説明

放出システムとしてのポリアセタール薬物抱合体

本発明は、構造(I)を有する1以上の部分で置換されるキャリアを含む抱合体に関し、ここで、各Mは、独立して、分子量が10kDa以上の修飾物質であって、はリンカーLへのMの直接的または間接的結合を表し、各Lは、独立して、必要に応じて置換されるスクシンアミド含有リンカーであり、これによって、前記修飾物質Mは、アミド結合を介して、直接的あるいは間接的にスクシンアミドリンカーに結合し、かつ前記キャリアは、エステル結合を介して、直接的あるいは間接的に各スクシンアミドリンカーに結合する。他の態様では、本発明は、前記抱合体を含む組成物、抱合体の製造方法、癌を含む(これに限定させるものではない)種々の障害の処置における前記抱合体の用途を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権情報)
本願は、2003年9月5日に出願された米国特許出願第60/500,571号に対する優先権を主張し、その出願の全内容は参考として本明細書に援用される。
【0002】
(政府による資金供与)
本発明は、一部、米国国立健康研究所(NIH)の国立研究資源開発センター(NCRR)の承認により援助を受けて(承認番号R21−RR14221およびT32 GM07035)なされた。したがって、アメリカ合衆国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
従来、医薬品は経口投与(固形錠剤および液体として)される、または注射可能な低分子から主になるものである。過去30年にわたって、製剤(すなわち、薬物送達の経路および/または速度を調整し、治療剤を必要とする部位への送達することを可能にする組成物)は、ますます一般的かつ複雑になっている。それにもかかわらず、新しい処置の開発とそれらの投与のメカニズムに関する多くに疑問と課題が依然として取り扱われている
この分野におけるかなりの研究努力は重大な進歩をもたらしてきたが、長年にわたって開発され現在も使用されている薬物送達方法/システムは、まだ、改良を要する特定の問題を示す。たとえば、多くの薬物は、一般的にそれらが体内の所望の標的に到達する前に部分的に分解したりあるいは標的以外の体内組織に蓄積したり、またはその両方が起こるため、限られた、言い換えれば、低下した効力および治療効果しか発揮しない。
【0004】
したがって、薬物送達システムの分野における目的の1つは、薬物を安定化することのできるシステムによって、体内の特定の標的領域まで無傷で薬剤を送達すること、あるいは生理学的または化学的メカニズムあるいは両方を利用して、治療剤の生体内移送を調整することである。過去10年にわたって、高分子ミクロスフェア、高分子ミセル、可溶性高分子およびヒドロゲル型材料のような材料が、生体外および生体内での薬物安定性、放出力、標的特異性の強化、全身薬物毒性の低下を効果的にすることを示してきており、したがって、これらは、生物医学的応用、特に種々の製剤および薬物送達機器の構成要素としての用途に、大きな可能性を示している。
【0005】
したがって、生物医学的分野では、前記問題点を克服あるいは最小限にする、薬学的に有用な修飾物質を含む、低毒性、生分解性、生体適合性高分子抱合体を必要としている。このような高分子抱合体は、治療用および診断用医薬製剤、遺伝子ベクター、医療機器、移植、および他の処置、診断および予防剤を含む数種の適用において用途が発見されている。
【0006】
生物医学的高分子(たとえば、生理学的条件下で使用される高分子)の設計およびエンジニアリングは、一般的に特定の厳しい要求が求められる。特に、そのような高分子材料は、それらが将来使用される生物学的環境に適合しなければならず、このことはそれらが親水性特性を示すことを意味することが多い。数種の適用において、それらはまた、適切な生分解性(すなわち、それらは分解して低分子量種になる。高分子片は体内あるいは次々に体内で代謝されあるいは排泄される)を実証しなければならない。
【0007】
生分解性は、通常、骨格鎖に加水分解に不安定なリンクを有する高分子を合成あるいは使用することによって、成し遂げられる。この特長を持つ最もありふれた化学的骨格鎖成分は、エステル類とアミド類である。ごく最近、無水物、オルソエステル、ポリアセタール、ポリケタールおよび他の生分解性骨格鎖成分に関して、新規の高分子が開発されている。骨格鎖構造の加水分解は、そのような高分子では一般的な分解メカニズムである。ポリエーテル類のような他の高分子タイプでは、細胞内あるいは細胞外酸化作用によって分解する。生分解性高分子は天然であっても合成であってもよい。医学的適用および生物医学的研究に普通使用される合成高分子は、ポリエチレングリコール(薬物動態および免疫応答修飾物質)、ポリビニルアルコール(薬物キャリア)、およびポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(薬物キャリア)が挙げられる。また、天然高分子は生物医学的適用においても使用される。たとえば、デキストラン、ヒドロキシエチルでんぷん、アルブミン、ポリアミノ酸、および部分的に加水分解されたタンパク質は、血漿増量剤から栄養輸液療法に対する放射性医薬品までの範囲にわたる適用における用途が見出される。一般的に、合成高分子は、調整されて、殆どの天然源から得られる材料が提供しうる特性より広い範囲の特性、およびより予測可能なロット間均一性を与えることができる点で、天然材料より大きな利点を提供する。種々の高分子材料を製造する方法は、当業界で周知である。多くの生物医学的適用において、高分子の分子は、薬剤物質、他の修飾物質、またはそれぞれ互いに化学的に結び付ける(たとえば、ゲルの形成)べきである。最終製品のいくつかの特性は、関連品の特徴、たとえば、薬物放出プロファイル、免疫毒性、免疫性、および薬物動態に依る。したがって、結合品(抱合体、ゲル)の生物医学的用途と適合性のある、薬剤物質および他の薬学的に有用な修飾物質と高分子を結合する方法が必要である。もし必要であれば、そのような方法は、さらに、最適な速度での生理学的条件下で、あるいは意図する適用に最適な化学的形態で薬物放出を可能にする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、生分解性、生体適合性で、生体内で殆ど毒性および/またはバイオ接着性を示さない、必要に応じて置換されるスクシンアミド含有リンクを介して高分子に共有結合する修飾物質を1以上含む高分子抱合体を開示する。
【0009】
一態様として、本発明は、1以上の以下の構造を有する部分で置換されるキャリアを含む抱合体であって、該構造は、
【0010】
【化18】

