説明

放射性画像診断のための窒化テクネチウム錯体の中間体化合物

次式(I):


(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜6の整数である)で表されるビスホスホノアミン化合物は、放射性画像診断のための窒化テクネチウム錯体を調製するための中間体として極めて有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性画像診断のために使用される窒化テクネチウム錯体の中間体化合物に関する。更に具体的に言えば、本発明は、放射性画像診断のために使用される窒化テクネチウム錯体を調製するための中間体化合物、即ち、ビスホスホノアミン化合物、中間体化合物の調製方法、中間体化合物を使用して窒化テクネチウム錯体を調製する方法、及び上記方法で調製される窒化テクネチウム錯体を活性成分として含む放射性薬剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性薬剤で使用される放射性遷移金属の中で、Tc−99mは、例えば、Tc−99mにより発せられるγ−線のエネルギーが141keVであり、Tc−99mの半減期が6時間であるので、Tc−99mが画像化に適する点、及びTc−99mが、99Mo−99mTc発生器により簡単に得ることができる点で有利であるので、放射性画像診断の分野で最も多く使用される核種である。従って、生理学的に活性な物質が、活性を損なうことなくこの核種に結合することができれば、得られる化合物は診断剤として有用であると考えられる。
【0003】
下記の通り、そのような結合を達成するために種々の試みがなされてきている。遷移金属窒化物錯体は、加水分解に対する安定性において優れている。従って、遷移金属窒化物錯体が、生理学的活性を有する任意の種々のリガンドとの交換反応にかけられる場合、窒化物錯体の窒化物基は金属原子に強力に結合して残ることができる。従って、種々の置換基を有する窒化テクネチウム錯体が提案されている。例えば、WO90/06137は、ジエチルビスジチオカルバメート−Tc−窒化物錯体、ジメチルビスジチオカルバメート−Tc−窒化物錯体、ジ−n−プロピルビスジチオカルバメート−Tc−窒化物錯体及びN−エチル−N−(2−エトキシエチル)ビスジチオカルバメート−Tc−窒化物錯体を開示している。更に、WO89/08657、WO92/00982及びWO93/01839は、テクネチウムに対する還元剤としてのポリホスフィンと酸化テクネチウムとを反応させる工程、金属の窒化物又は窒化物のための窒素源としてのアンモニウムを反応生成物と反応させてそれを相当する窒化物へ転換する工程、及び生理学的に活性なモノクローナル抗体とこの窒化物とを配位させる工程を含む、窒化テクネチウム錯体の製造方法を開示している。
【0004】
これらの方法では、生理学的に活性なリガンドの選択は、それが、得られる薬剤の性質を決定するので非常に重要である。それにもかかわらず、金属窒化物錯体は、単座から四座の種々の数の配位位置を有することができるので、複数の形態で形成される。従って、特定の生理学的に活性なリガンドを有する、化学量論的に単一の錯体を得ることが困難であった。
【0005】
WO98/27100は、ビスホスフィン化合物が、テクネチウム−99m窒化物の4つの配位位置の2つに配位し、電子供与原子対を有する二座リガンドが残りの2つの配位位置で配位する場合、二座リガンドは化学量論的に配位して、単一のテクネチウム−99m窒化物ヘテロ錯体が安定的に得られることを開示している。
【0006】
JP2004−505064Aは、ビスホスフィン化合物が、この4つの配位位置の2つに配位し、特定の二座リガンドが、この残りの2つの配位位置で配位する、テクネチウム−99m窒化物錯体を記載している。更に、JP2004−505064Aは、テクネチウム−99m窒化物錯体が、心臓及び副腎等の特定組織に著しく蓄積し、従って、放射性画像診断のために有用であることを記載している。しかし、テクネチウム−99m窒化物錯体を調製するための中間体であるビスホスフィン化合物を調製することは極端に複雑で困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのような状況に鑑みて、本発明は、心臓及び副腎等の特定組織に著しく蓄積し、従って、放射性画像診断のために極めて有用であるテクネチウム窒化物錯体を効果的に調製するために有用な中間体化合物を提供することを意図するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、次式(I):
【化1】


(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜6の整数である)で表されるビスホスホノアミン化合物に関する。
【0009】
更に、本発明は、次式(II):
【化2】


(式中、R1及びR2は上で定義されている通りである)のビニルホスホノ化合物と、次式(III):
【化3】


(式中、R3、R4、R5及びnは上で定義されている通りである)のホスホノアミン化合物とを縮合反応触媒の存在下で反応させる工程を含む、式(I)で表されるビスホスホノアミン化合物の調製方法に関する。
【0010】
更に、本発明は、次式(IV):
【化4】


(式中、R5及びnは上で定義されている通りであり、R6は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、mは1〜6の整数である)のビスホスフィノアミン化合物の調製方法であって、
式(I)で表されるビスホスホノアミン化合物を還元剤で還元して、次式(V)
【化5】


(式中、R5及びnは上で定義されている通りである)のビスホスフィノアミン化合物を製造する工程、及び
式(V)の化合物と、次式(VI):
X−(CH)m−OR6 (VI)
(式中、Xはハロゲン原子であり、R6及びmは上で定義されている通りである)のハロゲン化化合物とを反応させる工程を含む方法に関する。
【0011】
更に、本発明は、次式(VII):
99mTc(N)(PNP)(DTC)] (VII)
(式中、PNPは、式(IV)のビスホスフィノアミン化合物であり、DTCは、ジチオカルバメートである)の窒化テクネチウム錯体の調製方法であって、
式(IV)のビスホスフィノアミンを製造するために上述の方法を実施する工程、
式(IV)のビスホスフィノアミン化合物及びジチオカルバメートと酸化テクネチウムとを窒素供与体の存在下で反応させる工程を含む方法に関する。
【0012】
更に、本発明は、活性成分として、上述の方法により調製される窒化テクネチウム錯体を含む、画像診断のための放射性薬剤組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
式(I)のビスホスホノアミン化合物は、放射性画像診断のために有用な式(VII)の窒化テクネチウム錯体を最終的に調製するために更に使用される式(IV)のビスホスフィノアミン化合物を調製するために極めて有用な中間体である。
【0014】
式(I)のビスホスホノアミン化合物において、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜6の整数である。好ましくは、R1、R2、R3及びR4は互いに同じである。そのようなアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシルが挙げられ、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル又はイソ−プロピルが挙げられる。
【0015】
式(I)の好ましいビスホスホノアミン化合物としては、以下の:
N,N−ビス[(ジメチル 2−ホスホノ)エチル]メトキシエチルアミン;
N,N−ビス[(ジメチル 2−ホスホノ)エチル]メトキシプロピルアミン;
N,N−ビス[(ジメチル 2−ホスホノ)エチル]エトキシエチルアミン;
N,N−ビス[(ジメチル 2−ホスホノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
N,N−ビス[(ジメチル 2−ホスホノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
N,N−ビス[(ジメチル 2−ホスホノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン;
N,N−ビス[(ジメチル 2−ホスホノ)エチル]イソ−プロポキシエチルアミン;
N,N−ビス[(ジメチル 2−ホスホノ)エチル]イソ−プロポキシプロピルアミン;
N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]メトキシエチルアミン;
N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]メトキシプロピルアミン;
N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]エトキシエチルアミン;
N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン;
N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]イソ−プロポキシエチルアミン;及び
N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]イソ−プロポキシプロピルアミン
が挙げられる。
【0016】
式(I)のビスホスホノアミン化合物は、以下の反応スキームAで示される様に、式(II)のビニルホスホノ化合物と式(III)のホスホノアミン化合物とを縮合反応触媒の存在下で反応させることにより調製される。
【0017】
【化6】

