説明

放射性廃棄物の放射能定量測定装置

【課題】廃棄物収納容器に収納された放射性廃棄物の放射能をパッシブガンマ線により容易に精度良く定量評価することができる放射能定量測定装置を実現する。
【解決手段】廃棄物収納容器に収納された放射性廃棄物の放射能をパッシブガンマ線により定量評価する放射能定量測定装置1は、廃棄物収納容器3を搬入、載置、重量測定、回転を行う手段4,5,8,42と、ガンマ線検出器6の複数のガンマ線検出もヘッド61,62,63を球状空間の外周に沿って配置する検出器支持台7と、ガンマ線検出器6と、検出信号を処理する各種処理手段を内蔵する制御装置2とを備え、廃棄物収納容器に収納された廃棄物の放射能を定量評価する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物収納容器に収納された放射性廃棄物の放射能を測定する放射能定量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物収納容器に収納された放射性廃棄物の放射能を測定する方法において、放射能定量評価でパッシブガンマ線を用いる手法として、廃棄物収納容器を回転・昇降させることによりレイヤーに区分して測定する方法や廃棄物収納容器を対向位置で測定する方法が提案されている。
【0003】
これらの手法は、線源分布の制限及び廃棄物密度分布の平均化を仮定して近似的に評価している。そのために、廃棄物の分布が仮定した平均化からはずれていると放射能定量の精度が低下する。また、測定手順が煩雑なことからガンマ線測定を効率的に行うことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−220238号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「研究施設等廃棄物の埋設事業に関する説明会(第2開)」資料 独立行政法人 日本原子力研究開発機構 埋設事業推進センターのホームページ http://www.jaea.go.jp/04/maisetsu/index.html の「資料室」に掲載
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のパッシブガンマ線を用いる放射能定量評価手法は、線源分布の制限及び廃棄物密度分布の平均化を仮定して近似的に評価しているために、廃棄物の分布が仮定した平均化からはずれていると放射能定量の精度が低下する。
【0007】
また、廃棄物収納容器を回転及び昇降させることによりレイヤーに区分して測定する方法は、測定中に廃棄物収納容器を回転及び昇降させる操作が必要であることから、測定手順が煩雑で測定を効率的に行うことが困難であった。
【0008】
したがって、本発明の1つの目的は、廃棄物収納容器に収納された放射性廃棄物の放射能をパッシブガンマ線により容易に精度良く定量評価することができる放射能定量測定装置を実現することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、放射性廃棄物を収納した廃棄物収納容器に対するパッシブガンマ線計測を精度良く且つ効率的に行うことができる放射能定量測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放射能定量測定装置は、廃棄物収納容器に収納した放射性廃棄物から放出されるガンマ線を測定して放射能を定量評価する装置において、容器載置台に載置されて回転する廃棄物収納容器の外端が内接するように想定した球状空間の外周に沿って廃棄物収納容器の中心位置に向けて複数のガンマ線検出器を経線方向に配列して検出器支持台に設置し、放射性廃棄物を収納した廃棄物収納容器を容器搬送手段によって前記容器載置台に搬入して載置した状態で廃棄物収納容器の重量を測定すると共に前記容器載置台を回転させてパッシブガンマ線測定を行って前記廃棄物収納容器に収納された放射性廃棄物の放射能を定量評価するように構成したことを特徴とするものであり、具体的には、
廃棄物収納容器を載置する容器載置台と、
前記容器載置台に対して前記廃棄物収納容器を搬出入する容器搬送手段と、
前記容器載置台に載置された前記廃棄物収納容器の重量を計測して該廃棄物収納容器内の廃棄物の重量を検出する廃棄物重量検出手段と、
