説明

放出調節医薬組成物およびその製造方法

本発明は、in‐situゲル化剤(=0.5%w/w)と、2〜17.5%w/wの量のゲル化促進剤(例えば、硫酸カルシウム)とを含む放出調節医薬組成物に関する。さらに、該組成物は、アクリレート等の放出速度制御ポリマーと、随意に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のpH非依存性の速度制御ポリマーとを含有する。好ましい活性薬剤は、ミコフェノール酸モフェチルである。また、上記組成物の製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解度がpHに依存する、少なくとも1種の薬学的に活性のある薬剤と、酸性環境下で活性薬剤の放出を主に制御する、少なくとも1種の放出速度制御ポリマーと、酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御する放出速度調節系と、随意に、1種以上の、他の薬学的に許容される賦形剤とを含む、新規な放出調節医薬組成物に関する。また、本発明において、該組成物の調製方法および使用方法が記載される。本発明の放出調節組成物は、活性薬剤を、長時間にわたって、予防効果または治療効果のあるレベルで提供することに有用である。
【背景技術】
【0002】
多くの病状は、薬剤を、長時間にわたって、その作用が調節されるように投与することで最もうまく治療される。抗高血圧薬、抗不整脈薬等の各種薬剤で、放出調節剤形が用いられてきた。放出調節形態は、薬物が、例えば、崩壊直後、または、腸溶コーティング、すなわち、胃耐性コーティングの場合には胃を通過した直後には放出されず、徐放、遅延放出、連続的放出、段階的放出、長期放出、またはパルス放出が行われるため、薬物の血漿中濃度を、即時放出型製剤形態とは異なるように変える製剤形態を意味する。より具体的には、本明細書中の「放出調節製剤形態」なる用語は、活性薬剤を、従来の剤形よりもさらに長時間にわたって、吸収されるように放出および提供する製剤形態、すなわち、含有されている活性薬剤について、調節された放出プロファイルを与える製剤形態をいう。
【0003】
さらに、薬剤、または他の活性成分を含有する放出調節組成物は、より高濃度の活性化合物を含有するように設計され、該化合物が、ヒトまたは動物の胃腸消化管に、長時間にわたって徐放または持続放出されるように調製されている。吸収が良好な、経口の徐放性または持続放出性治療薬剤形は、従来の即時放出型剤形に比して、特有の利点を有する。薬剤の投与頻度を、徐放性剤形で求められるように少なくすると、結果として、患者による、処方計画に沿った服薬の遵守が向上し、薬物の血中レベル応答がより持続し、かつ、より少ない薬物摂取で治療効果をもたらすことにより、起こり得る、多くの副作用が軽減される。薬剤を、徐々に、持続的かつ安定的に放出することにより、より滑らかで、より持続的な血中レベル応答をもたらして、吸収される薬物濃度の急上昇が緩和または解消される。
【0004】
しかし、幾つかの例として挙げられる、活性成分のコーティングを介する拡散、活性成分が通過するコーティングの侵食、活性成分のモノリシックデバイスからの拡散等の、どの放出制御方法が医薬製剤に用いられるとしても、放出制御製剤は、ある基準を満たす必要がある。最も重要なこととして、放出制御製剤は、長時間にわたって、有効であるように、活性成分を、医薬製剤から均一かつ一定に溶解させるべきである。また、そのような製剤が、容易に製造できるものであり、かつ、その製造方法が、再現可能であるとともに、多くの異なる薬物に有用であることも重要である。
【0005】
本明細書でMPAとも称されるミコフェノール酸は、1896年に最初に単離され、商業的関心を集める可能性がある医薬として幅広く研究されてきた。ミコフェノール酸は、抗腫瘍活性、抗ウイルス活性、免疫抑制活性、抗乾癬活性、および抗炎症活性を有することが知られている(例えば、非特許文献1、および、当該文献中の引用文献を参照)。抗癌剤としてのMPAに関して、Lillyの科学者らによる刊行物(例えば、非特許文献2を参照)およびICIの科学者らによる刊行物(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)、ならびに、免疫抑制剤としてのMPAに関する刊行物(例えば、非特許文献3を参照)が発行されている。上記の非特許文献1では、誘導体を調製することにより、MPAのバイオアべイラビリティ(生物学的利用率)または特異性を高めるための試みがなされてきたことが記載されている。上記の酸が有する、低いバイオアべイラビリティは、胃腸の内腔での薬物の複合体形成、狭い吸収域(absorption window)、吸収前の代謝等の不確定な因子によるものと考えられた。ミコフェノール酸モフェチル(本明細書中で、MMFと称する場合もある)としても知られているモルホリノエチルエステルの調製が記載され、このモルホリノエチルエステルは、MPAよりも、かなり高いバイオアべイラビリティを有すると記載された(MMF100%に対し、MPA43%)。この誘導体は、グアノシンヌクレオチド、すなわち、DNAおよびRNAの構成成分の1種の生成を阻害し、臓器または組織移植における拒絶反応の治療または予防のための免疫抑制剤として、1日当たりの服用量を、経口で約200mgから約3g、例えば、経口で約2gとして、市場投入された。ミコフェノール酸ナトリウムに関して、MMFと比較した安全性および有効性は、腎臓同種移植の新規被移植者423人を対象とした、12か月間にわたる、二重盲検式、無作為化、多施設共同、並行群間試験で評価された。患者は、無作為に選ばれ、1日2回、ミコフェノール酸720mgを、ミコフェノール酸ナトリウムとして服用するか(n=213)、または、1日2回、MMF1000mgを服用した(n=210)。ミコフェノール酸ナトリウムとしたミコフェノール酸の群と、MMFの群とで観察された、有効性欠如の全発生率(上述の全試験にわたって、特に指定のない限り、生検で確定診断された急性拒絶反応[BPAR]、移植片廃絶、死亡、または経過追跡不能として、例外なく定義される)は、6か月の時点で同程度であった(28.2%および28.1%;P=NS)。BPARの発生率は、12か月の時点で、ミコフェノール酸ナトリウムに関しては22.5%、MMFに関しては24.3%となり、類似していた(P=NS)。移植片廃絶、患者の死亡、および報告された有害事象の発生率は、両群間で類似していた。胃腸(GI)における有害事象の発生率は、ミコフェノール酸ナトリウムに関しては78.4%、MMFに関しては78.1%となった(P=NS)。胃腸毒性による、投薬量の低減、治療の中止または一時的中断の頻度は、同程度であった(MMF17.6%に対し、ミコフェノール酸ナトリウム13.1%;P=NS)。感染率は、両群間で類似していた。著者らは、ミコフェノール酸ナトリウムが、等モルのMPAを含む服用量で、治療上、MMFと同等であるという結論に至った。ミコフェノール酸ナトリウム769.4mgは、MMF1000mgと比較して、等モル量のMPAを含有する[非特許文献4]。
【0006】
クエチアピンフマル酸塩は、ジベンゾチアゼピン類に属する抗精神病薬であり、その化学名は、2‐[2‐(4‐ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン‐11‐イル‐1‐ピペラジニル)エトキシ]‐エタノールフマル酸塩である。クエチアピンは、ドーパミンD受容体およびD受容体、セロトニン5HTAl受容体および5HT受容体、ヒスタミンH受容体、アドレナリンα1受容体およびα2受容体等を含む、いくつかの神経伝達物質受容体に対する拮抗薬として作用する。クエチアピンは、主に、ドーパミンD2受容体、およびセロトニン5HT2受容体への拮抗作用を介して、抗精神病作用を発揮すると考えられている。クエチアピンは、現在、25mg、100mg、200mgおよび300mgの、1日に2回または1日に3回投与する錠剤として製剤化されている。
