説明

放射性薬剤濃縮装置

【課題】濃縮時間が短縮され、RI化合物の滅菌性の担保が可能であり、使い捨て可能な放射性薬剤濃縮装置の提供をすること。
【解決手段】放射性同位元素標識化合物を合成するRI化合物合成装置60に接続され、RI化合物合成装置60から供給される水、有機溶媒及び前記放射性同位元素標識化合物を含む分離液を濃縮する放射性薬剤濃縮装置1であって、RI化合物合成装置60との着脱が自在である接続部10aと、放射性同位元素標識化合物を含む溶液から溶媒を除去することで放射性同位元素標識化合物を濃縮する濃縮部13と、接続部10aと濃縮部13とを連通する第1の経路L1と、を備える。濃縮部13と、第1の経路L1と、はディスポーザブルであるため、使用後、新しい濃縮部13と、第1の経路L1とに交換することで、清浄度及び滅菌性のことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性薬剤濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用される放射性同位元素標識化合物(RI化合物)は、放射性同位元素(RI)を所定の原料試薬と化学反応させるRI化合物合成装置で合成される。合成されたRI化合物は、高速液体クロマトグラフィー、その他の方法によって、反応混合物から分離液として回収される。その後、分離液中に含まれる目的RI化合物は、濃縮装置による溶媒除去、生理食塩水への溶解、及び滅菌処理の各工程を経て、放射性薬剤として製品化される。このような濃縮装置としては、ロータリーエバポレータを備えた、減圧加熱下で溶媒除去を行う装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−271479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記濃縮装置は、分離液中に含まれる多量の溶媒(水や有機溶媒等)を除去するために設計されたものであり、強力な減圧環境にも耐えられるような構成となっている。しかしながら、RI化合物合成装置からの着脱に手間がかかる点、溶媒中に水を含むため、減圧環境でも溶媒除去に時間がかかる点、更に濃縮装置の細部まで洗浄が十分に行えないため、滅菌性の担保といった放射性薬剤の品質維持が難しい点等、上記濃縮装置には改善すべき点が多く残されている。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、濃縮時間が短縮され、RI化合物の滅菌性の担保が可能であり、使い捨て可能な放射性薬剤濃縮装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、放射性同位元素標識化合物を合成するRI化合物合成装置に接続され、RI化合物合成装置から供給される放射性同位元素標識化合物を含む分離液を濃縮する放射性薬剤濃縮装置であって、RI化合物合成装置との着脱が自在である第1の接続部と、放射性同位元素標識化合物を含む溶液から有機溶媒を除去することで放射性同位元素標識化合物を濃縮する濃縮部と、第1の接続部と濃縮部とを連通する第1の経路と、を有し、濃縮部と、第1の経路と、はディスポーザブルであることを特徴とする放射性薬剤濃縮装置を提供する。
【0007】
このように構成された放射性薬剤濃縮装置によれば、RI化合物合成装置との着脱が自在である接続部を有することで、放射性薬剤濃縮装置の交換が短時間で行え、生産性が向上するといった効果が得られる。さらに、濃縮部及び第1の経路は、ディスポーザブル(使い捨て可能)であるため、使用済みの濃縮部及び第1の経路を廃棄し、滅菌済みの濃縮部及び第1の経路に交換することで、滅菌性及び清浄度の担保が可能となる。そして、濃縮部及び第1の経路の洗浄操作が不要となるため、被爆のリスクも低減される。
【0008】
本発明の放射性薬剤濃縮装置は、第1の経路中に、分離液を一時的に貯留する分離液貯留部と、分離液から放射性同位元素標識化合物を吸着させる固相抽出部と、を更に備え、分離液貯留部と、固相抽出部とは、ディスポーザブルであることが好ましい。
【0009】
このように構成された放射性薬剤濃縮装置によれば、分離液貯留部及び固相抽出部がディスポーザブルであるため、滅菌性、清浄度の担保が可能となる。さらに、分離液貯留部、固相抽出部の洗浄操作が不要となるため、被爆のリスクも低減される。
【0010】
本発明の放射性薬剤濃縮装置は、放射性同位元素標識化合物を溶解するときに用いる試薬を貯留する試薬貯留部と、放射性同位元素標識化合物を固相抽出部に吸着させるときに発生する廃液を回収する廃液回収部と、第1の経路と試薬貯留部とを固相抽出部の下流で連通する第2の経路と、第1の経路と廃液回収部とを固相抽出部の下流で連通する第3の経路と、を更に備え、第2の経路と、第3の経路と、はディスポーザブルであり、接続部と、第2の経路と試薬貯留部とを接続する第2の接続部と、及び、第3の経路と廃液回収部とを接続する第3の接続部とは、ルアーコネクターであることが好ましい。
