説明

放射性セシウムの除去方法及び除去装置

【課題】放射性セシウムを含む廃棄物から低コストで放射性セシウムを除去する方法及び装置を提供する。
【解決手段】放射性セシウムで汚染された可燃性廃棄物を燃焼焼却する焼却炉22と、焼却炉から排出される燃焼排ガスG5及び可燃物Cの焼却灰の顕熱を用いて、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源から酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウムを生成する、サイクロンを多段に配列したサスペンションプレヒータ23と、放射性セシウムで汚染された無機物Sを、酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに焼却灰D3と共に焼成するロータリーキルン21と、ロータリーキルンにおいて揮発したセシウムを回収する回収装置31、32とを備える放射性セシウムの除去装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性セシウムを含有する廃棄物から放射性セシウムを除去すると共に、除染後に得られた焼成物を粉砕して得られるセメント混合材、及び、該焼成物からなる土工資材等として有効利用する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性セシウム等の放射性物質を含有する廃棄物から放射性物質を除染する手段及び装置について、従来種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、硝酸塩の形態で存在する核分裂で生じた放射性廃棄物を、外部に周回する通電コイルを備えたスリットを有する冷却容器内で電磁誘導加熱により溶解し、セシウム等の長寿命核種を揮発させ、分離・回収する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−157897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、今般の原子力発電所の事故により我が国で生じた解決すべき課題は、上記特許文献1に記載のような、核関連施設内での通常運転によって生成される廃棄物の除染ではなく、外界へ放出されて樹木や土壌等へ取り込まれた放射性物質を除染処理することである。とりわけ、このような放射性廃棄物は膨大な量に及ぶことが予想されることから、単なる除染手段の提案ではなく、いかに放射性物質を大量にかつ効率よく揮発除去して回収し、そのコストを低減し得る手段を提供することが重要である。
【0005】
放射性物質を含む廃棄物をキルンなどの焼成装置に石灰石と共に投入して加熱すれば、放射性物質を揮発させ、かつ除染生成物を得ることができるが、キルンなどの焼成装置のみで廃棄物を加熱する従来の方法では、石灰石をそのまま混合するために脱炭酸に要するエネルギーが必要となり、多くのエネルギーを浪費すると予想される。そこで、廃熱を有効利用するためにプレヒータなどの予熱器を用いて石灰石の脱炭酸を行うと、焼成装置から揮発した放射性セシウムが固体となり再度焼成装置に戻り、循環濃縮し、確実に除染生成物が除染されない虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記解決課題に鑑みてなされたものであって、放射性セシウムを含む廃棄物からより低エネルギーで、かつ確実に放射性セシウムを除去する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、放射性セシウムの除去方法であって、放射性セシウムで汚染された可燃性廃棄物を燃焼させ、その燃焼排ガスと焼却灰の顕熱を用いて、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源から酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウムを生成し、該酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウムと放射性セシウムで汚染された無機物とを焼成して除染生成物を得ることを特徴とする。
【0008】
そして、本発明によれば、放射性セシウムで汚染された可燃性廃棄物を燃焼させ、廃棄物から放射性セシウムを揮発させ、又は焼却灰中に濃縮させることができると共に、生成した除染生成物を粉砕して得られるセメント混合材、及び該焼成物からなる土工資材等に有効利用することができるため、低コストで効率よく放射性セシウムを除去することが可能となる。
【0009】
上記放射性セシウムの除去方法において、前記除染生成物を冷却する際に生ずる熱を前記放射性セシウムで汚染された可燃性廃棄物の燃焼における熱源の少なくとも一部として利用することができる。
【0010】
上記放射性セシウムの除去方法において、前記焼成において揮発する放射性セシウムを回収する工程をさらに備えることができる。
【0011】
