説明

放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置

【課題】 放射性廃棄物の焼却灰を飛散させることなく分析用サンプルを採取することができる放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置を提供する。
【解決手段】 焼却灰回収通路1の側面4の外部に、ホッパー状の底部5を有する密閉室6を配設し、その底部5には、分析用サンプルを収納するためのサンプル収納容器7を設ける。密閉室6には、焼却灰回収通路1に進出して落下途中の焼却灰を採取し、次いで、密閉室6に退却して採取した焼却灰をサンプル収納容器7に収納するためのサンプリング用アーム9を配設した。サンプリング用アーム9は、水平シャフト11の略中間部にサンプリング容器12を備えたものであって、サンプリング容器12を上向きとして焼却灰を採取し、下向きとして焼却灰をサンプル収納容器7に落下させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物の焼却灰から分析用サンプルを採取するための放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などから発生した放射性を帯びた可燃性廃棄物は、例えば特許文献1に示すように、投入機によって焼却炉の焼却用空間に投入される。この可燃性廃棄物には空気や熱風が供給されて燃焼され、廃棄物は焼却灰となって炉底に溜まる。炉底に溜まった灰は灰溜まり室にて冷却された後に、密閉空間内で焼却灰貯蔵容器へ充填され、その後長期保管される。
【0003】
以上のように、従来は、放射性物質を含有する焼却灰を密閉空間内で直接焼却灰貯蔵容器に充填していたので、焼却灰構成物質を分析するためのサンプルを採取することが極めて困難であった。従って、分析用サンプルを採取する場合には、密閉された貯蔵容器を開封しなければならず、このため低レベルの放射性物質を含んだ焼却灰が飛散するというおそれがあった。
【特許文献1】特開平5−71719号公報 (図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した従来の問題点を解決して、放射性廃棄物の焼却灰を飛散させることなく分析用サンプルを採取することができる放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置は、
放射性廃棄物焼却灰が落下する焼却灰回収通路の外部側面に配設された密閉室と、
前記密閉室の底部に勘合状態で保持されたサンプル収納容器と、
前記密閉室の側面に配設されたサンプリング用アームとからなる放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置であって、
前記サンプリング用アームは、焼却灰回収通路に進出して放射性廃棄物焼却灰を採取した後、焼却灰回収通路から撤退して採取した放射性廃棄物焼却灰をサンプル収納容器に収納することを特徴とするものである。
【0006】
前記サンプリング用アームは、略中間部に前記サンプリング容器を備えた水平シャフトであって、
前記水平シャフトは一端が前記密閉室の外部に貫通し、その外部先端には水平シャフトを軸中心に回転させてサンプリング容器を上下反転させるためのハンドルを有し、
水平シャフトの軸線上のサンプリング容器を所定間隔をおいて挟む位置には、前記焼却灰回収通路の側壁に当接して前記水平シャフトの進出、後退を規制しサンプリング容器の位置決めを行うための、一対のフランジを有しているものとすることができ、
さらに、前記放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置を、前記焼却灰回収通路を覆うグローブボックス内に配設することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置は、焼却灰回収通路の外部側面に密閉室を設けて、この密閉室に進退可能なサンプリング用アームを配設したので、このアームを焼却灰回収通路に進出させて落下する焼却灰を採取し、次いでこのアームを密閉室に退却させて上下反転させることによって分析用サンプルを採取することができる。したがって、サンプリングに際して焼却灰を飛散させるおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、放射性廃棄物の焼却炉から排出された焼却灰の回収部分を示す図であって、1は上方の焼却炉に連通し放射性廃棄物の焼却灰が落下する焼却灰回収通路、2は焼却灰回収通路1の下部に所定量溜め込んだ灰を下方に供給するためのダンパーボックス、3はダンパーボックス2から供給された焼却灰を収納するための焼却灰貯蔵容器である。
【0009】
図1において、焼却灰回収通路1の側面4の外部には、底部5がホッパー状に形成された密閉室6が配設されており、その底部5には、焼却灰分析用のサンプルを収納するためのサンプル収納容器7が勘合状態で保持されている。このサンプル収納容器7は、焼却灰を飛散させることなくバッグインバッグアウト方式でサンプル収納容器7を交換するために、ビニール製などのバッグ8内に収められている。