【0011】
このように構成された放射性薬剤濃縮装置によれば、第1の接続部、第2の接続部及び第3の接続部がルアーコネクターであるため、それぞれ、RI化合物合成装置、試薬貯留容器、廃液回収容器との着脱が容易となる。その結果、ディスポーザブル化されている部材の交換が短時間で行うことができ、製造歩留まりが向上する。
【0012】
本発明の放射性薬剤濃縮装置は、濃縮部、分離液貯留部及び固相抽出部を保持する保持体を更に有し、保持体には、濃縮部、分離液貯留部及び固相抽出部をそれぞれ着脱自在に係止する係止手段が設けられているが好ましい。
【0013】
このように構成された放射性薬剤濃縮装置によれば、濃縮部、分離液貯留部及び固相抽出部は、着脱自在に保持体に係止されているので、着脱作業が容易になる。その結果、ディスポーザブル化されている部材の交換が短時間で行うことができ、製造歩留まりが向上する。
【0014】
保持体には、第1の経路、第2の経路及び第3の経路をそれぞれ着脱自在に係止する係止手段が更に設けられていることが好ましい。
【0015】
このように構成された放射性薬剤濃縮装置によれば、第1の経路、第2の経路及び第3の経路は、着脱自在に保持体に係止されているので、着脱作業が容易になる。その結果、ディスポーザブル化されている部材の交換が短時間で行うことができ、製造歩留まりが向上する。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明における放射性薬剤濃縮装置によれば、濃縮時間が短縮され、RI化合物の滅菌性の担保が可能であり、使い捨て可能な放射性薬剤濃縮装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】放射性薬剤製造装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る放射性薬剤濃縮装置の概略系統図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリザーバーの側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るリザーバーの正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る抽出カラムの側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る抽出カラムの正面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る濃縮部の正面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る濃縮部の側面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る管路の正面図(A)及び断面図(B)である。
【図10】本発明の実施形態に係る接続部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による放射性薬剤濃縮装置の好適な実施形態について、図1〜図10を参照しながら説明するなお、図面の説明において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。
【0019】
図1は、放射性薬剤製造装置の概略構成図である。このような放射性薬剤製造装置100は、例えば病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用される18F−FLT(フルオロチミジン)、18F−FMISO(フルオロソニダゾール)、11C−ラクロプライド等の放射性同位元素標識化合物(RI化合物)である放射性薬剤(放射性医薬品を含む)を製造する装置であり、放射性同位元素(RI)を製造するためのターゲット50、ターゲット50によって生成されたRIを用いてRI化合物を合成するための放射性化合物合成装置60(RI化合物合成装置)、RI化合物合成装置によって合成されたRI化合物を濃縮して製品にする放射性薬剤濃縮装置1(以下「濃縮装置」という。)を備えている。本実施形態に係る濃縮装置1は、使い捨て可能(ディスポーザブル)な部品を備えている。ターゲット50、RI化合物合成装置60及び濃縮装置1は、RI又はRI化合物が移動するための経路によって、この順で接続されている。そして、RI化合物合成装置60及び濃縮装置1は、ホットセル70(放射性遮蔽壁)によって囲まれている。
【0020】
