放射線低減用液剤
【課題】放射性物質に汚染された土壌などから発せられる放射線量を容易に低減することができる放射線低減剤を提供すること。
【解決手段】アミノ酸金属塩、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含有する放射線低減用液剤とする。
【解決手段】アミノ酸金属塩、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含有する放射線低減用液剤とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線低減用液剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故に伴う放射性物質の拡散によって、周囲に発せられる放射線量を低減させる技術の確立が急がれている。また、放射線は、ゴミ焼却施設などでも発生しており、このような施設においても、放射線量を低減させることが期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、放射性物質を含有する水中に金属イオンを添加して、水中の放射性物質を除去する方法が提案されている。また、特許文献2には、カチオン活性官能基と、カチオン重合の開始系と、放射線遮断性充填剤を含む充填剤組成物とを含む重合性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3144160
【特許文献2】特開2010−70766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法は、金属イオンを水中に添加することによって得られる凝集性沈殿物に放射性物質を吸着させるものであり、例えば、放射能に汚染された土壌などに適用することはできない。また、特許文献2の放射線遮断性を有する組成物は、主に、エポキシ樹脂などを材料とした歯科用材料に関するものであり、放射性物質で汚染された環境における放射線の遮断、放射線量の低減に適用可能な技術ではない。
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、放射性物質に汚染された土壌などから発せられる放射線量を容易に低減することができる放射線低減剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射線低減用液剤は、上記の課題を解決するため、以下のことを特徴としている。
<1>アミノ酸金属塩、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含有する。
<2>アミノ酸金属塩の金属は、銀、亜鉛、チタンのうちの1種または2種以上である。
<3>アミノ酸金属塩のアミノ酸は、L−ピロリドンカルボン酸である。
<4>さらに、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸のうちの少なくともいずれかを含む。
<5>エポキシアルコキシシランが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0008】
さらに、本発明の放射線低減方法は、<6>放射性物質を含む環境に、前記放射線低減用液剤を散布することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射性物質に汚染された土壌などから発せられる放射線量を容易に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の放射線低減用液剤は、アミノ酸金属塩、カルボキシメチルセルロース(その塩を含む)およびエポキシアルコキシシランを含有する。具体的には、少なくとも、溶媒としての水と、アミノ酸金属塩と、カルボキシメチルセルロースと、エポキシアルコキシシランとが混合された液剤である。
【0011】
アミノ酸金属塩のアミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンピドール酸、L−グルタミン酸、L−グルチム酸、L−グルチミン酸、L−グルタミン酸ラクタム、L−グルチミニン酸、L−ピロリドンカルボン酸、L−ピログルタミン酸、オキソプロリンのうちの1種または2種以上を例示することができる。これらの中でも、L−ピロリドンカルボン酸は、放射線低減効果に優れているためより好ましい。
【0012】
アミノ酸金属塩の金属としては、例えば、銀、銅、亜鉛、錫、アルミ、チタンなどを例示することができる。アミノ酸金属は水中に分散されて、金属がイオン化した状態となっており、特に、銀イオン、亜鉛イオン、チタンイオンは放射線低減効果に優れているため好ましい。
【0013】
アミノ酸金属塩として亜鉛塩を例にとって示すと、グリシン亜鉛、グルタミン酸亜鉛、アラニン亜鉛、バリン亜鉛、メチオニン亜鉛、リジン亜鉛などを例示することができる。
【0014】
本発明の放射線低減用液剤には、このようなアミノ酸金属塩を単独で配合してもよく、または2種以上を配合することができる。特に、結合する金属の種類が異なるアミノ酸金属塩を2種以上混合することによって、放射線低減効果を高めることができる。具体的には、銀を有するアミノ酸金属塩、亜鉛を有するアミノ酸金属塩、チタンを有するアミノ酸金属塩を2種以上混合して使用することがより好ましい。
【0015】
