説明

放射線像変換パネルの製造方法および放射線像変換パネル製造装置

【課題】点欠陥などの発生を抑制し、欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネルを製造することができる放射線像変換パネルの製造方法および放射線像変換パネル製造装置を提供する。
【解決手段】閉塞された真空チャンバ12内で、気相堆積法により蛍光体層を形成する製造方法であって、真空チャンバ12内に基板70をセットする工程と、基板70がセットされた状態で基板の表面70dを除塵する工程と、蛍光体層を基板上に形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピューテッドラジオグラフィー(CR)等で放射線画像の記録(撮影)に用いられる放射線像変換パネルの製造方法および放射線像変換パネル製造装置に関し、特に、柱状結晶からなる蛍光体層における柱状結晶の成長状態を均一にし、点欠陥などが少なく高品位な画像が得られる放射線像変換パネルの製造方法および放射線像変換パネル製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、および紫外線等)の照射を受けると、この放射線エネルギの一部を蓄積し、その後、可視光等の励起光の照射を受けると、蓄積されたエネルギに応じた輝尽発光を示す蛍光体が知られている。この蛍光体は、輝尽性蛍光体(蓄積性蛍光体)と呼ばれ、医療用途などの各種の用途に利用されている。
【0003】
例えば、この輝尽性蛍光体の膜(輝尽性蛍光体層)を有する放射線像変換パネルを利用する放射線画像情報記録再生システムが知られており、例えば、富士写真フイルム社製のFCR(Fuji Computed Radiography)等として実用化されている。
この放射線画像情報記録再生システムでは、人体などの被写体を介してX線等を照射することにより、放射線像変換パネル(輝尽性蛍光体層)に被写体の放射線画像情報を記録する。記録後に、放射線像変換パネルをレーザ光等の励起光で2次元的に走査して輝尽発光を生ぜしめ、この輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得、この画像信号に基づいて再生した画像を、CRTなどの表示装置、または写真感光材料などの記録材料等に、被写体の放射線画像として出力する。
【0004】
放射線像変換パネルは、通常、輝尽性蛍光体の粉末を、バインダ等を含む溶媒に分散してなる塗料を調製して、この塗料をガラスまたは樹脂製のパネル状の支持体に塗布し、乾燥することによって、作製される。
これに対し、真空蒸着またはスパッタリング等の真空成膜法(気相成膜法)によって、支持体に輝尽性蛍光体層(以下、蛍光体層ともいう)を形成してなる蛍光体パネルも知られている。真空成膜法による蛍光体層は、真空中で形成されるので不純物が少なく、また、輝尽性蛍光体以外のバインダなどの成分が殆ど含まれないので、性能のバラツキが少なく、しかも発光効率が非常に良好であるという優れた特性を有している。さらに、蛍光体層が蛍光体の柱状構造で形成されるため、鮮鋭度の高い良好な画質が得られる。
【0005】
また、放射線像変換パネルにおいては、読み取り時にチリ、またはホコリなどのゴミが付着した場合、および製造時にチリ、またはホコリなどのゴミが混入した場合、得られる画像に欠陥が生じる虞がある。このため、このような画像の欠陥の発生を抑制するために、種々の技術が開示されている(特許文献1〜特許文献3参照)。
【0006】
特許文献1には、蓄積蛍光体シートのクリーニング機構が設けられた放射線画像読取装置が開示されている。この特許文献1のクリーニング機構は、回転クリーニングローラ対と、除電ブラシ対とを有するものである。
特許文献1の放射線画像読取装置においては、クリーニング機構により、蛍光体シートの表面に付着した塵埃を除去するとともに、表面の電荷を除去する。これにより、電荷による放射線画像の影響、塵埃の付着による放射線画像の悪影響を取り除いている。
【0007】
また、特許文献2の放射線画像読取装置は、放射線画像の記録された蓄積性蛍光体パネルを搬送する搬送系が、蓄積性蛍光体パネルの両面側に位置するように配置された複数の弾性ベルトを備えるものである。
特許文献2の放射線画像読取装置においては、複数の弾性ベルトを駆動し複数の弾性ベルトの間に挟まれた蓄積性蛍光体パネルを搬送する。これにより、蓄積性蛍光体パネルを搬送する際に、傷が付くこと、またひずみが生じ経年劣化してしまうことを防止し、さらには、搬送中に蓄積性蛍光体パネルに塵、ごみ、ほこり等の異物が付着することを防止するものである。この特許文献2においても、蛍光体層へのゴミの付着を防止し、画像読み取りに生じる画像の劣化を未然に防止することができる。
【0008】
さらに、特許文献3の放射線画像変換パネルの製造方法には、保護層および輝尽性蛍光体層の少なくとも1層の表面のゴミを粘着力による除去方法で除去した後に、保護層と輝尽性蛍光体層をそれぞれ接着させる工程を有するものが開示されている。
このように、特許文献3においては、放射線画像変換パネルの製造方法の工程の中に、ゴミ除去方法を設けることにより、繰り返し使用される放射線画像変換パネルに対し、搬送系等を介して読み取り部に侵入した塵埃や蓄積性蛍光体シートに付着した塵埃等による画像読み取り精度の劣化を防止し、ノイズの少ない優れた画像が得られる。
【0009】
【特許文献1】特開平5−72656号公報
【特許文献2】特開平11−344781号公報
【特許文献3】特開2005−43050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の放射線画像読取装置および特許文献2の放射線画像読取装置においては、画像の読み取り時に、付着するゴミを取り除くものであり、放射線像変換パネルにゴミが混入している場合には、対処できないという問題点がある。
また、特許文献3においては、保護層と蛍光体層との間にゴミが混入しないようにするものであるものの、蛍光体層を形成するに際し、ゴミ、埃などの混入を抑制するものではない。この結果、蛍光体層を形成する際に、ゴミ、埃などが混入した場合、製造された放射線像変換パネルにおいては、以下に示すような画像欠陥が生じる虞がある。
【0011】
図11に示す放射線像変換パネル100のように、通常は、柱状結晶106が成長し、この柱状結晶106により輝尽性蛍光体層104(以下、蛍光体層104という)が構成される。また、蛍光体層104の表面104aは略均一な高さとなる。
しかしながら、基板102上に蛍光体層104を形成する際に、基板104にゴミ108がある場合、このゴミ108を起点として異常成長結晶106aが起き、結果として蛍光体層104において、この表面104aから突出したヒロックHが生じる。このような異常成長結晶106aにより、得られる画像において、本来黒である画像が白くなる点欠陥が生じる。このようなことから、ゴミ、埃などの混入を抑制しない場合には、必ずしも欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネルを製造することができるとは限らない。さらには、現状では、蛍光体層104の異常成長結晶106の発生を抑制することを開示するものはない。
【0012】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、点欠陥などの発生を抑制し、欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネルを製造することができる放射線像変換パネルの製造方法および放射線像変換パネル製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、閉塞された真空チャンバ内で、気相堆積法により蛍光体層を形成する放射線像変換パネルの製造方法であって、前記真空チャンバ内に基板をセットする工程と、前記基板がセットされた状態で前記基板の表面を除塵する工程と、前記蛍光体層を基板上に形成する工程とを有することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法を提供するものである。
【0014】
本発明においては、前記基板の表面を除塵する工程は、前記真空チャンバが大気圧の状態で行われることが好ましい。
また、本発明においては、前記基板をセットする工程と、前記基板の表面を除塵する工程との間に、前記蛍光体層となる成膜材料を前記真空チャンバ内にセットする工程を有することが好ましい。
【0015】
さらに、本発明においては、前記基板をセットする工程と前記基板の表面を除塵する工程との間、または前記基板をセットする工程の前に、前記蛍光体層となる成膜材料を前記真空チャンバ内にセットする工程を有することが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明においては、前記基板の表面を除塵する工程は、クリーニングローラを用いる除塵方法、前記基板に気体を吹付ける方法、および前記基板を除電する方法のうち、少なくとも1つの方法が用いられることが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明においては、前記クリーニングローラは、前記基板の表面に接触されるローラ部を有するものであり、前記ローラ部は、ブチルゴム、シリコンおよびウレタンゴムのうち、少なくとも1種を主成分とするものにより構成されることが好ましい。
ここで、前記クリーニングローラによる除塵は、前記基板の蛍光体層形成領域の端部近傍を除いて行なうのが好ましく、また、この際において、前記蛍光体層の形成領域の全長をa、前記端部近傍の除塵を行なわない領域の幅をbとした際に、式「0.03≦b/a≦0.4」を満たすのが好ましい。
【0018】
また、本発明においては、前記基板の表面を除塵する工程は、前記気体を吹付ける方法、および前記基板を除電する方法を用いるものであり、および前記基板を除電する方法には、除電装置が用いられることが好ましい。
また、本発明においては、前記除電装置は、イオンエアー発生装置であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の第2の態様は、シート状の基板の表面に真空蒸着によって蛍光体層を形成する放射線像変換パネル製造装置であって、真空チャンバと、前記真空チャンバ内を排気する真空排気手段と、前記真空チャンバ内に設けられ、容器に収納された前記蛍光体層の成膜材料を抵抗加熱によって加熱し、前記容器の開口部から前記成膜材料の蒸気を放出させる抵抗加熱手段と、前記真空チャンバ内に設けられ、前記抵抗加熱手段の上方において、前記基板を保持する基板保持手段と、前記真空チャンバ内に設けられ、前記基板の表面を除塵する除塵部とを有することを特徴とする放射線像変換パネル製造装置を提供するものである。
【0020】
本発明においては、さらに、前記除塵部を制御する制御部と、前記制御部に接続され、前記基板が前記基板保持手段に保持されたことを検知する第1のセンサとを有し、前記第1のセンサの検知結果を受けた後、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させることが好ましい。
【0021】
また、本発明においては、さらに、前記除塵部を制御する制御部と、前記制御部に接続され、前記容器に前記成膜材料が収納されたことを検知する第2のセンサを有し、前記第2のセンサの検知結果を受けた後、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明においては、さらに、前記除塵部を制御する制御部と、前記制御部に接続され、前記真空チャンバが閉塞されたことを検知する第3のセンサとを有し、前記第3のセンサの検知結果を受けた後、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させることが好ましい。
【0023】
さらにまた、本発明においては、さらに、前記除塵部を制御する制御部と、前記制御部に接続され、前記真空チャンバ内の圧力を測定する真空計とを有し、前記真空計により測定された圧力が所定の圧力以下であるとき、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させることが好ましい。
【0024】
また、本発明においては、さらに、前記容器の開口部に開閉自在に設けられたシャッタと、前記除塵部を制御する制御部と、前記制御部に接続され、前記シャッタの開閉を検知する第4のセンサとを有し、前記第4のセンサにより前記シャッタが開放された検知結果を受けた後、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の放射線像変換パネルの製造方法によれば、真空チャンバ内に基板をセットする工程と、基板がセットされた状態で基板の表面を除塵する工程と、蛍光体層を基板上に気相堆積法により形成する工程とを有し、蛍光体層を基板上に形成する直前に、基板表面を除塵することにより、基板を真空チャンバ内にセットし、その後、種々の作業または装置の動作などにより、細かなゴミ、および埃が発生し、異常成長の起点となる細かなゴミ、および埃が基板表面に付着した場合でも取り除かれる。そして、清浄な状態の基板表面に蛍光体層が形成されるため、異常核成長の発生が抑制され、ヒロックの発生も抑制される。これにより、点欠陥が少なく高品位な画像が得られる放射線像変換パネルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の放射線像変換パネルの製造方法および放射線像変換パネル製造装置について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の放射線像変換パネルの製造方法に用いられる放射線像変換パネル製造装置の第1の実施形態を示す模式的断面図であり、(b)は、図1(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の模式的側断面図である。