【0018】
式(II)及び(III)において、R1、R2、R3、R4、R5及びnは、上で定義されている通りである。縮合反応触媒としては、好ましくは、過塩素酸リチウムが挙げられる。式(II)のビニルホスホノ化合物と式(III)のホスホノアミン化合物との反応は、それらを、縮合反応触媒の存在下で、油浴中で、60〜80℃の温度で、5〜10時間加熱することにより行うことができる。反応後、得られた反応生成物は、トリクロロメタン等の有機溶剤で抽出され、式(I)のビスホスホノアミン化合物を生成する。
【0019】
反応スキームAで使用される式(II)のビニルホスホノ化合物及び式(III)のホスホノアミン化合物は、以下の反応スキームBの方法により得られてもよい。
【0020】
【化7】

【0021】
反応スキームBにおいて、式(VIII)又は(VIII’)のハロゲン化化合物(ここで、Yは、臭素、フッ素、ヨウ素又は塩素等のハロゲン原子である)は市販されており、又は既知の通常の方法で簡単に調製されてもよい。例えば、ハロゲン化化合物は、トリエチルホスファイトと、過剰量のジハロゲン化エタン、例えば、1,2−ジブロモエタン及び1,2−ジクロロエタン等とを60〜70℃の温度で反応させることにより調製されてもよい。又、式(IX)のアミン化合物は市販されており、又は既知の通常の方法で簡単に調製されてもよい。アミン化合物としては、好ましくは、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、2−プロパノキシエチルアミン、2−イソプロパノキシエチルアミン、3−メトキシエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロパノキシプロピルアミン及び3−イソプロパノキシプロピルアミンが挙げられる。更に好ましくは、アミン化合物としては、2−メトキシエチルアミン及び2−エトキシエチルアミンが挙げられる。
【0022】
式(VIII)のハロゲン化合物は、式(IX)のアミン化合物と、水中で、100〜110℃の温度で、2〜7時間反応し、次いで、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等の塩基性化合物で処理されて、式(III)のホスホノアミン化合物を製造する。式(VIII’)のハロゲン化化合物は、エタノール等の溶媒中で、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等の塩基性化合物の存在下で、40〜80℃の温度で0.5〜1時間加熱されて、式(II)のビニル化合物を製造する。
【0023】
さもなければ、以下の反応スキームCで示される様に、式(VIII)のハロゲン化化合物は、式(IX)のアミン化合物と、炭酸カリウムの存在下で、アセトニトリル中で60〜70℃の温度で2〜3時間反応して、式(II’)のビニルホスホノ化合物と一緒に式(III)のホスホノアミン化合物を製造する。R1、R2、R3及びR4は、上で定義されている様に互いに同じであってもよいので、式(II)及び(II’)のビニルホスホノ化合物は、又、互いに同じであってもよい。従って、反応スキームCによれば、式(II)のビニルホスホノ化合物と一緒の式(III)のホスホノアミン化合物は、単一反応で都合よく調製されてもよい。
【0024】
【化8】

【0025】
中間体としての式(I)のビスホスホノアミン化合物から、式(IV)のビスホスフィノアミン化合物は、以下の反応スキームDで示される様な方法により調製することができる。
【0026】
【化9】