また、アミノ酸金属塩は、放射線低減剤の全量の0.0001%〜12%(重量%、以下同様)、好ましくは、0.01%〜2%配合される。配合量が0.0001%以下である場合、放射線低減効果を得ることが難しい。
【0016】
さらに、本発明の放射線低減用液剤に含まれるカルボキシメチルセルロースは、セルロースのカルボキシメチル誘導体及び/又はその塩(特にアルカリ金属塩、更にはNa塩)である。カルボキシメチルセルロースを配合することにより、水中に分散しているアミノ酸金属は、カルボキシメチルセルロースの表面に担時され、対象箇所(汚染箇所)の物質表面にフィラー状態で飛散するため、放射線低減用液剤の被膜性、分散性が向上する。したがって、カルボキシメチルセルロースを含有する本発明の放射線低減用液剤によって放射性物質を覆うことで、放射性物質から発せられる放射線を効果的に遮断し、放射線量をより確実に低減させることができる。
【0017】
カルボキシメチルセルロースの配合量は特に限定されないが、本発明の放射線低減用液剤の全体に対して、0.0001%〜8%とすることができ、好ましくは、0.0001%〜1%とすることができる。
【0018】
さらに、本発明の放射線低減用液剤に含まれるエポキシアルコキシシランの例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、架橋剤として浸水基の高いγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの場合、配合量は、放射線低減用液剤の全体に対して、0.05%〜15%であることが好ましく、0.05%〜5.0%であることがより好ましい。エポキシアルコキシシランは、カルボキシメチルセルロースの表面改質剤として機能すると考えられる。
【0019】
例えば、本発明の放射線低減用液剤を、放射性物質で汚染された土壌などに散布することによって、アミノ酸金属塩の金属イオンが放射性物質を遮蔽するため、放射線が外部に放射されるのを抑制し、周囲の放射線量を低減することができる。さらに、金属イオンには、脱臭効果、微生物の増殖抑制効果が期待できるため、本発明の放射線低減用液剤を、例えば、放射線が発生するゴミ焼却施設などで使用することで、放射線量の低減効果に加え、脱臭効果、微生物の増殖抑制効果という副次的な効果も実現することができる。
【0020】
さらに、本発明の放射線低減用液剤には、ポリビニルアルコールを配合することができる。ポリビニルアルコールのケン化度は、特に限定されないが、90モル%以上であることが好ましい。ポリビニルアルコールを配合することにより、水中に分散しているアミノ酸金属中の、銀イオン、亜鉛イオン、チタンイオンなどを取り込んで、架橋性を安定化することができるため、放射線低減用液剤の被膜性、分散性が向上する。したがって、ポリビニルアルコールを含有する本発明の放射線低減用液剤によって放射性物質を覆うことで、放射性物質から発せられる放射線を効果的に遮断し、放射線量をより確実に低減させることができる。
【0021】
また、ポリビニルアルコールの配合量は、放射線低減用液剤の全体に対して、0.05%〜5%であることが好ましく、0.05%〜1.0%であることがより好ましい。
【0022】
さらに、本発明の放射線低減用液剤には、ポリアクリル酸(そのアルカリ金属塩を含む)を配合することもできる。ポリアクリル酸は、基本骨格にカルボキシル基を有するために親水性が高く、水系で扱い易いために好ましい。このポリアクリル酸の重量平均分子量は、500〜2000が好ましく、2000程度がより好ましい。
【0023】
このポリアクリル酸を配合することにより、水中に分散しているアミノ酸金属中の、銀イオン、亜鉛イオン、チタンイオンなどを取り込んで架橋及び分散することができるため、放射線低減用液剤の被膜性、分散性が向上する。したがって、ポリビニルアルコールを含有する本発明の放射線低減用液剤によって放射性物質を覆うことで、放射性物質から発せられる放射線を効果的に遮断し、放射線量をより確実に低減させることができる。
【0024】
本発明の放射線低減用液剤では、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸のうちの1種を単独で使用することもできるし、2種を使用することもできる。
【0025】
さらに、本発明の放射線低減用液剤では、アミノ酸金属がチタンを含む場合には、チタネートカップリング剤を添加することもできる。チタネートカップリング剤としては、有機チタンアルコキシド、有機チタンキレート、有機チタンポリマー、有機チタンオリゴマー及び有機チタンアシレートなどを例示することができる。チタネートカップリング剤の含有量は、アミノ酸金属の添加量など応じて適宜設計することができる。
【0026】
本発明の放射線低減用液剤には、取り扱い性、保存性などを考慮して、その他各種の添加物を配合することもできる。また、硫酸亜鉛七水和物、硫酸銅五水和物などの酸や水酸化ナトリウムなどを利用して放射線低減用液剤の金属イオン濃度並びにpHを調整することもできる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
<実施例1>
以下の手順で、放射線低減用液剤1000mlを作製した。
(1)銀0.1molとL−ピロリドンカルボン酸0.1molを混合し反応させアミノ酸銀を得た。
(2)亜鉛0.1molとL−ピロリドンカルボン酸0.1molを混合し反応させアミノ酸亜鉛を得た。
