放射性標識合成ポリマーのための方法
本発明は、放射性標識合成ポリマーを製造する方法であって、該方法は、長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む水溶性媒体中の放射性微粒子コアを有する、炭素封入ナノ粒子と合成ポリマーを接触させる工程、
を含む方法に関する。
を含む方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その参照としてここに取り込まれる2008年4月24日に出願されたオーストラリア国仮特許出願第2008902064号の利益を請求するものである。
【0002】
本願発明は、医薬品及び獣医学的製品に使用するための合成ポリマー(プラスチック類)のような放射性標識された巨大分子集合体の製造方法に関する。より詳細な態様において、本発明は、診断学的イメージング、局所放射線療法及び標的放射線療法に使用するための放射性標識された合成ポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
放射性標識合成ポリマーの製造方法は当業者によく知られている。従来の方法は、塩の結合(即ちイオン交換樹脂と類似する)かまたは錯体化学の使用のどちらかにより放射性核種を結合させ得る化学的リンカーの使用を含む。典型的にはこれらの方法は、ポリマー上に得られた標識の限られた密度に起因した放射性核種の低い保持または低い比放射能が(それぞれに)問題となっていた。また最近では、洗浄剤の錯体誘導体が、炭素ナノチューブの表面を放射性標識するために使用されてきたが、これらは、その他の錯体誘導体同様低い標識率並びにこのような洗浄剤の低い生物学的許容性に問題があった(Liu等、Nature Nanotechnology、2巻:45−52頁(2007年))。錯体化学の使用のその他の限界は、与えられたキレート官能性が広範な種々の金属放射性核種に好適でないことである。金属を変化させることは、しばしば、錯体の化学的性質を変化させる必要を生じさせる。合成された放射性標識ポリマーは、種々の医学及び治療分野における使用が見出され得る。一例として、数種のインプラントが、循環器疾患及び癌の治療のための医薬に使用されている。したがって例えば、ステント(短円筒形管)は、血管の開通性を増すために冠動脈中に移植され、そしていくつかのステントの合成ポリマー表面は、血管内閉鎖の再発を防止するために再狭窄の阻害剤を含み得る。放射性同位元素を用いた血管内の小線源療法は、術後間もない間の再閉鎖を防止するための一つの方法であり、ステントは平滑筋の増殖を阻害するために放射性同位元素を含む。癌の治療において、放射性標識合成ポリマーは、腫瘍を除去し得る放射性同位元素の治療量の局所送達の目的で、幾つかの形態、例えば、選択された臓器へむけて輸血血液供給中に局所的に注入され得る、ミクロスフェア(マイクロスフェア)に使用され得る。ポリマー上への標識の高いレベルの比放射能及びポリマー上の放射性核種の強い保持は、治療方針の場で、高い線量の放射能が少量の物質で送達されそして照射の効果を標的臓器に確実に限定し得るために望まれる。放射性標識合成ポリマーの分野において知られた方法は、1)合成ポリマーが標識される程度、及びまたは2)標識の結合力、及び3)その広範な種々の金属放射性核種への適用により、限定されている。
【0004】
公知の方法の欠点または限界の一つまたはそれ以上を解消または回避する、放射性標識合成ポリマーの改善された合成方法のための必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Liu等、Nature Nanotechnology、2巻:45−52頁(2007年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、放射性標識合成ポリマー(プラスチック)の改善された製造方法を提供するか
又は当該技術分野への代替手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、放射性合成ポリマーの製造方法が提供され、該方法は、静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む水溶性媒体中の放射性微粒子コアを有する、炭素封入ナノ粒子複合材料と合成ポリマーを接触させる工程、を含む。
一つの実施態様において、前記炭素封入ナノ粒子複合材料は、フィブリンライト(FiblinLite)である。
一つの実施態様において、前記炭素封入ナノ粒子複合材料は、陰イオン性界面活性剤を含む。一つの実施態様において、陰イオン性界面活性剤は、デオキシコール酸ナトリウムである。
一つの実施態様において、前記電解質濃度及びpHは短距離引力を促進するために選ばれる。
一つの実施態様において、水性媒体は、陰イオン性界面活性剤を含む。一つの実施態様において、陰イオン性界面活性剤は、デオキシコール酸ナトリウムである。
一つの実施態様において、前記電解質は、単純電解質である。一つの実施態様において、前記単純電解質は、Na,K及びCaからなる群より選ばれる。
一つの実施態様において、前記水性媒体の単純電解質濃度は、約1ミリモル以上乃至約150ミリモルの範囲である。一つの実施態様において、前記水性媒体のpHは約3.5である。一つの実施態様において、前記水性媒体は、約15ミリモルのNaClに相当する電解質濃度を含み、そして、約3.5のpHを有する。一つの実施態様において、前記水性媒体は、約80ミリモルのNaClに相当する電解質濃度を含み、そして、ほぼ中性のpHを有する。
一つの実施態様において、前記電解質は、ポリカチオンである。一つの実施態様において、前記ポリカチオンは、ポリリジン、プロタミン及びアプロチニンからなる群より選ばれる。
一つの実施態様において、前記水性媒体は、約5ナノモル以上乃至約4000ナノモルの範囲内の濃度でポリカチオンを含む。一つの実施態様において、前記水性媒体は、約30ナノモルのポリリジンに相当するポリカチオン濃度を含む。一つの実施態様において、前記水性媒体は、2500ナノモルのプロタミンに相当するポリカチオン濃度を含む。
一つの実施態様において、前記放射性微粒子コアは、99mTc、198Au、64Cu、51Cr、67Ga、68Ga,166Ho、111In、177Lu、103Pd、82Rb、186Re、153Sm、89Sr,90Y、89Zr及び192Irからなる群より選ばれる放射性同位元素または放射性核種を含む。
一つの実施態様において、前記放射性微粒子コアは、99mTcを含む。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート及びポリアクチド(PLA)からなる群より選ばれる。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、ポリマーの懸濁液または分散液を含む。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、巨大分子集合体の形態または巨大分子集合体を含む。一つの実施態様において、巨大分子集合体は、ポリマービーズを含む。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、カテーテル、繊維、ロッドまたはフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔質スポンジ、管またはステント、ビーズ又は公知のサイズのミクロスフェア(マイクロスフェア)の形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中又は表面に含まれる。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、組織、例えば腫瘍部分において、微小血管網中への取り込みを可能とするサイズ範囲のミクロ粒子を含む。
一つの実施態様において、該方法は、標識されていない合成ポリマーから及びまたは遊
離のナノ粒子複合材料から、放射性標識合成ポリマーを分離する方法を含む。
【0008】
本発明の第二の特徴において、放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と複合体を形成した合成ポリマーを含む放射性標識された物質が提供される。
一つの実施態様において、前記放射性標識された物質は医療用具である。
一つの実施態様において、前記放射性標識された物質は、多数の異なる放射性標識を含む。
一つの実施態様において、前記放射性標識された物質は、イメージングに好適な放射性標識及び治療用途に好適な放射性標識を含む。
【0009】
本発明の第三の特徴において、放射性標識医療用具を製造する方法であって、
該方法は、医療用具の中又は表面に該放射性標識合成ポリマーを取り込むために好適な条件下で、該医療用具と、放射性微粒子コアを含む炭素封入ナノ粒子複合材料を含む放射性合成ポリマーを接触させることを含む方法が提供される。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の医療用具が、診断用用具及び治療用用具から選ばれる。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の医療用具は、カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又は又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中または表面に含まれる放射性標識合成ポリマーを含む。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の用具は移植可能な医療用具である。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の用具はステントである。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の用具が、選択的な内部照射療法として選択された標的臓器の局所動脈血供給へ注入するために好適な合成ポリマーマイクロ粒子であり、該標的臓器の動脈毛細血管網中に埋め込まれる粒子サイズを含む。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の用具は、動物用用具である。
【0010】
第四の特徴において、本発明は、患者を放射線治療する方法であって、該方法は、
治療上有効量の放射性標識合成ポリマーを患者に投与することを含み;そして
該放射性標識合成ポリマーは、放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料に関連した合成ポリマーを含む、方法が提供される。
一つの実施態様において、前記放射性標識合成ポリマーは、ビーズ、ミクロ粒子又はマイクロスフェアの形態またはその中又は表面に取り込まれる。
一つの実施態様において、前記患者を放射線治療する方法は、選択的内部照射療法から選ばれる。
一つの実施態様において、前記治療は、癌の治療である。
一つの実施態様において、前記癌は、結腸癌、直腸癌、又は乳癌の原発巣由来の肝臓の転移(二次)癌である。一つの実施態様において、前記癌は、原発性肝癌(肝細胞癌)である。
【0011】
本発明の第五の特徴において、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)と複合体を形成した合成ポリマーを製造する方法であって、該方法は、
長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む、水性媒体中で放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と、合成ポリマーを接触させることを含む方法が提供される。
【0012】
本発明の第六の特徴において、合成ポリマー及び放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する、炭素封入ナノ粒子複合材料を含む複合
体が提供される。
【0013】
本発明の第七の特徴において、合成ポリマーを放射性標識する方法であって、
該方法は、以下の工程;
(a)長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む水性媒体中に放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と合成ポリマーを接触させる工程;そして
(b)非放射性前駆体(progenitor)を放射化させ放射性同位元素を生成させる工程、を含む方法が提供される。
【0014】
前記第五、第六及び第七の特徴の一つの実施態様において、前記放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)は、ホウ素の安定同位体(ホウ素−10)である。
前記第五、第六及び第七の特徴の一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、ポリマーの懸濁液又は分散液を含む。
前記第五、第六及び第七の特徴の一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又は又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中またはその表面に含まれる。
前記第五、第六及び第七の一つの実施態様において、該方法はさらに、前記合成ポリマーを医療用具の中又は表面に取り込むことを含む。一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、放射化に先立ち医療用具の中又は表面に取り込まれる。一つの実施態様において、前記方法は、該放射化に先立ち患者へ医療用具を投与することをさらに含む。一つの実施態様において、前記投与は、該放射化に先立ち患者中へ該医療用具を移植することを含む。
一つの実施態様において、前記放射化は、中性子線に前駆体(progenitor)を曝露させることを含む。
【0015】
第八の特徴において、本発明は、患者を放射線治療する方法であって、該方法は以下の工程、
放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と、合成ポリマーを含む複合体の量であって、該量は、該非放射性前駆体(progenitor)が放射化された場合に、治療上有効量である量を患者に投与する工程、そして、非放射性前駆体(progenitor)を放射化させ、放射性同位元素を生成させる工程を含む方法が提供される。
一つの実施態様において、前記放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)がホウ素の安定同位体(ホウ素−10)である。
一つの実施態様において、前記放射化は、中性子線に前駆体(progenitor)を曝露させることを含む。
【0016】
第九の特徴において、本発明は、患者の医療処置のイメージング方法であって、該方法は、合成ポリマー及び放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料を含む複合体を患者に投与し、そして前記患者中の該複合体を検出する方法が提供される。
一つの実施態様において、前記医学的方法は、病気の局所治療を含む。
一つの実施態様において、前記検出は、該放射線のガンマカメライメージングを含む。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、ミクロ粒子又はナノ粒子を含む。
一つの実施態様において、前記方法は、病気の治療に好適な放射性同位元素、イメージングに好適な放射性同位元素またはそれらの組み合わせを患者に投与しすることを含む。
一つの実施態様において、前記複合体は、二重標識合成ポリマーを含む。一つの実施態様において、前記二重標識合成ポリマーは、治療に好適な放射性同位元素及びイメージン
グに好適な放射性同位元素を含む。
【0017】
上記本発明の概要は、限定を意味するものではなく、そして本発明のその他の特徴及び利点は、以下に示す前記好ましい実施態様の詳細な説明、並びに特許請求の範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の好ましい形態を、以下に添付の図を参照して記載する。
【図1】図1a:種々の緩衝液条件下でのポリスチレンウェルへのTc−99mフィブリンライト粒子の結合:500μMクエン酸ナトリウムpH3.5(“pH3.5”);500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス10μM デオキシコール酸ナトリウム(“pH3.5DOC”);500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス150mM NaCl(“pH3.5+NaCl”);500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス10μM DOCプラス150mM NaCl(“pH3.5+N+D”);注記“pH6.0”、“pH6.0+DOC”、“pH6.0+NaCl”、及び“pH6.0+N+D”は対応する意味を有するが、pH3.5ではなくpH6.0を意味する。バーは、2つのウェルの平均を表す。
【図2】図1b:0.5mMトリス−酢酸緩衝液pH6.0中で、塩化ナトリウムの示された濃度で20℃において1時間のフィブリンライトの前処理の後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図3】図2a:0.5mMクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5中で、塩化ナトリウムの示された濃度で20℃において1時間のフィブリンライトの前処理の後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図4】図2b:0.5mMクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5中で、塩化ナトリウムの示された濃度で20℃において1時間のフィブリンライトの前処理の後の、Tc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)のポリプロピレンバイアル(エッペンドルフ管)への結合。
【図5】図3:150mM塩化ナトリウム及び0.5mMクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5を含む緩衝液中で、ウサギ血清アルブミン(RSA;シグマ社製A0764)の示された濃度で20℃において30分間のフィブリンライトの前処理の後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図6】図4:水、生理食塩液(150mM NaCl)、またはウサギ血漿中で37℃において1時間攪拌しながら洗浄した後のポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)上の結合Tc−99mフィブリンライトの保持。“対照”試料は、結合後に攪拌とともに洗浄することをしなかった。4連のマイクロウェルの結果を示す。
【図7】図5a:ポリスチレンへのフィブリンライトのポリカチオン誘導的結合。0.5mMトリス−酢酸緩衝液pH6中で、ポリ−D−リジン(MW15乃至30kd;シグマ社製4408)の示された濃度で20℃において1時間フィブリンライトと前処理した後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図8】図5b:ポリスチレンへのフィブリンライトのポリカチオン誘導的結合。0.5mMトリス−酢酸緩衝液pH6中で、硫酸プロタミン(シグマ社製P4505)の示された濃度で20℃において1時間フィブリンライトと前処理した後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図9】図5c:ポリスチレンへのフィブリンライトのポリカチオン誘導的結合。0.5mMトリス−酢酸緩衝液pH6中で、硫酸プロタミン(シグマ社製P4505)の示された濃度で20℃において1時間フィブリンライトと前処理した後の、ポリプロピレンバイアル(エッペンドルフ管)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図10】図6:ポリ−D−リジンの3つの異なる分子サイズのフラクションとフィブリンライトの前処理により誘導されたポリスチレンマイクロウェルへのTc−99mフィブリンライトナノ粒子の結合。図は、2連のウェルのナノ粒子の結合のガンマカメラ画像を示し、そして、3つの異なるポリ−D−リジンの濃度(μg/mL)が使用された;A−分子量30乃至70kd、B−分子量15乃至30kd、そしてC−分子量4乃至15kd。
【図11】図7:フィブリンライトをポリカチオン、硫酸プロタミン(シグマ社P4505)と前処理することにより誘導されたスルホン化ポリスチレンのマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)へのTc−99mフィブリンライトの結合。グラフは、最終的なマイクロスフェア調製品(スフェア)、標識取り込みの完了後の標識インキュベーション中の残渣(上澄)、そして、3つの標識されたマイクロスフェアの洗浄液(洗浄液1、2及び3)の間のTc−99m放射能の分布を示す。結果を、5回の独立した製造(異なる色)で示し、Tc−99mフィブリンライトの製造を、2,800℃乃至2,6000℃の範囲でるつぼ焼灼(crucible ablation)を低下させることにより変化させた。温度の低下は、結合標識の減少と関連があった。
【図12】図8:ポリカチオン、硫酸プロタミン(シグマ社製、P4505)とフィブリンライトの前処理によって誘導されたスルホン化ポリスチレン(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)の、マイクロスフェアへのGa−67フィブリンライトの結合。グラフは、最終的なマイクロスフェア調製品(スフェア)、標識取り込みの完了後の標識インキュベーション中の残渣(上澄)、そして、3つの標識されたマイクロスフェアの洗浄液(洗浄液1、2及び3)の間のGa−67の放射能の分布を示す。
【図13】図9:ポリカチオン、硫酸プロタミン(シグマ社製、P4505)とフィブリンライトの前処理によって誘導されたSIR−スフェア(登録商標)(SIR−スフェア(登録商標)は、Sirtex SIR−スフェア株式会社の登録商標である)のマイクロスフェアへのTc−99mフィブリンライトの結合。グラフは、最終的なマイクロスフェア調製品(スフェア)、標識取り込みの完了後の標識インキュベーション中の残渣(上澄)、そして、3つの標識されたマイクロスフェアの洗浄液(洗浄液1、2及び3)の間のTc−99mの放射能の分布を示す。結果を6つの別個の製造として示す。
【図14】図10a:麻酔下で局所動脈点滴後に切除されたウサギ肝臓中のTc−99mフィブリンライトの生体内分布のガンマカメラ画像。切除された臓器の全ての肝葉の組織中の標識物の分布を注意のこと。
【図15】図10b:上記図10aに示された肝臓の除去後のウサギの全身のガンマカメラ画像。脾臓及び骨髄中にも標識されたナノ粒子の顕著な取り込みがあることに注意のこと。
【図16】図11a:麻酔下で局所動脈から点滴後に切除されたウサギの肝臓中のスルホン化ポリスチレン(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)のTc−99mフィブリンライト標識マイクロ粒子のガンマカメラ画像。マイクロ粒子は、動脈血供給により肝臓に運搬される、30ミクロンの平均直径を有し、ここで留まり、そして限られた血管径において保持される。上記図10aに見られる標識物と比較して、切除肝の肝葉中の標識物のセグメント化された分布を注意のこと。
【図17】図11b:上記図11aに示した肝臓の切除後のウサギの全身のガンマカメラ画像。上記図10bと比較して、脾臓及び骨髄の標識が欠如している。信号の小さな部分は、術後の肝臓からの残余の物質に起因するものである。
【図18】図12a:麻酔下に局所動脈点滴後の切除されたウサギ肝臓中のTc−99mフィブリンライト標識SIR−スフェアのマイクロスフェアのガンマカメラ画像。SIR−スフェアのマイクロスフェアは、動脈血供給により肝臓中に輸送され、そこで限られた血管サイズにおいて保持された。上記図10aに見られる標識と比較して、切除肝の肝葉中の標識体のセグメント化された分布を注意のこと。
【図19】図12b:上記図12aに示した肝臓の切除後のウサギの全身のガンマカメラ画像。図10bと比較して、腎臓及び骨髄の僅かな描出を注意のこと。
【0019】
略語
便宜上、本明細書で用いられる以下の略語を以下に列挙する。
ここで用いられる用語“SPECT”は、シングルフォトン放出コンピュータ断層撮影(single photon emission computed tomography)の略語である。
ここで用いられる用語“PET”は、ポジトロン放出断層撮影(positron emission tomography)の略語である。
ここで用いられる用語“SIRT”は、選択的体内照射療法(selective internal radiation therapy)の略語である。
ここで用いられる用語“SMPG”は、走査型移動度粒径測定(scanning mobility particle sizing)の略語である。
ここで用いられる用語“MCE”は、混合セルロースエステルの略語である。
ここで用いられる用語“PTFE”は、ポリテトラフルオロエチレンの略語である。
ここで用いられる用語“ePTFE”は、発泡ポリテトラフルオロエチレンの略語である。
ここで用いられる用語“PBT”は、ポリ(ブチレンテレフタレート)の略語である。
ここで用いられる用語“PEO”は、ポリ(エチレンオキシド)の略語である。
ここで用いられる用語“PLA”は、ポリアクチドの略語である。
ここで用いられる用語“PGA”は、ポリグリコリドの略語である。
ここで用いられる用語“DOC”は、デオキシコール酸ナトリウムの略語である。
【0020】
放射性標識合成ポリマーの製造における放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料(フィブリンライトナノ粒子のような)の製造及び使用に関するここでの記載は、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料の使用に対して変更すべきところは変更して、必要に応じて、(放射性同位元素よりも非放射性前駆体(progenitor)の使用、そして、非放射性前駆体(precursor)の実施態様の場合における放射化工程など)熟練した受け手により評価されるように、適用することが理解される。
【0021】
ここで用いられる用語、“治療上の有効量”は、望ましい治療効果をもたらす本発明で用いる化合物又は組成物の非毒性であるが十分な量をその意味の中に含む。必要とされる正確な量は、治療される種、年齢、患者の体重及び一般的な状態、同時罹患率、治療される状態の重症度、投与される特定の剤及び投与の形態その他のような因子に依存し対象によって異なる。したがって、個々の症例によって、適切な“有効量”は、定められた方法のみを使用する当業者により決定され得る。
【0022】
本明細書の中で、用語“含む”は“主に含むが、必ずしもそれのみではない”を意味する。さらに、“含む”の語の変形“comprise”及び“comprises”は、意味に応じて変化する。したがって、用語“含む”及びその変化は、付加的な整数又は特徴は、整数Aを含む、又は整数A及びBを含むのように記載される、組成物、方法等において随意に表され得るように、排他的な意味よりむしろ包括的な意味において使用される。
本明細書の中で、用語“約”は、熟練した受け手が与えられた値を関連付ける通常の許容範囲を示すものとして理解される。
本明細書の中で、範囲がパラメーターのために記載される場合、それは、そのパラメー
ターは、記載された範囲内の全ての値を含み、記載されたその範囲の終点を包含するものと理解される。例えば、“5乃至10”の範囲は、値5、6、7、8、9及び10の値並びに、6乃至10、7乃至10、6乃至9、7乃至9等のような記載された範囲内の如何なる部分的な範囲も含むものと理解され、そして、5.5、6.5、7.5、5.5乃至8.5及び6.5乃至9等のような、記載された範囲に関して合理的である整数の間の如何なる値及び範囲も包含する。
本明細書の中で、用語“多数の”は、1より多い任意の数を意味する。
許される範囲で、ここに引用された参照は、そのまま参照として取り込まれる。
【0023】
好ましい態様及びその他の態様の記載
本発明を、説明を含め説明のみを目的として、その後の実施例とともに、より詳細に説明する。
【0024】
本発明者らは、pH及び又は電解質濃度の好適な条件が選択され得、その条件が、ナノ粒子複合材料(フィブリンライトナノ粒子のような)がポリマー表面への実質的に不可逆結合となるように、炭素封入放射性核種のナノ粒子複合材料及び合成ポリマーの間の反発電荷の減少を促進し、そして、長距離静電斥力を上回って優勢を占める短距離引力を可能とする、ことを見出した。本発明はしたがって、ナノ粒子の外部表面を含むグラファイトとの分子間の疎水性分散相互作用またはイオン相関を可能とする合成ポリマーの高比放射能の放射性標識のための炭素封入放射性核種のナノ粒子複合材料(フィブリンライトのような)の使用のための方法に関する。
【0025】
特定の実施態様において、該手順は、合成ポリマーの親和性の高い放射性標識、例えば研究用で使用されるもの及び心疾患及び癌の治療のための治療インプラントを含む医療用具のような診断又は治療の医療用途で使用されるもの、を可能とする。好ましい実施態様において、合成ポリマーの親和性の高い放射性標識は、標識合成ポリマー及び医療用具によって典型的に直面する条件下では実質的に不可逆である。特定の実施態様において、合成ポリマーの親和性の高い標識は、生体内条件下で約10%の解離以下である。
【0026】
Nair等の2005年12月20日付けの“フィブリン血栓の検出方法“と題する米国特許第6,977,068号明細書は、フィブリン血栓の検出において炭素封入放射性核種ナノ粒子の使用のための方法を記載している。2006年4月28日に出願されそして国際公開第2006/116798号パンフレットとして公開された、”炭素封入放射性微粒子の注射用放射性組成物を形成する方法“と題する国際出願第PCT/AU2006/000554号は、炭素封入ナノ粒子の注射製剤の製造のための方法を記載している。ここに記載されている方法は、”フィブリンライトプロセス“と呼ばれ得、そしてこのように製造されたナノ粒子は”フィブリンライト“と呼ばれる。許容される範囲内で、米国特許第6,977,068号明細書及び国際出願第PCT/AU2006/000554号(国際公開第2006/116798号パンフレット)の全内容は参照としてここに取り込まれる。ここに記載されるように、本発明者らは、高比放射能及び高い親和性を有する合成ポリマーの放射性標識を提供し得る、炭素封入ナノ粒子(フィブリンライトのような)を使用する方法を見出した。
【0027】
放射性標識合成ポリマーがフィブリンライトナノ粒子を用いて製造され得る方法を提供することにより、本発明者らは、その外部環境との接触から物理的に隔離されるような炭素ケージ中の金属アイソトープを覆う炭素封入プロセス(国際出願第PCT/AU2006/000554号参照)、特にそれらが生体内で使用された場合の、粒子そしてさらに合成ポリマーの特に有用な特性を利用する。放射性標識合成ポリマーの生体内での放射性金属イオンの浸出及び生体内取り込みの可能性は、ナノ粒子複合材料の炭素外部のみが生体内での生物環境に曝露されているために、実質的に存在しない。
【0028】
合成ポリマー及び医療用途
本発明の方法は、その利用法を、例えば、治療又は診断用途のための薬剤において有用な用具の製造において、見出し得る。この内容において、例えば、放射性同位元素と結合するか又は放射性同位元素とともに結合する場合の、担体及びインプラントを含む、医療用具は本発明に使用され得る治療又は診断上の利点を提供する。
【0029】
一つの例として、医療用具は、血管障害、例えば、心疾患の治療のための医療に使用される移植可能な用具、例えば代用血管、人工器官又はステントであり得る。その他の医療用具はまた、侵襲性の少ないカテーテル等、が使用され得る。代用血管は、好適な形またはデザインのものはどれでも、そして、例えば、内部及び外部疎水性表面を有する中空の管状体を含み得る。医療用具は、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製代用血管のような、内径の小さな代用血管であり得る。本発明の目的のために、用語“代用血管”は、カテーテルを通してか又は外科手術中に一般的に導入される人工器官を含む。したがって、ステント(典型的には、短円筒形管の形態で)は、血管の開通性を増すために冠動脈中に移植され、そして、幾つかのステントの合成ポリマー表面は、血管中の閉塞の再発を防ぐための再狭窄の阻害剤を含み得る。放射性同位元素を用いた血管内の小線源照射療法は、ステントが放射性同位元素を含み平滑筋の増殖を阻害する、術後早期の間の再閉塞を防止するための一つの方法である。その他の種類のインプラントとしては、乳癌又は前立腺癌の小線源療法におけるような、腫瘍を有する臓器の局所照射のためのような、マクロビーズ、“シード”、ワイヤー、繊維又はフィラメント、ガーゼ又はメッシュを含む。
【0030】
