説明

放射率測定方法、放射率測定装置、検査方法、及び、検査装置

【課題】被検物を高温に加熱することなく、被検物の放射率を測定する放射率測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】第1放射エネルギの赤外光を被検物に照射する赤外光照射工程と、前記赤外光を照射された前記被検物からの反射赤外光から第2放射エネルギを測定する測定工程と、前記第2放射エネルギと前記第2放射エネルギとに基づいて前記被検物の放射率を算出する算出工程と、を含む放射率測定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物の放射率を測定する放射率測定方法及び装置、並びに、測定した放射率に基づき被検物を検査する検査方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、被検物をレーザで加熱し、加熱した被検物から放射される赤外光に基づいて放射率を測定するものがある(特許文献1参照)。図8を用いて、従来の技術について説明する。
【0003】
図8は、従来の技術に係る放射率測定装置100の模式図である。
【0004】
レーザ光源101から照射されたレーザ光が、コリメータレンズ102、ポリゴンミラー103、集光レンズ104を介して被検物105に照射される。レーザ光が照射されることにより加熱された被検物105は、温度上昇に応じて赤外光106を放射する。放射された赤外光106は、赤外光受光レンズ107を介して受光装置108に入射する。制御部109は、受光装置108に入射した赤外光106に基づいて、被検物105の放射率を算出する。
【0005】
こうして、従来の技術に係る放射率測定装置100は、被検物105を加熱することで、被検物105の放射率を測定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−294183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、放射率を精度良く測定するためには、被検物を高温になるまで加熱する必要があった。例えば、被検物の周囲の環境の温度(室温)が300Kの常温の場合、被検物の温度を800K程度にまで上昇させることが必要であった。このように被検物を高温に加熱すると、被検物に熱的ダメージを与える場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、被検物を高温に加熱することなく放射率の測定を可能とする放射率測定方法及び装置、並びに、これらを用いた検査方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の放射率測定方法は、第1放射エネルギの赤外光を被検物に照射する赤外光照射工程と、前記赤外光を照射された前記被検物からの反射赤外光から第2放射エネルギを測定する測定工程と、前記第2放射エネルギと前記第2放射エネルギとに基づいて前記被検物の放射率を算出する算出工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の検査方法は、本発明の放射率測定方法で算出した放射率に基づいて被検物が良品であるか否かを検査する検査工程を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の放射率測定装置は、第1放射エネルギの赤外光を被検物に照射する光源と、前記赤外光を照射された前記被検物からの反射赤外光から第2放射エネルギを測定する測定部と、前記第1放射エネルギと前記第2放射エネルギとに基づいて前記被検物の放射率を算出する算出部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の検査装置は、本発明の放射率測定装置で算出した放射率に基づいて被検物が良品であるか否かを検査する検査部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の放射率測定方法及び装置によれば、被検物を高温に加熱せずとも放射率の測定が可能となる。
【0014】
また、本発明の検査方法及び装置によれば、被検物を高温に加熱することなく、測定した被検物の放射率に基づいて、被検物の検査が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1における放射率測定装置の模式図
【図2】実施の形態1において赤外光源から赤外光を照射しない場合における測定部で測定するエネルギの模式図
【図3】実施の形態1における測定部で測定するエネルギの模式図
【図4】実施の形態1における放射率測定装置の動作を示すフローチャート
【図5】実施の形態2における放射率測定装置の模式図
【図6】実施の形態3における検査装置の模式図
【図7】実施の形態3における検査装置の動作を示すフローチャート
【図8】従来の放射率測定装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る放射率測定方法、放射率測定装置、検査方法、及び、検査装置について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における放射率測定装置1の模式図である。
【0018】
