説明

放射線不透過性マーカーを有する移植片及びステント植皮

【課題】移植可能な医療用具のための放射線不透過性マーカーを提供する。
【解決手段】第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面とを有する合成非金属材料の層104;及び、放射線不透過性マーカー106を含み、前記放射線不透過性マーカーは、(1)前記層に少なくとも部分的に埋め込まれたマーカー、あるいは、(2)合成非金属材料の第1及び第2表面の少なくとも1つに印刷された放射線不透過性インク、であり、前記放射線不透過性マーカーは、移植片の長さの実質的な部分に沿って伸びる2つの平行なラインを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先データ及び参照による組み込み
この出願は2005年11月9日に提出された米国仮特許出願番号60/734725号の優先権の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に医療用具に関するものであり、より詳細には移植可能な医療用具のための放射線不透過性マーカーに関するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
特に定義しない限り、用語「放射線不透過性(Radio-opaque)」又は「放射線不透過性(Radiopaque)」は同じ意味を有する。ステント、人工移植片及び関連した腔内医療用具は、血液又は他の生体液の流れが制限されるように狭くなった(狭窄した)管状の体内の脈管(body vessel)又は管(duct)を治療するために開業医によって現在使用されている。そのような狭窄は、例えば動脈硬化症として知られる病気の経過の結果として生じる。ステントは血管を「押し広げる(prop open)」ためにしばしば使用されるが、またそれらは、呼吸系、生殖系、胆管、肝管(liver ducts)又はその他の管状の身体構造において崩壊又は狭窄した管状構造を強化するために使用される。
【0004】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる脈管移植片は、典型的には体内の損傷又は閉塞した血管に取って代わるために、又はそれらを修復するために使用される。しかしながら、それらは、血管内に移植片を固定するための追加の手段、例えば縫合、クランプ又は収縮を克服するための同様に機能する要素を必要とする場合がある。ステントは、血管壁への固定を維持することができる血管内プロテーゼを与えるために移植片と組み合わせて使用される。また、ステントとともに移植片を使用することは、平滑筋細胞及び他の組織がステントの網状の開口部を介して成長して管の再狭窄を生じるというステントによって見られる問題を克服するために役に立つ。
【0005】
PTFEは、優れた生体適合性を有し、人の体内に配置されたときに免疫原性の反応をわずかに生じるか、又はまったく生じないために、血管移植片又はプロテーゼを作る材料として通常有利であることがわかっている。その好ましい形態、延伸PTFE(ePTFE)では、材料は軽く、多孔質であり、生体細胞によって容易にコロニーを作り、体の永続的な部分となる。脈管移植片グレードのePTFEの製造方法は、当業者によく知られている。この方法での重要な工程がPTFEをePTFEへの延伸であると言えば十分である。この延伸は、PTFEがその元の長さの数百パーセントに引き伸ばされる制御された縦の引き伸ばしを表す。ePTFE移植片の例は、米国特許第5641443号、第5827327号、第5861026号、第5641443号、第5827327号、第6203735号、第6221101号、第6436135号及び第6589278号に示され、説明されている(それぞれ参照によりその全内容が本明細書に組み込まれるものとする)。利用されるePTFE以外の材料からなる移植片としては、例えばダクロンメッシュ強化臍帯組織、牛のコラーゲン、ポリエステルニット(knitted)コラーゲン、含浸トリコットニットポリエステルコラーゲン(tricot knitted polyester collagen impregnated)及びポリウレタン(Vectra(商標)として入手可能)などが挙げられる。
【0006】
ステント植皮は、気管気管支樹などの、体内の種々の脈管の開通性を維持するように設計されたプロテーゼの医療用具である。この医療用具は、ePTFEによって被包されたバルーン付き拡張可能なステント又はePTFEによって被包され、柔軟性のある運搬システムに予め詰められた自己拡張型ニチノールステントを含んでもよい。後者の1つの例は、「Fluency(商標)」として一般に知られており、C.R. Bard Peripheral Vascular Inc.により販売されている。そのようなステント植皮の例は、米国特許第6053941号、第6124523号、第6383214号、第6451047号及び第6797217号に示され、説明されている(それぞれ参照によりその全内容が本明細書に組み込まれるものとする)。ポリマーコーティング及びePTFEでステントを被覆する分野は、特に当業者により実質的に調査されている。ePTFE材料でステントを被覆する1つの有名な方法は、2つの層がステントの壁の開口部により接している場所で熱によって互いに実質的に融合されたePTFEの2つの層内に被包することである。これは、ePTFE層が剥離することなく、拡張及び収縮できる固体のワンピース(one-piece)医療用具を提供する。
【0007】
移植片又は被包されたステントの患者の脈管構造への移植は、非常に正確な技術に関連する。一般に、前記医療用具は、所望の位置に移植片又は被包されたステントを配置する移植装置により血管の患部又は損傷を受けた部分に導かれる。配置する間位置を正確に示すために、専門医は、一般にフルオロスコープを利用してX線により配置を観察する。意図されたものでない位置への被包されたステントの配置は、すぐに外傷を生じて、複数の配置計画(deployment attempts)及び/又は配置された医療用具の再配置に関連した侵襲性を増大するかもしれない。さらに、移植された医療用具の視覚化は、移植、追跡診査及び治療に必須である。したがって、フルオロスコープを用いて被包されたステントを移植するために、ステント、移植片又は移植医療用具の一部は放射線不透過性でなければならない。
【0008】
