説明

放射性物質を含む廃棄物の保管ボックス

【課題】 放射性物質を含む廃棄物を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができるボックスを提供する。
【解決手段】 保管ボックスは、四角板状の底版部2と該底版部2の外縁部から起立した四角筒状の周壁部3とからなり上面が開口したプレキャストコンクリート製のボックス状ブロック1と、ボックス状ブロック1の内面に沿って敷設された遮水シート4と、ボックス状ブロック1の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の四角板状の蓋パネル5とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を含む廃棄物の保管設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びそれに伴う津波により、福島第1原子力発電所の原子力発電設備が損傷し、その後に起きた同設備の水素爆発等により、放射性物質が建家外に放出されて各地に飛散した。以来、雨水の流れ込む各地の下水処理施設の汚泥から、相次いで放射性物質が検出されている。
【0003】
一般に、下水汚泥は、焼却灰を廃棄したり、高温での焼却で生じた溶融スラグをコンクリート骨材として利用したり(特許文献1)、乾燥させた有機物をコンポストや燃料として利用したり(特許文献2,3)して処理されている。しかし、放射性物質を含む下水汚泥は、健康被害の問題があるため、上記のような一般的な処理は困難である。そのため、現状では、放射性物質を含む下水汚泥の処理方法が明確になっておらず、シート養生等の簡易な養生方法のみで一時的に保管されている。しかし、シート養生等では放射線の遮蔽効果をほとんど見込めず、保管時のみならず運搬作業時にも注意が必要である。
【0004】
平成23年6月16日に原子力災害対策本部が公表した「上下水処理等副次産物(註)の当面の取り扱いに関する考え方」(註:脱水汚泥及び脱水汚泥を焼却、溶融等したものや、それを再利用して生産するもの)では、次のような考え方が示されたが、まだ、引き続き検討しなければならない事項が多い。
・放射性セシウム濃度が10万Bq/kgを超える汚泥等は、県内の適切に放射線を遮蔽できる施設に保管する。具体的な処分の在り方について、引き続き検討する。
・放射性セシウム濃度が8千Bq/kg超〜10万Bq/kg以下の汚泥等は、住宅地等と適切な距離を保った上で、管理型処分場に仮置きができる。個別の安全性評価及び長期的な管理の方法の検討の後、埋立処分できる。
・放射性セシウム濃度が8千Bq/kg以下の汚泥等は、住宅地等と適切な距離を保った上で、管理型処分場に仮置きができる。跡地を居住等に利用しない前提で、埋立処分できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−279084号公報
【特許文献2】特開平5−155678号公報
【特許文献3】特開平9−248600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射線を遮蔽できるように下水汚泥等の廃棄物を保管する方法としては、土中への埋設が考えられる。しかし、この方法では、埋設深さの管理が難しいとか、長期の保管に不安があるとかという問題がある。また、下水汚泥等の廃棄物の最終処理方法や搬出先が決まった段階で移設させる際に、掘り起こしが必要なため、手間がかかるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、放射性物質を含む下水汚泥、土、雑草、農作物、漁獲物等の廃棄物を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができ、また必要に応じて長期に保管することもできるボックスを提供することにある。また、必要な容量のボックスを短工期で構築できるようにすることにある。さらに、下水汚泥等の廃棄物の最終処理方法や搬出先が決まった段階での移設を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る放射性物質を含む廃棄物の保管ボックスは、底版部と周壁部とからなり上面が開口したプレキャストコンクリート製のボックス状ブロックと、ボックス状ブロックの内面に沿って敷設された遮水シートと、ボックス状ブロックの開口を塞ぐ蓋パネルとからなることを特徴とする。
