説明

放射性物質汚染土壌の除去方法及び放射性物質汚染土壌の除去管理システム

【課題】広い範囲に分布した放射性物質で汚染した土壌を効率よく除去する。
【解決手段】 放射線量測定器11と、前記放射線量測定器による測定位置を検出するGPS受信器12とを車両1に搭載し、放射性物資で汚染された領域に走行させる。走行しながら領域内の複数の位置で、放射線量と放射線量の測定位置を検出する。地表面付近の土壌を除去する掘削機械2の操作者が視認することができる位置に表示装置24を設け、該表示装置に周辺の地図を表示するとともに、該地図上に測定された複数の位置における放射線量を表示する。掘削機械の操作者は表示装置に表示された放射線量を見ながら土壌の除去を行い、土壌の除去作業中にも放射線量測定器によって放射線量を測定する。そして、放射線量が先に測定されて表示されている位置とほぼ同じ位置で再度放射線量を測定したときには、当該位置における放射線量のデータを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質で汚染された地域の土壌を掘削して除去する方法及び放射性物質で汚染された土壌の除去作業を効率よく行い、さらに除去量を低減するための管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故により、放射性物質が大量に環境中に放出され、周辺地域の土壌を汚染している。放射性物質は飛散後、降雨等によって地表面上に降下し、地表面付近に滞留している。このような放射性物質による汚染を浄化するために、地表面付近の土壌を掘削して除去し、掘削土を適切に処理することが考えられている。
【0003】
地表面付近の汚染した土壌を除去するためには、放射線量を測定し、土壌を除去する範囲及び深さ等を決定した後、地表面付近の土壌を掘削する。そして、土壌を除去した後はさらに放射線量を測定して強い汚染が残留していないことを確認しながら作業を進める必要がある。
【0004】
放射線量の測定は、一般に特許文献1に記載されているように放射線量の測定装置を用い、地表面付近に測定装置をかざして表示部に表示される値を読み取ることによって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−169645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、放射性物質による土壌の汚染はきわめて広域に及んでいる。そして、除去することが求められる土壌の量も膨大な量となっている。広い範囲で地表面付近の土壌を掘削して除去するときに、作業者が放射線量測定器で逐次測定を繰り返していては、効率のよい作業を実現することは難しい。また、除去する土壌はできるだけ少なくすることが求められる。さらに、除去作業を行う前の汚染状況及び土壌を除去した後の汚染状況を記録として残す必要があり、これらの記録を効率よく採取する手段が望まれている。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、広い範囲に存在する放射性物質で汚染した土壌を効率よく除去する方法、及びこの方法で用いることができる放射性汚染物質の除去管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 放射線量測定器と、前記放射線量測定器で放射線量を測定した位置を全地球測位システム(以下、GPSという)によって検出し、位置情報を信号として出力することができるGPS受信器と、を車両に搭載し、 該車両を放射性物資で汚染された領域に走行させ、該領域内の複数の位置で、前記放射線量測定器によって放射線量を測定し、 測定された放射線量と、前記GPS受信器によって得られた前記放射線量の測定位置の情報と組み合わせて、記憶装置に記憶させ、 自走し、地盤を掘削して地表面付近の土壌を除去することができる掘削機械の操作者が該掘削機械を操作する位置で視認することができる位置に表示装置を設け、該表示装置に前記車両を走行させる領域の地図を表示するとともに、該地図上に重ねて、前記放射線量測定器で測定された複数の位置における放射線量を表示し、 前記掘削機械の操作者が前記表示装置に表示された放射線量を見ながら、土壌の除去を行い、 前記土壌の除去を開始した後に、前記放射線量測定器が、先に放射線量を測定して該放射線量が前記表示装置に表示されている位置とほぼ同じ位置で再度放射線量を測定したときには、当該位置における放射線量のデータを更新するものとし、 前記放射線量測定器による測定の開始後における所定のときに、前記放射線量とその測定位置の情報とを、前記放射線量の測定にともなって更新する前記データとは別に前記記憶装置に保存する放射性物質汚染土壌の除去方法を提供する。
