説明

放射線像変換パネル

【課題】塗布型の蛍光体層を有する放射線像変換パネルにおいて、蛍光体層の泡膨れを防止して、高画質な放射線画像を得られる放射線像変換パネルを提供する。
【解決手段】蛍光体層が結合剤の重合反応を起こす成分を含まず、保護膜が、無機粒子を含有し、かつ、無機粒子の含有量を、無機粒子以外の固形分に対して8〜18重量%とすることにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるIP(Imaging Plate)やシンチレータパネルなどの放射線像変換パネルに関し、詳しくは、画質の悪化を招く蛍光体層の泡膨れの生成を抑制して、高画質な放射線画像を得られる放射線像変換パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線など)の照射を受けると、受けた放射線エネルギーに応じた応答を示す蛍光体が知られており、医療用途などの各種の用途に利用されている。
【0003】
一例として、放射線の照射を受けると、この放射線エネルギーの一部を蓄積し、その後、可視光等の励起光の照射を受けると、蓄積されたエネルギーに応じた輝尽発光を示す、輝尽性蛍光体(蓄積性蛍光体)と呼ばれ、医療用途などの各種の用途に利用されている。
【0004】
この輝尽性蛍光体の層を有する放射線像変換パネル(いわゆるIP(Imaging Plate))を利用する、放射線像情報記録再生システムが知られており、例えば、富士フイルム社製のFCR(Fuji Computed Radiography)等として実用化されている。
このシステムでは、人体などの被写体を介してX線等を照射することにより、変換パネル(輝尽性蛍光体層)に被写体の放射線像を記録する(放射線画像を撮影する)。記録後に、変換パネルを励起光で2次元的に走査して輝尽発光を生ぜしめ、この輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得、この画像信号に基づいて再生した画像を、CRTなどの表示装置や、写真感光材料などの記録材料等に、被写体の放射線像として出力する。
【0005】
また、IPのように、放射線画像を蓄積記録して、励起光の照射による輝尽発光光によって放射線画像を得るのではなく、放射線の入射によって可視光を発光(蛍光)する蛍光体も知られている。この蛍光体からなる蛍光体層を有する放射線像変換パネル(いわゆるシンチレータパネル)も、医療用途等の各種の用途に利用されている。
シンチレータパネルを用いるシステムでは、被写体を透過した放射線をシンチレータパネルに入射することにより、被写体画像を担持する放射線を可視光に変換し、この可視光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換して、この電荷をTFT(Thin Film Transistor)等で、順次、読み出して電気信号を得、この電気信号を先と同様に被写体の放射線画像として出力する。
【0006】
IPやシンチレータパネル等の放射線像変換パネルにおける蛍光体層は、一例として、蛍光体粒子と結合剤(バインダ)とを溶媒に分散してなる塗布液を調製して、この塗布液をガラスや樹脂製のパネル状の支持体に塗布、硬化することによって、形成される。
【0007】
また、このようにして形成された蛍光体層の上には、蛍光体層の汚れや損傷を防止するための保護膜が形成される。
保護膜の形成方法としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明な樹脂フィルムに接着剤を塗布して、保護膜(保護フィルム)として蛍光体層の上に貼着する方法が例示される。また、別の保護膜として、セルロース誘導体やポリメチルメタクリレート等の透明な樹脂を、適当な溶媒に溶解してなる塗布液を調製し、この塗布液を蛍光体層の表面に塗布、乾燥(硬化)することによって、形成される保護膜も知られている。
【0008】
ところで、鮮鋭度の高い放射線画像を得るためには、出来るだけ保護膜を薄くすることが有効である。その反面、保護膜として十分な機能を発現するためには、ある程度の厚膜化は不可欠である。
樹脂フィルムを貼着してなる保護膜の場合には、樹脂フィルムに加えて接着剤層も必要となってしまうために、保護膜として十分な機能を発現するためには、どうしても厚くなってしまい、厚膜化に起因する画質低下を防ぐことは困難である。
これに対し、樹脂を溶解した塗布液を調製して、蛍光体層に塗布/硬化する形成する保護膜においては、厚膜化(塗布液の厚膜塗布)に伴う画質劣化の防止方法として、保護膜を形成するための塗布液に微粒子を添加/分散して、保護膜に微粒子を分散させる方法が知られている。
【0009】
例えば、特許文献1には、輝尽性蛍光体層と保護膜とを有する放射線像変換パネルにおいて、輝尽発光の主発光波長における保護膜の光散乱長を5〜80μmの範囲とすることにより、高画質な放射線像を得ることが開示されている。ここで、この特許文献1には、このような保護膜を形成する方法として、樹脂成分を溶剤に溶解し、かつ、光散乱性微粒子を分散してなる塗布液を調製して、この塗布液を蛍光体層に塗布、硬化することにより、前記光散乱長を有する保護膜を形成することが開示されている。
また、特許文献2には、保護膜が、樹脂とモース硬度が9以上で平均粒径が0.1〜1μmの粒子とを含み、かつ、この保護膜が、樹脂に対して50〜200重量%の粒子を含むことにより、防汚性、耐傷性、耐久性に優れ、かつ良好な画質を維持できる放射線像変換パネルが開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平11−281975号公報
【特許文献2】特開2002−6961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前述のように、放射線像変換パネルの蛍光体層は、結合剤および蛍光体粒子を溶剤に溶解/分散してなる塗布液を調製し、この塗布液を基板に塗布、硬化することによって形成される。ここで、特許文献2にも示されているように、この塗布液には、結合剤を重合させて、蛍光体層の強度を向上を図るための硬化剤(架橋剤)が添加されている場合が多い。
