説明

改質瀝青を製造するための多目的反応器および処理法

円筒壁および2つの側壁を備える水平ハウジングを含む、改質瀝青を製造するための反応器が提供され、瀝青入口が、ハウジングの側壁の一方に、またはその近くに設けられ、瀝青生成物出口が、ハウジングの反対側壁に、またはその近くに設けられ、酸素含有気体を供給するための複数の入口が、瀝青入口と瀝青生成物出口との間のハウジングの円筒壁内に設けられ、この多目的反応器は、複数の開口部を有する少なくとも1つの固定子内で回転する少なくとも1つの回転子を備える、ハウジング内に配置された混合機をさらに設けられる。さらに、高温高圧で、本明細書に説明する反応器内で瀝青を改質剤と接触させるステップを含む、改質瀝青を製造するための処理法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローン(blown)瀝青(触媒ブローン瀝青を含む)またはポリマー改質瀝青または添加物品質増強瀝青などの改質瀝青を製造するための多目的反応器および処理法に関する。
【背景技術】
【0002】
瀝青は、原油由来の粘性の不揮発性生成物である。通常、瀝青は、芳香族であり、および/または長い炭素鎖を有する可能性がある、炭化水素および誘導体から成る。通常、瀝青は、大気圧分留後、または真空分留時の精製処理により製造される。瀝青の軟化点を上げるために、または、特定の性質を有する瀝青が製造されるとき、ブローン瀝青を製造するのに、瀝青は、酸素含有気体で酸化することができる。ブローイングによる瀝青の性質の改質は、比較的遅い場合がある。さらに、ブローイング処理は、その処理中に揮発性の炭化水素が放出され、これらの炭化水素が瀝青ブローイング装置内のどの空気空間内にも蓄積するおそれがあるので、危険である可能性がある。
【0003】
そうした1つの装置は、米国特許第3935093号に開示されている。この既知の装置は、底部に瀝青入口、ハウジング内の1つまたは複数の位置に撹拌手段、およびハウジングの下部に空気入口を設けられた垂直ハウジングを備える。この空気入口は、ハウジング内に供給される空気が撹拌手段と接触するように、撹拌手段の下で開放する。ハウジング内の瀝青は、撹拌手段と空気との作用により掻き回される。分散容器は、ハウジング瀝青の下部に配置され、上向きの瀝青流を下向きの瀝青流から分離するように働く。下向きの瀝青流は、瀝青出口を通ってハウジングの底部で放出することができる。さらに、ハウジングは、その上部に空気抽出口を設けられた。
【0004】
そうした装置が使用されるとき、瀝青用の入口も出口もハウジングの底部に設けられるので、瀝青の滞留時間は変化する可能性がある。さらに、空気抽出口の下に、揮発性の炭化水素が蓄積し、その結果、危険な状況が起こるおそれがある空気空間が生じる可能性がある。
【0005】
SU1198094は、気液分離器としても機能する連続撹拌反応器である、瀝青をブローイングするために使用される装置を説明する。瀝青は、一方の端部で反応器に入り、他方の端部で出るが、気体は、反応器の頂部から除去される。この反応器は、揮発性の炭化水素が蓄積する可能性がある、かなりの気体空間を有する。それに加えて、瀝青と空気とを混合するのに使用される攪拌機は、反応器内の瀝青の体積と比べると、小さい。このことは、すべての瀝青の反応を確実にするのに、長い滞留時間を必要とする可能性があることを意味する。
【0006】
危険な状況を克服するために、管状反応器がWO−A2006/009474に提案される。この反応器では、瀝青は、管状径路に沿って通され、瀝青が管状径路内の複数の混合機を通過するようにする。空気は、管状径路に沿ったある点で空気入口を通して注入される。したがって、酸素濃度は、空気入口で最も高く、酸素は、管状径路に沿って次第に消耗する。したがって、反応用の推進力は、管状径路に沿って減少し、その結果、酸化反応の反応速度は、さらに低減される。さらに、管状径路は、高い圧力損失を招き、それにより、瀝青の処理能力を限定する。
【0007】