【0027】
図1に示す放射線像変換パネル製造装置10(以下、製造装置10ともいう)は、蓄積性蛍光体(母体)となる材料と、付活剤(賦活剤:activator)となる材料とを別々に蒸発する二元の真空蒸着によって、基板70の表面70dに蓄積性蛍光体からなる輝尽性蛍光体層(以下、蛍光体層という)を形成して、(蓄積性)放射線像変換パネルを製造する装置である。
このような製造装置10は、基本的に、真空チャンバ12と、基板保持搬送機構14と、加熱蒸発部(抵抗加熱手段)16と、真空ポンプ(真空排気手段)18と、ガス導入ノズル19と、制御部20とを有して構成される。なお、本発明の製造装置10は、これ以外にも、公知の真空蒸着装置が有する各種の構成要素を有してもよいのは、もちろんである。例えば、真空チャンバ12内の真空度を測定する真空計(図示せず)を有し、制御部20に接続されている。
なお、本実施形態において、基板70は、基板ホルダ39に収納されて、基板保持搬送機構14に基板ホルダ39ごと保持されて、真空チャンバ12内にセットされ、直線搬送されるものである。
また、基板ホルダ39は、基板70をその側面から挿入して内部に係止して保持する形で保持するように構成されているものである。
【0028】
また、本発明は、図1に示すような二元の真空蒸着装置に限定はされず、全ての成膜材料を混合して蒸発源に収納する一元の真空蒸着を行う装置であってもよく、あるいは、三元以上の真空蒸着を行う装置であってもよいが、好ましくは、複数の成膜材料を別々の蒸発源に収納する、二元あるいはそれ以上の多元の真空蒸着装置である。
【0029】
また、本発明においては、好適な一例として、蛍光体成分となる臭化セシウム(CsBr)と、付活剤成分となる臭化ユーロピウム(EuBrx(xは、通常、2〜3であり、特に2が好ましい)とを成膜材料として用い、抵抗加熱による二元の真空蒸着を行って、基板70に蓄積性蛍光体であるCsBr:Euからなる蛍光体層を成膜して、放射線像変換パネルを作製する。
また、成膜中に不活性ガスの導入を行なうためのガス導入ノズル19を有する製造装置10は、好ましくは、一旦、真空チャンバ12内を高真空度まで排気した後、排気を行ないつつガス導入ノズル19によって不活性ガスを導入して真空チャンバ12内を0.1Pa〜10Pa程度の真空度(以下、中真空という)とし、この中真空下で、加熱蒸発部16において抵抗加熱によって成膜材料(臭化セシウムおよび臭化ユーロピウム)を加熱蒸発して、基板保持搬送機構14によって基板70を直線状に搬送(以下、直線搬送という)しつつ、真空蒸着による基板70への蛍光体層の成膜を行なう。
【0030】
また、本発明においては、蛍光体層を形成する輝尽性蛍光体として、各種のものが利用可能であるが、例えば、下記の輝尽性蛍光体が好ましく例示される。
例えば、米国特許第3、859、527号明細書に記載されている輝尽性蛍光体である、「SrS:Ce、Sm」、「SrS:Eu、Sm」、「ThO2:Er」、および、「La22S:Eu、Sm」。
【0031】
特開昭55−12142号公報に開示される、「ZnS:Cu、Pb」、「BaO・xAl23:Eu(但し、0.8≦x≦10)」、および、一般式「MIIO・xSiO2:A」で示される輝尽性蛍光体。
(上記式において、MIIは、Mg、Ca、Sr、Zn、CdおよびBaからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Ce、Tb、Eu、Tm、Pb、Tl、BiおよびMnからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0.5≦x≦2.5である。)
【0032】
特開昭55−12144号公報に開示される、一般式「LnOX:xA」で示される輝尽性蛍光体。
(上記式において、Lnは、La、Y、GdおよびLuからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、ClおよびBrの少なくとも一種であり、Aは、CeおよびTbの少なくとも一種である。また、0≦x≦0.1である。)
【0033】
特開昭55−12145号公報に開示される、一般式「(Ba1-x、M2+x)FX:yA」で示される輝尽性蛍光体。
(上記式において、M2+は、Mg、Ca、Sr、ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、YbおよびErからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦x≦0.6であり、0≦y≦0.2である。)
【0034】
特開昭59−38278号公報に開示される、一般式「xM3(PO42・NX2:yA」または「M3(PO42・yA」で示される輝尽性蛍光体。
(上記式において、MおよびNは、それぞれ、Mg、Ca、Sr、Ba、ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、F、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Sb、Tl、MnおよびSnからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦x≦6、0≦y≦1である。)
【0035】
一般式「nReX3・mAX’2:xEu」または「nReX3・mAX’2:xEu、ySm」で示される輝尽性蛍光体。
(上記式において、Reは、La、Gd、YおよびLuからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Ba、SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、XおよびX’は、それぞれ、F、Cl、およびBrからなる群より選択される少なくとも一種である。また、1×10-4<x<3×10-1であり、1×10-4<y<1×10-1であり、さらに、1×10-3<n/m<7×10-1である。)
【0036】
特開昭61−72087号公報に開示される、一般式「MIX・aMIIX’2・bMIIIX''3:cA」で示されるアルカリハライド系輝尽性蛍光体。
(上記式において、MI は、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、MIIは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、CuおよびNiからなる群より選択される少なくとも一種の二価の金属であり、MIIIは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、GaおよびInからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、X、X’およびX''は、F、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu、BiおよびMgからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦a<0.5であり、0≦b<0.5であり、0<c≦0.2である。)
【0037】
特開昭56−116777号公報に開示される、一般式「(Ba1-X、MIIX)F2・aBaX2:yEu、zA」で示される輝尽性蛍光体。
(上記式において、MIIは、Be、Mg、Ca、Sr、ZnおよびCdからなる群より選択される少なくとも一種であり、Xは、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、ZrおよびScの少なくとも一種である。また、0.5≦a≦1.25であり、0≦x≦1であり、1×10-6≦y≦2×10-1であり、0<z≦1×10-2である。)
【0038】
特開昭58−69281号公報に開示される、一般式「MIIIOX:xCe」で示される輝尽性蛍光体。
(上記式において、MIIIは、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびBiからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、Xは、ClおよびBrの少なくとも一種である。また、0≦x≦0.1である。)
【0039】
特開昭58−206678号公報に開示される、一般式「Ba1-xMaLaFX:yEu2+」で示される輝尽性蛍光体。
(上記式において、Mは、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、Lは、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、Xは、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種である。また、1×10-2≦x≦0.5であり、0≦y≦0.1であり、さらに、aはx/2である。)
【0040】
特開昭59−75200号公報に開示される、一般式「MIIFX・aMIX’・bM’IIX''2・cMIII3・xA:yEu2+」で示される輝尽性蛍光体。(上記式においてMIIは、Ba、SrおよびCaからなる群より選択される少なくとも1種であり、MIは、Li、Na、K、RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、M’IIは、BeおよびMgの少なくとも一方の二価の金属であり、MIIIは、Al、Ga、In、およびTlからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、Aは、金属酸化物であり、X、X’およびX''は、それぞれ、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦a≦2であり、0≦b≦1×10-2であり、0≦c≦1×10-2であり、かつ、a+b+c≧10-6であり、さらに、0<x≦0.5であり、0<y≦0.2である。)
【0041】
特に、優れた輝尽発光特性を有し、かつ、本発明の効果が良好に得られる等の点で、特開昭61−72087号公報に開示されるアルカリハライド系輝尽性蛍光体は好ましく例示され、中でも特に、MIが、少なくともCsを含み、Xが、少なくともBrを含み、さらに、Aが、EuまたはBiであるアルカリハライド系輝尽性蛍光体は好ましく、その中でも特に、一般式「CsBr:Eu」で示される輝尽性蛍光体が好ましい。
【0042】
本実施形態において、真空チャンバ12は、鉄、ステンレス、アルミニウム等で形成される、真空蒸着装置で利用される公知の真空チャンバ(ベルジャー、真空槽)である。
真空チャンバ12の一方の側面12bには、真空ポンプ18がディフューザ18aを介して接続されている。この真空ポンプ18は、例えば、油拡散ポンプが用いられる。なお、真空ポンプ18は、特に限定されるものではなく、必要な到達真空度を達成できるものであれば、真空蒸着装置で利用されている各種のものが利用可能である。一例として、クライオポンプ、ターボモレキュラポンプ等を利用することができ、さらに補助として、クライオコイル等を併用してもよい。なお、蛍光体層を成膜する製造装置10においては、真空チャンバ12内の到達真空度は、8.0×10-4Paより高い真空度が得られるものであることが好ましい。
【0043】
また、真空チャンバ12の一方の側面12bに対向する他方の側面12cには、扉13が開閉自在に設けられている。
本実施形態においては、扉13を開けて、真空チャンバ12内に基板70の搬入、および成膜材料の搬入などが行われる。また、扉13を閉じ、真空チャンバ12を閉塞して真空蒸着などが行われる。
【0044】
ガス導入ノズル19も、ボンベとの接続手段およびガス流量の調整手段等を有する(もしくは、これらに接続される)、真空蒸着装置またはスパッタリング装置等で用いられている公知のガス導入手段であり、前記中真空での真空蒸着による蛍光体層の成膜を行うために、アルゴンガス(Arガス)、窒素ガスまたはその他希ガス等の不活性ガスを真空チャンバ12内に導入する。この不活性ガスとは、真空蒸着の際に、基板70および蛍光体層と反応しないガスのことである。
このガス導入ノズル19の開口部(ガス導入口)19aを介して、不活性ガスが真空チャンバ12内に導入される。ガス導入ノズル19(開口部19a)は、例えば、加熱蒸発部16の近傍、かつ真空チャンバ12の底面12aに設けられている。
【0045】
基板保持搬送機構14は、基板70を基板ホルダ39ごと保持して、直線搬送するものであり、図2に模式的に示すように、駆動手段22と、リニアモータガイド24と、基板保持手段26とから構成される。なお、図2(a)は、図1(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の基板保持搬送手段を示す模式的平面図であり、(b)は、図1に示す放射線像変換パネル製造装置の基板保持搬送手段を示す模式的正面図であり、(c)は、図1に示す放射線像変換パネル製造装置の基板保持搬送手段を示す模式的側面図である。
【0046】
駆動手段22は、基板保持手段26を基板70の基板搬送方向(以下、搬送方向という)Mに移動(往復動)するもので、基板70の搬送方向Mに延在して保持部材30によって回転自在に軸支されるネジ軸32a、およびネジ軸32aに螺合するナット部32bからなるボールネジ32と、前記ネジ軸32aを回転するモータ34とからなる、ボールネジを用いる公知の直線状の移動機構である。