【0012】
一方で、発光量が高く高画質な画像を得るためには、蛍光体層を厚くし、結合剤の添加量を減らし、さらに硬化剤を用いないのが好ましい。
ところが、硬化剤を含有しない塗布液から形成した蛍光体層に、前述のように、保護膜となる樹脂と粒子とを含有する塗布液を塗布すると、塗布液における溶剤成分が蛍光体層に染み込んでしまい、塗布液が硬化する際に、蛍光体層内に泡脹れ(以下、ブリスタという)が発生してしまう。
【0013】
蛍光体層に、このようなブリスタが生じると、蛍光体層で生じた発光がブリスタで偏向されてしまい、得られた放射線画像にムラを生じてしまう。
また、後段の製造工程で、蛍光体層に圧力を掛けるような工程が有る場合には、圧力が掛かった際に、蛍光体層が断層ズレのような現象が生じてしまう。この断層部でも、同様に、蛍光体層で生じた発光が偏向されてしまい、放射線画像にムラを生じてしまう。
【0014】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、結合剤中に蛍光体粒子を分散してなる蛍光体層と、樹脂に画質向上のための粒子を分散してなる、蛍光体層の上に、直接、形成される保護膜とを有する放射線像変換パネルにおいて、保護膜に粒子が分散されることによる画質向上効果、および、蛍光体層が結合剤の硬化剤を有さないことによる画質向上効果を十分に確保した上で、保護膜を形成するための、樹脂および粒子を溶剤に溶解/分散してなる塗布液における溶剤成分の蛍光体層への染み込みを十分に抑制して、蛍光体層のブリスタ(泡膨れ)に起因する放射線画像の画質低下も防止できる放射線像変換パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の放射線像変換パネルは、蛍光体層と、この蛍光体層の上に形成された保護膜とを有する放射線像変換パネルであって、前記蛍光体層が、蛍光体粒子と結合剤とを有し、かつ、前記結合剤の重合反応を起こす成分を含まないものであり、さらに、前記保護膜が、無機粒子を含有し、かつ、この保護膜の無機粒子以外の固形分に対して、前記無機粒子の重量比が8〜18重量%であることを特徴とする放射線像変換パネルを提供する。
【0016】
このような本発明の放射線像変換パネルにおいて、前記無機粒子がアルミナ粒子であるのが好ましく、もしくは、前記無機粒子がシリカ粒子であるのが好ましい。
また、前記保護膜を形成する樹脂がフッ素系樹脂であるのが好ましく、また、前記保護膜が、蛍光体層に直接塗布されて形成されたものであるのが好ましく、さらに、前記蛍光体層における結合剤の量が、前記蛍光体粒子に対して重量比で1/30以下であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記構成を有する発明は、結合剤と蛍光体粒子とを溶剤に溶解/分散してなる塗布液を用いて形成される蛍光体層と、樹脂と粒子を溶剤に溶解/分散してなる塗布液を蛍光体層に塗布、硬化して形成される保護膜とを有する放射線像変換パネルにおいて、蛍光体層が結合剤を重合させる成分を含まず、また、保護膜に添加する粒子を無機粒子とし、かつ、この無機粒子の含有量を、保護膜を形成する無機粒子以外の固形分に対して8〜18重量%とする。
【0018】
後に詳述するが、鮮鋭性等の画質を向上するために保護膜に添加する粒子を無機粒子とし、かつ、保護膜中における無機粒子の含有量を、その他の固形分に対して8〜18重量%とすることにより、蛍光体層が硬化剤を含んでいなくても、蛍光体層に保護膜を形成するための塗布液を塗布しても、蛍光体層への塗布液における溶剤成分の染み込みを抑制することができる。
そのため本発明によれば、保護膜に粒子が分散されることによる画質向上効果、および、蛍光体層が結合剤の硬化剤を有さないことによる画質向上効果を十分に確保した上で、保護膜を形成する塗布液における溶剤成分の蛍光体層への染み込みに起因する、蛍光体層のブリスタ(泡膨れ)に起因する放射線画像の画質低下も防止して、高画質な放射線画像を得ることができる放射線像変換パネルを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の放射線像変換パネルについて、添付の図面に示される好適実施例を参照して、詳細に説明する。
【0020】
図1に、本発明の放射線像変換パネルの一例の概念図を示す。
図1に示す放射線像変換パネル10(以下、変換パネル10とする)は、基本的に、基板12と、蛍光体層14と、保護膜16とを有して構成されるものである。
【0021】
本発明の変換パネル10は、輝尽性蛍光体からなる層(輝尽性蛍光体層)を有し、被写体を透過した放射線を蓄積(記録)することにより放射線画像を撮影して、励起光の入射によって撮影した放射線画像に応じて輝尽発光光を出射する、いわゆるIP(Imaging Plate)でもよく、あるいは、放射線の入射によって可視光を発光する蛍光体からなる層(シンチレータ層)を有し、被写体を透過した放射線をシンチレータ層に入射して、シンチレータ層が発した可視光を光電的に読み取る、いわゆるシンチレータパネルでもよい。
【0022】
本発明の変換パネル10において、基板12には、特に限定は無く、樹脂(プラスチック)板や樹脂フィルム、ガラス板、金属板等、公知の放射線像変換パネルに基板として用いられる各種のものが、全て、利用可能である。
また、基板12は、表面に、反射層、腐食防止用の保護膜、平滑化層などの各種の機能を発現する層を有するものでもよい。
【0023】
蛍光体層14は、結合剤(バインダ)に蛍光体粒子を分散してなる層である。
本発明において、蛍光体層14は、溶剤に、結合剤を溶解して、かつ、蛍光体粒子を分散してなる塗布液を調製し、この塗布液を基板12の表面に塗布して、塗布液を乾燥することにより形成されるものである。すなわち、本発明の変換パネル10は、いわゆる塗布型の変換パネルである。