WO−A−2009/152461は、改質アスファルトを製造するための方法およびシステムを説明する。空気などの酸素含有気体を瀝青と混合するのに、直列高剪断混合機が使用される。WO−A2006/009474と同様に、空気が、ある点で注入される。さらに、いくつかの実施形態では、ブローン瀝青生成物および残留酸素は、高温の瀝青貯蔵容器102に戻り、50回よりも多く、再循環する。高温の瀝青貯蔵容器内に戻される空気量は、空気が直列混合機を再循環することができるようにすることができる(13頁、段落0032)。さらに、高温の瀝青貯蔵容器内の空気抽出口の下に、揮発性の炭化水素が蓄積し、その結果、危険な状況が起こるおそれがある空気空間が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、先行技術の装置および処理法の欠点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、円筒壁および2つの側壁を備える水平ハウジングを含む、改質瀝青を製造するための反応器を提供するが、瀝青入口が、ハウジングの側壁の一方に、またはその近くに設けられ、瀝青生成物出口が、ハウジングの反対側壁に、またはその近くに設けられ、酸素含有気体を供給するための複数の入口が、瀝青入口と瀝青生成物出口との間のハウジングの円筒壁に設けられ、この多目的反応器は、複数の開口部を有する少なくとも1つの固定子内で回転する少なくとも1つの回転子を備える、ハウジング内に配置された混合機をさらに設けられる。
【0010】
本発明の反応器は、許容可能な滞留時間で瀝青と酸素含有気体との良好な混合を確実にし、揮発性の炭化水素の蓄積を最小化する。反応器は、瀝青製造時の複雑性を低減するのを助けることもできる。現在、特定の等級を満たす瀝青を製造するのに、限られた未精製原料だけを使用することができる。本発明の反応器は、広範囲の未精製原料に使用することができ、それにより、融通性を増大させる。本発明の反応器は、効率的な混合を行い、一般に、従来のユニットよりも小さくすることができ、それにより、コストを低減する。
【0011】
複数の開口部を有する少なくとも1つの固定子内で回転する少なくとも1つの回転子を備える混合機は、一般に、高剪断混合機と呼ばれる。
高剪断混合機は、製薬工業、および製紙、特に、自然に混合しない成分の分散または乳化を行うことが必要である用途などの、様々な用途に使用される。動作中、回転子の先端部は、回転子の中心部よりも速く回転し、剪断力を生成する。回転子が固定子内で回転するとき、このことは、高剪断力領域を形成する。回転子と固定子との組合せは、しばしば、混合ヘッドまたは生成器と呼ばれる。高剪断混合は、例えば、Chemical Engineering、2005年4月、46〜51頁に説明されている。
【0012】
本明細書において、以下、用語「高剪断混合機」が使用されるときは常に、それは、複数の開口部を有する少なくとも1つの固定子内で回転する少なくとも1つの回転子を備える混合機のことを簡略的に示す。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、瀝青を改質するための、本明細書に説明する反応器の使用法を提供する。
別の態様によれば、本発明は、高温高圧で、本明細書に説明する反応器内で瀝青を改質剤と接触させるステップを含む、改質瀝青を製造するための処理法を提供する。
【0014】
本発明による反応器の特に有利な特徴は、反応器が多目的反応器であることである。瀝青改質用の先行技術の処理法は、(i)酸素含有気体で瀝青を改質するため、すなわち、随意に触媒の存在下でいわゆるブローン瀝青を製造するために、及び、(ii)瀝青をポリマーおよび/または添加物で改質するために、様々な反応器を使用する。
【0015】
ブローン瀝青、ポリマー改質瀝青、添加物増強瀝青および多等級瀝青などのそれらの組合せなどの改質瀝青を製造するために、有利なことに、本発明による反応器を使用することができる。
【0016】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明の反応器は、瀝青入口に、もしくはその近くに、またはハウジングの円筒壁内に、触媒および/またはポリマーおよび/または添加物を供給するための、少なくとも1つの入口をさらに備える。
【0017】
別の好ましい実施形態によれば、触媒および/またはポリマーおよび/または添加物を反応器内に供給するのに、瀝青入口が使用される。一般に、瀝青と触媒および/またはポリマーおよび/または添加物とは、通常、予混合タンク内で瀝青と予混合され、瀝青と共に本発明の反応器内に供給される。
【0018】
本発明による反応器は、ハウジングの円筒壁の少なくとも一部分内またはその外部に配置される、ハウジングの円筒壁の少なくとも一部分を加熱するためのシステムをさらに備えることが好ましい。