図2は、放射性薬剤濃縮装置の概略系統図である。濃縮装置1は、リザーバー(分離液貯留部)11と、試薬容器21〜24と、固相抽出カラム(固相抽出部)12と、廃液槽(廃液回収部)25と、乾燥容器(濃縮部)13と、製品回収容器14と、経路L1〜L13と、バルブPV1〜PV10と、を備えている。
【0021】
そして、経路L1、リザーバー11、経路L7、固相抽出カラム12、及び経路L8は、特許請求の範囲に記載の第1の経路に相当し、後述する接続部(第1の接続部)10aと乾燥容器13とを連通する。また、経路L9は、特許請求の範囲に記載の第2の経路に相当し、固相抽出カラム12の下流で、第1の経路と試薬容器(試薬貯留部)24とを連通する試薬供給部として機能する。また、経路L10は、特許請求の範囲に記載の第3経路に相当し、固相抽出カラム12の下流で、第1の経路と廃液槽25とを連通する。
【0022】
また、濃縮装置1は、各種機器(乾燥容器13、リザーバー11、固相抽出カラム12、第1〜第3の経路)を保持するフレーム(保持体)40を(図3〜図6、図9)備えている。フレーム40には、各種機器を着脱自在に係止するクリップ(係止手段、固定具)41〜43が設けられている。
【0023】
リザーバー11は、RI化合物合成装置60から供給された分離液を一時的に貯めるものである。リザーバー11は、第1の経路中に、分離液を一時的に貯留する本発明の分離液貯留部として機能する。上記分離液は、水、有機溶媒、及びRI化合物を含むものである。リザーバー11の材質としては、耐薬品性のものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂(PTFE、ETFE、PVDF等)、及びガラス等が好ましい。取り扱い性、コストパフォーマンスの観点から特に、ポリプロピレン(PP)が好ましい。また、リザーバー11には、RI化合物合成装置60から供給される分離液を流通させる経路(供給経路)L1が接続されている。さらに、リザーバー11には、リザーバー11内を減圧するため減圧ラインとして機能する経路L2が接続されると共に、窒素が導入され圧送ラインとして機能する経路L3が接続されている。これらの経路L1、L2、L3は、リザーバー11の上部に接続されている。一方、リザーバー11の下部には、リザーバー11内の分離液を固相抽出カラム12に供給する経路L7が接続されている。また、図3及び図4に示すように、リザーバー11は、クリップ41によって係止され、着脱自在にフレーム40に固定されている。
【0024】
また、リザーバー11に接続された圧送ライン(経路L3)には、経路L4〜L6を介して試薬容器21〜23が各々接続されている。試薬容器21には分離液を希釈する水が充填され、試薬容器22には固相抽出カラム12に吸着したRI化合物を洗浄する水が充填され、試薬容器23には固相抽出カラム12に吸着したRI化合物を溶出する有機溶媒が充填されている。さらに、経路L4〜L6には、バルブPV2〜PV4が各々設けられている。
【0025】
そして、リザーバー11では、試薬容器21から供給される希釈用水等で分離液を希釈することで、固相抽出に適した溶媒組成にすることができ、希釈された分離液が固相抽出カラム12に供給される。
【0026】
固相抽出カラム12は、RI化合物を吸着させる樹脂が充填されたカラムを備えるものである。上記樹脂は、RI化合物を特異的に吸着させることができれば特に限定されないが、疎水性樹脂が好ましい。疎水性樹脂としては、例えば、シリカ、オクタデシルシリカ(18)、及びオクチルシリカ(C8)が挙げられる。取り扱い性、コストパフォーマンスの観点から特に、Sep−Pack C18(Waters社製、商品名)が好ましく用いられる。また、目的化合物に応じてエンドキャップ処理を施した樹脂の使用も可能である。そして、固相抽出カラム12には、リザーバー11に接続された経路L7が上部に接続され、乾燥容器13と接続された経路L8が下部に接続されている。また、経路L7には、バルブPV1が設けられている。また、図5及び図6に示すように、固相抽出カラム12は、クリップ42によって係止され、着脱自在にフレーム40に固定されている。
【0027】
固相抽出カラム12では、リザーバー11から供給される分離液中のRI化合物を吸着させ、水及び有機溶媒を短時間で除去することができる。また、カラムに吸着したRI化合物を試薬容器22から供給される洗浄用水で洗浄することで、RI化合物から不純物の除去が可能となる。さらに、試薬容器23から供給される溶出用有機溶媒で溶出することで、RI化合物が少量の乾燥した有機溶媒に溶けた状態で、乾燥容器13へ供給することが可能となる。溶出用有機溶媒は、目的のRI化合物によって適宜変更可能であるが、例えば、アセトニトリル、エタノール、メタノール及び、これらの混合物等が挙げられる。