【0011】
(ここで、各Mは、独立して、分子量が10kDa以上の修飾物質であって、
【0012】
【化18A】

【0013】
は、リンカーLへのMの直接的または間接的結合を表し、
各Lは、独立して、必要に応じて置換されるスクシンアミド含有リンカーである)で表され、これによって、前記修飾物質Mは、アミド結合を介して、直接的あるいは間接的にスクシンアミドリンカーに結合し、かつ前記キャリアは、エステル結合を介して、直接的あるいは間接的に各スクシンアミドリンカーに結合するキャリアを含む抱合体を包含する。
【0014】
別の態様として、本発明は、前記抱合体を含む組成物、抱合体の製造方法、癌を含む(ただしこれに限定されない)種々の障害の処置における前記抱合体の用途を提供する。
【0015】
(定義)
本発明のある化合物および特定の官能基の定義を本明細書でさらに詳しく説明する。本発明の目的のために、化学元素は元素周期表、CAS版、化学物理便覧、第75編、内表紙に従って同定され、および特定の官能基は、一般的に底に記載のように定義される。加えて、有機化学の一般原則、と特定の官能部および反応性は、「有機化学」、Thomas Sorrell、University Science Books、サウサリート:1999年、に記載され、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書に記載された合成方法で種々の保護基を利用することは、当業者によって理解されるであろう。
【0016】
「保護基」:本明細書で使用される語句「保護基」は、多官能性化合物において、特定の官能基部分、たとえばO、SまたはNが一時的にブロックされ、反応が他の反応性部位で選択的に行われることを意味する。好ましい実施態様では、保護基は、高収率で選択的に反応して、予定された反応に対して安定な保護置換基を得;簡単に入手しうる、好ましくは他の官能基を攻撃しない無毒の試薬によって、高収率で選択的に脱離しなければならず;簡単に分離しうる誘導体を形成し(さらに好ましくは、新しい立体形成中心を生成することなく);そして、機能の追加が最小限で反応部位がさらに増えることを避ける。本明細書で詳しく説明するように、酸素、イオウ、窒素および炭素の保護基が利用されてもよい。たとえば、ある実施形態では、ある例示的な酸素保護基が利用されてもよい。これらの酸素保護基として、メチルエーテル類、置換されたメチルエーテル(たとえば、いくつか名前を挙げると、MOM(メトキシメチルエーテル)、MTM(メチルチオメチルエーテル)、BOM(ベンジルオキシメチルエーテル)、PMBM(p−メトキシベンジルオキシメチルエーテル))、置換されたエチルエーテル類、置換されたベンジルエーテル類、シリルエーテル類(いくつか名前を挙げると、たとえば、TMS(トリメチルシリルエーテル)、TES(トリエチルシリルエーテル)、TIPS(トリイソプロピルシリルエーテル)、TBDMS(t−ブチルジメチルシリルエーテル)、トリベンジルシリルエーテル、TBDPS(t−ブチルジフェニルシリルエーテル))、エステル類(いくつか名前を挙げると、たとえば、蟻酸エステル、酢酸エステル、ベンジル酸エステル(Bz)、トリフルオロ酢酸エステル、ジクロロ酢酸エステル)、炭酸エステル、環状アセタール類およびケタール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある他の例示的な実施形態では、窒素保護基が利用される。窒素保護基および保護および脱保護方法は、業界で知られている。「Protective Groups in Ogranic Synthesis」第3編Greene,T.W.およびWuts,P.G.,Eds.,John Wiley&Sons,ニューヨーク:1999年、中に指針が見つかり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。ある例示的な実施形態において、RN1およびRN2はそれぞれ水素である。窒素保護基として、いくつか名前を挙げると、カーバメイト類(いくつか名前を挙げるとメチル、エチルおよび置換されたエチルカーバメイト類(たとえばTroc)が含まれる)、アミド類、環状イミド誘導体、N−アルキルおよびN−アリールアミン類、イミン誘導体、およびエナミン誘導体が挙げられるが、しかしこれらに限定されない。他の例示的な保護基が、本明細書に詳細に記載されるが、本発明は、これらの保護基に限定することを意図するものではなく、むしろ本発明においては、種々の他の等価の保護基が、上記基準を使用して容易に同一視され、利用できることは、理解されるであろう。加えて、種々の保護基が「Protective Groups in Ogranic Synthesis」第3編Greene,T.W.およびWuts,P.G.,Eds.,John Wiley&Sons,ニューヨーク:1999年、中に記載され、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
「生体適合性」:本明細書で使用される語句「生体適合性」は、体液、生体細胞または体内組織と接触すると、ごく僅かしか破壊あるいは宿主反応効果を発揮しない化合物を説明するものである。したがって、本明細書で使用される、生体適合性基は、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール部分をいい、これらは、上記および明細書で記載した、語句生体適合性の定期の範囲内に入る。本明細書で使用される語句「生体適合」もまた、相互反応が特に望ましい場合を除いて、認識タンパク質、たとえば、自然に発生する抗体、細胞タンパク質、生態系の細胞および他の成分とのごく僅かな相互反応を意味する。したがって、上記効果を起こすことを特に意図されている物質および官能基、たとえば薬物およびプロドラグ、は生体適合性であると考えられる。好ましくは(細胞毒性であることが意図される化合物、たとえば抗癌薬などを除いて)、それらを試験管内で目的とする全身性生体内濃度に類似した濃度で正常細胞に添加し、生体内で、化合物の半減期と同等の時間(たとえば、生体内で投与された化合物の50%が、除去される/消去されるのに要する時間)の間に1%以下の細胞死の結果を得、生体内でのそれらの投与によって、ごく僅かな、医学的に許容しうる炎症、異物反応、免疫毒性、化学毒性またはその他のそのような悪影響しか引き起こさなければ、化合物は「生体適合性」である。上記文で、語句「正常細胞」は、破壊が意図されない、言い換えれば、試験される化合物によって重大な影響を受けない細胞を言う。
【0018】
「生分解性」:本明細書で使用される「生分解性」高分子は、生体内で、生物学的調整処理を受けやすい高分子である。本明細書で使用される「生分解性」化合物は、細胞に取り囲まれた時、リソソームまたは他の化学装置、あるいは加水分解によって、細胞上に重大な中毒作用を起こさず、該細胞が再利用あるいは処理することのできる成分に分解されることのできる化合物である。分解断片は、臓器あるいは細胞過剰負荷、または生体内でそのような過剰負荷あるいは他の悪影響によって起こる病理学的プロセスを全くあるいは殆ど誘発しないものが好ましい。生分解プロセスの例として、酵素的および非酵素的加水分解、酸化および還元が挙げられる。種々の抱合体の高分子骨格鎖の非酵素的加水分解の好ましい条件として、たとえば、リソソーム細胞内区画の温度およびpHで、生分解性抱合体を水に曝すことが挙げられる。たとえば、本発明のポリアル(polyal)抱合体のような幾つかの抱合体骨格鎖の生分解は、また、細胞外、たとえば炎症域のような動物体内の低いpH領域、または活性化されたマクロファージや分解促進因子を放出する他の細胞のすぐそばなどでも強化されうる。ある好ましい実施形態では、pH約7.5での高分子の有効径は、1〜7日間にわたって検出できる程度に変化せず、数週間にわたって、元の高分子径の50%以内の値を保つ。一方、pH約5では、高分子は、1〜5日間で検出できる程度に分解し、2週間から数ヶ月の時間枠内で低分子量断片に完全に移行するのが好ましい。このような試験における高分子保存度は、たとえば、サイズ排除HPLCによって測定することができる。速い分解が好ましい場合もあるが、一般的には、高分子は細胞による高分子片の代謝または排泄速度を超えない速度で、細胞内で分解するのがより望ましい。好ましい実施形態では、高分子および高分子生分解副産物は、生体適合性である。
【0019】
「親水性」:語句「親水性」は、高分子の単位上の置換基を言う場合、当該技術分野でのこの語句の一般的な意味と実質的に違いはなく、イオン化しうる、極性または分極性原子、または他に水分子によって溶解しうる化学的部分を意味する。したがって、本明細書で使用される親水性基は、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール部分を言い、上記で定義した語句親水性の定義の範囲内である。特定の親水性有機部分の好ましい例として、約1と12との間の範囲の原子数の鎖を含む脂肪族またはヘテロ脂肪族基、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アミン、カルボキシル、アミド、カルボキシルエステル、チオエステル、アルデヒド、ニトリル、イソニトリル、ニトロソ、ヒドロキシルアミン、メルカプトアルキル、ヘテロ環、カーバメイト類、カルボン酸類およびこれらの塩、スルホン酸類およびこれらの塩、スルホン酸エステル類、リン酸類およびこれらの塩、リン酸エステル類、ポリグリコールエーテル類、ポリアミン類、ポリカルボキシレート類、ポリエステル類、およびポリチオエステル類が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの高分子単位として、カルボキシル基(COOH)、アルデヒド基(CHO)、メチロール(CHOH)またはグリコール(たとえば、CHOH−CHOHまたはCH−(CHOH))が挙げられる。
【0020】
「親水性」:本発明の高分子を言う場合、語句「親水性」は、一般的に、当該技術分野でのこの語句の使い方と違いはなく、前に定義した、親水性官能基を含む高分子を表わす。好ましい実施形態では、親水性高分子は、水溶性高分子である。高分子親水度は、水和エネルギーの測定によって、2つの液相間の検査によって、あるいは公知の疎水度たとえばC4またはC18の個体クロマトグラフィーによって、直接測定することができる。
【0021】
「生体高分子」:本明細書で使用される語句「生体高分子」は、化合物質のクラスに属し、自然に発生したものでも人工的に造られたものでも(たとえば合成または組換え方法による)よく、通常、細胞および体内組織で見出される、分子(たとえば、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、炭水化物、糖類、脂質、核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイドなど)を言う。生体高分子の例示的なタイプとして、酵素、レセプター、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、成長因子および化学走化性因子のような細胞応答修飾物質、抗体、ワクチン、ハプテン、毒素、インターフェロン、リボザイム、抗センス剤、プラスミド、DNAおよびRNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「キャリア」:本明細書で使用される語句キャリアは、どのような低あるいは高分子、生体高分子、粒子、ゲルまたは他の物体または材料でもよく、1以上のスクシンアミドリンカーを有する薬物分子に共有結合で結合している、またはできるものを言う。
【0023】
「生理学的条件」:本明細書で使用される句「生理学的条件」は、生体内組織の細胞外体液中に発生する見込みのある、化学的(たとえば、pH、イオン強度)および生化学的(たとえば、酵素濃度)条件の範囲を言う。最も正常な体内組織では、生理学的pHは約7.0から7.4の範囲である。循環血液の血漿および正常な間隙液が、正常な生理学的条件の典型的な例示の代表である。
【0024】
「多糖類」、「炭水化物」または「オリゴ糖」:語句「多糖類」、「炭水化物」、「オリゴ糖」は、当該技術分野で公知であり、一般的に、化学式:(CHO)(ここで、一般的にn>2である)を有する物質、およびこれらの誘導体を言う。炭水化物は、ポリヒドロキシアルデヒド類またはポリヒドロキシケトン類、または加水分解、酸化または還元のような単純な化学的変換で変化した物質である。通常、炭水化物は、環状アセタール類またはケタール類(たとえば、グルコースまたは果糖)の形で存在する。これらの環状単位(単糖類)は、互いにつながって、2、3(オリゴ糖類)または5、6(多糖類)の単糖類単位を持つ分子を形成してもよい。単糖類単位の明確に決まった数、タイプおよび位置を持つ炭水化物は、しばしばオリゴ糖と呼ばれ、一方、単糖類単位の数および/または位置がばらばらの分子の混合物からなる炭水化物は、多糖類と呼ばれる。語句「多糖類」、「炭水化物」および「オリゴ糖」は、本明細書では互換的に使用される。多糖類は天然の糖類(たとえば、グルコース、果糖、ガラクトース、マンノース、アラビノース、リボースおよびキシロース)および/または自然発現糖類(たとえば、2’−フルオロリボース、2’−デオキシリボースおよびヘキソース)の誘導体であってもよい。
【0025】
「低分子」:本明細書で使用される語句「低分子」は、自然に発生したものでも人工的に造られたものでも(たとえば、化学的合成)よく、比較的低分子量の分子を言う。低分子としては、生物学的に活性で、動物、好ましくは哺乳類、さらに好ましくはヒトにおいて、局所または全身作用を生み出すことが好ましい。通常低分子の分子量は、約1500Da(1500g/mol)未満である。ある好ましい実施形態では、低分子は薬物であり、「薬物分子」または「薬物」とも言われる。ある実施形態では、薬物分子のMW(重量平均分子量)は、約10kDa以下である。必ずしも必要ではないが、薬物はすでに適切な行政機関や行政体によってその使用が安全で効果があることが確認されているものが好ましい。たとえば、FDA、21C.F.R.§§330.5、331〜361および440〜460によって列挙されているヒト用薬物;FDA、21C.F.R.§§500〜589によって列挙されている獣医学上の薬物(これらは参照により本明細書に組み込まれる)は、全て、本親水性高分子との用途に適切であると考えられる。
【0026】
本発明の実践に使用できる薬物分子の分類として、抗癌物質、放射性核物質、ビタミン、抗AIDS物質、抗生物質、免疫抑制剤、抗ウイルス物質、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、睡眠薬、抗ヒスタミン、潤滑剤、トランキライザー、抗けいれん薬、筋弛緩剤および抗パーキンソン病物質、チャンネル遮断薬を含む抗痙性剤および筋肉収縮剤、縮瞳薬および抗コリン作用薬、抗緑内障化合物、抗寄生虫および/または抗原虫化合物、細胞増殖阻害剤および抗癒着分子を含む細胞−細胞外マトリックス相互作用の調節因子、血管拡張剤、DNA、RNAまたはタンパク質合成の抑制剤、降圧剤、鎮痛剤、解熱剤、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症剤、抗血管形成因子、分泌抑制因子、抗凝血剤および/または抗血栓剤、局所麻酔剤、眼病薬、プロスタグランジン、抗うつ剤、抗精神病物質、嘔吐抑制剤、造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。多くの高分子もまた薬物である。
【0027】
本発明の用途に適する分類および特定の薬物のさらに完全な列挙が、網羅するものではないが、「Pharmaceutical Substances:Syntheses,Ptents,Applications」Axel KleemannおよびJurgen Engel,Thieme Medical Publishing,1999年、および「Merck Index:An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals」、Susan Budavari et al.編,CRC Press,1996年、に見出すことができる。これら両書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
「薬学的に有用な基または構成要素」:本明細書で使用される語句薬学的に有用な基または構成要素は、本発明の抱合体と結びついた時、ある生物学的または診断的機能、または被験体に投与した時、活性を示すことのできる、生物医学的適用において、抱合体の治療的、診断的または保護的特性を増強することのできる、または安全性、あるいは生分解または排泄を改善できる、または測定可能にできる、化合物あるいはその断片、または化学的部分を言う。適切な薬学的に有用な基または構成要素の例として、親水性/疎水性の修飾物質、薬物動態学的修飾物質、生物学的に活性な修飾物質、検出可能な修飾物質が挙げられる。
【0029】
「修飾物質」:本明細書で使用される語句修飾物質は、キャリアに共有結合で組入れられた有機、無機または生物有機部分を言う。修飾物質は、低分子でもマクロ分子でもよく、たとえば、ヌクレオチド、化学療法剤、抗バクテリア剤、抗ウイルス剤、免疫調整剤、ホルモンまたはその類縁体、酵素、抑制剤、アルカロイドおよび治療用放射性核物質、治療用放射性核物質(たとえば、α、β、またはポジトロン放射体)など、いかなる化学薬品または医薬品分類に属していてもよい。ある実施形態では、化学療法剤として、トポイソメラーゼIおよびII抑制剤、アルキル化剤、アントラサイクリン類、ドキソルビシン、シスプラスチン、カルボプラチン、ビンクリスチン、マトロマイシン、タキソール、カンプトテシン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、およびダクチノマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、本発明による修飾物質は、いくつか名前を挙げると、生体分子、低分子、治療剤、医薬的に有益な基または構成要素、マクロ分子、診断ラベル、キレート剤、親水性部分、分散剤、電荷変性剤、粘度変性剤、界面活性剤、凝固剤および凝集剤が挙げられるが、これらに限定されない。修飾物質は、1以上の医薬的機能、たとえば生物学的活性および薬物動態学的修飾を有することができる。薬物動態学的修飾物質として、たとえば、抗体、抗原、レセプターリガンド、親水性、疎水性または帯電した基が挙げられる。生物学的に活性な修飾物質として、たとえば、治療用薬物およびプロドラグ、抗原、免疫調整剤が挙げられる。、検出可能な修飾物質として、放射性、蛍光性、常磁性、超常磁性、強常磁性、X線調整性、X線不透明、超音波反射性などの診断ラベル、および入手可能な臨床的または実験室的方法、たとえば、シンチグラフィー、NMRスペクトル観測、MRI、X線トモグラフィー、ソノトモグラフィー、写真撮影、ラジオイムノアッセイの1つによって検出可能な他の物質が挙げられる。ウイルスおよび非ウイルス遺伝子ベクターもまた修飾物質と考えられる。
【0030】
「マクロ分子」:本明細書で使用される語句マクロ分子は、自然に発生したものでも人工的に造られたものでも(たとえば、化学合成によって)よく、比較的高い分子量、一般的に1500g/moleを超える分子量を有する分子を言う。マクロ分子は、生物学的に活性で、動物、好ましくは哺乳類、さらに好ましくはヒトにおいて生物学的機能を発揮するのが好ましい。マクロ分子の例として、タンパク質、酵素、成長因子、サイトカイン、ペプチド、ポリペプチド、ポリリジン、タンパク質、脂質、高分子電解質、イムノグロブリン、DNA、RNA、リボザイム、プラスミド、およびレクチンが挙げられる。本発明の目的に照らし、ウイルス、核酸ヘリカルおよびタンパク質結合体(たとえば、ダイマー)のような超分子構造は、マクロ分子であると考えられる。本発明の抱合体と結びつく時、マクロ分子は、前記生分解性、生体適合性抱合体と結びつく前に、化学的に修飾されてもよい。
【0031】
「診断ラベル」:本明細書で使用される語句診断ラベルは、原子、原子、部分または官能基の基、ナノ結晶、または他の個別の物質組成物の要素であって、生体内または生体外で、当業界で公知の分析方法を使用して検出できるものを言う。本発明の抱合体と結び付けられる時、そのような診断ラベルは、生体内での抱合体のモニタリングを可能にする。あるいはまたは加えて、診断ラベルを含む構造および組成は、生物学的機能または構造をモニターするために使用することができる。診断ラベルの例として、限定されないが、放射、反射、吸収、散乱できる、または他の電磁界または電磁波(たとえば、γ線、X線、電波、マイクロ波、光)、粒子(たとえば、α粒子、エレクトロン、陽電子、ニュートロン、プロトン)またはたとえば超音波のような他の形での放射線に影響をあたえることのできる一般的な部分における、医療診断的処置で使用できるラベル、たとえば、γ−シンチグラフィーおよびポジトロン放射断層撮影(PET)用放射性アイソトープ(放射性核物質)、磁気共鳴画像法(MRI)(たとえば、常磁性原子および超常磁性ナノ結晶)用造影剤、CT検査法および他のX線系画像検査法用の造影剤、超音波系診断的方法(断層撮影法)用剤、中性子活性化(たとえば、ホウ素、ガドリニウム)剤、種々の光学処置用蛍光体が挙げられる。
【0032】
「グリコール特異的酸化剤の有効量」:本発明で多糖類の酸化開裂において言う時、句グリコール特異的酸化剤の有効量は、多糖類の実質的に全ての炭水化物環の酸化開環をもたらす、グリコール特異的酸化剤の量を意味する。
【0033】
本明細書で使用される「保護親水性」および「保護有機部分」は、キャリアまたはキャリア抱合体が供される化学反応に干渉しない化学的基を意味する。保護親水性基の例として、カルボキシエステル、アルコキシ基、チオエステル、チオエーテル、ビニル基、ハロアルキル基、Fmocアルコールなどが挙げられる。
【0034】
「脂肪族」:一般的に、本明細書で使用される語句脂肪族は、飽和および不飽和の直鎖(すなわち分岐状でない)または分岐状の脂肪族炭化水素を含み、これらは1以上の官能基で必要に応じて置換される。当業者によって認識されるように、本明細書において「脂肪族」としては、アルキル、アルケニル、アルキニル部分が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本明細書で使用される語句「アルキル」には、直鎖および分岐状アルキル基が含まれる。同じような約束事が他の一般用語「アルケニル」、「アルキニル」などにも適用される。さらに、本明細書で使用される語句「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などは、置換されたおよび置換されていない基も包含する。ある実施形態では、本明細書で意図される「低級アルキル」とは、炭素数が約1〜6のアルキル基(置換された、置換されていない、分岐状または分岐していない)を言う。
【0035】
「アルケニル」:語句アルケニルは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する炭化水素部分から1個の水素原子の離脱によって誘導された1価の基を表わし、該アルケニル基は、1以上の官能基で、必要に応じて置換される。置換基としては、下記するどのような置換基、すなわち、安定な化合物の形成につながる以下に記載した置換基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルケニル基として、たとえば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルなどが挙げられる。
【0036】
「アルキニル」:本明細書で使用される語句アルキニルは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する炭化水素部分から1個の水素原子の離脱によって誘導された1価の基を言い、該アルケニル基は、必要に応じて置換される。置換基としては、下記するどのような置換基、すなわち、安定な化合物の形成につながる以下に記載した置換基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的なアルキニル基として、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルなどが挙げられる。
【0037】
ある実施形態では、本発明で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、約1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。また別の実施形態では、本発明で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、約1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、本発明で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、約1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、本発明で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、約1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、本発明で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、約1〜4個の炭素原子を含む。具体的な脂肪族基として、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、アリル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル部分などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、また、1以上の置換基を有してもよい。アルケニル基として、たとえば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルなどが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルキニル基として、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「脂環式」:本明細書で使用される語句脂環式は、脂肪族化合物と環状化合物との特性を組み合わせた化合物を言い、環状またはポリ環状脂肪族炭化水素および架橋されたシクロアルキル化合物が挙げられ、1以上の官能基で必要に応じて置換される。しかしこれらに限定されるものではない。当業者によって認識されるように、本明細書で意図する「脂環式」は、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル部分を含み、1以上の官能基で必要に応じて置換される。しかしこれらに限定されるものではない。具体的な脂環式基として、たとえば、シクロプロピル、−CH−シクロプロピル、シクロブチル、−CH−シクロブチル、シクロペンチル、−CH−シクロペンチル−n、シクロヘキシル、−CH−シクロヘキシル、シクロヘキセニルエチル、シクロヘキサニルエチル、ノルボルニル部分などが上げられるが、これらに限定されない。これらは、また、1以上の置換基を有してもよい。
【0039】
「シクロアルキル」:本明細書で使用される語句シクロアルキルは、特に3〜7個の、好ましくは3〜10個の炭素原子を有する基を言う。適切なシクロアルキルとして、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられ、これらが脂肪族、ヘテロ脂肪族または複素環式部分である場合、必要に応じて置換されるが、これらに限定されない。同じような約束事が他の一般用語「シクロアルケニル」、「シクロアルキニル」などにも適用される。
【0040】
「ヘテロ脂肪族」:本明細書で使用される語句ヘテロ脂肪族は、主鎖中の1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている脂肪族部分を言う。したがって、ヘテロ脂肪族基とは、炭素原子の代わりに、1個以上の、たとえば、酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素原子を含む脂肪族鎖を言う。ヘテロ脂肪族部部分は、分岐状でもあるいは直線状で分岐していないものでもよい。ある実施形態では、ヘテロ脂肪族部分は、1以上の、脂肪族;ヘテロ脂肪族;脂環式;ヘテロ脂環式;芳香族;ヘテロ芳香族;アリール;ヘテロアリール;アルキルアリール;アルキルヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHS0CH;または−GRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール部分である(しかしこれらに限定されない)である)の(ただしこれらに限定されない)の部分による、該へテロ脂肪族部分上の1個以上の水素原子への独立した置換によって置換されている。一般的に適用される置換基の付加的な例示は、本明細書に記載される実施例において示される特定の実施形態に挙げられている。
【0041】
「ヘテロ脂環式」、「ヘテロシクロアルキル」または「複素環式」:本明細書で使用される語句ヘテロ脂環式、ヘテロシクロアルキルまたは複素環式は、ヘテロ脂肪族と環状化合物との特性が組合された化合物を言い、本明細書で定義した1以上の官能基で必要に応じて置換される、モルフォリノ、ピロリジニル、フラニル、チオフラニル、ピロリルなどの、飽和および不飽和モノ−またはポリ環状ヘテロ環が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態では、語句「複素環式」は、非芳香族5−、6−、7−または8−員環またはポリ環状基を言い、1個と3個の間の酸素、イオウおよび窒素から独立して選択されるヘテロ原子を有する6員縮合環であって、(i)各5−員環は、0〜2個の二重結合を有し、各6−員環は0〜2個の二重結合を有し、(ii)前記窒素およびイオウヘテロ原子は酸化されていてもよく、(iii)前記窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよく、(iv)前記複素環式環のどれも縮合してアリールまたはヘテロアリール環を形成してもよいポリ環状環を含む、ビ−またはトリ−環状基が挙げられるが、これに限定されるものではない。ある実施形態では、「ヘテロ脂環式」、「ヘテロシクロアルキル」または「複素環式」は、部分的に不飽和あるいは完全に飽和の3〜10員環のものを言い、これらは3〜8原子の大きさの単環、および芳香族6員環アリールまたは非芳香族環と縮合した芳香族複素環式基を含んでもよいビ−およびトリ−環式環を含む。例示的なヘテロ環として、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルフォリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、およびテトラヒドロフリルが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、本明細書で利用され、使用される「置換されたヘテロシクロアルキルまたはヘテロ環」基は、上記で定義したヘテロシクロアルキルまたはヘテロ環基上の1、2または3個の水素原子への、脂肪族;ヘテロ脂肪族;脂環式;ヘテロ脂環式;芳香族、ヘテロ芳香族;アリール;ヘテロアリール;アルキルアリール;アルキルヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;またはGRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲン、または必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール部分であるが、これらに限定されない)である)(しかしこれらに限定されない)による独立した置換によって置換された基を言う。一般的に適用される置換基の付加的な例示は、本明細書に記載される実施例において示される特定の実施形態に挙げられている。
【0042】
加えて、前記のおよび明細書に記載の脂環式またはヘテロ脂環式部分のどれも、これに縮合するアリールまたはヘテロアリール部分を含んでもよいことは、理解されるであろう。一般的に適用される置換基の更なる例示は、本明細書に記載される実施例において示される特定の実施形態に挙げられている。
【0043】
「芳香族部分」:本明細書で使用される語句芳香族部分は、好ましくは3〜14個の炭素原子を有する、安定な置換されたまたは置換されていない、不飽和モノ−またはポリ環状炭化水素部分であって、芳香族性に関するヒュッケルルールを満足する環を少なくとも1個含む部分を言う。芳香族部分の例として、フェニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェナントリル、およびアントラシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「複素芳香族部分」:本明細書で使用される語句複素芳香族部分は、好ましくは3〜14個の炭素原子を有する、安定な置換されたまたは置換されていない、不飽和モノ−複素環式またはポリ複素環式部分であって、芳香族性に関するヒュッケルルールを満足する環を少なくとも1個含む部分を言う。ヘテロ芳香族部分の例として、ピリジル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ジヒドロキナゾリル、およびテトラヒドロキナゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書に記載の芳香族およびヘテロ芳香族部分は、脂肪族(たとえばアルキル)またはヘテロ脂肪族(たとえばヘテロアルキル)部分を介して結合していてもよいことは理解されるであろう。したがって、前記部分は、また、−(脂肪族)芳香族、−(ヘテロ脂肪族)芳香族、−(脂肪族)ヘテロ芳香族、−(ヘテロ脂肪族)ヘテロ芳香族、−(アルキル)芳香族、−(ヘテロアルキル)芳香族、−(アルキル)ヘテロ芳香族、および−(ヘテロアルキル)ヘテロ芳香族部分も含む。したがって、本明細書で使用される句「芳香族またはヘテロ芳香族部分」と「芳香族、ヘテロ芳香族、−(アルキル)芳香族、−(ヘテロアルキル)芳香族、−(ヘテロアルキル)ヘテロ芳香族、および−(ヘテロアルキル)ヘテロ芳香族」は、相互に交換可能である。置換基は、安定な化合物の形成になる、先に記載した置換基、すなわち本明細書で記載した脂肪族部分または他の部分で挙げた置換基のどのようなものも含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
「アリール」:本明細書で使用される語句アリールは、脂肪族(たとえばアルキル)またはヘテロ脂肪族(たとえばヘテロアルキル)部分を介して結合するものを除いた前記芳香族部分を言う。本発明のある実施形態では、「アリール」は、芳香族性に関するヒュッケルルールを満足する環を1または2個含む、モノ−またはビ環状炭素環を言い、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
「ヘテロアリール」:本明細書で使用される語句ヘテロアリールは、脂肪族(たとえばアルキル)またはヘテロ脂肪族(たとえばヘテロアルキル)部分を介して結合するものを除いた前記ヘテロ芳香族部分を言う。本発明のある実施形態では、本明細書で使用される語句「ヘテロアリール」は、1個の環原子がS、OおよびNから選択される約5個から約10個の環原子を有する環状 不飽和基であって;0、1、または2個の環原子は、S、OおよびNから独立して選択される付加的なヘテロ原子であって;残りの環原子は炭素である基であって、該基は、環原子を介して分子の残りと結合している、たとえば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニルなどが挙げられる。
【0048】
アリールおよびヘテロアリール部分の置換基として、安定な化合物の形成になる、先に記載した置換基、すなわち本明細書で記載した脂肪族部分または他の部分で挙げた置換基のどのようなものも含まれるが、これらに限定されない。たとえば、アリールおよびヘテロアリール基(ビ環状アリール基を含む)は、置換されていないまたは置換されることができ、該置換として、1以上の下記の部分による、前記環上の1、2または3個の水素原子への独立した置換が含まれる。置換基として、脂肪族;ヘテロ脂肪族;脂環式;ヘテロ脂環式;芳香族、ヘテロ芳香族;アリール;ヘテロアリール;アルキルアリール;アルキルヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;またはGRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲン、または必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール部分であるが、これらに限定されない)である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般的に適用される置換基の付加的な例示は、本明細書に記載される実施例において示される特定の実施形態に挙げられている。
【0049】
「アルコキシ」または「アルキルオキシ」:本明細書で使用される語句アルコキシ(またはアルキルオキシ)は、先に提示したアルキル基であって、親分子の部分に酸素原子を介して(「アルコキシ」)結合するものを言う。ある実施形態では、アルキル基は、約1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。ある他の実施形態では、アルキル基は、約1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、アルキル基は1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、アルキル基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、アルキル基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。アルコキシ基の例示として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、ネオペントキシおよびn−ヘキソキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
「アミン」:語句アミンは、構造:−N(R)(ここで、各Rは、独立して水素、または脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族部分であり、またR基はいっしょになってヘテロ環部分を形成してもよい)を有する基を言う。ある例示では、アミン基は、たとえば、−HN(R)または−N(R)のように帯電(プロトン化)、または四級化してもよい。
【0051】
「アルキルアミノ」:本明細書で使用される語句アルキルアミノは、−NHR’(ここで、R’は、本明細書で定義するアルキルである)の構造を持つ基を言う。語句「アミノアルキル」は、NHR’−(ここでR’は本明細書で定義するアルキルである)の構造を持つ基を言う。ある実施形態では、アルキル基は、約1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。ある他の実施形態では、アルキル基は約1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、本発明で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、約1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施形態では、アルキル基は約1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、アルキル基は約1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。アルキルアミノの例として、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
「カルボン酸」:本明細書で使用される語句カルボン酸は、式−COHの基を含む化合物を言う。
【0053】
「ハロ、ハライドおよびハロゲン」:本明細書で使用される語句ハロ、ハライドおよびハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される原子を言う。
【0054】
「メチロール」:本明細書で使用される語句メチロールは、構造−CHOHのアルコール基を言う。
【0055】
「ヒドロキシアルキル」:本明細書で使用される語句ヒドロキシアルキルは、少なくとも1個のOH基を有する、先に定義したアルキル基を言う。
【0056】
「メルカプトアルキル」:本明細書で使用される語句メルカプトアルキルは、少なくとも1つのSHを有する、先に定義したアルキル基を言う。
【0057】
「アシル」:本明細書で使用される語句アシルは、式C=Oのカルボニル基を含む基を言う。アシル基の例として、アシルハライド、無水物、チオエステル、アミドおよびカルボキシルエステルが挙げられる。
【0058】
「炭化水素」:本明細書で使用される語句炭化水素は、水素と炭素とを含むどのような化学的基をも言う。炭化水素は置換されていても非置換であってもよい。炭化水素は、不飽和、飽和、分岐状、分岐していない、環状、ポリ環状、または複素環式であってもよい。具体的な炭化水素として、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、アリル、ビニル、n−ブチル、tert−ブチル、エチニル、シクロヘキシル、メトキシ、ジエチルアミノなどが挙げられる。当業者に知られているように、全ての価がどのような置換も作れるよう満足されていなければならない。
【0059】
「置換された」:本明細書で使用される語句置換されたは、「任意に」という語が前についていてもいなくても、所定の構造における水素ラジカルの特定の置換基による置換を言う。いかなる所定の構造における2以上の位置が特定の基から選択される2以上の置換基で置換される場合、該置換基はどの位置であっても、同じでもまた異なっていてもよい。本明細書で使用される語句「置換された」は、有機化合物の許容されうる置換基全てを含むものである。広い態様において、該許容しうる置換基は、有機化合物の非環状および環状、分岐状および分岐していない、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基および/またはいかなる本明細書で記載される有機化合物の許容されうる置換基であってヘテロ原子の価を満足する置換基を有してもよい。置換基の例示として、脂肪族;ヘテロ脂肪族;脂環式;ヘテロ脂環式;芳香族;ヘテロ芳香族;アリール;ヘテロアリール;アルキルアリール;アルキルヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−NO;−CN;−CF;−CHCF;−CHCl;−CHOH;−CHCHOH;−CHNH;−CHSOCH;またはGRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲン、または必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアルキルヘテロアリール部分であるが、これらに限定されない)である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般的に適用される置換基の付加的な例示は、本明細書に記載される実施例において示される特定の実施形態に挙げられている。
【0060】
「スクシンアミドリンカー」または「スクシンアミド」:本明細書で使用される語句置換されたは、「スクシンアミドリンカー」または「スクシンアミド」は、他に規定されない限り、以下の構造を有するリンカーを表す:
【0061】
【化19】

【0062】
(ここで、qは0〜4の整数であり;Rは、水素または窒素保護基であり;各Rは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、NO、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分、または−GRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−、または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリール部分である)である)。ある実施形態では、
【0063】
【化20】

【0064】
は、修飾物質Mの結合部位を表し、これはアミド結合によってスクシンアミド部分に直接または間接的に結合する。ある実施形態では、
【0065】
【化21】

【0066】
はキャリアの結合部位を表し、これはエステル結合によってスクシンアミド部分に直接または間接的にリンクする。
【0067】
「スクシンイミド」:本明細書で使用される語句スクシンイミドは、他に規定されない限り、以下の構造を有する部分を表す:
【0068】
【化22】

【0069】
(ここで、qは0〜4の整数であり;各Rは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、NO、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分、または−GRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−、または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリール部分である)である)。
【0070】
以下に本願で使用されるより一般的な語句を挙げる。
【0071】
「動物」:本明細書で使用される語句動物は、たとえば、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、虫類および単細胞など、どのような発展段階のものも含む、ヒトおよび非ヒト動物を言う。細胞培養および生体内組織サンプルは、複数の動物であると考えられる。非ヒト動物は、哺乳類(たとえば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)であることが好ましい。動物は、遺伝子組換え動物であってもヒトクローンであってもよい。語句「被験体」は動物を包含する。
【0072】
「と結びつく」:本明細書で2つの構成要素が互いに「と結びつく」と記載する場合、それらは、直接的または間接的共有結合相互作用によってリンクしていることを言う。結合は共有結合が好ましい。望ましい非共有結合相互作用として、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁気的相互作用、静電的相互作用、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0073】
「有効量」:一般的に活性な剤または薬物送達装置に関して言う場合、語句「有効量」は、所望の生物学的反応を発現させるのに必要な量を言う。当業者には認められているように、剤または装置の有効量は、所望の生物学的終点、送達すべき剤、封入しているマトリックスの組成、標的体内組織などの因子に依って様々である。たとえば、各個を免疫化するために、送達すべき抗原を含む微粒子の有効量は、投与された抗原を持つ生物体の感染を阻止するのに充分な免疫応答を得る結果となる量である。
【0074】
「直接結合」:本明細書で使用される語句直接結合は、他への1構成要素の共有結合(たとえば、スクシンアミドリンカーに結合する修飾物質)を言う場合、2つの構成要素が共有結合を介して結合していることを意味する。たとえば、本明細書では、スクシンアミドリンカーに結合する修飾物質と記載することによって、スクシンアミドリンカーへの結合点は、アミド結合であることを表す。適切な修飾物質としては、適切なコハク酸リンカーのカルボン酸基と反応する時、アミド結合を形成する、アミン官能基(またはその保護された形体)を含むいかなる修飾物質であってもよい。
【0075】
「間接的結合」:本明細書で使用される語句間接的結合は、他への1構成要素の共有結合(たとえば、スクシンアミドリンカーに結合する修飾物質)を言う場合、2つの構成要素があるリンキング部分を介して共有結合している(直接共有結合ではなく)ことを意味する。たとえば、本明細書では、スクシンアミドリンカーに結合する修飾物質と記載することによって、スクシンアミドリンカーへの結合点は、アミド結合であることを表す。適切な修飾物質としては、官能基を含む修飾物質であればどのようなものでもよく、それは、アミン基またはその保護形を含む化学的部分で「キャップ」されていてもよく、アミンでキャップされた修飾物質は、適切なコハク酸リンカーのカルボン酸基と反応すれば、アミド結合を形成する。
【0076】
「天然アミノアシル残基」:本明細書で使用される語句天然アミノアシル残基は、一般的などのようなもの、天然起源のタンパク質、すなわちグリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、システイン(Cys)およびメチオニン(Met)で見出される天然起源のL−アミノ酸を言う。
【0077】
「非天然アミノアシル残基」:本明細書で使用される語句非天然アミノアシル残基は天然アミノ酸ではないいかなるアミノ酸も言う。これには、たとえば、α−、β−、ω−、D−、L−アミノアシル残基および下記一般式の化合物が含まれる。
【0078】
【化23】

