説明

放射性ガス清浄化装置

【課題】 地震、津波などにより原子力設備自身破壊し、原子力設備からヨウ素などを含んだ微量な放射性ガスを放出し、近接する周辺の住宅やオフイス、工場施設などを汚染した場合、それぞれの室内を清浄化するような装置は考えられていないのが現状である。
【解決手段】 室内に入り込んだヨウ素を含んだ放射性ガスや粒子を、空気吸い込み口と空気吹き出し口を形成した箱型の本体内にプレフィルタと吸着パネルと送風機及び中高性能あるいはHEPAフィルタとを内臓した放射性ガス清浄化装置により、ヨウ素などを含んだ微量な放射性ガスや粒子を浄化して清浄空気として室内に戻して、これを繰り返して室内空気を清浄空気に入れ替えるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅やオフイス、工場施設などの室内に入り込んだヨウ素などを含んだ放射性ガスや粒子を処理し、室内を清浄化するようにした放射性ガス清浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所や核燃料再処理工場から排出されるヨウ素などを含んだ放射性ガスを吸着除去する装置が正常に作動しなかったり、所内や工場内で異常が発生し、ヨウ素などを含んだ放射性ガスで充満してしまった時に、原子力施設から放出するのを防止したり、減少させる目的で非常用放射性ガス処理装置が設けられている。
【0003】
しかし、地震、津波などにより原子力設備自身に破壊し、原子力設備からヨウ素などを含んだ微量な放射性ガスを放出し、近接する周辺の住宅やオフイス、工場施設などを汚染した場合、それぞれの室内を清浄化するような装置は考えられていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明はこれらの課題を解決しょうとしたもので、第1の目的は住宅やオフイス、工場施設などの室内に入り込んできた放射性ガス中のヨウ素や粒子などを除去し室内を清浄化しようとしたものである。
【0005】
もう一つの本発明の目的は室内に放射性ガス清浄化装置を設置し、放射性ガス清浄化装置の電源スイッチを押すだけと言った簡単な操作で室内の放射性ガス中のヨウ素などの濃度を低減しようとしたものである。
【0006】
もう一つの本発明の目的は室内の放射性ガス中のちりおよびほこりなどの粒子を除去した清浄空気を室内へ吹き出すようにしたものである。
【0007】
もう一つの本発明の目的は設置する場所に自由に移動可能にしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の解決手段は、吸い込み口と吹き出し口を形成した箱型の本体内にプレフィルタと吸着パネルと送風機及び中高性能あるいはHEPAなどの粒子除去フィルタとを内臓したことを特徴とする放射性ガス清浄化装置。
【0009】
本発明の第2の解決手段は、放射性ガス中のヨウ素を除去する機能を持った吸着材を収納した吸着パネルを本体内に設けた枠に平板状あるいはジグザグ状に取り付けたことを特徴としたものである。
【0010】
本発明の第3の解決手段は、吸着パネルの上流側にプレフィルタを、吸着パネルの下流側に中高性能あるいはHEPAなどの粒子除去フィルタを設けたことを特徴としたものである。
【0011】
本発明の第4の解決手段は、本体に空気の吸い込み口、上部に吹き出し口を形成し、さらに底部にキャスタを取り付けたことを特徴としたものである。
【0012】
放射性ガス中のヨウ素を除去する機能を持った吸着材は基材にイオン交換基をグラフト重合して得られた粒状あるいは不織布状をなしている。
基材としては吸着性のある物質でイオン交換基をグラフト重合できるもので良く、例えば活性炭、ゼオライトや活性炭、ゼオライトにヨウ化カリウムや硝酸銀などの銀を添着した添着活性炭や添着ゼオライト、無機質多孔性体や、ポリエチレンなどの有機合成樹脂、高分子多孔性体などの有機質多孔性体などが採用される。
【0013】
これらの交換基を基材にグラフト重合する方法としては、従来公知のグラフト重合法が採用でき、例えば紫外線あるいはプラズマ、電離線などを照射して基材にラジカルを発生させ、所定の交換基を重合させて形成することができる。
【0014】
さらに、吸着パネルは枠の一端を着脱自在にした四辺形枠の両面にパンチング板を貼着して構成したパネルケースに前記吸着材を充填して構成したものである。
【0015】
そして、吸着パネルへの吸着材の取替えは枠の一端をパネルケースの蓋にして吸着材の交換を蓋を取り外して上方から吸着材を出し入れすることにより行われる。
【0016】
また、吸着パネルの上流側のプレフィルタはフィルタ保持枠に接着材あるいは係止ツメなどを介して取り付けられている。
【0017】
そしてプレフィルタはガラス繊維あるいは不織布あるいはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維などの合成繊維を湿式抄紙法や乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法などで形成した1枚の濾材シートをフィルタ枠に取り付けたものである。
【0018】
また、前記プレフィルタは平均除去効率が比色法で20〜80%であることが望ましい。
【0019】
