説明

放射性標識法

【課題】放射性核種で標識した生理活性ベクターを含む放射性診断薬及び放射性治療薬の提供。
【解決手段】式(V)又は(VI)の化合物(R*は放射性核種及びキレート剤に導入された放射性核種からなる群から選択されるリポーター部分を表す。ベクターは、ペプチド、タンパク質、ホルモン、細胞、細菌又はウィルスである。)


該標識コンジュゲートは、例えば放射性医薬品、さらに具体的には陽電子放射断層撮影等の診断薬又は放射線療法のための放射性医薬品として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性核種で標識した生理活性ベクターを含む放射性診断薬及び放射性治療薬に関する。本発明は、さらに、ペプチドなどのベクターの標識法及び標識試薬に関する。得られる標識コンジュゲートは、例えば放射性医薬品、さらに具体的には陽電子放射断層撮影(PET)もしくは単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)用の診断薬又は放射線療法のための放射性医薬品として有用である。
【背景技術】
【0002】
画像診断のための放射性標識生理活性ペプチドの用途は核医学で重要性を増しつつある。特定の細胞型と選択的に相互作用する生理活性分子は標的組織に放射能を送達するのに有用である。例えば、放射性標識ペプチドは、画像診断及び放射線療法のため腫瘍、梗塞巣部及び感染組織に放射性核種を送達するのに大きな潜在的可能性を有している。半減期約110分の18Fは数多くの受容体イメージングに最適な陽電子放出核種である。そのため、18F標識生理活性ペプチドは、多種多様な疾患の定量的検出及び特性決定のためのPETにおける有用性から、臨床上多大な将来性を有している。他の有用な放射性核種としては、11C、125I、123I、124I、131Iのような放射性ヨウ素並びに99mTcが挙げられる。
【0003】
従前、ペプチド及び生体分子を標識するための迅速な汎用法がなかったため、ペプチド及び生体分子を診断薬として使用することができなかった。例えば、現在ペプチド及びタンパク質を18Fで標識するのに用いられている方法は、ほとんどすべてフッ素標識シントンの活性エステルを利用するものである。ペプチド及びタンパク質は活性エステルと反応し得る官能基を多数有しているので、かかる現行法は部位特異的ではない。例えば、リジン残基を3個を含むペプチドは、標識シントンに対する反応性が全く同じアミン官能基を3個有する。そこで、放射性核種(18Fなど)のような標識を特にペプチドに温和な条件下で迅速かつ化学選択的に導入して、高い放射化学純度及び収率で標識生成物を得ることのできる18F標識補欠分子族のような標識剤並びに方法に対するニーズが依然として存在する。さらに、かかる方法であって、臨床現場での診断薬の調製を促進するための自動化に適した方法に対するニーズも存在する。
【特許文献1】国際公開第01/77415号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/006491号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/002157号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2005/003166号パンフレット
【非特許文献1】Atherton,E.and Sheppard,R.C.;“Solid Phase Synthesis”;IRL Press:Oxford,1989
【非特許文献2】H.C.Kolb and K.B.Sharpless,Drug Discovery Today,Vol 8(24),December 2003
【非特許文献3】M.J.Welch and C.S.Redvanly“Handbook of Radiopharmaceuticals”,published by Wiley
【非特許文献4】E.U.T.van Velzen et al.,Synthesis(1995)989−997
【非特許文献5】G.M.Coppola and R.E.Damon,Synthetic Communications 23(1993)2003−2010
【非特許文献6】Z.P.Demko and K.B.Sharpless,Org.Lett.3(2001)4091
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、Cu(I)触媒の存在下で、式(I)の化合物と式(II)の化合物又は式(III)の化合物と式(IV)の化合物とを反応させてそれぞれ式(V)又は(VI)のコンジュゲートを得ることを含む、ベクターの標識法を提供する。
【0005】
【化1】

