説明

放射線撮像パネルを構成する光導電層および放射線撮像パネル

【課題】 BixMOy多結晶体からなる光導電層を高感度を実現可能なものとする。
【解決手段】 放射線画像情報を静電潜像として記録する放射線撮像パネルを構成する光導電層を、BixMOy(ただし、MはGe,Si,Ti中の少なくとも1種である。)からなる多結晶体であって、BixMOyのxを12.05≦x≦13.1、yをMおよびxにより決まる化学量論的な酸素原子数とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線などの放射線撮像装置に適用して好適な放射線撮像パネルに関し、詳しくは、放射線撮像パネルを構成する光導電層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療用X線撮影において、被験者の受ける被爆線量の減少、診断性能の向上等のために、X線に感応する光導電層を感光体として用い、この光導電層にX線により形成された静電潜像を、光或いは多数の電極で読み取って記録するX線撮像パネルが知られている。これらは、周知の撮影法であるTV撮像管による間接撮影法と比較して高解像度である点で優れている。
【0003】
上述したX線撮像パネルは、この撮像パネル内に設けられた電荷生成層にX線を照射することによって、X線エネルギーに相当する電荷を生成し、生成した電荷を電気信号として読み出すようにしたものであって、上記光導電層は電荷生成層として機能する。
【0004】
Bi12MO20(ただし、MはGe,Si,Ti中の少なくとも1種である。)は光導電性、誘電性を有するため、光導電層としての用途が検討され、例えば、特許文献1にはBi12GeO20、Bi12SiO20を光導電層に用いることが記載されている。通常、Bi12MO20の結晶組成は化学量論比であることが最適と考えられており、例えば特許文献2および3にはx=12、y=20の組成を有するBi12GeO20、Bi12SiO20が記載されている。
【0005】
一方、非特許文献1には、融液の組成を10≦x≦14の範囲で変化させBixMOyの単結晶の育成を行ったところ、x=11.5の融液で育成された単結晶(この単結晶の結晶組成比はグラフの読取値より約12.15と約12.69)で光伝導電流が最大になることが記載されている。また、非特許文献2には、融液の組成について、GeO2含有率を9.0〜20.0mol%の範囲(x換算で9≦x≦20)で変化させてBixGeOy単結晶を、SiO2含有率を9.0〜18.0mol%の範囲(x換算で8≦x≦20)で変化させてBixSiOy単結晶をそれぞれ育成し、育成した単結晶のμτ(キャリア移動度と寿命の積)の変化を調べたことが記載されている。
【特許文献1】特開平11−211832号
【特許文献2】特開平11−237478号
【特許文献3】特開2000−249769号
【非特許文献1】日本化学会誌, 1981 No.10 p.1630〜p.1639
【非特許文献2】Journal of Applied physics., vol.94, No.4, p.2507〜p.2509(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は鋭意検討を行ったところ、特許文献2および3の記載に反し、通常考えられている化学量論比の結晶組成よりもビスマスが多い方が発生電荷量が増えることを見いだし本発明に至った。なお、上記の非特許文献1および2に記載されているのはいずれも単結晶のBixMOyであって、これは粒界が極めて少ないために暗電流が低減され、X線光電流量が向上すると期待されるが、製造コストが高い上に、実用に供する数十センチ角サイズといった大面積化は技術的に困難であるため実用的には不向きである。加えて、単結晶ではその組成の制御が困難であるため、所望の組成の単結晶が得られないという問題がある。
【0007】
すなわち、本発明は、放射線画像情報を静電潜像として記録する放射線撮像パネルを構成する光導電層として高感度を実現可能なBixMOy多結晶体からなる光導電層を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射線画像情報を静電潜像として記録する放射線撮像パネルを構成する光導電層は、該光導電層がBixMOy(ただし、MはGe,Si,Ti中の少なくとも1種である。以下、この記載は省略する。)からなる多結晶体であり、前記BixMOyのxが12.05≦x≦13.1、yはMおよびxにより決まる化学量論的な酸素原子数(y=1.5x+2)であることを特徴とするものである。
【0009】
多結晶体とは一般に方位が異なる単結晶が集合した固体を意味し、ここにいう多結晶体も方位が異なる単結晶が集合したものであって、焼結やエアロゾルデポジション、気相成長などで形成される単結晶が緻密に集合し、結晶同士が自ら接合ないし結合している状態であって、有機材料、高分子材料、無機材料からなる結合剤(バインダー)を含まないものを意味する。
【0010】
前記MはTiであることが好ましい。
前記BixMOyは焼結体であることが好ましい。ここで、焼結体とは、BixMOyの粉体を融点以下又は少量の液相の存在する温度で加熱して、構成粒子間に接合又は合体が起こり形成されたものを意味する。
【0011】