なお、本発明において、駆動手段はボールネジ32とモータ34とを利用するものに限定はされず、シリンダを利用する搬送手段、モータとモータによって回転されるリング状のチェーンを用いる搬送手段など、必要な耐熱性を有するものであれば、公知の直線状の移動(搬送)手段が、各種利用可能である。
【0047】
リニアモータガイド24(以下、LMガイド24という)は、駆動手段22による基板保持手段26(すなわち基板70)の直線搬送を補助するもので、ガイドレール24aと、長手方向に移動自在にガイドレール24aに係合する係合部材24bとからなる、公知のリニアモータガイドである。
ガイドレール24aは、基板70の搬送方向Mに延在して、前記ネジ軸32aを軸とする対象位置に離間して2本が配置され、共に、真空チャンバ12の天井面に固定される。一方、係合部材24bは、各ガイドレール24aに2つずつ係合するように、合計4つが基板保持手段26(後述する基台36の上面)に固定される。
【0048】
基板保持手段26(以下、保持手段26という)は、基板ホルダ39ごと基板70を保持して、前記LMガイド24によって案内されつつ前記駆動手段22によって直線状で移動されるものであり、基台36と、保持機構38と、防熱部材40を有して構成される。
【0049】
基台36は、製造装置10が適正に設置された状態で水平となる長方形状の平板状部材である。
基板36の上面の中心には、前記ボールネジ32のナット部32bが固定され、また、基板36の上面の対角線上の対称位置には、2本のガイドレール24aの間隔に応じて前記LMガイド24の係合部材24bが固定される。
【0050】
保持機構38は、取付部材38aと保持部材38bとから構成され、基台36の角部に4つが配置される。
取付部材38aは、矩形の断面略C字状の形状を有するものである。この取付部材38aは、C字開放部を内側に向けて、搬送方向Mと直交方向の外方からC字天井面の一部を基台36の角部に載置して、基台36に垂下するようにして固定される。従って、保持手段26は、基台36の下部には、基台36の面積よりも広い空間を有している。
【0051】
保持部材38bは、下端に基板ホルダ39(基板70)の保持手段を有するものであり、取付部材38aに垂下して固定される。すなわち、基板ホルダ39(基板70)を保持する保持機構38は、基台36に角部近傍で垂下される。
【0052】
本発明において、保持部材38bによる基板ホルダ39(基板70)の保持方法には特に限定はなく、治具等を用いる方法、静電気を利用する方法、吸着を利用する方法等、上面から板状物を保持する公知の方法が各種利用可能である。また、基板70への蛍光体層の蒸着領域等に応じて可能であれば、治具等を用いて、下方から基板ホルダ39(基板70)の四隅を押さえる保持手段、下方から基板ホルダ39(基板70)の四辺を押さえる保持手段等を利用してもよい。
また、取付部材38aと保持部材38bとの間にスペーサを入れる、ネジによる調整手段を設ける、シリンダによる昇降手段を設ける等の方法で、保持部材38bの下端位置すなわち基板70を保持/搬送する高さを調整可能にしてもよい。
【0053】
前述のように、基台36は、駆動手段22によって直線搬送される。従って、基板保持搬送機構14は、保持機構38によって例えば、基板ホルダ39(基板70)の四隅近傍を保持し、保持手段26を駆動手段22によって搬送することにより、基板70を基板ホルダ39ごと直線搬送する。
本発明においては、このように基板70を直線搬送しつつ、抵抗加熱による中真空の真空蒸着によって蛍光体層を形成することにより、結晶性が良好で、膜厚分布均一性の高い蛍光体層の形成を実現している。
【0054】
例えば、ラインセンサによる放射線画像の読み取りが想定される放射線像変換パネルの蛍光体層には、±3%以内、好ましくは±2%以内の高い膜厚分布均一性が要求される。
蛍光体層の形成を真空蒸着で行う場合には、全面的に膜厚が均一な蛍光体層を形成するために、通常、基板を回転して成膜を行う。ここで、基板70を回転させると、半径方向で基板表面(成膜面)の速度(線速)が異なる。
【0055】
電子線加熱による蒸着では、高い真空度で蒸着を行うので、基板と蒸発源(成膜材料の加熱蒸発部=ルツボ)とを充分に離間して配置できる。その結果、成膜材料の蒸気を充分に拡散した状態で、基板の全面に対して蒸気を均一に暴露することができるので、この半径方向での基板表面の速度の違いは大きな問題にはならず、特に、基板の高速回転を行うことにより、高い膜厚分布均一性を確保できる。
【0056】
ここで、本発明の製造方法で好適に形成される前記各種の蓄積性蛍光体からなる蛍光体層、特にアルカリハライド系蓄積性蛍光体からなる蛍光体層、中でも特にCsBr:Euからなる蛍光体層を、真空蒸着によって形成(成膜)する際には、一旦、系内を高い真空度に排気した後、排気を維持した状態でArガスまたは窒素ガス等の不活性ガスを系内に導入して、0.1〜10Pa程度の中真空、特に0.5〜3Pa程度の中真空として蛍光体層を形成するのが好ましい。
これにより、良好な柱状の結晶構造を有する蛍光体層を形成することができ、輝尽発光特性および画像鮮鋭性が優れた放射線像変換パネルを製造することができる。
【0057】
本発明の製造装置10は、基本的に、このような中真空での蛍光体層の形成を行うものであり、ガス導入ノズル19(開口部19a)から真空チャンバ12内に不活性ガスを導入しつつ中真空で抵抗加熱によって真空蒸着を行う。
この程度の中真空での真空蒸着では、蒸発した成膜材料を確実に基板70に到達させるためには、通常に比して、大幅に蒸発源と基板70との距離を、例えば、100mm程度に短くする必要がある。そのため、蒸発源の蒸気が充分に拡散する前に基板70に至ってしまう。従って、回転する基板の全面に均一に対面するように半径方向に直線状に蒸発源を配列しても、基板面の線速の違いによって、半径方向で蒸発源との対面時間に差が生じ、これにより半径方向に蒸気の暴露量に差が生じてしまい、この差が、そのまま膜厚の差となってしまう。
すなわち、基板を回転して行う中真空の真空蒸着では、基板の全面に均一に蒸気を暴露するためには、加熱蒸発部における蒸発源の配置を工夫する必要があり、例えば、±3%以内の高い膜厚分布均一性を実現するためには、蒸発源の位置設定が非常に困難である。
【0058】
これに対し、本発明の製造装置10においては、このように基板ホルダ39ごと基板70を直線搬送しつつ真空蒸着によって蛍光体層の形成を行うことにより、基板70表面における移動速度を全面的に均一にできる。
従って、搬送方向Mと直交する方向Hにおける成膜材料の蒸発量を均一にするだけで、基板70の全面的に均一に成膜材料の蒸気を暴露することができ、簡易な蒸発源の位置設定でも、膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成できる。しかも、直線搬送の往復搬送を行って成膜を行うことにより、微量成分であるユーロピウム(付活剤)の蛍光体層中における分散状態も、好適にできる。
【0059】
なお、本発明において、必要な膜厚の蛍光体層を形成できれば、成膜中における基板70の直線搬送は、1回の直線搬送でも、1回の往復動(往復搬送)でも、往復動を複数回行ってもよい。また、基板の搬送経路は、おおむね直線状であれば、多少、ジグザグ状であっても、波打つような経路であってもよい。
一般的に、同じ膜厚であれば、加熱蒸発部16の上部の通過回数が多い程、膜厚分布均一性を高くできるので、複数回の往復動を行って蛍光体層を形成するのが好ましい。また、往復動の回数は、蛍光体層の目的膜厚または目的とする膜厚分布均一性等に応じて、適宜、決定すればよく、最後の搬送は一方向でもよい。直線搬送の搬送速度にも、特に限定はなく、LMガイド24の速度限界、往復動の回数、目的とする蛍光体層の膜厚等に応じて、適宜、決定すればよい。
【0060】
基板ホルダ39(基板70)を保持する保持手段26において、上面にボールネジ32のナット部32bおよびLMガイド24の係合部材24b等が固定される基台36の直下には、防熱部材40が配置される。ここで、前述のように、図示例の製造装置10においては、略C字状の取付部材38aを用いて保持部材38bを基台36から垂下した状態で固定することにより、基台36の下部に基台36よりも広い空間を有している。これを利用して、図示例においては、防熱部材40の面積を基台36の面積より大きくして、充分な余裕を持って基台36の下面全面を防熱部材40で覆っている。
防熱部材40は、後述する加熱蒸発部16(蒸発源)に対して基台36を覆うことにより、加熱蒸発部16からの輻射熱等によって、LMガイド24の係合部材24bおよびボールネジ32のナット部32bが加熱されるのを防止するものである。
【0061】
先の説明から明らかなように、高い輝尽発光特性および画像鮮鋭性を実現可能な優れた結晶構造を有し、かつラインセンサによる高精度な放射線画像の読み取りが可能な膜厚均一性に優れた放射線像変換パネルを製造するためには、基板ホルダ39(基板70)を直線搬送しつつ、抵抗加熱による中真空での真空蒸着を行なう必要がある。
【0062】
ここで、周知のように、LMガイド24の係合部材24bおよびボールネジ32のナット部32bには、円滑な移動を可能にするためにボールが組み込まれ、また、ボールの円滑な回転を可能にするために、グリス等の潤滑剤が注入される。また、ボールを有さなくても、円滑な駆動を可能にするために、通常、駆動手段および搬送ガイド手段の摺動部にはグリス等の滑剤が注入される。ところが、前述のような中真空での真空蒸着では、蒸発源と基板70との距離を短くする必要があるため、LMガイド24等に注入されるグリス等の滑剤が加熱されて溶融状態となって、蒸発源等に滴下してしまう場合がある。
防熱手段40は、このような不都合が生じるのを防止するためのものである。
【0063】
防熱部材40には、特に限定はなく、加熱蒸発部16からの輻射熱を遮蔽して、係合部材24bおよびナット部32b、またさらに基台36が加熱されることを防止できれば、各種のものが利用可能である。一例として、ステンレス板、鋼板、アルミニウム板、モリブデン板等が例示される。なお、固定方法は、防熱部材40に応じて、適宜、決定すればよい。
また、必要に応じて、防熱部材40に接触するパイプに冷水を流す、板材(防熱部材40)の内部をくり抜いて水を流す等の手段によって、防熱部材40の冷却手段を設けてもよい。
【0064】
前述のように、図示例においては、好ましい態様として、防熱部材40は基台36よりも大きな面積を有し、LMガイド24の係合部材24bおよびボールネジ32のナット部32bが固定される基台36の下面全面を覆って配置される。しかしながら、本発明は、これに限定はされず、例えば、LMガイド24の係合部材24bに対応する領域、あるいはさらにボールネジ32のナット部32bに対応する領域のみを、加熱蒸発部16に対して防熱部材で覆ってもよい。
但し、係合部材24bおよびナット部32bの加熱をより好適に防止するためには、図示例のように、これらに熱を伝達する可能性のある部材は、加熱蒸発部16に対して可能な限り防熱部材40で覆うのが好ましい。
【0065】
真空チャンバ12の下方には、加熱蒸発部16が配置される。
加熱蒸発部16は、抵抗加熱によって、蛍光体層を形成するための成膜材料である臭化セシウムおよび臭化ユーロピウムを蒸発させる部位である。この加熱蒸発部16により、臭化セシウムおよび臭化ユーロピウムの蒸気(成膜材料蒸気)からなる蒸着場が形成される。
【0066】
前述のように、製造装置10は、好ましい態様として、蛍光体成分である臭化セシウムと、付活剤成分である臭化ユーロピウムとを、独立して加熱蒸発する、二元の真空蒸着を行うものである。従って、加熱蒸発部16には、臭化セシウム用(蛍光体用)の蒸発源となるルツボ(容器)50、および、臭化ユーロピウム用(付活剤用)の蒸発源となるルツボ(容器)52が配置される。
【0067】
このようなルツボ50および52は、真空蒸着における抵抗加熱蒸発源用のルツボと同様、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)などの高融点金属で形成され、電極(図示省略)から通電されることにより自身が発熱し、充填された成膜材料を加熱/溶融して、蒸発させるものである。
また、本発明において、抵抗加熱用の電源(加熱制御手段)には、特に限定はなく、サイリスタ方式、DC方式、熱電対フィードバック方式等、抵抗加熱装置で用いられる各種の方式が利用可能である。また、抵抗加熱を行なう際の出力にも特に限定はなく、使用する成膜材料、ルツボの形成材料の抵抗値または発熱量等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0068】
蓄積性蛍光体において、付活剤と蛍光体とは、例えばモル濃度比で0.0005/1〜0.01/1程度と、蛍光体層の大部分が蛍光体である。
そのため、図示例においては、消費量の多い臭化セシウム(蛍光体用)のルツボ50は、円筒状(ドラム型)の大型のルツボを用いている。このルツボ50は、ドラムの側面に、ドラムの軸線方向に延在するスリット状の開口を有し、この開口に一致して、開口と同形状の上下開口面を有する四角筒状のチムニー50aを蒸気排出部として設けている。
他方、消費量の少ない臭化ユーロピウム用(付活剤用)のルツボ52は、通常のボート型のルツボの上面を、先と同様のチムニー52aを有する蓋体で閉塞してなる小型のルツボを用いている。