放射性物質の局所投与による癌の治療のための方法は、知られており、そして、例えば、放射性物質が小粒子、シード、ワイヤー及び癌へ直接移植され得る同様の形態へ取り込まれる場合を含む。これらの形態は、本発明の実施態様の範囲内に全て意図される。この小線源療法の形態は、腫瘍、例えば、乳癌又は前立腺癌の局所照射のために典型的に使用され、そこでは治療用アイソトープを有する“シード”が臓器に移植される。[Hede、J Natl Cancer Inst 99巻:1507−1509頁(2007年);Sarin等、Nature Clin Pract Oncol 4巻:382−383頁(2007年)]。
【0031】
癌治療のその他の形態において、合成ポリマーは、その臓器の腫瘍を除去し得る放射性同位元素の治療量の局所送達の目的のために、カテーテルから輸入性(動脈)血液供給へ選択された臓器(例えば罹患器官)へ局所的に挿入され得る、マイクロビーズ、マイクロ粒子及びマイクロスフェアのような幾つかの形態において使用され得る。これらの形態は、全て、本発明の実施態様の範囲内に全て意図される。この局所放射線治療の形態において、ビーズの直径は、腫瘍の動脈血毛細血管網中に埋め込まれるように選択される。そのような用途において、放射性同位元素は、32P、153Sm、90Y、125I、192Ir、103Pd、111In、166Hoのような、増殖細胞を死滅させることのできる短距離、高エネルギー放出体を有するものから典型的に選ばれる。
【0032】
そのような技術の一つの例において、放射性粒子は、結腸又は直腸の原発性腫瘍由来の二次的な(転移性)腫瘍を除去するために、肝臓のような、標的臓器の血液供給へ投与される。このことは、選択的内部照射療法(SIRT)として当業者に一般的に知られている[Garrean等、World J Gastroenterol 13巻:3016−3019頁(2007年)]。そのような方法における使用に好適な方法及び用具の例は、以下の米国特許及び特許出願
2000年3月23日付けのGrayの“微粒子材料”と題する、米国特許第5,855,547号明細書、2006年12月19日付けのRuys等の“放射性コーティング
された微粒子材料”と題する、米国特許第7,150,867号明細書、2001年7月10日付けのGrayの“中空又はカップ型のマイクロ粒子及び使用方法”と題する、米国特許第6,258,338号明細書、2003年3月25日付けのGrayの“微粒子材料”と題する、米国特許第6,537,518号明細書、2006年2月14日付けのRuys及びGrayの“低密度放射性核種含有微粒子材料”と題する、米国特許第6,998,105号明細書、2007年11月4日に発行された“腫瘍の治療のための組み合わせ治療”と題する米国特許公開第2004/0220135号公報、2006年8月10日に発行された“低密度放射性核種含有微粒子材料”と題する米国特許公開第2006/0177373号、に含まれ、そのそれぞれの全ての内容はここに参照することにより取り込まれる。選択的内部照射療法のための市販の材料の例は、典型的にイットリウム−90を有するSir−スフェア マイクロスフェア、(オーストラリアのSirtexメディカル社)、及びMDSノルディオンにより製造されそして原発性肝癌(肝細胞癌)の治療のために米国のFDAにより認可されたイットリウム−90を含むガラス製マイクロスフェアからなるTherasphereを含む。
【0033】
その他の使用方法は、腫瘍部位を排出するリンパ節の同定及び局在化の目的のためのような、挿入手術のイメージング、例えば、乳癌患者におけるセンチネルリンパ節のイメージングのための放射性標識ナノ粒子の形態である。この技術において、放射性標識ナノ粒子は、間質液中に移動しそして、腫瘍部分を排出するリンパ液に入り、最終的に最も近い(センチネル)リンパ節に集積するところから、腫瘍部分に直接投与される。この場合、アイソトープは99Tcのようなイメージングに最も好適なものから選ばれるであろう[Lerman等、Eur J Nucl Med Mol Imaging33巻:329-337頁(2006年)]。この用途において、粒子は、組織の間質液中に拡散できる、リンパ排出中に捕集される十分小さいものである。そのため、マイクロ粒子よりもむしろナノ粒子が典型的に使用される。
【0034】
その他の使用方法は、ホウ素中性子捕獲療法である(BNCT)。この方法は、病気の部分において、典型的にはグリア芽腫のような腫瘍部分においてホウ素−10のような安定同位体前駆体(precursor)(又は前駆体(progenitor))の集積、そして集積したアイソトープへの低エネルギーの中性子線の適用を含む。腫瘍細胞中又は腫瘍細胞に隣接するホウ素―10は、中性子を捕獲した後崩壊し、そして、生成した高エネルギーの重荷電粒子がそれにごく近接した細胞、第一にがん細胞のみを破壊し、正常細胞はおおむね影響はないままである。本発明は、溶液又は分散液中のような遊離型で、又は医療用具の中又は表面に含まれた、合成ポリマーが、治療部分におけるアイソトープの改善された送達及び濃度を可能とする、ホウ素の安定同位体のような、放射性前駆体(precursor)を高い親和性及び又は高密度の放射性前駆体(precursor)とともに製造され得ることを提供する。
【0035】
医学分野で使用するために援用された参照は、人間及び獣医学的な人間以外の動物へ同様に適用されると理解されることに注意すべきである。したがって、他に指示のない場合を除いて、患者、対象又は個体に言及され、社会的、経済的又は研究の重要性のある任意の種類の個体のような、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、霊長類、げっ歯類及びウサギ属に属するものを含むがこれらに限定されない、人間又は人間以外の動物を意味する。
【0036】
同様に、ここで用いられる“医療”用具は、人間における用途における使用に好適な医療用具及び獣医学的用途のような人間以外の動物における使用に好適な医療用具に同様に適用可能なものであると理解されることに注意すべきである。
【0037】
ここで用いられる用語“用具”は、予防的治療及び実際の疾患又は症状の治療を含み、
治療が患者の体表面又は体内に行われる場合、及び診断が、患者の体内から得られた試料において又はこれを用いて行われる場合を含む、治療において使用され得る用具を含むと理解される。したがって、ここで用いられる用語“用具”は、治療用具及び診断用具を含む。
【0038】
ここで用いられる“診断”は、治療の存在又はなしの状況、あるいは、予備検査、予後診断、病気又は疾患の経過のような、病気又は疾患が疑われる状況において、そして、そのような疑いが存在しないが、しかし、健康チェック、集団検診又は研究の目的のためのような、検査が望まれる状況において、行われる検査的手段を含むと理解される。
【0039】
放射性同位元素及び非放射性の前駆体(precursor)
当業者が理解することは、本発明の方法が、合成ポリマーの標識にフィブリンライト粒子が用いられることを可能とするため、ゆえに、フィブリンライトナノ粒子に取り込まれ得る任意の放射性同位元素は、合成ポリマーが放射性標識される放射性同位元素として使用され得る。同様に、フィブリンライトナノ粒子に取り込まれ得そして放射性同位元素を発生させるために放射化できる任意の非放射性前駆体(progenitor)が、非放射性前駆体(precursor)で標識された合成ポリマーの製造に、そして放射性標識された合成ポリマーの製造に使用され得る。
【0040】
国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されているように、Tc−99m、Ga−67のようなγ線を放出するもの、イットリウム−90のようなβ線を放出するもの、Bi−213のようなα線を放出するもの;及びCu−64のようなポジトロンを放出するものを含む、様々な放射性同位元素がフィブリンライトナノ粒子へ取り込まれ得る。198Au、64Cu、213Bi、57Co,51Cr、165Dy、169Er,59Fe、67Ga、68Ga,153Gd,166Ho、111In、113mIn、177Lu、23Na、24Na、103Pd、81Rb、82Rb、186Re、188Re、75Se,153Sm、117mSn、89Sr,201Th、90Y、169Yb,66Ga,99mTc、94mTc、89Zr,86Y、192Irを含む、任意の好適な金属放射性アイソトープが利用され得る。同様に、10Bを含む任意の好適な放射性同位元素の非放射性前駆体(precursor)が、関連した実施態様において利用され得る。
【0041】
フィブリンライトナノ粒子において及び本発明の方法において使用され得るアイソトープの範囲は、Tc−99m又はGa−67を使用した単光子放出コンピューター断層撮影法(SPECT)、及び、Cu−64又はZr−89を使用したポジトロン放出断層撮影法(PET)のような画像診断用途に理想的に適したものを含む。さらに、上記のような標的放射線治療に好適なアイソトープ、腫瘍の一定の種類のアブレーションに既に使用されるようなもの、例えば、結腸直腸癌の肝転移の選択的内部照射療法(SIRT)に使用されるY−90でコーティングしたSIR−スフェア マイクロスフェア[Gray 等、Aust NZ J Surg 62巻:105−110頁(1992年)]もまた含まれる。本発明は、そのように標識された物及びその他のものが、腫瘍の画像診断に好適なものとして又は腫瘍治療に好適なものとして、製造され得る代替方法を提供する。
【0042】
イメージングに最も好適な典型的な放射性同位元素は、治療に最も好適なものではないかもしれない。本発明は、一つのアイソープが適切なイメージングのために選ばれそそしてその他のアイソトープが適切な治療のために選ばれる、マイクロスフェアのような合成ポリマーの二重標識の可能性もまた含む。この複合材料は、治療量の局在を促進し、そしてまた、所定の臓器部分に送達された治療用アイソトープの量、及び患者の正常組織に対して腫瘍へ送達された量の外部評価を可能とするイメージングを用いて、腫瘍治療のためのマイクロスフェアの使用においてより信頼性のある線量測定を可能とすることを意図する。二重標識された用具が、2つの区別して標識された合成ポリマーと用具を接触させる
か又は2つの区別された放射性標識物で標識された合成ポリマーを用具と接触させる方法;後者の場合において、二重標識合成ポリマーは、2つの(同時か又は連続して)異なって標識されたフィブリンライト組成物を用いて製造され得る;又はそれ自身が二重標識された単一のフィブリンライト複合材料を製造することによるような、任意の好適な方法により製造され得る。典型的にはフィブリンライトの2つの別の製造は、2つの異なるアイソトープを用いて製造され、そして、この2つの製造の混合が合成ポリマーを放射性標識するために用いられる。混合物中の2つの製剤の比率を変えることにより、イメージングのための放射能の好適な量を維持する一方で治療用の放射能の調製が行われ得る。
【0043】
幾つかの用途において、幾つかの治療用途のために典型的に、中性子線への臓器部分の照射によるような、非放射性前駆体(progenitor)を含む粒子の投与後に標的臓器部分において局在的に放射性のアイソトープを発生させることは利点となり得る。この実施態様において、ナノ粒子は、封入された安定金属同位元素、例えば、放射性アイソトープの非放射性の前駆体(progenitor)でありその場所で治療用アイソトープを形成するための中性子線のような好適なアクチベーターに曝露することにより放射化され得るホウ素−10(10B)を含み得る。このようにして、非常に短寿命、高エネルギーのアイソトープ、例えば、α放出体が、腫瘍アブレーションの目的のために、より安全で効率的に局在的に発生され得る。
【0044】
ナノ粒子複合材料の処方
放射性微粒子コア(フィブリンライト)を有する炭素封入ナノ粒子複合材料は、“炭素封入放射性粒子の注射用放射性組成物を形成する方法”(国際公開第2006/116798号パンフレットとして発行された)と題する国際出願第PCT/AU2006/000554号により製造され得、その全ての内容は参照としてここに取り込まれる。したがって、該複合材料は、中性又はわずかに酸性のpH、炭素封入放射性核種を含むナノ粒子の安定な水溶性分散液として、典型的に製造され得る。
【0045】
炭素封入ナノ粒子複合材料の水溶性分散液の製造方法は、放射性エアロゾルの湿式捕獲の工程を含み得、そしてこの工程は種々の方法により達成され得ることを当業者が承知していることは理解されるであろう。例えば、炭素封入ナノ粒子複合材料を作成するために使用される放射性エアロゾルの湿式の捕獲の工程は、以下を含むがこれらに限定されない:
1.例えば、Industrial and Engineering Chemistry(1951年)43巻、第6章、1358乃至1363頁に公表された、Ekman
及びJohnstoneの方法による、ベンチュリースクラバー(Ventri scrubber)中のエアロゾルの捕集。
2.例えば、Talanta(1981年)、28巻、第1部、43乃至47頁に公表されたMichalik及びStephensの方法による、液体電極におけるエアロゾルの濃縮。
3.サイクロン装置の使用、例えば、米国特許第6,508,864号明細書(2003年1月21日発行)におけるP.J.Dayにより開示された、サイクロン装置の使用。
【0046】
一つの代表的な実施態様において、炭素封入ナノ粒子複合材料は、国際出願第PCT/AU2006/00054号に記載される工程を用いて製造され得、該工程は、米国特許第5,792,241号明細書に記載された、ブロウィット沈殿分離装置を利用することによって、水中への放射性エアロゾルの捕獲を含み、その全ては参照としてここに取り込まれる。
【0047】
ナノ粒子の分散液は、非常に低い(例えば、約1マイクロモルから約20マイクロモル、典型的には、約10マイクロモル)濃度の、生体の血流と相容性がありそして注射され
得る、デオキシコール酸ナトリウムのような、アニオン性界面活性剤を含み得る。典型的には、放射性標識された物の治療用又はインビボ(生体外)診断用途において、場合によっては人間又は動物に静脈へ使用(例えば、注射)するために行政当局により承認される任意のアニオン性界面活性剤が使用される。
【0048】
国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されるように、典型的な放射性核種はTc−99mである。ナノ粒子は、従来の標識方法で得られるようなものを上回る、非常に高いレベルの比放射能が容易に得られ得るように、そのコア中にアイソトープの原子を何百万又はそれ以上をそれぞれ保持し得る。フィブリンライトに対し、そしてモデルとなる封入された放射性同位元素としてのTc−99mを使用して、約1から約100mCi、約5から約100mCi、約7.5から約95mCi、約10から約90mCi、約15から約85mCi、約20から約80mCi、約25から約75mCi、約30から約70mCi、約35から約65mCi、約40から約60mCi、約45から約55mCi、約50から約55mCiの範囲で投入されたTc−99mが製造され得る。典型的な粒子の製造は、所望どうりに水溶性懸濁液2mL中に約1乃至約30mCiを含むように容易に製造され得る。走査型移動度粒径測定器(SMPS)を用いた粒子の気相の評価から、懸濁液は、比放射能が600mCi/mgの、又は22gGBq/mg以上の高濃度で作成され得るように、約50μgのナノ粒子物質を含み得ることが示された。製剤の比放射能は、エアロゾル発生器中のるつぼに投入するために使用されるアイソトープの放射能を変化させることにより所望どうりに調整され得る。
【0049】
国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されるように、広範囲の好適な放射性同位元素がフィブリンライトの工程中で使用され得、そしてしたがって、広範囲の同位元素が本発明の方法に使用され得ることは明白である。同位元素の具体例は、テクネチウム、より具体的には99mTcである。テクネチウムの固体形は、過テクネチウム酸ナトリウム又は国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載された電解工程で製造される、任意の不溶性形態のテクネチウム、例えば、不溶性のオキシ塩化物であり得る。テクネチウムは、テクネチウムの放射性同位元素の形態であり得る。
【0050】
その他の金属放射性同位元素又は放射性核種、例えば、198Au、64Cu、213Bi、57Co、51Cr、165Dy、169Er,59Fe、67Ga、68Ga,153Gd,166Ho、111In、113mIn、177Lu、23Na、24Na、103Pd、81Rb、82Rb、186Re、188Re、75Se,153Sm、117mSn、89Sr,201Th、90Y、169Yb,66Ga,94mTc、89Zr、192Irが利用され得る。
粒子の投入、そして、従って放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を用いた合成ポリマーの“標識”を含む適用のために、任意の非放射性前駆体(progenitor)が使用され得る。典型的には、ホウ素−10(10B)が使用され得る。
【0051】
国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されるように、フィブリンライトナノ粒子は、1.0mM NaClに相当するものより低い、非常に低い電解質濃度を有する安定な水溶性分散液として製造され得る。国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されたか又はフィブリンライト粒子の製造のためにそこから導き出せる任意の方法は、本発明で使用するためのフィブリンライト粒子の製造において利用され得る。国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載された好ましい方法において、これは、約1600乃至1650℃のグラファイト製るつぼに15秒間投入されたアイソトープを加熱し、2700℃以上で放射性同位元素の焼灼前に担体の塩化ナトリウムを除去することにより達成され得る。塩化ナトリウムの沸点は、1413℃でしかなく、そしてTc−99m放射性同位元素はこの温度では蒸発しない。別の放射性同位元素(又は非放射性前駆体(progenitor))が、本発明の方法において利用される場合、当業者は、国際出願第PCT/AU2006/000554号を参照することによる
ように、焼灼の適切な温度を決定し得る。
【0052】
国際出願第PCT/AU2006/000554号により作成されたフィブリンライトナノ粒子の水溶性分散液は、例えば48時間の放置において凝集せず、沈殿せず又は沈降しない。ナノ粒子の分散液は、生体の血流へ相容性がありそして注射され得る、非常に低い(例えば、約1マイクロモルから約20マイクロモルの範囲内、典型的には約10マイクロモル)の濃度のアニオン性界面活性剤、典型的には、デオキシコール酸ナトリウムを含み得る。フィブリンライトナノ粒子は、最終濃度が300マイクロモルのpHが4.1のクエン酸二水素ナトリウムのような、低濃度の弱酸性緩衝液中の貯蔵によるような適切な方法、好ましくは分散液の安定性を可能とするための方法により貯蔵され得る。ナノ粒子の分散液は安定であり、そして、孔隙率が800、450及び220nmで入手できる、ミリポア製混合セルロースエステル(MCE)シリンジ型フィルターのような、容易に入手可能な疎水性膜フィルターの使用により、サイズ分画され得る。典型的なフィブリンライトナノ粒子製剤中の放射能の90%以上が、800nmのMCEフィルターを通過し、そして同様の製剤が、5%以下の溶解性のアイソトープを典型的に含むことが、薄層クロマトグラフィにより示され得る。
【0053】
フィブリンライトナノ粒子を用いた合成ポリマーを放射性標識するための条件
このようにして製造され又は得られたナノ粒子は、合成ポリマーの放射性標識のための本発明の方法において使用され得る。
【0054】
空気−水界面、炭化水素−水界面のような疎水性界面及び推論によって恐らく水溶性フィブリンライト懸濁液中のようなグラファイト−水界面は、純水中の水酸イオンのわずかな優位に一般的に吸引され得る。この結果は、表面電位が通常非常に低い(数十ミリボルト)であるが、これらの界面が、僅かに負に荷電したものとして挙動するというものである。フィブリンライトの場合において、ナノ粒子は、アニオン性界面活性剤、典型的には、それらの製造に使用され得るデオキシコール酸ナトリウムの吸収に起因して、これらの表面上の負の荷電の増加もまた持ち得る。粒子及びポリマー表面は、同様の水性媒体中で同様に荷電しているため、それらの荷電が拡散する二層が重複している場合、ナノメートルスケールにおいて互いに弱く反発し得る。しかし、pHが低下した場合、水酸イオンの濃度が純水に比べ減少し、したがって、これらの界面に存在する反発する荷電が減少する。ミリモルの濃度の電解質又は好ましくはナノモルの濃度のポリカチオンの介在は、これらの系中のポリマー表面への粒子の吸収及び密着に対するエネルギー障害がほとんどないように、非常に迅速にこの電位を覆う。デバイ長さが<10mmにおける、そのような遮蔽は、積極的な分散、イオン相互関係又は疎水性力が、これらの表面の全相互作用エネルギーを通常支配する状況にする。この結果は、ポリマー表面と一旦結合した粒子は、本質的に可逆的な方法において表面と強固に接着するというものである。その条件は、その結果、合成ポリマー及びナノ粒子複合材料の積極的な結合を促進する。好ましい実施態様において、接触が生じた媒体は、ナノ粒子及び合成ポリマーとの間の短距離引力を促進しそして、長距離静電斥力を減弱させ、このことにより全体の引力及び粒子及びポリマー表面の間の接着相互作用を生じる、電解質濃度又はpH、又はこれらの組み合わせを含み得る。達成できた接触の結果として、合成ポリマーは、ナノ粒子複合材料と結合するか又は複合体を形成するものとして記載され得る。結果として得られたものはまた、複合体と呼ばれ得る。本文脈中の用語“複合体”及び“複合体を形成する”は、堅牢に結合して達成された接触の結果として生じたもの以外の合成ポリマー及びナノ粒子複合材料の、任意の特別な構造配列を指すことを意図するものではない。
【0055】
本発明の方法において、フィブリンライトナノ粒子は、好適な電解質濃度及び又はpHの条件下でナノ粒子とポリマーを接触させることにより合成ポリマーを標識するために使用され得る。本発明者らは、上記の反発する荷電の減少を促進し、そしてしたがって、フ
ィブリンライトナノ粒子がポリマー表面への実質的に不可逆的な結合となるように、短距離引力を与え長距離静電斥力を支配する、電解質濃度及び又はpHの好適な溶液条件が選択され得ることを発見した。ここの開示を考慮して、適切な、そして必要なら、最適の、単純電解質及びポリカチオンを含む電解質のような結合条件、及びpHがナノ粒子及び合成ポリマーの間の望ましい接触のために実験的に決定され得ることは当然である。
【0056】
水溶性媒体が通常好ましいが、接触は、好適な媒体中で起こり得る。接触に先立ち、ナノ粒子は、一般的には分散液の安定性を可能とするために選ばれる
好適な貯蔵媒体中で製造され又は貯蔵され得る。したがって、ナノ粒子の分散液は、非常に低い(例えば約10マイクロモル)の濃度の、デオキシコール酸ナトリウムのような、アニオン性界面活性剤を含み得る。本発明の方法の接触工程に先立ち、ナノ粒子は、分散液の条件を調整するために前処理され得、ナノ粒子と合成ポリマーの結合を助ける。例えば、緩衝液の種類、pH、電解質濃度及び種類、界面活性剤の存在又は非存在及びナノ粒子を含む任意の成分の濃度などの条件が調節され得る。媒体のイオン強度の調節は、合成ポリマーの存在又は非存在下に起こり得る。ナノ粒子の存在下の場合の媒体のイオン強度の典型的な調節は、最終的に、会合及び凝集を招き得るナノ粒子間のみの結合よりもむしろナノ粒子と合成ポリマーの間の結合を促進するように、合成ポリマーの存在下についてもまた起こる。
【0057】
発明者らは、pHが僅かに酸性の条件下、例えばpH3.5で、ポリプロピレン又はポリスチレンのような合成ポリマーへのフィブリンライト粒子の好適な結合が、単純電解質濃度の一定の低い範囲、約1mMから約25mM、にわたって起こり、積極的な結合をもたらし、放射性標識合成ポリマーを形成することを、驚くべきことに発見した。一つの好ましい特徴において、本発明者らは、pHを4.5よりも低くそして3.0よりも小さくないpHの調節で、約1ミリモルよりも高くそして約25ミリモルよりも低い単純電解質濃度を含む水溶性媒体又は溶液としての特定の条件を記載する。典型的には、より高いpH、例えば中性のpHにおいては、約80ミリモルよりも高くそして約150ミリモルよりも高くないような、より高濃度の単純電解質が使用される。さらに、本発明者らは、ポリプロピレン又はポリスチレンのような合成ポリマーへのフィブリンライト粒子の好適な結合が、非常に低い濃度の、ポリリジンのようなポリカチオンにより中性のpHにおいても効果的に誘導され得ることを発見した。
【0058】
電解質及びpHの使用を通した、ナノ粒子と合成ポリマーの結合への影響力は更なる利点を示す。例えば、約3.5のpHを用いることによるより低濃度のNaClの使用の選択肢は、既に他の、弱い結合のリガンドを担持する合成ポリマーを含む合成ポリマー又は用具を放射性標識する場合に、利点であり得る。これらの条件下において、より低い電解質濃度の使用は、リガンドの滲出を制限又は回避し得る。
【0059】
ここでの実施例は、合成ポリマーへのフィブリンライトナノ粒子の結合が、pHが約3.5である場合に約1mMより多くそして約25mMより少ないNaCl濃度において合成ポリマーへのナノ粒子の積極的な結合を誘導するのに最も効果的である、単純な電解質、塩化ナトリウム(NaCl)の使用を通じて達成され得ることを示す。中性のpHでの高い濃度の電解質、約80mMが典型的に使用される。ここに開示した観点から判るように、合成ポリマーへのナノ粒子の積極的な結合を誘導するための好適な条件は、1種又はそれ以上の多種の電解質を用いることにより達成され得る。発明者らは、pH3.5において約1ミリモルより大きい単純電解質濃度が、合成ポリマーへのナノ粒子の積極的な結合を誘導に使用され得、そしてしたがって、ナノ粒子が、放射性微粒子コアを有して、放射性標識合成ポリマーの製造を提供することをここに記載する。一般的に、pH3.5において、接触のための溶液又は媒体の単純電解質濃度は、約1ミリモルから約100ミリモル;典型的には、約1ミリモルから約75ミリモル;約1ミリモルから約50ミリモル
;約1ミリモルから約25ミリモルの範囲内であると考えられる。より典型的には、溶液の電解質濃度は、約1ミリモルから約150ミリモル;典型的には、約1ミリモルから約100ミリモル;約1ミリモルから約50ミリモル;約2ミリモルから約50ミリモル;約2ミリモルから約40ミリモル;約2ミリモルから約30ミリモル;約10ミリモルから約30ミリモル;約10ミリモルから約20ミリモル;約15ミリモルの範囲内であると考えられる。より高い濃度、約80mMが、中性のpHにおいて典型的に使用され得る。
【0060】
当業者は、本発明の接触工程のための電解質溶液又は媒体のイオン強度が、例えば、好適なイオン強度が約15mMのNaCl濃度で達成され得るNaClを用いて、又は例えば約15mMより少ないMgSO4濃度により達成され得ることを理解するであろう。当業者はまた、電解質溶液の好適なイオン強度は、多数の異なるイオン種、例えば、NaClとMgSO4の混合物、の使用により達成され得ることを理解するであろう。さらにまた、当業者は、イオン強度は、少なくとも1種のイオン種及び浸透圧調整剤又はポリエチレングリコールのような高分子量のポリマーのような少なくとも1種の非イオン性種の使用により達成され得ることを理解するであろう。例えば、水の有効濃度が低下する場合、電解質の濃度は、高める必要があり得る。
【0061】
任意のイオン種が本発明の方法に用いられ得る。例えば、イオン種は、Na,Ni、Al、Ru、Pt,Os、Ir、Fe、Se、Sn、K、Te、Mn、Mo、V、Mg、Zn、Ca、Cu、Coの塩を含む群から選ばれ得る。生体における医学的又は獣医学的使用のためには、イオン種は、有効濃度において非毒性であるもの、例えばNa,K、Caに、典型的に限定される。当業者は、与えられた反応条件(例えば接触工程において)への如何なるその他の関連変化が無い場合において、Naの代わりに使用されるKは、Naとしての同じ濃度で典型的に使用され、一方、Naの代わりに使用されるCaは、Naとしての濃度の半分において典型的に使用されることは理解するであろう。
【0062】
さらに、本発明者らは、非常に低濃度のポリカチオン種が合成ポリマーへのフィブリンライトナノ粒子の実質的に不可逆の結合を誘導することにおいて特に効果的であること、そして、中性のpHであってもポリカチオン効果は、単純な電解質に使用されるミリモル濃度より低いナノモルの範囲の濃度において適切であることを見出した。
【0063】
ポリカチオンは、例えば、ポリブレン(ヘキサジメントリン ブロマイド)、プロタミン、アプロチニン、ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、(PEI)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDDA),ポリ(N−メチル−4−ビニルピリジニウム イオダイド)、ポリ(アリルアミン ヒドロクロリド)、ポリ(ブチル アクリレート−コ−N−メチル−4−ビニルピリジニウム イオダイド)、ポリ(ブタジエン−コ−N−メチル−4−ビニルピリジニウム) イオダイド、ポリ(スチレン−コ−4−ビニルピリジン)、ポリ(エチル アクリレート−コ−4−ビニルピリジン)、ポリアニリン系ポリマー、ポリピロール系ポリマーを含む。生体における医学的又は獣医学的使用のためには、イオン種は、有効濃度において非毒性であるもの、例えばプロタミンに典型的に限定される。理論によって拘束されることを望むことなく、本発明者らは、粒子及びポリマー表面上のヒドロキシル基及び、存在する場合は、デオキシコール酸基の負の帯電を効率的に遮蔽することにより、ポリカチオンがこの効果を誘導し、ナノ粒子の密接な接触そしてそれにより短距離引力の優位を可能とすることを仮定した。この仮定と一致して、ヒドロキシル基又はデオキシコレート基の負の荷電に対しないため、ポリアニオンはこの効果を有さない。
【0064】
実施例はここに、ポリスチレン及びポリプロピレンへのフィブリンライトナノ粒子の結合が、1mMよりも高い濃度において合成ポリマーへのフィブリンライトナノ粒子の積極
的な結合を誘導するのには、pH3.5が特に効果的である、単純な電解質である塩化ナトリウム(NaCl)の使用を通じて達成され得ることを示す。ここに示されたように、適切なイオン強度の条件は、単純な電解質NaClへの代替使用を通じて接触工程のために生み出され得る。このようにして、代替的なイオン種は、定められたNaClの濃度により定義された溶液又は媒体のイオン強度に相当する濃度において使用され得ると理解される。接触工程における電解質濃度は、約2mM NaClから約250mM NaCl、約3mM NaClから約200mM NaCl、約4mM NaClから約150mM NaCl、約5mM NaClから約100mM NaCl、約6mM NaClから約75mM NaCl、約7mM NaClから約50mM NaCl、約8mM NaClから約30mM NaCl、約9mM NaClから約25mM NaCl、約10mM NaClから約20mM NaCl、約11mM NaClから約18mM NaCl、約12mM NaClから約15mM NaClのような、1mMのNaCl以上から約300mMのNaClに相当する範囲における任意の濃度であり得る。好ましい方法において、接触工程の電解質濃度は、約5mM NaClから約150mM NaClに相当する範囲内の濃度、例えば、pHが3.5である場合、約15mM NaCl、又はpHが中性である場合約80mMに相当する電解質濃度であり得る。
【0065】
実施例はここに、合成ポリマーとフィブリンライトナノ粒子の結合が、約5ナノモルより高い濃度において、そして中性のpHにおいて、ポリスチレン及びポリプロピレンとフィブリンライトナノ粒子の積極的な結合を誘導するのに効果的な、平均分子量20,000のポリカチオンポリスチレン又はプロタミンの使用を通じて達成され得ることを示す。ここに示されたように、適切な条件は、ポリカチオンポリスチレンへの代替手段の使用を通じて接触工程のために生み出され得る。代替手段が使用される場合、当業者は、適切な条件を経験的に決定し得るであろう。例えば、代替的なポリカチオン性種が、定められたポリリジンの濃度により決定される溶液又は媒体の遮蔽効果に相当する濃度において利用され得る。助言のとおり、接触工程のポリカチオン濃度は、5ナノモル以上のポリリジンから約500ナノモルのポリリジン、
約10ナノモルのポリリジンから約300ナノモルのポリリジン、例えば約10ナノモルのポリリジンから約200ナノモルのポリリジン、約15ナノモルのポリリジンから約150ナノモルのポリリジン、約20ナノモルのポリリジンから約100ナノモルのポリリジン、約25ナノモルのポリリジンから約75ナノモルのポリリジン、約30ナノモルのポリリジンから約50ナノモルのポリリジンに相当する範囲内の任意の濃度であり得る。好ましい方法において、接触工程のポリカチオン濃度は、約10ナノモルから約100ナノモルに相当する範囲内の濃度、例えば、約30ナノモルのポリリジンに相当するポリカチオン濃度であり得る。さらに説明すると、実施例は、プロタミンの存在下で効果的な結合を示す。接触工程のポリカチオン濃度は、このように、1マイクログラム/mLより大きいプロタミン、例えば約1マイクログラム/mLから約50マイクログラム/mLのプロタミン、約2マイクログラム/mLから約20マイクログラム/mLのプロタミン、例えば約2マイクログラム/mLから約15マイクログラム/mLのプロタミン、又は約2マイクログラム/mLから約12マイクログラム/mLのプロタミンに相当する範囲内の任意の濃度であり得る。より好ましい実施態様は、該濃度が約3マイクログラム/mLから約11マイクログラム/mLのプロタミンの範囲内、さらに好ましくは、約5マイクログラム/mLから約10マイクログラム/mLのプロタミン、例えば約9マイクログラム/mLのプロタミン(約2000ナノモルに相当する)である。