【0010】
そして、密閉室6には、焼却灰回収通路1に進出して落下途中の焼却灰を受け止めるためのサンプリング用アーム9が配設されている。サンプリング用アーム9の詳細を図2〜5に示す。
サンプリング用アーム9は、水平シャフト11の途中の略中間部にサンプリング容器12を備えており、このサンプリング容器12は、側面4に設けられた挿通孔10を通って、密閉室6と焼却灰回収通路1との間を進退動することができる。そして、水平シャフト11の軸線上のサンプリング容器12を挟む位置には、焼却灰回収通路1の側面4に当接してサンプリング容器12の位置決めをするための一対のフランジ13、14が、所定間隔をおいて設けられている。
【0011】
サンプリング容器12が備えられた側と反対側の水平シャフト11の一端は、密閉室6の外部に貫通しており、その先端には、水平シャフト11を回転ならびに進退動させるためのハンドル15がハンドル取付部材33を介して装着されている。ハンドル15は上方に回動されたときにサンプリング容器12が上向きになるように角度調整してある。
【0012】
そして、密閉室6から水平シャフト11が貫通する密閉室6の側壁16には、焼却灰の漏出を防止するシール構造19が設けられている。当該シール構造19においては、図5に示すように密閉室6の側壁16に取付基板20が溶接などにより接合されている。そして、シャフトホルダー25に接合された鍔部40と取付基板20とがガスケット24を介してボルト26により締結されている。
【0013】
取付基板20とシャフトホルダー25との内部には、水平シャフト11に付着した焼却灰を払い落とすためのブラシ17と、ブッシュ31とが配設され、シャフトホルダー25の端部にはオイルシール32が施されている。さらに、シャフトホルダー25とハンドル取付部材33との間には、水平シャフト11を覆って蛇腹18が設けられており、焼却灰の漏出を防止するようになっている。
【0014】
ブラシ17は、ボルト28によって締結されたブラシ押え27によって固定されている。そして、ブラシ押え27には、水平シャフト11が後退した時にフランジ13が当接するストッパープレート29がビス30により取付けられている。
【0015】
なお、ストッパープレート29とフランジ13との間には、図6、7に示すようなロック機構34を設けるのが望ましい。当該ロック機構34は水平シャフト11の中心に対向して2ヶ所設けられており、ストッパープレート29の平面に設けられた突起35と、ストッパープレート29の外縁にΓ状に突設されたオーバーハング部36と、フランジ13の外周から放射状に突設された突出片37とからなる。
【0016】
すなわち、サンプル採取した後水平シャフト11が後退してフランジ13がストッパープレート29に当接した時に、ハンドル15を上方から下方に回動すると、突出片37が突起35に衝突してその回動が停止されるとともに、突出片37がオーバーハング部36にもぐり込む。従って、オーバーハング部36により突出片37の横方向への移動が制止されているので、ハンドル15を回動しない限り水平シャフト11は、焼却灰回収通路1の方向に移動することはできない。ハンドル15は水平シャフト11の垂直下方に位置するので、重力により位置決めされてサンプリング用アーム9を確実にロックすることができる。
【0017】
以上のように構成されたサンプリング装置において、焼却灰をサンプリングするに際しては、図2に示すように、ハンドル15を操作して水平シャフト11の回転によりサンプリング容器12の開口部を上向きとして焼却灰回収通路1内に差し込む。このとき、フランジ13が焼却灰回収通路1の側壁4に当接するので、サンプリング容器12を所定の位置にセットすることができる。焼却灰を採取したらサンプリング容器12を密閉室6内に退却させ、フランジ13がストッパープレート29に当接しフランジ14が側面4に当接して停止した後に、図3に示すように、ハンドル15の操作によりサンプリング容器12を反転させる。こうすることによって、ホッパー状の底部5から焼却灰をサンプル収納容器7に収納するとともに,ロック機構34によりサンプリングアーム9をロックすることができる。その後、バッグインバッグアウト方式でサンプル収納容器7を交換することによって、焼却灰を飛散させることなく分析用サンプルを採取することができる。
【0018】
上記したサンプリング装置は、焼却灰がアルファ線を放射するものでない場合に使用することができる。しかし、焼却灰がアルファ線を放射するおそれがある場合には、設備全体がグローブボックスの内部に入っているので、サンプリング装置は以下のような実施形態を取ることができる。
【0019】
グローブボックス21内に配設されたサンプリング装置を図8、9に示す。図において、焼却灰回収通路1は下方の水平通路41に連通しており、焼却灰は、水平通路41内に設けられた焼却灰コンベア(図示していない)によって水平移動されて下方の焼却灰貯蔵容器3に収納される。また、グローブボックス21には、幾つかのグローブ22が設けられている。サンプリング装置は、底部5にサンプル収納容器7が設けられた密閉室6と、密閉室6を貫通して設けられたサンプリング用アーム9とからなる点において上記したものと大きく変わるところはないが、グローブ22による操作を容易に行うために、ハンドル15に直交して2本の長い補助ハンドル23が設けられている。