【0007】
特許文献3では、ミコフェノール酸のモルホリノエチルエステル、すなわち、ミコフェノール酸モフェチルが記載されている。この化合物は、免疫抑制剤、抗炎症剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、乾癬治療薬として有用である。ミコフェノール酸モフェチルは、CellCept(R)という商標名で、米国等で市販されている。特許文献4では、ミコフェノール酸塩を含む医薬組成物が記載されており、この組成物は、ミコフェノール酸塩を、胃で放出することを防ぎ、腸管上部で放出するように調整されていることが記載されている。しかし、ミコフェノール酸塩の上記組成物の製剤化における主な欠点として、腸溶性コートが、胃での薬物放出を防ぎ、付随する副作用を防止するが、薬物は、胃腸管(GIT)全体から吸収されず、腸のみからの吸収に限定されるため、薬物の適切および完全な吸収パターンおよび/または所望の吸収パターンが、得られない可能性があることが挙げられる。
【0008】
特許文献5は、制御された速度で放出される有効量の薬物と、徐放性配合物とを含む、薬物の徐放用錠剤に関し、この徐放性配合物は、pH依存性ゲル化ポリマーと、pH非依存性ゲル化ポリマーと、腸溶性ポリマーとを含む、少なくとも異なる3種類のポリマーを含有する。特許文献6は、ミコフェノール酸、その塩またはそのプロドラッグを、放出調節形態で含む組成物を開示している。特許文献7では、溶解度が約10g/lを超える、治療有効量の薬剤と、pH調節剤と、ゲル化剤を含有する徐放性マトリックスとを含む、徐放性の経口固形剤形が記載されており、該ゲル化剤が、ヘテロ多糖ガムと、周囲の液体に接触すると該ヘテロ多糖ガムを架橋することができるホモ多糖ガムとを含み、この剤形が、ヒトである患者への経口投与後に、上記薬剤を徐放することが記載されている。
【0009】
特許文献8では、経口徐放性医薬組成物を、所望の薬物放出プロファイルを有する固形剤形で調製する方法が記載されており、この医薬組成物は、医薬組成物からの薬物放出を遅らせる徐放性担体、および該医薬組成物の、固形剤形を形成する能力を高める、非水溶性または部分的に非水溶性であるセルロースと、薬物とを混合することにより調製され、結果として、所望の薬物放出プロファイルよりも速い放出を示す薬物放出プロファイルを有する医薬組成物が得られることが記載されている。この改良では、水系に置かれた時、この徐放性医薬組成物における薬物放出速度を、所望の薬物放出プロファイルとなるように遅らせるために、該医薬組成物に、有効量のマルトデキストリンを添加することが含まれ、製錠化を強化するために添加される、非水溶性または部分的に非水溶性であるセルロースに対するマルトデキストリンの重量比は、約1:50から約50:1に及ぶことが記載されている。
【0010】
特許文献9では、少なくとも1種の薬学的に活性のあるpH依存性薬剤と、少なくとも1種のpH非依存性の徐放性薬剤と、5を超えるpHで、上記の少なくとも1種の薬学的に活性のある薬剤が錠剤から放出される速度を上げる、少なくとも1種のpH依存性薬剤とを含む医薬組成物が開示されている。特許文献10では、単位剤形を錠剤とした徐放性マトリックス製剤が記載されており、この製剤は、約0.1重量%から約90重量%のセファクロールと、約5重量%から約29重量%の親水性ポリマーと、約5.0から約7.4の範囲のpHで溶解する、約0.5重量%から約25重量%のアクリルポリマーとを含むが、ただし、該親水性ポリマーと該アクリルポリマーとの総重量を、この製剤の30重量%未満とすることを条件とすると記載されている。特許文献11から23では、徐放性の経口固形剤形が開示されており、この経口固形剤形が、治療効果をもたらすために約10g/l未満の溶解度を有する、有効量の薬剤と、ヘテロ多糖ガム、および、周囲の液体に接触すると該ヘテロ多糖ガムを架橋することができるホモ多糖ガムを含むゲル化剤を含有する徐放性賦形剤と、単糖、二糖、多価アルコール、および、それらの混合物からなる群から選択される不活性医薬希釈剤と、この剤形が周囲の液体に接触すると、上記ゲル化剤と架橋して、ゲル強度を高めることができる薬学的に許容されるカチオン性架橋剤とを含み、この剤形が、周囲の液体に接触すると、上記薬剤を徐放することが開示されている。
【0011】
長時間にわたる活性薬剤の送達を目的とした剤形を提供するための様々な試みが、以前から記載されてきた。しかし、特に、溶解度がpHに依存する薬物を、副作用が軽減されるように含有し、活性薬剤を持続的に送達することができ、より製造しやすく、かつ、製剤化にかかるコストが低い、有効な放出調節剤形組成物の開発は、今もなお必要とされている。しかし、例えば、弱塩基性薬物等の、溶解度がpHに依存する薬物の放出調節剤形への製剤化には、多くの問題がある。このような薬物は、胃のpHでは、溶解度が比較的良好であるが、腸のpHでは、溶解度が比較的低い。本発明は、所望の時間にわたって、薬物を持続的に放出して、所望の血中薬物濃度をもたらす新規な組成物を記載して、製剤が、pHが低い胃内環境から、pHがより高い腸内環境に移動する間、胃腸管(GIT)での上記薬物の溶解度に関わる問題を克服する。本発明は、上述の新規な放出調節組成物を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】英国特許第1157099号明細書
【特許文献2】英国特許第1203328号明細書
【特許文献3】米国特許第4753935号明細書
【特許文献4】米国特許第6025391号明細書
【特許文献5】国際公開第99/029305号パンフレット
【特許文献6】国際公開第06/024479号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/022940号パンフレット
【特許文献8】国際公開第04/082615号パンフレット
【特許文献9】国際公開第02/058676号パンフレット
【特許文献10】米国特許第4968508号明細書
【特許文献11】米国特許第6726930号明細書
【特許文献12】米国特許第6136343号明細書
【特許文献13】米国特許第5846563号明細書
【特許文献14】米国特許第5667801号明細書
【特許文献15】米国特許第5554387号明細書
【特許文献16】米国特許第5773025号明細書
【特許文献17】米国特許第6048548号明細書
【特許文献18】米国特許第6245356号明細書
【特許文献19】米国特許第6709677号明細書
【特許文献20】米国特許第5455046号明細書
【特許文献21】米国特許第5512297号明細書
【特許文献22】米国特許第5662933号明細書
【特許文献23】米国特許第5958456号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】W.A.Lee et al,Pharmaceutical Research(1990),7,p.161‐166
【非特許文献2】M.J.Sweeney et al.,Cancer Research(1972),32,1795‐1802
【非特許文献3】A.Mitsui et al.J.Antibiotics(1969)22,p.358‐363
【非特許文献4】Progress in Transplantation; Jun 2004;Gabardi,S et al.
