説明

放射性薬剤濃縮装置、及び薬液用蒸発装置

【課題】容器内の滅菌性の向上を図ると共に、容器の取替え作業の煩わしさを軽減することが可能な薬液用蒸発装置、及び放射性薬剤濃縮装置の提供をすること。
【解決手段】薬液を貯留する容器31と、この容器31に連通する配管L31〜L33とを一体として構成する。これにより、取替え(または設置)の際には、この一体として構成された容器31及び配管L31〜L33を、接続相手の配管などに接続すればよく、蓋体を取外して容器内に配管を進入させる従前の構成として、容器31内が汚染されるおそれを低減し、容器31内の滅菌性を向上させる。容器31の取替えの際に、容器31内に進入させる配管L31〜L33を殺菌処理する必要がなく、一体として構成された容器31及び配管L31〜L33をそのまま設置すればよいため、取替え作業を簡略化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性薬剤濃縮装置、及び薬液用蒸発装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液中の溶媒を蒸発させることで薬液を濃縮する濃縮装置として、エバポレーターが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用される放射性同位元素標識化合物(RI化合物)は、放射性同位元素(RI)を所定の原料試薬と化学反応させるRI化合物合成装置で合成される。合成されたRI化合物は、高速液体クロマトグラフィー、その他の方法によって、反応混合物から分離液として回収される。その後、分離液中に含まれる目的RI化合物は、濃縮装置による溶媒除去、生理食塩水への溶解、及び滅菌処理の各工程を経て、放射性薬剤として製品化される。
【0004】
下記特許文献1に記載のロータリーエバポレーターは、薬液を貯留する調剤用フラスコ(容器)と、容器内に薬液を導入する導入チューブと、容器内の薬液を導出する導出チューブと、容器内の薬液を加熱して蒸発させるヒーター(蒸発手段)と、容器を自転させる支持部材と、を主に備えて構成されている。また、容器の口部は、摺動・シール機能を有する蓋体によって密閉され、導入チューブ、導出チューブは蓋体を貫通し、容器内に進入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−84246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、使用後の容器を滅菌された新たな容器と取り替える際には、蓋体から使用後の容器を取外して、新たな容器を取付ける必要があるため、周辺環境の滅菌が担保されていない限り、容器の口部を通じて内部が汚染されるおそれがあった。また、装置が設置された環境において、容器内に進入するチューブを滅菌することは難しく、容器を取外した状態で、例えばアルコールなどを用いた殺菌は可能であるものの、滅菌という観点では、十分なものではなかった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、容器内の滅菌性の向上を図ると共に、容器の取替え作業の煩わしさを軽減することが可能な薬液用蒸発装置、及び放射性薬剤濃縮装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射性薬剤濃縮装置は、放射性同位元素標識化合物を合成するRI化合物合成装置に接続され、RI化合物合成装置から供給される放射性同位元素標識化合物及び有機溶媒を含む薬液を濃縮する放射性薬剤濃縮装置であって、薬液から有機溶媒を蒸発させることで、放射性同位元素標識化合物を濃縮する濃縮部と、を有し、濃縮部は、薬液を貯留する容器と、容器と連通する配管であり、容器内に薬液を導入させる導入配管と、容器内の有機溶媒を蒸発させる蒸発手段と、容器と連通する配管であり、容器内の気体を排出する排気管と、を備え、容器と、当該容器に連通する配管とが一体として構成されていることを特徴としている。
【0009】
このように構成された放射性薬剤濃縮装置によれば、放射性同元素標識化合物を濃縮する濃縮部として、薬液を貯留する容器と、この容器に連通する配管とが一体として構成されているため、取替え(または設置)の際には、この一体として構成された容器及び配管を、接続相手の配管などに接続すればよく、蓋体を取外して容器内に配管を進入させる従前の構成として、容器内が汚染されるおそれを低減し、容器内の滅菌性を向上させることができる。また、容器の取替えの際に、容器内に進入させる配管を殺菌処理する必要がなく、一体として構成された容器及び配管をそのまま設置すればよいため、取替え作業を簡略化することができる。これらにより、容器内の滅菌性の向上を図り、容器の取替え作業の煩わしさを軽減することができる。なお、容器内の薬液を蒸発させる蒸発手段としては、薬液を加熱して蒸発させるヒーターや、容器内を減圧する薬液を蒸発させる減圧手段などがある。また、容器内の薬液を凍結乾燥させることで、薬液中の溶媒を分離除去してもよい。