【0009】
ボックス状ブロックの内空サイズは、特に限定されないが、保管量と現実の移動運搬設備で移動運搬するのに適したブロック重量とのバランスからすると、内空の幅、長さ及び高さの各サイズは800〜2000mmとすることが好ましい。
【0010】
蓋パネルの材質や厚さは、特に限定されず、例えば廃棄物の放射線量に応じてそれを遮蔽できるように決定することができる。例えば、放射線量が低い場合には鋼板製とし、放射線量が高い場合には、プレキャストコンクリート製、厚鋼板製、鋼板とコンクリート板との組み合わせ、鋼板と鉛板との組み合わせ等とする、等である。
【0011】
ボックス状ブロック及びプレキャストコンクリート製とする場合の蓋パネルのコンクリート厚さ(以下、単に「部材厚」)は、放射線量の減衰性能と現実の移動運搬設備で移動運搬するのに適したブロック重量とのバランスからすると、10〜50cmとすることが好ましい。10cm未満では放射線量の減衰性能が低くなり、50cmを超えると放射線量の減衰性能はそれ以上あまり高くならないのに重くなる。例えば、厚さ12cmの場合には放射線量を75%程度減衰させることができ、厚さ15cmの場合には放射線量を80%程度減衰させることができ、厚さ20cmの場合には放射線量を90%程度減衰させることができ、厚さ40cmの場合には放射線量を99%程度減衰させることができる。
【0012】
ボックス状ブロックと蓋パネルの接合にあたって互いに近接(当接を含む。部材精度の限界上、当接であっても空隙はできる。以下同じ。)した近接面の間にできる空隙は、全て、部材の面から外面まで一直線とならないように、部材の内面から外面までの途中で曲がっていることが好ましい。廃棄物の放射性物質から放射される放射線は、直進する性質があり、該空隙が内面から外面まで一直線となっていると、該空隙を通って外部に漏出するおそれがあるが、該空隙が内面から外面まで一直線とならないようになっていると、必ずコンクリート部分を通過して減衰するからである。
【0013】
遮水シートとしては、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル等の樹脂よりなるシート、ポリエチレン系エラストマー等のエラストマーよりなるシートを例示できる。また、遮水シートとして、防水性能及び吸着性能を持つ粘土鉱物(ベントナイト)をシート状に形成したものを用いることもできる。
【0014】
ボックス状ブロックの内壁に、表面に熱溶着材を備えたシート固定具を取り付け、遮水シートを、該熱溶着材に溶着固定して敷設することが好ましい。遮水シートのずれや剥離が防止されるからである。
【0015】
本発明の保管ボックスで保管する放射性物質を含む廃棄物としては、下水汚泥、土、雑草、農作物、漁獲物等を例示できる。このうち下水汚泥の状態は、特に限定されず、脱水した下水汚泥、焼却した下水汚泥の焼却灰、焼却した下水汚泥の溶融スラグのいずれでもよい。また、廃棄物は、裸の状態でもよいが、移設の容易性の点からは、袋、箱等の容器に入れられたものであることが好ましい。
【0016】
蓋パネルの一部に、開口部と、該開口部を開閉する開閉部材とを設けることができる。開口部の目的は、特に限定されないが、次の(ア)(イ)を例示できる。
(ア)必要時に開口部を開けて下水汚泥の状態を確認できるようにするモニタリング用開口部。
(イ)徐々に廃棄物を投入したい場合に開口部を開けて少量の廃棄物を投入できるようにする投入用開口部。この廃棄物としては、例えば一定のコミュニティ単位(地域単位、町内単位等)で回収されるような、袋、箱等の容器に入れられた例えば重量30kg以下の少量の廃棄物が適する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射性物質を含む廃棄物を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができ、また必要に応じて長期に保管することもできる。また、必要な容量の施設を短工期で構築することができる。さらに、下水汚泥等の廃棄物の最終処理方法や搬出先が決まった段階での移設を容易に行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例における各種寸法のボックス状ブロックを示す斜視図である。