【0020】
すなわち、グローブボックス21のグローブ22に手を差し込み、補助ハンドル23を介してハンドル15を操作してサンプリング容器12の開口部を上向きとして焼却灰回収通路1内に差し込みサンプリングを行う。サンプリングを終えたらサンプリング容器12を密閉室6内に退却させてこれを上下反転させることにより焼却灰をサンプル収納容器7に収納することができる。その後、サンプル収納容器7を交換することによって、焼却灰をグローブボックス21外部に飛散させることなくサンプリングすることができる。
【0021】
以上説明したように、本発明の放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置は、焼却灰回収通路の外部側面に配設した密閉室にサンプリング用アームを配設したので、このサンプリング用アームを操作することによって、焼却灰回収通路の途中で焼却灰をサンプリングすることができる。
従って、従来のような焼却灰が封じ込まれた焼却灰貯蔵容器を開封してサンプリングするという作業を必要としないので、焼却灰が飛散するおそれがない、作業が簡単であるという大きな利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】焼却灰の回収部分の正面図である。
【図2】サンプリング用アームが焼却灰回収通路に進出した状態であるサンプリング装置の正面図である。
【図3】サンプリング用アームが密閉室に退却した状態であるサンプリング装置の正面図である。
【図4】(a)サンプリング容器の側面図、(b)サンプリング容器部分の正面の拡大図である。
【図5】シール構造の拡大図である。
【図6】ロック機構の正面図である。
【図7】ロック機構の側面図である。
【図8】グローブボックス内に配設されたサンプリング装置の正面図である。
【図9】図8に示すサンプリング装置の拡大図である。
【符号の説明】
【0023】
1 焼却灰回収通路、2 ダンパーボックス、3 焼却灰貯蔵容器、4 焼却灰回収通路の側面、5 底部、6 密閉室、7 サンプル収納容器、8 バッグ、9 サンプリング用アーム、11 水平シャフト、12 サンプリング容器、13 フランジ、14 フランジ、15 ハンドル、16 密閉室の側壁、17 ブラシ、18 蛇腹、19 シール構造、20 取付基板、21 グローブボックス、22 グローブ、24 ガスケット、25 シャフトホルダー、26 ボルト、27 ブラし押え、28 ボルト、29 ストッパープレート、30 ビス、31 ブッシュ、32 オイルシール、33 ハンドル取付部材、34 ロック機構、35 突起、36 オーバーハング部、37 突出片、40 鍔部、41 水平通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物焼却灰が落下する焼却灰回収通路の外部側面に配設された密閉室と、
前記密閉室の底部に勘合状態で保持されたサンプル収納容器と、
前記密閉室の側面に配設されたサンプリング用アームとからなる放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置であって、
前記サンプリング用アームは、焼却灰回収通路に進出して放射性廃棄物焼却灰を採取した後、焼却灰回収通路から撤退して採取した放射性廃棄物焼却灰をサンプル収納容器に収納することを特徴とする放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置。
【請求項2】
前記サンプリング用アームは、略中間部に前記サンプリング容器を備えた水平シャフトであって、
前記水平シャフトは一端が前記密閉室の外部に貫通し、その外部先端には水平シャフトを軸中心に回転させてサンプリング容器を上下反転させるためのハンドルを有し、
水平シャフトの軸線上のサンプリング容器を所定間隔をおいて挟む位置には、前記焼却灰回収通路の側壁に当接して前記水平シャフトの進出、後退を規制しサンプリング容器の位置決めを行うための、一対のフランジを有していることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置。
【請求項3】
前記放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置は、前記焼却灰回収通路を覆うグローブボックス内に配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性廃棄物焼却灰のサンプリング装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−78580(P2007−78580A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268695(P2005−268695)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000224754)核燃料サイクル開発機構 (51)
【Fターム(参考)】