【0010】
ここで、容器と連通する配管には、接続相手である他の配管との着脱を自在とする接続部が設けられていることが好適である。これにより、一体として構成された容器及び配管の取替え作業を容易に行うことができ、取替え作業の煩わしさを一層軽減することができる。
【0011】
また、本発明の放射性薬剤濃縮装置の濃縮部は、容器を回転軸周りに回転させる回転手段と、回転手段による回転の正回転、逆回転を切り替える制御手段と、配管の容器とは反対側の端部を容器と離間させて支持する支持体とを備え、配管は、可撓性を有することが好適である。このように構成された放射性薬剤濃縮装置によれば、容器と一体的に構成された配管が可撓性を有し、この配管の容器とは反対側の端部が、容器と離間して支持されているため、配管のねじれを許容して、所定の角度分、容器を回転させることができる。また、放射性薬剤濃縮装置は、容器を回転軸周りに回転させる回転手段、及び当該回転手段による回転の正回転/逆回転を切り替える制御手段を備える構成であるため、容器の正回転/逆回転を繰り返し、切り替えることで、容器内の薬液を攪拌することができ、蒸発効率の向上を図ることが可能となる。
【0012】
本発明の薬液用蒸発装置は、薬液を貯留する容器と、当該容器と連通する配管であり、容器内に薬液を導入させる導入配管と、容器内の薬液を蒸発させる蒸発手段と、容器と連通する配管であり、容器内の気体を排出する排気管と、を備え、容器と、当該容器に連通する配管とが一体として構成されていることを特徴としている。
【0013】
このように構成された薬液用蒸発装置によれば、薬液を貯留する容器と、この容器に連通する配管とが一体として構成されているため、取替え(または設置)の際には、この一体として構成された容器及び配管を、接続相手の配管などに接続すればよく、蓋体を取外して容器内に配管を進入させる従前の構成として、容器内が汚染されるおそれを低減し、容器内の滅菌性を向上させることができる。また、容器の取替えの際に、容器内に進入させる配管を殺菌処理する必要がなく、一体として構成された容器及び配管をそのまま設置すればよいため、取替え作業を簡略化することができる。これらにより、容器内の滅菌性の向上を図り、容器の取替え作業の煩わしさを軽減することができる。なお、容器内の薬液を蒸発させる蒸発手段としては、薬液を加熱して蒸発させるヒーターや、容器内を減圧する薬液を蒸発させる減圧手段などがある。また、容器内の薬液を凍結乾燥させることで、薬液中の溶媒を分離除去してもよい。
【0014】
また、本発明の薬液用蒸発装置は、容器を回転軸周りに回転させる回転手段と、回転手段による回転の正回転、逆回転を切り替える制御手段と、配管の容器とは反対側の端部を容器と離間させて支持する支持体とを備えていることが好適である。このように構成された薬液用蒸発装置によれば、容器と一体的に構成された配管が可撓性を有し、この配管の容器とは反対側の端部が、容器と離間して支持されているため、配管のねじれを許容して、所定の角度分、容器を回転させることができる。また、薬液用蒸発装置は、容器を回転軸周りに回転させる回転手段、及び当該回転手段による回転の正回転/逆回転を切り替える制御手段を備える構成であるため、容器の正回転/逆回転を繰り返し、切り替えることで、容器内の薬液を攪拌することができ、蒸発効率の向上を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明の放射性薬剤濃縮装置は、放射性同位元素標識化合物を合成するRI化合物合成装置に接続され、RI化合物合成装置から供給される放射性同位元素標識化合物を含む分離液を濃縮する放射性薬剤濃縮装置であって、放射性同位元素標識化合物及び有機溶媒を含む薬液から有機溶媒を蒸発させることで、放射性同位元素標識化合物を濃縮する濃縮部と、を有し、濃縮部は、薬液を貯留する容器と、容器と連通する配管であり、容器内に薬液を導入させる導入配管と、容器内の前記薬液を蒸発させる蒸発手段と、容器と連通する配管であり、容器内の気体を排出する排気管と、を備え、容器と、当該容器に連通する配管とが一体として構成されていることを特徴としている。
【0016】
