説明

放射性医薬品製品

本発明は、容器閉鎖手段がETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)でコーティングされた封止容器入りの優れた放射性医薬品組成物に関するものである。封止容器を用いた放射性医薬品製剤用キットと、封止容器を用いた放射性医薬品の製造方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器閉鎖手段がETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)でコーティングされた封止容器入りの優れた放射性医薬品組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品等級の閉鎖手段が嵌合された封止容器に放射性医薬品組成物を入れ、患者に投与する1回又は複数回分の用量を容器から取り出せるようにして提供することは公知である。
【0003】
様々な材料、形状、寸法の多岐にわたる医薬品等級の閉鎖手段が市販されており、これらには、必要に応じて各種材料のコーティングが施されている[Hencken&Petersen,Pharm.Ind.,65(9a),966−976(2003)]。したがって、所定のタイプの製品に対して最適な特性を備えているような特定のタイプの閉鎖手段を選択することは容易ではない。
【0004】
米国特許第6162648号には、放射性医薬品に使用するにあたって放射性同位元素111Inを精製する方法が開示されている。米国特許第6162648号には、111Inに関して、閉鎖手段で封止されたバイアルを使用する場合、溶液と接する部分の表面をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)でコーティングしたゴム栓を使用するのが有利であることが教示されている(カラム2)。コーティングは、不純物が栓のゴムから放射性溶液に浸出するのを防止するとされている。米国特許第6162648号で好適な栓とされているのは、ビニルブチルゴム製で、Teflon(登録商標)ブランドのPTFEのコーティングを有するものである。
【0005】
国際公開第2006/026603号には、放射性同位元素生成物質、特に陽電子放出放射性同位元素82Rbについての放射性医薬品生成物質に用いる優れた容器が開示されている。放射線に対して耐性又は許容性があって、圧力を加えても変形しない材料でできた優れたクリンプオン型封止栓が記載されている。また、一連のコーティング付き及びコーティングなしの栓材料について、適不適、特に、放射性同位元素生成物質が実際に使用される間に相当するような放射線量に耐えうるかどうかが検討されている。好適な栓材料として3種のコーティングなしのエラストマー栓材料、すなわち4588/40イソプレン/クロロブチル、6720ブロモブチル及び140/0クロロブチルが挙げられており、栓材料として特に好適なのは、4588/40イソプレン/クロロブチルであるとされている。
【0006】
大協精工のFlurotec(登録商標)コーティング栓(タイプD21)についての技術情報シート(Flurotec(登録商標)は、大協精工のETFEの銘柄)には、フッ素樹脂積層被膜閉鎖手段の各種の利点が挙げられている。
(i)薬剤と閉鎖手段の間の反応を防止する効果があり、その結果、薬剤製品の劣化が防止され、安定性が高まり、有効性が保たれ、保存期間が伸びる。極めて低いpHや高いpHで包装される薬剤に利用できる。
(ii)ゴム栓由来の粒子が生じない。
(iii)薬剤が閉鎖手段に吸着しにくいので、充填する薬剤の量や容積が少ない場合にも適当である。
(iv)積層コーティングによって潤滑性が得られるため、バッチ生産の間に閉鎖手段が付着したり、互いくっついたりする問題が解消され、閉鎖手段をシリコーンで処理しなくてもすむ。
【0007】
大協精工のカタログには、この閉鎖手段が、凍結乾燥製剤、粉末製剤、内服液剤、輸液製剤に有用なことが示唆されている。カタログに記載によれば、閉鎖手段は、直射日光にあたったり、紫外線にあたったりしてはならず、また、非滅菌状態(すなわち、医薬品用途に用いる場合には、使用前に滅菌する必要がある)で供給されるという。技術情報シートにもカタログにも、放射性医薬品用途に用いること及び/又は閉鎖手段が放射線抵抗性(放射線の照射に耐えうる)か否かについての示唆はない。
【特許文献1】米国特許第6162648号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/026603号パンフレット
【非特許文献1】Hencken & Petersen, Pharm.Ind., 65(9a), 966-976 (2003)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、封止容器に入った優れた放射性医薬品製品の容器入り組成を提供するものであり、容器の閉鎖手段は、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)のコーティングを有している。多岐にわたる市販の医薬品等級の閉鎖手段からこうした閉鎖手段を選ぶことは、放射性医薬品を調製するうえで特段に有利なことを見いだした。
【0009】
放射性医薬品は、化学物質としては、通常、(マイクロモル、ナノモル又はそれ以下という)極めて低い濃度で存在している。したがって、化学物質としての含有量は、薬剤処方物として最も低含有量のものよりもはるかに低い。その結果、不純物(例えば金属イオン又は有機物)がごく低レベル閉鎖手段を通過するだけでも、放射化学的純度に有意な影響が及びかねない。この過程は、例えば、通過した非放射性金属イオンが、放射性金属錯体の放射性金属を置換して、遊離放射性金属不純物のレベルが増加することによって生じる可能性がある。こうした遊離放射性金属は、酸化還元反応又は他の利用可能な配位子と錯体を形成することによって、さらなる放射性不純物を生じうる。同様に、酸素が上部空間の気体にごく低レベルで混入した場合も、放射性医薬品の化学物質としての濃度が極端に低いため、混入割合よりはるかに大きな影響が生じる可能性がある。ETFEでコーティングした閉鎖手段を備えた本発明の封止容器は、放射性医薬品に用いるうえで特に適当であることが示された。本発明は、本発明の容器が、放射性医薬品調製用のキット、特に凍結乾燥前駆体を含むキットに使用するうえでも有利であることを示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第一の態様では、封止容器に入った放射性医薬品組成物を含む造影剤製品を提供する。この造影剤製品では、
(i)放射性医薬品組成物が、哺乳動物への投与に適した形態で生体適合性担体に担持された医用造影に適した放射性同位元素を含み、
(ii)封止容器が、封止状態を損なうことなく皮下針で穿刺可能な閉鎖手段を備え、この閉鎖手段の容器の内容物と接する表面が、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)又はその変性体を含むコーティングで覆われている。
【0011】
「放射性医薬品」という用語は、通常の意味、すなわち、哺乳動物、特にヒトの体内に投与するのに適した形態の放射性医薬品又は化合物という意味を有するものである。放射性医薬品は、診断用の造影や放射線治療に使用される。本発明の放射性医薬品は、診断用の造影に使用されることが好ましい。
【0012】
本発明の封止容器は、完全な滅菌状態を保持しつつ、放射性医薬品を保存したり輸送したりするのに適した医薬品等級の容器である。こうした容器は、患者1人分又は複数人数分の放射性医薬品組成物が入ることができる。好適な複数回用容器は、患者数人分の用量が単一区画に入るバイアル(例えば容量10〜30cm3)であって、臨床の状態に応じて、臨床等級のシリンジに、患者1人分の用量を、製剤の有効保存期間中に適当な間隔をおいて吸引できるような容器である。こうした容器の好適例としては、医薬品等級のバイアルを挙げることができる。バイアルは、医薬品等級の材料、具体的にはガラス又はプラスチック、好ましくはガラス製とするのが好ましい。当業界で公知のように、容器のガラスは、必要に応じてコーティングして、ガラスからの様々な物質の浸出を抑制することもできる。こうしたコーティングとして好適な例としては、シリカ(SiO2)を挙げることができる。高純度のシリカでコーティングされた医薬品等級のガラス製バイアルが、Schott Glaswerke AGなどの業者から市販されている。
【0013】
本発明の放射性医薬品組成物は、哺乳動物、特にヒトへの投与に適した滅菌状態とする。したがって、放射性医薬品組成物は、無菌製造条件で製造して、所望の滅菌製品を得ることもできるし、また、放射性医薬品組成物は、非滅菌条件で製造した後、γ線の照射、蒸気滅菌、乾熱滅菌又は(例えばエチレンオキサイドを用いた)化学処理などを用いて最終工程で滅菌することもできる。従来の医薬品製造の現場では、蒸気滅菌が使用されてきたが、本発明の閉鎖手段は、γ線の照射によって滅菌を行うのが好ましい。これは、蒸気滅菌を行うと痕跡量の水分が閉鎖手段に残り、放射性医薬品によっては、水分感受性のものもあるからである。Myoview(登録商標)(99mTc−テトロホスミン)は、閉鎖手段の水分含量を極力減らすことが好ましい重要な例である。
【0014】
封止容器で放射性医薬品組成物の上方に存在する上部空間の気体は、化学的に不活性な気体とするのが適当である。「化学的に不活性な気体」という用語は、当業界で公知のように、化学分野において「不活性雰囲気」を得るために使用されるような気体のことを意味するものである。こうした気体は、(例えば、酸素や水素のそれぞれの場合のように)容易に酸化又は還元反応を生じることはなく、(例えば塩素の場合のように)他の有機化合物との化学反応を生じることもないため、広範な合成化合物とともに使用することができ、その場合、合成化合物は、長期にわたって何時間も、場合によっては何週間もその気体と接したまま保存した場合でも反応を生じることがない。こうした気体として適当なものとしては、窒素或いは不活性ガス、例えばヘリウム又はアルゴンを挙げることができる。化学的に非反応性の気体としては、窒素又はアルゴンが好ましい。医薬品等級の化学的に非反応性気体が市販されている。
【0015】
