説明

放射エネルギーおよび/または熱エネルギーから電気エネルギーへの直接変換のためのエネルギーコンバータ電池

本発明は、エネルギーコンバータ電池に関し、該電池は、好適には錫電極である陰の金属電極と、グラファイトから成る陽電極と、電極の間に配置され後者と接触している電解質とから成り、電解質は、充電された状態で水およびアルカリ水酸化物に溶解されるマンガン酸塩(IV)の塩を含む。エネルギーコンバータ電池は、ガルバニック素子を形成し、電気エネルギーを、電極に接続されたオーム性の消費者抵抗器に供給することによって放電され、熱エネルギーの供給によって充電され得る。加えて、供給された電気エネルギーは、電池に電気化学的に蓄電され得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
水溶性電解質を伴うガルバニック素子、例えば一次電池または蓄電池の放電の間、陰極が作られる金属は、通常は溶解し、正電気を帯びたイオンの放電の結果として、原子水素が、直接的にまたは陽端子における反応を介して発生する。この水素は、他のあらゆる物質と事前に反応しない場合は、非常に素早く水素分子(H)を形成する。この効果は、電池の内部抵抗の急激な増加をもたらし、それは、陽端子において形成された水素ガスが、絶縁効果を有するからである。水素を水に還元する工程および方法があり、例えば、以下の可能な反応が、陽電極において発生し得る。
【0002】
【化1】

これは、最終生成物が、常に陽端子において発生することを意味し、蓄電池の場合においてのみ、電気的に再変換され得る。陰電極も、同様に機能する。この場合において、以下の物質が、放電の工程の間に生成される。
【0003】
【化2】

【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、熱エネルギーの供給によって最終生成物が発生することを防止することである。この目的を達成するために、陽端子において生成された原子水素は、電解質と反応しなくてはならず、該反応は、陰端子において形成された塩が反応し得る可溶性物質を増加させる。この反応は、熱エネルギーの供給においてのみ発生するが、これもまた、必要な原材料を提供しなくてはならない。生成された水素が、錫の還元のために、原子またはイオンの形状で正しい位置において利用可能であることが重要である。
【0005】
存在しない「マンガン」酸HMnOの塩が存在する。これらは、二酸化マンガンおよび水酸化カリウムから生成される塩を含む。
【0006】
【化3】

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
電解質は、塩K[MnO]および水酸化カリウムが溶解した水から成る。電池が動作を開始すると、錫酸塩(II)の塩K[Sn(OH)]もまた、部分的に溶解する。次いで、差異が、電気化学反応と化学的なリサイクリング反応との間に起こり、始動物質の再生を容易にする。陽電極は、グラファイトフィルムから作られ、陰電極は、錫から作られる。2つの始動材料であるK[MnO]および錫は、サイクルを保証するために、電池の電気的ローディングの間に、電気化学的に作られた生成物から再生されなくてはならない。電流が、外部の消費者抵抗器に渡って流れるときには、以下の反応が発生する。
1.陽端子における電気化学反応(還元):
【0008】
【化4】

イオンが、放電されると、K原子は、水と反応し得、またはグラファイト電極の結晶格子にも格納され得る。この効果とは別に、グラファイトはまた、結果として生じた原子水素をその結晶格子に吸収し得、その結果として、グラファイトは、自発的な形態で電解質と反応するように利用可能となる。グラファイト電極は、好適には多孔性であり、その結果として、グラファイト電極の表面は、可能な限り広い。従って、グラファイト電極は、好適には圧縮されたグラファイト粉末から作られるべきである。水素自体は、実際的には水に対して不溶性である。水素と大気中の酸素との間の反応は、ほとんど可能性はなく、それは、グラファイト電極が多孔性であり、液体電解質を含むからである。
2.陽端子におけるリサイクリング反応(還元):
【0009】
【化5】

これは、+4から+2に還元したマンガンの原子価ステージを伴う。
3.陰端子における電気化学反応(酸化):
【0010】
【化6】

水酸化錫さらには始動物質、すなわち塩K[MnO]が生成される。
4.陰端子におけるリサイクリング反応(還元):
【0011】
【化7】

陽端子において生成されたヒドロキソマンガン酸塩(II)K[Mn(OH)]は、熱エネルギーの供給に伴って錫酸塩(II)K[Mn(OH)]と反応する。
【0012】
【化8】