(3)上記アミノ酸銀とアミノ酸亜鉛を、1:2に配合して、水に分散させ、アミノ酸銀とアミノ酸亜鉛を総量の7.5%含む溶液とした。
(4)さらにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを総量の0.5%混合し反応させた。
(5)次に、0.2%ポリアクリル酸溶液を総量の1%混合した。
(6)次に、2%ポリビニルアルコール溶液を総量の8%混合した。
(7)次に、1%カルボキシメチルセルロース1%溶液を総量の10%混合した。
(8)1%チタネートカップリング剤溶液を総量の1%混合した。
(9)2%硫酸亜鉛七水和物溶液を総量の0.5%混合した。
(10)4%水酸化ナトリウム溶液を総量の0.8%混合した。
上記手順で作製した放射線低減用液剤を、放射性物質を含む汚染土壌(福島県内の中学校グラウンドより採取した土)に、1平方センチメートル当り20ml〜30ml散布し、放射線量を、SOEKS社製放射線測定器を使用して測定した(単位:μSv/h)。
【0029】
結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示したように、放射線低減用液剤を散布しなかった場合(control)には、放射線量は、ほとんど変化しなかった。一方、放射線低減用液剤を散布した検体1、検体2では、放射線量は、24h後に1/2以下になり、48h後には1/3以下にまで低減されることが確認された。
【0032】
<実施例2>
実施例1で使用した放射線低減用液剤を標準濃度とし、2倍、3倍、10倍、20倍、50倍に希釈した放射線低減用液剤を使用して、実施例1と同様に放射線量を測定した(単位μSv/h)。検体4〜6はいずれも、福島県内の中学校グラウンドより採取した土を使用した。
その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示したように、放射線低減用液剤を希釈した場合にも、安定した放射線量の低減効果が確認された。また、24時間後48時間後であっても、低減された放射線量の数値が安定に維持されていることも確認された。
【0035】
<実施例3>
福島県内の中学校グラウンドから採取した土200gに検体7〜9を表面に200gずつ堆積させ放射線量への影響を実施例1と同様の方法で測定した(単位μSv/h)。
検体7は、放射線低減用液剤として、実施例1において使用した放射線低減用液剤の配合を変更したもの使用した。具体的には、放射線低減用液剤1000ml中において、アミノ酸銀0.1mol、75ml、硫酸亜鉛七水和物2%、10ml、硫酸銅五水和物1%100mlとした。その他の成分は、実施例1と同様に配合した。
【0036】
検体8は、共同組合カーボテック飛騨社製銀2%銅2%抗菌砂(商品名 キッズサンド)を使用した。
【0037】
検体9は、瀬戸チップ工業社製塩化マンガン2%砂を使用した。
【0038】
結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3に示したように、本発明の放射線低減用液剤を使用した検体7では、放射線量の低減効果が確認されたのに対し、検体8、9では、放射線量は、低減されないことが確認された。
【0041】
<比較例>
実施例1で使用した放射線低減用液剤において、アミノ酸亜鉛、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含まない溶液(アミノ酸銀、その他の成分を含む)を検体(福島県内の中学校グラウンドから採取した土)0.2kgに20ml散布した。また、同様に、アミノ酸銀、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含まない溶液(アミノ酸亜鉛、その他の成分を含む)を同一条件で散布した。さらに、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含まない溶液(アミノ酸銀、アミノ酸亜鉛、その他の成分を含む)溶液を同一条件で散布した。
その結果、この3種類の溶液では、放射線量の低減は確認されなかった。したがって、液剤中に、カルボキシメチルセルロース、エポキシアルコキシシランを含まない場合には、放射線低減効果が発揮されないことが確認された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線低減用液剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故に伴う放射性物質の拡散によって、周囲に発せられる放射線量を低減させる技術の確立が急がれている。また、放射線は、ゴミ焼却施設などでも発生しており、このような施設においても、放射線量を低減させることが期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、放射性物質を含有する水中に金属イオンを添加して、水中の放射性物質を除去する方法が提案されている。また、特許文献2には、カチオン活性官能基と、カチオン重合の開始系と、放射線遮断性充填剤を含む充填剤組成物とを含む重合性組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3144160
