説明

放射性試料ホルダ

【課題】放射性試料の注入されたシリンジを安定した状態で保持することができるとともに、異なるサイズのシリンジに対しても容易に対応することのできる放射性試料ホルダを提供する。
【解決手段】放射性試料ホルダ62は、上面部にノブ71を有し、タングステン等の放射線遮蔽材料からなる放射線遮蔽板72と、放射線遮蔽板72から鉛直下方向に延在するシャフト74と、シャフト74の下端部に装着され、放射線遮蔽ケース40に挿入されたシリンジ24を立設状態で保持する略円形の保持部材76とを備える。保持部材76は、シリンダ34の鍔部32を上下から挟持することでシリンジ24を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性試料の注入されたシリンジを保持し、前記放射性試料の放射能量を測定する放射能測定装置に装填される放射性試料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
放射性試料を被検体に投与し、特定部位に集中する放射性試料から放出される放射線を測定することにより、被検体の状態を検査する方法及び装置が開発されている。
【0003】
この場合、放射性試料は、通常、放射性試料分注装置(特許文献1参照)からシリンジに注入され、シリンジを介して被検体に投与される訳であるが、被検体の状態を正確に検査するためには、シリンジに正確な量の放射性試料を注入しておく必要がある。そこで、シリンジに注入されている放射性試料の放射能量を測定する装置として、非特許文献1に開示された放射能測定装置が開発されている。
【0004】
この放射能測定装置は、放射性試料から放出される放射線による電離作用を利用したものであり、図7に示すように、放射性試料が注入されたシリンジ2をホルダ4に保持させ、センサを内包する円筒状の検出部6にホルダ4を挿入して測定を行う。
【0005】
ホルダ4は、検出部6の開口部に係合する係合部材8が上端部に配設され、この係合部材8から鉛直下方向に延在するシャフト10の下端部にシリンジ2を保持する保持リング12が配設されて構成される。シリンジ2は、シリンダ14の鍔部16を保持リング12の上面部に係合させた状態で針18側を下として保持リング12に保持される。
【0006】
【特許文献1】特公平3−31468号公報
【非特許文献1】CURIEMETER IGC−7(アロカ株式会社カタログ 2000年9月発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、針18を下としてシリンジ2をホルダ4に保持させた場合、シリンジ2に注入されている放射性試料が針18を介して漏洩することが懸念される。また、通常は、注入される放射性試料の量に応じてサイズの異なる複数のシリンジ2が準備されており、各シリンジ2を保持リング12に保持させるためには、そのサイズに応じた保持リング12を有する複数のホルダ4を用意しておかなければならない。
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、放射性試料の注入されたシリンジを安定した状態で保持することができるとともに、異なるサイズのシリンジに対しても容易に対応することのできる放射性試料ホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射性試料ホルダは、保持部材を構成する第1支持部及び第2支持部に形成された溝部にシリンジのピストンを水平方向から挿入し、シリンジのシリンダに配設された鍔部を第1支持部及び第2支持部間の間隙によって挟持することで、針側を上としてシリンジを立設状態で保持部材に保持させる。このようにしてシリンジを保持する放射性試料ホルダは、放射能測定装置に装填され、放射能量の測定が行われる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の放射性試料ホルダは、放射性試料の注入されたシリンジを安定した状態で保持することができるとともに、共通の放射性試料ホルダを異なるサイズのシリンジに対して対応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の放射性試料ホルダが適用される放射性試料注入測定システム20の構成図である。
【0012】
放射性試料注入測定システム20は、作業台22上に設置され、シリンジ24に対して所定量の放射性試料を注入する放射性試料注入装置26と、作業台22の略中央部に配設され、シリンジ24に注入された放射性試料の放射能量を測定する放射能測定装置を構成する放射能検出部28と、放射能検出部28を制御し、検出された放射能量を測定表示する測定表示部30とを備える。なお、放射性試料注入装置26は、コントローラ31によって制御される。
【0013】
ここで、シリンジ24は、図2に示すように、鍔部32を有するシリンダ34と、シリンダ34の一端部に装着される針36と、シリンダ34の他端部から挿入されるピストン38とから構成され、鉛等によって形成される放射線遮蔽ケース40に収納される。なお、放射線遮蔽ケース40には、シリンジ24に注入されている放射性試料の注入量を外部から視認可能とする鉛ガラス板42が装着されている。
【0014】