【0019】
加熱するためのシステムは、自動温度調整式制御手段であることが好ましく、自動温度調整式制御手段は、液体媒体の循環または熱配管のための被覆部であることがより好ましい。
【0020】
本発明による反応器内で、酸素含有気体用の複数の入口は、3〜10の入口になるのが好ましい。
本発明による反応器内で、混合機は、単一の回転軸上に配置され、それぞれが複数の開口部を有する固定子内で回転する、3〜6の回転子を備えるのが好ましい。
【0021】
本発明による反応器内で、ハウジングは、側壁に垂直な方向に延びる阻流板をさらに設けられるのが好ましい。
以上に概説したように、本発明は、改質瀝青を製造するための処理法をさらに提供する。1つの好ましい実施形態によれば、本処理法は、高温高圧で、より好ましくは160から300℃までの温度で、さらに好ましくは200〜300℃の温度で、より好ましくは2から4バール(200000Paから400000Pa)までの絶対圧力で、瀝青を改質剤と混合するステップを含み、改質剤は、複数の入口を通して供給される酸素含有気体である。
【0022】
別の好ましい実施形態によれば、改質瀝青を製造するための処理法は、瀝青を改質剤と混合するステップを含み、改質剤は、ポリマーまたは添加物であり、反応器は、自動温度調整式制御手段を備える。瀝青および改質剤は、予混合タンク内で混合され、その混合物は、瀝青入口を通して反応器内に導入されるのが好ましい。
【0023】
改質瀝青を製造するための処理法は、160から300℃まで、より好ましくは200〜300℃の温度で、好ましくは2から4バール(200000Paから400000Pa)までの絶対圧力で実施されるのが好ましい。
【0024】
本発明による反応器は、気体蓄積空間を許容することなく、高処理量を可能にし、反応物質の全流量を供給する。反応物質は、攪拌機により形成される混合流パターンで反応器を通過することができる。さらに、反応器は、ブローン瀝青を製造するために、随意に触媒の存在下で、反応速度を制御するのに、複数の点で酸素含有気体の注入を可能にする。高剪断混合機は、酸素含有気体の小気泡の形成、および酸素含有気体の気泡を取り囲むブローン瀝青層の破壊を可能にする。ポリマー改質瀝青または添加物品質増強瀝青を製造するために、高剪断混合機は、ポリマーまたは添加物をそれぞれ均一に分配することを確実にする。
【0025】
反応器は、水平ハウジングの反対側壁に、またはその近くに瀝青入口および瀝青生成物出口を設けられる。入口および出口が反対側壁に存在するとき、反応器を反応物質で十分に満たし、炭化水素気体が蓄積するおそれがある空気空間を避けるのはより容易であることがわかった。
【0026】
反応器は、瀝青生成物出口を有する。反応器は、気体生成物用の追加の出口を有しないのが好ましく、気体生成物は、瀝青生成物出口を通して反応器を出るのが好ましい。これは、反応器内の瀝青上の気体空間、および気体生成物除去用の気体出口がある先行技術のシステムよりも好ましい。反応器内の気体空間を最小化することにより、発明者らは、揮発性の炭化水素蓄積のリスクを低減した。好ましくは反応器の10体積%未満、より好ましくは5体積%未満、最も好ましくは1体積%未満が、気体空間である。
【0027】
反応器のハウジングは、水平に配置され、すなわち、円筒壁の中心軸は、ほぼ水平位置にあり、好ましくは水平位置から10°以下にあり、より好ましくは5°以下にあり、さらに好ましくは2°以下にある。このように、炭化水素気体および残留酸素含有気体が蓄積し、安全上のリスクを呈するおそれがある空気空間が避けられる。
【0028】
本発明の利点の1つは、酸素含有気体用の複数の入口の設置にある。このように、随意に触媒の存在下でブローン瀝青を製造するために、酸素濃度は、監視され、所望のレベルまで制御することができる。当業者は、反応器のサイズ、瀝青の処理量、および瀝青と酸素含有気体との混合物中の所望の酸素レベルに応じて、入口の数を決定することができる。しかし、ハウジング内に酸素含有気体用の3から10の入口を有するのが好ましいことがわかった。
【0029】
酸素含有気体は、酸素分子を含む、どんな気体でもよい。したがって、酸素含有気体は、ほぼ純粋な酸素、酸素豊富な空気、空気、または酸素を消耗した空気さえも含むことができる。酸素と、好ましくは窒素または二酸化炭素などの他の不活性気体との他の組合せも可能である。しかし、酸素含有気体として空気を使用するのが最も便利で経済的である。
