説明

改質装置、前処理装置、後処理装置及び画像形成装置

【課題】複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において画像形成が施される被加工物を搬送しながらプラズマを接触させて改質を行うとともに、改質に有効な成分の利用効率を確保しながらプラズマの生成に伴って生じた生成物の漏れを回避ないし抑制可能とした改質装置、この改質装置を備えた、かかる画像形成装置、前処理装置、後処理装置の提供。
【解決手段】放電電極84によるプラズマの生成に伴って生じた生成物を空気とともに吸引するための吸引手段Pに接続され放電電極84を覆ったカバー部材60と、カバー部材60の内側において放電電極84を覆った電極被覆部98a、及び、被加工物Sの搬送方向B1における電極被覆部98aの下流側において電極被覆部98aと一体であり、被加工物Sに対向するように設けられたフランジ部98bを有する電極カバー98とを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において画像形成が施される被加工物にプラズマを接触させて改質を行う改質装置、この改質装置を備えた、かかる画像形成装置、前処理装置、後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献12〕参照)において、画像形成に関する種々の目的で、放電を利用し、プラズマ等を用いて、画像形成の対象物の改質を行う改質装置を備えた画像形成装置が知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献10〕参照)。
【0003】
このような改質装置を備えた画像形成装置は、プラズマの生成に伴って生じたオゾン等の生成物を排気する構造を備えている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献8〕参照)。
一方、かかる改質装置を備えた画像形成装置であって、画像形成の対象物を搬送しながら改質するものが知られている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献9〕参照)。画像形成の対象物を搬送しながら改質すると、改質の均一性が向上するため好ましい。
【0004】
そこで、画像形成の対象物を搬送しながら改質する構成において、放電の際に生じたオゾン等の生成物を排気する技術(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献8〕参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−279796号公報
【特許文献2】特開2008−296526号公報
【特許文献3】特開2008−297506号公報
【特許文献4】特開2007−106105号公報
【特許文献5】特開2000−248091号公報
【特許文献6】特開2000−117958号公報
【特許文献7】特許第3870605号公報
【特許文献8】特許第3613029号公報
【特許文献9】特開2000−248091号公報
【特許文献10】特開2000−117958号公報
【特許文献11】特開平03−105366号公報
【特許文献12】特許第3099334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、かかる技術には、改質に有効な成分まで排気されてしまい、改質効率が低下する懸念がある。
すなわち、かかる生成物のうち、画像形成の対象物の表面付近に滞留している生成物は、かかる対象物の搬送に伴って、この対象物とともに移動するため、かかる生成物を、対象物の搬送経路などの、排気路の外部に漏らすことなく排気するには、排気路内において排気を行う気流の速度を対象物の移動速度以上にすることが望ましい。しかし、このように気流の速度を速めると、改質に有効な成分が排気路内に露出している場合には、この改質に有効な成分まで排気されてしまうこととなる。改質に有効な成分が排気されると、改質効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置において画像形成が施される被加工物を搬送しながらプラズマを接触させて改質を行うとともに、改質に有効な成分の利用効率を確保しながらプラズマの生成に伴って生じた生成物の漏れを回避ないし抑制可能とした改質装置、この改質装置を備えた、かかる画像形成装置、前処理装置、後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、シート状の被加工物を所定の方向に搬送するための搬送手段と、この搬送手段によって前記所定の方向に搬送されている前記被加工物の被加工面に接触するように配置され、同被加工面に接触して同被加工面の改質を行うためのプラズマを、同被加工面に向けて形成するための放電電極と、前記プラズマの生成に伴って生じた生成物を空気とともに吸引するための吸引手段と、この吸引手段に接続され、前記放電電極を覆ったカバー部材と、このカバー部材の内側において前記放電電極を覆った電極被覆部と、前記所定の方向における前記電極被覆部の下流側において同電極被覆部と一体であり、前記被加工面に対向するように設けられた第1のフランジ部とを有する電極カバーとを有する改質装置にある。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の改質装置において、前記電極カバーは、前記所定の方向における前記電極被覆部の上流側において同電極被覆部と一体であり、前記被加工面に対向するように設けられた第2のフランジ部とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の改質装置において、前記カバー部材と前記電極カバーとが一体であることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、同画像形成装置において画像形成が行われる前の前記被加工物の前処理を行う前処理装置であって、同改質装置によって画像形成が行われる前の前記被加工物の被加工面を改質する前処理装置にある。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、同画像形成装置において画像形成済みの前記被加工物の後処理を行う後処理装置であって、同改質装置によって前記画像形成済みの前記被加工物の被加工面を改質する後処理装置にある。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成が行われる前の前記被加工物の被加工面、及び/又は、画像形成済みの前記被加工物の被加工面を、同改質装置において改質する画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、シート状の被加工物を所定の方向に搬送するための搬送手段と、この搬送手段によって前記所定の方向に搬送されている前記被加工物の被加工面に接触するように配置され、同被加工面に接触して同被加工面の改質を行うためのプラズマを、同被加工面に向けて形成するための放電電極と、前記プラズマの生成に伴って生じた生成物を空気とともに吸引するための吸引手段と、この吸引手段に接続され、前記放電電極を覆ったカバー部材と、このカバー部材の内側において前記放電電極を覆った電極被覆部と、前記所定の方向における前記電極被覆部の下流側において同電極被覆部と一体であり、前記被加工面に対向するように設けられた第1のフランジ部とを有する電極カバーとを有する改質装置にあるので、被加工物を搬送しながらプラズマを接触させて改質を行うことが可能であり、電極カバーにより改質に有効な成分の利用効率を確保しながら、カバー部材によりプラズマの生成に伴って生じた生成物の漏れを回避ないし抑制可能とした改質装置を提供することができる。
【0015】
前記電極カバーは、前記所定の方向における前記電極被覆部の上流側において同電極被覆部と一体であり、前記被加工面に対向するように設けられた第2のフランジ部とを有することとすれば、被加工物を搬送しながらプラズマを接触させて改質を行うことが可能であり、電極カバーにより改質に有効な成分の利用効率を確保しながら、カバー部材によりプラズマの生成に伴って生じた生成物の漏れを回避ないし抑制可能とし、また電極カバーの組み付けが容易化可能であるとともに第2のフランジ部により被加工物の搬送時のばたつきを低減可能な改質装置を提供することができる。