放射性試料注入装置26のコラム44の前部には、放射線遮蔽ケース40に収納されたシリンジ24を保持するホルダ46と、シリンジ24におけるピストン38の鍔部48が係合するピストン係合部50とが配設される。ホルダ46及びピストン係合部50は、上下に移動可能である。ホルダ46の上部には、放射性試料を収容した試料容器52が装填される。
【0015】
コラム44の下端部には、放射能検出部28の上部と放射性試料注入装置26との間で移動可能な鉛遮蔽板54が収納される。また、放射性試料注入装置26の前部には、鉛を含むL字状の金属板56a、56bによって両側部が保持され、放射性試料注入装置26からの放射線を遮蔽する鉛ガラス板58が配設される。鉛ガラス板58は、放射性試料注入装置26に対して近接離間可能である。
【0016】
放射性試料注入装置26から離間させた状態の鉛ガラス板58と放射性試料注入装置26との間には、放射能検出部28が配設される。放射能検出部28は、図示しない放射能センサを備えて作業台22に収納される円筒体60からなり、この円筒体60には、放射性試料が注入されたシリンジ24を保持した図3に示す放射性試料ホルダ62が挿入される。
【0017】
放射性試料ホルダ62は、作業台22上に載置されたスタンド64によって支持される。スタンド64は、円板状の支持台66に立設される半円筒体68を有する。半円筒体68の略中央部には、切欠部70a、70bが形成されている。
【0018】
放射性試料ホルダ62は、上面部にノブ71を有し、タングステン等の放射線遮蔽材料からなる放射線遮蔽板72と、放射線遮蔽板72の下面部に装着され、直径が放射能検出部28の円筒体60の内径に略等しく設定されている円形のガイド板73と、放射線遮蔽板72から鉛直下方向に延在するシャフト74と、シャフト74の下端部に装着され、直径が放射能検出部28の円筒体60の内径よりもやや小さく設定され、放射線遮蔽ケース40に挿入されたシリンジ24を立設状態で保持する略円形の保持部材76とを備える。
【0019】
保持部材76は、シリンジ24のシリンダ34における鍔部32を下方向から支持する第1支持部78と、鍔部32の厚みに相当する間隙80を介して第1支持部78の上部に配設され、鍔部32を上方向から支持する第2支持部82と、第1支持部78及び第2支持部82間に形成される溝部84とを有する。なお、第1支持部78は、第2支持部82よりも所定量突出することで段部86を形成する。
【0020】
本実施形態の放射性試料注入測定システム20は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、放射性試料注入測定システム20を用いた放射性試料の注入及び測定手順について説明する。
【0021】
先ず、シリンジ24のシリンダ34に対して放射線遮蔽ケース40を装着した後、放射性試料注入装置26のホルダ46に放射線遮蔽ケース40の部分を保持させるとともに、ピストン38の鍔部48をピストン係合部50に係合させる。次いで、鉛ガラス板58を放射性試料注入装置26側に移動させ、放射線の遮蔽状態を確保した後、コントローラ31を操作してシリンジ24への放射性試料の注入作業を開始する。
【0022】
この場合、シリンジ24を保持したホルダ46及びピストン係合部50が上昇することで、上部に配設された試料容器52に針36が刺入される。次いで、コントローラ31から指示された放射性試料の注入量に従い、ピストン係合部50が所定量下降することで、シリンダ34に所定量の放射性試料が注入される。
【0023】
放射性試料がシリンジ24に注入された後、鉛ガラス板58を放射性試料注入装置26から離間させ、放射線遮蔽ケース40が装着された状態のシリンジ24をホルダ46から取り外す。次いで、作業台22上のスタンド64に配設されている放射性試料ホルダ62に対して、シリンジ24を装着する。
【0024】
この場合、放射性試料ホルダ62は、図4及び図5に示すように、放射線遮蔽板72がスタンド64を構成する半円筒体68の上端部に載置された状態で保持されている。そこで、作業者は、放射性試料注入装置26から取り外したシリンジ24を、針36を上にしたままの状態で半円筒体68の開放された部分より挿入し、放射性試料ホルダ62に設定する。
【0025】
すなわち、保持部材76を構成する第1支持部78の段部86にシリンダ34の鍔部32を載置し、第1支持部78と第2支持部82との間の間隙80に鍔部32を挿入するとともに、第1支持部78及び第2支持部82に形成された溝部84にピストン38を挿入する。この場合、針36が上となるようにしてシリンジ24が放射性試料ホルダ62に設定されるため、シリンダ34内の放射性試料が漏洩する不具合が生じることはない。なお、スタンド64には、切欠部70a、70bが形成されており、シリンジ24を放射性試料ホルダ62の保持部材76に装着する際、スタンド64の半円筒体68が作業の邪魔になることがなく、シリンジ24をスタンド64に対して容易に設定することができる。
【0026】