次に中高性能あるいはHEPAなどの粒子除去フィルタは繊維径が6μm以下(中心繊維径:3.5μm前後)で且つ繊維重量の93重量%以上のガラス繊維あるいは不織布あるいはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維などの合成繊維の単独あるいは適宜混合して湿式抄紙法や乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法などで形成した1枚の濾材シートをジグザグ状に折り畳んでフィルタ濾材とし、この濾材間に適宜材質のセパレータを挟んだりジグザグ状に折り畳んだろ材間に塗布したビードでろ材同志が密着しないように剛性をもたせて固定し上下にパッキンを取り付けて気密性を持たせてセル型に形成したものである。
【0020】
そして前記中高性能あるいはHEPAなどの粒子除去フィルタの濾材シートはシートの厚みが0.2〜2.0mmで、粒径0.3μmの粒子に対して80〜99.99%の捕集効率を有している。
【0021】
上記効率や数字は各段のフィルタ配置によって種々変更されても何ら要旨を変更するものではない。
【0022】
上記課題解決手段による作用は次の通りである。まず、本体内に内臓した送風機の吸気運転により住宅やオフイス、工場施設などの室内に入り込んだ原子力設備から放出した放射性ガスは本体に形成された空気吸い込み口より本体内に取り入れられる。次に、本体内に取り入れられたガス中のちりやほこりなど比較的大きなダストはプレフィルタにて除去される。そして後段の吸着パネルへの負荷を軽減できるようになっている。
【0023】
次に比較的大きなダストが除去されたガスは吸着パネルを通過する。この時点で吸着パネル内に充填された吸着材により放射性ガス中のヨウ素などが除去される。
【0024】
さらに、比較的大きなダストおよび吸着パネルを通過し放射性ガス中のヨウ素が除去されたガスは微粒子に対し高い捕集効率を有した中高性能あるいはHEPAなどの粒子除去フィルタを通過する。その際空気中に含まれた細かな粒径ダストは除去され清浄な空気として本体に形成された空気吹き出し口より室内に吐き出される。
【0025】
そして、上記運転を継続することによってヨウ素を含んだ放射性ガスの室内ガス全体は除々に浄化され、ついには清浄な空気で室内は充満される。
【発明の効果】
【0026】
上述したように、本発明の放射性ガス清浄化装置は次のような効果が得られる。
(1)放射性ガス清浄化装置は箱型の本体内に内臓したプレフィルタと吸着パネルと送風機及び中高性能フィルタとから構成されたもので、構造が非常に簡単に出来ていて取り扱いが容易である上、設置スペースを小さくでき現地設置の簡素化が図れる。
(2)吸着パネルには放射性ヨウ素を除去する機能を持った吸着剤が充填されているので、吸着パネルを通過したガスは放射性ヨウ素が除去される。
(3)さらに、放射性ヨウ素が除去されたガスは中高性能あるいはHEPAなどの粒子除去フィルタで細かな粒径ダストが除去された後空気吹き出し口より室内へ吐き出されるので、清浄化されたガスが室内に供給される。これらの操作を繰り返すことにより室内の空気は、確実に清浄化され、室内にいる人員の健康を保つことが出来る。
(4)吸着パネルの前段にプレフィルタを設置したので吸着パネルに流入する塵埃濃度を大幅に低減でき、吸着パネルの圧力損失の上昇度合いを抑制でき長寿命化が図れ、ランニングを含めたトータルコストの省力化が可能となる。
(5)箱型の本体底部にキャスタを取り付けたので、室内の設置したい場所に自由に移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1の正面図を示す。
【図2】第1図の平面図を示す。
【図3】1部内部を示す第1図の左面図。
【図4】第1図の右面図を示す。
【図5】1部内部を示す本発明実施例2の正面図。
【図6】第5図の平面図を示す。
【図7】1部内部を示す第5図の左面図。
【図8】第5図の右面図を示す。
【図9】1部内部を示す本発明実施例2の正面図。
【図10】第5図の平面図を示す。
【図11】1部内部を示す第5図の左面図。
【図12】第5図の右面図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明の放射性ガス清浄化装置について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
住宅室内に設置した場合の放射性ガス清浄化装置について図1から図4を参照して説明する。1は箱型の本体で、本体1は両側面板2、3と一方の側面板2にヒンジ止めされた正面ドア4とキャスター5を取り付けた底板6と上板7および背板8とから構成されている。そして、正面ドア4の正面には空気吸い込み口9が形成されている。
【0029】
また、本体1の内部には吸着パネル10が気密に平板状に取り付けられるように枠に取り付けられている。
【0030】
吸着パネル10の気流方向上流側にはプレフィルタ11が枠に取り付けられ、気流方向下流側には中高性能あるいはHEPAフィルタ12が枠に取り付けられている。そして中高性能あるいはHEPAフィルタ12の後段には送風機13が設置されている。さらに上板7には空気の吹き出し口14が形成されている。
【0031】