本発明の放射性医薬品の「医用造影に適した放射性同位元素」は、各種の化学的形態で存在することができる。一つの可能性は、放射性同位元素がイオン形態で生体適合性担体に溶解しているものである。この例としては、塩化タリウム201Tl、67Gaのクエン酸塩又はナトリウムの123Iヨウ化物を挙げることができる。放射性金属である放射性同位元素は、後述するように、配位子との金属錯体として共有結合状態で存在することもできる。放射性医薬品は、放射性同位元素で標識されたターゲティング用生体分子を含むこともできる。「放射性同位元素で標識されている」という用語は、官能基が放射性同位元素を含むか、或いは、放射性同位元素が付加種として官能基に結合されていることを意味する。官能基が放射性同位元素を含む場合、このことは、放射性同位元素が化学構造の一部を形成しており、放射性同位元素が、この放射性同位元素の天然状態での存在量より有意に高レベルで存在していることを意味するものである。こうした高レベル或いは濃縮レベルの放射性同位元素は、当該放射性同位元素の天然状態での存在量の5倍以上、好ましくは10倍以上、特に好ましくは20倍以上、理想的には、当該放射性同位元素の天然状態での存在量の50倍以上又は当該放射性同位元素の90〜100%の濃縮レベルで存在している。こうした官能基の例としては、高レベルの11Cが存在するCH3基、高レベルの18Fが存在するフルオロアルキル基を挙げることができ、造影用放射性同位元素は、化学構造内の放射性同位元素として標識された11C又は18F原子ということになる。3Hと14Cは、放射性医薬品による造影に用いる放射性同位元素としては好ましくない。
【0016】
「ターゲティング用生体分子」という用語は、3〜100量体のペプチド又はペプチド同族体のことを意味するもので、例えば、線状ペプチド、環状ペプチド又はその組み合わせ、モノクローナル抗体又はその断片、酵素の基質又は阻害物質、合成受容体結合性化合物、オリゴヌクレオチド又はオリゴDNA又はオリゴRNA断片などを挙げることができる。ターゲティング用生体分子は、合成物でも天然物由来のものでもかまわないが、合成物であるのが好ましい。好適なターゲティング用生体分子は、3〜20量体のペプチドで、このペプチドは、合成物でも天然物由来のものでもかまわないが、合成物であるのが好ましい。「環状ペプチド」という用語は、一連の5〜15個のアミノ酸であって、2個の末端アミノ酸が、ペプチド結合又はジスルフィド結合或いは合成の非ペプチド結合、例えばチオエーテル、ホスホジエステル、ジシロキサン又はウレタン結合などの共有結合によって互いに結合しているようなもののことを意味する。
【0017】
「アミノ酸」という用語は、天然またな純粋に合成のL−又はD−アミノ酸、アミノ酸同族体又はアミノ酸類似体を意味するものであり、光学的に純粋、すなわち単一の鏡像異性体でキラルであっても、鏡像異性体の混合物であってもよい。本発明のアミノ酸は、光学的に純粋であるのが好ましい。「アミノ酸類似体」という用語は、天然のアミノ酸の合成同族体、すなわち天然化合物の立体及び電子構造を模倣するよう設計されたアイソスターのことを意味するものである。こうしたアイソスターは、当業者にとっては周知のものであり、デプシペプチド、レトロインベルソペプチド、チオアミド、シクロアルカン又は1,5−二置換テトラゾールを挙げることができるが、これらに限定されるものではない[M.Goodman、Biopolymers,24,137(1985)を参照のこと]。
【0018】
本発明で使用するうえで適当なペプチドとしては、以下のものを挙げることができる。すなわち、
・ソマトスタチン、オクトレオチド及びその同族体、
・ST受容体に結合するペプチド(STは、大腸菌や他の微生物によって産生された熱安定性トキシンのことを称するものである)、
・ラミニン断片、例えばYIGSR、PDSGR、IKVAV、LRE及びKCQAGTFALRGDPQG,
・白血球のの集積部位をターゲティングするためのN−ホルミルペプチド、
・血小板因子4(PF4)及びその断片、
・血管新生などのターゲティング用のRGD含有ペプチド[R.Pasqualini et al.,Nat.Biotechnol.,15(6):542−6(1997)]、[E.Ruoslahti,KidneyInt.,51(5):1413−7(1997)]。
・α2−アンチプラスミン、フィブロネクチン又はβ−カゼイン、フィブリノゲン又はトロンボスポンジンのペプチド断片。α2−アンチプラスミン、フィブロネクチン、β−カゼイン、フィブリノゲン及びトロンボスポンジンのアミノ酸配列については、以下の参考文献、すなわちα2−アンチプラスミン前駆体についてはM.Tone et al.,J.Biochem、102,1033,(1987)、β−カゼインについてはL.Hansson et al.,Gene,139,193,(1994)、フィブロネクチンについてはA.Gutman et al.,FEBS Lett.,207,145,(1996)、トロンボスポンジン−1前駆体についてはV.Dixit et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,83,5449,(1986)及びR.F.Doolittle,Ann.Rev.Biochem.,53,195,(1984)を参照されたい。
・アンジオテンシンの基質又は阻害物質であるペプチド、例えば
アンジオテンシンIIAsp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe(E.C.Jorgensen et al.,J.Med.Chem.,1979,Vol.22,9,1038−1044)、[Sar、Ile]アンジオテンシンII:Sar−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Ile(R.K.Turker et al.,Science,1972,177,1203)、
・アンジオテンシンI:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−His−Leu。
【0019】
本発明のペプチドは、RGD又はアンジオテンシンIIペプチドを含むのが好ましい。本発明の合成ペプチドは、P.Lloyd−Williams,F.Albericio and E.Girald,Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins,CRC Press,1997に記載されたような通常の固相合成によって得ることができる。
【0020】
本発明で使用するのに適したモノクローナル抗体又はその断片としては、B細胞の表面に発現されたCD−20抗原に対する抗体、抗白血球又は抗顆粒細胞抗体、抗ミオシン抗体又は癌胎児性抗原(CEA)に対する抗体を挙げることができる。
【0021】
適当な酵素の基質、アンタゴニスト又は阻害物質としては、ブドウ糖及びブドウ糖の同族体、例えば、フルオロデオキシグルコース、脂肪酸又はエラスターゼ、アンジオテンシンII又はメタロプロテイナーゼ阻害物質を挙げることができる。好適な非ペプチドアンジオテンシンIIアンタゴニストは、ロサルタンである。
【0022】
適当な受容体結合性化合物としては、エストラジオール、エストロゲン、プロゲスチン、プロゲステロン及び他のステロイドホルモン、ドーパミンD−1又はD−2受容体のリガンド、或いはドーパミントランスポータ、例えばトロパン及びセロトニン受容体のリガンドを挙げることができる。
【0023】
ターゲティング用生体分子の分子量は、5000未満であるのが好ましく、4000未満であるのが特に好ましく、3000未満であるのが理想的である。
【0024】
「医用造影に適した放射性同位元素」は、哺乳動物の体外から検出することも、インビボで使用するよう設計した検出装置、例えば血管内照射や、手術中に使用するよう設計した放射線検出装置を用いることによって検出することもできる。放射性同位元素として好適なのは、投与後に非侵襲的にインビボで体外から検出できる放射性同位元素である。放射性同位元素として特に好適なのは、放射性金属イオン、γ線放出放射性ハロゲン及び陽電子放出放射性非金属であり、特にSPECT又はPETを用いた造影に適した放射性同位元素である。
【0025】
放射性同位元素が放射性を有する金属イオン、すなわち放射性金属である場合、適当な放射性金属は、陽電子放出物質、例えば64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Gaであっても、γ線放出物質、例えば99mTc、111In、113mIn又は67Gaであってもよい。好適な放射性金属は、99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。特に好適な放射性金属は、γ線放出物質、特に99mTcである。
【0026】
放射性同位元素がγ線放出放射性ハロゲンである場合、放射性ハロゲンは、123I、131I又は77Brから選ぶのが適当である。好適なγ線放出放射性ハロゲンは、123Iである。
【0027】
放射性同位元素が陽電子放出放射性非金属である場合、適当な陽電子放出物質としては、11C、13N、15O、17F、18F、75Br、76Br又は124Iを挙げることができる。陽電子放出放射性非金属としては、11C、13N、18F及び124Iが好ましく、11C及び18Fがより好ましく、18Fが特に好ましい。
【0028】
放射性同位元素が放射性金属イオンである場合、放射性医薬品は、放射性金属イオンの合成配位子との金属錯体を含むのが好ましい。「金属錯体」という用語は、金属イオンの1以上の配位子との配位錯体を意味するものである。「合成配位子」という用語は、本明細書で使用する場合には、N、O、S、P又はSeのような金属との配意に適した1以上のヘテロ原子を含む炭素含有化合物のことを意味するものである。こうした化合物には、製造及び各種不純物の含有割合を十分に制御できるという利点がある。
【0029】
金属錯体は、「トランスキレーションに対して抵抗性」、すなわち、金属の配意部位をめぐって競合する可能性のある他の配位子との間で、配位子交換を容易に生じないことが極力好ましい。競合する可能性のある配位子としては、インビトロでの製造時に使用した賦形剤(例えば、製造時に使用した放射線防護剤又は抗菌保存剤)又はインビボの内在性の化合物(例えば、グルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)を挙げることがでできる。「合成」という用語は、通常の意味、すなわち天然のソース、例えば哺乳動物のからだから単離したのではなく、人工であるという意味を有するものである。
【0030】