本発明の放射線撮像パネルは、放射線画像情報を静電潜像として記録するBixMOyからなる多結晶体であって、前記BixMOyのxが12.05≦x≦13.1、yはMおよびxにより決まる化学量論的な酸素原子数である光導電層を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光導電層はBixMOyからなる多結晶体であり、BixMOyのxが12.05≦x≦13.1、yはMおよびxにより決まる化学量論的な酸素原子数であるため、発生電荷の捕集効果が高まり感度を向上させることが可能となる。また、多結晶体であるために光導電層の大面積化に対応が可能である上、単結晶のBixMOyに比較して光導電層の製造コストを抑えることができる。
【0013】
また、光導電物質粒子同士が接触しているので、塗布法で形成される光導電層のようにバインダーが介在することに起因する発生電荷の捕集効率の低減が抑制され、電気ノイズを小さくすることが可能となり、画像の粒状性が向上し、感度を向上させることができる。
【0014】
なお、MをTiとすることにより、あるいはBixMOyを焼結体とすることによって、発生電荷の捕集効果をさらに高めることができ、感度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の光導電層は、BixMOyからなる多結晶体であり、BixMOyのxが12.05≦x≦13.1、yはMおよびxにより決まる化学量論的な酸素原子数であることを特徴とする。xがこの範囲からはずれると、発生電荷の捕集効果が低下する。
【0016】
BixMOyからなる多結晶体であって、BixMOyのxが12.05≦x≦13.1、yはMおよびxにより決まる化学量論的な酸素原子数である光導電層を製造するには、下記に示す原料の溶液あるいは粉体のBiとMの組成比(モル比)が、所望のBixMOyの結晶の組成比となるよう調整することにより製造することができる。
【0017】
具体的な方法としては、第1にビスマス塩と金属アルコキシドを酸性条件下で反応させBixMOy前駆体液を得、得られたこのBixMOy前駆体液を支持体に塗布し、乾燥してできたBixMOy膜もしくはBixMOy前駆体膜を焼結する方法をあげることができる。
【0018】
上記ビスマス塩は硝酸ビスマスまたは酢酸ビスマスであることが好ましく、金属アルコキシドはGe,Si,Tiのアルコキシド、より具体的には、Ge(O−CH34,Ge(O−C254,Ge(O−iC374,Si(O−CH34,Si(O−C254,Si(O−iC374,Ti(O−CH34,Ti(O−C254 ,Ti(O−iC374 などを好ましくあげることができる。
【0019】
ビスマス塩と金属アルコキシドを酸性条件下で加水分解する方法としては、適宜公知の方法により行うことができ、例えば、ビスマス塩と金属アルコキシドを酢酸、メトキシエタノールと硝酸の混合水溶液、エトキシエタノールと硝酸の混合水溶液などとともに加水分解することが好ましい。加水分解後、BixMOy前駆体液が得られるが、これを支持体に塗布する前に、濃縮または還流を行うことがより好ましい。
【0020】
支持体に塗布したBixMOy前駆体膜を焼結する場合には、BixMOy前駆体膜を成形した被焼成体(成形体)の焼結時に、この成形体を載置する台であるセッターとして酸化物材料、具体的には、酸化アルミニウム焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、あるいは酸化アルミニウムの単結晶などを用いることが好ましい。このようなセッターを用いて焼結を行うことによって、BixMOy焼結体をセッターと融着させることなく製造することができる。図1に、BixMOy焼結体の製造方法を示す概略構成断面図を示す。
【0021】
図1は、支柱3を介して棚組みされたセッター2上に被焼成体1を載置した焼成開始前の状態を示している。被焼成体1はBixMOy前駆体膜の平板状の成形体である。セッター2は酸化アルミニウム焼結体、酸化ジルコニウム焼結体、あるいは酸化アルミニウムの単結晶などの酸化物材料であって、酸化ケイ素の含有量が1重量%以下、さらには0.3重量%以下であるものが好ましい。
【0022】
支柱3はセッターの外周付近に所定の間隔で複数配置され、それらの内部において被焼成体1がセッター2上に載置されている。なお、焼結時に、被焼成体上に重し板を載せた状態で焼成を行ってもよい。焼結温度は、被焼成体の種類、セッターの種類、被焼成体とセッターの組合せ等によって異なるため一概には言えないが、800℃〜900℃であることが好ましい。通常、焼結に用いられる白金材料からなるセッターの場合には、このような高温で焼結を行うと、セッターと披焼結体との間で融着が起こりBixMOy焼結体を得ることができないが、セッター2に上記酸化物材料を用いることによって、被焼成体1をセッター2と融着させることなく形成させることが可能となる。
【0023】
本発明の光導電層を製造する方法としては、第2に真空中に予め調整しておいたBixMOy粉体をキャリアガスで巻き上げて、そのBixMOy粉体の混じったキャリアガスを真空中で支持体に吹き付けてBixMOy粉体を堆積させるエアロゾルデポジション法(AD法)、第3にBixMOy粉体をプレス機を用いて高圧力でプレスすることで膜化し、得られた膜を焼結させるプレス焼結法、第4にBixMOy粉体をバインダーを用いて塗布してグリーンシート(バインダーを含んだ膜)を作製し、このグリーンシートを焼成して脱バインダー化及び粉末の焼結化を行う方法(以下、グリーンシート法)などの方法があげられる。
【0024】
上記第2〜第4に記載した製造方法に用いるBixMOy粉体の調整方法としては、ビスマス塩と金属アルコキシドを酸性条件下で加水分解してBixMOy前駆体液を得、得られたこのBixMOy前駆体液を濃縮してゲル状とし、このゲル状BixMOy前駆体を焼成してBixMOy粉体とする方法、酸化ビスマス(Bi23)とMO2(酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化チタン)を混合し、例えば800℃で仮焼成することによる固相反応によりBixMOy粉体を得る方法などがあげられる。
