説明

放射性標識ナノ粒子

本発明は、非共有結合した放射性同位体を有する放射性標識ナノ粒子に関する。かかる放射性標識ナノ粒子は放射性医薬品として有用である。放射性標識ナノ粒子の製造のためのキット及び方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非共有結合した放射性同位体を有する放射性標識ナノ粒子に関する。かかる放射性標識ナノ粒子は放射性医薬品として有用である。放射性標識ナノ粒子の製造のためのキット及び方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子(NP)とは、1〜1000nmの範囲内の直径を有する固体コロイド粒子をいう。NPの放射性標識に関する従来の文献には、NPの形成中に、或いは放射性標識モノマーの重合によって放射性核種のイオン又は塩がNP母材中に捕捉されることが記載されている。これらの方法は、放射性標識が最初から存在しているので、すべての工程が放射能取扱い技術を必要とし、作業員を放射線に被曝させ、放射性廃棄物の量を増加させるという欠点を有している。さらなる問題は、放射性標識NPの製造時間中に放射性崩壊が起こり続け、イメージング能力の損失を招くことである。NPの製造は数時間を要するので、これは数日ではなく数時間又は数分程度の半減期をもった放射性核種については問題となる。
【0003】
NPは99mTC又は125Iで標識されてきたが、いずれの場合にも、必要なNPの種類は非常に特殊であり、放射性核種の取込み量はあまり高くない[Ghanem et al,Int.J.Appl.Radiat.Isot.,44,1219−1224(1993)及びRoland et al,J.Pharm.Sci.,78,481−484(1989)]。ナノ粒子はまた、二官能性キレート剤への共有結合によって標識することもできる[Ghanem et al,上記]。立体配置に関する理由から、キレート剤とNPとの間にリンカーがしばしば使用されるが、これは全体的な合成上の困難を増加させると共に、NPの種類に応じて好適性が限られる。
【0004】
国際公開第02/32404号は、半導体又は金属であるコアを複数の炭水化物リガンドに結合してなるナノ粒子を開示している。コアには、インビトロ又はインビボ用途のため、ガドリニウム又はユウロピウムのようなNMR活性物質をドープすることができる。炭水化物は、ナノ粒子の検出を容易にするために同位体で標識することができる。
【0005】
国際公開第2005/018681号は、インビボの生物学的標的リガンドが結合したナノ放射性医薬品を開示している。かかるナノ粒子は水性媒質中で放射性核種を還元することで製造され、したがって放射性同位体は最初から存在している。
【0006】
国際公開第2005/0019257号は、界面活性剤コーティングを有する放射性銅の磁性ナノ粒子を開示している。脂肪酸が好ましい界面活性剤である。
【0007】
国際公開第2005/014051号は、油様化合物から形成された脂質/界面活性剤被覆ナノ粒子を、36を超える原子番号(Z)の原子に結合してなる水中油型エマルジョンを開示している。
【特許文献1】国際公開第02/32404号公報
【特許文献2】国際公開第2005/018681号公報
【特許文献3】国際公開第2005/0019257号公報
【特許文献4】国際公開第2005/014051号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/015679号公報
【特許文献5】国際公開第2005/116226号公報
【特許文献6】ドイツ特許第19933346号公報
【非特許文献1】Ghanem et al,Int.J.Appl.Radiat.Isot.,44,1219−1224(1993)
【非特許文献2】Roland et al,J.Pharm.Sci.,78,481−484(1989)
【非特許文献3】Canepa Marina et al,Photochemical and Photobiological Sciences,2(11),1177−1180(2003)
【発明の開示】
【0008】
ナノ粒子は、NPの性質を利用してインビボでの放射性核種の生体分布を調整又は標的化しながら、イメージング又は治療用の放射性核種を送達するために核医学で使用される。これは、NPを規定する変数(例えば、粒度、表面電荷、母材、表面コーティング、疎水性及び標的ベクターの有無)を調整することで達成できる。これらの物理化学的性質を調整するための従来の方法は、生物学的標的成分の共有結合及び放射性標識の必要性と相俟って、非常に難しい問題を提起する。
【0009】
本発明は放射性標識NPを提供するが、NPは第1段階として非放射性状態で合成される。このようにすれば、存在する放射性同位体に関連する厄介な問題なしにNPの性質(粒度、表面電荷及び表面コーティング)を変化させることができる。任意の第2段階として、生物学的標的成分を導入することで、同じNPを様々な特定のインビボ標的化用途のために使用することが可能となる。最後の段階では、放射性核種の選択を許す方法により、NPが高い取込み率で放射性標識される。かかる方式は、前例のない融通性を提供し、放射性標識を大幅に簡易化し、NP放射性医薬品の製造のために非放射性キットの使用を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の実施形態では、本発明は、
(i)銅、銀、パラジウム又は金或いはこれらの組合せからなる金属コア、及び
(ii)前記コアに結合された多数のC2-25有機チオールからなる、前記コアを取り巻く親油性コーティングであって、前記チオールは同一でも相異なっていてもよく、還元形(即ち、チオール形)又は酸化形(即ち、ジスルフィド形)或いはこれらの組合せであってよい親油性コーティング
を有するナノ粒子を含んでなり、前記ナノ粒子が前記ナノ粒子に非共有結合した1種以上の放射性同位体で標識されている放射性標識ナノ粒子を提供する。
【0011】
「ナノ粒子」という用語は、形状がほぼ球状でありかつ1〜1000nmの粒度範囲内にある粒子を意味する。
【0012】
「金属コア」という用語は、ナノ粒子の最も内側の部分をなす固体金属コロイド粒子を意味する。好適なコア材料は、貴金属、特に銅、銀、金又はパラジウム或いはこれらの組合せである。好ましいコア材料は金及び銀であり、最も好ましい材料は金である。銅、銀、パラジウム及び金の1種以上の混合物から形成されたナノ粒子コアも、本発明で使用し得るものと想定されている。かかる混合物を使用する場合、好ましい実施形態は合金の使用である。かかる合金には、Au/Ag、Au/Cu及びAu/Ag/Cuがある。本発明のナノ粒子の金属コアは、好ましくは非放射性である。
【0013】
コアの平均直径は、好ましくは0.5〜100nmの範囲内、さらに好ましくは1〜50nmの範囲内、最も好ましくは1〜20nmの範囲内にある。平均直径は、透過電子顕微鏡法のような当技術分野で公知の技術を用いて測定できる。
【0014】
「有機チオール」という用語は、アルキル基又はアリール基又はヘテロアリール基の炭素原子に共有結合したチオール(−SH)基を有する化合物を意味する。本発明の有機チオールは、還元形(即ち、チオール形)又は酸化形(即ち、ジスルフィド形)或いはこれらの組合せで存在し得る。好ましくは、有機チオールは還元形で存在する。ジスルフィドが使用される場合には、レドックス平衡又はインサイチュ還元により、好ましいナノ粒子安定化化学種である対応したチオール又はジチオールが生成されると予想される。
【0015】
「非共有結合」という用語は、イオンペアリング効果、水素結合、陰イオン−π芳香族化合物相互作用、或いは有機又は水性媒質中でのルイス酸−塩基相互作用による結合を意味する。これは、金属配位化合物のように共有結合を伴う従来のアプローチと対照的である。本ナノ粒子の性質は、放射性同位体が金属コアの外側にあり、金属コアの表面又は親油性コーティングに結合していることである。
