説明

放射線感受性ハロゲン化銀乳剤及びその製造方法

【目的】 粒子集団を形成している総銀を基準として少なくとも50モル%の塩化物を含んで成るハロゲン化銀粒子集団を含有する放射線感受性乳剤を開示する。
【構成】 粒子集団の投影面積の30%超が、{100}主面を有し且つ厚みが0.3μm未満である平板状粒子によって占められている。本発明の好ましい態様の一つでは、分散媒体中に存在するハロゲン化物の少なくとも50モル%を占める塩化物を用いてヨウ化物の存在において核生成させ、しかも分散媒体のpClを0.5〜3.5の範囲に維持することによって平板状粒子を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はハロゲン化銀写真に関する。より詳細には、本発明は写真分野で有用な放射線感受性ハロゲン化銀乳剤に関する。
【0002】
【従来の技術】塩化物、臭化物及びヨウ化物イオンの一つまたは組合せを含有する放射線感受性ハロゲン化銀乳剤は、写真分野において有用であることが長く認められている。各ハロゲン化物イオンの選択が、特定の写真上の利点を付与することは知られている。幅広い限界によって、最も共通に用いられている写真乳剤は臭化銀及び臭ヨウ化銀乳剤である。特定の写真用途には長年にわたり知られ且つ使用されているが、高塩化物乳剤のより迅速な現像性及び生態学的利点が、これらの乳剤を写真用途のより幅広い範囲にわたり使用することを促進している。本明細書で使用する用語「高塩化物乳剤」とは、総銀を基準として少なくとも50モル%の塩化物を含有しているハロゲン化銀乳剤を意味する。生態学的に最も魅力のある高塩化物乳剤は、極めて低濃度のヨウ化物イオンを含有する乳剤である。
【0003】1980年代には、以下の発見に基づきハロゲン化銀写真分野に著しい進歩があった。すなわち、写真乳剤において選ばれた平板状粒子の比率を増加させることによって、幅広い範囲の写真上の利点、例えば改善されたスピード−粒状度関係、絶対基準上及びバインダー硬化作用としての両方の増強された被覆力、より迅速な現像性、向上した熱安定性、向上した固有の分離及び分光増感付与された画像形成スピード、並びにモノ−及びマルチ−乳剤層フォーマット、が実現できるという発見である。
【0004】平板状粒子乳剤の定義については様々な定義が採用されているが、平板状粒子の機能的に有意な特徴は、平板状粒子の等価円直径(ECD、平板状粒子の投影面積に等しい面積を示す円の直径)と平板状粒子の厚み(t、向かい合う平行主面に垂直な平板状粒子の寸法)との間の大きな差異にある、という一般的なコンセンサスが存在する。平板状粒子の平均アスペクト比(ECD/t)及び平板度(ECD/t2 ;ECD及びtの単位はそれぞれμmである)が、当該技術分野で受け入れられているこの差異の数量記号である。平板状粒子乳剤と付随的に取り込まれた平板状粒子のみを含有する乳剤とを区別するため、総粒子投影面積のうち平板状粒子が占める割合が有意であること(例、30%超、より典型的には50%超)を要件とすることも、当該技術分野で認識されている慣例である。
【0005】「高アスペクト比平板状粒子乳剤」と一般に解される乳剤は、厚み0.3μm未満の平板状粒子が、8を上回る平均アスペクト比を示し且つ総粒子投影面積の50%超を占める場合の乳剤である。高塩化物平板状粒子乳剤では高い平均アスペクト比を達成することが困難なので、最良に利用可能な高い平均アスペクト比の近似値として5より大きな平均アスペクト比を許容することにしばしばなる。用語「薄い平板状粒子」は、一般に、0.2μm未満の厚みを示す平板状粒子であると解されている。用語「極薄平板状粒子」は、一般に、0.06μm以下の厚みを示す平板状粒子であると解されている。薄い高塩化物平板状粒子乳剤は製造が困難であり、そして極薄の高塩化物平板状粒子乳剤についてはまったく知られていない。
【0006】ほとんどすべての場合において、目的の粒子厚(t)、平均アスペクト比(ECD/t)、平均平板度(ECD/t2 )及び投影面積を満たす平板状粒子は、その製造の際に二つ以上の平行双晶面を八面体粒子中に導入することによって形成されてきた。規則的な八面体粒子は{111}結晶面により規定されている。双晶化により形成された平板状粒子の顕著な特徴は、向かい合う平行{111}主結晶面である。主結晶面は3回回転軸対称を持ち、典型的には三角形または六角形に見える。
【0007】平行双晶面を含有する平板状粒子乳剤の形成は、臭化銀乳剤の製造において最も容易に達成される。当該技術は写真上有用な濃度のヨウ化物を含ませることの利用可能性を生み出した。臭化物と対立する高濃度の塩化物を、単独でまたはヨウ化物との組合せで含有させることは困難であった。塩化銀は、{100}結晶面に位置する面を有する粒子を形成する傾向がはるかに強い点で、臭化銀と相違する。あいにく、{100}結晶面によって規定されている粒子の双晶化は、平板状を示す粒子を生み出さない。双晶化により高塩化物平板状粒子乳剤をうまく製造するためには、双晶面の形成と{111}結晶面の形成の両方を促進する条件を見い出す必要がある。さらに、乳剤を形成させた後の操作において、{100}結晶面を示す有利なより安定な形へ粒子が戻ることを防止するための注意を払わなければならない。
【0008】Wey は、米国特許第 4,399,215号で、高アスペクト比(ECD/t>8)を示す最初の塩化銀の平板状粒子乳剤を製造した。該平板状粒子は双晶形のもので、{111}結晶面に位置する3回回転軸対称の主面を示した。アンモニア性のダブルジェット沈澱法が使用された。その平板状粒子の厚みは、アンモニア熟成剤が平板状粒子を厚くしたため、当時の臭化銀や臭ヨウ化銀の平板状粒子乳剤と比較して厚いものであった。アンモニア熟成を達成するためには、比較的高いpHで乳剤を沈澱させる必要もあった。このことは、高塩化物乳剤の最小濃度(カブリ)を上昇させることが知られている。さらに、求める平板状粒子の幾何学的形状の崩壊を防止するため、臭化物イオン及びヨウ化物イオンの両方が平板状粒子からその形成の早期において排除された。
【0009】Wey らは、米国特許第 4,414,306号明細書において、総銀を基準として塩化物を40モル%まで含有する塩臭化銀乳剤を製造するための双晶化法を開発した。この製造方法は、高塩化物乳剤を製造するには至らなかった。
【0010】Maskaskyは、米国特許第 4,400,463号明細書(以降MaskaskyIと記す)において、他のハロゲン化物の有意な内部包含を許容する顕著な利点をもつ{111}主結晶面及び平行双晶面を有する平板状粒子を含有する高塩化物乳剤を製造するための戦略を開発した。その戦略は、特別に選ばれた合成ポリマー系解こう剤を、{111}結晶面の成長を促進する作用を有する粒子成長調節剤との組合せで使用することであった。有用な粒子成長調節剤として、吸着アミノアザインデン、好ましくはアデニンとヨウ化物イオンが開示されている。
【0011】Maskaskyは、米国特許第 4,713,323号明細書(以降Maskasky II と記す)において、アミノアザインデン成長調節剤と30マイクロモル/グラム以下のメチオニンを含有するゼラチン系解こう剤とを使用して、平行双晶面及び{111}主結晶面を有する平板状粒子を含有する高塩化物乳剤を製造することによって、技術水準を著しく進展させた。ゼラチン系解こう剤のメチオニン含有量は、好ましくないほどに高い場合、強い酸化剤(またはアルキル化剤;Kingらの米国特許第4,942,120号明細書)で処理することにより容易に低減できるので、Maskasky II は、従来より広く利用可能な解こう剤で開始して製造した、臭化物やヨウ化物イオンを有意に含む高塩化物平板状粒子乳剤をその技術範囲内に置いた。
【0012】MaskaskyI及びIIは、同様の平板状粒子を含む高塩化物乳剤を製造することができる粒子成長調節剤のさらなる研究を刺激した。Tufanoらは、米国特許第 4,804,621号明細書において、粒子成長調節剤としてジ(ヒドロアミノ)アジンを使用し;Takadaらは、米国特許第 4,783,398号明細書において、二価の硫黄環原子を含有する複素環式化合物を使用し;Nishikawa らは、米国特許第 4,952,491号明細書において、分光増感色素並びに二価硫黄原子含有複素環式及び非環式化合物を使用し;そしてIshiguroらは、米国特許第 4,983,508号明細書において、有機ビス−第四アミン塩を使用している。
【0013】Boggは、米国特許第 4,063,951号明細書において、平板状粒子が平行{100}主結晶面を有する最初の平板状粒子乳剤を報告した。Boggの平板状粒子は正方形または長方形の主面を示すので、慣例の平板状粒子の{111}主結晶面の3回回転軸対称がなかった。Boggはアンモニア性熟成法を使用して平板状粒子を製造したので、Wey との関連で先に記述した粒子の厚化やpHについての欠点に遭遇した。Boggに特許された方法は、7:1以下のアスペクト比を示す各粒子を製造するのに実行可能であった。こうして、そのように製造された平板状粒子乳剤の平均アスペクト比は実質的に7未満となることが当然であろう。このことは実施例3により確証されている(数字で特性付けられた粒子特徴で記載された乳剤のみ)。その乳剤の平均アスペクト比は2であり、最高のアスペクト比の粒子(図3の粒子A)も4にすぎない。Boggは、乳剤は1%以下のヨウ化物を含有することができると述べ、そして臭化物99.5%及びヨウ化物0.5%を含む乳剤のみを例示している。
【0014】Mignotは、米国特許第 4,386,156号明細書において、正方形や長方形の主面を有する平板状粒子を含有する臭化銀乳剤の製造においてアンモニア性熟成の欠点を回避するという、Boggの方法の改良方法を示している。Mignotは、臭化物イオン以外のハロゲン化銀熟成剤(例、チオシアネート、チオエーテルまたはアンモニア)の不在において熟成することを特に要求している。Mignotは、熟成を過剰臭化物イオンによっている。臭化銀の溶解度は塩化銀のそれよりも約2オーダー低いので、熟成を過剰臭化物イオンに頼ることは高塩化物平板状粒子の形成を不可能にする。
【0015】EndoとOkaji は、「An Empirical Rule to Modify the Habit of Silver Chloride to form Tabular Grains in an Emulsion」(The Journal of Photographic Science, Vol. 36, pp. 182-188, 1988 )において、チオシアネート系熟成剤の存在において製造された塩化銀乳剤について開示している。開示された手順による乳剤製造法は、混合{111}及び{100}面を示す一般的粒子集団に含まれる平板状粒子を少数含有する乳剤を製造した。
【0016】Mumaw 及び Haughの「Silver Halide Precipitation Coalescence Process 」(Journal of Imaging Science, Vol. 30, No. 5, Sept./Oct. 1986, pp. 198-299)は、本質的にEndo及びOkaji に累加したものであり、セクションIV−Bが特に関連している。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】平板状粒子の高塩化物乳剤が製造されてはいるが、従来の高塩化物平板状粒子が示す{111}主結晶面の安定性は高くないという欠点が示されている。このことは、相当の注意を払わない限り、乳剤製造の際に粒子の平板形状が崩壊しかねないことを意味している。