前記容器載置台に載置された廃棄物収納容器の外端が内接するように想定した球状空間の外周に沿って前記廃棄物収納容器の中心位置に向けて複数のガンマ線検出器を経線方向に配列して設置する検出器支持台と、
前記廃棄物収納容器と前記複数のガンマ線検出器を前記球状空間の緯線方向に相対的に移動するように前記容器載置台と検出器支持台を相対的に回転させる台回転手段と、
前記容器載置台と検出器支持台の相対的な所定の回転位置において前記複数のガンマ線検出器から出力する検出信号を取得する検出信号取得手段と、
前記検出信号取得手段で取得した検出信号に基づいて前記廃棄物収納容器に収納された廃棄物の放射能を定量評価する放射能定量手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
そして、前記ガンマ線検出器は、前記球状空間に対して180度の範囲、少なくとも、廃棄物収納容器を網羅できる範囲の検出角度を有するように構成し、経線方向に等間隔に配列する。
【0012】
また、前記台回転手段は、前記容器載置台又は検出器支持台を緯線方向に180度回転させる構成とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、廃棄物収納容器に収納した放射性廃棄物から放出されるガンマ線を測定して放射能を定量評価する装置において、容器載置台に載置されて回転する廃棄物収納容器の外端が内接するように想定した球状空間の外周に沿って廃棄物収納容器の中心位置に向けて複数のガンマ線検出器を経線方向に配列して検出器支持台に設置し、放射性廃棄物を収納した廃棄物収納容器を容器搬送手段によって前記容器載置台に搬入して載置した状態で廃棄物収納容器の重量を測定すると共に前記容器載置台を回転させてパッシブガンマ線測定を行って前記廃棄物収納容器に収納された放射性廃棄物の放射能を定量評価するように構成したことにより、放射能廃棄物の平均密度の情報を廃棄物重量データから事前に得ることで、廃棄物収納容器に収納された放射性廃棄物の放射能をパッシブガンマ線により精度良く且つ効率的に定量評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の放射性廃棄物の放射能定量測定装置の一実施の形態を示すシステム構成図である。
【図2】本実施の形態における容器載置台、台回転手段、重量測定装置を示す上面図及び側面図である。
【図3】本実施の形態における放射線検出器支持台を示す側面図である。
【図4】本実施の形態における放射線検出器(ガンマ線検出器)及び検出器固定金具を示す斜視図である。
【図5】本実施の形態における放射性廃棄物の放射能定量測定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態における検出信号取得手段の処理手順を示すフローチャート及びデータ蓄積帳票である。
【図7】本実施の形態における放射能定量化基準値手段の基準値の一例を示す特性図である。
【図8】本実施の形態における放射能定量化基準値手段の基準値作成の一例を示すフローチャートである。
【図9】本実施の形態における放射能定量手段における処理手順の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態である放射能定量測定装置1のシステム構成について、図1〜図4を参照して説明する。
【0016】
本実施の形態における放射能定量測定装置1は、図1に示すように、制御装置2と、廃棄物収納容器3を載置して回転する容器回転台4と、載置された廃棄物収納容器3を搬送して前記容器回転台4上に載置する容器搬送台5と、前記容器回転台4に載置された廃棄物収納容器3の外端が内接するように想定した球状空間の外周に沿って前記廃棄物収納容器3の中心位置Xに向けてガンマ線検出器6の複数のガンマ線検出ヘッドを経線方向に配列して設置する検出器支持台7と、前記容器回転台4に載置された廃棄物収納容器3の重量を測定する重量測定装置8を備える。
【0017】