【0079】
(ここで、側鎖Rは、天然に存在するアミノ酸側鎖以外の鎖である)。
【0080】
「アミノアシル」:さらに一般的に、本明細書で使用される語句アミノアシルは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸を包含する。
【0081】
「PHF」は、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルムアルデヒド)を言う。
【0082】
「CPT」は、カンプトテシンを言う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
(本発明の特定の好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の好ましい実施形態をさらに詳しく説明し、請求の範囲で指摘する。本発明の特定の実施形態は説明のために示されるものであり、発明の限定のためにあるものではないことは理解されるであろう。本発明の本質的な特徴は、本発明の精神および範囲を逸脱しなければ、種々の実施形態で使用されてよい。
【0084】
一態様において、生物医学的適用に用いられる、非生体付着性、全生分解性、可溶性高分子抱合体を取り扱う必要性のために、本発明は、新規なキャリア抱合体を提供し、これによって、キャリアが、必要に応じて置換されるモノスクシンアミド含有リンクを介して、低/高(生)分子または他の有機(無機)部分(すなわち修飾物質)の共有結合で、化学的に修飾される。
【0085】
したがって、ある実施形態では、本発明は、1以上の以下の構造を有する部分で置換されるキャリアを含む抱合体であって、該構造は、
【0086】
【化24】

【0087】
(ここで、各Mは、独立して、修飾物質であって、
【0088】
【化24A】

【0089】
は、リンカーLへのMの直接、間接的結合を表し、
各Lは、独立して、必要に応じて置換されるスクシンアミド含有リンカーである)で表され、これによって、前記修飾物質Mは、アミド結合によって、直接的あるいは間接的にスクシンアミドリンカーに結合し、かつ前記キャリアは、エステル結合によって、直接的あるいは間接的に各スクシンアミドリンカーに結合するキャリアを含む抱合体を提供する。
【0090】
ある実施形態では、各Lは、独立して、構造:
【0091】
【化25】

【0092】
(ここで、
【0093】
【化26】

【0094】
は、修飾物質Mの結合部位を表し;
【0095】
【化27】

【0096】
は、キャリアの結合部位を表し;qは、0から4の整数であり;Rは、水素、−C(=O)R1A、−C(=O)OR1A、−SR1A、SO1A、または脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分(ここで、各R1Aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリールである)であり;各Rは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、NO、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分、または−GRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−、または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリール部分である)である)である)で表される部分を含む。
【0097】
ある実施形態では、Rは、水素またはアルキル、アルケニル、−C(=O)R1A、−C(=O)OR1A、−SR1A、SO1A;(ここで、各R1Aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリール、ヘテロアリール、C(=O)R1B、−GR1G(ここで、Gは、−O−、−S−、−NR1G(各R1BおよびR1Gは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリールである)である)である。ある実施形態では、Rは、水素である。
【0098】
ある実施形態では、各Rは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリール、ヘテロアリール、−C(=O)R2Aまたは−ZR2A(ここで、Zは、−O−、−S−、−NR2B(ここで、各R2AおよびR2Bは、独立して、水素、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール部分である)である)である。ある実施形態では、各Rは水素である。ある実施形態では、1以上のRは、C1−10アルキルである。ある実施形態では、1以上のRは低級アルキルである。ある実施形態では、1以上のRは疎水性基である。ある実施形態では、1以上のRは、親水性基である。ある実施形態では、1以上のRは、アニオン性基である。ある実施形態では、1以上のRはカチオン性基である。ある実施形態では、1以上のRは、レセプターリガンドである。
【0099】
ある実施形態では、本発明の抱合体は、以下の一般構造を有する:
【0100】
【化28】

【0101】
(1)キャリア
(ここで、Rおよびqは先に定義したとおりであり、
【0102】
【化28A】

【0103】
はスクシンアミドリンカーへのMの直接的または間接的結合を表し;tは、キャリアに抱合する修飾物質の数を指定する整数である。)
そのような抱合体は、下記スキーム1に示されるように、修飾物質部分(M)の二段階放出を特徴としている。
【0104】
(スキーム1)
【0105】
【化29】

【0106】
二段階放出は、エステル結合の開裂(キャリア−OHの放出を伴う)および同時にアミド側でM−スクシンイミドの形成によって進み、次いで更にM−スクシンイミド部分が加水分解(Mの放出を伴う)される。放出過程で、フェーズ1および/またはフェーズ2で副生物が形成されてもよい。フェーズ1で形成されてもよい副生物として、たとえば、
【0107】
【化30】

【0108】
(ここで、
【0109】
【化30A】

【0110】
はMの直接的または間接的結合を表す)が挙げられる。同様に、フェーズ1で形成されてもよい副生物として、
【0111】
【化31】

【0112】
(ここで、
【0113】
【化31A】

【0114】
は、水素(直接結合の場合)または第二リンカー(間接的結合の場合)である。)
一態様では、本発明は、1以上の薬物部分(たとえば、MWが10kDa以下)が、必要に応じて置換されるスクシンアミドリンカーを介して、共有結合でキャリアに直接または間接的に結合する薬物−キャリア抱合体も包含する。
【0115】
上記したように、このようなシステムは、下記スキーム2で示すように、薬物部分の二段階放出を特徴としている。
【0116】
(スキーム2)
【0117】
【化32】

【0118】
上記したように、この過程においても副生物が形成されてよい。
【0119】
二段階薬物放出を起こさなかった、キャリア側にアミド基を有するスクシンアミドエステルリンカーを使用する試みがなされている。本発明では、スクシンアミドエステルを、反対側のカルボキシルがアミン含有修飾物質(たとえば薬物または薬物誘導体)を持つアミド結合を形成しつつ、エステルがキャリア側で形成されるように方向づける。
【0120】
ある実施形態では、本発明の二段階薬物放出システムを薬物分子(すなわち修飾物質)に適用して、新規な薬物動態を持ち毒性が軽減された、可溶性、標的移行可能性マクロ分子生成法の工学的技術を可能にする。ある実施形態では、本発明のシステムは、肝ミクロソームP450錯体による前代謝を必要とすることなく、新油性プロドラグ(たとえば安定化されたラクトン環を有するCPTプロドラグ)を放出し、次いで、活性な薬剤物質を局所的(細胞内および細胞外で)に放出する、親水性薬物−キャリア抱合体の組み立ても含む。
【0121】
本発明の二段階放出システムを薬物に適用した場合の潜在的利点として次の点が挙げられる。(1)たとえば静脈内に投与することができる、水溶性薬物−キャリア抱合体の製造の能力。(2)中間プロドラグ(III)を肝臓内でよりむしろ「部位上」で活性化するため、局所投与および標的化を可能にする[出願人は、すでに薬物としてCPTを用いたこの実施形態を例示している。たとえばイリノテカンのような他のCPTプロドラグと違って、該中間CPTプロドラグは、確かに「部位上」で活性化させる]。(3)本発明の方法は、安定化された形(薬物−スクシンイミド中間体の形)でのある薬物の放出(CPTのケースのように、ラクトン−安定化された形での放出)を可能にし、これは、体内組織におけるプロドラグ体積および尿への再分布および移行の速度を低くすることを保障する。
【0122】
本発明は、現在の薬物放出システムと少なくとも以下の点において相違する。
(1)業界で公知の薬物放出システムでは、薬物は一般的に1段階で放出されることが意図されている。これとは対照的に、本発明は、(i)スクシンイミド化された形または薬物分子(プロドラグ)、またはスクシンイミド化された形とスクシンアミド化された形の組合せの放出、および(ii)スクシンイミド化されたまたはスクシンアミド化された薬物分子からの薬物放出を含む。
(2)スクシンアミド化されたリンカー基を薬物分子とキャリアとの間に含む、業界で知られた低分子放出システムにおいては、薬物はエステル基を介して前記リンカーと結合する。したがって、リンカーをキャリアに結合したままで、薬物は1段階で放出される。
【0123】
本発明の実施で使用してもよい修飾物質のサイズ(分子量)に考慮が払われるべきであるということをさらに理解すべきである。たとえば、実施例11でさらに詳しく説明するが、スクシンイミド化されたプロドラグを放出することになる環化−脱離反応は、非環状中間体構造へのスクシンアミドエステルの折り曲げ(たとえば、スキーム1および2参照)、それに続いて起こる、エステル炭素上での分子内ヌクレオシド求核性攻撃を含む。どのような特定の理論にも固執しないが、嵩高い修飾物質(たとえば、タンパク質)からの立体障害は、そのような折り曲げを妨げるかもしれない。したがって、それは薬物放出に関する著しい干渉となり、そのような修飾物質を造ることは二段階薬物放出に適切ではない。ある実施形態で、二段階薬物放出の適切な修飾物質として分子量が10kDa、最も好ましくは1.5kDa未満であると本発明では説明される。本発明では、置換されていないまたは置換されたコハク酸誘導体も利用することができ、また、抗腫瘍薬、抗感染薬および麻酔薬を含む(ただしこれらに限定されない)種々の薬剤物質と組み合わせて使用することもできる。
【0124】
(キャリア)
ある実施形態では、キャリアは、モノアミノスクシンアミドリンカーによって、1以上の修飾物質(たとえば、薬物分子)に、共有結合で結合できる、どのような低分子または高分子、生体高分子、粒子、ゲルまたは他の物質または材料でもよい。ある実施形態では、本発明の実施に適切なキャリアは、スクシニル化可能な官能基を1以上含む、どのような低分子または高分子、生体高分子、粒子、ゲルまたは他の物質または材料でもよい。たとえば、適切なキャリアは、適切な条件下で、
【0125】
【化33】

【0126】
の構造を有する、必要に応じて置換されるコハク酸無水物と反応して以下の構造を持つスクシニル化キャリアを形成しうる官能基を1以上含む:
【0127】
【化34】

【0128】
(ここで、sはキャリア上のスクシニル化の数を指定する整数であり;qは0〜4の整数であり;各Rは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、NO、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分、または−GRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−、または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリール部分である)である。
【0129】
ある他の実施形態では、適切なキャリアは、適切な条件下で、必要に応じて置換される無水コハク酸(前記)、コハク酸
【0130】
【化35】

【0131】
、スクシニルジハロ無水物
【0132】
【化36】

【0133】
、コハク酸エステル
【0134】
【化37】

【0135】
、またはスクシニル化に適切な他の試薬と反応することのできる官能基を1以上含んでいる。
【0136】
ある他の実施形態では、適切なキャリアは、適切な条件下で、
【0137】
【化38】

【0138】
(ここで、qおよびRは先に定義した通り;Mは修飾物質であり、
【0139】
【化38A】

【0140】
はスクシニル部分へのMの直接的または間接的結合を表し;Rは、水素、−C(=O)R1A、−C(=O)OR1A、−SR1A、SO1A、または脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分(ここで、各R1Aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリールである)である)の構造を有する、必要に応じて置換されるコハク酸と反応し、
【0141】
【化39】

【0142】
(ここで、tは、キャリアに抱合する修飾物質部分の数を指定する整数である)を形成することのできる官能基を1以上含んでいる。
【0143】
ある実施形態では、キャリアが高分子の場合、約2〜約25%の、さらに好ましくは約5〜約20%、さらに好ましくは約5〜約18%、さらに好ましくは約5〜約15%、さらに好ましくは約6〜約15%、さらに好ましくは約6〜約14%、さらに好ましくは約7〜約13%、さらに好ましくは約7〜約12%、さらに好ましくは約8〜約12%、さらに好ましくは約9〜約12%、さらに好ましくは約10〜約12%、さらに好ましくは約9〜約11%、さらに好ましくは約10〜約11%のモノマーが修飾物質Mを含む。
【0144】
ある例示的な実施形態では、本発明の抱合体は、生物医学的適用、たとえば、遺伝子、薬物送達および体内組織エンジニアリングにおける用途を見出し、キャリアは生体適合性であり生分解性である。ある実施形態では、キャリアは、マクロ分子、分子マトリックス(たとえば、ゲルまたは個体)、または界面である。ある実施形態では、キャリアは、マクロ分子、可溶性高分子、ナノ粒子、ゲル、リポソーム、ミセル、縫合糸、移植片などである。ある実施形態では、語句「可溶性高分子」は、ポリアルポリアル(たとえば、親水性ポリアセタールまたはポリケタール)のような生分解性、生体適合性高分子を包含する。ある他の実施形態では、キャリアは完全な合成、半合成または天然起源の高分子である。ある他の実施形態では、キャリアは親水性である。
【0145】
ある例示的な実施形態では、本発明で使用されるキャリアは、主鎖内に位置する各モノマー単位中に加水分解性結合を少なくとも1つ含む生分解性、生体適合性ポリアルである。これは、分解過程(モノマー単位の加水分解/開裂を介して)が、高分子抱合体のモノマー成分への断片化(すなわち分解)に帰結し、本発明の高分子抱合体に生分解性特性を与えることを保障する。生分解性、生体適合性高分子抱合体の特性(たとえば、溶解性、バイオ接着性および親水性)は、引き続き、付加的な親水性または疎水性基の置換によって変性することができる。本発明を実施するために適切な生分解性生体適合性高分子の例示としては、特に、米国特許第5,811,510号、5,863,990号および5,958,398号;米国仮出願No.60/348,333;米国実用新案出願No.10/501,565;欧州特許No.0820473およびNo.03707375.6;国際特許出願PCT/US03/01017およびPCT/US03/22584に見出すことができる。上記で挙げられた文献の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。このタイプの高分子優位性、製造および用途に関する指針は、前記文献に見出される。ある実施形態では、本発明は、前記特許文献、および米国特許No.5,582,172号、米国特許出願No.60/147,919および09/634,320との併用が特に有用であることが見込まれる。前に挙げられた特許文献はそれぞれその全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
実施例で説明するように、我々は、親水性、加水分解性で、モノスクシンアミド含有リンクを介して、共有結合で高分子キャリアに結合する薬物分子(たとえば、カンプトテシン(すなわちCPT))を含む生分解性、生体適合性抱合体を製造するのに成功した。したがって、ある例示的な実施形態では、本発明の実施に適切なキャリアは、主鎖内に位置する各モノマー単位に少なくとも1つのアセタール/ケタール酸素原子を有するポリアルである。先に検討したように、これは、分解過程(高分子アセタール/ケタール基の加水分解/開裂を介して)は、ポリアル抱合体の断片化による低分子量成分化(すなわち分解)に帰結することを保障する。したがって、本発明の新規態様は、一部、主鎖中にアセタール/ケタール基を含む親水性キャリアに、スクシンアミド含有リンクを介して共有結合する修飾物質を1以上含有する抱合体の構造および特性に関する。
【0147】
ある実施形態では、本発明の高分子抱合体の製造に使用される、生分解性、生体適合性高分子キャリアは、天然起源の多糖類、グリコ多糖類、ポリグリコシド、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエーテルおよびポリエステルの合成高分子、これらの酸化、脚色、修飾、架橋および抱合体形成製品である。
【0148】
ある他の実施形態では、キャリアは、炭水化物、グリコ多糖類、糖脂質、糖抱合体、ポリアセタール類、ポリケタール類およびこれらの誘導体からなる群より選択される親水性、生分解性高分子である。
【0149】
ある例示的な実施形態では、キャリアは、セルロース、アミロース、デキストラン、レバン、フコイダン、カラギナン、イヌリン、ペクチン、アミロペクチン、グリコーゲンおよびリセナン(lixenan)からなる群より選択される、天然起源の直鎖および分岐状の生分解性、生体適合性ホモ多糖類である。
【0150】
ある他の例示的な実施形態では、キャリアは、アガロース、ハイルロナン(hyluronan)、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、アルギニンサンおよびヘパリンからなる群より選択される、天然起源の直鎖および分岐状の生分解性、生体適合性ヘテロ多糖類である。
【0151】
さらに他の例示的な実施形態では、キャリアは、ポリアクリレート、ポリビニル高分子、ポリエステル類、ポリオルソエステル類、ポリアミド類、ポリペプチドおよびこれらの誘導体からなる群より選択される、親水性高分子である。
【0152】
ある実施形態では、キャリアは、1,2−、1,4−、1,6−および2,6−ピラノシドまたは1,2−、1,5−、1,6−フラノシドの環状ビシナルジオールの選択的酸化によって、または1以上の修飾物質の抱合の前に、多糖類を含むラテラル6−ヒドロキシおよび5,6−ジオールの酸化によって、活性化された多糖類を含む。
【0153】
一実施形態では、本発明のキャリアは、下記化学構造:
(−O−CH−CHR−O−CHR−)
(ここで、RおよびRは、独立して、水素、ヒドロキシル、カルボニル、カルボニル含有置換基、1以上のヘテロ原子または保護された親水性官能基を含む生体適合性有機部分であり;nは1〜5000の整数である)で表されるポリアセタール部分を0.1%〜100%含む、活性化された親水性、生分解性、生体適合性高分子キャリアを含む。
【0154】
さらに他の例示的な実施形態では、キャリアは、生分解性、生体適合性ポリアセタールであって、ポリアセタール繰返し構造単位の少なくとも一部が下記の化学的構造を有するポリアセタールを含む:
【0155】
【化40】

【0156】
(ここで、nのついたかっこで囲まれた各構造に関して、RおよびRの1つは水素で、もう一方は生体適合性基であり、該基はCに共有結合する炭素原子を含み;Rは、Cに共有結合する炭素原子を含み;nは整数であり;各R、R、RおよびRは、生体適合性基であり、該基は、独立して、水素または有機部分であり;各かっこで囲まれた構造nに関し、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つはエステル結合によってスクシンアミドとカップリングするのに適切な官能基を有する。)ある実施形態では、官能基は、ヒドロキシルである。
【0157】
さらに例示的な実施形態では、キャリアは、生分解性、生体適合性ポリケタールであって、ポリアセタール繰返し構造単位の少なくとも一部が下記の化学的構造を有するポリケタールを含む:
【0158】
【化41】

【0159】
(ここで、RおよびRのそれぞれは、生体適合性基であり、該基はCに共有結合する炭素原子を含み;Rは、Cに共有結合する炭素原子を含み;nは整数であり;各R、R、R、Rは、生体適合性基であり、該基は、独立して、水素または有機部分であり;各かっこで囲まれた構造nに関し、R、R、R、R、R、およびRの少なくとも1つはエステル結合を介してスクシンアミドとカップリングするのに適切な官能基を含む。)ある実施形態では、官能基は、ヒドロキシルである。
【0160】
適切有機部分の例として、約1個と12個との間の範囲の原子鎖を持つ脂肪族基、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アミン、カルボキシル、アミド、カルボキシルエステル、チオエステル、アルデヒド、ニトリル、イソニトリル、ニトロソ、ヒドロキシルアミン、メルカプトアルキル、ヘテロ環、カーバメイト、カルボン酸およびその塩、スルホン酸およびその塩、スルホン酸エステル、リン酸およびその塩、リン酸エステル、ポリグリコールエーテル、ポリアミン、カルボキシレート、ポリエステル、ポリチオエステル、薬学的に有用な基、生物学的に活性な物質または診断ラベルが挙げられる。
【0161】
ある実施形態では、先に直接記載したポリアセタールおよびポリケタールにおける、大かっこnで囲ったそれぞれに関して、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが、高分子の親水性を増加させる、スクシンアミドリンカーへの共有結合に適用した官能基を含む。
【0162】
ある実施形態では、先に直接記載したポリアセタールおよびポリケタールにおける、大かっこnで囲ったそれぞれに関して、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが、リンカーLへの共有結合に適用したカルボニル基を含む。ある例示的な実施形態では、先に直接記載したポリアセタールおよびポリケタールであって、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つがヒドロキシル基を含むものは、1以上の、以下の構造を有する部分と抱合する:
【0163】
【化42】

【0164】
(ここで、qおよびRは、一般的に前に定義し、本明細書のクラスおよびサブクラスで定義した通りである。)
さらに他の実施形態では、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つがキラル部分を含む。
【0165】
ある実施形態では、本発明の生分解性、生体適合性キャリアは、架橋することができる。ポリアルとの結合における一般的な架橋リンカーおよび架橋方法の指針は、たとえば、米国仮出願No.60/348,333;米国実用新案出願No.10/501,565および国際出願No.PCT/US03/01017中に見出すことができる。
【0166】
ある例示的な実施形態では、キャリアは、エピブロモヒドリンまたはエピクロロヒドリンと架橋した、生分解性で生体適合性のポリアルである。ある実施形態では、該エピブロモヒドリンまたはエピクロロヒドリンの量は、架橋した生分解性、生体適合性ポリアルの約1重量%と約25重量%の間の量である。
【0167】
一実施形態では、本発明の実施に適切な、生分解性で生体適合性のポリアルは約0.5kDaと約1500kDaとの間の分子量を有する。本発明の好ましい実施形態では、生分解性、生体適合性ポリアルは、約1kDaと約1000kDaとの間の分子量を有する。
【0168】
ある実施形態では、高分子キャリアは、一端または両端が修飾(すなわち1以上の修飾物質と抱合)されている。たとえば、キャリアがポリケタールの場合、該キャリアは、構造:
【0169】
【化43】

【0170】
(ここで、nは整数であり、R’、R”およびR”’は、修飾物質でもよい)を有してもよい。たとえば、R’は、タンパク質または他の生体高分子との抱合のために、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはマレイミド部分を含むことができ;R”およびR”’は、特にリポソーム修飾のために、それぞれ脂質および抗体のような標的特異部分を含むことができる。)
ある他の実施形態では、キャリアは、一末端および1以上の非末端位置、または両端および1以上の非末端位置で置換されることができる。
【0171】
ある実施形態では、キャリアは、直鎖マクロ分子、分岐状マクロ分子、球状マクロ分子グラフト共重合体、櫛状高分子、ナノ粒子または脂質系キャリアである。ある例示的な実施形態では、脂質系キャリアはリポソームである。
【0172】
ある実施形態では、キャリアは以下に示す構造を持つPHFである:
【0173】
【化44】

【0174】

【0175】
(修飾物質)
ある実施形態では、本発明による修飾物質として、いくつか名前を挙げると、生体高分子、低分子、有機または無機分子、治療剤、微粒子、薬学的に有用な基または構成要素、マクロ分子、診断ラベル、キレート剤、挿入剤、親水性部分、分散剤、電荷変性剤、粘度変性剤、界面活性剤、凝固剤および凝集剤が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、修飾物質は、化学療法部分である。ある実施形態では、修飾物質は、第二リンカーに共有結合で結合していてもよい、カンプトテシン(CPT)である。ある実施形態では、修飾物質は、第二リンカーに共有結合で結合していてもよい、タキソールである。ある実施形態では、修飾物質は、第二リンカーに共有結合で結合していてもよい、以下の構造を持つイルジンである:
【0176】
【化45】

