説明

放射性廃棄物検査装置

【課題】異常時には1つの正常に動作する動力から複数の駆動軸へ動力を伝達して、放射性廃棄物が搬送できるようにする放射性廃棄物検査装置を提供する。
【解決手段】本発明は、先端にハンドリング部2が配設され異なる動作をする互いに接続された複数の可動要素81,82が設けられた移動機構21を有する放射性廃棄物検査装置において、前記可動要素81,82はその各々に動力部4,5を有しこの可動要素81,82の動力伝達経路を各々2重化し、一方の動力伝達経路は、前記異なる動作を補間する様に異なる動力部および動力伝達経路を切り替え可能に設置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物の検査を行う放射性廃棄物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物の検査装置は、ろ紙をハンドリングしてスミヤを行う表面汚染検査や放射線検出器をハンドリングしての放射線計測、カメラをハンドリングしての外観検査など、多くの駆動軸を持った構成となっている。
【0003】
そして、高レベルの放射性廃棄物などを対象とした検査装置では、放射性廃棄物からの強い放射線のため、作業者がその検査環境(セル)に入ることはできないため、自動運転、遠隔操作によって検査が行われている。ここで、検査中に検査装置の動力部に異常が発生し、検査装置が止まってしまった場合には、放射性廃棄物をセル外へ搬出しなければ、検査装置の保守および修理をする作業者の被爆量が増大し保守および修理をすることができない。
【0004】
これに対し、一般的に検査装置が止まってしまった場合における検査対象の放射性廃棄物の搬送はコンベヤやクレーンによって行われているが、検査装置の一部が放射性廃棄物とクレーンの間、また、放射性廃棄物のコンベヤによる搬送ルートに干渉してしまった場合、放射性廃棄物をセル外へ搬出することができず、半永久的に装置を修理することができないばかりか、放射性廃棄物をセル外へ取り出すことが出来ない。
【0005】
特許文献1においては、セル外からのマニピュレータを用いたり、建屋全体にて遠隔での保守性を考慮したものとなっている。しかし、これらを実施するためには、遠隔操作を行うためのカメラシステムを設置し、また、壁などへの工事施工が発生するなど大掛かりな装置となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-10291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した放射性廃棄物検査装置においては、放射性廃棄物が高い放射線を有している場合において、放射性廃棄物と放射性廃棄物を搬送する装置との間で干渉したまま、検査装置の動作に異常があり装置が停止してしまった場合、放射性廃棄物の搬出及び検査装置の修理等で作業員の被爆量が増大してしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、これらの課題を解消するものであって、異常時には1つの正常に動作する動力から複数の駆動軸へ動力を伝達して、放射性廃棄物が搬送できるようにする放射性廃棄物検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明には、先端にハンドリング部が配設され異なる動作をする互いに接続された複数の可動要素が設けられた移動機構を有する放射性廃棄物検査装置において、前記可動要素はその各々に動力部を有しこの可動要素の動力伝達経路を各々2重化し、一方の動力伝達経路は、前記異なる動作を補間する様に異なる動力部および動力伝達経路を切り替え可能に設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、動力部及び動力伝達経路に異常が発生し、可動要素が停止した場合においても、異常が発生していない動力部から動力を伝達させて可動要素を動作させることができ、放射性廃棄物のセル外搬出を実施することができる放射性廃棄物検査装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る放射性廃棄物検査装置の一実施の形態における駆動部の概略図。
【図2】本発明に係る放射性廃棄物検査装置の一実施の形態における斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る放射性廃棄物検査装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0014】
