説明

放射線撮像装置、放射線撮像方法、記録媒体及びプログラム

【課題】最終的な画像を得るに先立ち、放射線撮影後直ちにある程度の補正が施された画像を得ることができ、確認を可能とし、ユーザのワークフローを改善すると共に、再撮影に要する待ち時間を大幅に短縮する。
【解決手段】放射線撮像装置は、撮像手段で撮像した被写体像の縮小画像を、前記被写体像の画像の前に送信する送信手段と、前記縮小画像を表示した後に前記被写体像の画像を表示手段に表示する表示制御手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置、放射線撮像方法、記録媒体及びプログラムに関し、特に固体放射線検出器として放射線平面検出器(フラットパネルディテクタ)を用い、該放射線平面検出器の暗電流補正を行う装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体を透過した放射線像を撮影する放射線撮影装置として、従来は放射線を蛍光に変換する増感紙と、蛍光で感光するフィルムを密着させた、スクリーン・フィルム系(S/F系)と呼ばれる撮影装置が使用されてきた。また蛍光体とイメージ・インテンシファイア(I.I.)を組み合わせて放射線画像の増倍を行い、この増倍された画像を光学系を介して撮像管で撮影する、I.I.−TV撮影装置も使用されてきた。前者は一般撮影と呼ばれる静止画撮影に、また後者は透視撮影やアンギオ撮影と呼ばれる動画撮影に主に使用されてきた。
【0003】
最近では、画像デジタル化の要求から、デジタル画像出力を有するデジタル撮影装置が使用され始めている。一般撮影では、スクリーン・フィルム系に代わって、放射線像を潜像として蓄積するイメージングプレートを使用し、このイメージングプレートをレーザ走査することにより潜像を励起し、発生する蛍光を光電子増倍管で読み取る、コンピューテッド・ラジオグラフィ装置も使用されている。また動画撮影では、撮像管に代わってCCD等の固体撮像素子を使用する、I.I.−DR撮影装置も使用されている。コンピューテッド・ラジオグラフィ装置とI.I.−DR撮影装置の両者は、デジタル画像出力を有しており、医療画像のデジタル化に貢献し始めている。
【0004】
更に最近では、蛍光体と大面積アモルファスシリコンセンサを密着させた放射線平面検出器、いわゆるフラットパネルディテクタ(FPD)を使用し、光学系等を介さずに放射線像を直接デジタル化するデジタル撮影装置が実用化されている。またアモルファスセレン、よう化鉛(PbI2)及びよう化水銀(HgI2)等を使用して放射線を電子に変換し、該電子を大面積アモルファスシリコンセンサで検出するFPDも同様に実用化されている。これらFPDは、原理的に静止画のみならず動画も撮影可能なことから、次世代のデジタル撮影装置として期待されている。
【0005】
ここで、FPDの原理について図6、図7及び図8を用いて簡単に説明する。図6はセンサ読み取り動作原理を説明する図面であり、簡単のために9画素からなるセンサを示している。図6において、71は蛍光を電子に変換する光電変換部、72は光電変換部で発生した電子を転送するための薄膜トランジスタ(TFT: Thin Film Transistor)、73は光電変換部71にバイアス電圧を与えるバイアス線、74a,74b,74cはTFT72にスイッチング信号を伝達するゲート線、75a,75b,75cはTFT72を通過した電子を転送する信号線、76は信号線75a,75b,75cから1つの信号線を選択し信号電子を増幅する読み取りIC、77は増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器(A/D: Analog-to-digital converter)、78はTFT72のスイッチング動作を制御するゲート駆動装置である。
【0006】
図7において、センサ画素全面を覆う図示されていない蛍光体に放射線が照射されると、蛍光体はその強度に比例した蛍光を発する。光電変換部71はこの蛍光を捕捉し信号電子に変換する。ゲート駆動装置78がゲート線74aをHighにすると、このゲート線74aに接続された横一列のTFT全てがオンになる。すると光電変換部71に蓄積された信号電子は信号線75a,75b,75cに転送される。そして読み取りIC76が信号線75aを選択すると、この信号線75aに転送されている電子が増幅されて読み取られ、A/D77でデジタル信号に変換される。続いて読み取りIC76は75b及び75cを順次選択し、それぞれの信号線に転送されている電子が順次読み取られる。この動作によって図6においてゲート線74aに接続された横一列分の3画素の信号電子が読み取られ、デジタル信号に変換される。次にゲート線74b及び74cが順次選択され、同様にゲート線74b及び74cに接続された横一列分のそれぞれ3画素の信号電子が順次読み取られ、デジタル信号に変換される。
【0007】
次に、センサ1画素の動作原理について図7及び図8を用いて説明する。図7はMIS(Metal Insulator Semiconductor)型センサの構成図であり、図8は光電変換素子のエネルギーバンド図である。図7及び図8において、71は光電変換部、72はTFT、73はバイアス線、76は読み取りIC、82は光電変換部71にバイアス電圧を伝達する上部電極(D電極)、83は上部電極82と同電位でありa−Si真性半導体i層84へのホール注入を阻止するn+ドープ層、84は光電変換を行うa−Si真性半導体i層、85は電子・ホールの両者の移動を阻止する絶縁層、86は下部電極(G電極)である。
【0008】
図8(a),(b)はそれぞれリフレッシュ(又はリセット)及び光電変換モードの動作を示す光電変換素子のエネルギーバンド図であり、各層の厚さ方向の状態を表している。本光電変換素子にはD電極、G電極の電圧印加方法によりリフレッシュモードと光電変換モードとの2種類の動作がある。
【0009】
図8(a)において、D電極はG電極に対して負の電位が与えられており、i層84中の黒丸で示されたホールは電界によりD電極に導かれる。同時に白丸で示された電子はi層84に注入される。このとき一部のホールと電子はn+ドープ層83、i層84において再結合して消滅する。十分に長い時間この状態が続けばi層84内のホールはi層84から掃き出される。
【0010】
この状態から、図8(b)の光電変換モードにするには、D電極に、G電極に対して正の電位を与える。するとi層84中の電子は瞬時にD電極に導かれる。しかし、ホールはn+ドープ層83が注入阻止層として働くためi層84に導かれることはない。この状態でi層84に光が入射すると、光は吸収され電子・ホール対が発生する。この電子は電界によりD電極に導かれ、ホールはi層84内を移動しi層84と絶縁層85との界面に達する。
【0011】