また、本発明の蛍光体層14は、蛍光体層14を形成する結合剤(結合剤となる樹脂成分)に重合反応を起こさせる成分(硬化剤/架橋剤)を含まない。従って、蛍光体層14を形成するための塗布液には、結合剤を重合させる成分は、添加されない。
【0024】
前述のように、本発明の変換パネル10は、輝尽性蛍光体を用いるIPでも、放射線の入射によって可視光を発光する蛍光体を用いるシンチレータパネルでもよい。すなわち、蛍光体層に分散されるのは、輝尽性蛍光体の粒子でも、通常の蛍光体の粒子でもよい。
【0025】
本発明の変換パネル10に利用される輝尽性蛍光体には、特に限定はなく、公知の輝尽性蛍光体が、各種、利用可能である。
【0026】
蛍光体層に用いられる輝尽性蛍光体としては、特開昭61−72087号公報に開示される、一般式;
IX・aMIIX’2・bMIIIX''3:cA
で示されるアルカリハライド系輝尽性蛍光体が好適に利用される。
(上記式において、MI は、Li,Na,K,RbおよびCsからなる群より選択される少なくとも一種であり、MIIは、Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,CuおよびNiからなる群より選択される少なくとも一種の二価の金属であり、MIIIは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,GaおよびInからなる群より選択される少なくとも一種の三価の金属であり、X、X’およびX''は、F,Cl,BrおよびIからなる群より選択される少なくとも一種であり、Aは、Eu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu,BiおよびMgからなる群より選択される少なくとも一種である。また、0≦a<0.5であり、0≦b<0.5であり、0<c≦0.2である。)
【0027】
これ以外にも、米国特許第3,859,527号明細書、特開昭55−12142号、同55−12143号、同55−12144号、同55−12145号、同55−160078号、同56−116777号、同57−23673号、同57−23675号、同58−69281号、同58−206678号、同59−27980号、同59−38278号、同59−47289号、同59−56479号、同59−56480号、同59−75200号、同60−84381号、同60−101173号、同62−25189号、特開平2−229882号等の各公報に開示される各種の輝尽性蛍光体も、好適に利用可能である。
【0028】
上記の輝尽性蛍光体のうちで、二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体(例えば、BaFBr0.850.15:EuやBaFI:Eu)、ユーロピウム賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体(例えば、CsBr:Eu)、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、およびヨウ素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は、高輝度の輝尽発光を示すことから好ましく用いることができる。
【0029】
また、本発明の変換パネル10に用いられる蛍光体にも、特に限定はなく、公知の蛍光体が、各種、利用可能である。
中でも、良好な発光特性(蛍光特性)が得られる等の点で、下記の一般式;
IX・aMIIX’2・bMIIIX”3:zA
で示されるアルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体が好ましく例示される。
(上記式において、MIはLi、Na、K、Rb及びCsからなる群より選択される少なくとも一種のアルカリ金属を表し、MIIはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Cu、Zn及びCdからなる群より選択される少なくとも一種のアルカリ土類金属又は二価金属を表し、MIIIはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群より選択される少なくとも一種の希土類元素又は三価金属を表わす。また、X、X’およびX”はそれぞれ、F、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも一種のハロゲンを表わし、Aは、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Na、Mg、Cu、Ag、Tl及びBiからなる群より選択される少なくとも一種の希土類元素又は金属を表す。また、a、bおよびzはそれぞれ、0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z<1.0の範囲内の数値を表わす。)
特に、前記一般式のMIとしてCsを含んでいるのが好ましく、XとしてIを含んでいることが好ましく、AとしてTlまたはNaを含んでいるのが好ましく、また、zは、1×10-4≦z≦0.1の範囲内の数値であるの好ましい。中でも特に、式CsI:Tlで示されるアルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は、好ましく用いられる。
【0030】
これ以外にも、下記の一般式;
S:A
で示される希土類酸硫化物系蛍光体が好ましく用いられる。
(上記式において、MはY、La、Gd、Luからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、Oは酸素、Sは硫黄、AはTb、Euからなる群より選択される少なくとも一種の元素である)
【0031】
