説明

放射性廃棄物貯蔵システム

【課題】
放射性廃棄物貯蔵タンク外表面の線量率の測定は、貯蔵タンクの各部位に線量率計を設置して測定しており、計測地点の数が限られるなどの課題があった。
【解決手段】
放射性廃棄物を貯蔵する放射性廃棄物貯蔵タンク1と、放射性廃棄物貯蔵タンク1の周囲に配置されたガイドチューブ2と、放射線を測定するファイバー3と、ファイバー3をガイドチューブ内の所定位置まで挿入し、保持し、引き出すファイバー駆動装置4と、ファイバー3の各部位が受けた線量を測定する線量読取装置5と、ファイバー駆動装置4の位置情報と線量測定結果に基づき、タンクの線量率分布を表示する線量率分布表示装置6を備えることによって上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所などで発生した放射性廃棄物を貯蔵する放射性廃棄物貯蔵システムに係わり、特に線量の高い放射性廃棄物の貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所では、様々な放射性廃棄物を貯蔵するタンクを備えている。例えば、原子炉冷却材浄化系では炉水を浄化するために使用した使用済イオン交換樹脂や、フィルタースラッジなどの放射性廃棄物が発生し、それらは専用の放射性廃棄物貯蔵タンクに保管されている。これらの貯蔵タンクは、周囲をコンクリート壁等により隔離された室内に設置されており、厳重に遮蔽された環境で使用されている。
【0003】
貯蔵タンクを長期間使用する間に、貯蔵タンクの内壁面には放射性物質が付着堆積し、タンク外表面の放射線の線量率が上昇する。このため、タンク外表面の線量率を下げるため、高圧水を噴射してタンク内を洗浄処理する方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1では、タンク内壁面の全面を洗浄するか、タンク内部をカメラにより観察しながら洗浄するなどの手段が採用されている。このため、実際に放射性物質が除去されたかどうかは、タンク外表面の線量率を各部位で測定して確認する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2854157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、放射性廃棄物貯蔵タンク外表面の線量率の測定は、貯蔵タンクの各部位に線量率計を設置して測定していたため、作業者の受ける放射線量が増加する、計測地点の数が限られるなどの点で課題があった。
【0006】
例えば、計測地点の数が限られる場合には、洗浄処理をしても、実際には放射性物質が残留する場所などが発生してしまい、当初の、貯蔵タンク外表面の線量率低減の効果が得られない可能性がある。
【0007】
また、多数の地点を測定する場合には、各部位の測定データは個別に得られるため、貯蔵タンク全体の線量分布はこれらの個別の測定データを整理しなければ把握できないとの課題があった。
【0008】
本発明の目的は、放射性廃棄物貯蔵タンクの外表面の線量率分布を遠隔で精度良く測定でき、速やかに線量分布を把握可能な放射性廃棄物貯蔵システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決する本発明の特徴は、放射性廃棄物を貯蔵するタンクと、タンク周囲に配置されたガイドチューブと、放射線を測定するファイバーと、ファイバーをガイドチューブ内の所定位置まで挿入し、保持し、引き出すファイバー駆動装置と、ファイバーの各部位が受けた放射線量を測定する線量読取装置と、線量測定結果に基づきタンク外表面の線量分布を表示する装置を備える放射性廃棄物貯蔵システムにある。
【0010】
また、線量読取装置の後段に加熱装置を備え、ファイバーの各部位が受けた放射線の影響を初期化し、ファイバーを再利用することを特徴とする放射性廃棄物貯蔵システムを特徴とする。
【0011】
