説明

放射線センサ及びそれを備えた非破壊検査装置

【課題】構造物の狭隘部に連通した空間内にある検査対象物を、その狭隘部の幅よりも広い範囲で撮像することができる放射線センサ及びその放射線センサを用いた非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
構造物の狭隘部210に連通した空間内に、検査対象物100を挟んで検査対象物に向けて放射線を照射する放射線照射手段(X線照射手段10)の反対側に配置され、検査対象物を透過した放射線を受けることにより検査対象物を撮像する放射線センサ(X線センサ20)であって、放射線を検出する放射線検出器が長手方向に沿って列状に配置された棒状の放射線検出部(X線検出部21)と、放射線検出器を支持して空間内に放射線検出部を支持するための棒状の支持部材と、放射線検出部と支持部材との間に設けられて支持部材に対する放射線検出部の角度を変更することができる接続部14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査装置に用いられる放射線センサ及びそれを備えた非破壊検査装置に関し、特に狭隘部内又は狭隘部に連通した空間内にある検査対象物を検査する際に用いられて有用なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、構造物などの内部構造を検査するために、非破壊検査方法が用いられてきた。非破壊検査方法としては、たとえばX線を被検査対象物に照射して被検査対象物の内部の傷を見つけたり、外観の傷を見つけるX線透過検査方法などが知られている。
【0003】
このようなX線透過検査方法を用いた装置として、X線非破壊検査装置がある(例えば特許文献1参照)。X線非破壊検査装置は、X線を照射するX線照射手段とX線を検出するX線検出手段とを具備しており、X線照射手段で発生させたX線を検査対象物に照射し、その検査対象物を透過したX線をX線検出手段で検出することによって検査対象物の状態を検査することができるようになっている。そして、このようなX線非破壊検査装置では、X線検出手段として、X線フィルム及びイメージングプレートなどのように読み取り装置を必要とするものや、シンチレーションCCDカメラ、X線イメージインテンシファイアー及びフラットパネルX線センサなどのように読み取り装置を必要としないものの2種類が用いられている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−177841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなX線非破壊検査装置に用いられる平面状に形成されたX線フィルムやイメージングプレートなどは、用途に応じて自在にその大きさを変えることができることから、構造物の狭隘部に連通する空間内にある検査対象物の検査に用いることができるという利点がある。
【0006】
しかしながら、X線フィルムは、検査対象物の近傍に取り付けられた後X線源から照射されたX線によってその一部が感光し、その後検査対象物の近傍から取り外され、感光した部分を検出することによってX線を検出するというものであり、一度使用されると再利用することができない。また、イメージングプレートも一度使用されるとイメージングプレート消去器を用いてデータを消去しなければ、再使用することができない。したがって、これらのものを用いて、検査対象物をリアルタイムで撮像したり、その場観察(X線照射と同時とまではいかないが、X線照射後直ちに検査対象物の画像を得ることができることをいう。)したりすることができないという欠点がある。以上のことから、リアルタイムやその場観察で検査対象物の状態を検査する必要がある場合には、X線フィルムやイメージングプレートが用いられたX線非破壊検査装置を用いることができないという問題があった。
【0007】
それに対して、シンチレータやCdTe素子などの放射線検出器が面状に配置されたシンチレーションCCDカメラ、X線イメージインテンシファイアーやフラットパネルX線センサなどは、平面画像として検査対象物をリアルタイムで撮像したり、その場観察したりすることができるという利点がある。
【0008】