放射率測定装置1は、被検物2を搬送する搬送路3と、被検物2の温度を取得する温度計4と、ビームスプリッタ5を介して第1放射エネルギの第1赤外光を被検物2に照射する赤外光源6と、第1赤外光を照射された被検物2からの反射赤外光を集光する赤外レンズ7と、集光された反射赤外光から第2放射エネルギを測定する測定部8と、測定した第2放射エネルギから被検物2の放射率を算出する算出部9とを備えている。この構成により、放射率測定装置1は、被検物2の温度を高温に加熱することなく、被検物2の放射率を測定する。以下に、放射率測定装置1の各構成について説明する。
【0019】
被検物2は、ここでは幅(図1のY軸方向)12.8mm、厚み(Z軸方向)500μm、長さ(X軸方向)100mの帯状の物体である。
【0020】
搬送路3は、被検物2を図1に示した矢印Aの方向(X軸方向)に一定速度で搬送するものである。
【0021】
温度計4は、被検物2の温度を取得する温度取得部である。また温度計4は、被検物2の周囲の環境の温度(環境温度)を取得する環境温度取得部としての機能も有する。温度計4としては、接触型又は非接触型の何れの温度計を用いてもよい。
【0022】
ビームスプリッタ5は、赤外光源6から照射された第1赤外光を、被検物2の真上から照射させるものである。また、ビームスプリッタ5は、被検物2で反射した第1赤外光と、被検物2から放射された第2赤外光とを透過させ、測定部8に入射させる機能も有する。ビームスプリッタ5の材料としては、ゲルマニウム、カルコゲナイド、ジンクセレン等を用いる。ここでは、ビームスプリッタ5の反射率を、50%とする。
【0023】
赤外光源6は、ビームスプリッタ5を介して、第1赤外光を被検物2に照射する光源である。このとき、被検物2に照射される第1赤外光のエネルギを第1放射エネルギとする。赤外光源6から照射される第1赤外光の波長は、測定部8が感度を有する(検出可能な)波長に対応させる。測定部8が感度を有さない(検出不可能な)波長の赤外光は、そのエネルギが被検物2の加熱にのみ寄与することとなり、このような加熱にのみ寄与する赤外光の照射を防止するために、赤外光源6からの波長を、測定部8が感度を有する波長に設定する。
【0024】
実施の形態1では、波長2〜12μmに感度を有する測定部8を用いるため、赤外光源6は、波長2〜12μmの赤外光のみを照射する光源とする。この場合、素子温度800K、出力23mW、中心波長2.8μmの黒体光源を赤外光源6に用いる。ここでの黒体光源とは、波長2〜12μmの範囲での放射率0.95以上の発光素子を有し、発光素子を加熱することで黒体放射スペクトルを発生させるものである。赤外光源6に黒体光源を用いる理由については後述する。
【0025】
なお、赤外光源6にハロゲンランプ、タングステンランプ等を用いてもよい。ただし、ハロゲンランプ等は、波長2〜12μmの光を出力するものの、それ以外の波長の光をも被検物2に照射することとなる。このような、測定部8の感度以外の波長の光を、赤外光源6が照射する場合は、被検物2の温度上昇を防止するために、測定部8が感度を有する波長の光のみを透過させるロングパスフィルタ等フィルタ素子を、赤外光源6と被検物2との間に配置することが望ましい。
【0026】
以下の説明において、赤外光源6による第1赤外光の照射領域を、被検物2における第1赤外光の被照射領域10として記載する。
【0027】
測定部8は、被検物2で反射した第1赤外光と、被検物2から放射された第2赤外光と(被検物2で反射した第1赤外光と、被検物2から放射された第2赤外光とを合わせて反射赤外光とする)を検出し、検出した第1赤外光と第2赤外光とが有する第2放射エネルギに応じたアナログデータを出力する測定素子と、出力されたアナログデータをデジタルデータに変換する高速AD変換回路と、を備えるものである。
【0028】
測定部8の測定素子としては、赤外光を光エネルギとして測定し、光電効果によりエネルギに応じた電気信号を出力する光電型素子や、赤外光を熱エネルギとして測定し、素子の温度上昇を電気信号に変換する熱型検出素子を用いることが可能である。光電型素子としては、シリコン、ゲルマニウム、インジウムアンチモン(InSb)、水銀カドミウムテルル等が用いられ、熱型検出素子としてはサーモパイル、焦電素子などが用いられる。
【0029】
実施の形態1では、測定部8の測定素子に、2〜12μmの波長の赤外光を検出可能な(2〜12μmに感度を有する)InSb素子からなる二次元アレイ型の光電型素子を用いる。この測定素子には、画素数がY軸方向に640画素、X軸方向に480画素、画素ピッチが20μmのものを用いる。
【0030】
以下の説明において、測定部8による第2放射エネルギの測定領域を、被検物2における被測定領域11として記載する。
【0031】
赤外レンズ7は、反射赤外光を、測定部8に収束させるゲルマニウムレンズである。ここでは、赤外光源6から照射される赤外光の波長に合わせて、ゲルマニウムレンズを用いたが、測定に用いる赤外光の波長に応じて、カルコゲナイドレンズ、ジンクセレンレンズ等を用いてもよい。
【0032】
赤外レンズ7の倍率は、被照射領域10と測定部8の測定素子の画素数により決定する。測定部8の測定素子の画素ピッチが上記のように20μmであるとき、例えば、赤外レンズ7の倍率を1倍にすれば、測定部8の測定領域(被測定領域11)の大きさは、Y軸方向に12.8mm、X軸方向に9.6mmとなる。また、赤外レンズ7の倍率を2倍にすれば、被測定領域11の大きさは、Y軸方向に6.4mm、X軸方向に4.8mmとなる。
