説明

放出体のスペクトル発光特性を変化させる放出体結合性ペプチド

本発明は、その抗原結合性ポケットが放出体と相互作用するとき放出体のスペクトル発光特性を変化させる放出体結合性ペプチドに関する。本発明の放出体結合性ペプチドは、特に抗体および抗体フラグメントの成分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その抗原結合性ポケットが放出体(emitter)と相互作用するとき放出体のスペクトル発光特性を変化させる放出体結合性ペプチド(emitter-binding peptide)に関する。本発明の放出体結合性ペプチドは、特に抗体および抗体フラグメントの成分である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
物質を診断的に検出しかつそれらの濃度を決定するために、多くの場合において、決定すべき物質に対して高いアフィニティーを有する、生物学的分子、例えば、ペプチド、タンパク質またはオリゴヌクレオチドに基づくin vitro 診断測定法が現在使用されている。この目的のために、タンパク質およびペプチドを使用することが好ましく、抗体および抗体フラグメントを使用することが特に好ましい。
【0003】
ある種のin vitro 診断方法、例えば、エレクトロルミネッセンスは決定すべき物質に対する種々の抗体の組み合わせに基づき、ここで一方の抗体は決定すべき物質を研究試料から分離するために使用され、そして他方の抗体は診断的に検出されるシグナル分子を担持する。エレクトロルミネッセンスの診断法の場合において、標識化された抗体を光学的に検出する[Grayeski M. L.、Anal. Chem. 1987、59、1243] 。
【0004】
エレクトロルミネッセンスに加えて、光誘導燐光および蛍光を診断的測定法に使用される分子の光学的性質として使用することもできる。エレクトロルミネッセンスおよび燐光に比較して、特に蛍光は、分子の光学的性質として、高い検出感度および大きい力学的範囲にわたる測定シグナルの高い線形性という利点を提供する。
【0005】
発蛍光団の蛍光を検出するために、蛍光プロセス内の種々の原理を使用する種々の測定法が開発された。確立された測定法において、例えば、偏光の弱化 (蛍光偏極 = FP) 、フォトン有効寿命の測定 (蛍光有効寿命の測定 - FLM) 、漂白性質 (蛍光光漂白回収率 - FPR) および種々の発蛍光団間のエネルギー移動 (蛍光-共鳴-エネルギー移動 - FRET) が使用される [Williams A. T. 他、Methods Immunol. Anal. 1993、1、466; Youn H. J. 他、Anal. Biochem. 1995、Oswald B. 他、Anal. Biochem. 2000、280、272; Szollosi J. 他、Cytometry 1998、34、159] 。
他の検出方法は、偏極面の変化および燐光の検出に基づく。
【0006】
前述の方法において、使用する抗物質抗体は種々の目的を満足する。一方において、抗物質抗体は試料から決定すべき物質の分離に使用するが、他方において、それらはまた検査すべき物質上で使用する種々のシグナル伝達物質を突き止めまたは位置決定する目的を満足する。試料中の、例えば、抗体を検出するために、主要な光学的および放射能測定法が確立されてきているが、また音響的測定法 (例えば、下記の文献を参照のこと: Cooper M. A. 他、Direct and Sensitive Detection of a Human Virus by Rupture Event Scanning. Nat. Biotechnol. 2001 Sep; 19(9): 833-7) および磁気的測定法が知られている。光学的測定法は最大の分布を獲得した [Nakamura R. M.、Dito W. R.、Tucker E. S. (編者) 、Immunoassays: Clinical Laboratory Techniques for the 1980s、A. R. Liss、New York。Edwards R. (編者) 、Immunoassays: Essential Data、1996、Wiley Europe] 。
【0007】
大部分の既に利用可能な測定法において、抗物質抗体は発蛍光団で標識化される。この標識化は特異的および非特異的化学的カップリングにより実施される。標識化された抗体は研究試料に過剰に添加される。これは検査すべきすべての物質分子を結合するために必要である。さらに、この方法において、一般に、基準として、検査すべき物質の分離に1つの抗物質抗体を使用し、そして研究物質を他の結合部位において検出する第2抗物質抗体をシグナリング分子で標識化する。このようにして、非結合であるが、シグナルを発生する抗体による測定結果の歪みを回避することができる。しかしながら、この手法は、分離工程により生ずる組織的かつ技術的費用の増加およびより高い原価を伴う。しかしながら、このような高い技術的費用は、この高速診断法の確立を妨げ、特に不都合であることが証明された。
【0008】
低分子量分子に対して向けられた抗体およびペプチドは既に知られている。また、これらは色素分子に対して向けられた抗体およびペプチドを包含する。Simeonov A. 他、Sequence 200、290、307-313には、スチルベンに対する抗体 (「青色蛍光抗体」) が記載されている。これらの抗体は特定の光化学的異性化プロセスを触媒し、吸収を赤色にシフトさせ、UV-VIS範囲において蛍光最大を生ずる (吸収シフトの最大12 nm、蛍光シフト22 nm) 。しかしながら、Simeonov A. 他は、シアニン色素の場合において蛍光量子効率を600〜1200 nmの波長範囲において保存する間の赤色シフトに対して何も言及していない。
【0009】
Watt R. M. 他 (Immunochemistry 1977、14、533-541) は、既知の抗蛍光抗体構築物のスペクトル性質を記載している。フルオレセインを結合した後、抗体は可視スペクトル範囲において吸収最大および蛍光最大をわずかに12 nmまたは5 nmだけシフトさせる。さらに、蛍光量子効率の強い減少 (約90%だけ) が起こる。
【0010】
Rozinov M. N. 他 (Chem. Biol. 1998、5、713-728) は、テキサス・レッド、ローダミン・レッド、オレンジ・グリーン514およびフルオレセインに結合する、ファージライブラリーから12マーのペプチドを選択することを記載している。テキサス・レッドについて、吸収および蛍光の赤色シフトが観測されたが、シフトはわずかに2.8 nmまたは1.4 nmだけであった。
【0011】
さらに、種々の色素、例えば、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、テキサス・レッド、アレキサ・フルオリン488、BODIPY FL、ルシファー・イエロウおよびカスケード・ブルー、オレゴン・グリーンに対する抗体は既に商業的に入手可能である (Molecular Probe Company, Inc. USA) 。しかしながら、これらは生物分析的目的のためのIgGポリクローナル抗体であり、ある程度制御不可能な交差反応性を有し、そして厳格な選択方法から産生されない。