しかしながら、絶縁層85内には移動できないため、i層84内の絶縁層85の界面に移動するため、素子内の電気的中性を保つため電流がG電極から流れる。この電流は光により発生した電子・ホール対に対応するため、入射した光に比例する。ある期間、図8(b)の光電変換モードを保った後、再びリフレッシュモードの図8(a)の状態になると、i層84に留まっていたホールは前述のようにD電極に導かれ、同時にこのホールに対応した電流が流れる。このホールの量は光電変換モード期間に入射した光の総量に対応する。この時、i層84内に注入される電子の量に対応した電流も流れるが、この量はおよそ一定なため、差し引いて検出すればよい。即ち、この光電変換素子はリアルタイムに入射する光の量を出力すると同時に、ある期間に入射した光の総量も出力することもできる。
【0012】
ところが、何等かの理由により光電変換モードの期間が長くなる、あるいは入射する光の照度が強い場合、光の入射があるにもかかわらず電流が流れないことがある。これは図8(c)のように、i層84内にホールが多数留まり、このホールのためi層84内のホールと再結合してしまうからである。この状態で光の入射の状態が変化すると、電流が不安定に流れることもあるが、再びリフレッシュモードにすればi層84のホールは掃き出され次の光電変換モードでは再び光に比例した電流が流れる。
【0013】
また、前述の説明において、リフレッシュモードでi層84内のホールを掃き出す場合、全てのホールを掃き出すのが理想であるが、一部のホールを引き出すだけでも効果はあり、前述と等しい電流が得られ、問題はない。即ち、次の光電変換モードでの検出機会において図8(c)の状態になっていなければよく、リフレッシュモードでのD電極のG電極に対する電位、リフレッシュモードの期間及びn+ドープ層83の注入阻止層の特性を決めればよい。また、更にリフレッシュモードにおいてi層84への電子の注入は必要条件ではなく、D電極のG電極に対する電位は負に限定されるものでもない。ホールが多数i層84に留まっている場合には例えD電極のG電極に対する電位が正であってもi層84内の電界はホールをD電極に導く方向に加わるからである。n+ドープ層83の注入阻止層の特性も同様に電子をi層84に注入できることが必要条件ではない。
【0014】
以上はMIS型センサにおける動作説明であるが、FPDで使用されている他の種類のセンサ、例えばPIN型フォトダイオードを使用したセンサにおいても、部分的に異なるもののほぼ同じ動作が行われる。特許文献1に開示されているFPDセンサがその一例である。また蛍光体を使用する方式のみならず、蛍光体の代わりに放射線を直接に電子に変換するアモルファスセレン、ガリウムヒ素(GaAs)、テルル化カドミウム(CdTe)、よう化鉛(PbI2)、よう化水銀(HgI2)等を使用するセンサにおいても、画素に蓄積された電子を読み取る動作やリフレッシュ動作は極めて類似している。
【0015】
ところで、FPDに使用されるセンサは数百万画素からなっているが、各画素の特性は微妙に異なっている。特に画像センサとして重要な特性は、暗電流特性と感度特性である。そこでFPDでは、これらの特性を補正するステップを実施し、実質上各画素の特性が均一なセンサとして使用している。この補正ステップはアモルファスセレン等を使用する方式も共通である。以下に暗電流特性と感度特性の補正方法について説明する。
【0016】
まず、以下に使用する用語について簡単に説明する。まず放射線検出器に放射線を照射して撮影することを放射線撮影、ここで得られる画像を放射線画像と呼ぶ。次に暗電流特性の測定は、センサに入力を与えないことを除いて放射線撮影と同一であることから、暗電流特性の測定を暗電流撮影、ここで得られる画像を暗電流画像と呼ぶ。またN回の暗電流画像を利用して暗電流補正した画像をN次暗電流補正画像と呼ぶことがある。さらに(N次)暗電流補正画像に対し感度補正を施した画像を(N次)補正画像、(N次)補正画像に対して画像診断に適した階調処理等の画像処理を施した画像を(N次)診断画像と呼ぶことがある。
【0017】
暗電流特性の補正方法について説明する。ここで暗電流とはセンサへの入力がないときに測定される電流であり、ランダム成分と定常的なオフセット成分からなるとする。暗電流がセンサ入力に依存しないと仮定すると、センサに信号を入力したときの画像からセンサに信号を入力しないときの画像を引くことで、画素毎に異なるオフセット成分の補正が可能となる。センサに信号を入力したときの放射線画像をXn(x,y)、その直後に測定される暗電流画像をD1(x,y)とすると、暗電流補正後の1次暗電流補正画像C1X(x,y)は次式で表される。ただしx,yは2次元配列した画素のアドレスである。また前記ランダム成分をR(x,y)、定常的なオフセット成分をF(x,y)としている。
【0018】
【数1】

【0019】
次に、感度特性の補正について説明する。感度補正はセンサを構成する画素の感度特性ばらつきを補正するステップである。感度特性が定常的であると仮定すると、センサに信号を入力したときの画像をセンサに一様な入力を与えたときの画像で割ることで、画素毎に異なる感度特性の補正が可能となる。センサに一様な入力を与えたとき出力をW(x,y)とすると、感度補正後の補正画像C1(x,y)は次式で表される。
【0020】
【数2】

【0021】
ところで、暗電流画像においてオフセット成分であるF(x,y)は、撮影条件が同一の場合はセンサへの入力に関わらず一定であるから、(3)式で示すオフセット補正を施すことで完全に除去可能である。ところが(1)式に現れるR0(x,y)と(3)式に現れるR1(x,y)は異なるため、ランダム成分R(x,y)は(3)式に示すオフセット補正では除去不可能である。この結果、暗電流補正と感度補正の両者を施した画像であっても、センサ由来の有限のランダムノイズが画像に残存することになる。このランダムノイズはランダム成分R(x,y)が放射線画像X(x,y)に比べて十分に小さければ問題はないが、低線量撮影のように信号である放射線画像X(x,y)が小さくなる撮影では信号雑音比の低下による画質の劣化を指摘される可能性がある。
【0022】
そこで、(5)式に示す性質を利用して、暗電流画像を多数回撮影してその平均値を取ることで、暗電流画像に含まれるランダム成分R(x,y)を実質無視できる大きさにまで小さくすることが考えられる。ランダム成分R(x,y)が正規分布の場合、ランダム成分R(x,y)の測定1回あたりの標準偏差σ0と測定回数n回平均値の標準偏差σnは以下の関係にある。
【0023】
【数3】

【0024】
この性質を利用した暗電流補正方法は、非特許文献1に説明されている。この方法を利用すれば、4回の暗電流撮影の平均値を使用することにより暗電流画像DX(x,y)に含まれるランダム成分R(x,y)は1/2になり、良好な暗電流補正を施すことが可能になる。1次暗電流補正画像と4次暗電流補正画像のそれぞれに残存するランダム成分R(x,y)の標準偏差の比を(8)式に示す。ただし放射線画像そのものに重畳するランダム成分と4回平均暗電流画像のランダム成分の両者を考慮している。