【0027】
初めに、式(I)のビスホスホノアミン化合物は、有機溶媒中で還元剤で還元されて式(V)のビスホスフィンアミン化合物を製造する。還元剤は、好ましくは、強力な還元活性を有するものである。そのような還元剤としては、好ましくは、アルミニウムリチウム水素化物及びジクロロアラン(dichloroalane)が挙げられる。有機溶媒としては、好ましくは、乾燥ジエチルエーテルが挙げられる。ビスホスホノアミン化合物の還元は、それを、還元剤と、有機溶媒中で、−5〜5℃の温度で、0.75〜1時間反応させることにより行われてもよい。この様にして製造された式(V)のビスホスフィンアミン化合物としては、好ましくは、N,N−ビス(2−ホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、N,N−ビス(2−ホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、N,N−ビス(2−ホスフィノエチル)メトキシプロピルアミン及びN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)エトキシプロピルアミンが挙げられる。
【0028】
次に、この様に製造された式(V)のビスホスフィンアミン化合物は、式(VI)のハロゲン化化合物と反応して、式(IV)の目的化合物を製造する。式(VI)のハロゲン化化合物としては、好ましくは、1−メトキシ−3−クロロプロパン、1−エトキシ−3−クロロプロパン、1−メトキシ−2−クロロエタン及び1−エトキシ−2−クロロエタンが挙げられる。
【0029】
ビスホスフィンアミン化合物とハロゲン化化合物との反応は、初めに、ビスホスフィンアミン化合物とアルキルリチウム、例えば、n−ブチルリチウム等とを有機溶媒、例えば、乾燥テトラヒドロフラン等において反応させ、次いで、得られた反応生成物をハロゲン化化合物と、−18〜0℃の温度で2〜10時間反応させることにより行うことができる。
【0030】
この様にして、式(IV)の目的のビスホスフィノアミン化合物は調製することができる。好ましくは、そのようなビスホスフィノアミン化合物としては、次のもの:
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシプロポキシルアミン;
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]イソプロポキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]イソプロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシプロポキシルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]イソプロポキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]イソプロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシプロポキシルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]イソプロポキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]イソプロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシプロポキシルアミン;
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]イソプロポキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]イソプロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシプロポキシルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]イソプロポキシエチルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]イソプロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシプロポキシルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]イソプロポキシエチルアミン;
ビス[(ジ−n−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]イソプロパノキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシプロポキシルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]イソプロポキシエチルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシエチルホスフィノ)エチル]イソプロポキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシプロポキシルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシプロピルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]n−プロポキシエチルアミン;
ビス[(ジ−イソ−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]n−プロポキシプロピルアミン
ビス[(ジ−イソ−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]イソプロポキシエチルアミン;及び
ビス[(ジ−イソ−プロポキシプロピルホスフィノ)エチル]イソプロポキシプロピルアミン;
が挙げられる。
より好ましくは、ビスホフィノアミン化合物には、次のもの:
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;及び
ビス[(ジエトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミンが挙げられる。
最も好ましくは、ビスホフィノアミン化合物には、次のもの:
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン;
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン;及び
ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミンが挙げられる。
【0031】
上述の式(IV)のビスホスフィノアミン化合物を使用することにより、放射性画像診断のために使用される窒化テクネチウム錯体が調製できる。即ち、次式(VII):
99mTc(N)(PNP)(DTC)] (VII)
(式中、PNPは、式(IV)のビスホスフィノアミン化合物であり、DTCは、ジチオカルバメートである)の窒化テクネチウム錯体は、式(IV)のビスホスフィノアミン化合物及びジチオカルバメートと酸化テクネチウムとを窒素供与体の存在下で反応させることにより調製することができる。
【0032】
ジチオカルバメートとしては、好ましくは、ピロリジンジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、4−エチル−ピペラジンジチオカルバメート、N−ジエトキシエチルジチオカルバメート、N−ジメチルジチオカルバメート、N−ジエチルジチオカルバメート、N−ジプロピルジチオカルバメート、N−メトキシ−N−メチルジチオカルバメート、N−メトキシエチル−N−エチルジチオカルバメート、N−メトキシプロピル−N−エチルジチオカルバメート、N−メトキシエチル−N−ブチルジチオカルバメート、N−ジメトキシエチルジチオカルバメート、N−ジエトキシプロピルジチオカルバメート、N−ジエトキシブチルジチオカルバメート、N−ジプロポキシエチルジチオカルバメート、N−ジブトキシエチルジチオカルバメート、N−ジメトキシプロピルジチオカルバメート、N−ジメトキシイソプロピルジチオカルバメート、N−エトキシ−N−エチルジチオカルバメート、N−エトキシプロピル−N−プロピルジチオカルバメート、N−エトキシエチル−N−イソプロピルジチオカルバメート、N−メトキシエチル−N−イソプロピルジチオカルバメート、N−エトキシエチル−N−プロピルジチオカルバメート、N−エトキシエチル−N−エチルジチオカルバメート及びN−プロポキシ−N−エチルジチオカルバメートが挙げられる。更に好ましくは、ジチオカルバメートとしては、ピロリジンジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、4−エチル−ピペラジンジチオカルバメート、N−ジエトキシエチルジチオカルバメート、N−ジメチルジチオカルバメート、N−ジエチルジチオカルバメート、N−ジプロピルジチオカルバメート、N−メトキシ−N−メチルジチオカルバメート、N−エトキシ−N−エチルジチオカルバメート、N−メトキシエチル−N−エチルジチオカルバメート、N−エトキシエチル−N−イソプロピルジチオカルバメート、N−エトキシエチル−N−エチルジチオカルバメート、N−メトキシプロピル−N−エチルジチオカルバメート及びN−ジメトキシエチルジチオカルバメートが挙げられる。最も好ましくは、ジチオカルバメートとしては、ピロリジンジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、4−エチル−ピペラジンジチオカルバメート、N−ジエトキシエチルジチオカルバメートが挙げられる。
【0033】
窒素供与体としては、好ましくは、ジチオカルバジン酸、ジチオカルバジン酸誘導体、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体及びヒドラジド誘導体並びにホスフィノアミンが挙げられる。窒素供与体と一緒に、還元剤が使用されてもよい。そのような還元剤としては、好ましくは、塩化第一スズ、亜硫酸水素ナトリウム、ホウ化水素ナトリウム、第三級ホスフィン及びトリス−(m−スルホナトフェニル)ホスフィンが挙げられる。
【0034】
具体的に言えば、式(VII)の窒化テクネチウム錯体は、次の通りに調製することができる。初めに、99mTcN中間体は、窒素供与体、還元剤及び99Mo−99mTc発生器から溶出された、酸化テクネチウムとしてのNa[99mTcO]を混合することにより得られる。次いで、99mTcN中間体は、2つの異なるリガンド、即ち、PNPのビスホスフィノアミン化合物及びジチオカルバメートの二座リガンド、及び好ましくは、PNPに対する溶解剤と反応する。この様にして、目的の窒化テクネチウム錯体は得られる。
【0035】
さもなければ、式(VII)の窒化テクネチウム錯体は、上述の錯体を形成するために必要な成分を含むキットを使用して簡単に調製することができる。例えば、窒素供与体、還元剤、及び好ましくは安定剤並びにpH調整剤を含むバイアル1、及び2つの異なるリガンド、即ち、PNPのビスホスフィノアミン化合物とジチオカルバメートの二座リガンド、及びPNPのための溶剤を含むバイアル2が調製される。次いで、99Mo−99mTc発生器から溶出された、酸化テクネチウムとしてのNa[99mTcO]がバイアル1に入れられる。一方、生理食塩水が内容物を十分に溶解するためにバイアル2に入れられ、得られた溶液の明確な量がバイアル1に入れられ、約100℃で加熱することにより、窒化テクネチウム錯体を得ることができる。
【0036】
上記方法において、安定剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましくは使用される。pH調整剤としては、リン酸ナトリウム緩衝液及び炭酸ナトリウム緩衝液が好ましくは使用される。更に、例えば、γ−シクロデキストリンが、ゴム及びシリンジ壁への親油性窒化テクネチム錯体の付着を防ぐために、界面活性剤として好ましくは使用される。又、溶解剤は、PNPのビスホスフィノアミン化合物に対して使用されてもよい。
【0037】
この様にして得られた窒化テクネチウム錯体は、心臓及び副腎に著しく蓄積するので、心臓及び副腎の画像診断のために極めて有用である。
【0038】
窒化テクネチウム錯体は、無菌状態の下で、薬剤として許容される添加剤、例えば、アスコルビン酸及びp−アミノ安息香酸等の安定剤;炭酸ナトリウム緩衝液及びリン酸ナトリウム緩衝液等のpH調整剤;α、β、γ−シクロデキストリン、メグルミン等の溶解剤;及びD−マンニトール等の賦形剤と一緒に混合して、画像診断のための放射性薬剤組成物に調剤されてもよい。画像診断のための放射性薬剤組成物は、使用時の即時製剤のためのキットの形態で提供されてもよい。そのようなキットは、窒化テクネチム錯体と上記添加剤とを組み合わせることにより得られる。
【0039】
放射性薬剤組成物は、通常の非経口方式、例えば、静脈内投与等により投与されてもよく、その投与量は、患者の年齢及び体重、治療される疾患の状態、使用される放射性画像装置等に照らして画像化が可能と考えられる放射能水準によって決定される。投与量は、テクネチウム−99mの放射能に関して、通常、37MBq〜1,850MBq、好ましくは、185MBq〜740MBqである。
【0040】
本発明は、実施例で更に詳細に以下で例示されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例】
【0041】
(参照例1)
既知方法によるビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン(PNP5)の合成
(i)3−メトキシ−1−プロパノール(1)の合成
【化10】