【0025】
なお、グリーンシート法ではバインダーを用いるが、このバインダーは焼結によって完全に消失し、焼結後のBixMOy焼結体には残存することはない。グリーンシート法で用いられるバインダーとしては、セルロースアセテート、ポリアルキルメタアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を好ましくあげることができる。
【0026】
ビスマス塩および金属アルコキシドは上記第1の製造方法で記載したものを好ましくあげることができ、また、ビスマス塩と金属アルコキシドを酸性条件下で反応させる方法も上記第1の製造方法で記載したものを好ましくあげることができる。
【0027】
上記、第2の製造方法で使用されるBixMOy粉体は、ビスマス及び金属それぞれのアルコキシドをアルカリ条件下で反応させてBixMOy前駆体液を得、得られたこのBixMOy前駆体液を液相において結晶化することによっても得ることが可能である。
【0028】
ここで、ビスマスのアルコキシドとしては、Bi(O−CH33,Bi(O−C253,Bi(O−iC373などを好ましくあげることができ、金属アルコキシドは上記第1の製造方法で記載したものを好ましくあげることができる。ビスマスのアルコキシドと金属アルコキシドをアルカリ条件下で加水分解する方法としては、適宜公知の方法により行うことができ、好ましくは、ビスマスのアルコキシドと金属アルコキシドを水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどとともに加水分解する。
【0029】
第2の製造方法で記載しているAD法は、あらかじめ準備された微粒子、超微粒子原料をキャリアガスと混合してエアロゾル化し、ノズルを通して基板に噴射して被膜を形成する技術である。この方法の詳細について図2を用いて説明する。図2は本発明の光導電層の製造に用いられるAD法を行う製膜装置の概略模式図である。
【0030】
製造装置10は、BixMOy原料粒子12とキャリアガスが攪拌・混合されるエアロゾル化チャンバー13と、製膜が行われる製膜チャンバー14と、キャリアガスを貯留する高圧ガスボンベ15からなり、さらに製膜チャンバー14には、BixMOy原料粒子12が堆積される基板16と、基板16を保持するホルダー17と、ホルダー17をXYZθで3次元に作動させるステージ18と、基板16にBixMOy原料12を噴出させる細い開口を備えたノズル19とが備えられ、さらに、ノズル19とエアロゾル化チャンバー13とをつなぐ第1配管20と、エアロゾル化チャンバー13と高圧ガスボンベ15とをつなぐ第2配管21と、製膜チャンバー14内を減圧する真空ポンプ22とによって構成されてなる。
【0031】
エアロゾル化チャンバー13内のBixMOy原料粒子12は、次のような手順によって基板16上に製膜形成される。エアロゾル化チャンバー13内に充填された0.1〜2μのBixMOy原料粒子12は、キャリアガスを貯留する高圧ガスボンベ15から第2配管21を通ってエアロゾル化チャンバー13に導入されるキャリアガスとともに、振動・撹拌されてエアロゾル化される。エアロゾル化されたBixMOy原料粒子12は第1配管20を通り、製膜チャンバー14内の細い開口を備えたノズル19から基板16にキャリアガスとともに吹き付けられ、塗膜が形成される。製膜チャンバー14は真空ポンプ22で排気され、製膜チャンバー14内の真空度は必要に応じて調整される。さらに、基板16のホルダーはXYZθステージ18により3次元に動くことができるため、基板16の所定の部分に必要な厚みのBixMOy塗膜が形成される。
【0032】
原料粒子には、平均粒径0.1μm〜10μm程度の粉末を用いることが好ましく、さらに粒径が0.1〜2μmが50重量%以上のものが好ましく用いられる。ここで、粒径とは、粒子と同じ体積の球の直径である等体積球相当径を意味し、平均は個数平均である。
【0033】
エアロゾル化された原料粒子は、6mm2以下の微小開口のノズルを通すことによって流速2〜300m/secまで容易に加速され、キャリアガスによって基板に衝突させることで基板上に堆積させることができる。キャリアガスにより衝突した粒子は、互いに衝突の衝撃によって接合し膜を形成するので、緻密な膜が製膜される。原料粒子を堆積させる際の基板の温度は室温であってもよいが、100℃〜300℃に調整することによってより緻密な膜を製膜することが可能である。
【0034】
光導電層の層厚は好ましくは10〜700μm、さらには80〜300μmであることが好ましい。光導電層の層厚が10μmよりも薄い場合にはX線吸収率が低下し感度の向上は望めず、一方、700μmよりも厚い場合にはX線吸収量は飽和によってこれ以上増加しない上に、発生した電荷が電極に到達するまで長い距離を移動することになり、途中で失活して、捕集効率が低下してしまい、却って画像が劣化してしまうことになる。
【0035】
放射線撮像パネルには、放射線を直接電荷に変換し電荷を蓄積する直接変換方式と、放射線を一度CsIなどのシンチレータで光に変換し、その光をa−Siフォトダイオードで電荷に変換し蓄積する間接変換方式があるが、本発明の光導電層は前者の直接変換方式に用いることができる。なお、放射線としてはX線の他、γ線、α線などについて使用することが可能である。
【0036】