【0018】別の問題は、{111}主面を有する平板状粒子を製造する方法以外には、高塩化物の平板状粒子乳剤を製造するために利用できる方法がない、ということである。
【0019】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明の一態様は、粒子集団を形成している総銀を基準として少なくとも50モル%の塩化物を含んで成るハロゲン化銀粒子集団を含有し、該粒子集団の投影面積の30%超が平均厚み0.3μm未満の平板状粒子で占められている放射線感受性乳剤に関する。該乳剤は、平板状粒子が、{100}結晶面に位置している平行主面を有することを特徴とする。
【0020】好ましい態様では、{100}主面により規定された平板状粒子のうち、隣接主面縁比10未満及び厚み0.3μm未満の基準で選ばれた総粒子投影面積の50%を占める部分であって、しかもこれらの基準を満たす残るすべての平板状粒子よりも高いアスペクト比を示す部分が、8よりも大きな平均アスペクト比を示す。
【0021】別の態様では、本発明は、(1)銀塩及びハロゲン化物塩を分散媒体に導入する工程と、(2)該分散媒体中の条件を維持して{100}主面により規定された平板状粒子の形成を促進する工程とを含んで成る、{100}主面により規定された平板状粒子を含有する第二の好ましい態様のハロゲン化銀乳剤を製造する方法に関する。この方法は、{100}主面により規定された平板状粒子のうち、隣接主面縁比10未満及び厚み0.3μm未満の基準で選ばれた総粒子投影面積の50%を占める部分であって、しかもこれらの基準を満たす残るすべての平板状粒子よりも高いアスペクト比を示す該部分が、(1)8よりも大きな平均アスペクト比を示し且つ(2)その核生成部位にヨウ化物と少なくとも50モル%の塩化物とを内部に含有し、平板状粒子の少なくとも特定部分が、分散媒体中に存在するハロゲン化物の少なくとも50モル%を占める塩化物を用いてヨウ化物の存在において核生成させることにより形成され、そして分散媒体のpClが0.5〜3.5の範囲に維持されることを特徴とする。
【0022】本発明の好ましい態様の一つは、平板状粒子を形成させる新規方法の発見に基づくものである。粒子の形成中に平行双晶面を導入して平板度を誘発させ、よって{111}主面を有する平板状粒子を作り出す代わりに、溶液中の塩化物イオンを選定したpCl範囲内に維持しながら高塩化物核生成工程の際に分散媒体中にヨウ化物を存在させると、平板状粒子が{100}結晶面により規定されている高アスペクト比の平板状粒子乳剤が形成されることになる。
【0023】本発明の好ましい態様が平板状粒子乳剤を製造する新規方法の発見を示すだけでなく、この方法により製造される乳剤も新規である。さらに、粒子核生成の際にヨウ化物の存在を必要としない代わりの製造方法も開示するので、本発明の高塩化物平板状粒子にヨウ化物を取り込ませることは任意である。本発明は、今まで実現されなかったハロゲン化物含有量、ハロゲン化物分布及び粒子厚を有する{100}結晶面により規定された平板状粒子を当該技術の及ぶ範囲内とする。本発明は、粒子が{100}結晶面により規定されている最初の極薄平板状粒子乳剤を提供する。本発明は、高レベルの粒子安定性を示す高アスペクト比高塩化物平板状粒子乳剤を提供する。平板状粒子が{111}主面を有する高塩化物平板状粒子乳剤とは違い、本発明の乳剤は、平板形状を維持するために粒子の主面に吸着する形態学的安定化剤を必要としない。最後に、高塩化物乳剤に適用できることが明白である一方で、本発明は、高塩化物乳剤を越えて、幅広い範囲の臭化物、ヨウ化物及び塩化物濃度を含有するものにまで拡張される。
【0024】本発明は、粒子集団を形成している総銀を基準として少なくとも50モル%の塩化物を含んで成るハロゲン化銀粒子集団を含有し、該粒子集団の投影面積の30%超が平均厚み0.3μm未満の平板状粒子で占められている放射線感受性乳剤に関する。該平板状粒子は、{100}結晶面に位置する平行主面を有する。
【0025】本発明の好ましい態様では、{100}主面により規定された平板状粒子のうち、以下の基準(1)〜(3)、すなわち(1)10未満の隣接主面縁比、(2)0.3μm未満の厚み並びに(3)基準(1)及び(2)を満たす残るすべての平板状粒子よりも高いアスペクト比、で選ばれた、総粒子投影面積の50%を占めるものが、8よりも大きな平均アスペクト比を示す。
【0026】本発明の要件を満たす乳剤の同定及び選択変数の重要性は、典型的な乳剤を考慮することによってより良好に認識することができる。図1は、以下の実施例1で詳述する本発明の代表的な乳剤の炭素粒子レプリカの増影顕微鏡写真である。大部分の粒子が直交の四角形(正方形または長方形)面を有することがすぐにわかる。粒子面の直交の四角形は、それらが{100}結晶面であることを示唆している。
【0027】試料中の正方形面または長方形面を持たない少数粒子の投影面積が総粒子投影面積の計算値に含まれることは知られているが、これらの粒子が、{100}主面を有する平板状粒子集団の一部でないことは明白である。
【0028】針状またはロッド状の粒子(以降ロッドと称する)はほとんど観測できない。これらの粒子は、一寸法の長さが他のいずれかの寸法のそれの10倍を超え、そしてそれらの高い比率の縁長に基づいて所望の平板状粒子集団から除外することができる。ロッドが占める投影面積は小さいが、ロッドが存在する場合、それらの投影面積が総粒子投影面積を決めることは知られている。
【0029】残る粒子はすべて、{100}結晶面を示す正方形または長方形の主面を有する。これらの粒子には規則性の立方体粒子もある。すなわち、それらは互いに直交する長さが等しい縁を三つ有する粒子である。立方体粒子と平板状粒子とを区別するためには、粒子の影長を測定する必要がある。照射の角度(影の角度)を知ることで、その影の長さの測定値から粒子の厚みを算出することができる。立方体粒子の投影面積は、総投影面積の決定に含まれる。
【0030】平板状粒子の特性を定量するためには、正方形または長方形の面を示す残りの粒子の各々について一粒一粒評価する必要がある。各粒子の投影面積が総粒子投影面積を決定することは知られている。
【0031】正方形または長方形の面及び0.3μm未満の厚みを有する粒子の各々について検査する。各粒子の上面の投影面積(縁長の積)を記録する。粒子投影面積から粒子のECDを算出する。次いで、粒子の厚み(t)と粒子のアスペクト比(ECD/t)を算出する。
【0032】正方形または長方形の面及び0.3μm未満の厚みを有するすべての粒子を測定した後、これらの粒子をアスペクト比により等級付ける。アスペクト比が最も高い粒子を最上位とし、そして最も低い粒子を最下位に等級付ける。
【0033】アスペクト比の等級の最上位から始めて、総粒子投影面積の50%を占めるのに十分な平板状粒子を選定する。次いで、選定した平板状粒子集団のアスペクト比を平均する。図1の乳剤及び本発明の乳剤では、選定した平板状粒子集団の平均アスペクト比は8を上回る。本発明による好ましい乳剤では、選定した平板状粒子集団の平均アスペクト比は12を上回り、そして最適には少なくとも20を示す。典型的には、選定した平板状粒子集団の平均アスペクト比は50以下の範囲にあるが、100、200またはそれ以上のより高いアスペクト比を実現することが可能である。
【0034】総粒子投影面積の50%を占める選定した平板状粒子集団は、好ましくは5未満の、そして最適には2未満の主面縁長比を示す。主面縁長比が1(すなわち、等しい縁長)に近ければ近いほど、乳剤中に有意なロッド集団が存在する可能性が低くなる。さらに、縁比が低い平板状粒子ほど圧力減感されにくいと考えられている。
【0035】本発明の特に好ましい態様の一つでは、平板状粒子集団を、0.3μmの代わりに0.2μm未満の平板状粒子厚を基準として選定する。換言すれば、乳剤はこの場合薄い平板状粒子乳剤となる。
【0036】驚くべきことに、本発明の要件を満たす極薄平板状粒子乳剤が製造された。極薄平板状粒子乳剤は、その選定した平板状粒子集団が厚み0.06μm未満の平板状粒子からできている乳剤である。本発明の以前には、当該技術において知られている立方晶格子構造を示すハロゲン化物含量の極薄平板状粒子乳剤のみが、{111}主面により規定された平板状粒子を含有した。換言すると、極薄寸法を達成するためには、平行双晶面導入の機構によって平板状粒子を形成することが重要であると考えられていた。本発明により、選定した平板状粒子集団の平均厚みが0.02μm、そして0.01μmにさえも至る乳剤を製造することができる。極薄平板状粒子は非常に高い表面対体積比を示す。これにより極薄粒子の写真処理速度が促進される。さらに、分光増感したときには、極薄平板状粒子は、固有感度の分光領域と比較して増感の分光領域におけるスピードの非常に高い比率を示す。例えば、本発明による極薄平板状粒子乳剤は、全く無視できるレベルの青色感度を示すことができ、それゆえ、青色光を受けるところに配置された場合でさえも最小限の青色汚染を示す写真製品において緑色または赤色記録を提供することができる。
【0037】他の乳剤と区別する平板状粒子乳剤の特徴は、粒子等価円直径(ECD)対厚み(t)の比率である。この関係はアスペクト比(ECD/t)の項で定量的に表される。平板状粒子厚の重要性をより正確に評価すると考えられている別の定量化は平板度:T=ECD/t2 =AR/t(式中、Tは平板度、ARはアスペクト比、ECDは有効円直径(μm)、そしてtは粒子厚(μm)である)である。総粒子投影面積の50%を占める選定した平板状粒子集団は、25を上回る、そして好ましくは100を上回る平板度を示す。選定した平板状粒子集団は極薄であることができるので、1000以上に及ぶ非常に高い平板度も本発明の範囲内にあることは明白である。
【0038】選定された平板状粒子集団は、25を上回る平板度に適合した写真的に有用な大きさの平均ECDを示すことができる。写真上の有用性のためには10μm未満の平均ECDが意図されるが、ほとんどの写真用途において平均ECDが6μmを上回ることは稀である。選定された平板状粒子集団の最小粒子厚を有する最小平板度要件を満たす最小ECDはちょうど0.25μmを上回る。当業者には一般に理解されているように、より高いECDを示す選定された平板状粒子集団を有する乳剤は比較的高いレベルの写真感度を達成する上で有利であり、一方より低いECDを示す選定された平板状粒子集団を有する乳剤は低いレベルの粒状度を達成する上で有利である。