【0042】
オーブン乾燥した12Lフラスコをアルゴンでフラッシュし、リチウムアルミニウム水素化物(78g、2.1モル)及びエーテル(3L)を入れた。メチル−3−メトキシプロピオネート(424g、3.59モル)を4時間かけて滴状添加した。添加が完了後、混合物を更に30分間撹拌し、次いで、0℃に冷却した。反応を、水(78mL)、続いて15%水酸化ナトリウム(78mL)、最後に水(234mL)の慎重な滴状添加により急冷した。セライト(200g)を濾過助剤として添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。
【0043】
褐色懸濁液を濾過し、フィルターケーキをエーテル(500mL)で徹底的に洗浄した。一緒にした濾液を抽出漏斗に移した。水性相を排出し、有機相を、4Lエルレンマイヤーフラスコ中に排出した。無水硫酸マグネシウム(100g)をフラスコに添加し、30分間撹拌した。無機塩を溶媒溶液から濾過し、濾液を大気圧で回転蒸発器で濃縮し、285gの透明な無色油を得た。この油を、室温で家庭用真空下で一晩中撹拌して、196g(60%)の透明な無色油を得た。この中間体を、更なる精製なしで次工程で使用した。
【0044】
(ii)3−メトキシ−1−クロロプロパン(2)の合成
【化11】

【0045】
オーブン乾燥した2Lフラスコをアルゴンでフラッシュし、3−メトキシプロパノール(1)(196g、2.17モル)及び無水ピリジン(176mL、2.17モル)を入れた。フラスコを氷水浴で10℃に冷却した。塩化チオニル(388g、3.26モル)を、10℃〜30℃に留めた温度を確実にするために4時間かけて滴状添加した。添加が完了後、混合物を70℃に4時間加熱し、次いで、室温まで冷却した。
【0046】
粗反応混合物を、激しく撹拌しながら、氷(600g)及び濃塩酸(110mL)のスラリー上へ注ぎ込んだ。2相溶液を抽出漏斗に移した。有機相をフラスコ中に集め、水性相をエーテル(300mL)で抽出した。一緒にした有機相を5%炭酸カリウム(300mL)で洗浄した。有機相を炭酸カリウム(100g)で乾燥した。有機相を濾過し、濾液を回転蒸発器で濃縮して、400mlの黄色液体を得た。
【0047】
この粗生成物を、大気圧で、105〜108℃で蒸留して、166.5g(71%)の透明な無色油を得た。
【0048】
(iii)テトラキス(3−メトキシプロピル)ジホスファンジスルフィド(3)の合成
【化12】

【0049】
オーブン乾燥した3Lフラスコをアルゴンでフラッシュし、3−メトキシ−1−クロロプロパン(2)(66g、0.61モル)、マグネシウムの削り屑(37.2g、1.53モル)、及びエーテル(1L)を入れた。混合物を10分間撹拌し、次いで、10分間放置した。ヨウ素の単一の小さな結晶をフラスコ中へ落とし、マグネシウムの削り屑の表面上に置いた。エーテルが沸騰を開始したら(およそ15分)、残りの化合物2(100g、0.92モル)を添加した。出発物質の全量は166g、1.53モルであった。
【0050】
沸騰が停止した後、エーテル(363mL)中の塩化チオホスホリル(54mL、0.54モル)の溶液をアルゴン下で調製し、添加漏斗に置いた。グリニャール試薬を0℃に冷却し、塩化チオホスホリル溶液を、0℃〜5℃の温度を保ちながら、1時間かけて反応混合物へ滴状添加した。添加が完了後、反応フラスコを、撹拌を続けながら室温まで温め、次いで、反応を2時間還流した。その後、0℃まで冷却した。
【0051】
粗反応混合物を、激しく撹拌しながら氷(3.3L)及び硫酸(134mL)のスラリー中へ注ぎ込んだ。得られた2相溶液を室温で一晩中撹拌した。溶液を、アルゴン雰囲気下で抽出漏斗へ加圧によって移した。有機相を集め、回転蒸発器で濃縮して、48g(42%)の透明な無色油を得た。この中間体を、精製なしで次工程で使用した。
【0052】
(iv)ビス(3−メトキシプロピル)ホスフィン(4)の合成
【化13】

【0053】
オーブン乾燥した2Lフラスコをアルゴンでフラッシュし、THF(168mL、168ミリモル)中の1M リチウムアルミニウム水素化物を入れた。テトラキス(3−メトキシプロパン)ジホスファンジスルフィド(3)(64g、153ミリモル)を、脱気したテトラヒドロフラン(375mL)に溶解した。この溶液を、撹拌しながら4時間かけて反応フラスコへ滴状添加した。溶液を、60℃で3時間還流した。
【0054】
反応を0℃に冷却した。慎重に、脱気した水(6.4mL)を、激しく撹拌しながら滴状添加した。脱気した15%水酸化ナトリウム(6.4mL)を添加し、最後に、脱気した水(19.2mL)を添加した。撹拌を続け、混合物を、アルゴン下で一晩中室温で放置した。脱気したエーテル(500mL)及び脱気した水(500mL)を添加し、混合物を30分間撹拌した。撹拌を停止し、相を分離させた。上部有機相を3Lフラスコへ加圧により移した。水性相をエーテル(500mL)で抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム(300g)で一晩中乾燥した。乾燥した有機相を、インラインフィルターを使用して3Lフラスコ中へ加圧によりデカントした。溶液を、家庭用真空下で、ドライアイス/イソプロパノール充填コンデンサー及び最少量の加熱で濃縮した。
【0055】
粗生成物を、100mLフラスコへ加圧により移し、55℃〜60℃で真空蒸留して(0.4mmHg)、9.55g(18%)の透明な無色油を得た。この中間体を、なんらの更なる精製なしで最終工程で使用した。
【0056】
(v)N−エトキシエチル−N,N−ジエタノールアミン(5)の合成
【化14】

【0057】
オーブン乾燥した3Lフラスコをアルゴンでフラッシュし、無水エタノール(240mL)、炭酸カリウム(276g、1.97モル)、及びジエタノールアミン(120mL、1.14モル)を入れた。ブロモエチルエチルエーテル(304g、1.97モル)を、3時間かけて滴状添加した。混合物を、アルゴン下で2日間還流した。混合物を0℃に冷却し、濾過した。フィルターケーキをエタノール(500mL)で洗浄し、一緒にした濾液を回転蒸発器で濃縮して、800gの黄色油を得た。
【0058】
粗生成物を、125℃〜127℃で真空蒸留して(0.5mmHg)、121g(60%)の淡黄色油を得た。この中間体を、ジクロロメタン(10L)中の10%メタノールを使用してシリカゲル(1kg)で更に精製し、60g(30%)の精製生成物を得た。
【0059】
(vi)N,N−ビス(2−クロロエチル)−N−エトキシエチルアミン(6)の合成
【化15】

