説明

放射性標識インスリン

【課題】 インスリン放射性標識法並びに新規放射性標識インスリン造影剤の提供。
【解決手段】 本発明は、インビボ造影剤に関するものであり、具体的には、式(III)の放射性標識インスリン誘導体、その製造方法及びそれらのインビボイメージング法における使用に関する。
【化1】


式中、Xは−CO−NH−、−NH−、−O−、−NHCONH−又は−NHCSNH−であって、好ましくは−CO−NH−、−NH−又は−O−であり、Yは水素、アルキル又はアリール置換基であり、Rは、SPECT又はPETでの検出に適した放射性標識部分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義にはインビボ造影剤に関するものであり、具体的には放射性標識インスリン及びその製造方法に関する。放射性標識インスリンは、単一光子放射断層撮影(SPECT)又は陽電子放射断層撮影(PET)を用いた画像診断並びに生体内でのインスリン受容体及びそのリガンドとの相互作用の研究に用途を有する。
【背景技術】
【0002】
インスリンは、膵臓β細胞で産生されるポリペプチドホルモンである。インスリンは炭水化物及び脂質の代謝を調整し、タンパク質合成に影響を与える。最近の文献(New Scientist, 14 Aug 2004,p34)には、細胞のエネルギーレベルが細胞の成長及び増殖に影響し、インスリン受容体に対して選択的な造影剤が癌のイメージング及び診断に有用性を有する可能性があることが示唆されている。インスリンは、51アミノ酸残基からなる活性二量体である。天然インスリン(ヒト、ウシ又はブタ由来)、組換えインスリン及び半合成ヒトインスリンが糖尿病の管理に常用されている。放射性標識インスリン(例えば放射性ヨウ素標識を導入したインスリン)は当技術分野で公知であり、例えばインスリン代謝の研究並びにインビボ受容体結合実験に使用されている。放射性標識生理活性ペプチドを画像診断及び研究用イメージングに応用することは、核医学の分野で重要性を増しつつある。半減期約110分の18Fは多数のイメージング研究及び画像診断に好まれる陽電子放出核種である。18Fは、18F標識生成物が生理活性を保持するように、迅速かつ効率的に生理活性ペプチドに導入する必要がある。18F標識インスリンに関する報文(Shai et al, Biochemistry (1989),28,4801−6)では、ヒトインスリンのB位を標識するため4−(フルオロメチル)ベンゾイルシントンを用いている。しかし、この放射合成法は複雑で時間がかかる。そこで、別のインスリン放射性標識法(18F標識法を含む)並びに新規放射性標識インスリン造影剤(18F標識したものを含む)に対するニーズが存在する。
【非特許文献1】ORWANT, R., New Scientist, 14 Aug 2004,p34
【非特許文献2】Shai et al, Biochemistry (1989),28,4801−6
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
そこで、本発明の一態様では、以下の式(I)の化合物を式(II)の化合物と反応させて式(III)のコンジュゲートを得ることを含んでなる放射性標識法を提供する。
【0004】
【化1】

【0005】
【化2】

式中、R1はR2と部位特異的に反応する官能基である。R1は、第一級アミン、第二級アミンアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラジド、アミノオキシ、フェニルヒドラジン、セミカルバジド又はチオセミカルバジドのようなアンモニア誘導体であって、好ましくはヒドラジン、ヒドラジド又はアミノオキシ基であり、
R2は、アルデヒド基、ケトン基、アセタールのような保護アルデヒド、ケタールのような保護ケトン又はジオール若しくはN末端セリン残基のような官能基であって、酸化剤を用いてアルデヒド又はケトンへと迅速かつ効率的に酸化できるものであり、
はSPECT又はPETでの検出に適した放射性標識部分である。
【0006】
【化3】