上記放射性セシウムの除去方法において、前記放射性セシウムで汚染された無機物を、前記酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに前記焼却灰と共に焼成する際に、該焼成対象物が含有するセシウム総量に対して当量以上の塩素源を添加することができる。これにより、セシウムを塩化セシウムとして効率よく揮発させることができる。
【0012】
また、本発明は、放射性セシウムの除去装置であって、放射性セシウムで汚染された可燃性廃棄物を燃焼焼却する焼却炉と、該焼却炉から排出される燃焼排ガス及び前記可燃物の焼却灰の顕熱を用いて、前記酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源から酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウムを生成する、サイクロンを多段に配列したサスペンションプレヒータと、放射性セシウムで汚染された無機物を、前記酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに前記焼却灰と共に焼成するロータリーキルンと、該ロータリーキルンにおいて揮発したセシウムを回収する回収装置とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、焼却炉で放射性セシウムで汚染された可燃性廃棄物を燃焼焼却し、サスペンションプレヒータで焼却炉から排出される燃焼排ガス及び前記可燃物の焼却灰の顕熱を用い、前記酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源から酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウムを生成し、ロータリーキルンで放射性セシウムで汚染された無機物を、前記酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに前記焼却灰と共に焼成することで、セメント混合材及び土工資材等に有効利用可能な除染生成物を得ることができると共に、回収装置で揮発したセシウムを回収することで、放射性セシウムを含有する廃棄物から放射性セシウムを除去することができる。また、従来の可燃物を燃焼焼却する焼却炉と無機物を加熱するロータリーキルンから排出される燃焼ガスの2種が別に処理されるため、除染生成物から確実に放射性セシウムが除去され、廃棄物に含まれる可燃物の燃焼熱と除染生成物を冷却した際に発生した熱を有効利用できるために、より低エネルギー、低コストに廃棄物の除染を行うことができる。
【0014】
上記放射性セシウムの除去装置において、前記焼却炉を、流動床式、流動層式、噴流層式又は気流式とすることができる。
【0015】
また、上記放射性セシウムの除去装置において、前記焼却炉から排出される酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに焼却灰を、前記サスペンションプレヒータの最下段のサイクロンの原料出口部に連結されたシュートから前記ロータリーキルンに投入することができる。焼却炉から酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに焼却灰をロータリーキルンへ投入することで、脱炭酸に要するエネルギーが減少し、除染処理に要するエネルギーを低減することができる。また、酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに焼却灰を直接投入すれば、キルンへの持込み顕熱が増加するのでより好ましい。
【0016】
上記放射性セシウムの除去装置において、前記回収装置を、前記ロータリーキルンの排ガスを冷却する冷却塔と、該冷却塔の排ガス中のダストを回収する集塵機とすることができ、放射性セシウムを回収することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、放射性セシウムを含む廃棄物から放射性セシウムを除染すると共に、低エネルギーで除染後の廃棄物をセメント混合材等として利用することで、低コストで効率よく放射性セシウムを除去することが可能となる。また、放射性廃棄物を減容化処分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る放射性セシウムの除去装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態について、図1を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、本発明に係る放射性セシウムの除去装置によって、放射性セシウムを含有する廃棄物から放射性セシウムを除去すると共に、除染後の廃棄物からセメント混合材及び土木資材を製造する場合を例にとって説明する。ここで、放射性セシウムとは、セシウムの放射性同位体であるセシウム134及びセシウム137である。
【0020】
図1は、本発明に係る放射性セシウムの除去装置の一実施の形態を示し、この除去装置1は、大別して、焼成装置2と、除染系排ガス処理装置3と、可燃物焼却系排ガス処理装置4とで構成される。