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、溶解度がpHに依存する、少なくとも1種の薬学的に活性のある薬剤と、酸性環境下で活性薬剤の放出を主に制御する、少なくとも1種の放出速度制御ポリマーと、酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御する放出速度調節系と、随意に、1種以上の、他の薬学的に許容される賦形剤とを含む、新規な放出調節医薬組成物を提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、溶解度がpHに依存する、少なくとも1種の薬学的に活性のある薬剤と、酸性環境下で活性薬剤の放出を主に制御する、少なくとも1種の放出速度制御ポリマーと、酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御する放出速度調節系とを含む新規な放出調節医薬組成物であって、該放出速度調節系が、少なくとも1種の生体内原位置での(in‐situ)ゲル化剤、少なくとも1種のゲル化促進剤、および、随意に、少なくとも1種のpH非依存性の速度制御ポリマーと、随意に、1種以上の、他の薬学的に許容される賦形剤との組み合わせを含む新規な放出調節医薬組成物を提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、溶解度がpHに依存する、少なくとも1種の薬学的に活性のある薬剤と、酸性環境下で活性薬剤の放出を主に制御する、放出速度制御ポリマーと、少なくとも1種のin‐situゲル化剤、少なくとも1種のゲル化促進剤、および少なくとも1種のpH非依存性の速度制御ポリマーの組み合わせからなり、酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御する放出速度調節系と、随意に、1種以上の、他の薬学的に許容される賦形剤とを含む放出調節医薬組成物を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、少なくとも1種の薬学的に活性のある薬剤、または、その塩、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、誘導体、もしくは、それらの混合物を、溶解度がpHに依存する活性薬剤として、単独で、または他の活性薬剤と組み合わせて含み、かつ、酸性環境下で活性薬剤の放出を主に制御する、少なくとも1種の放出速度制御ポリマーと、酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御する放出速度調節系とを含む新規な放出調節医薬組成物であって、該放出速度調節系が、少なくとも1種のin‐situゲル化剤、少なくとも1種のゲル化促進剤、および少なくとも1種のpH非依存性の速度制御ポリマーと、随意に、他の薬学的に許容される賦形剤との組み合わせを含む新規な放出調節医薬組成物を提供することである。
【0018】
また、本発明の目的として、クエチアピン、もしくはミコフェノール酸、または、その塩、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、もしくは、その誘導体を、溶解度がpHに依存する活性薬剤として含み、かつ、酸性環境下で活性薬剤の放出を主に制御する、少なくとも1種の放出速度制御ポリマーと、酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御する放出速度調節系と、随意に、他の薬学的に許容される賦形剤とを含む新規な放出調節医薬組成物を提供することも挙げられる。
【0019】
本発明の別の目的は、以下の工程を含む、上記組成物の調製方法を提供することである。
i) 活性薬剤を、放出速度制御ポリマー、および放出速度調節系と混合する工程、
ii) 随意に、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を添加する工程、および
iii) 得られた混合物を適切な剤形に製剤化する工程。
【0020】
本発明の更なる目的は、以下の工程を含む、上記の新規な組成物の調製方法を提供することである。
i) 活性薬剤を、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と混合し、放出速度制御ポリマーで造粒する工程、
ii) 工程(i)の顆粒を、放出速度調節系と混合する工程、
iii) 随意に、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を添加する工程、および
iv) 得られた混合物を適切な剤形に製剤化する工程。
【0021】
本発明の更にもう1つの目的は、有効量の上記組成物を、この組成物を必要とする対象に投与することを含む、該組成物の使用方法を提供することである。
【0022】
本発明の新規な組成物は、胃腸管(GIT)を通じて吸収されることを理由として、例えば、弱塩基性および弱酸性の薬物のように、酸性および塩基性の両方のpH環境下で、かなりの放出を必要とする活性薬剤に特に有用である。本発明の新規な組成物は、長時間にわたって、活性薬剤を、予防上または治療上、有効な濃度で提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、溶解度がpHに依存する、少なくとも1種の薬学的に活性のある薬剤と、酸性環境下で活性薬剤の放出を主に制御する、少なくとも1種の放出速度制御ポリマーと、酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御する放出速度調節系と、随意に、1種以上の、他の薬学的に許容される賦形剤とを含む、新規な放出調節医薬組成物を提供する。本発明によれば、溶解度がpHに依存する活性薬剤とは、酸性のpHでは可溶性であるが、ほぼ中性/アルカリ性のpHでは、比較的、溶解度が低いか、もしくは不溶性である化合物、または、酸性のpHでは比較的、溶解度が低いか、もしくは、不溶性であるが、ほぼ中性/アルカリ性のpHでは可溶性である化合物である。
【0024】
本発明の一実施形態において、上記の放出速度調節系は、少なくとも1種のin‐situゲル化剤、少なくとも1種のゲル化促進剤、および少なくとも1種のpH非依存性の速度制御ポリマーと、随意に、1種以上の、他の薬学的に許容される賦形剤との組み合わせを含む。
【0025】
一実施形態において、本発明は、溶解度がpHに依存する活性薬剤に有用であることが好ましく、胃、すなわち、酸性のpH環境下では、かなり放出するが、腸、すなわち、塩基性のpH環境下では、あまり放出しない活性薬剤に有用であることが好ましい。本発明の組成物は、胃腸管(GIT)を通じて吸収されることを理由として、弱塩基性薬物、例えば、ミコフェノール酸モフェチル(pH=7.2)、および弱酸性薬物、例えば、クエチアピンフマル酸塩(pH=5.4)のように、酸性および塩基性の両方のpH環境下で、かなりの放出を必要とする活性薬剤に特に有用である。
【0026】
本発明の別の実施形態において、上記の放出速度制御ポリマーは、上記組成物の約1.5重量%以上、好ましくは、約3重量%以上の量で存在する。別の実施形態において、上記の放出速度調節系は、該組成物の約2重量%以上の量の、少なくとも1種のin‐situゲル化剤と、該組成物の約0.5%以上の量のゲル化促進剤と、該組成物の約2重量%以上の量のpH非依存性の速度制御ポリマーとを含む。
【0027】
好ましい実施形態において、本発明は、上記の系が、主に、侵食機構、または侵食機構と拡散機構との組み合わせによって、好ましくは、剤形の形状を実質的に変えることなく、活性薬剤を放出する新規な放出調節医薬組成物であって、長時間にわたって、活性薬剤を、治療濃度で与える新規な放出調節医薬組成物を提供する。
【0028】
別の実施形態において、本発明の新規な放出調節医薬組成物は、活性薬剤の濃度が、どの時点においても、実質的に毒性濃度未満ではあるが、所望の有効濃度を超えるように、ピーク血漿濃度(Cmax)を制御することにより、該活性薬剤の有害作用または副作用を軽減することを目的とするものである。また、該活性薬剤の定常状態濃度は、実質的に変動しない。副作用の発生率を低下させることは、患者による治療遵守の向上を目的とする。一実施形態において、本発明の新規な組成物は、好ましくは、約8〜24時間にわたって、随意に、初期遅延時間をおいて、該活性薬剤を放出し、その際、わずか0%〜約15%にすぎない活性薬剤が放出され、その後、活性薬剤が徐放される。本発明において、該活性薬剤の放出速度を制御するために好ましく用いられる系は、酸性環境下で活性薬剤の放出を主に制御する、少なくとも1種の放出速度制御ポリマーと、酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御する放出速度調節系とを含む。
【0029】