【図2】同実施例においてボックス状ブロックに遮水シートを敷設するステップを示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図3】同実施例において、(a)はボックス状ブロックの内部に下水汚泥を入れる途中を示す斜視図、(b)は蓋パネルをして搬送する時の斜視図である。
【図4】同実施例において、ボックス状ブロックに蓋パネルをして搬送する時の斜視図である。
【図5】同実施例において下水汚泥を入れた下水汚泥保管ボックスを示す、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図6】(a)は同実施例の接合部の断面図、(b)は同実施例において下水汚泥を入れた下水汚泥保管ボックスを保管場所に並べた時の斜視図である。
【図7】変更例の下水汚泥保管ボックスを示す、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図8】実施例10の保管ボックスを示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図9】実施例11の保管ボックスを示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図10】実施例12の保管ボックスを示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図11】実施例13の保管ボックスを示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図12】実施例14の保管ボックスを示し、(a)は一部破断した斜視図、(b)は断面図である。
【図13】(a)は実施例10〜14の保管ボックスから取り出したバッグ入の廃棄物を運搬する時の側面図、(b)は同廃棄物を保管場所に保管した時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
放射性物質を含む廃棄物の保管ボックスは、底版部と周壁部とからなり上面が開口したプレキャストコンクリート製のボックス状ブロックと、ボックス状ブロックの内面に沿って敷設された遮水シートと、ボックス状ブロックの開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の蓋パネルとからなる。
【実施例】
【0020】
本発明を具体化した下水汚泥保管ボックスの実施例を、図1〜図6を参照して説明する。
【0021】
実施例の下水汚泥保管ボックスは、四角板状の底版部2と該底版部2の外縁部から起立した四角筒状の周壁部3とからなり上面が開口したプレキャストコンクリート製のボックス状ブロック1と、ボックス状ブロック1の内面に沿って敷設された遮水シート4と、ボックス状ブロック1の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の四角板状の蓋パネル5とからなる。
【0022】
底版部2、周壁部3及び蓋パネル5には、補強鉄筋(図示略)が埋設されている。蓋パネル5は、周壁部3の上端に接合具6で接合される。
【0023】
次の表1に、実施例1〜9の下水汚泥保管ボックスの寸法(内空サイズ、外形サイズ)、製品質量、内部容量及び放射線減衰率を示す。一つの実施例における底版部2、周壁部3及び蓋パネル5の厚さは同一であり、単に「部材厚」と表している。また、図1に、実施例1〜9の下水汚泥保管ボックスのボックス状ブロックを示す。
【0024】
【表1】

【0025】
図5、図6(a)に示すように、ボックス状ブロック1と蓋パネル5の接合にあたって互いに近接した近接面Fの間にできる空隙Gは、全て、部材の内面から外面まで一直線とならないように、部材の内面から外面までの途中で、例えば凹凸の嵌め合いにより曲がっている。これにより、前記のとおり、放射線Rが空隙Gにかかっても必ずコンクリート部分Cを通過して減衰するようなっている。
【0026】
本実施例の遮水シート4は、図2、図3等に示すように、シート固定具10を用いて張られている。すなわち、ボックス状ブロック1の内面の要所に埋設された、例えば雌ネジよりなるアンカー13には、金属円盤11とその表面に付着された熱溶着材12とを備えたシート固定具10が、例えばボルト14により固定されている。シート固定具10としては、例えばアーキヤマデ社製の商品名「IHディスク」を用いることができる。そして、遮水シート4は、熱溶着材12に溶着固定されている。
【0027】
本実施例の下水汚泥保管ボックスは、例えば次のようにして使用される。