式中、Xは−CO−NH−、−NH−、−O−、−NHCONH−又は−NHCSNH−であって、好ましくは−CO−NH−、−NH−又は−O−であり、Yは水素、アルキル又はアリール置換基であり、Rは式(II)の化合物で定義した通りである。
【0007】
この反応は適当な溶媒中、例えばpH域2〜11、好適には3〜11、さらに好適には3〜6の水性緩衝液中で、5〜80℃の穏和な温度、好ましくは室温で実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
式(I)及び(II)の化合物のリンカー基は各々独立にC1−60ヒドロカルビル基、好適にはC1−30ヒドロカルビル基であり、酸素又は窒素のような1〜30個のヘテロ原子、好適には1〜10個のヘテロ原子を適宜含んでいてもよい。好適なリンカー基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル鎖、芳香族、ポリ芳香族及びヘテロ芳香族環、さらにエチレングリコール、アミノ酸又は炭水化物サブユニットを含むポリマーが挙げられる。
【0009】
「ヒドロカルビル基」という用語は、炭素と水素からなる有機置換基をいい、かかる基は、飽和、不飽和又は芳香族部分を含んでいてもよい。
【0010】
式(I)の化合物及び本発明の関連する態様におけるR1は、好ましくは−NHNH、−C(O)NHNH及び−ONHから選択され、好ましくはONHである。
【0011】
式(II)の化合物及び本発明の関連する態様におけるR2は、好ましくは−CHO、>C=O、CH(OCHCHO−)のような−CH(−O−C1−4アルキル−O−)並びにCH(OCHのようなCH(OC1−4アルキル)から選択され、好ましい態様ではR2は−CHOである。
【0012】
好適には、R2アルデヒドは1,2−ジオール又は1,2アミノアルコール基を含む前駆体官能化ベクターのインサイツ酸化によって生成させる。例えば、後者は、Wahl他のTetrahedron Letts. 37, 6861 (1996)に記載のアミノ酸Fmoc−Dpr(Boc−Ser)−OHを用いた合成でペプチド配列に直接挿入することができる。式(II)の化合物のR2基の生成に使用し得る好適な酸化剤としては、過ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸、パラ過ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸ナトリウム及びメタ過ヨウ素酸カリウムが挙げられる。
【0013】
は、SPECT又はPETでの検出に適した放射性標識部分であって、好ましくは18F、放射性ヨウ素(123I、124I、125I又は131I)、75Br又は[11C]C1−6アルキルアミンのような11C含有基であり、最も好ましくは18Fである。
【0014】
式(III)の化合物及び本発明の関連する態様におけるYは好ましくは水素、C1−6アルキル(メチルなど)又はフェニルである。
【0015】
本発明の一態様では、式(II)の化合物は次の式(IIa)のものである。
【0016】
【化4】

式中、mは0〜10の整数であり、nは0〜20の整数であり、Yは水素、C1−6アルキル(メチルなど)又はフェニルである。好ましくは、式(IIa)の化合物におけるmは0であり、nは0であり、Yは水素であり、式(IIa)の化合物は4−[18F]フルオロベンズアルデヒドとなる。
【0017】
本発明の一態様では、式(I)の化合物は次の式(Ia)のものである。
【0018】
【化5】

式中、Xは−CO−NH−、−NH−又は−O−であって、好ましくは−O−である。
【0019】
式(I)及び(Ia)の化合物における好ましいリンカーとしては、−C(O)−(C1−20アルキル)−NHC(O)CH−及び−C(O)−(C1−20アルキル)−が挙げられる。
【0020】
そこで、好ましい態様では、本発明は、以下の式(Ia)の化合物を式(IIa)の化合物と反応させて式(IIIa)の化合物を得ることを含んでなる放射性標識法を提供する。
【0021】
【化6】

式中、Xは−CO−NH−、−NH−又は−O−であって、好ましくは−O−である。
【0022】
【化7】

式中、mは0〜10の整数(好ましくは0)であり、nは0〜20の整数(好ましくは0)であり、Yは水素、C1−6アルキル(メチルなど)又はフェニルである(Yは好ましくは水素である)。
【0023】
【化8】

式中、Xは式(Ia)の化合物で定義した通りであり、m及びnは式(IIa)の化合物で定義した通りである。
【0024】
別の態様では、本発明は、以下の式(Ib)の化合物を式(IIb)の化合物と反応させて式(IIIb)の化合物を得ることを含んでなる放射性標識法を提供する。
【0025】
【化9】