【0016】
前記カバー部材と前記電極カバーとが一体であることとすれば、被加工物を搬送しながらプラズマを接触させて改質を行うことが可能であり、電極カバーにより改質に有効な成分の利用効率を確保しながら、カバー部材によりプラズマの生成に伴って生じた生成物の漏れを回避ないし抑制可能とし、またカバー部材と電極カバーとを一体成型することでコストダウンを図ること及び組み付けの容易化が可能であるとともに、被加工物が第2のフランジ部に当接することによるジャムを抑制可能な改質装置を提供することができる。
【0017】
本発明は、かかる改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、同画像形成装置において画像形成が行われる前の前記被加工物の前処理を行う前処理装置であって、同改質装置によって画像形成が行われる前の前記被加工物の被加工面を改質する前処理装置にあるので、被加工物を搬送しながらプラズマを接触させて、前処理として改質を行った出力物を得ることが可能であり、電極カバーにより改質に有効な成分の利用効率を確保しながら、カバー部材によりプラズマの生成に伴って生じた生成物の漏れを回避ないし抑制可能とし、高画質の画像形成に寄与可能な前処理装置を提供することができる。
【0018】
本発明は、かかる改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、同画像形成装置において画像形成済みの前記被加工物の後処理を行う後処理装置であって、同改質装置によって前記画像形成済みの前記被加工物の被加工面を改質する後処理装置にあるので、被加工物を搬送しながらプラズマを接触させて、後処理として改質を行った出力物を得ることが可能であり、電極カバーにより改質に有効な成分の利用効率を確保しながら、カバー部材によりプラズマの生成に伴って生じた生成物の漏れを回避ないし抑制可能とし、高画質の画像形成に寄与可能な後処理装置を提供することができる。
【0019】
本発明は、かかる改質装置を有し、画像形成が行われる前の前記被加工物の被加工面、及び/又は、画像形成済みの前記被加工物の被加工面を、同改質装置において改質する画像形成装置にあるので、被加工物を搬送しながらプラズマを接触させて、画像形成と併せて改質を行った出力物を得ることが可能であり、電極カバーにより改質に有効な成分の利用効率を確保しながら、カバー部材によりプラズマの生成に伴って生じた生成物の漏れを回避ないし抑制可能とし、高画質の画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した改質装置を前処理装置として備えた画像形成装置の一実施例の概略正面図である。
【図2】図1に示した改質装置に備えられた改質手段の概略正面図である。
【図3】図2に示した改質手段によって被加工物の改質が行われている様子を示した概念図である。
【図4】図1に示した改質装置に備えられたカバー部材及び電極カバーの構成を示した概略図である。
【図5】電極カバーの種々の構成を示した正断面図である。
【図6】電極カバーの種々の配置状態を示した概略製断面図である。
【図7】電極カバーの種々の構成を示した正断面図である。
【図8】本発明を適用した改質装置を後処理装置として備えた画像形成装置の一実施例の概略正面図である。
【図9】カバー部材と電極カバーとを一体とした構成を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に本発明を適用した画像形成装置の一例の概略を示す。画像形成装置200は、インクジェットプリンタとしてのプリンタであってフルカラーの画像形成を行うことが可能となっている。画像形成装置200は、図示しない画像読取部又は外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
【0022】
画像形成装置200は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、コート紙、OHPシート、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置200は、記録媒体である用紙としての記録体Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置であるが、記録体Sの片面に画像形成可能な片面画像形成装置であってもよい。
【0023】
画像形成装置200は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な、当該色のインクを吐出するインク吐出体としてのインクヘッドである記録ヘッドとしてのヘッド61Y、61M、61C、61BKを有している。
【0024】
画像形成装置200は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを水平方向に平行配設したタンデム方式を採用している。画像形成装置200は、本体201に接続された後述する改質装置100を備え、本体201と改質装置100とによって画像形成装置200が構成されている。
【0025】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、本体201の略中央部に配設されその上面で記録体Sを案内する平板状の案内部材としてのガイド板11の上方であってガイド板11の上面に対向する位置に配設されている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、ガイド板11の上面上における記録体Sの移動方向である図1における左方向に沿ったA1方向の上流側からこの順で並んでいる。同図において各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0026】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するためのインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、シャトル型であって、図1の紙面に垂直な方向に移動するように、インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0027】
ガイド板11は、その上面で、A1方向に搬送される記録体Sを、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに対向させながら案内し、この過程で、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKからイエロー、マゼンタ、シアン、黒のインクが記録体S上に順次重ね合わされる態様で吐出され、記録体S上に画像が形成されるようになっている。
【0028】
ヘッド61Y、61M、61C、61BKによる記録体Sに対するインクの吐出は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色の画像領域が記録体Sの同じ位置に重なるよう、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0029】
画像形成装置200は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKをそれぞれ備えたインク吐出装置60Y、60M、60C、60BKと、記録体Sをガイド板11の上面で案内して搬送する用紙搬送ユニットとしての搬送ユニット30と、本体201の下部に配設され、記録体Sを多数枚積載可能であり積載した記録体Sのうち最上位の記録体Sのみを搬送ユニット30に向けて給送するシート給送装置43とを有している。
【0030】
画像形成装置200はまた、改質装置100から送られてきた記録体Sを本体201内に案内する給紙ローラ50と、搬送ユニット30によって搬送されてきた画像形成済み言い換えるとプリント済みの記録体Sを多数積載可能な排紙台25と、排紙台25に向けてプリント済みの記録体Sを本体201の外部に排出する排紙ローラ6とを有している。
【0031】