【0028】
(1)図2に示すように、遮水シート4を、遮水シート4を介して高周波電磁誘導加熱器15を所定時間押し当てて行う電磁誘導加熱により溶融させたシート固定具10の熱溶着材12に溶着固定して、ボックス状ブロック1の内面に沿って敷設する。遮水シート4同士は重ね合わせ部分を溶着して水密に敷設する。なお、このステップは、ボックス状ブロック1のプレキャスト後に工場で行ってよいし、現場で行ってもよい。
【0029】
(2)図3に示すように、ボックス状ブロック1をトラック等の移動運搬設備20に載せて、放射性物質を含む下水汚泥のある現場に行き、ボックス状ブロック1の内部に下水汚泥25を入れる。同図の(a)はクレーン車等の投入設備21を用いて下水汚泥25を入れる例を示し、(b)は下水処理場のホッパ22から下水汚泥25を入れる例を示している。
【0030】
(3)図4、図5及び図6(a)に示すように、ボックス状ブロック1の上端の開口を蓋パネル5で塞ぐ。蓋パネル5は周壁部3の上端にボルト等の接合具6で接合する。
【0031】
(4)図6(b)に示すように、ボックス状ブロック1を前記トラック等の移動運搬設備20で保管場所へ運び、保管場所に降ろして並べる。
【0032】
以上説明した本実施例によれば、次の作用効果が得られる。
(a)ボックス状ブロック1及び蓋パネル5を用いるため、コンクリートの現場打ちをしなくてもよく、設備や手間がかからず、短工期での施工が可能であり、コストが低い。
(b)下水汚泥保管ボックスは量産が容易であるため、保管量を十分に確保することができる。
(c)ボックス状ブロック1及び蓋パネル5により、前述のとおり厚さに応じた減衰性能で放射線量を減衰させることができるため、放射性物質を含む下水汚泥を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができる。前述のとおり接合にあたって近接する箇所においても、空隙が曲がっているため、放射線を確実に遮蔽することができる。また、ボックス状ブロック1及び蓋パネル5は堅牢であるため、必要に応じて放射性物質を含む下水汚泥を長期に保管することもできる。
(d)遮水シート4により、外部環境と水密に隔てることができ、汚水の漏出を防止できる。
(e)ボックス状ブロック1が遮水シート4を保護するため、地震等があっても遮水シート4に亀裂が入りにくく、遮水性が維持される。
(f)遮水シート4が、シート固定具10の熱溶着材12に溶着固定されるので、地震等があっても遮水シート4のずれや剥離が起こらず、信頼性が高い。
(g)下水汚泥の最終処理方法や搬出先が決まった段階での、移設を容易に行うこともできる。
【0033】
また、図7に示す変更例のように、蓋パネル5の一部に、モニタリング用開口部8と、該モニタリング用開口部8に嵌脱してモニタリング用開口部8を開閉するプレキャストコンクリート製の開閉栓9とを設け、必要時にモニタリング用開口部8を開けて下水汚泥25の状態を確認できるようにすることができる。
【0034】
また、図8〜図11に示す実施例10〜13のように、蓋パネル5の一部に、投入用開口部31と、該投入用開口部31を開閉する開閉蓋とを設け、徐々に廃棄物を投入したい場合に投入用開口部31を開けて少量の廃棄物を投入できるようにすることもできる。
【0035】
投入用開口部31の一辺の長さは、ボックス状ブロック1の開口の一辺の長さ以下であれば特に限定されないが、30〜100cmが好ましい。30cm未満では投入しにくくなり、100cmを超えると必要以上に大きくなるからである。
【0036】
開閉蓋の材質や厚さは、特に限定されず、例えば廃棄物の放射線量に応じてそれを遮蔽できるように決定することができる。例えば、放射線量が低い場合には鋼板製とし、放射線量が高い場合には厚鋼板製、鋼板とコンクリート板との組み合わせ、鋼板と鉛板との組み合わせ等とする、等である。
【0037】