前記制御装置2は、CPUなどの演算手段20と、インターフェイス21と、制御処理プログラムや演算処理プログラムを記憶する記憶手段22を備える。そして、前記記憶手段22は、前記演算手段20と連係する処理プログラムによって、ガンマ線検出器6から出力するガンマ線検出信号を取り込む検出信号取得処理手段23と、容器搬送台5に載置された廃棄物収納容器3の搬送及び重量測定等の放射能測定準備を制御する測定準備制御処理手段24と、容器回転台4の回転を制御する台回転制御処理手段25と、検出信号取得処理手段23によって取り込み、弁別処理した検出信号をもとに、ガンマ線検出器6におけるガンマ線検出ヘッド毎のガンマ線係数率計算ならびにガンマ線係数率の平均化処理、プロットポイント計算処理等を行ない放射能量を定量化する放射能定量処理手段26と、放射能定量化手段26で演算したプロットポイントに対応したウラン量定量化計算のための基準値を保存しておく放射能定量化基準値処理手段27とを備える。
【0018】
図2を参照して容器回転台4と容器搬送台5と重量測定装置8について説明する。
【0019】
容器回転台4は、ベース41上に設置した回転駆動部42と、前記回転駆動部42によって回転駆動するように前記ベース41上に載置した回転プレート43と、前記回転プレート43をベース41の案内面に沿って水平に回転させるための回転ガイドローラ44と、前記回転プレート43上に載置する廃棄物収納容器3を搬出入及び位置調整するための駆動ローラ45と、廃棄物収納容器3の搬入と搬入位置を検知する到来検知器46を備える。
【0020】
前記到来検知器46は、複数のセンサを等間隔に並べた構成であり、複数のセンサの検知信号に基づいて廃棄物収納容器3の位置を制御装置2が認識することで、ソフト的に中心位置を割り出し、容器回転台4の中央位置(回転プレート43の中心位置)に到達したか否かを判断し、否の場合には、前後のずれ量を求め、このずれ量に合わせて、駆動ローラ45を正・逆転して廃棄物収納容器3を回転プレート43の中心に位置合わせすることができるようにする。
【0021】
容器搬送台5は、フレーム51上に設置され、載置された廃棄物収納容器3を容器回転台4(駆動ローラ45)上に搬出入するように矢印方向に移送する駆動搬送ローラ52を備える。
【0022】
回転プレート43上の駆動ローラ45とフレーム51上の駆動搬送ローラ52は、廃棄物収納容器3を回転プレート43上に移送するときには連動させて回転駆動し、廃棄物収納容器3を回転プレート43上の中央位置に位置調整するときには駆動ローラ45を単独で回転駆動することができるように構成する。なお、回転プレート43上における駆動ローラ45の軸方向の位置決めは、廃棄物収納容器3の側面に当接するガイドレール(図示省略)によって行うように構成する。
【0023】
重量測定装置8は、重量測定器81と、この重量測定器81に載置するように設置され、前記容器回転台4のベース41を持ち上げることにより廃棄物収納容器3の重量を前記重量測定器81に作用させて測定する昇降装置82を備える。
【0024】
図3及び図4を参照して、ガンマ線検出器6の複数のガンマ線検出ヘッドを検出器支持台7によって経線方向に配列して設置する構成を具体的に説明する。
【0025】
ガンマ線検出器6の複数のガンマ線検出ヘッドを支持する検出器支持台7は、廃棄物収納容器3の中心Xからガンマ線検出器6の複数のガンマ線検出ヘッド61、62、63までの距離を一定に保持する検出ヘット支持部71と、その検出ヘッド支持部71を支える支柱72と支持台73を備える。
【0026】
ガンマ線検出器6のガンマ線検出ヘッド61、62、63は、廃棄物収納容器3の中心Xに向けて位置付けされ、ボルト等の検出ヘッド固定器具74によって検出ヘッド支持部71に固定する。
【0027】
検出ヘッド支持部71は、ボルト等の支持部固定器具75によって支柱72に固定する。また、支柱71と支持台73との結合は、支持台73の底面で支柱72をボルト等(図示省略)で固定、あるいは、溶接等による一体構成であっても良い。
【0028】
ここで、検出ヘッド支持部71は、廃棄物収納容器3の中心Xに対して一定の距離を持たせた配置とし、併せて、ガンマ線検出器6のガンマ線検出ヘッド61、62、63と廃棄物収納容器中心Xとの距離は、いずれも一定となるように支持する構成とする。
【0029】
因みに、前記経線方向とは、図3に示すように、検出ヘット支持部71の円弧に沿った矢印方向である。
【0030】
このようにガンマ線検出ヘッド61、62、63を取り付けた検出ヘッド支持部71は、図3のb)に示すように、各ガンマ線検出ヘッド61、62、63が容器回転台4に載置された前記廃棄物収納容器3の中心Xに対して点対称に位置するように前記容器回転台4の両側に廃棄物収納容器3の搬出入空間位置を避けるように位置させて設置する。