【0025】
【数4】

【0026】
(8)式より、ランダムノイズが支配的なほどの低線量撮影では、4回の暗電流撮影を行うことによって1回の暗電流撮影に比べて約20%の信号雑音比の改善が期待されることが判る。
【0027】
以上説明した放射線撮影及び暗電流撮影を行うためのFPDセンサの駆動方法について、センサ駆動フローチャートである図9を用いて説明する。図9において、21はアイドリング駆動、22は放射線撮影のための初期化駆動、23は放射線撮影のための撮影駆動、24は暗電流撮影のための初期化駆動、25は暗電流撮影のための撮影駆動、26は放射線曝射である。
【0028】
図9に示すように、FPDセンサの駆動状態は大きく分けてアイドリング駆動21、初期化駆動22及び24、撮影駆動23及び25の3種類が存在する。FPDセンサは、バイアス電圧を掛け始めると光電変換層のトラップ等によって生じる暗電流が蓄積され続ける。アイドリング駆動21は擬似的な読取動作によりこの暗電流を掃き出す動作であり、センサにバイアス電圧を印可してから撮影寸前まで断続的に行うセンサ準備ステップである。このときの擬似的な読取サイクルは比較的長い。その理由は読取動作による消費電力増加やセンサ温度上昇等を最小限に抑制するためである。
【0029】
次に、初期化駆動22及び24はやはり擬似的な読取動作を行い、暗電流を掃き出すと同時に放射線曝射に備えるステップである。初期化駆動22及び24で行われる読取サイクルはアイドリング駆動21より早い。その理由は、読取期間中は放射線曝射命令を受け付けられないためであり、読取サイクルを早くすることで放射線曝射命令から実際の放射線が曝射されるまでの遅延時間を短くしている。そして放射線曝射後に読取駆動23を行い、放射線画像の撮影を行う。
【0030】
暗電流撮影は放射線撮影に引き続いて行われる。図8に示すように放射線撮影を行うと、センサは直ちに初期化駆動24を開始し、そして放射線撮影と同じタイミングで暗電流撮影25を行う。このタイミングについて、図9を用いて詳しく説明する。
【0031】
図10は、放射線曝射とセンサ駆動のタイミングを説明するタイミングチャートである。図10において、31は放射線曝射スイッチによる放射線曝射要求信号、32は放射線曝射許可信号、33は放射線曝射、34は駆動方法1の駆動信号、35は駆動方法2の駆動信号である。またRはリフレッシュ、Xは放射線撮影、Dは暗電流撮影、Te1及びTe2は蓄積時間、Tiは読取サイクル1回の所要時間である。
【0032】
まず、駆動方法1について説明する。放射線曝射要求信号31がオンになると、センサはアイドリング駆動から初期化駆動に切り替わる。するとセンサはリフレッシュ動作を行い、センサに蓄積されたホールを掃き出す。そして初期化駆動における読取サイクルの4回目が終了すると放射線曝射許可信号32がオンになり、センサは読取サイクルを停止し放射線曝射33がオンになり、センサは放射線による信号を蓄積する。放射線曝射33がオフになるとセンサは蓄積を直ちに終了し、放射線画像を読み取る(X)。このときのセンサの蓄積時間はTe1である。センサは直ちにリフレッシュ動作を行い、引き続いて読取サイクルを繰り返し、4回目の読取サイクルが終了すると、蓄積時間Te1で暗電流撮影(D)を行う。
【0033】
次に、駆動方法2について説明する。同じく放射線曝射要求信号31がオンになると、センサはアイドリング駆動から初期化駆動に切り替わる。するとセンサはリフレッシュ動作を行い、センサに蓄積されたホールを掃き出す。そして初期化駆動における読取サイクルの4回目に放射線曝射許可信号32をオンにすると、センサは読取サイクルを停止し放射線曝射33がオンになり、センサは放射線による信号を蓄積する。所定時間Te2が経過するとセンサは蓄積を終了し、放射線画像を読み取る(X)。センサは直ちにリフレッシュ動作を行い、引き続いて読取サイクルを繰り返し、4回目の読取サイクルが終了すると、蓄積時間Te2で暗電流撮影(D)を行う。蓄積時間Te2は長時間撮影にも対応できるように、1秒〜2秒の時間が設定される。この駆動方法については、非特許文献2に説明されている。
【0034】
以上から明らかなように、駆動方法1と駆動方法2の相違は、駆動方法1は放射線曝射時間に応じて蓄積時間Te1を自由に変化させることができるのに対し、駆動方法2は蓄積時間Te2は固定である。駆動方法1は蓄積時間を最短にできるため、最長想定曝射時間に対応した蓄積時間を採用する駆動方法2に比べて、暗電流の蓄積を少なくできる利点がある。また実際の放射線曝射時間は胸部一般撮影であれば20msec程度なので、センサ駆動が短時間で終了し早期に画像を表示できる利点がある。一方駆動方法2は蓄積時間が常に一定であるため、放射線曝射前に暗電流撮影を行うことができる可能性がある。
【0035】
ここで注目すべきは、いずれの方法も放射線撮影の直後に暗電流撮影を行い、かつ放射線撮影と暗電流撮影の前に行う初期化駆動のリフレッシュ動作と読取サイクル回数が同一であり、さらに放射線撮影と暗電流撮影の蓄積時間も同一であることである。これは(1)式及び(2)式に示したオフセット成分F(x,y)が蓄積時間と駆動タイミングの関数であり、暗電流量が蓄積時間と高い相関を有し、且つセンサの過渡的特性のために駆動タイミングと暗電流の相関が高いためである。仮に、このような駆動を行わないと、放射線画像に重畳する暗電流画像D0(x,y)と暗電流撮影による暗電流画像D1(x,y)の相関が失われるため、(3)式に示す減算演算を行ってもオフセット成分F(x,y)の一部が残り、予期しないセンサ固有のパターン(アーティファクト)が現れることがある。
【0036】
図9及び図10では、説明の簡単のため暗電流撮影1回の場合を示した。しかしすでに説明したように、暗電流撮影を複数回行うことで暗電流画像に含まれるランダム成分を軽減し信号雑音比を向上できる。そこで実際には放射線撮影に続いて、必要に応じて1回から数回の暗電流撮影を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開平10−170657号公報
【特許文献2】特開2000−070250号公報
【非特許文献】
【0038】
【非特許文献1】J.P.Moy, B.Bosset, "How doesreal offset and gain correction affect the DQE in images from X-ray Flat detector", SPIE proceedings Vol.3659, 90-97(1999)
【非特許文献2】John M.Boudry, "Operation of Amorphous Silicon Detectors for Chest Radiography Within System Latency Requirement", SPIE proceedings Vol.3659, 336-344(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