【0026】
【化10】

【0027】
【化11】

式(I)、(Ia)、(Ib)、(II)、(IIa)及び(IIb)の化合物のリンカー基は、放射性フッ素化反応の効率を最大限にするとともに、得られる式(III)、(IIIa)又は(IIIb)のコンジュゲートにおける好ましい排泄特性など、良好なインビボ薬物動態が得られるように選択される。親油性及び/又は電荷の種々異なるリンカー基を使用することによって、必要とされるイメージングに適合するようにペプチドのインビボ薬物動態を大きく変化させることができる。例えば、式(III)、(IIIa)、(IIIb)のコンジュゲートを腎排泄によって身体から除去することが望まれる場合には親水性リンカーを使用し、肝胆道排泄による除去が望ましい場合には疎水性リンカーを使用する。ポリエチレングリコール部分を含むリンカーは血液クリアランスを遅らせることが判明しており、状況によっては望ましい。
【0028】
式(I)、(Ia)、(Ib)、(III)、(IIIa)及び(IIIb)の化合物において、インスリンはヒト、ウシ、ブタインスリンとし得るが、好適にはヒトインスリンであり、天然、組換え又は合成のいずれのものでもよい。或いは、インスリンは、例えば米国特許第5656722号、ドイツ特許3837825号、国際公開第95/07931号、欧州特許出願公開第383472号又はJ Brange et al, Nature 333(1988),679に記載されているような天然インスリン類似体であってもよい。
【0029】
式(I)、(Ia)及び(Ib)の化合物は、ペプチド合成の常法、例えばAtherton,E. and Sheppard,R.C.; “Solid Phase Synthesis”; IRL Press: Oxford, 1989に記載の固相ペプチド合成で製造できる。式(I)、(Ia)又は(Ib)の化合物へのR1基の導入は、修飾してもインスリンの結合特性に影響を与えないペプチドの遊離第一級アミンの反応によって達成できる。官能基R1は、好ましくは、ペプチドアミン官能基と活性化カルボン酸との反応によって形成される安定なアミド結合の形成によって導入され、ペプチドの合成時又は合成後に導入される。当業者には自明であろうが、式(I)、(Ia)又は(Ib)の化合物にR1を導入する際に、インスリンの所定の官能基を保護する必要があることがある。適当な保護及び脱保護法は、例えば“Protecting Groups in Organic Synthesis”, Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts, published by John Wiley & Sons Inc.に記載されている。リンカー及びR1基の付加によって修飾し得る特に有用な保護インスリン中間体の一つは、A,B29−ジBoc−インスリンであり、これはShai et al, Biochemistry (1989),28,4801−6に記載の方法で製造することができる。Boc(tert−ブトキシカルボニル)保護基は、放射性フッ素化反応前に例えばトリフルオロ酢酸のような酸による加水分解によって除去することができる。
【0030】
別の態様では、本発明は、上記で定義した式(I)、(Ia)又は(Ib)の化合物及びその保護誘導体を提供する。好ましい式(I)、(Ia)及び(Ib)の化合物は、インスリンがヒトインスリンであるものである。式(I)、(Ia)及び(Ib)の化合物は、PET造影剤の合成用の前駆体として並びに診断に用途を有し、例えば、上記の方法による放射性フッ化のための準備が整ったキットとして提供し得る。
【0031】
18Fである式(II)、(IIa)及び(IIb)の化合物は、国際公開第2004/080492号に記載の通り製造することができる。Rが放射性ヨウ素である式(II)の化合物は、対応トリアルキルスズ前駆体から放射性ヨウ素塩との反応によって製造でき、好適には、例えば過酢酸のような酸の存在下、アルカリ金属のヨウ化物(例えばヨウ化ナトリウム)との反応で製造できる。R11Cアルキルアミン基のような11C含有基である式(II)の化合物は、例えば対応する第一級アミンの11Cアルキル化によって製造できる。かかる11C標識法の詳細な総説は、Handbook of Radiopharmaceuticals, Ed. M.J. Welch and C.S. Redvanly(2003, John Wiley and Sons)のAntoni et al “Aspects on the Synthesis of 11C−Labelled Compounds”に見出すことができる。
【0032】
別の態様では、本発明は、上記で定義した式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の放射性標識コンジュゲートを提供する。式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の好ましい化合物はインスリンがヒトインスリンであるものである。