【0016】
「生物学的標的成分」という用語は、線状ペプチド又は環状ペプチド或いはこれらの組合せであり得る3〜100マーのペプチド又はペプチド類似体、酵素の基質又は拮抗剤又は阻害剤、合成レセプター結合化合物、タンパク質又はタンパク質フラグメント、或いはオリゴヌクレオチド又はオリゴDNA若しくはオリゴRNAフラグメントを意味する。
【0017】
「環状ペプチド」という用語は、ペプチド又はジスルフィド結合或いは合成非ペプチド結合(例えば、チオエーテル、ホスホジエステル、ジシロキサン又はウレタン結合)であり得る共有結合によって2つの末端アミノ酸が互いに結合した5〜15のアミノ酸の配列を意味する。「アミノ酸」という用語は、光学的に純粋なもの(即ち、単一の鏡像異性体、したがってキラルなもの)又は鏡像異性体の混合物であり得るL−又はD−アミノ酸、アミノ酸類似体又はアミノ酸模倣体を意味する。好ましくは、本発明のアミノ酸は光学的に純粋なものである。「アミノ酸模倣体」という用語は、アイソスター(即ち、天然化合物の立体構造及び電子構造を模倣するように設計されたもの)である天然アミノ酸の合成類似体を意味する。かかるアイソスターは当業者には公知であり、特に限定されないが、デプシペプチド、レトロ−インベルソペプチド、チオアミド、シクロアルカン又は1,2−二置換テトラゾールがある[M.Goodman,Biopolymers,24,137(1985)を参照されたい。]
本発明で使用するための好適なペプチドには、以下のものがある。
【0018】
−ソマトスタチン、オクトレオチド及び類似体。
【0019】
−STレセプターに結合するペプチド(ここで、STとは大腸菌(E.coli)及び他の微生物によって産生される毒素をいう。)。
【0020】
−ラミニンフラグメント、例えば、YIGSR、PDSGR、IKVAV、LRE及びKCQAGTFALRGDPQG。
【0021】
−白血球集積部位を標的化するためのN−ホルミルペプチド。
【0022】
−血小板第4因子(PF4)及びそのフラグメント。
【0023】
−例えば、血管形成を標的化し得るRGD(Arg−Gly−Asp)含有ペプチド[R.Pasqualini et al.,Nat Biotechnol.1997 Jun;15(6):542−6];[E.Ruoslahti,Kidney Int.1997 May;51(5):1413−7]。
【0024】
−α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、β−カゼイン、フィブリノーゲン又はトロンボスポンジンのペプチドフラグメント。α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、β−カゼイン、フィブリノーゲン又はトロンボスポンジンのアミノ酸配列は、以下の参照文献中に見出すことができる。α2−抗プラスミン前駆体[M.Tone et al.,J.Biochem,102,1033(1987)]、β−カゼイン[L.Hansson et al,Gene,139,193(1994)]、フィブロネクチン[A.Gutman et al,FEBS Lett.,207,145(1996)]、トロンボスポンジン1前駆体[V.Dixit et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,83,5449(1986)]、R.F.Doolittle,Ann.Rev.Biochem.,53,195(1984)。
【0025】
−アンギオテンシンII:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe(E.C.Jorgensen et al,J.Med.Chem.,1979,Vol 22,9,1038−1044)及び[Sar,Ile]アンギオテンシンII:Sar−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Ile(R.K.Turker et al.,Science,1972,177,1203)のようなアンギオテンシンの基質又は阻害剤であるペプチド。
【0026】
−アンギオテンシンI:Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−His−Leu。
【0027】
好ましくは、本発明のペプチドは抗プラスミン又はアンギオテンシンIIペプチドからなる。抗プラスミンペプチドは、N末端から見て下記のアミノ酸配列を含む。
【0028】
(i)α2−抗プラスミン、即ちNH2−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Leu−Thr−Leu−Thr−Leu−Leu−Lys−OH、或いは下記のように1以上のアミノ酸が交換、追加又は除去されたその変異体。
NH2−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Leu−Thr−Leu−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−OH、
NH2−Asn−Gln−Glu−Ala−Val−Ser−Pro−Leu−Thr−Leu−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−OH、又は
NH2−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Gly−OH。
【0029】
(ii)カゼイン、即ちAc−Leu−Gly−Pro−Gly−Gln−Ser−Lys−Val−Ile−Gly。
【0030】
本発明の合成ペプチドは、P.Lloyd−Williams,F.Albericio and E.Girald;Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins,CRC Press,1997に記載されているように、通常の固相合成で得ることができる。
【0031】
好適な酵素の基質、拮抗剤又は阻害剤には、グルコース又はグルコース類似体(例えば、フルオロデオキシグルコース)、脂肪酸、或いはエラスターゼ、アンギオテンシンII又はメタロプロテイナーゼ阻害剤がある。好ましい非ペプチドのアンギオテンシンII拮抗剤はロサルタンである。
【0032】
好適な合成レセプター結合化合物には、エストラジオール、エストロゲン、プロゲスチン、プロゲステロン及び他のステロイドホルモン、ドーパミンD−1又はD−2レセプター或いはトロパミンのようなドーパミン輸送体用のリガンド、並びにセロトニンレセプター用のリガンドがある。
【0033】
生物学的標的成分は、好ましくは15000未満、最も好ましくは10000未満、理想的には5000未満の分子量を有する。好ましい生物学的標的成分は、ペプチド、タンパク質或いは酵素基質、酵素拮抗剤又は酵素阻害剤である。
【0034】
本発明の有機チオールは、好ましくは炭水化物を含まない。「炭水化物」という用語は、多糖、オリゴ糖又は単糖を意味する。
【0035】
本発明の有機チオールは、好ましくは1種以上の陰イオン結合置換基又は陽イオン結合置換基を含む。好適な「陰イオン結合置換基」は中性であるか又は正に帯電しており、水素結合供与基として働くか、或いは非共有的なやり方で陰イオンを静電的に結合するように働き得る。かかる陰イオン結合置換基には、以下の官能性置換基、即ちアミド、尿素、チオ尿素、アンモニウム、グアニジニウム、イミダゾリウム、ベンゾイミダゾリウム、アミジニウム、チオウロニウム及びピロールがある。
【0036】
ホウ素、スズ、ケイ素、水銀のような若干の元素も、ルイス酸陰イオンレセプターとして働き得る。場合によっては、陽イオン(例えば、Na+)が陰イオンと共に結合することもあるので、「陰イオン結合置換基」という語句は陰イオンと共に若干の陽イオンが存在することを排除しない。陰イオン結合置換基は、放射性同位体陰イオン(例えば、ヨウ化物又は過テクネチウム酸イオン)を非共有的に結合する。この場合、陰イオンは安定に結合され、したがって(例えば)インビボ又はインビトロでの溶媒による繰返し洗浄又は血漿タンパク質による攻撃でも除去されない。