【0012】
改良された放出体結合性ペプチド、特に前述の測定法にいっそう適する特異的抗体がさらに必要とされている。この場合において、特に蛍光量子効率を保存すると同時に赤色シフトを生成する放出体結合性ペプチド、例えば、600〜1200 nmの波長範囲におけるシアニン色素は好都合であろう。
【発明の開示】
【0013】
この目的は、本発明によれば、その抗体結合性ポケットが放出体と相互作用するとき放出体のスペクトル発光性質を変化させることを特徴とする放出体結合性ペプチド、適当な生物を放出体で免疫化することを含んでなり、ここで前記放出体がポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、インドトリカルボシアニン、メロシアニン、スチリル、スクアリリウムおよびオキソノール色素およびローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素から成る群から選択される、本発明による放出体結合性ペプチドを製造する方法、およびin vivo 診断のための診断剤としての本発明による放出体結合性ペプチド、核酸、宿主細胞または抗体または複合体の対応する使用により達成される。適当な態様は従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明の第1面は、放出体結合性ペプチドの抗原結合性ポケットが放出体と相互作用するとき放出体のスペクトル発光特性を変化させることを特徴とする、放出体結合性ペプチドに関する。
700〜1000 nmのスペクトル範囲内に少なくとも吸収最大および/または蛍光最大、好ましくは750〜900 nmのスペクトル範囲内に少なくとも吸収最大および/または蛍光最大を有する色素を含んでなる、本発明による放出体結合性ペプチドは好ましい。
【0015】
放出体の部分の放出特性の変化が偏極面、蛍光強度、燐光強度、蛍光有効寿命、および吸収最大および/または蛍光最大の深色シフトの変化から選択される、本発明による放射体結合性ペプチドはさらに好ましい。本発明は、これらの特別の現象に限定されないが、本発明の範囲内に入る用語 「放出特性の変化」 はすべての物理的現象または効果を含み、ここで放出体において発生する高エネルギー放射線はその性質を変更し、この場合において、この変化は放出体-結合性相手および物質との物質-放出体複合体または物質-検出因子-放出体-複合体の結合/非結合に定量的に依存する。1つの態様において、物質は、例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよび特に抗体または抗体フラグメントである。本発明の範囲内において、抗体フラグメントは、少なくともいわゆる 「相補性決定領域」 (“CDR”) を含有する抗原-結合性領域を含んでなるフラグメントである。この場合において、抗原-結合性領域は完全な可変性鎖VHおよびVLを含んでなることが最も好ましい。
【0016】
本発明による放出体結合性ペプチドの特に好ましい面において、抗体または抗体フラグメントは、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、ヒト化抗体、Fabフラグメント、特にモノマーのFabフラグメント、scFvフラグメント、合成および組換え抗体、scTCR鎖およびそれらの混合物から選択される。
【0017】
合成および組換え抗体または抗体フラグメントの場合において、HuCALライブラリーからのもの (WO 97/08320; Knappik (2000) J. Mol. Biol. 296、57-86; Krebs 他、J. Immunol. Methods 2001 Aug 1; 254(1-2): 67-84) は特に好ましい。これらは天然に存在するフォーマットの1つにおいて完全な免疫グロブリンまたは抗体 (IgA、IgD、IgE、IgG、IgM) としてまたは抗体フラグメントとして存在することができ、ここで抗体フラグメントは少なくともVLについてアミノ酸位置4〜103およびVHについてアミノ酸位置5〜109、好ましくはVLについてアミノ酸位置3〜107およびVHについてアミノ酸位置4〜111、特に好ましくは完全な可変鎖VLおよびVH (VLについてアミノ酸位置1〜109およびVHについてアミノ酸位置1〜113) を含んでなる (ナンバリングはWO 97/08320に従う) 。
【0018】
好ましい態様において、抗体または抗体フラグメントは、この場合において、下記の配列中に含有されるCDR領域の少なくとも1つを含んでなる: 配列番号1、2、5、6、9、10、13、14、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37および39 (VL: CDR1位置24〜34、CDR2位置50〜56、CDR3位置89〜96; VH: CDR1位置26〜35、CDR2位置50〜65、CDR3位置95〜102) 、特にVL CDR3またはVH CDR3。この場合において、下記の可変鎖VLの1つを含んでなる抗体 (またはこのような抗体のフラグメント) は特に好ましい: 配列番号2、6、10、14、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37および39の配列中に含有される可変鎖VLまたは配列番号1、5、9および13配列中に含有される可変鎖VL。
【0019】
下記の配列対の1つの中に含有されるVH/VL対の1つを含んでなる抗体 (またはこのような抗体のフラグメント) は最も好ましい: 配列番号1+2; 配列番号5+6; 配列番号9+10; 配列番号13+14; 配列番号5+17; 配列番号5+19; 配列番号5+37; 配列番号9+21; 配列番号9+23; 配列番号9+25; 配列番号9+27; 配列番号9+29; 配列番号9+31; 配列番号9+33; 配列番号9+39; および配列番号13+35。この場合において、下記のFabフラグメントは特に好ましい: MOR02628、MOR02965、MOR02977、MOR02969、MOR03263、MOR03325、MOR03285、MOR03201、MOR03267、MOR03268、MOR03292、MOR03294、MOR03295、MOR03309、MOR03293およびMOR03291。こうして記載された本発明による抗体から出発して、本発明による性質をまた示す新規な修飾された抗体は当業者に明らかな方法において得ることができる。
【0020】
特に重鎖および軽鎖の両方のCDR領域がアフィニティーならびに選択性および特異性の原因となることは当業者に知られている。この場合において、特にVHのCDR3およびVLのCDR3、次いでVHのCDR2およびVLのCDR1はある役割を演ずるが、VHのCDR1およびVLのCDR2はほとんどの場合において従属の役割を演ずる。したがって、抗体のアフィニティーならびに選択性および特異性を最適化するために、特にCDR領域が示唆される (また、例えば、下記の文献を参照のこと: Schier 他、J. Mol. Biol. (1996) 263、551) 。