画像形成装置200はまた、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを一体に支持したヘッド支持体としてのキャリッジ35と、画像形成装置200の動作全般を制御する図示しないCPU、メモリ等を含む制御手段としての不図示の制御部と、キャリッジ35を図1の紙面に垂直な方向に対応した主走査方向に往復移動させることでヘッド61Y、61M、61C、61BKをB方向に往復運動させる不図示のヘッド駆動機構とを有している。
【0032】
搬送ユニット30は、ガイド板11の他に、A1方向においてガイド板11の上流側及び下流側に配設され、シート給送装置43から搬送されてきた記録体SをA1方向に搬送するためのローラ対12、13と、ローラ対12、13が記録体SをA1方向に搬送するようにローラ対12、13を回転駆動する図示しない駆動手段としてのモータ等とを有している。
【0033】
シート給送装置43は、記録体Sを通過させる給紙路48と、記録体Sを多数枚積載可能な、上下2段で設けられた給紙トレイ44と、給紙トレイ44に積載された記録体Sを給紙路48に進入させ搬送ユニット30に向けて給送するための給紙ローラ42と、給紙ローラ42によって給送された記録体Sを1枚ずつに分離する分離ローラ45と、給紙路48内において記録体を搬送する搬送ローラ対47とを有している。
【0034】
キャリッジ35は、ヘッド61Y、61M、61C、61BKを収納しており、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに劣化等が生じたときにこれらが新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、ヘッド61Y、61M、61C、61BKと一体で、本体201に対して着脱可能となっている。ヘッド61Y、61M、61C、61BKもそれぞれ、劣化等が生じたときに新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、独立してキャリッジ35に対して着脱可能となっている。これによって、交換作業、メンテナンス作業が容易化されている。
【0035】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、用いる記録液の色が異なるものの、その余の点では互いに略同様の構成となっている。
【0036】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、ヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給される当該色の記録液を収容したメインタンクとしての記録液カートリッジであるインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKをそれぞれヘッド61Y、61M、61C、61BKに連結し、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに供給する供給経路である可撓性のチューブ82Y、82M、82C、82BKとを有している。
【0037】
インク吐出装置60Y、60M、60C、60BKは、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKを収容したインクタンク81と、チューブ82Y、82M、82C、82BKを介して、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BK内に収容された記録液を各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに向けて圧送し給送するための供給ポンプとしての図示しないポンプとを有している。このポンプの動作は制御部によって制御される。この点、制御部は記録液供給制御手段として機能する。
【0038】
インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKは、内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等に新規のものに交換可能であるように、またメンテナンスを容易にするために、本体201に対して着脱可能となっている。
【0039】
インクタンク81は、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKの内部の記録液が消費されて残り少なくなったときあるいはなくなったとき等にインクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKを新規のものに容易に交換可能とするために、またメンテナンスを容易にするために、本体201に対して着脱可能となっている。
【0040】
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、図示を省略するが、記録液吐出側に配設されたノズル部材としてのノズルプレートであるノズル板と、ノズル板に形成されたノズルと、インクカートリッジ81Y、81M、81C、81BKから記録液を供給され記録液を充填された、絶縁性の内壁を有する液室としてのインク液室であるインク室とを有している。
【0041】
各ヘッド61Y、61M、61C、61BKはまた、図示を省略するが、インク室の内壁に配設されインク室内の記録液と導通した電極である液室電極と、インク室内の液である記録液を加圧してノズル61bから噴射させ吐出させる加圧機構としてのインク吐出手段とを有している。
【0042】
ノズル板、ノズル、インク室、インク吐出手段はこれらが1組となって、それぞれ各ヘッド61Y、61M、61C、61BKに多数、主走査方向に沿って備えられている。なお、ポンプにより、インク室内の記録液の圧力は、ノズルにメニスカスが安定して形成される所定圧力に保持されている。この点、ポンプは、圧力調整機構として機能するようになっている。
【0043】
インク吐出手段は、各ノズルから記録液を液滴化して吐出させ記録体Sに着弾させるためのアクチュエータとして圧電素子を有し、制御部による制御によって図示しない信号経路を介して圧電素子に印加される電圧パルスに応じて、ノズルにおいてメニスカスを形成している記録液が、ノズルから吐出されるようになっている。この点、制御部は、インク吐出制御手段として機能する。
【0044】
インク吐出制御手段として機能する制御部は、圧電素子を駆動するための電圧パルスを所定の信号波形で圧電素子のそれぞれに入力する。この信号波形は、形成すべき画像に応じて、制御部の一機能として実現された画像制御装置によって生成され、インク吐出制御手段として機能する制御部に入力されたものである。これにより、各ヘッド61Y、61M、61C、61BKは、任意のパターンを時系列に吐出し、画像形成装置200は任意の画像を形成可能となっている。
【0045】
インク吐出手段のアクチュエータはピエゾ方式等の、形状変形素子方式である他の方式の可動アクチュエータであってもよいし、サーマル方式等の加熱ヒータ方式によってノズルから記録液を吐出させるものであっても良い。
【0046】
改質装置100は、本体201に着脱可能であり、本体201において画像形成が行われる前の記録体Sの前処理を行う前処理装置として、画像形成装置200に備えられており、本体201において画像形成が行われる前の記録体Sの被加工面を改質するようになっている。
【0047】
改質装置100は、本体70の上部に位置する給紙装置71と、本体70の内部に位置する改質手段72と、改質手段72を上方からカバーしたカバー部95と、図1における本体70の右端に位置する手差しトレイ51と、図示しないオゾン処理部とを有している。
【0048】
改質装置100はまた、本体70内に、分離ローラ対75より分離給送された記録体Sを改質手段72へと搬送する複数の搬送ローラ対86と、改質手段72から搬送された記録体Sを搬送する搬送ローラ対90と、記録体Sを本体201へと排出し給紙ローラ50に供給する排紙ローラ対91と、手差しトレイ51上に載置された記録体Sを本体70内へと搬入する搬入ローラ対92とを有している。
【0049】
給紙装置71は、記録体Sを複数枚載置可能な給紙トレイ74と、給紙トレイ74に載置された複数枚の記録体Sを1枚ずつに分離する分離ローラ対75とを有している。給紙トレイ74上に積載された複数枚の記録体Sは、分離ローラ対75によって分離給送され改質手段72に向けて本体70内へと送られる。
【0050】
