説明

放射性材料のための可搬型製造設備

【課題】放射性医薬品を生成して包装する。
【解決手段】建造物がサイクロトロン(112)を収容すると共に、トラック又は列車で目的設置場所まで可搬性であるように設計され、製造設備(100)が、運搬中にサイクロトロンが無いことを除けば放射性医薬品を生成して包装するように実質的に装備されている製造設備を提供する。方法は、製造設備がサイクロトロンを受けるように設計する段階と、製造設備にサイクロトロンから第1の放射性材料を受け取り第2の放射性材料を生成する合成ユニット(132)を装備する段階と、製造設備を設置場所に運搬する段階と、サイクロトロンを設置場所に運搬する段階と、製造設備内にサイクロトロンを密閉する段階とを含む。製造設備は、あまり労力を用いること無く、別の設置場所に再配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、製造設備に関し、より詳細には、放射性医薬品などの放射性材料のための可搬型製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用イメージングは、患者の診断及び治療に広く用いられている。磁気共鳴イメージング(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)、及び単光子放出型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などの多くの診断装置が知られている。これらの診断装置は、相補的な診断情報を提供する。例えば、PET及びSPECT走査では、検査される臓器又は部位の機能的態様を示し且つ代謝測定を可能にするが、身体構造の描写は比較的不十分である。一方、CT及びMR画像では、身体に関する優れた構造情報が得られるが、機能的情報を殆ど得られない。
【0003】
PET及びSPECTは、患者に注射した放射性材料の放射を測定することから、「核医学」に分類される。放射性材料(例えば放射性医薬品)は、注射された後、血液又は関心のある特定の臓器に吸収される。次に、PET検出器又はSPECT検出器の中に患者を移動させて放射性医薬品の放射を測定し、検出された放射の特徴から画像を生成する。
【0004】
PET又はSPECT走査を行う重要な段階は、放射性医薬品を得る段階である。放射性医薬品の実施例には、FDG(2−[18F]−フルオロ−2−デオキシグルコース)、13Nアンモニア、11C炭素、15O気体、及び15O水が含まれる。
【0005】
これらの放射性医薬品の半減期は、2分〜2時間の範囲である。従って、患者への注射及び撮像は、放射性医薬品の生成後極めて短期間の間に行う必要がある。放射性医薬品を製造するための設備が無い病院では、これらを近くの製造設備から地上輸送又は空中輸送で配送するよう発注する必要があり、これには莫大な費用がかかることがある。
【0006】
PETなどの核医学イメージングを用いる診療が増えつつあることを受け、多くの病院が、独自の放射性医薬品製造設備を建造した。しかしながら、この施設には、大きなサイクロトロンを支持するのに必要な構造、空気を病院スペースに戻すことができない施設のための空気循環システム、及び放射性医薬品の放射性特性から生じる遮蔽の必要性などの特定の必要条件があるため、通常この選択肢にも莫大な費用がかかる。放射性医薬品生成物を収容するための別個の建造物を建設した病院もある。しかしながら、この選択肢は、既存の病院のスペースを改装するよりは一般に容易に達成されるが、放射性医薬品製造設備に課せられる全ての構造的、機能的、法的、及び規制的要求事項を満足するためには、依然として大規模な計画が必要である。
【特許文献1】米国特許第5037602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、放射性医薬品などの放射性材料を生成するための費用効率のよい方法であって、病院及び医療用イメージング診療所などの放射性材料を必要とする組織が容易に実施することができる方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1つの実施形態によれば、放射性材料を生成するための製造設備を提供する方法に関し、この方法は、サイクロトロンを受けるための製造設備を設計する段階と、サイクロトロンから第1の放射性材料を受け取り、第2の放射性材料を生成するように設計された合成ユニットを製造設備に備え付ける段階と、製造設備を設置場所に運搬する段階と、サイクロトロンを設置場所に運搬する段階と、製造設備内にサイクロトロンを密閉する段階とを含む。
