説明

放射性セシウムの除去方法、及び、焼成物の製造方法

【課題】放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを、容易に、かつ効率的に除去する方法を提供する。
また、放射性セシウムで汚染された廃棄物を原料として用いて、無害な焼成物を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】
放射性セシウムで汚染された廃棄物を含む原料を、実績率が60%以上になるように造粒して、造粒物を得る造粒工程と、上記造粒物を加熱して、上記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させる加熱工程と、を含む放射性セシウムの除去方法。
放射性セシウムで汚染された廃棄物を含む原料を、実績率が60%以上になるように造粒して、造粒物を得る造粒工程と、上記造粒物を加熱して、上記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させて、焼成物を得る加熱工程を含む、焼成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去するための方法、及び、放射性セシウムで汚染された廃棄物を原料として用いて、無害な焼成物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の大きな事故によって外部の環境中に放出された放射性セシウムが廃棄物又は土壌中に含まれている場合があるという問題が起きている。放射性セシウム(セシウム137)は、半減期が30年であり、長期間に亘って人体に悪影響を与えうるため、廃棄物等からの放射性セシウムの除去を求められる場合が多い。
放射性セシウムを除去する方法として、例えば、硝酸塩の形態で存在する放射性廃棄物を、外部に周回する通電コイルを備えたスリットを有する冷却された容器内で電磁誘導加熱により溶解し、硝酸塩が分解して生成した金属酸化物を容器周囲に、還元された白金属元素を電磁ピンチ力によって容器中央部に集積させ、次いで冷却・凝結後に、生成した固化体を回収することからなる、放射性廃棄物の処理方法において、電磁誘導加熱中に放射性廃棄物から揮発したセシウム等の長寿命核種を分離・回収する方法が記載されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1の方法は、事故によって外部の環境中に放出された放射性セシウムを対象とするものではなく、原子力発電所等の限定された区域内で発生する放射性廃棄物を対象とするものであるため、膨大な量の汚染土壌等の処理に適したものではなく、また、装置が複雑で高価であり、高コストであるという問題があった。
一方、セメント産業では、産業廃棄物や一般廃棄物をコンクリート用の骨材、軽量土等として再資源化している。例えば、下記の式(1)及び式(2)を満たす焼成用原料を焼成してなる焼成物が提案されている(特許文献2)。
(1) 0.75≧S/(S+A+F)≧0.45
(2) 0.25≧A/(S+A+F)≧0.15
(式(1)及び式(2)中、Sは、焼成用原料から強熱減量を除いた全量中のSiO換算でのSiの質量割合であり、Aは、焼成用原料から強熱減量を除いた全量中のAl換算でのAlの質量割合であり、Fは、焼成用原料から強熱減量を除いた全量中の酸化物換算での融点降下成分の質量割合(ただし、融点降下成分がハロゲン元素である場合に限り、元素単体での質量割合とする。)である。)
上記焼成用原料には汚染土壌等の廃棄物が含まれ、得られた焼成物は軽量骨材、軽量土に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−157897号公報
【特許文献2】特開2008−308392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを、容易に、かつ効率的に除去することができる方法を提供することを目的とする。