しかしながら、市販されているこれらのもののサイズ(幅)は固定されており、しかもそのサイズ(幅)が大きい。したがって、これらのものを用いて、これらのものの幅よりも狭い幅の狭隘部に連通した空間内にある検査対象物の検査にこれらのものを用いたX線非破壊検査装置を用いることができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み、構造物の狭隘部に連通した空間内にある検査対象物を、その狭隘部の幅よりも広い範囲で撮像することができる放射線センサ及びその放射線センサを備えた非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、構造物の狭隘部に連通した空間内に、検査対象物を挟んで前記検査対象物に向けて放射線を照射する放射線照射手段の反対側に配置され、前記検査対象物を透過した放射線を受けることにより前記検査対象物を撮像する放射線センサであって、放射線を検出する放射線検出器が長手方向に沿って列状に配置された棒状の放射線検出部と、前記放射線検出器を支持して前記空間内に前記放射線検出部を配置するための棒状の支持部材と、前記放射線検出部と前記支持部材との間に設けられて前記支持部材に対する前記放射線検出部の角度を変更することができる接続部とを有することを特徴とする放射線センサにある。
【0011】
かかる第1の態様では、狭隘部に挿入する際には、放射線検出部の長手方向と支持部材の長手方向とが一致するように支持部材に対する放射線検出部の角度を変更することによって放射線センサを棒状に変形させた状態で狭隘部を通し、放射線検出部が狭隘部に連通した空間内に位置するようになった後、支持部材に対して放射線検出部が所定の角度をなすように支持部材に対する放射線検出部の角度を変更することができるので、狭隘部に連通した空間内にある検査対象物について、その狭隘部に対応する検査対象物の領域以外の領域を撮像することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記接続部は、前記放射線検出部の回動軸として前記放射線検出部を回動させることにより前記支持部材に対する前記放射線検出部の角度を変更することができるようになっていることを特徴とする第1の態様に記載の放射線センサにある。
【0013】
かかる第2の態様では、支持部材に対する放射線検出部の角度を容易に制御することができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記放射線検出部は、前記接続部にそれぞれ接続された複数の小型放射線検出部からなり、前記小型放射線検出部は、長手方向に沿って列状に複数配置された放射線検出器をそれぞれ有し、前記接続部は、前記小型放射線検出部の回動軸として前記小型放射線検出部をそれぞれ独立して回動させることにより前記支持部材に対する前記小型放射線検出部の角度をそれぞれ独立して変更することができるようになっていることを特徴とする第1の態様に記載の放射線センサにある。
【0015】
かかる第3の態様では、狭隘部に連通する空間内にある検査対象物のより広い領域を一度で撮像することができる。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載の放射線センサと、放射線を照射する放射線源が長手方向に沿って列状に配置された棒状の前記放射線照射部と、前記放射線照射部を支持して前記空間内に前記放射線照射部を配置するための棒状の支持部材と、前記放射線照射部と前記支持部材との間に設けられて前記支持部材に対する前記放射線照射部の角度を変更することができる接続部とを有する前記放射線照射手段と、前記検査対象物の所定の領域の一部を撮像する際に、前記放射線照射部と前記放射線検出部とが平行に配置されるように前記放射線照射部及び前記放射線検出部の位置を制御し、且つ前記検査対象物の所定の領域の一部を撮像した後前記放射線照射部及び前記放射線検出部をそれぞれ移動させて前記検査対象物の所定の領域の他の一部を撮像するように前記放射線照射部及び前記放射線検出部の動作を制御する制御部とを具備することを特徴とする非破壊検査装置にある。
【0017】
