説明

放射線−または熱−硬化性バリヤシーラント

本発明は、硬化後に低透湿性と優れた接着強度とを提供する硬化性シーランドに関する。本組成物は、メタ−置換反応基をもつ芳香族化合物とカチオンまたはラジカル開始剤とを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、陸軍研究所より得た契約書番号MDA972−93−2−0014のもと、アメリカ合衆国政府からの援助によってなされた。合衆国政府は本発明に特定の権利を有する。
関連出願
【0002】
本出願は、米国特許出願シリアル番号11/098,115、11/098,116及び11/098,117号に関連する。
発明の分野
【0003】
本発明は、電子及び光電子デバイスで使用するためのバリヤシーラント、接着剤、封入剤及びコーティングに関する。(本明細書及び請求の範囲で使用するように、接着剤、シーラント、封入剤及びコーティングは似たような物質であり、いずれも接着剤、シーラント及びコーティング性能及び機能をもつ。任意の一つを列挙するとき、その他のものも含まれるものとみなす。)
背景
【0004】
放射線硬化性物質は、この30年間にわたって硬化の間のエネルギー消費が低いこと、ラジカルまたはカチオン機構のいずれかによる迅速な硬化速度、低い硬化温度、硬化材料が広く使用可能であること及び溶媒を含まない製品の利用可能性などの理由により、コーティング、接着剤及びシーラントとして利用が高まってきた。そのような製品は温度感受性であったり、長い硬化時間にうまく耐えられない電子及び光電子デバイスを迅速に接着及びシールするのに特に役立ってきた。光電子デバイスは特に熱に感受性であることが多いので、非常に短時間で硬化によって光学的に配列し且つ空間的に固定する必要がある。
【0005】
多くの光電子デバイスは感湿性(moisuture sensitive)または酸素感受性でもあるので、その有効寿命の間に影響を受けないようにする必要がある。一般的なアプローチとしては、デバイスが配置されている不浸透性基板と不浸透性ガラスまたは金属製の蓋との間にデバイスをシールし、放射線硬化性接着剤またはシーラントを使用して蓋の周囲を底の基板にシールまたは接着することである。
【0006】
このパッケージ配置の一般的な具現様式を図1に例示する。この図は、ガラス基板(4)上に作った有機発光ダイオード(OLED)スタック(3)の上の金属またはガラス製の蓋(2)に接着するために、放射線硬化性周辺シーラント(1)を使用することを開示する。種々の構造があるが、典型的なデバイスでは、アノード(5)、カソード(6)と、OLEDピクセル/デバイスと外部回路網(7)との間の何らかの形式の電気相互接続も含む。本発明の目的に関しては、周辺シーラント(1)などの接着剤/シーラント材料を含むものを除いては、特別なデバイス配置は指定も必要もされない。
【0007】
多くの構造において、たとえば図1の例に関しては、ガラス基板と金属/ガラス製の蓋はいずれも、本質的に酸素及び水分に対して不浸透性であり、シーラントは、かなりの透過性(appreciable permeability)でもってデバイスを取り囲む唯一の材料である。電子及び光電子デバイスに関しては、透湿性は酸素透過性よりも重要であることが多い。従って、酸素バリヤ必要条件はそれほど逼迫しておらず、デバイスの良好な性能にとって重要なのは周辺シーラントの防湿(moisture barrier)特性である。
【0008】