本発明は、また、放射性セシウムで汚染された廃棄物を原料として用いて、無害な焼成物(例えば、軽量骨材、または軽量盛土材)を製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、放射性セシウムで汚染された廃棄物を含む原料を、実績率が60%以上になるように造粒し、該造粒物を加熱することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1] 放射性セシウムで汚染された廃棄物を含む原料を、実績率が60%以上になるように造粒して、造粒物を得る造粒工程と、上記造粒物を加熱して、上記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させる加熱工程と、を含む放射性セシウムの除去方法。
[2] 上記加熱工程における加熱温度が900℃以上である、前記[1]に記載の放射性セシウムの除去方法。
[3] 上記原料中の、シリカ(SiO)とアルミナ(Al)の質量比(SiO/Al)が2.0以下であり、かつ、上記原料中のCaO及びMgOの合計含有率が5質量%以下である、前記[1]または[2]に記載の放射性セシウムの除去方法。
[4] 上記加熱工程において、融着防止剤を加える、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の放射性セシウムの除去方法。
[5] 上記造粒工程において、得られる造粒物の粒度が2mm以上になるように造粒する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の放射性セシウムの除去方法。
[6] 放射性セシウムで汚染された廃棄物を含む原料を、実績率が60%以上になるように造粒して、造粒物を得る造粒工程と、上記造粒物を加熱して、上記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させて、焼成物を得る加熱工程を含む、焼成物の製造方法。
[7] 前記[6]に記載の製造方法によって得られた焼成物からなる軽量骨材。
[8] 前記[6]に記載の製造方法によって得られた焼成物からなる軽量盛土材。
【発明の効果】
【0006】
本発明の放射性セシウムの除去方法によれば、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを、容易に、かつ効率的に除去することができる。
また、本発明の焼成物の製造方法によれば、放射性セシウムが除去された無害な焼成物を得ることができる。この焼成物は、例えば、軽量骨材、または軽量盛土材として使用することができ、放射性廃棄物の減容化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の放射性セシウムの除去方法は、放射性セシウムで汚染された廃棄物を含む原料を、実績率が60%以上になるように造粒して、造粒物を得る造粒工程と、上記造粒物を加熱して、上記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させる加熱工程とを含む。
以下、本発明について詳細に説明する。
[造粒工程]
本発明の造粒工程に用いられる主原料は、放射性セシウムで汚染された廃棄物である。
ここで、放射性セシウムで汚染された廃棄物とは、例えば、土壌や、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、ごみ由来の溶融スラグ、貝殻、草木等の一般廃棄物や、下水汚泥、下水スラグ、下水汚泥焼却灰、浄水汚泥、建設汚泥等の産業廃棄物や、がれき等の災害廃棄物であって、放射性セシウムを含むものである。また、放射性セシウムをほとんど含まない部分(例えば、土壌の場合、砂、石)を予め取り除いて得られる、放射性セシウムが濃縮されたもの(中間処理物)も、本発明における「放射性セシウムで汚染された廃棄物」の概念に含まれるものとする。
本発明の方法で用いられる上記廃棄物の最大粒度は、効率的な除染を行う観点から、通常1mm以下である。上記廃棄物の最大粒度が1mmを超える場合、廃棄物の内部に含まれる放射性セシウムが少ないため、処理効率が悪くなる。放射性セシウムで汚染された廃棄物を予め篩にかける、または水を用いた沈降などで分級を行うことで、本発明に適する粒度の大きさの原料を得ることができる。
なお、「廃棄物の最大粒度」とは、廃棄物を構成する粒体の積算頻度分布(質量基準の分布)の95%に相当する粒径をいう。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、効率的な除染を行う観点から、発泡を促進する有機物を含む土壌をそのまま、あるいは有機物をほとんど含まない廃棄物に対しては、有機物を多く含む下水汚泥、または浄水汚泥を混合して用いることが好ましい。