【0031】
ガンマ線検出器6のガンマ線検出ヘッド61は、図4のa)に示すように、ガンマ線を検出する検出部611を備え、図4のb)に示すように、検出部611を検出ヘッド固定器具74の固定金具741によって検出器支持部71に、位置決め、固定する。固定金具741は、固定基準穴741aと検出部611の軸線を廃棄物収納容器3の廃棄物収納容器中心Xに位置合わせするための固定調整長穴741bを備える。ガンマ線検出器6は、放射線を検出して電気信号などに変換して出力する構成であれば、いずれの方式でも利用可能であるが、検出角度は、180度程度の広角のものであることが望ましい。例えば、同軸型Ge検出器(ORTEC社製 HPGe detecter GEM60P−X)を使用することができる。
【0032】
測定対象物である廃棄物収納容器3を放射能定量測定装置1に搬入して該廃棄物収納容器3内の放射性廃棄物の放射能を定量測定する処理手順を図5を参照して説明する。
【0033】
ステップS1において廃棄物収納容器3を測定位置に搬入し、ステップS2において廃棄物収納容器3の重量測定処理を行い、ステップS3においてガンマ線検出器6の計数準備処理を行い、ステップS4においてガンマ線検出器6より検出データの取り込み処理を行い、ステップS5において計数値のエネルギー弁別処理し、ステップS6において計測データ保存処理を行い、ステップS7において測定の進行状況を判断し、ステップS8において廃棄物収納容器3の回転を行い、ステップS9においてガンマ線計数率計算処理を行い、ステップS10においてガンマ線計数率の平均化処理を行い、ステップS11においてプロットポイント計算処理を行い、ステップS12において検量線を使用しウラン量定量処理を行い、ステップS13において重量濃度評価処理を行うように実行する。
【0034】
各ステップにける具体的な処理は、次のように実行する。
【0035】
〔ステップS1 廃棄物収納容器の搬入処理〕
廃棄物収納容器3を容器搬送台5上に置き、制御装置2に設けられているキーボードあるいは表示画面(図示省略)から該制御装置2に測定開始の信号を入力し、測定準備制御処理手段24を機能させることにより行う。この廃棄物収納容器3を容器回転台4上に移送する制御は、測定準備制御処理手段24により、容器搬送台5のフレーム51上に設置されている駆動搬送ローラ52と容器回転台4上に設置されている駆動ローラ45を駆動することにより廃棄物収納容器3を図2の矢印の方向に移送するように行う。そして、測定準備制御処理手段24は、到来検知器46から出力する検知信号に基づいて廃棄物収納容器3の位置を検出し、廃棄物収納容器3の全体が容器回転台4上に移送されたことを認識すると、前後のずれ量を求め、このずれ量に合わせて、駆動ローラ45を正・逆転させて廃棄物収納容器3を回転プレート43の中心に位置合わせする制御処理を行う。
【0036】
〔ステップS2 廃棄物収納容器の重量測定処理〕
制御装置2の測定準備制御処理手段24は、廃棄物収納容器3が容器回転台4の中央に位置したことを認識すると、昇降装置42によって容器回転台4のベース43を持ち上げて廃棄物収納容器3の重量を重量測定器81に作用させてその重量を測定する。廃棄物収納容器3内の廃棄物の重量は、測定値から空の廃棄物収納容器3とベース41と昇降装置42と回転プレート43と回転ガイドローラと44駆動ローラ45等の重量を差し引くことによって求める。また、廃棄物収納容器3内の廃棄物の密度は、廃棄物収納容器3が所定容積のドラム缶、あるいは、予め設定された容積の収納容器とすることで、測定した重量に基づいて演算することによって求める。
【0037】
〔ステップS3 ガンマ線検出器の計数準備処理〕
廃棄物収納容器3に対し、検出器支持台7で支持したガンマ線検出器6のガンマ線検出ヘッド61、62、63の位置が、廃棄物収納容器3の外端が内接するように想定した球状空間の外周に沿って配置されるように検出器支持台7及びガンマ線検出器6の位置を確認及び調整する。この確認及び調整は、廃棄物収納容器3の中心Xの位置に対して、ガンマ線検出器6のガンマ線検出ヘッド61,62,63が中心を向いているかどうかの確認及び調整であり、前記検出器固定器具75の手作業によるメカ的な調整であることから、詳細な説明は省略する。また、このガンマ線検出器6の係数準備処理は、この放射能定量測定装置1を稼動させるときに、当初に行うものであり、以降の処理では省略することができる。