バルーン付きカテーテルが視覚マーカーとして使用してもよい組み込まれた放射線不透過性部材(feature)を有することができるために、バルーン付きカテーテルを用いて血管内に移植し、拡張したステントは、蛍光透視法によって配置が確認できる。しかしながら、バルーンがステントの拡張後に移動する場合、ステントの正しい配置は、ステントに埋め込まれた放射線不透過性マーカーの非存在下では、確認できない。自己拡張型ステントは、一般にカテーテル又はシースの形態の束縛部材により損傷を受けた部分又は患部に配送でき、束縛部材を移動させることによって配置できる。配置のための正確な位置に配送医療用具及び自己拡張型ステントを導くために、放射線不透過性は、脈管内の正しい場所を確認するために前記医療用具又は束縛部材に組み込まなければならない。
【0009】
移植されたステント又は移植片の位置を目視により確認するために、移植片又はステントの向きを目視で確認すること、及び/又は移植片がねじれていないか、又はよじれていないかを目視で決定することが必要であるかもしれない。正しく形成された放射線不透過性マーカーは、これらの視覚要求を満たすことを容易にすることができる。さらに、移植片又は被包されたステントの材料へ組み込まれた放射線不透過性マーカーは、治療された血管部分と接触できるむき出しの(exposed)「スプーン」タイプのマーカーの代用品を提供することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の開示)
本発明の好ましい実施態様は、第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面とを有する合成非金属材料の層を含む移植医療用具を提供する。この医療用具は、さらに前記層に少なくとも部分的に埋め込まれた放射線不透過性マーカーを含む。一実施態様では、放射線不透過性マーカーは約20〜60%のタンタル粉末である。あるいは、放射線不透過性マーカーは約20%〜約60%の硫酸バリウムである。
【0011】
別の好ましい実施態様では、移植医療用具は、第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面とを有する合成非金属材料の層を含む。この医療用具は、さらに合成非金属材料の第1及び第2表面の少なくとも1つに印刷された放射線不透過性インクを含む。
【0012】
別の実施態様では、前記マーカーは、好ましくは色を有し、放射線不透過性であるだけでなく、肉眼で認識できる。1つの好ましい実施態様では、放射線不透過性材料である硫酸バリウム材料は、生体適合性のある染料又は顔料と混合されて着色及び放射線不透過性マーカーを与える。
【0013】
さらに別の実施態様では、移植医療用具は、ステントのフレーム、ステントのフレームの一部を囲む合成非金属材料、及び非金属材料に埋め込まれた放射線不透過性ストリップを含む。
【0014】
本発明の別の実施態様は、移植医療用具を形成する方法を提供する。この方法は、合成非金属材料を押出成形して、第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面とを有する部材を形成することを含む。非金属材料の押出成形は、非金属材料に少なくとも部分的に埋め込まれた放射線不透過性材料を押出成形して医療用具を形成することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
添付の図面(本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する)は、本発明の典型的な実施態様を詳しく説明し、上記の一般的な説明及び下記の詳細な説明とともに、本発明の特徴を説明するために提供される。当然のことながら、好ましい実施態様は、特許請求の範囲によって与えられる本発明の例である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は好ましい移植医療用具の断面を示す。
【図2】図2は、図1の移植医療用具の製造において使用される好ましい医療用具の断面を示す。
【図3】図3は、縦の放射線不透過性マーカーを有するステント植皮の具体例の斜視図である。
【図3A】図3Aは、線3A--3Aに沿った図3のステント植皮の断面図である。
【図3B】図3Bは、図3のステント植皮の分解斜視図である。
【図4】図4は、縦の放射線不透過性マーカーを有するステント植皮の別の実施態様の斜視図である。
【図5】図5は、放射線不透過性マーカーを有する移植医療用具の追加の実施態様である。
【図6】図6は、放射線不透過性マーカーを有する移植医療用具の追加の実施態様である。
【図7】図7は、放射線不透過性マーカーを有する移植医療用具の別の実施態様である。
【図8】図8は、裸のステント及び放射線不透過性マーカーを有する移植医療用具の異なる実施態様の蛍光透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜8は好ましい実施態様を示す。図1には、移植医療用具100の外面104Bに埋め込まれた少なくとも1つの放射線不透過性マーカー106を有する移植医療用具100の好ましい実施態様の1つの断面が示される。あるいは、又はこれに加えて、1又は2以上の放射線不透過性マーカー102、108を内面104A、外面104Bに与え、又は内面104Aと外面104Bの間の医療用具100の移植材料104に分散し、又は内面104Aと外面104Bの間の医療用具100の移植材料104と混合することができる。
【0018】
医療用具100を、非金属材料であってもよい移植材料104から作ることができる。具体的には、非金属材料104は、例えばダクロン、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン-尿素、シロキサン及びこれらの組み合わせのような合成繊維又は繊維材料を含み、適切な量の、例えば生物活性剤のような添加剤をそれに加えてもよい。好ましい実施態様では、移植材料104は延伸ポリテトラフルオロエチレン、すなわち「ePTFE」である。
【0019】
種々の適した技術によって、移植片104のためのePTFE材料を製造することができ、その技術の1つは以下に記載される。PTFE樹脂が押出成形装置を通って流れることができるように、PTFE樹脂の15〜35重量%の適切な量の、例えばIsopar Hのような滑剤とともにPTFE樹脂をふるいにかけることによって、高分子化合物の混合を行う。組み合わせたPTFE樹脂と滑剤を、次いで攪拌機に配置し、滑剤がPTFE樹脂の粒子のそれぞれを被覆及び浸透するように攪拌する。十分に混合したPTFE樹脂と滑剤との組み合わせを、次いで約29℃(約85°F)の温度で維持される加温棚で一晩保温される。保温期間は、PTFE樹脂全体にわたって滑剤を十分に均一に分散できると考えられる。
【0020】
必要に応じて、オプションの調合工程の一部として、PTFE樹脂をさらに混合及び加熱できる。例えば、PTFE樹脂を適切なヒドロキシアパタイト(HA)材料と調合して、生体適合性及び生物活性を高めるために構成された移植片を生成し、例えば移植片開存性の維持及び内膜過形成の減少のために内部細胞成長を促進することができる。