かかる第4の態様では、狭隘部に挿入する際には、放射線検出部と同様に、放射線照射部の長手方向と支持部材の長手方向とが一致するように支持部材に対する放射線検出部の角度を変更することによって放射線照射手段を棒状に変形させた状態で狭隘部を通し、放射線照射部が狭隘部に連通した空間内に位置するようになった後、支持部材に対して放射線照射部が所定の角度をなすように支持部材に対する放射線照射部の角度を変更することができるので、狭隘部に連通した空間内にある検査対象物について、その狭隘部に対応する検査対象物の領域以外の領域に放射線を照射してその画像を得ることができる。また、放射線照射部と放射線センサとが同期するようにそれぞれ移動させて検査対象物を撮像することができるので、検査対象物の正確な画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る放射線センサによれば、狭隘部に挿入する際には、放射線検出部の長手方向と支持部材の長手方向とが一致するように支持部材に対する放射線検出部の角度を変更することによって放射線センサを棒状に変形させた状態で狭隘部を通し、放射線検出部が狭隘部に連通した空間内に位置するようになった後、支持部材に対して放射線検出部が所定の角度をなすように支持部材に対する放射線検出部の角度を変更することができるので、狭隘部に連通した空間内にある検査対象物について、その狭隘部に対応する検査対象物の領域以外の領域を撮像して、その領域の画像を得ることができる。
【0019】
また、本発明に係る非破壊検査装置によれば、この放射線センサと同様に支持部材に対する放射線照射部の角度を変更することができるので、狭隘部に連通した空間内にある検査対象物について、その狭隘部に対応する検査対象物の領域以外の領域に放射線を照射してその画像を得ることができる。さらに、放射線照射部と放射線センサとが同期するようにそれぞれ移動させて検査対象物を撮像することができるので、検査対象物の正確な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る非破壊検査装置の一例であるX線非破壊検査装置を示す概略図であり、図2は本実施形態のX線センサの一部の概略正面図である。図1に示すように、本実施形態に係るX線非破壊検査装置1は、検査対象物の所定の領域の一部にX線を照射する機能を有するX線照射手段10と、X線照射手段10からの放射線を受けて検査対象物の所定の領域の一部を撮像する機能を有するX線センサ20と、X線照射手段10及びX線センサ20のそれぞれに接続されてX線照射手段10及びX線センサ20の動作を制御する制御部30と、X線センサ20に接続されてX線センサ20により得られた検査対象物の所定の領域の一部の画像をそれぞれ組み合わせて検査対象物全体の画像を得る画像合成部40とを具備している。
【0022】
X線照射手段10は、放射線照射部の一例であるX線を照射するX線照射部11と、X線照射部11に接続された棒状の支持部材12を伸縮させてX線照射部11の鉛直方向の位置(高さ)を調整することができる調整部13と、調整部13の下方に設けられて水平方向に移動するための移動手段15からなり、X線照射部11を三次元的に自在に配置することができるようになっている。
【0023】
X線照射部11は、構造物の狭隘部内に入ることができる程度に小型のもので、検査対象物にX線を照射することができるものであれば特に限定されず、たとえばX線管を備えたものや、高エネルギー電子ビームをターゲットに入射させることによりそのターゲットからX線を発生させる機構を備えたものなどが挙げられる。ここで、X線照射部11としては、X線を照射することができるものであれば特に限定されないが、320KeV〜1000KeVの高エネルギーX線を照射することができるものが好ましい。高エネルギーX線はより高い透過性を有するので、高エネルギーX線を照射することができるX線照射部11を用いることにより、より厚みのある検査対象物を撮像することができる。
【0024】
支持部材12はX線照射部11を保持することができるものであれば特に限定されず、調整部13は支持部材12を鉛直方向に伸縮させてX線照射部11の鉛直方向の位置を調整することができるものであれば特に限定されない。
【0025】
移動手段15は、上部に載置されるX線照射部11、支持部材12及び調整部13を水平方向に自在に移動させることができるものであれば特に限定されない。本実施形態の移動手段15は、複数のローラ16とそのローラ16を駆動するための駆動手段(図示しない)とからなっている。
【0026】
一方、X線センサ20は、検査対象物の一部を透過したX線を受け、そのX線を対応する電気信号に変換する放射線検出部の一例であるX線検出部21と、X線検出部21に接続された支持部材12を伸縮させてX線検出部21の鉛直方向の位置(高さ)を調整することができる調整部13と、X線検出部21と支持部材12との間に設けられて支持部材12に対するX線検出部21の角度を変更することができる接続部14と、調整部13の下方に設けられて水平方向に移動するための移動手段15とからなっている。