上記の放射線を測定するファイバーとしては、放射線により着色が見られる着色ガラス線量計、紫外線を照射すると受けた線量に応じた蛍光を発する蛍光ガラス線量計、熱を与えると受けた線量に応じて発光する熱ルミネッセンス線量計などがある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射性廃棄物貯蔵タンクの外表面の線量率分布を遠隔で精度良く測定でき、速やかに線量分布の把握が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な一実施例である放射性廃棄物貯蔵システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の他の実施例である放射性廃棄物貯蔵システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
本発明の好適な一実施例である放射性廃棄物貯蔵システムを、図1を用いて説明する。図1は放射性廃棄物貯蔵システムの概略図である。
【0015】
図1に示すように、放射性廃棄物貯蔵タンク1の周囲には、ガイドチューブ2が円周上に配置されている。このガイドチューブ2内には放射線を測定するためのファイバー3が挿入されている。
【0016】
ファイバー3は、ファイバー駆動装置4により、ガイドチューブ2内の所定位置に挿入される。つまり、ファイバー3は、放射性廃棄物貯蔵タンク1の外壁に沿って配置されたガイドチューブ2内を通過し、所定の位置まで挿入される。ファイバー3が所定位置に設置されると、所定時間その位置に保持され、放射性廃棄物貯蔵タンク1の外表面の放射線を受ける。その後、ファイバー3は、ファイバー駆動装置4により引き抜かれる。ファイバー3が線量読取装置5を通過する際に、線量読取装置5はファイバー3の各部位が受けた放射線量の情報を読み取る。つまり、ファイバー3が受けた放射線の線量の情報が線量読取装置5によって測定される。
【0017】
測定結果は、ガイドチューブ2の設置位置、及びファイバー駆動装置4の位置情報と対応付けられ、線量率分布表示装置6に表示される。
【0018】
上記の放射線を測定するファイバー3としては、放射線により着色が見られる着色ガラス線量計、紫外線を照射すると受けた線量に応じた蛍光を発する蛍光ガラス線量計、熱を与えると受けた線量に応じて発光する熱ルミネッセンス線量計などを用いることができる。
【0019】
これにより、放射性廃棄物貯蔵タンク1の外表面の線量率測定に関し、位置精度,測定精度を向上することができる。
【0020】
本実施例では、放射性廃棄物貯蔵タンク1の周囲に設置したガイドチューブ2内に、放射線に反応するファイバー3を配置して放射線を測定するため、ファイバー3が設置された空間について連続した線量測定結果が一度に得られるため空間分解能を向上させることができる。
【0021】
また、本実施例によれば、遠隔計測によって放射性廃棄物貯蔵タンク1の放射線の線量を測定できるため、作業者は放射線を受けず、作業者による遠隔操作や遮蔽板の設置が不要となる。
【0022】
さらに、本実施例では測定したデータが放射性廃棄物貯蔵タンク1内の位置データと関連付けられて、線量率分布表示装置6に表示されるため、線量分布のデータの把握が極めて容易になり、誤認などを避ける効果が得られる。
【0023】
また、本実施例では放射線の線量率に応じて、ファイバー3に放射線を吸収させる時間を調整することができるため、幅広い線量率の範囲で精度の高い測定結果が得られる。さらに、ファイバー3により計測された線量データは、ファイバー駆動装置4の位置情報と関連付けられて表示されるため、測定位置を細かくし測定点数が膨大になった場合にも速やかにタンク内の線量分布を把握することができる。
【0024】
本実施例では、放射性廃棄物貯蔵タンク1に対して適用したが、放射性廃棄物貯蔵タンクと接続する配管やバルブに対しても同様の効果が得られる。
【0025】
(実施形態2)
本発明の他の実施例である放射性廃棄物貯蔵システムを、図2を用いて説明する。図2は放射性廃棄物貯蔵システムの概略図である。
【0026】
図2に示すように、放射性廃棄物貯蔵タンク1の周囲には、ガイドチューブ2が円周上に配置されており、ガイドチューブ2内には放射線を測定するためのファイバー3が挿入されている。
【0027】
ファイバー3は、ファイバー駆動装置4により、所定位置に挿入された後、所定位置で所定時間保持され、放射性廃棄物貯蔵タンク1の外表面の放射線を受ける。その後、ファイバー3は、ファイバー駆動装置4により引き抜かれる。ファイバー3が線量読取装置5を通過する際に、ファイバー3の各部位が受けた放射線量が測定される。