【0021】
PTFE樹脂又はその混合物を、一連の処理工程によって圧縮された柱体へと予備成形することができる。最初に、樹脂を予備成形機(preformer)のインナーバレルにインナーバレルの外側に固定されるじょうごを通過させることによって注ぐことができる。図2は、樹脂を圧縮された柱体へと予備成形する際に使用できる隔てられた予備成形バレル40の好ましい実施態様を示す。隔てられた予備成形バレル40は、好ましくは外側の中空円筒型部材42、必要ならば内側の中空円筒型部材44、及び中央の中実円筒型部材46を含む。内側の中空円筒型部材44は外側の中空円筒型部材42の内部に同心円状に含まれる。同様の処理の詳細は、米国特許第5827327号、第5641443号及び第6190590号に示され、説明されている(それぞれ参照によりその全内容が本明細書に組み込まれるものとする)。
【0022】
PTFE樹脂を、外側の中空円筒型部材42と中実円筒型部材46との間に位置する第1領域に注ぐことができる。第1領域52を1又は2以上の内側の部材44によって分割して、例えばHA調合材料のような必要ならば追加してもよい混合物を受け入れるための第2領域48を画定してもよい。
【0023】
好ましい実施態様の1つでは、外側の中空円筒型部材42は、内側の中空円筒型部材44の半径よりも大きい半径を有する。予備成形バレル40を構成する要素の直径は、生成される移植片のサイズ及びタイプに応じて変化する。予備成形バレル40の好ましい実施態様は約1.5インチの半径を有することができる。内側の中空円筒型部材44と中心の中実円筒型部材46の間の第2領域48は、約0.38インチの半径を有することができ、内側の中空円筒型部材44は、約0.07インチの壁厚を有することができ、外側の中空円筒型部材42と内側の中空円筒型部材44の間に位置する第1領域52は、約0.6インチの半径を有することができる。
【0024】
さらに、放射線不透過性ペースト又は樹脂を、部分的に、又は完全にPTFE樹脂の外側又は内側表面の一部に埋め込むことができる。好ましくは、放射線不透過性ペーストをタンタル粉末から形成することができる。使用できた他の放射線不透過性材料としては、これに限定されないが、タングステン、金、銀粉末、硫酸バリウムなどが挙げられる。好ましい放射線不透過性材料は、また移植片製造の際に遭遇する焼結温度に対して耐性を持つことができるように熱安定性である。1つの典型的な実施態様では、放射線不透過性ペーストは、60%のタンタルを含む混合物を生成するために4グラムのePTFE、6グラムのタンタル及び2グラムのIsoper-Hを混合することによって形成できる。好ましくは、実質的にすべての滑剤を、本明細書に記載したように押出成形及び焼結後蒸発させる。さらに、別の方法では、放射線不透過性ペーストを硫酸バリウム混合物から形成することができる。例えば、放射線不透過性ペーストは、20〜40%の硫酸バリウムと混合したePTFEペーストを含むことができる。好ましい実施態様では、放射線不透過性ペーストを、PTFE樹脂の外面の長さに沿って配置されることができる細長いストリップに成形する。あるいは、又はこれに加えて、放射線不透過性ペーストは、その長さに沿ったPTFEの外面に沿って配置されることができる複数の放射線不透過性の構成要素を形成できる。放射線不透過性ペーストを任意の形状又は形態に形成できる。例えば、ペーストは、縫合糸、スレッド及びPTFE樹脂内部の任意の位置に配置された円板のような他の小さな部品として成形することができる。放射線不透過性材料の連続又は細長いストリップは、蛍光透視法の下でステントを調べる臨床医に、例えば位置、方向又はよじれのような視覚的合図を与えることができる。
【0025】
PTFE樹脂及び放射線不透過性マーカーの組み合わせは、次いで圧縮できる。前記材料は、例えば米国特許第5827327号の図3に示されるような適切な圧縮機で、前記組み合わせを予備成形バレル40に配置することによって圧縮される。ポリマー混合物の圧縮の際に使用される圧縮機は、適切な駆動力によって駆動され、分断された予備成形バレル40内の材料を圧縮するために上端部材を下端部材に押し付ける。種々の厚みの中空円筒型チューブを用いて、分断された予備成形バレル40内の材料を、分断された予備成形バレル40の内側の中空円筒型部材44、外側の中空の円筒型部材42及び中心の中実円筒型部材46の周りにスライド可能なように往復運動させることによって圧縮する。予備成形バレル40内に収容された材料を圧縮した後、分断された予備成形バレル40の内側の円筒型部材44(使用した場合)、外側の円筒型部材42及び中心の中実円筒型部材46を取り除いて材料の圧縮された円柱を得る。あるいは、予備成形バレル内の仕切り(dividers)を圧縮前に異なる混合物間の界面を乱すことなく取り除き、次いで圧縮して押出成形用のビレットを形成してもよい。材料の圧縮された円柱、すなわちビレットを、例えば米国特許第5827327号の図4に示される押出機のような適切な機器により同時押出してもよい。要点をかいつまんで記載すると、材料の圧縮された円柱を押出バレル内に配置する。力をリムに加え、リムは材料の圧縮された円柱に圧力を加える。圧力は、マンドレルの周りに押出ダイスにより押し出される材料の圧縮された円柱を与え、チューブ状の押出成形品となる。チューブ状の押出成形品を延伸して多孔度を高め、あるいは押出成形品の弾性を高める。押出又は延伸後、押出成形品は、当業者に公知のPTFE移植片で保証された延伸及び焼結手順に従って焼結できる。
【0026】
一実施態様では、PTFEビレットは、タンタルペーストの第1外側ストリップ106及び硫酸バリウムペーストの第2外側ストリップ108によって形成されるオプションのHA管腔(lumenal)層102を含んでもよい。ビレットを、適切な押出機により約500〜約2000psiの圧力で押し出してもよい。ビレットの縮小率(すなわち、押し出された移植片の厚みに対するビレットの壁厚)は、約50〜約350であってもよい。下記表1は重量によりPTFEビレットの好ましい組成を示す。
【0027】
【表1】

*硫酸バリウムは、好ましくは10〜200mgのコバルトブルー(CAS番号1345-16-0)と混合され、青色を示す。
【0028】