【0009】
この放射性物質汚染土壌の除去方法では、放射線量測定器とGPS受信器とを搭載した車両を走行させることによって、迅速に広い範囲の汚染状態を検知し、記録することができる。また、この測定値を表示装置に地図と重ねて表示することによって汚染状態の分布を容易に認識することが可能となる。そして、掘削機械の操作者は、上記表示装置に表示された汚染状態の分布を見ながら汚染された土壌の掘削及び除去作業を行うことができる。これにより、放射線量が大きい位置では地表面付近の土壌を厚く除去し、放射線量が小さい位置では薄く除去する等の操作が可能になる。また、土壌の掘削及び除去作業を開始した後も、放射線量の測定を継続することにより、汚染土壌の除去作業の進捗状態を常に把握することができる。したがって、汚染土壌が残留している位置について的確に除去作業を行うことができる。このように掘削機械の操作者が各位置における放射線量の状態を常に把握して作業を行うことにより、作業の効率を向上するとともに,除去する土壌の量を低減することが可能となる。さらに、除去作業によって放射線量が低減された状態を記録することができ、除去前の状態と対比することも容易に行うことができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の放射性物質汚染土壌の除去方法において、 前記車両は、前記掘削機械による土壌の除去を開始する前には、該掘削機械とは独立して走行するものとし、土壌の除去を開始した後は、前記車両を前記掘削機械に連結して該掘削機械に牽引させるものである。
【0011】
この方法では、土壌の掘削及び除去作業を開始する前に、車両を汚染領域に走行させて迅速に汚染状態を記録するとともに、土壌の掘削及び除去作業を開始した後は、車両を掘削機械に連結して走行させ、土壌を除去した位置の放射線量を再測定することができる。したがって、掘削機械の操作者の他に放射線量を測定するための作業者を要することなく、土壌を除去した位置の放射線量を更新しながら、効率のよい除去作業を行うことが可能となる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の放射性物質汚染土壌の除去方法において、 前記車両は、自走することができ、土壌を掘削して地表面近くの土壌を除去する機能を有するものとし、この自走車両を前記掘削機械として用いるものである。
【0013】
この方法では、掘削機械としての機能を有する車両で、汚染地域の放射線量を測定するとともに連続して汚染土壌の掘削及び除去作業を行うことができる。さらに、除去作業とともに、土壌の除去によって放線線量が低減された位置のデータを更新することができる。したがって、少ない作業者によって効率のよい除去作業を行うことが可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明は、 走行する車両に搭載された放射線量測定器と、 前記放射線量測定器で放射線量を測定した位置を全地球測位システム(以下、GPSという)によって検出し、位置情報を信号として出力することができるGPS受信器と、 前記放射線量測定器によって測定された放射線量を、前記GPS受信器によって得られた前記放射線量の測定位置の情報と組み合わせて、記憶装置に記憶させる処理を行うCPUと、 自走し、地盤を掘削して地表面付近の土壌を除去することができる掘削機械と、 前記掘削機械の操作者が該掘削機械を操作する位置で視認することができる位置に設けられる表示装置と、を有し、 前記CPUは、 前記車両を走行させる領域の地図を前記表示装置に表示するとともに、該地図上に重ねて、前記放射線量測定器で順次に測定された複数の位置における放射線量を表示させる機能と、 前記土壌の除去を開始した後に、前記放射線量測定器が、先に放射線量を測定して該放射線量が前記表示装置に表示されている位置とほぼ同じ位置で再度放射線量を測定したときには、当該位置における放射線量のデータを更新する機能と、 前記放射線量測定器による測定の開始後の任意の時に、前記放射線量とその測定位置の情報とを、前記更新するデータとは別に前記記憶装置に保存する機能と、を有するように設定されている放射性物質汚染土壌の除去管理システムを提供するものである。
【0015】