該放出速度調節系に存在する、in‐situゲル化剤およびゲル化促進剤とともに、酸性環境下で活性薬剤の放出を制御するポリマーを存在させることは、実質的に、酸性環境下で、初期の急速な薬物放出の制御に寄与し、かつ、腸内環境下で、完全な薬物放出の促進に寄与する。酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御する上記の放出速度調節系は、剤形の完全性(intactness)を高め、剤形の侵食速度を制御して、剤形の徐放作用を確実にもたらす。したがって、本発明の組成物は、特異なものである。さらに、in‐situゲル化剤およびゲル化促進剤による、上記の系の粘性増加は、経口剤形の持続放出特性に、直接的に影響を及ぼす。
【0030】
さらに、驚くべきことに、in‐situゲル化剤と、ゲル化促進剤とが、ともにpHに依存する不水溶性のゲルまたはゲル状構造体を形成し、この不水溶性のゲルまたはゲル状構造体は、pH依存性の特質を有し、かつ、酵素分解を受けるため、酸性媒質内で初期薬物放出を制御し、また、小腸内でも、ある程度までは、初期薬物放出を制御するが、大腸内で完全な薬物放出を促進することが見出された。
【0031】
本発明の活性薬剤は、単独で、または組み合わせて用いられる、心臓脈管薬、呼吸器系薬、交感神経刺激薬、コリン様作用薬、アドレナリン作用薬、アドレナリン拮抗薬、鎮痛薬/解熱薬、麻酔薬、抗喘息薬(antiasthamatics)、抗生物質、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗真菌薬、抗高血圧薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗不安薬、抗精神病薬(antipsychotics)、免疫抑制薬、抗片頭痛薬、鎮静薬/睡眠薬、抗狭心症薬、抗精神病薬(antipsychotic agents)、抗躁薬、抗不整脈薬、抗関節炎薬、抗痛風薬、抗凝血薬、血栓溶解薬、抗繊維素溶解薬、ヘモレオロジック剤(hemorheologic agents)、抗血小板薬、抗痙攣薬、抗パーキンソン病薬、カルシウム調節に有用な抗ヒスタミン薬/鎮痒薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、殺菌薬、抗感染薬、気管支拡張薬、ホルモン、血糖降下薬、脂質低下薬、タンパク質、核酸、赤血球生成促進に有用な薬剤、抗潰瘍薬/逆流防止薬(antiulcer/antireflux agents)、制嘔吐薬/鎮吐薬、脂溶性ビタミン剤、および、それらの薬学的に許容される塩、エステル、アミド、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、または、それらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定されるものではない。
【0032】
好ましくは、本発明の活性薬剤は、単独で、または組み合わせて用いられる、サイクロスポリン、タクロリムス(FK506)、シロリムス(ラパマイシン)、メトトレキセート、ABT578、AP23573、AP23464、AP23675、AP23841、TAFA‐93、バイオリムス‐7(biolimus‐7)もしくはバイオリムス‐9(biolimus‐9)、ミコフェノール酸、エベロリムス、アザチプリン(azathiprine)、ステロイド、およびNOX‐100、または、それらの薬学的に許容される塩、水和物、多形体、エステル、および、それらの誘導体を含む群から選択される免疫抑制薬であるが、この群に限定されるものではない。より好ましくは、本発明の活性薬剤は、単独で、または組み合わせて用いられる、グアンファシン、アナグレリド、グアネチジン、グアナドレル、レセルピン、プロパノロール(propanolol)、メトプロロール、アテノロール、ベラパミル、チモロール、エリスロマイシン、クロニジン、クロルフェニラミン、ブロモフェニラミン(bromopheniramine)、クエチアピン、ジルチアゼム、スコポラミン、ミコフェノール酸、およびグルココルチコイド、ならびに、それらの薬学的に許容される塩、水和物、多形体、エステル、および、それらの誘導体を含む群から選択されるが、この群に限定されるものではない。
【0033】
一実施形態において、免疫抑制薬である活性薬剤は、ミコフェノール酸、またはその塩、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、誘導体、もしくは、それらの混合物であることが好ましい。別の実施形態において、本発明で用いられる活性薬剤は、クエチアピン、またはその塩、多形体、溶媒和物、水和物、類似体、鏡像異性体、互変異性型、誘導体、もしくは、それらの混合物等の抗精神病薬であることが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態において、放出速度制御ポリマーは、アミノ置換基を有するアクリレート重合体の共重合体;アクリル酸エステル;ポリアクリルアミド;炭水化物の酸フタレート、アミロースアセテートフタレート、酢酸フタル酸セルロース、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、フタル酸水素ポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate hydrogen phthalate)、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、デンプン酸フタレート(starch acid phthalate)、スチレンマレイン酸ジブチルフタレート共重合体(styrene maleic acid dibutyl phthalate copolymer)、スチレン‐マレイン酸ポリビニルアセテートフタレート共重合体(styrene‐maleic acid polyvinyl acetate phthalate copolymer)等のフタル酸誘導体(すなわち、共有結合しているフタレート部分を有する化合物);スチレンおよびマレイン酸の共重合体;一定の形のゼラチン(formalized gelatin);グルテン;シェラック;サロール;ケラチン;アンモニア化シェラック;サリチル酸ベンゾフェニル;セルロースアセテートトリメリテート;シェラックと混合したセルロースアセテート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート;酸化セルロース;アクリル酸およびアクリル酸エステルの共重合体等のポリアクリル酸誘導体;メタクリル酸およびエステル;ジメチルアミノエチルアンモニウム基を有するカチオン性ポリマー;アクリル酸メチルを基材とするアニオン性共重合体;ポリ(メタクリル酸、メタクリル酸メチル)1:1(例えば、Eudragit(R) L100)、ポリ(メタクリル酸、アクリル酸エチル)1:1(例えば、Eudragit(R) L100‐55, Eudragit(R) L30D‐55)、ポリ(メタクリル酸、メタクリル酸メチル)1:2(例えば、Eudragit(R) S100,Eudragit(R) S12.5P,Eudragit(R) FS30D)等のメタクリル酸メチル、および、そのメタクリル酸;酢酸ビニル;クロトン酸共重合体等;および、それらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定されるものではない。
【0035】
好ましくは、上記の放出速度制御ポリマーは、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸またはメタクリル酸の共重合体、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、サクシネート、シェラック、ゼインから選択されてもよい。上記の放出速度制御ポリマーは、好ましくは、上記組成物の約1.5%w/w以上の量で存在し、より好ましくは、該組成物の約3〜80%w/wの量で存在する。
【0036】
本発明の別の実施形態において、放出速度調節系は、少なくとも1種のin‐situゲル化剤と、少なくとも1種のゲル化促進剤と、少なくとも1種のpH非依存性の速度制御ポリマーとの組み合わせを含む。
【0037】
本発明の一実施形態において、上記in‐situゲル化剤は、ローカストビーンガム、キサンタンガム、トラガカント、キシラン、アラビノガラクタン、寒天、ジェランガム、スクレログルカン(scleroglucan)、グアーガム、アプリコットガム(アンズ (Prunus armeniaca,L.))、アルギン酸塩、カラゲナン、ペクチン(Genu(R))、アカシアガム、デキストラン、およびアラビアガム等、または、それらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定されるものではない。好ましい実施形態において、ペクチンが、上記in‐situゲル化剤として用いられる。該in‐situゲル化剤は、上記組成物の約0.5%w/w以上の量で存在することが好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態において、上記ゲル化促進剤は、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、および硫酸マグネシウムを含む群から選択されるが、この群に限定されるものではない。該ゲル化促進剤は、二価または三価の陽イオンの塩であることが好ましい。より好ましくは、ゲル化促進剤として、硫酸カルシウムが用いられ、上記組成物の約0.5%w/w以上の量で存在し、最も好ましくは、該組成物の約2〜17.5%w/wの量で存在する。一実施形態において、このゲル化促進剤は、架橋剤として作用する。