【0028】
固相抽出カラム12と乾燥容器13とを接続する経路L8には、バルブPV5を備えた経路L10を介して廃液槽25が接続されている。そして、固相抽出カラム12を通った分離液中の水及び有機溶媒、並びに固相抽出カラム12を洗浄した水は、上記廃液槽25に廃棄される。廃液槽25は、RI化合物を固相抽出カラム12に吸着させたときに発生する廃液を回収する本発明の廃液回収部として機能する。
【0029】
また、経路L8には、バルブPV6を備えた経路L9を介して試薬容器24が接続されている。試薬容器24には、RI化合物を溶解する注射用水又は生理食塩水が充填されている。試薬容器24は、RI化合物を溶解するときに用いる試薬(注射用水又は整理食塩水)を貯留する試薬貯留部として機能する。
【0030】
さらに、経路L8には、窒素ガスが導入され圧送ラインとして機能する経路L11が接続されている。また、経路L8には、バルブPV7,PV8が設けられている。バルブPV7は、経路L9,L10の接続部と、経路L11の接続部との間に配置され、バルブPV8は、経路L11との接続部と、乾燥容器13との間に配置されている。
【0031】
図7及び図8が示すように乾燥容器13は、固相抽出カラム12から供給されるRI化合物を含む溶液を回収する容器と、上記RI化合物を含む溶液を加熱する加熱装置30とを備える。上記容器の材質としては耐薬品性及び耐熱性のものであれば特に限定されないが、ガラス、及びフッ素樹脂等が好ましい。取り扱い性、コストパフォーマンス、及び内部の視認性の観点から特に、ガラスが好ましい。加熱装置30は、公知の装置であれば特に限定されないが、例えばマントルヒーター、オイルバス、エアヒーター及びブロックヒーター等が挙げられる。安全性、作業の簡易性の観点から特に、エアヒーターが好ましい。
【0032】
乾燥容器13では、固相抽出カラム12から供給されるRI化合物を含む溶液を回収し、加熱装置30での加熱によって短時間に溶出用有機溶媒を除去することが可能となる。溶出用有機溶媒が除去された残りのRI化合物は、試薬容器24から供給される注射用水又は生理食塩水に溶解する。
【0033】
また、乾燥容器13には、バルブPV9を備え減圧ラインとして利用される経路L12、バルブPV10を備え製品回収容器14と接続された経路L13が接続されている。
【0034】
製品回収容器14は、注射用水又は生理食塩水に溶解したRI化合物を製品として回収するものである。
【0035】
ここで、濃縮装置1では、RI化合物合成装置60から分離液を供給する供給経路(経路L1)に、RI化合物合成装置との着脱を自在とする接続部(第1の接続部)10aが設けられている。接続部10aは、例えば接続相手の配管端部に嵌められて連結されている。接続部10aの材質としては、耐薬品性のものであれば特に限定されないが、フッ素樹脂、ポリプロピレン(PP)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が好ましい。取り扱い性、コストパフォーマンスの観点から特に、ポリプロピレン(PP)が好ましい。接続部10の形状としては、RI化合物合成装置とワンタッチで着脱が可能であり、気密性が十分保たれているものであれば特に限定されないが、例えばサーパス工業株式会社製のルアーロックフィッティング(商品名)等のような螺合によって接続されるもの等が挙げられる(図10)。このような構成を備えることで、RI化合物合成装置との着脱が自在となり、濃縮装置1の交換が短時間で行え、生産性が向上するといった効果が得られる。
【0036】
同様に、経路L2及びL3のリザーバー11と接続していない端部、経路L4〜経路L6と試薬容器21〜23との接続部分、経路L9と試薬容器24との接続部分、経路L10と廃液槽25との接続部分、経路L11の経路L8と接続していない端部、並びに、経路L12及びL13の乾燥容器13と接続していない端部にも、それぞれ着脱自在な接続部10bが設けられている。これらの接続部10bは、上記の接続部10aと同様の構成とすることができる。
【0037】
そして、経路L9(第2の経路)と試薬容器(試薬貯留部)24とを接続する接続部10bが、特許請求の範囲に記載の第2の接続部に相当する。また、経路L10(第3の経路)と廃液槽(廃液回収部)25とを接続する接続部10bが、特許請求の範囲に記載の第3の接続部に相当する。
【0038】
経路L1〜L13は、ディスポーザブルであり、形状が可変である管経路が好ましい。取り扱い性、コストパフォーマンスの観点から特に、シリコンチューブが好ましい。また、バルブPV1〜PV10は、ピンチバルブ(管を押し挟んで流路を開閉するバルブ)であるが、三方活栓(医療用の流路切替部品)等を用いても良い。図9に示すように経路L1〜L13は、クリップ43によって係止され、着脱自在にフレーム40に固定されている。