この放射性物質汚染土壌の除去管理システムでは、車両に搭載された放射線量測定器とGPS受信器によって広い範囲における多くの地点の放射線量を測定し、その測定値を、測定位置の情報と関連つけて記録することができる。そして、この測定値が地図と重ねて表示される表示装置によって、掘削機械の操作者は汚染状態の分布を容易に認識することが可能となる。したがって、掘削機械の操作者は、上記表示装置に表示された汚染状態の分布を見ながら汚染された土壌の掘削及び除去作業を行うことが可能となる。また、土壌の掘削及び除去作業を開始した後に、放射線量測定器によって放射線量の測定を継続することにより、放射線量のデータを更新して表示装置に表示される。したがって、掘削機械の操作者は、汚染土壌の除去作業の進捗状態を常に把握することができ、汚染土壌が残留している位置について的確に除去作業を行うことができる。また、除去作業によって放射線量が低減された状態を記録することができ、除去前の状態と対比することも容易となる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の放射性物質汚染土壌の除去管理システムにおいて、 前記放射線量測定器及び前記GPS受信器を、前記車両から前記掘削機械に積み替えて使用可能とするか、又は前記車両を前記掘削機械に連結して該掘削機械で牽引することが可能であるものとする。
【0017】
このシステムでは、土壌の掘削及び除去作業を行いながら、土壌を除去した位置の放射線量を再測定することができる。したがって、掘削機械の操作者の他に放射線量を測定するための作業者を要することなく、土壌を除去した位置の放射線量を更新しながら、効率のよい除去作業を行うことが可能となる
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項4に記載の放射性物質汚染土壌の除去管理システムにおいて、 前記掘削機械に第2のGPS受信器を搭載し、前記表示装置に前記地図と重ねて掘削機械の位置を表示するものとする。
【0019】
このシステムでは、表示装置に表示された地図の中に掘削機械の位置が放射線量の分布とともに表示されるので、掘削機械の操作者は、放射線量の高い位置と操作している掘削機械の相対的な位置関係を的確に把握することが可能となり、迅速な除去作業が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の放射性物質汚染土壌の除去方法及び放射性物質汚染土壌の除去管理システムでは、広い範囲に及ぶ放射性物質で汚染された土壌を、迅速に効率よく除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態である放射性物質汚染土壌の除去管理システムを示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態である放射性物質汚染土壌の除去方法を示すフロー図である。
【図3】本発明の一実施形態である放射性物質汚染土壌の除去方法を示すフロー図である。
【図4】汚染土壌の掘削及び除去作業と放射線量の測定とを行うときの、掘削機械及び放射線量測定器を搭載した車両の一例、及び放射線量測定器を搭載した掘削機械の一例を示す概略図である。
【図5】放射線量測定器を搭載した車両であって、掘削機能を有するものの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である放射性物質汚染土壌の除去管理システムを示す概略構成図である。
このシステムは、地表面付近の放射線量を測定する放射線量測定器11と、上記放射線量測定器11による放射線量の測定位置を検出するためにGPS信号を受信する第1のGPS受信器12と、上記放射線量測定器11及びGPS受信器12から出力された信号を関連つける処理をし、処理した信号を出力する第1のCPU13と、第1のCPU13から出力された信号を掘削機械2に搭載された受信器21に向けて送信する送信器14と、を有し、これらが走行する車両1に搭載されている。また、掘削機械2には、上記送信器14から送信された信号を受信する受信器21と、掘削機械2の位置を検出するための信号を受信する第2のGPS受信器22と、上記受信器21及びGPS受信器22で受信した信号を処理する第2のCPU23と、掘削機械2の操作者が該掘削機械2を操作する位置で見ることができる位置に設けられ、前記第2のCPU23からの信号によって表示が行われる表示装置24と、前記第2のCPU23からの信号に基づいてデータが保存される記憶装置25と、が搭載されている。
【0023】
上記車両1は、自走することができるものが望ましいが、作業者の力によって移動するもの、他の車両に牽引されるもの等であってもよい。
【0024】
上記掘削機械2は、ブルドーザー、バックホー、パワーシャベル、ホイールローダー等、地表面付近の土壌を掘削して除去することができるものを使用することができる。
【0025】
上記放射線量測定器11は、地表面付近の放射線量を測定することができるものであり、所定の時間間隔で放射線量を測定して測定値を示す信号を第1のCPU13に対して出力することができるものである。
【0026】
