説明

放射線撮像装置及び画像情報作成方法

【課題】
画像を用いた経過観察において、定量性を維持し、広い撮像視野を確保した画像を得るために、それらに大きな影響を及ぼすデータを高精度,広撮像視野で取得する。
【解決手段】
被検者を載せる寝台と、寝台の長手方向の軸のまわりに環状配置され、放射線のエネルギーに応じた信号を出力する複数の放射線検出器と、放射線検出器と寝台の間にあって、放射線検出器の内周に沿って回転させられ、被検者から放出される第一放射線と異なるエネルギーを持つ第二放射線を放出する放射線発生手段と、第一放射線と第二放射線による画像を作成するデータ処理装置と、第一放射線と第二放射線による画像を表示する表示装置とを備え、データ処理装置は、複数の前記第二放射線による画像のうち共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、他方の第二放射線による画像に適用する対応領域処理部を備えた放射線撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置の画像情報作成方法及び放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、呼吸停止状態の第1X線CT像と呼吸状態の第2X線CT像とにおける各部位の大域的な位置合わせをし、第2X線CT像のボケた部位の画像を補正して、第1X線CT像のようなボケていない部位の画像にすることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−232855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、呼吸による遥動を除いてPET像を補正する際に画像の位置補正をしているが、画像の定量性について考慮されていない。また、撮像範囲については画像全体での補正を行っており、画像が欠損する場合を考慮されておらず、撮像範囲の問題について考慮されていない。
【0005】
一般のPET撮像ではもちろんのこと、PET装置を用いた経過観察においては以下の項目が特に問題である。
【0006】
(1)画像の定量性
(2)撮像範囲
本研究の目的は、画像を用いた経過観察において、定量性を維持し、広い撮像視野を確保した画像を得るために、それらに大きな影響を及ぼすデータを高精度,広撮像視野で取得することができる放射線撮像装置の画像情報作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
被検者を載せる寝台と、寝台の長手方向の軸のまわりに環状配置され、放射線のエネルギーに応じた信号を出力する複数の放射線検出器と、放射線検出器と寝台の間にあって、放射線検出器の内周に沿って回転させられ、被検者から放出される第一放射線と異なるエネルギーを持つ第二放射線を放出する放射線発生手段と、第一放射線と第二放射線による画像を作成するデータ処理装置と、第一放射線と第二放射線による画像を表示する表示装置とを備え、データ処理装置は、複数の前記第二放射線による画像で共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、他方の第二放射線による画像に適用する対応領域処理部を備えた放射線撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
画像を用いた経過観察において、高精度,広撮像視野のデータを収集でき、経過観察に耐え得るエミッション画像を取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を用いて実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例として、PET装置を用いて説明する。
【0011】
PET装置は、近年、主として医療分野における腫瘍診断の目的で重用されている。PET装置は、被検体である被検者に注入された放射線薬剤に由来して被検者の体内から放出される放射線(γ線)を計測し、その計測データから被検者体内の放射性薬剤の分布を画像化する。このようなPET装置は、代謝機能や生理機能の診断に用いられる。放射線計測技術を応用した、非侵襲的に被検者体内の画像を得る放射線画像診断装置の代表的なものにX線CT装置がある。
【0012】