【特許文献2】特開2010−70766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法は、金属イオンを水中に添加することによって得られる凝集性沈殿物に放射性物質を吸着させるものであり、例えば、放射能に汚染された土壌などに適用することはできない。また、特許文献2の放射線遮断性を有する組成物は、主に、エポキシ樹脂などを材料とした歯科用材料に関するものであり、放射性物質で汚染された環境における放射線の遮断、放射線量の低減に適用可能な技術ではない。
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、放射性物質に汚染された土壌などから発せられる放射線量を容易に低減することができる放射線低減剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射線低減用液剤は、上記の課題を解決するため、以下のことを特徴としている。
<1>アミノ酸金属塩、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含有する。
<2>アミノ酸金属塩の金属は、銀、亜鉛、チタンのうちの1種または2種以上である。
<3>アミノ酸金属塩のアミノ酸は、L−ピロリドンカルボン酸である。
<4>さらに、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸のうちの少なくともいずれかを含む。
<5>エポキシアルコキシシランが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0008】
さらに、本発明の放射線低減方法は、<6>放射性物質を含む環境に、前記放射線低減用液剤を散布することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射性物質に汚染された土壌などから発せられる放射線量を容易に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の放射線低減用液剤は、アミノ酸金属塩、カルボキシメチルセルロース(その塩を含む)およびエポキシアルコキシシランを含有する。具体的には、少なくとも、溶媒としての水と、アミノ酸金属塩と、カルボキシメチルセルロースと、エポキシアルコキシシランとが混合された液剤である。
【0011】
アミノ酸金属塩のアミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンピドール酸、L−グルタミン酸、L−グルチム酸、L−グルチミン酸、L−グルタミン酸ラクタム、L−グルチミニン酸、L−ピロリドンカルボン酸、L−ピログルタミン酸、オキソプロリンのうちの1種または2種以上を例示することができる。これらの中でも、L−ピロリドンカルボン酸は、放射線低減効果に優れているためより好ましい。
【0012】
アミノ酸金属塩の金属としては、例えば、銀、銅、亜鉛、錫、アルミ、チタンなどを例示することができる。アミノ酸金属は水中に分散されて、金属がイオン化した状態となっており、特に、銀イオン、亜鉛イオン、チタンイオンは放射線低減効果に優れているため好ましい。
【0013】
アミノ酸金属塩として亜鉛塩を例にとって示すと、グリシン亜鉛、グルタミン酸亜鉛、アラニン亜鉛、バリン亜鉛、メチオニン亜鉛、リジン亜鉛などを例示することができる。
【0014】
本発明の放射線低減用液剤には、このようなアミノ酸金属塩を単独で配合してもよく、または2種以上を配合することができる。特に、結合する金属の種類が異なるアミノ酸金属塩を2種以上混合することによって、放射線低減効果を高めることができる。具体的には、銀を有するアミノ酸金属塩、亜鉛を有するアミノ酸金属塩、チタンを有するアミノ酸金属塩を2種以上混合して使用することがより好ましい。
【0015】
また、アミノ酸金属塩は、放射線低減剤の全量の0.0001%〜12%(重量%、以下同様)、好ましくは、0.01%〜2%配合される。配合量が0.0001%以下である場合、放射線低減効果を得ることが難しい。
【0016】
さらに、本発明の放射線低減用液剤に含まれるカルボキシメチルセルロースは、セルロースのカルボキシメチル誘導体及び/又はその塩(特にアルカリ金属塩、更にはNa塩)である。カルボキシメチルセルロースを配合することにより、水中に分散しているアミノ酸金属は、カルボキシメチルセルロースの表面に担時され、対象箇所(汚染箇所)の物質表面にフィラー状態で飛散するため、放射線低減用液剤の被膜性、分散性が向上する。したがって、カルボキシメチルセルロースを含有する本発明の放射線低減用液剤によって放射性物質を覆うことで、放射性物質から発せられる放射線を効果的に遮断し、放射線量をより確実に低減させることができる。
【0017】
カルボキシメチルセルロースの配合量は特に限定されないが、本発明の放射線低減用液剤の全体に対して、0.0001%〜8%とすることができ、好ましくは、0.0001%〜1%とすることができる。
【0018】
さらに、本発明の放射線低減用液剤に含まれるエポキシアルコキシシランの例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、架橋剤として浸水基の高いγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの場合、配合量は、放射線低減用液剤の全体に対して、0.05%〜15%であることが好ましく、0.05%〜5.0%であることがより好ましい。エポキシアルコキシシランは、カルボキシメチルセルロースの表面改質剤として機能すると考えられる。