【0037】
好適な「陽イオン結合置換基」は中性であるか又は負に帯電しており、ルイス塩基供与基として働くか、或いは非共有的なやり方で陽イオンを静電的に結合するように働き得る。かかる陽イオン結合置換基には、以下の官能性置換基、即ちポリエーテル(大環状クラウンエーテル、開鎖類似体又はこれらの組合せ)、クリプタンド、カリキサレン及びキノンがある。陽イオン結合置換基は、放射性同位体陽イオン(例えば、Tl+としての201Tl又は他の放射性金属イオン)を非共有的に結合する。この場合、陽イオンは安定に結合され、したがって(例えば)インビボ又はインビトロでの溶媒による繰返し洗浄又は血漿タンパク質による攻撃でも除去されない。
【0038】
好ましい正に帯電した陰イオン結合置換基は、式−ER13+-を有する。式中、
EはN又はPであり、
1は直鎖又は枝分れであってよいC1-10アルキル、C2-10アルコキシアルキル、C2-12アリール又はC2-12ヘテロアリールであり、
XはHal、OH、PF6、H2PO4、硝酸イオン、C1-8カルボン酸イオン又はC1-8スルホン酸イオンである。XがC1-8カルボン酸イオンである場合、好ましいX基は酢酸又は安息香酸イオンである。
【0039】
特に好ましい有機チオールは、還元形で存在する場合には式R2SHを有し、ジスルフィド形で存在する場合には式R2S−SR2を有する。式中、R2はC5-24アルキル、C5-24アラルキル又はC5-12アリールであり、R2は上記に定義したような1種以上の陰イオン又は陽イオン結合置換基で任意に置換されていてよい。好ましいかかる陰イオン又は陽イオン結合置換基は上記に定義した通りである。好ましくは、有機チオールは陰イオン結合置換基を含む。最も好ましくは、陰イオン結合置換基はヨウ化物、過テクネチウム酸又は過レニウム酸イオンを結合する。上述の通り、有機チオールは好ましくは還元形で存在し、即ち式R2SHを有する。
【0040】
本発明の放射性同位体は、インビボでの哺乳動物体の放射性医薬品イメージング又はインビボでの哺乳動物体の放射性医薬品治療のために適したものである。かかる同位体は当技術分野で知られている。好ましい放射性同位体は、99mTc、94mTc、186Re、188Re、123I、124I、125I又は131Iである。放射性同位体の好ましい化学形態は、
(i)テクネチウム放射性同位体については過テクネチウム酸塩、
(ii)レニウム放射性同位体については過レニウム酸塩、
(iii)ヨウ素放射性同位体についてはヨウ化物
である。これらは(例えば、98Mo/99mTc発生器から)最も容易に入手できる形態であるという利点を有する。これは、ナノ粒子を放射性標識するため、さらなる化学反応なしに放射性同位体を直接使用できることを意味する。このような簡易化は、放射性標識を達成するために例えば還元剤又は追加の化学処理の使用を必要とすることがある従来の方法に比べて利点である。
【0041】
本発明の好ましいナノ粒子には、第四アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム、ウロニウム及び他の生体適合性有機陽イオンから選択される有機陽イオンがドープされる。好ましくは、有機陽イオンはC4〜C16アルキル鎖からなり、最も好ましくはC8〜C12アルキル鎖からなり、C8〜C10アルキル鎖が特に好ましい。「ドープ」という用語は、ナノ粒子がその組成中に一定比率の有機陽イオンを含むことを意味する。その場合、[有機陽イオン]:[有機チオール]モル比は好適には約1:5〜1:20であり、好ましくは1:8〜1:12であり、最も好ましくは1:10である。モル比が1:10である場合、これはNP1個当たり約1モルの有機陽イオンに相当する。有機陽イオンが第四アンモニウム塩である場合、好ましいかかる塩はAliquat336クロリドである。
【0042】
本発明の非放射性ナノ粒子は、Brust et al[JCS,Chem.Commun.,801−802(1994);ibid 1655−1656(1995)]の方法で得ることができる。Brustは、安定化リガンド(通常はドデカンチオールのようなアルカンチオール)の存在下でAuCl4−の水素化ホウ素ナトリウム還元を行う二相系を使用している。この方法で製造されるナノ粒子は粒度がわずかに変動するが、すべてが10nm未満の直径を有している。ドープトナノ粒子は、適当な溶媒中において予備成形されたナノ粒子を所要モル比の有機陽イオンと混合することで製造できる。
【0043】
さらに生物学的標的成分を含む本発明の非放射性ナノ粒子は、置換反応(即ち、NP親油性コーティングの既存チオールの一部の置換)を用いて製造できる。これは「実験の部」セクションに記載されている。ある種の生物学的標的成分はチオール官能基を有し(例えば、システインアミノ酸を含み)、したがってさらなる官能化が不要なこともある。多くの場合には、チオール誘導体化された生物学的標的成分が必要である。かかるチオール誘導体化は、Mishra et al[Find.Exp.Clin.Pharmacol.,24(10),653−660(2002)]及びMcCall et al[Bioconj.Chem.,(3),222−226(1990)]によって記載されたように2−イミノチオランとの反応で達成でき、或いは実施例に記載されるようにチオクト酸による官能化で達成できる。チオクト酸法は、金属表面にキレート化ジチオールを生成するジスルフィド誘導体を生じ、したがって一層良好に単座チオールを置換できるので好ましい。
【0044】
第2の実施形態では、本発明は、哺乳動物への投与に適した形態で、第1の実施形態に係る複数の放射性標識ナノ粒子を生体適合性キャリヤーと共に含んでなる放射性医薬品組成物を提供する。「生体適合性キャリヤー」は、組成物が生理学的に許容できるようにして(即ち、毒性又は過度の不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)、放射性標識ナノ粒子を懸濁できる流体(特に液体)である。生体適合性キャリヤーは、好適には、無菌の無発熱原性注射用水、(注射用の最終生成物が等張になるようにして有利に平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、生体適合性対イオンを有する血漿陽イオンの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他のイオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。好ましくは、生体適合性キャリヤーは無発熱原性注射用水又は等張食塩水である。
【0045】
かかる放射性医薬品は、無菌保全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したシール(例えば、クリンプ加工された隔壁シールクロージャー)を備えた容器に入れて供給される。かかる容器は、1回分又は複数回分の患者用量を含み得る。好ましい複数用量容器は、複数回分の患者用量を含む(例えば、10〜30cm3の容積を有する)単一のバルクバイアルである。かくして、臨床的状況に合わせ、製剤の実用寿命中に様々な時間間隔で1回分の患者用量を臨床グレードの注射器に抜き取ることができる。予備充填注射器は1回分の患者用量(即ち、「単位用量」)を含むように設計され、したがって臨床用に適した使い捨て又は他の注射器である。予備充填注射器には、施術者を放射性用量から保護するための注射器シールドを任意に設けることができる。好適なかかる放射性医薬品注射器シールドは当技術分野で公知であり、好ましくは鉛又はタングステンからなる。
【0046】