PET装置を用いた悪性腫瘍等の診断は、以下のようにして行われる。まず、陽電子放出核種(15O,13N,11C,18F等)で標識した、体内の特定の部位に特異的に集積する放射性薬剤(以下、PET薬剤と呼ぶ)が被検者に投与される。被検者の体内のPET薬剤から放出された陽電子は、付近の細胞内の電子と結合して陽電子消滅する。この消滅時に、511KeVのエネルギーを有する一対のγ線(以下、対γ線と呼ぶ)が放出される。対γ線のそれぞれは互いにほぼ正反対の方向に放出されるため、双方のγ線を同時計測することにより陽電子消滅イベントが体内のどの直線上で起こったかを特定することができる。これらのγ線は、放射線検出器によって検出される。統計的に十分な数の対γ線を検出した後、フィルタード・バック・プロジェクション法などの画像再構成アルゴリズムを用いることによって、対γ線の発生頻度分布、すなわちPET薬剤の被検者体内での分布を画像化することができる。この体内のPET薬剤に起因して生じるγ線の計測をエミッション計測(以下、E計測という)、及びエミッション計測で得られたγ線検出信号を基に再構成された画像情報をエミッション画像情報(以下、E画像情報という)と呼ぶ。E画像情報は、一般的には単にPET画像と呼ばれるが、本明細書では後述のトランスミッション画像情報(以下、T画像情報という)と区別するためE画像情報と呼ぶ。またE計測から再構成までの一連のプロセスをまとめてエミッション撮像と呼ぶ。
【0013】
このようなPET装置を用いた検査においては、例えば糖(グルコース)の類似体であるFDG(Fluoro-2-deoxyglucose)と呼ばれるPET薬剤を被検者に投与した場合には、正常部位に比べて糖代謝の大きい悪性腫瘍(がん)にPET薬剤が集積する。このため、悪性腫瘍の位置,形状及び細胞活性度等の機能についての診断が可能になる。
【0014】
ところで、定量性を要求するPET検査ではE計測とは別に、PET装置に設けられたトランスミッション線源であるγ線源を用いたトランスミッションと呼ばれる計測(トランスミッション計測、以下T計測という)も行われる。PET計測におけるγ線の減弱とは、放射性薬剤由来のγ線が被検者の体外に出るまでに体内の物質と相互作用を及ぼす結果、画像化に有効な同時計測データとして検出されない現象のことを指す。このγ線の減弱分を補正するプロセスは、減弱補正と呼ばれ、現在では大部分のPET検査で実施されている。
【0015】
減弱補正は通常、T計測で得られるデータを用いて行う。すなわち、γ線源をベッド上に乗っている被検者の周囲で旋回させて、γ線源から放出されるγ線(放射線)を被検者に照射する。このγ線が被検者を透過する様々な方向でのそれぞれの放射線透過率を求める。E計測にて得られたデータが、これらの放射線透過率のデータを用いて補正される。γ線源には通常68Ge−68Gaや137Csなどの放射性同位体(Radio-Isotope;以下「RI」と呼ぶ)が用いられる。γ線源の替りに、特開2006−231083号公報に記載されているようにX線源を用いることも可能である。なお、必要に応じて、T計測によって得られたデータを基に被検者の断層画像情報が再構成される。この断層画像情報は、形態画像情報であり、以下においてT画像情報と呼ばれる。T画像情報は被検者の体内の放射線減弱の分布を表すものである。必要ならばその画像情報を基に再度投影方向ごとの減弱率を求め、これらの減弱率を減弱補正に用いることもできる。
【0016】
近年では、The Journal of Nuclear Medicine, Vol. 45, No.1 の4S頁〜14S頁に記載されているような、PET装置にX線CT装置を並列に配置して組み合わせた複合PET/CT装置が普及している。これら複合PET/CT装置ではX線CT装置にて得られた断層画像情報を利用して減弱補正を行っている。特開2006−231083号公報は、環状に配置した複数の放射線検出器の内側でX線源を旋回させる構造のPET装置を提案している。このPET装置も、X線源から放出されて、被検者を透過したX線の検出信号を用いて再構成された断層画像情報を利用して減弱補正を行っている。
【0017】
上記のように腫瘍診断を目的として行うPET撮像を治療(例えば放射線治療,化学療法等)の前後に行うことにより、治療効果を判定したり、予後を判定したりといった目的で行う経過観察が注目されている。従来もX線CT,核磁気共鳴撮像法(Magnetic Resonance Imaging、以下MRI)等の画像診断モダリティを用いた経過観察が行われていた。しかし、X線CT,MRIはいわゆる形態画像と呼ばれ、形,大きさ等が評価されるのみであった。一方PET画像は、上記のように細胞活性度合等の機能を画像化しているため機能画像と呼ばれている。そのためPET画像の持つ情報は、CT,MRIでは得ることのできない情報である。また、PET撮像によって得られる腫瘍の活性度合の機能変化は、形,大きさ等の形態変化よりも早期に観察され、経過観察の有効な手段として期待されている。
【0018】
PET画像を用いた経過観察を行う際に重要となるのは、PET画像の定量性である。機能情報の定量値が正しくなければ、治療前後の画像を比較することはできないため、経過観察をすることは困難である。PET画像の定量性に対する大きな要因として、上記減弱補正が挙げられる。上記のように放射性薬剤に由来するγ線が体外に出るまでに減弱する量は次のように計算できる。減弱係数μの物質を入射強度I0で距離Lだけ透過した場合の出射強度Iとすると、減弱量は次式で表わされる。