【0021】
この場合において、例えば、CDR領域の1または2以上は、例えば、特別に本発明による性質を既に示す他の抗体のCDR領域と交換するか、あるいはまた対応するCDR配列のライブラリーと交換することができ (この目的に対して実施例1に記載する最適化を参照) 、これらのライブラリーは完全にランダムの変形を生成するか、あるいは特異的アミノ酸またはそれらの組み合わせの方向において多少強い好み (傾向) を含有する。その上、当業者は同一方法において完全な可変鎖を他の規定された抗体の対応する鎖またはこのような鎖の多様なライブラリーと交換することもできる。
【0022】
さらに、特別に突然変異誘発によりCDR中の1または2以上のアミノ酸基と交換する方法は当業者に知られている。このような交換するアミノ酸残基の同定は、ここにおいて、例えば、種々の抗体の配列の比較および対応する位置に保存されたまたは少なくとも高度に相同性の基の同定に基づいて実施される。CDRに対する交換において、この場合において当業者はまたいわゆる 「カノニカル構造」 (Al-Lazikani 他、J. Mol. Biol. (2000) 295、979; Knappik 他、J. Mol. Biol. (2000) 296、57) の知識を有し、この構造はCDR領域の三次元配置に対する影響を有し、そして設計に対応する最適化法を考慮することができる。
【0023】
その上、抗体または抗体フラグメントの骨格領域をまた変化させていっそう安定なまたはいっそう発現可能な分子を得る技術は当業者によく知られている (WO 92/01787; Nieba 他 (1997) Protein Eng. 10、435; Ewert 他 (2003) Biochemistry 42、1517) 。
これらの既に記載された抗体または抗体フラグメントの修飾方法に加えて、当業者は、本発明による抗体の知識およびこの出願に記載されている測定法を使用して、記載された抗体のアミノ酸配列または組成をさらに変化させることもでき、そして、記載されたアッセイおよび測定法を使用することによって、本発明による抗体を区別する性質と合致する性質を有する、修飾された抗体が産生されたかどうかを決定することができる。
【0024】
本発明の他の面は、本発明による抗体または抗体フラグメントの1つをコードする核酸分子に関する。好ましい態様において、この場合において、これらは下記の可変鎖の1つをコードする核酸分子である: 配列番号2、6、10、14、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37および39の配列中に含有される可変鎖VLまたは配列番号1、5、9および13の配列中に含有される可変鎖VH。この場合において、配列番号3、4、7、8、11、12、15、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38および40に従う配列は特に好ましい。
本発明の放出体結合性ペプチドは、最適には、50 nmより小さい、好ましくは10 nmより小さい放出体に対する結合アフィニティーを示す。
【0025】
他の面は、放出体が700〜1000 nmのスペクトル範囲内の少なくとも1つの吸収最大および/または蛍光最大、好ましくは少なくとも750〜900 nmのスペクトル範囲内の少なくとも1つの吸収最大および/または蛍光最大を示す色素を含んでなる、本発明の放出体結合性ペプチドである。この色素の深色シフトは、放出体検出因子との相互作用後における吸収最大および/または蛍光最大のより高い波長へのシフトが、15 nmより大きい値、好ましくは25 nmより大きい値、最も好ましくはほぼ30 nmだけ起こるように選択される。この場合において、シフトは必ずしも色素の1性質であるとして考慮することは必要ではない。通常、シフトは色素に合致する放出値の1つの変化、すなわち、ある単一の波長における変化として測定されるであろう。この目的のために、これらはこの分野において知られている適当な光学的測定因子が提供される。また、これは偏極面、蛍光強度、燐光強度、蛍光有効寿命、および吸収最大および/または蛍光最大の深色シフトにおける変化の測定に適用される。
【0026】
本発明による放出体結合性ペプチドのために、使用する放出体は、ポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、インドトリカルボシアニン、メロシアニン、スチリル、スクアリリウムおよびオキソノール色素およびローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素から成る群から選択されることが好ましい。一般に、本発明による物質-放出体-複合体の放出体は、一般式 (I) のシアニン色素、およびこれらの化合物の塩および溶媒和物を含んでなることができる:
【化1】

式中Dは基 (II) または (III) :
【化2】

であり、ここで星印で標識した位置は基Bとの結合点を意味し、そして基 (IV)、(V)、(VI)、(VII) または (VIII) :
【化3】

であることができ、
式中、R1およびR2は、互いに独立して、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和、分枝鎖状または直鎖状C1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、および/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されることができ; R3およびR4は、互いに独立して、基-COOE1、-CONE1E2、-NHCOE1、-NHCONHE1、-NE1E2、-OE1、-OSO3E1、-SO3E1、-SO2NHE1または-E1であり、ここでE1およびE2は、互いに独立して、水素原子、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和、分枝鎖状または直鎖状C1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、および/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されていてもよく; R5は水素原子、メチル、メチルまたはプロピル基、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子であり、bは2または3の数であり、そしてXおよびYは、互いに独立して、O、S、=C(CH3)2または-(CH=CH)-である。
【0027】
近赤外スペクトル範囲 (>750 nm) における吸収および蛍光を有するシアニン色素に対する抗体の高度にアフィニティーの結合後、約30 mm〜より高い波長による吸収最大および蛍光最大のシフト (深色シフト) が発生することを、十分に驚くべきことには、発見することができた。この原理を使用して、例えば、大きい濃度範囲を介して、全血試料からのシグナルを直接かつスペクトル的に別々に検出することが可能であり、ここでこのシグナルは決定すべき物質の濃度に関して線形的に挙動する。