【0039】上記変数を満たす平板状粒子の選定された集団が総粒子投影面積の少なくとも30%を占めるならば、写真的に望ましい粒子集団が利用可能となる。本発明の乳剤の有利な特性は、0.3μm未満の厚み及び{100}主面を有する平板状粒子の集団が増加するとともに向上することが認められる。本発明による好ましい乳剤は、総粒子投影面積の少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%、そして最適には少なくとも90%が、{100}主面を有する平板状粒子によって占められている乳剤である。等級付けした平板状粒子の選択が、総粒子投影面積の70%または90%さえも占めるのに十分な平板状粒子に拡張する、上記の粒子についての記述を満たす乳剤を提供することが特に意図される。
【0040】上記の望ましい特徴を有する平板状粒子が総粒子投影面積の必要な比率を占めるならば、総粒子投影面積の残部は共沈澱粒子のどんな組合せによっても占められることができる。もちろん、乳剤を配合して特別な写真上の目的を達成することは当該技術分野では通常の慣例である。上記の選定された平板状粒子を満足する配合乳剤は特に意図される。
【0041】厚み0.3μm未満の平板状粒子が総粒子投影面積の少なくとも30%(好ましくは少なくとも50%)を占めない場合には、その乳剤は本発明の要件を満足せず、そして一般に写真的に劣る乳剤となる。ほとんどの用途(特に、分光増感を要する用途、迅速処理を要する用途、及び/または最小限の銀被覆量が求められる用途)について、大部分のまたはすべての平板状粒子が比較的厚い乳剤は、例えば、厚みが0.3μmを超える平板状粒子を高い比率で含有する乳剤は、写真的に劣る。{111}主面を有するより厚い(0.5μmまでの)平板状粒子を含有する乳剤は、一般には劣るが、ハロゲン化銀が固有感度を示す分光領域での光(例、青色光)を最大限に捕捉する技術における用途として提案されている。所望であれば、同様な用途に対して、{100}主面を有するより厚い平板状粒子を含有する乳剤を適用することができる。
【0042】より普通には、本発明の要件を満たしていない劣った乳剤は、立方体、双晶非平板状粒子及びロッドによって占められた総粒子投影面積の比率を過剰に有する。このような乳剤を図2に示す。粒子投影面積の大部分が立方体粒子によって占められている。またロッド集団も図1におけるよりもはるかに顕著である。少量の平板状粒子が存在するが、それらは総粒子投影面積の小さな部分を占めるにすぎない。
【0043】本発明の要件を満たす図1の平板状粒子乳剤と、図2の立方体粒子を主とする乳剤は、核生成の際のヨウ化物の管理を除いて同じ条件下で製造された。図2R>2の乳剤は塩化銀乳剤であり、一方図1の乳剤は少量のヨウ化物をさらに含む。
【0044】本発明の要件を満たす乳剤は新規沈澱方法の発見によって得られる。この方法では、{100}結晶面の出現を促進する条件下でヨウ化物イオンの存在における高塩化物環境において、粒子の核生成が起こる。粒子形成が起こると、銀イオン及び残りのハロゲン化物イオンによって形成された立方晶格子内へのヨウ化物の取り込みは、ヨウ化物イオンの直径が塩化物イオンよりもはるかに大きいために破壊的となる。取り込まれたヨウ化物イオンは、さらなる粒子成長の過程で規則的な(立方体の)粒子ではなく平板状粒子をもたらすことになる結晶の不規則性を導入する。
【0045】核生成の初期には、結晶構造内へヨウ化物イオンを取り込むと、一つ以上の立方晶面において一つ以上のらせん転位を有して形成された立方体粒子核がもたらされると考えられる。少なくとも一つのらせん転位を含有する立方晶面は、その後、規則的な立方晶面(すなわち、らせん転位を欠くもの)よりも速い速度でハロゲン化銀を受容する。立方晶面のうちの一つだけがらせん転位を含有する場合には、一つの面だけの粒子成長が促進されるので、成長が継続した結果得られる粒子構造はロッドとなる。これと同じ結果は、立方晶構造の二つの向かい合う平行面のみがらせん転位を含有する場合にも起こる。しかしながら、いずれか二つの隣接する立方晶面がらせん転位を含有する場合には、継続した成長が両面上の成長を促進するので平板状粒子構造が生み出される。この発明の乳剤の平板状粒子は、らせん転位を含有する二つ、三つまたは四つの面を有する粒子核によって作られると考えられる。
【0046】沈澱の初期には、分散媒体と、分散媒体中のハロゲン化物イオン濃度を監視するための慣例の銀及び参照電極とを含有する反応容器が提供される。少なくとも50モル%の塩化物(すなわち、分散媒体中のハロゲン化物イオン数の少なくとも半分が塩化物イオンである)である分散媒体中にハロゲン化物イオンを導入する。分散媒体のpClは、核生成時に{100}粒子面の形成を促進する値、すなわち、0.5〜3.5、好ましくは1.0〜3.0、最適には1.5〜2.5の範囲内に調整する。
【0047】粒子核生成工程は、銀ジェットを開放して銀イオンを分散媒体中に導入した時点で開始する。分散媒体にはヨウ化物イオンを、銀ジェットの開放と同時にまたは最適にはその開放前に導入することが好ましい。有効な平板状粒子の生成は、塩化銀中のヨウ化物の飽和限界に至る幅広い範囲のヨウ化物イオン濃度にわたって起こることができる。塩化銀中のヨウ化物の飽和限界値は、H. Hirsch, "Photographic Emulsion Grains with Cores: Part I. Evidence for the Presence of Cores", J. of Photog. Science, Vol. 10 (1962), pp. 129-134に、13モル%であることが報告されている。等モル比の塩化物及び臭化物イオンが存在するハロゲン化銀粒子では、銀を基準として27モル%以下のヨウ化物が粒子に取り込まれることができる。分離したヨウ化銀相の沈澱を避け、よって別の種類の望ましくない粒子の創製を防止するためには、ヨウ化物の飽和限界値未満で粒子の核生成及び成長を行うことが好ましい。核生成の初期における分散媒体中のヨウ化物イオン濃度を10モル%未満に維持することが一般に好ましい。実際には、所望の平板状粒子集団を達成するために核生成時に必要なヨウ化物の量はほんのわずかである。0.001モル%にまで低下した初期ヨウ化物イオン濃度が意図される。しかしながら、結果を再現する便宜上、初期ヨウ化物濃度を少なくとも0.01モル%に、そして最適には少なくとも0.05モル%に維持することが好ましい。
【0048】本発明の好ましい態様では、核生成工程中にヨウ塩化銀粒子核が生成する。核生成の際には分散媒体中に少量の臭化物イオンが存在することができる。粒子核中のハロゲン化物の少なくとも50モル%が塩化物イオンであることに適合するいかなる量の臭化物イオンでも核生成の際に分散媒体中に存在することができる。粒子核は、銀を基準として、好ましくは少なくとも70モル%、そして最適には少なくとも90モル%の塩化物を含有する。
【0049】粒子核の生成は、分散媒体中に銀イオンを導入すると即座に起こる。操作の便宜上及び再現性のため、核生成工程の際の銀イオン導入は便利な期間、典型的には5秒から1分未満の期間、延長することが好ましい。pClが先に記載した範囲内にある限り、核生成工程の際に分散媒体に新たな塩化物イオンを添加する必要はない。しかしながら、核生成工程の際に銀塩とハロゲン化物塩の両方を同時に導入することが好ましい。核生成工程の全体で銀塩と同時にハロゲン化物塩を添加する利点は、このことによって、銀イオンの添加開始後に生成したすべての粒子核が初期に生成した粒子核と本質的に同じハロゲン化物含有量となることを確実にすることができる点にある。核生成工程の際にヨウ化物イオンを添加することが特に好ましい。ヨウ化物イオンの析出速度は他のハロゲン化物のそれをはるかに上回るので、ヨウ化物は補充しないと分散媒体から消耗される。
【0050】核生成工程の際には便利な慣例の銀及びハロゲン化物イオン源のいずれでも使用できる。銀イオンは、銀塩水溶液、例えば硝酸銀溶液として導入することが好ましい。ハロゲン化物イオンは、アルカリまたはアルカリ土類ハロゲン化物、例えばリチウム、ナトリウム及び/またはカリウムの塩化物、臭化物、及び/またはヨウ化物として導入することが好ましい。
【0051】核生成工程の際に塩化銀または塩ヨウ化銀のリップマン粒子を分散媒体中に導入することは可能であるが、好ましくはない。この場合には、粒子核生成は既に起こっており、核生成工程と先に称した工程は実際には粒子面の不規則性を導入する工程となる。粒子面の不規則性を導入することが遅れることによる不利益は、そうでなければ得られるであろう平板状粒子よりも厚い粒子が生じることである。
【0052】核生成工程の前に反応容器中に含まれる分散媒体は、水と、上述の溶解したハロゲン化物イオンと、解こう剤を含んで成る。分散媒体は、ハロゲン化銀沈澱の便利な慣例の範囲内にあるいずれのpH(典型的には2〜8)でも示すことができる。必ずしも必要ではないが、分散媒体のpHを酸側、好ましくは5.0〜7.0に維持することが好ましい。分散媒体のpH調整には、鉱酸、例えば硝酸または塩酸、及び塩基、例えばアルカリ水酸化物、を使用することができる。pH緩衝液を含ませることも可能である。
【0053】解こう剤は、ハロゲン化銀写真乳剤及び特に平板状粒子ハロゲン化銀乳剤の沈澱に有用であることが知られている便利な慣例のいずれの形態でもとることができる。慣例の解こう剤についての概要はResearch Disclosure, Vol. 308, December 1989, Item 308119, Section IX に記載されており、その開示を本明細書に参照として取り入れる。Research Disclosure は、Kenneth Mason Publications, Ltd., Emsworth, Hampshire P010 7DD, England より発行されている。先に引用しそして本明細書に参照として取り入れたMaskaskyにより開示されている種類の合成ポリマー系解こう剤を使用することはできるが、ゼラチン系解こう剤(例、ゼラチン及びゼラチン誘導体)を使用することが好ましい。特に好ましい解こう剤は、低メチオニンゼラチン系解こう剤(すなわち、解こう剤1グラム当たりメチオニン30マイクロモル未満を含有するもの)、最適には解こう剤1グラム当たりメチオニン12マイクロモル未満のものであり、これらの解こう剤とその製造については先に引用したMaskasky II 及びKingらによって記載されており、その開示を本明細書では参照として取り入れる。しかしながら、MaskaskyI及びIIの乳剤に含まれるものとして教示された種類の粒子成長調節剤(例、アデニン)は、本発明の分散媒体に含めるには適当ではないことに注意すべきである。というのは、これらの粒子成長調節剤は双晶化を促進し且つ{111}主面を有する平板状粒子の形成を促進するからである。一般には、完成した乳剤を形成する分散媒体の少なくとも約10%、そして典型的には20〜80%が、核生成工程の初期時点に反応容器中に存在する。沈澱開始時点の反応容器中には比較的低いレベルの解こう剤、典型的には完成乳剤中に存在する解こう剤の10〜20%、を維持することが慣例である。核生成工程の際に形成した{100}面を有する薄い平板状粒子の比率を高めるには、分散媒体中の解こう剤濃度を核生成工程の初期時点の分散媒体の総重量の0.5〜6重量%の範囲とすることが好ましい。沈澱後の塗布用乳剤を製造するために、ゼラチン、ゼラチン誘導体並びにビヒクル及びビヒクル増量剤を添加することが従来からの慣例である。沈澱が完了した後には、ゼラチンやゼラチン誘導体中にいかなる固有レベルのメチオニンが存在してもよい。