このように構成された放射性薬剤濃縮装置によれば、放射性同元素標識化合物を濃縮する濃縮部として、薬液を貯留する容器と、この容器に連通する配管とが一体として構成されているため、取替え(または設置)の際には、この一体として構成された容器及び配管を、接続相手の配管などに接続すればよく、蓋体を取外して容器内に配管を進入させる従前の構成として、容器内が汚染されるおそれを低減し、容器内の滅菌性を向上させることができる。また、容器の取替えの際に、容器内に進入させる配管を殺菌処理する必要がなく、一体として構成された容器及び配管をそのまま設置すればよいため、取替え作業を簡略化することができる。これらにより、容器内の滅菌性の向上を図り、容器の取替え作業の煩わしさを軽減することができる。なお、容器内の薬液を蒸発させる蒸発手段としては、薬液を加熱して蒸発させるヒーターや、容器内を減圧する薬液を蒸発させる減圧手段などがある。また、容器内の薬液を凍結乾燥させることで、薬液中の溶媒を分離除去してもよい。
【0017】
また、本発明の放射性薬剤濃縮装置の濃縮部は、容器を回転軸周りに回転させる回転手段と、回転手段による回転の正回転、逆回転を切り替える制御手段と、配管の容器とは反対側の端部を容器と離間させて支持する支持体とを備え、配管は、可撓性を有することが好適である。このように構成された放射性薬剤濃縮装置によれば、容器と一体的に構成された配管が可撓性を有し、この配管の容器とは反対側の端部が、容器と離間して支持されているため、配管のねじれを許容して、所定の角度分、容器を回転させることができる。また、放射性薬剤濃縮装置は、容器を回転軸周りに回転させる回転手段、及び当該回転手段による回転の正回転/逆回転を切り替える制御手段を備える構成であるため、容器の正回転/逆回転を繰り返し、切り替えることで、容器内の薬液を攪拌することができ、蒸発効率の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によれば、容器内の滅菌性の向上を図ると共に、容器の取替え作業の煩わしさを軽減することが可能な薬液用蒸発装置、及び放射性薬剤濃縮装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】放射性薬剤製造装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る放射性薬剤濃縮装置の概略系統図である。
【図3】本発明の実施形態に係るエバポレーターの容器及び配管を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るエバポレーターを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るエバポレーターを示す斜視図であり、容器が360度回転した状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るエバポレーターの回転を制御する制御部、回転駆動部、及び駆動ローラーを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による薬液用蒸発装置の好適な実施形態について、図1〜図6を参照しながら説明するなお、図面の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。本実施形態では、薬液用蒸発装置の放射性薬剤製造装置への適用について説明する。
【0021】
(放射性薬剤製造装置)
図1は、放射性薬剤製造装置の概略構成図である。本実施形態に係る放射性薬剤製造装置100は、例えば病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用される18F−FLT(フルオロチミジン)、18F−FMISO(フルオロソニダゾール)、11C−ラクロプライド等の放射性同位元素標識化合物(RI化合物)である放射性薬剤(放射性医薬品を含む)を製造する装置であり、放射性同位元素(RI)を製造するためのターゲット50、ターゲット50によって生成されたRIを用いてRI化合物を合成するための放射性化合物合成装置60(RI化合物合成装置)、RI化合物合成装置60によって合成されたRI化合物を濃縮して製品にする放射性薬剤濃縮装置1(以下「濃縮装置」という。)を備えている。ターゲット50、RI化合物合成装置60及び濃縮装置1は、RI又はRI化合物が流通する配管によって、この順で接続されている。そして、RI化合物合成装置60及び濃縮装置1は、ホットセル70(放射性遮蔽壁)によって囲まれている。
【0022】
(濃縮装置)
図2は、放射性薬剤濃縮装置の概略系統図である。濃縮装置1は、リザーバー(分離液貯留部)11と、試薬容器21〜24と、固相抽出カラム(固相抽出部)12と、廃液槽(廃液回収部)25と、エバポレーター(蒸発器、濃縮部)13と、製品回収容器14と、経路L1〜L13と、バルブPV1〜PV10と、を備えている。