【0066】
接触工程は、好ましくは水性媒体が使用され得るが、当業者に決定されるように、任意の好適な媒体中で行われ得る。約1mM NaCl以上に相当する電解質を含む、任意の好適な緩衝液が使用され得る。例えば、接触工程は、500マイクロモルのクエン酸ナトリウムを含みさらに約1mM以上のNaClに相当する電解質を含む水溶性緩衝液中であり得る。
【0067】
接触工程に使用される緩衝液は、任意の好適なpHのものであり得る。好ましくは、緩衝液は、約pH3.5乃至約8.5の範囲内であろう。ここに記載されたように、好ましくそして適切なpHは、電解質の種類及び濃度のような、その他の反応条件を考慮に入れて当業者により決定され得る。
【0068】
接触は、接触中のインキュベーションの温度の上昇又は下降、又は接触中の媒体の攪拌又は混合の増加又は低下のような、接触の過程中の条件を変化させることを含み得る。
【0069】
実施例はここに、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネートと、及びポリプロピレンとナノ粒子の高い親和性を有する結合を示す。ここに示された記載に基づき、本発明の方法は、少なくともその表面、水との疎水性界面の一部に存在する、任意の合成ポリマーの放射性標識に適用可能であることは明白である。荷電した化学基、例えば、水に対するスルホン酸が存在し得るが、表面(好ましくは表面の大部分)がフィブリンライトと接触するために使用される条件下で疎水性である場合にはナノ粒子の結合が未だ起こり得る。本発明者らは、スルホン化したポリスチレンでさえも、その表面上の負に荷電したスルホン酸基の置換は、フィブリンライトとの結合実験における通常のポリスチレンと同様に作用し、その結果更に多様なポリマー上に同様の結合が起こることを示すことを示した。
【0070】
本発明の方法は、用具を、放射性標識させることのような、該用具が放射性同位元素と関連する場合に、治療上の又は診断上の利点を生じさせるための移植可能な医療用具のような、医療用具の製造における特別な用途を有する。合成ポリマーは、それらの血栓を形成せずそして良好な機械的特性に起因した移植可能な用具の好ましい材料として一般的に使用される。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)ポリウレタンが、塩化ポリビニル、ポリアミド、ポリスチレン及びテフロン(登録商標)のような種々の臨床応用において使用される。代用血管に使用される合成ポリマーは、ポリエステルを含み、例えば、とりわけポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン及びポリテトラフルオロエチレンを含む。本発明の目的のためには、合成ポリマーは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)、ポリウレタン、塩化ポリビニル、ポリアミド、ポリスチレン、テフロン(登録商標)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO),ポリアクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA),ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリジオキサノン、トリメチレンカルボネート、ポリアンヒドリド、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシル)プロパン:セバシン酸を含むがこれらに限定されない。
【0071】
合成ポリマーは、遊離型、例えばポリマーマイクロ粒子又はナノ粒子の形態においてのような懸濁液又は分散液として、例えば金属の表面上にコーティングされたポリマーのような付着された形態、又は組込み型のような任意の好適な形態において接触工程においてフィブリンライトナノ粒子に付され得る。
示されるように“付着された”形態の合成ポリマーは、合成ポリマーが担体、カテーテルのような用具又はインプラント、ミクロ粒子又はマイクロスフェアに結合される場合の状況もまた含み得る。付着は、担体、用具又はインプラントへの合成ポリマーの直接結合を含む任意の好適な形態のものであり得、又はそれは一つ又はそれ以上の中間分子または結合剤のような間接的なものであり得る。“組み込み”の形態の合成ポリマーは、例えば、カテーテル、ミクロ粒子又はマイクロスフェアのような、合成ポリマーが担体、用具又はインプラントの一体部分を形成してる状況を含む。示されるように、実施例はここに、ポリスチレンマイクロウェル及びポリプロピレンバイアルへのナノ粒子複合材料の結合及び、さらに放射性標識を示す。このような場合に、合成ポリマーは、“組み込み”型の合成
ポリマーとして考えられている。放射性標識される合成ポリマーは、担体、用具又はインプラントのような物のコーティング又は封入の形態であり得る。コーティング又は封入は部分的であり得又は完全なものであり得る。
【0072】
合成ポリマーは、カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又はカプセル又は公知の大きさのミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの形態のミクロ粒子の中又は表面に含まれる、接触工程におけるフィブリンライトナノ粒子へ与えられ得る。
【0073】
したがって、合成ポリマーは、医療用具の製造に使用されるものの中へ又は表面へ又はその他へ取り込まれる前に、炭素封入ナノ粒子(放射性同位元素又はその非放射性前駆体(progenitor)を含む)と接触させ、そしてさらにこれにより標識され得、又は、接触は、医療用具又はその前駆体(precursor)が接触において使用されるように、合成ポリマーが医療用具の製造に使用されるものの中へ又はその表面へ又はその他へ取り込まれたあとであり得る。
【0074】
放射性標識合成ポリマー(又は、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)で“標識”された合成ポリマー)は、1つ又はそれ以上の更なるプロセス工程を経て又は経ることなしに使用され得る。更なる工程が実施される場合、それは、接触と同時であり得るか、接触のあとであり得、又は、多段階工程が実施される場合、それらは接触と同時の更なる工程の組み合わせ及び接触の後であり得る。更なる工程が接触の後で実施される場合、それは、接触のために実施される同一か又は異なる媒体の存在下であり得る。
【0075】
放射性標識合成ポリマー(又は、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)で“標識”された合成ポリマー)は、接触の後の1つ又はそれ以上の生成工程にかけられ得る。これは、未標識の合成ポリマーから及び/又は遊離のナノ粒子複合材料から放射性標識合成ポリマーを分離することを含む。典型的な反応において、接触は、合成ポリマーへのナノ粒子の十分な結合を生じ得、放射性標識合成ポリマーをもたらし、一方、接触工程の水性媒体中に未反応の成分、典型的には合成ポリマーに結合しなかったナノ粒子複合材料の一部は残ったままである。未反応の成分の除去は、例えば、遊離のナノ粒子複合材料が、標的でない臓器への血液輸送されるような、有害なものであり得る状況において、望ましいものであり得る。未反応の成分の除去は、部分的、実質的に完全又は完全なものであり得る。本文中“部分的”除去は、1種又はそれ以上の未反応又は望ましくない成分の任意の量の除去、より典型的には、未反応の又は望ましくない成分の約80%、90%又は95%までの除去を含むと理解され、そして“完全な”除去は、1種又はそれ以上の未反応の又は望ましくない成分の約95%以上の除去であると理解される。典型的に、少なくとも95%の未反応の又は望ましくない成分の除去が好ましく、より好ましくは約96%、97%、98%又は99%以上の未反応の又は望ましくない成分の除去である。
【0076】
したがって、本文中“精製”の言及は、精製の任意の程度を意味することを意図し、それによって、"精製"工程後の放射性標識合成ポリマー(又は、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)で“標識”された合成ポリマー)は、精製前と比較して、接触の未反応成分又はその他の望ましくない成分のような不純物をより少なく含む。
【0077】
未結合の放射性ナノ粒子のような、未反応の又は望ましくない成分から放射性標識合成ポリマー(又は放射性同位元素の非放射性の前駆体(progenitor)で“標識された”合成ポリマー)を分離し得る任意の方法が、精製工程で使用され得る。例えば、その方法は放射性標識合成ポリマーから1種又はそれ以上の望ましくない成分を洗い流すこ
とを含み得、又は、1種又はそれ以上の望ましくない成分から放射性標識合成ポリマーを抽出することを含み、又は、そのような工程の組み合わせを含み得る。一例として、ポリマーがミクロ粒子を含む場合、ビーズは多孔性担体上に保持され得、一方、洗浄用液体は、担体上のミクロビーズの層を通して網状化する。あるいは、ポリマー粒子は、バルク液体から遠心分離により沈降され得、そして、上澄の液体は、デカンテーションされるか又は吸引され除去されそして、精製の望ましい度合いに達するまで液体でさらに洗浄することにより置き換えられる。
【0078】
放射性標識ポリスチレンマイクロ粒子(100乃至800mg、30ミクロン粒径)、好適に計算された量の放射性同位元素(例えば、10mCi,又は37MBq)を含む新しいフィブリンライトの製造は、先ず、室温で30分間プロタミン(5乃至10μg/mL)で処理される。前処理されたフィブリンライトは、次ぎに、予め洗浄されたマイクロ粒子へ添加され、そして、その混合物は、回転攪拌機上で室温で30分間緩やかに回転させる。その混合物は、遠心分離され未結合の放射性ナノ粒子からミクロ粒子を分離する。標識化ミクロ粒子は、さらに、水又は生理食塩液中で再懸濁させ、そして遠心分離により再度分離されることによりさらに精製される。ポリマーの形態が大きなビーズ、カプセル又は管である場合、好適な量の前処理されたフィブリンライトは、ポリマーに含漬指せて使用され、室温で1時間結合させそして水又は生理食塩液で洗浄した後に、十分な標識体を得る。
【0079】
本発明は、癌のような、病気の治療のための薬剤の製造のための、放射性標識合成ポリマー(又は、前駆体(progenitor))の使用を提供することである。本文中、薬剤はここに記載されるような医療器具を含み得ることが理解される。放射性標識合成ポリマーは、生物学的に又は非生物学的なもの、例えば、カテーテル、ミクロ粒子又はナノ粒子のような担体、用具又はインプラントの中又は表面に取り込まれるか又は一体化され得る。典型的には、その中又は表面に取り込まれるか又は一体化される放射性標識合成ポリマーは、溶液、懸濁液又は分散液中で遊離形である。放射性標識合成ポリマーは、生物学的又は非生物学的なもののようなもの、例えば、カテーテル又はミクロ粒子のような担体、用具又はインプラントに付着が生じ得る。付着は、直接又は間接的結合又は付着を含む、放射性標識物の保持に適合する任意の好適な方法によってであり得る。放射性標識合成ポリマーは、担体、用具又はインプラントのような物のコーティング又は封入のために使用され得る。コーティング又は封入は、部分的であり得又は完全なものであり得る。合成ポリマーはまた、治療が意図される解剖学的部位においてそのまま硬化接着剤又はゲルとして形成され得る。合成ポリマーの形態は、したがって、水溶性媒体中でナノ粒子と接触させて形成される新生マトリックスであり得る。
【0080】
移植可能な代用血管及びステントのような医療用具は、当業者に知られるような更なる変形を含み得る。例えば、抗血栓剤、抗菌剤又は抗ウイルス剤の包含によってのような抗血栓及び/又は抗炎症特性を有する、生物活性のあるコーティングのような生物活性を含み得る。生物活性コーティングを有する移植可能な用具の製造は、当業者に知られそして例えば、Patnaik等のそして“部分的に変形された生物活性コーティングのための方法”と題する米国特許第6,803,069号明細書に記載され、その全ては参照としてここに取り込まれる。更なる例として、医療用具は、望ましい細胞型、組織、臓器又は病気の部位へ用具をターゲティングすることを助ける更なる変形を含み得る。そのようなターゲティングリガンドは、知られておりそして、例えば、標的細胞型、組織又は臓器によって、又は例えば病態において過剰発現されるレセプター分子に特異的なモノクローナル抗体、のような抗体を含む。ターゲティングリガンドは、放射性同位元素のような、検出可能な標識体を含み得る。ターゲティングの変形はまた、標識された合成ポリマー又は用具を例えば患者の肺へターゲティングするために使用され得る、ポリリジンのようなポリカチオンを含む。
【0081】
本発明は、合成ポリマーと炭素封入ナノ粒子複合材料の結合が誘導され得る方法をここに記載する。ここに記載されたものは、好ましい実施態様及び実施例を参照することにより説明する。ここに記載したものに基づき、当業者は、代替手段が使用される場合、適切な条件が実験的に決定され得、そのような代替手段には、放射性のアイソトープ及びその非放射性の前駆体(progenitor)、合成ポリマー、電解質及びpHを含むことを認識するであろう。
【0082】
医薬品及び/又は治療製剤
本発明はまた、合成ポリマーが、放射性微粒子コア(フィブリンライト)を有する炭素封入ナノ粒子複合材料と関連する場合の放射性標識合成ポリマーのような放射性標識された巨大分子の医薬品及び治療用組成物を提供する。典型的には、医学利用のためには、その他の塩が、本発明の化合物又はその医薬品として許容可能な塩の製造に使用され得るが、本発明の化合物の塩は、医薬品として許容可能な塩である。医薬品として許容可能な塩により、これらの塩は、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等なしに、人間及び下等動物の組織と接触して使用するために好適であり、そして、妥当な損益比に相応したものであるものを意味する。医薬品として許容可能な塩は、当業者によく知られている。
【0083】
S.M.Berge等は、J. Pharmaceutical Sciences、1977年、66巻、1−19頁において、医薬品として許容可能な塩を詳細に記載している。この塩は、本発明の化合物の最終の単離及び精製の間にその場で製造され得、又は、好適な有機酸と作用する遊離塩基を反応させることにより別個に製造され得る。代表的な酸付加塩は、アセテート、アジペート、アルギネート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビサルフェート、ボレート、ブチレート、カンホレート、カンフルスルホネート、シトレート、ジグルコネート、シクロペンタンプロピオネート、ドデシルサルフェート、エタンスルホネート、フマレート、グルコヘプトネート、グリセロホスフェート、ヘミサルフェート、ヘプトネート、ヘキサノエート、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロイオダイド、2−ヒドロキシ−エタンスルホネート、ラクトビオネート、ラクテート、ラウレート、ラウリルスルフェート、マレート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、オレエート、オキサレート、パルミテート、パモエート、ペクチネート、パーサルフェート、3−フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、ステアレート、スクシネート、サルフェート、タータレート、チオシアネート、トルエンスルホネート、ウンデカノエート、バレレート 塩等を含む。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を含み、並びに、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、トリエタノールアミン等を含むがこれらに限定されない非毒性の、アンモニウム、四級アンモニウム及びアミンカチオンを含む。
【0084】
投与の簡便な方法は、注射(皮下、静脈等)、経口投与、経鼻投与、塗り薬、又はジェル又は粉末又は直腸投与を含む。一つの実施態様において、投与の形態は、非経口投与である。その他の実施態様において、投与の形態は経口である。投与の経路に応じて、製剤及び/又は化合物は、化合物の治療活性を不活性化し得る酵素、酸及びその他の自然条件の作用から化合物を保護するための物質でコーティングされ得る。該化合物はまた、非経口又は腹腔内投与され得る。
【0085】
本発明による化合物の分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物中に、及び油中において製造され得る。従来の貯蔵及び使用の条件下におい
て、医薬品は、微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含み得る。
【0086】
注射のために好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性である)又は分散液、及び、滅菌注射溶液又は分散液の即時調整のための滅菌粉末を含む。理想的には、組成物は、製造及び貯蔵の条件下で安定であり、そして、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対し組成物を安定化させるための防腐剤を含み得る。
【0087】
本発明の化合物(化合物群)は、例えば、不活性希釈剤又は吸収可能な可食担体とともに、経口投与され得る。化合物(化合物群)及びその他の成分はまた、ハード又はソフトシェルゼラチンカプセルに封入され、タブレットに圧縮され、又は個々の食餌へ直接取り込まれ得る。経口治療用投与のために、化合物(化合物群)は、賦形剤とともに取り込まれ得、そして、摂取可能なタブレット、口腔吸収タブレット、トローチ、カプセ、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース等の形態で使用され得る。
適切には、そのような組成物及び製剤は、少なくとも1質量%の活性化合物を含み得る。本発明の化合物(化合物群)のパーセンテージ、典型的には医薬品組成物及び製剤中の放射性標識合成ポリマー又はポリペプチドは、もちろん、例えば、投薬単位の重量の約2%から約90、約5%から約80%、約10%から約75%、約15%から約65%;約20%から約60%、約25%から約50%、約30%から約45%、又は約35%から約45%の範囲で便宜上変化し得る。治療上有用な組成物中の化合物の量は、好適な投薬が得られるようなものである。
【0088】
用語“医薬品として許容可能な担体”は、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤等を含むことを目的とする。医薬品として活性のある物質のためのそのような媒体及び剤の使用は当業者によく知られている。任意の従来の媒体又は剤が、化合物と不適当である場合を除いて、治療用組成物及び治療及び予防の方法におけるその使用が、意図される。補助的な活性化合物もまた、本発明による組成物に取り込まれ得る。投与の容易さ及び投薬の均一性のために投与単位形に非経口組成物を配合することは特別な利点である。
ここで用いられる“投与単位量形”は、治療される個体のために単一の投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、所定量の化合物を含むそれぞれの単位は、医薬品担体と関連して所望の治療効果を生み出すために計算される。化合物(化合物群)は、許容できる投与単位中の好適な医薬品として許容可能な担体を含む有効量において簡便でそして効果的な投与のために調整され得る。組成物が、補助的な活性成分を含む場合において、投与量は、当該成分の投与の通常の用量及び方法を参照することにより、決定される。
【0089】
一つの実施態様においては、担体は、経口投与可能な担体である。
【0090】
医薬品組成物のその他の形態は、経口投与に好適な、経腸用にコーティングされた顆粒、タブレット又はカプセルとして調製された投与形態である。
【0091】
本発明の範囲に含まれるものはまた、遅延放出製剤である。
【0092】
本発明による化合物はまた、“プロドラッグ”の形態において投与され得る。プロドラッグは、生体内で活性形態へ転換される化合物の不活性形態である。好適なプロドラッグは、化合物の活性形態のエステル、リン酸エステル等を含む。
【0093】
一つの実施態様において、本発明の化合物は、注射により投与され得る。注射剤溶液の場合において、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、その好適な混合物、及び植物油を含む溶液又は分散媒体であり得る。好適な流動性は、例えば、レシチンのような
コーティングの使用により、分散液の場合における必要な粒子サイズの維持及び界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び/又は抗真菌剤を含ませることにより達成され得る。好適な剤は当業者によく知られ、そして例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、アスコルビン酸、チメロサール等を含む。多くの場合において、等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含ませることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる、例えば、アルミニウムモノステアレート及びゼラチンのような剤を組成物中へ含ませることによりもたらされ得る。
【0094】
滅菌注射用溶液は、上記に列挙した原料の1種又は組み合わせと適切な溶媒中の必要な量のアナログを取り込み、必要ならば、次いで濾過滅菌することにより製造され得る。一般的には、分散液は、塩基性の分散媒体及び上記に列挙したものの中から必要なその他の原料を含む滅菌媒体中にアナログを取り込むことにより製造される。
【0095】
タブレット、トローチ、ピル、カプセル等は、また以下:トラガカントゴム、アカシアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチンのようなバインダー、リン酸二カルシウムのような賦形剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギニン酸等のような崩壊剤、マグネシウムステアレートのような潤滑剤、そして、スクロース、ラクトース又はサッカリンのような甘味剤、又はペパーミント油、冬緑油、又はサクランボの香味料のような香味剤を含み得る。投与単位形がカプセルである場合、上記の種類の物質に加えて、液体担体を含み得る。種々のその他の物質が、コーティングとして、又は投与単位の物理学的形態のその他の変形のために供され得る。例えば、タブレット、ピル、又はカプセルはシェラック、糖又はその両方でコーティングされ得る。シロップ又はエリキシルは、アナログ、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素及びサクランボ又はオレンジ香味のような香味料を含み得る。もちろん、任意の投与単位形の製造に使用される任意の物質は、用いられる量において、医薬品として純粋でありそして実質的に非毒性であるべきである。さらに、アナログは、持続的に放出される製剤及び処方へ取り込まれ得る。
【0096】
好ましくは、医薬品組成物は、酸加水分解を最小限にするために、好適な緩衝液をさらに含み得る。好適な緩衝剤は当業者によく知られ、そして、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩およびその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0097】
本発明による化合物及び/又は医薬組成物の単数回の又は複数回の投与が行われ得る。当業者は、日常の実験により、化合物及び組成物が適用できる病気及び/又は感染症の治療に好適である、本発明の化合物及び/又は組成物の効果的な、非毒性の用量及び投与形態を決定し得るであろう。
【0098】
さらに、確定した日数の一日当たりの本発明の化合物又は組成物の用量の数のような治療の適切な方針が、治療決定試験の従来の方針を用いて確定され得ることは、当業者にとり明白である。
【0099】
一般的に、24時間当たりの有効用量は、体重kgあたり約0.0001mgから約1000mg;例えば、体重kgあたり約0.001mgから約750mg;体重kgあたり約0.01mgから約500mg;体重kgあたり約0.1mgから約500mg;体重kgあたり約0.1mgから約250mg;又は体重kgあたり約1.0mgから約250mgの範囲であり得る。より好適には、24時間当たりの有効用量は、体重kgあたり約1.0mgから約200mg;体重kgあたり約1.0mgから約100mg;体重kgあたり約1.0mgから約50mg;体重kgあたり約1.0mgから約25mg;体重kgあたり約5.0mgから約50mg;体重kgあたり約5.0mgから約20m
g;体重kgあたり約5.0mgから約15mgの範囲であり得る。
【0100】
あるいは、有効用量は、約500mg/m2までであり得る。例えば、一般的には、有効用量は、約25乃至約500mg/m2、約25乃至約350mg/m2、約25乃至約300mg/m2、約25乃至約250mg/m2、約50乃至約250mg/m2、そして約75乃至約150mg/m2の範囲であると予想される。
【0101】
その他の実施態様において、本発明の化合物は、1日あたり約100から約1000mg、例えば、1日あたり約200から約750mg、1日あたり約250から約500mg、1日あたり約250から約300mg、又は1日あたり約270から約280mgの範囲内の量で投与され得る。
【0102】
本発明による化合物は、その他の薬剤とともに治療方針の一部として投与され得る。活性化合物、例えば、特別な病気又は症状の治療の目的のための活性化合物の組み合わせを投与することが望ましい。したがって、2種又はそれ以上の医薬品組成物、少なくともそのうちの一つは、1種の本発明の化合物を含む、医薬品組成物、が組成物の併用投与に好適なキットの形態で組み合わされ得ることは本発明の範囲内である。
【0103】
本発明を、以下の実施例に関して説明のみを目的として、以下に詳細に説明する。実施例は、本発明の説明のみを目的とし、そして、本明細書全体に渡って記載された開示の普遍性を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0104】
実施例1:ポリスチレンへのフィブリンライト分散液の結合
典型的な合成ポリマーへのTc−99mフィブリンライト分散液の結合を、結合及び複数の洗浄工程の後に分離されたウェルの個々の放射能測定を可能とした96ウェル型において、ポリスチレンのマイクロウェルを用いてモデルとした(Nunc−Immuno(登録商標)LockWell(登録商標)モジュール)。クエン酸塩緩衝液(500μM)をpH3.5および6.0において使用し、非常に低いものと生理学的電解質濃度の両方において、結合におけるpHの効果の直接比較ができるようにした。
希釈(1:10)したTc−99mフィブリンライトを、種々の緩衝液条件下でポリスチレンマイクロウェル(100μL/ウェル)と接触させた。即ち、
(i)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5(低い電解質条件);
(ii)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス10μMデオキシコール酸ナトリウム(DOC);
(iii)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス150mM NaCl;
(iv)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス10μMデオキシコール酸ナトリウムプラス150mM NaCl;
(v)500μMクエン酸ナトリウムpH6.0(低い電解質条件);
(vi)500μMクエン酸ナトリウムpH6.0プラス10μMデオキシコール酸ナトリウム(DOC);
(vii)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス150mM NaCl;
(viii)500μMクエン酸ナトリウムpH6.0プラス10μMデオキシコール酸ナトリウムプラス150mM NaCl。
粒子の結合を、緩やかな攪拌とともに37℃において20分間マイクロウェルをインキュベートすることにより試験した。マイクロウェルを次に個々に分離されたウェルの放射能を計測する前に水で5回洗浄した。
図1aにみられるように、放射性フィブリンライトナノ粒子は、非常に低い電解質条件(500マイクロモルのクエン酸ナトリウム)下でpH3.5及び6.0においてポリスチレンマイクロウェル表面への低い結合を示し;pH3.5での結合は、pH6.0のもの
よりやや良好であった。しかし、150mMのNaClを含んでいる場合、結合は、pH3.5で3倍、pH6.0で約5.8倍に増加し、一方、最も高い標識密度がpH3.5において電解質を添加することにより得られた(図1a参照)。このように、ポリスチレンのようなポリマーへのフィブリンライトの結合は、弱酸性のpHにおいて、そして電解質の添加により良好であった。
一旦結合すると、結合アッセイにおける複数回の洗浄の後の放射性標識物の保持でも分かるように、粒子は高い結合力を持続する。さらに、低濃度の界面活性剤(10μM デオキシコール酸ナトリウム)の添加は、電解質の非存在下pH3.5において見られるポリスチレンへのフィブリンライトの結合が、5倍減少したが、フィブリンライトが150mMのNaClを用いて結合させた場合、界面活性剤は、pH3.5において製造されたものより高い結合において4.2%の低下のみ生じた(図1a参照)。
その他の実験(図1b)において、電解質の効果の用量依存性は、中性のpHにおいて測定された。一連の塩化ナトリウム(NaCl)希釈液(500μL)は先ず、0.5mMトリス−酢酸pH6.5で作成された。系中のNaCl希釈液は、0mM、2.34mM、4.69mM、9.38mM、18.75mM、37.5mM、75mM及び150mMであった。Tc−99mフィブリンライト調製品(55μL)を次ぎにそれぞれのNaCl希釈液へ添加し、1:10のフィブリンライトの最終希釈液を得、そしてこの混合物を20℃において1時間放置した。それぞれの混合物の一定分量(100μL)を、次ぎに、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc LockWell(登録商標))に分注しそしてマイクロウェルを攪拌しながら37℃において30分間インキュベートした。そのポリスチレンマイクロウェルを次ぎに、それぞれに結合した放射能を計測する前に水で3回洗浄した。図1bに見られるように、中性のpH付近での最も高いポリスチレンへのフィブリンライトの結合は、約80mM以上のNaClにおいて明白に見られた。
【0105】
実施例2:pH3.5におけるポリプロピレン管及びポリスチレンロックウェルへのフィブリンライトの塩化ナトリウムで誘導される結合
塩化ナトリウム(NaCl)希釈液(500μL)の系列を、ポリプロピレン管(エッペンドルフ管;1.5mL容量)中に含ませ、0.5mMのクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5中に、先ず作成した。この系列中のNaCl希釈液は、0mM、2.34mM、4.69mM、9.38mM、18.75mM、37.5mM、75mM及び150mMであった。Tc−99mフィブリンライト製剤(55μL)を次にそれぞれのNaCl希釈液中へ添加し、1:10のフィブリンライトの最終希釈液とその混合物を得、そして次に、ポリプロピレン管に20℃において1時間放置した。一定量(100μL)のそれぞれの混合液を、次ぎに、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標)へ分散させ、そしてそのマイクロウェルを37℃において30分間攪拌しながらインキュベートした。ポリプロピレン管及びポリスチレンマイクロウェルを、次に、それぞれに結合した放射能を計測する前に水で3回洗浄した。
この実験は、好適な条件下で単純な電解質を用いた処理が、フィブリンライトナノ粒子の表面特性を顕著に変化させ得、ポリスチレン又はポリプロピレン表面へのこれらの結合が、強固に増強されることを示すものである(図2a及び図2b)。驚くべきことに、pH3.5における結合が、電解質濃度の単純な作用ではなく、両ポリマーへの結合のための約15mMにおける明白な最大限度を示すものであり、一方、生理食塩液濃度(150mM NaCl)においては、約35%(ポリスチレン)乃至50%(ポリプロピレン)(それぞれ図2a及び2b)の最良の結合であるのみであった。このように、中性のpHにおけるNaClの効果を比較すると(上記図1b)、pH3.5におけるフィブリンライトの結合を誘導するためには、かなり少ない量の電解質が必要とされる。pH3.5におけるより低いNaCl濃度の使用の選択肢が、既にその他の弱い結合リガンドを担持する合成ポリマーを含むいくつかの用具を放射性標識する利点であり得る。この場合において、その他のリガンドの滲出は、より低い電解質濃度により制限されるか又は回避され得る。
【0106】
実施例3:アルブミン前処理後のポリマーへ結合するフィブリンライト−競合的結合