【0054】核生成工程は、ハロゲン化銀乳剤の沈澱の便利な慣例のいずれの温度においても行うことができる。周囲温度付近(例、30℃)から約90℃以下の範囲の温度が意図され、35℃〜70℃の温度範囲が好ましい。
【0055】粒子核の生成はほとんど即座に起こるので、核生成工程の際には総銀の非常に小さな比率のみが反応容器中に導入されるべきである。典型的には、総銀の約0.1〜10モル%が核生成工程の際に導入される。
【0056】核生成工程に続き粒子成長工程が行われ、そこでは所望の平均ECDの{100}主面を有する平板状粒子が得られるまで粒子核を成長させる。核生成工程の目的は、所望の取り込まれた結晶構造の不規則性を有する粒子集団を形成させることである一方、成長工程の目的は、別の新たな粒子の生成を回避しまたは最小限に抑えながら、存在する粒子集団の上に別の新たなハロゲン化銀を析出させる(成長させる)ことである。もしも成長工程の際に別の新たな粒子が生成すると、乳剤の多分散性が増大し、そして反応容器中の条件を核生成工程について先に記載したように維持しなければ、成長工程において生成した別の新たな粒子集団は上述の望ましい平板状粒子特性を有さない。
【0057】最も単純な態様では、本発明による乳剤の製造方法は、最初から最後まで銀イオンの導入を中断することのないシングルジェット沈澱法で行うことができる。当業者には一般に認識されているように、一定の銀イオン導入速度を用いてさえも粒子生成から粒子成長への自発的な移行が起こる。なぜなら、粒子核の寸法の増加に伴い粒子が分散媒体から銀及びハロゲン化物イオンを受容できる速度も増加し、これが、新たな粒子が生成できないほど十分に迅速な速度で粒子が銀及びハロゲン化物イオンを受容する点に到達するまで継続するからである。操作上は簡便ではあるが、シングルジェット沈澱法ではハロゲン化物含有量やプロフィールが制限され、そして一般により多分散性の粒子集団がもたらされる。
【0058】獲得可能な最も幾何学的に均一な粒子集団を有する写真乳剤を製造することが通常は好ましい。なぜなら、これによって、写真用途のためにより高いパーセントの総粒子集団を最適に増感することやその他最適に製造することが可能になるからである。さらに、比較的単分散性の乳剤を配合して目的のセンシトメトリー的プロフィールを得ることの方が、目的のプロフィールに適合する単一の多分散性の乳剤を沈澱させることよりも通常は便利である。
【0059】本発明による乳剤の製造では、核生成工程が完結した時点で、その乳剤を所望の最終寸法及び形状にする成長工程へ進む前に、銀及びハロゲン化物塩の導入を中断することが好ましい。粒子の分散度を低減するのに十分な期間、核生成について先に記載した温度範囲内で乳剤を保持する。保持期間は1分から数時間の範囲にあることができるが、典型的な保持期間は5分から1時間の範囲にある。保持期間中には、比較的小さな粒子核が比較的大きな生き残る粒子核の上にオストワルド熟成し、その全体的な結果が粒子分散度の低減となる。
【0060】所望であれば、熟成速度を、保持期間の際に乳剤中に熟成剤を存在させることによって増加させることができる。熟成を促進させる慣例の簡便な方法は、分散媒体中のハロゲン化物イオン濃度を増加させる方法である。これが、熟成を促進する複数のハロゲン化物イオンと銀イオンとの錯体を創出する。この方法を採用する場合には、分散媒体中の塩化物イオン濃度を増加させることが好ましい。すなわち、分散媒体のpClを、塩化銀の溶解度の上昇が認められる範囲へ低下させることが好ましい。代わりに、慣例の熟成剤を使用することによって熟成を促進することができる。好ましい熟成剤は硫黄含有熟成剤、例えばチオエーテルやチオシアネートである。典型的なチオシアネート熟成剤が、Nietz らの米国特許第 2,222,264号明細書、Loweらの米国特許第第 2,448,534号明細書及びIllingsworthの米国特許第 3,320,069号明細書に開示されており、これらの開示を本明細書に参照として取り入れる。典型的なチオシアネート熟成剤が、McBride の米国特許第 3,271,157号明細書、Jones の米国特許第 3,574,628号明細書及びRosencrantz らの米国特許第 3,737,313号明細書に開示されており、これらの開示を本明細書に参照として取り入れる。より最近になって、クラウンチオエーテルが熟成剤としての使用について提案されている。
【0061】望ましい粒子核集団が生成したら、本発明の乳剤を得るための粒子成長は、{100}粒子面により規定されたハロゲン化銀粒子の沈澱用の便利な慣例のいずれの沈澱技法によっても進めることができる。核生成の際にはヨウ化物及び塩化物イオンが粒子中へ取り込まれることが必要であり、それゆえ完成した粒子中の核生成部位に存在するが、成長工程の際には、立方晶格子構造を形成することが知られているいずれのハロゲン化物またはハロゲン化物の混合物でも使用することができる。成長工程中には、ヨウ化物イオンまたは塩化物イオンのどちらも粒子中に取り込ませる必要はない。というのは、平板状粒子の成長をもたらす不規則な粒子核面は、一度導入されたら、ハロゲン化物またはハロゲン化物混合物が立方晶格子を形成するものである限り、沈澱されるハロゲン化物とは無関係に続く粒子成長の際に持続するからである。これは、ヨウ塩化銀の沈澱における13モル%(好ましくは6モル%)を上回るレベルのヨウ化物、ヨウ臭化銀の沈澱における40モル%(好ましくは30モル%)を上回るレベルのヨウ化物、そして臭化物及び塩化物を含有するヨードハロゲン化銀の沈澱における比例的に中間レベルのヨウ化物のみを排除する。成長工程中に臭化銀またはヨウ臭化銀を析出させる場合には、分散媒体中のpBrを1.0〜4.2、好ましくは1.6〜3.4の範囲に維持することが好ましい。成長工程中に塩化銀、ヨウ塩化銀、臭塩化銀またはヨウ臭塩化銀を析出させる場合には、分散媒体中のpClを核生成工程において先に記載した範囲内に維持することが好ましい。
【0062】成長工程の際には、銀塩及びハロゲン化物塩の両方を分散媒体中に導入することが好ましい。換言すると、もしあるならば添加ヨウ化物塩を残りのハロゲン化物塩と一緒にまたは独立したジェットを通して導入する、ダブルジェット沈澱法が意図される。銀塩及びハロゲン化物塩が導入される速度を制御して、再核生成(すなわち、新たな粒子集団の生成)を回避する。再核生成を回避するための添加速度の制御については当該技術分野で一般によく知られており、例えば、Wilgusの独国OLS第 2,107,118号、Irieの米国特許第 3,650,757号明細書、Kurzの米国特許第 3,672,900号明細書、Saito の米国特許第 4,242,445号明細書、Teitschiedらの欧州特許出願第80102242号明細書、及びWey の"Growth Mechanism ofAgBr Crystals in Gelatin Solution", Photographic Science and Engineering, Vol. 21, No. 1, Jan./Feb. 1977, p.14, et seq.に例示されている。
【0063】上述した粒子核生成の方法は、ヨウ化物を利用して平板状粒子の形成に必要な結晶の不規則性を生み出したが、代わりの核生成手順が考案され、以下の実施例に示したように、平板状粒子を作るために核生成の際にヨウ化物イオンを存在させるという要件を除外した。この代わりの手順は、さらに、核生成の際のヨウ化物の使用とも適合する。こうして、これらの手順は、平板状粒子生成のための核生成の際に完全に頼ることができるか、あるいは平板状粒子を作製するための核生成の際にヨウ化物イオンとの組合せにおいて頼ることができる。
【0064】ハロゲン化物及び銀イオンの有意なレベルの分散媒体過飽和が核生成時に存在する、いわゆる投入核生成(dump nucleations)を含む急速粒子核生成が、平板度の原因となる粒子の不規則性の導入を促進することが認められた。核生成は本質的に即座に達成されうるので、初期の過飽和から先に記載した好ましいpCl範囲への迅速な逸脱はこの方法と完全に一致する。
【0065】粒子核生成の際に分散媒体中の解こう剤濃度を1重量%未満に維持することが平板状粒子の形成を高めることも観測された。粒子核対の凝集が、平板状粒子の形成を誘発する結晶の不規則性を導入するための少なくとも一部の原因でありうると考えられている。限定された凝集が、分散媒体中の解こう剤を差し控えるか、あるいは解こう剤濃度を最初に制限するかして促進されることができる。Mignotの米国特許第 4,334,012号明細書は、核の凝集を防止するために可溶性塩の反応生成物の除去と共に解こう剤不在における粒子核生成について説明している。粒子核の限定凝集は望ましいと考えられるので、粒子核の凝集を排除するMignotの活性介在物は除外されるかまたは緩和されることができる。粒子表面に対して低減された付着性を示す一種以上の解こう剤を使用することによって、限定された粒子凝集を高めることも意図される。例えば、Maskasky II が開示した種類の低メチオニンゼラチンは、より高濃度のメチオニンを含有するゼラチンよりも、粒子表面に吸着する力が弱いことが一般に認識されている。さらに緩和されたレベルの粒子吸着は、いわゆる「合成解こう剤」、すなわち、合成ポリマー由来の解こう剤、によって達成できる。粒子核の限定凝集と適合する解こう剤の最大量は、もちろん粒子表面への吸着力に関係する。銀塩の導入直後に粒子核生成が完了したら、残りの沈澱工程については、解こう剤濃度を便利な慣例のいずれの濃度へ増加させてもよい。
【0066】本発明の乳剤は、塩化銀、臭塩化銀、ヨウ塩化銀、ヨウ臭塩化銀及び臭ヨウ塩化銀乳剤(ハロゲン化物は濃度増加順に命名されている)を含む。本発明は、高塩化物(塩化物が50モル%を超えるもの)の平板状粒子乳剤を提供することに特に有利である。というのは、{111}面により規定されている平板状粒子を有する従来の高塩化物平板状粒子乳剤は、もともと不安定であり、しかも粒子が非平板形状に逆行するのを防止するために形態学的安定剤を存在させることが必要であるからである。本発明による特に好ましい高塩化物乳剤は、70モル%を上回る(最適には90モル%を上回る)塩化物を含有する乳剤である。
【0067】本発明の実施には重要ではないが、{100}主面を有する平板状粒子の集団を最大限にするのに使用できるさらなる手順は、乳剤製造の際に乳剤中に非{100}粒子結晶面の出現を抑制することができる剤を含ませることである。抑制剤は、使用した場合、粒子核生成の際に、粒子成長の際に、あるいは沈澱全体を通して活性であることができる。
【0068】意図される沈澱条件下で有用な抑制剤は、共鳴安定化π電子対を有する窒素原子を含有する有機化合物である。共鳴安定化によって、比較的酸性の沈澱条件下での窒素原子のプロトン化が防止される。
【0069】窒素原子のπ電子対の安定化に芳香族の共鳴を頼ることができる。窒素原子は、アゾールまたはアジン環のように芳香環に含まれるか、あるいは芳香環の環置換基であることができる。
【0070】好ましい態様の一つにおいて、抑制剤は以下の式、
【0071】
【化1】