【0039】
本発明の一実施形態において、pH非依存性ポリマーは、メチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC,HPMC(R) K100M CR,Methocel(R))等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC,Klucel(R))およびヒドロキシエチルセルロース(HEC,Natrosol(R))等のヒドロキシアルキルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG(R),Lutrol(R))、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体(Poloxamer(R))、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP,Kollidon(R))、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン N‐オキサイド、ビニルピロリドンと長鎖α‐オレフィンとの共重合体、ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの共重合体、ポリ(ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドの共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの共重合体、ビニルピロリドンおよびメタクリル酸ジメチルアミノエチルの四級化共重合体、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルの三元共重合体、ビニルピロリドンおよびメタクリルアミドプロピル‐トリメチルアンモニウムクロライドの共重合体、カプロラクタム/ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルの三元共重合体、スチレンおよびアクリル酸の共重合体、ポリカルボン酸、ポリビニルアルコール(PVA,Mowiol(R))、加水分解ポリ酢酸ビニル、多糖類ガム、すなわち、キサンタンガム、ビーガム(veegum)、寒天、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、オクラガム(okra gum)、アルギン酸、他のアルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール)、ベニトナイト(benitonite)、アラビノグラクチン(arabinoglactin)、ペクチン、トラガカント、スクレログルカン(scleroglucan)、デキストラン、アミロース、アミロペクチン、デキストリン等を非限定的に含めた、天然物と改質物(半合成物)との両方を含む多糖類ガム、または、それらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定されるものではない。
【0040】
上記pH非依存性ポリマーは、好ましくは、1種以上のヒドロキシアルキルアルキルセルロースであり、より好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。該pH非依存性ポリマーは、好ましくは、上記組成物の約1%w/w以上の量で存在し、より好ましくは、該組成物の約2〜40%w/wの量で存在する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、in‐situゲル化剤とゲル化促進剤との比率は、上記組成物に関して、重量比で、約1:10から約10:1であり、好ましくは、約1:5から約5:1である。
【0042】
一実施形態において、本発明の組成物は、希釈剤および溶剤を含む群から選択される、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を付加的に含むが、該賦形剤は、この群に限定されるものではない。本発明の一実施形態において、上記希釈剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、デンプン、第二リン酸カルシウム、糖類、および、それらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定されるものではない。希釈剤の例として、微結晶性セルロース(Avicel(R));ラクトース一水和物、無水ラクトース(Pharmatose(R))、および噴霧乾燥型ラクトース(lactose spray dried forms)等のラクトース;第二リン酸カルシウム(Emcompress(R));マンニトール(Pearlitol(R));デンプン;ソルビトール;スクロース;グルコース;シクロデキストリン等、または、それらの混合物が含まれる。本発明において、用いられる溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、モノメトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール等のエーテル;n‐ヘキサン、シクロヘキサン、およびn‐ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、およびキシレン等の芳香族炭化水素;アセトニトリル等のニトリル;酢酸、プロピオン酸等の有機酸;酢酸エチル等のエステル;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素;アセトン、メチルケトン等のケトン;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;または、それらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定されるものではない。これらの溶剤のうち、例えば、アセトン等のケトン、および、例えば、エタノール等のアルコールのような、低沸点の溶剤が好ましい。該溶剤は、より好ましくは、ジクロロメタンが用いられ、可溶化剤および/または活性薬剤を溶解または分散するのに十分な量で用いられる。
【0043】
本発明の1種以上の薬学的に許容される賦形剤は、当該技術で周知である、崩壊剤、結合剤、フィラー、増量剤、付着防止剤(anti‐adherants)、酸化防止剤、緩衝剤、着色剤、着香剤、コーティング剤、可塑剤、安定剤、防腐剤、滑沢剤、流動促進剤、キレート剤等を含む群から選択され、それらは、単独で、または、組み合わせて用いられるが、該賦形剤は、この群に限定されるものではない。本発明の組成物で用いられる、特定の賦形剤は、複数の目的を果たすことができる。
【0044】
適切な結合剤として、例えば、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルファ化デンプン(pregelatinised starch)、ヒドロキシプロピルセルロース、または、それらの混合物が含まれる。適切な滑沢剤は、Aerosil(R)200等のコロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、硬化植物油等、または、それらの混合物を含む群から選択されるが、この群に限定されるものではない。適切な崩壊剤として、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、コーンスターチ、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、および加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム(croscarmellose sodium)、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycollate)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、または、それらの混合物が含まれる。
【0045】