このようなスリット状のチムニーを有するルツボを用いることにより、ルツボ内における局所加熱または異状加熱によって突沸が生じた際に、成膜材料が不意にルツボから飛び出して周囲または基板70に付着して、汚染することを防止できる。特に、抵抗加熱を利用する中真空の蒸着では、前述のように、基板70と蒸着源とを近接して配置する必要があるので、その効果は大きい。
【0069】
ここで、製造装置10においては、ルツボ50および52を、基板70の搬送方向Mと直交する方向H(以下、配列方向Hという)に複数配列することにより、配列方向Hにおける成膜材料の蒸発量を均一にして、直線搬送される基板70の全面に均一に成膜材料蒸気を供給して、例えば、膜厚分布均一性が±3%以下の蛍光体層を形成している。なお、各ルツボは、離間させるか、または絶縁材の挿入等によって、互いに絶縁状態に有する。
【0070】
加熱蒸発部16の模式的平図である図3に示すように、図示例においては、一例として、臭化セシウム用のルツボ50は、円筒(ドラム)の軸線方向を配列方向Hに一致して、6つが配列されている。ルツボ50において、電極は円筒の端面に形成されており、個々のルツボ50で独立して電源に接続される。また、各ルツボ50に対応して、臭化セシウムの蒸発量を測定するための水晶振動子センサ54が配置され(図1(a)および(b)では、装置の全体構成を明瞭にするために省略)、この蒸発量の測定結果に応じて、ルツボ50への通電量が制御される。なお、蒸発量の制御は、温度センサによって行ってもよい。
他方、ボート型のルツボである臭化ユーロピウム用のルツボ52も、長手方向を配列方向Hに一致して、6つが配列される。ルツボ52も、配列方向Hの両端に電極が形成され、個々に独立した電源が接続される。
【0071】
図示例においては、好ましい態様として、1つのルツボ50とルツボ52とを対として、すなわち、蛍光体の成膜材料である臭化セシウムの1つの蒸発源と付活剤の成膜材料である臭化ユーロピウムの1つの蒸発源を対として、両者が基板70の直線搬送方向Mに並ぶように配置し、さらに、より好ましい態様として、両者を装置およびルツボの構成上、可能な限り近接して配置している。
このような構成とすることにより、母体となる臭化セシウム蒸気中に、臭化ユーロピウム蒸気を充分に分散して、微量成分であるユーロピウム(付活剤)を蛍光体層中に均一に分散し、輝尽発光特性等の良好な蛍光体層を形成できる。
【0072】
また、ルツボ50の列およびルツボ52の列においては、共に、配列されるルツボは、装置およびルツボの構成上、可能な限り配列方向Hに近接して配置され、かつルツボの列は、基板70の配列方向Hのサイズを充分に包含する長さとするのが好ましい。
このような構成とすることにより、配列方向Hにおける成膜材料の蒸発蒸気量を均一にして、より膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成することができる。
【0073】
このような配列方向Hへのルツボの列は、1つであってもよく、図示例のように2列であってもよく、さらに、3列以上であってもよい。
ここで、複数列のルツボの列を有する場合には、各ルツボの列は、基板70の搬送方向Mから見た際に、他のルツボの列の成膜材料蒸気の排出口(前記スリット状のチムニー)の配列方向Hの間隙を、互いに埋めるように配置するのが好ましく、さらに、異なる列で成膜材料蒸気の排出口が搬送方向Mに重ならないように配置するのがより好ましい。言い換えれば、搬送方向Mから見た際に、各ルツボの列で、成膜材料蒸気の排出口が互い違いとなるようにするのが好ましい。図示例においては、配列方向Hへの2列のルツボの列において、搬送方向Mから見た際に、一方のルツボ列の電極位置に他方のルツボ列の蒸気排出口が位置するように、各ルツボの列を配列している。
このような構成とすることにより、配列方向Hにおける成膜材料の蒸発蒸気量を均一にして、より膜厚分布均一性の高い蛍光体層を形成することができる。
【0074】
さらに、配列方向Hへのルツボの列を複数有する場合には、搬送方向Mの外側に蒸発量の多い臭化セシウム(付活剤)用のルツボ50の列を位置するのが好ましい。
このような構成とすることにより、蒸発量の多い臭化セシウムの蒸発量センサを、搬送方向Mに対してルツボの列の外側の開いている空間に配置することができ、すなわち、蒸発量センサの選択自由度、製造装置10の設計自由度を向上することができる。
【0075】
なお、図示は省略するが、製造装置10の加熱蒸発部16は、全ルツボを水平方向の4方で囲む、ルツボの最上部よりも高い四角筒状の防熱板が配置され、かつ、この防熱板の上部開放面を閉塞/開放自在に、成膜材料蒸気を遮蔽するためのシャッタ(図示せず)が配置される。
【0076】
また、本実施形態においては、基板70の表面(蛍光体層の形成面)に付着しているゴミ、埃を取り除く工程、すなわち、除塵工程に、図4に模式的に示すようなクリーニングローラ60が用いられる。このクリーニングローラ60は、対をなす折曲部62aと、各折曲部62aに接続された基部62bとからなるコ字形状のフレーム62を有する。このフレーム62の折曲部62aに回転軸64が軸支されており、この回転軸64にはローラ部66が設けられている。また、フレーム62の基部62bにはハンドル68が設けられている。
ローラ部66は、オペレータにより、基板70の表面70dに接触されることにより、基板70の表面のゴミ、および埃を除去するものであり、所定の粘着力を有するものである。
【0077】
クリーニングローラ60のローラ部66は、例えば、ブチルゴム、シリコンおよびウレタンゴムのうち、少なくとも1種を主成分とするものからなるものである。
また、クリーニングローラ60のローラ部66が、例えば、ブチルゴムを用いたものである場合、宮川ローラー株式会社製の粘着ローラ(商品名:ミモザ B)を用いることが好ましい。
さらに、クリーニングローラ60においては、ローラ部66の硬度(Hs JIS−A)は、30°程度が好ましく、JIS Z0237で規定される粘着力は91hPa程度であることが好ましい。
【0078】
本実施形態の製造装置10は、上述のように、中真空での真空蒸着を行うものであり、蒸発した成膜材料を確実に基板70に到達させるためには、通常に比して、加熱蒸発部16(蒸発源)と基板70との距離を、例えば、100mm程度に短くする必要がある。このため、基板70と蒸発源との間に洗浄装置を設けることが困難である。また、真空チャンバ12内に洗浄装置を設けた場合、装置が大型化し、コストも嵩む。本実施形態においては、除塵手段として、クリーニングローラ60を用いることにより、安価にかつ確実に、基板70の表面70dを除塵することができる。
本実施形態においては、基板70を基板保持搬送機構14に保持させて、真空チャンバ12内にセットし、蛍光体層を形成するための成膜材料を充填した後、扉13を閉めて真空チャンバ12を閉塞する前に、真空チャンバ12内が大気圧の状態で、クリーニングローラ60により、基板70の表面70dが除塵される。
【0079】
ここで、クリーニングローラ60(ローラ部66)による除塵は、基板70の蛍光体層の形成領域(図示例においては、マスクとなる基板ホルダ39の枠内)の全面をくまなく行なってもよいが、好ましくは、蛍光体層の形成領域の端部近傍は除塵を行なわず(ローラ部66を接触させず)、蛍光体層の形成領域の中央部(以下、基板の中央部とも言う)のみを除塵するのが好ましい。
特に、図5に示すように、蛍光体層の形成領域の全長をa、端部近傍の除塵を行なわない領域の幅(端部から内側への距離)をbとした際に、「0.03≦b/a≦0.4」、中でも特に「0.1≦b/a≦0.2」を満たすように、クリーニングローラ70による除塵を行なうのが好ましい。なお、蛍光体層の形成領域が長方形の場合には、蛍光体層14の形成領域と除塵を行う蛍光体層の中央部の領域とが、相似形であること、すなわち、b/aの値が4辺とも等しいことが好ましい。しかし必ずしも等しい必要はなく、4辺のそれぞれが上記式を満たすように、除塵領域を決定すればよい。
また、円形の場合には、直径を全長aとして、上記式を満たすように、除塵領域を決定すればよい。
【0080】
また、基板70は、クリーニングローラ60による除塵に先立ち、プラズマ洗浄を行なって、基板表面の清浄化し、かつ、親水性を向上するのが好ましい。なお、後述するブロア(気体吹付手段)、除電装置、イオンエアー発生装置等を利用する除塵を行なう場合にも、除塵に先立ってプラズマ洗浄を行なうのが好ましい。
なお、プラズマ洗浄は、真空チャンバ12内で行なう必要な無く、外部のプラズマ洗浄装置でプラズマ洗浄を行なった後、基板70を真空チャンバ12内にセットすればよい。あるいは、製造装置10がプラズマ洗浄機能を有していれば、真空チャンバ12内でプラズマ洗浄を行なってもよい。
【0081】
一般的に、基板70の表面の親水性が高い方が、良好な基板70と蛍光体層との密着力を得ることができる。
そのため、気相堆積法によって蛍光体層を形成する放射線像変換パネルの製造においては、基板70の表面(蛍光体層の形成面)にプラズマ洗浄を行なって、基板70表面の有機汚染物質の除去および表面改良を行なって、基板70の表面を親水性とした後に、蛍光体層の形成を行なうのが好ましい。また、プラズマ洗浄に先立ち、必要に応じて、基板70の表面をアセトン等の有機溶剤で洗浄するのも好ましい。
なお、この基板70の表面の親水性の程度には限定は無いが、22μL(マイクロリットル)の水を基板70に滴下した際に、基板表面の水滴径が7mm以上、特に10mm以上となる程度の親水性であるのが好ましい。
【0082】
ところが、このようにして基板70の表面に親水性を付与した後に、クリーニングローラ60によって基板70の表面の除塵を行なうと、ローラ部66の粘着成分が基板70に転写されてしまう場合がある。
この粘着成分の転写は、微量であっても基板70の親水性に大きな悪影響を与え、基板70の親水性が低下してしまい、その結果、基板70と蛍光体層との密着力に悪影響を与えてしまう。
【0083】
基板70と蛍光体層との密着力が不十分であると、蛍光体層が基板70から剥離してしまう場合があるが、この剥離は、大部分が蛍光体層の端部から生じる。
言い換えれば、端部近傍の密着力さえ十分であれば、全体的な基板70と蛍光体層との密着力を十分なものにでき、すなわち、蛍光体層の剥離は防止できる。
【0084】
従って、基板70の蛍光体層の形成領域の端部近傍は、クリーニングローラ60による除塵を行なわず(ローラブ66を接触させず)、基板70の中央部のみ除塵することにより、端部近傍での基板70と蛍光体層との密着力を向上して、蛍光体層の密着力を十分に確保することができる。特に、蛍光体層の形成領域の全長をa、端部近傍の除塵を行なわない領域の幅をbとした際に、「0.03≦b/a≦0.4」、中でも特に「0.1≦b/a≦0.2」を満たすように、クリーニングローラ60による除塵を行うことにより、蛍光体層の十分な密着力と、基板70に付着した塵等によって生じるヒロックに起因する画像欠陥の低減効果との両立を好適に図ることができ、蛍光体層の密着力に優れ、かつ、ヒロックに起因する画像欠陥の少ない、高品質な放射線像変換パネルを製造できる。
また、基板70に付着した塵等によって生じるヒロックに起因する画像欠陥も、放射線像変換パネルの端部近傍であれば、重大な問題になることはなく、また、端部であれば画像処理による補正を容易である。
【0085】
本実施形態においては、基板70は、例えば、金属または合金からなるものであり、薄い板状部材またはシート部材である。また、基板70は、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス鋼、銅、クロムまたはニッケルなどを用いることができる。なお、本実施形態においては、基板70は、アルミニウムまたはアルミニウム合金により構成されることが好ましい。
また、基板70としては、ガラス、セラミックス、カーボン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド等、放射線像変換パネルで利用されている各種のシート状の基板を全て利用することができる。
なお、基板70は、その表面に、基板の基材を保護するためのSiO2、Al 、TiO 、SiN、高分子等の保護層や、輝尽発光光を反射するための反射層を有してもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、搬送を容易にするために、図6に示すように、基板70には、1つの側面70aに、2つのめねじ部72を所定の間隔をあけて形成し、また、側面70aに対向する他の側面70bにも、側面70aと同様に、2つのめねじ部72を所定の間隔をあけて形成したものを用いることが好ましい。
基板70においては、各めねじ部72に、基部78aおよびおねじ部78bにより構成されるピン76が、それぞれ螺合される。また、ピン76には十字状(プラス)の溝78c形成されており、これにより、プラスのドライバによりめねじ部72にピン76を容易に螺合させるこができる。
【0087】
さらに、基板70において、側面70a、および側面70bとは異なる端面70cに、ロットナンバーなどの識別情報を表わす記号74が、例えば、刻印により形成されている。これにより、基板70を特定することができ、製造工程において、管理することができる。
なお、端面70cに記録する記号74は、例えば、数字および文字を組み合わせたものである。また、記号74は、サンドブラストなどの加工方法により形成してもよい。
【0088】
さらに、本実施形態においては、基板70に設けられたピン76は、搬送機(図示せず)による基板70の搬送に用いられるものである。基板70は、蛍光体層形成工程以降の工程においては、ピン76が取り付けられた状態で搬送機により搬送される。
本実施形態においては、基板70は、例えば、450mm×450mm×10mm程度の大きさであり、アルミニウム合金の場合、その質量は約6kgとなる。