【0072】(上式中、Zは、好ましくは炭素及び窒素の環原子により形成された5員または6員芳香環構造を完成するのに必要な原子を表す)を満たすことができる。好ましい芳香環は、窒素原子を1個、2個または3個含有するものである。特に意図される環構造には、2H−ピロール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,3,5−トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン及びピリダジンが含まれる。
【0073】安定化窒素原子が環置換基である場合には、好ましい化合物は以下の式、
【0074】
【化2】


【0075】(上式中、Arは炭素原子5〜14個を含有する芳香環構造であり、そしてR1及びR2 は、独立に水素、Ar、または適当ないずれかの脂肪族基であるか、あるいは一緒に5員または6員環を完成する)を満足する。Arは、フェニルまたはナフチルのような炭素環式芳香環であることが好ましい。代わりに、上述の窒素と炭素を含有する芳香環を、環の炭素原子により式IIの窒素原子に結合させることができる。この場合には、得られた化合物は式I及び式IIの両方を満足する。幅広い種類の脂肪族基のいずれを選択してもよい。最も簡便に意図される脂肪族基はアルキル基、好ましくは炭素原子1〜10個を含有するもの、最も好ましくは炭素原子1〜6個を含有するものである。ハロゲン化銀の沈澱に適合することが知られているアルキル基のいかなる官能基でも存在することができる。5員または6員環を示す環式脂肪族置換基、例えばシクロアルカン、シクロアルケン並びに脂肪族複素環式環、例えば酸素及び/または窒素異種原子を含有するもの、を使用することも意図される。シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジニル、ピペリジニル、フラニル及び同様な複素環式環が特に意図される。
【0076】以下の化合物は、式I及び/または式IIを満たす意図された化合物の代表例である。
【0077】
【化3】