【0027】
X線検出部21は棒状に形成されており、その幅方向中央部にはX線検出器であるCdTe素子211が長手方向に沿って列状に複数配置されている。具体的には、CdTe素子211が、X線検出部21の幅方向中央部に長手方向に沿って1列に並んで複数配置されている。X線検出部21としては、構造物の狭隘部内に挿入することができる程度に小型のもので、X線を検出して検査対象物の一部の画像に対応する電気信号に変換することができるものであれば特に限定されない。なお、X線検出部21の長手方向の長さは任意に設定することができる。
【0028】
ここで、X線として高エネルギーX線を用いる場合には、その高エネルギーX線を十分に受けることができるX線検出部21を用いる必要があるのはいうまでもない。たとえば、320Kev以上のエネルギーを有するX線を検出する場合には、320KeVより低いエネルギーのX線の検出に用いられるCdTe素子よりもより厚みのあるCdTe素子を用いることなどが挙げられる。
【0029】
接続部14は、X線検出部21と支持部材12との間に設けられ、図2に示すように、X線検出部21の回動軸としてX線検出部21を回動させることができるものであれば特に限定されない。接続部14としては、たとえばX線検出部21と支持部材12とを繋ぎ、かつ図示しない駆動モータなどの駆動手段によってX線検出部21を回動させて、支持部材12に対するX線検出部21の角度を自在に変更することができる自在継手などが挙げられる。なお、その他の構成要素は、X線照射手段10を構成するものと同様であるので、同符号を付して説明を省略する。
【0030】
制御部30は、X線照射手段10及びX線センサ20の動作を制御するものである。詳細は後述するが、具体的には、検査対象物の所定の領域の一部を撮像する際にX線照射部11とX線検出部21とが所定の距離を隔てて配置されるようにX線照射手段10及びX線センサ20の位置を制御すると共に、検査対象物の所定の領域の一部を撮像した後X線照射部11及びX線検出部21を移動させてその検査対象物の所定の領域の他の一部分を撮像するようにX線照射部11及びX線検出部21の動作を制御する。また、制御部30は、支持部材12に対してX線検出部21が所定の角度をなすようにX線検出部21を回動させることができるように制御する。
【0031】
ここで、検査対象物の一部を撮像する際にX線照射部11とX線検出部21とが所定の距離を隔てて配置されるように制御する方法は特に限定されない。たとえば、制御部30は以下に説明するようにして制御してもよい。まず、ある地点を基準点としたデカルト座標を設定し、そのデカルト座標において、X線照射手段10及びX線センサ20が水平方向に移動した距離と、X線照射手段10の支持部材12及びX線センサ20の支持部材12が伸縮した状態における長さとに基づいて、X線照射部11及びX線検出部21のそれぞれが位置する座標を求める。次に、それらの座標からX線照射部11とX線検出部21との距離を算出し、その距離が上述した所定の間隔となるように各移動手段15及び各調整部13をそれぞれ制御してもよい。また、X線照射部11及びX線検出部21にレーザー距離測定器などを取り付け、それを用いてX線照射部11とX線検出部21との距離を測定し、その距離が上述した所定の間隔となるように移動手段15及び調整部13を制御してもよい。なお、制御部30としては、このような制御を行うことができるものであれば特に限定されず、たとえば一般的なパーソナルコンピュータや専用計算機などが挙げられる。
【0032】
画像合成部40は、X線検出部21によって変換された検査対象物の所定の領域の一部の画像に対応する電気信号を複数組み合わせて、検査対象物の所定の領域全体の画像を合成することができるものである。具体的には、画像合成部40は、隣接する検査対象物の所定の領域の一部の画像同士を重複領域がないように重ね合わせ、最終的に検査対象物の所定の領域全体の画像を合成するものである。ここで、検査対象物の所定の領域全体の画像を合成する方法は特に限定されず、既存の様々な方法を用いることができる。画像合成部40としては、このような機能を有するものであれば特に限定されず、一般的なパーソナルコンピュータや専用計算機であってもよく、制御部30の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0033】