本発明の放射性医薬品は、下記の第5の実施形態に記載されるようなキットから製造できる。別法として、放射性医薬品を無菌製造条件下で製造して所望の無菌生成物を得ることができる。放射性医薬品はまた、非無菌条件下で製造した後、例えばγ線、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いて終末滅菌を施すこともできる。好ましくは、本発明の放射性医薬品はキットから製造される。
【0047】
第3の実施形態では、本発明は、第1の実施形態の放射性標識ナノ粒子の製造方法であって、
(i)第1の実施形態で記載したような非放射性の未標識ナノ粒子を用意する段階、
(ii)段階(i)からのナノ粒子を任意に精製する段階、及び
(iii)段階(i)又は段階(ii)からの予備成形ナノ粒子を放射性同位体源と反応させる段階であって、放射性同位体はナノ粒子に非共有結合している段階
を含んでなる方法を提供する。
【0048】
放射性標識ナノ粒子が生物学的標的成分を含む場合には、最初に有機チオールからなる親油性コーティングを有する未標識ナノ粒子を製造することでそれを導入するのが最も簡便である。次いで、チオールから誘導され又はチオールを含有する生物学的標的成分を用いて初期の有機チオールの一部を置換すれば、所望の生成物を得ることができる。いずれの状況でも、放射性標識段階は最後の段階である。チオクト酸共役を用いるこれの実例の1つを、生物学的標的ベクターに関する図式1に示す。
【0049】
【化1】

本発明は放射性標識NPを提供するが、NPは第1段階として非放射性状態で合成される。このようにすれば、存在する放射性同位体に関連する厄介な問題なしにNPの性質(粒度、表面電荷及び表面コーティング)を変化させることができる。任意の第2段階として、生物学的標的成分を導入することで、同じNPを様々な特定のインビボ標的化用途のために使用することが可能となる。最後の段階では、放射性核種の選択を許す方法により、NPが高い取込み率で放射性標識される。かかる方式は、前例のない融通性を提供し、放射性標識を大幅に簡易化し、NP放射性医薬品の製造のために非放射性キットの使用を可能にする。
【0050】
最後の段階では、放射性核種の選択を許す方法により、NPが高い取込み率で放射性標識される。重要な特徴は、放射性同位体の最も好都合な化学形態(例えば、放射性ヨウ化物又は過テクネチウム酸塩)に合わせて非放射性NPを製造できることである。これは、還元体又は酸化剤のような追加の試薬の必要性を最小限に抑えながら、放射性標識を非常に温和な条件下で実施できることを意味する。これは作業員にとっての便宜を最大にすると共に、潜在的に敏感な生物学的標的成分が放射性標識中に不用意に化学劣化を受けるリスクを最小にする。
【0051】
放射性標識を実施した後、例えば未結合の放射性同位体を除去するための放射性標識NPの精製を任意の追加段階として実施できる。好適な精製方法は、ナノ粒子を破壊することなく、ナノ粒子と「遊離」放射性同位体との大きい粒度差を利用して水性相中で分離を行うものである。好ましいかかる方法は、セファデックスカートリッジを用いるセファデックスゲルクロマトグラフィーであり、実施例9に記載されている。ITLCも分離をもたらすが、分取用クロマトグラフィーとしてよりも分析用として好適である。
【0052】
第4の実施形態では、本発明は、第2の実施形態の放射性医薬品組成物の製造用キットであって、第1及び第3の実施形態の未標識ナノ粒子を含んでなるキットを提供する。かかるキットは、好ましくは無菌の非発熱性形態で未標識ナノ粒子を含んでいる結果、無菌の放射性同位体源と反応させれば、最小数の操作で所望の放射性医薬品が得られる。このような事柄は、放射性同位体が比較的短い半減期を有する放射性医薬品に関して特に重要であると共に、取扱いの容易性、したがって放射線薬剤師に対する放射線量の低減のため特に重要である。したがって、かかるキットの再構成用の反応媒質は好ましくは上記に定義したような「生体適合性キャリヤー」であり、最も好ましくは水性である。
【0053】
好適なキット容器は、注射器による溶液の添加及び抜取りを許しながら、無菌保全性及び/又は放射能安全性、さらに任意には不活性ヘッドスペースガス(例えば、窒素又はアルゴン)の維持を可能にする密封容器からなる。好ましいかかる容器は隔壁で密封したバイアルであり、気密のクロージャー上に(通例はアルミニウムの)オーバーシールがクリンプ加工される。かかる容器は、(例えば、ヘッドスペースガスの変更又は溶液のガス抜きのために)所望される場合にはクロージャーが真空に耐え得るという追加の利点も有している。
【0054】
非放射性キットは、任意にはさらに、放射線防護剤、抗菌防腐剤、pH調整剤又は賦形剤のような追加成分を含むことができる。
【0055】
「放射線防護剤」という用語は、水の放射線分解から生じる含酸素遊離基のような高反応性遊離基を捕捉することで劣化反応(例えば、レドックス過程)を阻止する化合物を意味する。本発明の放射線防護剤は、好適には、アスコルビン酸、p−アミノ安息香酸(即ち、4−アミノ安息香酸)、ゲンチジン酸(即ち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、及び生体適合性陽イオンを有するこれらの塩から選択される。「生体適合性陽イオン」という用語は、イオン化して負に帯電した基と共に塩を形成する正に帯電した対イオンを意味する。この場合、前記正に帯電した対イオンも無毒性であり、したがって哺乳動物体(特に人体)への投与に適している。好適な生体適合性陽イオンの例には、アルカリ金属であるナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属であるカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンがある。好ましい生体適合性陽イオンはナトリウム及びカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。
【0056】
「抗菌防腐剤」という用語は、潜在的に有害な微生物(例えば、細菌、酵母又はかび)の増殖を阻止する薬剤を意味する。抗菌防腐剤はまた、用量に応じ、多少の殺菌性を示すこともある。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、再構成後の放射性医薬品組成物(即ち、放射性診断薬生成物そのもの)中におけるこのような微生物の増殖を阻止することである。しかし、抗菌防腐剤は、再構成前の本発明の非放射性キットの1種以上の成分中における潜在的に有害な微生物の増殖を阻止するためにも任意に使用できる。好適な抗菌防腐剤には、パラベン類(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはこれらの混合物)、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールがある。好ましい抗菌防腐剤はパラベン類である。
【0057】
「pH調整剤」という用語は、再構成されたキットのpHがヒト又は哺乳動物への投与のために許容し得る範囲(およそpH4.0〜15.0)内にあることを保証するために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調整剤には、トリシン、リン酸塩又はトリス(即ち、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン)のような製剤学的に許容し得る緩衝剤、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物のような製剤学的に許容し得る塩基がある。抱合体を酸性塩の形態で使用する場合には、pH調整剤を任意に独立のバイアル又は容器に入れて供給すればよい。その結果、キットのユーザーは多段操作の一部としてpHを調整することができる。
【0058】