【0078】
【化4】


【0079】
【化5】


【0080】
【化6】


【0081】
【化7】


【0082】
【化8】


【0083】
【化9】


【0084】
【化10】


【0085】
【化11】


【0086】
【化12】


【0087】
【化13】


【0088】好ましい抑制剤及びその有用な濃度の選択は、以下の選択手順によって達成することができる。抑制剤としての使用が期待される化合物を、平均粒子縁長0.3μmの立方体粒子から本質的になる塩化銀乳剤に添加する。乳剤は、0.2M酢酸ナトリウム中にあり、pClが2.1であり、そして検討される化合物のpKaよりも少なくとも1単位大きなpHを示す。乳剤を抑制剤を存在させて75℃で24時間保持する。24時間後に顕微鏡で観察し、立方体粒子の{100}結晶面の縁が、該化合物を含まないことのみが違う対照試料と比べてより鋭い場合には、導入された該化合物は抑制剤作用を有する。{100}結晶面の交わりの縁がより鋭いことの重要性は、イオンが分散媒体へ再入することにおいて、粒子の縁が粒子上で最も活性な部位であるという事実にある。鋭い縁を維持することによって、例えば丸みのある縁や角に存在するような非{100}結晶面の出現を抑制剤が作用して抑制する。場合によっては、溶解塩化銀が立方体粒子の縁上に排他的に析出する代わりに、{100}結晶面により規定された新たな粒子集団が形成する。最適な抑制剤活性は、新たな粒子集団が平板状粒子であって、該平板状粒子が{100}結晶面によって規定されている場合に起こる。
【0089】ホストとして作用する平板状粒子上に銀塩をエピタキシャル的に析出させることが特に意図される。高塩化物ハロゲン化銀粒子上への従来のエピタキシャル析出については、Maskaskyの米国特許第 4,435,501号明細書(特に実施例24B);Ogawa らの米国特許第 4,786,588号及び同第 4,791,053号明細書;Hasebeらの米国特許第 4,820,624号及び同第 4,865,962号明細書;Sugimoto及びMiyakeの "Mechanism of Halide Conversion Process of Colloidal AgCl Microcrystals by Br- Ions", Parts I and II, Journal of Colloid and Interface Science, Vol. 140, No. 2, Dec. 1990, pp. 335-361;Houle らの米国特許第 5,035,992号明細書;並びに特願平2-252649号(優先権02.03.90-JP 051165日本)及び特願平2-288143号(優先権04.04.90-JP 089380日本)に説明されている。
【0090】特別に述べてきた特徴とは別に、平板状粒子乳剤の製造手順や、それにより製造された平板状粒子、及びそれらの写真分野での使用は、便利な慣例のいかなる形態をもとることができる。このような慣例の特徴は、以下の開示により説明されており、これらを参照とする: ICBR-1 Research Disclosure, Vol. 308, December 1989, Item 308,119; ICBR-2 Research Disclosure, Vol. 225, January 1983, Item 22,534;
ICBR-3 Wey らの米国特許第 4,414,306号(1983年11月 8日発行)
ICBR-4 Solberg らの米国特許第 4,433,048号(1984年 2月21日発行)
ICBR-5 Wilgusらの米国特許第 4,434,226号(1984年 2月28日発行)
ICBR-6 Maskaskyの米国特許第 4,435,501号(1984年 3月 6日発行)
ICBR-7 Maskaskyの米国特許第 4,643,966号(1987年 2月17日発行)
ICBR-8 Daubendiekの米国特許第 4,672,027号(1987年 1月 9日発行)
ICBR-9 Daubendiekの米国特許第 4,693,964号(1987年 8月15日発行)
ICBR-10 Maskaskyの米国特許第 4,713,320号(1987年12月15日発行)
ICBR-11 Saitouらの米国特許第 4,797,354号(1989年 1月10日発行)
ICBR-12 Ikeda らの米国特許第 4,806,461号(1989年 2月21日発行)
ICBR-13 Makinoらの米国特許第 4,853,322号(1989年 8月 1日発行)
ICBR-14 Daubendiekの米国特許第 4,914,014号(1990年 4月 3日発行)。
【0091】
【実施例】本発明は、以下の実施例を参照することによってさらによく理解することができる。
【0092】実施例1(本発明)
本実施例は、本発明の要件を満足する極薄平板状粒子ヨウ塩化銀乳剤の製造について説明するものである。
【0093】低メチオニンゼラチン1.75重量%と、0.011M塩化ナトリウムと、1.48×10-4Mヨウ化カリウムとを含有する溶液2030mLを、攪はんされた反応容器に供給した。反応容器の内容物を40℃に維持し、そしてpClは1.95とした。
【0094】この溶液を激しく攪はんしながら、1.0M硝酸銀溶液30mLと0.99M塩化ナトリウム及び0.01ヨウ化カリウムの溶液30mLとをそれぞれ30mL/分の速度で同時に添加した。これにより核生成が達成され、総銀を基準として初期ヨウ化物濃度2モル%を有する結晶が生成した。
【0095】次いで、その混合物を40℃のまま10分間保持した。保持した後、pClを1.95に維持しながら、1.0M硝酸銀溶液と1.0MNaCl溶液を2mL/分で40分間同時に添加した。
【0096】得られた乳剤は、銀を基準としてヨウ化物0.5モル%を含有する平板状粒子ヨウ塩化銀乳剤であった。総粒子投影面積の50%は、0.3μm未満の厚み及び10未満の主面縁長比を有するすべての{100}平板状粒子のアスペクト比等級順位を基準として選ばれた、0.84μmの平均ECD及び0.037μmの平均厚を示す{100}主面を有する平板状粒子によって提供された。選ばれた平板状粒子集団は23の平均アスペクト比(ECD/t)及び657の平均平板度(ECD/t2 )を示した。選ばれた平板状粒子の主面縁長比は1.4であった。総粒子投影面積の72%は、{100}主面及び少なくとも7.5のアスペクト比を有する平板状粒子で占められていた。これらの平板状粒子は、0.75μmの平均ECD、0.045μmの平均厚、18.6の平均アスペクト比、及び488の平均平板度を示した。
【0097】該乳剤の粒子の代表例を図1に示した。
【0098】実施例2(比較例)
この乳剤は初期粒子集団の沈澱(核生成)におけるヨウ化物の重要性を例示するものである。
【0099】この乳剤は、実施例1の乳剤と同様にして沈澱させたが、但し、意図的にはヨウ化物をまったく添加しなかった。
【0100】得られた乳剤は、縁長約0.1〜0.5μmの立方体及びアスペクト比の非常に低い長方形粒子から主としてなるものであった。少数の大きなロッド及び高アスペクト比{100}平板状粒子が存在したが、有用な量の粒子集団を構成しなかった。
【0101】この乳剤の粒子の代表的試料を図2に示した。
【0102】実施例3(本発明)
本実施例は、{100}主面及び7.5より大きなアスペクト比を有する平板状粒子が総粒子投影面積の90%を占めている本発明による乳剤を例示する。
【0103】低メチオニンゼラチン3.52重量%と、0.0056M塩化ナトリウムと、1.48×10-4Mヨウ化カリウムとを含有する溶液2030mLを、攪はんされた反応容器に供給した。反応容器の内容物を40℃に維持し、そしてpClは2.25とした。
【0104】この溶液を激しく攪はんしながら、2.0M硝酸銀溶液30mLと1.99M塩化ナトリウム及び0.01ヨウ化カリウムの溶液30mLとをそれぞれ60mL/分の速度で同時に添加した。これにより核生成が達成され、総銀を基準として初期ヨウ化物濃度1モル%を有する結晶が生成した。
【0105】次いで、その混合物を40℃のまま10分間保持した。保持した後、pClを2.25に維持しながら、0.5M硝酸銀溶液と0.5MNaCl溶液を8mL/分で40分間同時に添加した。次いで、pClを2.25に維持しながら、0.5MAgNO3 溶液及び0.5MNaCl溶液を流速を8mL/分から16mL/分へ直線的に増加させながら130分間にわたり同時に添加した。
【0106】得られた乳剤は、銀を基準としてヨウ化物0.06モル%を含有する平板状粒子ヨウ塩化銀乳剤であった。総粒子投影面積の50%は、0.3μm未満の厚み及び10未満の主面縁長比を有するすべての{100}平板状粒子のアスペクト比等級順位を基準として選ばれた、1.86μmの平均ECD及び0.082μmの平均厚を示す{100}主面を有する平板状粒子によって提供された。選ばれた平板状粒子集団は24の平均アスペクト比(ECD/t)及び314の平均平板度(ECD/t2 )を示した。選ばれた平板状粒子の主面縁長比は1.2であった。総粒子投影面積の93%は、{100}主面及び少なくとも7.5のアスペクト比を有する平板状粒子で占められていた。これらの平板状粒子は、1.47μmの平均ECD、0.086μmの平均厚、17.5の平均アスペクト比、及び222の平均平板度を示した。
【0107】実施例4(本発明)
本実施例は、実施例3の乳剤と同様にして製造された乳剤を例示するが、初期のヨウ化物は0.08モル%そして最終のヨウ化物は0.04モル%であった。
【0108】低メチオニンゼラチン3.52重量%と、0.0056M塩化ナトリウムと、3.00×10-5Mヨウ化カリウムとを含有する溶液2030mLを、攪はんされた反応容器に供給した。反応容器の内容物を40℃に維持し、そしてpClは2.25とした。
【0109】この溶液を激しく攪はんしながら、5.0M硝酸銀溶液30mLと4.998M塩化ナトリウム及び0.002ヨウ化カリウムの溶液30mLとをそれぞれ60mL/分の速度で同時に添加した。これにより核生成が達成され、総銀を基準として初期ヨウ化物濃度0.08モル%を有する結晶が生成した。
【0110】次いで、その混合物を40℃のまま10分間保持した。保持した後、pClを2.25に維持しながら、0.5M硝酸銀溶液と0.5MNaCl溶液を8mL/分で40分間同時に添加した。
【0111】得られた乳剤は、銀を基準としてヨウ化物0.04モル%を含有する平板状粒子ヨウ塩化銀乳剤であった。総粒子投影面積の50%は、0.3μm未満の厚み及び10未満の主面縁長比を有するすべての{100}平板状粒子のアスペクト比等級順位を基準として選ばれた、0.67μmの平均ECD及び0.035μmの平均厚を示す{100}主面を有する平板状粒子によって提供された。選ばれた平板状粒子集団は20の平均アスペクト比(ECD/t)及び651の平均平板度(ECD/t2 )を示した。選ばれた平板状粒子の主面縁長比は1.9であった。総粒子投影面積の52%は、{100}主面及び少なくとも7.5のアスペクト比を有する平板状粒子で占められていた。これらの平板状粒子は、0.63μmの平均ECD、0.036μmの平均厚、18.5の平均アスペクト比、及び595の平均平板度を示した。
【0112】実施例5(本発明)
本実施例は、初期粒子集団がヨウ化物6.0モル%を含有しそして最終乳剤がヨウ化物1.6モル%を含有する乳剤を例示する。
【0113】低メチオニンゼラチン3.52重量%と、0.0056M塩化ナトリウムと、3.00×10-5Mヨウ化カリウムとを含有する溶液2030mLを、攪はんされた反応容器に供給した。反応容器の内容物を40℃に維持し、そしてpClは2.25とした。
【0114】この溶液を激しく攪はんしながら、1.0M硝酸銀溶液30mLと0.97M塩化ナトリウム及び0.03ヨウ化カリウムの溶液30mLとをそれぞれ60mL/分の速度で同時に添加した。これにより核生成が達成され、総銀を基準として初期ヨウ化物濃度6.0モル%を有する結晶が生成した。
【0115】次いで、その混合物を40℃のまま10分間保持した。保持した後、pClを2.25に維持しながら、1.00M硝酸銀溶液と1.00MNaCl溶液を2mL/分で40分間同時に添加した。
【0116】得られた乳剤は、銀を基準としてヨウ化物1.6モル%を含有する平板状粒子ヨウ塩化銀乳剤であった。総粒子投影面積の50%は、0.3μm未満の厚み及び10未満の主面縁長比を有するすべての{100}平板状粒子のアスペクト比等級順位を基準として選ばれた、0.57μmの平均ECD及び0.036μmの平均厚を示す{100}主面を有する平板状粒子によって提供された。選ばれた平板状粒子集団は16.2の平均アスペクト比(ECD/t)及び494の平均平板度(ECD/t2 )を示した。選ばれた平板状粒子の主面縁長比は1.9であった。総粒子投影面積の62%は、{100}主面及び少なくとも7.5のアスペクト比を有する平板状粒子で占められていた。これらの平板状粒子は、0.55μmの平均ECD、0.041μmの平均厚、14.5の平均アスペクト比、及び421の平均平板度を示した。
【0117】実施例6(本発明)
本実施例は、初期粒子集団に2モル%のヨウ化物が存在し、そして成長工程で新たなヨウ化物を添加して最終ヨウ化物濃度を5モル%とした、極薄高アスペクト比{100}平板状粒子を例示する。
【0118】低メチオニンゼラチン1.75重量%と、0.0056M塩化ナトリウムと、1.48×10-4Mヨウ化カリウムとを含有する溶液2030mLを、攪はんされた反応容器に供給した。反応容器の内容物を40℃に維持し、そしてpClは2.3とした。
【0119】この溶液を激しく攪はんしながら、1.0M硝酸銀溶液30mLと0.99M塩化ナトリウム及び0.01ヨウ化カリウムの溶液30mLとをそれぞれ90mL/分の速度で同時に添加した。これにより核生成が達成され、総銀を基準として初期ヨウ化物濃度2モル%を有する結晶が生成した。
【0120】次いで、その混合物を40℃のまま10分間保持した。保持した後、pClを1.95に維持しながら、1.00M硝酸銀溶液と1.00MNaCl溶液を8mL/分で同時に添加しながら3.75×10-3Mヨウ化カリウムを14.6mL/分で10分間同時に添加した。
【0121】得られた乳剤は、銀を基準としてヨウ化物5モル%を含有する平板状粒子ヨウ塩化銀乳剤であった。総粒子投影面積の50%は、0.3μm未満の厚み及び10未満の主面縁長比を有するすべての{100}平板状粒子のアスペクト比等級順位を基準として選ばれた、0.58μmの平均ECD及び0.030μmの平均厚を示す{100}主面を有する平板状粒子によって提供された。選ばれた平板状粒子集団は20.6の平均アスペクト比(ECD/t)及び803の平均平板度(ECD/t2 )を示した。選ばれた平板状粒子の主面縁長比は2であった。総粒子投影面積の87%は、{100}主面及び少なくとも7.5のアスペクト比を有する平板状粒子で占められていた。これらの平板状粒子は、0.54μmの平均ECD、0.033μmの平均厚、17.9の平均アスペクト比、及び803の平均平板度を示した。
【0122】実施例7(本発明)
本実施例は、初期粒子集団に1モル%のヨウ化物が存在し、そして成長工程で50モル%の臭化物を添加して最終乳剤をヨウ化物0.3モル%、臭化物36モル%及び塩化物63.7モル%とした、高アスペクト比{100}平板状粒子を例示する。
【0123】低メチオニンゼラチン3.52重量%と、0.0056M塩化ナトリウムと、1.48×10-4Mヨウ化カリウムとを含有する溶液2030mLを、攪はんされた反応容器に供給した。反応容器の内容物を40℃に維持し、そしてpClは2.25とした。
【0124】この溶液を激しく攪はんしながら、1.0M硝酸銀溶液30mLと0.99M塩化ナトリウム及び0.01ヨウ化カリウムの溶液30mLとをそれぞれ60mL/分の速度で同時に添加した。これにより核生成が達成された。
【0125】次いで、その混合物を40℃のまま10分間保持した。保持した後、pClを2.25に維持しながら、0.5M硝酸銀溶液と0.25M塩化ナトリウム及び0.25M臭化ナトリウム溶液とを8mL/分で40分間同時に添加して、総銀を基準として2モル%の初期ヨウ化物濃度を有する結晶を形成させた。
【0126】得られた乳剤は、銀を基準としてヨウ化物0.27モル%及び臭化物36モル%を含有し、残りのハロゲン化物が塩化物である平板状粒子ヨウ臭塩化銀乳剤であった。総粒子投影面積の50%は、0.3μm未満の厚み及び10未満の主面縁長比を有するすべての{100}平板状粒子のアスペクト比等級順位を基準として選ばれた、0.4μmの平均ECD及び0.032μmの平均厚を示す{100}主面を有する平板状粒子によって提供された。選ばれた平板状粒子集団は12.8の平均アスペクト比(ECD/t)及び432の平均平板度(ECD/t2 )を示した。選ばれた平板状粒子の主面縁長比は1.9であった。総粒子投影面積の71%は、{100}主面及び少なくとも7.5のアスペクト比を有する平板状粒子で占められていた。これらの平板状粒子は、0.38μmの平均ECD、0.034μmの平均厚、11.3の平均アスペクト比、及び363の平均平板度を示した。
【0127】実施例8(本発明)
本実施例は、解こう剤としてフタレート化ゼラチンを使用した本発明の要件を満たす乳剤の製造を例示する。
【0128】フタレート化ゼラチン1.0重量%と、0.0063M塩化ナトリウムと、3.1×10-4Mヨウ化カリウムとの溶液310mLを含有する40℃の攪はんされた反応容器に、0.1M硝酸銀水溶液6.0mLと0.11M塩化ナトリウム溶液6.0mLとをそれぞれ6mL/分の速度で同時に添加した。
【0129】次いで、その混合物を40℃のまま10分間保持した。保持した後、混合物のpClを2.7に維持しながら、銀溶液と塩溶液とを流速を3.0mL/分から9.0mL/分に直線的に加速しながら15分間にわたり同時に添加した。
【0130】得られた乳剤は、高アスペクト比の平板状粒子ヨウ塩化銀乳剤であった。総粒子投影面積の50%は、0.3μm未満の厚み及び10未満の主面縁長比を有するすべての{100}平板状粒子のアスペクト比等級順位を基準として選ばれた、0.37μmの平均ECD及び0.037μmの平均厚を示す{100}主面を有する平板状粒子によって提供された。選ばれた平板状粒子集団は10の平均アスペクト比(ECD/t)及び330の平均平板度(ECD/t2 )を示した。総粒子投影面積の70%は、{100}主面及び少なくとも7.5のアスペクト比を有する平板状粒子で占められていた。これらの平板状粒子は、0.3μmの平均ECD、0.04μmの平均厚、及び210の平均平板度を示した。
【0131】該平板状粒子の正方形面及び長方形面の電子回折分析により、主面の{100}結晶配向が確認された。
【0132】実施例9(本発明)
本実施例は、解こう剤として未変性骨ゼラチンを使用した本発明の要件を満たす乳剤の製造を例示する。
【0133】骨ゼラチン0.69重量%と、0.0056M塩化ナトリウムと、1.86×10-4Mヨウ化カリウムとの溶液2910mLを55℃及びpH6.5で含有する攪はんされた反応容器に、4.0M硝酸銀溶液60mLと4.0M塩化銀溶液60.0mLとをそれぞれ120mL/分の速度で同時に添加した。
【0134】次いで、その混合物を5分間保持し、その間に低メチオニンゼラチン16.6g/Lの溶液5000mLを加え、そしてpHを6.5に、pClを2.25に調整した。保持した後、混合物のpClを2.25に維持しながら、銀溶液と塩溶液とを流速を10mL/分から25.8mL/分に直線的に加速しながら63分間にわたり同時に添加した。
【0135】得られた乳剤は、ヨウ化物0.01モル%を含有する高アスペクト比の平板状粒子ヨウ塩化銀乳剤であった。総粒子投影面積の約65%は、1.5μmの平均直径及び0.18μmの平均厚を有する平板状粒子によって提供された。
【0136】実施例10本実施例は、本発明による{100}塩化銀平板状粒子乳剤と、同等の平均粒子体積を示す塩化銀立方体粒子乳剤との写真性能を比較するものである。
【0137】
乳剤A;{100}主面を有する塩化銀平板状粒子乳剤沈澱(実施例3の乳剤を3倍にスケールアップして再製造)低メチオニンゼラチン3.52重量%と、0.0056M塩化ナトリウムと、1.48×10-4Mヨウ化カリウムとを含有する溶液6090mLを、40℃で攪はんされた反応容器に供給した。この溶液を激しく攪はんしながら、2.0M硝酸銀溶液90mLと1.99M塩化ナトリウム及び0.01ヨウ化カリウムの溶液90mLとをそれぞれ180mL/分の速度で同時に添加した。次いで、その混合物を40℃のまま10分間保持した。保持した後、pClを2.25に維持しながら、0.5M硝酸銀溶液と0.5M塩化ナトリウム溶液を24mL/分で40分間同時に添加し、次いで流速を24mL/分から48mL/分へ直線的に増加させながら130分間にわたり同時に添加した。次いで、pClを塩化ナトリウムで1.30に調整し、次いで限外濾過を用いて洗浄してpClを2.0とし、そして続いて塩化ナトリウムでpClを1.65に調整した。得られた乳剤は、ヨウ化物0.06モル%を含有する平板状粒子塩化銀乳剤であり、平均等価円直径1.45μm及び平均粒子厚0.13μmを示した。
【0138】増感乳剤Aについての最適な緑色光増感は、増感色素濃度、チオ硫酸ナトリウム5水和物、ジチオ硫酸金2水和物、及び65℃での保持時間を変化させる小規模の仕上げ実験をいくつか行うことによって見つけられた。最適な仕上げは以下の通りであった。40℃で溶融し且つ十分に攪はんした乳剤Aの0.5モル部に、0.800ミリモル/モルの緑色光増感色素Aを添加し、次いで20分間保持した。これに、0.10mg/モルのチオ硫酸ナトリウム5水和物及び0.20mg/モルのジチオ硫酸金ナトリウム2水和物を添加した。次いで、温度を65℃に9分間にわたり上昇させて、続いて65℃で4分間保持し、そして40℃に急速に冷却した。
【0139】
【化14】