【0039】
リザーバー11、固相抽出カラム12、乾燥容器13、接続部10a、接続部10b、及び経路L1〜13は、使用後に適当な方法で洗浄して再利用することも可能であるが、濃縮装置の安全性、及び滅菌性の担保等のRI化合物の品質維持の観点からディスポーザブル(使い捨て)であることが好ましい。ディスポーザブルにすることで、洗浄操作が不要になり被爆のリスクが低減されると共に、生産効率が向上する。さらに、新たに滅菌済みの濃縮装置に交換することで、RI化合物の滅菌性が担保されるといった効果が得られる。
【0040】
次に、このように構成された濃縮装置1を用いて、RI化合物合成装置60によって合成されたRI化合物の濃縮方法について、図2を参照しながら説明する。まず、RI化合物合成装置60によって合成されたRI化合物を含む分離液が、接続部10a及び経路L1を経由してリザーバー11に回収される。次に、バルブPV2を開状態として、経路L3及びL4を連通させる。すると、試薬容器21内の希釈用水が、経路L3及びL4を経由してリザーバーに導入される。分離液に水を混合することで、固相抽出に適した溶媒組成になる。
【0041】
次いで、バルブPV2を閉状態とすると共に、バルブPV1及びPV5を開状態として、経路L7及びL10を連通させる。分離液が固相抽出カラム12へ移送され、RI化合物が固相抽出カラム12に吸着する。一方、分離液に含まれる溶媒は、経路L10を経由して廃液槽25へと送られる。分離液がすべて固相抽出カラム12へ移送されたら、バルブPV3を開状態とすることで、試薬容器22内の洗浄用水が経路L5、L3、及びL7を経由して固相抽出カラム12へ移送される。このようにすることで、経路内が洗浄されると共に、固相抽出カラム12内のRI化合物から不純物が除去されRI化合物が精製される。不純物を含んだ洗浄用水は、経路L10を通り廃液槽25へと送られる。
【0042】
次いで、バルブPV3及びPV5を閉状態とすると共に、バルブPV4、PV7、及びPV8を開状態として、経路L6、L3、L7、及びL8を連通させる。すると、試薬容器23内の溶出用有機溶媒が固相抽出カラム12へ移送され、固相抽出カラム12内のRI化合物が溶出用有機溶媒に溶解する。RI化合物が溶解した溶液は、経路L8を経由して乾燥容器13に回収される。
【0043】
次いで、バルブPV4、PV1、PV7及びPV8を閉状態とすると共に、PV9を開状態として、経路L12を連通させる。この状態で、乾燥容器13を加熱装置(図示せず)で加熱することによって、RI化合物が溶解した溶液から、溶出用有機溶媒を除去する。
【0044】
溶出用有機溶媒が十分除去されたら、バルブPV6、PV7及びPV8を開状態として、経路L8及びL9を連通させる。試薬容器24内の溶出液(注射用水又は生理食塩水)が移送され、乾燥容器13内のRI化合物を溶解させる。
【0045】
最後に、バルブPV6、PV7、PV8、及びPV9を閉状態とすると共に、バルブPV10を開状態として、経路L13を連通させる。RI化合物を含む溶出液を製品回収容器14へ移送することで、製品用RI化合物溶出液が得られる。
【0046】
そして、製品用RI化合物溶出液が得られた後、使用済みの濃縮装置1は、接続部10a及び10bにおける接続がワンタッチで解除され、RI化合物合成装置60、圧送ライン、減圧ライン、試薬容器21〜24、廃液槽25及び製品回収容器14から取り外される。次に、滅菌済みの新たな濃縮装置1が、接続部10a及び10bによってワンタッチで接続され、RI化合物合成装置60等に取り付けられて新たな濃縮に利用される。
【0047】
このように本実施形態の濃縮装置1においては、RI化合物を固相抽出カラム12に吸着させ、溶出用有機溶媒に溶解させることで、従来よりも少ない溶媒量で乾燥容器13へと送ることができる。さらに、乾燥容器13を従来よりも小型化することができる。また、濃縮装置1は、使い捨て可能な部品を備える構成とされ、着脱が自在な接続部10a及び10bによってRI化合物合成装置60等と接続されているため、使用済み濃縮装置1から滅菌済み濃縮装置1への交換が容易に、短時間に行うことができる。その結果、濃縮時間が短縮され、RI化合物の滅菌性の担保が可能であり、使い捨て可能な濃縮装置1の提供が可能となる。
【0048】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態にあっては、乾燥容器13は加熱装置を備えており、加熱によって溶媒除去を行う構成としているが、凍結乾燥等によって溶媒除去を行う構成としてもよく、要は溶媒が完全に除去されて、高純度の目的RI化合物が得られればよい。
【0049】