(実施例1)
図2は、本発明に係る放射性廃棄物検査装置の第1の実施の形態における斜視図である。この図には、汚染拭き取り状況を示すために、拭き取り対象物である円柱状の放射性廃棄物1も併せて示している。
【0015】
本実施の形態の放射性廃棄物検査装置は、放射性廃棄物1の表面をろ紙20で拭き取る装置である。拭き取り後のろ紙20は、たとえばこの放射性廃棄物検査装置から取り外され、付着した放射能量が測定される。このようにして、放射性廃棄物1の汚染が検査される。
【0016】
この放射性廃棄物検査装置は、汚染の検知手段であるろ紙20を移動させるための多関節移動機構21を有している。多関節移動機構21は、放射性廃棄物1を載置する回転テーブル3の横に配置されている。
【0017】
この多関節移動機構21は、互いに連結された複数の可動要素を有している。この可動要素は、相対的に移動可能に形成されている。多関節移動機構21は可動要素として、放射性廃棄物1に向かって水平方向に延びる水平アーム81と、水平アーム81を支持する支柱82とを有している。
【0018】
水平アーム81は水平方向に延びるリニアガイドレール(図示せず)を有している。一方、支柱82は、鉛直方向に延びるリニアガイドレール(図示せず)を有している。 さらに、水平アーム81の一端には、回転機構83を介して先端ハンドリング部2が取り付けられている。先端ハンドリング部2は、その先端にろ紙20を取り付け可能な取り付け部となっている。
【0019】
なお、この先端ハンドリング部2にはろ紙20のほか放射性廃棄物1の外観を検査するためのカメラ、放射性廃棄物1からの放射線を直接測定するための放射線検出器が取り付けられる。
【0020】
この構成によって放射性廃棄物1の上面側、側面側、下面側より放射性廃棄物1にろ紙やカメラや放射線検出器を接近させて検査を行う。また、スミヤ用検査装置においては、ろ紙20の脱着を放射性廃棄物1の設置位置より離れた位置にて行う。このため、ハンドリング部2の向きを大きい角度の範囲で動かす必要があり、検査装置は複数の駆動軸を有したアーム構成として、様々な体勢をとる。また、放射性廃棄物1は回転テーブル3に設置された場合は、検査中、放射性廃棄物1は回転しながら、スパイラル状にろ紙やカメラ、放射線検出器によって検査が行われる。
【0021】
水平アーム81、支柱82および回転機構83は、それぞれ可動要素を移動させるための駆動手段として内部に駆動部4,5(図1参照)を有している。さらに、水平アーム81と支柱82には減速機およびボールねじが取り付けられており、水平アーム81は放射性廃棄物15に向かう方向(伸縮方向)および昇降方向に移動できるようになっている。また、回転機構83には減速機が取り付けられており、先端ハンドリング部2の押し付け方向を水平方向から上下にそれぞれ90度回転できるように組み立てられている。
【0022】
次に、図1を参照して実施例1の多関節移動機構21の構成について説明する。
【0023】
本検査装置の駆動軸は鉛直方向の駆動軸と水平方向の駆動軸から構成されている。なお、通常3〜4軸の駆動軸を有し、方向についても任意に設定されているが、図1では本発明の説明を行うために便宜上2軸(鉛直、水平方向)の構成としている。
【0024】
各駆動軸には駆動軸を回転させるための鉛直方向駆動軸動力部4および水平方向駆動軸動力部5がそれぞれ鉛直方向駆動軸ボールネジ10、水平方向駆動軸ボールネジ11に連結されている。なお、鉛直方向駆動軸動力部4および水平方向駆動軸動力部5には電源断時に作動し、位置を保持するための図示しないブレーキを設けている。
【0025】
また、鉛直方向駆動軸動力部4および水平方向駆動軸動力部5からの動力伝達経路には平歯車4a,4bおよび平歯車5a,5b等が設けられ、動力が2つに分岐される。2つに分岐された動力伝達経路には、それぞれの経路に動力遮断機構として、動力部の近くに、鉛直方向駆動軸クラッチA6、鉛直方向駆動軸クラッチB7、水平方向駆動軸クラッチA8、水平方向駆動軸クラッチB9が設けられている。また、通常使用する駆動経路においては、動力伝達経路における動力部から見て最終端、つまり、実際に動作を行う、ボールネジ10、11のナット部分にも鉛直方向駆動軸クラッチC16、水平方向駆動軸クラッチC17を設けている。
【0026】
通常使用時には、動力部4、5からの動力は鉛直方向駆動軸クラッチA6、水平方向駆動軸クラッチA8の経路から歯車18等を介して、ボールネジ10、11へ連結され、鉛直方向の動作及び水平方向の動作を行わせ水平アーム81のハンドリングを実現する。
【0027】