【0006】
【化2】

式中、L1、L2、L3及びL4は各々リンカー基であり、
*は放射性核種を含むリポーター部分である。
【0007】
【化3】

式中、L1、L2、L3、L4及びR*は上記で定義した通りである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
リンカー基L1、L2、L3及びL4は各々独立にC160ヒドロカルビル基、好適にはC130ヒドロカルビル基であり、適宜、酸素又は窒素のようなヘテロ原子を1〜30個、好適には1〜10個含んでいてもよい。好適なリンカー基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、芳香環、多核芳香環及びヘテロ芳香環が挙げられ、これらはいずれも例えば1以上のエーテル、チオエーテル、スルホンアミド又はアミド官能基で置換されてもよく、さらに、エチレングリコールのモノマー及びポリマー、アミノ酸又は炭水化物サブユニットが挙げられる。
【0009】
「ヒドロカルビル基」という用語は、炭素と水素からなる有機置換基をいい、かかる基は、飽和、不飽和又は芳香族部分を含んでいてもよい。
【0010】
リンカー基L1、L2、L3及びL4は、得られる式(V)又は(VI)の化合物における好ましい排泄特性など、良好な生体内薬物動態が得られるように選択される。親油性及び/又は電荷の種々異なるリンカー基を使用することによって、診断上のニーズに応じてペプチドの生体内薬物動態を大きく変化させることができる。例えば、式(V)又は(VI)の化合物を腎排泄によって身体から排除することが望まれる場合には親水性リンカーを使用し、肝胆道排泄による排除が望ましい場合には疎水性リンカーを使用する。ポリエチレングリコール部分を含むリンカーは血液クリアランスを遅らせることが判明しており、状況によっては望ましい。
【0011】
*は、陽電子放出核種のような放射性核種を含むリポーター部分である。この目的に適した陽電子放出核種としては、11C、18F、75Br、76Br、124I、82Rb、68Ga、64Cu及び62Cuが挙げられ、特に11C及び18Fが好ましい。他の有用な放射性核種としては、123I、125I、131I、211At、99mTc及び111Inが挙げられる。金属放射性核種は、例えば当業者に公知の直接導入法などによって、キレート剤に好適に導入される。金属性リポーターのキレート化は、Cu(I)触媒のキレート化を避けるため、好ましくは式(I)又は(IV)の化合物とそれぞれ式(II)又は(III)の化合物との反応前に行われる。
【0012】
*に含まれる適当なキレート剤としては次の式Xのものが挙げられる。
【0013】
【化4】

式中、R1A、R2A、R3A及びR4Aは各々独立にRA基であり、
A基は各々独立にH又はC110アルキル、C310アルキルアリール、C210アルコキシアルキル、C110ヒドロキシアルキル、C110アルキルアミン、C110フルオロアルキルであるか、或いは2以上のRA基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。或いは、R*は以下の式(i)、(ii)、(iii)又は(iv)のキレート剤を含むものであってもよい。
【0014】
【化5】

キレート剤の好ましい例は次の式(v)で表される。
【0015】
【化6】

式Xのキレート剤を含む式(II)又は(IV)の化合物は、中性pH付近の水性条件下室温で放射性標識することができ、良好な放射化学純度(RCP)を与える。
【0016】
式(I)及び(III)並びに特記しない限り本発明の他の態様において、標識に適したベクターはペプチドであり、ペプチドとしては、オクトレオチドのようなソマトスタチン類似体、ボンベシン、血管作用性小腸ペプチド、化学走性ペプチド類似体、α−メラノサイト刺激ホルモン、ニューロテンシン、Arg−Gly−Aspペプチド、ヒトプロインスリン結合ペプチド、インスリン、エンドセリン、アンジオテンシン、ブラジキニン、エンドスタチン、アンジオスタチン、グルタチオン、カルシトニン、マガイニンI及びII、黄体形成ホルモン放出ホルモン、ガストリン、コレシストキニン、サブスタンスP、バソプレッシン、ホルミル−ノルロイシル−ロイシル−フェニルアラニル−ノルロイシル−チロシル−リジン、アネキシンV類似体、血管作用性プロテイン−1(VAP−1)ペプチド、カスパーゼペプチド基質が挙げられる。好ましい標識用ペプチドは、国際公開第01/77415号及び同第03/006491号に記載されているようなArg−Gly−Aspペプチド及びその類似体、好ましくは次式のフラグメントを含むペプチドである。
【0017】
【化7】