【0028】
放出体は物質と複合体を形成することができる。本発明の範囲内で、物質-放出体複合体として下記一般式のものを使用する:
S-E
【0029】
式中Sは検査すべき物質であり、そしてEは放出体検出因子との相互作用において放出特性の変化と反応する部分を含んでなる放出体である。本発明による複合体の構造成分として、なかでも、少なくとも600〜1200 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および蛍光最大を有する色素は適当である。この場合において、少なくとも700〜1000 nmのスペクトル範囲内において吸収最大および蛍光最大を有する色素は好ましい。これらの基準を満足する色素は、例えば、下記のクラスの色素である: ポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、メロシアニンおよびオキソノール色素、ローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素、テトラピロール色素、特にベンゾポルフィリン、クロリン、バクテリオクロリン、フェオホルバイド、バクテリオフェオホルバイド、プルプリンおよびフタロシアニン。
【0030】
好ましい色素は、750〜900 nm間において吸収最大を有するシアニン色素であり、そしてインドトリカルボシアニンは特に好ましい。また、本発明による複合体の構造成分は、本発明による方法により濃度の決定を実施する物質である。
これらは、例えば、抗原、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、血液成分、血清成分、脂質、薬剤および低分子量化合物、特に糖、色素または500 ダルトン以下の分子量をもつ他の化合物から選択される。
【0031】
好ましい色素は、750〜900 nm間において吸収最大を有するシアニン色素であり、そしてインドトリカルボシアニンは特に好ましい。
色素は構造要素を含有し、それらの構造要素を介して物質の構造に対する共有結合が形成される。構造要素は、例えば、カルボキシ基、アミノ基、およびヒドロキシ基をもつリンカーである。
【0032】
光学的測定の場合において、この測定は種々の方法で実施することができ、そして主として放出体 (例えば、発蛍光団) のスペクトル性質の特徴的変化のタイプに従い指示される。一般に、吸収波長および発光波長のシフトの検出、および大部分について抗体に結合する放出体の部分を検出する波長における吸収最大および/または蛍光最大の測定は好ましい。抗体結合発蛍光団のスペクトル性質における変化に依存して、他の性質、例えば、フォトン有効寿命、偏極、および漂白挙動を光学的測定に使用することもできる。
近赤外線スペクトル範囲における発蛍光団の特別の利点は、血液成分によるシャドウィング速度が低いことにある。これに関して、検出すべきシグナルを主要な程度に変化させないで、深い透過が可能となる。
【0033】
その上、発蛍光団を結合した後UV範囲においてスペクトル性質を変化させることができる発蛍光団に対する抗体は、既に当業者に知られている。抗体の抗原結合性ポケットに発蛍光団を結合させることによって、主として蛍光強度、吸収最大、発光最大、およびフォトン有効寿命を変化させることができる[Simeonov A. 他、Sequence (2000) 307-313] 。これらの既知の抗体は放出体 (発蛍光団) に対して向けられているが、光の可視およびUV範囲において吸収および蛍光発光を有する。
【0034】
本発明の他の面は、in vitro 診断のための本発明による放出体結合性ペプチドの使用に関する。
この目的のために、本発明による放出体結合性ペプチドは、診断キット中に、必要に応じて他のアジュバントと一緒に存在することもできる。さらに、本発明によるこれらのキットのすべては特別の使用説明書および文書 (例えば、検量線、定量の指示、およびその他) を含有することができる。
【実施例】
【0035】
次に添付図面を参照して実施例に基づいて本発明をいっそう詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1放出体-結合性抗体の選択、産生および特性決定: シアニン色素Fuji 6-4 (ZK203468) [3,3-ジメチル-2-{4-メチル-7-[3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(2-スルホナトエチル)-3H-インドリウム-2-イル]ヘプタ-2,4,6-トリエン-1-イリデン}-1-(2-スルホナトエチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸三ナトリウム、内部塩] に対するHuCAL GOLD抗体フラグメントの選択
HuCAL GOLD抗体ライブラリー:
HuCAL GOLD抗体ライブラリー: HuCAL GOLDは、Fab抗体フラグメントのフォーマットにおける完全に合成の、モジュラーヒト抗体ライブラリーである。HuCAL GOLDは、HuCAL-scFv1ライブラリーについて記載されたHuCAL-コンセンサス-抗体遺伝子に基づく (WO 97/08320; Knappik (2000) J. Mol. Biol. 296、57-86; Krebs 他、J. Immunol. Methods 2001 Aug 1; 254(1-2): 67-84) 。HuCAL GOLDにおいて、すべての6つのCDR区域は、ヒト抗体におけるこれらの区域の組成に対応して、いわゆるトリヌクレオチド突然変異誘発 (Virnekas 他 (1994) Nucl. Acids Res. 1994 Dec 25; 22(25): 5600-7) を使用することによって多様化されるが、以前のHuCALライブラリー (HuCAL-scFv1およびHuCAL-Fab1) において、VHおよびVL中のCDR3-区域のみが天然組成に対応して多様化されるであろう (参照: Knappik 他、2000) 。その上、補正されたスクリーニングプロセス、いわゆるCys展示 (WO 01/05950) もまたHuCAL GOLDにおいて見出される。スクリーニングプロセスに使用されるベクターpMORPH23は第1図に見出される。
【0036】
Vλ位置1および2
もとのHuCALマスター遺伝子の真性N-末端を使用して、それらの遺伝子を構築した: VLλ1: QS (CAGAGC) 、VLλ2: QS (CAGAGC) およびVLλ3: SY (AGCTAT) 。これらの配列はWO 97/08320に記載されている。HuCAL-scFv1ライブラリーの産生において、これらの2つのアミノ酸基を 「DI」 において変化させてクローニング (EcoRI部位) を促進した。これらの基はHuCAL-Fab1およびHuCAL GOLDの産生において保存される。したがって、すべてのHuCALライブラリーは、5’-末端にEcoRVインターフェースGATATC (DI) をもつVLλ遺伝子を含有する。すべてのHuCALカッパ遺伝子 (マスター遺伝子およびライブラリー中のすべての遺伝子) はいずれの場合においても5’-末端にDIを含有する。なぜなら、これらは真性N-末端を表すからである (WO 97/08320) 。