【0009】
本発明は、別の実施形態によれば、製造設備の作業スペースを密封する建造物を含む製造設備に関し、建造物はサイクロトロンを収容し目的地までトラック又は列車で運搬するように設計され、製造設備は、運搬中にサイクロトロンが無いことを除けば実質的に放射性医薬品を生成して包装するように装備される。製造設備は、あまり労力を使うこと無く別の設置場所に再配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、放射性材料を生成するのに使用される1つ又はそれ以上の構成要素を含む製造設備に関し、該放射性材料は、例えば、医療用イメージングで用いることができる。図1に示すように、製造設備100の1つの実施形態は、サイクロトロン112を収容するサイクロトロンルーム110、放射性同位体を放射性医薬品に変換するための合成ユニット132を収容するラボラトリルーム130、放射性製品を1つ又はそれ以上の容器に計量分配するためのクリーンルーム150、及び、例えば病院内の医療用イメージングユニットまで安全に運搬するために放射性製品を包装するための包装ルーム170を含む。
【0011】
製造設備100は、可搬性であるように設計されている。例えば、1つの実施形態によれば、製造設備100の外側寸法は、ほぼ14フィート×60フィート(4.27メートル×18.29メートル)であり、これは、製造設備100を目的地までトラック又は列車で輸送することができる寸法である。製造設備には、その質量が大きいことにより典型的には別個に輸送されるサイクロトロン112を除き、放射性同位体又は放射性医薬品を生成、処理、及び包装するための設備を輸送する前に備え付けることができる。製造設備110は、少数の段階を実行することにより、所望の設置場所に設置することができる。1つの実施形態によれば、製造設備100を支持するためのコンクリートスラブを所望の設置場所に打設し、製造設備をこの設置場所に輸送してスラブ上に載置し、サイクロン112をこの設置場所に輸送し、製造設備100内に配置してこの製造設備内に密閉し、電源を含む電気を製造設備100に接続する。
【0012】
また、製造設備100には、遠隔ユーザと製造設備100内の装置との間のネットワークを通して通信することができる通信ポートを備えることができる。例えば、遠隔ユーザは、製造設備100内の1つ又はそれ以上のコンピュータ104及び/又は製造設備100内の装置上に位置付けられた1つ又はそれ以上のセンサと通信することにより、装置の遠隔監視及び診断を行うことができる。
【0013】
サイクロトロン112は、当技術分野では良く知られているように、荷電粒子(例えば水素イオン又は重水素イオン)を加速する大型電磁石の極間に配置された円筒形チャンバを含む。チャンバから空気をポンプで引いて真空を生成する。イオン供給源により水素又は重水素イオンをチャンバの中心に供給する。チャンバの内側には、高周波(RF)の高電圧電源に接続された2つの中空の電極がある。
【0014】
サイクロトロン112が動作中のときには、電極の電荷は、高周波電圧源により高速反転される。交番する高電圧と電磁石の磁場の作用の組み合わせにより、内部の水素又は重水素は、大きな運動エネルギーを得るにつれてスパイラルコースに従うようになる。
【0015】
これらの水素又は重水素イオンは、チャンバの外側縁に到達すると陽子又は重陽子に変わり、次いで、典型的には液体又は気体の形態である1つ又はそれ以上のターゲットに向かって偏向する。ターゲットに高エネルギー粒子のビームが当たると、ターゲット液体又は気体が半減期の短い放射性物質に変わる。PETの分野では、放射性物質は、陽電子を放出し、一般にPETトレーサと呼ばれる。PETトレーサの一般的な1つの実施例は、18Fである。他の実施例としては、13N、11C、及び15Oが挙げられる。13Nアンモニアは、心臓の血流の研究に用いることができる。15O水は、心臓及び脳の血流の研究に用いることができる。11C炭素は、多くの種類の生物学的化合物にラベルすることができ、身体又は個々の代謝経路を通る化合物を追跡するトレーサとして用いることができる。
【0016】
