説明

放射線に曝露することによって熱硬化性ゲル組成物へ変換することのできる熱可塑性ゲル組成物

【課題】エアーフレッシュナーまたはガスケットなどの物品に作製することができ、次いで、放射線に曝露することによって熱硬化性ゲル組成物に変換することのできる熱可塑性ゲル組成物の提供。
【解決手段】架橋可能なブロックコポリマー5ないし40重量%、伸展油、可塑剤、および溶媒から選択される液体成分60ないし90重量%、二官能性もしくは多官能性のアクリラートまたはメタクリラートモノマーおよびビニルエーテルから選択される少なくとも1つの架橋剤1ないし20重量%、膨張可能な微小球0ないし10重量%、光開始剤0ないし3.0重量%からなる架橋することのできる熱可塑性ゲル組成物熱硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2004年3月25日出願の米国特許仮出願番号第60/556,448号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ゲル組成物に関する。本発明は、詳細にはローソク、エアーフレッシュナー、ガスケット、クッション、マットレス、枕等の物品を調製するのに有用なゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ゲル組成物は当分野において周知であり、多くの種類の製品を作製するのに有用であることが知られている。本発明の目的のためには、ゲルは固体およびゴム状材料である。ゲルは、オイルと組み合わせる場合の透明なオイルゲルローソクなど、揮発性溶媒および香料と組み合わせる場合のエアーフレッシュナーなどの物品を調製するのに有用である。これらのゲルの他の用途はガスケット、クッション、および玩具などの柔らかい物品の形成である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Fanの米国特許第5,879,694号は、炭化水素オイル、および1つまたは複数の3ブロック、放射状ブロック、または多ブロックコポリマーの熱可塑性ゴムを含む透明なゲルローソクを開示する。この種類のゲルは熱可塑性であるので、これらは溶融加工温度で低粘度であり、したがってこれらを混合することは容易であり、これらから物品を形成することが容易である。しかし、熱可塑性ゲルを用いる1つの問題は、これらを室温で用いると良好に機能するが、暖められると柔らかくなり、変形し、流動することさえあることである。ゲルが、例えば、暑い日の輸送容器中、または自動車のエンジン室に見られる温度で熱可塑性であるならば、これは非常にコストのかかる欠陥になり得る。室温よりいくらか高い温度で変形せず流動しないゲルを用いてこれらを調製することは、これらの製品を作製する当分野において望ましい。
【0005】
また、熱可組成ゲルの容易な加工特性を維持しながら、高温で変形または流動しないように材料を改善することは、ゲルローソク、エアーフレッシュナー、ガスケット、クッション(自転車用クッション、椅子およびソファークッション等)、マットレス、枕等などの製品を調製する当分野において望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明はイオン化または非イオン化放射線に曝露することによって熱硬化性ゲル組成物に変換することのできる熱可塑性ゲル組成物であり、熱可塑性組成物は、(a)水素化および非水素化スチレン/ジエンブロックコポリマーおよびジエン/ジエンブロックコポリマーからなる群から選択される架橋可能なブロックコポリマー約40〜約5重量%、(b)伸展油、可塑剤、および溶媒からなる群から選択される成分約60〜約90重量%、(c)二官能性もしくは多官能性のアクリラートまたはメタクリラートモノマーおよびビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤約1〜約20重量%、(d)膨張可能な微小球0〜約10重量%、および(e)光開始剤0〜約3.0重量%を含み、全成分の総計は100重量%であり、成分(b)は架橋可能なブロックコポリマーと相溶性があり、室温で液体である。
【0007】
他の態様において、本発明は、イオン化または非イオン化放射線に曝露することによって熱硬化性ゲル組成物に変換される熱可塑性ゲル組成物から調製される物品を含む熱硬化性物品であり、熱可塑性ゲル組成物は、(a)水素化および非水素化スチレン/ジエンブロックコポリマーおよびジエン/ジエンブロックコポリマーからなる群から選択される架橋可能なブロックコポリマー約40〜約5重量%、(b)伸展油、可塑剤、および溶媒からなる群から選択される成分約60〜約90重量%、(c)二官能性もしくは多官能性のアクリラートまたはメタクリラートモノマーおよびビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤約1〜約20重量%、(d)膨張可能な微小球0〜約10重量%、および(e)光開始剤0〜約3.0重量%を含み、全成分の総計は100重量%であり、成分(b)は架橋可能なブロックコポリマーと相溶性があり、室温で液体である。
【0008】
さらに他の態様において、本発明は、イオン化または非イオン化放射線に曝露することによって熱硬化性ゲル組成物に変換することのできる熱可塑性ゲル組成物から調製された熱可塑性物品を、熱硬化性物品に変換するのに十分な時間と条件下で熱可塑性物品を紫外光または電子ビーム放射線に曝露することを含む熱硬化性物品の調製方法であり、熱可塑性ゲル組成物は、(a)水素化および非水素化スチレン/ジエンブロックコポリマーおよびジエン/ジエンブロックコポリマーからなる群から選択される架橋可能なブロックコポリマー約40〜約5重量%、(b)伸展油、可塑剤、および溶媒からなる群から選択される成分約60〜約90重量%、(c)二官能性もしくは多官能性のアクリラートまたはメタクリラートモノマーおよびビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤約1〜約20重量%、(d)膨張可能な微小球0〜約10重量%、および(e)光開始剤0〜約3.0重量%を含み、全成分の総計は100重量%であり、成分(b)は架橋可能なブロックコポリマーと相溶性があり、室温で液体である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
成分(a)