優れたバリヤシーラントは、低いバルク透湿性(bulk moisure permeability)、優れた接着性及び強い界面接着剤/基板相互作用を示すだろう。基板−シーラント界面の特性が悪いと、界面は弱い境界として機能して、シーラントのバルク透湿性にも関わらず、急速に水分がデバイスに入り込んでしまう。界面がバルクシーラントと同様に少なくとも連続的であれば、水分の透過は通常シーラント自体のバルク透湿性によって影響を受ける。
【0009】
水蒸気透過速度は、透過に関して規定の通路の厚さも通路の長さにも標準化されないので、有効なバリヤ特性の尺度として、単に水蒸気透過速度(water vapor transmission rate:WVTR)だけでなく、透湿性(P)を試験すべきであると注記するのは重要である。通常、透過性は、単位透過性通路長さを乗じたWVTRとして定義できるので、シーラントが本質的に優れたバリヤ材料であるかどうかを評価する好ましい方法である。
【0010】
透過性を表現する最も一般的な方法は、透過係数(たとえばg・ミル/(100インチ・日・気圧))であり、これを任意の実験条件セット、または透過係数(たとえば、所定の温度及び相対湿度におけるg・ミル/(100インチ・日・気圧))に適用し、バリヤ材料に含まれる透過物(permeant)の分圧/濃度を定義するために実験条件を引用しなければならない。通常、あるバリヤ材料内の透過物の浸透(透過率、P)は、拡散(D)と溶解性(S)の積として記載することができる:P=DS。
【0011】
溶解性なる用語は、透過物のバリヤ親和性を示し、水蒸気に関しては、低いSなる用語は疎水性材料から得られる。拡散なる用語は、バリヤマトリックス中のpermeantの移動度の尺度であり、自由体積及び分子移動度などのバリヤの材料特性に直接関連する。低いDなる用語は、(架橋度が低いかアモルファスの類似体と対照的に)高架橋度または結晶質材料から得られる。透過性なる用語は、分子の移動度が上昇するにつれて(たとえば温度が上昇するにつれて、特にポリマーのTgが上回るとき)に大きく上昇するだろう。
【0012】
優れたバリヤの製造への論理的で化学的な取り組みでは、水蒸気と酸素の透過性に作用するこれら二つの基本的な因子(DとS)を考慮しなければならない。そのような化学的因子に重ね合わせるのは物理的変数:長い透過路と完璧な接着剤層(bondline)であり、これらはバリヤ性能を高め、可能であればいつでも適用すべきである。この理想的なバリヤシーラントは、低いD及びSを示し、同時に全てのデバイス基板に対し優れた接着性を提供する。
【0013】
高性能バリヤ材料を得るためには、低い溶解性(S)だけか、または低い拡散性(D)だけでは十分ではない。古典的な実例は一般的なシロキサンエラストマーで知見することができる。そのような材料は非常に疎水性(低い溶解性、S)であり、Si−O結合(高い分散性Dを生み出す)の周りの障害のない回転のため分子移動性が高いので、非常に悪いバリヤである。かくして、単に疎水性だけである多くの系は、これらが低い透湿性を示すという事実にもかかわらず、優れたバリヤ材料ではない。低い透湿性は低い分子移動度と、低い透過物移動度または拡散性と組み合わさなければならない。
【0014】
本発明の組成物などの固体シーラントに硬化する液体物質の場合に、硬化マトリックスでの低い分子移動度を達成するには、高い架橋密度、微結晶性(microcrystallinity)または、マトリックスの架橋部分の間の分子幹(backbone)が最密充填であることによってアプローチする。
図面の簡単な説明
【0015】
図1は、周辺シール化光電子デバイスである。
発明の概要
【0016】
本発明は、以下の一般構造:
【化1】