上記廃棄物は、必要に応じてさらに分級や粉砕等によって粒度を調整したうえで、造粒物の原料として用いられる。
【0008】
ここで、放射性セシウムとは、セシウムの放射性同位体であるセシウム134及びセシウム137を意味する。これらの放射性セシウムは、原子力発電所の事故によって外部の環境中に放出される放射性物質であり、半減期がそれぞれ約2年と約30年のものである。
本発明において、除去対象物である放射性セシウムは、事故を起こした原子力発電所から、ヨウ化セシウム等の形態で放射性ヨウ素と共に外部の環境中に放出され、上空から地表面に降下したものである。ヨウ化セシウムは、沸点が1200℃以上であり、沸点が700℃程度であるセシウム単体に比べて、揮発し難い性質を有する。そのうえ、地表面に降下した放射性セシウムは、土壌に含まれる粘土鉱物中に閉じ込められて、土壌から離れにくい状態となり、また、形態が変化する場合もある。また、がれき等の災害廃棄物に付着したり、地表面に降下した放射性セシウムが雨によって流され、下水処理の過程で濃縮されることによって、高濃度の放射性セシウムを含む下水汚泥等が生じることがある。さらに、土壌に含まれる放射性セシウムを吸収することによって、草木が放射能に汚染され、これら放射能に汚染された草木を含むものを焼却して生じた焼却灰においては、ガラスなどに放射性セシウムが閉じ込められていることもある。本発明では、これらの処理し難い状態になっている放射性セシウム化合物を分離し回収しようとするものである。
【0009】
本発明の造粒工程に用いられる原料は、上述した放射性セシウムで汚染された廃棄物をそのまま用いても良いが、必要に応じて、添加剤として、アルミナ、ムライト、石炭灰(高融点灰)、及びアルミドロス等を配合してもよい。
なお、高融点灰とは、JIS M 8801「石炭類の試験方法」の溶融性試験法にて、軟化点が1250℃以上の石炭灰をいう。
特に、後述する加熱工程において、原料の種類や配合によっては、加熱した際(1000℃程度)に、造粒物の融着が激しくおこり、該造粒物が炉に付着することで、炉の運転が困難となる場合がある。また、該造粒物が炉に付着することによって、加熱温度が低下し、放射性セシウムの揮発率が求める揮発率に達しない場合がある。このように、上記造粒物が炉に付着して運転が困難となった場合、または、炉の運転が可能であっても、加熱温度が低下して、目標とする放射性セシウムの揮発率に達しない場合、造粒物の原料組成を、シリカ(SiO)とアルミナ(Al)の質量比(SiO/Al)が2.0以下、より好ましくは1.5以下であり、かつ、該原料中のCaO及びMgOの合計含有率が5質量%以下であるように調整することが好ましい。
上記原料中の、シリカ(SiO)とアルミナ(Al)の質量比(SiO/Al)が2.0を超える場合、及び/または、上記原料中のCaO及びMgOの合計含有率が5質量%を超える場合、原料の溶融温度の上昇効果が小さくなるため、炉の運転が困難になることがある。
上記原料の組成を上記範囲内に調整することで、造粒物の溶融温度が上昇し、造粒物の炉への付着を防ぐことができ、より高温での焼成が可能となり、放射性セシウムの高い除去率を得ることができる。
【0010】
さらに、後述する加熱工程における焼成物の発泡性を高めるために、上記原料に発泡促進剤を配合しても良い。発泡促進剤としては、有機系および無機系のものが挙げられる。
有機系の発泡促進剤として例えば、活性炭、石炭等の炭材、木屑粉、でんぷん、プラスチック粉等の有機材が挙げられる。また、無機系の発泡促進剤として例えば、ベンガラ、赤泥等の酸化鉄が挙げられる。
また、必要に応じて、放射性セシウムの揮発、および、得られる焼成物の軽量化に影響を与えない範囲内で、造粒強度増加のためのセメント、造粒強度、造粒密度増加、及び造粒容易化のためのベントナイト、減水剤、及び増粘剤等の各種添加剤を用いてもよい。
【0011】
本発明の造粒工程に用いられる原料(放射性セシウムで汚染された廃棄物、及び各種添加剤等)は、必要に応じて、分級や粉砕等によって予め粒度を調整して使用される。
原料の平均粒度は、好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜100μm、特に好ましくは10〜50μmである。
該平均粒度が1μm未満の場合、後述する造粒工程において、発塵などが生じて、造粒をすることが困難となる場合がある。