【0021】
焼成装置2は、ロータリーキルン21と、焼却炉22と、サスペンションプレヒータ(以下、「プレヒータ」という)23と、クリンカクーラ24とで構成される。
【0022】
ロータリーキルン21は、ロータリーキルン21へ直接焼成対象物を供給するための投入口21aと、微粉炭等の化石燃料を噴出してロータリーキルン21内への供給物を焼成するためのバーナ21bを備える。
【0023】
焼却炉22は、放射性セシウムで汚染された伐採木等の可燃物Cを燃焼焼却するために備えられ、微粉炭等の化石燃料を噴出するバーナ(不図示)と、可燃物Cの投入口22aとを備え、炉の底部にクリンカクーラ24からの高温の抽気ガスHが燃焼用空気として導入される。この焼却炉22には、流動床式、流動層式、噴流層式又は気流式の焼却炉を使用することができる。
【0024】
プレヒータ23は、サイクロンが多段にわたって配列され、最上段サイクロン23aの入口ガスダクトに酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源の原料R1が供給され、最下段サイクロン23bの原料出口部に連結されたシュート23cがロータリーキルン21の投入口21aに接続される。
【0025】
除染系排ガス処理装置3は、焼成装置2の後段に配置され、ロータリーキルン21から排出された排ガスG1を冷却する冷却塔31と、冷却塔31の後段に配置された1次集塵機32及び2次集塵機33と、集塵機32、33によって濃縮セシウム塩等のダストが除去された排ガスG4を系外へ排気するファン34から構成される。
【0026】
冷却塔31は、ロータリーキルン21の排ガスG1を冷却し、汚染廃棄物から揮発した放射性セシウム等を固体状として回収するために備えられる。排ガスG1の冷却は、冷却塔31の下端部に設置された散水装置31aから水を噴霧することにより行う。尚、この散水装置31aは、揮発した塩化セシウムを固体状として排ガスG1に含まれるダストに付着させて回収し得る程度の機能を備えていればよく、散水装置31aの設置箇所は、冷却塔31の下端部に限定されない。さらに、水による冷却ではなく、冷却塔内に冷却空気を導入することによって冷却してもよく、水による冷却、空気による冷却を各々単独で用いてもよく、両者を併用してもよい。
【0027】
1次集塵機32は、上述のようにして濃縮されたセシウム塩等を含むダストD1を集塵するために備えられ、バグフィルタ等が用いられる。
【0028】
2次集塵機33は、セシウム塩等を除去した後の排ガスG3に含まれる酸性ガス等を除去するために設けられ、酸性ガス等を吸着したダストD2が回収される。この2次集塵機33にもバグフィルタ等が用いられる。
【0029】
可燃物焼却系排ガス処理装置4は、焼成装置2のプレヒータ23の最上段サイクロン23aから排出される排ガスG6を処理するために備えられ、集塵機41と、その後段にファン42が配置される。集塵機41は、排ガスG6に含まれる燃焼灰を含むダストD3を除去するために備えられ、バグフィルタ等が用いられる。
【0030】
次に、上記構成を有する放射性セシウムの除去装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0031】
焼成装置2のプレヒータ23に石灰石粉(CaO源)等の原料R1を投入すると共に、放射性セシウムで汚染された伐採木等の可燃物Cを、微粉炭等の燃料F2と共に焼却炉22に投入し、燃焼焼却する。この際、後述するように、除染生成物を冷却する際に生ずる熱を利用するため、クリンカクーラ24からの抽気ガスHを燃焼用空気の少なくとも一部として燃焼させてもよい。
【0032】
焼却炉22の排ガスG5は、プレヒータ23の最下段サイクロン23b〜最上段サイクロン23aへと流れ、この際、排ガスG5や排ガスG5に含まれる燃焼灰の顕熱によって、プレヒータ23に投入された原料R1が脱炭酸され、酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO2)に分解する。
【0033】
脱炭酸された原料R2は、焼却炉22から最下段サイクロン23b、シュート23cを経て投入口21aからロータリーキルン21へ供給される。
【0034】
一方、プレヒータ23の最上段サイクロン23aからの排ガスG6は、集塵機41へ導入され、排ガスG6に含まれる可燃物Cの焼却灰等からなるダストD3が回収された後、清浄化された排ガスG7がファン42によって系外へ排出される。回収されたダストD3は、原料R2と共に、ロータリーキルン21の投入口21aへ供給される。
【0035】
可燃物Cに含まれていた放射性セシウムは、焼却炉22内で揮発するか、揮発せずに焼却灰と共に焼却炉22から排出されるが、いずれにしてもプレヒータ23における排ガスG5の温度の低下に伴ってダストD3又は原料R2に取り込まれた状態でロータリーキルン21の投入口21aに供給される。
【0036】