さらに好ましくは式(A)のペプチドである。
【0018】
【化8】

式中、X7は−NH2又は次式の基である。
【0019】
【化9】

式中、aは1〜10の整数であり、好ましくはaは1である。
【0020】
当業者には明らかであろうが、本発明の方法は、タンパク質、ホルモン、多糖類、オリゴヌクレオチド、抗体フラグメントのような他の生体分子、並びに細胞、細菌、ウィルス及び薬物様低分子の放射性標識にも使用でき、多種多様な診断薬を与える。式(I)及び(III)並びに特記しない限り本発明の他の態様において、特に好適な標識用ベクターはペプチド、タンパク質、ホルモン、細胞、細菌、ウィルス及び薬物様低分子である。
【0021】
式(I)の化合物と式(II)の化合物との反応又は式(III)の化合物と式(IV)の化合物との反応は、適当な溶媒、例えばアセトニトリル、C14アルキルアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド又はこれらいずれかの水性混合物或いは水中で、5〜100℃の穏和な温度、好ましくは室温で実施し得る。Cu(I)触媒は、反応の進行に十分な量、通例は触媒量又は過剰量、例えば式(I)又は(III)の化合物に対して0.02〜1.5モル当量で存在する。
【0022】
適当なCu(I)触媒としては、CuI、CuOTf.C66、[Cu(NCCH34][PF6]のようなCu(I)塩が挙げられるが、好適にはアスコルビン酸又はその塩(例えばアスコルビン酸ナトリウムなど)、ヒドロキノン、キノン、金属銅、グルタチオン、システイン、Fe2+又はCo2+のような還元剤の存在下で硫酸銅(II)のようなCu(II)塩を使用してもよい。Cu(I)は元素態銅粒子の表面にも本質的に存在しており、例えば粉末又は顆粒状の元素態銅も触媒として使用し得る。今回、粒径の制御されたCu(I)触媒、特に元素態銅を使用すると、放射化学収率が驚くほど向上することが判明した。そこで、本発明の一態様では、Cu(I)触媒、特に元素態銅は0.001〜1mm、好ましくは0.1mm〜0.7mm、さらに好ましくは約0.4mmの粒径を有する。
【0023】
本発明は、ペプチド又はベクター前駆体の合成に際して標識の正確な導入部位を予め選定できる化学選択性の向上した放射性標識法を提供する。ベクターの所定の部位で起こる連結反応では、1種類の生成物しか得られない。この方法はこのように化学選択的であり、その用途は多種多様なペプチド、生体分子及び低分子量薬物に汎用的であると考えられる。さらに、アルキン官能基及びアジド官能基は共にほとんどの反応条件下で安定であり、大半の慣用ペプチド官能基とは非反応性であるので、標識合成の際に必要な保護及び脱保護工程が最小限で済む。さらに、標識反応時に形成されるトリアゾール環は加水分解せず、しかも酸化・還元に非常に安定であり、標識ベクターが高い生体内安定性を有することを意味する。トリアゾール環はアミドと同程度の大きさ及び極性であるので、標識ペプチド又はタンパク質は対応する天然物のよい模倣体となる。
【0024】
ベクターがペプチド又はタンパク質である式(I)及び(III)の化合物は、ペプチド合成の常法、例えば固相ペプチド合成、例えばAtherton,E.and Sheppard,R.C.;“Solid Phase Synthesis”;IRL Press:Oxford,1989に記載の方法で調製し得る。式(I)又は(III)の化合物へのアルキン又はアジド基の導入は、ペプチドのN末端又はC末端の反応、或いはペプチド配列中に含まれる他の官能基であってその修飾によってベクターの結合特性が影響されないものとの反応によって達成し得る。アルキン又はアジド基は、好ましくは、ペプチドのアミン官能基と活性化された酸との反応或いはペプチドの酸官能基とアミン官能基との反応などで形成される安定なアミド結合の形成によって式(I)又は(III)の化合物に導入され、ペプチド合成中又は合成後に導入される。細胞、ウィルス、細菌のようなベクターにアルキン又はアジド基を導入する方法は、H.C.Kolb and K.B.Sharpless,Drug Discovery Today,Vol 8(24),December 2003及びその引用文献に記載されている。式(I)又は(III)の化合物にアルキン又はアジド基を導入するのに有用な中間体としては、以下のものがある。
【0025】
【化10】

別の態様では、本発明は、ペプチド、タンパク質のようなベクターの、例えば上述の方法による標識に有用な新規補欠分子族を提供する。そこで、式(II)又は(IV)の化合物を提供する。
【0026】
【化11】

式中、L2及びL4は各々上記で定義したリンカー基であり、R*は上記で定義したリポーター部分である。本発明のこの態様の一実施形態では、R*18Fであり、補欠分子族は式(IIa)及び(IVa)のものである。
【0027】
【化12】

式中、L2及びL4は各々上記で定義したリンカー基である。
【0028】
式(IV)の好ましい化合物としては、以下のものがある。
【0029】
【化13】

別の態様では、本発明は、式(I)又は(III)の化合物を提供する。
【0030】
【化14】

式中、L1及びL3は各々上記で定義したリンカー基であり、ベクターは上記で定義した通りである。本発明のこの態様では、好適には、ベクターはペプチド又はタンパク質である。式(I)及び(III)の好ましい化合物は、ベクターが国際公開第01/77415号及び同第03/006491号に記載されているようなArg−Gly−Aspペプチド及びその類似体、好ましくは次式のフラグメントを含むペプチド、さらに好ましくは式(A)のペプチドであるものである。
【0031】
【化15】

【0032】
【化16】

式中、X7は−NH2又は次式の基である。
【0033】
【化17】

式中、aは1〜10の整数であり、好ましくはaは1である。
【0034】
別の態様では、本発明は、上記で定義した式(V)及び(VI)の標識ベクターを提供する。式(V)及び(VI)の好ましい化合物は、ベクターが国際公開第01/77415号及び同第03/006491号に記載されているようなArg−Gly−Aspペプチド及びその類似体、好ましくは次式のフラグメントを含むペプチド、さらに好ましくは式(A)のペプチドであるものである。
【0035】
【化18】

【0036】
【化19】

式中、X7は−NH2又は次式の基である。
【0037】
【化20】

式中、aは1〜10の整数であり、好ましくはaは1である。
【0038】
*11C放射性標識を含む式(II)の化合物は、例えば以下の反応スキームで調製し得る。
【0039】
【化21】

式中、−NuHは、ヒドロキシル、チオール、アミン官能基のような求核性反応中心である。
【0040】
*18Fである式(II)の化合物は求電子又は求核フッ素化反応で調製でき、例えば以下の反応で調製し得る。
【0041】
【化22】