【0177】
生体高分子の例として、酵素、レセプター、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、成長因子および化学走化性因子のような細胞応答修飾物質、抗体、ワクチン、ハプテン、毒素、インターフェロン、リボザイム、抗センス剤、プラスミド、DNAおよびRNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
低分子の例として、ビタミン、抗AIDS物質、抗癌物質、放射性核物質、抗生物質、免疫抑制剤、抗ウイルス物質、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、睡眠薬、抗ヒスタミン、潤滑剤、トランキライザー、抗けいれん薬、筋弛緩剤および抗パーキンソン病物質のような薬物;チャンネル遮断薬、縮瞳薬および抗コリン作用薬を含む抗痙性剤および筋肉収縮剤;抗緑内障化合物、抗寄生虫および/または抗原虫化合物、細胞増殖阻害剤および抗癒着分子を含む細胞−細胞外マトリックス相互作用の調節因子、血管拡張剤、DNA、RNAまたはタンパク質合成の抑制剤、降圧剤、鎮痛剤、解熱剤、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症剤、抗血管形成因子、分泌抑制因子、抗凝血剤および/または抗血栓剤、局所麻酔剤、眼病薬、プロスタグランジン、抗うつ剤、抗精神病物質、嘔吐抑制剤および造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
ある実施形態では、修飾物質は、分子量が好ましくは≦約10kDa、さらに好ましくは≦約9kDa、さらに好ましくは≦約8kDa、さらに好ましくは≦約7kDa、さらに好ましくは≦約6kDa、さらに好ましくは≦約5kDa、さらに好ましくは≦約4kDa、さらに好ましくは≦約3kDa、さらに好ましくは≦約1.5kDaの低分子である。
【0180】
適切な、薬学的に有用な基または構成要素の例示として、親水性/疎水性修飾物質、薬物動態学的修飾物質、生物学的に活性な修飾物質および検出可能な修飾物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
診断ラベルの例示として、γシンチグラフィーおよびPET用の診断的放射性医薬品または放射性アイソトープ、磁気共鳴画像法(MRI)用造影剤(たとえば、常磁性原始および超常磁性ナノ結晶)、CT検査法用造影剤、X線画像検査法用造影剤、超音波診断的方法用剤中性子活性化剤、およびX線を超音波、電波およびマイクロ波を反射、散乱またはこれらに作用することのできる部分、種々の光学処置における蛍光体が挙げられるが、これらに限定されない。診断的放射性医薬品としては、γ−放出放射性核物質、たとえば、インジウム111、テクネチウム99mおよびヨウ素131などが挙げられる。MRI(磁気共鳴画像法)用造影剤としては、磁性化合物、たとえば、常磁性イオン、鉄、マンガン、ガドリニウム、ランタン系、有機常磁性部分、および超常磁性、強常磁性および反強常磁性化合物、たとえば酸化鉄コロイド、フェライトコロイドなどが挙げられる。CT検査法および他のX線系画像検査法用の造影剤としては、X線を吸収する化合物、たとえば、ヨウ素、バリウムなどが挙げられる。超音波系方法用の造影剤としては、超音波を吸収、反射、および散乱する化合物、たとえば、乳剤、結晶、気泡などが挙げられる。さらに他の例示として、中性子活性化に有用な物質、たとえばホウ素およびガドリニウムが挙げられる。反射、屈折、散乱、その他、X線、超音波、電波、マイクロ波および診断的処置に有用なほかの放射線に作用することのできるラベルも使用することができる。蛍光性ラベルは、写真撮影のために使用することもできる。ある実施形態では、修飾物質は、常磁性イオンまたは基を含む。
【0182】
ある実施形態では、修飾物質は、化学的に修飾され、アミド結合の形成によって、必要に応じて置換されるコハク酸との共有結合に適切な官能基(すなわちアミン基)を含んでもよく、該コハク酸は、エステル結合の形成によって、キャリアと抱合している。
抱合体
本発明の抱合体は、Mを1以上含み、該Mは修飾物質であって、1以上のMは同一または相違してもよい。ある実施形態では、1以上のMは生体適合性部分である。ある実施形態では、1以上のMは親水性部分である。ある実施形態では、1以上のMは薬物分子である。ある実施形態では、1以上のMは化学療法部分である。ある実施形態では、1以上のMはカンプトテシン部分である。
【0183】
ある他の実施形態では、1以上のMは、直接または第二リンカーを介して、スクシンアミドリンカーに結合する。ある実施形態では、該第二リンカーは、アミノアシル残基であり、前記抱合体は以下の一般構造を有する:
【0184】
【化46】

【0185】
(ここで、pは1〜12の整数であり;tは、キャリアに抱合する修飾物質の数を指定する整数であり;各Rは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、N0、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分、または−GRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−、または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2、RG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリール部分である)である。)
ある実施形態において、第二リンカーは、α−アミノアシル残基であり、抱合体は、以下の一般構造を有する:
【0186】
【化47】

【0187】
(ここで、tは、キャリアに抱合する修飾物質の数を指定する整数であり;Rは天然または非天然アミノ酸側鎖を示す。)
先により一般的に説明したように、ある実施形態では、キャリアが高分子の場合、約2〜約25%の、より好ましくは約5〜約20%の、より好ましくは約5〜約18%の、より好ましくは約5〜約15%の、より好ましくは約6〜約15%の、より好ましくは約6〜約14%の、より好ましくは約7〜約13%の、より好ましくは約7〜約12%の、より好ましくは約8〜約12%の、より好ましくは約9〜約12%の、より好ましくは約10〜約12%の、より好ましくは約9〜約11%の、より好ましくは約10〜約11%のモノマーが、修飾物質Mを構成する。
【0188】
ある実施形態では、MはCPTである。ある実施形態では、MはCPTであり、第二リンカーはアミノアリール残基である。ある実施形態では、MはCPTであり、第二リンカーはグリシン残基である。
【0189】
他の実施形態では、本発明の抱合体において、1以上のMは、生物学的に活性な修飾物質を含む。ある例示的な実施形態では、1以上のMは、タンパク質、抗体、抗体断片、ペプチド、ステロイド、挿入剤、薬物、ホルモン、サイトカイン、酵素、酵素基質、レセプターリガンド、脂質、ヌクレオチド,ヌクレオシド、金属錯体、カチオン、アニオン、アミン、ヘテロ環、ヘテロ環アミン、芳香族基、脂肪族基、挿入剤、抗生物質、抗原、免疫調整剤、および抗ウイルス化合物からなる群より選択される。ある実施形態では、薬物は、抗腫瘍性、抗バクテリア性、抗ウイルス性、抗真菌性、抗寄生虫性、麻酔性薬物を含むが、これらに限定されない。
【0190】
ある実施形態では、修飾物質は、化学療法部分である。ある実施形態では、修飾物質は、カンプトテシン(CPT)である。したがって、一態様では、本発明は、CPTおよびキャリアが共有結合でスクシンアミド含有リンカーによって結合し、それによって、前記CPTは直接的または間接的にアミド結合によってスクシンアミド部分に結合し、前記キャリアは直接的または間接的にエステル結合によってスクシンアミド部分に結合するCPT−キャリア抱合体である。ある実施形態では、CPTは、アミノアシル部分を介して、間接的にスクシンアミド部分に結合する。ある実施形態では、CPTは、グリシン部分を介して、間接的にスクシンアミド部分に結合する。ある実施形態では、キャリアは本明細書で説明するポリアルである。
【0191】
ある実施形態では、下記スキーム3で示す構造(I)を有するPHF−CPT抱合体が提供される。
【0192】
(スキーム3)
【0193】
【化48】

【0194】
(ここで、n、kおよびmは、それぞれ、10と300との間の整数、1と20との間の整数、および0と300との間の整数である。)
先に示したように、抱合体(I)は、二段階プロセスで、次いでCPTを放出することができる。
【0195】
ある実施形態では、以下の構造を有するPHF−CPT抱合体が提供される:
【0196】
【化49】

【0197】
(ここで、nは10と3000との間の整数である。)
ある実施形態では、下記スキーム4で示す構造(II)を有するPHF−タキソール抱合体が提供される。
【0198】
(スキーム4)
【0199】
【化50】

【0200】
(ここで、n、kおよびmは、それぞれ、10と300との間の整数、1と20との間の整数、および0と300との間の整数である。)
先に示したように、抱合体(II)は、二段階プロセスで、次いでタキソールを放出することができる。
【0201】
ある実施形態では、以下の構造を有するPHF−タキソール抱合体が提供される:
【0202】
【化51】

【0203】
(ここで、nは10と3000との間の整数である。)
ある実施形態では、下記スキーム5で示す構造(III)を有するPHF−イルジン抱合体が提供される。
【0204】
(スキーム5)
【0205】
【化52】

【0206】
(ここで、n、kおよびmは、それぞれ、10と300との間の整数、1と20との間の整数、および0と300との間の整数である。)
先に示したように、抱合体(III)は、二段階プロセスで、次いでイルジンを放出することができる。
【0207】
ある実施形態では、以下の構造を有するPHF−イルジン抱合体が提供される:
【0208】
【化53】

【0209】
(ここで、nは10と3000との間の整数である。)
ある他の実施形態では、1以上のMは検出可能なラベルを含む.ある例示的な実施形態では、1以上のMは、放射性、常磁性、超常磁性、蛍光性、光吸収性、または構造ドメインを含む原子の原子または基を含む。
【0210】
ある実施形態では、1以上のMは診断用ラベルを含む。
【0211】
ある例示的な実施形態では、本発明の抱合体は、生物学的に活性な修飾物質と検出可能なラベルとを含む。
【0212】
ある実施形態では、本発明の抱合体は、高分子鎖に直接リンクする、検出可能なラベルを含む。
【0213】
本発明の生分解性、生体適合性抱合体は、生体分解性および親水性の所望の要求基準に合うように製造することができる。たとえば、生理学的条件下で、生体分解性と安定性との間のバランスに達することができる。たとえば、ある閾値を超える分子量(分子の物理的形状に依るが、一般的に50〜100kDaを超える)を持つマクロ分子は、腎臓を介して排泄せず、一方、低分子は、細胞による摂取および細胞内区画、最も著しくはリソソームにおける分解を通してのみ体から除去することは知られている。この観察は、一般的な生理学的条件(pH=7.5±0.5)およびリソソームpH(pH約5)下で、それらの安定性を調整することによって、いかに機能的に安定な生分解性材料を設計できるかを実証する。たとえば、アセタールおよびケタール基の加水分解には酸の触媒作用が働くため、ポリアルは、一般的に、酸性リソソーム環境では、たとえば、血漿中より不安定なことが知られている。当業者は、水性媒体中、たとえば、pH=5およびpH=7.5、37℃で、高分子分解プロファイルを比較し、したがって、正常な生理学的環境、細胞による摂取後の「消化性」リソソーム区画における、高分子安定性の期待バランスを測定する検査を設計できる。そのような検査における高分子完全性は、サイズ排除HPLCによって測定することができる。当業者は、本発明の分解した抱合体の種々の断片を研究する、他の適切な方法を選択することができる。
【0214】
多くの場合、pH=7.5での高分子の有効サイズは、1〜7日では検出できるほど変化せず、少なくとも数週間は元のサイズから50%以内のサイズを保つことが好ましいであろう。一方、pH=5での高分子は、1〜5日で検出できるほど分解し、2週間から数ヶ月の時間枠で、低分子量完全に断片に移行するのが好ましい。より速い分解が好ましい場合もあるが、一般的には、高分子は細胞による高分子片の代謝または排泄速度を超えない速度で、細胞内で分解するのがより望ましい。したがって、ある実施形態では、本発明の抱合体は、特に細胞による摂取の際、生分解性であり、生体系に関して比較的「非活性」であることが期待される。キャリア分解性生物は、変化せず、環境のpHを大きくシフトしないことが好ましい。アルコール基が大量であると、細胞レセプター、特に食細胞による高分子の認識速度が低下するかもしれないと考えられている。本発明の高分子骨格は、一般的に、抗原決定因子(特性たとえば、ある多糖類およびポリペプチド用)を、たとえあっても殆ど含まず、一般的に、後で望まれない限り、生体内で「キーインロック」型の相互作用に従事しうる硬い構造は含まない。したがって、本発明の可溶性、架橋された個体抱合体は、数種の生物医学的応用に適切な抱合体を造る、低毒性およびバイオ接着性を持つことが推定できる。
【0215】
本発明のある実施形態では、生分解性、生体適合性抱合体は、直鎖または分岐状の構造を形成することができる。たとえば、本発明の該生分解性、生体適合性ポリアル抱合体は、キラル(活性であってもよい)でありうる。場合によっては、本発明の生分解性、生体適合性ポリアル抱合体は、ラセミ形でもありうる。
【0216】
さらに他の実施形態では、本発明の抱合体は、マクロ分子またはナノ粒子と関連する。適切なマクロ分子の例示として、酵素、ポリペプチド、ポリリジン、タンパク質、脂質、ポリ電解質、抗体、リボ核酸、デオキシリボ核酸およびレクチンが挙げられるが、これらに限定されない。該マクロ分子は、前記生分解性、生体適合性抱合体と関連させる前に、化学的に修飾されてもよい。環状および直鎖DNAおよびRNA(たとえば、プラスミド)とその超分子関連物、たとえば、ウイルス粒子は、本発明の目的に照らし、マクロ分子であると考えられる。ある実施形態では、本発明の抱合体は、非共有結合でマクロ分子と関連する。
【0217】
ある実施形態では、本発明の抱合体は、水溶性である。ある実施形態では、本発明の抱合体は水不溶性である。ある実施形態では、抱合体は、個体形状である。ある実施形態では、本発明の抱合体はコロイドである。ある実施形態では、本発明の抱合体は、粒状の形態である。ある実施形態では、本発明の抱合体は、ゲル状である。ある実施形態では、本発明の抱合体は、繊維状である。ある実施形態では、本発明の抱合体はフィルム状である。
【0218】
(適用)
一態様では、本発明の適用の範囲は、癌処置/化学療法である。しかし、本発明の適用の領域はこの範囲に限定されない。他の適用も読者には簡単に明らかになるであろう。
【0219】
合衆国における癌の統計値は近年大きく改良されてきたにもかかわらず、癌は、主な死因の一つである。主要な治療法である化学療法の有効性は、まだ、信頼のおける寛解傾向をもたらすレベルまで用量を上げることを妨げる、入手可能な薬物の毒性によって、制限されている。本発明の一態様は、新しく、かなり効率的で、殆ど毒性のない化学療法的製剤の開発の可能性に関する。本発明のシステムは、また、炎症、疼痛管理において、および一般的に他の全ての種々の持続的放出または薬物の標的化が好都合である領域において有用でありえる。
【0220】
過去20年にわたって広範囲に研究されてきた、巨大分子薬物送達システムは、数種の薬剤物質の薬理学的特性を大きく改良し、癌細胞18,19への薬物送達を管理する新しいツールを提供する。現在まで報告されている、圧倒的多数の抗腫瘍性薬物抱合体は、(a)薬剤物質が巨大分子キャリアから放出するまで不活性である、(b)薬剤物質は、一段階で放出される、または少なくとも放出される20,21ものである。抱合体(たとえば、タンパク質の)は、キャリアからの薬物放出なしで、活性な場合もある。
【0221】
キャリアマクロ分子との薬物関連の利点は、一部、以下の要因、すなわち、(1)薬剤物質の可溶化;(2)抱合体の大きな流体力学的サイズに起因する、正常な間質組織への薬剤物質の制限された接近;(3)浸透・維持能力(EPR)効果22を介する腫瘍体内組織への抱合体送達;および(4)癌細胞サイクルを超える期間にわたって持続する薬物の維持がある。(最近になって開発された)抱合体のあるものにおいては、癌細胞への薬物送達の特異性は、さらに、種々の標的部分(たとえば抗体)の取り込みを介して、およびキャリアへ薬物分子が結合しているリンクの酵素補助加水分解23,24を介して、行われている。
【0222】
数種の前臨床研究において、抗腫瘍性薬物抱合体は、それぞれの遊離の薬物より毒性が低かった25ことが示された。抱合体の抗腫瘍性活性(投与された薬剤物質の1単位当たり)は、非修飾薬物の活性と同じか高い場合もあるが、普通は低かった26。しかし、抱合体は、等毒性の用量で、しばしばより効果的であり、したがって、抗腫瘍性活性の部分的損失は、より低い毒性とより大きな最大耐用用量によって、より重要である。
【0223】
一態様では、本発明の二段階薬物放出システムは、2つの追加の主要な利点、すなわち、(1)放出プロドラグの管理される特性に特徴が付け加えられたこと(たとえば、疎水性、細胞成分への親和性、膜透過輸送、薬物活性保全、放出部位からの再分布);および(2)薬物放出の両相を調整する可能性が付け加えられたこと(したがって、たとえば、活性な薬物濃度および放出時間対癌細胞サイクルの最適化)が加わる。
【0224】
先に述べたように、非生体付着性で、完全に生分解性な可溶性高分子抱合体のようなキャリアは、本発明を実践するために強く望まれている。
【0225】
(合成方法)
本発明によれば、本発明の抱合体、またはそれを含む組成物、それを製造するのに有用な中間体および成分(たとえばキャリアおよび修飾物質)を製造するために、入手しうる技術であればどんなものでも使用することができる。たとえば、以下で詳細に述べる、半合成的および完全に合成的な方法を使用してもよい。
【0226】
(キャリア)
修飾物質との抱合に適切な、高分子キャリア(たとえば、生体適合性、生分解性高分子キャリア)を製造する方法は、業界で知られている。たとえば、合成の指針は、米国特許第5,811,510号、第5,863,990号および第5,958,398号;米国特許仮出願No.60/348,333;米国実用新案出願No.10/501,565;欧州特許第0820473号および第03707375.6号;国際特許出願PCT/US03/01017およびPCT/US03/22584中に見出すことができる。当業者であれば、本発明の実践において使用する高分子キャリアを造るために、これらの方法をどのように適応するかはわかるであろう。
【0227】
たとえば、半合成ポリアルは、ポリアルドースとポリケトースから、水溶液中で過ヨウ素酸塩による炭水化物環の完全なラテラル開裂に続き、スクシンアミドリンカーを介して修飾物質を1以上有するヒドロキシル基を抱合するため、親水性部分への変換(たとえば、ホウ化水素還元による)によって製造してもよい。例示的な実施形態では、適切な多糖類の炭水化物は、グリコール特異的試薬によって参加することができ、ヒドロキシル基にそれぞれ結合する炭素原子間の炭素−炭素結合が開裂する。この手法のデキストランB−512への適用の例を以下に記載する:
【0228】
【化54】

【0229】
【化55】

【0230】
同じような検討がレバン:
【0231】
【化56】

【0232】
とイヌリン:
【0233】
【化57】

【0234】
を使用して行われてもよい。
【0235】
一実施形態では、本発明の抱合体の生分解性、生体適合性ポリアルを形成する方法は、適切な多糖類を有効量のグリコール特異的酸化剤と組み合わせて、アルデヒド中間体を形成する過程を含む。ポリアルそれ自身であるアルデヒド中間体は、ついで、還元されて対応するポリオールとし、サクシン化し、1以上の適切な修飾物質とカップリングし、スクシンアミド含有リンクを含む、生分解性、生体適合性ポリアル抱合体を形成してもよい。
【0236】
他の好ましい実施形態では、本発明で使用するための完全な合成生分解性、生体適合性ポリアルは、適切な開始剤を適切な前駆体化合物と反応させることによって製造することができる。
【0237】
たとえば、完全な合成ポリアルは、ビニルエーテルと保護、置換されたジオールとの縮合によって製造されてもよい。開環重合のような他の方法を使用してもよく、該方法有効性は、置換の程度および保護基の嵩高さによる:
【0238】
【化58】

【0239】
溶剤系、触媒および他の要因を最適化して高分子量製品を得ることは、当業者であれば認識するであろう。
【0240】
ある実施形態では、キャリアは構造:
【0241】
【化59】

【0242】
を有するPHFである。
【0243】
(修飾物質)
ある実施形態では、本発明による修飾物質は、いくつか名前を挙げると、生体高分子、低分子、有機または無機分子、治療剤、微粒子、薬学的に有用な基または構成要素、マクロ分子、診断ラベル、キレート剤、挿入剤、親水性部分、分散剤、電荷変性剤、粘度変性剤、界面活性剤、凝固剤および凝集剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0244】
先に検討したように、本発明の実践において有用な修飾物質は、化学的に修飾され、独立して、アミド結合の形成によって、必要に応じて置換されるコハク酸と共有結合するのに適切な官能基を含んでもよく;該コハク酸はエステル結合の形成によってキャリアと抱合していてもよい。
【0245】
(抱合体)
他の態様では、本発明は、以下の構造を有する1以上の部分で置換されたキャリアを含む抱合体を製造する方法を提供する:
【0246】
【化60】

【0247】
(ここで、各Mは、独立した修飾物質であって、
【0248】
【化60A】

【0249】
は、リンカーLへのMの直接的または間接的結合を表し、
各Lは、独立して、必要に応じて置換されるスクシンアミド含有リンカーである)で表され、これによって、前記修飾物質Mは、アミド結合によって、直接的あるいは間接的にスクシンアミドリンカーに結合し、かつ前記キャリアは、エステル結合によって、直接的あるいは間接的に各スクシンアミドリンカーに結合するキャリアを含む。該製造法は、
キャリアを提供する工程と;
1以上の修飾物質を提供する工程と;
前記キャリアを、以下の構造を有する、必要に応じて置換されるコハク酸無水物と、適切な条件下で反応させ、
【0250】
【化61】

【0251】
(ここで、qは、0〜4の整数であり;各Rは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、NO、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分、または−GRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−、または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2、RG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリール部分である)である)、以下の構造を有するスクシニル化キャリアを得る工程と;
【0252】
【化62】

【0253】
または塩;
(ここで、sは前記キャリア上のスクシニル部分の数を表す)
スクシニル化キャリアを1以上の修飾物質部分(M)と反応させ、
それによって、少なくとも1つの修飾物質部分が、直接的あるいは第2リンカーを介して間接的に、キャリアに存在するスクシニル部分とともにアミド結合を形成し、
結果として以下の構造を有する抱合体:
【0254】
【化63】