をもつメタ−置換反応基をもつ芳香族(官能基)化合物と開始剤との組み合わせによって、特に水分に対して優れたバリヤ性能を提供する。式中、全てのR、L及びRF基は、本明細書の目的及び請求の範囲に関して互いに独立して選択され、
【0017】
、R、R、Rは、水素、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール及び置換アルキルまたはアリール基からなる群から選択され;R、Rは一般構造:−C2n−(式中、n=0〜4である)(nが0であるとき、R、Rは存在しないことは理解されよう)をもつ二価炭化水素リンカーであり、R、R、R、R、R、Rのいずれか二つは同一環式構造の一部を形成することができる;
【0018】
、L、L、L、L、Lは直接結合であるか、または
【化2】

からなる群から選択される二価結合基であり、
【0019】
RF及びRF’は、脂肪族エポキシ、グリシジルエーテル、脂環式エポキシ、ヒドロキシル(−OH)、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、クロチルエーテル、スチレン、アクリレート、メタクリレート、イタコネート、マレイミド、マレエート、フマレート、シンナメート、アクリルアミド、メタクリルアミド、カルコン、チオール、アリル、アルケニル及びシクロアルケニル基からなる群から選択される硬化性官能基である。一態様において、RF及びRF’はいずれもエポキシ官能基である。別の態様では、RF及びRF’はいずれもアクリレート官能基である。さらなる態様では、RF官能基はエポキシ基であり、且つRF’官能基は、ヒドロキシル、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、クロチルエーテル、スチレン、アクリレート、メタクリレート、イタコネート、マレイミド、マレエート、フマレート、シンナメート、アクリルアミド、メタクリルアミド、カルコン、チオール、アリル、アルケニル及びシクロアルケニル基からなる群から選択される。
【0020】
本明細書及び請求の範囲で使用するように、エポキシ、エポキシド及びオキシラン(及びその複数形)は、同一化合物または化合物のタイプを指す。エポキシ官能基の代表例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化3】

{式中、構造上の水素は、一つ以上のアルキルまたはハロゲン基によって置換されていてもよい}。スチレン基の代表例としては、−Ph−、CH=CH、−Ph−CMe=CH{式中、Phはフェニル基を意味する}が挙げられる。
【0021】
これらの化合物の硬化開始剤は、PFとRF’基に依存して、カチオン開始剤またはラジカル開始剤のいずれかである。そのような開始剤の選択は、当業者の専門的知識の範囲内である。態様によっては、カチオン開始剤とラジカル開始剤を両方使用してもよい。
【0022】
そのようなバリヤ材料は、単独、または他の硬化性樹脂及び種々の充填剤と組み合わせて使用することができる。得られた組成物は電子、光電子、電気泳動及びMEMSデバイスをシール及び封入する際に使用するのにこれらを効果的にするのに、商業的に受け入れられる硬化速度、高架橋密度と分子充填のバランス(低いpermeant移動度/分散性、D)、疎水性(低い水溶性、S)、及び接着性(強い接着剤/基板界面)を示す。
発明の詳細な説明
【0023】
本発明は、(a)メタ−置換反応基をもつ芳香族化合物と、(b)カチオン若しくはラジカル開始剤、またはその両方とを含む硬化性バリヤシーラントである。バリヤ接着剤またはシーラントは、場合により(c)一種以上の充填剤と、場合により(d)一種以上の接着促進剤を含む。種々の性能条件を満足するために、一種以上の追加のエポキシ樹脂をカチオンまたはカチオン/ラジカルハイブリッド系で使用することができ、これらの樹脂は、好ましくはビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、多環式エポキシ、及びハロゲン化グリシジルエーテルからなる群から選択される。カチオンまたはラジカル光開始剤を使用すると、放射線−硬化性配合物となり;室温または高温で重合を始動し得るカチオン及び/またはラジカル系を使用すると、熱硬化性配合物となる。得られた組成物は、電子及び光電子デバイスのシール及び封入で使用するのに適している。バリヤシーラント化合物の例としては、実施例に開示されており、他には以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化4】