ビレットを押し出して直径が1〜30mm、好ましくは5〜6mmの末梢血管移植片用途の種々のチューブを形成できる。より好ましくは、測定した直径はチューブの内径である。押出成形された各チューブを種々の長さに延伸してPTFE材料において異なる多孔度とすることができ、これによって延伸PTFE、すなわちePTFEを得る。延伸したチューブを適切な焼結温度で焼結して、チューブを実質的に所望の多孔度に維持し、延伸したePTFEの物理特性を改善することができる。延伸は、押出成形された材料の放射線不透過性を低下させるかもしれない。一般に、高い延伸は放射線不透過性を低下させ、及び/又は肉眼での視認性を低下させる。延伸後に着色したマーキングを生成するために十分な量の放射線不透過性材料又は顔料材料を添加することが好ましく、これによって移植片は医療X線撮像装置を用いて観察する場合に適切な放射線不透過性を示す。焼結温度は標準ePTFE移植片処理と同様であってもよく、約93℃〜204℃(約200°F〜400°F)であってもよく、好ましくは約149℃(約300°F)である。移植医療用具100を提供する他の技術は、米国特許第5628786号、第6053943号及び第6203735号並びに米国特許出願公開第2004/0164445号、第2004/0232588号及び第2004/0236400号に示され、記載されている(それぞれ参照によりその全内容が本明細書に組み込まれるものとする)。
【0029】
1つの実施態様では、放射線不透過性材料としての硫酸バリウムを生体適合性着色剤と混合して青色マーキングを生成する。多くの生体適合性着色剤又はその混合物を使用して所望の色又は色合いを生成してもよい。黒、青又は緑色がもっとも好ましい。タンタル又はタングステン金属は黒色を与え、放射線不透過性を与える。この場合、着色剤は必要ではないかもしれない。多くの生体適合性着色剤を使用してもよいが、実質的な分解なしに高い焼結温度に耐える色が好ましい。好ましい着色材料としては、これに限定されないが、コバルトブルー、(フタロシアニナト(2-))銅、酸化クロム-コバルト-アルミ、酸化チタン又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0030】
再度図1に関して、上記処理によって好ましく押出成形されたチューブは管腔移植医療用具100を形成できる。移植医療用具100は、さらに好ましくは第1内面104A、第2面104B又は第1及び第2面104A、104Bの間の材料104に埋め込まれた1又は2以上の細長い放射線不透過性マーカー又はストリップ106、108を含む。より具体的には、PTFE樹脂及び放射線不透過性マーカーの押出成形は、第1面104A及び第2面104Bを有するePTFE層104を有する医療用具100を与える。好ましい実施態様では、医療用具100は、外面104Bに放射線不透過性材料の少なくとも1つの細長い部分106を含み、放射線不透過性材料はタンタル粉末又は硫酸バリウムからなる。細長い106は、さらに好ましくは医療用具10の長さに沿って走る連続ストリップを形成する。あるいは、移植医療用具100は、適切な撮像技術(例えば、X線撮像)における視認性を改善するために医療用具100によって与えられた任意の配向ラインに、1又は2以上の放射線不透過性要素を有することができる。より具体的には、放射線不透過性材料は、医療用具100の外面104Bの長さに沿って整列させた一連の放射線不透過性要素(図示せず)を形成できる。
【0031】
ここで、図3及び3Aには、被包されたステント又は「ステント植皮」10の好ましい実施態様が示される。ステント植皮10は、一般的には第1及び第2端部18、20の間に含まれる内面14及び外面16を有するチューブ状部材12を含むことができる。細長い放射線不透過性マーカー6は、好ましくは外面16で与えられる。図3、3A及び3Bに示されるように、チューブ状部材12は、好ましくはマンドレル(図示せず)に固定された第1生体適合性フレキシブルチューブ状部材24に詰められたバルーン付き又は圧力拡張可能なチューブ状支持部材22を含む。第2生体適合性フレキシブルチューブ状部材26は、次いで好ましくは第1生体適合性チューブ状部材/支持部材の組み合わせ22、24に取り付けられる。チューブ状支持部材22は、好ましくは米国特許第4733665号、第6053941号、第6053943号、第5707386号、第5716393号、第5860999号及び第6572647号のいずれかに示され又は記載されたものと同様のステントを含む(それぞれ参照によりその全内容が本明細書に組み込まれるものとする)。部材22で利用されるステントは、バルーン付き拡張可能なステント、自己拡張型ステント又は形状記憶プラスチックステントであってもよい。チューブ状部材24、26は、好ましくは支持部材22を被包するために一緒に融合される。
【0032】
ステント植皮10のチューブ状部材24、26は、好ましくは上述の押出成形された移植医療用具100と実質的に同様方法で形成される。特に、第1及び第2生体適合性フレキシブルチューブ状部材24、26は、好ましくは延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のビレットを押出成形することによって形成される。あるいは、第1及び第2生体適合性フレキシブルチューブ状部材24、26は、また延伸されていないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成されてもよい。チューブ状部材26は、好ましくは放射線不透過性材料とともに押出成形され、チューブ状部材26の外面に埋め込まれた少なくとも1つの細長い放射線不透過性マーカー6を形成する。あるいは、又はこれに加えて、チューブ状部材24は、また放射線不透過性材料とともに押出成形され、チューブ状部材24の外面に埋め込まれた少なくとも1つの細長い放射線不透過性マーカーを形成する。さらに、圧力拡張可能なチューブ状支持部材22は、銀、チタン、ステンレス鋼、金及びPTFE又はePTFEの種々の焼結温度でその形状及び材料特性を維持することができる任意の適したプラスチック材料のような、放射状拡張を可能にし、放射状の破壊に耐える強度及び弾性を有する任意の材料から形成されてもよい。
【0033】
図3Aには、移植片又はチューブ状部材24、26を拡張部材22に融合する前の図3のステント植皮10の断面図が示される。第1生体適合性フレキシブルチューブ状部材24、好ましくは焼結されていないePTFEから作られたものは、ステント植皮10の最内層又は内腔表面を形成し、ステント植皮10の管腔28をカバーし、それによって滑らかな不活性生体適合性血流表面を与える。チューブ状支持部材22、好ましくはステント又は同様に構築された構造は、ステント植皮10の中心に位置する中間層を形成する。最後に、第2生体適合性フレキシブルチューブ状部材26は、また好ましくは焼結されていないePTFEから作られ、ステント植皮10の最外層又は反管腔側の表面を形成する。
【0034】