このため、放射線像変換パネルの製造工程において、オペレータが基板70を運ぶ場合、労働負担が大きいととともに、基板70は外力を受けると、蛍光体層に亀裂などの欠陥が生じる虞がある。そこで、基板70の搬送には、搬送機を用いることが好ましい。
【0089】
搬送機は、例えば、基板70を挟持し、保持する1対のアーム部80と、このアーム部80を駆動する駆動制御部(図示せず)と、搬送機を工場敷地内で移動させる移動手段(図示せず)とを有するものである。なお、図7に、搬送機のアーム部80だけを示す。
図7に示すように、アーム部80は、腕部82を有し、この腕部82に接続部84を介して保持プレート86が接続されている。この保持プレート86には、ピン76が挿通させる穴88が、ピン76の形成位置に整合する位置に形成されている。
1対のアーム部80は、それぞれ方向mに移動可能であり、1対のアーム部80は、駆動制御部により、相互の間隔を調整することができる。これにより、1対のアーム部80の保持プレート86の穴88に基板70のピン76を挿通させて、基板70を挟持し、保持することができる。
【0090】
本実施形態においては、基板70に蛍光体層71を形成した後、真空チャンバ12から基板ホルダ39ごと基板70を取り出す。
次に、基板70を基板ホルダ39から取り出し、作業台に載置した後、めねじ部72にピン76を螺合して取り付ける。
次に、搬送機により、1対のアーム部80の保持プレート86の穴88に基板70のピン76を挿通させ、1対のアーム部80で、側面70a、70bを挟持して、基板70を保持する。そして、搬送機により、行われる熱処理を実施する熱処理装置まで基板70を搬送する。
【0091】
本実施形態の製造装置10においては、蛍光体層71の形成時には、異常核結晶の発生が抑制され、ヒロックなどの発生を抑制することができる。このため、膜厚分布均一性が高く、かつ良好な結晶性の輝尽発光特性および画像鮮鋭性が優れた蛍光体層71を得ることができる。最終的に、点欠陥が少なく高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90を製造することができる。
また、前述のように、蛍光体層の形成領域の端部近傍はクリーニングローラでの除塵を行なわず、中央部のみを除塵することにより、前記ヒロックの発生を防止すると共に、良好な蛍光体層と基板70との密着力を得ることができる。
【0092】
次に、製造装置10を用いた本発明の第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法について説明する。
第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法においては、図8に示すような基板70と、この基板70上に形成された蛍光体層71と、この蛍光体層71上に形成され、蛍光体層71を封止する防湿保護層79とを有する放射線像変換パネル90の製造方法について説明する。
【0093】
予め、基板70(図1(a)参照)を基板ホルダ39(図1(a)参照)にセットしておく。
次に、基板70を基板ホルダ39ごと、プラズマ洗浄装置(図示せず)にセットし、基板70の表面70d(蛍光体層71(図8参照)の形成面)をプラズマ洗浄する。なお、必要に応じて、プラズマ洗浄に先立ちアセトンなどの有機溶剤で基板70を洗浄してもよい。
次に、真空チャンバ12(図1(a)参照)の扉13(図1(a)参照)を開け、真空チャンバ12を大気開放状態にする。
次に、基板保持搬送機構14の保持手段26(図2(b)参照)の保持部材38b(図2(b)参照)に基板ホルダ39ごと基板70を保持する。
【0094】
次に、全てのルツボ50(図1(a)参照)に臭化セシウムを、全てのルツボ52(図1(a)参照)に臭化ユーロピウムを所定量まで充填した後、すなわち、成膜材料を真空チャンバ12内にセットした後、シャッタ(図示せず)を閉塞する。
次に、真空チャンバ12が大気開放状態で、クリーニングローラ60(図4参照)のローラ部66(図4参照)を、基板70の表面70d(図1(a)参照)に接触させて、基板70の表面70dのゴミ、埃を取り除き、除塵する。そして、真空チャンバ12の扉13を閉めて、真空チャンバ12を閉塞する。
好ましくは、蛍光体層の形成領域(基板ホルダ39の枠内)の端部近傍にはローラ部66を接触せず、基板70の中央部のみを除塵する。
【0095】
次いで、真空ポンプ18(図1(a)参照)を駆動して真空チャンバ12内を排気し、真空チャンバ12内が、例えば、8×10-4Paとなった時点で、排気を継続しつつ、ガス導入ノズル19(図1(b)参照)によって開口部19a(図1(b)参照)を経て真空チャンバ12内に、例えば、Arガスを導入して、真空チャンバ12内の圧力を、例えば、1.0Paに調整し、さらに、抵抗加熱用の電源を駆動して全てのルツボ50およびルツボ52に通電して成膜材料を加熱する。
その後、予め設定した所定時間(例えば、60分)が経過したら、シャッタを開放し、次いで、モータ34を駆動して、所定速度での基板70の直線搬送を開始し、基板70の表面70dへの蛍光体層71(図8参照)の形成を開始する。
【0096】
形成する蛍光体層71の膜厚等に応じて設定された所定回数の直線搬送の往復動が終了したら、基板70の直線搬送を停止し、シャッタを閉塞し、抵抗加熱用の電源を切り、ガス導入ノズル19によるArガスの導入を止める。
次に、窒素ガスまたは乾燥空気を真空チャンバ12内に導入して、真空チャンバ12内を大気圧とする。すなわち、大気開放状態とする。
【0097】
次いで、真空チャンバ12の扉13を開け、蛍光体層71を形成した基板70を基板ホルダ39ごと取り出し、作業台に運ぶ。
次に、基板ホルダ39から基板70を取り外し、基板70の各めねじ部72(図6参照)に、それぞれピン76(図6参照)を螺合して、取り付ける。これにより、搬送機を用いて、基板70の搬送が可能となる。
次に、搬送機により、1対のアーム部80(図7参照)の保持プレート86(図7参照)の穴88(図7参照)に基板70のピン76を挿通させて、側面70a、70b(図7参照)を挟持して、基板70を保持する。
次に、搬送機により、基板70を次工程の熱処理を実施する熱処理装置(図示せず)まで搬送する。
次に、ピン76がついた状態のままで、蛍光体層71に輝尽発光特性を良好に発現させ、かつ、輝尽発光特性を向上させるために、熱処理装置により加熱処理(アニール)を施す。
【0098】
次に、加熱処理終了後、搬送機により、基板70を次工程の防湿保護層79(図8参照)を形成する防湿保護層形成装置(図示せず)まで搬送する。
次に、蛍光体層71の上に、例えば、ディスペンサー等を用いて接着剤を塗布する。
次いで、例えば、ロール状に巻回された防湿保護フィルム(図示せず)を引き出し、熱ラミネーション法により、蛍光体層71の上に防湿保護フィルムを貼り付けて、外縁を基板に密着させて防湿保護層79(図8参照)を形成する。このようにして、図8に示す放射線像変換パネル90を製造することができる。
なお、防湿保護層79は、予め接着剤が塗布された保護フィルムを用いて形成することもできる。
【0099】
また、防湿保護層79を構成する防湿保護フィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、SiO2膜とSiO2とPVA(ポリビニルアルコール)とのハイブリット層とSiO2膜との3層を形成してなる防湿保護層79が例示される。これ以外にも、ガラス板(フィルム)、ポリエチレンテレフタレートまたはポリカーボネート等の樹脂フィルム、樹脂フィルムにSiO2、Al23、SiCなどの無機物質が堆積したフィルム等も好ましく例示される。なお、PETフィルム上に、SiO2膜/SiO2とPVAとのハイブリット層/SiO2膜の3層を形成した防湿保護層79において、例えば、SiO2膜は、スパッタリング法を用いて、SiO2とPVAのハイブリット膜は、PVAとSiO2の比率が1:1となるようにゾル・ゲル法を用いて、それぞれ形成すればよい。また、防湿保護層79は、40℃の温度で相対湿度が90%の環境下において、透湿度が0.2〜0.6(g/(m2・day))であることが好ましい。
【0100】
本実施形態の放射線像変換パネルの製造方法においては、基板70を真空チャンバ12内にセットし、全てのルツボ50に臭化セシウムを、全てのルツボ52に臭化ユーロピウムを所定量まで充填した後に、真空チャンバ12が大気圧の状態で、基板70の表面70dの除塵を行うことにより、基板70のセット、および臭化セシウム、および臭化ユーロピウムの成膜材料の充填などにより、ゴミ、埃などが発生し、このゴミ、埃が基板70の蛍光体層71の形成面に付着した場合であっても、取り除くことができる。これにより、蛍光体層71は、基板70の表面70dに異常核成長の起点となるゴミ、埃が極めて少ない状態で形成される。このため、蛍光体層71の形成時には、異常核結晶の発生が抑制され、ヒロックなどの発生が抑制される。よって、膜厚分布均一性が高く、かつ良好な結晶性の輝尽発光特性および画像鮮鋭性が優れた蛍光体層71を得ることができる。最終的に、点欠陥が少なく高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90を製造することができる。
また、好ましくは、基板70の蛍光体層の形成領域の端部近傍は、クリーニングローラ60による除塵を行なわないことにより、基板70と蛍光体層71との密着力が良好な放射線像変換パネル90を製造することができる。
【0101】
また、本実施形態の放射線像変換パネルの製造方法においては、基板70をセットし、全てのルツボ50に臭化セシウムを、全てのルツボ52に臭化ユーロピウムを所定量まで充填した後(成膜材料を充填した後)に、基板70の除塵を行うことが層好ましい。特に、成膜材料を充填した後、真空チャンバ12の扉13を閉めて、真空チャンバ12を閉塞した状態で、蛍光体層71を形成する直前に、基板70の除塵を行うことがより一層好ましい。これにより、例えば、真空チャンバ12を閉塞した状態で、基板70の表面70dにゴミ、埃などが付着しても取り除くことができる。すなわち、蛍光体層71を形成する直前に除塵することができる。このため、最終的に、より一層点欠陥が少なく高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90を製造することができる。
【0102】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図9(a)は、本発明の放射線像変換パネルの製造方法に用いられる放射線像変換パネル製造装置の第2の実施形態を示す模式的断面図であり、(b)は、図9(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の模式的側断面図である。
本実施形態においては、図1(a)および(b)〜図3に示す放射線像変換パネル製造装置10、図6、図7に示す放射線像変換パネルの基板70、ならびに図8に示す放射線像変換パネル90と同一構成物には、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0103】
図9(a)に示すように、本実施形態の放射線像変換パネルの製造装置10a(以下、製造装置10aともいう)は、第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造装置10(図1(a)および(b)参照)に比して、除塵部92および各種のセンサ(図示せず)が設けられている点が異なり、それ以外の構成は、第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造装置10と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0104】
本実施形態の除塵部92は、基板70の表面70d(蛍光体層71の形成面)を除塵するものであり、真空チャンバ12内の真空ポンプ18の設置側に設けられている。この除塵部92は、ローラ部94を有する。このローラ部94は、垂直方向に対して昇降自在であり、基板70の表面70dに対して接離可能である。また、ローラ部94は、支持部94aと、この支持部94aに回転自在に軸支されたローラ94bとを有する。なお、ローラ94bは、クリーニングローラ60(図4参照)のローラ部66(図4参照)と同様の構成である。
【0105】
本実施形態の製造装置10aにおいては、除塵部92のローラ部94を上方に突出させておき、基板70を真空ポンプ18の設置側に移動させることにより、ローラ94bが基板70の表面70dに接触して、基板70の表面70d(蛍光体層71の形成面)を除塵する。この除塵部92のローラ部94の昇降は制御部20により制御される。すなわち、制御部20により、除塵が制御される。
なお、この際における除塵も、蛍光体層の形成領域(基板ホルダ39の枠内)の端部近傍はローラ94dを接触させず(すなわち除塵を行なわず)、基板70の中央部のみをローラ94dで除塵するのが好ましいのは、先の例と同様である。
【0106】
また、本実施形態の製造装置10aにおいては、例えば、基板保持手段26に基板ホルダ39が設置されたことを検知する第1のセンサ(図示せず)を設けられている。
この第1のセンサは制御部20に接続されており、基板ホルダ39が基板保持手段26に保持された場合には、検知信号が制御部20に出力される。なお、第1のセンサとしては、例えば、近接センサを用いることができる。
【0107】
本実施形態の製造装置10aにおいては、基板ホルダ39が基板保持手段26に保持されたことを示す検知信号が制御部20に出力された後、制御部20が、除塵部92からローラ部94を上方に突出させ、さらには、基板70を真空ポンプ18側に移動させて除塵する。このように、第1のセンサを設けることにより、基板70をセットした後に確実に除塵することができる。