【0060】
オーブン乾燥した1Lフラスコをアルゴンでフラッシュし、無水ピリジン(25mL、304ミリモル)、及びN−エトキシエチル−N,N−ジエタノールアミン(5)(27g、152ミリモル)を入れた。フラスコを、NaCl/氷水浴で0℃に冷却した。塩化チオニル(108.5g、912ミリモル)を、0℃〜10℃の温度に保ちながら、6時間かけて滴状添加した。粘稠な反応溶液を、アルゴン下で、室温で、一晩中、光の不存在下で撹拌した。
【0061】
コンデンサーを蒸留ヘッドで置換え、未反応塩化チオニルを真空蒸留で除去した。粗反応混合物を0℃に冷却した。慎重に、水(200mL)を、激しく撹拌しながらフラスコへ滴状添加した。混合物を10℃で1時間撹拌した。次いで、温度を−5℃まで下げ、炭酸ナトリウム(40g)を、激しく撹拌しながら分割添加した。撹拌を1時間続け、その混合物は室温になった。エーテル(400mL)を添加し、撹拌を中止して相を分離させた。2相溶液を抽出漏斗へ移した。有機相を取り除いて置き、水性相をエーテル(200mL)で抽出した。一緒にした有機相を硫酸マグネシウム(100g)で乾燥し、濾過し、濾液を、トルエン(20mL)の存在下で回転蒸発器で濃縮して、37gの黄色油を得た。
【0062】
粗生成物を、ヘキサン/エーテル(5/1)[3L]を使用してシリカゲル(400g)のクロマトグラフにかけた。適当な画分をプールし、回転蒸発器で濃縮した。精製生成物を室温で一晩中家庭用真空下で撹拌して、19g(58%)の透明な黄色油を得た。3週間にわたるこの中間体の貯蔵は、有害であることが判明したので、最終工程7でそれを使用する前に、同じ条件下で二度目のクロマトグラフにかけねばならなかった。
【0063】
(vii)ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン(PNP5)の合成
【化16】

【0064】
オーブン乾燥した500mLフラスコをアルゴンでフラッシュし、ビス(3−メトキシプロピル)ホスフィン(4)(9.5g、53.3ミリモル)及び無水THF(115mL)を入れた。n−ブチルリチウム(ヘキサン中の2.5M)[23.4mL、58.6ミリモル]を、4時間かけて滴状添加した。反応フラスコを0℃に冷却し、無水THF(10mL)中のN,N−ビス(2−クロロエチル)−N−エトキシエチルアミン(6)(5.7g、26.7ミリモル)を含む溶液を3時間かけて滴状添加した。次いで、反応を室温で一晩中撹拌した。
【0065】
冷たい脱気した水(40mL)を、反応フラスコへ慎重に滴状添加した。脱気したエーテル(100mL)を添加し、2相溶液を抽出漏斗へ加圧により移した。水性層を排出して、アルゴン下で取り除いて置いた。有機相も排出して、アルゴン下で取り除いて置いた。水性相を、脱気したエーテル(30mL)で抽出した。一緒にした有機相を硫酸ナトリウム(20g)で乾燥し、アルゴンの傘の下で濾過し、濾液を回転蒸発器で濃縮した。粗生成物を家庭用真空下で一晩中撹拌して、12.17g(92%)の、HPLCによる純度90%の淡黄色油を得た。
【0066】
粗生成物をシリカ(150mLの床容量)のクロマトグラフにかけた。ヘキサン/エーテル(1/1)[2L]を使用して少量の極性不純物をカラムから洗浄除去した。所望の生成物を、ジクロロメタン中の5%メタノールでカラムから溶出させた。適当な画分をプールし、濃縮して、10g(75%)の、HPLCによる純度94%の淡黄色油を得た。最初と同じシリカゲルクロマトグラフィーによる二番目の精製で、6g(45%)の、HPLCによる純度95.3%の淡黄色油を得た。精製生成物をアルゴン下で貯蔵した。
【0067】
【化17】

【0068】
上記参照例1から明らかな様に、ビスホスフィノアミン化合物は、Claudio Bianchini et al.、Organometallics 1995年、14、1489頁〜1502頁に記載されている既知の方法により7工程で調製された。
【0069】
(実施例1)
本発明方法によるビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン(PNP5)の合成
(i)ジエチル(2−ブロモエチル)ホスホネート(1)の合成
【化18】

【0070】
1,2−ジブロモエタン(69ml、0.8モル)を、二口の150mL丸底フラスコに注ぎ入れた。トリエチルホスファイト(34.3ml、0.2モル)を撹拌しながら添加し、次いで、混合物を2時間還流した。過剰の1,2−ジブロモエタンを、回転蒸発器で、60〜70℃で穏やかに温めながら除去した。残渣を減圧下で蒸留した(2mmHg、95〜105℃又は1mmHg、75℃)。収率95%。
【0071】
【化19】

【0072】
(ii)N,N−ビス[(ジエチル 2 ホスホノ)エチル]エトキシエチルアミン(4)の合成
【化20】

【0073】
自動撹拌機及びヒーター、並びにコンデンサーを備えた50mL二口の丸底フラスコに、ジエチル(2−ブロモエチル)ホスホネート(1)(0.45ml、2.5ミリモル)、2−エトキシエチルアミン(0.26ml、2.5ミリモル)、KCO(0.346g、2.5ミリモル)及びアセトニトリル(10ml)を添加した。混合物を、撹拌下で3時間、油浴で70℃に維持した。冷却後、混合物を濾過し(G3フリット)、アセトニトリルで洗浄した(2×3ml)。溶媒を回転蒸発器で全部除去して黄色油を得た(CDClでの31P{H}NMRは、モノ置換中間体2及び化学量論的過剰のビニル誘導体中間体3のそれぞれに相当する、31.2及び18.0ppmにほぼ等しい強度の2つのシグナルを示した)。
【0074】
上で回収した0.70mlの黄色油を、LiClO(133mg、1.25ミリモル)と一緒に、2mlバイアルへ添加した。バイアルを二窒素で脱気し、次いで、素早く、きっちりと密閉した。バイアルを、7時間、75℃で油浴に漬けた。得られた黄色油をCHClで取り出し(3×2ml)、次いで、分離漏斗で、HO(6ml)で処理し、下部有機層を回収した。水相を再度CHCl(3ml)で処理した。一緒にした有機相を、最後に、二窒素流で、次いで、真空ポンプ下で(過剰の未反応3を放出するために)濃縮した。粘稠な黄色油が得られた(収率85%)。
【0075】
【化21】