本発明は、イオン化または非イオン化放射線に曝露することによって熱硬化性ゲル組成物に変換することのできる熱可塑性ゲル組成物である。本発明の組成物は、選択的に水素化されたおよび非水素化スチレン/ジエンブロックコポリマーおよびジエン/ジエンブロックコポリマーからなる群から選択される架橋可能なブロックコポリマーを約40〜約5重量%、好ましくは約20〜約10重量%含む。使用されるブロックコポリマーは、線形3ブロックまたは多ブロックコポリマー、または多腕もしくは星状対称性または非対称性ブロックコポリマーとすることができる。また、2ブロックコポリマー、ならびに2ブロックコポリマーと3ブロックコポリマーなどのブロックコポリマーの混合物も用いることができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、ブロックコポリマーは、一般式、
(S−B)−Y−(B) (I)
を有する非水素化スチレンブタジエンブロックコポリマーを含み、式中、Sはスチレンポリマーブロックであり、Bは1,2−ビニル含有量が10〜80モル%のブタジエンポリマーブロックであり、Yはカップリング剤残部であり、xは2〜20の整数であり、yは0〜20の整数であり、x+yは2〜30の範囲である。好ましくは、xの値は2〜12、さらに好ましくは2であり、yの値は0〜12、さらに好ましくは2である。このブロックコポリマーは米国特許第5,777,039号に開示され、この特許は参照により本明細書に組み込まれている。この実施形態のブロックコポリマーの真の分子量は、最終用途に応じて変化するが、約30〜約1000kg/モルの範囲、好ましくは約40〜約250kg/モルの範囲、さらに好ましくは約50〜約150kg/モルの範囲である。本明細書に用いられる用語「真の分子量」は、GPCトレースのピークからkg/モルで求められる分子量を指す。
【0011】
式(I)のブロックコポリマーにおいて、スチレン含有量は約10〜約40重量%であることが好ましく、さらに好ましくは約15〜約30重量%である。式(I)のブロックコポリマーは、例えば、米国特許第3,231,635号、米国特許第3,251,905号、米国特許第3,390,207号、米国特許第3,598,887号、米国特許第4,219,627号、欧州特許第EP−A−0,413,294号、欧州特許第EP−A−0,387,671号、欧州特許第EP−A−0,636,654号、および国際公開第WO04/22931号に示されるように(この全ては参照により本明細書に組み込まれている)、周知の完全逐次重合法を含む任意の既知の方法によって、場合によって再開始と組み合わせ、またはカップリング法によって調製することができる。カップリング法を用いて本実施形態のブロックコポリマーを作製するときに使用することのできるカップリング剤は、例えば、ジブロモエタン、四塩化ケイ素、アジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシランであるが、他のカップリング剤を使用することもできる。これらの調製経路において特に好ましいのは、ガンマ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシランまたはビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどのハロゲンを含まないカップリング剤の使用である。
【0012】
式(I)のブロックコポリマーが、膨張可能な微小球を含む本発明の熱可塑性オイル組成物の製造に用いられるとき、追加のポリマー(UV硬化しない水素化ブロックコポリマー)を組成物に加えることが好ましい。前記追加のポリマーは、少なくとも90%水素化された水素化ブロックコポリマーであることが好ましい(少なくとも90%の1,3−ブタジエンが水素化されてエチレン/ブタジエンブロックのブロックコポリマーが得られる水素化ポリマー、または少なくとも90%のイソプレンが水素化されてエチレン/プロピレンブロックのブロックコポリマーが得られるブロックコポリマー)。前記水素化ブロックコポリマーは約5〜約40、さらに好ましくは約15〜約30のスチレン含有量を有することが好ましい。これらのポリマーの例は、少なくとも1個のポリスチレンブロックと少なくとも1個の水素化ポリブタジエンブロック、水素化ポリイソプレンブロックまたはポリブタジエンとポリイソプレンの水素化された混合ブロックを含む一般構造を有するポリマーを含むが制限されない。式(I)のブロックコポリマーと組み合わせて本発明に使用することのできる市場で入手可能な好ましい水素化ブロックコポリマーは、KRATON(登録商標)G1652、KRATON(登録商標)G1726、またはKRATON(登録商標)G1657などのKRATON(登録商標)Gポリマーを含むが制限されない。式(I)のブロックコポリマーが水素化ブロックコポリマーと組み合わせて使用されるとき、この2種は、成分(a)の最終的な量が熱可塑性ゲル組成物の5〜40重量%であるように、3:1〜1:3の比(式(I)のブロックコポリマー:水素化ブロックコポリマー)で使用されることが好ましい。最も好ましい実施形態において、比は2:1〜1:2であり、さらに好ましくは1:1である。
【0013】
本発明の他の実施形態において、ブロックコポリマーは選択的に水素化され、
(A−HD)−Y−(UD) (II)、または
(UD−A−HD)−Y (III)、または
((UD)−A−HD)−Y−(UD) (IV)
から選択され、式中、Aは4,000〜30,000の分子量を有するビニル芳香族炭化水素ブロックであり、HDは、10,000〜100,000の分子量を有する水素化共役ジエンブロックであり、Yは多官能性カップリング剤であり、UDは1,000〜80,000の分子量を有する共役ジエンブロック、または1,000〜80,000の分子量を有する部分的に水素化された共役ジエンブロックであり、xは1〜20の整数であり、yは0または1であり、zは1〜20の整数であり、式(II)および(IV)においてx+zは2〜30の範囲である。これらのブロックコポリマーは米国特許第5,486,574号に開示され、前記特許は参照により本明細書に組み込まれている。
【0014】