次に、本実施形態に係るX線非破壊検査装置1を用いて構造物の狭隘部に連通した空間内にある検査対象物の所定の領域を検査する際の動作について図3〜図7を参照して詳しく説明する。図3は本実施形態に係るX線センサを狭隘部の上方の空間内に挿入した際の状態を示す概略斜視図である。また、図4は本実施形態に係るX線非破壊検査装置を用いて構造物の狭隘部に連通した空間内にある検査対象物を検査する際の動作時の状態を示す概略斜視図であり、図5(a)及び図5(b)は図4に示すX線非破壊検査装置の正面概略図及び上面概略図である。そして、図6は本実施形態に係るX線非破壊検査装置の動作を示すフローチャートであり、図7(a)及び図7(b)は従来のX線非破壊検査装置の動作時の状態を示す正面概略図及び上面概略図である。
【0034】
図3に示すように、検査対象となる円柱状の検査対象物100は、2つの障害物200の間に形成される狭隘部210の上方の空間内に配置されている。なお、図示しないが、検査対象物100には狭隘部210側からしか検査装置などが近づけないようになっている。そこで、本実施形態では、このような検査対象物100を挟むように、狭隘部210内を通してその空間内にX線照射部11及びX線検出部21を配置し、以下に説明するようにして検査対象物100の所定の領域の画像を得る。
【0035】
まず、図3に示すように、X線検出部21と支持部材12とのなす角が180°となるように、すなわちX線検出部21の長手方向と支持部材12の長手方向とが一致するようにX線検出部21を回動させ、その状態で狭隘部210内にX線センサ20を下方から挿入する(S1)。この際に、X線検出部21と支持部材12とは一直線上に配置されることになるので、狭隘部210内を容易に通過することができる。
【0036】
そして、X線検出部21が狭隘部210の上方の空間内に位置するようになった際に、支持部材12に対してX線検出部21が所定の角度をなすようにX線検出部21を回動させる。本実施形態では、図4に示すように、支持部材12とX線検出部21とがなす角度が90°となるようにX線検出部21を回動させる(S2)。
【0037】
ここで、たとえばX線センサとして、支持部材12の端部に既存のX線カメラを取付けたものを用いると、図5(a)及び図5(b)に示すように、狭隘部210の直上に位置して狭隘部210の幅Wに対応した幅を有する検査対象物100の領域R2しか撮像することができない。
【0038】
これに対して、本実施形態のX線センサ20を用いると、上述したように、支持部材12に対するX線検出部21の角度が90°となるようにX線検出部21を回動させて、検査対象物100の領域R2に隣接する領域R1を撮像することができる位置に、X線検出部21を配置することができる。その結果、詳細は後述するが、検査対象物100の領域R2以外に、上述したような従来のX線センサでは撮像することができなかった検査対象物100の領域R1を撮像することができることになる。
【0039】
そして、X線照射部11からX線を照射して検査対象物100の領域R1の一部を撮像する(S3)。本実施形態では、図5(a)に示すように、検査対象物100の領域R1の下方の一部を撮像する。
【0040】
次に、検査対象物100の領域R1の他の一部を撮像することができる位置にX線照射部11及びX線検出部21を移動させる(S4)。本実施形態では、図5(a)に示すように、X線照射部11及びX線検出部21を上方に僅かに平行移動させる。なお、X線照射部11及びX線検出部21を移動させる際に、それらを同時に移動させるようにしてもよいし、何れか一方ずつ個別に移動させるようにしてもよい。そして、その部分を撮像する(S5)。
【0041】
ここで、検査対象物100の一部を撮像する際には、X線照射部11とX線検出部21との鉛直方向の位置(高さ)は等しく、それらの間の距離はDとなっており、さらにX線検出部21の長手方向がX線照射部11からX線検出部21へ向かう方向に対して垂直となるようにX線照射部11とX線検出部21の位置が調整される。すなわち、X線検出部21により得られる検査対象物100の一部の画像のそれぞれは、X線検出部21に対して常に同じ距離Dを隔てて配置されたX線照射部11から、X線検出部21の受光面21Aに対して垂直方向から照射されたX線を受けて得られるものとなる。したがって、これらの検査対象物100の一部の画像を合成することにより得られる検査対象物100の領域R1の画像は、検査対象物100に沿って距離Dを隔てて配置された板状のX線源からその受光面21に対して垂直方向に照射されたX線を受けて得られるものと等しくなる。その結果、検査対象物100の領域Rの正確な画像を得ることができるのである。