上記第1のGPS受信器12は、複数のGPS衛星3からの信号を受信して受信した位置を検出するものであり、放射線量の測定位置のデータを得るものである。このため、放射線量測定器11の上方に設置し、放射線量測定器11が放射線を測定するのと同時にその測定位置の情報を取得するのが望ましい。
【0027】
上記第1のCPU13は、上記放射線量測定器11及び第1のGPS受信器12から出力された信号を関連つける処理をして、処理信号を出力するように設定されたものであり、パーソナルコンピュータのCPUを用いることができる。放射線量測定器11は、移動しながら所定の時間毎に放射線量を測定するものであり、放射線量を測定した位置の情報をGPS受信器から取得してこれらを関連付けるものである。
【0028】
上記車両1に搭載された送信器14および上記掘削機械2に搭載された受信器21は、第1のCPU13から出力される信号を第2のCPU23に入力するために、無線で信号を送受信することができるものである。このような送信器14及び受信器21はパーソナルコンピュータを結ぶローカルエリアネットワークを形成するものであってもよいし、携帯電話機からインターネットを介するもの等を用いてもよい。
【0029】
上記の第2のGPS受信器22は、第1のGPS受信器12と同様の構成を有するものであり、掘削機械2に搭載されて掘削機械2の位置を検出するために用いられる。
【0030】
上記第2のCPU23は、放射性物質で汚染された土壌を除去して浄化しようとする領域の地図を表示装置24に表示するとともに、第1のGPS受信器12で受信した信号に基づいて放射線量が測定された位置を地図上の位置と対応させる。そして、地図上の対応する位置に測定された放射線量を表示するように動作するものである。この第2のCPU23は、上記表示装置24及び記憶装置25とともにパーソナルコンピュータが装備するものを使用することができる。
【0031】
第2のCPU23による上記表示は、例えば次のように行うことができる。
地図は所定の大きさの升目、実際の地表面上における一辺が例えば50cmの正方形に区分しておく。受信器21で受信した放線線量を測定した位置を示す信号から、その位置が上記升目のいずれに含まれるかを検出し、その位置で測定された放射線量に対応する色を当該升目に着色して表示する。つまり、放射線量を複数の段階に分け、それぞれに異なる色を対応させる。そして、放射線量測定器11で得られた放射線量の測定値が含まれる段階と対応する色を表示する。例えば、
放射線量 0.1未満(マイクロシーベルト/時) ・・・・ 緑
放射線量 0.1以上1.0未満(マイクロシーベルト/時) ・・・・ 薄い緑
放射線量 1.0以上2.0未満(マイクロシーベルト/時) ・・・・ 黄
放射線量 2.0以上5.0未満(マイクロシーベルト/時) ・・・・ ピンク
放射線量 5.0以上(マイクロシーベルト/時) ・・・・ 赤
として升目を着色表示する。
【0032】
また、車両1が走行して放射線量の測定が継続され、次々に測定位置と関連つけられた放射線量のデータが第2のCPU23に入力され、測定位置が含まれる升目について既に放線線量の測定値に対応する色が表示されているときには、当該升目の色を新たに計測された放射線量と対応する色に更新して表示する。これにより、土壌の除去によって放線線量が低減したときには、低減された状態が表示される。
これら放線線量に関するデータは、任意の時つまり操作者等が必要と認めた時の状態を記憶装置25に記憶させることができるものとなっている。つまり、土壌の除去作業が開始される前の状態及び除去作業が終了した時等の状態を保存することができるものとなっている。また、所定の時間毎にデータを保存するように設定すること等も可能である。
なお、上記第2のCPU23の機能は、一部を第1のCPU13によって行うこともできる。
【0033】
以上に説明した放射性物質汚染土壌の除去管理システムを用いた土壌の除去方法を、図2及び図3に基づき、以下に説明する。
放射性物質で汚染された土壌を除去して浄化しようとする領域に上記車両1を走行させ、走行している状態で所定時間毎に地表面付近の放射線量を放射線量測定器11によって測定する。上記所定時間は、例えば、1回/秒とすることができる。上記のように車両を走行させながら順次に放射線量を測定することにより、領域内の多くの位置の放射線量が測定される。また、これとともに放射線量を測定した各位置について第1のGPS受信器12を用いて位置を検出する(ST1)。これらのデータは、放射線量の値とその値を測定した位置とを対応させ、これらのデータは第1のCPU13から送信器14、受信器21を介して第2のCPU23に入力される(ST2)。
【0034】
一方、表示装置24には汚染土壌の除去を行う領域の地図を表示する(ST3)。この地図情報は、予め記憶装置25に記憶させておくのが望ましい。