図2に示すように、改質手段72は、本体70に固定された支持体76と、支持体76に回転自在に支持された駆動ローラ77と、駆動ローラ77に巻回された搬送手段としての誘電体ベルト79と、支持体76に回転自在に支持され、駆動ローラ77とともに誘電体ベルト79を巻き掛けた従動ローラ78とを有している。
【0051】
改質手段72はまた、誘電体ベルト79の上面に当接して設けられた一対の放電電極ローラ84と、誘電体ベルト79の内側の放電電極ローラ84に対向する位置で支持体76に支持されたカウンタ電極80と、その一端が放電電極ローラ84側に位置し放電電極ローラ84を誘電体ベルト79の上面に押圧する圧縮ばね83と、圧縮ばね83の他端を支持した高圧接点82と、支持体76に支持され従動ローラ78を押圧して誘電体ベルト79に張力を与える圧縮ばね81とを有している。
【0052】
改質手段72はまた、図3に示すように、カウンタ電極80の上面を覆うとともに誘電体ベルト79の下面を支持するように配設され、カウンタ電極80の絶縁層として機能するガラス板96と、カウンタ電極80及びガラス板96を下方から支持した平板状の絶縁体97とを有している。
【0053】
改質手段72はまた、高圧接点82を支持体76に固定した図示しないハウジングと、放電電極ローラ84を回転自在に支持した図示しない支持部材と、駆動ローラ77を同図において反時計回り方向に回転駆動し、誘電体ベルト79及び従動ローラ78を同方向に従動回転させることで記録体Sを図3における右方から左方へ向かうB1方向に搬送させる図示しない駆動手段と、高圧接点82に接続され各圧縮ばね83を介して各放電電極ローラ84に電圧を印加しプラズマを形成させる図示しない高圧電源とを有している。
【0054】
誘電体ベルト79は被加工物である記録体Sの幅よりも大きな幅を有している。誘電体ベルト79は、図示を省略するが、アルミニウム等の金属あるいはシリコンゴム等の基材に金属粒子等を分散した導電性の無端状の基体と、基体の外周面側にコーティング等によって形成されたシリコン製の誘電性の表面層とを有し、誘電体ベルトとなっている。表面層は実質的に絶縁性の抵抗値を有している。
【0055】
駆動手段は駆動ローラ77の回転速度を可変であり、これに応じて誘電体ベルト79の走行速度も可変となっている。駆動手段は、誘電体ベルト79の走行速度すなわち記録体Sの搬送速度を、本体201内における記録体Sの搬送速度に一致させるように、駆動ローラ77の回転速度を設定する。搬送ローラ対86、搬送ローラ対90、排紙ローラ対91の回転速度についても同様に、本体201内における記録体Sの搬送速度と等速となるように回転速度が設定される。駆動ローラ77及び従動ローラ78は接地されており、これにより誘電体ベルト79の静電気帯電が抑制されている。
【0056】
各放電電極ローラ84はローラ状の放電電極であって、互いに同一形状の金属ローラである。各放電電極ローラ84は、誘電体ベルト79の幅方向に延在しそれぞれの回転中心が誘電体ベルト79の移動面と平行な同一直線上に位置するように配設されている。各放電電極ローラ84は誘電体ベルト79の幅よりも長く形成されており、その外表面である金属部分が露出あるいは誘電体または絶縁体で被覆されている。
【0057】
カウンタ電極80はアルミニウムの平板により構成されアースされている。カウンタ電極80の幅は誘電体ベルト79よりも短くなるように構成されている。
誘電体ベルト79を挟んでカウンタ電極80と各放電電極ローラ84とが対向した部分により対向電極部85が形成されている。
【0058】
圧縮ばね83は各放電電極ローラ84を所定の圧接力で誘電体ベルト79に接触させており、誘電体ベルト79と各放電電極ローラ84との間に不定形の厚さの記録体Sが搬送されてきても各放電電極ローラ84を記録体Sの厚みに応じて変位させる。各放電電極ローラ84は、誘電体ベルト79又はこれによって搬送されている記録体Sの被加工面の移動に連れ回りする。この連れ回りにより、各放電電極ローラ84は、放電による偏磨耗が低減される。
【0059】
このような構成の改質手段72においては、高圧電源によって各放電電極ローラ84に高電圧が印加されると、カウンタ電極80との間で放電が生じ、カウンタ電極80に向けてプラズマが形成される。かかる放電は、大気圧プラズマ放電、誘電体バリア放電といわれるものである。かかる放電が行われ、かかるプラズマが形成されるにあたり、誘電体ベルト79の導電性の基体も、対向電極、言い換えるとカウンタ電極として機能する。
【0060】
このように、誘電体ベルト79もカウンタ電極として機能することにより、放電電極ローラ84から誘電体ベルト79あるいはこれによって搬送されている記録体Sに向けて沿面放電によるプラズマが形成される。沿面放電によるプラズマは、記録体Sの被加工面に対する接触面積が大きいため、被加工面の改質のムラが抑制され、被加工面の改質の均一性が高い精度で確保される。誘電体ベルト79がカウンタ電極として機能することは、沿面放電を良好に発生させるという利点、放電電極とカウンタ電極との距離が近づくためエネルギーの損失が減少し、またかかる放電、プラズマが生じ易くなるという利点がある。
【0061】
なお、カウンタ電極がカウンタ電極80のように平板状である場合には、誘電体ベルト79をカウンタ電極として機能させることは必須でなく、誘電体ベルト79の基材をポリイミド等によって構成しても良い。かかる放電、プラズマを生じさせるには、放電電極側、カウンタ電極側の一方が誘電体あるいは絶縁体によって被覆されていることを要し、この点から上述のように放電電極ローラ84を被覆しても良い。
【0062】
放電電極ローラ84が誘電体ベルト79の移動方向に沿って複数配置されていること、及び、各放電電極ローラ84が誘電体ベルト79又はこれによって搬送されている記録体Sの被加工面に連れ回りすることで沿面放電やプラズマを形成する部位が変化することも、被加工面の改質の均一性を向上している。なお、放電電極ローラ84の数は、本形態のような2つに限られるものでなく、被加工面の改質の均一性を担保しつつエネルギーの損失が抑制されるように適宜設定される。
【0063】
記録体Sは、改質手段72を通過する際に、かかる放電、プラズマによって、空気中の成分や記録体S自体に含まれている成分によって形成された種々の親水性反応基等の基が被加工面に形成されて表面エネルギーが高くなり、たとえば被加工面に疎水性を有する部分を含んでいる場合にかかる部分が親水化されることなど、被加工面の有機物の酸化反応による親水化や分解等によって、被加工面の改質が行われる。
【0064】
被加工面の改質は、かかる放電、プラズマの発生に伴って大気中の酸素が変化することで生成された酸素ラジカル等の活性種によっても行われる。酸素ラジカル等の活性種は、被加工面の酸素成分を増加させるとともに炭素成分を減少させる態様によって被加工面の改質を行う。酸素ラジカルは、大気中の酸素が放電によってオゾンとなるときに形成される他、オゾンの分解によっても形成される。なお、オゾンも、酸素ラジカルよりも低レベルながら、被加工面の改質を行う。
【0065】
このような改質が行われた記録体Sは、本形態のようなインクジェット方式の画像形成装置に用いると、画質が向上するという利点がある。具体的には、ビーディングの抑制効果が得られる。ビーディングとは、隣り合ったインクドットが合一する現象である。すなわち、コート紙等、メディアのインク受容量が低くインクの浸透が遅い場合、先に着弾したインク滴が浸透する前に次のインク滴が着弾してしまうことでドットが合一し、分布が不均一になることでムラとなる現象である。
【0066】
一般的なビーディングの改善方法としては、インク量を減らす、隣接するインク滴が合一しないレベルまで小滴にする、時間をかけて少しずつインクを打ち込む、先行着弾インクのセット完了後に次のインクを着弾させる、等が考えられるが、いずれにしても画像濃度が低下したり、印刷に時間がかかったり、商業印刷等連続処理を行う場合においては装置が大型になる等の不具合があった。他の改善方法として、インク受容量の高いメディアに変更することも考えられるが、ユーザーが望むメディアが使えない、インク受容量の高いメディアは高コストという不具合もあった。
【0067】
これに対し、上述の改質が行われた記録体Sにおいては、インクに対する親和性が高くなってインクが浸透し易くなっているため、ビーディングが生じにくくなっている。そのため、上述の不具合に対して極めて有効である。
【0068】