【0033】
算出部9は、ディスプレイ等の画像表示部、CPU、ハードディスク、マウス、キーボード等の入力インターフェースによって構成されている。このハードディスクに放射率を算出するためのコンピュータプログラムがインストールされている。
【0034】
また、算出部9は、測定部8の測定素子の各画素において測定した第2放射エネルギのデータを基に、各画素における放射率の算出を行い、被測定領域11における放射率の分布データを算出する。
【0035】
また、搬送路3の搬送速度は、算出部9による放射率算出の速度により決定される。実施の形態1では、1msの間にY軸方向に12.8mm、X軸方向に9.6mmの被測定領域11内の放射率を測定できる。このため、被検物2を、1msの間に9.6mm搬送可能である。つまり、搬送路3の搬送速度は、9.6m/秒となる。
【0036】
実施の形態1において、被測定領域11の全体に赤外光源6からの第1赤外光が照射されるように設定する。この理由について説明する。
【0037】
被測定領域11内で、赤外光の照射されない領域が存在すれば、その領域から測定される放射エネルギは著しく小さくなる。一方、赤外光を反射せずにそのほとんどを吸収する領域、すなわち放射率の高い領域が存在する場合、この領域から測定される放射エネルギも著しく小さくなる。
【0038】
このため、特定の領域において測定した放射エネルギの値が著しく小さい場合、この特定の領域に赤外光が照射されていないのか、それとも、この特定の領域の放射率が高いのか、判断することができない。
【0039】
そこで実施の形態1では、被測定領域11の全域に赤外光が照射されるように、設計する。特定の領域において測定した放射エネルギが著しく小さい場合、その特定の領域の放射率は高いと、一義的に決定するためである。
【0040】
具体的には、被照射領域10の内側に被測定領域11が全て収まるように、赤外光源6、赤外レンズ7を調節すると、被測定領域11の全領域に第1赤外光を照射することができる。
【0041】
ところで、赤外光源6から照射される赤外光のうち、被測定領域11よりも外側に位置する被照射領域10に照射される赤外光は、測定部8に入射しないため、放射エネルギの測定に寄与しない。また、赤外光が照射される領域は、赤外光の影響により温度が上昇する場合がある。つまり、被測定領域11よりも外側に照射される赤外光は、被検物2の温度上昇のみに寄与する無駄なエネルギとなる。
【0042】
そこで、実施の形態1では、被測定領域11の大きさと被照射領域10の大きさとを一致させる(図1では、説明のため、被測定領域11よりも被照射領域10を広く描写している。)。これにより、被測定領域11以外の場所に、赤外光が照射されることを防止して、被検物2の温度上昇を抑えることが可能である。なお、赤外光源6と被検物2との間に、新たに赤外レンズを配置して集光スポットを調節したり、ロングパスフィルタを配置して赤外光を透過させる領域を制限したりして、被照射領域10の大きさを調節してもよい。
【0043】
次に、放射率測定装置1の算出部9で、赤外光源6から第1赤外光を照射した被検物2の放射率を算出する原理について図2、図3を用いて説明する。
【0044】
まず、赤外光源6から第1赤外光を被検物2に照射しない場合に、測定部8で検出するエネルギから放射率を測定する手法について、図2を用いて説明する。
【0045】
被検物2は温度に対応した赤外光を放射しており、このとき、被検物2から照射される赤外光の放射エネルギE1は、シュテファン=ボルツマンの法則により(数1)で表すことができる。
【0046】
【数1】

【0047】
(数1)で、σはシュテファン=ボルツマン定数、εは被検物2の放射率、Taは被検物2の温度(絶対温度)である。この放射エネルギE1には、被検物2から放射された第2赤外光の有するエネルギが該当する。
【0048】
被検物2の周囲の空間(環境)も同様に、環境の温度(環境温度Tr)に対応した赤外光を放射している。この環境から放射される赤外光のエネルギを環境放射エネルギQ1とした場合、環境放射エネルギQ1は、次の(数2)で表すことが可能である。
【0049】
【数2】

【0050】
被検物2は、自身から放射する放射エネルギE1の他に、環境からの環境放射エネルギQ1を反射することで放射エネルギE2の放射を行う。このとき、キルヒホフの法則により、被検物2の反射率は1−εで表され、放射エネルギE2は次の(数3)で表すことができる。
【0051】
【数3】

【0052】
環境放射エネルギQ1には、環境から放射される第1赤外光の有するエネルギが該当し、放射エネルギE2には、被検物2で反射した第1赤外光の有するエネルギが該当する。
【0053】
測定部8では、放射エネルギE1と、放射エネルギE2とが同時に測定される。測定部8にて測定される放射エネルギE1と放射エネルギE2とを合わせて第2放射エネルギQ2とする。このとき放射エネルギQ2は次の(数4)で表される。なお、放射エネルギE1と放射エネルギE2とを、測定部8で別々に測定することはできない。
【0054】
【数4】

【0055】
(数1)〜(数4)から、次の(数5)を導くことができる。
【0056】
【数5】