「賦形剤」という用語は、製造及び凍結乾燥中における材料の取扱いを容易にすることができる製剤学的に許容し得る増量剤を意味する。好適な賦形剤には、塩化ナトリウムのような無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースのような水溶性糖又は糖アルコールがある。
【0059】
キット中に使用するためのNPを無菌製造条件下で使用することで、所望される無菌の非発熱性材料を得ることができる。また、NPを非無菌条件下で使用した後、例えばγ線、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いて終末滅菌を施すこともできる。好ましくは、NPは無菌の非発熱性形態で使用される。最も好ましくは、無菌の非発熱性NPが上述のような密封容器内で使用される。
【0060】
第5の実施形態では、本発明は、インビボでの放射性医薬品イメージングに使用するための薬剤の製造における第1の実施形態の放射性標識ナノ粒子の使用を提供する。かかる放射性医薬品イメージングは、第2の実施形態の放射性医薬品組成物を予め投与された哺乳動物体の罹患状態のインビボでの診断イメージングに際して特に有用である。本発明のNPはインビボで一定範囲の生物学的標的に適合させ得る融通性を有するので、各種のイメージング用途が可能である。
【0061】
「予め投与された」という用語は、臨床医が関与する段階であって、例えば静脈内注射で造影剤を患者に投与する段階が既に実施されたことを意味している。この実施形態は、哺乳動物体の罹患状態のインビボでの診断イメージング用の診断薬を製造するために第1の実施形態の造影剤を使用することを包含する。
【0062】
第6の実施形態では、本発明は、インビボでの放射性医薬品治療に使用するための薬剤の製造における第1の実施形態の放射性標識ナノ粒子の使用を提供する。かかる放射性医薬品治療は、第2の実施形態の放射性医薬品組成物を予め投与された哺乳動物体の罹患状態のインビボでの治療に際して特に有用である。「予め投与された」という用語は、上記に定義した通りである。
【実施例】
【0063】
下記に詳述する非限定的な実施例で本発明を例証する。実施例1は、4種の有機チオールコーティングを有する金ナノ粒子の製造を示す。実施例2は、チオクト酸とアミンとの反応による陰イオン結合アミド置換基をもったチオールの合成を示す。化合物2は対照品として合成されたのに対し、化合物3〜5は長い脂肪鎖又はアミド部分近くに芳香環を設けることで陰イオン結合部位の疎水性を高めるように設計された。化合物6は、単純なモノポーダルリガンドに比べて予備組織化の増大を示し、したがって陰イオン結合の向上を示すように設計された。化合物7及び8は、化合物7の場合にはプロトン付加により、また化合物8の場合にはNa+イオンの錯体化により、アミド部分の近くに電荷を導入するように設計された。かかる電荷は、静電相互作用によって陰イオン結合を向上させることができる。
【0064】
こうして得られるアミドはいずれも2つの陰イオン結合部位を有するが、各々は別の重要な特徴も有している。化合物9はアダマンチル単位を含むが、これはそれ自体で疎水性環境を与えることに加えてβ−シクロデキストリンのキャビティ内に強く結合することが以前に証明されている。化合物10は、アントラセン部分が公知の発蛍光団であるので、蛍光測定による陰イオン結合事象の検査を可能にするように設計された。さらに、アントラセン部分はアミド結合部位に対する疎水性環境としても作用するはずである。
【0065】
実施例3は、官能化チオールを結合したNPの製造を示す。実施例4は、陰イオン結合部位(第四アンモニウム置換基)を有するチオールの合成を示す。実施例5は非共有結合したイオン性陰イオン結合部位を有するNPを得る方法を示す。実施例6はナノ粒子の放射性標識手順を示す。実施例7は放射性標識NPの安定性を検討する。これは、図2〜4と共に、(過テクネチウム酸塩について)以下のことを示している。
・アミドリガンドの存在は、過テクネチウム酸塩の抽出率又は保持率を顕著に高めないように思われる。
・Aliquatによるナノ粒子のドーピングは、過テクネチウム酸陰イオンの抽出率及び保持率を実質的に向上させる。
・塩化物は過テクネチウム酸塩に対する効果的な競合剤である。いずれの場合にも過剰に存在するものの、増加した濃度の塩化物水溶液の存在下では過テクネチウム酸塩に対する金ナノ粒子の親和性が大幅に低下する。Aliquatドーピングが高い過テクネチウム酸塩親和性をもたらすNP13の場合には、かかる低下は最も少ない。さらに、過剰のヨウ化ナトリウムの存在は過テクネチウム酸塩の抽出を完全に排除するが、これはヨウ化物陰イオンがナノ粒子結合部位に対して塩化物よりも効果的に過テクネチウム酸塩と競合することを示している。
【0066】
実施例7及び図2〜4は、(放射性ヨウ化物について)以下のことを示している。
・ヨウ化物の抽出率はアミドリガンドの存在によって高まる。
・クロロホルム−ナノ粒子溶液の保持率は実質的に定量的であり、リガンド系には無関係である。したがって、抽出/結合は本質的に不可逆である。
・帯電したAliquatドープトナノ粒子の存在は抽出率を実質的に高める。
【0067】
実施例8は、NP14を123I−ヨウ化物で成功裡に放射性標識できるが、99mTc−過テクネチウム酸塩では標識されないことを示している。実施例9は、放射性標識ナノ粒子をクロマトグラフィーで遊離放射性同位体から分離できることを示している。標識ナノ粒子は、(カートリッジのコンディショニングを含め)10〜15分以内で、未結合標識から極めて容易に分離できる。次いで、得られた画分を希釈又は濃縮することで所望の放射能濃度に調整できる。
【0068】
以下の略語を使用する。
【0069】
Boc=tert−ブチルオキシカルボニル。
【0070】
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン。
【0071】
DMF=N,N’−ジメチルホルムアミド。
【0072】
HATU=O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート。
【0073】
ITLC=インスタント薄層クロマトグラフィー。
【0074】
PEG=ポリエチレングリコール。
【0075】
RAC=放射能濃度。
【0076】
RCP=放射化学純度。
【0077】
TF=トリフルオロ酢酸。
【0078】
概説
すべての金ナノ粒子系は、NMR及びUV−可視分光法並びに元素分析を用いて特性決定した。ナノ粒子表面にグラフトしていないリガンドの存在は、プロトンNMRスペクトル抽出の鋭いピークから推論できた。UV−可視スペクトルは表面プラズモンバンドを含むことが証明されたが、これは粒度が小さいことに原因する金ナノ粒子系の特徴である[Kriebig et al,“Optical Properties of Metal Clusters”;Springer:Berlin,1995]。単純なチオール保護ナノ粒子は窒素を含まないのに対し、置換系は窒素を含むので、置換度は単純なC/H/N元素分析を用いて計算した。
【0079】
実施例1:チオールコーティングを有する金ナノ粒子の製造
Brust法[JCS,Chem.Commun.,801−802(1994)]を用いて、記載されるすべてのチオール被覆金ナノ粒子系を製造した。広範囲の有機チオールが商業的に入手できる。本発明で製造した金保護ナノ粒子は下記の通りであった。
【0080】
【表1】

NP2、NP9及びNP14に関しては、実施例3に記載されるように、まずNP1を製造し、次いでドデカンチオールを新しいチオールで置換するのが最も簡便であることが判明した。
【0081】
各ナノ粒子の表面プラズモン共鳴バンドに対応するUV吸収極大(単位nm)は、497.6(NP2)、501.0(NP4)、498.4(NP9)及び518.0(NP14)であった。
【0082】
実施例2:アミド官能化チオールの製造
使用したアミンの多くは商業的に入手可能であった。そうでないものについての合成法は段階(b)に示す。
【0083】