【0038】
〔ステップS4 ガンマ線検出器より検出データの取り込み処理〕
ガンマ線検出6は、検出器支持台7に載置した複数のガンマ線検出ヘッド61、62、63を常時検出モードに設定しておき、制御装置2に構成した検出信号取得処理手段23によって複数のガンマ線検出ヘッド61、62、63からのガンマ線検出信号を取得する。
【0039】
具体的な処理を図6を参照して説明する。図6において、a)は検出信号取得処理手段23の処理手順を示すフローチャート、b)、c)は、その処理に対するデータを帳票形式で表わしたものである。
【0040】
まず、ステップS4−1として、この処理に利用するパラメータとして、ガンマ線検出器選択のI値、1001keV、766keVのいずれかのエネルギーを選択するK値を初期値として“0”を設定する。
【0041】
次に、ステップS4−2として、複数のガンマ線検出器6が常時検出モードに設定されていることから、ある特定の角度、例えば、0度のデータとして測定基準時(スタート)を設定し、所定時間(本実施の形態では15秒間)、複数のガンマ線検出ヘッド61、62、63からのガンマ線検出信号及びエネルギー区分(後述するK)を取り込んで、b)のように、ガンマ線検出ヘッド別、かつ、エネルギー区分別に蓄積する。この蓄積データは、横軸にエネルギー、縦軸にガンマ線強度のデータとして蓄積する。b)において、Iは総てのガンマ線検出器の一貫番号、Kはエネルギー選択で、“1”は1001keV、“2”は766keVを表わす。
【0042】
その蓄積データを基に、ステップS4−6、S4−8の関数適合法によるピーク面積計算を行ない、ステップS4−7、ステップS4−9において、その結果を、c)の対応する角度、この場合は、0度のデータとして記憶する。
【0043】
この処理を、12分割で計測する場合には、ステップS4−3〜ステップS4−5の処理を経て0度〜330度まで12回繰り返し行なう。
【0044】
〔ステップS5 計数値のエネルギー弁別処理〕
計測された信号はエネルギー弁別処理手段(検出信号取得処理手段23に内蔵)においてエネルギーに応じて弁別する。このガンマ線のエネルギー弁別処理手段は、特開2007−093471号公報等に詳細が記載されており、本実施の形態においても同様の方法でガンマ線エネルギー弁別処理を行うものとする。ガンマ線検出器6における複数のガンマ線検出ヘッド61、62、63からのガンマ線検出信号を、ガンマ線検出ヘッド毎に、横軸にガンマ線エネルギー値、縦軸にガンマ線強度を、特開2007−093471号公報の図1のb)に示されているようにプロットすることで、所定のガンマ線エネルギーの放射線強度を計数する。本実施の形態では、ウラン核種に対応した2つのエネルギーの1001keV、766keVのガンマ線検出信号を使用する。
【0045】
〔ステップS6 計測データ保存処理〕
ステップS5における計数値のエネルギー弁別処理後の計測データは、放射能定量処理手段26を機能させることによって該放射能定量処理手段26の所定のエリア(図示省略)に記憶する。
【0046】
〔ステップS7 全測定が終了か?〕
ステップS4〜S6までの処理が、特定位置での測定についての一連の処理である。この一連の処理が完了すると、台回転制御処理手段25は、測定対象物である廃棄物収納容器3の測定が所定回数いわゆる分割測定回数を実施したかの判定を行い、終了した場合には、ステップS9のガンマ線計数率計算処理を行う。所定回数の測定が終了していない場合には、次の測定位置での測定を行うため、ステップS8における廃棄物収納容器3の回転に移行する。
【0047】
〔ステップS8 廃棄物収納容器の回転処理〕
ステップ3におけるガンマ線検出準備が終了した段階で、台回転制御処理手段25は、予め定められた分割測定回数に従って、例えば、1周360度を12分轄で測定する場合には、容器回転台4を30度回転させ、回転動作が完了した段階で、検出信号取得処理手段23に台回転の完了信号を台回転情報として送信して、ステップS4の処理に戻る。
【0048】
〔ステップS9 ガンマ線計数率計算処理〕