この反応が発生するときのみに、水が再形成され、錫は、その元素状態に戻る。さらに、水素の吸収のために陽端子において要求された塩K[MnO]は、再び利用可能となり、マンガンは、2−原子価から4−原子価のステージに戻る。従って、この反応は、水素および錫のサイクルを完結させる。
【0013】
以下の簡潔な反応式から分かり得ることは、電気エネルギーを得るためには、式の左側は、右側を生み、エネルギーの供給で逆の場合も可能であるということである。
【0014】
【化9】

留意すべきは、2−原子価の錫は、熱せられると容易に4−原子価のステージに変形することである。
【0015】
【化10】

しかし、ヒドロキソマンガン酸塩(II)K[Mn(OH)]を用いると、化合物K[Sn(OH)]内の錫は、その元素状態に変換される。
【0016】
【化11】

錫酸塩(II)K[Sn(OH)]も、無水状態において発生し、すなわち脱水され得るということである。
【0017】
【化12】

化合物KSnはまた、錫に還元され得る。
【0018】
【化13】

Sn(OH)に対するモルの自由標準エンタルピーは、ΔG=−491.1kJ/molである。従って、電池の無負荷電圧は、1.33vでなくてはならない。最大の測定値は、25℃で1.26vであった。熱エネルギーから電気エネルギーへの変換は、既に室温(20℃)で発生する。変換は、温度上昇に伴って指数関数的に上昇する。
【0019】
エネルギーコンバータ電池の機能的な工程は、図1に例示される。反応式の間の矢印は太字で印刷されており、水素の移送を示し、サイクルの中にあり、これに類似して、二重線の矢印は、錫のサイクルを示す。加えて、電気化学反応とリサイクリング反応との間を走る点線の分界線があり、陽電極の減極が発生し、始動物質の再生が影響される。該図は、熱エネルギーが、どのように化学物質の還元を起こすかをさらに例示し、該化学物質は、電気エネルギーの生成のために再び利用可能となる。
【0020】
(再生成された元素の錫の再利用)
再生成された錫は、ヒドロキソマンガン酸塩(II)2K[Mn(OH)]と錫酸塩(II)K[Sn(OH)]との間の反応から作られるが、陰の錫電極との電気的接触は有さない。さらに、該錫は、現存する精細に分配された形態および上昇した温度において水と反応する。
【0021】
【化14】

水素および水酸化錫は、以下の反応に基づいて生成される。
【0022】
【化15】

錫酸塩(II)はまた、水酸化カリウムから生成される。
【0023】
【化16】

塩K[Sn(OH)]は、電解質によって吸収され、水素は、磁鉄鉱の粒子(Fe)に到達し、これは、陰電極と電気的に接触する。
【0024】
電池の内部設計が、図2において断面で示される。陽電極に隣接するのは、薄層であり、該薄層は、多孔性および非電気的に伝導性であり、収水性のキャリア材料を含み、その中に液体電解質が見られ得る。該材料は、例えば綿繊維を含み得る。これらはまた、40%の苛性カリ溶液を吸収するために亜鉛エア(zinc air)一次電池において用いられる。
【0025】
電解質を含んだ、イオンでのみ導電する、および錫製の陰電極の間に、多孔性の酸化鉄層(Fe)が存在し、同様に液体電解質を含む。酸化鉄(II、III)は、アルカリ性の物質に対して耐性があり、電気的に導電性があり、その結晶格子に水素を原子の状態で吸収する能力を有する。水素は、エネルギーコンバータ電池の動作温度を優に超過した温度のみに、すなわち約500℃において、Feと反応する。
【0026】
【化17】