段階(a):アミンとチオクト酸との反応
アミド水素結合基を含む一定範囲の様々なジスルフィド官能化リガンドの合成を、EDCI[1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、Aldrich社]の存在下でラセミ性チオクト酸(Aldrich社)を該当するアミンと結合することにより高い収率(70〜90%)で実施した。図式2及び表2を参照されたい。チオクト酸アミド(化合物2〜10)は、下記に記載するいくつかの因子を念頭に置きながら設計し、NP1との置換反応を検討した。
【0084】
【化2】

【0085】
【表2】

段階(b):アミンの合成
化合物9a及び10a用のアミン前駆体は、部分Boc保護方法(図式3)によって製造した。
【0086】
【化3】

以前に報告されたようにしてモノBOC保護エチレンジアミンを製造した[Fader et al,J.Org,Chem.,66,3372−3379(2001)]。1−アダマンタンカルボニルクロリドは商業的に入手できる。アントラセン−9−カルボニルクロリドは文献記載の方法に従って製造した[Nakatsuji et al,J.Org,Chem.,67,916−921(2002)]。化合物11aは商業的に入手できる(Sigma−Aldrich社)。
【0087】
化合物2
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):5.42(br,1H,NH),3.51(m,1H,SCH),3.01−3.24(m,4H,NHCH2 & SCH2),2.40(m,1H,SCH2CH2CH),2.11(t,3J=6.74,2H,COCH2),1.85(m,1H,SCH2CH2CH),1.62(m,4H,SCHCH2 & NHCH2CH2),1.42(bm,4H,COCH2CH2 & SCHCH2CH2),1.22(br,6H,CH3(CH2)3),0.82(br,6H,CH3)。
【0088】
化合物3
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):5.36(br,1H,NH),3.50(m,1H,SCH),3.01−3.20(m,4H,NHCH2 & SCH2),2.38(m,1H,SCH2CH2CH),2.11(t,3J=6.74,2H,COCH2),1.84(m,1H,SCH2CH2CH),1.61(m,4H,SCHCH2 & NHCH2CH2),1.40(m,4H,COCH2CH2 & SCHCH2CH2),1.22(br,22H,CH3(CH2)11),0.80(br,6H,CH3)。
【0089】
化合物4
1H NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):7.36(m,2H,ArH),7.31(m,3H,ArH),5.80(br,1H,NH),4.44(d,3J=5.61Hz,2H,NHCH2),3.51(dd,31=8.39Hz,32=6.25Hz,1H,SCH),3.10−3.19(m,2H,SCH2),2.44(td,2J=12.46Hz,3J=6.62Hz,1H,SCH2CH2CH),2.22(t,3J=7.52,2H,COCH2),1.89(td,td,2J=12.87Hz,3J=6.83Hz,1H,SCH2CH2CH),1.68(m,4H,SCHCH2 & COCH2CH2),1.47(m,2H,SCHCH2CH2)。
【0090】
化合物5
1H NMR(500MHz,CDCl3)δ(ppm):7.45(d,3J=8.54Hz,2H,ArH),7.37(d,3J=8.54Hz,2H,ArH),7.24(br,1H,NH),3.58(m,1H,SCH),3.06−3.23(m,2H,SCH2),2.45(m,1H,SCH2CH2CH),2.35(t,3J=7.24,2H,COCH2),1.90(td,2J=13.03Hz,3J=6.68Hz,1H,SCH2CH2CH),1.70(m,4H,SCHCH2 & COCH2CH2),1.52(m,2H,SCHCH2CH2),1.29(s,9H,CH3)。
【0091】
化合物6
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):7.34(m,2H,ArH),7.23(m,2H,ArH),5.86(br,2H,NH),4.46(d,3J=5.42Hz,NHCH2),3.60(m,2H,SCH),3.18(m,4H,SCH2),2.48(m,2H,SCH2CH2CH),2.27(t,3J=7.26Hz,4H,COCH2),1.95(m,2H,SCH2CH2CH),1.73(m,8H,SCHCH2 & COCH2CH2),1.51(m,4H,SCHCH2CH2)。
【0092】
化合物7
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):6.03(br,1H,CONH),3.65(m,1H,SCH),3.26(m,2H,NHCH2),3.04−3.18(m,2H,SCH2),2.40(m,3H,SCH2CH2CH & (CH3)2NCH2),2.21(s,6H,NCH3),2.17(t,3J=7.93Hz,2H,COCH2),1.84(m,2H,SCH2CH2CH),1.61(m,4H,SCHCH2,COCH2CH2),1.42(m,2H,SCHCH2CH2)。
【0093】
化合物8
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):7.40(m,1H,ArH),7.15(br,2H,NH),6.85(m,2H,ArH),4.16(m,4H,ArOCH2),3.93(m,4H,ArOCH2CH2),3.80(br,8H,OCH2),3.62(m,1H,SCH),3.11−3.26(m,2H,SCH2),2.49(m,1H,SCH2CH2CH),2.38(t,3J=7.63Hz,2H,COCH2),1.96(m,1H,SCH2CH2CH),1.78(m,4H,SCHCH2 & COCH2CH2),1.55(m,2H,SCHCH2CH2)。
【0094】
化合物9
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):6.61(br,1H,CONH),6.48(br,1H,CONH),3.62(m,1H,SCH),3.40(bm,4H,2xNHCH2),3.09−3.24(m,2H,SCH2),2.47(m,1H,SCH2CH2CH),2.29(t,3J=7.61Hz,2H,COCH2),2.03(br,3H,アダマンチルCH),1.90(m,7H,SCH2CH2CH & COC(CH2)3),1.74(m,10H,SCHCH2,COCH2CH2 & アダマンチルCH2),1.51(m,2H,SCHCH2CH2)。
【0095】
化合物10
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):8.58(s,1H,(ArC)2CH),8.02(m,4H,ArCCHCH),8.57(m,4H,ArCCHCH),6.78(br,1H,CONH),6.60(br,1H,CONH),3.95(m,2H,CH2NH),3.63(m,2H,CH2NH),3.49(m,1H,SCH),3.04−3.22(m,2H,SCH2),2.42(m,1H,SCH2CH2CH),2.23(t,3J=7.10,2H,COCH2),1.87(m,1H,SCH2CH2CH),1.65(m,4H,SCHCH2 & COCH2CH2),1.47(m,2H,SCHCH2CH2)。
【0096】
化合物11