【0108】
また、本実施形態の製造装置10aにおいては、第1のセンサに代えて、あるいは、第1のセンサに加えて、ルツボ(容器)50、52内に成膜材料(臭化セシウム、臭化ユーロピウム)が収納(充填)されたことを検知する第2のセンサ(図示せず)を設けてもよい。
この第2のセンサは制御部20に接続されており、ルツボ(容器)50、52内に成膜材料(臭化セシウム、臭化ユーロピウム)が収納(充填)された場合には、検知信号が制御部20に出力される。この第2のセンサとしては、例えば、ルツボ(容器)50、52の底部にセラミックスなどの耐熱体を介して設けられた歪みゲージを用いることができる。
【0109】
本実施形態の製造装置10aにおいては、ルツボ(容器)50、52内に成膜材料が収納(充填)されたことを示す検知信号が制御部20に出力された後、制御部20が、除塵部92からローラ部94を上方に突出させ、さらには、基板70を真空ポンプ18側に移動させて除塵する。このように、第2のセンサを設けることにより、ルツボ(容器)50、52内に成膜材料が収納(充填)した際に発生する塵または埃を確実に除塵することができる。
【0110】
また、本実施形態の製造装置10aにおいては、第1のセンサに代えて、あるいは第1のセンサに加えて、真空チャンバ12に設けられている真空計を用いてもよい。この場合、真空計で測定された圧力が圧力信号として制御部20に出力されている。真空チャンバ12内の圧力が所定の圧力以下になった場合、制御部20が、除塵部92からローラ部94を上方に突出させ、さらに基板70を真空ポンプ18側に移動させて除塵する。このように、真空チャンバ12内の圧力に基づいて、除塵するため、真空チャンバ12内に残存した塵埃の影響がなく、より一層確実に除塵することができる。
【0111】
また、本実施形態の製造装置10aにおいては、第1のセンサに代えて、あるいは第1のセンサに加えて、真空チャンバ12の扉13の開閉を検知する第3のセンサ(図示せず)を設けてもよい。
この第3のセンサは制御部20に接続されており、扉13が閉じている場合には、検知信号が制御部20に出力される。この第3のセンサとしては、例えば、近接センサを用いることができる。
【0112】
本実施形態の製造装置10aにおいては、真空チャンバ12の扉13が閉じられたことを示す検知信号が制御部20に出力された後、制御部20が、除塵部92からローラ部94を上方に突出させ、さらには、基板70を真空ポンプ18側に移動させて除塵する。このように、第3のセンサを設けることにより、真空チャンバ12の扉13が閉じた後、すなわち、真空チャンバ12を閉塞した状態で除塵するため、真空チャンバ12外から塵埃の進入を抑制した状態で更に確実に除塵することができる。
【0113】
また、本実施形態の製造装置10aにおいては、第1のセンサに代えて、あるいは第1のセンサに加えて、加熱蒸発部16に設けられたシャッタの開閉を検知する第4のセンサ(図示せず)を設けてもよい。
この第3のセンサは制御部20に接続されており、シャッタが開いている場合には、検知信号が制御部20に出力される。この第4のセンサとしては、例えば、フォトインタラプタまたは近接センサを用いることができる。
【0114】
本実施形態の製造装置10aにおいては、加熱蒸発部16のシャッタが閉じられたことを示す検知信号が制御部20に出力された後、制御部20が、除塵部92からローラ部94を上方に突出させ、さらには、基板70を真空ポンプ18側に移動させて除塵する。このように、第4のセンサを設けることにより、除塵を蒸着開始直前に、しかも真空チャンバ12内の真空度が高く、真空チャンバ12内の塵埃が極めて少ない状態で行うことができるため、第1のセンサ〜第3のセンサに比して、極めて効果的な除塵をすることができる。
【0115】
このように、本実施形態の製造装置10aにおいても、基板70の表面70dを除塵することができるため、第1の実施形態の製造装置10と同様に、膜厚分布均一性が高く、かつ良好な結晶性の輝尽発光特性および画像鮮鋭性が優れた蛍光体層71を得ることができ、最終的に、点欠陥が少なく高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90を製造することができる。
【0116】
なお、本実施形態の製造装置10aにおいては、第1のセンサ〜第4のセンサの検知信号または真空計の出力信号を用いることにより、除塵を行うタイミングを設定することができる。また、制御部20においては、第1のセンサ〜第4のセンサの検知信号または真空計の出力信号が入力された後、除塵の開始時期は、特に限定されるものではなく、検知信号または出力信号が入力された直後または所定の時間経過後であってもよい。
なお、本実施形態の製造装置10aにおいては、第1の実施形態のように、クリーニングローラ60(図4参照)を用いるものに比して、除塵部92が真空チャンバ12内に設けられている。このため、上述のように、第1のセンサ〜第4のセンサの検知信号または真空計の出力信号を用いることにより、基板70をセットした後、成膜材料を充填した後、扉13を閉じた後、または真空チャンバ12で内部を真空状態にした後、制御部20により自動的に基板70を除塵部92に対向する位置に移動させて、基板70の表面70dに付着しているゴミ、埃を除塵部92のローラ部94により取り除くことができる。これにより、基板70の表面70dに蛍光体層71を形成する前に、基板70の表面70dをより効果的に除塵することができる。よって、蛍光体層71における異常核成長を更に抑制することができ、最終的に、更に点欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90を製造することができる。また、第2〜第4のセンサを有する態様等においても、第1のセンサを有することにより、基板70を装着せずに除塵部92を動作させるトラブルを防止できる。
さらに、これらの実施形態における除塵も、基板70の蛍光体層の形成領域の端部近傍は、ローラ94dを接触させず(すなわち除塵を行なわず)、基板70の中央部のみをローラ94dで除塵することにより、蛍光体層71と基板70との密着力の高い、より高品位な放射線像変換パネルを製造することができる。
【0117】
次に、本発明の第2の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法について説明する。
なお、本実施形態においても、図8に示す放射線像変換パネル90を例にその製造方法について説明する。
本実施形態の放射線像変換パネルの製造方法は、第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法に比して、基板70を除塵する除塵工程が、クリーニングローラ60(図4参照)を用いるものではなく、除塵部92が用いられ、除塵部92による除塵のタイミングは、第1のセンサ〜第4のセンサまたは真空計などの製造装置10aの構成に依存する点が異なり、それ以外の工程は、第1の放射線像変換パネルの製造方法と同様であるため、その詳細な説明は省略する。また、好ましくは、蛍光体層の形成領域(マスクとなる基板ホルダ39の枠内)の端部近傍にはローラ部66を接触せず、基板70の中央領域のみを除塵するのも同様である。
本実施形態の放射線像変換パネルの製造方法においては、除塵を自動的に行うことができるとともに、第1の実施形態と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。
【0118】
本実施形態の製造方法においても、蛍光体層71(図8参照)が、基板70(図8参照)に異常核成長の起点となるゴミ、埃が極めて少ない状態で形成される。これにより、ヒロックなどの発生が抑制され、基板70の表面70dに垂直な方向に柱状結晶が密に林立し、膜厚分布均一性が高く、かつ良好な結晶性の輝尽発光特性および画像鮮鋭性が優れた蛍光体層71を得ることができる。このため、最終的に、第1の実施形態と同様に、点欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90(図8参照)を製造することができる。
【0119】
また、本実施形態の製造方法においては、除塵部92が真空チャンバ12内に設けられている。このため、基板70をセットした後、成膜材料を充填した後、扉13を閉じた後、または真空チャンバ12で内部を真空状態にした後、制御部20により自動的に基板70を除塵部92に対向する位置に移動させて、基板70の表面70dに付着しているゴミ、埃を除塵部92のローラ部94により取り除くことができる。これにより、基板70の表面70dに蛍光体層71を形成する前に、基板70の表面70dをより効果的に除塵することができる。よって、蛍光体層71における異常核成長を更に抑制することができ、最終的に、更に点欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90(図7参照)を製造することができる。
【0120】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図10(a)は、本発明の放射線像変換パネルの製造方法に用いられる放射線像変換パネル製造装置の第3の実施形態を示す模式的断面図であり、(b)は、図10(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の模式的側断面図である。
本実施形態においては、図9(a)および(b)に示す第2の実施形態の放射線像変換パネル製造装置10aと同一構成物には、同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0121】
図10(a)に示すように、本実施形態の放射線像変換パネルの製造装置10b(以下、製造装置10bともいう)は、第2の実施形態の放射線像変換パネルの製造装置10a(図9(a)および(b)参照)に比して、除塵部96の構成が異なり、それ以外の構成は、第2の実施形態の放射線像変換パネルの製造装置10aと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。なお、製造装置10bにも、第1のセンサ〜第4のセンサのいずれか、および真空計が設けられていることは言うまでもない。
【0122】
本実施形態の除塵部96は、基板70の表面70d(蛍光体層71の形成面)を除塵するものであり、真空チャンバ12内の真空ポンプ18の設置側に設けられている。この除塵部96は、例えば、基板70の表面70d(蛍光体層71の形成面)に気体Fを吹付けるブロア(気体吹付手段)である。
本実施形態の製造装置10bにおいては、基板70を除塵部96と対向する位置に移動させ、除塵部96により、基板70の表面70d(蛍光体層71の形成面)に気体Fを吹付けることによりゴミ、埃などを取り除く。すなわち、基板70の表面70dを除塵する。
【0123】
また、本実施形態の製造装置10bにおいては、除塵部96は、基板70を除電することにより、基板70の表面70dのゴミ、埃を取り除く、除電装置を有するものでもよい。
なお、本実施形態の製造装置10bにおいては、除塵部96には、除電装置として、例えば、クリンエアバリア除電装置(SJ−Vシリーズ(株式会社キーエンス製))を用いることができる。
【0124】
さらに、除塵部96は、ブロア(気体吹付手段)と、除電装置またはイオンエアー発生装置とを組み合わせたものでもよい。この場合、基板70の表面70dの除塵は、ブロアで気体Fを吹き付け、更にイオンエアーの吹き付けを併用して除塵を行う。
さらにまた、除塵部96は、イオンエアー発生装置と除電装置とを組み合わせたものでもよい。
【0125】
このように、本実施形態の製造装置10bにおいても、第2の実施形態の製造装置10aと同様に、膜厚分布均一性が高く、かつ良好な結晶性の輝尽発光特性および画像鮮鋭性が優れた蛍光体層71を得ることができ、最終的に、点欠陥が少なく高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90を製造することができる。
【0126】
なお、本実施形態の製造装置10bにおいても、第2の実施形態の製造装置10aのように、第1のセンサ〜第4のセンサのいずれか、および真空計が設けられており、除塵部96も真空チャンバ12内に設けられている。このため、基板70をセットした後、成膜材料を充填した後、または扉13を閉じた後、制御部20により自動的に基板70を除塵部96に対向する位置に移動させて、基板70の表面70dに付着しているゴミ、埃を除塵部96により取り除くことができる。これにより、真空チャンバ12内を真空状態する直前に、基板70の表面70dをより効果的に除塵することができる。よって、蛍光体層71における異常核成長を更に抑制することができ、最終的に、更に点欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90を製造することができる。
【0127】
次に、本発明の第3の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法について説明する。
なお、本実施形態においても、図8に示す放射線像変換パネル90を例にその製造方法について説明する。