式(II)の化合物の調製に適した放射性フッ素化法としては、例えば18−クラウン−6又はKryptofix2.2.2などの環状ポリエーテルのような相間移動剤の存在下での、脱離基(アルキルスルホネート又はアリールスルホネート、例えばメシレート、トリフレート又はトシレート;ニトロ又はトリアルキルアンモニウム塩など)を組み込んだ前駆体と18F-との反応がある。この反応は、当技術分野で公知の標準的条件下での液相で実施することもできるし(例えばM.J. Welch and C.S. Redvanly “Handbook of Radiopharmaceuticals”(Wiley)参照)、或いは式(II)の化合物の精製を促進するため国際公開第03/002157号に記載の方法による固体担体を用いても実施できる。
【0042】
式(IV)の化合物は、式(II)の化合物の合成について説明したのと同様の方法で適当なアセチレン前駆体から調製し得る。
【0043】
本発明は、一般式(V)又は(VI)の化合物の有効量(例えば、インビボイメージング、好適にはPET又はSPECTでの使用に有効な量)を、1種以上の薬学的に許容される補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含む放射性医薬組成物も提供する。好ましくは、式(V)又は(VI)の化合物のベクターは上述のArg−Gly−Aspペプチド又はその類似体である。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態は、医療用、特にインビボイメージング(好適にはPET又はSPECTによる)に使用するための、上記で定義した一般式(V)又は(VI)の化合物に関する。好ましくは、式(V)又は(VI)の化合物のベクターは上述のArg−Gly−Aspペプチド又はその類似体である。
【0045】
式(V)又は(VI)の標識ベクターは、インビボイメージングのため、所望の信号が得られる十分な量で患者に投与すればよく、PET又はSPECTイメージングのための典型的な放射性核種投与量は体重70kg当たり0.01〜100mCi、好ましくは0.1〜50mCiで通常は十分である。
【0046】
したがって、式(V)又は(VI)の標識ベクターは、当業者の技術常識に属する方法で、生理学的に許容される担体又は賦形剤を用いて投与用に製剤化すればよい。例えば、上記化合物は、適宜薬学的に許容される賦形剤を添加して、水性媒体に懸濁又は溶解し、次いで得られた溶液又は懸濁液を滅菌すればよい。
【0047】
本発明は、別の態様では、医薬品をヒト又は動物の身体に投与してヒト又は動物の身体の少なくとも一部分の画像を生成させるインビボイメージング(好適にはPET)法に用いられる医薬品の製造における、式(V)又は(VI)の標識ベクターの使用を提供する。
【0048】
本発明は、さらに別の態様では、医薬品をヒト又は動物の身体(例えば脈管系)に投与して、医薬品が分配された身体の少なくとも一部分の画像をPETのようなインビボイメージング法を用いて生成させるヒト又は動物の身体の画像生成法であって、該医薬品が式(V)又は(VI)の標識ベクターを含む方法を提供する。
【0049】
別の態様では、本発明は、ある病態に対処するための薬剤によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターする方法であって、式(V)又は(VI)の標識ベクターを身体に投与し、前記標識ベクターの取込みを検出し、任意ではあるが好ましくは、上記投与と検出を、例えば上記薬剤による治療の前後途中に繰り返すことを含む方法を提供する。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態では、式(II)又は(IV)の補欠分子族又はその前駆体と式(I)又は(III)の化合物とを含む、放射性フッ素化トレーサーの調製用キットを提供する。
【0051】
上記キットの使用に際して、前駆体化合物は上述の方法を用いて対応する式(II)又は(IV)の化合物に変換される。式(II)及び(IV)の化合物は未精製の状態で使用してもよいが、好ましくは、固相抽出(SPE)カートリッジに反応混合物を流す方法、クロマトグラフィー法又は蒸留法によって、式(II)及び(IV)の化合物を使用済反応体から分離してもよい。式(II)及び(IV)の化合物をそれぞれ 式(I)及び(III)の化合物に添加するが、これらは好適には本明細書に記載した適当な溶媒に溶解させてもよい。穏和な温度で1〜90分間反応させた後、標識ペプチドを例えばSPEで精製し、回収すればよい。
【0052】
本明細書に記載の化学反応は、診断薬又はインビボ造影剤としてのスクリーニングに適した放射性標識ベクターのライブラリーの作製にも使用できる。例えば、式(II)又は(IV)の補欠分子族の混合物を式(I)又は(III)の1種以上の化合物と上述の方法を用いて反応させることによって、放射性標識ベクターのライブラリーを作製することができる。
【実施例】
【0053】
以下の実施例によって本発明を例示するが、実施例では以下の略語を用いる。
【0054】
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
ESI−MS:エレクトロスプレーイオン化質量分析法
rt:室温
TOF−ESI−MS:飛行時間型エレクトロスプレーイオン化質量分析
FT−IR:フーリエ変換赤外
ppm:百万分率
TFA:トリフルオロ酢酸
ACN:アセトニトリル。
【0055】
参照化合物の調製
【0056】
【化23】