もう片側の動力伝達経路は、平歯車4a,4bおよび平歯車5a,5bによって伝達されているが、鉛直方向駆動軸クラッチB7、水平方向駆動軸クラッチB9によって動力が遮断され自由な状態となっている。また、これらの通常使用しない、自由な状態となっている経路は、同様に歯車18等を介して、通常使用する駆動軸とは異なる駆動軸へ連結される。
【0028】
本実施例の場合、通常使用状態の場合には鉛直方向駆動軸動力部4からの動力経路において、通常使用の場合に自由となっている経路は、異常時水平方向駆動軸22に配設された水平方向駆動軸ピニオン12、水平方向駆動軸ラック13によって構成される水平方向駆動軸へ連結されている。同様に、水平方向駆動軸動力部5からの動力経路において、通常使用の場合にフリーとなっている経路は、鉛直方向駆動軸ピニオン14、鉛直方向駆動軸ラック15によって構成される鉛直方向駆動軸へ連結されている。
【0029】
また、本実施例は駆動軸数が2軸より構成されているが、駆動軸数が3軸、4軸の場合においても、軸構成的に隣同士の軸であれば同様に動力経路を持ち合うことが可能である。
【0030】
なお、動力部4、5の出力が各駆動軸の搬送能力によって異なる場合、異なる駆動軸へ連結される動力伝達経路は平歯車4a,4b、5a,5bを使用した減速器等を用いて出力の調整を行っても良い。
【0031】
上述のように構成された本実施の形態において、検査装置動力部4に異常が発生してアームが停止し、この停止したアームが干渉することにより放射性廃棄物1がセル外へ搬出できない場合において、異常が発生していない動力部5の、通常使用している動力伝達経路を水平方向駆動軸クラッチA8により遮断し、また、フリーであったもう一法の動力伝達経路を水平方向駆動軸クラッチB9により伝達機構を連結することにより、異常が発生した駆動軸を動作させることができる。
【0032】
さらに、動力部の異常だけではなく、メカニカルな異常などの動力伝達経路途中における異常が発生した場合、例えば水平方向駆動軸ボールネジ11においてメカニカルな異常が発生した場合においては、作動部に配置してある水平方向駆動軸クラッチC17を作動させ、動力だけでなく、駆動伝達経路も分離することが可能となる。
【0033】
本実施の形態によれば、動力部及び駆動部動力伝達経路に異常が発生し、アームが停止した場合においても、異常が発生していない動力部から駆動力を伝達させてアームの駆動軸を動作させることができ、放射性廃棄物1のセル外搬出を実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・放射性廃棄物、2・・・先端ハンドリング部、3・・・回転テーブル、4・・・鉛直方向駆動軸動力部、4a,4b・・・平歯車、5・・・水平方向駆動軸動力部、5a,5b・・・平歯車、6・・・鉛直方向駆動軸クラッチA、7・・・鉛直方向駆動軸クラッチB、8・・・水平方向駆動軸クラッチA、9・・・水平方向駆動軸クラッチB、10・・・鉛直方向駆動軸ボールネジ、11・・・水平方向駆動軸ボールネジ、12・・・水平方向駆動軸ピニオン、13・・・水平方向駆動軸ラック、14・・・鉛直方向駆動軸ピニオン、15・・・鉛直向駆動軸ラック、16・・・鉛直方向駆動軸クラッチC、17・・・水平方向駆動軸クラッチC、18・・・歯車、20・・・ろ紙、21・・・多関節移動機構、22・・・異常時水平方向駆動軸、81・・・水平アーム(可動要素)、82・・・支柱(可動要素)、83・・・回転機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にハンドリング部が配設され異なる動作をする互いに接続された複数の可動要素が設けられた移動機構を有する放射性廃棄物検査装置において、前記可動要素はその各々に動力部を有しこの可動要素の動力伝達経路を各々2重化し、一方の動力伝達経路は、前記異なる動作を補間する様に異なる動力部および動力伝達経路を切り替え可能に設置したことを特徴とする放射性廃棄物検査装置。
【請求項2】
各々2重化した前記可動要素の動力伝達経路の途中に動力遮断機構を設け、2重化された一方の可動要素へ動力部と動作経路を切り替え可能としたことを特徴とする請求項1記載の放射性廃棄物検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−247828(P2011−247828A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123520(P2010−123520)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】