【0023】
そして、経路L1、リザーバー11、経路L7、固相抽出カラム12、及び経路L8は、接続部10aとエバポレーター13とを連通する。また、経路L9は、固相抽出カラム12の下流で、試薬容器(試薬貯留部)24と経路L8とを連通する試薬供給部として機能する。また、経路L10は、固相抽出カラム12の下流で、廃液槽25と経路L8とを連通する。
【0024】
リザーバー11は、RI化合物合成装置60から供給された分離液を一時的に貯めるものである。リザーバー11は、分離液を一時的に貯留する分離液貯留部として機能する。上記分離液は、水、有機溶媒、及びRI化合物を含むものである。リザーバー11の材質としては、耐薬品性のものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂(PTFE、ETFE、PVDF等)、及びガラス等が好ましい。取り扱い性、コストパフォーマンスの観点から特に、ポリプロピレン(PP)が好ましい。また、リザーバー11には、RI化合物合成装置60から供給される分離液を流通させる経路(供給経路)L1が接続されている。さらに、リザーバー11には、リザーバー11内を減圧するため減圧ラインとして機能する経路L2が接続されると共に、窒素が導入され圧送ラインとして機能する経路L3が接続されている。これらの経路L1、L2、L3は、リザーバー11の上部に接続されている。一方、リザーバー11の下部には、リザーバー11内の分離液を固相抽出カラム12に供給する経路L7が接続されている。
【0025】
また、リザーバー11に接続された圧送ライン(経路L3)には、経路L4〜L6を介して試薬容器21〜23が各々接続されている。試薬容器21には分離液を希釈する水が充填され、試薬容器22には固相抽出カラム12に吸着したRI化合物を洗浄する水が充填され、試薬容器23には固相抽出カラム12に吸着したRI化合物を溶出する有機溶媒が充填されている。さらに、経路L4〜L6には、バルブPV2〜PV4が各々設けられている。
【0026】
そして、リザーバー11では、試薬容器21から供給される希釈用水等で分離液を希釈することで、固相抽出に適した溶媒組成にすることができ、希釈された分離液が固相抽出カラム12に供給される。
【0027】
固相抽出カラム12は、RI化合物を吸着させる樹脂が充填されたカラムを備えるものである。上記樹脂は、RI化合物を特異的に吸着させることができれば特に限定されないが、疎水性樹脂が好ましい。疎水性樹脂としては、例えば、シリカ、オクタデシルシリカ(18)、及びオクチルシリカ(C8)が挙げられる。取り扱い性、コストパフォーマンスの観点から特に、Sep−Pack C18(Waters社製、商品名)が好ましく用いられる。また、目的化合物に応じてエンドキャップ処理を施した樹脂の使用も可能である。そして、固相抽出カラム12には、リザーバー11に接続された経路L7が上部に接続され、乾燥容器13と接続された経路L8が下部に接続されている。また、経路L7には、バルブPV1が設けられている。
【0028】
固相抽出カラム12では、リザーバー11から供給される分離液中のRI化合物を吸着させ、水及び有機溶媒を短時間で除去することができる。また、カラムに吸着したRI化合物を試薬容器22から供給される洗浄用水で洗浄することで、RI化合物から不純物の除去が可能となる。さらに、試薬容器23から供給される溶出用有機溶媒で溶出することで、RI化合物が少量の乾燥した有機溶媒に溶けた状態で、エバポレーターへ供給することが可能となる。溶出用有機溶媒は、目的のRI化合物によって適宜変更可能であるが、例えば、アセトニトリル、エタノール、メタノール及び、これらの混合物等が挙げられる。
【0029】
固相抽出カラム12と乾燥容器13とを接続する経路L8には、バルブPV5を備えた経路L10を介して廃液槽25が接続されている。そして、固相抽出カラム12を通った分離液中の水及び有機溶媒、並びに固相抽出カラム12を洗浄した水は、上記廃液槽25に廃棄される。廃液槽25は、RI化合物を固相抽出カラム12に吸着させたときに発生する廃液を回収する本発明の廃液回収部として機能する。
【0030】
また、経路L8には、バルブPV6を備えた経路L9を介して試薬容器24が接続されている。試薬容器24には、RI化合物を溶解する注射用水又は生理食塩水が充填されている。試薬容器24は、RI化合物を溶解するときに用いる試薬(注射用水又は整理食塩水)を貯留する試薬貯留部として機能する。
【0031】