サイクロトロン112は垂直方向に配向することができ、即ち、粒子のスパイラル経路の平面が垂直となる。垂直方向へ配向すると、製造設備100のフロア上のサイクロトロンの断面積が縮小し、これにより製造設備の大きさ(例えば幅)を削減することができ、従って、可搬性が容易になる。本発明の種々の実施形態に関して用いるのに好適な垂直配向サイクロトロンの実施例は、GE Medical Systemsから入手可能なMINItraceサイクロトロンである。GE MINItraceサイクロトロンは、比較的幅が狭い、例えば14フィート幅の建造物に設置することができる。他の種類のサイクロトロン、例えば水平配向サイクロトロンを用いることもできる。
【0017】
サイクロトロンは、γ線及び中性子などの放射線への暴露からユーザを保護するための鉛又は他の遮蔽物を含むサイクロトロン自体の自己遮蔽ハウジング内に収容することができる。例えば、GE MINItraceは、典型的には、鉛、コンクリート、及びホウ素化プラスチック遮蔽物を含む建造物内に収容される。製造設備100は、サイクロトロンの自己遮蔽物を含むこうしたサイクロトロンを収容するように設計することができる。また、製造設備100も、該設備自体の放射性遮蔽物を含むことができる。例えば、図1に示すように、サイクロトロンルーム110の壁には、運搬する前に、遮蔽物114(例えば2インチの鉛遮蔽物)を備え付けることができ、これによりユーザを放射線から更に保護する。或いは、サイクロトロンに設ける遮蔽物を十分にし、製造設備100の壁を遮蔽しないようにすることもできる。
【0018】
別の実施形態によれば、製造設備100は、サイクロトロンルーム110の壁内に設置場所において遮蔽部材を受けるためのスペースを空けて輸送される。例えば、コンクリート又は鉛のスラブ又はパネルを設置場所に輸送し、サイクロトロンルーム110の壁内のスペースに挿入することができる。この実施形態では、設置プロセスをあまり複雑にすること無く、運搬中の製造設備100の重量が低減される。
【0019】
製造設備100は、サイクロトロン112などの製造設備100内の設備により使用される気体又は他の材料を収容するための貯蔵域105を含むことができる。図1に示すように、貯蔵域105は、例えばヘリウム、水素、及び窒素を容れることができる多数のシリンダ107を収容する。気体調整器パネル109を設けて製造設備100に入る気体の流れを調整することができる。
【0020】
多くの用途において、サイクロトロン112により生成された放射性同位体は、患者に投与する前に更に処理される。例えば、18Fは、一般に、PETイメージングを受ける患者に投与される放射性医薬品である18FDG(2−[18F]−フルオロ−2−デオキシグルコース)に変換される。この機能を可能にするために、製造設備には、図1及び図2に示すように、合成ユニット132を備え付けることができる。合成する前に、サイクロトロンにより生成された放射性同位体(例えば18F)は、例えば自動的に合成ユニット132のリザーバに移送される。
【0021】
FDGの合成は、陰イオン交換カラムを用いて[18O]HOから18Fを分離し、求核置換反応により18FDGを生成することに基づく。求核置換反応では、塩基性加水分解により保護基がFDGから除去される。合成プロセスの段階1は、[18F]Fを[18O]HOからの分離を含む。陰イオン交換カラムを用いて、残りの[18O]HOから[18F]Fを分離する。[18F]Fイオンはイオン交換樹脂に吸着され、他方、通過する[18O]HO水はバイアルに集められる。
【0022】
プロセスの段階2は、求核置換反応の準備を含む。溶液を蒸発させ、水分が残らないように定量的に乾燥させる。乾燥は、アセトニトリルを用い、水の共沸蒸留により行うこともできる。蒸留後、真空下で蒸発させることができる。
【0023】
段階3は、求核置換反応である。この段階では、反応器にFDG−プレカーソル1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−b−D−マンノピラノース(アセトニトリルに溶解)を加える。C2位のトリフレート陰イオン(トリフルオロメタンスルホナート)が、Kryptofix222(商標)などの移動触媒の存在下でFに置換される。反応は、図4に示しており、85℃で5分間行う。
【0024】
完全に置換反応が行われた後に、毒性のあるアセトニトリルを定量的に除去する。溶媒は、蒸留により除去した後、真空下で蒸発させる。
【0025】
段階4は、加水分解の段階であり、水酸化ナトリウム又は塩酸を加えて反応生成物2−[18F]フルオロ−1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−D−グルコースから全ての保護基を除去する。
【0026】