本実施形態の放射線像変換パネルの製造方法は、第2の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法と同様に、第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法に比して、除塵部96が用いられ、除塵部96による除塵のタイミングは、第1のセンサ〜第4のセンサまたは真空計などの製造装置10bの構成に依存する点が異なり、それ以外の工程は、第1の放射線像変換パネルの製造方法と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
本実施形態の放射線像変換パネルの製造方法においても、第1のセンサ〜第4のセンサの検知信号または真空計の出力信号を用いることにより、制御部20により除塵を自動的に行うことができるとともに、第1の実施形態と同様の効果を得ることができることは言うまでもない。
【0128】
本実施形態の製造方法においても、蛍光体層71(図8参照)が、基板70(図8参照)に異常核成長の起点となるゴミ、埃が極めて少ない状態で形成される。これにより、ヒロックなどの発生が抑制され、基板70の表面70dに垂直な方向に柱状結晶が密に林立し、膜厚分布均一性が高く、かつ良好な結晶性の輝尽発光特性および画像鮮鋭性が優れた蛍光体層71を得ることができる。このため、最終的に、第1の実施形態と同様に、点欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90(図8参照)を製造することができる。
【0129】
また、本実施形態の製造方法においては、除塵部96が真空チャンバ12内に設けられている。このため、基板70をセットし、成膜材料を充填した後に、扉13を閉じて真空チャンバ12を閉塞した状態で、基板70を除塵部96に対向する位置に移動させて、基板70の表面70dに付着しているゴミ、埃を除塵部96により取り除くことができる。これにより、真空チャンバ12内を真空状態する直前に、基板70の表面70dをより効果的に除塵することができる。よって、蛍光体層71における異常核成長を更に抑制することができ、最終的に、更に点欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネル90(図8参照)を製造することができる。
【0130】
上述のいずれの実施形態においても、基板を搬送方向に直線搬送して蛍光体層を形成する放射線像変換パネル製造装置を例に説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、基板を保持したままで蛍光体層を形成するもの、または基板を回転しながら蛍光体層を形成するものなど、基板の搬送方式については、特に限定されるものではない。
【0131】
以上、本発明の放射線像変換パネルの製造方法および放射線像変換パネル製造装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0132】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されないのは言うまでもない。
[実施例1、実施例2、および、比較例1]
本実施例においては、第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法により放射線像変換パネルを作製した。この第1の実施形態の製造方法により作製した放射線像変換パネルを実施例1とした。
また、第2の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法により放射線像変換パネルを作製した。この第2の実施形態の製造方法により作製した放射線像変換パネルを実施例2とした。
さらに、基板の除塵工程を省略した以外は、第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法と同じ製造方法により放射線像変換パネルを作製し、この放射線像変換パネルを比較例1とした。
本実施例においては、実施例1、実施例2および比較例1の放射線像変換パネルについて、得られた画像の点欠陥をそれぞれ調べた。
【0133】
なお、実施例1、実施例2および比較例1の放射線像変換パネルの構成は、図8に示すように、基板70に蛍光体層71が設けられ、この蛍光体層71を封止する防湿保護層79が設けられた構成とした。
【0134】
また、基板には、アルミニウム合金基板(YH75(白銅株式会社製))を用いた。また、基板の大きさは、450mm×450mm×10mmとした。
【0135】
次に、実施例1、実施例2および比較例1の放射線像変換パネルの製造方法について説明する。
【0136】
先ず、基板70を基板ホルダ39にセットした。
次に、基板ホルダ39にセットした状態で、基板ホルダ39ごと基板70をプラズマ洗浄装置にセットした。そして、プラズマ洗浄装置により、圧力が1PaのArガス雰囲気下、電力が500W、時間が60秒の条件でArプラズマを発生させて基板70表面の洗浄を行った。
次に、洗浄した後、基板ホルダ39ごと基板70を真空チャンバ12内の基板保持搬送機構14の基板保持手段26にセットした。
【0137】
次に、CsBr蒸発源(成膜材料)およびEuBr蒸発源(成膜材料)を真空チャンバ12内の加熱蒸発部16の抵抗加熱用のルツボ(容器)50、52に充填した。
ここで、本実施例においては、蒸発源(成膜材料)として、純度が4N以上の臭化セシウム(CsBr)粉末、および純度が3N以上の臭化ユーロピウム(EuBr)の溶融品を用意した。EuBr溶融品は、酸化を防ぐため十分なハロゲン雰囲気としたチューブ炉中にて、白金製ルツボに粉体を入れ、温度800℃に加熱して溶融、冷却後、炉から取り出して作製した。各原料中の微量元素をICP−MS法(誘導結合高周波プラズマ分光分析−質量分析法)により分析した結果、CsBr中のCs以外のアルカリ金属(Li、Na、K、Rb)はそれぞれ10質量ppm以下であり、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)などの他の元素は、2質量ppm以下であった。また、EuBr中のEu以外の希土類元素は各々20質量ppm以下であり、他の元素は10質量ppm以下であった。これらの原料は、吸湿性が高いので、露点−20℃以下の乾燥雰囲気を保ったデシケータ内で保管し、使用直前に取り出すようにした。
なお、実施例1、実施例2および比較例1の放射線像変換パネルにおいては、基板70と加熱蒸発部16との距離は100mmとし、基板70を直線搬送しながら、蛍光体層71を形成した。
【0138】
次に、基板70の表面70d(蛍光体層71の形成面)にクリーニングローラ60(図4参照)のローラ部66(図4参照)をくまなく接触させて(すなわち、基板ホルダ39によってマスキングされない全領域に接触させて)、基板70の表面70dに付着しているゴミ、埃を取り除き、除塵した(すなわち「b/a=0/400=0」)。
なお、除塵後の基板70の親水性を調べるために、同じ基板70を同じ基板ホルダ39に収容した状態で、同様にプラズマ洗浄を行い、同様にクリーニングローラ60で除塵を行なった後、22μLの水を基板に滴下して、水滴径を計った。その結果、水滴径は、基板中央および蛍光体層形成領域の端部(以下、単に端部とする)共に5mmであった。
【0139】
次に、扉13を閉じて真空チャンバ12を閉塞した。
次に、メイン排気バルブを開いて真空チャンバ12内を排気して、8×10-4Paの真空度とした。
このとき、真空ポンプとしては、ロータリーポンプ、メカニカルブースター、およびディヒュージョンポンプの組み合わせたものを用いた。さらに、水分除去のため、水分排気用のクライオポンプを使用した。
【0140】
その後、排気をメイン排気バルブに切り換えて8×10-4Paの真空度まで排気後、再度排気をバイパスに切り換え、Arガスを所定量導入して1.0Paの真空度とした。
【0141】
基板70と加熱蒸発部16(ルツボ50およびルツボ52)との間に設けられたシャッタを閉じた状態で、各蒸発源(CsBrおよびEuBr2)をそれぞれ抵抗加熱装置で加熱溶融させ、加熱開始から60分経過後、まず、ルツボ50側のシャッタだけを開けて、基板70の直線搬送を開始し、基板70の表面にCsBr蛍光体母体を堆積させた。
次いで、ルツボ50側のシャッタを開けた所定時間経過後に、ルツボ52側のシャッタも開いて、CsBr蛍光体母体の上にCsBr:Eu輝尽性蛍光体を堆積させた。
【0142】
なお、堆積速度は6μm/分とした。また、加熱蒸発部16の各々の抵抗加熱装置の抵抗電流を調整して、輝尽性蛍光体層におけるEu/Csのモル濃度比が、0.003/1となるように制御した。
蒸着終了後、抵抗加熱装置の電源を切り、Arガスの導入を停止した。
次に、真空チャンバ12内に窒素ガスまたは乾燥空気を導入し、真空チャンバ12内を大気圧にした。そして、扉13を開けて、真空チャンバ12内から基板70を基板ホルダ39ごと取り出した。
【0143】
これにより、基板70の表面70dには、蛍光体の柱状結晶が略垂直方向に延びた密に林立した構造の蛍光体層71が形成された。なお、蛍光体層71の厚さは、700μmであり、蛍光体層71が形成されている面積は400mm×400mmであった。
【0144】
次に、蛍光体層71が形成された基板70について、感度を上げるために、温度200℃で2時間、熱処理を行なった。
熱処理工程においては、まず、蛍光体層71が形成された基板70をガス導入可能な真空加熱装置の中に入れた。
次に、ロータリーポンプにより真空加熱装置内を約1Paまで減圧し、蛍光体層71が形成された基板70に吸着している水分等の除去を行った。
次に、真空加熱装置内を加熱し、そして、N(窒素)ガスを真空加熱容器内に流して、Nガスフロー雰囲気とした。上述の如く、温度200℃、時間2時間の熱処理条件で熱処理を行った。
次に、熱処理後、真空加熱装置から蛍光体層71が形成された基板70を取り出し、大気中で冷却した。
【0145】
次に、蛍光体層71および基板70の表面70dの蛍光体層71が形成されていない領域に、ディスペンサーを用いて接着剤を塗布した。
次いで、例えば、ロール状に巻回された防湿保護フィルムを引き出し、熱ラミネーション法により、蛍光体層71の上に防湿保護フィルムを貼り付けて、外縁を基板の表面に密着させて防湿保護層79を形成した。
このようにして、実施例1の放射線像変換パネルを作製した。
【0146】
また、実施例2は、実施例1と製造装置が異なり、除塵部が、気体吹付手段とイオンエアー発生装置を有するものを用いた。また、実施例2の放射線像変換パネルにおいては、除塵工程が、気体吹付手段とイオンエアー発生装置による気体の吹付けとイオンエアーによるものである点が異なり、それ以外は、実施例1と同様の製造方法により製造されたものである。なお、除塵後の基板70の親水性を調べるために、同じ基板70を同じホルダ39に収容した状態で、同様にプラズマ洗浄を行い、同様に気体の吹付けとイオンエアーによる除塵を行なった後、22μLの水を基板に滴下して、水滴径を計った。その結果、水滴径は、基板中央および端部共に15mmであった。
また、比較例1の放射線像変換パネルは、実施例1の製造方法において、除塵工程を省略したものであり、それ以外は、実施例1と同様の製造方法により製造されたものである。なお、基板70の親水性を調べるために、同じ基板70を同じホルダ39に収容した状態で、全く同様にプラズマ洗浄を行なった後、22μLの水を基板に滴下して、水滴径を計った。その結果、水滴径は、基板中央および端部共に15mmであった。
【0147】
[実施例3]
基板70の蛍光体層の形成領域の端部から幅20mmの領域(基板ホルダ39の内側20mmの幅)は、クリーニングローラ60による除塵を行なわない以外は、実施例1と全く同様にして放射線像変換パネルを製造した(すなわち「b/a=20/400=0.05」)。
また、除塵後の基板70の親水性を調べるために、同じ基板70を同じホルダ39に収容した状態で、同様にプラズマ洗浄を行い、同様にクリーニングローラ60で除塵を行なった後、22μLの水を基板に滴下して、水滴径を計った。その結果、水滴径は、基板中央(除塵領域)は5mm、端部(非除塵領域)は15mmであった。
【0148】
[実施例4]
基板70の蛍光体層の形成領域の端部から幅40mmの領域(基板ホルダ39の内側40mmの幅)は、クリーニングローラ60による除塵を行なわない以外は、実施例1と全く同様にして放射線像変換パネルを製造した(すなわち「b/a=40/400=0.1」)。
また、除塵後の基板70の親水性を調べるために、同じ基板70を同じホルダ39に収容した状態で、同様にプラズマ洗浄を行い、同様にクリーニングローラ60で除塵を行なった後、22μLの水を基板に滴下して、水滴径を計った。その結果、水滴径は、基板中央(除塵領域)は5mm、端部(非除塵領域)は15mmであった。
【0149】
[実施例5]
基板70の蛍光体層の形成領域の端部から幅80mmの領域(基板ホルダ39の内側80mmの幅)は、クリーニングローラ60による除塵を行なわない以外は、実施例1と全く同様にして放射線像変換パネルを製造した(すなわち「b/a=80/400=0.2」)。
また、除塵後の基板70の親水性を調べるために、同じ基板70を同じホルダ39に収容した状態で、同様にプラズマ洗浄を行い、同様にクリーニングローラ60で除塵を行なった後、22μLの水を基板に滴下して、水滴径を計った。その結果、水滴径は、基板中央(除塵領域)は5mm、端部(非除塵領域)は15mmであった。
【0150】
[実施例6]
基板70の蛍光体層の形成領域の端部から幅120mmの領域(基板ホルダ39の内側120mmの幅)は、クリーニングローラ60による除塵を行なわない以外は、実施例1と全く同様にして放射線像変換パネルを製造した(すなわち「b/a=120/400=0.3」)。