さらに、経路L8には、窒素ガスが導入され圧送ラインとして機能する経路L11が接続されている。また、経路L8には、バルブPV7,PV8が設けられている。バルブPV7は、経路L9,L10の接続部と、経路L11の接続部との間に配置され、バルブPV8は、経路L11との接続部と、エバポレーター13との間に配置されている。
【0032】
(エバポレーター)
ここで、本実施形態のエバポレーター13では、図3〜5に示すように、溶液を貯留する容器31と、この容器31に接続された配管L31〜L33とが一体的に構成されている。すなわち、エバポレーター13は、容器31と、この容器31に接続された配管L31〜L33とが、濃縮装置1に対して一体的に取外し可能、取付け可能である。さらに、エバポレーター13は、濃縮装置1に取付けられた状態において、容器31と、この容器31に接続された配管L31〜L33の容器31側の端部とが一体的に回転可能な構成とされている。
【0033】
エバポレーター13は、容器31及び配管L31〜L33の他に、図4及び図5に示すように、フレーム35、駆動ローラー36、補助ローラー37、及び加熱部(蒸発手段)38を備えている。
【0034】
エバポレーター13の容器31は、固相抽出カラム12から供給されるRI化合物を含む溶液を回収する容器本体32と、容器本体32の開口部に閉止する蓋体33とを備えている。また、容器本体32の外観は、円筒状を成している。上記容器31の材質としては耐薬品性及び耐熱性のものであれば特に限定されないが、ガラス、及びフッ素樹脂等が好ましい。取り扱い性、コストパフォーマンス、及び内部の視認性の観点から特に、ガラスが好ましい。なお、容器31は、容器本体及び蓋体が一体として成形されていてもよく、配管L31〜L33及び容器31が一体として成形されていてもよい。
【0035】
配管L31〜L33は、可撓性を有するチューブであり、その一端側は、容器31に連通している。具体的には、配管L31〜L33の一端側L31a〜L33aは、蓋体33を貫通して、容器本体32内へ挿通されている。配管L31〜L33は、蓋体33に設けられた貫通孔(不図示)に挿通されて蓋体33に固定されている。そして、この蓋体33が容器本体32の開口部に装着されて、容器内の密閉性が確保され、容器本体32、蓋体33、及び配管L31〜L33が一体として構成されている。
【0036】
一方、配管L31〜L33の他端側には、他の配管との着脱を自在とする接続部34が、各々設けられている。接続部34は、接続相手の配管端部に嵌められて連結される。接続部34の材質としては、耐薬品性のものであれば特に限定されないが、フッ素樹脂、ポリプロピレン(PP)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が好ましい。取り扱い性、コストパフォーマンスの観点から特に、ポリプロピレン(PP)が好ましい。接続部34の形状としては、RI化合物合成装置60とワンタッチで着脱が可能であり、気密性が十分保たれているものであれば特に限定されないが、例えばサーパス工業株式会社製のルアーロックフィッティング(商品名)等のような螺合によって接続されるもの等が挙げられる。このような構成を備えることで、接続相手の配管に対してエバポレーター13の着脱が自在となり、一体的に構成された配管L31〜L33の着脱を容易に行うことができる。エバポレーター13の交換が短時間で行え、生産性が向上するといった効果が得られる。
【0037】
フレーム35は、図4及び図5に示すように、配管L31〜L33の他端側を支持する配管支持部材35aと、この配管支持部35aに連結され、配管L31〜L33の長手方向L(容器31の回転軸方向L)に延在する連結部材35bとを備えている。
【0038】
配管支持部材35aは、例えば、配管L31〜L33の長手方向Sと交差する方向に延在する板材によって構成することができる。この配管支持部材35aには、板厚方向に貫通する貫通孔(不図示)が設けられ、この貫通孔に配管L31〜L33の他端側L31b〜L33bが挿通されて支持されている。そして、配管支持部材35の両端部に、連結部材35bが各々連結されている。
【0039】
連結部材35bは、例えば、配管L31〜L33を挟んで両側に配置され、配管L31〜L33の長手方向Lに延在する板材によって構成することができる。また、連結部材35bの配管支持部材35aとは、反対側の端部には、容器31を回転可能に支持する駆動ローラー36及び補助ローラー37が設けられている。
【0040】
駆動ローラー36は、フレーム35に対して所定の回転軸周り回転可能に支持され、容器31に回転力を付与するものである。駆動ローラー36は、円柱状を成し、その外周面と、蓋体33の外周面とが当接している。これにより、駆動ローラー36の回転運動が蓋体33に伝達され、容器31が回転軸L周りに回転する。