また、本発明の光導電層は、光の照射により電荷を発生する半導体材料を利用した放射線画像検出器により読み取る、いわゆる光読取方式にも、放射線の照射により発生した電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)などの電気的スイッチを1画素ずつON・OFFすることにより読み取る方式(以下、TFT方式という)にも用いることができる。
【0037】
まず、前者の光読取方式に用いられる放射線撮像パネルを例にとって説明する。図3は本発明の光導電層を有する放射線撮像パネルの一実施の形態を示す断面図を示すものである。
【0038】
この放射線撮像パネル30は、後述する記録用の放射線L1に対して透過性を有する第1の導電層31、この導電層31を透過した放射線L1の照射を受けることにより導電性を呈する記録用放射線導電層32、導電層31に帯電される電荷(潜像極性電荷;例えば負電荷)に対しては略絶縁体として作用し、かつ、電荷と逆極性の電荷(輸送極性電荷;上述の例においては正電荷)に対しては略導電体として作用する電荷輸送層33、後述する読取用の読取光L2の照射を受けることにより導電性を呈する読取用光導電層34、読取光L2に対して透過性を有する第2の導電層35を、この順に積層してなるものである。
【0039】
ここで、導電層31および35としては、例えば、透明ガラス板上に導電性物質を一様に塗布したもの(ネサ皮膜等)が適当である。電荷輸送層33としては、導電層31に帯電される負電荷の移動度と、その逆極性となる正電荷の移動度の差が大きい程良く、ポリN−ビニルカルバゾール(PVK)、N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1'−ビフェニル〕−4,4'−ジアミン(TPD)やディスコティック液晶等の有機系化合物、或いはTPDのポリマー(ポリカーボネート、ポリスチレン、PVK)分散物,Clを10〜200ppmドープしたa−Se等の半導体物質が適当である。特に、有機系化合物(PVK,TPD、ディスコティック液晶等)は光不感性を有するため好ましく、また、誘電率が一般に小さいため電荷輸送層33と読取用光導電層34の容量が小さくなり読み取り時の信号取り出し効率を大きくすることができる。
【0040】
読取用光導電層34には、a−Se,Se−Te,Se−As−Te,無金属フタロシアニン,金属フタロシアニン,MgPc( Magnesium phtalocyanine),VoPc(phaseII of Vanadyl phthalocyanine),CuPc(Cupper phtalocyanine)等のうち少なくとも1つを主成分とする光導電性物質が好適である。
【0041】
記録用放射線導電層32には、本発明の光導電層を使用する。すなわち、本発明の光導電層は記録用放射線導電層である。
【0042】
続いて、静電潜像を読み取るために光を用いる方式について簡単に説明する。図4は放射線撮像パネル30を用いた記録読取システム(静電潜像記録装置と静電潜像読取装置を一体にしたもの)の概略構成図を示すものである。この記録読取システムは、放射線撮像パネル30、記録用照射手段90、電源50、電流検出手段70、読取用露光手段92並びに接続手段S1、S2とからなり、静電潜像記録装置部分は放射線撮像パネル30、電源50、記録用照射手段90、接続手段S1とからなり、静電潜像読取装置部分は放射線撮像パネル30、電流検出手段70、接続手段S2とからなる。
【0043】
放射線撮像パネル30の導電層31は接続手段S1を介して電源50の負極に接続されるとともに、接続手段S2の一端にも接続されている。接続手段S2の他端の一方は電流検出手段70に接続され、放射線撮像パネル30の導電層35、電源50の正極並びに接続手段S2の他端の他方は接地されている。電流検出手段70はオペアンプからなる検出アンプ70aと帰還抵抗70b とからなり、いわゆる電流電圧変換回路を構成している。
【0044】
導電層31の上面には被写体29が配設されており、被写体29は放射線L1に対して透過性を有する部分29aと透過性を有しない遮断部(遮光部)29bが存在する。記録用照射手段90は放射線L1を被写体29に一様に曝射するものであり、読取用露光手段92は赤外線レーザ光やLED、EL等の読取光L2を図4中の矢印方向へ走査露光するものであり、読取光L2は細径に収束されたビーム形状をしていることが望ましい。
【0045】
以下、上記構成の記録読取システムにおける静電潜像記録過程について電荷モデル(図5)を参照しながら説明する。図4において接続手段S2を開放状態(接地、電流検出手段70の何れにも接続させない)にして、接続手段S1をオンし導電層31と導電層35との間に電源50による直流電圧Edを印加し、電源50から負の電荷を導電層31に、正の電荷を導電層35に帯電させる(図3(A)参照)。これにより、放射線撮像パネル10には導電層31と35との間に平行な電場が形成される。
【0046】
次に記録用照射手段90から放射線L1を被写体29に向けて一様に曝射する。放射線L1は被写体29の透過部29aを透過し、さらに導電層31をも透過する。放射線導電層32はこの透過した放射線L1を受け導電性を呈するようになる。これは放射線L1の線量に応じて可変の抵抗値を示す可変抵抗器として作用することで理解され、抵抗値は放射線L1によって電子(負電荷)とホール(正電荷)の電荷対が生じることに依存し、被写体29を透過した放射線L1の線量が少なければ大きな抵抗値を示すものである(図5(B)参照)。なお、放射線L1によって生成される負電荷(−)および正電荷(+)を、図面上では−または+を○で囲んで表している。
【0047】