ロータリーキルン21には、上記原料R2及びダストD3と共に、放射性セシウムで汚染された土壌等の無機物Sを投入口21aから投入し、上記原料R2及びダストD3と無機物Sとを焼成する。また、無機物Sに加え、反応促進剤Bとしてロータリーキルン21内のセシウム総量に対して当量以上の塩素源を投入口21aからロータリーキルン21内へ投入する。塩素源としては、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩素を有する廃プラスチック等があるが、このうちCaCl2は、それ自体は揮発せずに塩素のみを供給することになるので好ましい。
【0037】
無機物S、原料R2及びダストD3に含まれていた放射性セシウムは、ロータリーキルン21内で塩素源から生じた塩素と反応して塩化セシウムとなって揮発し、排ガスG1に含まれた状態で冷却塔31へ導入される。
【0038】
冷却塔31において、排ガスG1は、散水装置31aから噴霧された水(若しくは冷却塔内に導入された冷却空気、又はこれらの混合物)によって急激に冷却され、排ガスG1に含まれていた塩化セシウムが固体状のセシウム塩となってダストに付着する。
【0039】
セシウム塩を含有する冷却塔31からの排ガスG2は、1次集塵機32に導入され、固体状の濃縮セシウム塩を含むダストD1が回収される。回収したダストD1から、必要に応じて水洗、吸着等により、さらに減容化処置をした後、コンクリート製の容器等に密閉して保管することができ、放射性セシウムを含む廃棄物を外部に漏洩させることなく、減容化し、保管することができる。
【0040】
一方、濃縮セシウム塩を回収した後の排ガスG3には、酸性ガス等の有害ガスが含まれている場合は、2次集塵機33によって、セシウム塩等を除去した後の排ガスG3に含まれる酸性ガス等を吸着したダストD2を回収し、清浄化した排ガスG4をファン34を介して系外に排気してもよい。
【0041】
一方、ロータリーキルン21へ投入された無機物S、原料R2及びダストD3は、ロータリーキルン21内でバーナ21bから吹き込まれた微粉炭の燃焼熱により、放射性セシウムが揮発除去された後に焼成され、クリンカクーラ24によって冷却され、セメント混合材及び土工資材等として利用可能なクリンカ(除染生成物)Pが生成される。クリンカクーラの抽気ガスHは、冷却の際に生ずる熱を有しており、この抽気ガスHを焼成装置2に導いて、焼成装置2における焼成の熱源の一部としてもよい。
【0042】
以上のように、本実施の形態によれば、放射性セシウムを含む廃棄物(可燃物C、無機物S)から放射性セシウムを除染すると共に、除染後の廃棄物を燃料及び原料として利用し、除染生成物としてセメント混合材等を製造することができ、低コストで放射性セシウムを除去することが可能となる。
【0043】
尚、上記実施の形態においては、原料R2、ダストD3、無機物S及び反応促進剤Bを投入口21aからロータリーキルン21内へ供給したが、この際各々を直接ロータリーキルン21へ投入してもよく、予め混合して供給してもよい。廃棄物の水分が多いなど取り扱いが困難な場合には、事前に原料R2を混合することで、性状を改善することができる。
【0044】
また、上記実施の形態においては、放射性セシウムで汚染された廃棄物として、放射性セシウムで汚染された伐採木、土壌を例示したが、これらの他に、都市ごみ焼却灰、ごみ由来の溶融スラグ、下水汚泥、下水汚泥乾粉、浄水汚泥、建設汚泥、下水スラグ、貝殻、草木、がれき等の廃棄物であって放射性セシウムを含むものをすべてを対象とすることができ、これらの群に含まれる1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、放射性セシウムをほとんど含まない部分(土壌の場合には、砂や石)を予め取り除いて得られる、放射性セシウムが濃縮された中間処理物も、本発明における放射性セシウムで汚染された廃棄物に含まれる。
【0045】
さらに、上記実施の形態において、CaO源として石灰石粉等のセメント混合材用原料を例示したが、炭酸カルシウム、生石灰、消石灰、石灰石、ドロマイト、高炉スラグ等を含む物をCaO源としてもよく、セメント混合材の他に、骨材や、CaOのみを生成してもよい。
【0046】
また、CaO源に代えて、又はCaO源と共にMgO源を用い、MgO、又はMgO及びCaOを生成してもよく、この際、MgO源として、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、蛇紋岩、フェロニッケル合金スラグ等を含む物を用いることができ、これらの群に含まれる1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
放射性セシウムを含む廃棄物(可燃性廃棄物の焼却灰又は/及び土壌等の無機物)をCaO又は/及びMgOと共に焼成することで、被焼成物の塩基度を高め、焼成過程における液相の発生を抑えることができる。このため、放射性セシウムを効率よく揮発させることができる。
【0048】