式(II)、(III)および(IV)において、Aブロックはビニル芳香族炭化水素のポリマーブロックである。ビニル芳香族炭化水素はスチレンであることが好ましい。他の有用なビニル芳香族炭化水素は、アルファ−メチルスチレン、様々なアルキル置換スチレン、アルコキシ−置換スチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン等を含むが制限されない。HDおよびUDブロックは共役ジエンのポリマーブロックである。HDブロック用の好ましいジエンはブタジエンである。イソプレンはUDブロック用に好ましい。ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン等を含むが制限されない他のジエンも用いることができ、これらの共役ジエンは4〜8個の炭素原子を含むことが好ましい。HDブロックに用いられる共役ジエンは、特に選択的水素化の容易さに関して、UDブロックに用いられるものと異なることが好ましい。
【0015】
好ましくは、HDブロック中のジエンはUDブロック中のジエンよりも速くより完全に水素化されるべきである。上述のように、UDブロックは水素化されなくても、または部分的に水素化されてもよい。UDブロックが部分的に水素化されると、反応の後の不飽和(UD)ブロック中の水素化の量は、UDブロックが90%まで飽和される、すなわち、少なくとも10%の残留不飽和を含むようにすることができる。部分的な水素化の後、UDブロック中にジエンの元の不飽和が少なくとも50%残ることが好ましく、50〜90%残ることが最も好ましい。一般に、これらのポリマーの溶融粘度は、残留不飽和が増加すると低下する。
【0016】
A−HD腕またはブロックは一般に従来技術に説明されているように、好ましくは、ポリマー鎖のあらゆる二重結合の少なくとも90%を還元するように水素化することができる。A−HD腕中の元のオレフィン系不飽和は、適切には少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が水素化される。
【0017】
本発明に使用されるジエンは、好ましくは、使用温度(通常10℃〜40℃)で大部分非晶質であり可撓性を損なう過剰の結晶性を含まないものとすべきである。ブタジエンについては、例えば、1,2付加のパーセントは、好ましくは、エチレン−ブタジエン(EB)ゴムへ水素化した後の過剰の結晶性を避けるために、30%〜80%とすべきである。
【0018】
本発明の特に好ましい実施形態は、熱可塑性オイル組成物であり、ブロックコポリマーは、
(S−EB)−Y−(I) (V)、または
(I−S−EB)−Y (VI)、または
((I)−S−EB)−Y−(I) (VII)
から選択され、式中、Sはポリスチレンブロックであり、EBは水素化ポリブタジエンポリマーブロック[ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック](水素化前ブタジエンポリマーブロックの1,2−ビニル含有量は30〜80モル%である)であり、Iはポリイソプレンポリマーブロックまたは部分的に水素化されたポリイソプレンポリマーブロックであり、Yはカップリング剤残部であり、xは1〜20、好ましくは2〜12の整数であり、yは0または1であり、zは1〜20、好ましくは2〜12の整数であり、式(V)および(VII)においてx+zは2〜30の範囲である。本発明のさらに好ましい実施形態は、xの値が2でありzの値が2である式(V)、(VI)または(VII)のブロックコポリマーが用いられる実施形態である。この実施形態において、ポリ(エチレン/ブチレン)ブロックを形成するためのポリブタジエンブロックの水素化は、ポリブタジエン反応に選択的であり、本質的に全てではなくとも大部分のイソプレンブロックの水素化を除外する条件下で行われる。
【0019】
式(II)〜(VII)のポリマーは、一般に4〜35%、好ましくは12〜25%のAブロック含有量(Aがスチレンであるときのポリスチレン含有量)を有する。これらのポリマーは35,000〜300,000の分子量を有することが好ましい。Aブロックは、4,000〜20,000の分子量を有する。HDブロックは10,000〜100,000の分子量を有する。UDブロックは1、000〜80,000の分子量を有するべきである。
【0020】
線形ポリマーまたは未集合ポリマーの線形セグメント、モノ−、ジ−、トリブロック等のカップリング前のスターポリマーの腕の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(GPCシステムは適切に較正されている)によって都合よく測定される。アニオン性重合線形ポリマーについては、ポリマーは本質的に単分散性であり、観察された狭い分子量分布の「ピーク」分子量を記録することが都合よく、また十分説明的である。ピーク分子量は通常クロマトグラフに示された主要種の分子量である。GPCのカラムに使用すべき材料については、スチレン−ジビニルベンゼンゲルまたはシリカゲルが通常使用され、優れた材料である。テトラヒドロフランは本明細書に記載する種類のポリマーの優れた溶媒である。紫外線または屈折率検出器を使用することができる。
【0021】
カップリングしたスターポリマーの真の分子量測定は、GPCを用いるには直接的ではなく、容易でもない。これは、星形状の分子が、較正用に用いた線形ポリマーと同じように充填されたGPCカラムを通って分離して溶出せず、したがって、UVまたは屈折率検出器での到着時間が分子量の良好な指示とならないためである。スターポリマーのために用いる良い方法は、光散乱技術による重量平均分子量を測定することである。サンプルは適切な溶媒中に溶媒100ミリリットルあたり1.0g未満の濃度で溶解され、注射筒と孔サイズ0.5ミクロン未満の多孔質膜フィルターを用いて光散乱セル中へ直接濾過される。光散乱測定は、標準的な手順を用いて、散乱角度とポリマー濃度の関数として行われる。サンプルの示差屈折率(DRI)は、光散乱に用いられた同じ波長と同じ溶媒中で測定される。以下の参考文献は前述の分析方法に関するものである。
【0022】
(1)Modern Size−Exclusion Liquid Chromatography,W.W.Yau,J.J.Kirkland,D.D.Bly,John Wiley&Sons,New York,NY,1979.
(2)Light Scattering from Polymer Solution,M.B.Huglin,ed.,Academic Press,New York,NY,1972.
(3)W.Kaye and A.J.Havlik,Applied Optics,12,541(1973).
(4)M.L.McConnell,American Laboratory,63,May,1978.