活性種は、その酸化反応等によって一瞬で消滅することから長時間滞留することはないため、これを改質に効率的に寄与させるには、可能な限り被加工面付近に位置させることが重要である。オゾンも同様である。ただし、オゾンについては、環境に与える影響を考慮して、外部に漏れることのないように回収して処理する必要がある。
【0069】
カバー部95は、オゾンの回収及び活性種及びオゾンによる改質効率の向上のために設けられている。具体的に、カバー部95は、図4に示すように、誘電体ベルト79の、記録体Sを搬送する部分である上側の平面部にその開口部が対向するように設けられ、各放電電極ローラ84を覆ったオゾンフードとしてのカバー部材60と、カバー部材60の内側において各放電電極ローラ84を覆った電極カバー98と、カバー部材60内の空気を吸引してカバー部材60外部に排出してオゾン処理部に流入させる吸引手段としてのポンプPと、カバー部材60とポンプPとオゾン処理部とを接続したホースHとを有している。
【0070】
電極カバー98は、各放電電極ローラ84の長手方向に沿って配設されており、同方向において各放電電極ローラ84の全体を覆う長さを有している。電極カバー98は、誘電体ベルト79に対向する部分に開口を有し各放電電極ローラ84を覆った電極被覆部98aと、B1方向において電極被覆部98aの下流側で電極被覆部98aと一体であり誘電体ベルト79によって搬送されている記録体Sの被加工面に対向するように設けられた用紙対向部としての第1のフランジ部であるフランジ部98bと、B1方向において電極被覆部98aの上流側で電極被覆部98aと一体であり誘電体ベルト79によって搬送されている記録体Sの被加工面に対向するように設けられた用紙対向部としての第2のフランジ部であるフランジ部98cとを有している。電極被覆部98aとフランジ部98bとフランジ部98cとはプラスチックで一体成型されて電極カバー98を構成している。
【0071】
電極被覆部98aは、各放電電極ローラ84を誘電体ベルト79の逆側から覆った第1の部分と、B1方向における第1の部分の下流側の側縁から誘電体ベルト79へ向けて延び、B1方向における下流側の放電電極ローラ84を側方から覆った第2の部分と、B1方向における第1の部分の上流側の側縁から誘電体ベルト79へ向けて延び、B1方向における上流側の放電電極ローラ84を側方から覆った第3の部分とを有している。
【0072】
電極被覆部98aの形状は、放電電極ローラ84の軸方向に垂直な、図4の紙面に平行な平面による断面形状が、図4においては矩形状となっているが、かかる断面形状はこれに限るものではない。この断面形状については、後に詳しく述べる。
【0073】
第2の部分及び第3の部分の、誘電体ベルト79側の端部は、誘電体ベルト79と後述する所定の間隔で離間している。フランジ部98b、フランジ部98cは、かかる所定の間隔を保つように、第2の部分及び第3の部分の、誘電体ベルト79側の端部からB1方向に沿って、所定の長さで延びている。かかる間隔、長さをそれぞれ、以下、裾高、裾長という。これら裾高、裾長については、後に詳しく述べる。
【0074】
カバー部材60は、各放電電極ローラ84の長手方向に沿って配設されており、電極カバー98の全体を覆っている。カバー部材60は、ホースHを接続されたダクト部60aを有し、プラスチックによって一体成型されている。カバー部材60の、B1方向における各端部は、誘電体ベルト79と所定の間隔で離間している。ポンプPの駆動時には、この離間した部分からカバー部材60外の空気が取り込まれ、ダクト部60aを通じてカバー部材60内の空気をホースHに排出する。ホースH内の空気はオゾン処理部に至り、この空気中に含まれているオゾンはこのオゾン処理部で除去される。このように、ポンプPは、プラズマの生成に伴って生じた生成物であるオゾンや活性種を空気とともに吸引する。
【0075】
ポンプPの駆動時にカバー部材60内部に空気を流入させるカバー部材60と誘電体ベルト79との間の隙間から、オゾンが漏れ出すことを防止するには、かかる隙間から流入する空気の速度を記録体Sの搬送速度以上とすることが好ましい。そのため、ポンプPは、この条件が満たされるように駆動されるようになっている。よって、カバー部材60内の空気の流速は比較的速くなっている。
【0076】
なお、カバー部材60及び電極カバー98の、各放電電極ローラ84の長手方向における両側の端部は、支持体76や支持部材によって覆われてほぼ密閉され、この部分からのオゾンや活性種等の漏れは無視できる程度となっている。
【0077】
カバー部95は、以上のような構成により、電極カバー98が、主に、放電によって生成された活性種及びオゾンを被加工面付近に留めて改質効率を高める機能を果たし、カバー部材60が、主に、放電によって生成されたオゾンの外部への漏れを防止する機能を果たすようになっている。
【0078】
具体的には、電極カバー98は、それ自身を境界とした誘電体ベルト79側の領域を、ポンプPの駆動によって生じる気流から遮断することにより、放電によって生成された活性種及びオゾンを、電極被覆部98aによって、各放電電極ローラ84の周囲の空間にとどめる。電極被覆部98a内の活性種のうち、被加工面付近のものは、被加工面の改質を行うとともに、被加工面のB1方向への移動に伴って、記録体SとともにB1方向に移動し、フランジ部98bと被加工面との間に進入する。オゾンも同様である。
【0079】
フランジ部98bと被加工面との間に進入した活性種及びオゾンは、被加工面の近辺に留まるため、高い効率で改質に寄与する。上述のように、カバー部材60内の空気の流速は比較的速くなっているが、電極カバー98がかかる空気の流れを遮断しているため、この空気の流れによって改質効率が低下することが防止されている。
【0080】
上述のように、活性種は長時間滞留することがないため、フランジ部98bと被加工面との間の空間を通過して電極カバー98とカバー部材60との間の空間内に開放される活性種の量は少ないが、電極カバー98とカバー部材60との間の空間内に移動した活性種は、同様に同空間内に移動したオゾンとともに、ポンプPの駆動によって生じる気流に乗って、ダクト部60aから排出される。
【0081】
なお、フランジ部98bとフランジ部98cとのうち、活性種の改質効率を高めるのに寄与するのは、主にフランジ部98bであるため、フランジ部98cは省略可能である。ただし、フランジ部98cは、電極カバー98をB1方向において対称形としており、これにより、改質手段72の組み立て時に電極カバー98の組み付けの間違いを無くすとともに組み付けの作業性を向上するという利点や、記録体Sのばたつきを抑制するという利点がある。
【0082】
以上述べたことから明らかなように、活性種やオゾンによる改質効率は、これらが被加工面に近い位置にあるほど向上することが分かる。一方、上述したビーディングを指標として、改質度に関する実験を行ったところ、次のように、改質度は、電極被覆部98aの断面形状、裾高、裾長に依存することが明らかになった。これにより、活性種やオゾンの分布は、かかる条件に依存すると推定される。
【0083】
<実験条件>
記録体Sとして、一般的なコート紙であるNPiスーパーアートと、インクジェット専用紙であるリコービジネスコートグロス100との何れかを用いた。
このような記録体Sを用い、改質装置100と同様の構成の表面改質装置にて表面処理を行った。
また、かかる記録体Sに対して、インクジェット印刷装置(リコー IPSiO GX e5500)にて印字を行い、ビーディングの確認を行った。
【0084】
・実験1
かかる表面改質装置にて、放電電極ローラ84に電圧を印加せず表面処理を行わなかった場合、放電電極ローラ84に電圧を印加して表面処理を行ったが電極カバー98を用いなかった場合、放電電極ローラ84に電圧を印加して表面処理を行うとともに電極カバー98を用いた場合、のそれぞれの場合でNPiスーパーアート、リコービジネスコートグロス100のそれぞれを通紙し、通紙後に印字してビーディングの発生具合を調べたところ、表1のようになった。
【0085】
【表1】

【0086】
同表から、表面処理を行うことのビーディングに対する効果、電極カバーを用いることによるビーディングの抑制効果が確認された。
【0087】
・実験2
表面処理あり、電極カバーありの条件で、裾長と裾高とを図5、図6に示すように変化させながら、ビーディングが生じない記録体Sの搬送速度の上限を調べたところ、表2のようになった。搬送速度の単位はmm/secである。なお、記録体Sの搬送速度が遅い場合と、早い場合とでは、前者のほうが相対的に表面処理が強く行われることとなる。