【0019】
例えば、本発明の放射線低減用液剤を、放射性物質で汚染された土壌などに散布することによって、アミノ酸金属塩の金属イオンが放射性物質を遮蔽するため、放射線が外部に放射されるのを抑制し、周囲の放射線量を低減することができる。さらに、金属イオンには、脱臭効果、微生物の増殖抑制効果が期待できるため、本発明の放射線低減用液剤を、例えば、放射線が発生するゴミ焼却施設などで使用することで、放射線量の低減効果に加え、脱臭効果、微生物の増殖抑制効果という副次的な効果も実現することができる。
【0020】
さらに、本発明の放射線低減用液剤には、ポリビニルアルコールを配合することができる。ポリビニルアルコールのケン化度は、特に限定されないが、90モル%以上であることが好ましい。ポリビニルアルコールを配合することにより、水中に分散しているアミノ酸金属中の、銀イオン、亜鉛イオン、チタンイオンなどを取り込んで、架橋性を安定化することができるため、放射線低減用液剤の被膜性、分散性が向上する。したがって、ポリビニルアルコールを含有する本発明の放射線低減用液剤によって放射性物質を覆うことで、放射性物質から発せられる放射線を効果的に遮断し、放射線量をより確実に低減させることができる。
【0021】
また、ポリビニルアルコールの配合量は、放射線低減用液剤の全体に対して、0.05%〜5%であることが好ましく、0.05%〜1.0%であることがより好ましい。
【0022】
さらに、本発明の放射線低減用液剤には、ポリアクリル酸(そのアルカリ金属塩を含む)を配合することもできる。ポリアクリル酸は、基本骨格にカルボキシル基を有するために親水性が高く、水系で扱い易いために好ましい。このポリアクリル酸の重量平均分子量は、500〜2000が好ましく、2000程度がより好ましい。
【0023】
このポリアクリル酸を配合することにより、水中に分散しているアミノ酸金属中の、銀イオン、亜鉛イオン、チタンイオンなどを取り込んで架橋及び分散することができるため、放射線低減用液剤の被膜性、分散性が向上する。したがって、ポリビニルアルコールを含有する本発明の放射線低減用液剤によって放射性物質を覆うことで、放射性物質から発せられる放射線を効果的に遮断し、放射線量をより確実に低減させることができる。
【0024】
本発明の放射線低減用液剤では、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸のうちの1種を単独で使用することもできるし、2種を使用することもできる。
【0025】
さらに、本発明の放射線低減用液剤では、アミノ酸金属がチタンを含む場合には、チタネートカップリング剤を添加することもできる。チタネートカップリング剤としては、有機チタンアルコキシド、有機チタンキレート、有機チタンポリマー、有機チタンオリゴマー及び有機チタンアシレートなどを例示することができる。チタネートカップリング剤の含有量は、アミノ酸金属の添加量など応じて適宜設計することができる。
【0026】
本発明の放射線低減用液剤には、取り扱い性、保存性などを考慮して、その他各種の添加物を配合することもできる。また、硫酸亜鉛七水和物、硫酸銅五水和物などの酸や水酸化ナトリウムなどを利用して放射線低減用液剤の金属イオン濃度並びにpHを調整することもできる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
<実施例1>
以下の手順で、放射線低減用液剤1000mlを作製した。
(1)銀0.1molとL−ピロリドンカルボン酸0.1molを混合し反応させアミノ酸銀を得た。
(2)亜鉛0.1molとL−ピロリドンカルボン酸0.1molを混合し反応させアミノ酸亜鉛を得た。
(3)上記アミノ酸銀とアミノ酸亜鉛を、1:2に配合して、水に分散させ、アミノ酸銀とアミノ酸亜鉛を総量の7.5%含む溶液とした。
(4)さらにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを総量の0.5%混合し反応させた。
(5)次に、0.2%ポリアクリル酸溶液を総量の1%混合した。
(6)次に、2%ポリビニルアルコール溶液を総量の8%混合した。
(7)次に、1%カルボキシメチルセルロース1%溶液を総量の10%混合した。
(8)1%チタネートカップリング剤溶液を総量の1%混合した。
(9)2%硫酸亜鉛七水和物溶液を総量の0.5%混合した。
(10)4%水酸化ナトリウム溶液を総量の0.8%混合した。
上記手順で作製した放射線低減用液剤を、放射性物質を含む汚染土壌(福島県内の中学校グラウンドより採取した土)に、1平方センチメートル当り20ml〜30ml散布し、放射線量を、SOEKS社製放射線測定器を使用して測定した(単位:μSv/h)。
【0029】
結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示したように、放射線低減用液剤を散布しなかった場合(control)には、放射線量は、ほとんど変化しなかった。一方、放射線低減用液剤を散布した検体1、検体2では、放射線量は、24h後に1/2以下になり、48h後には1/3以下にまで低減されることが確認された。
【0032】
<実施例2>
実施例1で使用した放射線低減用液剤を標準濃度とし、2倍、3倍、10倍、20倍、50倍に希釈した放射線低減用液剤を使用して、実施例1と同様に放射線量を測定した(単位μSv/h)。検体4〜6はいずれも、福島県内の中学校グラウンドより採取した土を使用した。