【化5】

【0024】
本明細書内では、放射線なる用語は、化学電磁放射線(actinic electromagnetic radiation)を指す。化学線は、物質内で化学的変化を誘発する電磁放射線として定義され、本明細書内の目的に関しては、電子ビーム硬化も含む。殆どの場合、スペクトルの紫外線(UV)及び/または可視領域の波長の電磁放射線が最も有用である。
【0025】
本発明の放射線硬化性バリヤ材料の開始剤の選択は、放射線硬化分野の当業者には公知である。光硬化(photocuring)に関しては、硬化開始剤は光開始剤である。好適な光開始剤の選択は、バリヤシーラントを使用すべき具体的な用途に依存する。好適な光開始剤は、放射線硬化系における樹脂、充填剤及び他の添加剤とは異なる光吸収スペクトルを示すものである。シーラントがカバーまたは基板を介して硬化しなければならない場合、光開始剤は、カバーまたは基板が透明である波長で放射線を吸収し得るものである。たとえばバリヤシーラントがソーダ石灰ガラスカバープレートを介して硬化すべき場合、光開始剤は約320nmを超える有効なUV吸収度を持たねばならない。320nm未満でのUV照射は、ソーダ石灰ガラスカバープレートによって吸収されてしまって、光開始剤には届かない。この例では、光開始剤へのエネルギー移動を増やすために、光開始剤系に光開始剤と一緒に光増感剤を配合するとよい。
【0026】
具体的なカチオン性光開始剤は、Ionic Polymerizations and Related processes、45−60、1999年、Kluwer Academic Publishers;Netherlands;J.S.Puskasら(編)に開示されている。好ましいカチオン光開始剤としては、ジアリルヨードニウム塩とトリアリルスルホニウム塩が挙げられる。公知の市販品の例としては、UV9380C(GE Silicones)、PC2506(Polyset)、SR1012(Sartomer)、Phodorsil2074(Phodia)及びUVI−6974(Dow)が挙げられる。ジアリルヨードニウム塩の好ましい増感剤は、イソプロピルチオキサントン(本明細書中、ITXと称する、2−及び4−異性体の混合物として販売されることが多い)及び2−クロロ−4−プロポキシトリキサントンがある。特定の硬化構造及び樹脂系用の効率的なカチオン光開始系は、カチオンUV硬化分野の当業者には公知であり、本発明の範囲には限定されない。
【0027】
熱的に発生した酸などの熱的開始系は、そのような触媒、開始剤及び硬化剤が適した用途にも好適である。触媒の例としては、ブロンステッド酸、ルイス酸、及び潜熱酸発生剤(latent thermal acid generator)がある。ブロンステッド酸とルイス酸の代表例は、Smith、M.B.及びMarch、JのMarch‘s Advanced Organic Chemistry,Reactions,Mechanisms,and Structures,第5版、2001年、John Wiley&Sons,Inc.ニューヨーク、NY,327−362頁などの文献に知見することができる。潜熱酸発生剤の例としては、ジアリルヨードニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、フェナシルスルホニウム塩、N−ベンジルピリジニウム塩、N−ベンジルピラジニウム塩、N−ベンジルアンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヒドラジニウム塩、アンモニウムボレート塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
ラジカル重合性官能基がメタ−置換芳香族構造内にあるとき、ラジカル光開始剤を使用してラジカル重合を始動することができる。ラジカル光開始剤の例としては、Radiation Curing:Science and Technology,1992年、Plenum Press;ニューヨーク;S.P.Pappas編、及びEncyclopedia of Polymer Science and Engineering,11,187,1988年、John Wiley and Sons,ニューヨーク;H.F.Mark,Bikales,C.G.Overberger、G.Menges編に開示されている。硬化目的のためにラジカル熱開始剤も選択することができ、熱開始剤の例は、Principles of Polymerizaion、211、1991年、John Wiley & Sons,ニューヨーク;G.G.Odian編に開示されている。有効なラジカル開始系の選択は、ラジカル硬化分野の当業者には公知であり、本発明の範囲では限定されない。
【0029】
一般的な充填剤は、粉末石英、溶融シリカ、アモルファスシリカ、タルク、ガラスビーズ、グラファイト、カーボンブラック、アルミナ、クレー、マイカ、バーミキュライト、窒化アルミニウム、窒化ホウ素が挙げられるが、これらに限定されない。銀、銅、金、スズ、スズ/鉛合金、及び他の合金からなる金属粉末及びフレークも含まれる。ポリ(テトラクロロエチレン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、及びポリ(塩化ビニリデン)などの有機充填剤粉末も使用することができる。乾燥剤または酸素掃去剤として機能する、CaO、BaO、NaSO、CaSO、MgSO、ゼオライト、シリカゲル、P、CaCl及びAlなどの充填剤も使用することができるが、これらに限定されない。
実施例
【0030】
実施例1:芳香族エポキシの合成
【0031】
4,4‘−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールジグリシジルエーテル(BPADGE−CF):
【化6】