【0037】
VH位置1
もとのHuCALマスター遺伝子の真性N-末端を使用して、それらの遺伝子を産生した: VH1A、VH1B、VH2、VH4、および第1アミノ酸基としてQ (= CAG) をもつVH6およびVH3ならびにE (= GAA) をもつVH5。対応する配列はWO 97/08320に見出される。HuCAL-Fab1ならびにHuCAL GOLDライブラリーのクローニングにおいて、アミノ酸Q (= CAG) はすべてのVH遺伝子中のこの位置1に組込まれた。
【0038】
ファージミドの産生
HuCAL GOLD抗体ライブラリーからまたは成熟ライブラリーからの大腸菌 (E. coli) TOP10F’細胞をヘルパーファージで感染させることによって、大量のファージミドを産生し、濃縮した。この目的に対して、34 μg/mlのクロラムフェニコール/10 μg/mlのテトラサイクリン/1%のグルコースを含む2×YT培地中で37℃においてHuCAL GOLDまたは成熟ライブラリー (TOP10F’細胞中の) をOD600 = 0.5までに培養した。次いで、37℃においてVCSM13ヘルパーファージを使用して感染を実施した。
【0039】
感染した細胞をペレット化し、2×YT /34 μg/mlのクロラムフェニコール/10μg/mlのテトラサイクリン/50 μg mlのカナマイシン/0.25 mmolのIPTG中に再懸濁させ、22℃において一夜培養した。ファージを上清からPEGで2×沈降させ、遠心により収集した (Ausubel (1998) Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, Inc.、New York、USA) 。ファージをPBS/20%グリセロール中に再懸濁させ、-80℃において貯蔵した。
【0040】
個々の選択ラウンド間のファージミドの増幅を次のようにして実施した: 対数期の大腸菌 (E. coli) TG1細胞を選択したファージで感染させ、1%のグルコース/34 μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレート上で平坦化した。一夜インキュベートした後、細菌コロニーを擦り取り、新しく培養し、VCSM13ヘルパーファージで感染させた。
【0041】
色素Fuji 6-4 (ZK203468) に対する抗体の一次的選択
HuCAL GOLD抗体ライブラリーの精製し、濃縮したファージミドを標準的選択プロセスにおいて使用した。抗原として、BSA-またはトランスフェリン-カップルドZK203468を選択的に使用した。抗原をPBS中に取り、マクシソープ (MaxisorpTM) マイクロタイタープレートF96 (Nunc) 上に50 μg/mlの濃度で適用した。マクシソーププレートを4℃において一夜インキュベートした ( 「コーティング」 ) 。マクシソーププレートをPBS中の5%のミルクでブロックした後、抗原負荷し、ブロックしたウェルに約2E+13 のHuCAL GOLDファージを添加し、そこで一夜または室温において2時間インキュベートした。数回の洗浄工程 (これらは進行する選択ラウンドでいっそうストリンジェントとなった) 後、結合したファージを20 mmolのDTTまたは100μmolの非複合化ZK203468で溶離した。全体的に見て、3回の連続的選択ラウンドを実施し、ここでファージ増幅を、前述したように、選択ラウンド間で実施した。
【0042】
発現のために選択したFabフラグメントのサブクローニング
3ラウンドを含んでなる抗体の選択後、単離したHuCALクローンのFabコーディングインサートを発現ベクターpMORPHX9_MS (第2図参照) 中でサブクローニングして、Fabフラグメントの引き続く発現を促進した。この目的で、選択したHuCAL Fabクローンの精製したプラスミド-DNAを制限酵素XbaIおよびEcoRIで消化した。Fabコーディングインサートを精製し、相応して消化したベクターpMORPHX9_MS中に結合した。このクローニング工程により、Fab発現性ベクターpMORPHX9_Fab_MSが生じた。このベクターにより発現されるFabフラグメントは、精製および検出のための2つのC-末端タグ (MycタグおよびStrepタグII) を担持する。
【0043】
ZK203468結合性Fabフラグメントのスクリーニングおよび特性決定
選択およびサブクローニング後に数千のクローンが単離され、これらをサブクローニングし、そしてパンニングにおいて使用する抗原ZK203468-BSAおよび-トランスフェリンの特異的検出のための384ウェルのフォーマットでELISAにより試験した。これに関して同定されたクローンを阻害-ELISAにおいて非複合化色素の効率よい結合について研究した。
【0044】
これにより、下記の配列が生じた: 親FabフラグメントMOR02628 (タンパク質配列、配列番号1 (VH-CH) および配列番号2 (VL-CL); DNA配列、配列番号3 (VH-CH) および配列番号4 (VL-CL)) 、MOR02965 (タンパク質配列、配列番号5 (VH-CH) および配列番号6 (VL-CL); DNA配列、配列番号7 (VH-CH) および配列番号8 (VL-CL)) およびMOR02977 (タンパク質配列、配列番号9 (VH-CH) および配列番号10 (VL-CL); DNA配列、配列番号11 (VH-CH) および配列番号12 (VL-CL)) 、およびMOR02969 (タンパク質配列、配列番号13 (VH-CH) および配列番号14 (VL-CL); DNA配列、配列番号15 (VH-CH) および配列番号16 (VL-CL)) 、これらは複合化しなかった色素ZK203468に効率よく結合する。
【0045】
実施例2LCDR3領域の交換による親抗体フラグメントの最適化
LCDR3ライブラリーのクリーニング
4つの親クローンMOR02628、MOR02965、MOR02969およびMOR02977のプラスミド-DNAを制限酵素EcoRIおよびXbaIで消化し、そして産生された発現ベクターpMORPHX9_MSからの完全なFab-インサートを相応して切断した展示ベクターpMORPH23中でサブクローニングした。この工程は遺伝子IIIの調製に必要である。この遺伝子IIIはファージ表面上でFabフラグメントを提示するとき使用される。他の工程において、4つの抗体親クローン (ここでpMORPH23中) をBpiIおよびSphIで消化した。
【0046】