ステント植皮10を形成するために、チューブ状部材24、22及び26を互いに重ね合わせることができる。圧力を移植片/ステント/移植片組立体に加えて第1及び第2生体適合性フレキシブルチューブ状部材24、26を互いにチューブ状支持部材22内にある開口部を通じて融合する。チューブ状支持部材22がステントのフレームである場合、第1及び第2ePTFEチューブ状部材24、26は、互いにステントの圧縮材の間の開口部を通じて融合される。移植片/ステント/移植片組立体は、次いで焼結温度に加熱されて、ePTFE層間の物理的結合を形成する。得られたプロテーゼはePTFE層内に被包された拡張されていないステントであり、又は具体的にはその管腔及び反管腔側の表面にePTFE層を有する膨張されていないステントであり、そのステントにおいては、ステント及びePTFE層は分離できない。あるいは、プロテーゼは、その管腔及び反管腔側の表面の両方にヒドロキシアパタイトを含むことができる。さらに、ePTFE層は、また拡張されていないステントの端部の周りに一緒に融合又は結合されてもよく、それによってステントを中心から広がる方向及び長さ方向の両方でePTFE内に包む。得られるステント植皮10を、例えば米国特許第6756007号のような適切な送出機器に入れることができる(その全内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする)。ステント植皮10は、狭窄症、動脈瘤又はフィステルの脈管内治療;尿、胆管、気管気管支、食道、腎臓系、大静脈フィルタにおける開口の維持;腹部大動脈瘤の修復;又は、例えば経頚静脈性肝内門脈体循環短絡術(TIPS)のような損傷を受けた又は患部器官の修復又は迂回を含む様々な医療用途で有利に使用できる。
【0035】
TIPSのような手順は、図4に示されるようなステント植皮10の別の実施態様を使用できる。図4には、ステント植皮に埋め込まれたむき出しのステント部分12'、被包又はカバーされた部分14'を有するステント植皮10'、すなわち「ハイブリッド」ステント植皮が示される。ハイブリッド又はステント植皮10'を用いる外科手術は、血流がステント植皮のカバーされていない部分12'を通ることができるように前記手術の際にカバーされた部分14'が終わる場所を決定する必要があるかもしれない。ハイブリッドステント植皮10'の包まれた部分14'は、好ましくは上述のようにステント植皮10を形成するのと実質的に同様の方法で形成され、放射線不透過性マーカー6'を形成するための細長い放射線不透過性材料を有する少なくとも外側のePTFE又はPTFE部材26'を押出成形することを含む。したがって、ステント10'のカバーされた部分14'の放射線不透過性マーカー又はストリップ6'は、開業医にカバーされた部分の実際の位置に関して視覚的合図を与え、移植可能なプロテーゼは哺乳動物の体内にある。さらに、放射線不透過性マーカー又はストリップ6'は、外科手術の際及びその後にステント植皮10'全体の配置を決定するために、その近接により、ハイブリッドステント植皮10'のカバーされていない部分12'の位置を与える。さらに、放射線不透過性ストリップ6'は、ステント10'の包まれていない端部で使用される「スプーン」又はビーズタイプマーカーの必要性を排除できる。
【0036】
図5及び6には、移植片の別の実施態様、すなわち外面に埋め込まれた細長い放射線不透過性マーカー又はストリップを有する脈管バイパス移植片200及び300が示される。脈管バイパス移植片200は、膝より上に適用するための所望の血流特性のために構成され、バイパス移植片300は、膝より下の血流特性のために構成されている。バイパス移植片200及び300の構造配置及び適用にもかかわらず、移植片200、300は、好ましくは上述の放射線不透過性ペーストとともに押出成形されたePTFE材料によって形成され、細長い放射線不透過性マーカー又はストリップ204、304を与える。すなわち、放射線不透過性ペーストは、合成非金属材料(例えば、ダクロン、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン-尿素、シロキサン及びこれらの組み合わせ)とともに押出成形することにより埋め込まれ、又は組み込まれて、移植片(200又は300)の管腔及び反管腔側の表面の少なくとも1つに沿って放射線不透過性ストリップ204、304を有する移植片200及び300を形成する。使用される材料又は材料の組み合わせ(例えば、ダクロン、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン-尿素、シロキサン及びこれらの組み合わせ)は、表面変性添加剤又は他の材料を含むことができる。種々の移植片の例は、米国特許第6203735号、第6039755号及び第6790226号に示され、記載されている(それぞれ参照によりその全内容が本明細書に組み込まれるものとする)。
【0037】
図7には、移植医療用具200の別の実施態様が示される。この医療用具200では、移植材料は、PTFEを用いて上で先に記載された方法で形成できる。しかしながら、放射線不透過性マーカー206は、移植材料とともに押出成形されない。代わりに、放射線不透過性マーカー206は、好ましくは医療用具200のチューブを形成する押出成形されたPTFEに、例えば彫刻、単刷り版画、オフセット印刷、クラッチ版転写、インクジェット印刷又はジークレー印刷のような適切な印刷技術によって印刷される。放射線不透過性マーカー206は、例えばマサチューセッツ州のノートンのCI Medical, Inc.によって製造されるインクのような放射線不透過性インクであってもよい。好ましくは、放射線不透過性インクは、タングステンが放射線不透過性成分としてインクに混合されるタングステンベースである。1つの実施態様では、ePTFE表面の配向ラインのためのインク組成物は、ePTFE表面にしっかりと付着する適したポリマーバインダー、生体適合性染料又は顔料、放射線不透過性材料及びポリマーバインダーを溶解する溶媒を含む。さらに、インク組成物は、二酸化チタン(インクの色合いを調整するため)のような無機白色固体材料及び粘度調整剤を含んでもよい。多くの顔料又は染料を使用して配向ラインを生成してもよいが、ヒトへの移植の長い歴史を有する顔料又は染料がもっとも好ましい。インクにおける好ましい着色化合物としては、これに限定されないが、(フタロシアニナト(2-))銅、D&C Blue No.9、D&C Green No.5、クロロフィリン-銅複合体、油溶性酸化クロム-コバルト-アルミ、クエン酸第二鉄アンモニウム、D&C Blue No.5、FD&C Blue No.2、D&C Green No.6、二酸化チタン、炭素、酸化鉄などが挙げられる。(フタロシアニナト(2-))銅はもっとも好ましい緑色化合物である。インクの色(例えば、黒、青など)は、約6500ケルビンの温度を有する光の下で見ることによって決定してもよい。したがって、この実施態様では、ラインはヒトの肉眼で認識できるだけでなく、適切なフルオロスコープ撮像装置によるヒトの目でも認識できる。
【0038】