【0033】
本発明は、上記で定義した一般式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物の有効量(例えばインビボPETイメージングでの使用に有効な量)を、1種以上の薬学的に許容される補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含んでなる放射性医薬組成物も提供する。
【0034】
本発明の好ましい実施形態は、医療用、特にSPECT又はPETによるイメージング、好適にはインスリンが関係する疾患(例えば心筋インスリン抵抗性、心肥大、高血圧、癌及びII型糖尿病)のインビボイメージング又は診断に使用するための、上記で定義した一般式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物に関する。
【0035】
式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の放射性標識コンジュゲートは、SPECT又はPETイメージングのため、所望の信号が得られる十分な量で患者に投与すればよく、典型的な放射性核種投与量は体重70kg当たり0.01〜100mCi、好ましくは0.1〜50mCiで通常十分である。
【0036】
したがって、式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の放射性標識コンジュゲートは、当業者の技術常識に属する方法で、生理学的に許容される担体又は賦形剤を用いて投与用に製剤化すればよい。例えば、上記化合物は、薬学的に許容される賦形剤を適宜添加して、水性媒体に懸濁又は溶解し、次いで得られた溶液又は懸濁液を滅菌すればよい。
【0037】
本発明は、別の態様では、放射性医薬品をヒト又は動物の身体に投与してヒト又は動物の身体の少なくとも一部分の画像を生成させるインビボイメージング(好適にはSPECT又はPET、好ましくはインスリンが関係する疾患のイメージング)法に用いられる放射性医薬品の製造における、式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の放射性標識コンジュゲートの使用を提供する。
【0038】
本発明は、さらに別の態様では、放射性医薬品をヒト又は動物の身体(例えば脈管系)に投与して放射性医薬品が分配された身体の少なくとも一部分の画像をSPECT又はPETを用いて生成させる身体の画像生成方法であって、該放射性医薬品が式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の放射性標識コンジュゲートを含む、方法を提供する。
【0039】
本発明は、さらに別の態様では、インスリンに関連した病態に対処するための薬剤によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターする方法であって、式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の放射性標識コンジュゲートを身体に投与し、上記コンジュゲートの取り込みを検出し、任意ではあるが好ましくは、上記投与と検出を、例えば上記薬剤による治療の前後途中に繰り返すことを含んでなる方法を提供する。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態では、式(II)、(IIa)又は(IIb)の補欠分子族と式(I)、(Ia)又は(Ib)の化合物を含む、放射性フッ素化トレーサー調製用キットを提供する。
【実施例】
【0041】
以下の実施例によって本発明を例示するが、実施例では以下の略語を用いる。
【0042】
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
TFA:トリフルオロ酢酸
UV:紫外線
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
BOC:t−ブトキシカルボニル
DMSO:ジメチルスルホキシド。
【0043】
アミノオキシ複合を用いた18F−B修飾インスリンの調製
実験
材料
,B29−ジ−BOC−インスリンは、ヒト組換えインスリン(Sigma社)を用いてShai他の方法[Biochemistry 28(1989)4801]で調製される。BOC−アミノオキシ酢酸はFluka社から入手される。(4−アザ−1,2,3−ベンゾトリアゾール−3−イルオキシ)−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン酸(PyAOP)、4−フルオロベンズアルデヒド、Kryptofix(登録商標)、N−メチルモルホリン(NMM)、無水アセトニトリル及び無水ジメチルスルホキシドはSigma−Aldrichから入手される。