上記地図は、汚染土壌の除去を行う領域の全域を、所定の大きさの升目に区分しておく。区分の大きさは地表面上で一辺が例えば50cmの正方形にとすることができる。これよりも大きく又は小さく区分することもできるが、GPSの精度に応じて寸法を決定するのが望ましい。放射線量が測定されると、測定された各位置について、当該位置が地図上のどの升目内に含まれるかを検出する。測定位置が含まれる升目が検出されると、この升目を測定された放射線量に基づき、前述した対応する色に着色して表示装置24に表示する(ST4)。このような表示は、領域内の全ての升目について表示されるように放射線量を測定するのが望ましいが、土壌の除去作業が開始されるまでに全ての升目について測定がされていなくてもよい。
このような放線線量のデータは、土壌の除去作業が開始される前に、及び除去作業が開始された後における適宜のタイミングで、上記更新されるデータとは別に当該時における放射線量として記憶装置25に保存しておくのがよい(ST5)。
【0035】
その後、掘削機械2を用いて放射性物質で汚染されている表面近くの土壌を掘削し、所定の厚さを剥ぎ取るように除去する(ST6)。これとともに、土壌を除去した領域には、放射線量測定器11を搭載した車両1を掘削機械2とは独立して走行させ、放射線量の測定を行うとともに、放射線量を測定した位置をGPSによって検出する(ST10)。放射線量の測定値及び測定位置の情報は関連づけられ、土壌の除去作業を開始する前と同様に送信器14、受信器21を経て第2のCPU23に入力される(ST11)。そして、放射線量の測定値は、表示装置24上の放射線量測定位置が含まれる升目を着色することによって表示される。このとき、当該升目における測定値が無く着色表示がされていないときは、新たに測定された放射線量に対応する色に着色される。また、既に升目が着色して放射線量が表示されているときには、新たに測定された放射線量と対応する色に更新して表示される(ST12)。
【0036】
掘削機械2の操作者は、掘削機械2を操作する位置で更新される表示を見ることができ、表示を参考に掘削作業及び土壌の除去作業を行うことができる(ST7)。つまり、土壌の除去よって放射線量が低減したことを確認することができるともに、放射線量がなお大きく測定される位置では、さらに土壌を除去して放射線量を目標値以下にまで低減することができる。そして、土壌の除去によって放線線量を低減しようとする領域の全域において測定される放線線量が目標値以下となったことが確認されると(ST8)、土壌の除去作業を終了する(ST9)。また、これにともない放射線量の測定を終了する(ST13)。そして、土壌の除去作業を終了したときの領域内各位置の放射線量のデータを記憶装置25に保存して全ての作業を終了する(ST14)。
【0037】
以上に説明した実施の形態では、土壌の除去作業を行っているときに、放射線量測定器11を搭載した車両1は掘削機械2とは独立して別に走行するものであるが、放射線量測定器11を搭載した車両1を、図4(a)に示すように掘削機械2に連結し、自走する掘削機械2の牽引によって走行させることもできる。また、図4(b)に示すように、車両に搭載していた放射線量測定器11及びGPS受信器12等を掘削機械2に載せ替え、掘削機械2の移動にともなって各位置における放射線量を測定するようにしてもよい。
【0038】
また、図5(a)に示すように、ブルドーザー、バックホー、ホイールローダー等の土壌を掘削する機能を有する車両31に放射線量測定器32を搭載し、この放射線量測定器32を搭載した車両を用いて土壌の除去作業を開始する前に放射線量を測定してもよい。そして、この車両31が有する機能によって土壌の除去作業を行うとともに、作業中に放射線量を測定することができる。このような場合には、掘削機能を有する車両31として上記ブルドーザー等を使用することができるが、移動が容易であるホイールローダー等を用いるのが望ましい。また、このように掘削機能を有する車両31に放線線量測定器32を搭載するときには、図5(b)に示すように放線線量の測定値を離れた位置にあるCPUに無線でデータを送信する必要はなく、CPU33及びGPS受信器34は一台のみを用いて、放射線量を測定した信号及びGPSによって検出した位置情報は、表示装置35を制御するCPU33に直接に入力することができる。
【0039】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内でこれ以外の実施形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:車両, 2:掘削機械, 3:GPS衛星,