【0088】
【表2】

【0089】
同表から、裾長が長いほど、また、裾高が低いほど、搬送速度が速くてもビーディングが生じにくく、改質効率が高いことが分かった。これは、裾長については、裾長が長ければ被加工面が活性種にさらされる時間が長くなるため、裾高については、裾高が低ければ、活性種の雰囲気中への発散が抑制されるためと考えられる。
【0090】
よって、裾長は長いほど良いが、装置の大型化を抑制することも考慮すると、5mm以上20mm以下が良いと考えられる。
また、裾高は低いほど良いが、低すぎると、電極カバー98が被加工面に接触して、発熱、破損等の悪影響が生じる可能性があることを考慮すると、0.3mm以上100以下とするのが良く、また活性種を効率よく使用することをも考慮すると0.5mm以上5mm以下、さらには1mm以上3mm以下であることがより好ましい。
【0091】
・実験3
裾長が16mm、裾高が1mmの条件で、電極被覆部98aの断面形状を図7に示すように種々の形として、ビーディングが生じない記録体Sの搬送速度の上限を調べたところ、表3のようになった。搬送速度の単位はmm/secである。
【0092】
図7(a)に示した形状は図4に示したのと同様であって、第1の部分と、第2の部分、第3の部分との接続部の内面形状を垂直形状とした四角断面であり、同図(b)に示した形状は、第1の部分と、第2の部分、第3の部分との接続部の内面形状を放電電極ローラ84の周面形状に沿った円弧状としたかまぼこ断面であり、同図(c)に示した形状は、同図(b)に示した形状に加えて、第1の部分の、各放電電極ローラ84の間の部分の内面形状も放電電極ローラ84の周面形状に沿った円弧状としたM字断面である。
【0093】
【表3】

【0094】
同表から、四角断面よりもかまぼこ断面の方が、搬送速度が速くてもビーディングが生じにくく、改質効率が高く、また、かまぼこ断面よりもM字断面の方が、搬送速度が速くてもビーディングが生じにくく、改質効率が高いことが分かった。
【0095】
これは、四角断面では、第1の部分と、第2の部分、第3の部分との接続部の両角の空間と、各放電電極ローラ84の間の空間とで比較的大きな空間が形成され、活性種がこれら空間の乱流中に失活するが、カマボコ断面では両角の乱流失活が抑えられて、活性種を含んだ気流が記録体Sの表面に運ばれ易く、さらにM字断面では各放電電極ローラ84間の空気乱流が抑制され、活性種を含んだ気流が強制的に記録体Sの表面に運ばれるためと考えられる。
【0096】
以上述べた改質装置100を用いて記録体Sの前処理を行うには、給紙トレイ74上または手差しトレイ51上に改質を行う記録体Sをセットし、本体201または改質装置100に設けられた図示しない操作パネル上のスタートキーを押下する。
【0097】
これにより、給紙トレイ74上の記録体Sの通紙を行う場合には、分離ローラ対75が駆動されて給紙トレイ74上の記録体Sが1枚分離給送され、各搬送ローラ対86が駆動されて記録体Sが改質手段72へと送られる。また、手差しトレイ51上の記録体Sの通紙を行う場合には、搬入ローラ対92が駆動されて給紙トレイ74上の記録体Sが1枚分離給送され、各搬送ローラ対86が駆動されて記録体Sが改質手段72へと送られる。
【0098】
改質手段72へと送られた記録体Sは対向電極部85へと運ばれて放電電極ローラ84の駆動によりプラズマを照射されるとともに活性種に接触して改質される。放電電極ローラ84の駆動に先立ちポンプPが駆動され、発生したオゾンがダクト部60aからカバー部材60外に排出される。改質された記録体Sは、搬送ローラ対90、排紙ローラ対91により搬送されて本体70外に排出される。
【0099】
本体70外に排出された記録体Sは本体201内に進入し、給紙ローラ50、ローラ対12によってさらに搬送され、ガイド板11上を搬送される。記録体Sは、ガイド板11上を搬送される過程でヘッド61Y、61M、61C、61BKから吐出されたインクを担持するが、記録体Sはインクを吐出する面を被加工面とされ改質されているため、ビーディングが防止ないし抑制されており、良好な画像が形成される。
【0100】
画像が形成された転写体Sはローラ対13によって搬送され、排紙ローラ6によって本体201外に排出され、排紙台25に積載される。記録体Sが複数枚の場合にはこの動作が繰り返し行われ、複数枚の、改質され画像形成が行われた記録体Sが、排紙台25上にスタックされる。改質装置100内における記録体Sの搬送速度と本体201内における記録体Sの搬送速度とは一致しているため、画像形成装置200において記録体Sのジャムが生じることなく、かつ速やかに記録体Sの改質および画像形成が行われる。
【0101】
以上述べた画像形成装置200は、インクジェット方式の画像形成装置であるが、改質装置100は、インクジェット方式と異なる方式で画像形成を行う画像形成装置に備えられていても良い。また、以上述べた改質装置100は、画像形成装置200の前処理装置として備えられているが、改質装置100は、画像形成装置の後処理装置として備えられていても良い。
【0102】
以下、図8を参照しながら、改質装置100が、トナーを用いて画像形成を行う画像形成装置300に、後処理装置として備えられている例を説明する。なお、本例については、上述の形態と異なる部分について主に説明することとし、上述の構成と同様の構成については同じ符号を付して、適宜説明を省略する。
【0103】
改質装置100は、画像形成装置300の本体301に着脱可能であり、本体301において画像形成済みの記録体Sの後処理を行う後処理装置であって、改質手段72において、画像形成済みの記録体Sの被加工面を改質するものである。
【0104】
これに伴って、改質装置100は、本体301に備えられた排紙ローラ6によって本体301外に排出された画像形成済みの記録体Sを、搬入ローラ対92によって本体70内に受け入れるようになっており、手差しトレイ51は省略されている。また、改質装置100は、改質後の記録体Sをスタックする排紙トレイ73を有しており、改質手段72において改質された記録体Sは、搬送ローラ対90、排紙ローラ対91により搬送されて本体70外に排出されて排紙トレイ73上に積載されるようになっている。
【0105】
本体301は、画像形成後の記録体Sを、表面改質が必要な出力物とすることが可能であり、画像形成後の記録体Sが、表面改質を必要とする出力物である場合には、改質装置100において改質を行う。
本体301は、本体201に備えられている排紙台25を省略され、その一方で、手差しトレイ51を有している。
【0106】
このように、改質装置100は、手差しトレイ51、排紙トレイ73の着脱等により、種々の画像形成装置に、前処理装置、後処理装置の何れとしても装着可能となり、かつ、前処理装置と後処理装置との間で自在に交換可能となっている。
【0107】
画像形成装置300は、本体301内に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体である円筒状の感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kを平行配設されており、タンデム方式を採用している。
【0108】
感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kは本体301の図示しないフレームに回転自在に支持され、中間転写体としての転写ベルト10の移動方向であるC1方向の上流側からこの順で並んでいる。各符号の数字の後に付されたY、M、C、Kは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0109】
各感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成するための作像ステーションである画像形成ユニットに備えられており、各感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kは、301の内部上方に配設された無端ベルトからなる転写ベルト10の外周面側すなわち作像面側に位置している。
【0110】