【0023】
本実施形態の式(II)〜(VII)のブロックポリマーを作製する好ましい方法は、参照により本明細書に開示される欧州特許出願第0,314,256号に基本的に記載されているが、全て参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3,231,635号、米国特許第3,251,905号、米国特許第3,390,207号、米国特許第3,598,887号、米国特許第4,219,627号、欧州特許出願公開第EP−A−0,413,294号、欧州特許出願公開第EP−A−0,387,671号、欧州特許出願公開第EP−A−0,636,654号、および国際公開第WO04/22931号など、当分野に知られている任意の方法を用いることができる。欧州特許出願第0,314,256号は、望ましくないホモポリジエンポリマーの形成問題を回避する、非対称性放射状ポリマー製造の2ステップ工程を開示する。工程は、モノマーを別々に重合して2種の異なる種類の腕を別々に作製することを含む。次いで、ポリマーの腕の1つがカップリング剤にカップリングされ、このカップリング反応が完了すると、第2組のポリマー腕がカップリング剤にカップリングされる。
【0024】
これは最終ポリマー中のホモポリジエンの存在が非常に少量であることを保証する。本発明において、例えば、イソプレン腕はアニオン的に重合し、カップリング剤を介してカップリングする。引き続き、または平行して、スチレン−ブタジエン(SB)腕はアニオン的に重合し、次いで少なくとも2つの腕はカップリング剤を介してイソプレン腕にカップリングする。これらの水素化しない前駆体には、高度に不飽和のポリマー(例えば(SB)−Y−I))に共通の安定性の問題が起きる。続いて、カップリングしたポリマーは、好ましくはA−HD腕(またはブロック)のポリ(ジエン)だけを水素化する条件下で水素化され、UD腕(またはブロック)のポリ(ジエン)は本質的に不飽和で残る。
【0025】
一般に、記載した方法は、選択されたカップリング剤に含まれる1つまたは複数の官能基と反応する反応性末端基を含む任意のポリマーで、非対称性放射状またはスターポリマーを調製するのに用いられる。本方法は、単一終端金属イオンを含むいわゆる「リビング」ポリマーから非対称性放射性ポリマーを調製するのに特に適している。従来技術において周知のように、「リビング」ポリマーは炭素原子に直接結合した金属原子などの少なくとも1個の活性基を含むポリマーである。「リビング」ポリマーは、アニオン性重合によって容易に調製される。本発明は腕を形成する「リビング」ポリマーを用いて非対称性放射状ポリマーの調製に特に適しているので、これらのポリマーを参照して本発明を説明する。しかし、本発明は、選択されたカップリング剤がポリマーに含まれる反応部位と反応性のある官能基を含む限り、異なる反応基を有するポリマーにも等しく有用であることが理解される。
【0026】
単一の終端基を含むリビングポリマーは、無論、従来技術において周知である。これらのポリマーの調製方法は、例えば、米国特許第3,150,209号、第3,496,154号、第3,498,960号、第4,145,298号、および第4,238,202号に教示される。また、本発明の方法に用いるのに好ましいブロックコポリマーの調製方法は、例えば、米国特許第3,231,635号、第3,265,765号、第3,322,856号に教示される。これらの特許は参照により本明細書に組み込まれている。リビングポリマー生成物が不規則性またはテーパードコポリマーであるとき、モノマーは一般に同時に加えられるが、ある場合にはより速く反応するモノマーはゆっくり加えることができ、生成物がブロックコポリマーであるとき、分離したブロックを形成するために用いられるモノマーは逐次的に加えられる。
【0027】
一般に、本発明の非対称性放射状ポリマーの腕として有用なポリマーは、モノマーまたは複数のモノマーを、適切な溶媒中の有機アルキル金属化合物と−150℃〜300℃の範囲の温度、好ましくは0℃〜100℃の範囲内の温度で接触させることによって調製することができる。特に有効な重合開始剤は一般式RLi(Rは1〜20の炭素原子を有する脂肪族、環式脂肪族、アルキル置換環式脂肪族、芳香族、またはアルキル置換芳香族炭化水素ラジカルである)を有する有機リチウム化合物である。
【0028】
一般に、非対称性放射状ポリマーに腕として用いられるリビングポリマーは、0℃〜100℃の範囲内の温度、0バール〜7バールの範囲内の圧力でカップリング剤に接触させ、接触は腕とカップリング剤の間の反応が完了するまで、または少なくとも実質上完了するまで、一般に1〜180分間の範囲内維持される。
【0029】
一般に、この実施形態の非対称性放射状ポリマーに腕として有用なリビングポリマーは、カップリング剤に接触するとき溶液である。適切な溶媒はポリマーの溶液重合に有用なものを含み、脂肪族、環式脂肪族、アルキル置換環式脂肪族、芳香族、およびアルキル置換芳香族炭化水素、エーテル、およびこれらの混合物を含む。したがって、適切な溶媒は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロへプタン等の環式脂肪族炭化水素、メチルシクロヘキサン、メチルシクロへプタン等のアルキル置換環式脂肪族炭化水素、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、トルエン、キシレン等のアルキル置換芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ−n―ブチルエーテル等のエーテルを含む。本発明の非対称性放射状ポリマーの作製に有用なポリマーは単一の終端反応基を含むので、非対称性放射状ポリマーの調製に用いられるポリマーは、調製の後、反応性(リビング)部位を不活性化されることなく溶液中に維持される。一般に、カップリング剤はポリマーの溶液に加えることができ、またはポリマーの溶液をカップリング剤に加えることができる。
【0030】
リビングポリマーに接触させることによって放射状ポリマーを形成するのに有用な従来技術に既知の任意のカップリング剤は、本発明の非対称性放射状ポリマーの調製に使用することができる。適切なカップリング剤は、金属−炭素結合でリビングポリマーと反応する3個またはそれ以上の官能基を含む。本発明の方法は、任意の数の腕を有する非対称性放射状ポリマー中の異なる腕の相対的な分布を改善するが、本方法はカップリング剤が「リビング」ポリマーの金属−炭素結合に反応性のある3個〜約20個の官能基を含むとき非常に効果的である。したがって、適切なカップリング剤は、SiX、RSiX、HSiX、XSi−SiX、RXSi−(CH−SiXR、RXSi(CH−SiX−(CH−SiXR、XSi−(CH−SiX、R−C(SiX、R−C(CHSiX、C(CHSiX等、特に3個〜6個の官能基を含むものを含む。前述の式において、各Xは独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アルコキシドラジカル、カルボキシラートラジカル、水素化物等とすることができ、Rは1〜約10個の炭素原子、好ましくは1〜約6個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルであり、xは1〜約6の自然数である。特に有用なカップリング剤は、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素等の四ハロゲン化ケイ素、およびビス(トリハロ)シリルエタン、およびヘキサハロジシランなどのビス(トリハロ)シランを含み、ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素とすることができる。