一実施形態において、溶解度がpHに依存する、少なくとも1種の薬学的に活性のある薬剤を含む本発明の組成物は、少なくとも1種のpH依存性ポリマーと、少なくとも1種の水溶性in‐situゲル化ポリマーと、少なくとも1種の架橋剤と、少なくとも1種のpH非依存性ポリマーとを含み、該組成物は、マトリックスを形成し、このマトリックスにおいて、活性薬剤が、胃環境への拡散、および腸環境への侵食により放出される。本発明で用いられるポリマーは、以下の方法で、活性薬剤の放出を調節することに有用である。上記pH依存性ポリマーは、酸性媒質内で、該活性薬剤の初期バースト放出を制御し、酸性媒質内で、薬物の溶解度がより高いことが原因で起こり得る、投薬量の過量放出(dose dumping)を防止する。また、このpH依存性ポリマーは、5.5を超えるpHで、侵食を促進し、更には、薬物放出を促進する。上記in‐situゲル化剤は、このポリマーが、生体内で(架橋剤の)溶解イオンと接触すると、架橋剤と架橋して直ちに、不水溶性ゲルを形成する。形成された不溶性ゲルは、pH依存性の特質を有し、かつ、酵素分解を受けるため、酸性媒質内で、初期の薬物放出を制御し、また、小腸環境でも、ある程度までは、初期の薬物放出を制御するが、この組成物が大腸環境に接触する前、または接触すると直ちに、実質的に、完全な薬物放出を促進する。上記のpH非依存性ポリマーは、実質的に完全な薬物放出が起こるまで、剤形を完全な状態として、薬物放出速度を制御する。
【0046】
本発明の一実施形態において、活性薬剤を、放出速度制御ポリマーおよび放出速度調節系で処理し、随意に、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を添加して、この混合物を、適切な剤形に製剤化することを含む、上記組成物の調製方法を提供する。更なる実施形態において、本発明の新規な組成物の調製方法は、活性薬剤を、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と混合し、放出速度制御ポリマーで造粒して、得られた顆粒を、放出速度調節系と混合し、随意に、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を添加して、この混合物を適切な剤形に製剤化することを含む。
【0047】
更なる実施形態において、本発明の組成物は、好ましくは、錠剤/ミニ錠剤、カプセル剤、小丸剤等の固形剤形として製剤化され、より好ましくは、錠剤として製剤化される。錠剤は、湿式造粒法、直接打錠法、または、乾式圧縮法(スラッギング)によって調製されうる。本発明の好ましい実施形態において、経口組成物は、湿式造粒法によって調製される。造粒技術は、水系であるか、または非水系である。用いられる非水溶剤は、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、および塩化メチレンを含む群から選択される。一実施形態において、本発明の組成物は、圧縮錠、成形錠(moulded tablets)、ミニ錠剤、カプセル剤、圧縮成形錠剤(compacts)、小丸剤、顆粒剤等の形態である。錠剤は、随意に、非機能的コーティングで覆って非機能的な層が形成されてもよい。上記の錠剤/ミニ錠剤は、随意に、カプセルに入れてもよい。
【0048】
本発明の更にもう1つの実施形態において、有効量の上記組成物を、この組成物を必要とする対象に投与することを含む、上記の新規な徐放性組成物の使用方法を提供する。更なる実施形態において、本発明の組成物は、この組成物の製剤化に用いられる活性薬剤の性質および量に応じて、1種以上の疾患または障害の予防、改善、または治療等の処置に有用であってもよい。例えば、活性薬剤として、ミコフェノール酸を含む組成物は、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、免疫抑制作用、抗乾癬作用、および抗炎症作用による処置に有用である。または、活性薬剤として、クエチアピンを含む組成物は、精神病の処置に有用である。
【0049】
別の実施形態において、本発明の新規な組成物は、胃腸管(GIT)を通じて吸収されることを理由として、弱塩基性や弱酸性の薬物のように、酸性および塩基性の両方のpH環境下で、かなりの放出を必要とする活性薬剤に特に有用である。本発明の新規な組成物は、長時間にわたって、活性薬剤を、予防上または治療上、有効な濃度で提供する。
【0050】
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明するものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
通し番号 成分 mg/錠
1. ミコフェノール酸モフェチル 1011.28
2. 無水ラクトース 74.25
3. ポリエチルアクリレート
(Eudragit(R) L30 D55) 67.50
4. コポビドン(Copovidone) 04.59
5. ペクチン(Genu(R)) 60.75
6. ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(HPMC(R) K100M CR) 87.75
7. 硫酸カルシウム 30.38
8. ステアリン酸マグネシウム 13.50
コーティング組成物
9. Opadry(R) white(水)分散液 適量
【0052】
手順:
i) ミコフェノール酸モフェチルおよび無水ラクトースを、#40メッシュに通し、コポビドン(Copovidone)を含有するポリエチルアクリレートの水分散液で造粒し、乾燥した。
ii) ペクチンおよび硫酸カルシウムを混合し、次いで、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加し、十分に混合した。
iii) 上記工程(i)の顆粒を、工程(ii)の混合物と混合した。
iv) 上記工程(iii)の混合物を、ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、錠剤へと圧縮した。
v) 上記の圧縮した錠剤を、重量の増分が5.0%w/wになるまで、Opadry(R) whiteでコーティングした。
【0053】
(実施例2)
通し番号 成分 mg/錠
1. (クエチアピンフマル酸塩とした)クエチアピン 400.00
2. ヒドロキシエチルセルロースフタレート 75.00
3. 第二リン酸カルシウム 49.05
4. 微結晶性セルロース 37.50
5. キサンタンガム 37.50
6. アルギン酸ナトリウム 60.00
7. 塩化カルシウム 18.75
8. ステアリン酸マグネシウム 7.50
【0054】
手順:
i) (フマル酸塩とした)クエチアピン、微結晶性セルロース、および第二リン酸カルシウムを混合した。
ii) 上記工程(i)の混合物を#40のふるいにかけた。
iii) 工程(ii)の混合物を、ヒドロキシエチルセルロースフタレートの、アセトン:エタノール(1:1)溶液を用いて造粒した。
iv) 上記工程(iii)の顆粒を、ふるいにかけた。
v) キサンタンガム、および塩化カルシウムを、別々に、#40のふるいにかけた後、工程(iv)の顆粒と十分に混合した。
vi) アルギン酸ナトリウムを、#40のふるいにかけ、工程(v)の混合物と十分に混合した。
vii) 工程(vi)の最終混合物を、ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、錠剤へと圧縮した。
【0055】
(実施例3)
通し番号 成分 mg/錠
1.(ミコフェノール酸モフェチルとした)
ミコフェノール酸 750.00
2. ポリエチルアクリレート 120.00
3. 無水ラクトース 144.00
4. ペクチン 60.00
5. ヒドロキシプロピルメチルセルロース 84.00
6. 硫酸カルシウム二水塩 30.00
7. ステアリン酸マグネシウム 12.00
コーティング組成物
8. Opadry(R) yellow(水)分散液 適量
【0056】
手順:
i) ミコフェノール酸モフェチル、およびラクトースを混合した。
ii) 上記工程(i)の混合物を、#40のふるいにかけた。
iii) 工程(ii)の混合物を、ポリエチルアクリレートを用いて造粒した。
iv) 上記工程(iii)の顆粒を、乾燥して、ふるいにかけた。
v) ペクチン、および硫酸カルシウム二水塩を、別々に、#40のふるいにかけた後、十分に混合し、その後、この混合物を工程(iv)の顆粒と混合した。
vi) ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、#40のふるいにかけ、工程(v)の混合物と混合した。
vii) 工程(vi)の最終混合物を、ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、錠剤へと圧縮した。
viii) 上記工程(vii)の錠剤を、Opadry(R) yellow(水)分散液でコーティングし、乾燥した。
【0057】
(実施例4)
通し番号 成分 mg/錠
1. ミコフェノール酸モフェチル 500.00