図8には、前記医療用具の種々の物理的実施態様がフルオロスコープ実験の下で調べることができることが実証されている。図8では、2つの移植医療用具100A及び100Bは、15mm厚のアルミプレートを通してフルオロスコープ撮像装置のもとでの視認性についての参照データとしてのステント植皮100c(商品名Fluency(商標)として市販)とともに提供される。参照ステント植皮100cは、50%のタンタル及びポリマーバインダーとして50%のポリカルボナートポリウレタンを有する放射線不透過性インクとともに利用される。テトラヒドロフラン溶媒にポリマーを溶解することによって、インク溶液/分散液を調製した。ペイントブラシを用いて、分散液を手塗りして、ステント植皮表面に環状の帯を生成した。前記帯は、フルオロスコープのもとでわずかに視認可能であり、参照ステント植皮100cは要求される最小限の放射線不透過性に関しての参照データとして機能する。フルオロスコープと対象移植医療用具との間にプレートを挿入することによって生物組織の密度をシミュレートするために、アルミプレートを利用する。すなわち、図8の参照ステント植皮100cの像は、ステント植皮が配置されるバックグラウンド環境と比較して、ステントの放射線不透過性の指標を与える。さらに、前記像において滑らかな(Fluency)ステント植皮を有することにより、専門研修又はマシンビジョンを有する観察者に頼ることなく、好ましい実施態様の放射線不透過性ラインの有効性に関しての参照データが提供される。したがって、通常の観察者が、蛍光透視ディスプレー媒体における好ましい実施態様の移植片によって与えられるラインが参照ステント植皮100cよりも暗い又は明るいコントラストの像を有することを決定できる限り、前記ラインの放射線不透過性は、前記ラインが哺乳動物の体内において放射線不透過性マーカーとして機能するために必要な最小限のレベルよりも大きいと考えるであろう。あるいは、放射線不透過性ラインの放射線不透過性の有効性の客観的指標を与えるために、コントラストの離散準位を認識する能力をもつマシンビジョンを利用することができる。
【0039】
移植医療用具100aには、各ラインが2つの異なる放射線不透過性材料:(1)硫酸バリウム及び(2)タンタルの組み合わせであってもよい2つのライン106a及び108aが与えられた。両ラインを異なる材料から形成する場合でさえ、両材料は、一般に適した撮像装置において参照の裸のステントよりも大きい放射線不透過性の同様の黒い実線を形成する(図8に示されるように、撮像装置は白黒写真プリントである)。あるいは、移植片100bには、106bが60重量%の硫酸バリウム材料及び適した着色剤(例えば、コバルトブルー)から作られる2つのライン106b及び108bが与えられた。このラインは肉眼で青く見え、放射線不透過性である。ライン108Bは60重量%のタンタル粉末を用いて作られ、黒色である。タンタルは黒色を与え、一般に着色剤を必要としない。これらのラインは、臨床医(又は専門研修を受けていない通常の観察者でさえ)が、蛍光透視ディスプレー媒体(紙又はグラフィカルディスプレーモニター)でそのようなラインの向きを観察することによって、移植医療用具が移植後に望ましくない配置に体内を動き回っているかどうかを観察し、決定することができることを示している。例えば、移植片がその軸に巻きついた場合、ディスプレー媒体は、ラインが螺旋を形成すること(移植片100Aについて部分的に示される)を示す。移植片の長軸に対して直角な軸の周りを移植片が回転していた場合(すなわち、キンク)、ディスプレー媒体は、滑らかな屈曲(移植片100Bについて、図8に示される)としてよりも、交点を示す。
【0040】
移植医療用具100は上記具体例に関連して説明されているが、ePTFEの配置又は組成、放射線不透過性マーカー、ステントのフレームワーク及びその他の設計パラメータにおける変化が移植医療用具100とともに利用できることは、強調されるべきである。例えば、移植医療用具におけるタンタル又は硫酸バリウムのいずれかの重量割合は変えることができる。移植片の放射線不透過性組成物の割合は、与えられた医療用途に必要な放射線不透過性の量及び製造の際に受ける移植片延伸の量に依存する。タンタル又は硫酸バリウムのような放射線不透過性要素の割合は、5〜70%、最も好ましくは20〜60%、さらにより好ましくは50〜60%の範囲で変わる。最後に、他のタイプの生物活性剤は、また移植片及びステント植皮について本明細書に記載した放射線不透過性材料と組み合わせてもよい。生物活性剤としては、例えばビンカアルカロイド(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)、パクリタキセル、エピポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxins)(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトザントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン、酵素(L-アスパラギンを全身的に新陳代謝させ、それら自体アスパラギンを合成する能力を持たない細胞を奪うL-アスパラギナーゼ)のような天然物を含む抗増殖剤/抗有糸分裂薬;G(GP)IIb/IIIa阻害剤及びビトロネクチン受容体アンタゴニストのような抗血小板薬;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、アルキルスルホナート-ブスルファン、ニルトソウレア(nirtosoureas)(カルムスチン(BCNU)及び類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン(trazenes)-ダカルバジン(DTIC)のような抗増殖剤/抗有糸分裂性のアルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン及びシタラビン)、プリン類似体及び関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2-クロロデオキシアデノシン{クラドリビン})のような抗増殖剤/抗有糸分裂性の代謝拮抗物質;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトーテン、アミノグルテチミド;ホルモン(すなわち、エストロゲン);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩及びその他のトロンビン阻害剤);線維素溶解薬(例えば、組織プラスミノゲン賦活剤、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤(antimigratory);抗分泌剤(antisecretory)(ブレベルジン(breveldin));副