また、該平均粒度が300μmを超えると、後述する加熱工程において焼成物の発泡性が低下するため、密度が低下しない場合があり、得られた焼成物を軽量骨材、軽量盛土材として用いることが困難となることがある。
なお、「原料の平均粒度」とは、原料を構成する粒体の積算頻度分布(質量基準の分布)の50%に相当する粒径をいう。
上記原料を粉砕する場合、粉砕は連続式でもバッチ式でもよく、また、湿式でも乾式でもよい。粉砕に用いられる粉砕機は、例えばボールミル、縦型ミル等が挙げられる。乾式粉砕の場合には、必要に応じてロータリードライヤー等の乾燥機を用いて乾燥させてもよい。
【0012】
上記原料は、解砕機もしくは粉砕機と、混合機を組み合わせて、あらかじめ粒度を調整して混合する2段階の処理を行ってもよく、混合を兼ねて解砕、粉砕等を同時に行ってもよい。
混合は、連続式でもバッチ式でもよく、湿式でも乾式でもよい。混合機としては、例えば、ナウターミキサーやエアーブレンデングサイロ等の公知の混合機が挙げられる。また、特に混合度を高めたい場合には、チューブミルなどの粉砕を伴う混合機が好ましい。
粉砕および混合時間は、使用する設備によっても異なるが、経済性や混合性の観点から、好ましくは30分間〜1時間程度である。
【0013】
本工程は、上述した放射性セシウムで汚染された廃棄物を含む原料を、実績率が60%以上になるように造粒して、造粒物を得る工程である。
造粒工程において、必要に応じて、原料に含まれる水分の均一化を図るために、例えば、ミキサ、パグミル、またはスクリューフィーダー等を用いて原料に水分を添加する。
添加する水分の量は、原料の合計100質量部当たり、好ましくは5〜25質量部、より好ましくは10〜20質量部である。
水分の添加量が5質量部未満の場合、造粒自体が困難となる場合がある。水分の添加量が25質量部を超えると、得られる造粒物の強度が低下するとともに、造粒装置等に原料が付着する等の製造上の問題が生じる場合がある。
水分の添加量は、原料の粉末度や含水量によって異なるため、造粒物の状態を見ながら、適宜調節することが好ましい。
必要に応じて水分の含有量を調整した原料は、造粒機を用いて造粒される。
造粒に用いられる造粒機としては、例えば、ブリケットマシン、ロールプレス、押し出し成型機、及びパグミル等が挙げられる。造粒後に、回転ドラム、ミキサ、または篩等を用いて、整粒を行なってもよい。
【0014】
造粒工程で得られる造粒物のかさ密度は、好ましくは1.6g/cm以上、より好ましく1.7g/cm以上、特に好ましくは1.8g/cm以上である。なお、一般的な土の粒子の密度は2.6〜2.7g/cmである。
造粒物のかさ密度が1.6g/cm未満であると、加熱工程において、造粒物の内部まで酸化されるため、発泡する還元領域が少なくなり軽量化が困難となる場合がある。また強度が低いためにダストが増加する場合がある。
また、造粒物の実績率は60%以上、より好ましく62%以上、特に好ましくは65%以上である。
ここで、かさ密度および実績率の測定方法について説明する。
かさ密度は、(1)試料の重量を測定する、(2)重量を測定した試料をアマニ油中に5分間浸漬する、(3)浸漬した試料の表面の油をかるく拭き取り、試料の重量を測定する、(4)比重瓶に水を満たして質量を測定後、次いでアマニ油で表面をコーティングした試料をビンの中に投入して重量を測定する、の各測定を行った後に、下記式(1)を用いて求めることができる。
かさ密度=W1/((W0−(W3−W2)) ・・・(1)
(上記式(1)中、WOは比重瓶の質量と水の質量の合計である。W1は試料の質量である。W2はアマニ油で浸漬した試料の質量である。W3は、比重瓶、水、及びアマニ油で浸漬した試料の各質量の合計である。)
また、実績率はJIS A 1202の「土粒子の密度試験方法」に基いて、土粒子のみの密度を測定し、下記式(2)を用いて求めることができる。
「かさ密度」÷「土粒子の密度」×100=「実績率」% ・・・(2)
【0015】
また、上記造粒物の粒度は、好ましくは2mm以上、より好ましくは2〜30mm、特に好ましくは5〜20mmである。粒度が2mm未満の場合、造粒物の内部まで酸化されるため、発泡する還元領域が少なくなり軽量化が困難となる場合がある。造粒物の粒度の上限値は、特に限定されないが、造粒物の粒度が大きすぎると、加熱工程によって得られる焼成物の用途が狭くなる。