希釈されたTc−99mフィブリンライト(1:10;10μm)を、150mM塩化ナトリウム及び0.5Mクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5を含む緩衝液中で、フィブリンライトを種々の濃度のウサギ血清アルブミン(RSA;シグマ社製A0764)と20℃において30分間前処理した後にポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標)と接触させた。使用したRSAの濃度は、0、15.6μg/mL、31.3μg/mL、62.5μg/mL、125μg/mL、250μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLであった。ポリスチレンマイクロウェル上への結合は、37℃において30分間攪拌しながら行った。そのウェルを、次ぎに、個々のウェルを分離しそして結合した放射能を測定する前に水で5回洗浄した。
この実験は、電解質の添加により誘導されるフィブリンライトの表面特性の変化が、タンパク質とポリスチレンの両方に結合する原因となること及び、結合サイトへの競合が、可能性のあるリガンドの両方がともに存在する場合に起こることを示すものである(図3)。アルブミンの濃度が1mg/mLの場合、ポリスチレンへのフィブリンライトの結合が殆ど失われる。この実験はまた、これらの条件下で、フィブリンライトが、同様の疎水性相互作用を通してアルブミン及びポリスチレンの両方に結合することを示すものである。
【0107】
実施例4:ポリスチレンへのフィブリンライトの結合の保持
フィブリンライトを、15mM塩化ナトリウムの0.5mMトリス酢酸緩衝液pH6溶液で希釈(1:10)し、そして一定量(100μL)を、ポリスチレン(Nunc Lockwell(登録商標))で作成された16マイクロウェル上へ分注した。結合を、攪拌しながら37℃において1時間起こさせ、そして全てのウェルを水で5回洗浄した。4つ一組のウェルを次に乾燥し(対照)、又は、100μLの水、生理食塩液(150mM、NaCl)又はウサギ血漿の添加後、攪拌しながら37℃において1時間処理した。最後に、全てのウェルを水で洗浄しそして放射能を計測した。
この実験は、適切な条件下でいったんポリスチレンに結合すると、フィブリンライトはポリマー表面に強固に結合しそして、示された種々の生体関連溶液での処理は、結合したフィブリンライト放射能のかなりの量を置換できないことを示すものである(図4)。一旦形成されると、フィブリンライトナノ粒子とポリマーの粘着性のある相互作用は非常に安定である。
【0108】
実施例5:フィブリンライトとポリマーの結合を誘導するポリカチオン
Tc−99mフィブリンライト(1:10希釈液)を、種々の濃度のポリ−D−リジン(MW15乃至30kd;シグマ社製4408)、即ち、0、0.078μg/mL、0.156μg/mL、0.313μg/mL、0.625μg/mL、1.25μg/mL、2.5μg/mL及び5μg/mLの0.5mMトリス酢酸緩衝液pH6.0溶液、と20℃において1時間前処理した。前処理したフィブリンライトをポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標))へ分注し(100μL/ウェル)そして、攪拌しながら37℃において30分間結合させた。そのウェルを、個々のウェルを分離しそして結合放射能計測をする前に、生理食塩液で5回洗浄した。
この実験は、好適な条件下で典型的なポリカチオンの非常に低濃度での処理は、フィブリンライトナノ粒子の表面特性を劇的に変化させ得、そのポリスチレン表面への結合を明白に増強することを示すものである(図5a)。驚くべきことに、この結合は、ポリカチオン濃度の単純な作用ではなく、約0.6μg/mLポリ−D−リジン(30nM)における顕著な極大を示し、一方、結合は、5.0μg/mLポリ−D−リジンにおいて最適な約30%の結合のみであったことを示すものである。この結果はまた、生理食塩液での数回の洗浄により逆転されないため、誘導された結合は、単純な電荷相互作用ではないことを示すものである。
同様の実験を図5に示し、今回は、異なるポリカチオン、ヘパリン抗凝固療法の反転に臨床的に用いられるプロタミンを用いた。硫酸プロタミン(シグマ社製P4505)希釈液(500μL)の希釈列を先ず、0.5mMトリス酢酸緩衝液pH6.0中に作成した。この系列のプロタミン希釈液は、0、0.032μg/mL、0.625μg/mL、1.25μg/mL、2.5μg/mL、5.0μg/mL、10μg/mL及び20μg/mLであった。Tc−99mフィブリンライト製剤(55μL)を次ぎにそれぞれのプロタミン希釈液へ添加し、1:10のフィブリンライトの最終希釈液を得、そして、この混合液を次ぎに20℃において1時間放置した。それぞれの混合液の一定量(100μL)を次ぎにポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標))中へ分注し、そしてこのマイクロウェルを37℃において30分間攪拌しながらインキュベートした。一定量(100μL)を、また、ポリプロピレンエッペンドルフ管へ分注しそしてこれらを20℃において30分間放置した。ポリスチレンマイクロウェル及びポリプロピレン管をそれぞれに結合した放射能を計測する前に水で3回洗浄した。
図5bに見られるように、プロタミンは、ポリスチレンに結合したフィブリンライトの誘導に有効であり、そしてまた、ポリプロピレンへの結合も誘導した(図5c)。また、結合は、ポリカチオン濃度の単純な作用ではなく、ポリスチレン及びポリプロピレンの両方の約5μg/mLのプロタミン(約100ナノモル)において明白な極大を示した。
このように結合の誘導は、2種のポリカチオン及び2種の合成ポリマーへの結合によって示された。全ての場合において、好適で、それぞれのポリカチオンのために決定し得る、例えばここに記載された方法に説明されるように、ポリカチオン濃度の一定範囲が存在する。しかし、この好適な濃度は、ポリカチオン表面の種類に依存せず、そして、水酸イオン及びデオキシコール酸に起因したナノ粒子の帯電の遮蔽によるものが大きい。
【0109】
実施例6:ポリマーへのフィブリンライトの結合におけるポリカチオン分子量の効果
Tc−99mフィブリンライト(1:10希釈液)を種々の濃度の3種のポリ−D−リジン(A:MW30乃至70kd、シグマ社製P7886;B:MW15乃至30kd、シグマ社製4408;C:MW 4乃至15kd、シグマ社製P6403)、即ち、0、0.25μg/mL、0.5μg/mL、1.0μg/mL、2.0μg/mL及び4.0μg/mLの0.5mMトリス酢酸緩衝液pH6溶液で20℃において1時間前処理した。前処理したフィブリンライトを2つ一組のポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標))へ分注(100μL/ウェル)し、そして、37℃において30分間攪拌しながら結合させた。ウェルをそのプレートをジーメンス社Diacamガンマカメラでイメージングする前に生理食塩液で5回洗浄した。
この実験は、ポリスチレンに結合するフィブリンライトのポリカチオン増強が、ポリカチオンの濃度及び分子サイズの両方に依存することを示すものである(図6)。驚くべきことに、この結合は、ポリカチオン分子サイズの単純な作用ではないこと、分子量15乃至30kdのポリ−D−リジンが、分子量4乃至15kdのポリ−D−リジンよりも低い濃度においても有効であり、また、分子量30乃至70kdのポリ−D−リジンよりも低濃度において有効であることを示すものである(図6)。
【0110】
実施例7:スルホン化ポリスチレンのマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)へのTc−99mフィブリンライトの結合
Tc−99mフィブリンライト(2乃至5mCi)を、硫酸プロタミン(10μg/mL;シグマ社製P4505)水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したフィブリンライトを次に予め洗浄した(水で3回)平均直径30ミクロンのマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製;100mg)のスラリーへ添加し、そして、この懸濁液を20℃において30分間緩やかに混合した。このマイクロスフェアを次ぎに、簡便な遠心分離(5,000rpm、1分間)により可溶化相から分離しそしてこのマイクロスフェアを再懸濁させそして水(5.0mL)で3回洗浄した。元の可溶化相、3つの洗浄した上澄及び最終のマイクロスフェア製剤の放射能を
全て計測しそして図7に示すような全Tc−99m放射能の百分率として表した。結果を、Tc−99mフィブリンライト製剤を、2,800℃から2,600℃の範囲にわたりるつぼ焼灼温度を体系的に低下させることにより変化させた、5回の独立した製造について示す(異なる色)。温度の低下は、ミクロ粒子上の結合された標識の低下と関連があった。
この実験は、ポリカチオン(プロタミン)とTc−99mフィブリンライトの前処理は、標識が多数回の洗浄を通して保持されるそのような方法においてTc−99mフィブリンライトとスルホン化ポリスチレンマイクロスフェアの次ぎの標識を可能にすることを示した。このように標識されたマイクロスフェアは、分離され得そして、洗浄され、そのような生物学的に適合したマイクロスフェアを採用する生体内ガンマカメライメージング研究に好適な精製された生成物をもたらす。ヘパリンのアンタゴニストとして既に臨床的に広く使用されているため、プロタミンが選択された。スルホン化ポリスチレンが、未置換のポリスチレンと同様の方法を用いてTc−99mフィブリンライトで標識され得、スルホン化は結合するフィブリンライトの結合能力を変化させず、そしてこのように種々の合成ポリマーに使用される方法の一般性を示すことは驚くベきことである。
【0111】
実施例8:硫酸ポリスチレンマイクロスフェアへの(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)のGa−67フィブリンライトの結合
塩化ガリウムとしてのGa−67(200MBq)を、グラファイトマイクロるつぼ中に蒸発により仕込み、そして、基本的にPCT/AU2006/000554に記載されるようなプラズマ焼灼されたが、1650℃における前加熱工程は省略された、サイクロトロン製品(シドニー、ルーカスハイツ、ANSTOラジオファーマシューティカルズ アンドインダストリアルズ社製)として得た。得られたエアロゾルを、収集液体として30mLの10μMデオキシコール酸ナトリウム、そして国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載された条件を用い、米国特許第5,228,444号明細書に記載されたブロウィット(Browitt)沈降分離装置を用いて収集した。得られたGa−67フィブリンライト(0.9mCi)を、硫酸プロタミン(10μg/mL;シグマ社製P4505)の水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したGa−67フィブリンライトを次ぎに、平均直径が30ミクロンの予め洗浄(水で3回)したマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製;100mg)のスラリーへ添加し、そして、その懸濁液を20℃において30分間緩やかに混合した。このマイクロスフェアを次ぎに、簡便な遠心分離(5,000rpmで1分間)により可溶化相から分離し、そしてこのマイクロスフェアを再懸濁させ、水(5mL)で3回洗浄した。元の可溶化相、3つの洗浄上澄及び最終のマイクロスフェア製剤の放射能を、全て計測しそして、図8に示すように全Ga−67の放射能の百分率として表した。
この実験は、好適な条件下でのポリカチオンとGa−67フィブリンライトの処理はまた、スルホン化ポリマーのマイクロスフェアへのGa−67フィブリンライトナノ粒子の強固な結合を誘導し得、そして、Ga67フィブリンライト標識マイクロスフェアは、分離され得そして、洗浄され、そのような生物学的に適合したマイクロスフェアを採用する生体内ガンマカメライメージング研究に好適な精製された生成物をもたらすことを示すものである。その他のガリウムの放射性同位元素、例えばGa−68は、Ga−67同位体と化学的に同様の挙動を示すため、Ga−68フィブリンライトはまた、これらの方法により作成され得、そして、ポジトロン放出断層撮影(PETイメージング)のためのGa−68の場合において、イメージング標識体として使用され得ることが結論付けられた。
【0112】
実施例9:SIR−スフェア マイクロスフェアへのTc−99mフィブリンライトの結合
この実施例で用いられたSIR−スフェア マイクロスフェアは、治療用アイソトープY−90(T1/2=64時間)の100半減期に相当するよりも長い間経過させ、イメージング用アイソトープで標識するための“コールド”のSIR−スフェア マイクロスフ
ェアサンプルを得た。Tc−99mフィブリンライト(2乃至5mCi)を、硫酸プロタミン(10μg/mL;シグマ社製P4505)の水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したフィブリンライトを次ぎに、予め洗浄(水で3回)した平均直径30ミクロンのSIR−スフェア マイクロスフェア(100mg)のスラリーに添加し、そして、この懸濁液を20℃において30分間緩やかに混合した。このSIR−スフェア マイクロスフェアを次ぎに、簡便な遠心分離(5,000rpnmで1分間)により可溶化相から分離し、そしてSIR−スフェア マイクロスフェアを再懸濁化させそして水(5.0mL)で3回洗浄した。元の可溶化相、3つの洗浄上澄及び最終の標識マイクロスフェア製剤の放射能を、全て計測しそして、図7に示すように全Tc−99mの放射能の百分率として表した。この結果は、6回の別個の製造(異なる色)で示す。
この実験は、好適な条件下でのポリカチオンとTc−99mフィブリンライトの処理はまた、癌患者の選択的内部照射療法(SIRT)に使用される特定の種類のポリマーマイクロスフェアへのTc−99mフィブリンライトナノ粒子の強固な結合を誘導し得、そして、このようにして標識されたSIR−スフェア マイクロスフェアは、分離され得そして、洗浄され、治療用SIR−スフェア マイクロスフェアの生体内分布の生体内ガンマカメライメージング研究に好適な精製された生成物をもたらすことを示すものである。
【0113】
実施例10:ウサギ肝臓の動脈血管系に点滴注入後のTc−99mフィブリンライトナノ粒子のイメージング
ニュージーランドシロウサギをイソフルランで麻酔しそして胆嚢動脈及び肝動脈を露出させた。ビニール製のマイクロカテーテルを胆嚢動脈に挿入しそして少量のTc−99mフィブリンライト(全3.8mCi)を、肝動脈流が、肝臓へナノ粒子を運搬するように、徐々に注入した。ウサギ全身のガンマカメライメージングで、標識されたナノ粒子が急速に肝臓に取り込まれたが、いくらかの標識体は、全身循環へと存続したことを確認した。60分後、ウサギを安楽死させそして全肝臓を切除した。生体外での肝臓のガンマカメライメージング(図10a)は、肝臓の全ての組織中への標識されたナノ粒子の分布を確認した。
この対照実験は、肝臓に動脈から注入後Tc−99mフィブリンライトナノ粒子の通常な結末は、臓器の全組織中に分布することであることを示した。粒子は、約300nmの平均直径のものであるため、全ての組織の最も小さい毛細血管に入ることができ、ここでそれらは、網内系(RES)の一部である食作用を有するクッパー細胞により取り込まれる。この取り込みは、非常に迅速であり、効率的であるが、標識されたナノ粒子はまた、全身循環へと抜け出し得、ここからそれらはウサギの脾臓及び骨髄中のRESにより取り込まれ、そしていくつかの標識体はまた腎臓中にも見られ得る(図10b)。
【0114】
実施例11:ウサギ肝臓の動脈血管系の点滴注入後のTc−99mフィブリンライト標識マイクロスフェアのイメージング
Tc−99mフィブリンライト(10mCi)を、10μg/mLの硫酸プロタミン(シグマ社製、P4505)の水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したフィブリンライトを直径30ミクロンの予め洗浄したスルホン化ポリスチレンマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド製)(100mg)へ添加し、そして、緩やかな攪拌とともに20℃において30分間結合させた。マイクロスフェアを、使用前に水(5.0mL)で3回洗浄した。ニュージーランドシロウサギをイソフルランで麻酔しそして胆嚢動脈及び肝動脈を露出させた。ビニール製のマイクロカテーテルを胆嚢動脈に挿入しそして少量の3.0mCi Tc−99mで標識したマイクロビーズ懸濁液を、肝動脈流が肝臓へナノ粒子を運搬するように、徐々に注入した。ウサギのカンマカメライメージングは、標識されたマイクロスフェアが肝臓を透過しそして標識体の大部分がそこへ保持されたことを確認した。痕跡程度の標識された粒子が全身循環を続けるのみであった。60分後、ウサギを安楽死させそして全肝臓を切除した。生体外で
の肝臓のガンマカメライメージング(図11a)は、Tc−99mナノ粒子を用いて見られた肝臓の完全なかん流(上記図10a)と比較して、明確に分割された肝臓中における標識体の分布を示した。また、実施例10における対照実験と比較して、肝臓の除去後のウサギの全身のイメージングは、脾臓及び骨髄の如何なる標識も示さず(図11b)、
つまり、肝臓中のマイクロスフェア上の標識物の保持は、事実上完了したことを示した。
これらの結果は、マイクロスフェアの標識がウサギにおける生体内条件下で安定であることを示した。局所的に注入されたTc−99mフィブリンライト標識マイクロスフェアのガンマカメライメージングは、全身循環への僅かな漏出(図11b)とともに、ウサギ肝臓の動脈血管系中に標識体の効率的な取り込みを示した(図11a)。このことは、体内に導入された合成ポリマーの医学的イメージングのための、例えば、癌の局所治療の目的のための、標識方法の使用の可能性を説明するものである。
【0115】
実施例12:ウサギ肝臓の動脈血管系に点滴注入後のTc−99mフィブリンライト標識されたSIR−スフェア マイクロスフェアのイメージング
この実施例で用いられたSIR−スフェア マイクロスフェアは、治療用アイソトープY−90(T1/2=64時間)の100半減期に相当するよりも長い間経過させ、イメージング用アイソトープで標識するための“コールド”のTc−99m SIR−スフェア
マイクロスフェアサンプルを得た。Tc−99mフィブリンライト(8.0mCi)を、10μg/mLの硫酸プロタミン(シグマ社製P4505)の水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したフィブリンライトを予め洗浄したSIR−スフェア マイクロスフェア(100mg)へ添加し、そして緩やかに混合しながら20℃において30分間結合させた。SIR−スフェア マイクロスフェアを、使用前に水(5.0mL)で3回洗浄した。ニュージーランドシロウサギをイソフルランで麻酔しそして胆嚢動脈及び肝動脈を露出させた。ビニール製のマイクロカテーテルを胆嚢動脈に挿入しそして少量の3.5mCi Tc−99mで標識したSIR−スフェア マイクロスフェアを、肝動脈流が肝臓へナノ粒子を運搬するように、徐々に注入した。ウサギのカンマカメライメージングは、標識されたSIR−スフェア マイクロスフェアが肝臓に取り込まれそして標識体の大部分がそこへ保持されたことを確認した。60分後、ウサギを安楽死させそして全肝臓を切除した。生体外での肝臓のガンマカメライメージング(図12a)は、Tc−99mナノ粒子において見られた肝臓の完全なかん流(上記図10a参照)と比較して、明確に分割された肝臓中における標識体の分布を示した。また、上記実施例10におけるTc−99mフィブリンライト標識を用いた対照実験と比較して、肝臓の除去後のウサギの全身のイメージングは、肝臓中のSIR−スフェア マイクロスフェア上の標識体の保持が非常に効率的であり、残渣程度の標識体のみが腎臓及び骨髄に見られ、そして脾臓中には全く観測されなかったことを示した(図12b)。
これらの結果は、SIR−スフェア マイクロスフェアの標識がウサギにおける生体内条件下で安定であることを示したものである。局所的に注入されたTc−99mフィブリンライト標識SIR−スフェア マイクロスフェアのガンマカメライメージングは、全身循環への僅かな漏出とともに、ウサギ肝臓の動脈血管系中に標識体の効率的な取り込みを示した。このことは、病気、例えば癌の局所治療の目的のための、体内に導入された合成ポリマーの医学的イメージングのための、標識方法の使用の可能性を説明するものである。
【0116】
考察
これらの実施例はここで、合成ポリマーの標識の高い反応性が、短距離引力が長距離静電斥力に優勢となる、高められた電解質濃度を通じて及び/又はpH条件を通して達成され得ることを示すものである。これらの実施例は、フィブリンライトとポリスチレンの間の結合が、疎水性相互作用を含み、そして、疎水性相互作用は阻害されないが、電解質濃度の増加により実際に高められるため、結合は、生理学的電解質濃度において利用され得ることを示すものである。ここに記載された方法を用いて、フィブリンライトナノ粒子は
ポリマー表面に強固に保持され、そして放射性標識体は、生体内で直面し得る電解質条件下で分離しない。
【0117】
上記の実施例は、ポリマー表面へのフィブリンライトの結合を誘導するために単純な電解質、塩化ナトリウムの使用を説明する。しかし、ポリイオン、特にポリカチオンはまた、ポリマー表面へのフィブリンライトの結合を強力に誘導することが、そして、非常に低い濃度において、例えばポリ−リジン0.5マイクログラム/mLにおいてであることが、見出された。ポリ−リジンのようなポリカチオンを用いたフィブリンライトの表面処理はまた、有機化学の標準的な方法によりフィブリンライトへの広範な有機置換基、例えば、ポリペプチド、抗体、酵素及び細胞表面レセプターリガンドの連結を可能にすることは、本開示から明らかである。このことは、種々の人間又は動物の腫瘍における過大発現したマーカータンパク質の検出及び局在のような、特異的標識及び生体内での医学的なイメージング適用のためのフィブリンライトを特別に製造するために望ましいものであり得る。そのような使用は、診断、予後診断、ステージング又は腫瘍の術後モニタリング、並びに病気の再発の検出の支援をもたらし得る。
【0118】
上記実施例は、ポリスチレンマイクロウェルへのフィブリンライトの結合の誘導を説明した。極めて類似した結果は、ポリプロピレン管を用いても得られた。ポリプロピレンへのフィブリンライトの強固な結合は、単純な電解質の添加後そして特にポリ−リジンのようなポリカチオンの添加後に見られた。さらにまた、結合を誘導するための適切な濃度は、ポリスチレンのために上記で報告されたものと同様である。ポリスチレンは、芳香族サブユニット、スチレンの鎖を含むポリマーの一例である。ポリプロピレンは、脂肪族サブユニット、プロピレンの鎖を含むポリマーの一例である。このように分子レベルにおけるこれらの2つのポリマーの化学は全く異なるが、双方へのフィブリンライトの結合は、同様の電解質の濃度によって誘導され得る。フィブリンライト粒子は、強い疎水性力が優位を占めるところのポリマー表面に近距離で接近し得るのが一般的である。近距離の接近は、電解質の適切な濃度で弱い静電斥力を遮蔽することにより可能である。結合は、強い短距離疎水性引力を優勢にするような、弱い長距離静電斥力を減弱させることにより有利となる。
【0119】
上記は、本発明の好ましい形態を記載した。本発明は、上記に示された特定の実施態様に限定されるべきでないことは理解されるところである。当業者に自明な変形及び変化は、本発明の範囲から離れることなくそれに加えてなされ得る。
【技術分野】
【0001】
本願は、その参照としてここに取り込まれる2008年4月24日に出願されたオーストラリア国仮特許出願第2008902064号の利益を請求するものである。
【0002】
本願発明は、医薬品及び獣医学的製品に使用するための合成ポリマー(プラスチック類)のような放射性標識された巨大分子集合体の製造方法に関する。より詳細な態様において、本発明は、診断学的イメージング、局所放射線療法及び標的放射線療法に使用するための放射性標識された合成ポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
放射性標識合成ポリマーの製造方法は当業者によく知られている。従来の方法は、塩の結合(即ちイオン交換樹脂と類似する)かまたは錯体化学の使用のどちらかにより放射性核種を結合させ得る化学的リンカーの使用を含む。典型的にはこれらの方法は、ポリマー上に得られた標識の限られた密度に起因した放射性核種の低い保持または低い比放射能が(それぞれに)問題となっていた。また最近では、洗浄剤の錯体誘導体が、炭素ナノチューブの表面を放射性標識するために使用されてきたが、これらは、その他の錯体誘導体同様低い標識率並びにこのような洗浄剤の低い生物学的許容性に問題があった(Liu等、Nature Nanotechnology、2巻:45−52頁(2007年))。錯体化学の使用のその他の限界は、与えられたキレート官能性が広範な種々の金属放射性核種に好適でないことである。金属を変化させることは、しばしば、錯体の化学的性質を変化させる必要を生じさせる。合成された放射性標識ポリマーは、種々の医学及び治療分野における使用が見出され得る。一例として、数種のインプラントが、循環器疾患及び癌の治療のための医薬に使用されている。したがって例えば、ステント(短円筒形管)は、血管の開通性を増すために冠動脈中に移植され、そしていくつかのステントの合成ポリマー表面は、血管内閉鎖の再発を防止するために再狭窄の阻害剤を含み得る。放射性同位元素を用いた血管内の小線源療法は、術後間もない間の再閉鎖を防止するための一つの方法であり、ステントは平滑筋の増殖を阻害するために放射性同位元素を含む。癌の治療において、放射性標識合成ポリマーは、腫瘍を除去し得る放射性同位元素の治療量の局所送達の目的で、幾つかの形態、例えば、選択された臓器へむけて輸血血液供給中に局所的に注入され得る、ミクロスフェア(マイクロスフェア)に使用され得る。ポリマー上への標識の高いレベルの比放射能及びポリマー上の放射性核種の強い保持は、治療方針の場で、高い線量の放射能が少量の物質で送達されそして照射の効果を標的臓器に確実に限定し得るために望まれる。放射性標識合成ポリマーの分野において知られた方法は、1)合成ポリマーが標識される程度、及びまたは2)標識の結合力、及び3)その広範な種々の金属放射性核種への適用により、限定されている。
【0004】
公知の方法の欠点または限界の一つまたはそれ以上を解消または回避する、放射性標識合成ポリマーの改善された合成方法のための必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Liu等、Nature Nanotechnology、2巻:45−52頁(2007年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、放射性標識合成ポリマー(プラスチック)の改善された製造方法を提供するか
又は当該技術分野への代替手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、放射性合成ポリマーの製造方法が提供され、該方法は、静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む水溶性媒体中の放射性微粒子コアを有する、炭素封入ナノ粒子複合材料と合成ポリマーを接触させる工程、を含む。
一つの実施態様において、前記炭素封入ナノ粒子複合材料は、フィブリンライト(FiblinLite)である。
一つの実施態様において、前記炭素封入ナノ粒子複合材料は、陰イオン性界面活性剤を含む。一つの実施態様において、陰イオン性界面活性剤は、デオキシコール酸ナトリウムである。
一つの実施態様において、前記電解質濃度及びpHは短距離引力を促進するために選ばれる。
一つの実施態様において、水性媒体は、陰イオン性界面活性剤を含む。一つの実施態様において、陰イオン性界面活性剤は、デオキシコール酸ナトリウムである。
一つの実施態様において、前記電解質は、単純電解質である。一つの実施態様において、前記単純電解質は、Na,K及びCaからなる群より選ばれる。
一つの実施態様において、前記水性媒体の単純電解質濃度は、約1ミリモル以上乃至約150ミリモルの範囲である。一つの実施態様において、前記水性媒体のpHは約3.5である。一つの実施態様において、前記水性媒体は、約15ミリモルのNaClに相当する電解質濃度を含み、そして、約3.5のpHを有する。一つの実施態様において、前記水性媒体は、約80ミリモルのNaClに相当する電解質濃度を含み、そして、ほぼ中性のpHを有する。
一つの実施態様において、前記電解質は、ポリカチオンである。一つの実施態様において、前記ポリカチオンは、ポリリジン、プロタミン及びアプロチニンからなる群より選ばれる。
一つの実施態様において、前記水性媒体は、約5ナノモル以上乃至約4000ナノモルの範囲内の濃度でポリカチオンを含む。一つの実施態様において、前記水性媒体は、約30ナノモルのポリリジンに相当するポリカチオン濃度を含む。一つの実施態様において、前記水性媒体は、2500ナノモルのプロタミンに相当するポリカチオン濃度を含む。
一つの実施態様において、前記放射性微粒子コアは、99mTc、198Au、64Cu、51Cr、67Ga、68Ga,166Ho、111In、177Lu、103Pd、82Rb、186Re、153Sm、89Sr,90Y、89Zr及び192Irからなる群より選ばれる放射性同位元素または放射性核種を含む。
一つの実施態様において、前記放射性微粒子コアは、99mTcを含む。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート及びポリアクチド(PLA)からなる群より選ばれる。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、ポリマーの懸濁液または分散液を含む。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、巨大分子集合体の形態または巨大分子集合体を含む。一つの実施態様において、巨大分子集合体は、ポリマービーズを含む。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、カテーテル、繊維、ロッドまたはフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔質スポンジ、管またはステント、ビーズ又は公知のサイズのミクロスフェア(マイクロスフェア)の形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中又は表面に含まれる。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、組織、例えば腫瘍部分において、微小血管網中への取り込みを可能とするサイズ範囲のミクロ粒子を含む。
一つの実施態様において、該方法は、標識されていない合成ポリマーから及びまたは遊
離のナノ粒子複合材料から、放射性標識合成ポリマーを分離する方法を含む。
【0008】
本発明の第二の特徴において、放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と複合体を形成した合成ポリマーを含む放射性標識された物質が提供される。
一つの実施態様において、前記放射性標識された物質は医療用具である。
一つの実施態様において、前記放射性標識された物質は、多数の異なる放射性標識を含む。
一つの実施態様において、前記放射性標識された物質は、イメージングに好適な放射性標識及び治療用途に好適な放射性標識を含む。
【0009】
本発明の第三の特徴において、放射性標識医療用具を製造する方法であって、
該方法は、医療用具の中又は表面に該放射性標識合成ポリマーを取り込むために好適な条件下で、該医療用具と、放射性微粒子コアを含む炭素封入ナノ粒子複合材料を含む放射性合成ポリマーを接触させることを含む方法が提供される。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の医療用具が、診断用用具及び治療用用具から選ばれる。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の医療用具は、カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又は又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中または表面に含まれる放射性標識合成ポリマーを含む。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の用具は移植可能な医療用具である。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の用具はステントである。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の用具が、選択的な内部照射療法として選択された標的臓器の局所動脈血供給へ注入するために好適な合成ポリマーマイクロ粒子であり、該標的臓器の動脈毛細血管網中に埋め込まれる粒子サイズを含む。
一つの実施態様において、前記第二又は第三の特徴の用具は、動物用用具である。
【0010】
第四の特徴において、本発明は、患者を放射線治療する方法であって、該方法は、
治療上有効量の放射性標識合成ポリマーを患者に投与することを含み;そして