【0057】
(数5)から、被検物2の放射率εは、測定した第2放射エネルギQ2と被検物2の温度Taと環境温度Trとから求められることが理解できる。
【0058】
この場合、(数5)より、環境温度Trと被検物2の温度Taに温度差が無い状態(Ta=Tr)では、測定される第2放射エネルギQ2はσTa4(又はσTr4)となるため、被検物2の放射率εを算出することができない。このため、第2放射エネルギQ2から被検物2の放射率εを測定するためには、環境温度Trと被検物2の温度Taとの間に温度差を設けねばならない。
【0059】
また、(数5)から、環境温度Trと被検物2の温度Taとの間の温度差が大きい程、放射率εを精度良く求められることが理解できる。発明者らは、実験の結果、温度差を500K以上設けると、放射率εの測定精度が向上することを見出した。
【0060】
図8に示した従来の放射率測定装置100を用いた場合、被検物を加熱することで環境Trと被検物の温度Taとの間に温度差を設けている。このとき、環境温度Trを常温の300Kとした場合、放射率εを精度良く求めるためには、被検物の温度Taを800K以上にする必要がある。
【0061】
しかしながら、被検物の温度Taを、800Kまで昇温させると、被検物が耐熱性に優れない材料の場合、被検物への熱的ダメージが問題となる。
【0062】
また、被検物の材料の熱容量によっては、被検物の温度Taを800Kまで上昇させるのに長い加熱時間を要するという課題がある。
【0063】
さらに、被検物の材料によっては、放射率εが温度依存性を有する場合がある。この場合、温度上昇により放射率εが変化し、被検物2の放射率εを正確に得られないという問題がある。
【0064】
このような課題、問題に鑑みて、実施の形態1に係る図1の放射率測定装置1は、被検物2の加熱を行わないで、環境温度Trと被検物2の温度Taとの間に温度差を設ける手法を提供する。具体的には、赤外光源6から第1赤外光を照射することで、環境温度Trを擬似的に昇温させる手法をとる。
【0065】
図3を用いて放射率測定装置1による放射率測定の手法について説明する。
【0066】
(数2)から、環境温度Trが上昇すれば、環境から放射される第1赤外光の環境放射エネルギQ1が大きくなることが理解できる。そこで、赤外光源6を用いて被検物2に照射される第1赤外光の環境放射エネルギQ1を増加させる。(数2)のボルツマン定数σは定数であるため、環境放射エネルギQ1が増加することは、環境温度Trが上昇することと同義とみなすことができる。
【0067】
例えば、環境温度Trが約800Kの場合、(数2)より、約23224Wの環境放射エネルギQ1の第1赤外光が、環境から放射される。一方で、環境温度Trを実際に約800Kに上昇させずに、赤外光源6から、23224Wの第1赤外光を被検物2に照射した場合でも、被検物2にとっては、約800Kの環境下に配置された場合と同義と言える。
【0068】
つまり、実施の形態1の放射率測定装置1は、本来ならば、非常に高い環境温度Trでなければ、照射されないようなエネルギを有する第1赤外光を、赤外光源6から照射する。これにより、被検物2を非常に高い環境温度Trの環境下に置いた場合と同じ状況を作りだすことが可能である。換言すると、赤外光源6によって、高温環境下における環境放射エネルギQ1に相当する第1赤外光を照射することで、環境温度Trを擬似的に上昇させることを可能とする。
【0069】
以上のように、実施の形態1に係る放射率測定装置1は、(数5)の環境温度Trと被検物2の温度Taとの間に擬似的な温度差を設け、被検物2の放射率εの算出を可能とする。以下の説明では、放射率測定装置1により、擬似的に上昇させた環境温度をTrpと記載する。
【0070】
被検物2には、赤外光源6からの擬似的な環境温度Trpに対応した第1赤外光の他に、実際の環境温度Trに対応した赤外光が入射する場合がある。これを防ぐために、赤外光源6からの第1赤外光を、被検物2の全方位から照射することが好ましい。ただし、赤外光源6から照射される第1赤外光は、800K〜5000Kの環境温度Trpにおいて照射される赤外光に相当するため、300K程度の室温域の環境温度Trに対応する赤外光の影響は無視することができる。つまり、赤外光源6から照射される第1赤外光のエネルギを第1放射エネルギとした場合、この第1放射エネルギを、被検物2に環境から放射される環境放射エネルギQ1とみなすことができる。このことから、(数5)の実際の環境温度Trの項を削除し、次の(数6)を導くことが可能である。
【0071】
【数6】

【0072】
この(数6)により、放射率測定装置1は、被検物2の放射率εを算出できる。
【0073】
なお、(数6)の右辺におけるεσTa4の項は、被検物2から放射される第2赤外光の放射エネルギE1を示し、(1−ε)σTrp4の項は、被検物2で反射した第1赤外光の放射エネルギE2を示す。これら第1赤外光と第2赤外光(すなわち反射赤外光)のエネルギの和が、測定部8に入射するエネルギ、すなわち、第2放射エネルギQ2となる。
【0074】
また、(1−ε)σTrp4の項におけるσTrp4は、環境から放射される環境放射エネルギQ1を表すが、前述のように、赤外光源6から照射される第1赤外光の第1放射エネルギを、環境放射エネルギQ1とみなして計算することが可能である。このとき、赤外光源6から照射される第1赤外光の第1放射エネルギ(環境放射エネルギQ1)と、擬似的な環境温度Trpは、(数2)の関係を満たす。