この関係において、LCDR3領域および定常クラムダ (Clambda) 領域をベクター主鎖から除去した。対応するベクター-DNAフラグメントを単離し、精製した。これと平行に、相補的BpiI/SphIフラグメントをHuCAL-Fab2ライブラリーから単離した。このHuCAL-Fab2ライブラリーは、多様化されたLCDR3領域 (約3E+3変動性をもつ) + 定常クラムダ領域 (= インサート-DNA) を含有する。数μgのベクター-DNAおよび適合性インサート-DNAを1:2のモル比でT4-DNA-リガーゼで連結し、精製工程後にエレクトロコンピテントTOP10F’細胞中に形質転換させた。この場合において、5E+8〜ほぼ1E+9クローンのライブラリーサイズ/親抗体が達成された。
【0047】
クローンMOR02628、MOR02969およびMOR02977をベースとするライブラリーを組み合わせた ( 「プール」 ) 。MOR02965ライブラリーを別に処理した ( 「リード」 ) 。既に記載したように、これらのTOP10F’-成熟ライブラリーによりVCSM13で感染させることによってファージミドを産生させた。
【0048】
マクシソープ (MaxisorpTM) マイクロタイタープレートの抗体の選択
「リード」および「プール」ライブラリーの精製し、濃縮したファージミドを標準的選択プロセスにおいてストリンジェント条件 (長い洗浄期間、精製した親Fabタンパク質による置換) 下に使用した。抗原として、BSA-またはトランスフェリン-カップルドZK203468を選択的に使用した。これらの抗原をPBS中に取り、マクシソープ (MaxisorpTM) マイクロタイタープレートF96 (Nunc) 上に100〜250 ng/mlの低濃度で適用した。マクシソーププレートを4℃において一夜インキュベートした ( 「コーティング」 ) 。
【0049】
マクシソーププレートをPBS中の5%のミルクでブロックした後、抗原負荷し、ブロックしたウェルに約2E+13のHuCAL GOLDファージを添加し、そこで一夜または室温において2時間インキュベートした。ストリンジェンシイを増加させるために、追加の100 nmまたは500 nmの親クローンの精製したFabフラグメントをこのインキュベーション間に添加した。数回の広範な洗浄工程後、結合したファージを20 mmolのDTTで溶離した。全体的に見て、2回の連続的選択ラウンドを実施し、ここでファージ増幅を、前述したように、選択ラウンド間で実施した。
【0050】
ニュートアビジン (Neutavidin) ストリップ上の抗体の選択
「リード」および「プール」ライブラリーの精製し、濃縮したファージミドを第2の成熟-選択プロセスにおいてストリンジェント条件 (長い洗浄期間、精製した親Fabタンパク質または遊離色素による置換) 下に使用した。抗原として、BSA-ビオチン複合化ZK203468を (アルキルまたはエーテルリンカーと互換的に) 使用した。これらの抗原をPBS中に取り、60または12 ng/mlの低濃度で2E+11ファージと混合した。これらの抗原-ファージ溶液を一夜または室温において2時間インキュベートした。
【0051】
ストリンジェンシイを増加させるために、追加の0.5 μg/mlの親クローンの精製したFabフラグメントまたは40 nm/mlのZK203468をこのインキュベーション間に添加した。次いで抗原結合ファージを含有する溶液をブロックしたニュートアビジンストリップに適用し、30分間インキュベートして、抗原のビオチン基を介する固相への結合を可能とした。数回の洗浄工程後、結合したファージを20 mmolのDTTで溶離した。全体的に見て、2回の連続的選択ラウンドを実施し、ここでファージ増幅を、前述したように、選択ラウンド間で実施した。
【0052】
発現のために選択したFabフラグメントのサブクローニング
選択後、単離したHuCALクローンのFabコーディングインサートを発現ベクターpMORPHX9_MS 中でサブクローニングして、引き続く発現を促進した。この目的で、選択したHuCAL Fabクローンの精製したプラスミド-DNAを制限酵素XbaIおよびEcoRIで消化した。Fabコーディングインサートを精製し、相応して消化したベクターpMORPHX9_MS中に結合した。このクローニング工程により、Fab発現性ベクターpMORPHX9_Fab_MSが生じた。このベクターにより発現されるFabフラグメントは、精製および検出のための2つのC-末端タグ (MycタグおよびStrepタグII) を担持する。
【0053】
最適化された抗体フラグメントの同定
Fuji 6-4に対する改良されたアフィニティーをもつ抗体を同定するために、クローンを選択物から単離し、384ウェルのフォーマットでELISAにおいてスクリーニングした。この目的に対して、ZK203468-BSAをELISA-マイクロタイタープレート上に適用した。検査すべきFabフラグメントを非精製細菌ライゼイトとして添加した。抗原複合体に対する結合に加えて、遊離色素に対する結合を研究するために、細菌ライゼイトおよび追加の遊離色素を含む同一のスクリーニングプレートを2つの異なる濃度で混合した。非複合化色素のために生じた固相に対するFab結合の阻害は、色素複合体を特異的に検出せず、むしろ遊離色素のみを検出する抗体を示した。この関係において、単離されたクローンはELISAフォーマットおよびルミネックス (Luminex) 装置による溶液-阻害試験において正確に特性決定され、そしてFuji 6-4に対するそれらのアフィニティーを決定した。
【0054】
下記のクローンは、親抗体に比較して改良されたアフィニティーを示した:
【表1】

【0055】
要約すると、MOR03267に比較した親MOR02977のアフィニティーは140倍に改良することができた。他の同定されたクローンのすべては、それぞれの親Fabに比較して2〜70倍の改良を示した。
【0056】
実施例3色素-抗体複合体の光物理的特性決定およびスペクトルシフトおよび蛍光量子効率の決定
インドトリカルボシアニン色素3,3-ジメチル-2-{4-メチル-7-[3,3-ジメチル-5-スルホナト-1-(2-スルホナトエチル)-3H-インドリウム-2-イル]ヘプタ-2,4,6-トリエン-1-イリデン}-1-(2-スルホナトエチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-5-スルホン酸三ナトリウム、内部塩に結合する抗体に基づく色素-抗体複合体を検査した (実施例1および2参照) 。PBS中の濃度1μmol/lの前述の色素および2.4μmol/lのそれぞれの抗体の溶液を調製し、室温において2時間インキュベートした。スペクトル測光計 (Perkin-Elmer、Lambda 2) を使用して吸収最大を決定した。インドシアニン・グリーンに関してSPEXフルオロログ (ランプおよび検出器により目盛り定めした波長依存性感度) を使用して、蛍光最大および蛍光量子効率を決定した (DMSO中のQ = 0.13、J. Chem. Eng. Data 1977、22、379、Bioconjugate Chem. 2001、12、44) 。吸収最大および蛍光最大から、PBS中に抗体を含まない前述の色素溶液の最大に関して、スペクトルシフトを計算した (1μmol/l) (吸収最大: 754 nm; 蛍光最大: 783 nm; 蛍光量子効率: 10%) 。
【0057】
【表2】

結果を下記表に要約する:
【0058】
【表3】

【0059】