実施例1
化合物(2):1−アジド,2−フルオロエタンの調製
トルエン−4−スルホン酸2−フルオロエチルエステル(化合物(1))はE.U.T. van Velzen他,Synthesis(1995)989−997に記載の通り調製した。化合物(1)(128mg、0.586mmol)及びアジ化ナトリウム(114mg、1.758mmol)を無水DMF(10ml)と混合し、室温で48時間撹拌した。反応混合物を濾過したが、生成物(2)は反応溶液から単離しなかった。
【0057】
実施例2
化合物(3):1−(2−フルオロエチル)−4−フェニル−1H−[1,2,3]トリアゾールの調製
DMF(1mL)中のフェニルアセチレン(105μL、0.977mmol)を窒素下で硫酸銅(II)五水和物(12mg、0.0489mmol)とL−アスコルビン酸(16mg、0.0977mmol)の水(0.3mL)中の撹拌溶液に添加した。DMF(5mL)中の化合物(2)(1.172mmol)を添加した後、室温で21時間攪拌を続けた。反応混合物を水(5mL)で希釈し、粗生成物をジクロロメタン(3×5mL)で抽出し、重炭酸ナトリウム溶液(10%、3×10mL)及び塩水(1×5mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を減圧除去し、粗標品をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。
収量:32mg(17%)、白色結晶、m.p.83〜85℃。
1H−NMR(CDCl3):δ=4.70(m,1H,CH2)、4.76(m,1H,CH2)、4.80(m,1H,CH2)、4.89(m,1H,CH2)、7.35(tt,1.0Hz,7.5Hz,1H,HAr)、7.44(m,2H,HAr)、7.84(m,2H,HAr)、7.89(d,1Hz,1H,CH−トリアゾール)ppm。
GC−MS:m/z=191。
TOF−ESI−MS:実測値 m/z=192.0935[MH]+、C10103Fの計算値[MH]+ m/z=192.0932。
【0058】
実施例3
化合物(4):4−[1−(2−フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]−フェニルアミンの調製
DMF(0.7mL)中の4−エチニルアニリン(40mg、0.344mmol)を窒素下で硫酸銅(II)五水和物(129mg、0.516mmol)とL−アスコルビン酸(182mg、1.032mmol)の水(1.2mL)中の撹拌溶液に添加した。DMF(2.45mL)中の化合物(2)(0.287mmol)を添加した後、室温で4時間攪拌を続けた。反応混合物を水酸化ナトリウム溶液(1M、5mL)で奪活した。生成物を酢酸エチル(3×5mL)で抽出し、水(5mL)及び塩水(2mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を減圧除去し、粗標品をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/酢酸エチル)を用いて精製した。収量:15mg(25%)、ベージュ結晶、m.p.79〜82℃。
1H−NMR(CDCl3):δ=4.70(m,1H,CH2)、4.72(m,1H,CH2)、4.77(m,1H,CH2)、4.88(m,1H,CH2)、6.74(m,2H,HAr)、7.63(m,2H,HAr)、7.74(d,0.1Hz,1H,CH−トリアゾール)ppm。
TOF−ESI−MS:実測値 m/z=207.1030[MH]+、C10114Fの計算値[MH]+ m/z=207.1040。
【0059】
実施例4
化合物(5):1−(2−フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸ベンジルアミドの調製
G.M.Coppola & R.E.Damon, Synthetic Communications 23(1993)2003−2010に記載の方法で調製したプロピン酸ベンジルアミド(50mg、0.314mmol)をDMF(1mL)中に溶解し、窒素下で硫酸銅(II)五水和物(3.9mg、0.0157mmol)とL−アスコルビン酸(11mg、0.0628mmol)の水(0.4mL)中の撹拌溶液に添加した。DMF(3.2mL)中の化合物(2)(0.377mmol)を添加した後、室温で48時間攪拌を続けた。反応混合物を重炭酸ナトリウム(10%、5mL)で希釈し、粗生成物をジクロロメタン(3×5mL)で抽出し、塩水(5mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を減圧除去し、粗標品を酢酸エチル/ジエチルエーテルからの再結晶によって精製した。
収量:8mg(10%)、白色結晶、m.p.165〜167℃。
1H−NMR(CDCl3):δ=4.70(m,6H,CH2)、7.34(m,5H,HAr)、7.46(m,1H,NH)、8.20(s,1H,CH−トリアゾール)ppm。
TOF−ESI−MS:実測値 m/z=249.1143[MH]+、C12134OFの計算値[MH]+ m/z=249.1146。
【0060】
実施例5
化合物(6):N−ベンジル−3−[1−(2−フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]プロピオンアミドの調製
ペント−4−イン酸ベンジルアミド:この化合物は、N−スクシニミジル中間体の単離以外は、G.M.Coppola及びR.E.Damonに記載の方法(実施例4参照)と同様の方法を用いて合成した。
収量:100mg(53%)、白色針状晶、m.p.50〜55℃。
1H−NMR(CDCl3):δ=1.98(m,1H,アルキン−CH)、2.44(m,2H,CH2)、2.56(m,2H,CH2)、4.46(d,2H,CH2N)、7.29〜7.25(m,5H,HAr)ppm。
FT−IR(フィルム):1651、1629cm-1
TOF−ESI−MS:実測値 m/z=188.1073[MH]+、C1213NOの計算値[MH]+ m/z=188.1070。
【0061】