【0075】
また、第2赤外光の放射エネルギE1に対応するεσTa4の項は、温度計4で取得した被検物2の温度Taを代入することにより、未知数が放射率εのみの項とすることができる。
【0076】
ここで、放射率測定装置1による放射率測定手法についてまとめる。
【0077】
赤外光源6から第1放射エネルギの第1赤外光を照射すると、測定部8には、被検物2で反射した第1赤外光と被検物2から放射された第2赤外光(被検物2で反射した第1赤外光と、被検物2から放射された第2赤外光を合わせて反射赤外光とする)とが入射する。測定部8は、入射した第1赤外光と第2赤外光との区別をつけずに、両者を合算した第2放射エネルギQ2として測定し、測定した値を算出部9へ出力する。このとき、温度計4は、被検物2の温度Taを取得し、取得した温度Taを、算出部9へ出力する。また、赤外光源6から被検物2に照射される第1赤外光の第1放射エネルギを、予め測定し、算出部9に記憶させておく。算出部9は、予め記憶した第1放射エネルギを環境放射エネルギQ1とみなし、環境放射エネルギQ1とみなされた第1放射エネルギ、入力された第2放射エネルギQ2、入力された温度Taを、(数6)に代入することで、被検物2の放射率εを算出する。
【0078】
このように、放射率測定装置1により、赤外光源6から第1赤外光を被検物2に照射することで、被検物2の温度上昇を抑制しつつ、被検物2の放射率εを算出可能である。
【0079】
実施の形態1において、被検物2の温度Taも、環境温度Trもほとんど同じである。
【0080】
放射率測定装置1は、被検物2の温度Taも、その周囲の環境の環境温度Trもほとんど変化させないため、実施の形態1では、被検物2の温度Taとその周囲の環境温度Trとは熱的平衡状態にあるからである。このため、実施の形態1では、温度計4で、環境温度Trを測定し、測定した環境温度Trを被検物2の温度Taとすることが可能である。搬送路3で搬送中の被検物2の温度Taよりも、被検物2の周囲の環境の環境温度Trの方が、容易かつ正確に測定可能であるため、実施の形態1では、被検物2の温度Taを直接測定する場合に比して、容易かつ正確に被検物2の温度を取得することが可能である。
【0081】
ここで、赤外光源6に黒体光源を用いる理由について説明する。
【0082】
赤外光源6の発光素子が加熱されることにより、発光素子の温度に対応した第1赤外光が照射される。この場合、発光素子の温度とそこから照射される第1赤外光の第1放射エネルギとが必ずしも(数2)の関係を満たすとは限らない(発光素子の温度を(数2)のTrに、第1放射エネルギを環境放射エネルギQ1にそれぞれ代入)。なぜなら、(数2)は、黒体において成立する条件であるからである。黒体とは、外部から入射する赤外光を、あらゆる波長に渡って完全に吸収、放出できる物体(放射率εが1)のことを言うが、現実に完全な黒体は存在しない。当然、一般的な光源は黒体ではない。それ故、発光素子の温度は、赤外光源6から放射される第1放射エネルギと(数2)の関係を満たさず、環境温度Trpにも一致しない。つまり、黒体でない光源を用いて、被検物2の放射率εを測定する場合、赤外光源6から照射される第1赤外光の第1放射エネルギを実際に測定しなければ、環境エネルギQ1とみなすことのできるエネルギを得ることができない。
【0083】
そこで、実施の形態1では、赤外光源6に黒体光源を用いる。黒体光源とは黒体を擬似的につくり出したもので、その放射率εを1に近づけることができるものである。実施の形態1で用いる黒体光源は、放射率εが0.95であり、光源の放射率εを略1とみなすことができる。放射率εが1に近づくにつれて、発光素子の温度と黒体光源から照射される第1赤外光の第1エネルギとの間に(数2)の関係がより厳密に成立するようになる。このため、黒体光源の発光素子の温度を測定(設定)することで、第1放射エネルギの値を(数2)から算出することが可能であり、また、発光素子の温度を、擬似的な環境温度Trpとして扱うことが可能である。以上から、赤外光源6に黒体光源を用いることで、容易に被検物2の放射率εを測定可能である。
【0084】
次に、図1の放射率測定装置1における放射率測定の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0085】
ステップ1では、搬送路3により被検物2の搬送が開始される。
【0086】
ステップ2では、温度計4により被検物2の温度Taを取得する。実施の形態1では、被検物2が置かれる部屋の室温(環境温度Tr)を測定し、測定した室温を被検物2の温度Taとして取得する(温度取得工程)。なお、ステップ2は、後述するステップ5までに行えばよく、必ずしもステップ1とステップ3との間で行う必要は無い。
【0087】
ステップ3では、赤外光源6から(環境温度Trpに対応する)第1放射エネルギの第1赤外光を、被検物2へ照射する。なお、第1放射エネルギ及びこのエネルギが対応する環境温度Trpは、算出部9のハードディスクに予め記憶されている。
【0088】
ステップ4では、反射赤外光を測定部8で検出し、第2放射エネルギQ2を測定する。測定した第2放射エネルギQ2の信号は算出部9へ出力される。
【0089】