本発明で、トランスキレーションに対して抵抗性の金属錯体を形成する際に使用するのに適した合成配位子としては、(炭素原子又は金属供与原子と結合する非配位ヘテロ原子からなる非配位主鎖を有することによって)配位時に、2〜6、好ましくは2〜4個の金属供与原子が五員又は六員のキレート環となるよう構成されているキレーター、或いは金属イオン、例えばイソニトリル、ホスフィン又はジアゼニドと強固に結合する供与原子を含む一座の配位子を挙げることができる。本発明の合成配位子は、1以上のホスフィン、チオール又はイソニトリル金属結合基を含むことが好ましい。
【0031】
キレーターの一部として金属と良好に結合するタイプの供与原子としては、アミン、チオール、アミド、オキシム、ホスフィンを挙げることができる。ホスフィンは強固な金属錯体を形成するので、単座又は二座のホスフィンでも適当な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドは、線形形状を有するため、キレーターに取り込まれにくく、これらの化合物は、通常、単座配位子として使用される。適当なイソニトリルの例としては、単純なアルキルイソニトリル、例えばtert−ブチルイソニトリル及びエーテル置換イソニトリル、例えばmibi(すなわち1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)を挙げることができる。好適なホスフィンの例としては、テトロホスミン及び単座ホスフィン、例えばトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンを挙げることができる。特に好適なホスフィンは、テトロホスミンである。
【0032】
【化1】

テトロホスミンは、Chenら[Zhong.Heyix.Zazhi,17(1)13−15(1997)]又はReidら[Synth.Appl.Isotop.Lab.Comp.,Vol.7,252−255(2000)]に記載されたようにして製造することができる。通常の合成では、まず、1,2−ビス(ホスフィノ)エタン又はH2PCH2CH2PH2を調製し[Inorganic Synthesis,vol.14,10]、その後、フリーラジカル開始剤を使用したフリーラジカル付加によって過剰なエチルビニルエーテルを付加する。
【0033】
適当なジアゼニドの例としては、一連のHYNIC配位子、すなわちヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミドを挙げることができる。
【0034】
トランスキレーションに対して抵抗性の金属錯体を形成するテクネチウム用の適当なキレーターの例としては、以下のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(i)式のジアミンジオキシム。
【0035】
【化2】

式中、E1〜E6は、各々独立にR′基であり、
各R′は、H又はC1-10アルキル、C3-10アルキルアリール、C2-10アルコキシアルキル、C1-10ヒドロキシアルキル、C1-10フルオロアルキル、C2-10カルボキシアルキル又はC1-10アミノアルキル、或いは2以上のR′基が結合相手の原子とともに炭素環式、複素環式、飽和又は不飽和環を形成しており、R′基の1以上が、ターゲティング用生体分子に包合されており、
Qは、式:−(J)f−の架橋基であり、ここでfは3、4又は5であって、各Jは、各々独立に、−O−、−NR′−又は−C(R′)2−であり、ただし、−(J)f−は、最大で1個の−O−又は−NR′−であるJ基を含んでいる。
【0036】
好適なQ基は、以下のもの、すなわち
Q=−(CH2)(CHR′)(CH2)−、すなわちプロピレンアミンオキシム又はPnAO誘導体、
Q=−(CH22(CHR′)(CH22−、すなわちペンチレンアミンオキシム又はPentAO誘導体、
Q=−(CH22NR′(CH22−である。
【0037】
1〜E6は、C1-3アルキル、アルキルアリール、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、フルオロアルキル、カルボキシアルキル又はアミノアルキルから選ぶのが好ましく、各E1〜E6基は、CH3であるのが最も好ましい。
【0038】
ターゲティング用分子は、E1又はE6のR′基又はQ部分のR′基で包合させるのが好ましい。特に好ましくは、ターゲティング用分子はQ部分のR′基で包合させる。ターゲティング用分子がQ部分のR′基で包合される場合、R′基は、橋頭に位置しているのが好ましい。この場合、Qは、−(CH2)(CHR′)(CH2)−、−(CH22(CHR′)(CH22−又は−(CH22NR′(CH22−であるのが好ましく、−(CH22(CHR′)(CH22−であるのが特に好適であるある。特に好適な二官能性ジアミンジオキシムキレーターは、次式のものであり、ターゲティング用分子が、橋頭の−CH2CH2NH2基を介して包合されるようになっている。
【0039】
【化3】

(ii)チオールトリアミド供与体セットを持つN3S配位子、例えばMAG3(メルカプトアセチルトリグリシン)及び関連配位子又はジアミドピリジンチオール供与体セットを持つN3S配位子、例えばPica。
(iii)ジアミンジチオール供与体セットを持つN22配位子、例えばBAT又はECD(すなわちエチルシステイネート二量体)又はアミドアミンチジオール供与体セットを持つN22配位子、例えばMAMA。
(iv)テトラミン、アミドトリアミン又はジアミドジアミン供与体セットを持つ開放鎖又は大環状配位子であるN4配位子、例えばシクラム、モノオキソシクラム又はジオキソシクラム。
(v)ジアミンジフェノール供与体セットを有するN22配位子。
【0040】
上述の配位子は、テクネチウム、例えば94mTc又は99mTcの錯体を形成するうえで特に適当であり、Jurissonら[Chem.Rev.,99,2205−2218(1999)]にさらに詳述されている。この配位子は、他の放射性金属、例えば銅(64Cu又は67Cu)、バナジウム(例えば48V)、鉄(例えば52Fe)又はコバルト(例えば55Co)に対しても有用である。他の適当な配位子は、Sandozの国際公開第91/01144号に記載されており、インジウム、イットリウム及びガドリニウムに特に適当な配位子、具体的には、大環状アミノカルボキシレート及びアミノホスホン酸配位子が記載されている。放射金属イオンがテクネチウムの場合、配位子は、四座のキレーターが好ましい。テクネチウムのキレーターとして好適なのは、ジアミンジオキシム又は上述したようなN22又はN3S供与体セットである。
【0041】
「生体適合性担体」は、放射性医薬品を懸濁したり溶解したりして組成物を生理学的に許容されうる状態、すなわち哺乳動物の体内に毒性や過度の不快感なく投与できるようにすることのできる流体、特に液体である。生体適合性担体は、注射可能な液状担体、例えば発熱物質を含まない滅菌注射用水、水溶液、例えば生理食塩水(注射剤に用いる最終生成物が等張液となるよう調整してあるものが有利である)、1種以上の張性調整用物質(例えば、血漿の陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、ブドウ糖又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)、或いは他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液とするのが適当である。生体適合性担体は、発熱物質を含まない注射用水又は等張液とするのが好ましい。
【0042】
本発明の閉鎖手段は、容器を封止するものであり、その際の封止状態が、放射性医薬品組成物の純度と滅菌状態が完全に保たれるような閉鎖手段である。封止状態が完全であるということは、容器中の放射性医薬品組成物の上部空間の気体が保持されるということや、容器の内容物を凍結乾燥するために行う凍結乾燥作業の間などに容器内を真空としたときも、封止手段が圧力差に耐えられることも意味するものである。封止が完全であるということは、製造、輸送、臨床での使用の間に生成物の滅菌状態がきちんと保たれることも意味する。
【0043】
本発明の閉鎖手段は、(例えば、クリンプオン型のセプタムシールの閉鎖手段として、)封止状態を完全に保ちながら、皮下針で単回穿刺を行うのに適している。つまり、閉鎖手段は、穿刺孔が形成された後に、元の形状を回復するのに十分な弾性を備えている必要がある。単回穿刺に用いる場合には、容器は、ヒトの1回分の用量、つまり「単位用量」の放射性医薬品が入るように設計すればよい。閉鎖手段は、皮下針で複数回の穿刺できるようにするのが好ましく、この場合、容器には、複数回分の放射性医薬品が入るようにする。容器から採取した単位用量の薬剤は個々の患者に用いるため、そのまま投与できるよう、臨床等級のシリンジに採取するのが好ましい。臨床用のシリンジは、患者間でのコンタミネーションの危険性を低減できるよう、ディスポーザブルとするのが好ましい。充填したシリンジは、必要に応じてシリンジ遮蔽材で覆って、放射線被曝から作業者を防御することもできる。こうした放射性医薬品用シリンジの遮蔽材として適当なものは当業界で公知であり、鉛又はタングステンを含むのが好ましい。
【0044】
本発明の閉鎖手段、すなわち閉鎖手段の本体は、本体上に形成されたコーティングとは異なり、合成弾性ポリマーから製造することが好ましい。閉鎖手段の本体は、塩素化又は臭素化ブチルゴム又はネオプレン製とするのが、この種のポリマーは酸素透過性が低いので好ましい。閉鎖手段の本体は、塩素化ブチルゴム製とするのが特に好適である。放射線抵抗性は、弾性ポリマーの組成によって決まる。放射線抵抗性は、放射性医薬品組成物とともに使用するという意味でも重要であるが、γ線を照射して閉鎖手段を滅菌する可能性があることからも重要である。本発明の発明者は、ブチルポリマーは、50kGy程度の放射線量に耐えられると考えている。PTFEは、5kGyまでの放射線量にしか耐えられないので、PTFEの被膜は、γ線の照射に適しているとはいえない。本発明のETFE被膜は、25〜36kGyの放射線量に耐えられるので、本発明に特に適している。これは、γ線の照射が好適な滅菌方法であるためである。
【0045】
本発明の閉鎖手段は、容器の内容物と接する表面が、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)又はその変性物を含むコーティングで覆われている。この「変性物」は、大協精工がFlurotec(登録商標)として市販しているものである。コーティングは、閉鎖手段上に積層された被膜とするのが好ましい。栓の表面に積層するETFE被膜の厚さは、0.01〜0.2mmの範囲とするのが好ましい。被膜の厚さが0.01mm未満の場合、被膜は成形や処理の間に破断しやすく、一方、厚さが0.2mmを超えると、積層物が剛固となりすぎて、自己封止特性や針による穿刺特性を適正な範囲に保つのが困難になる。