酸化鉄Feによって吸収された水素は、酸化物の結晶格子に均一に分配され、陰の錫電極の内部に到達する。該水素は、電子を陰電極に運搬することによって該内部および酸化鉄の表面で電気化学的に反応する。液体電解質も熱の流れの影響を受けるので、電解質において発生する全ての水素は、酸化鉄の表面および陰電極の内部に到達する。酸化鉄(Fe)を用いると、陰電極の表面および再生成された錫を著しく増加させ、または結果として生じる水素は、液体電解質の熱的な動きに依存して検出され得る。従って、陰電極は、部分的に錫の電極であり、部分的に水素の電極である。
【0027】
エネルギーコンバータ電池の効果はまた、電解質を含んだ、イオンでのみ導電する層、および錫製の陰電極との間に、特に粉末の混合物の形状で酸化鉄(Fe)および錫(Sn)の多孔性の混合物を配置することによって増加し得ることが明らかとなり、該多孔性の混合物は、液体電解質を同様に含む。錫(Sn)は、先ず第1に導電性を増加させ、第2に吸収および吸着の工程のために要求される前述の層の表面を増加させる。
【0028】
錫の代わりに、前述の混合物は、特に亜鉛またはクロムなどの他の吸熱金属を用いても生成され得、同一の効果を与える。
【0029】
(電気的な負荷と熱エネルギー供給との間の平衡状態)
電気的な負荷が、エネルギー変換容量およびエネルギーコンバータ電池の動作温度に対して高すぎる場合には、電解質は、陽電極において生成された全ての水素を吸収し得ない。水素分子(H)が、そこで発生し、電池の内部抵抗を上昇させる。さらに、電解質の中の水の比率が下がり、より多くの錫酸塩(II)の塩が形成され、水溶性の水酸化カリウムも結合される。
【0030】
動作温度が、電気的な負荷によって要求されるものよりも高い場合には、電池の端子電圧も、上昇する。何も負荷が流れていない状態が、通常は無害であり、先の電気的な負荷の下で作られた生成物の還元を促進する。しかし、水素は、過度に高い動作温度の陰電極において発達され得る。
【0031】
【化18】

それによって、水素分子が、同様に作られ、水が消費される。電気的な負荷への熱エネルギーの供給を調整すること、またはその反対も望ましく、これは制御回路を用いて容易に達成され得る。
【0032】
電池が、特に環境的に有害な物質を何も含んでいない場合には、さらに有用である。例えば、苛性カリもまた、アルカリマンガン電池に用いられる。
【0033】
該工程は、他の金属を用いても達成され得る。可能性のある例は、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、鉛および銅を含む。
【0034】
(エネルギーコンバータ電池を用いての電気エネルギーの蓄電)
電池が、錫塩を含むとすると、供給された電気エネルギーは、電池に蓄電され得る。水素が、次いで陰端子において生成され、存在する錫塩を元素の錫に還元する。
【0035】
【化19】

酸素が、陽端子において最初に生成され、次いで+4から+6にマンガンの原子価ステージを高める。
【0036】
【化20】

以下の反応において、マンガンの原子価ステージは、+6から+4に還元される。
【0037】
【化21】

従って、電気エネルギーはまた、電池に限定された程度まで蓄電され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(記載なし)
【図2】(記載なし)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーコンバータ電池であって、
錫、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、鉛および銅(M)を含む群から選択される金属から作られた陰電極と、
グラファイトから成る陽電極と、
該電極の間に配置され後者と接触している電解質とから成り、
該電解質は、充電された状態で水およびアルカリ金属(A)水酸化物に溶解され、かつガルバニック素子を形成するマンガン酸塩(IV)の塩を含み、
該エネルギーコンバータ電池は、電気エネルギーを該電極に接続されたオーム性の消費者抵抗器に供給することによって放電され、熱エネルギーの供給によって充電され、
該放電および該充電は、以下の反応によって記述され、ここでは、
放電:
a)該陽電極における電気化学反応:
【化22】

b)該陰電極における電気化学反応:
【化23】

充電:
c)該陽電極におけるリサイクリング反応:
【化24】

d)該陽電極におけるリサイクリング反応:
【化25】

であり、
ここでは、Aはアルカリ金属であり、Mは、錫、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、鉛および銅を含む群から選択される金属である、エネルギーコンバータ電池。
【請求項2】
前記ガルバニック素子は、前記電極に接続されたエネルギー源から電気エネルギーを吸収する間に、交互にまたは追加して充電され得、該充電は、以下の反応によって記述され、
充電:
a)前記陽電極における電気化学反応:
【化26】