【0044】
−BOC−アミノオキシ−アセチル−A,B29−ジ−BOC−インスリン(中間体1、スキーム1)の調製
分取用HPLC
カラム:Phenomenex Luna prep. C18;溶媒A=水(0.1%TFA)、溶媒B=MeCN(0.1%TFA)、
流速5ml/分、勾配:30分間で30〜60%B、UV検出波長214nm。
【0045】
分析用HPLC
カラム:Phenomenex Luna C18;溶媒A=水(0.1%TFA)、溶媒B=MeCN(0.1%TFA)、
流速1ml/分、勾配:20分間で25〜80%B、UV検出波長214及び254nm。
【0046】
調製
DMF中のA,B29−ジ−BOC−インスリン(10mg、1.7μmol)を、DMF中のBOC−アミノオキシ酢酸(1.3mg、6.6μmol)、PyAOP(3.4mg、6.6μmol)及びNMM(1.3mg、1.5μl、13μmol)の溶液に添加する。4時間後、DMFを減圧下で蒸発させ、粗生成物を分取用HPLCを用いて精製する(収量5.3mg、51%)。
【0047】
−(4−フルオロ−ベンジリデンアミノオキシ)−アセチル−インスリン(化合物1、スキーム1)の調製
BOC保護インスリン誘導体(中間体1、5mg)に、TFA/5%水(0.2ml)溶液を添加する。室温で1分間放置した後、液相を窒素気流で蒸発させる。残渣を酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0、0.5mM)に溶解し、1当量の4−フルオロベンズアルデヒドと反応させる。生成物を分取用HPLCで精製し、LC−MSで特性決定する。
【0048】
−(4−[18F]フルオロ−ベンジリデンアミノオキシ)−アセチル−インスリン(化合物2、スキーム3)の調製
18F]フルオロベンズアルデヒド
18F]フルオロベンズアルデヒドをS.M.Haka他の方法[J. Labelled Cpd. and Radiopharm. 27(1989)823]で調製する。簡潔に述べると、サイクロトロンから19MeVの陽子ビームとターゲット材料としての濃縮[18O]HO(30%)との18O(p,n)18F反応を用いて18F−フッ素を得る。照射したターゲット水(370MBq、10mCi、1ml)を、Kryptofix(登録商標)(10mg)と炭酸カリウム(1mg)とアセトニトリル(0.8ml)の混合物に添加する。混合物を窒素気流下で100℃に加熱する。溶剤除去後、アセトニトリル(0.5ml)を添加し、再び蒸発させる。このステップを2回繰返す。
【0049】
無水[18F]KF−クリプテートが入ったバイアルを室温に冷却し、無水DMSO(0.2ml)中の4−トリメチルアンモニウムベンズアルデヒドトリフルオロメチルスルホネート(1mg)の溶液を添加する。混合物を90℃で15分間加熱し、室温に冷却する。
【0050】
結合工程
酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0、5mM、0.1ml)中の脱保護アミノオキシ−インスリン(前述、1〜2当量)の溶液を添加した後、70℃で10分間加熱する。反応混合物をHPLC移動相(0.2ml、20%B)で奪活し、分取用HPLCで精製する。
【0051】
(BOC−アミノオキシ−アセチルアミン)−ヘキサン酸(化合物3、スキーム2)の調製
N−スクシンイミジルBOC−3−(アミノオキシ)アセテートを、BOC−3−(アミノオキシ)酢酸からS.Deroo他の方法[Tetr. Lett. 44(2003)8379]で得る。N−スクシンイミジルエステルを、7−アミノヘプタン酸(1.1当量)及びジイソプロピルエチルアミン(3当量)と、ジクロロメタン中で16時間室温で反応させる。カップリング反応生成物(化合物3)をシリカでのフラッシュクロマトグラフィーで精製する。
【0052】
−(BOC−アミノオキシ−アセチルアミン)−ヘキサノイル−A,B29−ジ−BOC−インスリン(化合物4、スキーム2)の調製
アミノオキシリンカーのカップリングを、B1−BOC−アミノオキシ−A,B29−ジ−BOC−インスリン(中間体1)について記載した通り実施する。
【0053】
−(4−フルオロ−ベンジリデンアミノオキシ−アセチルアミン)−ヘキサノイル−インスリン(化合物5、スキーム2)の調製
インスリン前駆体のBOC保護基の除去とその後の4−フルオロベンズアルデヒドとのカップリングを、化合物1について記載した通り実施する。
【0054】
−(4−[18F]フルオロ−ベンジリデンアミノオキシ−アセチルアミン)−ヘキサノイル−インスリン(化合物6、スキーム3)の調製
化合物4及び[18F]−4−フルオロベンズアルデヒドからの化合物6の放射合成を、化合物2の調製について記載した通り実施する。
【0055】
【化12】