また、放射性試料ホルダ62に装着されたシリンジ24は、シリンダ34の鍔部32が第1支持部78及び第2支持部82によって上下から保持されるとともに、シリンジ24に装着された重金属からなる放射線遮蔽ケース40の重量が鍔部32に付加されるため、針36を上とした状態で放射性試料ホルダ62にしっかりと保持される。さらに、放射性試料ホルダ62は、スタンド64によって保持されているため、作業者は、放射性試料ホルダ62を押さえることなく、シリンジ24を容易に放射性試料ホルダ62に保持させることができる。
【0027】
なお、放射性試料ホルダ62は、シリンダ34の鍔部32を第1支持部78及び第2支持部82間の間隙80に挿入することでシリンジ24を保持するように構成されているため、例えば、サイズの異なる他のシリンジ24であっても、ピストン38の部分を溝部84に挿入させることのできる範囲であれば、放射性試料ホルダ62をサイズの異なる複数のシリンジ24の保持部材として共通に使用することができる。
【0028】
シリンジ24を放射性試料ホルダ62に保持させた後、ノブ71を摘んで放射性試料ホルダ62をシリンジ24とともにスタンド64から取り外し、放射能検出部28の円筒体60に保持部材76側から挿入する。放射性試料ホルダ62が円筒体60の内部に挿入されると、ガイド板73が円筒体60の開口部に係合するとともに、放射線遮蔽板72が円筒体60の上端部に配設され、外部からの放射線の侵入を阻止し得る状態となる。
【0029】
次いで、放射性試料注入装置26のコラム44の下端部に配設されている鉛遮蔽板54をスライドさせて放射能検出部28の上部に配設し、外部からの放射線、例えば、放射性試料注入装置26の試料容器52に残留する放射性試料からの放射線の侵入を確実に阻止できる状態とした後、測定表示部30の制御に基づき、シリンジ24に注入された放射性試料の放射能量の測定を行う。
【0030】
なお、放射能量の測定に際して、シリンジ24には放射線遮蔽ケース40が装着されており、放射線遮蔽ケース40によって遮蔽されている分だけ測定される放射能量が減少することになるが、例えば、放射線遮蔽ケース40のない状態でシリンジ24内の放射性試料を直接測定した場合の値に基づいて予め作成した補正テーブルを用いることにより、放射能量を高精度に推定することができる。
【0031】
また、上述した説明では、放射線遮蔽ケース40の装着されたシリンジ24を放射性試料ホルダ62に保持させるものとしているが、シリンジ24のみを直接放射性試料ホルダ62に保持させるようにしてもよい。
【0032】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の放射性試料ホルダが適用される放射性試料注入測定システムの構成図である。
【図2】放射性試料が注入されるシリンジ及び放射線遮蔽ケースの構成図である。
【図3】シリンジを保持する放射性試料ホルダと、放射性試料ホルダを保持するスタンドの構成図である。
【図4】スタンドを介して放射性試料ホルダに保持されたシリンジの正面図である。
【図5】スタンドを介して放射性試料ホルダに保持されたシリンジの側面図である。
【図6】シリンジを保持した放射性試料ホルダを放射能検出部に挿入する説明図である。
【図7】従来技術に係るホルダの斜視説明図である。
【符号の説明】
【0034】
20…放射性試料注入測定システム 24…シリンジ
26…放射性試料注入装置 28…放射能検出部
32…鍔部 34…シリンダ
36…針 38…ピストン
40…放射線遮蔽ケース 62…放射性試料ホルダ
64…スタンド 72…放射線遮蔽板
74…シャフト 76…保持部材
78…第1支持部 80…間隙
82…第2支持部 84…溝部
86…段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性試料の注入されたシリンジを保持し、前記放射性試料の放射能量を測定する放射能測定装置に装填される放射性試料ホルダにおいて、
放射線遮蔽板と、
前記放射線遮蔽板から鉛直下方向に延在するシャフトと、
前記シャフトの下端部に配設され、針側を上として前記シリンジを立設状態で保持する保持部材と、
を備え、前記保持部材は、前記シリンジを構成するシリンダの鍔部を下方向から支持する第1支持部と、間隙を介して前記第1支持部の上部に配設され、前記鍔部を上方向から支持する第2支持部と、前記第1支持部及び前記第2支持部に形成され、前記シリンジを構成するピストンが水平方向から挿入される溝部とを有することを特徴とする放射性試料ホルダ。
【請求項2】
請求項1記載のホルダにおいて、
前記第1支持部は、上部に配設される前記第2支持部よりも水平方向に所定量突出して形成されることを特徴とする放射性試料ホルダ。
【請求項3】
請求項1記載のホルダにおいて、
前記シリンジは、前記シリンダが放射線遮蔽ケースに収納された状態で前記保持部材に保持されることを特徴とする放射性試料ホルダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−126122(P2006−126122A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317893(P2004−317893)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(591001765)安西メディカル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】