【0255】
(ここで、Rおよびqは前記のとおりであり;
【0256】
【化63A】

【0257】
は、スクシンアミドリンカーLへのMの直接的または間接的結合を表し;tは、キャリアに抱合する修飾物質部分の数がt≦sとなるように指定する整数である)を生成する工程と;
を含む。
【0258】
ある実施形態では、各Rは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリール、ヘテロアリール、−C(=O)R2Aまたは−ZR2A(ここで、Zは、−O−、−S−、−NR2B(ここで、各R2AおよびR2Bは、独立して、水素、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール部分である)である)である。ある実施形態では、各Rは水素である。ある実施形態では、1以上のRはC1−10のアルキル部分である。ある実施形態では、1以上のRは低級アルキルである。ある実施形態では、1以上のRは疎水性基である。ある実施形態では、1以上のRは親水性基である。ある実施形態では、1以上のRはアニオン性基である。ある実施形態では、1以上のRはカチオン性基である。ある実施形態では、1以上のRはレセプターリガンドである。
【0259】
ある例示的な実施形態では、スクシニル化キャリアをカップリングする工程で、キャリア上にスクシンアミド酸部位の一部が未反応のまま残っている。
【0260】
ある実施形態では、キャリアを必要に応じて置換される無水コハク酸と反応させる工程で、無水コハク酸量対キャリア量の比を変化させることによって、キャリア上のスクシニル化の度合いを調節する。したがって、スクシニル化は、適正な無水コハク酸/キャリア比を選択することによって調整してもよい。
【0261】
ある実施形態では、スクシニル化キャリアを1以上の修飾物質部分に反応させる工程で、修飾物質量体スクシニル化キャリア量の比を変化させることによって、抱合体中の修飾物質導入度を調整する。したがって、抱合体中に含まれる修飾物質は、適正な修飾物質/スクシニル化キャリア比を選択することによって、調節してもよい。ある実施形態では、抱合体中の修飾物質導入度は、キャリアスクシニル化度によって測定される。
【0262】
ある例示的な実施形態では、本発明方法の実施において、キャリアは、米国特許第5,811,510号、第5,863,990号および第5,958,398号;米国特許仮出願No.60/348,333;米国実用新案出願No.10/501,565;欧州特許第0820473号および第03707375.6号;および国際特許出願No.PCT/US03/01017およびNo.PCT/US03/22584に開示するような、生分解性、生体適合性ポリアルである。
【0263】
ある実施形態では、種々の修飾物質がスクシニル化キャリアとともに混合することができ、適切な条件で所望の転化率まで培養された反応混合物が得られる。この方法は、修飾物質とキャリアとを違った比で混合することによって、修飾物質の組成と含有量が様々な抱合体のライブラリーを1段階で製造するのに、使用することができる。
【0264】
ある実施形態では、修飾物質は化学療法部分である。ある実施形態では、修飾物質は、カンプトテシン(CPT)、タキソールまたはイルジンである。したがって、一態様では、本発明は、CPT−、タキソール−またはイルジン−キャリア抱合体を製造する方法であって、CPT、タキソールまたはイルジンとキャリアとがスクシンアミド含有リンカーを介して共有結合で結合し、それによって、CPT、タキソールまたはイルジンが直接または間接的にアミド結合によってスクシンアミド部分と結合し、キャリアが直接または間接的にエステル結合によってスクシンアミド部分と結合している方法を提供する。ある実施形態では、CPT、タキソールまたはイルジンは、アミノアシル部分を介して、間接的にスクシンアミド部分に結合する。ある実施形態では、CPT、タキソールまたはイルジンは、グリシン部分を介して、間接的にスクシンアミド部分に結合する。ある実施形態では、キャリアは、本明細書で記載されるようなポリアルである。ある例示的な実施形態では、ポリアルはPHFである。ある実施形態では、本発明によるPHF−CPT抱合体は以下のようにして製造することができる:
【0265】
【化64】

ここで、m+n+k=1であり、かつk=0.11−0.12であり、そして各Rは同じかまたは異なり、本明細書中で定義されるとおりである。
【0266】
ある実施形態では、本発明によるPHF−タキソール抱合体は、以下のように製造することができる:
【0267】
【化65】

ここで、m+n+k=1であり、かつk=0.11−0.12であり、そして各Rは同じかまたは異なり、本明細書中で定義されるとおりである。
【0268】
ある実施形態では、本発明によるPHF−イルジン抱合体は、以下のように製造することができる:
【0269】
【化66】

【0270】
(組成物)
ある実施形態では、本明細書で開示された抱合体を1以上と、薬学的に適切なキャリアまたは希釈剤とを含む組成物が提供される。ある実施形態では、該組成物は、CPT−キャリア抱合体を含む。ある実施形態では、CPTは、アミノアシル部分を介して、スクシンアミド部分に間接的に結合する。ある実施形態では、CPTは、グリシン部分を介して、スクシンアミド部分に間接的に結合する。ある実施形態では、キャリアは、本明細書で記載されるようなポリアルである。ある例示的な実施形態では、ポリアルはPHFである。ある実施形態では、組成物は、式(I)または(Ia)で表されるPHF−CPT抱合体を含む。
【0271】
ある実施形態では、組成物は、タキソール−キャリア抱合体を含む。ある実施形態では、タキソールは、アミノアシル部分を介して、スクシンアミド部分に間接的に結合する。ある実施形態では、タキソールは、グリシン部分を介して、スクシンアミド部分に間接的に結合する。ある実施形態では、キャリアは、本明細書で記載されるようなポリアルである。ある例示的な実施形態では、ポリアルはPHFである。ある実施形態では、組成物は、式(II)または(IIa)で表されるPHF−タキソール抱合体を含む。
【0272】
ある実施形態では、組成物はイルジン−キャリア抱合体を含む。ある実施形態では、イルジンは、アミノアシル部分を介して、スクシンアミド部分に間接的に結合する。ある実施形態では、イルジンは、グリシン部分を介して、スクシンアミド部分に間接的に結合する。ある実施形態では、キャリアは、本明細書で記載されるようなポリアルである。ある例示的な実施形態では、ポリアルはPHFである。ある実施形態では、組成物は、式(III)または(IIIa)で表されるPHF−イルジン抱合体を含む。
【0273】
ある実施形態では、本発明は、ゲルの形での本発明の生分解性、生体適合性抱合体と、該ゲル内に配置される生物学的に活性な化合物との組成物を提供する。あるいは、またはそれに加えて、診断ラベルもゲル内に配置され、またはゲルマトリックスに結合することができる。
【0274】
他の実施形態では、本発明は、溶液の形の生分解性、生体適合性ポリアル抱合体と、該溶液に溶解した薬学的に有用な構成要素、薬物またはマクロ分子との組成物を提供する。あるいは、またはそれに加えて、診断ラベルも溶液内に溶解することができる。
【0275】
ある実施形態では、有効量の治療剤と結びついた、本発明の生分解性、生体適合性抱合体を含む組成物が提供され、該治療剤は、前記生分解性、生体適合性抱合体マトリックスに導入され、ある期間にわたる高分子マトリックスの分解または該マトリックスから放出した剤の拡散によって放出される。ある実施形態では、抱合体は有効量の治療剤と非共有結合で結びつく。ある実施形態では、治療剤は、ビタミン、抗AIDS物質、抗癌物質、放射性核物質、抗生物質、免疫抑制剤、抗ウイルス物質、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、睡眠薬、抗ヒスタミン、潤滑剤、トランキライザー、抗けいれん薬、筋弛緩剤および抗パーキンソン病物質、チャンネル遮断薬を含む抗痙性剤および筋肉収縮剤、縮瞳薬および抗コリン作用薬、抗緑内障化合物、抗寄生虫および/または抗原虫化合物、細胞増殖阻害剤および抗癒着分子を含む細胞−細胞外マトリックス相互作用の調節因子、血管拡張剤、DNA、RNAまたはタンパク質合成の抑制剤、降圧剤、鎮痛剤、解熱剤、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症剤、抗血管形成因子、分泌抑制因子、抗凝血剤および/または抗血栓剤、局所麻酔剤、眼病薬、プロスタグランジン、抗うつ剤、抗精神病物質、嘔吐抑制剤、造影剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0276】
これらの実施形態の変形では、他の医薬的に活性な化合物、たとえば、腫脹を減らすために使用される、抗炎症剤またはステロイド、抗生物質、抗ウイルス剤、または抗体を含むことが望ましいかもしれない。含むことのできる他の化合物として、高分子マトリックス安定性および/または薬物放出速度を変更するために利用されてもよい、防腐剤、酸化防止剤、およびフィラー、コーティング剤またはバルク剤がある。
【0277】
(抱合体組成物の特性を変えるために使用される添加剤)
緩衝剤やフィラーのように、加工、貯蔵または他の目的のために、他の生体適合性、好ましくは生分解性または代謝性材料を含むことができるが、好ましい実施形態では、抱合体だけが送達装置または構造体に導入される。
【0278】
緩衝剤、酸および塩基は、組成物のpHを調整するために使用される。移植された高分子から放出された剤の拡散距離を長くするための剤も含めることができる。
【0279】
フィラーは、水溶性または嵩を増やすために製剤に導入された材料に可溶性である。フィラーの種類は、NaCI、マンニトール、糖類、合成高分子、化工デンプンおよびセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。製剤中のフィラーの量は、通常、約1重量%と約90重量%との間である。
【0280】
(使用方法)
本発明は、主に(しかしこれに限定されない)薬理学、バイオエンジニアリング、創傷治療、および皮膚病学/化粧品の分野で、生物医学的適用に使用される高分子抱合体を包含する。ある実施形態では、該高分子抱合体は、生分解性ポリアル抱合体である。特に、本発明の抱合体のための医学的適用として、注射可能な医薬品、注射可能な診断的医薬品、ゲル、管理された薬物放出のための外科用移植片およびシステム、創口閉鎖用途(縫合糸、ステープル)、整形外科固定具(ピン、杵(状)体、スクリュー、タック、靭帯)、心臓血管用途(ステント、移植片)および長く循環する標的薬物が含まれる。本発明の抱合体は、生体材料、薬物、薬物キャリア、医薬品製剤、医療装置、移植片の成分として使用することができ、低分子、薬学的に有用な構成要素、薬物、マクロ分子および診断ラベルと結びつくことができる。
【0281】
(処置方法)
本発明のある好ましい実施形態では、本発明の抱合体は、動物(好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒト)を処置する方法において使用される。一実施形態では、本発明の抱合体は、本発明の生分解性、生体適合性抱合体を動物に投与することを含む、動物を処置する方法において使用されてもよい。たとえば、本発明による抱合体は、可溶性直鎖重合体、共重合体、抱合体、コロイド、粒子、ゲル、固形状物、繊維、フィルムなどの形で投与することができる。本発明の生分解性、生体適合性抱合体は、薬物キャリア、薬物キャリア成分、管理された薬物放出、低侵入式外科用処置用の製剤などとして、使用することができる。医薬品製剤は、注射可能であり、移植可能である。
【0282】
さらに他の態様では、本発明は、被験体に、本発明抱合体を少なくとも1つ有効量で投与することを含む、それを必要とする被験体の疾患または障害を処置する方法を提供し、前記抱合体は1以上の修飾物質を二段階プロセスで放出し、前記修飾物質は、疾患または障害の処置に適切な治療剤である。
【0283】
さらに他の態様では、本発明は、本発明の抱合体を少なくとも1つ、有効量で被験体に投与することを含む、該抱合体を必要とする被験体の疾患または障害を処置する方法であって前記抱合体は治療剤と結びつき;それによって抱合体は1以上の修飾物質を二段階プロセスで放出し;前記修飾物質は疾患または障害の処置のための適切な治療剤であり;前記治療剤は前記生分解性、生体適合性抱合体ポリケタールマトリックスに導入され、ある期間にわたる高分子マトリックスの分解または該マトリックスから放出した剤の拡散によって放出される、方法を提供する。
【0284】
ある実施形態では、修飾物質は、送達を望む部位に、前記抱合体マトリックスを移植することにより、局所送達される。
【0285】
ある他の例示的な実施形態では、先に記載したどの方法においても、さらに付加的な生物学的に活性な化合物を少なくとも1つ投与することを含む。
【0286】
ある実施形態では、修飾物質、生物学的に活性な化合物および治療剤は、独立して、ビタミン、抗AIDS物質、抗癌物質、放射性核物質、抗生物質、免疫抑制剤、抗ウイルス物質、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、睡眠薬、抗ヒスタミン、潤滑剤、トランキライザー、抗けいれん薬、筋弛緩剤および抗パーキンソン病物質、チャンネル遮断薬を含む抗痙性剤および筋肉収縮剤、縮瞳薬および抗コリン作用薬、抗緑内障化合物、抗寄生虫 および/または抗原虫化合物、細胞増殖阻害剤および抗癒着分子を含む細胞−細胞外マトリックス相互作用の調節因子、血管拡張剤、DNA、RNAまたはタンパク質合成の抑制剤、降圧剤、鎮痛剤、解熱剤、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症剤、抗血管形成因子、分泌抑制因子、抗凝血剤および/または抗血栓剤、局所麻酔剤、眼病薬、プロスタグランジン、抗うつ剤、抗精神病物質、嘔吐抑制剤、造影剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0287】
ある実施形態では、本発明の方法を実施において、抱合体は、診断ラベルをさらに含む、あるいは結びつく。ある例示的な実施形態では、診断ラベルは、γシンチグラフィーおよびPET用放射性医薬品または放射性アイソトープ、磁気共鳴画像法(MRI)用造影剤、CT検査法用造影剤、X線画像検査法用造影剤、超音波診断的法用剤、中性子活性化用剤、X線、超音波、電波およびマイクロ波を反射, 散乱またはこれらに作用しうる部分および蛍光体からなる群より選択される。ある例示的な実施形態では、抱合体はさらに生体内でモニターされる。
【0288】
他の態様では、本発明は、被験体の疾患または障害を処置する方法であって、少なくとも1つの本発明の抱合体の水性製剤を準備し、該製剤を前記被験体に非経口的に注射することを含む方法を提供する。ある例示的な実施形態では、抱合体は、生物学的に活性な修飾物質を含む。ある例示的な実施形態では、抱合体、検出可能な修飾物質を含む。
【0289】
他の態様では、本発明は、被験体の疾患または障害を処置する方法であって、本発明の抱合体を少なくとも1つ含む移植片を準備し、該移植片を前記被験体に移植することを含む方法を提供する。ある例示的な実施形態では、移植片は、生分解性ゲルマトリックスである。
【0290】
他の態様では、本発明は、それを必要とする動物を処置する方法であって、前記方法によって抱合体を投与することを含み、前記抱合体は、生物学的に活性な修飾物質を含む方法を提供する。ある例示的な実施形態では、生物学的に活性な成分は遺伝子ベクターである。
【0291】
他の態様では、本発明は、動物において免疫応答を発現させる方法であって、先に記載した方法に従って抱合体を投与することを含み、前記抱合体は抗原修飾物質を含む方法を提供する。
【0292】
他の態様では、本発明は、動物において疾患を診断する方法であって、前記方法により抱合体を投与する工程であって、該抱合体は検出可能な修飾物質を含む工程と、検出可能な修飾物質を検出する工程とを含む方法を提供する。
【0293】
ある例示的な実施形態では、前記検出可能な修飾物質を検出する工程は、非侵襲的に行われる。ある例示的な実施形態では、前記検出可能な修飾物質を検出する工程は、適切な画像機器を使用して行われる。
【0294】
ある一実施形態では、動物を処置する方法は、動物に本発明の生分解性、生体適合性抱合体を、腫瘍または増殖が取り除かれた外科創傷の包装体として、投与することを含む。生分解性、生体適合性抱合体包装体は、回復中に腫瘍部位と取り替えられ、創傷が癒えた時、分解し消える。
【0295】
ある実施形態では、抱合体は、生体内でモニタリングするために診断ラベルと結びつく。
【0296】
前記抱合体は、動物の処置、予防、および分析(診断的)処置のために使用することができる。抱合体は、一般的に、経口的投与されるものであるが、他の経路で投与されてもよい場合がある。
【0297】
一実施形態では、可溶性またはコロイド状抱合体は、静脈内投与される。他の実施形態では、可溶性またはコロイド状抱合体は、局所(たとえば、皮下、筋肉)注射によって投与される。他の実施形態では、個体抱合体(たとえば、粒子、移植片、薬物送達システム)は、移植または注射によって投与される。
【0298】
一実施形態では、生物学的に活性な物質(たとえば、薬物または遺伝子ベクター)を含む抱合体は、前記物質に反応する疾患を処置するために投与される。
【0299】
他の実施形態では、検出可能なラベルを含む抱合体は、動物体内のラベル分布のパターンと動特性を研究するために投与される。
【0300】
他の実施形態では、抗原または抗原−発現成分(たとえば、プラスミド)を含む抱合体は、前記抗原への免疫性を発症させるために投与される。
【0301】
ある実施形態では、本明細書に開示するいずれか1以上の抱合体は、前記方法のいずれかの実施において使用してもよい。ある例示的な実施形態において、抱合体は、CPT−、タキソール−またはイルジン−PHF抱合体である。
【0302】
(薬物送達方法への適用)
本発明に適用できる薬物送達方法への適用の例は、特に、米国特許仮出願No.60/348,333;米国実用新案出願No.10/501,565;欧州特許第03707375.6号;および国際特許出願PCT/US03/01017中に見出すことができる。これらには、ポリアル低分子−薬物抱合体、タンパク質修飾キャリア、カチオン化ポリアル、ポリアル修飾リポソーム、ポリアル修飾ナノ粒子および微粒子が含まれる。
【0303】
他の実施形態では、本発明の生分解性、生体適合性抱合体は、適切な診断処置によって生体内でモニタリングすることができる。このような診断的処置には、核磁気共鳴画像法(NMR)、磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、X線、シンチグラフィー、ポジトロン放射断層撮影(PET)などが含まれる。診断的処置によって、たとえば、抱合体配置(たとえば、分布、局在性、密度など)、または薬物、プロドラグ、生物学的に活性な化合物、またはある期間にわたる生分解性、生体適合性抱合体診断ラベルの放出を検出することができる。該方法の適性は、投与された抱合体の形および検出可能なラベルの存在に大きく依存する。たとえば、抱合体移植片のサイズおよび形は、NMR画像法、超音波断層撮影またはX線(「コンピュータ化された」)断層撮影によって非侵襲的に測定することができる。γ放射または陽電子放射ラジオトレーサーを含む可溶性抱合体製剤の分布は、γシンチグラフィーまたはPETをそれぞれ使用して行うことができる。蛍光性ラベルを含む抱合体製剤の微細分布は、写真撮影を使用して、調査することができる。
【0304】
本発明の目的に照らし、生体内での抱合体の移行および配置は、抱合構造に導入された基を、疎水性および親水性修飾物質、帯電修飾物質、レセプターリガンド、抗体などに修飾することによって規定することができることが理解される。このような修飾は、診断ラベルの導入と組み合わせて、新しい有用な診断材の開発に使用することができる。後者は、合理的な根拠(たとえば、細胞レセプター、表在抗原、その他のような公知の体内組織成分に結合する高分子または低分子の抱合体)の基に、および合成ペプチドおよびオリゴヌクレオチド、低有機分子および金属有機分子、その他のような、知られていない、あるいはあまり知られていない結合活性を持つ種々の部分で修飾された抱合体分子のライブラリーのスクリーニングによって、設計することができる。
【0305】
(インターフェース成分)
本発明の実施形態では、生分解性、生体適合性抱合体は、インターフェース成分として使用することができる。本明細書で使用される語句「インターフェース成分」は、物体上の塗膜や層のような、たとえば、異物反応を抑える、炎症性応答を減少させる、血栓形成を抑えるなど、物体の生物学的環境との相互作用の特徴を変える成分を意味する。物体は、微視的でも巨視的でもありえることは理解すべきである。微視的物体の例として、マクロ分子、コロイド、小胞、リポソーム、乳液、気泡、ナノ結晶などが挙げられる。巨視的物体の例として、外科用機器、試験管、導入管の表面などの表面、生物学的体内組織に接触するものなどが挙げられる。インターフェース 成分は、細胞およびオプソニンとの直接相互作用から物体を保護し、物体と生物学的システムとの相互作用を減少させることができと考えられる。
【0306】
抱合体高分子の骨格鎖の官能基を修飾すべき表面に存在する官能基と抱合することによって、表面を本発明の生分解性、生体適合性抱合体によって修飾することができる。たとえば、生分解性、生体適合性ポリアル前駆体のアルデヒド基は、シアノホウ化水素の存在下、表面に存在するアミノ基と反応し、アミンリンクを形成することができる。他の実施形態では、適切な末端基を含む、本発明の生分解性、生体適合性ポリアル抱合体は、たとえば、末端アルデヒド基を有するポリアルを合成することができる。高分子は、末端基の反応によって表面に結合することができる。
【0307】
さらに他の実施形態では、適切な多糖類は、多糖類の還元末端、非還元末端の反応、あるいは他に、続いて起こる酸化/還元反応と多糖類残基の更なる変換によるポリアル抱合体の生成によって、表面とリンクすることができる。
【0308】
本発明の生分解性、生体適合性抱合体は、生分解性、生体適合性抱合体を表面上に存在する官能基を抱合する前記方法によって、酵素、ポリペプチド、タンパク質、その他のようなマクロ分子と抱合することができることは理解される。
【0309】
本発明の生分解性、生体適合性抱合体は、また、たとえば、疎水性、ファンデルワールス、静電的相互作用によって表面に物理的に結合することができる化合物と抱合することができる。たとえば、生分解性、生体適合性ポリアル前駆体は、脂質、高分子電解質、タンパク質、抗体、レクチン、その他と抱合することができる。
【0310】
本発明の他の実施形態では、本発明の生分解性、生体適合性ポリアル抱合体の生物医学的製剤は、種々の形にすることができる。インターフェース成分は、巨大分子およびコロイド状薬物キャリアの循環を延ばすことができると考えられる。したがって、そのようなキャリアに導入されている低分子、生物学的に活性な化合物、診断ラベル、その他は、免疫原生応答を刺激することなく、および細胞レセプターおよび認識タンパク質(オプソニン)との有意な相互作用なしに、体中を循環することができる。したがって、本発明の抱合体は、インターフェース成分(たとえば、ポリエチレングリコールまたは親水性ポリアル高分子)でさらに修飾され、抱合体の薬物を持つ骨格鎖が、前記インターフェース成分の鎖によって形成された「ブラシ」によって取り囲まれることもできる。後者はさらに修飾され、抱合体が、生体内のある分子マーカー、細胞または体内組織を標的とすることを可能にする。
【0311】
本明細書を通して、種々の刊行物が記載されているが、本発明に関連する技術の現状をさらに詳しく説明する目的で、これらは全てその全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0312】
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明する。特に断らない限り、全ての部および%は重量基準である。
【0313】
(等価物)
以下の代表的な例は、本発明の説明の補助するものであり、本発明の領域をこれに限定する意図もなければまた、するべきでもない。実際、本明細書で示し記載した例示に加えて、本発明の種々の変形例およびその更なる多くの実施形態が、本明細書で挙げる以下の例示および科学および特許文献に関する参考文献を含む本明細書の全内容から、当業者には明らかになるであろう。さらに、それら引用した文献の内容は、技術の現状の説明の補助のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0314】
以下の例示は、種々の実施形態およびその均等物において本発明の実践を適合させるために、重要な追加の情報、例証、および指針を含む。
【0315】
(例証)
実施者は、合成経路、保護基、および本発明の抱合体の合成に有用な他の材料および方法の指針のために、本明細書に含まれる情報と組み合わせて利用する高分子化学の定評のある文献を持っている。
【0316】
本明細書で引用した種々の参考文献は、本明細書で記載した本発明の化合物または関連のある中間体に類似する高分子の製造に関する有益な背景情報および、興味の被験体である本発明の抱合体の製剤、用途および投与に関する情報を提供する。さらなる指針は、特に、出版されている(i) Papisov MI.Acyclic polyacetals from polysaccharides.ACS Symposium Series 786(2001),301−314;(ii)Cabodi S.,Nenci A.,Ong L,Papisov M,Dotto G−P.Targeted drug delivery to breast cancer cells. Proceedings, Dept of Defense Breast Cancer Research Program Meeting, アトランタ,ジョージア州,2000;v.l p.307;(iii) M.I.Papisov,M.Yin,A.Yurkovetskiy,A.Hiller,S.Choi,A.J.Fischman.Fully biodegradable hydrophilic polyals(polyacetals and polyketals).29th Int.Symp.on Controlled Release of Bioactive Materials, 2002,Seoul,Korea.Controlled Release Society,ディアフィールド,イリノイ州,2002;paper#465;(iv)A.Yurkovetskiy,S.Choi,A.Hiller,M.Yin,A.J.Fischman,M.I.Papisov.Biodegradable polyal carriers for protein modification.29th Int.Symp.on Controlled Release of Bioactive Materials,2002,ソウル,韓国.Controlled Release Society, ディアフィールド,イリノイ州,2002;paper#357;(v)M.Papisov,A.Yurkovetskiy,M.Yin,A.Hiller,A.J.Fischman. Fully biodegradable hydrophilic polyacetals for macromolecular radiopharmaceuticals.49−th Annual Meeting of The Society of Nuclear Medicine, ロサンゼルス,カリフォルニア州,2002.J.Nuc.Med.2002,43:5(Supplement)p.377P;(vi)A.V.Yurkovetskiy,A.Hiller,M.Yin,S.Sayed,A.J.Fischman,M.I.Papisov.Biodegradable polyals for protein modification.Controlled Release Society’s Winter Symposium,ソルトレークシティ,ユタ州,2003;(vii)Papisov,A Yurkovetskiy,M Yin,P Leone,Alan J.Fischman,Alexander Hiller,and Sakina Sayed. Hydrophilic Polyals:Biomimetic Biodegradable Stealth Materials for Pharmacology and Bioengineering.Proceedings of 226th Natl.Meeting of American Chemical Society,ニューヨーク,ニューヨーク州,2003;(viii)A.V.Yurkovetskiy,A.Hiller,S.Syed,M.Yin,X.M.Lu,A.J.Fischman,and M.I.Papisov.Synthesis of a macromolecular camptothecin conjugate with dual phase drug release.Molecular Pharmacology,2004,中に見出せる。
【0317】
さらに、実施者は、特定の指針および種々の例示的な抱合体およびその中間体に関する本明細書に提供されている特定の指針および実施例に導かれる。
【0318】
本発明の抱合体およびそれらの製剤は、これらの化合物を製造しまたは使用する方法のいくつかを説明する実施例によってさらに理解できる。しかし、これらの実施例が本発明を限定するものではないことは理解されるであろう。現在知られているまたはさらに開発される本発明の変形は、本明細書に記載され、その後、請求の範囲としている本発明の領域内に入るものと考えられる。
【0319】
本発明によれば、本発明の抱合体またはそれを含む組成物を製造するために、どのような技術も使用することができる。たとえば、以下に詳しく述べる、種々の溶相合成法を使用してもよい。あるいはまたはそれに加えて、本発明の抱合体は、当業界で知られている組み合わせ技術、並列合成および/または溶相合成法を使用して製造してもよい。
【0320】
以下に記載するように、種々の本発明の抱合体は、本明細書に記載の方法により合成することができることが認識されるであろう。これらの化合物の製造に使用される出発材料および試薬は、アルドリッチケミカル社(ミルウォーキー、ウィスコン州)、バッケム社(トランス、カリフォルニア州)、シグマ社(セントルイス、ミズーリ州)のような市販業者から入手したり、当業者には周知の、Fieser and Fieser 1991,”Reagents for Organic Synthesis”,vols 1−17,John Wiley and Sons,ニューヨーク、ニューヨーク州,1991;Rodd 1989”Chemistry of Carbon Compounds”,vols.1−5 and supps,Elsevier Science Publishers,1989;”Organic Reactions”,vols 1−40,John Wiley and Sons, ニューヨーク、ニューヨーク州,1991;March 2001,”Advanced Organic Chemistry”,5th ed.John Wiley and Sons, ニューヨーク、ニューヨーク州;Larock 1990,”Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations”,2nd ed.VCH Publishers;および高分子化学をさらに詳しく示すほかの参考文献などの参考文献に記載の処置によって製造したりする。以下に記載する方法は、発明の抱合体を合成することができるいくつかの方法を単に説明しただけのものであり、これらの方法は種々に変形することができ、当業者にこの開示に関し種々の変形を示唆する。
【0321】
出発材料、中間体および本発明の抱合体は、ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含む慣用の技法を使用して、単離、精製してもよい。それらは、物理定数およびスペクトルデータなどの寛容の方法を使用して特徴付けてもよい。
【0322】
(材料)
水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、メタ過ヨウ素酸ナトリウム,1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)および無水コハク酸は、アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州から入手した。InCl[In−111]は、パーキンエルマライフサイエンス社(ボストン、マサチューセッツ州)から入手した。無水ピリジン、エチルアルコールおよび他の溶剤は、シグマ−アルドリッチ社から得、精製することなく用いた。
【0323】
カンプトテシンは、ハンドテクデベロプメント社(ヒューストン、テキサス州)から入手した。デキストランB−512(Mn:73,000Da、188,000Da)およびN−BOC−グリシンは、シグマケミカル社(セントルイス、ミズーリ州)から入手した。無水コハク酸(SA)、水素化ホウ素ナトリウム、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トリフルオロ酢酸、塩酸および水酸化ナトリウムは、アルドリッチ社(セントルイス、ミズーリ州)から購入した。他の化学薬品、またはよりグレードの高いものは、アクロスオーガニクス社またはフィッシャーサイエンティフィック社から得、そのまま使用した。無水ピリジン、メチルアルコール、エチルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキサイド,メチレンクロライド、ジエチルエーテルおよび他の溶剤は、シグマ−アルドリッチ社から入手し、精製することなく用いた。脱イオン水(固有抵抗>18MΩ)は、すべての合成および分析処置で使用した。
【0324】
(機器および方法)
水性媒体中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および逆相(RP)クロマトグラフィーは、BIO−RADモデル1755 RI検出器およびLDC/ミルトンロイスペクトロモニター3000UV検出器を備えるVarian−Prostar HPLCシステムを使用して行った。HPSECバイオシルSEC−125およびバイオシルSEC−400(BIO−RAD)、および低圧スーパーローズ−6(ファルマシア)カラムは、サイズ排除クロマトグラフィー用に使用した。SECカラムキャリブレーションは、広分子量範囲デキストランとタンパク質基準に基づいて行った。他に記載しない限り、溶出は50mMのリン酸緩衝0.9%NaCl、pH=7.0で等張的に行った。
【0325】
アルティマC18カラム(アルティマ社、250mm×4.6mm、5μmのビーズ)は、低分子量CPT誘導体および高分子−CPT抱合体の分解生成物のRPクロマトグラフ測定用に使用した。
【0326】
高分子および高分子抱合体の分取・精製は、ミルトン−ロイ液送システム、マスターフレックスCLぜん動ポンプ、クナウナー−2401RI検出器、Foxy JRフラクションコレクターおよびVarian−Prostar データー収集システムを備えるG−25ゲルスペクトラクロム(60cm×ID10cm)カラム上で行った。あるいは、高容量処置においては、UFP−10−C−4MA中空繊維カートリッジ(カットオフ:10kDa)を備えるQuixStend流動透析システム(A/Gテクノロジー社、ニードハム、マサチューセッツ州)を使用した。光子相関光散乱は、Brookhaven ZetaPlus分析器を使用して行った。
【0327】
プロトンおよび13C NMRは、基準ゲージとして溶媒ピークを用いて、バリアンマキュリー−300、ブルカーDPX−300、およびブルカーアスペクト3000NMRスペクトロメーター上で行った。
【0328】
恒温マルチセルペルチエブロックをおよびモレキュラデバイス社96−ウェルプレートリーダーを備えるケーリー300バイオUV可視分光光度計を、分光計測および酵素動態研究のために使用した。
【0329】
アジレント1100シリーズLC/MSDシステムをPHF−CPT加水分解生成物のMS特性評価のために使用した。
【0330】
雄nu/nuマウス、18〜24g(8〜10週齢)は、チャールズリバーラボラトリーズ、マサチューセッツ州から入手した。
【0331】
ヒト結腸直腸腺癌HT−29細胞培養物は、ATCC(ATCC HTB−38)由来のものである。
【0332】
写真撮影は、長距離作業位相差光学部品、エピフルオレッセンス画像セットアップ、CCDカメラおよびMacOSを基礎とする画像ワークステーションとともに、ニコンエクリプスTE300顕微鏡を使用して行った。
【0333】
放射能測定は、ワラックウィザード1480γカウンター(パーキンエルマー社)を用いて行った。γシンチグラフィーは、中間エネルギーコリメーターとともに、オハイオ核γカメラを使用して行った。
【0334】
(PHF−CPT抱合体)
先に検討したように、巨大分子治療の生分解は、非常に幅広く使用された高分子に関し、重要なしかし充分に研究されていない問題である。たとえば、非あるいは低速度−生分解性高分子片を含む抱合体の広範な臨床用途は、長期の細胞空胞化(たとえば、Bendele A.Seely J.Richey C.Sennello G.Shopp G.(1998)Short communication:renal tubular vacuolation in animals treated with polyethylene−glycol−conjugated proteins. Toxicological Sciences.42,152−7参照)およびリソソーム疾患症候群の過負荷の発現(たとえば、Christensen,M.,Johansen,P.,Hau C.,(1978)Storage of polyvinylpirrollidone(PVP)in tissue following long−term treatment with a PVP−containing Vasopressin preparation. Acta Med. Scand., 204, 295−298参照)の、用量が多い場合は、他の病理学的代謝異常(たとえば、Miyasaki K.(1975)Experimental Polymer Storage Disease in Rabbits.Virchows Arch.A.Path.Anat.And Histol.,365,351−365参照)の原因となる潜在的危険性がある。実質的に完全な生分解性高分子、好ましくは低毒性の形成となる分解で、簡単に消えうるまたは代謝しうる生成物の発現が、長期細胞内体積の問題の主な根本的解決策となるようだ。正常な細胞外環境において充分な抱合体安定性を可能にする一方、細胞内取り込みの際、抱合体分解速度を適切にする巨大分子材料と架橋試薬との組み合わせは、最も有益である。
【0335】
親水性の実質的に完全な分解性ポリアル、たとえば、ポリ[1−ヒドロキシメチルエチレン ヒドロキシメチルホルマール](PHF)が開発され、多糖類の非環状ミメティックとして報告されている(たとえば、(1)Papisov MI,Garrido L,Poss K,Wright C,Weissleder R,Brady TJ.(1996) A long−circulating polymer with hydrolyzable main chain.23−rd International Symposium on Controlled Release of Bioactive Materials,京都、日本,1996;Controlled Release Society, デルフィールド、イリノイ州;107−108;(2)Papisov M.I.(1998)Theoretical considerations of RES−avoiding liposomes.Adv.Drug Delivery Rev.,32,119−138、参照)。ある多糖類のラテラル開裂によって合成的に製造することができる、これらの材料は、基本的に、(i)非生反応性、(ii)非毒性で、(iii)完全に分解し、したがって、種々の医薬品に適応される可能性があることが証明された(たとえば、(1)Papisov MI,Babich JW,Dotto P,Barzana M,Hillier S,Graham−Coco W,Fischman AJ.(1998)Model cooperative(multivalent)vectors for drug targeting.25th Int.Symp.on Controlled Release of Bioactive Materials,1998,ラスベガス,ネバダ州,USA;Controlled Release Society,デヒアフィールド,イリノイ州、170−171;および(2)Papisov MI.(2001)Acyclic polyacetals from polysaccharides.(Biopolymers from polysaccharides and agroproteins), ACS Symposium Series 786,pp.301−314参照)。ポリアルは、pH感応性アセタールまたはケタール基を主鎖内に含み、これが、重合体について中性およびアルカリ性媒体中での安定性と酸性環境下での不安定化との所望の組み合わせをもたらす。
【0336】
ある実施形態では、本発明はさらに親水性ポリアルの潜在的な適用の領域を広げ、二段階薬物放出システムにおける実質的に完全に分解しうるキャリア−薬物抱合体の製剤用のこれらの材料の適切性を実証するある例示的な実施形態において、親水性ポリアル(PHF)は、PHF−CPT抱合体得、特徴づけるために使用される。
【0337】
カンプトテシン(CPT)は、トポイソメラーゼI阻害活性を有する強力な抗腫瘍剤である。非修飾CPTの治療的な適用は、水性媒体中への非常に低い溶解性と、高い毒性、および生体内でのラクトン環加水分解による素早い不活性化によって、妨げられている。酸性媒体中では可逆性であるラクトン加水分解は、水溶性カルボキシレートとなる。後者は、腎臓で消去され、出血性膀胱炎、CPT投与に対し重篤な拒絶反応を起こす。(O20)ラクトン環ヒドロキシルのアシル化は、安定性を大きく増す3,4
【0338】
CPT分子の親水性化は、水溶性形体、たとえばイリノテカン(CPT−11)を造る。後者は、最も広く使用される可溶性プロドラグであり(他のCPTプロドラグと同様に)、活性な形(SN38)に変換するために、主に肝臓で、内質活性化を要求する。癌組織の外で活性化されたこのようなプロドラグは、癌細胞の標的化と同様に、腫瘍には適合不可となる。
【0339】
CPT巨大分子およびリポソーム形は、低分子量類縁体と比較して6,7、有効性の改善が示されている。しかし、膀胱毒性はまだ報告されていた。この書類に記載した二段階薬物放出システムある、新規な薬物動態学的と軽減された毒性を有する、可溶性、潜在的に標的移行性の巨大分子製剤を設計するものであった。
【0340】
二段階方式は、新油性の安定化されたCPTプロドラグを放出し、次に、肝臓ミクロソームP450錯体による予備代謝の必要なく、活性な薬剤物質を局在的に(細胞内および細胞外で)放出する親水性抱合体の組み立てである。
【0341】
この仕事で開発したモデル放出システムは、公知の反応、スクシンアミドエステルの加水分解性環化反応に基づく。該反応は、エステル結合が開裂すると同時にアミド側でスクシンイミドが形成される。キャリア側にアミド基を有するスクシンアミドエステルリンカーを使用した試みはなされているが、これは二段階薬物放出とはならない。本発明のシステムにおいては、スクシンアミドエステルを、エステルが高分子側に形成し、一方反対側のカルボキシルには、アミン含有薬物または薬物誘導体(本明細書ではCPT−(O20)−グリシネート)を有するアミド結合を形成するように、配置する。
【0342】
スクシンアミドエステルリンカーの加水分解によって、非環状サクシンイミドグリシル−CPTの形において、高分子から薬物が開裂する(スキーム2)。反応は塩基触媒で行われ、水性媒体中穏やかな条件下で進み、完了する。第二段階は、生体内で、グリシルエステル結合加水分解が起こり、不活性な薬物を放出する。
【0343】
CPTに適用されるこの二段階薬物放出システムの潜在的な利点として、(1)抱合体が水溶性で、静脈内投与内投与が可能であること、(2)他のCPTプロドラグと違って、たとえば、イリノテカンの中間プロドラグは、肝臓よりむしろ「部位上」で活性化され、したがって、局所投与および標的化が可能であること、および(3)CPTは、新油性でラクトン−安定化された形で放出され、これは体内組織中にプロドラグが体積し、およびカルボキシレートが再分布および尿へ移行する速度を低くすることを保障すること、が挙げられる。
【0344】
本明細書では、置換されていないスクシンアミドエステルリンカーから二段階放出する、完全に生分解性の巨大分子CPT抱合体のモデルを、生体内で合成し、特徴づけた。進行中の生体内での特徴化の研究の初期の結果もまた載せている。
【0345】
抱合体は、骨格鎖として、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシ−メチルホルメート)(PHF)を用いて、組み立てられた。PHFは、本発明者らの研究所で開発された高い親水性、生分解性「ステルス」高分子である10,11。PHFの生分解性は、非分解性高分子の大用量の投与に関する潜在的危険性を減らし、モデルPHF抱合体を臨床開発できるようにする。
【実施例】
【0346】
(実施例1 PHF)
PHFは、デキストランB−512の完全ラテラル開裂によって製造された半合成非環状 ポリアセタールである。デキストランB−512の(1−>6)−ポリグリコシド配列の完全過ヨウ素酸塩開裂によって、ポリ(1−カルボニルエチレンカルボニルホルマルホルムアルデヒド)(PCF)を得る。PCFのペンダントアルデヒド基のホウ化水素還元によって、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルムアルデヒド)(PHF)、具リセロールの共重合体(コポリアセタール)およびグリコールアルデヒドを得る(以下の構造を参照)を得る。酸化段階での不完全な開裂により、メチロール基のいくつかが隣接グリコール基に置き換わり、これは所望のことである。幾分低い程度の開裂で、高分子鎖中にグリコール基といくらかの原型を保った炭水化物環の両方が残る。
【0347】
【化67】