図8に示す実施例10では、蓋パネル5の略中央に設けられた四角形の投入用開口部31の縁に、防錆メッキ鋼材を四角枠状に接合してなるフレーム32が取り付けられ、フレーム32の対向する二辺に二枚の防錆メッキ鋼板製の開閉蓋33が蝶番34により蝶着され、開閉蓋33を観音開きすることにより投入用開口部31が開閉可能となっている。開閉蓋33は投入用開口部31を閉じた状態で施錠できるようになっている。開閉蓋33には取っ手33cが設けられている。フレーム32と蓋パネル5との間、及びフレーム32と開閉蓋33との間には、防水パッキン35が介装されている。蓋パネル5は、ボックス状ブロック1との互いに近接した近接面の間にできる空隙Gが全て部材の内面から外面まで一直線とならないように、蓋パネル5の外縁に沿って下方へ突設された蓋突起部5aがボックス状ブロック1の開口に沿って上方へ突設された壁突起部3aに嵌め合うようにして、ボックス状ブロック1に接合されている。この接合により、放射線が空隙Gにかかっても必ずコンクリート部を通過して減衰するようになっている。また、壁突起部3aが周壁部3の上端の他部よりも上方へ突出していることから、保管ボックスの外部から空隙Gに入った水は壁突起部3aを越えられず壁突起部3aの手前で止められる。そのため、雨水等の水が空隙Gからボックス状ブロック1の内空に入り難くなっている。また、蓋パネル5と壁突起部3aとの間にはパッキン16が介装されている。実施例11〜13の蓋パネル5についても、実施例10の蓋パネル5と同じようにボックス状ブロック1に接合され、蓋パネル5と壁突起部3aとの間にパッキン16が介装されている。
【0038】
図9に示す実施例11では、蓋パネル5の二箇所に設けられた四角形の投入用開口部31の縁に、防錆メッキ鋼材を四角枠状に接合してなるフレーム36が取り付けられ、各フレーム36の一辺にそれぞれ防錆メッキ鋼板製の開閉蓋37が蝶番38により蝶着され、各開閉蓋37を独立して開閉することにより各投入用開口部31が開閉可能となっている。開閉蓋37は投入用開口部31を閉じた状態で施錠できるようになっている。開閉蓋37には取っ手37cが設けられている。防水パッキン35については実施例10と同様である。
【0039】
図10に示す実施例12では、蓋パネル5の略中央に四角形の投入用開口部31が設けられ、投入用開口部31より一回り大きい防錆メッキ鋼板製の開閉蓋40の下方への突出部40aが投入用開口部31に取り外し可能に嵌合することにより投入用開口部31が開閉可能となっている。開閉蓋40は投入用開口部31を閉じた状態で蓋パネル5に固定できるよう、開閉蓋40は投入用開口部31を閉じた時に蓋パネル5に載上される四隅をボルト40dで蓋パネル5に螺着できるようになっている。開閉蓋40には取っ手40cが設けられている。開閉蓋40と蓋パネル5との間には、防水パッキン35が介装されている。
【0040】
図11に示す実施例13では、蓋パネル5の略中央に設けられた四角形の投入用開口部31の縁の直ぐ下に内側へ張り出す段部41が形成されている。独立した複数枚の角柱状(例えば90mm×99mm角)のコンクリート製の分割蓋42aが、投入用開口部31に取り外し可能に落とし込まれて両端部が段部41に載せられるとともに、隣合う分割蓋42a同士が当接され、さらに分割蓋42aの上に、投入用開口部31より一回り大きい防錆メッキ鋼板製の覆板42bが載置され、これら分割蓋42a及び覆板42bからなる開閉蓋42により投入用開口部31が開閉可能となっている。全部の分割蓋42aを取り外して、投入用開口部31の全部を開くこともできるし、適宜の枚数の分割蓋42aを取り外して、投入する廃棄物の大きさに応じた投入用開口部31の一部を開くこともできる。開閉蓋42は投入用開口部31を閉じた状態で蓋パネル5に固定できるよう、開閉蓋42は投入用開口部31を閉じた時に蓋パネル5に載上される覆板42bの四隅をボルト42dで蓋パネル5に螺着できるようになっている。覆板42bには取っ手42cが設けられている。段部41と分割蓋42aとの間、及び分割蓋42aと覆板42bとの間には、防水パッキン43が介装されている。
【0041】
また、図12に示す実施例14のように、蓋パネルをプレキャストコンクリート製のものから鋼板製のものに変更することで、蓋パネルを軽量にすることができ、且つ投入用開口部及び開閉蓋を蓋パネルに設けても構造を簡単にすることができて部品点数を削減することができる。
【0042】
この実施例14では、四角形の防錆メッキ鋼板からなる蓋パネル60の二箇所に設けられた四角形の投入用開口部61の縁に、防錆メッキ鋼材を四角枠状に接合してなる突出部63が上方へ突設され、各突出部63の一辺にそれぞれ防錆メッキ鋼板製の開閉蓋62が蝶番64により蝶着され、各開閉蓋62を独立して開閉することにより各投入用開口部61が開閉可能となっている。開閉蓋62は投入用開口部61を閉じた状態で施錠できるようになっている。開閉蓋62には取っ手62cが設けられている。突出部63と開閉蓋62との間には、防水パッキン65が介装されている。蓋パネル60は、壁突起部3aに当接して、周壁部3の上端にボルト等の接合具6で接合されている。また、蓋パネル60と壁突起部3aとの間にはパッキン16が介装されている。