ところが、暗電流撮影を複数回行うと、放射線撮影後に画像が得られるまでに長い時間を要する問題点がある。例えば駆動方法2において、初期化駆動のリフレッシュ動作を1回、読取サイクルを4回、1回分のリフレッシュ動作及び読取サイクル所要時間Tiを0.2秒、蓄積時間Te2を2秒、暗電流撮影を4回行う例について考える。この場合、放射線曝射終了から4回目の暗電流撮影が終了しモニタに画像を映すまでに必要な時間Tdisplayは、画像転送時間及び画像処理時間の合計Tprocessを0.5秒として次式で表される。
【0040】
【数5】

【0041】
FPDは撮影後に迅速に画像表示ができることから、撮影後直ちに診断画像を確認できると期待されている。特に放射線曝射後数秒以内で診断画像が表示された場合、放射線技師のワークフローを改善すると共に、再撮影のための患者の待ち時間を短縮すると期待されている。しかしもし画像表示に10秒以上も必要であれば、技師は画像表示まで待つことができず、技師のワークフロー改善は期待できない。またこのために患者の待ち時間を短縮することも難しくなる。
【0042】
この問題点を解決するために、駆動方法2では蓄積時間Te2が固定であることを利用して、放射線撮影に先立って暗電流撮影を(複数回)行い、この暗電流画像を使用して暗電流補正を施すことが考えられる。ところが実際にはセンサの過渡的性質のため、暗電流撮影と放射線撮影が時間的に離れている場合は、暗電流撮影における暗電流画像と放射線画像に重畳している暗電流画像の相関が失われ、アーティファクトが発生することがある。このため放射線曝射要求以前に暗電流撮影を行うことは実質的に不可能である。また、放射線曝射要求をトリガーとして放射線曝射要求から放射線曝射までの期間に暗電流撮影を行う方法が考えられる。
【0043】
しかしながら、この方法では、放射線曝射要求から実際に放射線が曝射されるまでの時間が長くなるため、この長期間に患者の動きや呼吸停止を強制することになり実用的ではない。したがって蓄積時間Te2が一定な駆動方法でも、駆動方法2に示すように放射線撮影の直後に暗電流撮影を行うことが望ましい。なお駆動方法1ではフォトタイマ撮影などにおいて実際の放射線曝射時間が予想できないために、放射線撮影に先立って暗電流撮影を行うことはできない。
【0044】
また、放射線曝射要求をトリガーとせずに、継続的に画像読み出しを繰り返す駆動方法も考えられる。例えば特許文献2ではこの駆動方法を用い、かつ放射線撮影の直前に撮影された1回の暗電流画像を用いて暗電流補正を施す提案が開示されている。しかしながら、この方法では、タイミング不明の1回の放射線撮影に対して多数の読み取り動作が必要なため、消費電力や発熱の問題が発生する恐れがある。また暗電流撮影と放射線撮影の同期が原理的に不可能であるため、両者のタイミングが重なる問題点が発生する。
【0045】
後者の問題点を解決するために特許文献2の第1実施例の変形実施例において、暗電流撮影と放射線撮影の両者のタイミングが重なった場合に、全放射線曝射期間をカバーする複数枚の放射線画像を記憶し、該複数枚の放射線画像から放射線撮影直前の暗電流画像を複数倍した画像を除算する提案が開示されている。しかしながら、係数倍画像の除算演算は定常的なオフセット成分をF(x,y)を補正できる可能性があってもランダム成分R(x,y)は増加させるだけであり、平均化によるランダム成分R(x,y)の低減効果は期待できない。その理由は以下のように説明される。
【0046】
放射線撮影直前の暗電流画像をD-1(x,y)、放射線曝射中の1枚目及び2枚目の放射線画像をそれぞれX0(x,y)及びX1(x,y)とすると、ここで行われる演算は次のように表される。
【0047】
【数6】

【0048】
この演算で残存するランダム成分と、通常の暗電流補正方法で残存するランダム成分の比は(14)式で示される。(14)式に示されるように、この方法を用いると(7)式に示したランダム成分R(x,y)の平均化効果を利用できないため、ノイズ成分は増大する。したがってこの方法では信号雑音比の悪化が懸念される。
【0049】
更に実際には、読み取り動作に時間を要するため、読み取り期間中に曝射された放射線情報を正確に電子に変換できない可能性や、読み取り期間中の放射線情報が無効になり患者被曝が増大する可能性がある。一方、特許文献2の第2実施例において、放射線撮影直前の1回の暗電流撮影に加え、放射線撮影直後に1回の放射線撮影を行い、両者を関連付けた暗電流画像を作成し、この暗電流画像を用いて暗電流補正を施す提案が開示されている。
【0050】
この方法においても開示されている関連付けは係数倍演算のみであり、同じく定常的なオフセット成分をF(x,y)を補正できてもランダム成分R(x,y)は増加させるだけであり、平均化による低減効果は期待できない。また放射線撮影直後の暗電流画像にはリフレッシュ動作で掃き出しきれなかった残像成分が含まれている。この画像と残像成分が含まれない放射線撮影直前の暗電流画像を組み合わせることは、両者の相関が不足するため実用的ではない。即ち、特許文献2が意図している暗電流補正はすべて定常的なオフセット成分F(x,y)の補正のみであり、(7)式に示した複数枚暗電流画像の平均によるランダム成分R(x,y)の低減、即ち信号雑音比の改善に関して何ら考慮されていない。
【0051】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、最終的な画像を得るに先立ち、放射線撮影後直ちにある程度の補正が施された画像を得ることができ、確認を可能とし、ユーザのワークフローを改善すると共に、再撮影に要する待ち時間を大幅に短縮することができる放射線撮像装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0052】
本発明の放射線撮像装置は、撮像手段で撮像した被写体像の縮小画像を、前記被写体像の画像の前に送信する送信手段と、前記縮小画像を表示した後に前記被写体像の画像を表示手段に表示する表示制御手段とを含む。
【0053】
本発明の放射線撮像装置は、被写体像を放射線で撮像する撮像手段と、前記撮像手段で前記被写体像の画像データを撮像した後に得られる第2の補正データを取得する途中段階の第1の補正データでの第1の補正処理と、前記第2の補正データでの第2の補正処理を前記被写体像の画像データに施す補正手段と、前記第1の補正処理に基づく画像を表示した後に前記第2の補正処理に基づく画像を表示する表示手段とを含む。
【0054】
本発明の放射線撮像装置は、撮像手段で被写体像の画像データを撮像した後に得られた第1の補正データに基づいた第1の補正処理と、前記第1の補正処理に用いられる前記第1の補正データの取得回数より多くの回数で取得された第2の補正データに基づいた第2の補正処理とを前記被写体像の画像データに施す補正手段と、前記第1の補正処理に基づく画像を表示した後に前記第2の補正処理に基づく画像を表示手段に表示する表示制御手段とを含む。