【0041】
また、補助ローラー37は、フレーム35に対して所定の回転軸周りに回転可能に支持されている。補助ローラー37は、円柱状を成し、その外周面と、蓋体33の外周面とが当接している。これにより、容器31の回転運動が補助ローラー37に伝達され、補助ローラー37が回転する。そして、補助ローラー37は、連結部材35の容器31側の端部に各々設けられている。この一対の補助ローラー37は、容器31を挟んで両側から支持し、容器31の回転に伴い回転する。すなわち、容器31は、一対の補助ローラー37及び駆動ローラー36によって3方向から支持されている。
【0042】
また、エバポレーター13の容器31の回転軸Sは、鉛直方向Yに対して所定の角度θで傾斜して配置されている。すなわち、駆動ローラー36の回転軸及び補助ローラー37の回転軸も、鉛直方向Yに対して所定の角度θで傾斜して配置されている。
【0043】
加熱部38は、上記RI化合物を含む溶液(薬液)を加熱するものである。加熱部38は、公知の加熱装置であれば特に限定されないが、例えばマントルヒーター、オイルバス、エアヒーター及びブロックヒーター等が挙げられる。安全性、作業の簡易性の観点から特に、エアヒーターが好ましい。
【0044】
また、エバポレーター13は、図6に示すように、駆動ローラー36に回転駆動力を付与する回転駆動部51と、この回転駆動部51を制御する制御部52とを備えている。回転駆動部51としては、ステッピングモーターや、サーボモーターを用いることができる。回転駆動部51は、駆動ローラー36の正回転及び逆回転を可能とする。なお、回転駆動部51は、ステッピングモーター及びサーボモーターに限定されず、その他の駆動機構を使用することができる。例えば、正回転及び逆回転を実現する虫歯車などを用いてもよい。
【0045】
制御部52は、演算処理を行うCPU、記憶部となるROM及びRAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。制御部52は、記憶部に記憶されたプログラムを実行することで、回転駆動部51による正回転と逆回転とを切り替える制御手段として機能する。制御部52は、回転駆動部51と電気的に接続され、回転駆動部51に指令信号を送信して、回転駆動部51の正回転、逆回転の切替を制御する。
【0046】
そして、エバポレーター13は、濃縮装置1に設置された状態において、配管L31と経路L12とが連通し、配管L32と経路L13とが連通し、配管L33と経路L8とが連通している。配管L31は、容器31内の気体を排出する排気管として機能する。配管L32は、容器31内の薬液を導出させる導出配管として機能する。配管L33は、容器31内に薬液を導入する導入配管として機能する。経路L12及び配管L31は、容器31内を減圧する減圧ラインとして利用される。経路L13は、製品回収容器14と接続され、配管L32及び経路L13は、容器31内の薬液を回収する回収ラインとして利用される。また、経路L12には、バルブPV9が設けられ、経路L13には、バルブPV10が設けられている。
【0047】
エバポレーター13では、固相抽出カラム12から供給されるRI化合物を含む溶液が、配管L33を通じて容器31内に供給される。加熱部38は、容器31を加熱し、この加熱によって(溶出用)有機溶媒が蒸発し除去される。有機溶媒が除去された残りのRI化合物は、試薬容器24から経路L9、L8、配管L33を通じて容器31内に供給される注射用水又は生理食塩水に溶解する。
【0048】
製品回収容器14は、注射用水又は生理食塩水に溶解したRI化合物を製品として回収するものである。
【0049】
経路L1〜L13は、取り扱い性、コストパフォーマンスの観点から特に、シリコンチューブが好ましい。また、バルブPV1〜PV10は、ピンチバルブ(管を押し挟んで流路を開閉するバルブ)であるが、三方活栓(医療用の流路切替部品)等を用いても良い。
【0050】
次に、このように構成された濃縮装置1を用いて、RI化合物合成装置60によって合成されたRI化合物の濃縮方法について、図2を参照しながら説明する。まず、RI化合物合成装置60によって合成されたRI化合物を含む分離液が、接続部10a及び経路L1を経由してリザーバー11に回収される。次に、バルブPV2を開状態として、経路L3及びL4を連通させる。すると、試薬容器21内の希釈用水が、経路L3及びL4を経由してリザーバー11に導入される。分離液に水を混合することで、固相抽出に適した溶媒組成になる。
【0051】