ここで、「造粒物の粒度」とは、1つの造粒物の最大寸法(例えば、断面が楕円状である粒状物においては、長径寸法)をいう。
造粒工程において生じた微粉は、ふるい分けによって、再度造粒物の原料として用いることができる。
造粒機によって得られた造粒物は、乾燥機、あるいは廃熱を利用して水分を除去される。また、後述するキルン内で乾燥を兼ねてもよい。
なお、原料としてセメントを添加した場合は、1日以上の養生を行ってから乾燥することが好ましい。
【0016】
[加熱工程]
本工程は、上記造粒工程によって得られた造粒物を加熱して、放射性セシウムを揮発させる工程である。
加熱によって、造粒物の表層部が酸化されるとともに、内層部は還元雰囲気となる。還元雰囲気下で加熱することで、セシウムが揮発する温度が低下し、より低い温度で放射性セシウムを揮発させることができる。また、放射性セシウムの除去率を高くすることができる。
また、造粒物を加熱することで、還元雰囲気のまま造粒物の内部が溶融して適度に粘性が低下することにより、原料中に含まれる成分(例えば、Fe等)の反応により発生する気泡(O及びCO等)が、半溶融状態の内部に捕捉され、多孔質化、軽量化された焼成物を得ることができる。
加熱手段としては、特に限定されるものではなく、連続式とバッチ式のいずれも用いることができる。
連続式の加熱手段の例としては、ロータリーキルン(内熱式、外熱式)等が挙げられる。
バッチ式の加熱手段の例としては、焼却炉、電気炉、マイクロ波加熱装置等が挙げられる。
中でも、連続式の加熱手段は、処理の効率を高める観点から、本発明で好ましく用いられる。特に、後述の酸素濃度調整、融着防止剤投入の観点からロータリーキルンが好ましい。また、該ロータリーキルンは、排気系にサイクロン等の原料循環予熱設備、プレヒーター、廃熱ボイラー等を付設していても、していなくても良い。また、窯尻にリフターを備えているものや、ロータリーキルンの内径を途中で窄めたり、広げるなどの加工を加えたものであっても良い。
加熱に用いられる燃料(バーナーの燃料)としては、重油、微粉炭、再生油、LPG、NPG、可燃性廃棄物等が挙げられる。
特に、ロータリーキルンで焼成する際には、燃料代替廃棄物、例えば、廃油、廃タイヤ、廃プラスチック等を使用することができる。
【0017】
加熱時の酸素濃度は、放射性セシウムの揮発促進、及び、得られる焼成物の軽量化の観点から、好ましくは1〜10体積%、より好ましくは3〜8体積%である。
酸素濃度が1体積%未満であると、造粒物の表面まで酸化されず、還元雰囲気のまま全体が溶融し、炉の運転に支障が生じて軽量化が困難となる場合がある。酸素濃度が10体積%を超えると、造粒物の昇温速度が速くなるため、短時間で液相が生じやすくなり、放射性セシウムの揮発が阻害される、また、ロータリーキルン窯尻の風速が早くなることで多量の原料が系外へ飛散する場合がある。
加熱温度は、好ましくは900℃以上、より好ましくは900〜1350℃、さらに好ましくは1000〜1250℃、特に好ましくは1050〜1150℃である。
加熱温度が900℃未満であると、放射性セシウムの揮発率が低くなると共に、得られる焼成物の密度が高くなり、軽量化を図ることが困難となる。加熱温度が1350℃を超えると、造粒物が溶融することによって、炉の運転に支障が生じる場合がある。
造粒物の滞留時間は、ペレット内部の還元状態を長時間維持するために好ましくは20分間以上である。
上記造粒物の加熱温度および滞留時間は、窯内における造粒物の溶融状況、焼成物の放射性セシウムの揮発状況、品質(例えば、絶乾密度、吸水率等)を勘案し、適宜調整することが好ましい。
【0018】
加熱工程において、造粒物の融着が激しくキルンの運転が困難となる場合、または放射性セシウムの揮発率が80%以下である場合、融着防止剤を窯内に加えてもよい。
融着防止剤を窯内に加えることで、造粒物の溶融温度が上昇するため、より高い温度で加熱することが可能となり、放射性セシウムの揮発率を高くし、得られる焼成物の軽量性を高めることができる。
融着防止剤としては、例えば、珪石、高融点石炭灰、アルミナ、及びムライト等が挙げられる。ここで、融着防止剤の軟化点は、JIS M 8801「石炭類の試験方法」の溶融性試験法による値として、好ましくは1250℃以上、より好ましくは1300℃、特に好ましくは1350℃以上である。また、融着防止剤は、粉体状のものが好ましい。
融着防止剤の軟化点が1250℃未満であると、融着防止の効果を得ることができない場合がある。また、大量に加える必要があるため大量のダストが発生する場合がある。