実施例4HuCAL免疫グロブリンの発現のための発現ベクターの構築
重鎖のクリーニング: ベクターpCDNA3.1+ (Invitrogen) の 「多重クローニング部位」 を除去し (NheI/ApaI) 、そしてHuCAL設計の制限インターフェースと適合性であるプレイスホルダーをリーダー配列 (NheI/EcoRI) 、FabフラグメントのVHドメイン (MunI/) 、および定常免疫グロブリン領域 (BlpI/ApaI) の結合に使用する。リーダー配列 (EMBL 83133) は接触配列を装備する (Kozak、1987) 。ヒトIgG (PIR J00228) 、IgG4 (EMBL K01316) 、および血清IgA1 (EMBL J00220) の定常領域を、例えば、70塩基長さのオーバーラッピングオリゴヌクレオチドに分割する。 「サイレント突然変異」 を導入して、HuCAL設計と適合性でない反応インターフェースを除去する。これらのオリゴヌクレオチドを 「オーバーラップエクステンション-PCR」 により結合する。
【0060】
IgG分子中のFabフラグメントのサブクローニング間に、Fabフラグメントの重鎖をMaeI/BlpIを介して切断し、ベクター中に結合し、これをEcoRI/BlpIで開環する。EcoRI (g/aattc) およびMfeI (c/aattg) は2つの適合性の粘着末端 (aatt) を有し、そしてFabフラグメント中のもとのMfeIインターフェース配列はIgG発現ベクター中の結合に対してc/aattgからg/aattgに変化し、これにより、一方において、MaeIインターフェースおよびEcoRIインターフェースの両方は破壊され、そして、他方において、Q (コドン: caa) からE (コドン: gaa) へのアミノ酸変化が起こる。
【0061】
軽鎖のクローニング。ベクターpCDNA3.1/Zeo + (Invitrogen) の 「多重クローニング部位」 を、2つの異なるプレイスホルダーで置換する。k-プレイスホルダーはk-リーダー配列 (NheI/EcoRV) 、HuCAL Fab Vkドメイン (EcoRV/BsiWI) 、およびk-鎖の定常領域 (BsiWI/ApaI) の組込みのための制限インターフェースを含有する。l-プレイスホルダー中の対応するインターフェースは、NheI/EcoRV (l-リーダー) 、EcoRV/HpaI (Vl-ドメイン) 、およびHpaI/ApaI (定常領域l-鎖) である。k-リーダー (EMBL Z00022) ならびにl-リーダー (EMBL J00241) の両方はコザック (Kozak) 配列を有する。ヒトk-鎖 (EMBL L00241) およびl-鎖 (EMBL M18645) の両方を、前述したように、「オーバーラップエクステンション-PCR」 により構築する。
【0062】
IgG-発現性CHO細胞の発生。重および軽IgG鎖の発現ベクターの等モル混合物で、CHO-K1細胞を共トランスフィックス (co-transfix) する。600 mg/mlのG418および300 mg/mlのゼオシン (Zeocin) (Invitrogen) で、二重耐性トランスフェクタントを選択し、次いで限界希釈する。個々のクローンの上清を 「捕捉ELISA」 によりIgG発現についてチェックする。10%の 「超低IgG-FCS」 (Life Technologies) を含むRPMI-1640培地中で、陽性クローンを培養する。上清のpHを8.0に設定し、そして滅菌濾過した後、この溶液を標準的プロテインAカラムクロマトグラフィー (Poros 20A、PE Biosystems) に付す。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1−1】図1-1は、Cys表示スクリーニングベクターpMORPH23のベクター地図を示す。
【図1−2】図1-2は、Cys表示スクリーニングベクターpMORPH23の配列を示す。
【図1−3】図1-3は、Cys表示スクリーニングベクターpMORPH23の配列を示す。
【図1−4】図1-4は、Cys表示スクリーニングベクターpMORPH23の配列を示す。
【図1−5】図1-5は、Cys表示スクリーニングベクターpMORPH23の配列を示す。
【図1−6】図1-6は、Cys表示スクリーニングベクターpMORPH23の配列を示す。
【図2−1】図2-1は、発現ベクターpMORPHX9 MSのベクター地図を示す。
【図2−2】図2-2は、発現ベクターpMORPHX9 MSの配列を示す。
【図2−3】図2-3は、発現ベクターpMORPHX9 MSの配列を示す。
【図2−4】図2-4は、発現ベクターpMORPHX9 MSの配列を示す。
【図3】図3は、実施例2からの、PBS中抗体MOR02965の存在下または非存在下での色素の吸収スペクトル(左)および蛍光スペクトル(右)を示す。
【図1】




【図2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出体結合性ペプチドの抗原結合性ポケットが放出体と相互作用するとき放出体のスペクトル発光特性を変化させることを特徴とする、当該放出体結合性ペプチド。
【請求項2】
前記放出体が、700〜1000 nmのスペクトル範囲内に少なくとも吸収最大および/または蛍光最大を有し、好ましくは750〜900 nmのスペクトル範囲内に少なくとも吸収最大および蛍光最大を有する色素を含んでなる、請求項1に記載の放出体結合性ペプチド。
【請求項3】
抗体または抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、scFvフラグメント、scTCR鎖、一本鎖抗体およびそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の放出体結合性ペプチド。
【請求項4】
下記の配列対の1つの中に含有されるVH/VL対の1つを含んでなる、請求項3に記載の放出体結合性ペプチド: 配列番号1+2; 配列番号5+6; 配列番号9+10; 配列番号13+14; 配列番号5+17; 配列番号5+19; 配列番号5+37; 配列番号9+21; 配列番号9+23; 配列番号9+25; 配列番号9+27; 配列番号9+29; 配列番号9+31; 配列番号9+33; 配列番号9+39; および配列番号13+35。
【請求項5】
前記放出体に対する結合アフィニティーが50 nmより小さく、好ましくは10 nmより小さい、請求項1〜4のいずれかに記載の放出体結合性ペプチド。
【請求項6】
前記放出体の放出特性の変化が、偏極面、蛍光強度、燐光、特に燐光強度、蛍光有効寿命、および吸収最大および/または蛍光最大の深色シフトの変化から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の放出体結合性ペプチド。
【請求項7】
放出体検出因子との相互作用後における吸収最大および/または蛍光最大のより高い波長へのシフトが15 nmより大きい値、好ましくは25 nmより大きい値、最も好ましくはほぼ30 nmだけ起こる、請求項1〜6のいずれかに記載の放出体結合性ペプチド。