【0042】
一方、図7に示すように、X線を放射状に照射するX線照射部511と、そのX線を受けて撮像するX線フィルムやイメージングプレートなどからなるX線検出部521とを用いて、従来から行われていたように検査対象物100全体を撮像すると、同図に示すように、X線照射部511からは放射状にX線が照射されるので、X線検出部521により得られる検査対象物100の画像は、様々な方向から照射されたX線を撮像部521が受けて得られるものとなる。したがって、このようにして得られた検査対象物100の画像は、その端部に向かって行くにつれて真の画像とは異なるものとなってしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態に係るX線非破壊検査装置1ではこのような問題が生ずることはない。
【0043】
その後、制御部30により、検査対象物100の領域R1全体を撮像したか否かが判断され(S6)、検査対象物100の領域R1全体を撮像していない場合には、検査対象物100全体を撮像するまで上述したステップS4〜S5が繰り返される。
【0044】
そして、検査対象物100全体を撮像した場合には、画像合成部40により検査対象物100の領域R1全体の画像を合成する(S7)。
【0045】
なお、検査対象物100の領域R2に隣接する領域R3についても、支持部材12に対するX線検出部21の角度が−90°となるようにX線検出部21を回動させ、同様に撮像・画像合成をすることによって検査対象物100の領域R3全体の画像を合成することができる。
【0046】
以上、説明したように、本実施形態に係るX線非破壊検査装置1によれば、狭隘部210に挿入する際には、X線検出部21の長手方向と支持部材12の長手方向とが一致するようにX線検出部21を回動させることによってX線センサ20を棒状に変形させた状態で狭隘部210を通し、X線検出部21が狭隘部210の上方の空間内に位置するようになった後、支持部材12に対するX線検出部21の角度が90°となるようにX線検出部21を回動させることができるので、狭隘部210に連通した空間内にある検査対象物100について、その狭隘部210に対応する検査対象物100の領域R2以外の領域R1,R3を撮像することができる。
【0047】
(実施形態2)
実施形態1に係るX線非破壊検査装置1では、X線センサ20として、上述したように、X線検出部21が支持部材12に対して所定の角度をなすように配置できるものを用いたが、本実施形態では、図8に示すようなX線センサ20Aを用いる。図8は、本実施形態のX線センサの一部の概略正面図である。
【0048】
同図に示すように、本実施形態に係るX線センサ20AのX線検出部21Aは、支持部材12と同一方向に並列に配置されている2つの棒状の小型X線検出部21a,21bからなっている。そして、各小型X線検出部21a,21bの幅方向中央部には、X線検出器であるCdTe素子211が長手方向に沿って列状に複数配置されている。また、これらの小型X線検出部21a,21bは接続部14Aを介して支持部材12に支持されており、支持部材12に対してそれぞれが所定の角度をなすように独立して位置することができるようになっている。本実施形態では、同図に示すように、小型X線検出部21aの長手方向と小型X線検出部21bの長手方向とが一致するように(長手方向が共に水平になるように)小型X線検出部21a,21bを回動させることができるようになっている。
【0049】
ここで、接続部14Aは、支持部材12に対して、上述したように各小型X線検出部21a,21bを配置することができるものであれば特に限定されない。なお、本実施形態のX線センサ20Aを構成する他の構成要素は、実施形態1のX線センサ20と同様であるので、同符号を付して説明を省略する。
【0050】
このようにX線センサ20Aを構成することにより、狭隘部210の上方の空間内にある検査対象物100のより広い領域を一度で撮像することができるので、より効率的に検査対象物100の所定の領域全体の画像を得ることができる。
【0051】
(実施形態3)