【0056】
【化13】

【0057】
【化14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物を式(II)の化合物と反応させて式(III)のコンジュゲートを得ることを含んでなる放射性標識方法。
【化1】

【化2】

式中、R1はR2と部位特異的に反応する官能基であって、R1は、第一級アミン、第二級アミンアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラジド、アミノオキシ、フェニルヒドラジン、セミカルバジド又はチオセミカルバジドのようなアンモニア誘導体であって、好ましくはヒドラジン、ヒドラジド又はアミノオキシ基であり、
R2は、アルデヒド基、ケトン基、アセタールのような保護アルデヒド、ケタールのような保護ケトン又はジオール若しくはN末端セリン残基のような官能基であって、酸化剤を用いてアルデヒド又はケトンへと迅速かつ効率的に酸化できるものであり、
はSPECT又はPETでの検出に適した放射性標識部分である。
【化3】

式中、Xは−CO−NH−、−NH−、−O−、−NHCONH−又は−NHCSNH−であって、好ましくは−CO−NH−、−NH−又は−O−であり、Yは水素、アルキル又はアリール置換基であり、Rは式(II)の化合物で定義した通りである。
【請求項2】
18F、放射性ヨウ素(123I、124I、125I又は131I)、75Br又は[11C]C1−6アルキルアミンのような11C含有基である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
18Fである、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
以下の式(Ia)の化合物を式(IIa)の化合物と反応させて式(IIIa)の化合物を得ることを含んでなる放射性標識方法。
【化4】

式中、Xは−CO−NH−、−NH−又は−O−であって、好ましくは−O−である。
【化5】

式中、mは0〜10の整数であり、nは0〜20の整数であり、Yは水素、C1−6アルキル又はフェニルである。
【化6】

式中、Xは式(Ia)の化合物で定義した通りであり、m及びnは式(IIa)の化合物で定義した通りである。
【請求項5】
以下の式(Ib)の化合物を式(IIb)の化合物と反応させて式(IIIb)の化合物を得る、請求項4記載の方法。
【化7】

【化8】

【化9】

【請求項6】
次の式(III)の化合物。
【化10】

式中、Xは−CO−NH−、−NH−、−O−、−NHCONH−又は−NHCSNH−であって、好ましくは−CO−NH−、−NH−又は−O−であり、Yは水素、アルキル又はアリール置換基であり、RはSPECT又はPETでの検出に適した放射性標識部分である。
【請求項7】
18F、放射性ヨウ素(123I、124I、125I又は131I)、75Br又は[11C]C1−6アルキルアミンのような11C含有基であって、好ましくは18Fである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
当該化合物が次の式(IIIa)のものである、請求項6又は請求項7記載の化合物。
【化11】

式中、Xは−CO−NH−、−NH−又は−O−であり、mは、0〜10の整数であり、nは0〜20の整数である。
【請求項9】
当該化合物が次の式(IIIb)のものである、請求項6乃至請求項8のいずれか1項記載の化合物
【化12】

【請求項10】
次の式(I)の化合物。
【化13】

式中、R1は、第一級アミン、第二級アミンアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラジド、アミノオキシ、フェニルヒドラジン、セミカルバジド又はチオセミカルバジドのようなアンモニア誘導体であって、好ましくはヒドラジン、ヒドラジド又はアミノオキシ基である。
【請求項11】
次の式(Ia)の化合物。
【化14】

式中、Xは−CO−NH−、−NH−又は−O−である。
【請求項12】
当該化合物が次の式(Ib)のものである、請求項10又は請求項11記載の化合物。
【化15】

【請求項13】
請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載の式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物の有効量を、1種以上の薬学的に許容される補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含んでなる放射性医薬組成物。
【請求項14】
医療用の、請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載の一般式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物。
【請求項15】
インスリンが関係する疾患の画像を生成させるインビトロイメージング法(好適にはSPECT又はPET)に用いられる放射性医薬品の製造における、請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載の式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の放射性標識コンジュゲートの使用。
【請求項16】
放射性医薬品をヒト又は動物の身体(例えば脈管系)に投与して放射性医薬品が分配された身体の少なくとも一部分の画像をSPECT又はPETを用いて生成させる身体の画像生成方法であって、該放射性医薬品が請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載の式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の放射性標識コンジュゲートを含む、方法。
【請求項17】
インスリンに関連した病態に対処するための薬剤によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターする方法であって、請求項6乃至請求項9のいずれか1項記載の式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の放射性標識コンジュゲートを身体に投与し、上記コンジュゲートの取り込みを検出し、任意ではあるが好ましくは、上記投与と検出を繰り返すことを含んでなる方法。

【公表番号】特表2008−513423(P2008−513423A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531820(P2007−531820)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003527
【国際公開番号】WO2006/030197
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(504000591)ハマースミス・イメイネット・リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】Hammersmith Imanet Ltd
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】