11:放射線量測定器, 12:第1のGPS受信器, 13:第1のCPU, 14:送信機,
21:受信器, 22:第2のGPS受信器, 23:第2のCPU, 24:表示装置, 25:記憶装置,
31:掘削機能を有する車両, 32:放射線量測定器, 33:CPU, 34:GPS受信器, 35:表示装置, 36:記憶装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線量測定器と、前記放射線量測定器で放射線量を測定した位置を全地球測位システム(以下、GPSという)によって検出し、位置情報を信号として出力することができるGPS受信器と、を車両に搭載し、
該車両を放射性物質で汚染された領域に走行させ、該領域内の複数の位置で、前記放射線量測定器によって放射線量を測定し、
測定された放射線量と、前記GPS受信器によって得られた前記放射線量の測定位置の情報と組み合わせて、記憶装置に記憶させ、
自走し、地盤を掘削して地表面付近の土壌を除去することができる掘削機械の操作者が該掘削機械を操作する位置で視認することができる位置に表示装置を設け、該表示装置に前記車両を走行させる領域の地図を表示するとともに、該地図上に重ねて、前記放射線量測定器で測定された複数の位置における放射線量を表示し、
前記掘削機械の操作者が前記表示装置に表示された放射線量を見ながら、土壌の除去を行い、
前記土壌の除去を開始した後に、前記放射線量測定器が、先に放射線量を測定して該放射線量が前記表示装置に表示されている位置とほぼ同じ位置で再度放射線量を測定したときには、当該位置における放射線量のデータを更新するものとし、
前記放射線量測定器による測定の開始後における所定のときに、前記放射線量とその測定位置の情報とを、前記放射線量の測定にともなって更新する前記データとは別に前記記憶装置に保存することを特徴とする放射性物質汚染土壌の除去方法。
【請求項2】
前記車両は、前記掘削機械による土壌の除去を開始する前には、該掘削機械とは独立して走行するものとし、土壌の除去を開始した後は、前記車両を前記掘削機械に連結して該掘削機械に牽引させることを特徴とする請求項1に記載の放射性物質汚染土壌の除去方法。
【請求項3】
前記車両は、自走することができ、土壌を掘削して地表面近くの土壌を除去する機能を有するものとし、この自走車両を前記掘削機械として用いることを特徴とする請求項1に記載の放射性物質汚染土壌の除去方法。
【請求項4】
走行する車両に搭載された放射線量測定器と、
前記放射線量測定器で放射線量を測定した位置を全地球測位システム(以下、GPSという)によって検出し、位置情報を信号として出力することができるGPS受信器と、
前記放射線量測定器によって測定された放射線量を、前記GPS受信器によって得られた前記放射線量の測定位置の情報と組み合わせて、記憶装置に記憶させる処理を行うCPUと、
自走し、地盤を掘削して地表面付近の土壌を除去することができる掘削機械と、
前記掘削機械の操作者が該掘削機械を操作する位置で視認することができる位置に設けられる表示装置と、を有し、
前記CPUは、
前記車両を走行させる領域の地図を前記表示装置に表示するとともに、該地図上に重ねて、前記放射線量測定器で順次に測定された複数の位置における放射線量を表示させる機能と、
前記土壌の除去を開始した後に、前記放射線量測定器が、先に放射線量を測定して該放射線量が前記表示装置に表示されている位置とほぼ同じ位置で再度放射線量を測定したときには、当該位置における放射線量のデータを更新する機能と、
前記放射線量測定器による測定の開始後の任意の時に、前記放射線量とその測定位置の情報とを、前記更新するデータとは別に前記記憶装置に保存する機能と、を有するように設定されていることを特徴とする放射性物質汚染土壌の除去管理システム。
【請求項5】
前記放射線量測定器及び前記GPS受信器を、前記車両から前記掘削機械に積み替えて使用可能とするか、又は前記車両を前記掘削機械に連結して該掘削機械で牽引することが可能となっていることを特徴とする請求項4に記載の放射性物質汚染土壌の除去管理システム。
【請求項6】
前記掘削機械に第2のGPS受信器を搭載し、前記表示装置に前記地図と重ねて掘削機械の位置を表示することを特徴とする請求項4に記載の放射性物質汚染土壌の除去管理システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92438(P2013−92438A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234508(P2011−234508)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】