放射能定量処理手段26を機能させてエネルギーに応じて弁別された信号から構成されるガンマ線スペクトルから2つのエネルギー(1001keV、766keV)の計数率を計算する。計数率の計算は関数適合法によって行う。例えば、検出器支持台7に3個のガンマ線検出ヘッド61、62、63を設置して1周360度を12分轄で測定する場合には、12×3=36のガンマ線スペクトルが得られる。ガンマ線スペクトルそれぞれから2つのエネルギー(1001keV、766keV)の計数率を関数適合法によって計算する。
【0049】
ここで、関数適合法について、「ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメトリー −コベル法と関数適合法の比較−」(新潟県保健環境科学研究所年報第15巻2000 山崎 興樹、殿内 重正)を参照して説明する。
【0050】
ガンマ線は、励起状態にある原子核がより低い準位に遷移する際に両準位のエネルギー差を持って放出される。このエネルギーは、準位の寿命との不確定性及び原子核の反跳によるドップラー効果により、放出時既に本質的な幅を持ち、検出器に入射した後は、生成電荷の統計的ゆらぎや検出器漏洩電流、前置増幅器のノイズなどにより統計的な幅が加わる。このため観測されるスペクトルは線スペクトルではなくピーク中心の両側に広がりを持った形状となる。そこで、このようなピークの広がりに対して形状関数を仮定し、最小二乗法により実測ピークに適合させ、ピーク面積の計算を行うものである。特に、パソコン上で動作するスペクトル解析プログラムが準備、実用化されている。スペクトル形状関数としてピーク部分にはガウス関数を、ベースライン部分には1次式を採用し、非線型最小二乗法により関数適合を行なう関数形を以下に示す。
【0051】
【数1】

【0052】
ここで、F(x)はピーク面積、xはチャンネル、a+bxはベースラインを表す1次式、nは領域に含まれるピークの数、hi、Wi、Piはそれぞれピークiの高さ、半値幅、中心チャンネルである。尚、このガンマ線計数率は、後述の放射能定量処理手段26の所定のエリアに記憶する。
【0053】
〔ステップS10 ガンマ線計数率の平均化処理〕
放射能定量処理手段26を機能させて該放射能定量化手段26の所定のエリア(図示省略)に記憶された、ガンマ線計数率を計算して得られた2つのエネルギー(1001keV、766keV)の計数率の幾何平均を計算する。例えば、検出器支持台に3個のガンマ線検出器6を設置して1周360度を12分轄で測定する場合には、2つのエネルギー(1001keV、766keV)について、12×3=36ずつの計数率nia,nib(i=1〜36、a:1001keV、b:766keV)が得られ、放射能定量処理手段26の所定のエリア(図示省略)に記憶されている。それぞれのエネルギーについて、36ある計数率の積の1/36乗na,nbを計算する。
【0054】
〔ステップS11 プロットポイント計算処理〕
放射能定量処理手段26により、2つのエネルギー(1001keV、766keV)の計数率の幾何平均na,nbを使って、プロット平面の座標(X1,Y1)を計算する。
【0055】
1=1/(ln(k/R)2 ……(数2)
1=na ……(数3)
ここで、R=na/nb 、 k=(I1001keV/I766keV)(ε1001keV766keV)、I1001keV I766keV :1001keV、766keVのガンマ線の放出率、ε1001keV ε766keV :1001keV、766keVのガンマ線の検出器での効率である。
【0056】
〔ステップS12 検量線を使用しウラン量定量処理〕
放射能定量処理手段26により、図7に示した検量線を設定したプロット平面に、計算した座標(X1,Y1)をプロットする。例えば、検量線がウラン1gで設定されているとする。また、プロット平面のX1での検量線のY座標がY0とする。すると廃棄物収納容器3中のウラン量WはW=1g×Y1/Y0と計算できる。
【0057】
ここで、前記検量線について説明する。検量線は、放射線量を計算するために予め定められ、廃棄物収納容器3の密度毎に設定された基準値であり、放射線定量化基準値処理手段27に格納されている。
【0058】
この検量線の設定は、〔非特許文献1〕に記載のシミュレーション手法を利用して設定する。その概略の処理手順は、図8に示すように、ステップS12-0-1〜S12−0−5の手順によって、各廃棄物収納容器の平均密度毎に、検量線を設定する。