段階5は、クロマトグラフ精製段階である。加水分解後の有機副産物、Na+−陰イオン、Kryptofix222(商標)及び残存する[18F]F陰イオンから2−[18F]FDGを分離するために、溶液を滅菌水で希釈し、精製カラムに強制的に通す。FDGは、NaClの等張液として調合される。
【0027】
この公知のプロセスは、K.Hamacher、H.H.CoenenとG.StocklinのJ.Nucl.Med.第27巻235〜238頁(1986年)、C.Lemaireらの「低極性固相支持体のアルカリ加水分解を伴う[18F]FDGの合成」、及びC.Mosdzianowskiらの「固体支持体のアルカリ加水分解を用いる[18F]FDGのルーチン的な多キュリーレベル生成」J.Labelled Cpd.Radiophrm.42巻515頁(1999年)を含む多数の出版物に更に詳細に記載されている。
【0028】
合成プロセスは、コンピュータ104により制御し、関連する条件及び値と共にスクリーン上に図式的に表示することができる。合成ユニット132の構成要素、例えば弁、加熱器、冷却器等は、自動的又は手動的に制御することができる。自動合成ユニットは市販されている。1つの実施例は、GE Medical Systemsから入手可能なTRACERlab FxFDGシステムである。別の実施例は、GE Medical Systemsから入手可能なTRACERlab MX FDCシステムである。F−ラベルドパミンを生成するためのTRACERlab FXFDOPA、種々の型の求核置換生成化合物を生成するためのTRACERlab Fx、種々の型の求電子的置換生成化合物を生成するためのTRACERlab Fx、及び種々の型の11Cラベル化合物を生成するためのTRACERlab Fxなどの他の放射性医薬品を生成するための合成ユニットも市販されている。
【0029】
図2は、放射性医薬品である18FDGを製造するのに用いることができる合成ユニット132の実施例を示す。合成ユニット132は、18F分離カートリッジ134、ターゲット水バイアル136、H18Oバイアル138、反応器140、FDG收集容器142、FDG精製カラム144、反応器針146、及び試薬バイアル148が含まれる。図3は、電子機器ユニット133、コンピュータ135、プリンタ137、デュアー瓶139、真空ポンプ141、変圧器143、及び不活性気体及び圧縮空気調節装置145を含む合成ユニット132を支持装置と共に示す。
【0030】
合成ユニット132の收集容器142は、合成ユニット132で生成された放射性医薬品を收集する。次に、放射性医薬品溶液を滅菌バイアルに計量分配し、このバイアルを隔膜及びキャップで密封することができる。
【0031】
製造設備100は、設備で生成される製品の品質を評価するための品質制御設備を含むことができる。例えば、GM管を設けて、サイクロトロン112のターゲット水の活性量、合成ユニット132の反応器140、及び放射性医薬品收集容器142を監視することができる。放射線検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー装置(放射線HPLC)又は放射線薄層クロマトグラフィー装置(放射線TLD)を設けて、放射化学的純度を測定することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置及びガスクロマトグラフィー(GC)装置を設けて、生成物の化学的純度を分析することができる。また、生成物は、従来の方法により細菌性発熱物質を試験し、生物学的媒体中に移し、所望の期間(例えば14日間)インキュベートして滅菌性を試験することもできる。
【0032】
合成ユニット132により生成された放射性医薬品は、特定の用途、例えばフルオロL−チミジンのために更に処理し、例えばクリーンルーム150内で個々のバイアルに計量分配することができる。放射性医薬品を個々のバイアルに計量分配するために、GE Medical Systemsから入手可能なもののようなロボットシステムを用いることができる。次に、バイアルを例えば鉛又はタングステンで構成された遮蔽容器内に入れ、これを所望の場所、例えばPETイメージングセンターに運搬する。輸送コンテナは、コンテナから特定の距離(例えば1メートル)で測定される表面放射及び活性度の両方を試験することができる。特定の州では州輸送規則を満たすために他の試験も必要である可能性がある。医薬品及び輸送に関する州及び連邦規則では、典型的には医薬品輸送を詳細に文書化することが要求される。
【0033】