【0032】
還流コンデンサとメカニカルスターラーとを備えた500mLの三つ首丸底フラスコに、エピクロロヒドリン(0.74mol)68.8g、4,4‘−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(0.074mol)25.0gとイソプロピルアルコール100gを加えた。この内容物を75℃に上げて、遅い添加漏斗を使用して、脱イオン水中46%水酸化ナトリウム26gを6時間かけて滴下添加した。ゆっくりと添加した終了時に、反応内容物を83℃に上昇させて、その温度でさらに2時間保持した。生成物を濾過し、溶媒を除去した。粗な生成物を全部で30.0gをトルエンに溶解し、シリカゲル9.0cmカラムに通した。溶媒を除去し、生成物20.0gを回収した。収率60%:H NMR(CDCl):δppm 2.76(2H),2.91(2H),3.35(2H),3.97(2H),4.25(2H),6.90(4H),7.30(4H)。
【0033】
4,6−ジクロロレゾルシノールジグリシジルエーテル(DCRDGE)の合成:
【化7】

【0034】
4,6−ジクロロレゾルシノール(25g,0.14mol)、エピクロロヒドリン(129g,1.4mol)とイソプロピルアルコール(100ml)を還流コンデンサとメカニカルスターラーとを備えた三つ首丸底フラスコに添加した。水(14g)中の水酸化ナトリウム(12g)の溶液を添加漏斗に入れた。フラスコ内容物を75℃に上昇させた。水酸化ナトリウム溶液を6時間で添加し、同時に反応物を75℃に保持した。ゆっくりと添加した後、反応物を83℃にさらに2時間保持した。物質を濾過し、溶媒を除去した。次いで生成物をトルエン中に再び溶解して、脱イオン水で洗浄した。1回洗浄して、シリカゲルカラムを通してから、トルエン中の生成物を集めた。溶媒を除去して生成物を集めた。収率50%。融点78℃。H NMR(CDCl):δppm 2.7−2.9(4H),3.3(2H),3.9−4.3(4H),6.7−7.3(2H)。
【0035】
4−ブロモレゾルシノールジグリシジルエーテル(BRDGE)の合成:
【化8】

【0036】
エピクロロヒドリン(122.4g,1.32mol)、4−ブロモレゾルシノール(25.0g,0.13mol)とイソプロピルアルコール(100g)を、500ml三つ首フラスコに添加し、75℃に温めた。水中22.2g、50重量%の水酸化ナトリウムの溶液をこのフラスコに6時間、滴下添加した。フラスコ温度は83℃に上昇し、さらに2時間保持した。反応後、溶液を濾過し、溶媒を蒸発させた。次いでトルエンを残存物に添加した。固体を濾過し、トルエンを再び除去すると、薄茶色油状物が得られた。真空蒸留を用いてさらに精製すると、透明液体が得られ、静置すると結晶化した。H NMR(CDCl):δppm 2.6−2.9(4H),3.3(2H),3.8−4.3(4H),6.3−7.4(3H)。
【0037】
ヒドロキノンジグリシジルエーテル(HDGE)の合成:
【化9】

【0038】
エピクロロヒドリン(222g,2.4mol)、イソプロピルアルコール(120mL)とヒドロキノン(33g,0.3mol)をコンデンサ、メカニカルスターラー、窒素供給源と、40g水中に28.8gNaOHを含む添加漏斗を備えた四つ首1L丸底フラスコに添加した。窒素でパージしながらNaOH溶液を滴下添加し、次いで反応物を75〜83℃に加熱した。溶液の色は暗茶色から、6時間後には白色沈殿で黄色に変化した。この溶液を濾過し、溶媒を除去すると、粘稠な黄色溶液が得られ、これを静置して固化させて集めた。生成物をイソプロピルアルコールから2回再結晶し、次いで真空下で蒸留し、冷却すると白色固体が得られた。H NMR(CDCl):δppm 2.7−2.9(4H),3.3−3.4(2H),3.9−4.2(4H),6.9(4H)。
【0039】
実施例2:種々のエポキシの透湿性能の比較
【0040】
カチオンエポキシ数種をUV硬化させ、結果を表1に集めた。それぞれの樹脂は、2%UV9380C(GE Silicones)カチオン光開始剤と混合し、テフロン(登録商標)プレート上にコーティングして、8路可変擦過器(eight−path variable scraper)で2−5ミル薄さのフィルムを製造し、Dymax固定UV硬化装置下で6J UVAで硬化し、続いて175℃で1時間アニールした。フィルムの透湿係数を50℃、100%相対湿度でMocon Permeatran3/33で測定した。標準化した透湿データを表1に示す。
【0041】
同定した化合物は、以下の構造を有する:
【化10】