【0055】
本発明の放射線撮像方法は、撮像手段により被写体像を放射線で撮像するステップと、前記撮像手段で前記被写体像の画像データを撮像した後に得られる第2の補正データを取得する途中段階の第1の補正データでの第1の補正処理と、前記第1の補正データに基づいて構成される前記第2の補正データでの第2の補正処理とを前記被写体像の画像データに施すステップと、前記第1の補正処理に基づく画像を表示した後に前記第2の補正処理に基づく画像を表示手段に表示するステップとを含む。
【0056】
本発明の放射線撮像方法は、撮像手段により被写体像を放射線で撮像するステップと、前記撮像手段で前記被写体像の画像データを撮像した後に得られた第1の補正データに基づいた第1の補正処理と、前記第1の補正処理に用いられる前記第1の補正データの取得回数より多くの回数で撮像した後に取得された第2の補正データに基づいた第2の補正処理とを前記被写体像の画像データに施すステップと、前記第1の補正処理に基づく画像を表示した後に前記第2の補正処理に基づく画像を表示手段に表示するステップとを含む。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、最終的な画像を得るに先立ち、放射線撮影後直ちにある程度の補正が施された画像を得ることができ、確認を可能とし、ユーザのワークフローを改善すると共に、再撮影に要する待ち時間を大幅に短縮することができる。
【0058】
また、本発明によれば、被写体像の撮影後に直ちに簡略補正画像を表示できると共に精度の高い補正画像を後から表示可能であるため、撮影画像の正確性を確認することが可能である。
【0059】
更に、本発明によれば、被写体像の撮影後に直ちに簡略補正画像を表示できると共に精度の高い補正画像を後から表示可能であり、且つ表示を更新する方法を選択可能であるため、放射線撮影システムの操作を妨げることがなく、無駄のない操作が可能となる。
【0060】
更に、本発明によれば、被写体像の撮影後に直ちに簡略補正画像を表示できると共に精度の高い補正画像を後から表示可能であり、且つユーザは画像処理状況を知ることができるため、ユーザの誤操作が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態の放射線撮影方法を説明するフローチャートである。
【図2】本発明の放射線撮影装置の概略構成を示す模式図である。
【図3】第2の実施形態の放射線撮影方法を説明するフローチャートである。
【図4】第3の実施形態の放射線撮影方法を説明するフローチャートである。
【図5】パーソナルユーザ端末装置の内部構成を示す模式図である。
【図6】センサ読み取り動作原理を説明する模式図である。
【図7】MIS型センサの構成図である。
【図8】光電変換素子のエネルギーバンド図である。
【図9】センサ駆動を示すフローチャートである。
【図10】放射線曝射とセンサ駆動のタイミングを説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態を図1及び図2を用いて説明する。図1は第1の実施形態の放射線撮影方法を説明するフローチャート、図2は本発明の放射線撮像装置を示す模式図である。
【0063】
図1において、1は放射線曝射要求ステップ、2は放射線撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、3は放射線が曝射されるステップ、4は放射線画像を読み取るステップ、5は第1回目の暗電流撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、6は第1回目の暗電流画像を読み取るステップ、7は第2回目の暗電流撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、8は第2回目の暗電流画像を読み取るステップ、9は第3回目の暗電流画像撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、10は第3回目の暗電流画像を読み取るステップ、11は第4回目の暗電流画像撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、12は第4回目の暗電流画像を読み取るステップ、13は第1回目の暗電流画像を用いて暗電流補正した画像を表示するステップ、14は第1回目から第4回目までの暗電流画像を平均するステップ、15は第1回目から第4回目までの暗電流画像の平均を用いて放射線画像の暗電流補正を行った画像を保存するステップである。
【0064】
図2において、40は放射線撮影システム、41は放射線発生装置、42は患者、43は放射線検出器、44は放射線撮影システム40を制御するコントロールPC、45は放射線撮影システム40を構成する各要素を繋ぐバスライン、46は放射線検出器43から送信される画像を一時保存するキャプチャボード、47は放射線画像の画像処理(補正処理を含む)を行う画像処理装置、48は放射線画像を表示する表示装置、49は放射線画像を保存する保存装置である。
【0065】
放射線技師が患者42を整位して放射線曝射スイッチをオンにすると(ステップ1)、放射線検出器の初期化駆動が開始され読取サイクルを繰り返す(ステップ2)。放射線発生装置41と放射線検出器43の準備が完了すると放射線曝射命令が発令される。この命令を受けて放射線検出器43は蓄積を開始し、これに同期して放射線発生装置41は放射線曝射を開始する(ステップ3)。放射線曝射が終了すると放射線検出器43は蓄積を直ちに終了し、蓄積された放射線画像を読み取る(ステップ4)。続いて放射線検出器43は初期化駆動を開始し(ステップ5)、放射線撮影と同じ回数だけ読取サイクルを繰り返した後に蓄積を開始する。放射線撮影と同じ蓄積時間が終了すると、放射線検出器は蓄積された暗電流画像を読み取る(ステップ6)。
【0066】
ここまでのステップで得られた放射線画像及び暗電流画像は、それぞれキャプチャボード46に送信され、画像処理装置47において(3)式に示した1次暗電流補正が行われる。さらに画像処理装置47は1次暗電流補正画像に対して(6)式に示した感度補正、トリミング処理、階調処理及び鮮鋭化処理等を行い、得られた1次診断画像は直ちに表示装置48に表示される(ステップ13)。またこれらの画像処理に時間を要する場合は、1次暗電流補正画像に対してローパスフィルタ処理と間引きサンプリングを行った縮小画像に対して画像処理を行うことで、表示時間の短縮を行っても良い。このとき保存画像は縮小しないフルサイズ画像を用いてバックグラウンドで画像処理されるため、画質が劣化する問題はない。放射線曝射から表示装置48に画像が表示されるまでの時間Tdisplayは、(9)式と同じ条件において次式のように計算される。
【0067】
【数7】

【0068】