転写ベルト10は、各感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kに対峙しながらC1方向に移動可能であり、各感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kに形成されたトナー像はC1方向に移動する転写ベルト10に対してそれぞれ重畳転写され、その後に記録媒体である転写紙としての記録体Sに一括転写される。
【0111】
転写ベルト10に対する重畳転写は、転写ベルト10がC1方向に移動する過程において、各感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kに形成されたトナー像が転写ベルト10の同じ位置に重ねて転写されるように、転写ベルト10を挟んで各感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kに対向する位置に配設された1次転写ローラ62Y、62M、62C、62Kによる電圧印加によってC1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0112】
画像形成装置300は、本体301内に4つの画像形成ユニットと、各感光体ドラム40Y、40M、40C、40Kの下方に対向して配設され転写ベルト10を備えた中間転写ユニットとしての転写ベルトユニットと、転写ベルト10に対向して配設され転写ベルト10に当接し、転写ベルト10への当接位置において転写ベルト10と同方向に回転する転写部材としての2次転写ローラ3と、画像転写後の記録体Sを搬送するローラ対23及び無端ベルト24を有する搬送コンベヤ4と、各画像形成ユニットの上方に対向して配設された潜像形成手段である光走査装置21とを有している。
【0113】
転写ベルト10は、駆動ローラ5、従動ローラ14、テンションローラ15、2次転写バックアップローラ16等の複数のローラに巻回されており、図示しない駆動手段によって矢印C1方向に走行駆動される。転写ベルト10の近傍には、転写ベルト10のクリーニングを行うベルトクリーニング装置17が配設されている。
【0114】
画像形成装置300はまた、トナー像を転写された記録体Sに同トナー像を定着させるためのベルト定着方式を採用した定着装置29と、シート給送装置43から給紙路48を経て搬送されてきた転写紙Sまたは手差しトレイ51から給紙ローラ50によって繰り出された転写紙Sを、各画像形成ユニットによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで転写ベルト10と2次転写ローラ3とにより形成される2次転写ニップ部22に向けて繰り出すレジストローラ対49とを有している。
【0115】
定着装置29は、ベルトユニット26、ベルトユニット26に圧接された加圧ローラ27等を有している。ベルトユニット26は、無端状の定着ベルトと、定着ベルトを張架しながら無端移動させる定着ローラと、定着ローラと共に定着ベルトを巻き掛け内部に図示しない熱源を有する加熱ローラとを有している。
【0116】
定着装置29は、ベルトユニット26と加圧ローラ27との圧接部である定着部にトナー像を担持した記録体Sを挟み込む態様で通すことで、熱と圧力との作用により担持したトナー像を記録体Sの表面に定着する。定着装置29は、シリコンオイル等の離型剤を用いないオイルレス定着方式を採用している。排紙ローラ対6は、定着装置29において定着済みの記録体Sを本体301の外部に排出し改質装置100に供給する。
【0117】
各画像形成ユニットについて、そのうちの一つの感光体ドラム40Yを備えた画像形成ユニットの構成を代表して説明する。なお、他の画像形成ユニットの構成も実質的に同一である。感光体ドラム40Yを備えた画像形成ユニットは、感光体ドラム40Yの周囲に、図中反時計方向であるその移動方向に沿って、1次転写ローラ62Y、クリーニング装置18Y、除電ランプを備えた図示しない除電装置、帯電装置19Y、現像装置20Y等を有している。
【0118】
光走査装置21は、感光体ドラム40Yに帯電装置19Yが対向した帯電領域と現像装置20Yが対向した現像領域との間の領域に、画像情報に応じて変換した光情報に基づいて光変調及び偏向されたレーザ光Lを走査しながら照射し、帯電装置19Yにより帯電された後の感光体ドラム40Yの表面の被走査面をスポット照射によって露光し、現像装置20Yによってイエロートナー像として可視像化される静電潜像を画像情報に応じて書き込む。
【0119】
現像装置20Yは、感光体ドラム40Yに近接対向して配設された現像ローラと、現像ローラ上の現像剤を一定の高さに規制する図示しないドクターブレードと、現像剤を攪拌すると共に現像ローラに現像剤を供給するための図示しない搬送スクリュと、これらを収容した図示しない現像ケースと、直流成分の現像バイアスを現像ローラに印加する図示しないバイアス印加手段等とを有している。
【0120】
現像装置20内に収容されている現像剤は磁性キャリアとイエロートナーとを含む二成分現像剤であり、この現像剤には画像形成ユニットの上方に配設されたトナーボトルからイエロートナーが補給及び供給され、搬送スクリュによって供給されたイエロートナーと現像剤とが攪拌搬送されながら攪拌混合され、摩擦帯電されて現像ローラに供給され担持される。
【0121】
以下に画像形成装置300の動作について説明する。
感光体ドラム40Yは、回転に伴って帯電装置19Yにより表面を一様にマイナス帯電された後、光走査装置21からのレーザ光Lの露光走査によりイエロー色に対応した静電潜像を形成される。この静電潜像は現像装置20Yにより現像剤中のイエロー色のトナーにより現像され、現像により得られたイエロー色のトナー像は1次転写ローラ62YによりC1方向に移動する転写ベルト10に1次転写され、転写後に残留した残留トナーはクリーニング装置18Yにより除去される。次いで、除電装置により残留電荷が除去されて帯電装置19Yによる次の除電及び帯電に供される。
【0122】
他の感光体ドラム40M、40C、40Kにおいても同様に各色のトナー像が形成等され、形成された各色のトナー像は1次転写ローラ62M、62C、62Kにより矢印C1方向に移動する転写ベルト10上の同じ位置に順次1次転写される。転写ベルト10上に重ね合わされたトナー像は、転写ベルト10のC1方向の回転に伴い2次転写ローラ3との対向位置である2次転写ニップ部22まで移動して記録体Sに密着し、2次転写バイアスやニップ圧の作用によって記録体Sに2次転写され、記録体S上にフルカラー画像が形成される。
【0123】
転写ベルト10と2次転写ローラ3との間に搬送されてきた記録体Sは、シート給送装置43から繰り出されてフィードされたか、手差しトレイ51から給紙ローラ50によって繰り出されてフィードされ、レジストローラ対49によって転写ベルト10上のトナー像の先端部が2次転写ローラ3に対向するタイミングで送り出されたものである。
【0124】
記録体Sは、全ての色のトナー像を一括転写されて担持すると、搬送コンベヤ4によって搬送されて定着装置29に進入し、加圧ローラ27とベルトユニット26との間の定着部を通過する際に熱と圧力との作用により担持したトナー像を定着され、記録体S上にフルカラー画像が定着される。この定着の際、トナー像を構成しているトナー粒子中に含有されているワックスがトナー像表面に染み出し、トナー像表面が離型性を有する撥水性の膜でコーティングされ、トナー像が定着ベルトに付着することを防止あるいは抑制する。定着装置29を通過した定着済みの記録体Sは、排紙ローラ対6を経て本体301外に排出される。
【0125】
このようにして画像形成装置300によって画像形成が行われた記録体Sは、画像形成装置300の出力物となる。この出力物は、主にトナー像が形成されている領域において表面に撥水性を有している。この出力物に親水性を要する加工を良好に行うためには、加工に先立ってこの出力物表面を被加工面としてその撥水性の部分を親水化する改質(後処理)を行う必要がある。なお定着装置29が、定着ベルトにシリコンオイル等の撥水性を有する離型剤を塗布するオイル塗布タイプである場合にも、定着ベルトに塗布された離型剤が転写紙に転移することから出力物の表面は撥水性を有することとなり、離型性を含む同表面を被改質面として親水化する改質を行う必要がある。
【0126】