【化11】

【0042】
【表1】

【0043】
比較すると解るように、レゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE,Aldrich)は、最も低い透湿性の一つを与える。EPON828対BPADGE−BR及びBPADGE−CFの比較から、ハロゲン化エポキシは通常、その通常の炭化水素類似体よりもよいことも解る。硬化BPADGE−BRフィルムはRDGEよりもさらに透湿性が低いが、このサンプルは固体で、フィルムを作るのに100℃を超える加熱が必要である。
【0044】
二官能性対三及び四官能性芳香族エポキシの比較から、官能基を加えても必ずしも透過性の性能に役立たないことが解る。これらの芳香族エポキシの多くは似たようなエポキシ当量を有するが、本出願人は官能基を増やすと、透過性が高くなることを知見した。THPE−GEとEPON 1031はいずれも、硬化のためフィルムをキャストするのに100℃を超える加熱が必要であった。
【0045】
数種の一般的に使用される脂肪族エポキシとシロキサンエポキシについても試験し、その結果から、これらはそのエポキシ当量が芳香族エポキシと同等またはそれより低いにもかかわらず、芳香族エポキシほど低い透湿性を持たないことを示す。さらにこれらの比較から、透過性は溶解性単独ではなく、拡散性と溶解性の両用によって影響を受け、シロキサンエポキシなどの疎水性構造を単に作ることによっては低い透湿性は得られないことが解った。四官能性TESエポキシシロキサン(ラボサンプル、National Starch&Chemical Company)は再び、二官能性SIB1092.0サンプルよりも高い透過性を示した。
【0046】
実施例3.RDGEと種々の類似体との比較
【0047】
DCRDGE/EPON862と2%UV9380C光開始剤の50/50ブレンドの配合物を製造した。DCRDGE/EPON862ブレンドは室温で固体であるが、高温では融解した。フィルム製造では、キャスト前に樹脂の予熱が必要であり、次いで4J UVAで硬化し、175℃/1時間熱アニールした。このブレンドの透過は、4.9g・ミル/(100平方インチ・日)であり、これはEPON862単独、または6.3g・ミル/(100平方インチ・日)の50/50EPON/RDGEブレンドよりもかなり低かった。
【0048】
別の態様では、光開始剤として2重量%SR1012を使用して3JUVAで硬化させると、BRDGE/Aron Oxetane OXT−121(Toagosei)の50/50ブレンドは7.3g・ミル/(100平方インチ・日)の透過値を与えた。比較で、RDGE/OXT−121の50/50ブレンドは、同一条件下で9.5g・ミル/(100平方インチ・日)の透過値を与えた。これらの実験も先と同様にハロゲン化の利点を再び示している。OXT−121とSR1012は以下の構造をもつ:
【化12】

【0049】
実施例4.透過係数における芳香族置換の影響
【0050】
硬化配合物の透過率における種々の樹脂の基幹構造(backbone structure)の影響をタルクを充填した配合物で示す。32.5部EPON862、樹脂添加剤32.5部、タルク35部を含む数種のブレンドを調製し、硬化させた。それぞれの配合物は、樹脂をベースとして2重量%SR1012と0.21重量%ITXを含んでおり、3J UVAで硬化し、続いて70℃/10分、熱アニールした。結果を表2にまとめる。芳香族基幹とメタ置換の影響を比較で示す。
【0051】
【表2】

【0052】
ITX(Albemarle)は、以下の構造をもつカチオン性光増感剤である:
【化13】

【0053】
エポキシ添加剤に加えて、EPON862と数種のビニルエーテル化合物とのブレンドも調製し、硬化させた。これらのブレンドはEPON862を88部、ビニルエーテル10部、UV9380Cを2部含み、3J UVAで硬化させ、後の熱アニールは実施しなかった。結果を表3にまとめる。
【0054】
【表3】