また、除塵後の基板70の親水性を調べるために、同じ基板70を同じホルダ39に収容した状態で、同様にプラズマ洗浄を行い、同様にクリーニングローラ60で除塵を行なった後、22μLの水を基板に滴下して、水滴径を計った。その結果、水滴径は、基板中央(除塵領域)は5mm、端部(非除塵領域)は15mmであった。
【0151】
[比較例2]
基板70のプラズマ洗浄も除塵も行なわない以外は、実施例1と全く同様にして放射線像変換パネルを製造した。
なお、基板70の親水性を調べるために、同じ基板70を同じホルダ39に収容した状態で、22μLの水を基板に滴下して、水滴径を計った。その結果、水滴径は、基板中央および端部共に3.5mmであった。
【0152】
これらの実施例1〜実施例6、ならびに、比較例1および比較例2の製造方法について、除塵の方法(有無)、および水滴径を、まとめて下記表1に示す。
【0153】
[画像欠陥]
本実施例においては、上述のように作製した各実施例および比較例の放射線像変換パネルについて、放射線画像として、一様画像を取得し、この放射線画像(一様画像)における点欠陥を調べた。
【0154】
先ず、放射線像変換パネルの表面全面に、タングステン管球を用い、管電圧が80kVのX線を線量10mR(2.58×10−6C/kg)で照射した後、ラインスキャナ方式の画像読取装置(波長が660nmの半導体レーザ光を照射し、放射線像変換パネルの表面から放射された輝尽発光光をライン状に受光素子が配置されたCCDで受光するもの)で読み取り、読み取った光(受光した光)を電気信号に変換して、放射線画像として一様画像を得た。この放射線画像(一様画像)をレーザプリンタによりフィルム上に可視像として出力した。
【0155】
次に、放射線像変換パネルについて得られたフィルムに記録された放射線画像(一様画像)について、シャウカステンを用いて放射線画像(一様画像)の中心部の10cm×10cmの範囲(10cm□:100cm)において、白く抜けた点を点欠陥として、その白く抜けた点の個数を目視により数えた。このようにして、点欠陥の個数を測定した。
下記表1に実施例1、実施例2および比較例1の各放射線像変換パネルの点欠陥の個数を示す。
なお、点欠陥は、10cm□の画像上において、600×600μm超の欠陥を大サイズ、600×600μm以下の欠陥を小サイズとして計数した。また、評価は、大サイズが1つでも有するものは「×」、大サイズが無く小サイズが15個以下のものを「◎」、大サイズが無く小サイズが15個超のものを「○」と判断した。
【0156】
[膜密着]
また、本実施例においては、上述のように作製した各実施例および比較例の放射線像変換パネルについて、蛍光体層の密着力を調べた。
なお蛍光体層の密着力は、蛍光体層71の表面に粘着テープを貼り付けた後、粘着テープを剥がして蛍光体層71の基板70からからの剥離の有無を観察し、満点(全く剥離しない)を6点とした時の点数で評価した。粘着力テープを粘着力の違うものを5段階準備し、テープごとの剥離状況から相対的に密着力を評価した。なお、実用可能なレベルは、放射線像変換パネルを車上に搭載した際、放射線像変換パネルからその車上振動により剥離しないレベルを指しており、実質可能なレベルは3点以上である。
【0157】
点欠陥および膜密着の試験結果を書き表1に併記する。
【表1】


比較例2は、プラズマ洗浄を行なっていない。また、上記表において、水滴径の単位はmm、画像欠陥(点欠陥)の数は、10cm□の個数である。
【0158】
上記表1に示すように、実施例1および実施例2は、比較例1および比較例2に比して、点欠陥の個数が1/3以下になっており、点欠陥の個数が著しく減少した。
また、実施例1は、実施例2に比して、点欠陥の個数が1/2以下であり、更に点欠陥の個数が少なく、更に一層良好な蛍光体層を形成することができた。
さらに、蛍光体層形成領域の端部近傍はクリーニングローラによる除塵を行なわなかった実施例3〜6は、良好な点欠陥の減少効果と共に、非常に優れた蛍光体層の密着力を得ることができている。
このように、本発明の放射線像変換パネルの製造方法においては、欠陥が少ない高品位な画像が得られる放射線像変換パネルを製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】(a)は、本発明の放射線像変換パネルの製造方法に用いられる放射線像変換パネル製造装置の第1の実施形態を示す模式的断面図であり、(b)は、図1(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の模式的側断面図である。
【図2】(a)は、図1(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の基板保持搬送手段を示す模式的平面図であり、(b)は、図1(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の基板保持搬送手段を示す模式的正面図であり、(c)は、図1(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の基板保持搬送手段を示す模式的側面図である。
【図3】図1(a)に示す蛍光体シート製造装置の加熱蒸発部を示す模式的平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法に用いられるクリーニングローラを示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法におけるクリーニングローラによる除塵を説明するための模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法に用いられる基板を示す模式的斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法に用いられる基板の搬送方法を示す模式的斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の放射線像変換パネルの製造方法により製造された放射線像変換パネルを示す模式的断面図である。
【図9】(a)は、本発明の放射線像変換パネルの製造方法に用いられる放射線像変換パネル製造装置の第2の実施形態を示す模式的断面図であり、(b)は、図8(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の模式的側断面図である。
【図10】(a)は、本発明の放射線像変換パネルの製造方法に用いられる放射線像変換パネル製造装置の第3の実施形態を示す模式的断面図であり、(b)は、図9(a)に示す放射線像変換パネル製造装置の模式的側断面図である。
【図11】放射線像変換パネルにおける点欠陥を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0160】
10、10a、10b 放射線像変換パネル製造装置(製造装置)
12 真空チャンバ
12a 底面
12b、12c 側面
14 基板保持搬送手段
16 加熱蒸発部
18 真空ポンプ
19 ガス導入ノズル
20 制御部
22 駆動手段
24 LMガイド
24a ガイドレール
24b 係合部材
26 (基板)保持手段
30 保持部材
32 ボールネジ
32a ネジ軸
32b ナット部
34 モータ
36 基台
38 保持機構
38a 取付部材
38b 保持部材
40 防熱部材
50、52 ルツボ
60 クリーニングローラ
70、102 基板
71、104 輝尽性蛍光体層(蛍光体層)
72 めねじ部
76 ピン
80 アーム部
90、100 放射線像変換パネル
92、96 除塵部
94 ローラ部
106a 異常成長結晶
H ヒロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞された真空チャンバ内で、気相堆積法により蛍光体層を形成する放射線像変換パネルの製造方法であって、
前記真空チャンバ内に基板をセットする工程と、
前記基板がセットされた状態で前記基板の表面を除塵する工程と、
前記蛍光体層を基板上に形成する工程とを有することを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項2】
前記基板の表面を除塵する工程は、前記真空チャンバが大気圧の状態で行われる請求項1に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項3】
前記基板をセットする工程と前記基板の表面を除塵する工程との間、または前記基板をセットする工程の前に、前記蛍光体層となる成膜材料を前記真空チャンバ内にセットする工程を有する請求項1または2に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項4】
前記基板の表面を除塵する工程の後工程に、前記真空チャンバを閉塞する工程を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項5】
前記基板の表面を除塵する工程は、クリーニングローラを用いる除塵方法、前記基板に気体を吹付ける方法、および前記基板を除電する方法のうち、少なくとも1つの方法が用いられる請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項6】
前記クリーニングローラは、前記基板の表面に接触されるローラ部を有するものであり、
前記ローラ部は、ブチルゴム、シリコンおよびウレタンゴムのうち、少なくとも1種を主成分とするものにより構成される請求項5に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項7】
前記クリーニングローラによる除塵を、前記基板の蛍光体層形成領域の端部近傍を除いて行なう請求項5または6に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項8】
前記蛍光体層の形成領域の全長をa、前記端部近傍の除塵を行なわない領域の幅をbとした際に、式
0.03≦b/a≦0.4
を満たす請求項7に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項9】
前記基板の表面を除塵する工程は、前記気体を吹付ける方法、および前記基板を除電する方法を用いるものであり、および前記基板を除電する方法には、除電装置が用いられる請求項5に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項10】
前記除電装置は、イオンエアー発生装置である請求項9に記載の放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項11】
シート状の基板の表面に真空蒸着によって蛍光体層を形成する放射線像変換パネル製造装置であって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内を排気する真空排気手段と、
前記真空チャンバ内に設けられ、容器に収納された前記蛍光体層の成膜材料を抵抗加熱によって加熱し、前記容器の開口部から前記成膜材料の蒸気を放出させる抵抗加熱手段と、
前記真空チャンバ内に設けられ、前記抵抗加熱手段の上方において、前記基板を保持する基板保持手段と、
前記真空チャンバ内に設けられ、前記基板の表面を除塵する除塵部とを有することを特徴とする放射線像変換パネル製造装置。
【請求項12】
さらに、前記除塵部を制御する制御部と、
前記制御部に接続され、前記基板が前記基板保持手段に保持されたことを検知する第1のセンサとを有し、
前記第1のセンサの検知結果を受けた後、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させる請求項11に記載の放射線像変換パネル製造装置。
【請求項13】
さらに、前記除塵部を制御する制御部と、
前記制御部に接続され、前記容器に前記成膜材料が収納されたことを検知する第2のセンサとを有し、
前記第2のセンサの検知結果を受けた後、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させる請求項11に記載の放射線像変換パネル製造装置。
【請求項14】
さらに、前記除塵部を制御する制御部と、
前記制御部に接続され、前記真空チャンバが閉塞されたことを検知する第3のセンサを有とし、
前記第3のセンサの検知結果を受けた後、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させる請求項11に記載の放射線像変換パネル製造装置。
【請求項15】
さらに、前記除塵部を制御する制御部と、
前記制御部に接続され、前記真空チャンバ内の圧力を測定する真空計とを有し、
前記真空計により測定された圧力が所定の圧力以下であるとき、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させる請求項11に記載の放射線像変換パネル製造装置。
【請求項16】
さらに、前記容器の開口部に開閉自在に設けられたシャッタと、
前記除塵部を制御する制御部と、
前記制御部に接続され、前記シャッタの開閉を検知する第4のセンサとを有し、
前記第4のセンサにより前記シャッタが開放された検知結果を受けた後、前記制御部は、前記除塵部に前記基板の表面を除塵させる請求項11に記載の放射線像変換パネル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−240514(P2007−240514A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189226(P2006−189226)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】