【0076】
(iii)N,N−ビス(2−ホスフィノエチル)エトキシエチルアミン(5)の合成
【化22】

【0077】
新たに蒸留した無水ジエチルエーテルを、二窒素雰囲下でN,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]エトキシエチルアミン(4)(533mg、1.28ミリモル)を含む、100mlの二口丸底フラスコへ添加した。フラスコを氷浴で0℃に冷却した。LiAlH(EtO溶液中の1.0M;8mL、8ミリモル)を、シリンジを伴うゴムセプタムを通してゆっくりと(3分)添加した。水素ガスの放出が、P(III)の特有の臭いと一緒に観察された。氷浴を除去し、白っぽく濁った混合物を、室温で45分間撹拌した。次いで、フラスコを再度0℃(氷浴)に冷却し、脱気したNaSOの飽和水溶液(5ml)を二窒素下で滴状添加した(必要に応じて、更にジエチルエーテルが、反応混合物の容量を一定に維持するために添加されてもよい)。撹拌下で、更なる固体無水NaSO(300〜500mg)を、水を完全に除去するために白色懸濁液へ添加した。次いで、混合物を二窒素雰囲気下で濾過し(G2フリット)、濾液を二口の50mLフラスコに集めた。フリット上の固体をジエチルエーテル(2×10ml)及びジクロロメタンで(2×10ml)洗浄した。一緒にした有機相を二窒素流下で、次いで真空下で濃縮した(殆ど定量的な収率)。
【0078】
【化23】

【0079】
(iv)ビス[(ジメトキシプロピルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン(PNP5)の合成
【化24】

【0080】
僅かに過剰のn−BuLi(n−ヘキサン中の2.5M;2mL、4.87ミリモル)を、カニューレを介して、二窒素雰囲気下で、ゴムセプタムを通して、新たに蒸留したTHF(10mL)中のN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)エトキシエチルアミン(5)(243mg、1.16ミリモル)を含むフラスコへ添加した。溶液は、淡い黄緑色に着色した。フラスコを氷浴で0℃に冷却し、撹拌下で、1−メトキシ−3−クロロプロパン(504mg、4.64ミリモル)を滴状添加した。混合物を室温に達するまで放置した。次いで、混合物を、二窒素の穏やかな流れで、初期容量の1/3まで減少させた。フラスコを再度氷浴で冷却し、脱気した水(5mL)を滴状添加した。2相が形成された。ジエチルエーテル(20mL)を添加し、混合物を、大気との接触を避けるためにカニューレを介して分離漏斗に移した。常に二窒素雰囲気下で、下部水性相を別の分離漏斗に回収し、更なるジエチルエーテル(20mL)で処理した。次いで、水性相を排出し、一緒にしたエーテルを含む相を、無水NaSO(500mg)を含む100mL丸底フラスコに入れた。固体を濾過し、更なる無水ジエチルエーテルで洗浄した(2×10ml)。一緒にした、エーテルを含む相を二窒素下で、次いで、真空下で濃縮した(収率58%)。
【0081】
【化25】

【0082】
(実施例2)
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]エトキシエチルアミン(PNP7)の合成
【化26】

【0083】
僅かに過剰のn−BuLi(n−ヘキサン中の2.5M;1.61mL、1.53mLに相当する化学量論量に関して約5%過剰、3.84ミリモル)を、カニューレを介して、ゴムセプタムを通して、新たに蒸留したTHF(10mL)中のN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)エトキシエチルアミン(5)(200mg、0.96ミリモル)を含むフラスコへ添加した。溶液は、黄緑色に着色した。フラスコを氷浴で0℃に冷却し、撹拌下で、2−クロロエチルメチルエーテル(379mg、4.02ミリモル)を滴状添加した。混合物を室温に達するまで放置した。次いで、混合物を、二窒素の穏やかな流れで、初期容量の1/3まで減少させた。フラスコを再度氷浴で冷却し、脱気した水(5mL)を滴状添加した。2相が形成された:上部有機相は褐色−緑色に着色し、これに反して水性相は殆ど無色であった。脱気したジエチルエーテル(20mL)を添加し、混合物を、大気との接触を避けるためにカニューレを介して分離漏斗(二窒素を前以て流した)に移した。常に二窒素雰囲気下で、下部水性相を別の分離漏斗に回収し、更なるジエチルエーテル(20mL)で処理した。次いで、水性相を排出し、一緒にしたエーテルを含む相を、無水NaSO(約500mg)を含む100mL丸底フラスコに入れた。固体を濾過し、更なる無水ジエチルエーテルで洗浄した(2×10ml)。一緒にした、エーテルを含む相を二窒素下で、次いで、真空下で濃縮した(収率、約50%)。
【0084】
【化27】

【0085】
上述の実施例1から明らかな様に、ビスホスフィノアミン化合物は、本発明方法により、4工程でジエチル(2−ブロモエチル)ホスホネートから調製された。
【0086】
(実施例3)
ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン(PNP10)の合成
(i)N−(ジエチル 2−ホスホノ)エチルエトキシエチルアミン(2’)の合成
【化28】

【0087】
25mlの二口丸底フラスコに、ジエチル(2−ブロモエチル)ホスホネート(1)(2.45g、0.01モル)を入れた。水(2ml)及び2−メトキシエチルアミン(6ml、0.07モル)を添加した。更なる水(4ml)を添加し、混合物を3時間還流した。冷却後、混合物は無色で粘稠であった。10%NaOH(5ml)を添加し、次いで混合物は、過剰の未反応アミン及び水を除去するために回転蒸発器で容量を減少させられた。粘稠な残渣を、激しく撹拌しながらジエチルエーテルで処理した(3×30ml)。一緒にした、エーテルを含む相をNaSO(約500mg)で処理し、濾過し、穏やかな窒素流で濃縮し、残渣を真空ポンプ下で乾燥した(収率55%)。
【0088】
【化29】

【0089】
(ii)ジエチルビニルホスホネート(3)の合成
【化30】

【0090】
150mlの二口丸底フラスコをEtOH(85ml)で満たした。KOHペレット(2.52g、0.045モル)を添加した。混合物を氷浴中で、KOHの溶解が完了するまで撹拌した。ジエチル(2−ブロモエチル)ホスホネート(1)(8.1ml、0.045モル)を、均等圧力漏斗で滴状添加(30分)した。その間に白色固体が形成した。混合物を15分間還流し、冷却後、フリットを使用して濾過した。白色固体を無水EtOHで洗浄し、濾液を回転蒸発器で蒸発させ、最後に真空ポンプ下で15分間乾燥した。残渣を、マイクロ蒸留器で蒸留した。最初の画分(43℃、0.5mmHg)は、純粋なジエチルビニルホスホネート(3)に相当した(収率90%)。
【0091】
【化31】

【0092】
(iii)N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]メトキシエチルアミン(4’)の合成
【化32】

【0093】
2mlバイアルに、N−(ジエチル 2−ホスホノ)エチルエトキシエチルアミン(2’)(148.3mg、0.625ミリモル)、ジエチルビニルホスホネート(3)(66.5mg、0.625ミリモル)及びLiClO(66.5mg、0.625ミリモル)を添加した。バイアルを二窒素で脱気し、次いで、素早く、きっちりと密閉した。バイアルを、7時間、75℃で油浴に漬けた。次いで、得られた黄色油をCHClで処理し(3×2ml)、分離漏斗で、HO(6ml)で抽出した。下部有機層を回収し、一方、水相を再度CHCl(3ml)で処理した。一緒にした有機相を、N流で蒸発させて油状残渣を得た。過剰の化合物3を真空下(2時間、10−2)で除去した。収率89%。
【0094】
【化33】