VEctomer(登録商標)5015ビニルエーテル(Morflex)は、以下の構造をもつトリス[4−(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテートである。
【化14】

VEctomer(登録商標)4010ビニルエーテル(Morflex)は、以下の構造をもつビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]イソフタレートである。
【化15】

VEctomer(登録商標)4060ビニルエーテル(Morflex)は、以下の構造をもつビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]アジペートである。
【化16】

VEctomer(登録商標)4051ビニルエーテル(Morflex)は、以下の構造をもつビス[4−(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレートである。
【化17】

【0055】
これらの結果は再び、芳香族置換が通常、脂肪族置換よりも低い透湿性を与えることを示す。より重要なことには、これらはまた、メタ−置換だけでは、VEctomer(登録商標)5015、VEctomer(登録商標)4010の場合などの良好なバリヤ性能は保証しないことを示す。比較的低い充填割合でも、これらの物質を含むサンプルはいずれも、透湿性の増加を示した。しかしながら、これらのビニルエーテル添加剤は、早い硬化速度が望まれる場合でも使用することができる。
【0056】
実施例5.RDGE−ベースのバリヤシーラント1
【0057】
RDGE/EPON862混合物、光開始系(カチオン光開始剤及びITX)とシラン接着促進剤をプラスチックジャーに入れ、透明になるまで1時間、渦巻きミキサー(vortex mixer)で混合した。次いでミクロンサイズのシリカをジャーに添加し、サンプル全体を渦巻きミキサーでさらに1時間攪拌した。得られたペーストをさらにセラミック3ロールミルで攪拌し、真空チャンバで脱気した。組成と重量部を表4に示す。この配合物の粘度(25℃)は、ブルックフィールドDV−II+コーンプレート粘度計とCP−51プレートを使用して、10rpmで15,600cPであり、1rpmで32,000CPである。
【0058】
【表4】

【0059】
透湿性を測定するために、配合材料1〜2グラムをテフロンコーティングアルミニウムプレート上に置いた。8−路可変擦過器を使用して均等な厚さのフィルムをキャストした。次いでサンプルをDymax固定UV硬化装置下におき、中圧水銀ランプを使用して70秒間(3.3J/cm UVA)で硬化させた。サンプル表面上の放射照度は、UV Power Puck高エネルギーUV放射計(EIT Inc.,Sterling,VA)で測定し、それぞれ47(UVA)、32(UVB)、3(UVC)、35(UVV)mW/cmであった。上記フィルムの透湿係数(50℃、100%相対湿度)をMocon Permeation 3/33で測定し、3.0g・ミル/100平方インチ・日であることが判明した。
【0060】
接着性能は、テフロンコーティングアルミニウムプレート上、約1/4インチ離してテープ二つ(〜5ミル)を適用して試験した。刃を使用して、配合物をテープの間のフィルム内に引き入れた。ガラススライド片と数個の4×4mmガラスプレートダイをイソプロパノールできれいに拭き、イソプロパノール中で10分間超音波処理した。スライドとダイをイソプロパノールから取り出し、風乾してから、5分間UVオゾン清浄にかけた。次いでダイを配合物のフィルムにおき、軽くたたいてダイ全体を漬した。配合物コーティングからダイを取り出して、スライド上においた。ダイを軽くたたいてダイとスライドの間で配合物が濡れるようにした。シーラント配合物をDymax UV硬化装置で3.3J/cmUVAで硬化した。硬化したサンプルの剪断保持力(shear adhesion)を、100kgのヘッドと300ミルのダイツールを備えたRoyce Instrument552 100Kを使用して試験した。接着力は39.3±10.2kgであることが判明した。
【0061】
実施例6.RDGE−ベースのバリヤシーラント#2
【0062】
多環式エポキシを含むバリヤシーラント#2をバリヤシーラント#1と同様に製造し、成分を表5に列記する。
【0063】
【表5】