仮に、図10における駆動方法1を採用し放射線曝射時間が20msec、センサ蓄積時間が30msecであれば、Tdisplayは3秒程度も可能である。
【0069】
表示ステップ13と並行して、放射線検出器43はステップ7〜ステップ12に示される暗電流撮影を行い、それぞれの画像をキャプチャボード46に転送する。4回の暗電流撮影が終了すると、画像処理装置47は4回分の暗電流画像を平均し(ステップ14)、放射線画像との減算処理及び感度補正を行い、得られた4次補正画像は保存装置49に保存される(ステップ15)。更に画像処理装置47は4次補正画像に対してトリミング処理、階調処理、鮮鋭化処理等を行い、4次診断画像を作成する。
【0070】
これらのステップは表示ステップ13のバックグランド処理として実施されるため、放射線技師は放射線曝射後、直ちに表示装置48に表示された1次診断画像を利用して、患者の整位が十分であったか、画質に問題ないかを確認することができる。また診断に提供する画像は、4回の暗電流画像を利用しているため画質に優れる。
【0071】
なお、本実施形態では、表示装置48に表示するための暗電流撮影回数を1回、暗電流撮影総回数を4回としたが、この回数設定は本発明の範囲を制限するものではない。表示装置48に表示するための暗電流撮影回数及び暗電流撮影総回数は任意に設定可能であり、表示装置48に表示するための暗電流撮影回数は暗電流撮影総回数より少なければ、本発明の効果を得ることができる。したがって表示装置48に表示するための暗電流撮影回数は0回以上であり、暗電流撮影総回数は1回以上である。
【0072】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図2及び図3を用いて説明する。図3は第2の実施形態の放射線撮影方法を説明するフローチャートである。図3において、図1と共通のステップは図1と共通の符号を用いる。
【0073】
図3において、1は放射線曝射要求ステップ、2は放射線撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、3は放射線が曝射されるステップ、4は放射線画像を読み取るステップ、5は第1回目の暗電流撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、6は第1回目の暗電流画像を読み取るステップ、7は第2回目の暗電流撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、8は第2回目の暗電流画像を読み取るステップ、9は第3回目の暗電流画像撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、10は第3回目の暗電流画像を読み取るステップ、11は第4回目の暗電流画像撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、12は第4回目の暗電流画像を読み取るステップ、13は第1回目の暗電流画像を用いて暗電流補正した画像を表示するステップ、14は第1回目から第4回目までの暗電流画像を平均するステップ、15は第1回目から第4回目までの暗電流画像の平均を用いて放射線画像の暗電流補正を行った画像を保存するステップである。16は第1回目から第4回目までの暗電流画像の平均を用いて放射線画像の暗電流補正を行った画像を表示するステップ、51は画像更新方法を選択するステップ、52は放射線検出器43の動作状況を確認するステップ、53は画像処理状況を確認するステップである。
【0074】
放射線技師が患者42を整位して放射線曝射スイッチをオンにすると(ステップ1)、放射線検出器の初期化駆動が開始し読取サイクルを繰り返す(ステップ2)。放射線発生装置41と放射線検出器43の準備が完了すると放射線曝射命令が発令される。この命令を受けて放射線検出器43は蓄積を開始し、これに同期して放射線発生装置41は放射線曝射を開始する(ステップ3)。放射線曝射が終了すると放射線検出器43は蓄積を直ちに終了し、蓄積された放射線画像を読み取る(ステップ4)。続いて放射線検出器43は初期化駆動を開始し(ステップ5)、放射線撮影と同じ回数だけ読取サイクルを繰り返した後に蓄積を開始する。放射線撮影と同じ蓄積時間が終了すると、放射線検出器は蓄積された暗電流画像を読み取る(ステップ6)。
【0075】
ここまでのステップで得られた放射線画像及び暗電流画像は、それぞれキャプチャボード46に送信され、画像処理装置47において(3)式に示した1次暗電流補正が行われる。さらに画像処理装置47は1次暗電流補正画像に対して(6)式に示した感度補正、トリミング処理、階調処理及び鮮鋭化処理等を行い、得られた1次診断画像は直ちに表示装置48に表示される(ステップ13)。また任意のタイミングで動作する画像処理状況確認ステップ53は、表示装置48に表示された画像が第1回目の暗電流撮影に基づいて発生したことを確認し、表示装置48にその情報を表示する。
【0076】
表示ステップ13と並行して、放射線検出器43はステップ7〜ステップ12に示される暗電流撮影を行い、それぞれの画像をキャプチャボード46に転送する。4回の案電流撮影が終了すると、画像処理装置47は4回分の案電流が像を平均し(ステップ14)、放射線画像との減算処理を行う。4回分の暗電流画像で補正され感度補正も行われた4次補正画像は、保存装置49に保存される(ステップ15)。さらに画像処理装置47は4次補正画像に対してトリミング処理、階調処理、鮮鋭化処理等を行い、4次診断画像を作成し、この4次診断画像は表示装置48によって表示される(ステップ16)。
【0077】
4次診断画像の表示方法は、表示更新方法選択ステップ51によってユーザが選択可能である。第1の表示方法は4次診断画像が作成され次第、直ちに表示装置48に4次診断画像を表示する方法である。第2の表示方法は、表示装置48上にステップ13で表示された1次診断画像が表示されている場合にのみ、ステップ13の1次診断画像をステップ16の4次診断画像によって更新する方法である。これは表示装置48が、タッチパネルのように画像表示機能と放射線撮影システム40の操作機能を兼ねている場合に、放射線技師が次の撮影準備のために行っているシステム操作を妨げないためである。なお、第2の表示方法では、表示装置48がシステム操作画面を表示しているときは、4次診断画像を表示する代わりに画像処理確認ステップ53を用いて、次の診断画像が完成したことを伝えるアイコン等の表示を行っても良い。また撮影画像リストに画像補正及び画像処理の進行状況をアイコン等で表示しても良い。
【0078】