なお、蛍光体粒子の径には、特に限定はなく、通常の塗布型の変換パネルと同様でよく、使用する蛍光体の種類などに応じて、適宜、決定すればよいが、1〜12μmが好ましい。
【0032】
また、蛍光体層14を形成する結合剤にも、特に限定はなく、塗布型の変換パネル10において、蛍光体層(輝尽性蛍光体層/シンチレータ層)の形成に利用されている結合剤が、全て利用可能である。
一例として、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、アラビアゴムのような各種の天然樹脂(天然高分子材料); ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン(ウレタンプレポリマー)、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステルなどの各種の合成樹脂(合成高分子材料(ポリマー))が例示される。
特に、ニトロセルロース、線状ポリエステル、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ニトロセルロースと線状ポリエステルとの混合物、およびニトロセルロースとポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物は、好適に例示される。
なお、前述のように、本発明の変換パネル10においては、蛍光体層14は、これらの結合剤を重合させる物質(硬化剤/架橋剤)は、含有しない。
【0033】
本発明の変換パネル10において、蛍光体層14における結合剤と蛍光体粒子の混合比には、特に限定は無いが、重量比で、結合剤が蛍光体粒子の1/30以下とするのが好ましい。
結合剤と蛍光体粒子との混合比を、上記範囲とすることにより、蛍光体の充填率を高くすることによる放射線吸収および発光効率の上昇、結合剤高分子に起因する光の散乱による画像のボケ低減等の効果が得られ、高画質な画像を得られる等の点で好ましい。
【0034】
本発明の変換パネル10において、蛍光体層14の層厚にも、特に限定はなく、目的とする変換パネルの特性、使用する蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比等に応じて、適宜、決定すればよいが、輝尽性蛍光体層およびシンチレータ層に限らず、250μm以上とするのが好ましい。
【0035】
一般的に、蛍光体層14の層厚が厚い方が、高画質な放射線画像を得ることができ、蛍光体層14の層厚を250μm以上とすることにより、優れた性能を有する変換パネル10を安定して製造することができる。その反面、蛍光体層14の層厚が厚いほど、後述する保護膜16を形成するための塗布液の溶剤成分の蛍光体層14への染み込みが生じ易くなり、特に、層厚250μm以上では塗布液の溶剤成分の染み込みが顕著になり、蛍光体層14のブリスタに起因する画質低下が著しくなる。
すなわち、本発明の変換パネル10において、蛍光体層14の層厚を250μm以上とすることにより、蛍光体層14の層厚化による画質の向上効果と、厚い蛍光体層14におけるブリスタ発生の抑制効果とを、相乗的に得ることができ、この相乗効果によって、高画質な放射線画像が得られる変換パネル10を、より安定して得ることができる。
なお、上記効果をより好適に発現できる等の点で、蛍光体層の厚さは、輝尽性蛍光体層およびシンチレータ層に限らず、250〜500μmとするのがより好ましく、特に、270〜350μmが好ましい。
【0036】
本発明の変換パネル10においては、このような蛍光体層14の上に、直接、塗布液の塗布による保護膜16が形成される。
保護膜16は、蛍光体層14の汚れや損傷を防止するためのものであって、樹脂と、樹脂(保護膜16)中に分散される無機粒子(無機物粒子)とを有し、かつ、無機粒子の含有量を、保護膜16の無機粒子以外の固形分に対して、重量比で8〜18重量%としたものである(以下、単に、「その他の固形分に対して8〜18重量%」ともいう)。また、前述のように、蛍光体層14は、蛍光体層14を形成する結合剤を重合させる成分(硬化剤/架橋剤)を含まない。
本発明の変換パネル10は、このような構成を有することにより、保護膜16に分散される粒子による画質向上効果、蛍光体層14が硬化剤を含有しないことによる画質向上効果を得ると共に、蛍光体層14のブリスタ(泡膨れ)に起因する放射線画像の画質低下も防止して、高画質な放射線画像が得られる放射線像変換パネルを実現したものである。
【0037】
前述のように、塗布型の変換パネルにおいては、得られる放射線画像の画質的には保護膜は薄い方が有利である半面、保護膜として十分に機能するためには、ある程度の厚さを確保する必要がある。
これに対して、特許文献1や2に示されるように、保護層に光反乱性を有する粒子を分散することにより、画像の鮮鋭性等を向上することができ、放射線画像の画質を向上することができる。
【0038】
また、塗布型の変換シートの蛍光体層には、通常、結合剤を重合させて強度を向上するための硬化剤が含まれている。しかしながら、放射線画像の画質という点では、硬化剤を含有しない方が有利である。
ここで、保護膜は、溶剤に樹脂成分等を溶解し、かつ、粒子を分散してなる塗布液を調製して、この塗布液を蛍光体層に塗布して、硬化することによって形成される。ところが、硬化剤を用いないで形成した蛍光体層に、このような塗布液を塗布すると、塗布液の溶剤成分が蛍光体層に染み込んでしまい(含浸してしまい)、塗布液を硬化する際に、蛍光体層の内部にブリスタが生じてしまう。このようなブリスタは、放射線画像のムラ等の画質低下の原因となる。
【0039】
これに対し、本発明の変換シート10は、保護膜16に、その他の固形分に対して8〜18重量%の無機粒子を分散させることにより、蛍光体層14に塗布液を塗布した際における、塗布液の溶剤成分の蛍光体層14への染み込みを大幅に抑制することができ、すなわち、蛍光体層14内部におけるブリスタの生成を防止することができる。