N−ベンジル−3−[1−(2−フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]プロピオンアミド:メタノール(0.5mL)中のペント−4−イン酸ベンジルアミド(50mg、0.267mmol)、DMF(2.62mL)中の化合物(2)(0.320mmol)、及びジイソプロピルアミン(0.233mL、1.335mmol)を窒素下でヨウ化銅(I)(255mg、1.335mmol)のメタノール(0.8mL)中の撹拌溶液に添加した。室温で2時間攪拌を続けた。反応混合物をリン酸水素ナトリウム(1g)の水(10mL)溶液で奪活し、セライトで濾過した。粗生成物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出し、塩水(20mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を減圧除去し、粗標品をシリカ及び酢酸エチル/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーで精製した。
収量:19mg(26%)、白色結晶、m.p.127〜133℃。
1H−NMR(CDCl3):δ=2.66(t,7.0Hz,2H,CH2)、3.09(t,7.0Hz,2H,CH2)、4.40(d,5.7Hz,2H,ベンジル−CH2)、4.56(m,2H,CH2)、4.61(m,2H,CH2)、4.70(m,2H,CH2)、4.80(m,2H,CH2)、6.0(s,1H,NH)、7.0〜7.3(m,5H,HAr)、7.44(s,1H,CH−トリアゾール)ppm。
TOF−ESI−MS:実測値 m/z=277.1474[MH]+、C12134OFの計算値[MH]+ m/z=277.1459。
【0062】
実施例6
化合物(7):4−[1−(2−フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]安息香酸の調製
DMF(1.5mL)中の4−エチニル安息香酸ナトリウム(50mg、0.297mmol)を窒素下で硫酸銅(II)五水和物(3.7mg、0.0149mmol)とL−アスコルビン酸(10.5mg、0.0595mmol)の水(0.2mL)中の撹拌溶液に添加した。DMF(0.76mL)中の化合物(2)(0.356mmol)を添加した後、室温で12時間攪拌を続けた。反応混合物をHCl(20mL、1M)で希釈した。粗生成物を酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、塩水(10mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を減圧除去し、粗標品を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶した。
収量:37mg(52%)、白色結晶、m.p.236〜240℃。
1H−NMR(DMSO−d6):δ=4.74(m,1H,CH2)、4.80(m,2H,CH2)、4.90(m,1H,CH2)、8.70(s,1Hz,1H,CH−トリアゾール)ppm。
TOF−ESI−MS:実測値 m/z=236.0838[MH]+、C111032Fの計算値[MH]+ m/z=236.0830。
【0063】
実施例7
化合物(8):1−(2−フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−カルボン酸の調製
DMF(0.5mL)中のプロピオル酸(60μL、0.977mmol)を窒素下で硫酸銅(II)五水和物(12mg、0.0489mmol)とL−アスコルビン酸(34mg、0.135mmol)の水(0.4mL)中の撹拌溶液に添加した。DMF(2.5mL)中の化合物(2)(1.172mmol)を添加した後、室温で4時間攪拌を続けた。反応混合物をHCl(20mL、1M)で奪活し、粗生成物を酢酸エチル(3×20mL)で抽出した。塩水(5mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した後、溶媒を減圧除去し、生成物を酢酸エチル/ヘキサンからの再結晶によって精製した。
収量:16mg(10%)、白色結晶、m.p.160〜165℃。
1H−NMR(DMSO−d6):δ=4.74(m,1H,CH2)、4.80(m,2H,CH2)、4.90(m,1H,CH2)、8.71(s,1H,CH−トリアゾール)ppm。
TOF−ESI−MS:実測値 m/z=160.0518[MH]+、C5632Fの計算値[MH]+ m/z=160.0517。
【0064】
実施例8
化合物(9):2−アセチルアミノ−3−[1−(2−フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール−4−イル]プロピオン酸エチルエステルの調製
メタノール(1mL)中の2−アセチルアミノペント−4−イン酸エチルエステル(200mg、1.09mmol)を窒素下で銅粉(200mg、40メッシュ)に添加した後、化合物(2)(1.09mmol)のDMF(3mL)溶液を添加した。混合物を90分間撹拌した後、80℃で3時間加熱した。化合物(9)を逆相フラッシュクロマトグラフィー(アセトニトリル/水)で単離した。
収量:145mg(49%)、油、4℃の保存で結晶、m.p.55〜60℃。
1H−NMR(CDCl3):δ=1.13(t,3H,CH2CH3)、1.82(s,3H,CH3)、2.97(dd,2J=14.9Hz,3J=8.5Hz,1H,プロピオン酸−CH2)、3.07(dd,2J=14.9Hz,3J=6.0Hz,1H,プロピオン酸−CH2)、4.05(m,2H,OCH2CH3)、4.47(m,1H,CH)、4.46(m,1H,CH2)、4.64(m,1H,CH2)、4.70(m,1H,CH2)、4.81(m,1H,CH2)、7.89(s,1H,トリアゾール−CH)、8.31(d,1H,NH)ppm。
TOF−ESI−MS:実測値 m/z=273.1372[MH]+、C111743Fの計算値[MH]+ m/z=273.1357。
【0065】
放射化学
【0066】
【化24】