【0046】
ETFEのコーティングとして好適なのは、変性ETFEであるFlurotec(登録商標)のコーティングである。コーティングは、容器との間で封止領域を形成している部分を除く閉鎖手段の全面を覆うのが好ましい。「封止領域」は、閉鎖手段のうち、容器の壁部(例えばバイアルのガラス)と接する部分のことであり、気密な封止が得られるかどうかは、この領域にかかっている。バイアルの閉鎖手段に関していえば、このことは、フランジ部分の下面は、栓とバイアルの界面で実効性のある封止状態を実現するために使用される領域であるため、コーティングで覆わないことを意味する。図1は、市販のFlurotec(登録商標)でコーティングしたバイアルの閉鎖手段の封止領域を示す図である。コーティングの摩擦が少ないということは、全面をコーティングされた閉鎖手段は封止が不完全となるということであり、封止領域にはフッ素化重合体が存在しないことが重要である。封止が不完全であると、バイアルの上部空間の気体に空気が侵入する問題や、(例えば凍結乾燥時に)真空を引くのが困難となるといった問題が生じることになる。
【0047】
本発明で好適な閉鎖手段は、開口部が1カ所設けられたイグルー形状を有している。この形状は、凍結乾燥製品に関して、特に、凍結乾燥装置中で、バイアルを閉鎖する前に、バイアルから(場合によっては窒素を充填することによって)水/空気を除去せねばならない場合には、特に有利である。開口部が1カ所設けられたイグルー形状には、鋭角の端部や直線状の端部がないため、2脚の栓のように、端部が極端な直線状で、どのようなコーティングであっても積層の間に破断しかねないような形状の栓に比べて積層に適している。
【0048】
ETFEのコーティングは、抽出される可能性がある有機及び無機物質に対する優れたバリアーとなり、薬剤生成物と閉鎖手段との相互作用が生じにくくなる。また、フッ素樹脂の被膜は表面エネルギーが低く、シリコンオイルなしでも良好な潤滑性が得られ、粒子汚染源の一因が排除される。被膜をほどこすことで、栓が凍結乾燥室の棚にくっついたり、バッチ製造過程でいくつもの栓が互いに接着したりするといった事態が防止される。
【0049】
本発明の閉鎖手段は、前処理を行って、閉鎖手段の材料及び/又はコーティングに溶存する酸素ガスを除去し、上記の化学的に非反応性の気体、好ましくは窒素又はアルゴン雰囲気中で、閉鎖手段を再度平衡化しておくことが好ましい。この過程は、各種の方法を用いて実施することができ、例としては、
(i)乾燥状態で熱して空気/酸素を除去し、非反応性の気体の存在下で冷却する方法、
(ii)(例えば凍結乾燥装置中で)高度の真空状態とし、その後、非反応性の気体を導入する方法、
(iii)(i)と(ii)の組み合わせを挙げることができる。
【0050】
こうした前処理は、空気に対して感受性の放射性医薬品に関して有用であることを見いだした。前処理を行うことで、容器の上部空間の酸素含量を極めて低い安定したレベルに保てるからである。つまり、ETFEのコーティング及び/又は閉鎖手段本体のゴムの組成は、酸素を吸収して、保存中のバイアル内部に、少量の酸素ガスを、徐々に放出することがあるという理屈である。酸素ガスは、ETFE被膜のコーティングへの溶解度が高く、気体は拡散プロセスを経てバイアル中に放出される可能性がある。この過程は、容器内圧が大気圧より低い場合には加速される。こうした前処理として好ましい一方法は、(i)の方法、すなわち乾熱法である。
【0051】
空気に対して感受性の放射性医薬品については、上述した通りである。本発明で使用するこうした放射性医薬品としては、99mTc−テトロホスミンを挙げることができる。
【0052】
本発明で使用するのに適した閉鎖手段は、West Pharmaceutical Services Inc.(www.westpharma.com、101 Gordon Drive,PO Box 645 Lionville,PA 19341,USA)又は大協精工社(131−0031東京都墨田区墨田3丁目38−2)から市販されており、この閉鎖手段には、変性ETFEであるFlurotec(登録商標)のコーティングが設けられている。好適な閉鎖手段は、大協精工のD21シリーズである。このシリーズのうち、好適なバイアル閉鎖手段は、V10F451Wの構成と、D21−7Sのクロロブチルゴムの組成を有するものである。これは、実施例1の閉鎖手段5(後述)に対応する。部分的にコーティングした本発明の閉鎖手段は、2工程の成型方法で作製する。まず栓を成形し、トリミングし、洗浄し、フランジ上に載置する。この技法は、閉鎖手段の全面をコーティングするスプレーコーティングとは大きく異なるものである。
【0053】
本発明の製品に用いるのに適した放射性医薬品は、空気に対して感受性であったり、閉鎖手段に吸着しやすかったり、オクタノールと水の分離係数が0.5を超えるような親油性があるなどの事由で相互作用の問題があったりするような放射性医薬品である。
【0054】
放射性医薬品が放射性金属の合成配位子との金属錯体を含む場合には、好適な合成配位子は、ホスフィン、チオール又はイソニトリル金属結合基を含むものである。放射性同位元素が99mTc又は95mTcである場合、好適な金属結合基は、テトロホスミン、MIBI(1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)、BAT(ビスアミノチオールN22キレーター)又はMAG3(N3Sメルカプトアセチルトリグリシン)である。本発明の製品に用いるのに特に好適な放射性医薬品は、Tc(V)酸化状態の99mTc−テトロホスミン、すなわち、99mTc(O)2(テトロホスミン)2+(Myoview(登録商標))である。99mTc−テトロホスミンには、プラスチック吸着の問題があることが報告されており[Rodrigues et al.,Nucl.Med.Comm.,22(1)105−110(2001)及びGunasekera et al.,Nucl.Med.Comm.,22(5)493−497(2001)]、放射性の損失等を招くような閉鎖手段の相互作用問題が生じる可能性を減らしたり解消したりすることには意味があるはずである。
【0055】
放射性同位元素が陽電子放出物質、好ましくは18Fである場合、第一の形態の封止容器は、自動合成装置の一部として使用するのが好ましい。「自動合成装置」という用語は、Satyamurthyら[Clin.Positr.Imag.,2(5),233−253(1999)]に記載されたようなユニット操作原則に基づく自動化モジュールのことを意味するものである。「ユニット操作」という用語は、複雑なプロセスを、それぞれある範囲の材料に適用可能な一連の単純な操作又は反応に分解することを意味する。こうした自動合成装置は第三の態様の方法(後述)での使用が好ましく、CTIInc、GEHealthcare、Ion Beam Applications S.A.(CheminduCyclotron3、B−1348 Louvain−La−Neuve、ベルギー)をはじめとして、いくつもの業者から市販されている[Satyamurthyら、上述]。市販の自動合成装置は、適切な放射線遮蔽が行われるようになっているか、或いは遮蔽は行わず、遮蔽されたホットセル(すなわち、放射化学的操作を行うために特別に設計された製造用セル)内に配置することで放射線被曝から操作者を防護する。こうした市販の合成装置は、放射性医薬品の製造の結果生じる液状の放射性廃棄物を格納する適当な容器も備えている。
【0056】
好適な自動合成装置は、所定のバッチの放射性医薬品を製造するうえで必要なすべての非放射性反応物質、反応容器、装置を含むディスポーザブル、すなわち単回使用のカセットを備えたものである。カセットを用いるということは、その自動合成装置が柔軟性を備えていて、各種の異なる放射性医薬品を、単にカセットを交換するだけで、最低限の相互汚染で製造可能なことを意味する。「カセット」という用語は、(上述の)自動合成装置に着脱可能かつ相互交換可能なかたちで嵌合し、合成装置の可動部品の機械的動作によってカセットの動作がカセットの外から、すなわち外部的に制御可能となるよう設計された装置部品のことを意味するものである。適当なカセットには、それぞれ開口部に接続された一連のバルブが並んで配置されており、この開口部には、逆さ向きに配置した隔壁封止バイアルを針で穿刺したり、気密な嵌合接合部を配置することによって、反応物質又はバイアルを接合させる。各バルブは、自動合成装置の対応可動アームと相接するオス型とメス型の接合部を備えている。したがって、カセットの自動合成装置への装着時には、アームを外部から回転させることで、バルブの開閉が制御される。自動合成装置の別の可動部品は、シリンジのプランジャーの先端部を挟んで、シリンジのバレルを上下させるよう設計されている。
【0057】
本発明の第二の態様では、第一の形態の造影剤製品を調製するためのキットを提供する。このキットは、第一の形態に記載した閉鎖手段を持つ封止容器と、その中に入った第一の形態に記載した放射性医薬品組成物を調製するのに適した非放射性前駆体とを含み、この前駆体が、第一の形態の放射性同位元素の供給時にこの放射性同位元素と反応して上記放射性医薬品組成物を生じうる反応性置換基(XR)を含むものである。
【0058】
この造影剤製品の放射性医薬品と、その好適な態様については、(上述の)第一の形態に記載した通りである。
【0059】
「前駆体」は、好都合な化学的形態の所望の放射性同位元素との間で、部位特異的な化学反応が生じるよう、また、最低数の工程(理想的には1工程)かつ、実質的な精製を行う必要なく(理想的には、それ以上の精製を一切必要とせずに)所望の放射性医薬品を得られるような非放射性誘導体を含むのが適当である。こうした前駆体は、合成によって、良好な化学純度で容易に生成できる。「前駆体」は、必要に応じて、ターゲティング用生体分子の任意の特定の官能基の保護基(PGP)を有していてもよい。適当な前駆体はBolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)によって記載されている。
【0060】