【0348】
PHFの特性は、以下の通りである:
PHFは、高親水性であり、水溶性高分子であり、生理学的条件で安定であるが、リソソームpHでプロトン触媒加水分解を受ける。
【0349】
該高分子は、4g/kgのIVおよびIP(多量用量は検査せず)までの用量でマウスには毒性のないことを示した。IV投与の時、低分子量PHF(<50kDa)で、どの体内組織においても重篤な蓄積なく、腎臓で殆ど完全に消滅する。
【0350】
腎臓によって消滅しない、高分子量PHFおよび誘導体(PHF修飾マクロ分子およびモデル薬物キャリア)は、10〜25時間までの半減期(げっ歯類)、ほぼ均一な最終分布(蓄積/他の臓器より2倍高いだけのRESにおける組織1g)で循環する。後者は、食細胞他の細胞および認識タンパク質(「ステルス」特性27)による認識の欠如を示唆する。
【0351】
PHFは、マルチグラムスケールで、種々の分子量において製造された。PHFの化学構造は、ペンダントOH基と少なくとも1つの末端隣接グリコール基を介して、多種多様な修飾と誘導体化を可能にする28。数種のPHF誘導体が、モデル生物医学的製剤(タンパク質および低分子抱合体、長時間循環する薬物キャリア、その他)として、合成され、特徴付けられた28,29,30,31,32,33,34
【0352】
「ステルス」特性、生分解性プロファイルおよび技術的自由度のため、PHFは数種の医薬品およびバイオエンジニアリング用途に大いに期待できる材料である。特に、PHFの生分解性および多官能基性は、低分子抱合体のサイズと構造上のいくつかの限定を解消し、たとえば、細胞中に高分子が長い期間蓄積される危険性なく、高分子量抱合体の高用量投与(>50kDa)を可能にする。
【0353】
発明者らの研究所、MGHで開発されたPHFのいくつかの臨床的な関連モデル製剤は、医薬品工業との共同研究で評価された。ポリアセタール技術の種々の態様が共同開発され、またはMGHによって、ノバルティス社、アムジェン社、およびナノファルマ社にライセンスされている。
【0354】
PHF高分子材料の製剤に関する付加的な指針は、特に、PCT/US03/22584に見出すことができる。
【0355】
高分子は、C2〜C3のデキストランに由来する、5%2,3−ジヒドロキシエチルホルムアルデヒド単位ホスムアルデヒド単位を有するPHFの形成を可能にする、先に記載した技術l2の加速変性を使用して製造した。デキストランB−512、73kDa製剤(15.15g、93.4mmol、グリコピラノシド)を300mLの脱イオン水に0〜5℃で溶解し、遮光反応器中、47.95g(224.2mmol)のメタ過ヨウ素酸ナトリウムで3時間処理した。結晶性ヨウ素酸ナトリウムをろ過(1μガラスフィルター)によって、反応混合物から除去した。ろ液のpHを5NのNaOHで8.0に調整し、得られた溶液を直ちに水素化ホウ素ナトリウム(7.07g、187mmol、70mLの脱イオン水中に溶解)で2時間処理した。次いで、pHを1NのHCIで6.5に調整した。生成物を、セファデックスG25上で脱塩し、凍結乾燥した。収率:80%。SEC分析の結果、Mn=60kDa、多重分散度指標(Mw/Mn)は2.0であった。プロトンNMRスペクトル(DMF−d中):D0(95:5v/v)によって、C2〜C3(δ4.49d,J=5.2Hz)由来の隣接ジオールペンダント基約5%を含む、予測PHF構造(Cl−Hδ:4.62t,J=5.2Hz)と一致することがわかった。
【0356】
(実施例2 CPT−20−(O)−グリネートトリフルオロ酢酸塩 (CPT−Gly.TFA))
CPT−Gly.TFAは、Greenwald12,14によって報告された手順によって2段階で製造し、Minko1eによって修飾した。つまり、CPTをメチレンクロライド中、DMAPの存在化下で、BOC−グリシンおよびDIPCで処理した。N−BOC基はトリフルオロ酢酸で取り除き、得られたCPT−Gly.TFAをジエチルエーテルから結晶化した。純度:>97%(HPLC,NMR)
(実施例3 PHF−スクシネート(PHF−SA))
PHF(10.00g、75.6mmol)、無水コハク酸(0.76g,7.6mmol)およびDMAP(1.2mg、0.01mmol)を5mLの無水ピリジンに溶解した。40℃で18時間撹拌した後、ピリジンを真空下取り除き、残基を脱イオン水中に懸濁し、pHを1NのNaOHで7.0に調整した。該スクシニル化PHFをセファデックスG−25上で脱塩し、凍結乾燥し、86%の収率を得た。電位差滴定によって測定したコハク酸含量は、10.3%(mol/モノマー)であった。高分子(DO)のH NMRスペクトルスペクトルは、PHF骨格鎖のメチレンおよびメチン(δ3.3−3.8)およびアセタール(δ4.4−4.7)プロトンの特徴的シグナルに加え、コハク酸エステルのメチレンプロトンの特徴シグナル、δ2.66およびδ2.57(broad triplets)も含んでいた。
【0357】
(実施例4 カンプトテシン−PHF抱合体(PHF−CPT))
CPT−Gly.TFAとPHF−SAとの抱合は、(i)水性媒体中での高分子−スクシネートのCPT−20−O−グリシネートトリフルオロアセテート塩によるEDC媒介アミド化、または(ii)非水性条件(DMF)下でのDIPC媒介カップリングによって行われた。最初のアプローチは(下記)より効率的で、より速い反応速度に基づき、よりきれいな生成物が得られ、生成は簡単であった。
【0358】
全段階合成の前に、種々のCPT含量(約5%〜15%w/w)をもつ抱合体を下側の目盛りで準備し、水性媒体中で溶解性をテストすると、10%w/wまでのCPT含量をもつ抱合体は、易可溶性を示した。
【0359】
(前段階合成)PHF−SA(15.0g,10.7mmolSA)を150mLの脱イオン水に溶解し、30mLのDMFと混合し、−2℃に冷却し、CPT−GlyのTFA溶液(20mLの3:1アセトニトリル/水混合物中、2.0g/3.85mmol)と組み合わせた。激しく撹拌しながら、EDC(2.0g)を反応混合物に加えた。pHを5.9〜6.0に調整した。30分撹拌した後、反応混合物の温度を室温にし、撹拌をさらに3時間続けた。この時点のCPT変換率は、RP HPLC(UV:360nm)に基づき93%であった。pHを5.5に調整して、CPTが抱合体から放出するのを防ぎ、反応混合物を8℃で一晩放置した。次いで、混合物をDMFおよび水で希釈して、600mL(DMF含量:10%v/v)とし、抱合体をセファデックスG−25上で脱塩し、凍結乾燥し、−20℃で保存した。得られた生成物は、オフホワイトから薄い黄色の個体で、CPT含量は7.48%w/w(360nmで分光光学的に測定)であった。CPTに基づく収率:80%
PHF−CPTのプロトンNMRスペクトル(DMSO−d/DO)は、コハク酸修飾PHF骨格鎖に特徴づけられたシグナル:δ3.3−3.8(メチレンおよびメチン),δ4.4−4.7(アセタール),δ2.4−2.6(−CH−,スクシネート);およびペンダントCPT構造に対応するシグナル:δ0.95(t),δ2.21(d),δ5.26(m),δ5.46(s),δ7.20(s),δ7.70(t),δ7.88(t),δ8.09(d),δ8.18(d),δ8.45(s)を含んでいた。
【0360】
反応混合物および凍結乾燥生成物の組成物を表1に示す。
【0361】
(表1 PHF−CPT抱合体組成物(CPT、mol%))
【0362】
【表1】