具体的には、放射線格納容器3の密度毎に、かつ、含有する放射線量毎に、ガンマ線検出器6のガンマ線検出量ni、niより(数2),(数3)の式によって、X値、Y値を演算し、演算結果を図7の縦軸、横軸に沿ってプロットする。その後、各プロットデータの相関直線を描くことで相関直線を作成する。この作成した相関直線が前記の検量線となるものであり、廃棄物収納容器3の密度毎に、多数の検量線が設定され、前記放射線定量化基準値処理手段27に格納される。
【0059】
一般に、放射能測定では、廃棄物収納容器3に収納された測定対象物の放射線源の位置ならびに放射線源の密度等によって放射線測定値が大きく異なることが屡である。その誤差の発生を小さくするために、放射線源の位置ならびに放射線源の密度等を入力し、補正を行わざるを得ない状況であった。
【0060】
本実施の形態では、その不具合を解消するために、図9に示すように3段階の処理を行うことで放射線量の高精度測定を実現するものである。
【0061】
第1段階として、ステップS12−1において、廃棄物収納容器3内の測定対象物の放射線量を立体的に測定し、測定対象物の大まかな平均廃棄物密度を計測する。前記〔ステップS2 廃棄物収納容器の重量測定処理〕の結果と、前記検出信号取得手段23にて取得した図6のc)のデータを幾何平均した放射線量を演算する。
【0062】
第2段階として、ステップS12−2において、前記大まかな平均廃棄物密度を基に、放射能定量化基準値手段27に、予め定めた平均廃棄物密度に対応する相関係数を選択する。
【0063】
第3段階として、ステップS12−3において、前記第2段階で選択した相関係数を基に、(数4)式、(数6)式から図6の横軸、縦軸の該当値を演算し、高精度の放射線量を推定する。
【0064】
〔ステップS13 重量濃度評価処理〕
放射能定量処理手段26により、廃棄物収納容器3中のウラン量Wから放射能を計算する。この値を廃棄物収納容器3の重量測定を実施して得られた廃棄物重量で除することで重量濃度を計算する。
【実施例】
【0065】
ドラム缶を廃棄物収納容器3として使用する放射性廃棄物処理において、ドラム缶に収納された放射性廃棄物の放射能定量は、次のようにして行うことができる。
【0066】
まず、本発明者らが発表した非特許文献1において、廃棄物収納容器3の外部の対向する2点でガンマ線計数率n1a、n1b、n2a、n2bの比率R1=n1a/n1b、R2=n2a/n2bを測定することにより、廃棄物収納容器3内に3次元的に分布する複数のガンマ線強度(=総ウラン放射能)とガンマ線計数率の関係を一義的に表わすことができる評価式を導出する。ただ、その際のシミュレーション結果から、評価式である1/(ln(k/R1))(ln(k/R2))と(n1a×n2a1/2の間の関係は、廃棄物を収納した容器とガンマ線検出ヘッドの位置関係で変化することを確認し、かつ、密度分布が不均一の場合には、密度が幅を持つことを考慮する必要がある。したがって、密度分布の影響については、廃棄物収納容器3を回転させる等して密度分布を均一化する必要があることが示唆されている。
【0067】
前記「密度分布を均一化する測定」は、図3のb)に図示したように、廃棄物収納容器3の中心位置Xに対して点対象で配置されているガンマ線検出ヘッド61(I=1)とガンマ線検出ヘッド61(I=2)、ガンマ線検出ヘッド62(I=3)とガンマ線検出ヘッド62(I=4)、ガンマ線検出ヘッド63(I=5)とガンマ線検出ヘッド63(I=6)等のガンマ線係数率を測定することを意味する。
【0068】
このような測定は、3つのガンマ線検出ヘッド61、62、63を取り付けた1つの検出ヘッド支持部71を設置して測定する構成では、廃棄物収納容器3の角度を変えて測定することによって実現することができる。
【0069】
本実施例では、これらのよう留意点を含め、装置面を考慮した改良案の検討を行った。
【0070】
本実施例においても、前記の線源位置とガンマ線計数率の関係を表わす評価式を利用するものとし、その式を次に示す。
【0071】
グラフの横軸:
【0072】
【数4】

【0073】
【数5】

【0074】
グラフの縦軸:
【0075】
【数6】

【0076】