「保護基」(PGP)という用語は、望ましくない化学反応を阻害又は抑制する一方、分子の残りの部分を変性させることがない程度に緩やかな条件で当該官能基から解裂させることができる程度の反応性を持つよう設計された基のことを意味するものである。脱保護後に、所望の生成物が得られる。保護基は、当業者には周知であり、アミン基については、Boc(Bocはtert−ブチルオキシカルボニル)、Fmoc(Fmocはフルオレニルメトキシカルボニル)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[すなわち1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]又はNpys(すなわち3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から、そしてカルボキシル基については、メチルエステル、tert−ブチルエステル又はベンジルエステルから適宜選択することができる。ヒドロキシル基に関しては、適当な保護基は、メチル、エチル又はtert−ブチル;アルコキシメチル又はアルコキシエチル;ベンジル;アセチル;ベンゾイル;トリチル(Trt)又はトリアルキルシリル、例えばtert−ブチルジメチルシリルである。チオール基に関しては、適当な保護基は、トリチル及び4−メトキシベンジルである。保護基の使用については、Theorodora W.Greene及びPeter G.M.Wutsの『Protective Groupsin Organic Synthesis』(第三版,John Wiley & Sons,1999)にも記載されている。
【0061】
第二の形態のキットは、発熱物質を含まない滅菌状態の前駆体を含むものであり、この場合、滅菌状態の放射性同位元素源と反応させると、所望の放射性医薬品が最低数の操作で得られる。こうした点に考慮することは、放射性同位元素の半減期が比較的短い場合や、取り扱いが容易で、放射性医薬品の取扱者の被曝量を減らせることからしても、放射性医薬品では特に重要である。したがって、こうしたキットの再構成に用いる反応溶媒は、上述の「生体適合性担体」とするのが好ましく、水溶液とするのが特に好ましい。
【0062】
キットの封止容器の好適な形態については、第一の形態に記載した通りである。
【0063】
適当な反応性置換基(XR)は、
(i)放射性金属イオンを錯化し得る合成配位子、
(ii)有機金属誘導体、例えばトリアルキルスタンナン又はトリアルキルシラン、
(iii)求核置換用のハロゲン化アルキル、トシル化アルキル又はメシル化アルキル、
(iv)求核置換又は求電子置換用に活性化された芳香環を含む誘導体、
(v)容易にアルキル化し得る官能基を含む誘導体、
(vi)チオール含有化合物をアルキル化してチオエーテル含有生成物を生じる誘導体、
(vii)アルデヒド又はケトンと縮合する誘導体、
(viii)活性エステル基でアシル化される誘導体、
を含むものである。
【0064】
放射性同位元素が、放射性金属イオンを含む場合には、好適な前駆体は、XRが合成配位子を含むものである。適当な合成配位子については、その好適な態様も含め、第一の形態に記載した通りである。第一の形態に記載したように、合成配位子は、必要に応じてターゲティング用生体分子に包合させることができる。
【0065】
放射性同位元素が、γ線放出放射性ハロゲン又は陽電子放出放射性非金属を含む場合、好適な前駆体は、XRが、直接的な求電子又は求核ハロゲン化を生じるか、アルキル又はフルオロアルキルハロゲン化物、トシレート、トリフレート(すなわち、トリフルオロメタンスルホネート)、メシレート、マレイミド又は標識N−ハロアセチル分子から選択される標識アルキル化剤で容易にアルキル化されるか、チオール部分のアルキル化によってチオエーテル結合を生じるか、標識活性エステル、アルデヒド又はケトンとの縮合を生じる誘導体を含むものである。第一のカテゴリーの例としては、下記のものがある。
(a)有機金属誘導体、例えばトリアルキルスタンナン(例えば、トリメチルスタニル又はトリブチルスタニル)又はトリアルキルシラン(例えば、トリメチルシリル)、
(b)ハロゲン交換に関しては、非放射性ヨウ化アルキル又は臭化アルキル、求核ハロゲン化に関しては、アルキルトシレート、メシレート又はトリフレート、
(c)求電子ハロゲン化(例えば、フェノール)を生じるよう活性化された芳香環及び求核ハロゲン化(例えば、アリールヨードニウム、アリールジアゾニウム、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)を生じるよう活性化された芳香環。
【0066】
容易にアルキル化される誘導体として好適なものとしては、アルコール、フェノール、アミン又はチオール基、特にチオール及び立体障害を受けていない一級又は二級アミンを挙げることができる。
【0067】
チオール含有放射線同位体反応物質をアルキル化する誘導体として好適なものとしては、マレイミド誘導体又はN−ハロアセチル基を挙げることができる。後者の好適例としては、N−クロロアセチル及びN−ブロモアセチル誘導体が挙げられる。
【0068】
標識活性エステル分子との縮合を生じる誘導体として好適なものとしては、アミン、特に立体障害を受けていない一級又は二級アミンを挙げることができる。
【0069】
標識アルデヒド又はケトンとの縮合を生じる誘導体として好適なものとしては、アミノオキシ及びヒドラジド基、特にアミノオキシ誘導体を挙げることができる。
【0070】
「前駆体」は、必要に応じて、固相担体マトリックスに共有結合させた状態で供給することもできる。この場合、所望の造影剤製品が溶液中で形成される一方、出発原料と不純物は固相に結合したままとなる。18F−フッ化物を用いた固相での求電子フッ素化に用いる前駆体は、国際公開第03/002489号に記載されている。18F−フッ化物を用いた固相での求核フッ素化に用いる前駆体は、国際公開第03/002157号に記載されている。したがって、固相担体に結合させた前駆体は、適合する自動合成装置に差し込めるようなキットのカートリッジとして提供することができる。カートリッジは、固相担体に結合させた前駆体の他にも、不要なフッ化物イオンを除去するためのカラム及び反応混合物を蒸発させて、生成物を必要に応じて形成するためのカートリッジに結合された適当な容器を含むものとしてもよい。合成に必要な反応物質、溶剤などの消耗品は、放射性物質の濃度、量、供給時間などに関しての顧客の要求にこたえるかたちで合成装置を運転できるようにするソフトウェアを記録したコンパクトディスクとともにキットに含めることもできる。キットの各成分は、いずれもディスポーザブルなものとして、各回の間での混入の可能性を低減し、滅菌状態と品質を確実に確保するのが好都合である。
【0071】
放射性同位元素が放射性ハロゲンの場合、XRは、非放射性前駆体のハロゲン原子、例えばヨウ化又は臭化アリール(放射性ヨウ素の交換を可能とするため);活性化前駆体のアリール環(例えばフェノール又はアニリン基);イミダゾール環;インドール環;有機金属前駆体化合物(例えば、トリアルキルスズ又はトリアルキルシリル);又は有機前駆体、例えばトリアゼン又は求核置換用の良好な脱離基、例えばヨードニウム塩を含むのが好ましい。
【0072】
放射性ハロゲン(例えば123I及び18F)を導入する方法は、Bolton[J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)]によって記載されている。放射性ハロゲン、特にヨウ素を結合させることのできる適当な前駆体アリール基の例としては、以下のものを挙げることができる。
【0073】
【化4】

これらはいずれも、放射性ヨウ素によって芳香環上で容易に置換されうる置換基を含んでいる。放射性ヨウ素を含む別の置換基は、放射性ハロゲンの交換、例えば下記の反応による直接的なヨウ素化によって合成できる。
【0074】
【化5】

放射性ハロゲンがヨウ素の放射性同位元素を含む場合、飽和脂肪族系に結合したヨウ素原子は、インビボで代謝されることによって放射性ヨウ素を失う可能性が高いことがわかっているので、放射性ヨウ素原子は、芳香環、例えばベンゼン環又はビニル基に直接共有結合によって結合されていることが好ましい。活性化アリール環、例えばフェノールに結合されたヨウ素原子も、特定の条件下では、インビボでの安定性が限定されたものとなることが観察されている。
【0075】
放射性同位元素が放射性ハロゲン、例えば123I又は18Fを含む場合、XRは、放射標識シントンと選択的に反応して、包合の結果放射性医薬品を生じるような官能基を含むものであるのが好ましい。「放射標識シントン」という用語は、小型の合成有機分子であって、
(i)放射標識が安定的にシントンと結合するかたちで、すでに放射標識されており
(ii)所望の標識対象化合物の一部である対応する官能基と選択的かつ特異的に反応するよう設計された官能基を含む
ような分子のことを意味するものである。このアプローチを用いると、直接的な放射標識のアプローチより、インビボでの放射標識の安定性が優れた放射性医薬品を精製できる可能性が増大する。
【0076】
シントンを用いたアプローチでは、放射性同位元素の導入に用いる条件に関して自由度が高まる。この点は、例えば、ターゲティング用生体分子が塩基性条件下で有意な不安定性を示す場合などで重要である。したがって、また、このアプローチは、塩基性条件下での求核置換反応を用いる従来の直接的な標識のアプローチには不適当である。
【0077】
本発明の造影剤を生成するうえで適当な前駆体の例としては、XRがアミノオキシ基、チオール基、アミン基、マレイミド基又はN−ハロアセチル基を含むものを挙げることができる。選択的な標識方法として好適なのは、ペプチドのアミノオキシ誘導体を、Poethkoら[J.Nuc.Med.,45,892−902(2004)]に教示されたようにして前駆体として用いる方法である。こうして得た前駆体を、その後、放射性ハロゲン化ベンズアルデヒドシントンと、酸性条件下(例えばpH2〜4)で縮合して、所望の放射性ハロゲン化剤を、安定したオキシムエーテル結合経由で得る。したがって、XRは、式−NH(C=O)CH2−O−NH2のアミノオキシ基を含むものであるのが好ましい。別の好適な標識方法は、XRがチオール基を含む場合、このチオール基を放射性ハロゲン化マレイミド含有シントンによって、中性条件下で(pH6.5−7.5)で、例えばToyokuniら[Bioconj.Chem.14,1253−1259(2003)]に教示されたようにしてアルキル化して、チオール含有ペプチドを標識する方法である。
【0078】