放射線導電層32中に生じた正電荷は放射線導電層32中を導電層31に向かって高速に移動し、導電層31と放射線導電層32との界面で導電層31に帯電している負電荷と電荷再結合して消滅する(図5(C),(D)を参照)。一方、放射線導電層32中に生じた負電荷は放射線導電層32中を電荷転送層33に向かって移動する。電荷転送層33は導電層31に帯電した電荷と同じ極性の電荷(本例では負電荷)に対して絶縁体として作用するものであるから、放射線導電層32中を移動してきた負電荷は放射線導電層32と電荷転送層33との界面で停止し、この界面に蓄積されることになる(図5(C),(D)を参照)。蓄積される電荷量は放射線導電層32中に生じる負電荷の量、即ち、放射線L1の被写体29を透過した線量によって定まるものである。
【0048】
一方、放射線L1は被写体29の遮光部29bを透過しないから、放射線撮像パネル30の遮光部29bの下部にあたる部分は何ら変化を生じない( 図5(B)〜(D)を参照)。このようにして、被写体29に放射線L1を曝射することにより、被写体像に応じた電荷を放射線導電層32と電荷転送層33との界面に蓄積することができるようになる。なお、この蓄積せしめられた電荷による被写体像を静電潜像という。
【0049】
次に静電潜像読取過程について電荷モデル(図6)を参照しつつ説明する。接続手段S1を開放し電源供給を停止すると共に、S2を一旦接地側に接続し、静電潜像が記録された放射線撮像パネル30の導電層31および35を同電位に帯電させて電荷の再配列を行った後に(図6(A)参照)、接続手段S2を電流検出手段70側に接続する。
【0050】
読取用露光手段92により読取光L2を放射線撮像パネル30の導電層35側に走査露光すると、読取光L2は導電層35を透過し、この透過した読取光L2が照射された光導電層34は走査露光に応じて導電性を呈するようになる。これは上記放射線導電層32が放射線L1の照射を受けて正負の電荷対が生じることにより導電性を呈するのと同様に、読取光L2の照射を受けて正負の電荷対が生じることに依存するものである(図6(B)参照)。なお、記録過程と同様に、読取光L2によって生成される負電荷(−)および正電荷(+)を、図面上では−または+を○で囲んで表している。
【0051】
電荷輸送層33は正電荷に対しては導電体として作用するものであるから、光導電層34に生じた正電荷は蓄積電荷に引きつけられるように電荷輸送層33の中を急速に移動し、放射線導電層32と電荷輸送層33との界面で蓄積電荷と電荷再結合をし消滅する(図6(C)参照)。一方、光導電層34に生じた負電荷は導電層35の正電荷と電荷再結合をし消滅する(図6(C)参照)。光導電層34は読取光L2により十分な光量でもって走査露光されており、放射線導電層32と電荷輸送層33との界面に蓄積されている蓄積電荷、即ち静電潜像が全て電荷再結合により消滅せしめられる。このように、放射線撮像パネル30に蓄積されていた電荷が消滅するということは、放射線撮像パネル30に電荷の移動による電流Iが流れたことを意味するものであり、この状態は放射線撮像パネル30を電流量が蓄積電荷量に依存する電流源で表した図6(D)のような等価回路でもって示すことができる。
【0052】
このように、読取光L2を走査露光しながら、放射線撮像パネル30から流れ出す電流を検出することにより、走査露光された各部(画素に対応する)の蓄積電荷量を順次読み取ることができ、これにより静電潜像を読み取ることができる。なお、本放射線検出部動作については特開2000-105297号等に記載されている。
【0053】
次に、後者のTFT方式の放射線撮像パネルについて説明する。この放射線撮像パネルは、図7に示すように放射線検出部100とアクティブマトリックスアレイ基板(以下AMA基板)200が接合された構造となっている。図8に示すように放射線検出部100は大きく分けて放射線入射側から順に、バイアス電圧印加用の共通電極103と、検出対象の放射線に感応して電子−正孔対であるキャリアを生成する光導電層104と、キャリア収集用の検出電極107とが積層形成された構成となっている。共通電極の上層には放射線検出部支持体102を有していてもよい。
【0054】
光導電層104は本発明の光導電層である。共通電極103や検出電極107は、例えばITO(インジウム錫酸化物)や、AuあるいはPtなどの導電材料からなる。バイアス電圧の極性に応じて、正孔注入阻止層、電子注入阻止層が共通電極103や検出電極107に付設されていてもよい。
【0055】
AMA基板200の各部の構成について簡単に説明する。AMA基板200は図9に示すように、画素相当分の放射線検出部105の各々に対して電荷蓄積容量であるコンデンサ210とスイッチング素子としてTFT220とが各1個ずつ設けられている。支持体102においては、必要画素に応じて縦1000〜3000×横1000〜3000程度のマトリックス構成で画素相当分の放射線検出部105が2次元配列されており、また、AMA基板200においても、画素数と同じ数のコンデンサ210およびTFT220が、同様のマトリックス構成で2次元配列されている。光導電層で発生した電荷はコンデンサ210に蓄積され、光読取方式に対応して静電潜像となる。TFT方式においては、放射線で発生した静電潜像は電荷蓄積容量に保持される。
【0056】
AMA基板200におけるコンデンサ210およびTFT220の具体的構成は、図8に示す通りである。すなわち、AMA基板支持体230は絶縁体であり、その表面に形成されたコンデンサ210の接地側電極210aとTFT220のゲート電極220aの上に絶縁膜240を介してコンデンサ210の接続側電極210bとTFT220のソース電極220bおよびドレイン電極220cが積層形成されているのに加え、最表面側が保護用の絶縁膜250で覆われた状態となっている。また接続側電極210bとソース電極220bはひとつに繋がっており同時形成されている。コンデンサ210の容量絶縁膜およびTFT220のゲート絶縁膜の両方を構成している絶縁膜240としては、例えば、プラズマSiN膜が用いられる。このAMA基板200は、液晶表示用基板の作製に用いられるような薄膜形成技術や微細加工技術を用いて製造される。