従って、本発明によれば、保護膜16が粒子を含有することによる画質向上効果、および、蛍光体層14が硬化剤を有さないことによる画質向上効果を十分に発現した上で、蛍光体層14のブリスタに起因する放射線画像の画質低下も防止することができ、高画質な放射線画像を得ることができる。
【0040】
保護膜16に、その他の固形分に対して8〜18重量%の無機粒子を分散させることにより、蛍光体層14への塗布液における溶剤成分の染み込みを抑制できる理由は明らかではない。
本発明者の検討および推測によれば、保護膜16に無機粒子を上記量だけ分散させることにより、無機粒子が周辺の樹脂を溶解した溶剤成分を保持して、砂が水を吸い込んだ状態のように、無機粒子が塗布液における溶剤成分を吸い込んだような状態となり、その結果、保護膜16となる塗布液における溶剤成分の蛍光体層14への染み込みを大幅に抑制できると考えられる。
なお、粒子を有機粒子(有機物粒子)としても、このような、蛍光体層14への塗布液における溶剤成分の染み込みの抑制効果を得ることはできない。これも本発明者の推測ではあるが、有機粒子では、表面の平滑性や滑性等により、粒子が周辺の溶剤成分を保持することができず、そのため、無機粒子のような効果を得ることができないためであると考えられる。
【0041】
前述のように、保護膜16において、無機粒子の量は、保護膜16の無機粒子以外の固形分に対して8〜18重量%である。
無機粒子の量が8%未満では、無機粒子の添加効果を十分に得ることができず、すなわち、塗布液における溶剤成分の蛍光体層14への染み込み抑制効果を十分に得ることができず、また、画質的にも、粒子の添加効果を十分に得ることができない。
逆に、無機粒子の量が18重量%を超えると、やはり、塗布液における溶剤成分の蛍光体層14への染み込み抑制効果を十分に得ることができない。この理由は、明らかではないが、本発明者の検討および推測によれば、無機粒子の量が18重量%を超えると、逆に、無機粒子が多すぎて、無機粒子同士が凝集してしまい、その結果、無機粒子の添加が少ないのと同様の状態になってしまい、塗布液における溶剤成分の染み込み抑制効果が得られないものと考えられる。
【0042】
なお、本発明においては、好ましくは、無機粒子の量は、保護膜16を形成するその他の固形分に対して10〜15重量%である。
無機粒子の量を上記範囲とすることにより、蛍光体層14への塗布液における溶剤成分の染み込み抑制効果をより好適に得ることができる等の点で好ましい。
【0043】
本発明において、保護膜16中における、無機粒子と、その他の固形分との重量比は、製造工程においては、保護膜16を形成するための塗布液において、添加する無機粒子の重量と、添加する無機粒子以外の成分の内の固形分の重量とを求め、無機粒子と、その他の固形分との重量比を求めればよい。
他方、製造後の変換パネル10においては、まず、変換パネル10から保護膜16を引き剥がして、保護膜16の重量(重量A)を測定する。次いで、保護膜16を燃焼させ、燃焼後の残った固形分を無機粒子と見なして、重量(重量B)を測定する。その上で、式「重量B/(重量A−重量B)」によって、無機粒子と、他の成分の固形分との重量比を求めればよい。
【0044】
本発明の変換パネル10において、無機粒子には、特に限定はなく、各種の無機材料の粒子が利用可能であるが、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化シリコン)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、硫化バリウム、炭酸鉛、酸化珪素等の粒子が好適に例示される。
中でも特に、アルミナおよびシリカの粒子は好適に利用される。無機粒子として、アルミナ粒子やシリカ粒子を用いることにより、アルミナやシリカ粒子の高比表面積による表面活性によって好適な溶剤保持能力を発現することができる、人体への害が少ない、比較的安価に入手できる等の点で好ましい。
なお、無機粒子は、複数種を併用してもよい。
【0045】
本発明において、無機粒子の粒子径には、特に限定は無いが、平均径で5〜1000nm、特に400〜600nmであるのが好ましい。
無機粒子の粒子径を上記範囲とすることにより、凝集を好適に抑制して、無機粒子をより好適に分散させることができるので、表面積が十分に大きくなり、より高い無機粒子の添加効果を得ることができる等の点で好ましい。
【0046】
本発明の変換パネル10において、保護膜16を形成する樹脂にも、特に限定はなく、塗布型の変換パネルにおける保護層に用いられている樹脂(天然/合成高分子材料)が、各種、利用可能である。
一例として、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、およびエポキシ樹脂等が好ましく例示される。これらの樹脂は、複数のものを併用してもよい。
中でも特に、耐汚染性、耐傷性、耐久性等の点で、フッ素系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂は、フッ素を含むオレフィン(フルオロオレフィン)の重合体もしくはフッ素を含むオレフィンを共重合体成分として含む共重合体であって、その例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロルトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体などが、好ましく例示される。
【0047】
本発明の変換パネルにおいて、保護膜16の厚さには、特に限定はなく、使用する樹脂や無機粒子等に応じて、適宜、設定すればよいが、1〜5μmが好ましい。
保護膜16の厚さを上記範囲とすることにより、耐傷性、耐久性の面で保護膜として十分な性能を持つ、発光光のボケを抑えて高画質な画像を実現することができる等の点で好ましい。
また、保護膜16には、樹脂および無機粒子の他に、界面活性剤等の各種の添加剤が添加されていてもよい。
【0048】