実施例1の構造はこのように簡単な構造であるので、本体1内の送風機13の吸気運転によりヨウ素を含んだ放射性ガス含んだ室内のガスは本体に形成された空気吸い込み口9より本体1内に取り入れられる。そして、本体1内に取り入れられたガスはプレフィルタ11にてちりおよびほこりなどの比較的大きなダストが除去され、吸着パネルを通過する。そしてこの吸着パネル10にて放射性ガスなどのヨウ素が除去される。
【0032】
さらに、吸着パネル10を通過した空気は中高性能あるいはHEPAフィルタフィルタ12にて細かな粒径ダストが除去され清浄なガスとして上板7に形成された空気吹き出し口14より室内に吐き出される。
【0033】
そして、上記運転を継続することによってヨウ素を含んだ放射性ガスの室内ガス全体は除々に浄化され、ついには清浄な空気で室内は充満される。
【実施例2】
【0034】
オフイス室内に設置した場合の放射性ガス清浄化装置について図5から図8を参照して説明する。21は箱型の本体で、本体21は両側面板22、23と一方の側面板22にヒンジ止めされた正面ドア24とキャスター25を取り付けた底板26と上板27および背板28とから構成されている。そして、両側面板22、23と正面ドア24の底部には空気吸い込み口29がそれぞれ形成されている。さらに正面ドア24の上部には空気の吹き出し口30が形成されている。
【0035】
また、本体21の内部には吸着パネル31が気密にジグザグ状に枠に取り付けられている。
【0036】
吸着パネル31の気流方向上流側にはプレフィルタ32が枠に取り付けられ、気流方向下流側には中高性能あるいはHEPAフィルタ33が枠に取り付けられている。そして中高性能あるいはHEPAフィルタ33の前段には送風機34が設置されている。
【0037】
実施例2の構造はこのように簡単な構造であるので、本体21内の送風機34の吸気運転によりヨウ素を含んだ放射性ガス含んだ室内のガスは本体21に形成された空気吸い込み口29より本体21内に取り入れられる。そして、本体21内に取り入れられた空気はプレフィルタ32にてちりおよびほこりなどの比較的大きなダストが除去され、吸着パネル31を通過する。そしてこの吸着パネル31にて放射性ガスなどのヨウ素が除去される。
【0038】
さらに、吸着パネル31を通過した空気は中高性能あるいはHEPAフィル夕33にて細かな粒径ダストが除去され清浄な空気として正面ドア24の上部に形成された空気吹き出し口30より室内に吐き出される。
【0039】
そして、上記運転を継続することによってヨウ素を含んだ放射性ガスは除々に浄化され、ついには清浄な空気で室内全体は充満される。
【実施例3】
【0040】
広い工場設備室内に設置した場合の放射性ガス清浄化装置について図9から図12に示すが実施例2とほぼ構造および作用効果が同じであることから図面中には実施例2と同じ番号を記し詳細な説明は省略する。
【0041】
尚、本実施例では本発明の一実施例を述べたもので、これに限定されることなく、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
住宅やオフイス、工場施設などの室内に放射性ガス清浄化装置を置いて、室内の空気を浄化して清浄空気として室内に戻して、これを繰り返して室内空気を清浄空気に入れ替えるようにしたもので実用上大いに役立つものである。
【符号の説明】
【0043】
1・・・本体 2・・・側面板 3・・・側面板 4・・・正面ドア
5・・・キャスター 6・・・底板 7・・・上板 8・・・背板
9・・・空気吸い込み口 10・・・吸着パネル 11・・・プレフィルタ
12・・・中高性能フィルタ 13・・・送風機13
14・・・空気の吹き出し口 21・・・本体 22・・・側面板
23・・・側面板 24・・・正面ドア 25・・・キャスター
26・・・底板 27・・・上板 28・・・背板28
29・・・空気吸い込み口 30・・・空気の吹き出し口
31・・・吸着パネル 32・・・プレフィルタ
33・・・中高性能フィルタ 34・・・送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸い込み口と空気吹き出し口を形成した箱型の本体内にプレフィルタと吸着パネルと送風機及び中高性能あるいはHEPAなどの除去フィルタとを内臓したことを特徴とする放射性ガス清浄化装置。
【請求項2】
吸着パネルの気流方向上流側にプレフィルタを、気流方向下流側に中高性能あるいはHEPAなどの除去フィルタおよび送風機を設けたことを特徴とする請求項1の放射性ガス清浄化装置。
【請求項3】
吸着パネルは汚染ガス中に含まれる放射性ヨウ素などの放射性物質を除去する機能を持った吸着材で充填されたことを特徴とする請求項1の放射性ガス清浄化装置。
【請求項4】
吸着パネルを本体内に設けた枠に平板状あるいはジグザグ状に取り付けたことを特徴とする請求項1の放射性ガス清浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−202985(P2012−202985A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85770(P2011−85770)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000193047)進和テック株式会社 (36)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)