【0057】
続いて放射線検出部100とAMA基板200の接合について説明する。検出電極107とコンデンサ210の接続側電極210bを位置合わせした状態で、両基板100、200を銀粒子などの導電性粒子を含み厚み方向のみに導電性を有する異方導電性フィルム(ACF)を間にして加熱・加圧接着して貼り合わせることで、両基板100、200が機械的に合体されると同時に、検出電極107と接続側電極210bが介在導体部140によって電気的に接続される。
【0058】
さらに、AMA基板200には、読み出し駆動回路260とゲート駆動回路270とが設けられている。読み出し駆動回路260は、図9に示すように、列が同一のTFT220のドレイン電極を結ぶ縦(Y)方向の読み出し配線(読み出しアドレス線)280に接続されており、ゲート駆動回路270は行が同一のTFT220のゲート電極を結ぶ横(X)方向の読み出し線(ゲートアドレス線)290に接続されている。なお、図示しないが、読み出し駆動回路260内では、1本の読み出し配線280に対してプリアンプ(電荷−電圧変換器)が1個それぞれ接続されている。このように、AMA基板200には、読み出し駆動回路260とゲート駆動回路270とが接続されている。ただし、AMA基板200内に読み出し駆動回路260とゲート駆動回路270とを一体成型し、集積化を図ったものも用いられる。
【0059】
なお、上述の放射線検出器100とAMA基板200とを接合合体させた放射線撮像装置による放射線検出動作については例えば特開平11-287862号などに記載されている。
以下に本発明の放射線撮像パネルを構成する光導電層の実施例を示す。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
酸化ビスマス(Bi23)粉末と酸化チタン(TiO2)粉末をBi:Ti= 12.1:1となるように配合し、酸化ジルコニウムボールを用いてエタノール中でボールミル混合を行った。その後、回収、乾燥し、800℃,8時間の仮焼成処理を行って酸化ビスマスと酸化チタンの固相反応によりBi12.1TiO20.15粉末を合成した。このBi12.1TiO20.15粉末を乳鉢で150μm以下に粗く粉砕した後、酸化ジルコニウムボールを用いたエタノール中のボールミルで粉砕、分散を行った。なお、この時分散を促進する分散剤として0.4wt%のポリビニルブチラール(PVB)を添加した。その後、バインダとして3.7wt%のポリビニルブチラールと可塑剤として0.8wt%のフタル酸ジオクチルを加えた後、更にボールミルを継続しシート成型用のスラリーを調整した。ボールミル混合後、回収したスラリーは真空脱泡処理によりスラリーの脱泡と濃縮を行い、スラリーの粘度を調整した。
【0061】
粘度調整を行ったスラリーはコーターを用いて離型剤の付いたフィルムベース上に塗布してシート状に成型した。成型体は室温に24時間放置して乾燥させた後、フィルムベースから剥離した。剥離したシート成型体をサファイア単結晶上に置いて、Ar雰囲気中、焼結温度820℃で焼結を行いBi12.1TiO20.15焼結体を得た。この焼結体約0.3gを硝酸と硫酸で加熱分解し、希硝酸で溶解して定容とした。得られた溶液を希硝酸で適宜希釈したのち、ICP発光分光分析法(セイコーインスツルメンツ製、シーケンシャル型ICP発光分光分析装置)により、Bi:Tiの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ti=12.1:1であった。
【0062】
(実施例2)
酸化ビスマス粉末と酸化チタン粉末をBi:Ti=12.4:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12.4TiO20.6焼結体を作製した。また、実施例1と同様にして焼結体のBi:Tiの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ti=12.4:1であった。
【0063】
(実施例3)
酸化ビスマス粉末と酸化チタン粉末をBi:Ti=12.8:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12.8TiO21.2焼結体を作製した。また、実施例1と同様にして焼結体のBi:Tiの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ti=12.8:1であった。
【0064】
(実施例4)
酸化ビスマス粉末と酸化チタン粉末をBi:Ti=13.1:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi13.1TiO21.65焼結体を作製した。また、実施例1と同様にして焼結体のBi:Tiの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ti=13.1:1であった。
【0065】
(実施例5)