【0031】
カップリング工程自体は参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,096,203号に詳細に記載されている。本明細書に有用な特定の多官能性カップリング剤はこの特許に記載されているが、本明細書に用いることのできる他のカップリング剤もある。
【0032】
スターポリマーは多官能性カップリング剤またはカップリングモノマーを用いてポリマー腕をカップリングすることによって作られる。好ましいカップリング剤は参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,010,226号、第4,391,949号、および第4,444,953号に記載されたものなどのポリアルケニル芳香族カップリング剤である。やはり参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,104,921号は、12欄と13欄にこれらのポリアルケニル芳香族化合物の完全な説明を含む。分子あたり26個までの炭素原子を含むジビニル芳香族炭化水素が好ましく、このメタ、またはパラ異性体のいずれかのジビニルベンゼン、および前記異性体の混合物である市販のジビニルベンゼンも十分満足できる。カップリング剤は重合が実質上完了した後にリビングポリマーに加えることが好ましい。カップリング剤の量は、広い限界値の間で変化するが、カップリングされる不飽和リビングポリマーの当量あたり少なくとも1当量用いることが好ましい。カップリング反応は、一般に重合反応と同じ溶媒中で行われる。温度は広い限界値の間、例えば25℃〜95℃で変化する。
【0033】
これらのコポリマー腕の水素化は、Raneyニッケルなどの触媒、白金、パラジウム等の貴金属、および溶解性遷移金属触媒の存在下の水素化を含んで、十分確立された様々な工程によって行うことができる。用いることのできる適切な水素化工程は、ジエン含有ポリマーまたはコポリマーがシクロヘキサンなどの不活性炭化水素希釈剤中に溶解され、溶解性水素化触媒の存在下で水素との反応によって水素化される工程である。これらの工程は、米国特許第3,113,986号、第4,226,952号、再発行特許第27,145号に開示され、この開示は参照により本明細書に組み込まれている。ポリマーは、UDブロックのポリジエン部分が少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%の残留不飽和を含みながら、HDポリジエンブロック中に、水素化前の元の不飽和含有量の約20%未満、好ましくはできるだけ0%に近い残留不飽和含有量を有する水素化ポリマーを製造するように水素化される。米国特許第5,039,755号に開示されるようなチタン触媒も水素化工程に用いることができる。
【0034】
成分(b)
熱可塑性ゲル組成物は、伸展油、可塑剤、および溶媒からなる群から選択される約60〜90重量%の成分を含む。使用するこれらの伸展油、可塑剤、および溶媒の選択は、組成物に意図されている最終用途の関数である。例えば、最終用途がローソクであるとき、伸展油が用いられる。最終用途がガスケットまたは玩具であるならば、しばしば可塑剤が用いられる。最終用途がエアーフレッシュナーであるならば、揮発性溶媒および香料が使用される。
【0035】
本発明の物品を作製するために用いられる伸展油は、炭化水素オイルであることが好ましい。好ましい伸展油はPenreco、Karns City、PAによって販売されるDRAKEOL(登録商標)オイル、およびCitgo、Tulsa、OKによって販売されるTUFFLO(登録商標)オイルなどのホワイトミネラルオイルである。Shell、Houston、TXによって販売されるSHELLFLEX(登録商標)オイル、およびCalumetによって販売されるCALSOL(登録商標)オイルなどの低芳香族含有パラフィン/ナフサ系工程オイルも満足のいくものである。ポリ−アルファ−オレフィンオイル、ポリプロピレンオイル、ポリブチレンオイル等の合成オイルも適している。本発明のブロックコポリマーに相溶性があり、室温で液体であり、当業者に本主題の物品の調製に有用であることが知られている任意の伸展油を本発明に用いることができる。
【0036】
様々な広範囲の可塑剤を用いて本発明の物品を製造することができる。適切な可塑剤はエステル、エーテル、またはアルコール、ならびに天然産出の脂肪およびオイルとすることができる。これらの可塑剤は、Exxon、Houston、TXによって販売されるJAYFLEX(登録商標)分岐アルキルエステル可塑剤およびVelsicol、Rosemont、ILによって販売されるBENZOFLEX(登録商標)安息香酸エステルを含む。適切な可塑剤の極めて完全なリストは米国特許出願公開第2002/0055562A1号に与えられる。本発明のブロックコポリマーに相溶性があり、室温で液体であり、当業者に本主題の物品の調製に有用であることが知られている任意の可塑剤を本発明に用いることができる。
【0037】
溶媒も本発明の物品を調製するのに用いることができる。溶媒の選択も物品の最終用途に大きく依存する。溶媒は可塑剤として機能することができるが、ゲルからゆっくり浸出して、不愉快な臭いの遮蔽または昆虫の殺傷または撃退などの機能を行う揮発性化合物であることが好ましい。また、本発明に有用な溶媒は、エステル、エーテルまたはアルコールなど、ゆっくり揮発し、昆虫撃退剤または香料などの機能性添加剤の放出を助ける揮発性炭化水素溶媒または酸素化溶媒とすることができる。本発明のブロックコポリマーに相溶性があり、室温で液体であり、当業者に本主題の物品の調製に有用であることが知られている任意の溶媒を本発明に用いることができる。
【0038】
上記のように、伸展油、可塑剤、および溶媒は本発明のゲル組成物中に約60〜約90重量%、好ましくは約80〜約90重量%存在する。
【0039】
成分(c)
また、本発明の組成物は、Sartomer、Exton、PAによって供給されるものなどの二官能性もしくは多官能性のアクリラートもしくはメタクリラートモノマー、およびBASF、Mount Olive、NJによって供給されるものなどのビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤を約1〜約20重量%含む。本発明に用いるのに特に好ましい架橋剤はヘキサンジオールジアクリラートおよびアルコキシル化ヘキサンジオールジアクリラートである。