b)前記陰電極における電気化学反応:
【化27】

であることに特徴付けられた、請求項1に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項3】
前記アルカリ金属(A)は、カリウムであることに特徴付けられた、請求項1または2に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項4】
前記金属(M)は、錫であることに特徴付けられた、請求項1〜3のうちの1項に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項5】
前記マンガン酸塩(IV)の塩は、前記陽電極において減極効果を有することに特徴付けられた、請求項1〜4のうちの1項に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項6】
前記陽電極は、グラファイトフィルムであり、および/または多孔性が高いために可能な限り広い表面を有することに特徴付けられた、請求項1〜5のうちの1項に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項7】
前記電解質に面している前記陽電極の側面において、層が配列されており、該層は、多孔性および非電気的に伝導性で、吸水性のキャリア材料を含み、
多孔性の酸化鉄層(Fe)が、該層と前記陰電極との間に形成され、
該層は、同様に電解質を含み該陰電極と電気的に接触していることに特徴付けられた、請求項1〜6のうちの1項に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項8】
前記キャリア材料層と前記陰電極との間に、前記多孔性酸化鉄層(Fe)の代わりに、酸化鉄(Fe)および錫(Sn)の多孔性で電気的に伝導性の混合物が存在し、同様に電解質を含むことに特徴付けられた、請求項7に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項9】
錫(Sn)の代わりに、または付け加えて、前記混合物は、同一の効果を与える少なくとも1つの他の金属、特に亜鉛(Zn)またはクロム(Cr)を含むことに特徴付けられた、請求項8に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項10】
前記キャリア材料は、綿繊維またはそれに類似するものを含み、および/または前記層は、キャリア材料で薄く形成されていることに特徴付けられた、請求項7〜9のうちの1項に記載の、エネルギーコンバータ電池。
【請求項11】
前記エネルギーコンバータ電池は、手段、特に制御回路を有することによって前記電気的な負荷への前記熱エネルギー供給または該熱エネルギー供給への該電気的な負荷を調整することに特徴付けられた、請求項1〜10のうちの1項に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項12】
エネルギーコンバータ電池を用いて化学的エネルギーを電気エネルギーに、および熱エネルギーを化学的エネルギーに変換する方法であって、
該エネルギーコンバータ電池は、
錫、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、鉛および銅(M)を含む群から選択される金属から作られた陰電極と、
グラファイトから成る陽電極と、
該電極の間に配置され後者と接触している電解質とから成り、
該電解質は、充電された状態で水およびアルカリ金属(A)水酸化物に溶解され、かつガルバニック素子を形成するマンガン酸塩(IV)の塩を含み、
化学的エネルギーを電気エネルギーに変換するために、
a)該陽電極において、
【化28】

b)該陰電極において、
【化29】

が、変換され、
熱エネルギーを化学的エネルギーに変換するために、
c)該陽電極において、
【化30】

d)該陰電極において、
【化31】

が、変換され、
ここでは、Aはアルカリ金属であり、Mは、錫、亜鉛、クロム、鉄、カドミウム、鉛および銅を含む群から選択される金属である、方法。
【請求項13】
前記ガルバニック素子は、前記電極に接続されたエネルギー源から電気エネルギーを吸収する間に、交互にまたは追加して充電され得、これによって、電気エネルギーを化学的エネルギーに変換するために、
a)前記陽電極において:
【化32】

b)前記陰電極において:
【化33】

が、変換されることに特徴付けられた、請求項12に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項14】
水酸化カリウムが、前記アルカリ金属水酸化物として用いられることに特徴付けられた、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
錫が、前記金属(M)として用いられることに特徴付けられた、請求項12〜14のうちの1項に記載のエネルギーコンバータ電池。
【請求項16】
前記エネルギーコンバータ電池の動作の間、前記熱エネルギー供給は、前記電気的な負荷に対して調整されなくてはならない、または該電気的な負荷が、該熱エネルギーに対して調整されなくてはならないことに特徴付けられた、請求項12〜15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−546145(P2008−546145A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513909(P2008−513909)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000301
【国際公開番号】WO2006/128406
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(507391395)
【Fターム(参考)】