酸化ビスマス粉末と酸化ケイ素(SiO2)粉末をBi:Si=12.1:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12.1SiO20.15焼結体を作製した。この焼結体約0.1gを硝酸で加熱分解し、純水を加えて濾別した(濾液は定容とした)。この際、不溶解物は炭酸ナトリウムで融解し、希硝酸で溶解して定容とした。得られた溶液を希硝酸で適宜希釈したのち、実施例1と同じICP発光分光分析装置によりBi:Siの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Si=12.1:1であった。
【0066】
(実施例6)
酸化ビスマス粉末と酸化ケイ素粉末をBi:Si=12.4:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12.4SiO20.6焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Siの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Si=12.4:1であった。
【0067】
(実施例7)
酸化ビスマス粉末と酸化ケイ素粉末をBi:Si=12.8:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12.8SiO21.2焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Siの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Si=12.8:1であった。
【0068】
(実施例8)
酸化ビスマス粉末と酸化ケイ素粉末をBi:Si=13.1:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi13.1SiO21.65焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Siの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Si=13.1:1であった。
【0069】
(実施例9)
酸化ビスマス粉末と酸化ゲルマニウム(GeO2)粉末をBi:Ge=12.1:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12.1GeO20.15焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Geの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ge=12.1:1であった。
【0070】
(実施例10)
酸化ビスマス粉末と酸化ゲルマニウム粉末をBi:Ge=12.4:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12.4GeO20.6焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Geの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ge=12.4:1であった。
【0071】
(実施例11)
酸化ビスマス粉末と酸化ゲルマニウム粉末をBi:Ge=12.8:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12.8GeO21.2焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Geの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ge=12.8:1であった。
【0072】
(実施例12)
酸化ビスマス粉末と酸化ゲルマニウム粉末をBi:Ge=13.1:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi13.1GeO20.65焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Geの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ge=13.1:1であった。
【0073】
(比較例1)
酸化ビスマス粉末と酸化チタン粉末をBi:Ti=12.0:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12TiO20焼結体を作製した。また、実施例1と同様にして焼結体のBi:Tiの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ti=12.0:1であった。
【0074】
(比較例2)
酸化ビスマス粉末と酸化チタン粉末をBi:Ti=13.2:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi13.2TiO21.8焼結体を作製した。また、実施例1と同様にして焼結体のBi:Tiの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ti=13.2:1であった。
【0075】
(比較例3)
酸化チタン粉末と酸化ケイ素粉末をBi:Si=12.0:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12SiO20焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Siの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Si=12.0:1であった。
【0076】
(比較例4)