放射性材料の適切な取り扱い及び処分を容易にするために、製造設備100には、典型的には、包装ルーム170が含まれ、ここで、作業者がバイアルにラベルを付け、製造設備100で生成された放射性医薬品の生成及び配送の正確な記録を保存することができる。製造設備内に包装ルーム170を含むことにより、別個の建物内の別個の事務所に依存すること無く、配送の前に、放射性医薬品の生成及び配送の正確な記録を作ることができるという利点がもたらされる。
【0034】
図1には詳細に示されていないが、製造設備100は、典型的には、放射性医薬品を生成するのに有用な他の設備も含む。例えば、製造設備100は、典型的には、1つ又はそれ以上の合成ユニット132及び/又は計量分配ロボットのための放射能遮蔽及び半密閉式環境を備える「ホットセル」を含む。TLCスキャナを設けると、最終的な放射性医薬品の放射化学的純度を測定することができる。多重チャネルの分析装置を設けると、ガンマ線のエネルギーレベルを測定することができ、これによってユーザは、サイクロトロンでPET同位体のみが生成されたことを確認することができる。典型的にはFDA認可の装置である投与量キャリブレータを設け、計量分配する投与量中の放射線量を測定することができる。放射性医薬品は、患者に計量分配する前に、投与量キャリブレータでチェックすることができる。インキュベータを設けると、最終生成物の滅菌度を確認することができると共に、製造環境及び空気システムの細菌試験を行うことができる。オーブンを設けると、放射性医薬品を生成するのに用いるガラス器具類及び他の品目の発熱物質を取り除くことができる。完全な放射線監視システムを用いると、設備のあらゆる領域で背景放射が確実に生成作業者の許容レベルになるようにすることができる。更に、気体及び空気排出システムを継続的に監視すると、環境に放出される全ての放射線を継続的に記録することができる。
【0035】
図1に示す製造設備100は、効率的な方法で構成することができ、これにより、病院又は他のユーザが短時間で最低限の労力で放射性医薬品を生成することができるようになる。1つの実施形態によれば、製造設備100を設置する最初の段階として、コンクリートスラブのような基礎が設置場所に構築(例えば打設)される。電源装置、上水道及び通信回線への接続部も設置場所に設置することができる。
【0036】
次に、典型的にはサイクロトロン112を除き、概ね全ての生成設備を含んだ製造設備100を、例えばトラック又は列車により設置場所に配達する。サイクロトロンは、重すぎるため、通常別個に配達される。設置場所では、基礎の上に製造設備を降ろし、電源装置に接続する。次に、サイクロトロン112を製造設備100内に挿入し、設置プロセスを完了する。設置場所に製造設備100を配達した時点から放射性同位体の生成が始まる時点までの設置プロセスは、通常、例えば14日以内に完了することができる。
【0037】
設置場所が公共区域に隣接するような幾つかの環境では、追加の遮蔽が必要となる可能性がある。このような場合には、製造設備100内のサイクロトロンルーム110の壁は、鉛又はコンクリート遮蔽を含むことができる。鉛又はコンクリート遮蔽は、製造設備100を輸送する前に設置することができる。或いは、サイクロトロンルーム110の壁内に、鉛又はコンクリート遮蔽を設置場所で挿入するためのスペース又は空洞を備えた状態で製造設備100を輸送することもできる。この場合、鉛又はコンクリート遮蔽は、設置場所でサイクロトロンルーム110の壁内のスペースに挿入するパネルの形態を取ることもできる。
【0038】
種々の法律及び規則、並びに医薬品の製造及び品質管理に関する基準(CGMP)により、放射性材料の生成及び使用が規定されている。これらの法律及び規則は、州によって異なる場合がある。製造設備100は、このような法律及び規則の全てを満たすように構成することができるため、どこにいる顧客もこのような法律及び規則を遵守することに関する問題に何ら対処する必要がない。
【0039】
製造設備100が可搬性であるため、設置場所から取り外すことが可能である。製造設備を取り外すことができるため、製造設備の残余価値に基づき、購買者にも販売者にも商業的利点がもたらされる可能性がある。例えば、購買者は、製造設備を転売することができる。販売者は、購買者が支払いを怠った場合には製造設備を引き揚げることができる。また、製造設備は販売では無くリースすることもでき、これにより、賃貸者にも賃借者にも柔軟性を付加することができる。
【0040】