次いで、バルブPV2を閉状態とすると共に、バルブPV1及びPV5を開状態として、経路L7及びL10を連通させる。分離液が固相抽出カラム12へ移送され、RI化合物が固相抽出カラム12に吸着する。一方、分離液に含まれる溶媒は、経路L10を経由して廃液槽25へと送られる。分離液がすべて固相抽出カラム12へ移送されたら、バルブPV3を開状態とすることで、試薬容器22内の洗浄用水が経路L5、L3、及びL7を経由して固相抽出カラム12へ移送される。このようにすることで、経路内が洗浄されると共に、固相抽出カラム12内のRI化合物から不純物が除去されRI化合物が精製される。不純物を含んだ洗浄用水は、経路L10を通り廃液槽25へと送られる。
【0052】
次いで、バルブPV3及びPV5を閉状態とすると共に、バルブPV4、PV7、及びPV8を開状態として、経路L6、L3、L7、及びL8を連通させる。すると、試薬容器23内の溶出用有機溶媒が固相抽出カラム12へ移送され、固相抽出カラム12内のRI化合物が溶出用有機溶媒に溶解する。RI化合物が溶解した溶液は、経路L8及び配管L33を経由してエバポレーター13に回収される。
【0053】
次いで、バルブPV4、PV1、PV7及びPV8を閉状態とすると共に、PV9を開状態として、経路L12、配管L31及び容器31を連通させる。この状態で、エバポレーター13を加熱部38で加熱することによって、RI化合物が溶解した溶液から、溶出用有機溶媒を蒸発させて除去する。このとき、制御部52は、回転駆動部51による回転(正回転/逆回転)の切り替え制御を行い、回転駆動部51は、駆動ローラー36を介して、容器31に回転力を付与する。そして、エバポレーター13の容器31は、回転軸L周りに正回転又は逆回転している。
【0054】
容器31は、例えば、回転軸L周りに360度回転すると、逆方向へ360度回転し、これを繰り返している。このエバポレーター13では、可撓性及び収縮性を有する配管L31〜L33が所定の長さを有し、容器31とは反対側の端部L31b〜L33bが、容器31と離間して支持されているため、容器31の回転による配管L31〜L33のねじれを許容することができる(図5参照)。
【0055】
溶出用有機溶媒が十分除去されたら、バルブPV6、PV7及びPV8を開状態として、経路L8、L9、配管L33及び容器31を連通させる。試薬容器24内の溶出液(注射用水又は生理食塩水)が移送され、エバポレーター13の容器31内のRI化合物を溶解させる。このとき、容器31は、上述した通り、回転軸L周りに正回転又は逆回転していることが好ましい。
【0056】
最後に、バルブPV6、PV7、PV8、及びPV9を閉状態とすると共に、バルブPV10を開状態として、容器31、配管L32、及び経路L13を連通させる。RI化合物を含む溶出液を製品回収容器14へ移送することで、製品用RI化合物溶出液が得られる。
【0057】
そして、製品用RI化合物溶出液が得られた後、使用済みの濃縮装置1は、配管L31〜L33と容器31とが一体とされて構成されたエバポレーター13が、フレーム35ごと取外される。次に、滅菌済みの新たなエバポレーター13が、濃縮装置1に取付けられる。そして、配管L31〜L33が、各々接続相手の配管経路L12,L13,L33にワンタッチで接続され、新たな濃縮に利用される。
【0058】
このように本実施形態の濃縮装置1においては、エバポレーター13の容器31及び配管L31〜L33が一体として構成されているため、使用済みエバポレーター13から滅菌済みエバポレーター13への交換が容易に、短時間に行うことができる。すなわち、容器と配管とが別々に構成され、容器のみを取り替える従前のロータリーエバポレーターでは、容器を取外した際に、容器の開口部が外部に開放された状態となるため、容器内が汚染されるおそれがあった。本実施形態では、容器31と配管L31〜L3とが一体として構成されているため、外部環境の影響を受けず、容器31内の滅菌性を担保することができる。
【0059】
また、エバポレーター13では、容器31の回転時において容器31内の薬液80の液面80aは、中央が窪み外側が上昇するように湾曲するため、薬液80の液面80aの表面積を増やし蒸発効率を向上させることができる。その結果、放射性薬剤の濃縮時間を短縮することが可能となる。
【0060】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態にあっては、エバポレーター13は、蒸発手段として、加熱部を備える構成としているが、その他の手段を用いて、薬液中の溶媒を蒸発させて除去する構成でもよい。例えば、凍結乾燥等によって溶媒除去を行う構成としてもよく、要は溶媒が完全に除去されて、高純度の目的RI化合物が得られればよい。
【0061】