ここで、ni、niは、ガンマ線検出器6におけるガンマ線検出ヘッド(i=1〜6)のガンマ線の計数値である。また、上付き文字aは1001keVについて、上付き文字bは766keVについての測定値であり、kは、238Uの崩壊過程で放出される1001keVと766keVのガンマ線エネルギーの放出率比である。
【0077】
本発明者らが発表した非特許文献1では、放射線源の位置、放射線源の位置、被測定物の廃棄物密度等によって、放射線量の測定結果がばらつき、このバラツキが大きな技術課題であったが、更なる研究の結果、平均廃棄物密度の測定、平均廃棄物密度ごとの放射線量の相関係数の選択、その相関係数を利用した放射線量の決定の3段階の処理を行うことで、高精度の放射線量計測が可能であることを実証することができた。
【0078】
図6に、その具体的な計測図を示す。立体的な放射線総量と測定対象物重量とから演算した平均廃棄物密度とから適用する相関係数を選定し、この例では近似1と近似2を選択し、その後に横軸に前記(数4)式の値を設定し、縦軸に前記(数6)式の値をプロットすることによって、該当する測定対象物の放射線量を推定することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…放射能定量測定装置、2…制御装置、3…廃棄物収納容器、4…容器回転台、5…容器搬送台、6…ガンマ線検出器、7…検出器支持台、8…重量測定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物収納容器に収納した放射性廃棄物から放出されるガンマ線を測定して放射能を定量評価する装置において、容器載置台に載置されて回転する廃棄物収納容器の外端が内接するように想定した球状空間の外周に沿って廃棄物収納容器の中心位置に向けて複数のガンマ線検出器を経線方向に配列して検出器支持台に設置し、放射性廃棄物を収納した廃棄物収納容器を容器搬送手段によって前記容器載置台に搬入して載置した状態で廃棄物収納容器の重量を測定すると共に前記容器載置台を回転させてパッシブガンマ線測定を行って前記廃棄物収納容器に収納された放射性廃棄物の放射能を定量評価するように構成したことを特徴とする放射能定量測定装置。
【請求項2】
廃棄物収納容器を載置する容器載置台と、
前記容器載置台に対して前記廃棄物収納容器を搬出入する容器搬送手段と、
前記容器載置台に載置された前記廃棄物収納容器の重量を計測して該廃棄物収納容器内の廃棄物の重量を検出する廃棄物重量検出手段と、
前記容器載置台に載置された廃棄物収納容器の外端が内接するように想定した球状空間の外周に沿って前記廃棄物収納容器の中心位置に向けて複数のガンマ線検出器を経線方向に配列して設置する検出器支持台と、
前記廃棄物収納容器と前記複数のガンマ線検出器を前記球状空間の緯線方向に相対的に移動するように前記容器載置台と検出器支持台を相対的に回転させる台回転手段と、
前記容器載置台と検出器支持台の相対的な所定の回転位置において前記複数のガンマ線検出器から出力する検出信号を取得する検出信号取得手段と、
前記検出信号取得手段で取得した検出信号に基づいて前記廃棄物収納容器に収納された廃棄物の放射能を定量評価する放射能定量手段を備えたことを特徴とする放射能定量測定装置。
【請求項3】
請求項1において、前記ガンマ線検出器は、前記球状空間に対して180度範囲、少なくとも、廃棄物収納容器を網羅できる範囲の検出角度を有するように構成し、緯線方向に等間隔に配列したことを特徴とする放射能定量測定装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記台回転手段は、前記容器載置台又は検出器支持台を経線方向に180度回転させる構成としたことを特徴とする放射能定量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−237618(P2012−237618A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106042(P2011−106042)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 日本アイソトープ協会「RADIOISOTOPES Vol.59, No.12」2010年12月15日発行
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】