製造設備100を供給する取引を更に容易にするために、供給者(例えば販売者又は賃貸者)は、融資又は設置サービスを提供することもできる。また、供給者は、製造設備100に通信接続を含むように構成して、製造設備の装置に関する遠隔監視及び診断サービスを提供することができるようにすることもできる。例えば、供給者は、装置の状態を監視し、いつ計画的なメンテナンス又は計画外メンテナンスを行う必要があるかを判断して製造設備のメンテナンスサービスを提供することができる。
【0041】
上記器の説明は、詳細及び具体的事項を含むが、これらは、説明の目的だけのために含まれるものであり、本発明を限定するものと解釈すべきでないことは理解されるであろう。請求項及びその法的均等物に含まれることが意図される本発明の精神及び範囲から逸脱すること無く、上述の実施形態の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の例示的な実施形態による製造設備の図。
【図2】本発明の例示的な実施形態による製造設備の合成ユニットの図。
【図3】本発明の例示的な実施形態による支持装置を共に示す図2の合成ユニットの図。
【図4】本発明の例示的な実施形態による求核置換反応の図。
【符号の説明】
【0043】
100 製造設備
110 サイクロトロンルーム
112 サイクロトロン
130 ラボラトリルーム
132 合成ユニット
150 クリーンルーム
170 包装ルーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性材料を生成するための製造設備(100)を提供する方法であって、
前記製造設備(100)がサイクロトロン(112)を受けるように設計する段階と、
前記製造設備(100)を設置場所に運搬する段階と、
前記サイクロトロン(112)を設置場所に運搬する段階と、
前記製造設備(100)内に前記サイクロトロン(112)を密閉する段階と、
を含む方法。
【請求項2】
前記サイクロトロン(112)から第1の放射性材料を受け取って第2の放射性材料を生成するよう設計された合成ユニット(132)を前記製造設備(100)に備え付ける段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の放射性材料が放射性同位体であり、前記第2の放射性材料が放射性医薬品であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記合成ユニット(132)が、前記サイクロトロン(112)から18F−を受け取り、2−[18F]−フルオロ−2−デオキシグルコースを生成することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の放射性材料が、ポジトロン放射型コンピュータ断層撮影スキャナ又は単光子放射型コンピュータ画像撮影スキャナでの使用に適合されていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記製造設備(100)を設置場所に運搬する前に、前記製造設備(100)に包装ルーム(170)を備え付ける段階を更に含む請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記サイクロトロン(112)が生成する放射線を遮蔽するために、前記製造設備(100)を運搬する前に前記製造設備(100)に放射線遮蔽物(114)を装備する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記製造設備(100)を設置場所に運搬した後に、前記製造設備(100)の壁内に放射線遮蔽物(114)を設置する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記製造設備を設置場所に運搬する前に、前記製造設備(100)に品質制御装置を備え付ける段階を更に含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記製造設備を設置場所に運搬する前に、前記製造設備(100)に放射性医薬品包装装置を備え付ける段階を更に含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記製造設備(100)を設置場所に運搬する前に、前記サイクロトロン(112)の少なくとも1つのセンサに接続されている通信ポートを前記製造設備(100)に備え付ける段階を更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記製造設備(100)が、前記設置場所がある管轄区域の法律及び規則の全ての要求事項を満たすように設計されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項13】