腎皮質ステロイド(コルチソル、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α-メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン及びデキサメタゾン)、非ステロイド系薬剤(サリチル酸誘導体、すなわちアスピリン;パラ−アミノフェノール誘導体、すなわちアセトミノフェン(acetominophen));インドール及びインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク及びエトダラック(etodalac))、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク及びケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェン及び誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸及びメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン及びオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン(nabumetone)、金化合物(オーラノフィン、金チオグルコース、金ナトリウムチオマレエート(gold sodium thiomalate))のような抗炎症薬;免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);血管形成剤;血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF);アンギオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチ-センスオリゴヌクレオチド及びこれらの組み合わせ;細胞周期阻害剤、mTOR阻害剤及び成長因子受容体シグナル変換キナーゼ阻害剤;レテノイド(retenoid);サイクリン/CDK阻害剤;HMG補酵素レダクターゼ阻害剤(スタチン);及びプロテアーゼ阻害剤のような医薬品などが挙げられる(しかしながら、これに限定されない)。
【0041】
さらに、放射線不透過性マーカーは、ストリップ又は実質的に真直ぐなラインとして形成される場合、追加の視覚的合図を開業医又は臨床医に移植片の位置を越えて提供する。具体的には、真直ぐなラインの放射線不透過性マーカーは、移植手順の際及びその後移植片のねじれが生じているか否かを示すことができる。この特徴は、プロテーゼがよじれ又はねじれることなく体内に最適に移植されるかどうかを臨床医が確実に決定することができるようにするという点で有利であると考えられる。すなわち、本明細書に記載されるプロテーゼの開発前には、腕及び足の動きは、移植したプロテーゼをよじれ又はねじれさせ、移植が完了した後にそのような不都合な配置を臨床医が気付かずに、プロテーゼを通る血流を制限する。本明細書に記載されたプロテーゼは、臨床医によって移植されるプロテーゼが哺乳動物の体内に適正に配置されることを保証することによって、有利な技術を臨床医が達成することを可能にする。あるいは、他のタイプのしるし(例えば、製造日、製造業者など)を、放射線不透過性材料を移植片にプリントすることによって与えることができる。また、例えば商品のバーコードで使用されるように、放射線不透過性ラインを符号化できる。例えば、バーコード(ある特定の厚み及び高さの一連の黒及び白色ライン)は、コンピュータデータベースで使用できるデジタルコードとして機械によって翻訳できる。
【0042】
本明細書で使用されるように、「a」、「an」及び「the」の単数形は、ただ1つであると特に定義しない限り、複数の指示対象を含む。本発明はある特定の好ましい実施態様に関して開示されているが、記載された実施態様への多くの微修正(modifications)、修正(alterations)及び変更(changes)は、特許請求の範囲において定義されたように、本発明の範囲(sphere and scope)から離れることなく可能である。さらに、上述の方法、処理及び工程が、ある特定の結果がある特定の順で生じていることを示す場合、当業者は、工程の順番が修正される場合があり、その修正が記載された実施態様のバリエーションの範囲内であることを認識する。したがって、本発明は、記載された実施態様に限定されないが、特許請求の範囲の文言によって定義された全範囲及びその均等の範囲を有する。
【0043】
ここに、原出願の出願当初の特許請求の範囲を記載しておく。
【0044】
参考発明1は、第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面とを有する合成非金属材料の層;及び、前記層に少なくとも部分的に埋め込まれた放射線不透過性マーカーを含む移植医療用具。
参考発明2は、放射線不透過性マーカーが前記材料に完全に埋め込まれた、参考発明1記載の移植医療用具。
参考発明3は、放射線不透過性マーカーが第1表面の一部を画定する、参考発明1又は2記載の移植医療用具。
参考発明4は、放射線不透過性マーカーが第2表面の一部を画定する、参考発明1〜3のいずれか1項記載の移植医療用具。
参考発明5は、放射線不透過性マーカーが第1及び第2表面の間に配置される、参考発明1記載の移植医療用具。
参考発明6は、合成非金属材料がダクロン、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン-尿素、シロキサン及びこれらの組み合わせから本質的になる群より選ばれる材料を含む、参考発明1〜5のいずれか1項記載の移植医療用具。
参考発明7は、放射線不透過性マーカーが約20%のタンタル粉末を有するペーストである、参考発明1〜6のいずれか1項記載の移植医療用具。
参考発明8は、放射線不透過性マーカーが約20%〜約40%の硫酸バリウムを有するペーストである、参考発明1〜7のいずれか1項記載の移植医療用具。
参考発明9は、硫酸バリウムを生体適合性着色剤と混合する、参考発明8記載の移植医療用具。
参考発明10は、着色剤が緑、青又は黒色である、参考発明9記載の移植医療用具。
参考発明11は、着色剤がコバルトブルーである、参考発明10記載の移植医療用具。
参考発明12は、放射線不透過性マーカーが移植片の長さの実質的な部分に沿って伸びる少なくとも1つのラインを含む、参考発明1〜8のいずれか1項記載の移植医療用具。
参考発明13は、前記少なくとも1つのラインが移植片の長さの実質的な部分に沿って伸びる2つの平行なラインを含む、参考発明9記載の移植医療用具。
参考発明14は、第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面とを有する合成非金属材料の層;及び、合成非金属材料の第1及び第2表面の少なくとも1つに印刷された放射線不透過性インクを含む移植医療行具。