該放射性標識合成ポリマーは、放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料に関連した合成ポリマーを含む、方法が提供される。
一つの実施態様において、前記放射性標識合成ポリマーは、ビーズ、ミクロ粒子又はマイクロスフェアの形態またはその中又は表面に取り込まれる。
一つの実施態様において、前記患者を放射線治療する方法は、選択的内部照射療法から選ばれる。
一つの実施態様において、前記治療は、癌の治療である。
一つの実施態様において、前記癌は、結腸癌、直腸癌、又は乳癌の原発巣由来の肝臓の転移(二次)癌である。一つの実施態様において、前記癌は、原発性肝癌(肝細胞癌)である。
【0011】
本発明の第五の特徴において、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)と複合体を形成した合成ポリマーを製造する方法であって、該方法は、
長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む、水性媒体中で放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と、合成ポリマーを接触させることを含む方法が提供される。
【0012】
本発明の第六の特徴において、合成ポリマー及び放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する、炭素封入ナノ粒子複合材料を含む複合
体が提供される。
【0013】
本発明の第七の特徴において、合成ポリマーを放射性標識する方法であって、
該方法は、以下の工程;
(a)長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む水性媒体中に放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と合成ポリマーを接触させる工程;そして
(b)非放射性前駆体(progenitor)を放射化させ放射性同位元素を生成させる工程、を含む方法が提供される。
【0014】
前記第五、第六及び第七の特徴の一つの実施態様において、前記放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)は、ホウ素の安定同位体(ホウ素−10)である。
前記第五、第六及び第七の特徴の一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、ポリマーの懸濁液又は分散液を含む。
前記第五、第六及び第七の特徴の一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又は又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中またはその表面に含まれる。
前記第五、第六及び第七の一つの実施態様において、該方法はさらに、前記合成ポリマーを医療用具の中又は表面に取り込むことを含む。一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、放射化に先立ち医療用具の中又は表面に取り込まれる。一つの実施態様において、前記方法は、該放射化に先立ち患者へ医療用具を投与することをさらに含む。一つの実施態様において、前記投与は、該放射化に先立ち患者中へ該医療用具を移植することを含む。
一つの実施態様において、前記放射化は、中性子線に前駆体(progenitor)を曝露させることを含む。
【0015】
第八の特徴において、本発明は、患者を放射線治療する方法であって、該方法は以下の工程、
放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と、合成ポリマーを含む複合体の量であって、該量は、該非放射性前駆体(progenitor)が放射化された場合に、治療上有効量である量を患者に投与する工程、そして、非放射性前駆体(progenitor)を放射化させ、放射性同位元素を生成させる工程を含む方法が提供される。
一つの実施態様において、前記放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)がホウ素の安定同位体(ホウ素−10)である。
一つの実施態様において、前記放射化は、中性子線に前駆体(progenitor)を曝露させることを含む。
【0016】
第九の特徴において、本発明は、患者の医療処置のイメージング方法であって、該方法は、合成ポリマー及び放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料を含む複合体を患者に投与し、そして前記患者中の該複合体を検出する方法が提供される。
一つの実施態様において、前記医学的方法は、病気の局所治療を含む。
一つの実施態様において、前記検出は、該放射線のガンマカメライメージングを含む。
一つの実施態様において、前記合成ポリマーは、ミクロ粒子又はナノ粒子を含む。
一つの実施態様において、前記方法は、病気の治療に好適な放射性同位元素、イメージングに好適な放射性同位元素またはそれらの組み合わせを患者に投与しすることを含む。
一つの実施態様において、前記複合体は、二重標識合成ポリマーを含む。一つの実施態様において、前記二重標識合成ポリマーは、治療に好適な放射性同位元素及びイメージン
グに好適な放射性同位元素を含む。
【0017】
上記本発明の概要は、限定を意味するものではなく、そして本発明のその他の特徴及び利点は、以下に示す前記好ましい実施態様の詳細な説明、並びに特許請求の範囲から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の好ましい形態を、以下に添付の図を参照して記載する。
【図1】図1a:種々の緩衝液条件下でのポリスチレンウェルへのTc−99mフィブリンライト粒子の結合:500μMクエン酸ナトリウムpH3.5(“pH3.5”);500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス10μM デオキシコール酸ナトリウム(“pH3.5DOC”);500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス150mM NaCl(“pH3.5+NaCl”);500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス10μM DOCプラス150mM NaCl(“pH3.5+N+D”);注記“pH6.0”、“pH6.0+DOC”、“pH6.0+NaCl”、及び“pH6.0+N+D”は対応する意味を有するが、pH3.5ではなくpH6.0を意味する。バーは、2つのウェルの平均を表す。
【図2】図1b:0.5mMトリス−酢酸緩衝液pH6.0中で、塩化ナトリウムの示された濃度で20℃において1時間のフィブリンライトの前処理の後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図3】図2a:0.5mMクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5中で、塩化ナトリウムの示された濃度で20℃において1時間のフィブリンライトの前処理の後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図4】図2b:0.5mMクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5中で、塩化ナトリウムの示された濃度で20℃において1時間のフィブリンライトの前処理の後の、Tc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)のポリプロピレンバイアル(エッペンドルフ管)への結合。
【図5】図3:150mM塩化ナトリウム及び0.5mMクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5を含む緩衝液中で、ウサギ血清アルブミン(RSA;シグマ社製A0764)の示された濃度で20℃において30分間のフィブリンライトの前処理の後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図6】図4:水、生理食塩液(150mM NaCl)、またはウサギ血漿中で37℃において1時間攪拌しながら洗浄した後のポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)上の結合Tc−99mフィブリンライトの保持。“対照”試料は、結合後に攪拌とともに洗浄することをしなかった。4連のマイクロウェルの結果を示す。
【図7】図5a:ポリスチレンへのフィブリンライトのポリカチオン誘導的結合。0.5mMトリス−酢酸緩衝液pH6中で、ポリ−D−リジン(MW15乃至30kd;シグマ社製4408)の示された濃度で20℃において1時間フィブリンライトと前処理した後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図8】図5b:ポリスチレンへのフィブリンライトのポリカチオン誘導的結合。0.5mMトリス−酢酸緩衝液pH6中で、硫酸プロタミン(シグマ社製P4505)の示された濃度で20℃において1時間フィブリンライトと前処理した後の、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwells(商標登録)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図9】図5c:ポリスチレンへのフィブリンライトのポリカチオン誘導的結合。0.5mMトリス−酢酸緩衝液pH6中で、硫酸プロタミン(シグマ社製P4505)の示された濃度で20℃において1時間フィブリンライトと前処理した後の、ポリプロピレンバイアル(エッペンドルフ管)へのTc−99mフィブリンライト希釈液(1:10;100μL)の結合。
【図10】図6:ポリ−D−リジンの3つの異なる分子サイズのフラクションとフィブリンライトの前処理により誘導されたポリスチレンマイクロウェルへのTc−99mフィブリンライトナノ粒子の結合。図は、2連のウェルのナノ粒子の結合のガンマカメラ画像を示し、そして、3つの異なるポリ−D−リジンの濃度(μg/mL)が使用された;A−分子量30乃至70kd、B−分子量15乃至30kd、そしてC−分子量4乃至15kd。
【図11】図7:フィブリンライトをポリカチオン、硫酸プロタミン(シグマ社P4505)と前処理することにより誘導されたスルホン化ポリスチレンのマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)へのTc−99mフィブリンライトの結合。グラフは、最終的なマイクロスフェア調製品(スフェア)、標識取り込みの完了後の標識インキュベーション中の残渣(上澄)、そして、3つの標識されたマイクロスフェアの洗浄液(洗浄液1、2及び3)の間のTc−99m放射能の分布を示す。結果を、5回の独立した製造(異なる色)で示し、Tc−99mフィブリンライトの製造を、2,800℃乃至2,6000℃の範囲でるつぼ焼灼(crucible ablation)を低下させることにより変化させた。温度の低下は、結合標識の減少と関連があった。
【図12】図8:ポリカチオン、硫酸プロタミン(シグマ社製、P4505)とフィブリンライトの前処理によって誘導されたスルホン化ポリスチレン(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)の、マイクロスフェアへのGa−67フィブリンライトの結合。グラフは、最終的なマイクロスフェア調製品(スフェア)、標識取り込みの完了後の標識インキュベーション中の残渣(上澄)、そして、3つの標識されたマイクロスフェアの洗浄液(洗浄液1、2及び3)の間のGa−67の放射能の分布を示す。
【図13】図9:ポリカチオン、硫酸プロタミン(シグマ社製、P4505)とフィブリンライトの前処理によって誘導されたSIR−スフェア(登録商標)(SIR−スフェア(登録商標)は、Sirtex SIR−スフェア株式会社の登録商標である)のマイクロスフェアへのTc−99mフィブリンライトの結合。グラフは、最終的なマイクロスフェア調製品(スフェア)、標識取り込みの完了後の標識インキュベーション中の残渣(上澄)、そして、3つの標識されたマイクロスフェアの洗浄液(洗浄液1、2及び3)の間のTc−99mの放射能の分布を示す。結果を6つの別個の製造として示す。
【図14】図10a:麻酔下で局所動脈点滴後に切除されたウサギ肝臓中のTc−99mフィブリンライトの生体内分布のガンマカメラ画像。切除された臓器の全ての肝葉の組織中の標識物の分布を注意のこと。
【図15】図10b:上記図10aに示された肝臓の除去後のウサギの全身のガンマカメラ画像。脾臓及び骨髄中にも標識されたナノ粒子の顕著な取り込みがあることに注意のこと。
【図16】図11a:麻酔下で局所動脈から点滴後に切除されたウサギの肝臓中のスルホン化ポリスチレン(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)のTc−99mフィブリンライト標識マイクロ粒子のガンマカメラ画像。マイクロ粒子は、動脈血供給により肝臓に運搬される、30ミクロンの平均直径を有し、ここで留まり、そして限られた血管径において保持される。上記図10aに見られる標識物と比較して、切除肝の肝葉中の標識物のセグメント化された分布を注意のこと。
【図17】図11b:上記図11aに示した肝臓の切除後のウサギの全身のガンマカメラ画像。上記図10bと比較して、脾臓及び骨髄の標識が欠如している。信号の小さな部分は、術後の肝臓からの残余の物質に起因するものである。
【図18】図12a:麻酔下に局所動脈点滴後の切除されたウサギ肝臓中のTc−99mフィブリンライト標識SIR−スフェアのマイクロスフェアのガンマカメラ画像。SIR−スフェアのマイクロスフェアは、動脈血供給により肝臓中に輸送され、そこで限られた血管サイズにおいて保持された。上記図10aに見られる標識と比較して、切除肝の肝葉中の標識体のセグメント化された分布を注意のこと。
【図19】図12b:上記図12aに示した肝臓の切除後のウサギの全身のガンマカメラ画像。図10bと比較して、腎臓及び骨髄の僅かな描出を注意のこと。
【0019】
略語
便宜上、本明細書で用いられる以下の略語を以下に列挙する。
ここで用いられる用語“SPECT”は、シングルフォトン放出コンピュータ断層撮影(single photon emission computed tomography)の略語である。
ここで用いられる用語“PET”は、ポジトロン放出断層撮影(positron emission tomography)の略語である。
ここで用いられる用語“SIRT”は、選択的体内照射療法(selective internal radiation therapy)の略語である。
ここで用いられる用語“SMPG”は、走査型移動度粒径測定(scanning mobility particle sizing)の略語である。
ここで用いられる用語“MCE”は、混合セルロースエステルの略語である。
ここで用いられる用語“PTFE”は、ポリテトラフルオロエチレンの略語である。
ここで用いられる用語“ePTFE”は、発泡ポリテトラフルオロエチレンの略語である。
ここで用いられる用語“PBT”は、ポリ(ブチレンテレフタレート)の略語である。
ここで用いられる用語“PEO”は、ポリ(エチレンオキシド)の略語である。
ここで用いられる用語“PLA”は、ポリアクチドの略語である。
ここで用いられる用語“PGA”は、ポリグリコリドの略語である。
ここで用いられる用語“DOC”は、デオキシコール酸ナトリウムの略語である。
【0020】
放射性標識合成ポリマーの製造における放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料(フィブリンライトナノ粒子のような)の製造及び使用に関するここでの記載は、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料の使用に対して変更すべきところは変更して、必要に応じて、(放射性同位元素よりも非放射性前駆体(progenitor)の使用、そして、非放射性前駆体(precursor)の実施態様の場合における放射化工程など)熟練した受け手により評価されるように、適用することが理解される。
【0021】
ここで用いられる用語、“治療上の有効量”は、望ましい治療効果をもたらす本発明で用いる化合物又は組成物の非毒性であるが十分な量をその意味の中に含む。必要とされる正確な量は、治療される種、年齢、患者の体重及び一般的な状態、同時罹患率、治療される状態の重症度、投与される特定の剤及び投与の形態その他のような因子に依存し対象によって異なる。したがって、個々の症例によって、適切な“有効量”は、定められた方法のみを使用する当業者により決定され得る。
【0022】
本明細書の中で、用語“含む”は“主に含むが、必ずしもそれのみではない”を意味する。さらに、“含む”の語の変形“comprise”及び“comprises”は、意味に応じて変化する。したがって、用語“含む”及びその変化は、付加的な整数又は特徴は、整数Aを含む、又は整数A及びBを含むのように記載される、組成物、方法等において随意に表され得るように、排他的な意味よりむしろ包括的な意味において使用される。
本明細書の中で、用語“約”は、熟練した受け手が与えられた値を関連付ける通常の許容範囲を示すものとして理解される。
本明細書の中で、範囲がパラメーターのために記載される場合、それは、そのパラメー
ターは、記載された範囲内の全ての値を含み、記載されたその範囲の終点を包含するものと理解される。例えば、“5乃至10”の範囲は、値5、6、7、8、9及び10の値並びに、6乃至10、7乃至10、6乃至9、7乃至9等のような記載された範囲内の如何なる部分的な範囲も含むものと理解され、そして、5.5、6.5、7.5、5.5乃至8.5及び6.5乃至9等のような、記載された範囲に関して合理的である整数の間の如何なる値及び範囲も包含する。
本明細書の中で、用語“多数の”は、1より多い任意の数を意味する。
許される範囲で、ここに引用された参照は、そのまま参照として取り込まれる。
【0023】
好ましい態様及びその他の態様の記載
本発明を、説明を含め説明のみを目的として、その後の実施例とともに、より詳細に説明する。
【0024】
本発明者らは、pH及び又は電解質濃度の好適な条件が選択され得、その条件が、ナノ粒子複合材料(フィブリンライトナノ粒子のような)がポリマー表面への実質的に不可逆結合となるように、炭素封入放射性核種のナノ粒子複合材料及び合成ポリマーの間の反発電荷の減少を促進し、そして、長距離静電斥力を上回って優勢を占める短距離引力を可能とする、ことを見出した。本発明はしたがって、ナノ粒子の外部表面を含むグラファイトとの分子間の疎水性分散相互作用またはイオン相関を可能とする合成ポリマーの高比放射能の放射性標識のための炭素封入放射性核種のナノ粒子複合材料(フィブリンライトのような)の使用のための方法に関する。
【0025】
特定の実施態様において、該手順は、合成ポリマーの親和性の高い放射性標識、例えば研究用で使用されるもの及び心疾患及び癌の治療のための治療インプラントを含む医療用具のような診断又は治療の医療用途で使用されるもの、を可能とする。好ましい実施態様において、合成ポリマーの親和性の高い放射性標識は、標識合成ポリマー及び医療用具によって典型的に直面する条件下では実質的に不可逆である。特定の実施態様において、合成ポリマーの親和性の高い標識は、生体内条件下で約10%の解離以下である。
【0026】
Nair等の2005年12月20日付けの“フィブリン血栓の検出方法“と題する米国特許第6,977,068号明細書は、フィブリン血栓の検出において炭素封入放射性核種ナノ粒子の使用のための方法を記載している。2006年4月28日に出願されそして国際公開第2006/116798号パンフレットとして公開された、”炭素封入放射性微粒子の注射用放射性組成物を形成する方法“と題する国際出願第PCT/AU2006/000554号は、炭素封入ナノ粒子の注射製剤の製造のための方法を記載している。ここに記載されている方法は、”フィブリンライトプロセス“と呼ばれ得、そしてこのように製造されたナノ粒子は”フィブリンライト“と呼ばれる。許容される範囲内で、米国特許第6,977,068号明細書及び国際出願第PCT/AU2006/000554号(国際公開第2006/116798号パンフレット)の全内容は参照としてここに取り込まれる。ここに記載されるように、本発明者らは、高比放射能及び高い親和性を有する合成ポリマーの放射性標識を提供し得る、炭素封入ナノ粒子(フィブリンライトのような)を使用する方法を見出した。
【0027】
放射性標識合成ポリマーがフィブリンライトナノ粒子を用いて製造され得る方法を提供することにより、本発明者らは、その外部環境との接触から物理的に隔離されるような炭素ケージ中の金属アイソトープを覆う炭素封入プロセス(国際出願第PCT/AU2006/000554号参照)、特にそれらが生体内で使用された場合の、粒子そしてさらに合成ポリマーの特に有用な特性を利用する。放射性標識合成ポリマーの生体内での放射性金属イオンの浸出及び生体内取り込みの可能性は、ナノ粒子複合材料の炭素外部のみが生体内での生物環境に曝露されているために、実質的に存在しない。
【0028】
合成ポリマー及び医療用途
本発明の方法は、その利用法を、例えば、治療又は診断用途のための薬剤において有用な用具の製造において、見出し得る。この内容において、例えば、放射性同位元素と結合するか又は放射性同位元素とともに結合する場合の、担体及びインプラントを含む、医療用具は本発明に使用され得る治療又は診断上の利点を提供する。
【0029】
一つの例として、医療用具は、血管障害、例えば、心疾患の治療のための医療に使用される移植可能な用具、例えば代用血管、人工器官又はステントであり得る。その他の医療用具はまた、侵襲性の少ないカテーテル等、が使用され得る。代用血管は、好適な形またはデザインのものはどれでも、そして、例えば、内部及び外部疎水性表面を有する中空の管状体を含み得る。医療用具は、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製代用血管のような、内径の小さな代用血管であり得る。本発明の目的のために、用語“代用血管”は、カテーテルを通してか又は外科手術中に一般的に導入される人工器官を含む。したがって、ステント(典型的には、短円筒形管の形態で)は、血管の開通性を増すために冠動脈中に移植され、そして、幾つかのステントの合成ポリマー表面は、血管中の閉塞の再発を防ぐための再狭窄の阻害剤を含み得る。放射性同位元素を用いた血管内の小線源照射療法は、ステントが放射性同位元素を含み平滑筋の増殖を阻害する、術後早期の間の再閉塞を防止するための一つの方法である。その他の種類のインプラントとしては、乳癌又は前立腺癌の小線源療法におけるような、腫瘍を有する臓器の局所照射のためのような、マクロビーズ、“シード”、ワイヤー、繊維又はフィラメント、ガーゼ又はメッシュを含む。
【0030】
放射性物質の局所投与による癌の治療のための方法は、知られており、そして、例えば、放射性物質が小粒子、シード、ワイヤー及び癌へ直接移植され得る同様の形態へ取り込まれる場合を含む。これらの形態は、本発明の実施態様の範囲内に全て意図される。この小線源療法の形態は、腫瘍、例えば、乳癌又は前立腺癌の局所照射のために典型的に使用され、そこでは治療用アイソトープを有する“シード”が臓器に移植される。[Hede、J Natl Cancer Inst 99巻:1507−1509頁(2007年);Sarin等、Nature Clin Pract Oncol 4巻:382−383頁(2007年)]。
【0031】
癌治療のその他の形態において、合成ポリマーは、その臓器の腫瘍を除去し得る放射性同位元素の治療量の局所送達の目的のために、カテーテルから輸入性(動脈)血液供給へ選択された臓器(例えば罹患器官)へ局所的に挿入され得る、マイクロビーズ、マイクロ粒子及びマイクロスフェアのような幾つかの形態において使用され得る。これらの形態は、全て、本発明の実施態様の範囲内に全て意図される。この局所放射線治療の形態において、ビーズの直径は、腫瘍の動脈血毛細血管網中に埋め込まれるように選択される。そのような用途において、放射性同位元素は、32P、153Sm、90Y、125I、192Ir、103Pd、111In、166Hoのような、増殖細胞を死滅させることのできる短距離、高エネルギー放出体を有するものから典型的に選ばれる。
【0032】
そのような技術の一つの例において、放射性粒子は、結腸又は直腸の原発性腫瘍由来の二次的な(転移性)腫瘍を除去するために、肝臓のような、標的臓器の血液供給へ投与される。このことは、選択的内部照射療法(SIRT)として当業者に一般的に知られている[Garrean等、World J Gastroenterol 13巻:3016−3019頁(2007年)]。そのような方法における使用に好適な方法及び用具の例は、以下の米国特許及び特許出願
2000年3月23日付けのGrayの“微粒子材料”と題する、米国特許第5,855,547号明細書、2006年12月19日付けのRuys等の“放射性コーティング
された微粒子材料”と題する、米国特許第7,150,867号明細書、2001年7月10日付けのGrayの“中空又はカップ型のマイクロ粒子及び使用方法”と題する、米国特許第6,258,338号明細書、2003年3月25日付けのGrayの“微粒子材料”と題する、米国特許第6,537,518号明細書、2006年2月14日付けのRuys及びGrayの“低密度放射性核種含有微粒子材料”と題する、米国特許第6,998,105号明細書、2007年11月4日に発行された“腫瘍の治療のための組み合わせ治療”と題する米国特許公開第2004/0220135号公報、2006年8月10日に発行された“低密度放射性核種含有微粒子材料”と題する米国特許公開第2006/0177373号、に含まれ、そのそれぞれの全ての内容はここに参照することにより取り込まれる。選択的内部照射療法のための市販の材料の例は、典型的にイットリウム−90を有するSir−スフェア マイクロスフェア、(オーストラリアのSirtexメディカル社)、及びMDSノルディオンにより製造されそして原発性肝癌(肝細胞癌)の治療のために米国のFDAにより認可されたイットリウム−90を含むガラス製マイクロスフェアからなるTherasphereを含む。
【0033】
その他の使用方法は、腫瘍部位を排出するリンパ節の同定及び局在化の目的のためのような、挿入手術のイメージング、例えば、乳癌患者におけるセンチネルリンパ節のイメージングのための放射性標識ナノ粒子の形態である。この技術において、放射性標識ナノ粒子は、間質液中に移動しそして、腫瘍部分を排出するリンパ液に入り、最終的に最も近い(センチネル)リンパ節に集積するところから、腫瘍部分に直接投与される。この場合、アイソトープは99Tcのようなイメージングに最も好適なものから選ばれるであろう[Lerman等、Eur J Nucl Med Mol Imaging33巻:329-337頁(2006年)]。この用途において、粒子は、組織の間質液中に拡散できる、リンパ排出中に捕集される十分小さいものである。そのため、マイクロ粒子よりもむしろナノ粒子が典型的に使用される。
【0034】
その他の使用方法は、ホウ素中性子捕獲療法である(BNCT)。この方法は、病気の部分において、典型的にはグリア芽腫のような腫瘍部分においてホウ素−10のような安定同位体前駆体(precursor)(又は前駆体(progenitor))の集積、そして集積したアイソトープへの低エネルギーの中性子線の適用を含む。腫瘍細胞中又は腫瘍細胞に隣接するホウ素―10は、中性子を捕獲した後崩壊し、そして、生成した高エネルギーの重荷電粒子がそれにごく近接した細胞、第一にがん細胞のみを破壊し、正常細胞はおおむね影響はないままである。本発明は、溶液又は分散液中のような遊離型で、又は医療用具の中又は表面に含まれた、合成ポリマーが、治療部分におけるアイソトープの改善された送達及び濃度を可能とする、ホウ素の安定同位体のような、放射性前駆体(precursor)を高い親和性及び又は高密度の放射性前駆体(precursor)とともに製造され得ることを提供する。
【0035】
医学分野で使用するために援用された参照は、人間及び獣医学的な人間以外の動物へ同様に適用されると理解されることに注意すべきである。したがって、他に指示のない場合を除いて、患者、対象又は個体に言及され、社会的、経済的又は研究の重要性のある任意の種類の個体のような、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、霊長類、げっ歯類及びウサギ属に属するものを含むがこれらに限定されない、人間又は人間以外の動物を意味する。
【0036】
同様に、ここで用いられる“医療”用具は、人間における用途における使用に好適な医療用具及び獣医学的用途のような人間以外の動物における使用に好適な医療用具に同様に適用可能なものであると理解されることに注意すべきである。
【0037】
ここで用いられる用語“用具”は、予防的治療及び実際の疾患又は症状の治療を含み、
治療が患者の体表面又は体内に行われる場合、及び診断が、患者の体内から得られた試料において又はこれを用いて行われる場合を含む、治療において使用され得る用具を含むと理解される。したがって、ここで用いられる用語“用具”は、治療用具及び診断用具を含む。
【0038】
ここで用いられる“診断”は、治療の存在又はなしの状況、あるいは、予備検査、予後診断、病気又は疾患の経過のような、病気又は疾患が疑われる状況において、そして、そのような疑いが存在しないが、しかし、健康チェック、集団検診又は研究の目的のためのような、検査が望まれる状況において、行われる検査的手段を含むと理解される。
【0039】
放射性同位元素及び非放射性の前駆体(precursor)
当業者が理解することは、本発明の方法が、合成ポリマーの標識にフィブリンライト粒子が用いられることを可能とするため、ゆえに、フィブリンライトナノ粒子に取り込まれ得る任意の放射性同位元素は、合成ポリマーが放射性標識される放射性同位元素として使用され得る。同様に、フィブリンライトナノ粒子に取り込まれ得そして放射性同位元素を発生させるために放射化できる任意の非放射性前駆体(progenitor)が、非放射性前駆体(precursor)で標識された合成ポリマーの製造に、そして放射性標識された合成ポリマーの製造に使用され得る。
【0040】
国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されているように、Tc−99m、Ga−67のようなγ線を放出するもの、イットリウム−90のようなβ線を放出するもの、Bi−213のようなα線を放出するもの;及びCu−64のようなポジトロンを放出するものを含む、様々な放射性同位元素がフィブリンライトナノ粒子へ取り込まれ得る。198Au、64Cu、213Bi、57Co,51Cr、165Dy、169Er,59Fe、67Ga、68Ga,153Gd,166Ho、111In、113mIn、177Lu、23Na、24Na、103Pd、81Rb、82Rb、186Re、188Re、75Se,153Sm、117mSn、89Sr,201Th、90Y、169Yb,66Ga,99mTc、94mTc、89Zr,86Y、192Irを含む、任意の好適な金属放射性アイソトープが利用され得る。同様に、10Bを含む任意の好適な放射性同位元素の非放射性前駆体(precursor)が、関連した実施態様において利用され得る。
【0041】
フィブリンライトナノ粒子において及び本発明の方法において使用され得るアイソトープの範囲は、Tc−99m又はGa−67を使用した単光子放出コンピューター断層撮影法(SPECT)、及び、Cu−64又はZr−89を使用したポジトロン放出断層撮影法(PET)のような画像診断用途に理想的に適したものを含む。さらに、上記のような標的放射線治療に好適なアイソトープ、腫瘍の一定の種類のアブレーションに既に使用されるようなもの、例えば、結腸直腸癌の肝転移の選択的内部照射療法(SIRT)に使用されるY−90でコーティングしたSIR−スフェア マイクロスフェア[Gray 等、Aust NZ J Surg 62巻:105−110頁(1992年)]もまた含まれる。本発明は、そのように標識された物及びその他のものが、腫瘍の画像診断に好適なものとして又は腫瘍治療に好適なものとして、製造され得る代替方法を提供する。
【0042】
イメージングに最も好適な典型的な放射性同位元素は、治療に最も好適なものではないかもしれない。本発明は、一つのアイソープが適切なイメージングのために選ばれそそしてその他のアイソトープが適切な治療のために選ばれる、マイクロスフェアのような合成ポリマーの二重標識の可能性もまた含む。この複合材料は、治療量の局在を促進し、そしてまた、所定の臓器部分に送達された治療用アイソトープの量、及び患者の正常組織に対して腫瘍へ送達された量の外部評価を可能とするイメージングを用いて、腫瘍治療のためのマイクロスフェアの使用においてより信頼性のある線量測定を可能とすることを意図する。二重標識された用具が、2つの区別して標識された合成ポリマーと用具を接触させる
か又は2つの区別された放射性標識物で標識された合成ポリマーを用具と接触させる方法;後者の場合において、二重標識合成ポリマーは、2つの(同時か又は連続して)異なって標識されたフィブリンライト組成物を用いて製造され得る;又はそれ自身が二重標識された単一のフィブリンライト複合材料を製造することによるような、任意の好適な方法により製造され得る。典型的にはフィブリンライトの2つの別の製造は、2つの異なるアイソトープを用いて製造され、そして、この2つの製造の混合が合成ポリマーを放射性標識するために用いられる。混合物中の2つの製剤の比率を変えることにより、イメージングのための放射能の好適な量を維持する一方で治療用の放射能の調製が行われ得る。