実施例9
化合物(11):[18F]1−アジド−2−フルオロエタンの調製
18Fフッ化物は、濃縮[18O]H2Oターゲットの19MeVプロトン照射による18O(p,n)18F核反応を用いたサイクロトロンで生成した。照射後、Kryptofix(登録商標)(5mg)、炭酸カリウム(1mg)及びアセトニトリル(1mL)の混合物を18F水(1mL)に添加した。窒素気流下(100mL/分)で80℃に加熱して、溶媒を除去した。しかる後、アセトニトリル(0.5mL)を添加し、加熱・窒素気流下で蒸発させた。この操作を2回繰り返した。室温に冷却後、化合物(10)(1.5μl:Z.P.Demko and K.B.Sharpless,Org.Lett.3(2001)4091に記載の方法で調製)の無水アセトニトリル(0.2mL)溶液を添加した。反応混合物を80℃で30分間撹拌した。化合物(11)を、40±14%(n=7)の崩壊補正放射化学収率で蒸留(効率76±8%(n=7))によって単離した。
【0067】
実施例10
化合物(12)〜(16):[18F]1−(2−フルオロエチル)−1H−[1,2,3]トリアゾール類の調製
【0068】
【化25】

アルキン試薬(0.015mmol)のDMF(0.1mL)溶液を窒素下で硫酸銅(II)(5当量)とL−アスコルビン酸(20当量)の混合物に添加した。化合物(11)のアセトニトリル(0.2mL)溶液を添加した。80℃で30分間攪拌した後、反応混合物をHPLCで分析した。
【0069】
実施例11
化合物(18):[18F](S)−6−アミノ−2−(2−{(S)−2−[2−((S)−6−アミノ−2−{[4−(2−フルオロエチル)−[1,2,3]トリアゾール−1−カルボニル]アミノ}ヘキサノイルアミノ)アセチルアミノ]−3−フェニルプロピオニルアミノ}アセチルアミノ)ヘキサン酸の調製
【0070】
【化26】

化合物(17)(1mg、1.7μmol)をリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0、0.25M、0.05mL)中に溶解した。アセトニトリル(0.05mL)中の化合物(11)(175μCi、6.5MBq)を添加し、さらに銅顆粒(400mg、10〜40メッシュ)を添加した。混合物を80℃で5分間加熱した。HPLC分析の結果、放射性標識ペプチド(18)は86%であった。
【0071】
実施例12
化合物(20)の調製
【0072】
【化27】

(i)化合物19:Cys2−6;c[CH2CO−Lys(DL−Pra−Ac)−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys]−CCX6−NH2の調製
Ac−DL−Pra−OH(31mg)、(7−アザベンゾトリアゾール−1−イロキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)(104mg)及びN−メチルモルホリン(NMM)(88μL)をジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、混合物を5分撹拌した後、国際公開第2005/003166号に記載の通り調製してDMF(4mL)に溶解したClCH2CO−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys(tBu)−Phe−Cys−PEG−NH2(126mg)を添加した。反応混合物を45分間撹拌した。追加のClCH2CO−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys(tBu)−Phe−Cys−PEG−NH2(132mg)及びNMM(44μL)を添加し、45分間攪拌を続けた。次いでDMFを真空下で蒸発させ、残渣(5mL)を10%アセトニトリル(ACN)/水(100mL)で希釈し、分取HPLCで生成物を精製した。
【0073】
精製及び特性決定
分取HPLC(勾配:A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFAの場合に10〜40%Bを60分、流速:50mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×50mm、検出:UV 214nm、生成物保持時間:31.3分)による希釈残渣の精製で、純粋AH−112145を170mg得た。
【0074】
純粋生成物を分析HPLCで分析した(勾配:A=H2O/0.1%TFA及びB=ACN/0.1%TFAの場合に10〜40%Bを10分、流速:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出:UV 214nm、生成物保持時間:6.32分)。生成物をさらにエレクトロスプレー質量分析法で特性決定した(MH+計算値:1395.5、MH+実測値:1395.7)。
【0075】
(ii)化合物20の調製
化合物(19)(0.5mg、0.35μmol)をリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0、50mM)中に溶解し、化合物(11)(25μl、728μCi/25MBq)の溶液及び銅粉(200mg、40メッシュ)と混合した。70℃、15分間加熱後、混合物を放射性HPLCで分析する。
【0076】
コンジュゲート生成物(20)は、半分取HPLC(カラム:Luna C18(2)、100×10mm、流速:2.0ml/分、溶媒A:水(0.085%リン酸v/v)、溶媒B:水(30%エタノールv/v)、勾配:15分で50%Bから100%Bまで)を用いて単離した。標識ペプチド(20)は、10%の崩壊補正放射化学収率及び>99%の放射化学純度で得られた。放射活性生成物ピーク(k’=2.03)の同一性は、化合物(20)の標準試料との同時注入によって確認した。
【0077】
実施例13
化合物(20)を調製するための反応パラメーターの最適化
一般的手順:緩衝液(50μl、緩衝液A:リン酸ナトリウム、pH6.0、50mM;緩衝液B:炭酸ナトリウム、pH9.3、50mM)中の化合物(19)(0.5mg、0.35μmol)の溶液に、アセトニトリル(100μl)中の化合物(11)(0.1mCi、3.7MBq)を添加した後、銅触媒(触媒1:銅顆粒10〜40メッシュ、触媒2:銅粉約40メッシュ、触媒3:銅粉、樹枝状、3μm)を添加する。混合物を80℃、15分間インキュベートした後、HPLCで分析した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