融着防止剤を加える方法としては、キルンの窯尻より造粒物を投入し、窯前で加熱する場合には、窯尻から投入される上記造粒物よりも融点温度が高い融着防止剤を粉状にして、キルンの窯前から吹き込む方法が挙げられる。例えば、キルンの窯前側に専用の投入口を設けて、空気を用いて圧送することで、容易に融着防止剤を投入することができる。また、特殊な投入管を用いることで、キルンの途中で投入することも可能である。
融着防止剤は、造粒物の温度が最高に達する地点(焼点)及びその近傍(焼点付近)に向けて、一か所以上から吹き込むことが好ましい。焼点とは、具体的には、通常キルンの内径をDとして、キルンの入り口側から2D〜3Dの地点である。
融着防止剤の平均粒度は、好ましくは10〜300μm、より好ましくは30〜100μmである。平均粒度が10μm未満であると、投入後、そのまま窯尻側まで飛散してしまう場合がある。平均粒度が300μmを超えると、空気搬送に障害が発生する、融着防止のための被覆作用が小さくなる、及び、送入管路等の磨耗が著しい等の問題が生じる場合がある。
なお、「融着防止剤の平均粒度」とは、融着防止剤を構成する粒体の積算頻度分布(質量基準の分布)の50%に相当する粒径をいう。
融着防止剤の投入量は、造粒物100質量部に対して、好ましくは1〜15質量部であり、より好ましくは2〜10質量部である。該投入量が1質量部未満の場合、融着防止の効果が得られない場合がある。該投入量が15質量部を超えると、大量のダストが発生する場合がある。
【0019】
上述した、放射性セシウムの除去方法によって生じた排ガス中の揮発した放射性セシウムは、冷却されて固体になった後、集塵機またはスクラバー等で回収することができる。また、キルンにプレヒーターが取り付けられている場合は、揮発した放射性セシウムを高濃度で含む排ガスの一部を抽気して、冷却することによって、固体となった放射性セシウムを回収することもできる。回収した放射性セシウムは、必要に応じて水洗、吸着などにより、さらなる減容化処置をした後、コンクリート製の容器などに密閉して保管することができる。これにより、放射性物質を含む廃棄物を外部に漏洩することなく、減容化し、保管することができる。
【0020】
加熱後に得られた焼成物は、絶乾密度が好ましくは0.8〜2.5g/cm、より好ましくは1.0〜2.3g/cmである。なお、該焼成物の絶乾密度は、JIS A1135(構造用軽量粗骨材の密度及び吸水率試験方法)による測定値である。
得られた焼成物は、軽量骨材、軽量土等の軽量資材、埋め戻し材等として使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性セシウムで汚染された廃棄物を含む原料を、実績率が60%以上になるように造粒して、造粒物を得る造粒工程と、
上記造粒物を加熱して、上記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させる加熱工程と、を含む放射性セシウムの除去方法。
【請求項2】
上記加熱工程における加熱温度が900℃以上である、請求項1に記載の放射性セシウムの除去方法。
【請求項3】
上記原料中の、シリカ(SiO)とアルミナ(Al)の質量比(SiO/Al)が2.0以下であり、かつ、上記原料中のCaO及びMgOの合計含有率が5質量%以下である、請求項1または2に記載の放射性セシウムの除去方法。
【請求項4】
上記加熱工程において、融着防止剤を加える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射性セシウムの除去方法。
【請求項5】
上記造粒工程において、得られる造粒物の粒度が2mm以上になるように造粒する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射性セシウムの除去方法。
【請求項6】
放射性セシウムで汚染された廃棄物を含む原料を、実績率が60%以上になるように造粒して、造粒物を得る造粒工程と、
上記造粒物を加熱して、上記廃棄物中の放射性セシウムを揮発させて、焼成物を得る加熱工程を含む、焼成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法によって得られた焼成物からなる軽量骨材。
【請求項8】
請求項6に記載の製造方法によって得られた焼成物からなる軽量盛土材。