【0043】
幾つかの用途において、幾つかの治療用途のために典型的に、中性子線への臓器部分の照射によるような、非放射性前駆体(progenitor)を含む粒子の投与後に標的臓器部分において局在的に放射性のアイソトープを発生させることは利点となり得る。この実施態様において、ナノ粒子は、封入された安定金属同位元素、例えば、放射性アイソトープの非放射性の前駆体(progenitor)でありその場所で治療用アイソトープを形成するための中性子線のような好適なアクチベーターに曝露することにより放射化され得るホウ素−10(10B)を含み得る。このようにして、非常に短寿命、高エネルギーのアイソトープ、例えば、α放出体が、腫瘍アブレーションの目的のために、より安全で効率的に局在的に発生され得る。
【0044】
ナノ粒子複合材料の処方
放射性微粒子コア(フィブリンライト)を有する炭素封入ナノ粒子複合材料は、“炭素封入放射性粒子の注射用放射性組成物を形成する方法”(国際公開第2006/116798号パンフレットとして発行された)と題する国際出願第PCT/AU2006/000554号により製造され得、その全ての内容は参照としてここに取り込まれる。したがって、該複合材料は、中性又はわずかに酸性のpH、炭素封入放射性核種を含むナノ粒子の安定な水溶性分散液として、典型的に製造され得る。
【0045】
炭素封入ナノ粒子複合材料の水溶性分散液の製造方法は、放射性エアロゾルの湿式捕獲の工程を含み得、そしてこの工程は種々の方法により達成され得ることを当業者が承知していることは理解されるであろう。例えば、炭素封入ナノ粒子複合材料を作成するために使用される放射性エアロゾルの湿式の捕獲の工程は、以下を含むがこれらに限定されない:
1.例えば、Industrial and Engineering Chemistry(1951年)43巻、第6章、1358乃至1363頁に公表された、Ekman
及びJohnstoneの方法による、ベンチュリースクラバー(Ventri scrubber)中のエアロゾルの捕集。
2.例えば、Talanta(1981年)、28巻、第1部、43乃至47頁に公表されたMichalik及びStephensの方法による、液体電極におけるエアロゾルの濃縮。
3.サイクロン装置の使用、例えば、米国特許第6,508,864号明細書(2003年1月21日発行)におけるP.J.Dayにより開示された、サイクロン装置の使用。
【0046】
一つの代表的な実施態様において、炭素封入ナノ粒子複合材料は、国際出願第PCT/AU2006/00054号に記載される工程を用いて製造され得、該工程は、米国特許第5,792,241号明細書に記載された、ブロウィット沈殿分離装置を利用することによって、水中への放射性エアロゾルの捕獲を含み、その全ては参照としてここに取り込まれる。
【0047】
ナノ粒子の分散液は、非常に低い(例えば、約1マイクロモルから約20マイクロモル、典型的には、約10マイクロモル)濃度の、生体の血流と相容性がありそして注射され
得る、デオキシコール酸ナトリウムのような、アニオン性界面活性剤を含み得る。典型的には、放射性標識された物の治療用又はインビボ(生体外)診断用途において、場合によっては人間又は動物に静脈へ使用(例えば、注射)するために行政当局により承認される任意のアニオン性界面活性剤が使用される。
【0048】
国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されるように、典型的な放射性核種はTc−99mである。ナノ粒子は、従来の標識方法で得られるようなものを上回る、非常に高いレベルの比放射能が容易に得られ得るように、そのコア中にアイソトープの原子を何百万又はそれ以上をそれぞれ保持し得る。フィブリンライトに対し、そしてモデルとなる封入された放射性同位元素としてのTc−99mを使用して、約1から約100mCi、約5から約100mCi、約7.5から約95mCi、約10から約90mCi、約15から約85mCi、約20から約80mCi、約25から約75mCi、約30から約70mCi、約35から約65mCi、約40から約60mCi、約45から約55mCi、約50から約55mCiの範囲で投入されたTc−99mが製造され得る。典型的な粒子の製造は、所望どうりに水溶性懸濁液2mL中に約1乃至約30mCiを含むように容易に製造され得る。走査型移動度粒径測定器(SMPS)を用いた粒子の気相の評価から、懸濁液は、比放射能が600mCi/mgの、又は22gGBq/mg以上の高濃度で作成され得るように、約50μgのナノ粒子物質を含み得ることが示された。製剤の比放射能は、エアロゾル発生器中のるつぼに投入するために使用されるアイソトープの放射能を変化させることにより所望どうりに調整され得る。
【0049】
国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されるように、広範囲の好適な放射性同位元素がフィブリンライトの工程中で使用され得、そしてしたがって、広範囲の同位元素が本発明の方法に使用され得ることは明白である。同位元素の具体例は、テクネチウム、より具体的には99mTcである。テクネチウムの固体形は、過テクネチウム酸ナトリウム又は国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載された電解工程で製造される、任意の不溶性形態のテクネチウム、例えば、不溶性のオキシ塩化物であり得る。テクネチウムは、テクネチウムの放射性同位元素の形態であり得る。
【0050】
その他の金属放射性同位元素又は放射性核種、例えば、198Au、64Cu、213Bi、57Co、51Cr、165Dy、169Er,59Fe、67Ga、68Ga,153Gd,166Ho、111In、113mIn、177Lu、23Na、24Na、103Pd、81Rb、82Rb、186Re、188Re、75Se,153Sm、117mSn、89Sr,201Th、90Y、169Yb,66Ga,94mTc、89Zr、192Irが利用され得る。
粒子の投入、そして、従って放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)を用いた合成ポリマーの“標識”を含む適用のために、任意の非放射性前駆体(progenitor)が使用され得る。典型的には、ホウ素−10(10B)が使用され得る。
【0051】
国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されるように、フィブリンライトナノ粒子は、1.0mM NaClに相当するものより低い、非常に低い電解質濃度を有する安定な水溶性分散液として製造され得る。国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載されたか又はフィブリンライト粒子の製造のためにそこから導き出せる任意の方法は、本発明で使用するためのフィブリンライト粒子の製造において利用され得る。国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載された好ましい方法において、これは、約1600乃至1650℃のグラファイト製るつぼに15秒間投入されたアイソトープを加熱し、2700℃以上で放射性同位元素の焼灼前に担体の塩化ナトリウムを除去することにより達成され得る。塩化ナトリウムの沸点は、1413℃でしかなく、そしてTc−99m放射性同位元素はこの温度では蒸発しない。別の放射性同位元素(又は非放射性前駆体(progenitor))が、本発明の方法において利用される場合、当業者は、国際出願第PCT/AU2006/000554号を参照することによる
ように、焼灼の適切な温度を決定し得る。
【0052】
国際出願第PCT/AU2006/000554号により作成されたフィブリンライトナノ粒子の水溶性分散液は、例えば48時間の放置において凝集せず、沈殿せず又は沈降しない。ナノ粒子の分散液は、生体の血流へ相容性がありそして注射され得る、非常に低い(例えば、約1マイクロモルから約20マイクロモルの範囲内、典型的には約10マイクロモル)の濃度のアニオン性界面活性剤、典型的には、デオキシコール酸ナトリウムを含み得る。フィブリンライトナノ粒子は、最終濃度が300マイクロモルのpHが4.1のクエン酸二水素ナトリウムのような、低濃度の弱酸性緩衝液中の貯蔵によるような適切な方法、好ましくは分散液の安定性を可能とするための方法により貯蔵され得る。ナノ粒子の分散液は安定であり、そして、孔隙率が800、450及び220nmで入手できる、ミリポア製混合セルロースエステル(MCE)シリンジ型フィルターのような、容易に入手可能な疎水性膜フィルターの使用により、サイズ分画され得る。典型的なフィブリンライトナノ粒子製剤中の放射能の90%以上が、800nmのMCEフィルターを通過し、そして同様の製剤が、5%以下の溶解性のアイソトープを典型的に含むことが、薄層クロマトグラフィにより示され得る。
【0053】
フィブリンライトナノ粒子を用いた合成ポリマーを放射性標識するための条件
このようにして製造され又は得られたナノ粒子は、合成ポリマーの放射性標識のための本発明の方法において使用され得る。
【0054】
空気−水界面、炭化水素−水界面のような疎水性界面及び推論によって恐らく水溶性フィブリンライト懸濁液中のようなグラファイト−水界面は、純水中の水酸イオンのわずかな優位に一般的に吸引され得る。この結果は、表面電位が通常非常に低い(数十ミリボルト)であるが、これらの界面が、僅かに負に荷電したものとして挙動するというものである。フィブリンライトの場合において、ナノ粒子は、アニオン性界面活性剤、典型的には、それらの製造に使用され得るデオキシコール酸ナトリウムの吸収に起因して、これらの表面上の負の荷電の増加もまた持ち得る。粒子及びポリマー表面は、同様の水性媒体中で同様に荷電しているため、それらの荷電が拡散する二層が重複している場合、ナノメートルスケールにおいて互いに弱く反発し得る。しかし、pHが低下した場合、水酸イオンの濃度が純水に比べ減少し、したがって、これらの界面に存在する反発する荷電が減少する。ミリモルの濃度の電解質又は好ましくはナノモルの濃度のポリカチオンの介在は、これらの系中のポリマー表面への粒子の吸収及び密着に対するエネルギー障害がほとんどないように、非常に迅速にこの電位を覆う。デバイ長さが<10mmにおける、そのような遮蔽は、積極的な分散、イオン相互関係又は疎水性力が、これらの表面の全相互作用エネルギーを通常支配する状況にする。この結果は、ポリマー表面と一旦結合した粒子は、本質的に可逆的な方法において表面と強固に接着するというものである。その条件は、その結果、合成ポリマー及びナノ粒子複合材料の積極的な結合を促進する。好ましい実施態様において、接触が生じた媒体は、ナノ粒子及び合成ポリマーとの間の短距離引力を促進しそして、長距離静電斥力を減弱させ、このことにより全体の引力及び粒子及びポリマー表面の間の接着相互作用を生じる、電解質濃度又はpH、又はこれらの組み合わせを含み得る。達成できた接触の結果として、合成ポリマーは、ナノ粒子複合材料と結合するか又は複合体を形成するものとして記載され得る。結果として得られたものはまた、複合体と呼ばれ得る。本文脈中の用語“複合体”及び“複合体を形成する”は、堅牢に結合して達成された接触の結果として生じたもの以外の合成ポリマー及びナノ粒子複合材料の、任意の特別な構造配列を指すことを意図するものではない。
【0055】
本発明の方法において、フィブリンライトナノ粒子は、好適な電解質濃度及び又はpHの条件下でナノ粒子とポリマーを接触させることにより合成ポリマーを標識するために使用され得る。本発明者らは、上記の反発する荷電の減少を促進し、そしてしたがって、フ
ィブリンライトナノ粒子がポリマー表面への実質的に不可逆的な結合となるように、短距離引力を与え長距離静電斥力を支配する、電解質濃度及び又はpHの好適な溶液条件が選択され得ることを発見した。ここの開示を考慮して、適切な、そして必要なら、最適の、単純電解質及びポリカチオンを含む電解質のような結合条件、及びpHがナノ粒子及び合成ポリマーの間の望ましい接触のために実験的に決定され得ることは当然である。
【0056】
水溶性媒体が通常好ましいが、接触は、好適な媒体中で起こり得る。接触に先立ち、ナノ粒子は、一般的には分散液の安定性を可能とするために選ばれる
好適な貯蔵媒体中で製造され又は貯蔵され得る。したがって、ナノ粒子の分散液は、非常に低い(例えば約10マイクロモル)の濃度の、デオキシコール酸ナトリウムのような、アニオン性界面活性剤を含み得る。本発明の方法の接触工程に先立ち、ナノ粒子は、分散液の条件を調整するために前処理され得、ナノ粒子と合成ポリマーの結合を助ける。例えば、緩衝液の種類、pH、電解質濃度及び種類、界面活性剤の存在又は非存在及びナノ粒子を含む任意の成分の濃度などの条件が調節され得る。媒体のイオン強度の調節は、合成ポリマーの存在又は非存在下に起こり得る。ナノ粒子の存在下の場合の媒体のイオン強度の典型的な調節は、最終的に、会合及び凝集を招き得るナノ粒子間のみの結合よりもむしろナノ粒子と合成ポリマーの間の結合を促進するように、合成ポリマーの存在下についてもまた起こる。
【0057】
発明者らは、pHが僅かに酸性の条件下、例えばpH3.5で、ポリプロピレン又はポリスチレンのような合成ポリマーへのフィブリンライト粒子の好適な結合が、単純電解質濃度の一定の低い範囲、約1mMから約25mM、にわたって起こり、積極的な結合をもたらし、放射性標識合成ポリマーを形成することを、驚くべきことに発見した。一つの好ましい特徴において、本発明者らは、pHを4.5よりも低くそして3.0よりも小さくないpHの調節で、約1ミリモルよりも高くそして約25ミリモルよりも低い単純電解質濃度を含む水溶性媒体又は溶液としての特定の条件を記載する。典型的には、より高いpH、例えば中性のpHにおいては、約80ミリモルよりも高くそして約150ミリモルよりも高くないような、より高濃度の単純電解質が使用される。さらに、本発明者らは、ポリプロピレン又はポリスチレンのような合成ポリマーへのフィブリンライト粒子の好適な結合が、非常に低い濃度の、ポリリジンのようなポリカチオンにより中性のpHにおいても効果的に誘導され得ることを発見した。
【0058】
電解質及びpHの使用を通した、ナノ粒子と合成ポリマーの結合への影響力は更なる利点を示す。例えば、約3.5のpHを用いることによるより低濃度のNaClの使用の選択肢は、既に他の、弱い結合のリガンドを担持する合成ポリマーを含む合成ポリマー又は用具を放射性標識する場合に、利点であり得る。これらの条件下において、より低い電解質濃度の使用は、リガンドの滲出を制限又は回避し得る。
【0059】
ここでの実施例は、合成ポリマーへのフィブリンライトナノ粒子の結合が、pHが約3.5である場合に約1mMより多くそして約25mMより少ないNaCl濃度において合成ポリマーへのナノ粒子の積極的な結合を誘導するのに最も効果的である、単純な電解質、塩化ナトリウム(NaCl)の使用を通じて達成され得ることを示す。中性のpHでの高い濃度の電解質、約80mMが典型的に使用される。ここに開示した観点から判るように、合成ポリマーへのナノ粒子の積極的な結合を誘導するための好適な条件は、1種又はそれ以上の多種の電解質を用いることにより達成され得る。発明者らは、pH3.5において約1ミリモルより大きい単純電解質濃度が、合成ポリマーへのナノ粒子の積極的な結合を誘導に使用され得、そしてしたがって、ナノ粒子が、放射性微粒子コアを有して、放射性標識合成ポリマーの製造を提供することをここに記載する。一般的に、pH3.5において、接触のための溶液又は媒体の単純電解質濃度は、約1ミリモルから約100ミリモル;典型的には、約1ミリモルから約75ミリモル;約1ミリモルから約50ミリモル
;約1ミリモルから約25ミリモルの範囲内であると考えられる。より典型的には、溶液の電解質濃度は、約1ミリモルから約150ミリモル;典型的には、約1ミリモルから約100ミリモル;約1ミリモルから約50ミリモル;約2ミリモルから約50ミリモル;約2ミリモルから約40ミリモル;約2ミリモルから約30ミリモル;約10ミリモルから約30ミリモル;約10ミリモルから約20ミリモル;約15ミリモルの範囲内であると考えられる。より高い濃度、約80mMが、中性のpHにおいて典型的に使用され得る。
【0060】
当業者は、本発明の接触工程のための電解質溶液又は媒体のイオン強度が、例えば、好適なイオン強度が約15mMのNaCl濃度で達成され得るNaClを用いて、又は例えば約15mMより少ないMgSO4濃度により達成され得ることを理解するであろう。当業者はまた、電解質溶液の好適なイオン強度は、多数の異なるイオン種、例えば、NaClとMgSO4の混合物、の使用により達成され得ることを理解するであろう。さらにまた、当業者は、イオン強度は、少なくとも1種のイオン種及び浸透圧調整剤又はポリエチレングリコールのような高分子量のポリマーのような少なくとも1種の非イオン性種の使用により達成され得ることを理解するであろう。例えば、水の有効濃度が低下する場合、電解質の濃度は、高める必要があり得る。
【0061】
任意のイオン種が本発明の方法に用いられ得る。例えば、イオン種は、Na,Ni、Al、Ru、Pt,Os、Ir、Fe、Se、Sn、K、Te、Mn、Mo、V、Mg、Zn、Ca、Cu、Coの塩を含む群から選ばれ得る。生体における医学的又は獣医学的使用のためには、イオン種は、有効濃度において非毒性であるもの、例えばNa,K、Caに、典型的に限定される。当業者は、与えられた反応条件(例えば接触工程において)への如何なるその他の関連変化が無い場合において、Naの代わりに使用されるKは、Naとしての同じ濃度で典型的に使用され、一方、Naの代わりに使用されるCaは、Naとしての濃度の半分において典型的に使用されることは理解するであろう。
【0062】
さらに、本発明者らは、非常に低濃度のポリカチオン種が合成ポリマーへのフィブリンライトナノ粒子の実質的に不可逆の結合を誘導することにおいて特に効果的であること、そして、中性のpHであってもポリカチオン効果は、単純な電解質に使用されるミリモル濃度より低いナノモルの範囲の濃度において適切であることを見出した。
【0063】
ポリカチオンは、例えば、ポリブレン(ヘキサジメントリン ブロマイド)、プロタミン、アプロチニン、ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、(PEI)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDDA),ポリ(N−メチル−4−ビニルピリジニウム イオダイド)、ポリ(アリルアミン ヒドロクロリド)、ポリ(ブチル アクリレート−コ−N−メチル−4−ビニルピリジニウム イオダイド)、ポリ(ブタジエン−コ−N−メチル−4−ビニルピリジニウム) イオダイド、ポリ(スチレン−コ−4−ビニルピリジン)、ポリ(エチル アクリレート−コ−4−ビニルピリジン)、ポリアニリン系ポリマー、ポリピロール系ポリマーを含む。生体における医学的又は獣医学的使用のためには、イオン種は、有効濃度において非毒性であるもの、例えばプロタミンに典型的に限定される。理論によって拘束されることを望むことなく、本発明者らは、粒子及びポリマー表面上のヒドロキシル基及び、存在する場合は、デオキシコール酸基の負の帯電を効率的に遮蔽することにより、ポリカチオンがこの効果を誘導し、ナノ粒子の密接な接触そしてそれにより短距離引力の優位を可能とすることを仮定した。この仮定と一致して、ヒドロキシル基又はデオキシコレート基の負の荷電に対しないため、ポリアニオンはこの効果を有さない。
【0064】
実施例はここに、ポリスチレン及びポリプロピレンへのフィブリンライトナノ粒子の結合が、1mMよりも高い濃度において合成ポリマーへのフィブリンライトナノ粒子の積極
的な結合を誘導するのには、pH3.5が特に効果的である、単純な電解質である塩化ナトリウム(NaCl)の使用を通じて達成され得ることを示す。ここに示されたように、適切なイオン強度の条件は、単純な電解質NaClへの代替使用を通じて接触工程のために生み出され得る。このようにして、代替的なイオン種は、定められたNaClの濃度により定義された溶液又は媒体のイオン強度に相当する濃度において使用され得ると理解される。接触工程における電解質濃度は、約2mM NaClから約250mM NaCl、約3mM NaClから約200mM NaCl、約4mM NaClから約150mM NaCl、約5mM NaClから約100mM NaCl、約6mM NaClから約75mM NaCl、約7mM NaClから約50mM NaCl、約8mM NaClから約30mM NaCl、約9mM NaClから約25mM NaCl、約10mM NaClから約20mM NaCl、約11mM NaClから約18mM NaCl、約12mM NaClから約15mM NaClのような、1mMのNaCl以上から約300mMのNaClに相当する範囲における任意の濃度であり得る。好ましい方法において、接触工程の電解質濃度は、約5mM NaClから約150mM NaClに相当する範囲内の濃度、例えば、pHが3.5である場合、約15mM NaCl、又はpHが中性である場合約80mMに相当する電解質濃度であり得る。
【0065】
実施例はここに、合成ポリマーとフィブリンライトナノ粒子の結合が、約5ナノモルより高い濃度において、そして中性のpHにおいて、ポリスチレン及びポリプロピレンとフィブリンライトナノ粒子の積極的な結合を誘導するのに効果的な、平均分子量20,000のポリカチオンポリスチレン又はプロタミンの使用を通じて達成され得ることを示す。ここに示されたように、適切な条件は、ポリカチオンポリスチレンへの代替手段の使用を通じて接触工程のために生み出され得る。代替手段が使用される場合、当業者は、適切な条件を経験的に決定し得るであろう。例えば、代替的なポリカチオン性種が、定められたポリリジンの濃度により決定される溶液又は媒体の遮蔽効果に相当する濃度において利用され得る。助言のとおり、接触工程のポリカチオン濃度は、5ナノモル以上のポリリジンから約500ナノモルのポリリジン、
約10ナノモルのポリリジンから約300ナノモルのポリリジン、例えば約10ナノモルのポリリジンから約200ナノモルのポリリジン、約15ナノモルのポリリジンから約150ナノモルのポリリジン、約20ナノモルのポリリジンから約100ナノモルのポリリジン、約25ナノモルのポリリジンから約75ナノモルのポリリジン、約30ナノモルのポリリジンから約50ナノモルのポリリジンに相当する範囲内の任意の濃度であり得る。好ましい方法において、接触工程のポリカチオン濃度は、約10ナノモルから約100ナノモルに相当する範囲内の濃度、例えば、約30ナノモルのポリリジンに相当するポリカチオン濃度であり得る。さらに説明すると、実施例は、プロタミンの存在下で効果的な結合を示す。接触工程のポリカチオン濃度は、このように、1マイクログラム/mLより大きいプロタミン、例えば約1マイクログラム/mLから約50マイクログラム/mLのプロタミン、約2マイクログラム/mLから約20マイクログラム/mLのプロタミン、例えば約2マイクログラム/mLから約15マイクログラム/mLのプロタミン、又は約2マイクログラム/mLから約12マイクログラム/mLのプロタミンに相当する範囲内の任意の濃度であり得る。より好ましい実施態様は、該濃度が約3マイクログラム/mLから約11マイクログラム/mLのプロタミンの範囲内、さらに好ましくは、約5マイクログラム/mLから約10マイクログラム/mLのプロタミン、例えば約9マイクログラム/mLのプロタミン(約2000ナノモルに相当する)である。
【0066】
接触工程は、好ましくは水性媒体が使用され得るが、当業者に決定されるように、任意の好適な媒体中で行われ得る。約1mM NaCl以上に相当する電解質を含む、任意の好適な緩衝液が使用され得る。例えば、接触工程は、500マイクロモルのクエン酸ナトリウムを含みさらに約1mM以上のNaClに相当する電解質を含む水溶性緩衝液中であり得る。
【0067】
接触工程に使用される緩衝液は、任意の好適なpHのものであり得る。好ましくは、緩衝液は、約pH3.5乃至約8.5の範囲内であろう。ここに記載されたように、好ましくそして適切なpHは、電解質の種類及び濃度のような、その他の反応条件を考慮に入れて当業者により決定され得る。
【0068】
接触は、接触中のインキュベーションの温度の上昇又は下降、又は接触中の媒体の攪拌又は混合の増加又は低下のような、接触の過程中の条件を変化させることを含み得る。
【0069】
実施例はここに、ポリスチレン、ポリスチレンスルホネートと、及びポリプロピレンとナノ粒子の高い親和性を有する結合を示す。ここに示された記載に基づき、本発明の方法は、少なくともその表面、水との疎水性界面の一部に存在する、任意の合成ポリマーの放射性標識に適用可能であることは明白である。荷電した化学基、例えば、水に対するスルホン酸が存在し得るが、表面(好ましくは表面の大部分)がフィブリンライトと接触するために使用される条件下で疎水性である場合にはナノ粒子の結合が未だ起こり得る。本発明者らは、スルホン化したポリスチレンでさえも、その表面上の負に荷電したスルホン酸基の置換は、フィブリンライトとの結合実験における通常のポリスチレンと同様に作用し、その結果更に多様なポリマー上に同様の結合が起こることを示すことを示した。
【0070】
本発明の方法は、用具を、放射性標識させることのような、該用具が放射性同位元素と関連する場合に、治療上の又は診断上の利点を生じさせるための移植可能な医療用具のような、医療用具の製造における特別な用途を有する。合成ポリマーは、それらの血栓を形成せずそして良好な機械的特性に起因した移植可能な用具の好ましい材料として一般的に使用される。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)ポリウレタンが、塩化ポリビニル、ポリアミド、ポリスチレン及びテフロン(登録商標)のような種々の臨床応用において使用される。代用血管に使用される合成ポリマーは、ポリエステルを含み、例えば、とりわけポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン及びポリテトラフルオロエチレンを含む。本発明の目的のためには、合成ポリマーは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)、ポリウレタン、塩化ポリビニル、ポリアミド、ポリスチレン、テフロン(登録商標)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO),ポリアクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA),ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリジオキサノン、トリメチレンカルボネート、ポリアンヒドリド、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシル)プロパン:セバシン酸を含むがこれらに限定されない。
【0071】
合成ポリマーは、遊離型、例えばポリマーマイクロ粒子又はナノ粒子の形態においてのような懸濁液又は分散液として、例えば金属の表面上にコーティングされたポリマーのような付着された形態、又は組込み型のような任意の好適な形態において接触工程においてフィブリンライトナノ粒子に付され得る。
示されるように“付着された”形態の合成ポリマーは、合成ポリマーが担体、カテーテルのような用具又はインプラント、ミクロ粒子又はマイクロスフェアに結合される場合の状況もまた含み得る。付着は、担体、用具又はインプラントへの合成ポリマーの直接結合を含む任意の好適な形態のものであり得、又はそれは一つ又はそれ以上の中間分子または結合剤のような間接的なものであり得る。“組み込み”の形態の合成ポリマーは、例えば、カテーテル、ミクロ粒子又はマイクロスフェアのような、合成ポリマーが担体、用具又はインプラントの一体部分を形成してる状況を含む。示されるように、実施例はここに、ポリスチレンマイクロウェル及びポリプロピレンバイアルへのナノ粒子複合材料の結合及び、さらに放射性標識を示す。このような場合に、合成ポリマーは、“組み込み”型の合成
ポリマーとして考えられている。放射性標識される合成ポリマーは、担体、用具又はインプラントのような物のコーティング又は封入の形態であり得る。コーティング又は封入は部分的であり得又は完全なものであり得る。
【0072】
合成ポリマーは、カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又はカプセル又は公知の大きさのミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの形態のミクロ粒子の中又は表面に含まれる、接触工程におけるフィブリンライトナノ粒子へ与えられ得る。
【0073】
したがって、合成ポリマーは、医療用具の製造に使用されるものの中へ又は表面へ又はその他へ取り込まれる前に、炭素封入ナノ粒子(放射性同位元素又はその非放射性前駆体(progenitor)を含む)と接触させ、そしてさらにこれにより標識され得、又は、接触は、医療用具又はその前駆体(precursor)が接触において使用されるように、合成ポリマーが医療用具の製造に使用されるものの中へ又はその表面へ又はその他へ取り込まれたあとであり得る。
【0074】
放射性標識合成ポリマー(又は、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)で“標識”された合成ポリマー)は、1つ又はそれ以上の更なるプロセス工程を経て又は経ることなしに使用され得る。更なる工程が実施される場合、それは、接触と同時であり得るか、接触のあとであり得、又は、多段階工程が実施される場合、それらは接触と同時の更なる工程の組み合わせ及び接触の後であり得る。更なる工程が接触の後で実施される場合、それは、接触のために実施される同一か又は異なる媒体の存在下であり得る。
【0075】
放射性標識合成ポリマー(又は、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)で“標識”された合成ポリマー)は、接触の後の1つ又はそれ以上の生成工程にかけられ得る。これは、未標識の合成ポリマーから及び/又は遊離のナノ粒子複合材料から放射性標識合成ポリマーを分離することを含む。典型的な反応において、接触は、合成ポリマーへのナノ粒子の十分な結合を生じ得、放射性標識合成ポリマーをもたらし、一方、接触工程の水性媒体中に未反応の成分、典型的には合成ポリマーに結合しなかったナノ粒子複合材料の一部は残ったままである。未反応の成分の除去は、例えば、遊離のナノ粒子複合材料が、標的でない臓器への血液輸送されるような、有害なものであり得る状況において、望ましいものであり得る。未反応の成分の除去は、部分的、実質的に完全又は完全なものであり得る。本文中“部分的”除去は、1種又はそれ以上の未反応又は望ましくない成分の任意の量の除去、より典型的には、未反応の又は望ましくない成分の約80%、90%又は95%までの除去を含むと理解され、そして“完全な”除去は、1種又はそれ以上の未反応の又は望ましくない成分の約95%以上の除去であると理解される。典型的に、少なくとも95%の未反応の又は望ましくない成分の除去が好ましく、より好ましくは約96%、97%、98%又は99%以上の未反応の又は望ましくない成分の除去である。
【0076】
したがって、本文中“精製”の言及は、精製の任意の程度を意味することを意図し、それによって、"精製"工程後の放射性標識合成ポリマー(又は、放射性同位元素の非放射性前駆体(progenitor)で“標識”された合成ポリマー)は、精製前と比較して、接触の未反応成分又はその他の望ましくない成分のような不純物をより少なく含む。
【0077】
未結合の放射性ナノ粒子のような、未反応の又は望ましくない成分から放射性標識合成ポリマー(又は放射性同位元素の非放射性の前駆体(progenitor)で“標識された”合成ポリマー)を分離し得る任意の方法が、精製工程で使用され得る。例えば、その方法は放射性標識合成ポリマーから1種又はそれ以上の望ましくない成分を洗い流すこ
とを含み得、又は、1種又はそれ以上の望ましくない成分から放射性標識合成ポリマーを抽出することを含み、又は、そのような工程の組み合わせを含み得る。一例として、ポリマーがミクロ粒子を含む場合、ビーズは多孔性担体上に保持され得、一方、洗浄用液体は、担体上のミクロビーズの層を通して網状化する。あるいは、ポリマー粒子は、バルク液体から遠心分離により沈降され得、そして、上澄の液体は、デカンテーションされるか又は吸引され除去されそして、精製の望ましい度合いに達するまで液体でさらに洗浄することにより置き換えられる。
【0078】
放射性標識ポリスチレンマイクロ粒子(100乃至800mg、30ミクロン粒径)、好適に計算された量の放射性同位元素(例えば、10mCi,又は37MBq)を含む新しいフィブリンライトの製造は、先ず、室温で30分間プロタミン(5乃至10μg/mL)で処理される。前処理されたフィブリンライトは、次ぎに、予め洗浄されたマイクロ粒子へ添加され、そして、その混合物は、回転攪拌機上で室温で30分間緩やかに回転させる。その混合物は、遠心分離され未結合の放射性ナノ粒子からミクロ粒子を分離する。標識化ミクロ粒子は、さらに、水又は生理食塩液中で再懸濁させ、そして遠心分離により再度分離されることによりさらに精製される。ポリマーの形態が大きなビーズ、カプセル又は管である場合、好適な量の前処理されたフィブリンライトは、ポリマーに含漬指せて使用され、室温で1時間結合させそして水又は生理食塩液で洗浄した後に、十分な標識体を得る。
【0079】