サイクロトロン(112)が無いことを除いて放射性材料を生成するよう実質的に装備された製造設備(100)を設置場所に受ける段階と、
サイクロトロン(112)を前記設置場所に受ける段階と、
前記製造設備(100)内に前記サイクロトロン(112)を密閉する段階と、
前記サイクロトロン(112)を前記製造設備(100)から取り外し可能にする段階と、
を含む方法。
【請求項14】
前記製造設備(100)を前記設置場所から取り外すことができるようにする段階を更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記サイクロトロン(112)及び前記製造設備(100)の少なくとも一方を転売する段階を更に含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記製造設備(100)が、運搬中にサイクロトロン(112)が無いことを除けば、放射性医薬品を生成して包装するように実質的に装備されていることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記製造設備(100)が、前記設置場所がある管轄区域の法律及び規則の全ての要求事項を満たすように設計される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記製造設備(100)が、米国の州及び連邦政府の法律及び規則の全ての要求事項を満たすように設計される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの放射性医薬品を製造するための可搬型製造設備(100)をリースする段階を含む方法。
【請求項20】
製造設備(100)の作業スペースを密閉する建造物を含む製造設備(100)であって、前記建造物がサイクロトロン(112)を収容すると共にトラック又は列車で目的設置場所まで可搬性であるように設計され、前記製造設備(100)が、運搬中にサイクロトロン(112)が無いことを除けば放射性医薬品を生成して包装するように実質的に装備されていることを特徴とする製造設備(100)。
【請求項21】
前記建造物が、垂直方向のサイクロトロン(112)を収容するように設計されていることを特徴とする請求項20に記載の製造設備(100)。
【請求項22】
前記建造物が、水平方向のサイクロトロンを収容するように設計されていることを特徴とする請求項20に記載の製造設備(100)。
【請求項23】
前記製造設備(100)が、前記サイクロトロン(112)から放射性同位体を受け取って放射性医薬品を生成する合成ユニット(132)を備えることを特徴とする請求項21に記載の製造設備(100)。
【請求項24】
前記製造設備(100)の外側幅が14フィート以下であることを特徴とする請求項21に記載の製造設備(100)。
【請求項25】
前記放射性医薬品が、ポジトロン放射型コンピュータ断層撮影スキャナに用いるのに適合されていることを特徴とする請求項23に記載の製造設備(100)。
【請求項26】
前記放射性医薬品が、単光子放射型コンピュータ画像撮影スキャナでの使用に適合されていることを特徴とする請求項23に記載の製造設備(100)。
【請求項27】
前記製造設備が、通信ポート、品質制御設備、及び包装ルーム(170)を含むことを特徴とする請求項23に記載の製造設備(100)。
【請求項28】
前記製造設備(100)が、前記設置場所がある管轄区域の法律及び規則の全ての要求事項を満たすように設計されることを特徴とする請求項20に記載の製造設備(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−504103(P2006−504103A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548453(P2004−548453)
【出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/033721
【国際公開番号】WO2004/040589
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】