実施形態1では、X線照射部11として、X線が放射状に照射される、いわゆる点線源を用いてX線非破壊検査装置1を構成したが、本実施形態では、X線照射手段として、X線センサ20と同様に、支持部材12に対するX線照射部の角度を変更することができる棒状のものを用いる。
【0052】
具体的には、図9に示すように、本実施形態のX線照射手段10Aの幅方向中央部には、X線を放射するX線源111が長手方向に沿って列状に配置された棒状のX線照射部11Aを有し、X線照射部11Aは接続部14を介して支持部材12に接続されている。したがって、支持部材12に対してX線照射部11Aが所定の角度をなすように配置できるようになっている。
【0053】
そして、本実施形態に係るX線非破壊検査装置では、上述した検査対象物100の領域R1を撮像する際にX線照射部11AとX線検出部21とが平行になるように配置すると共に、上述したようにX線非破壊検査装置を動作させることによって検査対象物100の領域R1全体を撮像することができる。
【0054】
ここで、本実施形態では、X線照射部11A及びX線検出部21は、検査対象物100の領域R1の一部を撮像する際に、上述したように、X線照射部11AとX線検出部21の鉛直方向の位置(高さ)は等しく、それらの間の距離はDであり、さらにX線照射部11AとX線検出部21とが平行になるように配置されるので、X線検出部21により得られる検査対象物100の領域R1の一部の画像のそれぞれは、X線検出部21に対して常に同じ距離Dを隔てて配置されたX線照射部11Aから、X線検出部21に対して垂直方向から照射されたX線を受けて得られるものとなる。その結果、実施形態1のX線非破壊検査装置1を用いて得た検査対象物100の領域R1の画像と比較して、より正確な画像を得ることができる。
【0055】
(他の実施態様)
上述した実施形態では、X線検出器としてCdTe素子211を例に挙げて説明したが、本発明に用いることができるX線検出器はX線を検出して検査対象物100を撮像することができるものであれば特に限定されない。たとえば、X線検出器として、CsIからなるシンチレータとCCDカメラとを組み合わせたものをX線検出部21の長手方向に列状に配置してもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、X線検出部21,21Aの長手方向の長さは一定となっていたが、X線検出部21,21Aの長手方向の長さが伸縮自在となっていてもよい。たとえばX線検出部21,21Aの長手方向の長さを伸ばすことができれば、撮像することができる検査対象物100の領域R1を大きくすることができるという効果を奏する。
【0057】
さらに、上述した実施形態では、接続部14を用いて、支持部材12に対するX線照射部11Aの角度や支持部材12に対するX線検出部21,21Aの角度を変更したが、本発明はこれに限定されない。たとえば支持部材とこれらの構成要素との間に屈曲可能な部材を設け、その部材を屈曲させることによって、支持部材12に対するX線照射部11Aの角度や支持部材12に対するX線検出部21,21Aの角度を変更するようにしてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、本発明の非破壊検査装置の一例としてX線非破壊検査装置1を説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ガンマ線などのX線以外の放射線を照射することができる放射線照射部と、対応する放射線を受けて検査対象物の一部を撮像することができる放射線検出部とを用いて非破壊検査装置を構成してもよい。なお、これらの放射線を用いる場合であっても、照射される放射線のエネルギーの大きさは特に限定されないが、上述したX線の場合と同様に、320KeV〜1000KeVの高エネルギー放射線を用いるのが好ましい。
【0059】
さらに、上述した実施形態では、X線検出器21,21Aとして、CdTe素子211がX線検出部21,21Aの幅方向中央部に長手方向に沿って一列に並んで複数配置されているものを例示したが、これに限定されない。X線検出器21,21Aとして、例えばCdTe素子211がX線検出部21,21Aの幅方向中央部に長手方向に沿って複数列、たとえば2列に並んで複数配置されてもよい。
【0060】
また、実施形態1では、支持部材12、調整部13及び移動手段15を用いてX線照射部11,11A及びX線検出部21,21Aを移動させるようにしたが、X線照射部11及びX線検出部21,21Aを移動させる機構はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態1に係るX線非破壊検査装置を示す概略図である。