本発明は、癌のような、病気の治療のための薬剤の製造のための、放射性標識合成ポリマー(又は、前駆体(progenitor))の使用を提供することである。本文中、薬剤はここに記載されるような医療器具を含み得ることが理解される。放射性標識合成ポリマーは、生物学的に又は非生物学的なもの、例えば、カテーテル、ミクロ粒子又はナノ粒子のような担体、用具又はインプラントの中又は表面に取り込まれるか又は一体化され得る。典型的には、その中又は表面に取り込まれるか又は一体化される放射性標識合成ポリマーは、溶液、懸濁液又は分散液中で遊離形である。放射性標識合成ポリマーは、生物学的又は非生物学的なもののようなもの、例えば、カテーテル又はミクロ粒子のような担体、用具又はインプラントに付着が生じ得る。付着は、直接又は間接的結合又は付着を含む、放射性標識物の保持に適合する任意の好適な方法によってであり得る。放射性標識合成ポリマーは、担体、用具又はインプラントのような物のコーティング又は封入のために使用され得る。コーティング又は封入は、部分的であり得又は完全なものであり得る。合成ポリマーはまた、治療が意図される解剖学的部位においてそのまま硬化接着剤又はゲルとして形成され得る。合成ポリマーの形態は、したがって、水溶性媒体中でナノ粒子と接触させて形成される新生マトリックスであり得る。
【0080】
移植可能な代用血管及びステントのような医療用具は、当業者に知られるような更なる変形を含み得る。例えば、抗血栓剤、抗菌剤又は抗ウイルス剤の包含によってのような抗血栓及び/又は抗炎症特性を有する、生物活性のあるコーティングのような生物活性を含み得る。生物活性コーティングを有する移植可能な用具の製造は、当業者に知られそして例えば、Patnaik等のそして“部分的に変形された生物活性コーティングのための方法”と題する米国特許第6,803,069号明細書に記載され、その全ては参照としてここに取り込まれる。更なる例として、医療用具は、望ましい細胞型、組織、臓器又は病気の部位へ用具をターゲティングすることを助ける更なる変形を含み得る。そのようなターゲティングリガンドは、知られておりそして、例えば、標的細胞型、組織又は臓器によって、又は例えば病態において過剰発現されるレセプター分子に特異的なモノクローナル抗体、のような抗体を含む。ターゲティングリガンドは、放射性同位元素のような、検出可能な標識体を含み得る。ターゲティングの変形はまた、標識された合成ポリマー又は用具を例えば患者の肺へターゲティングするために使用され得る、ポリリジンのようなポリカチオンを含む。
【0081】
本発明は、合成ポリマーと炭素封入ナノ粒子複合材料の結合が誘導され得る方法をここに記載する。ここに記載されたものは、好ましい実施態様及び実施例を参照することにより説明する。ここに記載したものに基づき、当業者は、代替手段が使用される場合、適切な条件が実験的に決定され得、そのような代替手段には、放射性のアイソトープ及びその非放射性の前駆体(progenitor)、合成ポリマー、電解質及びpHを含むことを認識するであろう。
【0082】
医薬品及び/又は治療製剤
本発明はまた、合成ポリマーが、放射性微粒子コア(フィブリンライト)を有する炭素封入ナノ粒子複合材料と関連する場合の放射性標識合成ポリマーのような放射性標識された巨大分子の医薬品及び治療用組成物を提供する。典型的には、医学利用のためには、その他の塩が、本発明の化合物又はその医薬品として許容可能な塩の製造に使用され得るが、本発明の化合物の塩は、医薬品として許容可能な塩である。医薬品として許容可能な塩により、これらの塩は、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等なしに、人間及び下等動物の組織と接触して使用するために好適であり、そして、妥当な損益比に相応したものであるものを意味する。医薬品として許容可能な塩は、当業者によく知られている。
【0083】
S.M.Berge等は、J. Pharmaceutical Sciences、1977年、66巻、1−19頁において、医薬品として許容可能な塩を詳細に記載している。この塩は、本発明の化合物の最終の単離及び精製の間にその場で製造され得、又は、好適な有機酸と作用する遊離塩基を反応させることにより別個に製造され得る。代表的な酸付加塩は、アセテート、アジペート、アルギネート、アスコルベート、アスパルテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ビサルフェート、ボレート、ブチレート、カンホレート、カンフルスルホネート、シトレート、ジグルコネート、シクロペンタンプロピオネート、ドデシルサルフェート、エタンスルホネート、フマレート、グルコヘプトネート、グリセロホスフェート、ヘミサルフェート、ヘプトネート、ヘキサノエート、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロイオダイド、2−ヒドロキシ−エタンスルホネート、ラクトビオネート、ラクテート、ラウレート、ラウリルスルフェート、マレート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、オレエート、オキサレート、パルミテート、パモエート、ペクチネート、パーサルフェート、3−フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、ステアレート、スクシネート、サルフェート、タータレート、チオシアネート、トルエンスルホネート、ウンデカノエート、バレレート 塩等を含む。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を含み、並びに、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、トリエタノールアミン等を含むがこれらに限定されない非毒性の、アンモニウム、四級アンモニウム及びアミンカチオンを含む。
【0084】
投与の簡便な方法は、注射(皮下、静脈等)、経口投与、経鼻投与、塗り薬、又はジェル又は粉末又は直腸投与を含む。一つの実施態様において、投与の形態は、非経口投与である。その他の実施態様において、投与の形態は経口である。投与の経路に応じて、製剤及び/又は化合物は、化合物の治療活性を不活性化し得る酵素、酸及びその他の自然条件の作用から化合物を保護するための物質でコーティングされ得る。該化合物はまた、非経口又は腹腔内投与され得る。
【0085】
本発明による化合物の分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物中に、及び油中において製造され得る。従来の貯蔵及び使用の条件下におい
て、医薬品は、微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含み得る。
【0086】
注射のために好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性である)又は分散液、及び、滅菌注射溶液又は分散液の即時調整のための滅菌粉末を含む。理想的には、組成物は、製造及び貯蔵の条件下で安定であり、そして、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対し組成物を安定化させるための防腐剤を含み得る。
【0087】
本発明の化合物(化合物群)は、例えば、不活性希釈剤又は吸収可能な可食担体とともに、経口投与され得る。化合物(化合物群)及びその他の成分はまた、ハード又はソフトシェルゼラチンカプセルに封入され、タブレットに圧縮され、又は個々の食餌へ直接取り込まれ得る。経口治療用投与のために、化合物(化合物群)は、賦形剤とともに取り込まれ得、そして、摂取可能なタブレット、口腔吸収タブレット、トローチ、カプセ、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース等の形態で使用され得る。
適切には、そのような組成物及び製剤は、少なくとも1質量%の活性化合物を含み得る。本発明の化合物(化合物群)のパーセンテージ、典型的には医薬品組成物及び製剤中の放射性標識合成ポリマー又はポリペプチドは、もちろん、例えば、投薬単位の重量の約2%から約90、約5%から約80%、約10%から約75%、約15%から約65%;約20%から約60%、約25%から約50%、約30%から約45%、又は約35%から約45%の範囲で便宜上変化し得る。治療上有用な組成物中の化合物の量は、好適な投薬が得られるようなものである。
【0088】
用語“医薬品として許容可能な担体”は、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤等を含むことを目的とする。医薬品として活性のある物質のためのそのような媒体及び剤の使用は当業者によく知られている。任意の従来の媒体又は剤が、化合物と不適当である場合を除いて、治療用組成物及び治療及び予防の方法におけるその使用が、意図される。補助的な活性化合物もまた、本発明による組成物に取り込まれ得る。投与の容易さ及び投薬の均一性のために投与単位形に非経口組成物を配合することは特別な利点である。
ここで用いられる“投与単位量形”は、治療される個体のために単一の投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、所定量の化合物を含むそれぞれの単位は、医薬品担体と関連して所望の治療効果を生み出すために計算される。化合物(化合物群)は、許容できる投与単位中の好適な医薬品として許容可能な担体を含む有効量において簡便でそして効果的な投与のために調整され得る。組成物が、補助的な活性成分を含む場合において、投与量は、当該成分の投与の通常の用量及び方法を参照することにより、決定される。
【0089】
一つの実施態様においては、担体は、経口投与可能な担体である。
【0090】
医薬品組成物のその他の形態は、経口投与に好適な、経腸用にコーティングされた顆粒、タブレット又はカプセルとして調製された投与形態である。
【0091】
本発明の範囲に含まれるものはまた、遅延放出製剤である。
【0092】
本発明による化合物はまた、“プロドラッグ”の形態において投与され得る。プロドラッグは、生体内で活性形態へ転換される化合物の不活性形態である。好適なプロドラッグは、化合物の活性形態のエステル、リン酸エステル等を含む。
【0093】
一つの実施態様において、本発明の化合物は、注射により投与され得る。注射剤溶液の場合において、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、その好適な混合物、及び植物油を含む溶液又は分散媒体であり得る。好適な流動性は、例えば、レシチンのような
コーティングの使用により、分散液の場合における必要な粒子サイズの維持及び界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び/又は抗真菌剤を含ませることにより達成され得る。好適な剤は当業者によく知られ、そして例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、アスコルビン酸、チメロサール等を含む。多くの場合において、等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含ませることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる、例えば、アルミニウムモノステアレート及びゼラチンのような剤を組成物中へ含ませることによりもたらされ得る。
【0094】
滅菌注射用溶液は、上記に列挙した原料の1種又は組み合わせと適切な溶媒中の必要な量のアナログを取り込み、必要ならば、次いで濾過滅菌することにより製造され得る。一般的には、分散液は、塩基性の分散媒体及び上記に列挙したものの中から必要なその他の原料を含む滅菌媒体中にアナログを取り込むことにより製造される。
【0095】
タブレット、トローチ、ピル、カプセル等は、また以下:トラガカントゴム、アカシアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチンのようなバインダー、リン酸二カルシウムのような賦形剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギニン酸等のような崩壊剤、マグネシウムステアレートのような潤滑剤、そして、スクロース、ラクトース又はサッカリンのような甘味剤、又はペパーミント油、冬緑油、又はサクランボの香味料のような香味剤を含み得る。投与単位形がカプセルである場合、上記の種類の物質に加えて、液体担体を含み得る。種々のその他の物質が、コーティングとして、又は投与単位の物理学的形態のその他の変形のために供され得る。例えば、タブレット、ピル、又はカプセルはシェラック、糖又はその両方でコーティングされ得る。シロップ又はエリキシルは、アナログ、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素及びサクランボ又はオレンジ香味のような香味料を含み得る。もちろん、任意の投与単位形の製造に使用される任意の物質は、用いられる量において、医薬品として純粋でありそして実質的に非毒性であるべきである。さらに、アナログは、持続的に放出される製剤及び処方へ取り込まれ得る。
【0096】
好ましくは、医薬品組成物は、酸加水分解を最小限にするために、好適な緩衝液をさらに含み得る。好適な緩衝剤は当業者によく知られ、そして、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩およびその組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0097】
本発明による化合物及び/又は医薬組成物の単数回の又は複数回の投与が行われ得る。当業者は、日常の実験により、化合物及び組成物が適用できる病気及び/又は感染症の治療に好適である、本発明の化合物及び/又は組成物の効果的な、非毒性の用量及び投与形態を決定し得るであろう。
【0098】
さらに、確定した日数の一日当たりの本発明の化合物又は組成物の用量の数のような治療の適切な方針が、治療決定試験の従来の方針を用いて確定され得ることは、当業者にとり明白である。
【0099】
一般的に、24時間当たりの有効用量は、体重kgあたり約0.0001mgから約1000mg;例えば、体重kgあたり約0.001mgから約750mg;体重kgあたり約0.01mgから約500mg;体重kgあたり約0.1mgから約500mg;体重kgあたり約0.1mgから約250mg;又は体重kgあたり約1.0mgから約250mgの範囲であり得る。より好適には、24時間当たりの有効用量は、体重kgあたり約1.0mgから約200mg;体重kgあたり約1.0mgから約100mg;体重kgあたり約1.0mgから約50mg;体重kgあたり約1.0mgから約25mg;体重kgあたり約5.0mgから約50mg;体重kgあたり約5.0mgから約20m
g;体重kgあたり約5.0mgから約15mgの範囲であり得る。
【0100】
あるいは、有効用量は、約500mg/m2までであり得る。例えば、一般的には、有効用量は、約25乃至約500mg/m2、約25乃至約350mg/m2、約25乃至約300mg/m2、約25乃至約250mg/m2、約50乃至約250mg/m2、そして約75乃至約150mg/m2の範囲であると予想される。
【0101】
その他の実施態様において、本発明の化合物は、1日あたり約100から約1000mg、例えば、1日あたり約200から約750mg、1日あたり約250から約500mg、1日あたり約250から約300mg、又は1日あたり約270から約280mgの範囲内の量で投与され得る。
【0102】
本発明による化合物は、その他の薬剤とともに治療方針の一部として投与され得る。活性化合物、例えば、特別な病気又は症状の治療の目的のための活性化合物の組み合わせを投与することが望ましい。したがって、2種又はそれ以上の医薬品組成物、少なくともそのうちの一つは、1種の本発明の化合物を含む、医薬品組成物、が組成物の併用投与に好適なキットの形態で組み合わされ得ることは本発明の範囲内である。
【0103】
本発明を、以下の実施例に関して説明のみを目的として、以下に詳細に説明する。実施例は、本発明の説明のみを目的とし、そして、本明細書全体に渡って記載された開示の普遍性を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0104】
実施例1:ポリスチレンへのフィブリンライト分散液の結合
典型的な合成ポリマーへのTc−99mフィブリンライト分散液の結合を、結合及び複数の洗浄工程の後に分離されたウェルの個々の放射能測定を可能とした96ウェル型において、ポリスチレンのマイクロウェルを用いてモデルとした(Nunc−Immuno(登録商標)LockWell(登録商標)モジュール)。クエン酸塩緩衝液(500μM)をpH3.5および6.0において使用し、非常に低いものと生理学的電解質濃度の両方において、結合におけるpHの効果の直接比較ができるようにした。
希釈(1:10)したTc−99mフィブリンライトを、種々の緩衝液条件下でポリスチレンマイクロウェル(100μL/ウェル)と接触させた。即ち、
(i)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5(低い電解質条件);
(ii)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス10μMデオキシコール酸ナトリウム(DOC);
(iii)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス150mM NaCl;
(iv)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス10μMデオキシコール酸ナトリウムプラス150mM NaCl;
(v)500μMクエン酸ナトリウムpH6.0(低い電解質条件);
(vi)500μMクエン酸ナトリウムpH6.0プラス10μMデオキシコール酸ナトリウム(DOC);
(vii)500μMクエン酸ナトリウムpH3.5プラス150mM NaCl;
(viii)500μMクエン酸ナトリウムpH6.0プラス10μMデオキシコール酸ナトリウムプラス150mM NaCl。
粒子の結合を、緩やかな攪拌とともに37℃において20分間マイクロウェルをインキュベートすることにより試験した。マイクロウェルを次に個々に分離されたウェルの放射能を計測する前に水で5回洗浄した。
図1aにみられるように、放射性フィブリンライトナノ粒子は、非常に低い電解質条件(500マイクロモルのクエン酸ナトリウム)下でpH3.5及び6.0においてポリスチレンマイクロウェル表面への低い結合を示し;pH3.5での結合は、pH6.0のもの
よりやや良好であった。しかし、150mMのNaClを含んでいる場合、結合は、pH3.5で3倍、pH6.0で約5.8倍に増加し、一方、最も高い標識密度がpH3.5において電解質を添加することにより得られた(図1a参照)。このように、ポリスチレンのようなポリマーへのフィブリンライトの結合は、弱酸性のpHにおいて、そして電解質の添加により良好であった。
一旦結合すると、結合アッセイにおける複数回の洗浄の後の放射性標識物の保持でも分かるように、粒子は高い結合力を持続する。さらに、低濃度の界面活性剤(10μM デオキシコール酸ナトリウム)の添加は、電解質の非存在下pH3.5において見られるポリスチレンへのフィブリンライトの結合が、5倍減少したが、フィブリンライトが150mMのNaClを用いて結合させた場合、界面活性剤は、pH3.5において製造されたものより高い結合において4.2%の低下のみ生じた(図1a参照)。
その他の実験(図1b)において、電解質の効果の用量依存性は、中性のpHにおいて測定された。一連の塩化ナトリウム(NaCl)希釈液(500μL)は先ず、0.5mMトリス−酢酸pH6.5で作成された。系中のNaCl希釈液は、0mM、2.34mM、4.69mM、9.38mM、18.75mM、37.5mM、75mM及び150mMであった。Tc−99mフィブリンライト調製品(55μL)を次ぎにそれぞれのNaCl希釈液へ添加し、1:10のフィブリンライトの最終希釈液を得、そしてこの混合物を20℃において1時間放置した。それぞれの混合物の一定分量(100μL)を、次ぎに、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc LockWell(登録商標))に分注しそしてマイクロウェルを攪拌しながら37℃において30分間インキュベートした。そのポリスチレンマイクロウェルを次ぎに、それぞれに結合した放射能を計測する前に水で3回洗浄した。図1bに見られるように、中性のpH付近での最も高いポリスチレンへのフィブリンライトの結合は、約80mM以上のNaClにおいて明白に見られた。
【0105】
実施例2:pH3.5におけるポリプロピレン管及びポリスチレンロックウェルへのフィブリンライトの塩化ナトリウムで誘導される結合
塩化ナトリウム(NaCl)希釈液(500μL)の系列を、ポリプロピレン管(エッペンドルフ管;1.5mL容量)中に含ませ、0.5mMのクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5中に、先ず作成した。この系列中のNaCl希釈液は、0mM、2.34mM、4.69mM、9.38mM、18.75mM、37.5mM、75mM及び150mMであった。Tc−99mフィブリンライト製剤(55μL)を次にそれぞれのNaCl希釈液中へ添加し、1:10のフィブリンライトの最終希釈液とその混合物を得、そして次に、ポリプロピレン管に20℃において1時間放置した。一定量(100μL)のそれぞれの混合液を、次ぎに、ポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標)へ分散させ、そしてそのマイクロウェルを37℃において30分間攪拌しながらインキュベートした。ポリプロピレン管及びポリスチレンマイクロウェルを、次に、それぞれに結合した放射能を計測する前に水で3回洗浄した。
この実験は、好適な条件下で単純な電解質を用いた処理が、フィブリンライトナノ粒子の表面特性を顕著に変化させ得、ポリスチレン又はポリプロピレン表面へのこれらの結合が、強固に増強されることを示すものである(図2a及び図2b)。驚くべきことに、pH3.5における結合が、電解質濃度の単純な作用ではなく、両ポリマーへの結合のための約15mMにおける明白な最大限度を示すものであり、一方、生理食塩液濃度(150mM NaCl)においては、約35%(ポリスチレン)乃至50%(ポリプロピレン)(それぞれ図2a及び2b)の最良の結合であるのみであった。このように、中性のpHにおけるNaClの効果を比較すると(上記図1b)、pH3.5におけるフィブリンライトの結合を誘導するためには、かなり少ない量の電解質が必要とされる。pH3.5におけるより低いNaCl濃度の使用の選択肢が、既にその他の弱い結合リガンドを担持する合成ポリマーを含むいくつかの用具を放射性標識する利点であり得る。この場合において、その他のリガンドの滲出は、より低い電解質濃度により制限されるか又は回避され得る。
【0106】
実施例3:アルブミン前処理後のポリマーへ結合するフィブリンライト−競合的結合
希釈されたTc−99mフィブリンライト(1:10;10μm)を、150mM塩化ナトリウム及び0.5Mクエン酸二水素ナトリウム緩衝液pH3.5を含む緩衝液中で、フィブリンライトを種々の濃度のウサギ血清アルブミン(RSA;シグマ社製A0764)と20℃において30分間前処理した後にポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標)と接触させた。使用したRSAの濃度は、0、15.6μg/mL、31.3μg/mL、62.5μg/mL、125μg/mL、250μg/mL、500μg/mL及び1000μg/mLであった。ポリスチレンマイクロウェル上への結合は、37℃において30分間攪拌しながら行った。そのウェルを、次ぎに、個々のウェルを分離しそして結合した放射能を測定する前に水で5回洗浄した。
この実験は、電解質の添加により誘導されるフィブリンライトの表面特性の変化が、タンパク質とポリスチレンの両方に結合する原因となること及び、結合サイトへの競合が、可能性のあるリガンドの両方がともに存在する場合に起こることを示すものである(図3)。アルブミンの濃度が1mg/mLの場合、ポリスチレンへのフィブリンライトの結合が殆ど失われる。この実験はまた、これらの条件下で、フィブリンライトが、同様の疎水性相互作用を通してアルブミン及びポリスチレンの両方に結合することを示すものである。
【0107】
実施例4:ポリスチレンへのフィブリンライトの結合の保持
フィブリンライトを、15mM塩化ナトリウムの0.5mMトリス酢酸緩衝液pH6溶液で希釈(1:10)し、そして一定量(100μL)を、ポリスチレン(Nunc Lockwell(登録商標))で作成された16マイクロウェル上へ分注した。結合を、攪拌しながら37℃において1時間起こさせ、そして全てのウェルを水で5回洗浄した。4つ一組のウェルを次に乾燥し(対照)、又は、100μLの水、生理食塩液(150mM、NaCl)又はウサギ血漿の添加後、攪拌しながら37℃において1時間処理した。最後に、全てのウェルを水で洗浄しそして放射能を計測した。
この実験は、適切な条件下でいったんポリスチレンに結合すると、フィブリンライトはポリマー表面に強固に結合しそして、示された種々の生体関連溶液での処理は、結合したフィブリンライト放射能のかなりの量を置換できないことを示すものである(図4)。一旦形成されると、フィブリンライトナノ粒子とポリマーの粘着性のある相互作用は非常に安定である。
【0108】
実施例5:フィブリンライトとポリマーの結合を誘導するポリカチオン
Tc−99mフィブリンライト(1:10希釈液)を、種々の濃度のポリ−D−リジン(MW15乃至30kd;シグマ社製4408)、即ち、0、0.078μg/mL、0.156μg/mL、0.313μg/mL、0.625μg/mL、1.25μg/mL、2.5μg/mL及び5μg/mLの0.5mMトリス酢酸緩衝液pH6.0溶液、と20℃において1時間前処理した。前処理したフィブリンライトをポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標))へ分注し(100μL/ウェル)そして、攪拌しながら37℃において30分間結合させた。そのウェルを、個々のウェルを分離しそして結合放射能計測をする前に、生理食塩液で5回洗浄した。
この実験は、好適な条件下で典型的なポリカチオンの非常に低濃度での処理は、フィブリンライトナノ粒子の表面特性を劇的に変化させ得、そのポリスチレン表面への結合を明白に増強することを示すものである(図5a)。驚くべきことに、この結合は、ポリカチオン濃度の単純な作用ではなく、約0.6μg/mLポリ−D−リジン(30nM)における顕著な極大を示し、一方、結合は、5.0μg/mLポリ−D−リジンにおいて最適な約30%の結合のみであったことを示すものである。この結果はまた、生理食塩液での数回の洗浄により逆転されないため、誘導された結合は、単純な電荷相互作用ではないことを示すものである。
同様の実験を図5に示し、今回は、異なるポリカチオン、ヘパリン抗凝固療法の反転に臨床的に用いられるプロタミンを用いた。硫酸プロタミン(シグマ社製P4505)希釈液(500μL)の希釈列を先ず、0.5mMトリス酢酸緩衝液pH6.0中に作成した。この系列のプロタミン希釈液は、0、0.032μg/mL、0.625μg/mL、1.25μg/mL、2.5μg/mL、5.0μg/mL、10μg/mL及び20μg/mLであった。Tc−99mフィブリンライト製剤(55μL)を次ぎにそれぞれのプロタミン希釈液へ添加し、1:10のフィブリンライトの最終希釈液を得、そして、この混合液を次ぎに20℃において1時間放置した。それぞれの混合液の一定量(100μL)を次ぎにポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標))中へ分注し、そしてこのマイクロウェルを37℃において30分間攪拌しながらインキュベートした。一定量(100μL)を、また、ポリプロピレンエッペンドルフ管へ分注しそしてこれらを20℃において30分間放置した。ポリスチレンマイクロウェル及びポリプロピレン管をそれぞれに結合した放射能を計測する前に水で3回洗浄した。
図5bに見られるように、プロタミンは、ポリスチレンに結合したフィブリンライトの誘導に有効であり、そしてまた、ポリプロピレンへの結合も誘導した(図5c)。また、結合は、ポリカチオン濃度の単純な作用ではなく、ポリスチレン及びポリプロピレンの両方の約5μg/mLのプロタミン(約100ナノモル)において明白な極大を示した。
このように結合の誘導は、2種のポリカチオン及び2種の合成ポリマーへの結合によって示された。全ての場合において、好適で、それぞれのポリカチオンのために決定し得る、例えばここに記載された方法に説明されるように、ポリカチオン濃度の一定範囲が存在する。しかし、この好適な濃度は、ポリカチオン表面の種類に依存せず、そして、水酸イオン及びデオキシコール酸に起因したナノ粒子の帯電の遮蔽によるものが大きい。
【0109】
実施例6:ポリマーへのフィブリンライトの結合におけるポリカチオン分子量の効果
Tc−99mフィブリンライト(1:10希釈液)を種々の濃度の3種のポリ−D−リジン(A:MW30乃至70kd、シグマ社製P7886;B:MW15乃至30kd、シグマ社製4408;C:MW 4乃至15kd、シグマ社製P6403)、即ち、0、0.25μg/mL、0.5μg/mL、1.0μg/mL、2.0μg/mL及び4.0μg/mLの0.5mMトリス酢酸緩衝液pH6溶液で20℃において1時間前処理した。前処理したフィブリンライトを2つ一組のポリスチレンマイクロウェル(Nunc Lockwell(登録商標))へ分注(100μL/ウェル)し、そして、37℃において30分間攪拌しながら結合させた。ウェルをそのプレートをジーメンス社Diacamガンマカメラでイメージングする前に生理食塩液で5回洗浄した。
この実験は、ポリスチレンに結合するフィブリンライトのポリカチオン増強が、ポリカチオンの濃度及び分子サイズの両方に依存することを示すものである(図6)。驚くべきことに、この結合は、ポリカチオン分子サイズの単純な作用ではないこと、分子量15乃至30kdのポリ−D−リジンが、分子量4乃至15kdのポリ−D−リジンよりも低い濃度においても有効であり、また、分子量30乃至70kdのポリ−D−リジンよりも低濃度において有効であることを示すものである(図6)。
【0110】
実施例7:スルホン化ポリスチレンのマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)へのTc−99mフィブリンライトの結合
Tc−99mフィブリンライト(2乃至5mCi)を、硫酸プロタミン(10μg/mL;シグマ社製P4505)水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したフィブリンライトを次に予め洗浄した(水で3回)平均直径30ミクロンのマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製;100mg)のスラリーへ添加し、そして、この懸濁液を20℃において30分間緩やかに混合した。このマイクロスフェアを次ぎに、簡便な遠心分離(5,000rpm、1分間)により可溶化相から分離しそしてこのマイクロスフェアを再懸濁させそして水(5.0mL)で3回洗浄した。元の可溶化相、3つの洗浄した上澄及び最終のマイクロスフェア製剤の放射能を
全て計測しそして図7に示すような全Tc−99m放射能の百分率として表した。結果を、Tc−99mフィブリンライト製剤を、2,800℃から2,600℃の範囲にわたりるつぼ焼灼温度を体系的に低下させることにより変化させた、5回の独立した製造について示す(異なる色)。温度の低下は、ミクロ粒子上の結合された標識の低下と関連があった。
この実験は、ポリカチオン(プロタミン)とTc−99mフィブリンライトの前処理は、標識が多数回の洗浄を通して保持されるそのような方法においてTc−99mフィブリンライトとスルホン化ポリスチレンマイクロスフェアの次ぎの標識を可能にすることを示した。このように標識されたマイクロスフェアは、分離され得そして、洗浄され、そのような生物学的に適合したマイクロスフェアを採用する生体内ガンマカメライメージング研究に好適な精製された生成物をもたらす。ヘパリンのアンタゴニストとして既に臨床的に広く使用されているため、プロタミンが選択された。スルホン化ポリスチレンが、未置換のポリスチレンと同様の方法を用いてTc−99mフィブリンライトで標識され得、スルホン化は結合するフィブリンライトの結合能力を変化させず、そしてこのように種々の合成ポリマーに使用される方法の一般性を示すことは驚くベきことである。
【0111】
実施例8:硫酸ポリスチレンマイクロスフェアへの(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製)のGa−67フィブリンライトの結合
塩化ガリウムとしてのGa−67(200MBq)を、グラファイトマイクロるつぼ中に蒸発により仕込み、そして、基本的にPCT/AU2006/000554に記載されるようなプラズマ焼灼されたが、1650℃における前加熱工程は省略された、サイクロトロン製品(シドニー、ルーカスハイツ、ANSTOラジオファーマシューティカルズ アンドインダストリアルズ社製)として得た。得られたエアロゾルを、収集液体として30mLの10μMデオキシコール酸ナトリウム、そして国際出願第PCT/AU2006/000554号に記載された条件を用い、米国特許第5,228,444号明細書に記載されたブロウィット(Browitt)沈降分離装置を用いて収集した。得られたGa−67フィブリンライト(0.9mCi)を、硫酸プロタミン(10μg/mL;シグマ社製P4505)の水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したGa−67フィブリンライトを次ぎに、平均直径が30ミクロンの予め洗浄(水で3回)したマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド社製;100mg)のスラリーへ添加し、そして、その懸濁液を20℃において30分間緩やかに混合した。このマイクロスフェアを次ぎに、簡便な遠心分離(5,000rpmで1分間)により可溶化相から分離し、そしてこのマイクロスフェアを再懸濁させ、水(5mL)で3回洗浄した。元の可溶化相、3つの洗浄上澄及び最終のマイクロスフェア製剤の放射能を、全て計測しそして、図8に示すように全Ga−67の放射能の百分率として表した。