さらに、上記実施の形態においては、ロータリーキルンと、流動床式、流動層式、噴流層式又は気流式の焼却炉と、プレヒータと、クリンカクーラとで構成される焼成装置を備えた放射性セシウムの除去装置について説明したが、本発明は、このような焼成装置を備えた放射性セシウムの除去装置に限定されず、焼成装置としてバッチ式の焼成炉を備えたものであってもよく、放射性セシウムで汚染された廃棄物をCaO源又は/及びMgO源と共に加熱し、汚染廃棄物から放射性セシウムを揮発させると共に、CaO又は/及びMgOを生成することができれば、他の装置構成を採用することもできる。
【0049】
また、除染系排ガス処理装置3の1次集塵機32で固体状の濃縮セシウム塩を含むダストD1を回収したが、スクラバー等を用いて固体状の濃縮セシウム塩を回収してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 放射性セシウム除去装置
2 焼成装置
21 ロータリーキルン
21a 投入口
21b バーナ
22 焼却炉
22a 投入口
23 サスペンションプレヒータ
23a 最上段サイクロン
23b 最下段サイクロン
23c シュート
24 クリンカクーラ
3 除染系排ガス処理装置
31 冷却塔
31a 散水装置
32 1次集塵機
33 2次集塵機
34 ファン
4 可燃物焼却系排ガス処理装置
41 集塵機
42 ファン
B 反応促進剤(塩素源)
C (放射性セシウムで汚染された)可燃物
D1〜D3 ダスト
F1、F2 燃料
G1〜G7 排ガス
H (クーラ)抽気ガス
R1、R2 (セメント混合材の)原料
P クリンカ(除染生成物)
S (放射性セシウムで汚染された)無機物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性セシウムで汚染された可燃性廃棄物を燃焼させ、
その燃焼排ガスと焼却灰の顕熱を用いて、酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源から酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウムを生成し、該酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウムと放射性セシウムで汚染された無機物とを焼成して除染生成物を得ることを特徴とする放射性セシウムの除去方法。
【請求項2】
前記除染生成物を冷却する際に生ずる熱を前記放射性セシウムで汚染された可燃性廃棄物の燃焼における熱源の少なくとも一部として利用することを特徴とする請求項1に記載の放射性セシウムの除去方法。
【請求項3】
前記焼成において揮発する放射性セシウムを回収することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性セシウムの除去方法。
【請求項4】
前記放射性セシウムで汚染された無機物を、前記酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに前記焼却灰と共に焼成する際に、該焼成対象物が含有するセシウム総量に対して当量以上の塩素源を添加することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の放射性セシウムの除去方法。
【請求項5】
放射性セシウムで汚染された可燃性廃棄物を燃焼焼却する焼却炉と、
該焼却炉から排出される燃焼排ガス及び前記可燃物の焼却灰の顕熱を用いて、前記酸化カルシウム源又は/及び酸化マグネシウム源から酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウムを生成する、サイクロンを多段に配列したサスペンションプレヒータと、
放射性セシウムで汚染された無機物を、前記酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに前記焼却灰と共に焼成するロータリーキルンと、
該ロータリーキルンにおいて揮発したセシウムを回収する回収装置とを備えることを特徴とする放射性セシウムの除去装置。
【請求項6】
前記焼却炉は、流動床式、流動層式、噴流層式又は気流式であることを特徴とする請求項5に記載の放射性セシウムの除去装置。
【請求項7】
前記焼却炉から排出される酸化カルシウム又は/及び酸化マグネシウム並びに焼却灰を、前記サスペンションプレヒータの最下段のサイクロンの原料出口部に連結されたシュートから前記ロータリーキルンに投入することを特徴とする請求項5又は6に記載の放射性セシウムの除去装置。
【請求項8】
前記回収装置は、前記ロータリーキルンの排ガスを冷却する冷却塔と、該冷却塔の排ガス中のダストを回収する集塵機であることを特徴とする請求項5、6又は7に記載の放射性セシウムの除去装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−108782(P2013−108782A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252432(P2011−252432)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)