ステップ5では、算出部9のコンピュータプログラムにて、入力された第2放射エネルギQ2、赤外光源6からの第1赤外光に対応する擬似的な環境温度Trp、被検物2の温度Ta(温度計4で測定した環境温度Tr)、に基づいて、(数6)から、被検物2の放射率εを算出する。
【0090】
例えば、被検物2の温度Ta=300K、赤外光源6から照射される第1赤外光の擬似的な環境温度Trp=800K(環境放射エネルギQ1=23224W)、測定部8で測定した第2放射エネルギQ2=20947Wとする。この場合、(数6)から、被検物2の放射率εは、次の(数7)で算出できる。
【0091】
【数7】

【0092】
シュテファン=ボルツマン定数σを以下の(数8)とした場合、(数7)から被検物2の放射率ε≒0.1を得られる。
【0093】
【数8】

【0094】
ステップ6では、被検物2の全面について放射率εを測定したか否かを判定する。判定の際のアルゴリズムは、例えば、被検物2のサイズと搬送速度と測定開始からの時間とに基づいて、測定が完了したか否かの判定を行うものである。このアルゴリズムを、算出部9に予め記憶しておく。算出部9によって、被検物2の全面について放射率εの算出を完了していないと判定した場合は(ステップ6におけるNo)、ステップ4に戻る。被検物2の全面について放射率εの算出を完了していると判定した場合は(ステップ6におけるYes)、ステップ7に進む。
【0095】
ステップ7では、被検物2に対する第1赤外光の照射を終了する。
【0096】
ステップ8では、搬送路3による被検物2の搬送を終了する。なお、ステップ7とステップ8は同時に行っても良く、ステップ8を先に行い、ステップ7を後に行っても良い。
【0097】
このような図4のステップ1からステップ8により、図1の放射率測定装置1は、被検物2の全面における放射率εを算出し、その動作を終了する。
【0098】
以上のように、放射率測定装置1は、被検物2の温度Taも、実際の環境温度Trも、ほとんど上昇させないので、被検物2に与える熱的ダメージは少ない。また、擬似的に上昇させる環境温度Trpの値に制限はなく、赤外光源6の種類によっては5000K程度まで擬似的な環境温度Trpを上昇させることが可能である。これにより、実際の温度上昇をほとんど伴わずに、環境温度Trpと被検物2の温度Taとの温度差を大きくすることが可能となり、精度良く被検物2の放射率εを求めることが可能である。
【0099】
また、被検物2の材料の熱容量に応じた加熱時間、つまり温度上昇の待ち時間が不要であるため、高速測定が可能であるという点で優れている。
【0100】
また、被検物2の温度Taをほとんど上昇させないため、放射率εが温度依存性を有する場合でも、精度の高い放射率測定が可能である。
【0101】
また、実施の形態1では、被照射領域10と被測定領域11のサイズを等しくすることで、放射率εの測定に用いられない無駄な赤外光の照射を防止している。また、被検物2が昇温すると、(数6)の環境温度Tr(Trp)と被検物2の温度Taとの差が小さくなり、放射率測定の精度が低下する原因になる。この観点からも、被検物2の昇温を防止することは有益である。
【0102】
なお、被照射領域10を被測定領域11のサイズよりも大きくした場合でも、図8の従来の放射率測定装置100に比べると、十分に低い温度となることが予測できる。このため、被照射領域10を被測定領域11のサイズよりも大きくした場合でも、従来に比べて、被検物2の温度上昇を防止しつつ、被検物2の放射率εを測定可能である。
【0103】
図4のステップ5にて、擬似的な環境温度Trpを用いて被検物2の放射率εを求める方法について説明した。しかし、擬似的な環境温度Trpの代わりに、赤外光源6から被検物2に照射される第1赤外光の第1放射エネルギQ1を用いて、被検物2の放射率εを求めてもよい。この場合、(数5)を変形した(数9)により、算出部9で、放射率εを算出する。
【0104】
【数9】

【0105】
なお、測定部8における測定素子は、二次元アレイ型の光電型素子としたが、これに限定されず、1次元のラインセンサもしくは単眼の測定素子と、ガルバノミラーやポリゴンミラー及びレゾナントスキャナ等の走査機構を組み合わせたものでもよい。
【0106】
(実施の形態2)
実施の形態1において、図1の算出部9は、取得した被検物2の温度Ta(環境温度Tr)を用いて、被検物2の放射率εを算出した。
【0107】
実施の形態2では、被検物2の温度Taを取得せずに、被検物2の放射率εを算出する手法について説明する。
【0108】
図5は、実施の形態2に係る放射率測定装置12の模式図である。図1の放射率測定装置1から、温度計4を除外したものが図5の放射率測定装置12である。また、図5の算出部13は、図1の算出部9とで放射率εを算出する手法が異なる。
【0109】
以下に、図5の算出部13における放射率εの算出手法について説明する。
【0110】
発明者らは、被検物2の温度Taと擬似的な環境温度Trpとの間に500K以上の温度差がある場合に、被検物2の放射率εを精度良く求められることを見出した。よって、被検物2の放射率εを高精度に測定するため、環境温度Trpを高温にし、積極的にこれらの間に大きな温度差を設けている。このため、実施の形態2では、被検物2の温度Taは、擬似的な環境温度Trpに比べて非常に小さいことが明らかである。それ故、(数6)に基づいて、第2放射エネルギQ2を以下の(数10)で近似することができる。