【図2】実施形態1のX線センサの一部の概略正面図である。
【図3】実施形態1のX線センサを狭隘部の上方の空間内に挿入した際の状態を示す概略斜視図である。
【図4】実施形態1に係るX線非破壊検査装置の動作時の状態を示す概略斜視図である。
【図5】図4に示すX線非破壊検査装置の正面図及び上面図である。
【図6】実施形態1に係るX線非破壊検査装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】従来のX線非破壊検査装置の動作時の状態を示す正面図及び上面図である。
【図8】実施形態2のX線センサの一部拡大概略図である。
【図9】実施形態3に係るX線非破壊検査装置の動作時の状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 X線非破壊検査装置
10,10A X線照射手段
11,11A X線照射部
12 支持部材
13 調整部
14,14A 接続部
15 移動手段
16 ローラ
20,20A X線センサ
21,21A X線検出部
21a,21b 小型X線検出部
30 制御部
40 画像合成部
111 X線源
211 CdTe素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の狭隘部に連通した空間内に、検査対象物を挟んで前記検査対象物に向けて放射線を照射する放射線照射手段の反対側に配置され、前記検査対象物を透過した放射線を受けることにより前記検査対象物を撮像する放射線センサであって、
放射線を検出する放射線検出器が長手方向に沿って列状に配置された棒状の放射線検出部と、
前記放射線検出器を支持して前記空間内に前記放射線検出部を配置するための棒状の支持部材と、
前記放射線検出部と前記支持部材との間に設けられて前記支持部材に対する前記放射線検出部の角度を変更することができる接続部と
を有することを特徴とする放射線センサ。
【請求項2】
前記接続部は、前記放射線検出部の回動軸として前記放射線検出部を回動させることにより前記支持部材に対する前記放射線検出部の角度を変更することができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の放射線センサ。
【請求項3】
前記放射線検出部は、前記接続部にそれぞれ接続された複数の小型放射線検出部からなり、
前記小型放射線検出部は、長手方向に沿って列状に複数配置された放射線検出器をそれぞれ有し、
前記接続部は、前記小型放射線検出部の回動軸として前記小型放射線検出部をそれぞれ独立して回動させることにより前記支持部材に対する前記小型放射線検出部の角度をそれぞれ独立して変更することができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の放射線センサ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の放射線センサと、
放射線を照射する放射線源が長手方向に沿って列状に配置された棒状の前記放射線照射部と、
前記放射線照射部を支持して前記空間内に前記放射線照射部を配置するための棒状の支持部材と、
前記放射線照射部と前記支持部材との間に設けられて前記支持部材に対する前記放射線照射部の角度を変更することができる接続部と
を有する前記放射線照射手段と、
前記検査対象物の所定の領域の一部を撮像する際に、前記放射線照射部と前記放射線検出部とが平行に配置されるように前記放射線照射部及び前記放射線検出部の位置を制御し、且つ前記検査対象物の所定の領域の一部を撮像した後前記放射線照射部及び前記放射線検出部をそれぞれ移動させて前記検査対象物の所定の領域の他の一部を撮像するように前記放射線照射部及び前記放射線検出部の動作を制御する制御部と
を具備することを特徴とする非破壊検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−47441(P2009−47441A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211107(P2007−211107)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】