【0140】乳剤B;塩化銀立方体粒子乳剤(対照)沈澱8.2g/Lの塩化ナトリウムと、28.2g/Lの骨ゼラチンと、0.212g/Lの1,8−ジチアジオクタンジオールとを含有する十分に攪はんされた溶液に、68.3℃の温度及び1.0のpClを維持しながら、3.75M硝酸銀と3.75M塩化ナトリウムを同時に添加することによって立方体縁長0.59μmを有する単分散塩化銀立方体粒子を製造した。温度を40℃に低下させ、乳剤を限外濾過で洗浄してpClを2.0とし、次いで塩化ナトリウムでpClを1.65に調整した。
【0141】増感最適な緑色光増感が、乳剤Aについて記載した方法と同じ方法で見い出された。最適条件は以下の通りであった。40℃で溶融し且つ十分に攪はんした乳剤Bの0.05モル量に、0.2ミリモル/モルの増感色素Aを添加し、次いで20分間保持した。これに、0.25mg/モルのチオ硫酸ナトリウム5水和物及び0.50mg/モルのジチオ硫酸金ナトリウム2水和物を添加した。次いで、温度を65℃に9分間にわたり上昇させて10分間保持し、次いで40℃に急速に冷却した。
【0142】写真性能増感した乳剤の各々を、0.85g/m2 の銀で、1.1g/m2 のシアン色素生成カプラーC及び2.7g/m2 のゼラチンと一緒にハレーション防止支持体上に塗布した。この上に1.6g/m2 のゼラチンを塗布し、そして総ゼラチンを基準として1.7重量%のビス(ビニル−スルホニルメチル)エーテルを用いて硬化した。その塗膜を、光源として365nm線の水銀灯を用いたステップウェッジセンシトメーターにおいて0.02秒間露光することによって固有感度について評価した。緑色光に対する感度は、デーライトV光源に近づけるために濾過され且つ(450nmより長い波長を透過する)Kodak Wratten (商標)9フィルターによって緑色及び赤色光のみを透過するように濾過された3000o K タングステンランプを有するステップウェッジセンシトメーターを用いて、該塗膜を0.02秒間露光することによって測定した。標準のC−41(商標)カラーネガ処理を用いて該塗膜を処理し、そしてステータスM赤色濾過を用いて色素濃度を測定した。
【0143】
【化15】