2. ポリエチルアクリレート 100.00
3. 無水ラクトース 96.00
4. ペクチン 66.00
5. 硫酸カルシウム二水塩 30.00
6. ステアリン酸マグネシウム 8.00
【0058】
手順:
i) ミコフェノール酸モフェチル、およびラクトースを、十分に混合した。
ii) 上記工程(i)の混合物を、#40のふるいにかけた。
iii) 工程(ii)の混合物を、ポリエチルアクリレートを用いて造粒した。
iv) 上記工程(iii)の顆粒を、乾燥して、ふるいにかけた。
v) ペクチン、および硫酸カルシウム二水塩を、別々に、#40のふるいにかけた後、十分に混合し、その後、この混合物を、工程(iv)の顆粒と混合した。
vi) 工程(v)の最終混合物を、ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、錠剤へと圧縮した。
【0059】
(実施例5)
通し番号 成分 mg/錠
1. 塩酸ジルチアゼム 360.00
2. ヒドロキシメチルセルロースフタレート 65.00
3. マンニトール 50.00
4. ラクトース 35.00
5. ジェランガム 39.50
6. ヒドロキシプロピルセルロース 58.50
7. 硫酸カルシウム 17.75
8. ステアリン酸 7.25
【0060】
手順:
i) ジルチアゼム、マンニトール、およびラクトースを混合した。
ii) 上記工程(i)の混合物を、#40のふるいにかけた。
iii) 工程(ii)の混合物を、ヒドロキシメチルセルロースフタレートを用いて造粒した。
iv) 上記工程(iii)の顆粒を、ふるいにかけた。
v) ジェランガム、および硫酸カルシウムを、別々に、#40のふるいにかけた後、工程(iv)の顆粒と十分に混合した。
vi) ヒドロキシプロピルセルロースを、#40のふるいにかけ、工程(v)の混合物と十分に混合した。
vii) 工程(vi)の最終混合物を、ステアリン酸で滑らかにし、錠剤へと圧縮した。
【0061】
(実施例6)
通し番号 成分 mg/カプセル
1. アテノロール 100.00
2. 酢酸フタル酸セルロース 67.00
3. ラクトース 75.00
4. ペクチン 39.50
5. ヒドロキシプロピルセルロース 58.50
6. 硫酸カルシウム 17.75
【0062】
手順:
i) アテノロール、およびラクトースを混合した。
ii) 上記工程(i)の混合物を、#40のふるいにかけた。
iii) 工程(ii)の混合物を、酢酸フタル酸セルロースを用いて造粒した。
iv) 上記工程(iii)の顆粒を、ふるいにかけた。
v) ペクチン、および硫酸カルシウムを、別々に、#40のふるいにかけた後、工程(iv)の顆粒と混合した。
vi) ヒドロキシプロピルセルロースを、#40のふるいにかけ、工程(v)の混合物と十分に混合した。
vii) 上記工程(vi)の混合物を、#40のふるいにかけた。
viii) 上記工程(vii)の顆粒を、硬ゼラチンカプセルに充填した。
【0063】
(実施例7)
通し番号 成分 mg/カプセル
1. (クエチアピンフマル酸塩とした)クエチアピン 200.00
2. セルロースアセテートトリメリテート 18.75
3. 微結晶性セルロース 65.77
4. グアーガム 18.75
5. ヒドロキシプロピルメチルセルロース 26.25
6. 塩化カルシウム 9.38
7. タルク 3.75
コーティング組成物
8. Opadry(R) yellow(水)分散液 適量
【0064】
手順:
i) クエチアピンフマル酸塩、および微結晶性セルロースを十分に混合した。
ii) 上記工程(i)の混合物を、#40のふるいにかけた。
iii) 工程(ii)の混合物を、セルロースアセテートトリメリテートを用いて造粒した。
iv) 上記工程(iii)の顆粒を、適切なふるいにかけた。
v) グアーガム、および塩化カルシウムを、別々に、#40のふるいにかけた後、工程(iv)の顆粒と十分に混合した。
vi) ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、#40のふるいにかけ、工程(v)の混合物と混合した。
vii) 工程(vi)の最終混合物を、ふるいにかけたタルクで滑らかにし、ミニ錠剤へと圧縮した。
viii) 上記工程(vii)の錠剤を、Opadry(R) yellow(水)分散液でコーティングし、乾燥した。
ix) 上記工程(viii)のコーティングされたミニ錠剤を、硬ゼラチンカプセルに入れた。
【0065】
(実施例8)
通し番号 成分 mg/カプセル
1. アナグレリド 1.00
2. ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート 21.00
3. 無水ラクトース 15.65
4. キサンタンガム 7.00
5. アルギン酸ナトリウム 17.50
6. 塩化マグネシウム 2.10
7. ステアリン酸 5.75
コーティング組成物
8. Opadry(R) yellow(水)分散液 適量
【0066】
手順:
i) アナグレリド、およびラクトースを十分に混合した。
ii) 上記工程(i)の混合物を、#40のふるいにかけた。
iii) 工程(ii)の混合物を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートを用いて造粒した。
iv) 上記工程(iii)の顆粒を、適切なふるいにかけた。
v) キサンタンガム、および塩化マグネシウムを、別々に、#40のふるいにかけた後、工程(iv)の顆粒と十分に混合した。
vi) アルギン酸ナトリウムを、#40のふるいにかけ、工程(v)の混合物と十分に混合した。
vii) 工程(vi)の最終混合物を、ステアリン酸で滑らかにし、錠剤へと圧縮した。
viii) 上記工程(vii)の錠剤を、Opadry(R) yellow(水)分散液でコーティングし、乾燥した。
【0067】
(実施例9)
通し番号 成分 mg/錠
1. クエチアピンフマル酸塩 54.29
2. 無水ラクトース 24.96
3. ポリエチルアクリレート
(Eudragit(R) L30D 55) 5.00
4. ポリビニルピロリドン(PVP(R) K30) 0.25
5. ペクチン 5.00
6. 硫酸カルシウム 2.50
7. ヒドロキシプロピルメチルセルロース 7.00
8. ステアリン酸マグネシウム 1.00
【0068】
手順:
i) クエチアピンフマル酸塩、およびラクトースを混合し、#40のふるいにかけた。
ii) 得られた混合物を、ポリエチルアクリレートおよびポリビニルピロリドンの溶液を用いて造粒した。
iii) 上記工程(ii)の顆粒を、ふるいにかけた。
iv) ペクチン、および硫酸カルシウムを、別々に、#40のふるいにかけた後、工程(iii)の顆粒と十分に混合した。
v) ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、#40のふるいにかけ、工程(iv)の混合物と混合した。
vi) 得られた混合物を、ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、錠剤へと圧縮した。
【0069】
(実施例10)
通し番号 成分 mg/錠
1. ミコフェノール酸モフェチル 750.00
2. 無水ラクトース 2.04
3. ポリエチルアクリレート
(Eudragit(R) L30 D55) 5.00
4. コポビドン(Copovidone) 0.17
5. ペクチン 5.00
6. 硫酸カルシウム 2.00
7. ヒドロキシプロピルメチルセルロース 7.00
8. ステアリン酸マグネシウム 1.00
【0070】
手順:
i) ミコフェノール酸モフェチル、およびラクトースを混合した。
ii) 上記工程(i)の混合物を、#40のふるいにかけた。
iii) ポリエチルアクリレート、およびコポビドン(Copovidone)を、精製水に添加した。
iv) 工程(ii)の混合物を、工程(iii)の溶液を用いて造粒した。
v) 上記工程(iv)の顆粒を、ふるいにかけた。
vi) ペクチン、および硫酸カルシウムを、別々に、#40のふるいにかけた後、工程(v)の顆粒と十分に混合した。
vii) ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、#40のふるいにかけ、工程(vi)の混合物と十分に混合した。
viii) 工程(vii)の混合物を、ステアリン酸マグネシウムで滑らかにし、錠剤へと圧縮した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出調節医薬組成物であって、
溶解度がpHに依存する、少なくとも1種の薬学的に活性のある薬剤と、
前記組成物の3〜80%w/wの量で、酸性環境下で活性薬剤の放出を、主に制御する放出速度制御ポリマーと、