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):6.27(br,1H,NH),3.40−3.80(m,24H,OCH2,OCH,SCH),3.27(m,2H,NHCH2),3.00−3.16(m,2H,SCH2),2.49(m,1H,SCH2CH2CH),2.13(t,3J=7.33Hz,2H,COCH2),1.85(m,1H,SCH2CH2CH),1.61(m,4H,SCHCH2 & COCH2CH2),1.40(m,2H,SCHCH2CH2)。
【0097】
化合物9a
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):6.24(br,1H,CONH),3.35(bm,2H,NHCH2),2.89(t,3J=5.27Hz),2.07(br,5H,CH2NH2 & アダマンチルCH),1.89(COC(CH2)3),1.75(アダマンチルCH2)。
【0098】
化合物10a
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm):8.36(s,1H,(ArC)2CH),7.91(m,4H,ArCCHCH),7.40(m,4H,ArCCHCH),6.56(br,1H,CONH),3.58(q,3J=5.86Hz,2H,CONHCH2),2.91(t,3J=5.94Hz,2H,NH2CH2),1.24(br,2H,CH2NH2)。
【0099】
実施例3:官能化チオールを有するナノ粒子の製造
Beer et al[JCS J.Chem.Commun.,414−415(2004)]の方法を用いて該当するチオクト酸由来のジスルフィドリガンドによるNP1の置換反応を行うことにより、官能化チオールに基づくナノ粒子を製造した。そのためには、ナノ粒子及び官能化チオールをクロロホルム下で1週間撹拌し、次いで得られた沈殿をアセトン(又は他の適当な溶媒)で徹底的に洗浄して過剰の未反応リガンドを除去する(図1参照)。初期に置換が起こらないことが認められた場合には、ジスルフィド結合の還元によって反応を促進するために過剰のNaBH4を添加した。
【0100】
ドデカンチオールで保護されたナノ粒子NP1に関して試みた置換反応の結果を下記表3にまとめて示す。表記の通り、大抵の系は置換方法に従うことが判明した。クラウン系である化合物8の場合には、水素化ホウ素還元剤の存在下でのみ反応が起こることが認められた。しかし、得られたナノ粒子生成物はメタノール可溶性であり、これはナトリウム陽イオンに対するクラウンエーテル配位の可能性を表している。他方、化合物7の置換によって製造されたナノ粒子は、検討したすべての可能な溶媒系に対して極めて不溶であることが判明し、したがって適正に精製できなかった。
【0101】
【表3】

実施例4:第四アンモニウム塩で官能化したチオール
文献記載の方法[Ekambarm et al,J.Org,Chem.,32,2985−2987(1967)]を改変することで、ジスルフィド40を経由してトリメチルアンモニウムチオール41を製造した(図式4)。
【0102】
【化4】

実施例5:第四アンモニウム塩をドープしたチオール
クロロホルム溶液中で様々な質量比のNP1ナノ粒子及びAliquat(登録商標)336クロリドを混合することで、Aliquat(登録商標)336クロリド(Aldrich社)をドープしたナノ粒子NP1を製造した。得られた系をメタノール及びアセトンで徹底的に洗浄すると、1H NMR分光法で示されるようにAliquat陽イオンをナノ粒子から除去することができたので、Aliquatとナノ粒子との結合は可逆的であった。Aliquat(登録商標)のプロトンNMR共鳴のわずかな広がりは、これが実際にナノ粒子表面に結合していることを示唆していた。
【0103】
【化5】

NP1個当たりAliquat(登録商標)336クロリド約1分子のモル比を有するナノ粒子をNP13と名づけた(これは約1:10のAliquat:有機チオールモル比に相当している)。
【0104】
実施例6:ナノ粒子放射性標識手順
ナノ粒子NP1の1mg/cm3 CHCl3溶液100μLをクロロホルムで2cm3に希釈することで、50μg/mL‡のナノ粒子濃度を得た。この溶液に、実験に応じて1.95cm3の水(AnalaR水)又は塩溶液(0.9%又は0.023%w/v*)を添加した。得られた混合物に、該当する放射性陰イオン†の50μL溶液を添加した。得られた混合物を20秒間「旋回混合」し、次いで相分離を助けるために30分間遠心した。次に、ピペットで相を分割し、Wallac発光検出器を用いて水性層及びクロロホルム層の1cm3試料の放射性核種含有量を測定した。得られたカウント数から、関連する放射性同位体のパーセント分布、さらに推論によって総イオン分布を求めることができた。すべての実験は二重に実施した。
【0105】
‡濃度は若干の実験では変動した。
【0106】
*0.023%w/v溶液を得るためには、50μLの0.9%(NaCl又はNaI)溶液を水で約1.95mLに希釈した。
【0107】
†使用した過テクネチウム酸イオン=99mTcO4-。ヨウ化物イオン=123-。いずれの場合にも、Na+が対イオンであった。モル濃度は放射能情報から計算した。放射能は放射能同位体の4MBq/mL溶液50μLとして添加した。溶媒は、99mTcに対しては0.9%w/v NaClであり、123Iに対しては1M NaOHであった。
【0108】
実施例7:放射性標識ナノ粒子の安定性
これは逆抽出法によって確認した。
【0109】
実施例6から得られた有機層の500μL溶液に等容の水又は食塩溶液(0.9%w/v)を添加した。得られた混合物を20秒間「旋回混合」し、次いで相分離を助けるために30分間遠心した。次に、得られた相の100μL部分の放射性核種含有量を上記に詳述した方法に類似の方法で測定した。同位体崩壊及び試料サイズの結果として、これらの実験で記録された総カウント数はずっと低く、したがって固有誤差が大きいことは注目に値する。すべての実験は二重に実施した。
【0110】
結果を図2〜4に示す。
【0111】
実施例8:ナノ粒子14(NP14)の放射性標識
NP14を0.5mg/mLの希釈度となるように水に溶解した。必要に応じ、これらの溶液に水を添加してさらなる希釈を行った。すべての放射性標識実験について、エッペンドルフキュベット内において200μLのナノ粒子水溶液を20μLの活性放射性同位体溶液で処理した。放射能は、添加した同位体溶液20μL当たり約30MBqであった。得られた溶液をピペットで混合し、試料の放射能をイオンチャンバーで測定した。これは存在する放射性同位体の量の計算を可能にする。典型的な製造方法は下記の通りである。
【0112】
(a)99mTc−過テクネチウム酸塩
0.9%w/v食塩溶液中の発生器由来Na99mTcO4溶液50μL(放射能:131MBq)を50μLのH2Oで希釈した。次に、この溶液の4×20μL部分をNP14水溶液の200μLずつに添加した。試料をピペットで混合し、10分後に放射能を測定した。これは27.6MBqであった。試料をさらに10分間平衡させ、次いでITLC及びHPLC(下記参照)で分析した。全部で220μLの溶液は0.041%w/vの食塩を含んでいた。
【0113】
(b)123I−ヨウ化物
Na123Iの0.05M NaOH(aq)溶液7μL(放射能:150MBq)を0.01M NaOH(aq)で100μLに希釈した。次に、この溶液の5×20μL部分をナノ粒子水溶液の200μLずつに添加し、1つの「ブランク」200μL水溶液を対照品とした。試料をピペットで混合し、5分後に放射能を測定した。これは27.2MBqであり、ブランクは23.6MBqであった。試料をさらに10分間平衡させ、次いでITLC(下記参照)で分析した。全部で220μLの溶液は0.233mM NaOH(aq)であった。
【0114】
(c)分析手順
(i)ITLC