また別の好適な標識方法は、XRがアミン基を含む場合、このアミン基を、シントンであるN−スクシンイミジル4−[123I]ヨード安息香酸と、pH7.5〜8.5で縮合させて、アミド結合で結合された生成物を得る方法である。N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、ペプチドの標識に用いることは、Vaidyanathanら[Nucl.Med.Biol.,19(3),275−281(1992)]及びJohnstromら[Clin.Sci.,103(Suppl.48),45−85(2002)]に教示されている。
【0079】
放射性同位元素が、フッ素の放射性同位元素を含む場合、放射性フッ素原子は、フッ化アルキルがインビボの代謝に対して抵抗性であるため、フルオロアルキル又はフルオロアルコキシ基の一部を形成することができる。放射性フッ素化は、18F−フッ化物と、適当な脱離基を含む前駆体、例えば臭化アルキル、アルキルメシレート又はアルキルトシレートとの反応を利用した直接的な標識によって行うことができる。或いは、放射性フッ素原子を、直接共有結合によって、芳香環、例えばベンゼン環と結合させることもできる。こうしたアリール系については、前駆体は、活性化ニトロアリール環、アリールジアゾニウム塩又はアリールトリアルキルアンモニウム塩を含むのが適当である。しかし、生体分子の直接的な放射性フッ素化は、感受性官能基にとって有害であることが多く、これは、こうした求核性反応は、強度の塩基性条件で、極性非プロトン性溶剤中で、無水[18F]フッ化物イオンを用いて行われるためである。
【0080】
第二の形態の前駆体が、塩基性条件下で不安定な場合には、前駆体の直接的な放射性フッ素化は、好適な標識方法とはいえない。こうした場合の好適な放射性フッ素化方法では、放射性ハロゲンを用いた標識一般について上述したように、前駆体に選択的に包合させた放射標識シントンを利用する。
【0081】
18Fは、アミン前駆体をアルキル化剤、例えば18F(CH23OMs(Msはメシレート)によってN−アルキル化して、N−(CH2318Fを得ることによって導入することができ、また、ヒドロキシル基の、18F(CH23OMs、18F(CH23OTs又は18F(CH23Brを用いたO−アルキル化によっても、或いはチオール基の18F(CH23OMs又は18F(CH23Brを用いたS−アルキル化によっても導入することができる。18Fは、N−ハロアセチル基を18F(CH23OH反応物でアルキル化して、−NH(CO)CH2O(CH2318F誘導体を得ることによっても、また、18F(CH23SH反応物でアルキル化して、−NH(CO)CH2S(CH2318F誘導体を得ることによっても導入できる。18Fは、マレイミド含有前駆体を18F(CH23SHと反応させることによっても導入できる。アリール系については、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール四級アンモニウム塩から、18F−フッ化物による求核置換を行うのが、前駆体の包合に有用なアリール−18F標識シントンを得る適当な経路である。
【0082】
Rが1級アミン基を含む前駆体は、Kahnら[J.Lab.Comp.Radiopharm.45,1045−1053(2002)]及びBorchら[J.Am.Chem.Soc.93,2897(1971)]に教示されたようにして、18F−C64−CHOを用いた還元的アミノ化を行うことによっても、18Fで標識することができる。このアプローチは、アリール1級アミン、例えばフェニル−NH2又はフェニル−CH2NH2基を含む化合物にも有用なかたちで適用できる。
【0083】
ペプチド系の前駆体を18Fで標識するうえで特に好適な方法は、XRが−NH(C=O)CH2−O−NH2のアミノオキシ基を含む場合、18F−C64−CHOと酸性条件下(例えばpH2〜4)で縮合させる方法である。この方法は、塩基に対して感受性の前駆体に特に有用である。
【0084】
18F−標識誘導体の合成ルートのさらなる詳細については、Bolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。
【0085】
第二の形態の非放射性キットは、必要に応じて、さらなる成分、例えば放射線防護剤、抗菌保存剤、pH調整剤又は充填剤を含むこともできる。
【0086】
「放射線防護剤」という用語は、水の放射線分解によって生じた高度に反応性遊離ラジカル、例えば酸素含有フリーラジカルを捕捉することによって、分解反応、例えば酸化還元過程を抑制する化合物を意味するものである。本発明の放射線防護剤は、アスコルビン酸、パラアミノ安息香酸(すなわち4−アミノ安息香酸)、ゲンチジン酸(すなわち2,5−ジヒドロキシ安息香酸)及びその生体適合性陽イオンとの塩から選ぶのが適当である。「生体適合性陽イオン」という用語は、イオン化され負に帯電した基と塩を形成する正に帯電した対イオンであって、この正に帯電した対イオンが有害ではなく、したがって、哺乳動物の体内、特にヒトの体内への投与に適したものであるような陽イオンを意味するものであり。適当な生体適合性陽イオンとしては、アルカリ金属であるナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属であるカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンを挙げることができる。好適な生体適合性陽イオンは、ナトリウム及びカリウムであり、特に好適なのはナトリウムである。
【0087】
「抗菌保存剤」という用語は、有害である可能性のある微生物、例えば細菌、酵母又はカビ類の成長を阻害するような物質を意味するものである。抗菌保存剤は、用量に応じて、さらに殺菌作用を示してもよい。本発明の抗菌保存剤の主な役割は、再構成後の放射性医薬品組成物中、すなわち、放射性診断用製品中でのそうした微生物の成長を抑制することにある。しかし、抗菌保存剤は、必要に応じて、本発明の非放射性キットの1以上の成分中で有害な可能性のある微生物の成長を阻害する目的で使用することもできる。適当な抗菌保存剤としては、パラベン類、すなわちメチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン、或いはそれらの混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールを挙げることができる。好適な抗菌保存剤は、パラベン類である。
【0088】
「pH調整剤」という用語は、再構成したキットのpHを、確実にヒト又は哺乳動物への投与に際しての許容限界内(約pH4.0〜10.5)とするうえで有用な化合物又は化合物の混合物を意味するものである。適当なpH調整剤としては、製薬学的に許容されうる緩衝液、例えば、トリシン、リン酸塩又はトリス[すなわちトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]及び製薬学的に許容されうる塩基、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はそれらの混合物を挙げることができる。抱合体を酸塩の形態で用いる場合には、pH調整剤は、必要に応じて別のバイアル又は容器に入れて提供し、キットのユーザーが複数の工程を含む操作の一環としてpHを調整できるようにすることもできる。
【0089】
「充填剤」という用語は、製造及び凍結乾燥の間に材料の取り扱いを容易とするような製薬学的に許容されうる嵩上げ剤を意味するものである。適当な充填剤としては、無機塩、例えば塩化ナトリウム及び水溶性糖又は糖アルコール、例えばスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースを挙げることができる。
【0090】
本発明の好適なキットは、放射性同位元素の各クラス、すなわち放射性金属イオン、γ線放出放射性ハロゲン又は陽電子放出放射性非金属のそれぞれについて上述した好適な前駆体を含むものである。
【0091】
本発明のキットは、発熱物質を含まない滅菌製剤を得るよう設計された凍結乾燥状態の前駆体に特に有用である。こうしたキットは、数ヶ月の有効保存期間が必要とされる場合もあり、空気に対する感受性や吸着の問題は深刻である。キットを、放射性活性金属の合成配位子との金属錯体を含む放射性医薬品に用いる場合には、好適な合成配位子前駆体は、ホスフィン、チオール又はイソニトリル金属結合基を含むものである。放射性同位元素が99mTc又は95mTcである場合、好適な金属結合基は、テトロホスミン、MIBI(1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)、BAT(ビスアミノチオールN22キレーター)、例えばトロパンキレーター抱合体TRODAT−1[Meegalla et al.,J.Med.Chem.,40、9−17(1997)]又はMAG3(N3Sメルカプトアセチルトリグリシン)である。特に好適な金属結合基は、テトロホスミンである。
【0092】
第二の形態のキットは、必要に応じて、複数回投与用のキットとして設計することができ、この場合、キットは、患者4〜30人分の用量の放射性医薬品を、1キットから得られるように設計する。複数回投与用キットは、有意に高まる放射能に耐え、通常のキットより多量の溶液を収容できるよう十分頑強な必要がある。複数回投与用バイアル用の容器は、容積20〜50cm3とするのが適当であり、20〜40cm3とするのが好ましく、30cm3とするのが特に好ましい。複数回投与用キットは、複数患者への投与に十分な材料(例えば、1バイアル当たり100GBq以下の99mTc)を含んでいるので、臨床での状況に応じて、安定化された製剤の有効保存期間中に、患者1人分の単位用量を臨床等級のシリンジに適当な間隔をおいて適宜吸引できる。複数回投与用の本発明のキットは、放射性医薬品を4〜30投与単位、好ましくは6〜24投与単位、再現性のあるかたちで得られるよう設計する。
【0093】
当然のことながら、こうした複数回投与用キットは、閉鎖手段を有意な回数穿刺できる必要があり、その間、閉鎖手段は滅菌を保ちうる一体性を保持し、崩れて放射性医薬品組成物中に落下する可能性のあるような閉鎖手段の微粒子(「コアリング」)を生じることがあってはならない。本発明の閉鎖手段は、こうした複数回の穿刺に成功裏に耐えうることが示されている。
【0094】
本発明のキットで使用するのに特に好適な合成配位子前駆体はテトロホスミンである。特に好適なテトロホスミンのキットの処方は、GE Healthcareの心臓造影剤であるMyoview(登録商標)の処方、すなわち凍結乾燥処方に対応する下記のもの、すなわち
テトロホスミン 0.23mg
塩化第一スズニ水和物 30μg
スルホサリチル酸ニナトリウム 0.32mg
D−グルコン酸ナトリウム 1.0mg
炭酸水素ナトリウム 1.8mg