【0040】
成分(d)
より低密度のゲルを調製するのが望ましい場合に、この目的を達するために加えることのできる本発明の他の成分は、Akzo Nobelから入手可能なEXPANCEL(登録商標)膨張可能微小球などの膨張可能な微小球である。加えられるとき、これらの膨張可能な微小球は熱可塑性ゲル組成物中に約0.1〜約10重量%、好ましくは約1〜約5重量%存在することが好ましい。膨張可能な微小球は一般に気体または揮発性液体を封入するポリマー殻からなる。殻内の気体が加熱されると、これはこの圧力を増加させ、熱可塑性殻は軟化し、微小球の体積が劇的に増加する。完全に膨張するとき、微小球の体積は元の体積の40倍を超えて増加することができる。膨張の前に、これらのポリマー微小球の密度は1.0〜1.3gm/ccの範囲とすることができる。これらのポリマー微小球の膨張温度は約60℃〜約200℃の範囲とすることができる。膨張可能な微小球の密度は膨張の後、約0.05gm/ccに降下する。これらの膨張した低密度の微小球が膨張中単に頂部へ分離することを防止するために、ゲルはこの分離を防止する十分な一体性を有することが必要である。ゲルを本発明のポリマーおよび架橋剤と架橋することによって、膨張微小球の分離が抑制される。
【0041】
成分(e)
本発明の熱可塑性組成物が紫外光への曝露によって熱硬化性組成物に変換されるならば、処方中に0.1〜3.0重量%の濃度で光開始剤を含むことが必要である。有用な光開始剤は、
ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル、
ジエトキシアセトフェノンおよびCiba、Tarrytown、NYによって販売されるDAROCURE(登録商標)BPなどの置換アセトフェノンおよびベンゾフェノン、
Cibaによって販売されるIRGACURE(登録商標)651などのベンジルメチルケタール、
Cibaによって販売されるIRGACURE(登録商標)184などのアルファヒドロキシケトン、および
Cibaによって販売されるIRGACURE(登録商標)819などのビスアシルホスフィンオキシドを含む。
【0042】
ビスアシルホスフィンオキシド型の光開始剤は本発明の架橋組成物を紫外光に曝露することによって組成物を架橋するのに特に好ましい。
【0043】
本発明の熱可塑性組成物は様々な電磁放射線源に曝露することによって硬化することができる。アルファ、ベータ、ガンマ、X線、および高エネルギー電子などのイオン化放射線、または紫外、可視、赤外、マイクロウェーブ、および無線周波数などの非イオン化放射線のいずれも用いることができる。電子ビーム、紫外線および可視放射線源が好ましい。
【0044】
電子ビーム装置は、硬化すべき組成物上を合焦させた電子の高エネルギービームで走査する高電圧型、または電子のカーテンが線形カソード電子ビーム管の窓を通過し、組成物はカーテンの下を通過する低エネルギー型とすることができる。高電圧電子加速装置の製造元は、High Voltage Engineering Corporation、Burlington、Mass.、およびRadiation Dynamics,Inc.、Westbury、N.Y.である。低エネルギー電子ビーム発生装置の製造元は、Torrance、CaliforniaのAmerican International Technologies,Inc.、Hayward、CaliforniaのRPC Industries、およびWilmington,MassachusettsのEnergy Sciencesを含む。
【0045】
また、紫外光源は200〜300ワット/インチの範囲のランプを用いる高強度型、または5〜20ワット/インチの範囲のランプを用いる低強度型とすることができる。管のいずれかの端部の電極によって、またはマイクロウェーブ照射によってランプを放電させ、ランプ内部にプラズマを発生させる。ランプ内部の材料はランプからの放射線の波長を決定し、ランプの種類は、ランプから放射される放射線が光開始剤の吸収特性に適合するように選択することができる。高強度の紫外線装置は、例えば、Fusion Systems Inc.、Gaithersburg、MDから入手可能である。低強度紫外線装置は、例えば、Ultra−Violet Products、Los Angeles、CAから入手可能である。
【0046】
可視領域の放射線も、単純に適切な材料を含むランプを用いることによって、紫外線を発生するのに用いられる同じ種類の装置から得ることができる。蛍光ランプ、ハロゲン化タングステンランプ、および可視レーザーも用いることができる。
【0047】
本発明の組成物は、安定剤、顔料、染料、膨張剤、発泡剤、香料、および粘着付与樹脂からなる群から選択される1つまたは複数の補足成分を追加で20重量%まで有することができる。当業者であればゲルを用いる物品調製に有用であることが周知である、任意の添加剤を本発明に用いることができる。
【0048】
本発明の熱可塑性組成物の成分は、熱可塑性ゲル形成の分野の技術者に有用であることが知られている任意の方法で組合せおよび混合して、熱可塑性組成物を形成することができる。一般に、成分は混合を容易にする十分高い温度で、均一な組成物を形成するのに十分長い時間混合され、次いで組成物は室温まで冷却して熱可塑性ゲルが形成される。必要であれば、過剰の溶媒を用い、次いで高温で揮散させることによって除去することができる。
【0049】
本発明の熱可塑性組成物は、物品調製の分野の技術者によって有用であることが知られている任意の工程によって物品に加工することができる。これらの工程は、成型、注型、押出し等を含むが制限されない。
【0050】
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、架橋剤によるポリマーの架橋は熱可塑性組成物を熱硬化性組成物へ変換する働きをすると考えられる。変換されると、本発明の熱硬化性組成物は比較的高い温度で変形または流動することなく用いることができ、これらの組成物は、特許請求の用途ならびにこれらの特性が有利である他のゲル用途に望ましいものとなる。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は本発明を例示するために提供される。実施例は本発明の範囲を制限するものではなく、制限するものと解釈すべきではない。特記がないかぎり、量は重量部または重量%である。
【0052】
3種類のポリマーを用いて本発明を説明する。ポリマーAは米国特許第5,777,039号に記載されている種類である。ポリマーAは(S−B)−Y−Bであり、式中、Sはポリスチレンブロックであり、Bは1,2−ビニル含有量が55%のポリブタジエンブロックであり、Yはカップリング剤残部である。ポリマーBおよびCは米国特許第5,486,574号に記載されている種類である。ポリマーBは(S−EB)−Y−(I)であり、式中、Sはポリスチレンブロックであり、EBは1,2−ビニル含有量が40%の殆ど完全に水素化されたポリブタジエンブロックであり、Iは部分的に水素化されたポリイソプレンブロックであり、Yはカップリング剤の残部である。ポリマーCは(I−S−EB)−Yであり、式中、I、S、EBおよびYはポリマーBと同じ意味を有する。ポリマー特性は表1に示される。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例に用いられた他の成分は以下の通りである。