【0028】
その後、ファイバー3は線量読取装置5の下流側に配置された加熱装置7によって100℃以上に加温される。これにより、放射線により生成したファイバー3の発光部位を消去することができ、再度、ファイバー駆動装置4に巻き取られ、次回の放射線の線量測定に用いることができる。
【0029】
線量測定結果は、ガイドチューブ2の設置位置、及びファイバー駆動装置4の位置情報と対応付けられ、線量率分布表示装置6に表示される。
【0030】
上記の放射線を測定するファイバーとしては、紫外線を照射すると受けた線量に応じた蛍光を発する蛍光ガラス線量計、熱を与えると受けた線量に応じて発光する熱ルミネッセンス線量計などを用いることができる。
【0031】
これにより、放射性廃棄物貯蔵タンク1の外表面の線量率測定に関し、位置精度,測定精度を向上することができる。
【0032】
本実施例によれば、放射性廃棄物貯蔵タンク1の周囲に配置したガイドチューブ2内に、放射線に反応するファイバー3を設置して放射線を計測するため、ファイバー3が配置された空間について連続した線量測定結果が一度に得られるため空間分解能を向上させることができる。
【0033】
また、本実施例によれば、遠隔計測によって放射性廃棄物貯蔵タンク1の放射線の線量を測定できるため、作業者は放射線を受けず、作業者による遠隔操作や遮蔽板の設置が不要となる。
【0034】
また、本実施例では、線量読取装置5によりファイバー3の放射線の線量が測定された後の位置(線量読取装置5の下流側)であって、ファイバー3が通過する位置に加熱装置7を配置しているため、ファイバー3を初期化でき、一度測定に利用したファイバー3を再利用できるため、コストの低減や廃棄物発生量の低減などの効果が得られる。
【0035】
さらに、測定したデータが放射性廃棄物貯蔵タンク1内の位置データと関連付けられて、線量率分布表示装置6に表示されるため、データの把握が極めて容易になり、誤認などを避ける効果が得られる。
【0036】
本実施例では線量率に応じて、ファイバー3に放射線を吸収させる時間を調整することができるため、幅広い線量率の範囲で精度の高い測定結果が得られる。さらに、ファイバー3により計測された線量データは、ファイバー駆動装置4の位置情報と関連付けられて表示されるため、測定位置を細かくし測定点数が膨大になった場合にも速やかにタンク内の線量分布を把握することができる。
【0037】
本実施例では、放射性廃棄物貯蔵タンクに対して適用したが、放射性廃棄物貯蔵タンクと接続する配管やバルブに対しても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 放射性廃棄物貯蔵タンク
2 ガイドチューブ
3 ファイバー
4 ファイバー駆動装置
5 線量読取装置
6 線量率分布表示装置
7 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物を貯蔵するタンクと、
前記タンクの周囲に配置されたガイドチューブと、
放射線を測定するファイバーと、
前記ファイバーを前記ガイドチューブ内の所定位置まで挿入し、保持し、引き出すファイバー駆動装置と、
前記ファイバーの各部位が受けた前記放射線の線量を測定する線量読取装置と、
前記ファイバー駆動装置の位置情報と線量測定結果に基づき、前記タンクの線量率分布を表示する装置を備えることを特徴とする放射性廃棄物貯蔵システム。
【請求項2】
請求項1記載の放射性廃棄物貯蔵システムにおいて、
前記線量読取装置の後段に加熱装置を備え、前記ファイバーの各部位が受けた放射線の影響を初期化することを特徴とする放射性廃棄物貯蔵システム。
【請求項3】
請求項1記載の放射性廃棄物貯蔵システムにおいて、
前記ファイバーは、放射線を受けると着色する着色ガラス線量計、紫外線を受けるとその線量に応じた蛍光を発する蛍光ガラス線量計、又は熱を与えるとそれに応じて発光する熱ルミネッセンス線量計のいずれか一つであることを特徴とする放射性廃棄物貯蔵システム。

【図1】
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【図2】
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