更に、任意のタイミングで動作する放射線検出器状況確認ステップ52によって、放射線検出器が暗電流撮影中であるか休止中であるか確認することができる。確認された放射線検出器状況を基に、表示装置48に放射線検出器43の状況を表示する。またもし放射線検出器43が暗電流撮影を実行中の場合は、コントロールPC44は放射線発生装置に対して曝射禁止命令を出す。この結果、バックグランドで暗電流撮影を行っている最中に放射線を曝射することがなくなるため、放射線撮影システム40は安全に暗電流撮影を実行することができる。また患者に対して誤って無効な放射線被曝を与えることもない。なお複数枚の暗電流画像撮影中に放射線曝射を禁止することに関しては、暗電流撮影が放射線曝射前でも放射線曝射後であっても有効な方法である。
【0079】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図2及び図4を用いて説明する。図4は第3の実施形態の放射線撮影方法を説明するフローチャートである。図4において、図1と共通のステップは図1と共通の符号を用いる。
【0080】
図4において、1は放射線曝射要求ステップ、2は放射線撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、3は放射線が曝射されるステップ、4は放射線画像を読み取るステップ、5は第1回目の暗電流撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、6は第1回目の暗電流画像を読み取るステップ、7は第2回目の暗電流撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、8は第2回目の暗電流画像を読み取るステップ、9は第3回目の暗電流画像撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、10は第3回目の暗電流画像を読み取るステップ、11は第4回目の暗電流画像撮影に備えて放射線検出器を初期化するステップ、12は第4回目の暗電流画像を読み取るステップ、13は第1回目の暗電流画像を用いて暗電流補正した画像を表示するステップ、14は第1回目から第4回目までの暗電流画像を平均するステップ、15は第1回目から第4回目までの暗電流画像の平均を用いて放射線画像の暗電流補正を行った画像を保存するステップである。16は第1回目から第四回目までの暗電流画像の平均を用いて放射線画像の暗電流補正を行った画像を表示するステップ、17は第1回目の暗電流画像と第2回目の暗電流画像の平均値を計算するステップ、18は第1回目の暗電流画像と第2回目の暗電流画像の平均値を用いて放射線画像の暗電流補正を行った画像を表示するステップ、19は第1回目から第3回目までの暗電流画像の平均値を計算するステップ、20は第1回目から第3回目の暗電流画像の平均値を用いて放射線画像の暗電流補正を行った画像を表示するステップである。
【0081】
放射線技師が患者42を整位して放射線曝射スイッチをオンにすると(ステップ1)、放射線検出器の初期化駆動が開始し読取サイクルを繰り返す(ステップ2)。放射線発生装置41と放射線検出器43の準備が完了すると放射線曝射命令が発令される。この命令を受けて放射線検出器43は蓄積を開始し、これに同期して放射線発生装置41は放射線曝射を開始する(ステップ3)。放射線曝射が終了すると放射線検出器43は蓄積を直ちに終了し、蓄積された放射線画像を読み取る(ステップ4)。続いて放射線検出器43は初期化駆動を開始し(ステップ5)、放射線撮影と同じ回数だけ読取サイクルを繰り返した後に蓄積を開始する。放射線撮影と同じ蓄積時間が終了すると、放射線検出器は蓄積された暗電流画像を読み取る(ステップ6)。
【0082】
ここまでのステップで得られた放射線画像及び暗電流画像は、キャプチャボード46にそれぞれ送信され、画像処理装置47において(3)式に示した1次暗電流補正が行われる。さらに画像処理装置47は1次暗電流補正画像に対して(6)式に示した感度補正、トリミング処理、階調処理及び鮮鋭化処理等を行い、得られた1次診断画像は直ちに表示装置48に表示される(ステップ13)。またこれらの画像処理に時間を要する場合は、1次暗電流補正画像に対してローパスフィルタ処理と間引きサンプリングを行った縮小画像を利用しても良い。
【0083】
表示ステップ13と並行して、放射線検出器43はステップ7に示される初期化駆動とステップ8に示される第2回目の暗電流撮影ステップを実施する。そして第1回目の暗電流画像と第2回目の暗電流画像の平均計算を行い(ステップ17)、且つ放射線画像との減算処理、感度補正及び診断用画像処理を行い、得られた2次診断画像を表示装置48に表示する(ステップ18)。さらに放射線検出器43はステップ9に示される初期化駆動とステップ10に示される第3回目の暗電流撮影ステップを実行する。そして第1回目から第3回目の暗電流画像の平均計算を行い(ステップ19)、且つ放射線画像との減算処理、感度補正及び診断用画像処理を行い、得られた3次診断画像を表示装置48に表示する(ステップ20)。さらに放射線検出器43はステップ11に示される初期化駆動とステップ12に示される第4回目の暗電流撮影ステップを実施する。そして第1回目から第4回目の暗電流画像の平均計算を行い(ステップ14)、且つ放射線画像との減算処理及び感度補正を施す。4回分の暗電流画像で補正された4次補正画像は、保存装置49に保存される(ステップ15)。さらに画像処理装置47は4次補正画像に対してトリミング処理、階調処理、鮮鋭化処理等を行い、4次診断画像を作成する。そして4次診断画像は表示装置48によって最終画像として表示される(ステップ16)。
【0084】
表示ステップ18、表示ステップ20及び表示ステップ16におけるN次診断画像の表示方法は、表示更新方法選択ステップ51を用いてユーザが選択可能である。第1の表示方法は最新の診断画像が作成され次第、直ちに表示装置48に最新の診断画像を表示する方法である。第2の表示方法は、表示装置48上に表示された(N−1)次診断画像が表示されている場合にのみ、N次画像によって更新する方法である。これは表示装置48が、タッチパネルのように画像表示機能と放射線撮影システム40の操作機能を兼ねている場合に、放射線技師が次の撮影準備のために行うシステム操作を妨げないためである。第3の表示方法は更新しない方法である。なお第2の表示方法で表示装置48がシステム操作画面を表示しているとき及び第3の表示方法では、最新の診断画像を表示する代わりに逐次診断画像が完成したことを伝えるアイコン等の表示を行っても良い。また撮影画像リストに画像補正及び画像処理の進行状況をアイコン等で表示しても良い。
【0085】
また、N次診断画像を得るための画像処理とM(≠N)次診断画像(N,Mは自然数)を得るための画像処理は、内容を変更することが可能である。例えばN=1、M=4の場合を考える。1次診断画像は1回の暗電流撮影に基づく画像であるため、4回の暗電流撮影に基づく4次診断画像に比べるとノイズが多い。そこで1次診断画像に施す画像処理は4次診断画像に施す画像処理と比べて、ノイズ平滑化処理を強くする、鮮鋭化処理を弱くする等の画像処理内容を変更することにより、一次診断画像と4次診断画像の差を小さくすると共に診断に適する画像を提供する方法が考えられる。