【0111】
【数10】

【0112】
この(数10)に基づいて、算出部13は、環境放射エネルギQ1とみなした第1放射エネルギと、第2放射エネルギQ2とから、被検物2の放射率εを算出する。このとき、第1放射エネルギは予め算出部13に記憶され、第2放射エネルギQ2は測定部8により測定された後に算出部13に入力される。
【0113】
これにより、放射率測定装置12は、被検物2の温度Taを測定することなく、被検物2の放射率εを算出できる。このため、算出部13での処理をより速く行うことができ、測定処理の高速化が可能となる。また、温度計を具備する必要が無いため、装置の小型化を図ることが可能である。
【0114】
なお、被検物2の温度Taと擬似的な環境温度Trpとの温度差が5000Kより大きくなると被検物2には、熱的ダメージを与える可能性が高くなる。このため、発明者らは、これらの温度差を500K以上、5000K以下とすべきと提案する。この温度差を設ける際の条件として、(数2)から、次の(数11)を得ることができる。この(数11)を満たすような環境放射エネルギQ1に相当する第1放射エネルギの第1赤外光を、赤外光源6から照射することで、上述の(数10)を用いても、精度良く被検物2の放射率εを測定可能である。
【0115】
【数11】

【0116】
(実施の形態3)
実施の形態1では図1の被検物2の放射率εを測定する放射率測定装置1について説明した。実施の形態3では、放射率測定装置1を用いて、被検物2が良品であるか否か検査を行う検査装置14について説明する。
【0117】
図6に検査装置14の模式図を示す。
【0118】
検査装置14は、放射率測定装置1と、測定した放射率εに基づいて被検物2の良否を検査する検査部15と、検査部15による検査結果を表示する表示部16とを備える。
【0119】
検査部15には、予め良品の放射率εとして、被検物2として許容される放射率εの最小値εminと最大値εMAXとが設定されている。設定された値に基づいて、検査部15は、被検物2の検査を行う。具体的には、算出された被検物2の放射率εが以下の(数12)を満たす場合に、被検物2を良品と判定し、(数12)を満たさない場合は不良品と判定する。
【0120】
【数12】

【0121】
表示部16は、検査部15による検査の結果を表示し、作業者に被検物2の良否を告知する。ここでは、特に、被検物2が不良品の場合、警告の表示を行う。
【0122】
次に、検査部15による被検物2の検査手法について説明する。ここでは、被検物2をセラミクスとする。
【0123】
放射率測定装置1は、被検物2の被測定領域11における放射率分布を算出する。このとき、セラミクスの被検物2の放射率εが0.6であるとする。測定のばらつきを考慮に入れ、セラミクスに合わせた放射率εの許容範囲として、(数12)の最小値εminを0.5、最大値εMAXを0.7として良品の範囲を検査部15に記憶させる。
【0124】
被測定領域11の全域において算出した放射率εが、予め記憶した良品の範囲内に収まるか否かで良否の検査を行う。被検物2が不良となる原因として、被検物2とは異なる材料の異物の混入が考えられる。
【0125】
そこで、セラミクスの被検物2に、銅の異物が混入した場合を例に挙げて以下に説明する。
【0126】
一般的に金属は、セラミクスよりも低い放射率を示す。放射率測定装置1で測定した銅の放射率εは、0.1であるとする。この放射率εが0.1の銅が、被測定領域11に混入した場合、放射率測定装置1は、被測定領域11内において、放射率εが0.1の領域を検出する。0.1の値は、検査部15に予め記憶されている範囲外の値であるため、検査部15は、被検物2を検査の結果、不良品と判定し、この検査結果を表示部16に表示させる。このように、被検物2の検査を行う。
【0127】
ここで、図6の検査装置14による検査の動作を図7のフローチャートを用いて説明する。ここでは、実施の形態1の放射率測定装置1による動作と共通する動作の説明は省略する。
【0128】
ステップ1からステップ5は、図4を用いて説明した動作と同じである。
【0129】
ステップ10では、算出した放射率εの値が予め設定した範囲内であるか否かを検査部15により判定する。算出した放射率εの値が予め設定した範囲内であると判定した場合は(ステップ10におけるYes)、ステップ6に進む。算出した放射率εの値が予め設定した範囲内でないと判定した場合は(ステップ10におけるNo)、ステップ11に進む。
【0130】
ステップ11では、表示部16が、被検物2が不良品である旨の警告の表示を行い、その後、ステップ7へと進む。
【0131】
ステップ6からステップ8については、図4を用いて説明した動作と同じである。
【0132】
以上のように、検査装置14は、被検物2の検査を行う。
【0133】
次に、セラミクスの被検物2に、綿繊維の異物が混入した場合を例にあげて、以下に説明する。
【0134】
一般的に有機化合物は、セラミクスよりも高い放射率を示す。放射率測定装置1で測定した綿繊維の放射率は0.8であるとする。この放射率εが0.8の綿繊維が、被測定領域11に、混入した場合、放射率測定装置1は、被測定領域11内において、放射率εが0.8の領域を検出する。0.8の値は、検査部15に予め記憶されている範囲外の値であるため、検査部15は、被検物2を検査の結果、不良品と判定する。