約5μLの放射性標識試料をITLCストリップ(シリカゲルを含浸させたガラス繊維シート)上にスポットした。ストリップは長さ約20cmであった。次に、溶離液がTLCストリップのほぼ頂部に達するまで、これを0.9%w/v食塩溶液で溶出した。シリカゲルを乾燥させ、次いでイメージングプレート上に配置し、Perkin−Elmer InstantImagerスキャナー内で走査した。金ナノ粒子はこれらの条件下では基線上に留まる(rf=0)のに対し、遊離NaTcO4及びNaIは溶媒と共に溶出する(rf〜1)。
【0115】
(ii)セファデックスG−25
0.9%w/v食塩溶液中の10mMリン酸ナトリウム緩衝液10mLを用いてNAP−5カラムを平衡させた。これに、200μLの放射性標識溶液を300μLの溶離液(0.9%w/v食塩溶液中の10mMリン酸ナトリウム緩衝液)と共に添加した。これをセファデックス中に入れ、次いで1mLの緩衝液で溶出した。溶出した最初の1mLを捕集し、以後の画分は得なかった。次に、イオンチャンバーを用いて溶出分の放射能を測定し、粗試料の原放射能と比較することができた。対照実験では、Na123Iはカラムからほとんど溶出しなかった。
【0116】
(d)結果
NP14による過テクネチウム酸塩の取込みは認められなかった。しかし、123I−ヨウ化物については取込みが認められた。
【0117】
【表4】

実施例9:123I−標識ナノ粒子(NP14)の精製
1時間にわたってヨウ化物放射性標識と平衡させた123I−標識NP14(実施例8)の水性試料を、実施例8と同様にしてセファデックスG−25クロマトグラフィーに供したところ、5.1%の収率が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】官能化チオールを有するナノ粒子の製造方法を示す略図である。
【図2】様々なナノ粒子(NP1、NP2など)に関する99mTcO4-の抽出率及び保持率の比較を示すグラフである。
【図3】NP1、NP2、NP9、NP10及びNP13に対する塩化物及びヨウ化物添加の効果を示すグラフである。
【図4】様々なナノ粒子(NP)系に関するヨウ化物の抽出率の比較を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)銅、銀、パラジウム又は金或いはこれらの組合せからなる金属コア、及び
(ii)前記コアに結合された多数のC2-25有機チオールからなる、前記コアを取り巻く親油性コーティングであって、前記チオールは同一でも相異なっていてもよく、還元形(即ち、チオール形)又は酸化形(即ち、ジスルフィド形)或いはこれらの組合せであってよい親油性コーティング
を有するナノ粒子を含んでなり、前記ナノ粒子が前記ナノ粒子に非共有結合した1種以上の放射性同位体で標識されている放射性標識ナノ粒子。
【請求項2】
有機チオールが還元形(即ち、チオール形)である、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項3】
金属コアが金からなる、請求項1又は請求項2記載のナノ粒子。
【請求項4】
さらに生物学的標的成分を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
生物学的標的成分がペプチド、タンパク質、酵素基質、酵素拮抗剤又は酵素阻害剤からなる、請求項4記載のナノ粒子。
【請求項6】
生物学的標的成分が金属コアに結合されたチオール官能性基からなる、請求項4又は請求項5記載のナノ粒子。
【請求項7】
親油性コーティングが、1種以上の陰イオン結合置換基をさらに含む一定比率のチオールを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
陰イオン結合置換基が正に帯電していて、式−ER13+-(式中、EはN又はPであり、R1は直鎖又は枝分れであってよいC1-10アルキル、C2-10アルコキシアルキル、C2-12アリール又はC2-12ヘテロアリールであり、XはHal、OH、PF6、H2PO4、硝酸イオン、C1-8カルボン酸イオン又はC1-8スルホン酸イオンである。)を有する、請求項1記載のナノ粒子。
【請求項9】
親油性コーティングが、1種以上の陽イオン結合置換基をさらに含む一定比率のチオールを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
チオールが式R2SH又はR2S−SR2(式中、R2はC5-24アルキル、C5-24アラルキル又はC5-12アリールであり、R2は1種以上の陰イオン結合置換基又は陽イオン結合置換基で任意に置換されていてよい。)を有する、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
さらに、第四アンモニア塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム、ウロニウム及び他の生体適合性有機陽イオンから選択される有機陽イオンを約1:5〜1:20の[有機陽イオン]:[有機チオール]モル比で含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
放射性同位体がインビボでの哺乳動物体の放射性医薬品イメージングのために適している、請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項13】
放射性同位体がインビボでの哺乳動物体の放射性医薬品治療のために適している、請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項14】
放射性同位体が99mTc、94mTc、186Re、188Re、123I、124I、125I又は131Iからなる、請求項12又は請求項13記載のナノ粒子。
【請求項15】
放射性同位体の化学形態が、
(i)テクネチウム放射性同位体については過テクネチウム酸塩、
(ii)レニウム放射性同位体については過レニウム酸塩、
(iii)ヨウ素放射性同位体についてはヨウ化物
である、請求項14記載のナノ粒子。
【請求項16】
哺乳動物への投与に適した形態で、請求項1乃至請求項15記載の複数の放射性標識ナノ粒子を生体適合性キャリヤーと共に含んでなる放射性医薬品組成物。
【請求項17】
1人の患者用として適した放射能量を有し、適当な注射器又は容器に入れて供給される、請求項16記載の放射性医薬品組成物。
【請求項18】
請求項1乃至請求項15記載の放射性標識ナノ粒子の製造方法であって、
(i)請求項1乃至請求項11に記載の非放射性の未標識ナノ粒子を用意する段階、
(ii)段階(i)からのナノ粒子を任意に精製する段階、及び
(iii)段階(i)又は段階(ii)からの予備成形ナノ粒子を放射性同位体源と反応させる段階であって、放射性同位体はナノ粒子に非共有結合している段階
を含んでなる方法。
【請求項19】
請求項16又は請求項17記載の放射性医薬品組成物の製造用キットであって、請求項1乃至請求項10に記載の非放射性の未標識ナノ粒子を含んでなるキット。
【請求項20】
未標識ナノ粒子が無菌の非発熱性形態である、請求項19記載のキット。
【請求項21】
インビボでの放射性医薬品イメージングに使用するための薬剤の製造における、請求項1乃至請求項15記載の放射性標識ナノ粒子の使用。
【請求項22】
インビボでの放射性医薬品治療に使用するための薬剤の製造における、請求項1乃至請求項15記載の放射性標識ナノ粒子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−501332(P2009−501332A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520959(P2008−520959)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002620
【国際公開番号】WO2007/010211
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【出願人】(508012909)ユニバーシティ・オブ・オックスフォード (1)
【Fターム(参考)】