【0043】
実施例10〜14の保管ボックスは、例えば次のようにして使用される。
【0044】
(1)一定のコミュニティ単位(地域単位、町内単位等)にボックス状ブロック1を設置する。図8〜図12に示すように、遮水シート4が内面に沿って敷設されたボックス状ブロック1の内部に角型フレキシブルコンテナバッグ45を入れ、ボックス状ブロック1に蓋パネル5,60を接合する。
(2)コミュニティ内又は個人単位で、放射性物質を含む土、雑草、農作物、漁獲物等の廃棄物(持ち運びが楽なように、重量30kg以下が好ましい。)を土嚢等の袋46に入れて回収し、開閉蓋33,37,40,42,62で投入用開口部31,61を開けて、投入用開口部31,61から袋46をボックス状ブロック内に投入する。投入後は、開閉蓋33,37,40,42,62で投入用開口部31,61を閉じる。
【0045】
(3)ボックス状ブロック1内が廃棄物入りの袋46で一杯になった時点で、蓋パネル5,60をボックス状ブロック1から取り外してから、図13(a)に示すように、トラック等の移動運搬設備20に備え付けのクレーン23等により、袋46入りの角型フレキシブルコンテナバッグ45をボックス状ブロック1から取出し、移動運搬設備20の荷台に積んで保管場所へ運ぶ。
【0046】
(4)保管場所では、図13の(b)に示すように、例えばコンクリート製の囲壁からなる保管施設50に、袋46入りの角型フレキシブルコンテナバッグ45を集積保管する。
【0047】
上記の使用例は、廃棄物が、コミュニティ内又は個人単位で取り扱うことができるような、放射線量が比較的低い廃棄物である場合に、特に適している。
【0048】
また、実施例10〜14の保管ボックスは、廃棄物の放射線量が高い場合でも、放射線に対する注意又は防護をした者が取り扱うのであれば、十分に使用することができる。その場合には、前述のとおり、その放射線量を遮蔽できるように開閉蓋の材質や厚さを決定したり、実施例1等のように廃棄物を保管ボックスごと保管場所へ運んだりすることが好ましく、従って、角型フレキシブルコンテナバッグを省略することもできる。
【0049】
実施例10〜14によれば、実施例1〜9で得られる作用効果に加え、次の作用効果が得られる。
(h)ボックス状ブロック1に蓋パネル5,60が接合された状態で、開閉蓋で開けた投入用開口部31,61からボックス状ブロック1の内空に廃棄物を投入することができるので、随時発生する少量の廃棄物を作業効率よく回収保管することができる。
【0050】
なお、本発明は前記実施例の構成に限定されず、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)遮水シートを、ボックス状ブロック1に入れた下水汚泥25の上方も覆うように敷設すること。
【符号の説明】
【0051】
1 ボックス状ブロック
2 底版部
3 周壁部
4 遮水シート
5 蓋パネル
6 接合具
8 モニタリング用開口部
9 開閉栓
10 シート固定具
20 トラック
21 クレーン車
22 ホッパ
25 下水汚泥
31 投入用開口部
33 開閉蓋
37 開閉蓋
40 開閉蓋
42 開閉蓋
60 蓋パネル
61 投入用開口部
62 開閉蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底版部と周壁部とからなり上面が開口したプレキャストコンクリート製のボックス状ブロックと、ボックス状ブロックの内面に沿って敷設された遮水シートと、ボックス状ブロックの開口を塞ぐ蓋パネルとからなることを特徴とする放射性物質を含む廃棄物の保管ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−68601(P2013−68601A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96972(P2012−96972)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【出願人】(000186898)昭和コンクリート工業株式会社 (13)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)