【0363】
合成されたPHF−CPTは、水性媒体に可溶性であった。HPSECは、Mnが〜65kDaであり、実質的に凝集が起こっていないことを示した(光子相関光散乱法)。20%までの溶液の粘度は、げっ歯類研究で使用される高いゲージ針による注射が実施可能なものであった。殆どの注射は、6%w/w(η=4.05cps)で行われる。
【0364】
(実施例5 カンプトテシン−20−(N−スクシンイミドグリシネート)(CPT−SI))
CPT−SIは、PHF−CPT加水分解生成物から単離した新油性プロドラグである(下記参照)。CPT−SIはコントロール化合物として合成した。
【0365】
PHF−CPT(500mg)を10mLの0.1Mリン酸塩、pH7.6に溶解し、24時間、37℃で培養した。得られた懸濁物を150mLに希釈し、メチレンクロライド(3×150mL)で抽出した。メチレンクロライド層を組み合わせ、0.01NのHClで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶剤を真空下で取り除いた。薄い黄色の残渣をメチレンクロライド中に再溶解し、ろ過し、真空管層し、RP HPLCによれば、>93%CPT−SIを含む38mgの生成物を得た。CPT−SIの水への溶解性は、非修飾CPTより低く、それぞれ<1.0μg/mL対2.5μg/mLであった。
【0366】
H NMR(300MHz,CDCl):δ1.01(τ,3H,J=7.4Hz,C19),δ2.05−2.32(m,2H,C18),δ2.66(s,4H,スクシンイミド),δ4.32−4.51(AB,2H,17.2Hz,C−aGly),δ5.32(s,2H,C−5),δ5.29−5.65(AB,2H,17.3Hz,C−17),δ7.20(s,1H,C−14),δ7.60(t,1H,J=7.5Hz,C−11),δ7.76(t,1H,J=7.7Hz),δ7.86(d,1H,J=8.3,C−12),δ8.20(d,1H,J=8.3,C−9),δ8.32(s,1H,C−7)
13C NMR:7.23,28.36,29.89,32.04,39.53,50.17,67.31,77.45,96.29,120.54,128.23,128.33,128.64,130.00,130.80,131.35,145.14,146.70,149.08,152.46,157.48,166.27,166.78,175.95。
【0367】
MS:m/z488.2(M+H)
(実施例6 カンプトテシン−20−(N−スクシンアミドグリシネート)(CPT−SA,コントロール))
CPT−Gly.TFA(50mg,0.096mmol)および無水コハク酸(18mg,0.190mmol)を2mLの無水ピリジン中に溶解した。室温で18時間撹拌した後、ピリジンを真空下で取り除いた。個体残渣を脱イオン水に懸濁し、メチレンクロライドで抽出し、0.01NのHClで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。真空下で溶剤を取り除き、>90%CPT−SA(360nmでのHPLC検出)を含む、淡黄色個体(41.4mg,収率:85%)を得た。LC−MS:m/z506.2(M+H)。生成物は、PHF−CPT加水分解生成物の組成物を測定するためのHPLC基準として使用した。
【0368】
(実施例7 スクシニル化ポリアセタールキャリアの製剤)
置換されたスクシニル基で修飾されたポリアセタールキャリアを、前記PHF−SAで記載した手順に類似した手順によって製造した。つまり、100mLの乾燥ピリジン中の無水PHF Mn60kDa(10.0g)を、計算量の無水コハク酸誘導体(表2参照)とDMAP(無水物:DMAP=1:0.1モル比)で18時間、40℃で処理して、PHF構造単位置換率が約10%(mol)である、コハク酸誘導体の対応PHF−スクシネートの定量的転換を行った。真空下、ピリジンを除去後、PHF−スクシネートをDI水に溶解し、DI水で平衡化したセファデックスG−25カラム上でゲルろ過することによって、低分子量不純物を精製した。最終生成物を、凍結乾燥によって水溶液から回収し、平均収率85〜90%の泡状体として得た。得られたPHF−スクシネートは、親水性高分子で、水および極性有機溶剤(ピリジン、DMF、DMSO)に容易に溶解する。高分子収率、組成、およびスクシネート含量を表2に示す。
【0369】
(表2 スクシニル化PHFキャリアの組成および特性)
【0370】
【表2】

【0371】
(実施例8 (2−ノネン−1−イル)−コハク酸架橋PHF−CPT (PHF−NSA−CPT))
PHF−(コハク酸2−ノネニル)(PHF−NAS)(2.5g、2.23mmol NSA)を50mLの脱イオン水に溶解し、20mLのDMFと混合し、0℃に冷却し、15mLの4:1アセトニトリル/水混合物)中のCPT−Gly.TFA溶液(454mg/0.848mmol)と組み合わせた。激しく撹拌しながら、該反応混合物にEDC(500mg)を加えた。pHを5.9〜6.0に調整した。30分撹拌した後、反応混合物の温度を室温にし、撹拌をさらに3時間続けた。HPLC(UV:360nm)でモニタリングした3時間後のCPT−Gly.TFA変換率は>92%であった。次いで反応混合物を1:9v/vDMF/水混合物で希釈して150mLとし、得られた溶液のpHを5.5に調整した。得られた抱合体をセファデックスG−25上で脱塩し、凍結乾燥した。生成物はオフホワイトから淡黄色の、水および極性有機溶剤(ピリジン、DMF、DMSO)に溶解しうる個体として得られた。360nmで分光光学的に測定したCPT抱合体含量は、13.0%w/wであった。CPTに基づく収率:>95%。抱合体中の残留カルボキシル基含量は4.1x10−4mol/gであった。
【0372】
PHF−NSA−CPTのプロトンNMRスペクトル(DMSO−d/DO)は、コハク酸ノネニル修飾PHF骨格鎖に特徴づけられたシグナル:δ3.3−3.8(メチレンおよびメチンPHF),δ4.4−4.7(アセタール),δ2.6−2.7(−CH−,スクシネート),δ0.96(t)(−CH,ノネニル),δ1.25−1.35(−CH−,ノネニル),δ5.65およびδ5.75.(−CH=,ノネニル);およびペンダントCPT構造に対応するシグナル:δ0.95(t),δ2.22(d),δ5.26(m),δ5.46(s),δ7.20(s),δ7.71(t),δ7.89(t),δ8.10(d),δ8.18(d),δ8.45(s)を含んでいた。
【0373】
(実施例9 メチルコハク酸−架橋PHF−CPT(PHF−MSA−CPT))
PHF−(コハク酸メチル)(PHF−MSA)(2.5g,1.72mmol MSA)を50mLの脱イオン水に溶解し、20mLのDMFと混合し、0℃に冷却し、15mLの4:1アセトニトリル/水混合物)中のCPT−Gly.TFA溶液(450mg/0.840mmol)と組み合わせた。激しく撹拌しながら、該反応混合物にEDC(500mg)を加えた。pHを5.9〜6.0に調整した。30分撹拌した後、反応混合物の温度を室温にし、撹拌をさらに3時間続けた。HPLC(UV:360nm)でモニタリングした3時間後のCPT−Gly.TFA変換率は>90%であった。次いで反応混合物を1:9v/vDMF/水混合物で希釈して150mLとし、得られた溶液のpHを5.5に調整した。得られた抱合体をセファデックスG−25上で脱塩し、凍結乾燥した。生成物はオフホワイトから淡黄色の、水、食塩水および極性有機溶剤(DMF、DMSO)に溶解しうる個体として得られ、固有pH5.7であった。360nmで分光光学的に測定したCPT抱合体含量は、7.65%w/wであった。CPTに基づく収率:71%。抱合体中の残留カルボキシル基含量は3.0x10−4mol/gであった。
【0374】
PHF−NSA−CPTのプロトンNMRスペクトル(DMSO−d/DO)は、メチルコハク酸修飾PHF骨格鎖およびペンダントCPT構造に特徴付けられるシグナルを含んでいた。
【0375】
(実施例10 1,1−ジメチルコハク酸架橋PHF−CPT(PHF−MSA−CPT))
PHF−(コハク酸1,1−ジメチル)(PHF−DMSA)(2.5g,1.70mmol DMSA)を50mLの脱イオン水に溶解し、20mLのDMFと混合し、0℃に冷却し、15mLの4:1アセトニトリル/水混合物)中のCPT−Gly.TFA溶液(450mg/0.840mmol)と組み合わせた。激しく撹拌しながら、該反応混合物にEDC(500mg)を加えた。pHを5.9〜6.0に調整した。30分撹拌した後、反応混合物の温度を室温にし、撹拌をさらに3時間続けた。HPLC(UV:360nm)でモニタリングした3時間後のCPT−Gly.TFA変換率は>90%であった。次いで反応混合物を1:9v/vDMF/水混合物で希釈して150mLとし、得られた溶液のpHを5.5に調整した。得られた抱合体をセファデックスG−25上で脱塩し、凍結乾燥した。生成物はオフホワイトから淡黄色の、水、食塩水および極性有機溶剤(DMF、DMSO)に溶解しうる個体として得られ、固有pH5.7であった。360nmで分光光学的に測定したCPT抱合体含量は、6.9%w/wあった。CPTに基づく収率: 約65% 抱合体中の残留カルボキシル基含量は2.9x10−4mol/gであった。
【0376】
PHF−NSA−CPTのプロトンNMRスペクトル(DMSO−d/DO)は、メチルコハク酸修飾PHF骨格鎖およびペンダントCPT構造に特徴付けられるシグナルを含んでいた。
【0377】
(実施例11 PHF−CPT加水分解)
PHF−CPT抱合体の加水分解安定性を、DI水および等張食塩水中、室温、pH=5.7で、0.05Mリン酸緩衝0.9%食塩水(pH7.4)中、および新しく製造したラット血漿中37℃で、試験した。PHF−CPT加水分解およびCPT誘導体の蓄積は、20分10〜70%アセトニトリル/水勾配(両溶剤とも0.1%TFAを含む)を使用したRP HPLCによってモニタリングした。結果は2つの独立した実験で再現した。
【0378】
CPT−SIの第二段階加水分解を同様にして行った。
【0379】
環化−消滅(スキーム2)反応は、スクシンアミドエステルの非環状中間体構造への折りたたみ、続いてエステル炭素上での分子内ヌクレオシドによる求核性攻撃を包含する。したがって、反応は(1)嵩高い置換基および(2)リンカーのいずれかのカルボキシル炭素上の帯電密度を変える置換基の存在に敏感であるべきである。第二フェーズは、また、プロドラグのスクシンイミド環中の置換基によって影響を受けうる。したがって、スクシネートリンカー中の置換は、薬物放出プロフィールの調整に関し、力強いツールでありえる。さらに、スクシネートリンカー中の置換は、プロドラグ特性(疎水性、経膜移送、細胞レセプターに対する親和性など)の調整に道を開くこともでき、これによって、薬物動態が強化されうる。
【0380】
PHF−CPTの他の置換された類縁体を、実施例7〜10で記載したメチル、2,2−ジメチルおよび2−ノネン−2−イルスクシネートを用いて合成した。前記した処理に類似する処理を用いて、これらの抱合体からのCPT 放出は、前記リン酸緩衝食塩水中で調べた。抱合体は、また、HT29細胞培養における細胞毒性についてもテストした。
【0381】
PHF−CPT溶液(固有pH=5.5〜5.7、生理学的に無視できる緩衝能で)は、8℃で1週間保存後、または室温で24時間放置後、有意な分解を示さなかった。中性および弱塩基性pH(7.0〜7.4)および穏やかな条件(8〜37℃)で、抱合体は緩やかな加水分解を受け、主にCPT−20−O−(N−スクシンイミドグリシネート)(CPT−SI)を生成した。たとえば、PHF−CPT抱合体の加水分解(0.05Mリン酸緩衝0.9%食塩水中2mg/mL、pH7.4、24時間)によって、PHF−CPTからのCPTの定量的な放出が、検出可能な生成物のみであるCPT−SIラクトン(87%)、CPTカルボキシレート(8%)およびCPT−SAラクトン(5%)として、起こった。特に、これらの条件下でプロドラグから放出されたCPTは、カルボキシレートの形であり、ラクトンの形ではなかった。これは、CPT−SIおよびCPT−SA中では安定であったラクトン環が、CPT放出の第二段階の間に加水分解されたことを示唆する。
【0382】
類似の傾向しかし僅かに相違する加水分解生成物の組成が、図1に示すように、新たに調製したラット血漿中で観察された。これは、おそらく血漿タンパク質の相互作用が介在する、付加的なCPT放出メカニズムの存在を示唆する。PHF−CPTからのCPTの開裂(全て形成)は、2.2±0.1時間の半減放出時間を伴う単一指数関数であることがわかった。
【0383】
続いて起こるCPT−SIの加水分解の半減時間は、条件(もしあるとすれば、正確なpH依存性および酵素感応性は進行中の研究の中で決定される)に依るが、20時間を超えていた。
【0384】
3種の合成、置換されたPHF−CPT類縁体に関しても、第一フェーズ放出速度を測定する検査を行った。予期したように、嵩高いノネニル基(加水分解環化に必要なリンカーの折りたたみを立体的に妨害する)が放出速度を減少させ、一方、環状構造を安定化するメチル基は、放出速度を増加させた(表3;各結果は2つの独立した実験に基づく。各データポイントデn=4〜6;全ての数字SD<平均値の10%,p<0.05)。
【0385】
(表3 pH7.4/37℃でのPBS中の修飾CPT−PHF抱合体の放出速度の比較)
【0386】
【表3】

【0387】

【0388】
(実施例12 PHF−SAG−タキソール抱合体)
二段階放出スクシンアミドグリシンリンクを利用した、水溶性のPHFとのタキソール抱合体、PHF−スクシンアミドグリシン−タキソール抱合体(PHF−SAG−タキソール)を、タキソール−2’(O)−グリニネートおよびスクシネート化PHFから製造した。
【0389】
タキソール−2’(O)−グリシン−NHを、タキソールのHO−Gly−(Z)(DIPC,DMAP,CHCl)とのアシル化、続いて、アミノ基脱保護(H,Pd/C,MeOH)の2工程で得た。全体の収率:60%[Z=Cbz]タキソール−2’(O)−Gly−NHを50%DMF水溶液中EDC介在カップリングを介して、PHF−スクシネートに抱合させた(10%mol、コハク酸,MW:65kDa)。PHF−SAG−タキソール抱合体合成は、2gスケール、室温、pH5.5〜6.0で行われた。PHF−SAG−タキソールへの定量的(>98%)タキソール−グリシネート変換率は、3時間以内に測定された。PHF−SAG−タキソールに関し、DI水で平衡化したセファデックスG25カラム上でゲルろ過することによって、低分子量不純物を精製し、凍結乾燥によって水溶液から回収した。上記処置に続き、6%〜13%(wt.)の範囲のタキソール荷重をもつ抱合体を製造した。生成物は全て脱イオン水および食塩水に易可溶性であった。水性媒体中のPHF−タキソール抱合体の安定性は、HPLCによってモニタリングした。PHF−SAG−タキソールの水溶液は、室温条件、pH範囲が4.5〜5.5で安定であった。生理学的条件(PBS,pH7.4,37℃)で、該薬物は、1.5±0.2時間の半減時間で抱合体から放出し、タキソール−2’(O)−(スクシンイミドグリシン)およびタキソールの1.5:1.0の比の混合物を得た。これらの条件下、タキソール−2’(O)−(スクシンイミドグリシン)エステルは約3時間の半減時間でタキソールに加水分解した。タキソール含量が13%のPHF−SAG−タキソール製剤の抗腫瘍活性を試験管内で、HT−29ヒト結腸直腸癌細胞を使用してテストした。PHF−タキソール抱合体および非修飾タキソール製剤とも、統計値的に同一の細胞増殖阻害有効性(ED50 15nM)を示した。
【0390】
(実施例13 グリシル−イルジン)
イルジンM、50mg(0.2mmol)を2mLの無水THFに溶解し、0℃に冷却した。次いで、65mg(0.22mmol)のFmoc−グリシン、30mg(0.22mmol)のジイソプロピルカルボジイミドおよび1mgの4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)を加えた。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、一晩室温で放置した。得られたFmoc−グリシル−イルジンをカラムクロマトグラフィー(シリカ,1%エタノールを含むクロロホルム)で精製し、真空下で乾燥した。収率:73mg(70%)
Fmoc−グリシル−イルジン(30mg)をDMF中5mLの20%ピペリジンに溶解した。溶液を室温で3時間撹拌した。溶剤を真空下取り除き、得られたグリシル−イルジンをカラムクロマトグラフィー(シリカ,3%エタノールおよび1%トリエチルアミンを含むクロロホルム)で精製した。収率:10mg(57%)
(実施例14 PHF−イルジンM)
実施例1で記載したように製造した無水PHF、Mn73kDa(2.0g)を50mLの乾燥ピリジンに溶解した。次いで、0.15gの無水コハク酸および18mgのDMAPを加えた。反応混合物を18時間、40℃で培養した。該反応によってPHFの定量的なアシル化が起こり、スクシニル化モノマー単位が10%のPHF−スクシネートを得た。真空でピリジンを取り除いた後、PHF−スクシネートを脱イオン水に溶解し、脱イオン水で等張化したセファデックスG−25カラム上のゲルろ過によって精製した。最終生成物を凍結乾燥によって水溶液から回収した。収率:ほぼ100%
PHF−スクシネート(100mg)を2mLの脱イオン水に溶解し、0.5mLのDMFと混合した。グリシル−イルジン、10mgを0.5mLのアセトニトリルに溶解した。溶液を0℃に冷却して、混合した。激しく撹拌しながら、EDC(1−エチル−3−(3−ジエチルアミノプロピル)カルボジイミド;20mg)を反応混合物に加えた。pHを5.9〜6.0に調製した。30分後、反応混合物の温度を室温にし、さらに3時間撹拌を続けた。PHF−スクシネートに結びついたグリシル−イルジンを、サイズ排除HPLC(検出:UV318nmで)によってモニタリングした。反応が終了した時、15mLの脱イオン水を加えた。pHを5.5に調整し、反応混合物を直ちにセファデックスG−25上で脱塩した。生成物、PHF−イルジンを凍結乾燥した。収率:ほぼ100%。高分子特性を表4に示す。
【0391】
(表4 PHF−イルジンM抱合体の特性)
【0392】
【表4】