【請求項8】
前記色素がポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、インドトリカルボシアニン、メロシアニン、スチリル、スクアリリウムおよびオキソノール色素およびローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素から成る群から選択される、請求項2〜7のいずれかに記載の放出体結合性ペプチド。
【請求項9】
前記色素が一般式 (I) のシアニン色素、ならびにこれらの化合物の塩および溶媒和物を含んでなる、請求項2〜8のいずれかに記載の放出体結合性ペプチド:
【化1】

式中Dは基 (II) または (III) であり、
【化2】

ここで星印で標識した位置は基Bとの結合点を意味し、そして基 (IV)、(V)、(VI)、(VII) または (VIII) であることができ、
【化3】

式中、
R1およびR2は、互いに独立して、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和の、分枝鎖状または直鎖状のC1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、そして/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されていてもよく、
R3およびR4は、互いに独立して、基-COOE1、-CONE1E2、-NHCOE1、-NHCONHE1、-NE1E2、-OE1、-OSO3E1、-SO3E1、-SO2NHE1または-E1であり、ここでE1およびE2は、互いに独立して、水素原子、C1-C4スルホアルキル鎖、飽和または不飽和の、分枝鎖状または直鎖状のC1-C50アルキル鎖であり、前記アルキル鎖は0〜15個の酸素原子および/または0〜3個のカルボニル基で中断されていてもよく、そして/または0〜5個のヒドロキシ基で置換されていてもよく、
R5は水素原子、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子、メチル、エチルまたはプロピル基であり、
bは2または3の数であり、そして
XおよびYは、互いに独立して、O、S、=C(CH3)2または-(CH=CH)-である。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の放出体結合性ペプチドをコードする配列を含んでなる、ポリヌクレオチド、特にDNA、RNAまたはPNAまたはそれらの機能的変異型。
【請求項11】
請求項10に記載の少なくとも1種またはそれ以上のポリヌクレオチドを含有しかつ細胞中で発現される、DNA-またはRNA-ベクター分子。
【請求項12】
請求項10に記載のポリヌクレオチドまたは請求項11に記載のベクター分子を含有する宿主細胞。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の少なくとも1種の放出体結合性ペプチドを含んでなる、抗体、特にポリクローナルまたはモノクローナル抗体、ヒトまたはヒト化抗体、合成または組換え抗体。
【請求項14】
適当な生物を放出体で免疫化することを含んでなり、ここで前記放出体がポリメチン色素、例えば、ジカルボシアニン、トリカルボシアニン、インドトリカルボシアニン、メロシアニン、スチリル、スクアリリウムおよびオキソノール色素およびローダミン色素、フェノキサジンまたはフェノチアジン色素から成る群から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の放出体結合性ペプチドを製造する方法。
【請求項15】
ペプチドの組換えまたは合成的製造を含んでなる、請求項1〜9のいずれかに記載の放出体結合性ペプチドを製造する方法。
【請求項16】
in vivo 診断のための診断剤としての請求項1〜9のいずれかに記載の放出体結合性ペプチド、請求項10または11に記載の核酸、請求項12に記載の宿主細胞または請求項13に記載の抗体の使用。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれかに記載の放出体結合性ペプチド、請求項10または11に記載の核酸、請求項12に記載の宿主細胞または請求項13に記載の抗体から選択される少なくとも1種の因子を、必要に応じて他のアジュバントおよび/または使用説明書と一緒に、共通または別々の容器の中に含んでなる、in vitro 診断のための診断キット。
【請求項18】
下記の工程を含んでなる、試料中に含有される物質の定量的in vitro 決定法:
a) 請求項1〜9のいずれかに記載の放出体結合性ペプチドを放出体と接触させ、ここで複合体の放出体と放出体結合性ペプチドとの相互作用は放出体のスペクトル発光性質を変化させ、そして
b) 放出体のスペクトル発光特性の変化を測定する。
【請求項19】
下記の工程をさらに含んでなる、請求項18に記載の試料中に含有される物質または試料中に含有される抗原検出因子の定量的in vitro 決定法:
d) 放出体の放出特性の測定された変化により、試料中に存在する物質を定量する。
【請求項20】
前記放出体の部分の放出特性の変化が偏極面、蛍光強度、燐光、特に燐光強度、蛍光有効寿命、および吸収最大および/または蛍光最大の深色シフトの変化から選択される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
放出体結合性ペプチドとして、抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、scFvフラグメント、scTCR鎖、一本鎖抗体およびそれらの混合物を試料と接触させる、請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記放出体結合性ペプチドが請求項1〜9のいずれかに記載の配列を含んでなる、請求項18〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記放出体結合性ペプチドが50 nmより小さく、好ましくは10 nmより小さい放出体に対する結合アフィニティーを有する、請求項19〜22のいずれかに記載の方法。

【図3】
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【公表番号】特表2007−526750(P2007−526750A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518165(P2006−518165)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007596
【国際公開番号】WO2005/005483
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【出願人】(594029230)モルフォシス・アクチェンゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】MORPHOSYS AG
【Fターム(参考)】