本発明の変換パネル10は、基本的に、公知の塗布型の放射線像変換パネルと同様に製造すればよい。以下、本発明の変換パネル10の製造方法の一例を説明する。
まず、溶剤に前述のような結合剤を溶解し、さらに、蛍光体粒子を所定量添加して攪拌/分散して、蛍光体層14を形成するための塗布液(塗料)を調製する。なお、本発明においては、蛍光体層14中における結合剤は、重量比で蛍光体粒子の1/30以下とするのが好ましいので、結合剤成分の量が、蛍光体粒子の1/30以下となるように、塗布液を調製するのが好ましい。
【0049】
溶剤には、特に限定はなく、用いる結合剤に応じて、これを溶解可能な各種の溶媒を用いればよい。汎用される溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール; メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素; シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状炭化水素; トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン; 酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル; これらの混合溶媒等が例示される。
【0050】
また、この塗布液には、必要に応じて、蛍光体粒子の分散性を向上するための分散剤や、蛍光体層14中における蛍光体粒子と結合剤との結合力を向上するための可塑剤等、各種の添加剤を添加してもよい。
分散剤としては、一例として、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤等が例示される。また、可塑剤としては、一例として、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキエチルなどのフタル酸エステル:グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル;そして、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステル等が例示される。
【0051】
ここで、本発明の変化パネル10においては、蛍光体層14は、結合剤を重合させる成分(硬化剤)を含まない。
従って、蛍光体層14を形成するための塗布液は、結合剤を重合させる成分を添加することなく調製する。例えば、結合剤がポリウレタン(ウレタンプレポリマー)である場合には、塗布液は、イソシアネート化合物などの、ウレタン化合物の重合反応を起こす化合物を添加することなく、調製する。
【0052】
このようにして調製した塗布液を、目的とする蛍光体層14の厚さとなるように、基板12に塗布し、乾燥することにより、蛍光体層14を形成する。
塗布液の塗布方法には、特に限定はなく、ドクターブレード、ロールコータ、ナイフコータ等の公知の塗布方法が、全て利用可能である。また、乾燥は、必要に応じて加熱等を行なってもよいのは、もちろんである。
【0053】
なお、蛍光体層14は、必ずしも、上述のように、直接、基板12に塗布液を塗布して形成するのに限定はされない。例えば、別途、ガラス板、金属板、プラスチックシートなどのシート状の仮支持体に塗布液を塗布、乾燥して蛍光体層を形成した後、この蛍光体層を基板12上に押圧するか、あるいは接着剤を用いるなどして、仮支持体から基板12に蛍光体層を転写して、基板12に蛍光体層14を形成する方法を利用してもよい。
また、必要に応じて、蛍光体層14の形成に先立ち、あるいは形成後に、導電層や光反射層等の、各種の作用を発現する層を形成してもよい。
【0054】
また、蛍光体層14を形成したら、必要に応じて、加熱ローラ対やカレンダ機等を用いて、加熱圧縮処理を行なう。
加熱圧縮の条件は、形成した蛍光体層14に応じて、適宜、設定すればよい。
【0055】
一方で、溶剤に前述のような樹脂を溶解し、さらに、無機粒子を所定量添加して攪拌/分散して、保護膜16を形成するための塗布液を調製する。
ここで、本発明においては、保護膜16中の無機粒子の含有量は、その他の固形分に対して8〜18重量%であるので、この塗布液は、無機粒子の重量が、無機粒子以外の成分の内の固形分の重量に対して8〜18重量%の範囲となるように調製する。
【0056】
溶媒は、先と同様、用いる樹脂に応じて、これを溶解可能な各種の溶媒を用いればよく、蛍光体層14の塗布液と同様のものが例示される。
なお、保護膜16を形成する樹脂としてフッ素系樹脂を用いる場合、フッ素系樹脂は、一般に有機溶媒に不溶であるが、特にフルオロオレフィンを共重合体成分として含む共重合体は、共重合する他(すなわちフルオロオレフィン以外)の構成単位によっては一般的な有機溶媒に可溶となるので、好適に利用可能である。このような共重合体の例としてはフルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体を挙げることができる。また、ポリテトラフルオロエチレンおよびその変成体も、パーフルオロ溶媒のような適当なフッ素系有機溶媒に対して可溶性であるので、上記フルオロオレフィンを共重合体成分として含む共重合体と同様に、塗布によってフッ素系樹脂を含む樹脂組成物層を成膜することができる。
【0057】
また、蛍光体層14の塗布液と同様、必要に応じて、前述の分散剤や可塑剤を添加してもよい。また、保護膜16を形成するための塗布液には、保護膜の防汚性を向上するために、公知のシリコーンオイル、ワックス、反応性シリコン等を添加してもよい。
さらに、保護層16を形成するための塗布液には、必要に応じて、保護層16を形成する樹脂(成分)を重合させる成分(硬化剤/架橋剤)を添加してもよい。
【0058】
このようにして調製した塗布液を、目的とする保護膜16の厚さとなるように、蛍光体層14に塗布し、乾燥(硬化)することで、保護膜16を形成する。ここで、この塗布液は、その他の固形分に対して8〜18重量%の無機粒子を含有するので、前述のように、蛍光体層14が硬化剤を含有していなくても、塗布した塗布液の溶剤成分が蛍光体層14に染み込む事がなく、塗布液の乾燥によって蛍光体層14中にブリスタが発生することもない。
