し、更に撹拌速度25rpm、線荷重は200N/cmで30分間、混合攪拌を行った。これによって、前記ゴム粒子B1におけるメチルトリエトキシシラン被覆膜(中間被覆物)の上に、前記難燃剤1を被覆させて、改質剤A8を調整した。
得られた改質剤A8を精秤して、難燃剤1の付着量を算出したところ43.7質量%であった。
【0136】
(改質剤A9の調整)
前記改質剤A1の調整において、改質剤A1の調整時と同様にして、エッジランナーに前記ゴム粒子A1を100部投入し、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランによる被覆膜の設けられたゴム粒子B1を得た。
次に、さらに上記ゴム粒子B1の入った状態のエッジランナーを稼動させながら10分間かけて、前記難燃剤1を0.5部添加し、更に撹拌速度25rpm、線荷重は200N/cmで30分間、混合攪拌を行った。これによって、前記ゴム粒子B1におけるメチルトリエトキシシラン被覆膜(中間被覆物)の上に、前記難燃剤1を被覆させて、改質剤A9を調整した。
得られた改質剤A9を精秤して、難燃剤1の付着量を算出したところ0.3質量%であった。
【0137】
(改質剤A10の調整)
前記改質剤A1の調整において、改質剤A1の調整時と同様にして、エッジランナーに前記ゴム粒子A1を300部投入し、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシラン被覆膜の上に、前記難燃剤1を被覆させて、改質剤A10を調整した。得られた改質剤A10を精秤して、難燃剤1の付着量を算出したところ、質量69.1%であった。
【0138】
(改質剤A11の調整)
前記改質剤A1の調整において、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランに代えて平均粒径が0.4μmの水酸化アルミニウム(巴工業社製)を使用して、前記改質剤A1と同様の方法で被覆膜を形成し、さらにその上に、前記難燃剤1を被覆させて、改質剤A11を調整した。
【0139】
(改質剤A12の調整)
前記改質剤A1の調整において、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランに代えて平均粒径が0.7μmの球状アルミナ((株)アドマテックス製、A0−502)を使用して、前記改質剤A1と同様の方法で被覆膜を形成し、さらにその上に、前記難燃剤1を被覆させて、改質剤A12を調整した。
【0140】
(改質剤A13の調整)
前記改質剤A1の調整において、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランに代えて3号水ガラス(粉末珪酸ソーダ3号)を使用して、前記改質剤A1と同様の方法で被覆膜を形成し、さらにその上に、前記難燃剤1を被覆させて、改質剤A13を調整した。
【0141】
(改質剤A14の調整)
前記改質剤A1の調整において、コア−シェル型のゴム粒子A1上に中間被覆物として、メチルトリエトキシシランに代えて平均粒径が0.5μmの球状シリカ((株)アドマテックス製、S0−C2)を使用して、前記改質剤A1と同様の方法で被覆膜を形成し、さらにその上に、前記難燃剤1を被覆させて、改質剤A14を調整した。
【0142】
<実施例1〜実施例17,比較例1〜比較例3>
(熱可塑性樹脂組成物、樹脂成型品、評価)
上記に調整した改質剤と、熱可塑性樹脂と、その他各種成分を、表1に示す組合せで配合した後に、ベント式2軸混練押出機(東芝機械社製、TEM35)に供給し、260℃で溶融混練して粒状化された熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた粒状の熱可塑性樹脂組成物(成形原料)を、120℃で5時間乾燥した後に、シリンダ温度235℃、金型温度60℃で射出成型し、ISO多目的ダンベル試験片(試験部厚さ4mm、幅10mm)およびUL−94におけるVテスト用UL試験片(127mm×12.7mm,厚さ1.5mm)(樹脂成形品)を作製した。
これらの試験片を用い、下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0143】
−難燃性試験−
上記Vテスト用UL試験片を用い、UL−94に規定の方法に準拠して、UL−Vテストを実施した。
表1中、「難燃性」の結果の表示は、難燃性が高い方から順に、V−0、V−1、V−2であり、V−2より劣る場合、即ち試験片が延焼してしまった場合をnot−Vと示した。
【0144】
−シャルピー耐衝撃強度−
ISO多目的ダンベル試験片をノッチ加工したものを用い、JIS K7111に準拠して、デジタル衝撃試験装置(東洋精機製作所製、商品名 DG−UB型)により、持ち上げ角度150度、使用ハンマー2.0J、測定数n=10の条件で、シャルピー耐衝撃強度(kJ/m)を測定した。測定値が大きい程、耐衝撃性に優れている。
【0145】
−スパイラルフロー長(流動性の評価)−
流動性について評価すべく、以下の方法によりスパイラルフロー長を測定した。
上記で得られた粒状の熱可塑性樹脂組成物(成形原料)を用いて試験を行った。具体的には、射出成型機(東芝機械社製、製品名「NEX500」)を用いて成形温度280℃、金型温度80℃、射出圧力は7.84MPa(80kg/cm)とした。また、成型品の厚さは2mm、幅は1cmとした。
なお、数値が大きいほど流動性が良好であることを示し、35cm以上が好ましい。なお、外装カバーの厚みは、通常2.4mm程度であるが、近年の軽量化に伴って2mm或いはそれ未満の薄肉化の方向にあるため、肉厚2mmでの評価を実施した。
【0146】
−熱変形温度の評価−
ASTM D648に準拠し、荷重1.83MPaで測定した。この値は耐熱性の目安となるものであり、樹脂組成物の使用目的にもよるが、通常90℃以上が実用上好ましい範囲である。
【0147】
【表1】

【0148】
表1の結果から明らかなように、実施例の樹脂成形体は、難燃性及び耐衝撃性の双方において、著しい向上がみられた。一方、比較例の樹脂成形体は、実施例に比べて、難燃性及び耐衝撃性の双方において劣っていた。
【符号の説明】
【0149】
100 画像形成装置
110 本体装置
120a、120b フロントカバー
136 用紙供給部
138 用紙排出部
142 プロセスカートリッジ
150、152 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサンゴム成分及びアクリルゴム成分の少なくとも一方を含むゴム成分に、ビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体を含むゴム粒子と、
前記ゴム粒子上に付着した難燃剤と、
を含有した改質剤。
【請求項2】
前記ゴム粒子100質量部に対する前記難燃剤の付着量が1質量部以上65質量部以下である請求項1に記載の改質剤。
【請求項3】
前記難燃剤は、前記ゴム粒子上に設けられた中間被覆物を介して該ゴム粒子上に付着してなる請求項1または請求項2に記載の改質剤。
【請求項4】
前記中間被覆物が、アルコキシシランから生成されたオルガノシラン化合物、ポリシロキサン、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物、及びケイ素の酸化物から選ばれる少なくとも1種を含む請求項3に記載の改質剤。
【請求項5】
前記難燃剤が、リン系難燃剤である請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の改質剤。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の改質剤と、
熱可塑性樹脂と、
を含有した樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート系樹脂である請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の樹脂組成物を含む樹脂成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−195721(P2011−195721A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64556(P2010−64556)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】