酸性および塩基性の両方の環境下で、活性薬剤の放出を制御し、前記組成物の約0.5%w/w以上の量の、少なくとも1種の原位置(in‐situ)ゲル化剤と、前記組成物の2〜17.5%w/wの量の、少なくとも1種のゲル化促進剤と、随意に、前記組成物の40%w/w以下の量の、少なくとも1種のpH非依存性の速度制御ポリマーとの組み合わせからなる放出速度調節系と、
随意に、1種以上の、他の薬学的に許容される賦形剤とを含む放出調節医薬組成物。
【請求項2】
前記活性薬剤が、単独で、または組み合わせて用いられる、サイクロスポリン、タクロリムス(FK506)、シロリムス(ラパマイシン)、メトトレキセート、ABT578、AP23573、AP23464、AP23675、AP23841、TAFA‐93、バイオリムス‐7またはバイオリムス‐9、ミコフェノール酸、エベロリムス、アザチプリン、ステロイド、NOX‐100、および、それらの薬学的に許容される塩、水和物、多形体、エステル、それらの誘導体を含む群から選択される免疫抑制薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性薬剤が、単独で、または組み合わせて用いられる、グアンファシン、アナグレリド、グアネチジン、グアナドレル、レセルピン、プロパノロール、メトプロロール、アテノロール、ベラパミル、チモロール、エリスロマイシン、クロニジン、クロルフェニラミン、ブロモフェニラミン、クエチアピン、ジルチアゼム、スコポラミン、グルココルチコイド、および、それらの薬学的に許容される塩、水和物、多形体、エステル、それらの誘導体を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性薬剤が、ミコフェノール酸、またはクエチアピン、あるいは、それらの薬学的に許容される塩、水和物、多形体、エステル、または、それらの誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記活性薬剤が、ミコフェノール酸モフェチルである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記活性薬剤が、クエチアピンフマル酸塩である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記放出速度制御ポリマーが、アミノ置換基を有するアクリレート重合体の共重合体;アクリル酸エステル;ポリアクリルアミド;炭水化物の酸フタレート、アミロースアセテートフタレート、酢酸フタル酸セルロース等のフタル酸誘導体;他のセルロースエステルフタレート;セルロースエーテルフタレート;ヒドロキシプロピルセルロースフタレート;ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;メチルセルロースフタレート;ポリビニルアセテートフタレート;フタル酸水素ポリ酢酸ビニル;酢酸フタル酸セルロースナトリウム;デンプン酸フタレート;スチレンマレイン酸ジブチルフタレート共重合体;スチレン‐マレイン酸ポリビニルアセテートフタレート共重合体;スチレンおよびマレイン酸の共重合体;一定の形のゼラチン;グルテン;シェラック;サロール;ケラチン;アンモニア化シェラック;サリチル酸ベンゾフェニル;セルロースアセテートトリメリテート;シェラックと混合したセルロースアセテート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート;酸化セルロース;ポリアクリル酸誘導体;メタクリル酸およびエステル;ジメチルアミノエチルアンモニウム基を有するカチオン性ポリマー;アクリル酸メチルを基材とするアニオン性共重合体;メタクリル酸メチル、および、そのメタクリル酸;酢酸ビニル;クロトン酸共重合体;および、それらの混合物を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記in‐situゲル化剤が、ローカストビーンガム、キサンタンガム、トラガカント、キシラン、アラビノガラクタン、寒天、ジェランガム、スクレログルカン、グアーガム、アプリコットガム、アルギン酸塩、カラゲナン、ペクチン、アカシアガム、デキストラン、アラビアガム、および、それらの混合物を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ゲル化促進剤が、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、および硫酸マグネシウムを含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記pH非依存性ポリマーが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン N‐オキサイド、ビニルピロリドンと長鎖α‐オレフィンとの共重合体、ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの共重合体、ポリ(ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドの共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの共重合体、ビニルピロリドンおよびメタクリル酸ジメチルアミノエチルの四級化共重合体、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルの三元共重合体、ビニルピロリドンおよびメタクリルアミドプロピル‐トリメチルアンモニウムクロライドの共重合体、カプロラクタム/ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチルの三元共重合体、スチレンおよびアクリル酸の共重合体、ポリカルボン酸、ポリビニルアルコール、加水分解ポリ酢酸ビニル、または、それらの混合物を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記pH非依存性ポリマーが、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ヒドロキシアルキルアルキルセルロースが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記in‐situゲル化剤と、前記ゲル化促進剤とが、1:10から10:1の比率である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記薬学的に許容される賦形剤が、単独で、または組み合わせて用いられる、崩壊剤、結合剤、フィラー、増量剤、付着防止剤、酸化防止剤、緩衝剤、着色剤、着香剤、コーティング剤、可塑剤、安定剤、防腐剤、滑沢剤、流動促進剤、およびキレート剤を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物の調製方法であって、
i) 前記活性薬剤を、放出速度制御ポリマー、および放出速度調節系と混合する工程と、
ii) 随意に、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を添加する工程と、
iii) 得られた混合物を適切な剤形に製剤化する工程とを含む調製方法。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物の調製方法であって、
i) 前記活性薬剤を、1種以上の薬学的に許容される賦形剤と混合し、放出速度制御ポリマーで造粒する工程と、
ii) 工程(i)の顆粒を、前記放出速度調節系と混合する工程と、
iii) 随意に、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を添加する工程と、
iv) 得られた混合物を適切な剤形に製剤化する工程とを含む調製方法。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物の使用方法であって、この組成物を必要とする患者に、有効量の該組成物を投与することを含む方法。
【請求項18】
該組成物を必要とする患者における疾患の治療に用いられる薬剤を製造するための請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項19】
実質的に、本明細書に記載され、かつ実施例に例示されている医薬組成物。
【請求項20】
実質的に、本明細書に記載され、かつ実施例に例示されている医薬組成物の製造方法。

【公表番号】特表2010−532746(P2010−532746A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546864(P2009−546864)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000046
【国際公開番号】WO2008/090569
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(500445631)パナセア バイオテック リミテッド (29)
【Fターム(参考)】