【0135】
ただし、被検物2が電子デバイスの場合、銅などの金属が異物として混入すれば、短絡の原因となる。しかし、綿繊維などの有機化合物が異物として被検物2に混入しても、短絡の原因とならない。短絡の原因とならない綿繊維の混入した被検物2を、不良品として扱う必要は無い。つまり、セラミクスに合わせた放射率εの許容範囲を検査部15に設定すれば、良品まで不良品と判定する過検出の問題を引き起こす場合がある。
【0136】
そこで、綿繊維の異物が混入する可能性がある場合は、検査部15に記憶させる良品の範囲としてεminを0.5とし、εMAXを1とする。被検物2の材料に良品の範囲を一致させるのではなく、製品として良品となる放射率εの範囲を設定する。
【0137】
以上のように、検査装置14は、被検物2の温度上昇を抑制しつつ、被検物2の放射率εを算出し、算出した放射率εに基づいて、被検物2の検査を行うことが可能である。
【0138】
さらに、被検物2の種類に合わせて、良品とする放射率の範囲を予め検査部15に記憶することで、被検物2の検査を高精度に行うことが可能である。
【0139】
なお、放射率測定装置1に代えて、放射率測定装置12を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、加熱することが困難な電気機器デバイスや回路基板の放射率測定、及び検査に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0141】
1 放射率測定装置
2 被検物
3 搬送路
4 温度計
6 赤外光源
7 赤外レンズ
8 測定部
9 算出部
10 被照射領域
11 被測定領域
12 放射率測定装置
13 算出部
14 検査装置
15 検査部
16 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1放射エネルギの赤外光を被検物に照射する赤外光照射工程と、
前記赤外光を照射された前記被検物からの反射赤外光から第2放射エネルギを測定する測定工程と、
前記第2放射エネルギと前記第2放射エネルギとに基づいて前記被検物の放射率を算出する算出工程と、を含む放射率測定方法。
【請求項2】
前記被検物の温度を取得する温度取得工程を含み、
前記算出工程は、前記第1放射エネルギと前記第2放射エネルギと前記温度とに基づいて前記被検物の放射率を算出する請求項1記載の放射率測定方法。
【請求項3】
前記温度取得工程は、前記被検物の周囲の環境の環境温度を測定すると共に測定した前記環境温度を前記被検物の前記温度として取得する請求項2記載の放射率測定方法。
【請求項4】
前記第1放射エネルギをQ1、前記被検物の温度をTa[K]、シュテファン=ボルツマン定数をσとした場合に以下の(式1)の条件を満たす請求項1〜3のいずれか1項記載の放射率測定方法。
σ(Ta+500)4≦Q1≦σ(Ta+5000)4 (式1)
【請求項5】
前記被検物における前記第1赤外光の被照射領域と前記被検物における前記第2放射エネルギの被測定領域とが等しい
請求項1〜4のいずれか1項記載の放射率測定方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の放射率測定方法で算出した放射率に基づいて被検物が良品であるか否かを検査する検査工程を含む検査方法。
【請求項7】
第1放射エネルギの赤外光を被検物に照射する光源と、
前記赤外光を照射された前記被検物からの反射赤外光から第2放射エネルギを測定する測定部と、
前記第1放射エネルギと前記第2放射エネルギとに基づいて前記被検物の放射率を算出する算出部と、を備える放射率測定装置。
【請求項8】
前記被検物の温度を取得する温度取得部を備え、
前記算出部は、前記第1放射エネルギと前記第2放射エネルギと前記温度とに基づいて前記被検物の放射率を算出する請求項7記載の放射率測定装置。
【請求項9】
前記温度取得部は、前記被検物の周囲の環境の環境温度を測定すると共に測定した前記環境温度を前記被検物の前記温度として取得する請求項8記載の放射率測定装置。
【請求項10】
前記第1放射エネルギをQ1、前記被検物の温度をTa[K]、シュテファン=ボルツマン定数をσとした場合に以下の(式2)の条件を満たす請求項7〜9のいずれか1項記載の放射率測定装置。
σ(Ta+500)4≦Q1≦σ(Ta+5000)4 (式2)
【請求項11】
前記光源における前記第1赤外光の照射領域と前記測定部における前記第2放射エネルギの測定領域とが等しい
請求項7〜10のいずれか1項記載の放射率測定装置。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項記載の放射率測定装置と、
前記放射率測定装置で算出した放射率に基づいて被検物が良品であるか否かを検査する検査部と、を備える検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229925(P2012−229925A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96798(P2011−96798)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】