再構成時のpH 8.3〜9.1
を窒素ガス(米国薬局方/国民医薬品集)中で10mlのガラスバイアルに封入したものである。滅菌ナトリウム(99mTc)過テクネチウム酸注射剤(米国薬局方/欧州薬局方)で再構成すると、心臓造影用放射性医薬品である99mTc−テトロホスミンを含む溶液が得られる。
【0095】
このテトロホスミンキットは、必要に応じて、上記に記載した放射線防護剤を含んでいてもよい。こうしたキットに、アスコルビン酸を放射線防護剤として含ませると、従来技術[Murray et al.,Nucl.Med.Comm.,21、845−849(2000)]及びMyoview(登録商標)に同梱された指示書の双方に教示された空気添加工程を行わなくても、良好な放射化学的純度(RCP)の99mTc−テトロホスミン錯体が得られ、再構成後の安定性が調製後12時間まで良好な状態に保たれるという利点があることが見いだされている。こうした簡略化は、工程が減り、その結果、作業が迅速かつ容易になるだけでなく、操作の回数が減ることで作業者の放射線被曝量が減るため有用である。ちなみに、空気を添加する工程は、放射性医薬のプラクチスとしてはかなり変わった操作であり、したがって、不注意で実施されず、その結果、RCPに悪影響が及ぶ危険性もある。
【0096】
本発明のテトロホスミンを含むキットに使用する放射線防護剤の濃度は、0.0003〜0.7モル濃度とするのが適当であり、0.001〜0.07モル濃度とするのが好ましく、0.0025〜0.01モル濃度とするのが特に好ましい。アスコルビン酸については、この濃度は、適当な濃度である0.05〜100mg/cm3、好適な濃度である0.2〜10mg/cm3、特に好適な濃度である0.4〜1.5mg/cm3に対応する。
【0097】
本発明のテトロホスミンを含むキットは、水又は生理食塩水で再構成した際の溶液のpHが、8.0〜9.2、特に好ましくは8.0〜8.6となるように処方するのが好ましい。これは、放射線防護剤がアスコルビン酸、つまり酸であるときは、pH調整剤の量を加減することが必要ということである。このことは、キットのpHを、テトロホスミンの99mTcによる放射標識、再構成後の安定性、患者への投与への適合性に関して最適なレベルに保つうえでも必須である。30mlの複数回投与用バイアルのキットとして好適なのは、以下のものである。
【0098】
テトロホスミン 0.69mg
塩化第一スズニ水和物 90μg
スルホサリチル酸ニナトリウム 0.96mg
D−グルコン酸ナトリウム 3.0mg
アスコルビン酸 5.0mg
炭酸水素ナトリウム 11.0mg
生理食塩水による再構成時のpH 8.3〜9.1
テトロホスミンを含むキットの放射線防護剤は、アスコルビン酸及びその生体適合性陽イオンとの塩から選ぶのが好適である。本発明の放射線防護剤は、いくつかの業者から市販されている。
【0099】
テトロホスミンは、三級ホスフィンで、空気に対して相当感受性である。したがって、テトロホスミンを含むキットは、上部空間の気体への酸素の混入に対して、特段に感受性である。酸化ホスフィンへの酸化は、本質的に不可逆性であり、キットの非放射性の有効保存期間に影響を及ぼす。本発明者らは、上部空間の酸素含量は、単なる閉鎖手段の空隙率の関数ではないと考えている。したがって、凍結乾燥工程の間に閉鎖手段と容器とがきちんと封止されていることは、凍結乾燥キットでは、極めて重要である。フッ素樹脂でコーティングした閉鎖手段は、凍結乾燥製品に適当とは限らないものが多いのに対し、本発明の閉鎖手段は、この両方の規準を満たすものである。ETFEによるコーティングは、前駆体の閉鎖手段への吸着を抑制するうえでも役立ち、テトロホスミンの場合は特にそうであることが見いだされた。
【0100】
こうした点には、有意なメリットがある。まず、非放射性キットの有効保存期間を、(前処理を行った閉鎖手段を使用した場合で)35週間から52週間程度まで延ばすことができる。第二に、現在、Myoview(登録商標)キットは、キットの性能を維持するために2〜8℃で輸送されており、そのために、キットを、断熱コンテナのアイスパック中に梱包している。改善された閉鎖手段を使用し、本発明の前処理を行うことで、キットは室温温度(約25℃)で出荷できる程度まで安定化され、冷却状態を保つために余分な梱包を行わなくてもすむようになる。
【0101】
前駆体とともに利用できる広範な放射性同位元素源が、放射性同位元素自体又は放射性同位元素生成物質として、いくつもの業者から市販されている。こうした放射性同位元素源としては、ハロゲン化物イオン、例えば123I−ヨウ化物又は18F−フッ化物、或いは放射性金属イオン、例えば111In−インジウム塩化物又は99mTc−過テクネチウム酸がある。放射性同位元素がテクネチウムである場合、通常のテクネチウム出発原料は、過テクネチウム酸、すなわちTcO4-であり、これは、テクネチウムのTc(VII)酸化状態である。過テクネチウム酸自体は容易には金属錯体を形成しないので、テクネチウム錯体を調製する際には、通常、適当な還元剤、例えば第一スズイオンを添加して、テクネチウムの酸化状態を低い酸化状態へと、通常Tc(I)からTc(V)へと下げて、錯体形成を促進する必要がある。溶剤は有機溶剤でも、水性溶剤でも、それらの混合物でもよく、生体適合性担体であるのが好ましい。生体適合性担体及びその好適な態様については、上述した通りである。
【0102】
他の放射性同位元素は、も通常の方法によって作成可能である。[McQuadeら,Curr.Med.Chem.,12(7),807−818(1995);Finnら、『Principles&PracticeofPositronEmissionTomography』、R.L.Wahlら編、1章、1〜15頁(2002)及びElliottら『TextbookofRadiopharmacy』、第3版、C.B.Sampson編、2章、19〜29頁(1999)]
本発明の第三の態様では、第一の形態の造影剤製品の製造方法を提供するものであり、この方法は、
(i)第二の形態の前駆体に、
(ii)第一の形態の放射性同位元素を供給しながら、
第一の形態の封止容器中で、或いは別の反応容器中で反応させた後、反応生成物を第一の形態の封止容器に移すかたちで反応させる工程を含んでいる。
【0103】
この方法で用いる反応物質(i)の前駆体の好適な形態については、第二の形態に記載した通りである。反応物質(ii)の放射性同位元素の供給源については、上記の第一及び第二の形態に記載した通りである。この方法は、前駆体を第二の形態のキットのかたちで供給して実施するのが好ましい。放射性同位元素は、生体適合性担体に担持させて供給するのが好ましい。この製造方法は、請求項1乃至請求項6の封止容器中で実施し、生成物を移動させる工程が不要であることが好ましい。
【0104】
放射性同位元素が陽電子放出物質である場合、製造方法(すなわち、反応及び/又は反応生成物の移動)は、自動合成装置を用いて実施する。
【0105】
造影剤製品を製造するうえで加熱が必要な放射性医薬品製剤の場合は、加熱によって、閉鎖手段の相互反応及び/又は閉鎖手段からの不純物の浸出の確率が上昇するので、本発明の閉鎖手段又はキットの使用が特に有利なはずである。
【0106】
本発明の第四の態様では、
(i)第一の形態の放射性医薬品組成物又は
(ii)第二の形態のキット
のいずれかを含む容器を封止するにあたっての第一の形態に記載した閉鎖手段の使用を提供する。
【0107】
好適な放射性医薬品及びキットについては、第一及び第二の形態にそれぞれ記載した通りである。好適な閉鎖手段は、第一の形態に記載した通りである。放射性医薬品組成物の放射性同位元素が、陽電子放出物質である場合、容器は、自動合成装置の一部を構成するのが好ましい。自動合成装置の好適な形態については、上述の通りである。こうした閉鎖手段を放射性医薬品の用途に使用することの利点は、これまで認識されていなかったものと考える。
【0108】
本発明を、以下に詳述する実施例によってさらに説明するが、本発明は、これらによって限定されるわけではない。実施例1は、テトロホスミンを含むキットについては、多くの閉鎖手段の特性は理想的とはいいがたいこと、そして、本発明の閉鎖手段では重要な改善が実現されていることが示される。実施例2では、本発明の閉鎖手段は、前処理を行って、溶存気体酸素を除去し、窒素で置換することによってさらに改善できることが示される。実施例3では、本発明の閉鎖手段を使用して製造した凍結乾燥テトロホスミンを含むキットのRCP分布が、参照用のMyoview(登録商標)キット(コーティングなしの栓)と同じであることが示される。このことから、ETFEでコーティングした閉鎖手段のために生じた放射性不純物がなかったことがわかる。実施例4では、本発明の閉鎖手段の組み合わせが、複数回投与用の放射性医薬品のバイアルへの使用に適していることが示される。実施例5では、本発明の封止バイアルを長期にわたって保存したときの上部空間の気体酸素を減らすための優れた前処理が提供される。実施例6では、本発明の閉鎖手段が、凍結乾燥放射性医薬品キットで使用するうえで有利なことが示される。
【実施例】
【0109】
実施例1:凍結乾燥テトロホスミンを含むキットの閉鎖手段
以下の閉鎖手段について、評価を行った
【0110】
【表1】

表1の閉鎖手段1〜14を用いて、テトロホスミンキットの凍結乾燥処方剤を(第二の形態で引用したMyoview(登録商標)の処方にしたがって)製造した。キットの製造後、適当な間隔をおいて、テトロホスミン含量と上部空間の気体酸素含量を調べた。上部空間の酸素含量は、バイアルを窒素で置換し、流出する気体を電気化学的酸素検出装置に通すことによって測定した。信号を積分すると、全酸素量が得られる。結果を、現在市販されているMyoview(登録商標)の製品(コーティングなしのクロロブチル製閉鎖手段を含む。West社の処方PH701/45赤茶、形状1178)と比較した結果を、表2にまとめて示す。
【0111】
【表2】

実施例2:閉鎖手段の前処理
ETFEをコーティングした閉鎖手段(実施例1の閉鎖手段No.5)を、123℃で15時間並びに80℃で20時間の2つの異なる条件で、乾燥加熱炉中で加熱することによって前処理した。閉鎖手段を放冷後、ポリエチレン製の袋に入れて包装し、滅菌した(γ線使用)。栓を使用して、1〜2日以内に、空のガラスバイアルを(気体酸素を栓に再吸着を防止するため)封止した。上部空間の気体酸素量を、適当な間隔をおいて測定したところ、極めて低レベルかつ安定したレベルであった(封止後11週間までで、2μl未満)。
【0112】
実施例3:閉鎖手段の放射性医薬品への使用の適合性