【0030】
一般に、酸素含有気体は、高温で、通常、30から300℃まで、好ましくは150または160から300℃まで、より好ましくは200から300℃までの範囲で、酸素含有気体用の入口に供給される。
【0031】
混合機は、少なくとも2つの固定子内で回転する少なくとも2つの回転子を備えるのが好ましい。混合機は、少なくとも3つの固定子内で回転する少なくとも3つの回転子を備えるのがより好ましい。混合機は、最大20の固定子内で回転する最大20の回転子を備えるのが好ましい。
【0032】
特定の好ましい実施形態によれば、混合機は、固定子内で回転する一組の回転子を備える。組当りの回転子の数は、2から6までの範囲であるのが好ましい。固定子の数は、2から20までの範囲であるのが好ましく、3から10までの範囲であるのがより好ましい。
【0033】
回転子は、撹拌羽根であるのが好ましい。
固定子は、複数の開口部を有する。開口部は、どんな所望の形態または形状にもすることができる。1つの好ましい実施形態によれば、固定子は、溝(slot)の形態となる開口部を備える。したがって、固定子は、溝付固定子であるのが好ましい。少なくとも1つの回転子/固定子の組合せは、ポリマー集合体のような固体集合体を反応器内への導入時に直ちに破壊することができるのが好ましい。
【0034】
当業者は、その要望に応じて、高剪断混合機を設計することができる。重要な設計因子は、回転子および/または固定子の直径、回転速度、回転子と固定子との間の距離、ハウジング内の瀝青の滞留時間、回転子と固定子との組合せの数を含む。回転子と固定子との組合せに関して、歯の列数、それらの角度、および歯間の開口部の幅も、様々である可能性がある。
【0035】
高剪断混合機は、中心回転軸上に複数の撹拌羽根および固定子を備えるのが好ましい。中心回転軸は、好ましくは円筒壁の軸に平行に、より好ましくはこの軸に沿って配置される。高剪断混合機は、回転軸上にいくつかの組の撹拌羽根および固定子を備えるのがより好ましい。撹拌羽根の数は、組当り2から6の撹拌羽根の範囲であり、ハウジング当り3から10の組の範囲であるのが好ましい。撹拌羽根の各組は、1つの固定子内で回転するのが好ましい。
【0036】
動作中、一方の回転子の外径における瀝青と、回転子の中心または軸における瀝青との間で、速度分布が異なる。様々なメーカが、高剪断混合機を開発した。混合は、1000〜3500rpmの速度で回転する撹拌羽根で行われるのが好ましい。
【0037】
回転子の直径は、水平ハウジングの直径と比べると、大きく、それにより、反応器内のすべての瀝青の均一な混合を確実にするのが好ましい。回転子の直径と、水平ハウジングの直径との比は、好ましくは少なくとも1:2、より好ましくは少なくとも2:3である。
【0038】
瀝青が、混合流状態で反応器を通過するのは有利である。酸素含有気体の注入による組成の細かい変更は、瀝青の混合流に対するどんな物質的影響も有しないとみなされる。
反応器は、側壁に垂直な方向に延びる1つまたは複数の阻流板を設けられるのが好ましい。阻流板の数は、比較的広い範囲内で変化する可能性がある。その数は、適切には2から20までの阻流板、より好ましくは3から6までの阻流板の範囲である。
【0039】
反応器は、随意に触媒の存在下で、瀝青のブローイングを行い、またはポリマー改質瀝青もしくは添加物品質増強瀝青を製造するための反応容器として使用するのに適している。そうした反応は、通常、高温で行われる。標準ブローン瀝青または触媒ブローン瀝青を製造するために、瀝青と酸素含有気体との間の接触は、160から300℃の温度で適切に行われる。ポリマー改質瀝青または添加物品質増強瀝青を製造するために、反応器は、自動温度調整式制御手段を有する、熱被覆部または熱配管を設けられるのが好ましい。このように、反応速度は、所望のレベルに保持することができる。自動温度調整式制御をもたらす、1つの有利で比較的単純な手段は、液体媒体循環用の被覆部である。そうした被覆部は、適切には、水平ハウジングを取り囲んでいる。
【0040】
反応器の構造により、広い範囲の反応状態で反応を行うことができる。そうした状態は、160から300℃までの温度、および2から4バール(200000Paから400000Pa)までの絶対圧力を含む。本発明の多目的反応器および処理法は、標準ブローン瀝青もしくは触媒ブローン瀝青、またはポリマー改質瀝青もしくは添加物品質増強瀝青を連続的に製造するのに十分適している。