参考発明15は、ステントのフレーム;ステントのフレームの一部を囲む合成非金属材料であって、第1及び第2表面を有する合成非金属材料;及び、非金属材料に埋め込まれた放射線不透過性ストリップを含む用具。
参考発明16は、体を切開することなく哺乳動物の体内への移植片の移植後、哺乳動物の体内の移植片の向きを変える方法であって、以下を含む方法:電磁エネルギーを移植された移植片に向け;電磁エネルギーの一部を移植片の一部で遮断し;及び、像を、移植片の実質的な長さに沿って伸びるラインとして移植片の前記一部を示すディスプレー媒体に形成する。
参考発明17は、以下を含む移植医療用具を形成する方法:合成非金属材料を押出成形して、第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面を有する部材を形成し、前記押出成形は、非金属材料に少なくとも部分的に埋め込まれた放射線不透過性材料を押出成形することを含む。
参考発明18は、体を切開することなく哺乳動物の体内への移植片の移植後、哺乳動物の体内の移植片の向きを変える方法であって、以下を含む方法:電磁エネルギーを移植された移植片に向け;電磁エネルギーの一部を移植片の一部で遮断し;像を、移植片の実質的な長さに沿って伸びるラインとして移植片の前記一部を示すディスプレー媒体に形成し;及び、前記ラインを参照データと対比する。
参考発明19は、前記対比は、前記ラインを同じ電磁エネルギーの下での参照ステント植皮と対比することを含む、参考発明18記載の方法。
参考発明20は、第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面とを有する合成非金属材料の層;及び、第1及び第2表面の少なくとも1つに沿って配置される配向ラインであって、放射線不透過性マーカー及び着色剤を有する配向ラインを含む移植医療用具。
参考発明21は、配向ラインが非金属材料の軸長に沿って伸びる、参考発明20記載の移植医療用具。
参考発明22は、配向ラインが非金属材料の軸長に沿って伸びる平行な一対のラインの1つである、参考発明20又は21記載の移植医療用具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面とを有する合成非金属材料の層;及び
放射線不透過性マーカーを含み、
前記放射線不透過性マーカーは、
(1)前記層に少なくとも部分的に埋め込まれたマーカー、あるいは
(2)合成非金属材料の第1及び第2表面の少なくとも1つに印刷された放射線不透過性インク、であり
前記放射線不透過性マーカーは、移植片の長さの実質的な部分に沿って伸びる2つの平行なラインを含む、を含む移植医療用具。
【請求項2】
放射線不透過性マーカーが前記材料に完全に埋め込まれた、請求項1記載の移植医療用具。
【請求項3】
放射線不透過性マーカーが第1表面の一部を画定する、請求項1又は2記載の移植医療用具。
【請求項4】
放射線不透過性マーカーが第2表面の一部を画定する、請求項1〜3のいずれか1項記載の移植医療用具。
【請求項5】
放射線不透過性マーカーが第1及び第2表面の間に配置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の移植医療用具。
【請求項6】
合成非金属材料がダクロン、ポリエステル、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、ポリウレタン-尿素、シロキサン及びこれらの組み合わせから本質的になる群より選ばれる材料を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の移植医療用具。
【請求項7】
放射線不透過性マーカーが約20%のタンタル粉末を有するペーストである、請求項1〜6のいずれか1項記載の移植医療用具。
【請求項8】
放射線不透過性マーカーが約20%〜約40%の硫酸バリウムを有するペーストである、請求項1〜7のいずれか1項記載の移植医療用具。
【請求項9】
硫酸バリウムを生体適合性着色剤と混合する、請求項8記載の移植医療用具。
【請求項10】
着色剤が緑、青又は黒色である、請求項9記載の移植医療用具。
【請求項11】
着色剤がコバルトブルーである、請求項10記載の移植医療用具。
【請求項12】
前記平行ラインは、非金属材料の軸長に沿って伸びる、請求項1〜11の何れか一項に記載の移植医療行具。
【請求項13】
ステントのフレーム;
請求項1の移植医療行具であって、合成非金属材料層がステントのフレームの一部を囲む移植医療行具、;及び
非金属材料に埋め込まれた放射線不透過性ストリップであるライン
を含む用具。
【請求項14】
体を切開することなく哺乳動物の体内への移植片の移植後、哺乳動物の体内の移植片の向きを変える方法であって、前記移植片は請求項1〜12の何れか一項に記載の移植医療行具であり、以下を含む方法:
電磁エネルギーを移植された移植片に向け;
電磁エネルギーの一部を移植片の一部で遮断し;及び
像を、移植片の実質的な長さに沿って伸びるラインを含む移植片の前記一部を示すディスプレー媒体に形成する。
【請求項15】
前記ラインを参照データと対比することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対比は、前記ラインを同じ電磁エネルギーの下での参照ステント植皮と対比することを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の移植医療用具を形成する方法であって、
第1表面と、第1表面から空間的に離れた第2表面を有する層を形成するように、合成非金属材料を押出成形することを含み、
前記押出成形は、放射線不透過性材料を形成するように、非金属材料に少なくとも部分的に埋め込まれた放射線不透過性材料を押出成形することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−6034(P2013−6034A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171876(P2012−171876)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2008−540337(P2008−540337)の分割
【原出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(591018693)シー・アール・バード・インコーポレーテッド (106)
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【Fターム(参考)】