【0095】
(iv)N,N−ビス(2−ホスフィノエチル)メトキシエチルアミン(5’)の合成
【化34】

【0096】
全ての以下の操作をN下で行った。全ての溶媒は前以て脱気した。
【0097】
N,N−ビス[(ジエチル 2−ホスホノ)エチル]メトキシエチルアミン(4’)(533mg、1.32ミリモル)を、オーブン乾燥した二口フラスコ(50ml)に入れ、新たに蒸留した無水ジエチルエーテル(5mL)を添加した。フラスコを氷浴で0℃に冷却し、LiAlH(EtO溶液中の1M;8mL、8ミリモル)を、シリンジを伴うゴムセプタムを通して3分でゆっくりと添加した。氷浴を除去し、混合物を室温で45分間撹拌した。最後に溶液は白く濁った。次いで、フラスコを再度0℃(氷浴)に冷却し、脱気したNaSOの飽和水溶液(5ml)を慎重に添加した(必要に応じて、別のEtOアリコット(それぞれ5mL)が、一定容量を維持するために添加された)。無水NaSOを、全ての水の量を除去するために添加した(約400mg)。15分後に、固体をG2フリットでの濾過により分離した。濾液を、予め計量した二口フラスコ(50ml)に集めた。エーテルを含む溶液をN流で蒸発させ、続いて、真空ポンプで吸引した(10−2で30分)。収率88%。
【0098】
【化35】

【0099】
(v)ビス[(ジメトキシエチルホスフィノ)エチル]メトキシエチルアミン(PNP10)の合成
【化36】

【0100】
過剰のn−BuLi(n−ヘキサン中の2.5M;1.0mL、正確な化学量論量は0.50mLに相当する、1.24ミリモル)を、カニューレを介して、ゴムセプタムを通して、新たに蒸留したTHF(10mL)中のN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)メトキシエチルアミン(5’)(60mg、0.31ミリモル)を含むフラスコへ添加した。溶液は黒っぽくなった(暗紫色に着色した)。なお0℃で、撹拌下に、蒸留したTHF(5mL)に溶解した2−クロロエチルメチルエーテル(236mg、2.48ミリモル)を滴状添加した。混合物を室温に達するまで一晩中放置し、黄金色に着色した。次いで、混合物を、二窒素の穏やかな流れで、初期容量の1/3まで減少させた。蒸留したジエチルエーテル(20mL)を添加した。フラスコを再度氷浴で冷却し、脱気した水(5mL)を滴状添加した。2相が形成された:上部有機相は黄金色に着色し、これに反して水性相は殆ど無色であった。脱気したジエチルエーテル(20mL)を添加し、混合物を、大気との接触を避けるためにカニューレを介して分離漏斗(二窒素を前以て流した)に移した。常に二窒素雰囲気下で、下部水性相を別の分離漏斗に回収し、更なるジエチルエーテル(2×10mL)で処理した。次いで、水性相を排出し、一緒にしたエーテルを含む相を、無水NaSO(約500mg)を含む100mL丸底フラスコに入れた。固体を二窒素下で濾過し、更なる無水ジエチルエーテルで洗浄した(2×10ml)。一緒にしたエーテルを含む相を二窒素下で、次いで、真空下で濃縮した(収率、約60%)。
【0101】
【化37】

【0102】
(実施例4)
99mTcN−PNP5−DBODCの調製
99mTcN−PNP5−DBODCの窒化テクネチウム錯体を実施例4で調製した。ここで、PNP5及びDBODCは、次の通り:
PNP5:ビス(ジメトキシプロピルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン
DBODC:ジエトキシエチルジチオカルバメート
を示す。
【0103】
無水塩化第一スズ(0.1mg、Nakaraitesuk Lot.VIP5014)、再結晶化琥珀酸ヒドラジド(SDH)(1mg、Ardrich Lot.00229EQ)及びエチレンジアミン四酢酸2ナトリウム2水和物(1mg、Dojin Kagaku、Lot.KKO78)を生理食塩水(0.1mL)に溶解した。この溶液へ、過テクネチウム−99m酸(99mTcO)の溶液(0.85mL、651MBq/mL)を添加し、室温で15分間放置した。得られた溶液を、水酸化ナトリウムの水溶液(0.1モル/L)20μLを添加してpH約6.5に調整した。この様にして、99mTcN中間体溶液を得た。
【0104】
この中間体溶液へ、溶液(4mg/mL)0.5mL(安定剤として4mg/mLの濃度でγ−シクロデキストリン(Wako、Lot.LDK1242)を含む)及びDBODCの溶液(4mg/mL)0.5mLを添加した。更に、得られた溶液を、水酸化ナトリウムの水溶液(0.1モル/L)20μLを添加してpH約9に調整した。次いで、調整した溶液を100℃の温度で15分間加熱して、99mTcN−PNP5−DBODCの溶液を得た。
【0105】
得られた99mTcN−PNP5−DBODCの溶液に対して、TLC分析を、以下に記載する条件により行い、ピーク面積%の測定により放射化学の純度を決定した。結果として、99mTcN−PNP5−DBODCの溶液は純度92.1%を示した。
【0106】
TLC条件:
TLCプレート:シリカゲル60(Merck)
展開相:エタノール/クロロホルム/トルエン/0.5M酢酸アンモニウム=5/3/3/0.5
展開長:10cm
検出器:Radiochlomatoglamschana(Aroka、PS−201型)
【0107】
(実施例5)
99mTcN−PNP7−DBODC及び99mTcN−PNP10−DBODCの調製
99mTcN−PNP7−DBODC及び99mTcN−PNP10−DBODCの窒化テクネチウム錯体を実施例5で調製した。ここで、PNP7及びPNP10は、次の通り:
PNP7:ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)エトキシエチルアミン
PNP10:ビス(ジメトキシエチルホスフィノエチル)メトキシエチルアミン
を示す。
【0108】
無水塩化第一スズ(0.1mg、Nakaraitesuk Lot.VIP5014)、クエン酸ヒドラジド(SDH)(1mg、Tokyo Kasei)及びエチレンジアミン四酢酸2ナトリウム2水和物(1mg、Dojin Kagaku、Lot.KKO78)を生理食塩水(0.1mL)に溶解した。この溶液へ、過テクネチウム−99m酸(99mTcO)の溶液(1.5mL、PNP7の場合は3460MBq/mL、PNP10の場合は3778MBq/mL)を添加し、室温で15分間放置した。得られた溶液を、水酸化ナトリウムの水溶液(0.1モル/L)20μLを添加してpH約6.5に調整した。この様にして、99mTcN中間体溶液を得た。
【0109】
この中間体溶液へ、PNP7又はPNP10の溶液(1mg/mL)0.5mL(安定剤として4mg/mLの濃度でγ−シクロデキストリン(Wako、Lot.LDK1242)を含む)及びDBODCの溶液(4mg/mL)0.1mLを添加した。更に、得られた溶液を、水酸化ナトリウムの水溶液(0.1モル/L)30μLを添加してpH約9に調整した。次いで、調整した溶液を100℃の温度で15分間加熱して、99mTcN−PNP7−DBODC又は99mTcN−PNP10−DBODCの溶液を得た。
【0110】
得られた溶液を、99mTcN−PNP7−DBODC又は99mTcN−PNP10−DBODCを精製して、回収するために以下に記載する条件下でHPLCにかけた。
【0111】
HPLC条件:
カラム:Beckman Ultrasphere ODS 4.6mm×25cm+Guard Column 4.6mm×4.5cm
移動相:80% MeOH/20% 0.02 MPB(pH7.4)
流量:1.0mL/分
検出器:RI Detector(Steffi)、紫外線吸光光度法
【0112】
99mTcN−PNP7−DBODC及び99mTcN−PNP10−DBODCの保持時間(RT)は、それぞれ、14.5分及び11.7分であった。画分化した溶液を蒸発させ、アルゴン雰囲気下で乾燥した。得られた残渣へEtOHの水溶液(10%)を添加した。
【0113】
99mTcN−PNP7−DBODC又は99mTcN−PNP10−DBODCの最後に得られた溶液に対して、TLC分析を、以下に記載する条件により行い、ピーク面積%の測定により放射化学の純度を決定した。結果として、99mTcN−PNP7−DBODC及び99mTcN−PNP10−DBODCの溶液は、それぞれ、純度92.7%及び91.0%を示した。
【0114】
TLC条件:
TLCプレート:シリカゲル60(Merck)
展開相:エタノール/クロロホルム/トルエン/0.5M酢酸アンモニウム=5/3/3/0.5
展開長:10cm
検出器:Radiochromatogramschana(Aroka、PS−201型)
【0115】
(実施例6)
窒化テクネチウム錯体の生体内分布
実施例4及び5で得た窒化テクネチウム錯体の生体内分布を、これらの錯体をネズミに投与した場合で評価した。
【0116】
Sprague−Dawleyネズミ(SDネズミ、メス、10週齢)を、ケタミン(ketamine)(80mg/kg)及びキシラジン(xilazine)(19mg/kg)の腹腔内注射で麻酔にかけた。45分後に、ネズミは麻酔に罹り、99mTcN−PNP5−DBODC、99mTcN−PNP7−DBODC及び99mTcN−PNP10−DBODCのそれぞれを、140〜180MBq/mLの放射能濃度でネズミの尻尾の血管中へ投与した。投与後2分及び6分で、血液をネズミの腹大動脈から回収した。次いで、ネズミを苦痛のない様に殺し、組織をネズミから除去した。除去した組織を計量し、単チャンネル分析器(Applied Optical Research Industry Incorporated、701−IC型)で放射能を測定した。こうして得られた放射能の値から、各組織における窒化テクネチウム錯体の蓄積速度(%ID/g)は、次の様に式を使用して計算された:
各組織における蓄積速度(%ID/g)=(各組織の放射能(cpm)−バックグラウンド(cpm))/(各組織の放射能の合計(時間について補正された値)×各組織の重量(g))×100
【0117】
更に、得られた蓄積速度を基にして、又、心臓/肺及び心臓/肝臓の比も得た。
【0118】
上記実験では、測定を3〜4回繰り返した。
【0119】
得られた結果は表1に示される。
【0120】
【表1】