【0041】
さらに、本発明は、以下の図により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による反応器の概略図である。
【図2】反応器を有利に使用することができるプラントの略系統図であるが、本略図は、通常の精製複合施設の外部で、瀝青が貯蔵、処理、および分配される貯蔵所における独立型台(skid)付きユニットとして適用することができることを当業者は理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、円筒壁2、ならびに側壁3および4を備える水平ハウジングを設けられた反応器1を示す。側壁3は、瀝青が通過してハウジング内に至る瀝青入口5を設けられる。円筒壁2は、空気などの酸素含有気体導入用の入口6を設けられる。図面では、4つの入口6が示されるが、入口の数は様々であることができることを当業者は理解するであろう。さらに、円筒壁2は、瀝青生成物出口7を設けられる。瀝青生成物出口7は、反応器1内に間隙空間を形成する可能性を避けるために、側壁4の近くに配置される。反応器1は、軸方向には、回転軸8、回転子好ましくは撹拌羽根9の組(series)、および固定子14を備える高剪断混合機を設けられる。本実施形態では、回転子の各組は、2つの回転子から成り、本実施形態では、撹拌羽根の各組が、2つの撹拌羽根から成ることが好ましい。軸は、電気発動機などの発動機、好ましくは単一の変速式駆動装置15により操作することができる。反応器内の渦形成を避けるために、水平ハウジングは、円筒壁2に沿って側壁3および4に垂直に延びる阻流板10を設けられる。ハウジング内の温度を制御するために、円筒壁2は、加熱油などの液体を循環させることができる被覆部11により取り囲まれ、この液体は、供給入口12を通して供給され、放出口13を通して抽出される。
【0044】
図2は、瀝青改質プラントの略系統図を示す。弁23が開放されるとき、瀝青貯蔵装置21は、管路22を通して瀝青を供給する。管路22内の瀝青は、熱交換器24内で、通常、高温油を使用して予熱される。代わりに、他の加熱装置を使用することができることは明らかである。加熱された瀝青は、管路25内を通過し、瀝青がさらに加熱される熱交換器26を通って、反応器28に至る。反応器28は、本発明による反応器である。反応器28内の瀝青は、いくつかの注入点を通して圧縮機29および管路30により供給される空気と接触する。瀝青生成物は、管路31を通して反応器28から放出される。サイクロン32で、瀝青は、気体および揮発性の炭化水素から分離される。サイクロンの代わりに、他の分離装置を使用することもでき、例えば、気液分離器を使用することができることを当業者は理解するであろう。これらの気体および炭化水素は、さらに、処理するために、管路33を通してサイクロン32から抽出される。適切には、これらの気体は、燃焼炉(図示せず)に送られる。ブローン瀝青は、管路34を通してサイクロン32から抽出される。処理されるべき瀝青を加熱するために、管路34は、熱交換器26を通過する。最終生成物、すなわちブローン瀝青は、管路35を通して回収される。必要に応じて、ブローン瀝青の一部分は、さらに処理するために、管路40を通って管路22に至ることができる。
【0045】
プラントは、他の瀝青の処理も行う。反応器は、容易に洗浄され、様々な等級の瀝青に曝すことができる。一例として、図2は、ポリマー改質瀝青などの様々な瀝青等級用の予混合タンク36を示す。そうした瀝青は、ポリマー、適切には、スチレンなどの、随意に水素化された芳香族化合物の共重合体、およびブタジエンまたはイソプレンなどの共役ジエンを含む。弁44が開放され、弁31および39が閉鎖されるとき、瀝青は、管路46を通って予混合タンク36に供給され、ポリマーは、管路45を通って予混合タンク36に供給される。ポリマーと瀝青との混合物は、反応器28内でさらに処理するために、管路37および弁38を通って管路27に供給される。このことは、瀝青プラントに融通性をもたらし、そのプラントを多目的ユニットにする。ワックス、酸、および他の化合物などの他の添加物を瀝青に添加することもでき、これは、予混合タンクおよび/または管路47を通して、管路37内に設けられた注入点にこれらの化合物を注入するなど、処理されるべき瀝青内にこれらの化合物を注入することにより、行われる。次に、ポリマーと瀝青との処理済混合物は、管路49および弁48を通って貯蔵タンクに送られる。