また、上記実施形態にあっては、RI化合物の濃縮装置としているが、放射性同位体を含まない化合物、又は生体高分子等の濃縮装置としてもよく、必要に応じて、冷却装置、ろ過器、イオン交換樹脂、滅菌フィルター、RIモニター、遮蔽体を備える構成としてもよい。さらに、注射液の作製に限らず、他の用途に用いる化合物の合成プロセスにおける、反応中間体の濃縮にも使用可能である。
【0050】
また、上記実施形態にあっては、濃縮装置1は、分離液貯留部及び固相抽出部を備える構成としているが、分離液貯留部及び固相抽出部を備えていない濃縮装置としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態にあっては、濃縮装置1は、試薬貯留部、廃液回収部、第2の経路、及び第3の経路を備える構成としているが、これらの試薬貯留部、廃液回収部、第2の経路、及び第3の経路を備えていない濃縮装置としてもよい。
【0052】
また、上記実施形態にあっては、濃縮装置1は、濃縮部、分離液貯留部及び固相抽出部を保持する保持体を備える構成としているが、保持体を備えていない濃縮装置としてもよい。また、上記実施形態にあっては、第1〜第3の経路が着脱自在な係止手段によって、保持体に保持されているが、第1〜第3の経路が、係止手段によって保持体に保持されていない濃縮装置1としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、係止手段として、クリップを例示しているが、その他の構成の係止手段でもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…放射性薬剤濃縮装置、10a,10b…接続部、11…リザーバー(分離液貯留部)、12…固相抽出カラム(固相抽出部)、13…乾燥容器(濃縮部)、14…製品回収容器、21〜24…試薬容器、25…廃液槽(廃液回収部)、40…フレーム(保持体)、41〜43…クリップ(係止手段)、L1〜L13…管経路、PV1〜PV10…バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素標識化合物を合成するRI化合物合成装置に接続され、前記RI化合物合成装置から供給される前記放射性同位元素標識化合物を含む分離液を濃縮する放射性薬剤濃縮装置であって、
前記RI化合物合成装置との着脱が自在である第1の接続部と、
前記放射性同位元素標識化合物を含む溶液から有機溶媒を除去することで前記放射性同位元素標識化合物を濃縮する濃縮部と、
前記第1の接続部と前記濃縮部とを連通する第1の経路と、を有し、
前記濃縮部と、前記第1の経路と、はディスポーザブルであることを特徴とする放射性薬剤濃縮装置。
【請求項2】
前記第1の経路中に、前記分離液を一時的に貯留する分離液貯留部と、
前記分離液から前記放射性同位元素標識化合物を吸着させる固相抽出部と、を更に備え、
前記分離液貯留部と、前記固相抽出部とは、ディスポーザブルであることを特徴とする、請求項1に記載の放射性薬剤濃縮装置。
【請求項3】
前記放射性同位元素標識化合物を溶解するときに用いる試薬を貯留する試薬貯留部と、
前記放射性同位元素標識化合物を前記固相抽出部に吸着させるときに発生する廃液を回収する廃液回収部と、
前記第1の経路と前記試薬貯留部とを前記固相抽出部の下流で連通する第2の経路と、
前記第1の経路と前記廃液回収部とを前記固相抽出部の下流で連通する第3の経路と、を更に備え、
前記第2の経路と、前記第3の経路と、はディスポーザブルであり、
前記第1の接続部と、前記第2の経路と前記試薬貯留部とを接続する第2の接続部と、及び、前記第3の経路と前記廃液回収部とを接続する第3の接続部とは、ルアーコネクターであることを特徴とする請求項2に記載の放射性薬剤濃縮装置。
【請求項4】
前記濃縮部、前記分離液貯留部及び前記固相抽出部を保持する保持体を更に有し、
前記保持体には、前記濃縮部、前記分離液貯留部及び前記固相抽出部をそれぞれ着脱自在に係止する係止手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の放射性薬剤濃縮装置。
【請求項5】
前記保持体には、前記第1の経路、前記第2の経路及び前記第3の経路をそれぞれ着脱自在に係止する係止手段が更に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の放射性薬剤濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−87098(P2012−87098A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235677(P2010−235677)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】