Eliclon HP−7200(DAINIPPON INK&CHEMICALS)は以下の構造をもつ:
【化18】

【0064】
6J UVA後の上記サンプルの透湿係数(50℃、100%相対湿度)をMocon Permeatran 3/33で測定し、2.6g・ミル/100平方インチ・日であることが判明した。接着力は、実施例5に記載の方法を使用して22.5±4.4kgであることが判明した。2週間の間、65℃/80%相対湿度でエージングした後でも接着力に全く変化はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は周辺シール化光電子デバイスである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)以下の構造:
【化1】

{式中、R、R、R、Rは、水素、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール及び置換アルキルまたはアリール基からなる群から選択され、R、Rは一般構造:−C2n−(式中、n=0〜4である)をもつ二価炭化水素リンカーであり、R、R、R、R、R、Rのいずれか二つは同一環式構造の一部を形成することができる、
、L、L、L、L、Lは直接結合であるか、または
【化2】

からなる群から選択される二価結合基であり、
RF及びRF’は、脂肪族エポキシ、グリシジルエーテル、脂環式エポキシ、ヒドロキシル、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、クロチルエーテル、スチレン、アクリレート、メタクリレート、イタコネート、マレイミド、マレエート、フマレート、シンナメート、アクリルアミド、メタクリルアミド、カルコン、チオール、アリル、アルケニル及びシクロアルケニル基からなる群から選択される硬化性官能基である}をもつメタ−置換反応基をもつ芳香族化合物;
(b)カチオン性若しくはラジカル開始剤またはその両方;
(c)場合により一種以上の充填剤;
(d)場合により一種以上の接着促進剤
を含む硬化性バリヤー組成物。
【請求項2】
芳香族化合物(a)の前記RF及びRF’官能基がエポキシ官能基である、請求項1に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項3】
芳香族化合物(a)上の前記RF及びRF’官能基が、以下のもの:
【化3】

{式中、構造上の水素は一つ以上のアルキルまたはハロゲン基によって置換されていてもよい}からなる群から選択される、請求項2に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項4】
芳香族化合物(a)が以下のもの:
【化4】

からなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項5】
前記芳香族化合物上のRF官能基がエポキシ化合物であり、且つ前記芳香族化合物上のRF’官能基が、ヒドロキシル、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、クロチルエーテル、スチレン、アクリレート、メタクリレート、イタコネート、マレイミド、マレエート、フマレート、シンナメート、アクリルアミド、メタクリルアミド、カルコン、チオール、アリル、アルケニル及びシクロアルケニル基からなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項6】
前記開始剤が、カチオン光開始剤、ブロンステッド酸、ルイス酸、または熱的−酸発生剤からなる群から選択されるカチオン開始剤である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項7】
一種以上の充填剤が含まれる、請求項1に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項8】
一種以上の充填剤が含まれ、且つ粉末石英、溶融シリカ、アモルファスシリカ、タルク、ガラスビーズ、グラファイト、カーボンブラック、アルミナ、クレー、マイカ、バーミキュライト、窒化アルミニウム、窒化ホウ素;銀、銅、金、スズ、スズ/鉛合金、ポリ(テトラクロロエチレン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(塩化ビニリデン)、CaO、BaO、NaSO、CaSO、MgSO、ゼオライト、シリカゲル、P、CaCl及びAlからなる群から選択される、請求項7に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項9】
一種以上のエポキシ樹脂が含まれる、請求項1に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項10】
前記一種以上のエポキシ樹脂が、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、多環式エポキシ及びハロゲン化グリシジルエーテルからなる群から選択される、請求項9に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項11】
一種以上の接着促進剤が含まれる、請求項1に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項12】
前記一種以上の接着促進剤が一種以上のシランである、請求項11に記載の硬化性バリヤ組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の硬化性バリヤ組成物でシール、コーティングまたは封入した電子または光電子デバイス。
【請求項14】
前記デバイスがOLEDである、請求項13に記載の電子または光電子デバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2009−531515(P2009−531515A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502735(P2009−502735)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/011441
【国際公開番号】WO2007/111606
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】