【0046】
ポンプ、弁、いくつかの圧縮機、膨張器、および制御装置などの補助装置が示されていない略系統図を図2が提供することは明らかである。これらの補助装置が必要な場所を当業者は理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒壁および2つの側壁を備える水平ハウジングを含む、改質瀝青を製造するための反応器であって、瀝青入口が、前記ハウジングの前記側壁の一方に、またはその近くに設けられ、瀝青生成物出口が、前記ハウジングの反対側壁に、またはその近くに設けられ、酸素含有気体を供給するための複数の入口が、前記瀝青入口と前記瀝青生成物出口との間の前記ハウジングの前記円筒壁に設けられ、前記反応器には、複数の開口部を有する少なくとも1つの固定子内で回転する少なくとも1つの回転子を備える、前記ハウジング内に配置された混合機がさらに設けられている、改質瀝青を製造するための反応器。
【請求項2】
前記瀝青入口にもしくはその近くに、または前記ハウジングの前記円筒壁に、触媒および/またはポリマーおよび/または添加物を供給するための、少なくとも1つの入口をさらに備える、請求項1に記載の改質瀝青を製造するための反応器。
【請求項3】
前記ハウジングの前記円筒壁の少なくとも一部分内または該一部分の外側に配置される、前記ハウジングの前記円筒壁の少なくとも一部分を加熱するためのシステムをさらに備える、請求項1または2に記載の改質瀝青を製造するための反応器。
【請求項4】
加熱するための前記システムは、自動温度調整式制御手段である、請求項3に記載の反応器。
【請求項5】
前記自動温度調整式制御手段は、液体媒体の循環または熱配管のための被覆部である、請求項4に記載の反応器。
【請求項6】
酸素含有気体用の前記複数の入口は、3〜10の入口である、請求項1から5のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項7】
前記混合機は、3〜6の回転子を備えており、前記3〜6の回転子は単一の回転軸上に配置され、それぞれが複数の開口部を有する固定子内で回転する、請求項1から6のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項8】
前記ハウジングに、前記側壁に垂直な方向に延びる阻流板がさらに設けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項9】
瀝青を改質するための請求項1から8のいずれか1項に記載の反応器の使用。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の反応器内で、高温高圧の瀝青を改質剤と混合するステップを含む、改質瀝青を製造する方法。
【請求項11】
前記改質剤は、複数の入口を通して供給される酸素含有気体である、請求項10に記載の改質瀝青を製造する方法。
【請求項12】
160から300℃までの温度で、200000Paから400000Pa(2から4バール)までの絶対圧力で、瀝青と酸素含有気体との混合が行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記改質剤は、ポリマーまたは添加物であり、前記反応器に、自動温度調整式制御手段が設けられている、請求項10に記載の改質瀝青を製造する方法。
【請求項14】
瀝青および改質剤は、予混合タンク内で混合され、混合物は、前記瀝青入口を通して前記反応器内に導入される、請求項13に記載の改質瀝青を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−516504(P2013−516504A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546445(P2012−546445)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070859
【国際公開番号】WO2011/080302
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】