【0121】
表1の結果から分かる様に、錯体の投与後60分で、全ての錯体の一掃が、心臓を除く全ての組織で観察された。この様に、心臓/肺及び心臓/肝臓の比は優れていて、本発明方法により調製された錯体は心臓に著しく蓄積することができ、従って、放射性画像診断にとって極めて有用であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明方法は、中間体化合物、即ち、放射性画像診断のための窒化テクネチウム錯体を調製するために使用されるビスホスホノアミン化合物の工業的に有利かつ有効な調製を可能にする。従って、本発明方法によれば、窒化テクネチウム錯体は有利かつ有効に調製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】


(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜6の整数である)で表されるビスホスホノアミン化合物。
【請求項2】
R1、R2、R3及びR4が互いに同じである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1、R2、R3及びR4が、メチル、エチル、n−プロピル又はイソ−プロピルである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R5が、メチル、エチル、n−プロピル又はイソ−プロピルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
式(I)で表されるビスホスホノアミン化合物の調製方法であって、
次式(II):
【化2】


(式中、R1及びR2は、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である)のビニルホスホノ化合物と、次式(III):
【化3】


(式中、R3、R4及びR5は、独立に、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜6の整数である)のホスホノアミン化合物とを縮合反応触媒の存在下で反応させる工程を含む方法。
【請求項6】
縮合反応触媒が過塩素酸リチウムである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
次式(IV):
【化4】


(式中、R5は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、nは1〜6の整数であり、R6は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、mは1〜6の整数である)のビスホスフィノアミン化合物の調製方法であって、
式(I)で表されるビスホスホノアミン化合物を還元剤で還元して、次式(V)
【化5】


(式中、R5及びnは上で定義されている通りである)のビスホスフィンアミン化合物を製造する工程、及び
式(V)の化合物と、次式(VI):
X−(CH)m−OR6 (VI)
(式中、Xはハロゲン原子であり、R6及びmは上で定義されている通りである)のハロゲン化化合物とを反応させる工程、
を含む方法。
【請求項8】
還元剤が、アルミニウムリチウム水素化物又はジクロロアランである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式(V)のビスホスフィンアミン化合物が、N,N−ビス(2−ホスフィノエチル)メトキシエチルアミン、N,N−ビス(2−ホスフィノエチル)エトキシエチルアミン、N,N−ビス(2−ホスフィノエチル)メトキシプロピルアミン又はN,N−ビス(2−ホスフィノエチル)エトキシプロピルアミンである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
式(VI)のハロゲン化化合物が、1−メトキシ−3−クロロプロパン、1−メトキシ−3−クロロエタン又は1−エトキシ−3−クロロエタンである、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
次式(VII):
99mTc(N)(PNP)(DTC)] (VII)
(式中、PNPは、式(IV)のビスホスフィノアミン化合物であり、DTCは、ジチオカルバメートである)の窒化テクネチウム錯体の調製方法であって、
式(IV)のビスホスフィノアミンを製造するために請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法を実施する工程、
式(IV)のビスホスフィノアミン化合物及びジチオカルバメートと酸化テクネチウムとを窒素供与体及び還元剤の存在下で反応させる工程、
を含む方法。
【請求項12】
ジチオカルバメートが、ピロリジンジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、4−エチル−ピペラジンジチオカルバメート又はN−ジエトキシエチルジチオカルバメートである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
活性成分として、請求項11又は12に記載の方法により調製される放射能標識テクネチウム化合物を含む、画像診断のための放射性薬剤組成物。

【公表番号】特表2009−523702(P2009−523702A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534589(P2008−534589)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/JP2006/301260
【国際公開番号】WO2007/083395
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【Fターム(参考)】