【0144】写真性能の結果を表1にまとめた。
表1 365線露光 乳剤 Dmin スピード コントラスト 乳剤A(平板)
未増感 0.06 10 1.75 緑色増感 0.22 129 1.96 乳剤B(立方体)
未増感 0.06 7 4.03 緑色増感 0.22 120 2.89──────────────────────────────── Wratten 9 (商標)露光 乳剤 Dmin スピード コントラスト 乳剤A(平板)
未増感 −−− −−− −−− 緑色増感 0.22 371 2.08 乳剤B(立方体)
未増感 −−− −−− −−− 緑色増感 0.16 128 2.86
【0145】表1は、365線露光により測定された固有感度については、乳剤A及び乳剤Bともに、それらの同等な粒子体積に基づいて予想されるように非常に類似していることを示している。Wratten 9 露光により測定された緑色光感度を比較すると、平板状粒子乳剤が立方体粒子乳剤よりも2.9倍以上高い緑色光感度を示していることがわかる。このことは、平板状形態の利点を明白に示すものである。
【0146】実施例11高アスペクト比の高塩化物{100}平板状粒子乳剤
【0147】実施例11A0.5%の骨ゼラチンと、6mMの3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾールと、0.040MのNaClと、0.20Mの酢酸ナトリウムとの溶液400mLを含有する攪はんされた反応容器を55℃でpH6.1に調整した。この55℃の溶液に、4M硝酸銀5.0mL及び4M塩化ナトリウム5.0mLを各々5mL/分で同時に添加した。次いで、混合物の温度を12分を要する一定速度で75℃に上昇させて、この温度で5分間保持した。pHを6.2に調整して、この値の±0.1の範囲内で保持し、そして硝酸銀溶液の流入を5mL/分で再開して、0.8モルのAgを添加した。塩化ナトリウム溶液の流入もまた、pAgを6.64に一定に維持するのに必要な速度で再開した。
【0148】得られたAgCl乳剤は、全粒子集団の投影面積の65%を占める{100}主面を有する平板状粒子からなるものであった。この平板状粒子集団は、平均等価円直径1.95μm及び平均厚0.165μmを示した。平均アスペクト比及び平板度はそれぞれ11.8及び71.7であった。この乳剤を図3に示した。
【0149】実施例11Bこの乳剤は、実施例11Aの乳剤と同様に製造したが、但し、0.4モルのAgが添加された時点で沈澱を停止させた。
【0150】得られた乳剤は、全粒子集団の投影面積の65%を占める{100}主面を有する平板状粒子からなるものであった。この平板状粒子集団は、平均等価円直径1.28μm及び平均厚0.130μmを示した。平均アスペクト比及び平板度はそれぞれ9.8及び75.7であった。この乳剤を図2及び図3に示した。
【0151】実施例12 核生成pH=6.1、成長pH=3.6この実施例は、実施例11Bの乳剤と同様に製造したが、但し、硝酸銀添加の後半95%については反応容器のpHを3.6に調整した。
【0152】得られた乳剤は、全粒子集団の投影面積の60%を占める{100}平板状粒子からなるものであった。この平板状粒子集団は、平均等価円直径1.39μm及び平均厚0.180μmを示した。平均アスペクト比及び平板度はそれぞれ7.7及び43.0であった。
【0153】実施例13高アスペクト比のAgBrCl(10%Br){100}平板状粒子乳剤この実施例は、実施例11Bの乳剤と同様に製造したが、但し、塩溶液を3.6M塩化銀及び0.4M臭化銀とした。
【0154】得られたAgBrCl(10%Br)乳剤は、全粒子集団の投影面積の52%を占める{100}平板状粒子からなるものであった。この平板状粒子集団は、平均等価円直径1.28μm及び平均厚0.115μmを示した。平均アスペクト比及び平板度はそれぞれ11.1及び96.7であった。
【0155】実施例14{100}平板状粒子核生成剤としての3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールこの乳剤は、実施例11Aの乳剤と同様に製造したが、但し、{100}平板状粒子核生成剤として3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール(2.4ミリモル)を使用した。
【0156】得られたAgCl乳剤は、全粒子集団の投影面積の45%を占める{100}主面を有する平板状粒子からなるものであった。この平板状粒子集団は、平均等価円直径1.54μm及び平均厚0.20μmを示した。平均アスペクト比及び平板度はそれぞれ7.7及び38.5であった。
【0157】実施例15{100}平板状粒子核生成剤としてのイミダゾールこの乳剤は、実施例11Aの乳剤と同様に製造したが、但し、{100}平板状粒子核生成剤としてイミダゾール(9.6ミリモル)を使用した。
【0158】得られたAgCl乳剤は、全粒子集団の投影面積の40%を占める{100}主面を有する平板状粒子からなるものであった。この平板状粒子集団は、平均等価円直径2.20μm及び平均厚0.23μmを示した。平均アスペクト比及び平板度はそれぞれ9.6及び41.6であった。
【0159】実施例16芳香族アミン抑制剤を使わずに製造した{100}平板状粒子乳剤低メイチオニン含量(ゼラチン1グラム当たり4マイクロモル未満)の骨ゼラチン0.25重量%と、0.008M塩化ナトリウムとを含むpH6.2及び85℃の溶液400mLを含有する攪はんされた反応容器に、4M硝酸銀溶液を5.0mL/分で、4M塩化ナトリウム溶液をpClを2.09に一定に維持するのに必要な速度で、同時に添加した。0.20モルの硝酸銀が添加された時点で添加を20秒間停止し、その間に13.3%の低メチオニンゼラチン溶液15mLを添加し、そしてpHを6.2に調整した。添加を再開して全部で0.4モルの硝酸銀を添加した。沈澱中のpHは6.2±0.1で一定に保持した。
【0160】得られたAgCl乳剤は、全粒子集団の投影面積の40%を占める{100}主面を有する平板状粒子からなるものであった。この平板状粒子集団は、平均等価円直径2.18μm及び平均厚0.199μmを示した。平均アスペクト比及び平板度はそれぞれ11.0及び55.0であった。
【0161】実施例17 写真塗布実施例11Aの乳剤と同様に乳剤を製造したが、但し、沈澱を5倍にスケールアップして4.0モルのAgClを沈澱させた。得られた{100}平板状粒子乳剤を40℃に冷却し、4Lの蒸留水に注ぎ込み、そして2℃で24時間重力沈降させた。沈降相は廃棄した。その上澄み液にフタレート化ゼラチン12gを添加し、そしてその乳剤を米国特許第 2,614,929号明細書記載の凝集法により洗浄した。
【0162】得られた2.2モルの乳剤は、全粒子集団の投影面積の80%を占める{100}主面を有する平板状粒子からなるものであった。この平板状粒子集団は、平均等価円直径1.81μm及び平均厚0.173μm(106 個超の粒子を測定)を示した。平均アスペクト比及び平板度はそれぞれ10.5及び60.5であった。
【0163】その乳剤を1Kg乳剤/モルAgClに希釈し、pAgをNaCl溶液で7.42に調整し、そしてpHを40℃で5.3に調整した。それを分光増感及び化学増感用に分割した。
【0164】Aで示した部分には塩化銀1モル当たり0.5ミリモルの色素Aを添加した。Bで示した部分には塩化銀1モル当たり0.5ミリモルの色素Bを添加した。Cで示した部分には塩化銀1モル当たり0.5ミリモルの色素Aを添加した。Dで示した部分には塩化銀1モル当たり0.5ミリモルの色素Bを添加した。色素Aの構造については先の実施例10を参照のこと。
【0165】
【化16】


【0166】次いで、部分C及びDには塩化銀1モル当たり10mgのAu2Sを添加した。続いて、2.0モル%NaBrを1M溶液として部分A、B、C及びDに添加した。部分C及びDは60℃で20分間加熱した。走査型電子画像は、すべての部分が{100}平板状粒子含量を保持し、そして部分Bが粒子の縁及び角においてAgClBrのエピタキシャル成長を有することを示した。これらの部分をポリエステルフィルム支持体上に2.6g銀/m2 及び3.4gゼラチン/m2 で塗布して、それぞれ塗膜A、B、C及びDを作製した。その塗膜を、0〜4.0濃度ステップタブレット及びKodak Wratten (商標)フィルターを通した600Wの3,000Kタングステン光源に0.5秒間露光した。塗膜A及びCはKodak Wratten (商標)99フィルターを通して露光し、一方塗膜B及びDはKodak Wratten (商標)2Bイエローフィルターを通して露光した。別の一組の塗膜を可変波長可変強度ウェッジ分光写真器で露光した。
【0167】露光した塗膜をKodak Developer DK-50 (商標)において20℃で5分間処理した。ステップタブレット及びウェッジ分光写真器露光の結果を表2に示した。これらの結果は、高塩化物の{100}平板状粒子乳剤が写真塗膜中に構成されうることを示している。さらに、この種類の乳剤は化学増感及び分光増感することができる。青色及び緑色の両方の分光増感が実証されている。
【0168】
表2塗膜 色素 化学増感 Dmax カブリ カブリ上0.2 極大分光 における相対感度 レスポンス(nm) A A なし 1.77 0.09 100 550 C A あり 1.51 0.15 128 550 B B なし 1.64 0.08 100 480 C B あり 1.41 0.49 204 480
【0169】
【発明の効果】本発明は、安定性の高い粒子を含有する高塩化物平板状粒子乳剤を初めて可能にした。高塩化物平板状粒子の形態的安定性は、{100}主面を有する平板状粒子を製造することによって実現された。本発明は、このような乳剤を、新規製造方法を提供することによって可能とした。高塩化物平板状粒子乳剤を製造するための従来のすべての方法は、{111}主面を有する平板状粒子を製造した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の乳剤の炭素粒子レプリカの構造を示す増影顕微鏡写真である。
【図2】対照乳剤の炭素粒子レプリカの構造を示す増影顕微鏡写真である。
【図3】実施例11Aの炭素粒子レプリカの構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】支持体に対し垂直に見た実施例11Bの粒子の構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】支持体に対し角度60度で見た実施例11Bの粒子の構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 粒子集団を形成している総銀を基準として少なくとも50モル%の塩化物を含んで成るハロゲン化銀粒子集団を含有し、該粒子集団の投影面積の30%超が平均厚み0.3μm未満の平板状粒子で占められている放射線感受性乳剤において、該平板状粒子が、{100}結晶面に位置している平行主面を有することを特徴とする放射線感受性乳剤。
【請求項2】 {100}主面により規定されている平板状粒子を含有し、その{100}主面により規定されている平板状粒子のうち、隣接主面縁比10未満及び厚み0.3μm未満の基準で選ばれた総粒子投影面積の50%を占める部分であって、しかもこれらの基準を満たす残るすべての平板状粒子よりも高いアスペクト比を示す該部分が、(1)8よりも大きな平均アスペクト比を示し、且つ(2)それらの核生成部位においてヨウ化物と少なくとも50モル%の塩化物とを内部に含有するハロゲン化銀乳剤の製造方法において、以下の工程(1)及び(2)、すなわち、(1)分散媒体中に存在するハロゲン化物の少なくとも50モル%を占める塩化物を用いてヨウ化物の存在において平板状粒子の核生成を起こさせ、しかも分散媒体のpClを0.5〜3.5の範囲に維持するように、分散媒体中に銀塩及びハロゲン化物塩を導入する工程、及び(2)核生成に続いて、平板状粒子の{100}主面を維持する条件下で粒子成長を仕上げる工程、を含んで成る前記ハロゲン化銀乳剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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