閉鎖手段No.5を有する実施例1の凍結乾燥キットを使用した。キットを、99mTc過テクネチウム酸の生理食塩水溶液(1.1GBq/mlで8ml)で再構成し、室温で15分間インキュベートした。その後12時間にわたってHPLCで分析し、新規な栓をしたMyoviewの10mlの生成物に、現行のコーティングなしの栓をしたMyoviewと比較して新規及び/また異なった放射線化学的ピークが存在するかどうかについて調べた。ピークの量にも、ピークのサイズにもちがいはなかった。再構成によって、栓の機械的特性や物理的外見が影響を受けることはなかった。
【0113】
実施例4:閉鎖手段の複数回使用用放射性医薬品用バイアルへの適合性
36本の空のバイアルに、実施例1の閉鎖手段No.5の3つの異なるバッチ由来の閉鎖手段を嵌合させた(1バッチ当たりバイアル12本)。閉鎖手段の各バッチは、欧州薬局方の破断試験で調べ、この試験では、皮下針(外径0.8mm)で4カ所の異なる部位で穿刺を行った。いずれの閉鎖手段も、この試験で合格した。さらなる実験として、閉鎖手段No.5を嵌合させた6本のバイアルを、針(ゲージ21G)で35回穿刺した。ゆるみの生じた断片は、欧州薬局方の要求する範囲内であった。
【0114】
実施例5:閉鎖手段別の前処理
ETFEでコーティングした閉鎖手段(実施例1の閉鎖手段No.5)を、Fedegari滅菌装置で洗浄、乾燥した。このサイクルの洗浄工程の後、蒸気を2分間注入し、105℃で10分間加熱した。サイクルの次の工程の乾燥は、200ミリバールの減圧下で10分間実施し、その間に、温度が105℃から約60℃に下降した。いずれの閉鎖手段も、滅菌装置のチャンバから取り出される段階で乾燥していた。閉鎖手段は、実施例2に記載したようにして、空のガラスバイアルの封止に使用した。結果を、図2に示す。
【0115】
実施例6:凍結乾燥放射性医薬品キットへの閉鎖手段の適合性
実施例1の閉鎖手段No.5を使用し、第二の態様について記載したようにして、凍結乾燥Myoview(登録商標)の30mlキットの組成物を製造した。それぞれ約21,500バイアルを含む2つのバッチについて、100%の目視検査を行った。閉鎖手段の周辺に凍結乾燥粉末が見えた場合に場合には、バイアルを不合格とした。閉鎖手段の不良が理由で不合格となったバイアルの数は、Myoview(登録商標)10mlのキットのバッチに従来品の閉鎖手段(PH701/45赤茶)を使用した場合より有意に少なかった。閉鎖手段No.5を使用した場合のバイアルの不合格数は、最初のバッチが73本、次のバッチが103本であった。これは、約0.3〜0.5%の不合格率に相当する。従来品のコーティングなしの閉鎖手段については、栓の不良による不合格率は、2%前後である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、市販のFlurotec(登録商標)でコーティングされたバイアルの閉鎖手段の封止領域を示す。
【図2】図2は、上部空間気体の酸素が、調製後の保存期間の関数として生じていることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止容器に入った放射性医薬品組成物を含む造影剤製品であって、
(i)放射性医薬品組成物が、哺乳動物への投与に適した形態で生体適合性担体に担持された医用造影に適した放射性同位元素を含み、
(ii)封止容器が、封止状態を損なうことなく皮下針で穿刺可能な閉鎖手段を備え、この閉鎖手段の容器の内容物と接する表面が、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)又はその変性体を含むコーティングで覆われている
造影剤。
【請求項2】
コーティングが閉鎖手段に積層されている、請求項1記載の造影剤製品。
【請求項3】
コーティングが容器との間で封止領域を形成する部分を除く閉鎖手段の全面を覆っている、請求項1又は請求項2記載の造影剤製品。
【請求項4】
コーティングが変性ETFEのコーティングFlurotec(登録商標)である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の造影剤製品。
【請求項5】
閉鎖手段が塩素化ブチルゴム製である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の造影剤製品。
【請求項6】
容器が医薬品等級のバイアル瓶である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の造影剤製品。
【請求項7】
医用造影に適した放射性同位元素が、
(i)放射性金属イオン、
(ii)γ線放出型放射性ハロゲン、
(iii)陽電子放出型放射性非金属
から選択される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の造影剤製品。
【請求項8】
放射性同位元素が放射性金属イオンであり、放射線医薬品が放射性金属イオンの金属錯体を合成配位子とともに含むものである、請求項7記載の造影剤製品。
【請求項9】
合成配位子が1以上のホスフィン、チオール又はイソニトリル金属結合基を含むものである、請求項8記載の造影剤製品。
【請求項10】
放射性金属イオンがγ線放出物質又は陽電子放出物質である、請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載の造影剤製品。
【請求項11】
放射性金属イオンが99mTc、111In、64Cu、67Cu、67Ga又は68Gaである、請求項10記載の造影剤製品。
【請求項12】
放射線医薬品が99mTc錯体テトロホスミンを含む、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の記載の造影剤製品。
【請求項13】
γ線放出放射性ハロゲンの造影部分が123Iである、請求項7記載の記載の造影剤製品。
【請求項14】
陽電子放出放射性非金属が18F、11C、13N、124Iから選択される、請求項7記載の記載の造影剤製品。
【請求項15】
複数の患者への投与に適した放射性内容物を含む、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の記載の造影剤製品。
【請求項16】
患者1人への投与に適した放射性内容物を含む、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の記載の造影剤製品。
【請求項17】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の閉鎖手段を持つ封止容器と、その中に入った請求項1及び7乃至16のいずれか1項に記載の放射性医薬品組成物の調製に適した非放射性前駆体とを含み、この前駆体が、請求項1又は請求項7乃至請求項14のいずれか1項記載の放射性同位元素の供給時にこの放射性同位元素と反応して上記放射性医薬品組成物を生じうる反応性置換基(XR)を含んでいる請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の造影剤製品を調製するためのキット。
【請求項18】
Rが、
(i)放射性金属イオンを錯化し得る合成配位子、
(ii)有機金属誘導体、例えばトリアルキルスタンナン又はトリアルキルシラン、
(iii)求核置換用のハロゲン化アルキル、トシル化アルキル又はメシル化アルキル、
(iv)求核置換又は求電子置換用に活性化された芳香環を含む誘導体、
(v)容易にアルキル化し得る官能基を含む誘導体、
(vi)チオール含有化合物をアルキル化してチオエーテル含有生成物を生じる誘導体、
(vii)アルデヒド又はケトンと縮合する誘導体、
(viii)活性エステル基でアシル化される誘導体、
を含む、請求項17記載のキット。
【請求項19】
前駆体が発熱物質を含まない滅菌状態である、請求項17又は請求項18記載のキット。
【請求項20】
前駆体が凍結乾燥されている、請求項19記載のキット。
【請求項21】
前駆体が、放射性金属イオンとともに錯体を形成し得る合成配位子である、請求項18乃至請求項20のいずれか1項記載の記載のキット。
【請求項22】
前駆体がテトロホスミンを含む、請求項21記載のキット。
【請求項23】
請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の造影剤製品の製造方法であって、
(i)請求項17乃至請求項22のいずれか1項記載の前駆体に、
(ii)請求項1又は請求項7乃至請求項14のいずれか1項記載の放射性同位元素を供給して反応させ、その際、反応を、請求項1乃至請求項6の封止容器中で行うか、別の反応容器中で反応させてから、反応生成物を請求項1乃至請求項6ののいずれか1項記載の封止容器に移す方法。
【請求項24】
反応(i)及び(ii)を、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の封止容器中で実施する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
放射性同位元素が陽電子放出物質であり、反応及び又は反応生成物の移動を自動合成装置を用いて実施する、請求項23又は請求項24記載の方法。
【請求項26】
前駆体が、請求項17乃至請求項22のキットとして供給される請求項23又は請求項24記載の方法。
【請求項27】
(i)請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の放射性医薬品組成物又は
(ii)請求項17乃至請求項22のいずれか1項記載のキット
を含む容器を封止するための請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の記載の閉鎖手段の使用。
【請求項28】
放射性医薬品組成物の放射性同位元素が陽電子放出物質であり、容器が、自動合成装置の一部を構成するものである請求項27記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−541153(P2009−541153A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515954(P2009−515954)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002302
【国際公開番号】WO2007/148088
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】