その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2に示したように、放射線低減用液剤を希釈した場合にも、安定した放射線量の低減効果が確認された。また、24時間後48時間後であっても、低減された放射線量の数値が安定に維持されていることも確認された。
【0035】
<実施例3>
福島県内の中学校グラウンドから採取した土200gに検体7〜9を表面に200gずつ堆積させ放射線量への影響を実施例1と同様の方法で測定した(単位μSv/h)。
検体7は、放射線低減用液剤として、実施例1において使用した放射線低減用液剤の配合を変更したもの使用した。具体的には、放射線低減用液剤1000ml中において、アミノ酸銀0.1mol、75ml、硫酸亜鉛七水和物2%、10ml、硫酸銅五水和物1%100mlとした。その他の成分は、実施例1と同様に配合した。
【0036】
検体8は、共同組合カーボテック飛騨社製銀2%銅2%抗菌砂(商品名 キッズサンド)を使用した。
【0037】
検体9は、瀬戸チップ工業社製塩化マンガン2%砂を使用した。
【0038】
結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3に示したように、本発明の放射線低減用液剤を使用した検体7では、放射線量の低減効果が確認されたのに対し、検体8、9では、放射線量は、低減されないことが確認された。
【0041】
<比較例>
実施例1で使用した放射線低減用液剤において、アミノ酸亜鉛、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含まない溶液(アミノ酸銀、その他の成分を含む)を検体(福島県内の中学校グラウンドから採取した土)0.2kgに20ml散布した。また、同様に、アミノ酸銀、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含まない溶液(アミノ酸亜鉛、その他の成分を含む)を同一条件で散布した。さらに、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含まない溶液(アミノ酸銀、アミノ酸亜鉛、その他の成分を含む)溶液を同一条件で散布した。
その結果、この3種類の溶液では、放射線量の低減は確認されなかった。したがって、液剤中に、カルボキシメチルセルロース、エポキシアルコキシシランを含まない場合には、放射線低減効果が発揮されないことが確認された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸金属塩、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含有することを特徴とする放射線低減用液剤。
【請求項2】
アミノ酸金属塩の金属は、銀、亜鉛、チタンのうちの1種または2種以上であることを特徴とする請求項1の放射線低減用液剤。
【請求項3】
アミノ酸金属塩のアミノ酸は、L−ピロリドンカルボン酸であることを特徴とする請求項1または2の放射線低減用液剤。
【請求項4】
さらに、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかの放射線低減用液剤。
【請求項5】
エポキシアルコキシシランが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1から4のいずれかの放射線低減用液剤。
【請求項6】
放射性物質を含む環境に、請求項1から5のいずれかの放射線低減用液剤を散布することを特徴とする放射線低減方法。
【請求項1】
アミノ酸金属塩、カルボキシメチルセルロースおよびエポキシアルコキシシランを含有することを特徴とする放射線低減用液剤。
【請求項2】
アミノ酸金属塩の金属は、銀、亜鉛、チタンのうちの1種または2種以上であることを特徴とする請求項1の放射線低減用液剤。
【請求項3】
アミノ酸金属塩のアミノ酸は、L−ピロリドンカルボン酸であることを特徴とする請求項1または2の放射線低減用液剤。
【請求項4】
さらに、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかの放射線低減用液剤。
【請求項5】
エポキシアルコキシシランが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1から4のいずれかの放射線低減用液剤。
【請求項6】
放射性物質を含む環境に、請求項1から5のいずれかの放射線低減用液剤を散布することを特徴とする放射線低減方法。
【公開番号】特開2013−36761(P2013−36761A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170546(P2011−170546)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(511190018)株式会社CSL (2)
【出願人】(597141586)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(511190018)株式会社CSL (2)
【出願人】(597141586)
【Fターム(参考)】
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