【0393】
1:薬物負荷は318nmでUVスペクトロメーターによって測定した。
2:合理的溶解度は、250mgの抱合体を1mLの水に溶解することによって測定した。得られた溶液の粘度は、非常に高くてIV注射をすることができなかった。
【0394】
(実施例15 標識化)
二段階標識化抱合体(H標識されたCPTおよび111In標識された骨格鎖)を使用して、抱合体成分の平行独立モニタリングを行った。
【0395】
0.210mCi/gの活性度および7.0%w/wのCPT含量を有する、[H]標識化PHF−CPT抱合体を、PHF−CPTにおいて記載した[5−H(N)]−カンプトテシン(モラベックバイオケミカル社)を使用して製造した。抱合体の高分子骨格鎖をDTPAで修飾し、pH5.5でクエン酸インジウムからトランスキレート化によって111Inで標識化した。DTPAによるPHF−CPTの修飾は、(1)PHF構造上に存在する隣接ジオール(実施例1参照)をジオール基のメタ過ヨウ素酸ナトリウム塩で、過ヨウ素酸塩比1:1、pH5.7、2時間、室温で酸化した。得られたペンダントアルデヒド基を、1−アミノ−2−ヒドロキシ−3−(アミノオキシ)−プロパンのDTPAアミドで非還元的にアミド化した。穏やかな条件下でアルデヒドとオキシム結合を形成する後者「アミノオキシ−DTPA」は、発明者らの研究所で製造した(合成は他で記載)。生理学的条件下でヒドラジドより有意に安定15で、一般的に毒性が殆どないオキシムは、分子抱合体におけるカルボニル修飾により適切であると考える。
【0396】
全ての標識化された誘導体の放射化学的純度は>98%(HPLC)であった。
【0397】
(実施例16 生物動態)
PHF−CPT抱合体の生物動態および生体内分布を、正常なラットおよび二重−標識化CPT抱合体を含む抱合体を使用した、HT29およびA2780異種移植片をもつヌードマウスについて検討した。全ての動物実験は、機関で承認されたプロトコルに従って行った。
【0398】
150〜200μLの腫瘍異種移植片(n=6/基)をもつ雄ヌード/nuマウス、平均体重28〜32g(チャールズリバーラボ、ボストン、マサチューセッツ州)に、0.9%食塩水中の二段階標識された化PHF−CPTをCPTに対して20mg/kg注射(iv)した。注射活性は、Hに関し1.25μCi/動物および111Inに関し5μCi/動物であった。
【0399】
成熟非近交系240gの雄ラット(チャールズリバーラボ、ボストン、マサチューセッツ州)、n=6/基、に0.9%食塩水中の800μLの標識化されたPHF−CPTをCPTに対して20mg/kg注射(iv)した。動物1匹にたいする注射活性は、Hに関し1.25μCi/動物および111Inに関し24μCi/動物であった。
【0400】
血液サンプルを、5、15、30分および1、2、4、8および24時間の点で採取した。24時間後、動物を安楽死させ、腫瘍および腫瘍な臓器のサンプルを測定のために採取した。体内組織の全Hおよび111In活性を、シンチレーション(β)およびγ測定でそれぞれ行い、%注射用量/g体内組織で示し、H−CPT(全形成の合計)および111In−PHFの分布を特徴付けた。
【0401】
ラットにおけるキャリア高分子の半減時間は、14.2±1.7時間であり、一方薬剤物質半減時間は、2.1±0.2時間であった。これは、試験管内の第一フェーズの放出速度の測定値(図5)とよく対応している。
【0402】
H−CPTおよび111In−PHFは、腫瘍体内組織内に実質的な堆積したことを示した。24時間後、腫瘍中のCPT摂取は、A2780に関する用量/gで2.22%およびHT29に関する用量/gで2.52%であった。これは、CPT(p<0.05)より約75倍高く、PEG−CPTに類似する14。筋肉に対する平均腫瘍率は、それぞれ2.4および1.5(異なる異種移植片間での違いに関しp<0.2)であった。
【0403】
他の体内組織内での堆積もまたPEG−CPTの堆積と類似していた(図6)。しかし、2〜3倍高い薬物濃度が細網内皮系(RES)組織中で検出された。理論に拘束されるのではないが、後者は、CPT−SIがPEG−CPTより高くRESを摂取することによる、あるいは薬物動態依存的血液量によるものであるえる。
【0404】
投与24時間後の染色されていない、固定されていない腫瘍組織内のCPT蛍光の「写真撮影」(蛍光顕微鏡)は、比較的均質はCPT分布を示すが、高い薬物体積が血管床に隣接するいくつかの箇所で起こっていた(図7)。CPT蛍光の拡散細胞内分布は、優勢的に細胞質(非小胞性)薬物局在化を示した。
【0405】
(実施例17 抗増殖性)
CPT誘導体の細胞毒性は、HT29細胞培養液中で検査した。細胞は、10%のFBSが添加された1.5mMのL−グルタミンを有するマッコイ5a培地で成長させた。(指数的に増えた)細胞を24−ウェル培養プレート(〜10000個の細胞/ウェル)に植え、24時間培養し、次いで種々の希釈度の試験化合物で処置した。増殖阻害性を72時間ポスト処置(MTTアッセイ)で評価した。HT−29 細胞培養液中のPHF−CPTのID50は172nMであった。これは、CPTのID50(17nM)より10倍、CPT−SIのID50(34nM)より5倍高い。
【0406】
(実施例18 生体内抗腫瘍活性および毒性)
CPTの毒性は、抗腫瘍活性検査の途中で、正常な非近交系マウスと無胸線動物の異種移植片において評価した。
【0407】
PHF−CPTの抗腫瘍活性は、無胸腺マウス中のHT−29異種移植片モデルを機関で承認されたプロトコルに従って評価した。カンプトテシンおよびCPT−SI(第一フェーズ生成物)はコントロールとして用いた。
【0408】
検査は、ほぼ等毒性の用量のCPTおよびPHF−CPTを使用して行った。細胞を50μL中10個の細胞/動物の量で左側腹に皮下注射した。腫瘍の堆積が100〜150mmに達した時、マウスを、PHF−CPT、カンプトテシン、CPT−SIおよび処置をしないコントロール(各n=3)の各群4匹ずつの実験群にランダムに分けた。最初の3つの群の動物には、それぞれ実験物質を尾血管から3日毎に5回与えた(5xq3D)。各注射は、CPTおよびCPT−SIの22.5mgのCPT eqv/kgと、PHF−CPTに関して45mgのCPT eqv/kgを含んでいた。製剤は全て投与の直前に製造した。PHF−CPTは0.9%食塩水中の溶液として投与した。CPTおよびCPT−SIは、ツウィーン80/水(9/1v/v)中の分散剤として投与した。動物の重さ、腫瘍サイズ、動物の外観、行動および生存率は、投与後4週間にわたって、モニタリングした。20%を超える体重の減少および1500mmを超える腫瘍増殖は、致死であるとカウントした(動物は安楽死させた)。
【0409】
(実施例19 LS174t異種移植片モデルにおけるPHF−CPTの生体活性)
PHF−CPTを成長したLS174t腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにCPTで160nm/kg、q7dx3(IV)投与した。イリノテカン(可溶性低分子量CPT誘導体、コントロールとして使用)を、IPに投与し、また160nm/kg投与し、続いて同じ工程を行った。結果(図3および4)は、同じ用量で(薬剤物質による)、PHF−CPTは腫瘍増殖をイリノテカンより強力に抑えた(図3)。PHF−CPTで処置された動物の群は、イリノテカンで処置された動物の群より致死率が改善していた(図4)。
【0410】
PHF−CPTの最大容認用量(MTD)は、>24mg/kgであった。これは、低分子量CPTおよびイリノテカン(類似の工程で9〜10mg/kg)の用量より少なくとも2倍高い。
【0411】
(実施例20 PHF−CPT抗腫瘍毒性)
PHF−CPTの抗腫瘍毒性を、HT29モデル(腫瘍サイズ:100〜150μL)中で、コントロールとしてCPTおよびCPT−SIを使用してテストした。後者はCremofor(登録商標)乳液として投与した。CPTで45mg/kg(5xq3d.)投与されたPHF−CPTは、修飾されていないCPTを22.5mg/kg投与したばあい(同じ工程)と比べて、効果の点では高く、毒性の点では低かった。腫瘍増殖が0.10〜0.15cmから1.5cmに増えた時間によって測定したとき(処置をしないコントロールは27日対24であり22.5mg/kg、5xq4dのCPTを処置した場合40日)時対応、中間放出生成物、CPT−SIは、腫瘍動特性においても有意な効果は示さなかった。
【0412】
(参考文献)
【0413】
【表5】

【0414】
【表6】

【0415】
【表7】

【0416】
【表8】

【0417】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0418】
【図1】図1は、37℃でのラット血漿中のPHF−CPTからの例示的なプロドラグ放出実験を示す。挿入部:PHF−CPT動態のログ線形化。2つの独立した実験の平均値、全ポイントSD<平均値の10%、p<0.05
【図2】図2は、LS174t異種移植片を有するヌードマウスにおける例示的な腫瘍サイズ動特性検査を示す。矢印:薬物注射(qwx3)。最小抱合体投与であっても、イリノテカンコントロールより活性であることに注意。統計値:n=10/グループ、平均の25%以内の標準偏差;図には明らかに示されていない。
【図3】図3は、LS174t異種移植片を有する生存動物における腫瘍体積動特性を示す。n=10/グループ、イリノテカンおよびPHF−CPTは等用量(CPTで160nm/kg)。
【図4】図4は、図3の腫瘍サイズ動特性検査に対応する例示的な生存動物検査を示す。
【図5】図5は、PHF−CPT抱合体(111In−DTPAで標識されたPHF骨格鎖とHで標識されたCPT)の例示的な生動態実験を示す。
【図6】図6は、二重標識されたPHF−CPTのIV投与から24時間後のキャリア高分子(111In)とCPT(H)の例示的な生体内分布実験を示す。異種移植片:HT29、0.1〜0.15mL腫瘍; n=6/グループ
【図7】図7は、PHF−CPTの投与から24時間後の腫瘍体内組織におけるCPTの例示的な微細分布実験を示す。同じ領域のCPT蛍光強度(左)および位相コントラスト(右)画像。汚れていない非固定15μmスライス。フィールド:80×l30μm。
【図8】図8は、CPTとPHF=CPTとの間の体内組織分布1グラム当たりの例示的な比較%用量を示す。ヌードマウス(n=6)においてHT29異種移植片、1kg当たり20mgのCPTをIV投与、注射後48時間,%用量/g体内組織。フレキシマー−CPTを有する循環において、フレキシマー5X用量で腫瘍中26XレベルのCPT。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化1】

を有する1以上の部分で置換されるキャリアを含む抱合体であって、
ここで、各Mは、独立して、10kDa以下の分子量を有する修飾物質であり;
【化1A】

は、リンカーLに対するMの直接的結合または間接的結合を表し、
各Lは、独立して、必要に応じて置換されるスクシンアミド含有リンカーであり、これによって、該修飾物質Mは、アミド結合によって、直接的または間接的に該スクシンアミドリンカーに結合し、そして該キャリアは、エステル結合によって、直接的または間接的に各スクシンアミドリンカーに結合する、抱合体。
【請求項2】
各Lは、独立して、以下の構造:
【化2】

を有する部分を含み、
ここで、
【化3】

は、前記修飾物質Mに対する結合部位を表し;
【化4】

は、前記キャリアに対する結合部位を表し;qは、0から4の整数であり;Rは、水素、−C(=O)R1A、−C(=O)OR1A、−SR1A、SO1A、または脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分(ここで、各R1Aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリールである)であり;各Rは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、NO、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分、または−GRG1(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−、または−SONRG2−である(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリール部分である))、請求項1に記載の抱合体。
【請求項3】
が、水素またはアルキル、アルケニル、−C(=O)R1A、−C(=O)OR1A、−SR1A、SO1A(ここで、各R1Aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリールである)である、請求項2に記載の抱合体。
【請求項4】
が水素である、請求項3に記載の抱合体。
【請求項5】
各Rが水素である、請求項2に記載の抱合体。
【請求項6】
前記キャリアが、マクロ分子、可溶性高分子、ナノ粒子、ゲル、リポソーム、ミセル、縫合糸または移植片である、請求項1に記載の抱合体。
【請求項7】
前記キャリアがポリアルである、請求項6に記載の抱合体。
【請求項8】
前記ポリアルが、以下の構造:
【化5】

を有し、
ここで、n個のかっこで囲まれた各構造に関して、RおよびRのうちの一方は水素であり、他方は生体適合性基であり、そしてCに共有結合する炭素原子を含み;Rは、Cに共有結合する炭素原子を含み;nは整数であり;各R、R、RおよびRは、生体適合性基であり、該基は、独立して、水素または有機部分であり;各かっこで囲まれた構造nに関し、R、R、R、R、R、およびRの少なくとも1つはエステル結合によってスクシンアミドとカップリングするのに適切な官能基を有する、請求項7に記載の抱合体。
【請求項9】
前記ポリアルが、以下の構造:
【化6】

を有し、
ここで、各RおよびRは、生体適合性基であり、そしてCに共有結合する炭素原子を含み;Rは、Cに共有結合する炭素原子を含み;nは整数であり;各R、R、RおよびRは、生体適合性基であり、該基は、独立して、水素または有機部分であり;各かっこで囲まれた構造nに関し、R、R、R、R、R、およびRの少なくとも1つはエステル結合を介してスクシンアミドとカップリングするのに適切な官能基を含む、請求項7に記載の抱合体。
【請求項10】
前記キャリアが、以下の構造:
【化7】

を有する、請求項7に記載の抱合体。
【請求項11】
前記修飾物質が、生体分子、低分子、有機分子または無機分子、治療剤、微粒子、薬学的に有用な基または物質、マクロ分子、診断ラベル、キレート剤、挿入剤、親水性部分、分散剤、電荷変性剤、粘度変性剤、界面活性剤、凝固剤または凝集剤である、請求項1に記載の抱合体。
【請求項12】
前記修飾物質が、化学療法部分である、請求項11に記載の抱合体。
【請求項13】
前記修飾物質が、カンプトテシン(CPT)またはタキソールである、請求項11に記載の抱合体。
【請求項14】
前記修飾物質が、アミド結合の形成によって、必要に応じて置換されるコハク酸と共有結合に適切な官能基を含むように化学的に修飾され;コハク酸が、エステル結合によって前記キャリアと抱合される、請求項11に記載の抱合体。
【請求項15】
以下の構造:
【化8】

を有する、請求項14に記載の抱合体であって、
ここで、前記キャリアはポリアルであり;各Mは、独立して、修飾物質であり;pは1−12の整数であり;pは1−4の整数であり;tは、キャリアに抱合する修飾物質の数を指定する整数であり;Rは、水素、−C(=O)R1A、−C(=O)OR1A、−SR1A、SO1Aまたは脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分(各R1Aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリールである)であり;各RおよびRは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、NO、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分、または−GRG1である(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−、または−SONRG2−である(ここで、各RG1、RG2、RG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリール部分である))、請求項14に記載の抱合体。
【請求項16】
pが1である、請求項15に記載の抱合体。
【請求項17】
pが1であり、Rが水素である、請求項15に記載の抱合体。
【請求項18】
各MがCPTまたはタキソールである、請求項15に記載の抱合体。
【請求項19】
pが1であり、RおよびRがそれぞれ、水素であり、各MがCPTまたはタキソールである、請求項15に記載の抱合体。
【請求項20】
以下の構造:
【化9】

を有する1以上の部分で置換されるキャリアを含む抱合体を調製する方法であって、
ここで、各Mは、独立して、修飾物質であり、
【化9A】

は、リンカーLに対するMの直接的結合または間接的結合を表し、そして
各Lは、独立して、必要に応じて置換されるスクシンアミド含有リンカーであり、これによって、該修飾物質Mは、アミド結合を介して、直接的または間接的にスクシンアミドリンカーに結合し、かつ前記キャリアは、エステル結合を介して、直接的または間接的に各スクシンアミドリンカーに結合し、
該方法は、以下の工程:
キャリアを提供する工程;
1以上の修飾物質を提供する工程;
前記キャリアを、以下の構造:
【化10】

を有する、必要に応じて置換されるコハク酸無水物と、適切な条件下で反応させて、以下の構造:
【化11】

を有するスクシニル化キャリアまたはその塩を形成する工程であって、
ここで、qは、0−4の整数であり;各Rは、独立して、水素、ハロゲン、−CN、NO、脂肪族、脂環式、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、芳香族、複素芳香族部分、または−GRG1である(ここで、Gは、−O−、−S−、−NRG2−、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−C(=O)O−、−C(=O)NRG2−、−OC(=O)−、−NRG2C(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NRG2−、−NRG2C(=O)O−、−NRG2C(=O)NRG2−、−C(=S)−、−C(=S)S−、−SC(=S)−、−SC(=S)S−、−C(=NRG2)−、−C(=NRG2)O−、−C(=NRG2)NRG3−、−OC(=NRG2)−、−NRG2C(=NRG3)−、−NRG2SO−、−NRG2SONRG3−、または−SONRG2−(ここで、各RG1、RG2およびRG3は、独立して、水素、ハロゲンまたは必要に応じて置換される脂肪族、ヘテロ脂肪族、脂環式、ヘテロ脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族、アリールまたはヘテロアリール部分である)である)、
ここで、sは該キャリア上のスクシニル部分の数を表す、工程;ならびに
該スクシニル化キャリアを1以上の修飾物質部分(M)と反応させ、それによって、少なくとも1つの修飾物質部分が、直接的または第2リンカーを介して間接的に、該キャリアに存在するスクシニル部分とともにアミド結合を形成し、
それによって、以下の構造:
【化12】

を有する抱合体(ここで、Rおよびqは上記のとおりであり;
【化12A】

は、スクシンアミドリンカーへのMの直接的または間接的結合を表し;tは、t≦sとなるような該キャリアに抱合する修飾物質部分の数を表す整数である)を生成する、工程
を包含する、方法。
【請求項21】
各Rは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、−C(=O)R2Aまたは−ZR2Aである(ここで、Zは、−O−、−S−、−NR2Bである(ここで、各R2AおよびR2Bは、独立して、水素、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、ヘテロ脂肪族、ヘテロ脂環式、アリールまたはヘテロアリール部分である))、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
各Rは、独立して、水素またはアルキルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記スクシニル化キャリアをカップリングする工程において、該キャリア上のスクシンアミド酸部位の一部が未反応のままである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記キャリアは、生分解性の生体適合性ポリアセタールであって、該ポリアセタール繰返し構造単位の少なくとも一部が、以下の化学構造:
【化13】

を有し、
ここで、n個のかっこで囲まれた各構造に関し、RおよびRの一方は水素であり、他方は生体適合性基であり、そしてCに共有結合する炭素原子を含み;Rは、Cに共有結合する炭素原子を含み;nは整数であり;各R、R、R、およびRは、生体適合性基であり、該基は、独立して、水素または有機部分であり;各かっこで囲まれた構造nに関し、R、R、R、R、R、およびRの少なくとも1つはエステル結合を介してスクシンアミドとカップリングするのに適切な官能基を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記キャリアが、生分解性の生体適合性ポリケタールであり、該ポリケタール繰返し構造単位の少なくとも一部が、以下の化学構造:
【化14】

を有し、
ここで、各RおよびRは、生体適合性基であり、そしてCに共有結合する炭素原子を含み;Rは、Cに共有結合する炭素原子を含み;nは整数であり;各R、R、RおよびRは、生体適合性基であり、そして、独立して、水素または有機部分であり;各かっこで囲まれた構造nに関し、R、R、R、R、R、およびRの少なくとも1つはエステル結合を介してスクシンアミドとカップリングするのに適切な官能基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記官能基がヒドロキシル部分である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記キャリアがPHFである、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つのMが、CPTまたはタキソールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
各MがCPTまたはタキソールを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
CPTまたはタキソールが、グリシン部分を介してスクシンアミドリンカーに間接的に結合される、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の抱合体と、薬学的に適切なキャリアまたは希釈剤とを含む、組成物。
【請求項32】
請求項1に記載の抱合体を含む組成物であって、少なくとも1つのMがCPTまたはタキソールを含み、該抱合体が有効量の治療剤と結びつき、該治療剤が、一定の期間にわたる抱合体マトリックスの分解または該マトリックスの外部への治療剤の拡散により該抱合体マトリックスから放出されたものに取り込まれる、組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の抱合体を含む組成物であって、少なくとも1つのMがCPTまたはタキソールを含む、組成物。
【請求項34】
請求項1に記載の抱合体を含む組成物であって、各MがCPTまたはタキソールを含む、組成物。
【請求項35】
CPTまたはタキソールが、グリシン部分を介してスクシンアミドリンカーに間接的に結合する、請求項34または35に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物が、式(I):
【化15】

を有するPHF−CPT抱合体を含み、
ここで、n、kおよびmは、それぞれ、10と300との間の整数、1と20の間の整数および0と300との間の整数である、請求項32に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が、式(II):
【化16】

を有するPHF−タキソール抱合体を含み、
ここで、n、kおよびmは、それぞれ、10と300との間の整数、1と20の間の整数および0と300との間の整数である、請求項32に記載の組成物。
【請求項38】
疾患または障害を処置する方法であって、
以下の構造:
【化17】

を有する1以上の部分で置換されるキャリアを含む抱合体の有効量を、処置を必要とする被験体に投与する工程であって、
ここで、各Mは、独立して、分子量が10kDa以上の修飾物質であって、
【化17A】

は、リンカーLへのMの直接的または間接的結合を表し、
各Lは、独立して、必要に応じて置換されるスクシンアミド含有リンカーであり、これによって、該修飾物質Mは、アミド結合を介して、直接的または間接的にスクシンアミドリンカーに結合し、かつ前記キャリアは、エステル結合を介して、直接的または間接的に各スクシンアミドリンカーに結合するキャリアを含み、
ここで、該修飾物質は、該疾患または障害の処置に適切な治療剤であり;該修飾物質は、二段階プロセスによって抱合体から放出される、方法。
【請求項39】
前記修飾物質が、送達の所望の部位における前記抱合体の移植によって局所送達される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記修飾物質が、ビタミン、抗AIDS物質、抗癌物質、放射性核物質、抗生物質、免疫抑制剤、抗ウイルス物質、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、睡眠薬、抗ヒスタミン、潤滑剤、トランキライザー、抗痙攣薬、筋弛緩剤および抗パーキンソン病物質、チャンネル遮断薬を含む抗痙性剤および筋肉収縮剤、縮瞳薬および抗コリン作用薬、抗緑内障化合物、抗抗寄生虫および/または抗原虫化合物、細胞増殖阻害剤および抗癒着分子を含む細胞−細胞外マトリックス相互作用の調節因子、血管拡張剤、DNA、RNAまたはタンパク質合成の抑制剤、降圧剤、鎮痛剤、解熱剤、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症剤、抗血管形成因子、分泌抑制因子、抗凝血剤および/または抗血栓剤、局所麻酔剤、眼病薬、プロスタグランジン、抗うつ剤、抗精神病物質、嘔吐抑制剤、および造影剤からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1つの修飾物質がCPTまたはタキソールである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
各修飾物質がCPTまたはタキソールである、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
ビタミン、抗AIDS物質、抗癌物質、放射性核物質、抗生物質、免疫抑制剤、抗ウイルス物質、酵素阻害剤、神経毒、オピオイド、睡眠薬、抗ヒスタミン、潤滑剤、トランキライザー、抗けいれん薬、筋弛緩剤および抗パーキンソン病物質、チャンネル遮断薬を含む抗痙性剤および筋肉収縮剤、縮瞳薬および抗コリン作用薬、抗緑内障化合物、抗寄生虫および/または抗原虫化合物、細胞増殖阻害剤および抗癒着分子を含む細胞−細胞外マトリックス相互作用の調節因子、血管拡張剤、DNA、RNAまたはタンパク質合成の抑制剤、降圧剤、鎮痛剤、解熱剤、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症剤、抗血管形成因子、分泌抑制因子、抗凝血剤および/または抗血栓剤、局所麻酔剤、眼病薬、プロスタグランジン、抗うつ剤、抗精神病物質、嘔吐抑制剤、造影剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの追加の生物学的に活性な化合物を、前記抱合体とともに投与する工程をさらに包含する、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−504253(P2007−504253A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525524(P2006−525524)
【出願日】平成16年9月4日(2004.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/029130
【国際公開番号】WO2005/023294
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】