本明細書及び特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲は本明細書に開示した特定の実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は本発明の幾つかの態様の例示にすぎないからである。均等な実施形態も本発明の技術的範囲に属する。実際、本明細書の以上の記載から当業者には本明細書に例示し記載した変更例以外の変更例も明らかであろう。かかる変更例も特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(II)又は(IV)の化合物。
【化1】

式中、L2及びL4は各々独立に、1〜30個のヘテロ原子を含んでいてもよいC160ヒドロカルビル基、アルキル、アルケニル、アルキニル、芳香環、多核芳香環又はヘテロ芳香環、或いは1以上のエーテル、チオエーテル、スルホンアミド又はアミド官能基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、芳香環、多核芳香環又はヘテロ芳香環、或いはエチレングリコールのモノマーもしくはポリマー、アミノ酸又は炭水化物であり、R*は放射性核種及びキレート剤に導入された放射性核種からなる群から選択されるリポーター部分であって、上記キレート剤は次の式Xのものであり、ベクターは、ペプチド、タンパク質、ホルモン、細胞、細菌又はウィルスである。
【化2】

式中、R1A、R2A、R3A及びR4Aは各々独立にRA基であって、
A基は各々独立にH又はC110アルキル、C310アルキルアリール、C210アルコキシアルキル、C110ヒドロキシアルキル、C110アルキルアミン、C110フルオロアルキルであるか、或いは2以上のRA基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【請求項2】
式(V)又は(VI)の化合物。
【化3】

式中、L1、L2、L3及びL4は各々独立に、1〜30個のヘテロ原子を含んでいてもよいC160ヒドロカルビル基、アルキル、アルケニル、アルキニル、芳香環、多核芳香環又はヘテロ芳香環、或いは1以上のエーテル、チオエーテル、スルホンアミド又はアミド官能基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、芳香環、多核芳香環又はヘテロ芳香環、或いはエチレングリコールのモノマーもしくはポリマー、アミノ酸又は炭水化物であり、R*は放射性核種及びキレート剤に導入された放射性核種からなる群から選択されるリポーター部分であって、上記キレート剤は次の式Xのものである。
【化4】

式中、R1A、R2A、R3A及びR4Aは各々独立にRA基であって、
A基は各々独立にH又はC110アルキル、C310アルキルアリール、C210アルコキシアルキル、C110ヒドロキシアルキル、C110アルキルアミン、C110フルオロアルキルであるか、或いは2以上のRA基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【請求項3】
前記ベクターがArg−Gly−Aspペプチドである、請求項2記載の式(V)又は(VI)の化合物。
【請求項4】
前記ベクターが次式のフラグメントを含むペプチドである、請求項2又は請求項3記載の式(V)又は(VI)の化合物。
【化5】

【請求項5】
前記ベクターが次の式(A)のペプチドである、請求項2記載の式(V)又は(VI)の化合物。
【化6】

式中、X7は−NH2又は次式の基である。
【化7】

式中、aは1〜10の整数である、
【請求項6】
aが1である、請求項5記載の式(V)又は(VI)の化合物。
【請求項7】
式(I)又は(III)の化合物。
【化8】

式中、L1及びL3は各々独立に、1〜30個のヘテロ原子を含んでいてもよいC160ヒドロカルビル基、アルキル、アルケニル、アルキニル、芳香環、多核芳香環又はヘテロ芳香環、或いは1以上のエーテル、チオエーテル、スルホンアミド又はアミド官能基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、芳香環、多核芳香環又はヘテロ芳香環、或いはエチレングリコールのモノマーもしくはポリマー、アミノ酸又は炭水化物であり、ベクターは、ペプチド、タンパク質、ホルモン、細胞、細菌又はウィルスである。
【請求項8】
請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の化合物の有効量を、1種以上の薬学的に許容される補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含む放射性医薬組成物。
【請求項9】
請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の化合物をヒト又は動物の身体に投与して化合物が分配された身体の少なくとも一部分の画像をPETを用いて生成することを含む方法。
【請求項10】
請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の化合物をヒト又は動物の身体に投与し、細胞受容体による上記化合物の取り込みを検出することを含む方法であって、上記投与と検出が、癌に関連した病態に対処するための薬剤による治療の前、後及び/又は途中に実施される、方法。

【公開番号】特開2012−254998(P2012−254998A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−167865(P2012−167865)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2007−547612(P2007−547612)の分割
【原出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(504000591)ハマースミス・イメイネット・リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】Hammersmith Imanet Ltd
【Fターム(参考)】