酸化チタン粉末と酸化ケイ素粉末をBi:Si=13.2:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi13.2SiO21.8焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Siの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Si=13.2:1であった。
【0077】
(比較例5)
酸化チタン粉末と酸化ゲルマニウム粉末をBi:Ge=12.0:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi12GeO20焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Geの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ge=12.0:1であった。
【0078】
(比較例6)
酸化チタン粉末と酸化ゲルマニウム粉末をBi:Ge=13.2:1となるように配合した以外は、実施例1と同様にしてBi13.2GeO21.8焼結体を作製した。また、実施例5と同様にして焼結体のBi:Geの組成比を2回測定したところ、2回ともBi:Ge=13.2:1であった。
【0079】
実施例1〜12および比較例1〜6で完成させた焼結体の両側にAu電極をスパッタして光導電層を備えた放射線撮像パネルの検出部を完成させた。両電極間に500Vの電圧を印加した後に10mR相当のX線(タングステン菅球、80kV圧)を0.1秒間で露光した。この時に電極間にながれた光電流を電流増幅器で電圧に変換し、デジタルオシロスコープで測定した。得られた電流・時間カーブより、X線照射時間の範囲において積分し、サンプルの面積当たりの発生電荷量として換算した。
【0080】
結果を表1に示す。発生電荷量は対応するBi12MO20の発生電荷量を1.0とした相対値、およびBi12TiO20の発生電荷量を1.0とした相対値で示した(詳細には括弧内の焼結体の発生電荷量を1とした相対値である。)
【表1】

【0081】
表1から明らかなように、本発明のBixMOyからなる光導電層は、対応するBi12MO20の発生電荷量に比較して1.1〜1.8倍、発生電荷量が高かった。特に、M=TiのBixMOyからなる光導電層では平均1.6倍の発生電荷量が得られた。
【0082】
以上のように、本発明の光導電層は、BixMOyからなる多結晶体であり、BixMOyのxが12.05≦x≦13.1、yはMおよびxにより決まる化学量論的な酸素原子数であるため、発生電荷の捕集効果が高まり感度を向上させることが可能となる。そして、多結晶体であるために光導電層の大面積化に対応が可能である。さらに、塗布法で形成される光導電層のようにバインダーが介在していないので、発生電荷の捕集効率の低減が抑制され、電気ノイズを小さくすることが可能となり、画像の粒状性が向上し、感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】BixMOy焼結体の製造方法を示す概略構成断面図
【図2】本発明の光導電層の製造方法に用いられる製造装置の概略模式図
【図3】本発明の製造方法により製造される光導電層を有する放射線撮像パネルの一実施の形態を示す断面図
【図4】放射線撮像パネルを用いた記録読取システムの概略構成図
【図5】記録読取システムにおける静電潜像記録過程を電荷モデルにより示した図
【図6】記録読取システムにおける静電潜像読取過程を電荷モデルにより示した図
【図7】放射線検出器とAMA基板の合体状態を示す概略模式図
【図8】AMA基板の等価回路を示す電気回路図
【図9】放射線検出部の画素分を示す概略断面図
【符号の説明】
【0084】
1 被焼成体(成形体)
2 セッター
3 支柱
10 光導電層の製造装置
12 BixMOy原料粒子
13 エアロゾル化チャンバー
14 製膜チャンバー
15 高圧ガスボンベ
16 基板
17 ホルダー
18 ステージ
19 ノズル
30 放射線撮像パネル
31 導電層
32 記録用放射線導電層
33 電荷輸送層
34 記録用光導電層
35 導電層
70 電流検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像情報を静電潜像として記録する放射線撮像パネルを構成する光導電層であって、該光導電層がBixMOy(ただし、MはGe,Si,Ti中の少なくとも1種である。)からなる多結晶体であり、前記BixMOyのxが12.05≦x≦13.1、yはMおよびxにより決まる化学量論的な酸素原子数であることを特徴とする光導電層。
【請求項2】
前記MがTiであることを特徴とする請求項1記載の光導電層。
【請求項3】
前記BixMOyが焼結体であることを特徴とする請求項1または2記載の光導電層。
【請求項4】
放射線画像情報を静電潜像として記録する、請求項1、2または3記載のBixMOyからなる光導電層を備えたことを特徴とする放射線撮像パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−261202(P2006−261202A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72954(P2005−72954)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【復代理人】
【識別番号】100111040
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 淑子
【Fターム(参考)】