また、上記実施形態にあっては、RI化合物の濃縮装置としているが、放射性同位体を含まない化合物、又は生体高分子等の濃縮装置としてもよく、必要に応じて、冷却装置、ろ過器、イオン交換樹脂、滅菌フィルター、RIモニター、遮蔽体を備える構成としてもよい。さらに、注射液の作製に限らず、他の用途に用いる化合物の合成プロセスにおける、反応中間体の濃縮にも使用可能である。
【0062】
また、上記実施形態にあっては、濃縮装置1は、分離液貯留部及び固相抽出部を備える構成としているが、分離液貯留部及び固相抽出部を備えていない濃縮装置としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態にあっては、濃縮装置1は、試薬貯留部、廃液回収部を備える構成としているが、これらの試薬貯留部、廃液回収部を備えていない濃縮装置としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態にあっては、容器を回転させる回転手段を備える構成としているが、容器を回転させない構成でもよい。また、上記実施形態では、配管のねじれを許容するために、可撓性を有するチューブを用いると共に、配管の容器とは反対側の端部を容器と離間させて支持するフレーム(支持体)を用いているが、容器と一体として構成される配管は、可撓性を有していないものでもよい。例えば、回転式管継手を用いることで、容器31の回転を許容する構成としてもよい。また、容器の回転運動に代えて、その他の運動を用いることで、容器内の薬液を攪拌する構成としてもよい。
【0065】
また、一体として構成された容器31及び配管L31〜L33は、使い捨て可能な構成であることが好ましいが、洗浄、滅菌処理を行うことにより、再使用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…放射性薬剤濃縮装置、11…リザーバー(分離液貯留部)、12…固相抽出カラム(固相抽出部)、13…エバポレーター(濃縮部)、14…製品回収容器、21〜24…試薬容器、25…廃液槽(廃液回収部)、31…容器、32…容器本体、33…蓋体、34…接続部、35…フレーム、51…回転駆動部、52…制御部、L1〜L13…管経路、PV1〜PV10…バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素標識化合物を合成するRI化合物合成装置に接続され、前記RI化合物合成装置から供給される前記放射性同位元素標識化合物及び有機溶媒を含む薬液を濃縮する放射性薬剤濃縮装置であって、
前記薬液から前記有機溶媒を蒸発させることで、前記放射性同位元素標識化合物を濃縮する濃縮部と、を有し、
前記濃縮部は、
薬液を貯留する容器と、
前記容器と連通する配管であり、前記容器内に前記薬液を導入させる導入配管と、
前記容器内の前記有機溶媒を蒸発させる蒸発手段と、
前記容器と連通する配管であり、前記容器内の気体を排出する排気管と、
を備え、
前記容器と、当該容器に連通する前記配管とが一体として構成されていることを特徴とする放射性薬剤濃縮装置。
【請求項2】
前記容器と連通する配管には、接続相手である他の配管との着脱を自在とする接続部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放射性薬剤濃縮装置。
【請求項3】
前記濃縮部は、
前記容器を回転軸周りに回転させる回転手段と、
前記回転手段による回転の正回転、逆回転を切り替える制御手段と、
前記配管の前記容器とは反対側の端部を前記容器と離間させて支持する支持体とを備え、
前記配管は、可撓性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性薬剤濃縮装置。
【請求項4】
薬液を貯留する容器と、
前記容器と連通する配管であり、前記容器内に前記薬液を導入させる導入配管と、
前記容器内の前記薬液を蒸発させる蒸発手段と、
前記容器と連通する配管であり、前記容器内の気体を排出する排気管と、
を備え、
前記容器と、当該容器に連通する前記配管とが一体として構成されていることを特徴とする薬液用蒸発装置。
【請求項5】
前記容器を回転軸周りに回転させる回転手段と、
前記回転手段による回転の正回転、逆回転を切り替える制御手段と、
前記配管の前記容器とは反対側の端部を前記容器と離間させて支持する支持体とを備え、
前記配管は、可撓性を有することを特徴とする請求項4に記載の薬液用蒸発装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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