【0055】
【表2】

【0056】
サンプル調製−ゲルを130℃でSilversonの回転子/固定子ミキサーで混合した。ポリマーおよび酸化防止剤を最初に約1時間混合してオイル中に溶解した。次いで、光開始剤およびジアクリラートモノマー架橋剤を加え、試験サンプルを調製する前にさらに5分間混合を継続した。約60グラムのゲルを10×10cmの離型紙ボートに注いで約0.6cm厚さのフィルムを作製した。60mlのゲルをポリプロピレン製カップに注いで直径約3.3cm×高さ4.3cmの栓を作製した。フィルムと栓はこれらの容器から取り出し、5個の8ワットUV管(F8T5BL 8 W Black Light)を備えるULTRA−VIOLET PRODUCTS Model CL−1000照射ユニットで30秒〜10分間の様々な時間照射した。また、いくつかのサンプルは室内蛍光灯に1週間まで曝露した。
【0057】
試験−3種の試験を用いて架橋の程度を評価した(全ての試験に全てのサンプルは使用しなかった)。
【0058】
架橋ゲル−この試験において、厚さ0.6cmのゲルのフィルム片を100℃で1時間ジャーの上に吊るし、ジャーの底に溶融したゲルの画分を測定した。最初に、8.8×1.3cmの紐を木製舌圧子で挟み、次いでジャーの上に吊るした。次いで、試験を変更し、5メッシュの網上に支持した直径2.5cmのフィルム円板をジャーの頂部に配置した。ゲルが未架橋であれば、殆ど100%のゲルが溶融し、ジャーの中に滴下した(架橋ゲル=0%)。ゲルが厚さ全体で硬化したならば、ゲルは全く溶融しなかった(架橋ゲル=100%)。特にIRGACURE651では、いくつかのゲルが硬化勾配を有し、UVランプに面した側は緊密に硬化し、裏側は未硬化で残ることが見出された。
【0059】
トルエン中のゲル−この試験において、厚さ0.6cmのゲルのフィルム片を一夜トルエンに浸漬し、ゲルの外観を品質的に評価した。サンプルが全く架橋していなければ、ゲルはトルエン中に存在しない。サンプルが十分硬化していれば、トルエンで膨潤したゲルは、きれいなスポンジ状の平滑な外観を有する。ゲルに硬化勾配があれば、ランプに面する表面は緊密に硬化し、したがって僅かしか膨潤せず、一方、裏側は僅かしか硬化せず、したがって大きく膨潤するので、膨潤したゲルは大きく湾曲し得る。
【0060】
栓の変形−この試験において、直径3.3cmの栓を未照射末端部を上にしてビーカー中に置き、ビーカーを70℃のオーブンに1時間置き、栓の変形を、溶融、多量、少量、なしで評価した。ゲルが未硬化であったならば、栓は溶融しビーカーの底に平たくなった。栓の流れが悪く完全に溶融しない大きな変形がときどきあった。他の場合には、栓の中間部分が僅かに膨らむだけの少量の変形があった。ゲルが十分硬化したならば、栓には全く変形がなく、変形はなしと評価した。
【0061】
(実施例A、B、および1〜4)
表2はポリマーAの架橋挙動を示す。サンプルAおよびBは本発明の範囲に含まれない。光開始剤またはアクリル系モノマーを含まないサンプルAは、10分間の照射でも硬化せず、したがって、100℃で簡単に溶融し、ジャーの底に自然に平たくなり、これはトルエンに浸漬すると溶解する。サンプルBはUVに曝露するといくらか架橋するが、架橋ゲルの含有量は少ない。サンプル1〜4は本発明の範囲に含まれる。サンプル1〜4は光開始剤とアクリル系モノマーの両方を含む処方が架橋し、したがって、架橋ゲル含有量の試験においてゲルの半分以上が溶融せずに残る。
【0062】
【表3】

【0063】
(実施例5〜9)
表3の結果は、IRGACURE819が光開始剤としてIRGACURE651よりもさらに効果的であることを示す。サンプル5〜8の架橋ゲル含有量は非常に多く、栓の変形は非常に僅かであるかまたはなしである。サンプル9については架橋ゲル含有量が少なく、栓の変形は僅かであり、0.1重量%のIRGACURE819がゲルの架橋に必要なほぼ最小量であることを示す。
【0064】
【表4】

【0065】
(実施例10〜12)
表3中のサンプル7〜9と表4中のサンプル10〜12の比較結果は、ヘキサンジオールジアクリラート、Sartomer SR238の性能がアルコキシ化ヘキサンジオールジアクリラート、Sartomer CD560の性能に非常に近いことを示す。
【0066】
【表5】

【0067】
(実施例13〜16)
表5の結果は部分的に水素化されたポリマーの効果を示す。結果は、オイルゲル中10または20重量%の両方のポリマーが良好に架橋して、トルエンに膨潤したとき高い架橋ゲル含有量ときれいなゲル構造を与えることを示す。
【0068】
【表6】

【0069】
(実施例17〜19)
表6は部分的に水素化されたポリマーに基づくゲル中のIRGACURE819濃度の効果を示す。結果はサンプル17〜19全てが良好に架橋して、トルエンに膨潤したとき多くの架橋ゲル含有量ときれいなゲル構造を与えることを示す。光開始剤濃度を少なくすると栓の変形が僅かに増加する。
【0070】
【表7】

【0071】
(実施例20〜24)
表7は膨張可能な微小球を用いて低密度のオイルゲルを調製するには、オイルゲルをUV硬化することが重要であることを示す。これらのゲルは、ポリマーと酸化防止剤をSilversonミキサーで130℃約1時間オイル中に混合することによって調製した。膨張可能な微小球を加え、約5分間混合した。次いで、架橋剤および光開始剤が加えられ、試験サンプルが調製される前にさらに5分間混合した。膨張可能な微小球は、これらの殻が軟化し膨張する温度未満の温度でゲル中に混合することが重要であり、本実施例の場合約165℃である。本実施例において、組成物はミキサーから130℃で型の中に熱注入し、厚さ約12.5mmのフィルムを作製した。ゲルはUV−Aランプに5分間曝露した。次いで、これらは175℃で15分間加熱し、微小球を膨張させた。厚さは加熱の前後に測定し、厚さ増加のパーセントを計算した。
【0072】
表7の結果はサンプル20の未架橋ゲルが、微小球を膨張させるために175℃に加熱されたとき、簡単に溶融したことを示す。サンプル21は非常に緊密に硬化されたので、微小球が膨張するとき2個の片に割れた。サンプル22において、硬化の程度はUV硬化しないKRATON G1652とUV硬化するポリマーAの50/50混合物を用いることによって制限された。結果は、微小球を膨張させるために加熱したとき、ゲルが27%膨張したことを示す。未反応性/反応性ポリマーの75/25混合物を用いるサンプル23は、十分硬化せず、したがって175℃に加熱したとき、これも溶融した。サンプル24はポリマーCを有するゲルは加熱されたとき20%膨張したことを示す。
【0073】
【表8】

【0074】
(実施例25〜27)