【0086】
なお、上述した第1〜第3の本実施形態による放射線撮像装置を構成する各機能、及び放射線撮像方法を構成する各ステップは、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明の実施形態に含まれる。
【0087】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、上記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体(光ファイバ等の有線回線や無線回線等)を用いることができる。
【0088】
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合や、供給されたプログラムの処理の全てあるいは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて上述の実施形態の機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明の実施形態に含まれる。
【0089】
図5は、一般的なパーソナルユーザ端末装置の内部構成を示す模式図である。この図5において、1200はコンピュータPCである。PC1200は、CPU1201を備え、ROM1202またはハードディスク(HD)1211に記憶された、あるいはフレキシブルディスクドライブ(FD)1212より供給されるデバイス制御ソフトウェアを実行し、システムバス1204に接続される各デバイスを総括的に制御する。
【符号の説明】
【0090】
40 放射線撮影システム
41 放射線発生装置
42 患者
43 放射線検出器
44 コントロールPC
45 バスライン
46 キャプチャボード
47 画像処理装置
48 表示装置
49 保存装置
71 光電変換部
72 薄膜トランジスタ(TFT)
73 バイアス線
74 ゲート線
75 信号線
76 読み取りIC
77 アナログ-デジタル変換器(A/D)
78 ゲート駆動装置
82 上部電極(D電極)
83 n+ドープ層
84 a−Si真性半導体i層
85 絶縁層
86 下部電極(G電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段で撮像した被写体像の縮小画像を、前記被写体像の画像の前に送信する送信手段と、
前記縮小画像を表示した後に前記被写体像の画像を表示手段に表示する表示制御手段と
を含むことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
被写体像を放射線で撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で前記被写体像の画像データを撮像した後に得られる第2の補正データを取得する途中段階の第1の補正データでの第1の補正処理と、前記第2の補正データでの第2の補正処理を前記被写体像の画像データに施す補正手段と、
前記第1の補正処理に基づく画像を表示した後に前記第2の補正処理に基づく画像を表示する表示手段と
を含むことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の補正データは、前記撮像手段の所定の特性であることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記所定の特性は暗電流特性であることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記第1の補正データは、暗電流特性の取得回数が0回であることを特徴とする請求項4に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記第2の補正データは、前記第1の補正データよりも回数の多い測定に基づいて得られるものであることを特徴とする請求項5に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
撮像手段で被写体像の画像データを撮像した後に得られた第1の補正データに基づいた第1の補正処理と、前記第1の補正処理に用いられる前記第1の補正データの取得回数より多くの回数で取得された第2の補正データに基づいた第2の補正処理とを前記被写体像の画像データに施す補正手段と、
前記第1の補正処理に基づく画像を表示した後に前記第2の補正処理に基づく画像を表示手段に表示する表示制御手段と
を含むことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項8】
前記第1の補正処理は、前記被写体像の画像データの縮小画像に対して施されることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
撮像手段により被写体像を放射線で撮像するステップと、
前記撮像手段で前記被写体像の画像データを撮像した後に得られる第2の補正データを取得する途中段階の第1の補正データでの第1の補正処理と、前記第1の補正データに基づいて構成される前記第2の補正データでの第2の補正処理とを前記被写体像の画像データに施すステップと、
前記第1の補正処理に基づく画像を表示した後に前記第2の補正処理に基づく画像を表示手段に表示するステップと
を含むことを特徴とする放射線撮像方法。
【請求項10】
撮像手段により被写体像を放射線で撮像するステップと、
前記撮像手段で前記被写体像の画像データを撮像した後に得られた第1の補正データに基づいた第1の補正処理と、前記第1の補正処理に用いられる前記第1の補正データの取得回数より多くの回数で撮像した後に取得された第2の補正データに基づいた第2の補正処理とを前記被写体像の画像データに施すステップと、
前記第1の補正処理に基づく画像を表示した後に前記第2の補正処理に基づく画像を表示手段に表示するステップと
を含むことを特徴とする放射線撮像方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の放射線撮像方法の前記各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の放射線撮像方法の前記各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−106971(P2013−106971A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−23107(P2013−23107)
【出願日】平成25年2月8日(2013.2.8)
【分割の表示】特願2012−173138(P2012−173138)の分割
【原出願日】平成13年6月5日(2001.6.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】