この実験は、好適な条件下でのポリカチオンとGa−67フィブリンライトの処理はまた、スルホン化ポリマーのマイクロスフェアへのGa−67フィブリンライトナノ粒子の強固な結合を誘導し得、そして、Ga67フィブリンライト標識マイクロスフェアは、分離され得そして、洗浄され、そのような生物学的に適合したマイクロスフェアを採用する生体内ガンマカメライメージング研究に好適な精製された生成物をもたらすことを示すものである。その他のガリウムの放射性同位元素、例えばGa−68は、Ga−67同位体と化学的に同様の挙動を示すため、Ga−68フィブリンライトはまた、これらの方法により作成され得、そして、ポジトロン放出断層撮影(PETイメージング)のためのGa−68の場合において、イメージング標識体として使用され得ることが結論付けられた。
【0112】
実施例9:SIR−スフェア マイクロスフェアへのTc−99mフィブリンライトの結合
この実施例で用いられたSIR−スフェア マイクロスフェアは、治療用アイソトープY−90(T1/2=64時間)の100半減期に相当するよりも長い間経過させ、イメージング用アイソトープで標識するための“コールド”のSIR−スフェア マイクロスフ
ェアサンプルを得た。Tc−99mフィブリンライト(2乃至5mCi)を、硫酸プロタミン(10μg/mL;シグマ社製P4505)の水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したフィブリンライトを次ぎに、予め洗浄(水で3回)した平均直径30ミクロンのSIR−スフェア マイクロスフェア(100mg)のスラリーに添加し、そして、この懸濁液を20℃において30分間緩やかに混合した。このSIR−スフェア マイクロスフェアを次ぎに、簡便な遠心分離(5,000rpnmで1分間)により可溶化相から分離し、そしてSIR−スフェア マイクロスフェアを再懸濁化させそして水(5.0mL)で3回洗浄した。元の可溶化相、3つの洗浄上澄及び最終の標識マイクロスフェア製剤の放射能を、全て計測しそして、図7に示すように全Tc−99mの放射能の百分率として表した。この結果は、6回の別個の製造(異なる色)で示す。
この実験は、好適な条件下でのポリカチオンとTc−99mフィブリンライトの処理はまた、癌患者の選択的内部照射療法(SIRT)に使用される特定の種類のポリマーマイクロスフェアへのTc−99mフィブリンライトナノ粒子の強固な結合を誘導し得、そして、このようにして標識されたSIR−スフェア マイクロスフェアは、分離され得そして、洗浄され、治療用SIR−スフェア マイクロスフェアの生体内分布の生体内ガンマカメライメージング研究に好適な精製された生成物をもたらすことを示すものである。
【0113】
実施例10:ウサギ肝臓の動脈血管系に点滴注入後のTc−99mフィブリンライトナノ粒子のイメージング
ニュージーランドシロウサギをイソフルランで麻酔しそして胆嚢動脈及び肝動脈を露出させた。ビニール製のマイクロカテーテルを胆嚢動脈に挿入しそして少量のTc−99mフィブリンライト(全3.8mCi)を、肝動脈流が、肝臓へナノ粒子を運搬するように、徐々に注入した。ウサギ全身のガンマカメライメージングで、標識されたナノ粒子が急速に肝臓に取り込まれたが、いくらかの標識体は、全身循環へと存続したことを確認した。60分後、ウサギを安楽死させそして全肝臓を切除した。生体外での肝臓のガンマカメライメージング(図10a)は、肝臓の全ての組織中への標識されたナノ粒子の分布を確認した。
この対照実験は、肝臓に動脈から注入後Tc−99mフィブリンライトナノ粒子の通常な結末は、臓器の全組織中に分布することであることを示した。粒子は、約300nmの平均直径のものであるため、全ての組織の最も小さい毛細血管に入ることができ、ここでそれらは、網内系(RES)の一部である食作用を有するクッパー細胞により取り込まれる。この取り込みは、非常に迅速であり、効率的であるが、標識されたナノ粒子はまた、全身循環へと抜け出し得、ここからそれらはウサギの脾臓及び骨髄中のRESにより取り込まれ、そしていくつかの標識体はまた腎臓中にも見られ得る(図10b)。
【0114】
実施例11:ウサギ肝臓の動脈血管系の点滴注入後のTc−99mフィブリンライト標識マイクロスフェアのイメージング
Tc−99mフィブリンライト(10mCi)を、10μg/mLの硫酸プロタミン(シグマ社製、P4505)の水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したフィブリンライトを直径30ミクロンの予め洗浄したスルホン化ポリスチレンマイクロスフェア(Aminex 50W−X4;バイオラッド製)(100mg)へ添加し、そして、緩やかな攪拌とともに20℃において30分間結合させた。マイクロスフェアを、使用前に水(5.0mL)で3回洗浄した。ニュージーランドシロウサギをイソフルランで麻酔しそして胆嚢動脈及び肝動脈を露出させた。ビニール製のマイクロカテーテルを胆嚢動脈に挿入しそして少量の3.0mCi Tc−99mで標識したマイクロビーズ懸濁液を、肝動脈流が肝臓へナノ粒子を運搬するように、徐々に注入した。ウサギのカンマカメライメージングは、標識されたマイクロスフェアが肝臓を透過しそして標識体の大部分がそこへ保持されたことを確認した。痕跡程度の標識された粒子が全身循環を続けるのみであった。60分後、ウサギを安楽死させそして全肝臓を切除した。生体外で
の肝臓のガンマカメライメージング(図11a)は、Tc−99mナノ粒子を用いて見られた肝臓の完全なかん流(上記図10a)と比較して、明確に分割された肝臓中における標識体の分布を示した。また、実施例10における対照実験と比較して、肝臓の除去後のウサギの全身のイメージングは、脾臓及び骨髄の如何なる標識も示さず(図11b)、
つまり、肝臓中のマイクロスフェア上の標識物の保持は、事実上完了したことを示した。
これらの結果は、マイクロスフェアの標識がウサギにおける生体内条件下で安定であることを示した。局所的に注入されたTc−99mフィブリンライト標識マイクロスフェアのガンマカメライメージングは、全身循環への僅かな漏出(図11b)とともに、ウサギ肝臓の動脈血管系中に標識体の効率的な取り込みを示した(図11a)。このことは、体内に導入された合成ポリマーの医学的イメージングのための、例えば、癌の局所治療の目的のための、標識方法の使用の可能性を説明するものである。
【0115】
実施例12:ウサギ肝臓の動脈血管系に点滴注入後のTc−99mフィブリンライト標識されたSIR−スフェア マイクロスフェアのイメージング
この実施例で用いられたSIR−スフェア マイクロスフェアは、治療用アイソトープY−90(T1/2=64時間)の100半減期に相当するよりも長い間経過させ、イメージング用アイソトープで標識するための“コールド”のTc−99m SIR−スフェア
マイクロスフェアサンプルを得た。Tc−99mフィブリンライト(8.0mCi)を、10μg/mLの硫酸プロタミン(シグマ社製P4505)の水溶液(6.0mL)で20℃において30分間前処理した。前処理したフィブリンライトを予め洗浄したSIR−スフェア マイクロスフェア(100mg)へ添加し、そして緩やかに混合しながら20℃において30分間結合させた。SIR−スフェア マイクロスフェアを、使用前に水(5.0mL)で3回洗浄した。ニュージーランドシロウサギをイソフルランで麻酔しそして胆嚢動脈及び肝動脈を露出させた。ビニール製のマイクロカテーテルを胆嚢動脈に挿入しそして少量の3.5mCi Tc−99mで標識したSIR−スフェア マイクロスフェアを、肝動脈流が肝臓へナノ粒子を運搬するように、徐々に注入した。ウサギのカンマカメライメージングは、標識されたSIR−スフェア マイクロスフェアが肝臓に取り込まれそして標識体の大部分がそこへ保持されたことを確認した。60分後、ウサギを安楽死させそして全肝臓を切除した。生体外での肝臓のガンマカメライメージング(図12a)は、Tc−99mナノ粒子において見られた肝臓の完全なかん流(上記図10a参照)と比較して、明確に分割された肝臓中における標識体の分布を示した。また、上記実施例10におけるTc−99mフィブリンライト標識を用いた対照実験と比較して、肝臓の除去後のウサギの全身のイメージングは、肝臓中のSIR−スフェア マイクロスフェア上の標識体の保持が非常に効率的であり、残渣程度の標識体のみが腎臓及び骨髄に見られ、そして脾臓中には全く観測されなかったことを示した(図12b)。
これらの結果は、SIR−スフェア マイクロスフェアの標識がウサギにおける生体内条件下で安定であることを示したものである。局所的に注入されたTc−99mフィブリンライト標識SIR−スフェア マイクロスフェアのガンマカメライメージングは、全身循環への僅かな漏出とともに、ウサギ肝臓の動脈血管系中に標識体の効率的な取り込みを示した。このことは、病気、例えば癌の局所治療の目的のための、体内に導入された合成ポリマーの医学的イメージングのための、標識方法の使用の可能性を説明するものである。
【0116】
考察
これらの実施例はここで、合成ポリマーの標識の高い反応性が、短距離引力が長距離静電斥力に優勢となる、高められた電解質濃度を通じて及び/又はpH条件を通して達成され得ることを示すものである。これらの実施例は、フィブリンライトとポリスチレンの間の結合が、疎水性相互作用を含み、そして、疎水性相互作用は阻害されないが、電解質濃度の増加により実際に高められるため、結合は、生理学的電解質濃度において利用され得ることを示すものである。ここに記載された方法を用いて、フィブリンライトナノ粒子は
ポリマー表面に強固に保持され、そして放射性標識体は、生体内で直面し得る電解質条件下で分離しない。
【0117】
上記の実施例は、ポリマー表面へのフィブリンライトの結合を誘導するために単純な電解質、塩化ナトリウムの使用を説明する。しかし、ポリイオン、特にポリカチオンはまた、ポリマー表面へのフィブリンライトの結合を強力に誘導することが、そして、非常に低い濃度において、例えばポリ−リジン0.5マイクログラム/mLにおいてであることが、見出された。ポリ−リジンのようなポリカチオンを用いたフィブリンライトの表面処理はまた、有機化学の標準的な方法によりフィブリンライトへの広範な有機置換基、例えば、ポリペプチド、抗体、酵素及び細胞表面レセプターリガンドの連結を可能にすることは、本開示から明らかである。このことは、種々の人間又は動物の腫瘍における過大発現したマーカータンパク質の検出及び局在のような、特異的標識及び生体内での医学的なイメージング適用のためのフィブリンライトを特別に製造するために望ましいものであり得る。そのような使用は、診断、予後診断、ステージング又は腫瘍の術後モニタリング、並びに病気の再発の検出の支援をもたらし得る。
【0118】
上記実施例は、ポリスチレンマイクロウェルへのフィブリンライトの結合の誘導を説明した。極めて類似した結果は、ポリプロピレン管を用いても得られた。ポリプロピレンへのフィブリンライトの強固な結合は、単純な電解質の添加後そして特にポリ−リジンのようなポリカチオンの添加後に見られた。さらにまた、結合を誘導するための適切な濃度は、ポリスチレンのために上記で報告されたものと同様である。ポリスチレンは、芳香族サブユニット、スチレンの鎖を含むポリマーの一例である。ポリプロピレンは、脂肪族サブユニット、プロピレンの鎖を含むポリマーの一例である。このように分子レベルにおけるこれらの2つのポリマーの化学は全く異なるが、双方へのフィブリンライトの結合は、同様の電解質の濃度によって誘導され得る。フィブリンライト粒子は、強い疎水性力が優位を占めるところのポリマー表面に近距離で接近し得るのが一般的である。近距離の接近は、電解質の適切な濃度で弱い静電斥力を遮蔽することにより可能である。結合は、強い短距離疎水性引力を優勢にするような、弱い長距離静電斥力を減弱させることにより有利となる。
【0119】
上記は、本発明の好ましい形態を記載した。本発明は、上記に示された特定の実施態様に限定されるべきでないことは理解されるところである。当業者に自明な変形及び変化は、本発明の範囲から離れることなくそれに加えてなされ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性標識合成ポリマーを製造する方法であって、
該方法は、
長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む水溶性媒体中の放射性微粒子コアを有する、炭素封入ナノ粒子複合材料と合成ポリマーを接触させる工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記炭素封入ナノ粒子複合材料がフィブリンライト(FiblinLite)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素封入ナノ粒子複合材料がデオキシコール酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電解質濃度及びpHが短距離引力を促進するために選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電解質が単純電解質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単純電解質がNa,K及びCaからなる群より選ばれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水性媒体の電解質濃度が、単純電解質の約1ミリモル以上乃至約150ミリモルの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水性媒体が、約15ミリモルのNaClに相当する電解質濃度を含みそして、約3.5のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水性媒体が、約80ミリモルのNaClに相当する電解質濃度を含みそしてほぼ中性のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電解質がポリカチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリカチオンがポリリジン及びプロタミンからなる群より選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水性媒体が、約5ナノモル以上乃至約4000ナノモルの範囲内の濃度でポリカチオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水性媒体が、約30ナノモルのポリリジンに相当するかまたは約2000ナノモルのプロタミンに相当する濃度のポリカチオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記放射性微粒子コアが、99mTc、198Au、64Cu、51Cr、67Ga、68Ga,166Ho、111In、177Lu、103Pd、82Rb、186Re、153Sm、89Sr,90Y、89Zr及び192Irからなる群より選ばれる放射性同位元素または放射性核種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記放射性微粒子コアが99mTcを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記放射性微粒子コアが67Gaを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記合成ポリマーが、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート及びポリラクチド(PLA)からなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記合成ポリマーが、(i)ポリマーの懸濁液または分散液を含み、(ii)巨大分子集合体の形態または巨大分子集合体を含み、又は(iii)カテーテル、繊維、ロッドまたはフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔質スポンジ、管またはステント、ビーズ又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中又は表面に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記合成ポリマーが、組織の微小血管網中への取り込みを可能とするサイズ範囲のミクロ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と複合体を形成する合成ポリマーを含む放射性標識された物質。
【請求項21】
医療用具である、請求項20に記載の放射性標識された物質。
【請求項22】
多数の異なる放射性標識を含む、請求項20に記載の放射性標識された物質。
【請求項23】
放射性標識医療用具を製造する方法であって、該方法は、
医療用具の中又は表面に該放射性標識合成ポリマーを取り込むために好適な条件下で、該医療用具と、放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料を含む放射性合成ポリマーを接触させることを含む、方法。
【請求項24】
前記医療用具が、カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又は又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記用具が、選択的な内部照射療法として選択された標的臓器の局所動脈血供給へ注入するために好適であり、該標的臓器の動脈毛細血管網中に埋め込まれる粒子サイズを含む、合成ポリマーミクロ粒子である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
患者を放射線治療する方法であって、該方法は、
治療上有効量の放射性標識合成ポリマーを該患者に投与することを含み;そして
該放射性標識合成ポリマーは、放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料に関連した合成ポリマーを含む、水溶性媒体として製造される、
方法。
【請求項27】
前記放射性標識合成ポリマーが、ビーズ、ミクロ粒子又はミクロスフェアの形態またはその中又は表面に取り込まれる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
選択的内部放射性治療を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記治療が、癌の治療である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記癌が、(i)結腸、直腸、又は肺の原発巣由来の肝臓の転移癌、又は(ii)原発性肝癌から選ばれる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)と複合体を形成した合成ポリマーを製造する方法であって、該方法は、
長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む、水性媒体中で放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と、合成ポリマーを接触させることを含む、方法。
【請求項32】
合成ポリマー及び放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)を含む微粒子コアを有する、炭素封入ナノ粒子複合材料を含む複合体。
【請求項33】
合成ポリマーを放射性標識する方法であって、
該方法は、以下の工程;
(a)長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む、水性媒体中に放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と合成ポリマーを接触させる工程;そして
(b)非放射性前駆体(progetor)を放射化させ放射性同位元素を生成させる工程、を含む方法。
【請求項34】
前記放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)がホウ素の安定同位体である、請求項31または33に記載の方法。
【請求項35】
前記合成ポリマーが、
(i)ポリマーの懸濁液又は分散液を含み、
(ii)巨大分子集合体の形態かまたは巨大分子集合体を含み、または
(iii)カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又は又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中またはその表面に含まれる、請求項31又は33に記載の方法。
【請求項36】
前記放射化が、中性子線に前駆物質(progenitor)を曝露させることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
患者を放射線治療する方法であって、該方法は以下の工程、
合成ポリマーと、放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料を含む複合体の量であって、該量は、該非放射性前駆体(progetor)が放射化された場合に、治療上有効量である量を患者に投与する工程、そして、
非放射性前駆体(progetor)を放射化して放射性同位元素を生成させる工程、
を含む方法。
【請求項38】
前記放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)がホウ素である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記放射化が、中性子線に前駆体(progetor)を曝露させることを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項1】
放射性標識合成ポリマーを製造する方法であって、
該方法は、
長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む水溶性媒体中の放射性微粒子コアを有する、炭素封入ナノ粒子複合材料と合成ポリマーを接触させる工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記炭素封入ナノ粒子複合材料がフィブリンライト(FiblinLite)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素封入ナノ粒子複合材料がデオキシコール酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電解質濃度及びpHが短距離引力を促進するために選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電解質が単純電解質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記単純電解質がNa,K及びCaからなる群より選ばれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水性媒体の電解質濃度が、単純電解質の約1ミリモル以上乃至約150ミリモルの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水性媒体が、約15ミリモルのNaClに相当する電解質濃度を含みそして、約3.5のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水性媒体が、約80ミリモルのNaClに相当する電解質濃度を含みそしてほぼ中性のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電解質がポリカチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリカチオンがポリリジン及びプロタミンからなる群より選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水性媒体が、約5ナノモル以上乃至約4000ナノモルの範囲内の濃度でポリカチオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水性媒体が、約30ナノモルのポリリジンに相当するかまたは約2000ナノモルのプロタミンに相当する濃度のポリカチオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記放射性微粒子コアが、99mTc、198Au、64Cu、51Cr、67Ga、68Ga,166Ho、111In、177Lu、103Pd、82Rb、186Re、153Sm、89Sr,90Y、89Zr及び192Irからなる群より選ばれる放射性同位元素または放射性核種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記放射性微粒子コアが99mTcを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記放射性微粒子コアが67Gaを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記合成ポリマーが、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート及びポリラクチド(PLA)からなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記合成ポリマーが、(i)ポリマーの懸濁液または分散液を含み、(ii)巨大分子集合体の形態または巨大分子集合体を含み、又は(iii)カテーテル、繊維、ロッドまたはフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔質スポンジ、管またはステント、ビーズ又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中又は表面に含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記合成ポリマーが、組織の微小血管網中への取り込みを可能とするサイズ範囲のミクロ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と複合体を形成する合成ポリマーを含む放射性標識された物質。
【請求項21】
医療用具である、請求項20に記載の放射性標識された物質。
【請求項22】
多数の異なる放射性標識を含む、請求項20に記載の放射性標識された物質。
【請求項23】
放射性標識医療用具を製造する方法であって、該方法は、
医療用具の中又は表面に該放射性標識合成ポリマーを取り込むために好適な条件下で、該医療用具と、放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料を含む放射性合成ポリマーを接触させることを含む、方法。
【請求項24】
前記医療用具が、カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又は又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記用具が、選択的な内部照射療法として選択された標的臓器の局所動脈血供給へ注入するために好適であり、該標的臓器の動脈毛細血管網中に埋め込まれる粒子サイズを含む、合成ポリマーミクロ粒子である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
患者を放射線治療する方法であって、該方法は、
治療上有効量の放射性標識合成ポリマーを該患者に投与することを含み;そして
該放射性標識合成ポリマーは、放射性微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料に関連した合成ポリマーを含む、水溶性媒体として製造される、
方法。
【請求項27】
前記放射性標識合成ポリマーが、ビーズ、ミクロ粒子又はミクロスフェアの形態またはその中又は表面に取り込まれる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
選択的内部放射性治療を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記治療が、癌の治療である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記癌が、(i)結腸、直腸、又は肺の原発巣由来の肝臓の転移癌、又は(ii)原発性肝癌から選ばれる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)と複合体を形成した合成ポリマーを製造する方法であって、該方法は、
長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む、水性媒体中で放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と、合成ポリマーを接触させることを含む、方法。
【請求項32】
合成ポリマー及び放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)を含む微粒子コアを有する、炭素封入ナノ粒子複合材料を含む複合体。
【請求項33】
合成ポリマーを放射性標識する方法であって、
該方法は、以下の工程;
(a)長距離静電斥力を減弱させることによりナノ粒子と合成ポリマーの間の短距離引力を促進するために選ばれる電解質濃度又はpHを含む、水性媒体中に放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料と合成ポリマーを接触させる工程;そして
(b)非放射性前駆体(progetor)を放射化させ放射性同位元素を生成させる工程、を含む方法。
【請求項34】
前記放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)がホウ素の安定同位体である、請求項31または33に記載の方法。
【請求項35】
前記合成ポリマーが、
(i)ポリマーの懸濁液又は分散液を含み、
(ii)巨大分子集合体の形態かまたは巨大分子集合体を含み、または
(iii)カテーテル、繊維、ロッド又はフィラメント、膜、ウエハ、メッシュ又はガーゼ、多孔性スポンジ、管又はステント、ビーズ又は又は公知のサイズのミクロビーズの形態のカプセルまたはミクロ粒子、ナノ粒子、リポソームの中またはその表面に含まれる、請求項31又は33に記載の方法。
【請求項36】
前記放射化が、中性子線に前駆物質(progenitor)を曝露させることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
患者を放射線治療する方法であって、該方法は以下の工程、
合成ポリマーと、放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)を含む微粒子コアを有する炭素封入ナノ粒子複合材料を含む複合体の量であって、該量は、該非放射性前駆体(progetor)が放射化された場合に、治療上有効量である量を患者に投与する工程、そして、
非放射性前駆体(progetor)を放射化して放射性同位元素を生成させる工程、
を含む方法。
【請求項38】
前記放射性同位元素の非放射性前駆体(progetor)がホウ素である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記放射化が、中性子線に前駆体(progetor)を曝露させることを含む、請求項37に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−518198(P2011−518198A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505322(P2011−505322)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000509
【国際公開番号】WO2009/129578
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510281955)ジ オーストラリアン ナショナル ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000509
【国際公開番号】WO2009/129578
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510281955)ジ オーストラリアン ナショナル ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】
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