表8は、より高濃度の膨張可能な微小球を有するUV硬化されたオイルゲルを示す。これらのゲルは、試験サンプルが直径3.3cm、高さ3cmの栓であることを除き、実施例20〜24と同様に調製した。栓を室内蛍光灯に1週間曝露することによって硬化した。硬化したゲルは165℃で30分間加熱し、微小球を膨張させた。膨張するとき、栓はこの形状を保ったが、大きくなった。栓から立方体を切り出し、これらの寸法および重量を測定し、これらの密度を計算した。
【0075】
未膨張ゲルについて計算した密度は約0.86gm/ccである。表8の結果は膨張したゲルの密度が約40%低下したことを示す。
【0076】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線に曝露することによって架橋することのできる熱可塑性ゲル組成物であって、
(a)(A−HD)−Y−(UD) (II)、または
(UD−A−HD)−Y (III)、または
((UD)−A−HD)−Y−(UD) (IV)
[式中、Aは4,000ないし30,000の分子量を有するビニル芳香族炭化水素ブロックであり、HDは10,000ないし100,000の分子量を有する水素化共役ジエンブロックであり、Yは多官能性カップリング剤であり、UDは1,000ないし80,000の分子量を有する共役ジエンブロック、または1,000ないし80,000の分子量を有する部分的に水素化された共役ジエンブロックであり、xは1ないし20の整数であり、yは0または1であり、zは1ないし20の整数であり、式(II)および(IV)においてx+zは2ないし30の範囲にある。]
からなる群から選択される架橋可能なブロックコポリマー5ないし40重量%、
(b)前記架橋可能なブロックコポリマーと相溶性のある伸展油、可塑剤、および溶媒から選択される液体成分60ないし90重量%、
(c)二官能性もしくは多官能性のアクリラートまたはメタクリラートモノマーおよびビニルエーテルから選択される少なくとも1つの架橋剤1ないし20重量%、
(d)場合によっては、膨張可能な微小球0ないし10重量%、および
(e)場合によっては、光開始剤0ないし3.0重量%を含み、
全成分の総計が100重量%に等しい、前記熱可塑性ゲル組成物。
【請求項2】
ブロックコポリマーが、
(S−EB)−Y−(I) (V)、または
(I−S−EB)−Y (VI)、または
((I)−S−EB)−Y−(I) (VII)
から選択される、請求項1に記載の熱可塑性ゲル組成物
[式中、
Sはポリスチレンブロックであり、EBは水素化ポリブタジエンポリマーブロック(水素化前のブタジエンポリマーブロックの1,2−ビニル含有量は30ないし80モル%である)であり、Iはポリイソプレンポリマーブロックまたは部分的に水素化されたポリイソプレンポリマーブロックであり、Yはカップリング剤残部であり、xは1ないし20の整数であり、yは0または1であり、zは1ないし20の整数であり、式(V)および(VII)においてx+zは2ないし30の範囲である。]。
【請求項3】
xの値が2でありzの値が2である、請求項1または2に記載の熱可塑性ゲル組成物。
【請求項4】
成分(b)が、ホワイトミネラルオイル、パラフィン/ナフサ系伸展油、合成もしくは天然のエステル、エーテルおよびアルコール、および炭化水素または酸素化炭化水素溶媒、好ましくはパラフィン/ナフサ系伸展油から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性ゲル組成物。
【請求項5】
架橋剤が二官能性アクリラートモノマー、好ましくはヘキサンジオールジアクリラートである、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性ゲル組成物。
【請求項6】
組成物が、0.1ないし10重量%、好ましくは1ないし5重量%の膨張可能な微小球を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性ゲル組成物。
【請求項7】
光開始剤が、0.1ないし3重量%存在し、およびベンゾインエーテル、置換アセトフェノンならびにベンゾフェノン、置換ベンジル−ケタール、ビスアシルホスフィンオキシド、アルファヒドロキシケトン、アルファアミノケトン、およびこれらの種類の混合物、好ましくはビスアシルホスフィンオキシドから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性ゲル組成物。
【請求項8】
熱可塑性物品を熱硬化性物品に変換するのに十分な時間と条件で、イオン化放射線、好ましくは電子ビーム放射線、または非イオン化放射線、好ましくは紫外光または可視光に曝露された、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱可塑性ゲル組成物を含む熱硬化性物品。
【請求項9】
熱硬化性物品が、透明ローソク、エアーフレッシュナー、柔軟ゴムガスケット、クッション、マットレス、および枕から選択される、請求項8に記載の熱硬化性物品。
【請求項10】
放射線への曝露によって架橋することのできる熱可塑性ゲル組成物であって、
(a)式(S−B)−Y−(B) (I)
[式中、Sはポリスチレンポリマーブロックであり、Bは1,2−ビニル含有量が10ないし80モル%のポリブタジエンポリマーブロックであり、Yはカップリング剤残部であり、xは1ないし20の整数、好ましくは2であり、yは0ないし20の整数、好ましくは2であり、およびx+yは2ないし30の範囲である。]
の架橋可能なブロックコポリマーとポリスチレン−水素化ポリブタジエン−ポリスチレンブロックコポリマーの混合物(式(I)のブロックコポリマー:ポリスチレン−水素化ポリブタジエン−ポリスチレンブロックコポリマーの比が、3:1ないし1:3である)を5ないし40重量%、
(b)前記架橋可能なブロックコポリマーと相溶性のある伸展油、可塑剤、および溶媒から選択される液体成分60ないし90重量%、
(c)二官能性もしくは多官能性のアクリラートまたはメタクリラートモノマーおよびビニルエーテルから選択される少なくとも1つの架橋剤1ないし20重量%、
(d)膨張可能な微小球0.1ないし10重量%、および
(e)光開始剤0ないし3重量%を含み、
全成分の総計が100重量%である、前記熱可塑性ゲル組成物。

【公開番号】特開2010−209341(P2010−209341A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−100572(P2010−100572)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【分割の表示】特願2007−505216(P2007−505216)の分割
【原出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(501140348)クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・ベー (44)
【Fターム(参考)】