塗布液の塗布方法は、蛍光体層14と同様に行なえばよい。また、塗布液の乾燥は、必要に応じて加熱等を行なってもよいのも、同様である。
【0059】
以上、本発明の放射線像変換パネルについて、詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の変更や改良を行なってもよいのは、もちろんである。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の放射線像変換パネルの製造方法の具体的実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。
【0061】
[実施例1]
(1)蛍光体層の形成
輝尽性蛍光体粒子として、平均粒径が7μmのBaF(Br0.850.15):Eu2+粒子を1400g、平均粒径が2μmのBaF(Br0.850.15):Eu2+粒子を600g、結合剤として、ポリウレタンエラストマー(パンデックスT−5265HM[固形]、大日本インキ化学工業社製)を46.7g、黄変防止剤として、エポキシ樹脂(jER#1001[固形]、油化シェルエポキシ社製)を20g、それそれ、準備した。
これらの材料を、380gのメチルエチルケトン(MEK)と、163gの酢酸ブチルとの混合溶媒に添加し、プロペラミキサを用いて攪拌することにより、蛍光体層14を形成するための塗布液を調製した。
【0062】
仮支持体として、シリコーン系離型剤が塗布されたPETフィルムを用意した。
この仮支持体の表面に,ドクターブレードを用いて、先に調製した蛍光体層14を形成するための塗布液を塗布し、乾燥した後、仮支持体から引き剥がすことにより、厚さ405μmの蛍光体層14を形成した。
【0063】
(2)導電層の形成
導電剤として、SnO2(Sbドープ)針状微粒子(長軸:0.2〜2μm、短軸:0.01〜0.02μm、FS−10P、石原産業社製)のMEK分散体(固形分30重量%)を500g、樹脂として、飽和ポリエステル樹脂(バイロン300、東洋紡社製)を60g、硬化剤として、ポリイソシアネート(タケネートD140N[固形分75%]、三井武田ケミカル社製)を6.6g、それぞれ準備した。
【0064】
上記材料をMEKに添加し、混合分散して、粘度0.02〜0.05Pa・sの塗布液を調製した。
この塗布液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(支持体、厚さ188μm、ヘイズ度:約27、ルミラーS−10、東レ社製)の表面に、ドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、導電層(層厚:2μm)を形成した。
【0065】
(3)光反射層の形成
光反射性物質として、高純度アルミナ微粒子(平均粒子径:0.4μm、UA−5105、昭和電工社製)を500g、結合剤として、軟質アクリル樹脂(クリスコートP−1018GS[20%トルエン溶液]、大日本インキ化学工業(株)製)を112g、着色剤として、群青(SM−03S、第一化成工業(株)製)を2.5g、カップリング剤として、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903、信越化学社製)を5g、それぞれ準備した。
【0066】
上記材料をMEKと酢酸ブチルとの混合溶媒に添加し、混合分散して、粘度2〜3Pa・sの塗布液を調製した。
この塗布液を、前記導電層の表面にドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、光反射層(層厚:約70μm)を形成することにより、基板12を作製した。前記蛍光体粒子の発光ピーク波長(400nm)における光反射層の反射率は98%であった。
【0067】
次いで、カレンダ機を用いて、上側ロール温度45℃、下側ロール温度45℃、圧力48kg/cm2、送り速度0.3m/minの条件で、蛍光体層14と基板12との加熱融着・圧縮処理を行なった。
【0068】
(4)保護膜の形成
無機粒子として、アルミナ粒子(平均粒径0.5μm)を6.1g、樹脂として、フッ素系樹脂(フルオロオレフィン-ビニルエーテル共重合体)(ルミフロンLF200[60%キシレン溶液]、旭硝子社製)を85.2g、架橋剤として、ポリイソシアネート(タケネートD140N[固形分75%]、三井武田ケミカル社製)を23.1g、触媒として、ジブチルチンジラウレート(KS1260、共同薬品社製)を0.35g、それぞれ、準備した。
これらの材料を、100gのMEKと120gのシクロヘキサンとの混合溶媒に添加し、プロペラミキサを用いて攪拌することにより、保護膜16を形成するための塗布液を調製した。すなわち、本例において、保護膜16中における無機粒子の量は、樹脂に対して9重量%である(6.1/(85.2×0.6+23.1×0.75+0.35))。
【0069】
次いで、蛍光体層14の上に、ドクターブレードを用いて、調製した保護膜16を形成するための塗布液を塗布し、乾燥することにより、厚さ3μmの保護膜16を形成して、変換パネル10を作製した。
【0070】
[実施例2]
保護膜16を形成するための塗布液の調製において、添加するアルミナ粒子の量を9.1gとした以外は、前記実施例1と全く同様にして、変換パネル10を作製した。
すなわち、本例において、保護膜16中における無機粒子の量は、樹脂に対して13量%である。
【0071】
[実施例3]
保護膜16を形成するための塗布液の調製において、添加するアルミナ粒子の量を12.1gとした以外は、前記実施例1と全く同様にして、変換パネル10を作製した。
すなわち、本例において、保護膜16中における無機粒子の量は、樹脂に対して18重量%である。
【0072】