改質装置100は、上述のように排紙ローラ対6を経て本体301外に排出された記録体Sを受け入れ、改質手段72において、記録体Sの表面を親水化する改質を行い後処理を施す。後処理を施された記録体Sは、排紙ローラ対91を経て本体70外に排出され排紙トレイ73上にスタックされる。なお、本体301から排出される記録体Sに後処理を行う必要のない場合、かかる記録体Sは、改質手段72を、改質を行われることなく通過し、排紙ローラ対91を経て本体70外に排出され排紙トレイ73上にスタックされる。
【0127】
以上述べた各構成例において、電極カバー98とカバー部材60とは別部材として構成されているが、図9に示すように、電極カバー98とカバー部材60とは一体で構成されていても良い。
【0128】
図9に示す構成において、電極カバー98とカバー部材60とは、フランジ部98b、フランジ部98cの、電極被覆部98aと逆側の側縁が、カバー部材60の側縁と一体化される態様で一体化されている。
【0129】
フランジ部98b、フランジ部98cには、電極カバー98とカバー部材60とによって囲まれた空間内に空気を導入するとともに放電によって発生したオゾンを空気とともに吸引し、ダクト部60aから排出するための導入孔60bが穿設されている。導入孔60bは、放電電極ローラ84の長手方向に沿って分割された態様で複数形成されている。これにより、改質手段72に給送されてきた記録体Sの先端がフランジ部98cに突き当たってジャムを生ずることが防止されている。
【0130】
電極カバー98とカバー部材60とはプラスチックで一体成型されており、コストダウンが図られているとともに、組み付け時における作業性が向上している。この構成において、上述した裾長は、電極被覆部98aと各導入孔60bとの間の距離に対応している。
【0131】
なお、電極被覆部98aは、図7に示した断面形状に対応する断面形状において、第2の部分、第3の部分が、第1の部分からフランジ部98b、フランジ部98cに向けて広がる形状となっている。これにより、図7(a)に示した形状よりも、図7(b)に示した形状に近い作用が、一定の肉厚の簡易な構造で得られるようになっている。
【0132】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0133】
たとえば、上述の各構成例では、改質装置は、画像形成装置の本体に外付けされる前処理装置又は後処理装置として構成されているが、改質装置は、画像形成装置の本体内に備えられ画像形成前の被加工物の前処理及び/又は後処理を行うように構成されていても良い。
【0134】
被加工物は、上述の各構成例では、枚葉状でシート状のものとして説明したが、シート状の被加工物とは、枚葉状でなく、ウェブ状であっても良い。被加工物がウェブ状である場合には、たとえばこれをロール状に巻いた状態から、繰り出す態様で被加工物を改質手段に向けて供給する。また、繰り出された被加工物は、必要に応じて、改質手段に進入する前あるいは改質手段を経た後、あるいはさらに画像形成が行われた後に、改質装置内あるいは画像形成装置本体内に設けられカッター等を備えた裁断手段によって裁断することで枚葉状とすることが可能である。
画像形成装置は版胴に巻装したマスタから染み出すインクを用いて印刷を行う孔版印刷装置等の画像形成装置であっても良い。
【0135】
また、上述の各形態では、放電電極が被加工物に当接するように構成されているが、放電電極は被加工物からたとえば50μm程度の微少距離だけ離間する位置に配設されていても良い。放電電極が被加工物から離間していれば、たとえば被加工物に付着している紙粉が放電電極に付着して放電電極の性能が低下するなど、被加工物に付着している汚れが放電電極に付着して放電電極の性能が低下することが防止ないし抑制される。ただし、放電電極が被加工物から離間している構成では、放電電極とカウンタとの距離が大きくなるため、エネルギーの損失が生じるとともに、沿面放電を阻害する要因ともなるため、この距離は、できるだけ小さいほうが好ましい。なお、放電電極の放電による偏磨耗を低減するためや、沿面放電やプラズマを形成する部位を変化させ被加工面の改質の均一性を向上するために、放電電極を被加工物から離間させた構成においても、放電電極を回転させるのが好ましい。
【0136】
本発明を適用した改質装置を有する画像形成装置あるいは本発明を適用した改質装置の被加工物となる出力物を形成する画像形成装置は、タンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの中間転写体上に順次各色のトナー像あるいはインク像を形成して各色の像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置であっても良い。また、カラー画像形成装置でなく、モノクロ画像形成装置にも本発明を適用可能である。中間転写体を用いず、各色のトナー像を転写紙等に直接転写しても良い。ただし、ワックス含有トナーを用いる画像形成装置においては、カラー画像を得る等のためにトナー像を重ね合わせたほうが疎水性が高くなるため、改質を行うことによる効用は高い。
【0137】
本発明を適用した改質装置を有する後処理装置は、改質され出力される被加工物の揃え機能、パンチ機能、ステープル機能等を有していても良い。ステープル機能は、上述のような加工手段を有し加工手段による加工を経た被加工物をステープルするように備えられていることが好ましい。
改質は、均一に行われる等の所望の状態で行われるのであれば、ベルトによる被加工物の搬送を停止した状態、間欠的に行っている状態で、実施してもよい。
【0138】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0139】
60 カバー部材
79 搬送手段
84 放電電極
98 電極カバー
98a 電極被覆部
98b 第1のフランジ部
98c 第2のフランジ部
100 改質装置、前処理装置、後処理装置
200 画像形成装置
300 画像形成装置
B1 所定の方向
P 吸引手段
S 被加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被加工物を所定の方向に搬送するための搬送手段と、
この搬送手段によって前記所定の方向に搬送されている前記被加工物の被加工面に接触するように配置され、同被加工面に接触して同被加工面の改質を行うためのプラズマを、同被加工面に向けて形成するための放電電極と、
前記プラズマの生成に伴って生じた生成物を空気とともに吸引するための吸引手段と、
この吸引手段に接続され、前記放電電極を覆ったカバー部材と、
このカバー部材の内側において前記放電電極を覆った電極被覆部と、前記所定の方向における前記電極被覆部の下流側において同電極被覆部と一体であり、前記被加工面に対向するように設けられた第1のフランジ部とを有する電極カバーとを有する改質装置。
【請求項2】
請求項1記載の改質装置において、
前記電極カバーは、前記所定の方向における前記電極被覆部の上流側において同電極被覆部と一体であり、前記被加工面に対向するように設けられた第2のフランジ部とを有することを特徴とする改質装置。
【請求項3】
請求項2記載の改質装置において、
前記カバー部材と前記電極カバーとが一体であることを特徴とする改質装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、同画像形成装置において画像形成が行われる前の前記被加工物の前処理を行う前処理装置であって、同改質装置によって画像形成が行われる前の前記被加工物の被加工面を改質する前処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成装置に着脱可能であり、同画像形成装置において画像形成済みの前記被加工物の後処理を行う後処理装置であって、同改質装置によって前記画像形成済みの前記被加工物の被加工面を改質する後処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の改質装置を有し、画像形成が行われる前の前記被加工物の被加工面、及び/又は、画像形成済みの前記被加工物の被加工面を、同改質装置において改質する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95562(P2013−95562A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240664(P2011−240664)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】