[比較例1]
蛍光体層14を形成するための塗布液の調製において、さらに、結合剤の硬化剤としてイソシアネート化合物(コロネートXH、日本ポリウレタン工業社製)を添加し、かつ、保護膜16を形成するための塗布液の調製において、アルミナ粒子に代えてメラミン樹脂粒子(エポスターS6、日本触媒社製)を用いた以外は、前記実施例3と全く同様にして変換パネルを作製した。
すなわち、本例において、保護膜中における有機粒子の量は、樹脂に対して18重量%である。
【0073】
[比較例2]
保護膜16を形成するための塗布液の調製において、アルミナ粒子に代えてメラミン樹脂粒子(エポスターS6、日本触媒社製)を用いた以外は、前記実施例3と全く同様にして変換パネルを作製した。
すなわち、本例において、保護膜中における有機粒子の量は、樹脂に対して18重量%である。
【0074】
[比較例3]
保護膜16を形成するための塗布液の調製において、添加するアルミナ粒子の量を3gとした以外は、前記実施例1と全く同様にして、変換パネル10を作製した。
すなわち、本例において、保護膜16中における無機粒子の量は、樹脂に対して4重量%である。
【0075】
[比較例4]
保護膜16を形成するための塗布液の調製において、添加するアルミナ粒子の量を18.2gとした以外は、前記実施例1と全く同様にして、変換パネル10を作製した。
すなわち、本例において、保護膜16中における無機粒子の量は、樹脂に対して26重量%である。
【0076】
[実施例4]
保護膜16を形成するための塗布液の調製において、アルミナ粒子に代えてシリカ粒子(AEROSIL R104、日本アエロジル社製)を用いた以外は、前記実施例1と全く同様にして変換パネル10を作製した。
すなわち、本例において、保護膜中における無機粒子の量は、樹脂に対して9重量%である。
【0077】
[比較例5]
厚さ6μmのPETフィルムに接着剤としてポリエステル系樹脂(厚さ1.5μm)を塗布した保護フィルム(ラミネートフィルム)を準備した。
蛍光体層14を形成した後、この保護フィルムを蛍光体層14の表面に貼着して、保護膜16を形成した(塗布による保護膜16は無し)以外は、実施例1と全く同様にして変換パネル10を作製した。
【0078】
得られた各変換パネル10について、以下の検査を行なった。
[ブリスタNG部の有無]
得られた各変換パネル10について、可視光による表面の目視検査、および、X線照射による画像出し検査によって、蛍光体層14に生じたブリスタに起因する画質劣化部が存在するか否か(ブリスタNG部の有無)を確認した。
【0079】
[画質評価(DQE)]
得られた各変換パネル10について、IEC規格(IEC62220−1)に準拠して、1mR−1cyにおけるDQE(Detective Quantum Efficency:検出量子効率)を測定した。DQEの測定は、ブリスタの発生部を避けて行なった。
なお、DQEの評価は、比較例2におけるDQCを100として行なった。
以上の結果を、各変換パネル10の特徴と共に、下記表に示す。
【0080】
【表1】


上記表に示されるように、保護膜16に所定量の無機粒子を含有する本発明の変換パネルは、いずれも、蛍光体層14のブリスタに起因する画質劣化が無く、かつ、良好な画質を有している。
これに対し、比較例1は、蛍光体層に硬化剤を添加しているため、保護膜16の粒子が有機粒子であっても、ブリスタに起因する画質劣化は無いが、硬化剤を使用しているため、画質が他の物よりも劣っている。また、比較例2は、保護膜16の粒子が有機粒子であるために、蛍光体層14にブリスタが発生し、これに起因する画質劣化が生じている。また、比較例3および比較例4は、保護膜16に無機粒子を用いているが、量が多すぎる/少なすぎるために、蛍光体層14にブリスタが発生し、これに起因する画質劣化が生じている。 さらに、保護膜16として保護フィルムを用いた比較例5は、保護フィルムによる画質劣化が生じてしまっている。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の放射線像変換パネルの一例の模式図である。
【符号の説明】
【0082】
10 (放射線画像)変換パネル
12 基板
14 蛍光体層
16 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体層と、この蛍光体層の上に形成された保護膜とを有する放射線像変換パネルであって、
前記蛍光体層が、蛍光体粒子と結合剤とを有し、かつ、前記結合剤の重合反応を起こす成分を含まないものであり、さらに、前記保護膜が、無機粒子を含有し、かつ、この保護膜の無機粒子以外の固形分に対して、前記無機粒子の重量比が8〜18重量%であることを特徴とする放射線像変換パネル。
【請求項2】
前記無機粒子がアルミナ粒子である請求項1に記載の放射線像変換パネル。
【請求項3】
前記無機粒子がシリカ粒子である請求項1に記載の放射線像変換パネル。
【請求項4】
前記保護膜を形成する樹脂がフッ素系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の放射線像変換パネル。
【請求項5】
前記保護膜が、蛍光体層に直接塗布されて形成されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の放射線像変換パネル。
【請求項6】
前記蛍光体層における結合剤の量が、前記蛍光体粒子に対して重量比で1/30以下である請求項1〜5のいずれかに記載の放射線像変換パネル。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−14666(P2010−14666A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177023(P2008−177023)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】