【0019】
I/I0=exp(−μL)
人体を構成する成分はほぼ水と考えることができるため、エネルギー511keVのγ線が水を距離L=10cmを透過する際に受ける減弱量は、減弱係数μ=0.095/cm(511keV)を用いると、I/I0=0.387となり、約4割程度まで減弱してしまう。そのためE計測のみでは、真のγ線飛来量、つまり放射線薬剤分布量は計測できず、γ線の減弱量を補正するT計測は必須である。このようにPET画像の定量性においてT計測ならびに減弱補正は重要である。
【0020】
減弱補正用データを収集・補正する方法として、上記のように通常、PET装置ではγ線源を、PET/CT装置ではX線源を用いるものがあるが、これらは両者とも放射線源を用いることにより体内の減弱分布を計測し、PET装置と一体となってE計測と同時に行うという点は共通している。これに対し、別画像診断装置で撮像された画像を用いて減弱補正を行う方法が提案されている。Medical Physics, Vol. 30(5) の937頁〜948頁では、MRI装置で撮像された画像を減弱補正データへ変換し、そのデータをもとに減弱補正する方法を提案している。放射線源を用いず、またPET撮像と同時に撮像せずに、画像処理方法を用いて減弱補正をする方法である。なおIEEE Transactions on Medical Imaging, Vol. 18, No.8 の712頁〜720頁は2つの画像情報の非線形の重ね合わせ技術(Non-rigid image registration法)を開示している。
【0021】
一般のPET撮像ではもちろんのこと、PET装置を用いた経過観察においては以下の項目が特に問題である。(1)画像の定量性、(2)撮像範囲。
【0022】
(1)に関して、従来のPET撮像は腫瘍診断を例とした場合、一回の撮像内での放射性薬剤分布及び集積量を見ることにより腫瘍の有無や活性度を判断していた。そのため、通常の放射線薬剤分布領域に対して規格化した指標であるStandard Uptake Value(以下SUV)値もその一回の撮像内でのみ比較されるものであった。しかし経過観察のような複数回の撮像を考えた場合、その都度撮像するT計測の精度にばらつきがあり減弱補正用データが一定でないと、通常の放射性薬剤分布領域の値が変化してしまい、SUV値も変化してしまうため、直接比較することができない。また画像定量性は被験者の被ばくの問題とも関係がある。近年PET撮像はPET/CT装置を用いることが一般的になってきているが、経過観察を行うことを考えた場合、被験者はT計測を行うために毎回CT撮像を行わなければならないため被ばく量が増大してしまう。2004年に英医学雑誌「Lancet」においてRisk of cancer from diagnostic X-raysという記事が発表され日本のがんの3.2%は放射線診断による被ばくが原因との推計が報告された。このように被験者の被ばくの問題は非常に深刻であり、T計測用のCT撮像による被ばくは少なくすることが望まれている。ただし単純にX線の線量を低くしてしまうと、T計測データの統計精度が悪くなり質が低下してしまうため、結果的に画像の定量性を低下させてしまう。このように画像定量性は被爆量とも密接に関係している。
【0023】
上記被ばく量を低減する方法として、経過観察の過程の一番初めのPET撮像において、高線量のγ線もしくはX線でT計測データを取得し、それ以降のPET撮像では、そのT計測データを用いてE計測データを減弱補正する方法が、同一被験者であれば原理的には可能と考えられる。これにより経過観察の過程で常にT計測を行う必要がなく被ばく量を低減することができる。しかしE計測とT計測とを同時に行わないとすると、被験者の画像上での位置や姿勢はPET撮像毎に異なるためそれらの位置合わせが必要となる。Medical Physics, Vol. 30(5) の937頁〜948頁に示したような2つの画像の非線形な重ね合わせ技術を用いて画像の位置を合わせたとして、局所的な位置合わせは可能であっても、全身すべての位置や姿勢を合わせることは困難であり、結果減弱補正の精度は低下してしまう。
【0024】
(2)の問題に関して述べる。さらに一度収集したT計測データが常にE計測データと同一の撮像範囲であるとは限らない。逆に経過観察家庭でのすべてのPET撮像において、常にE計測データと一度収集するT計測データを同じ撮像範囲で撮ることは困難である。これが上記(2)の問題である。この問題は一度撮像するT計測が必ずE計測データを包含する形で計測されれば解決するが、頭部専用PET装置のような移動範囲が制限されるような場合には、このような計測はできない。特に近年T計測に用いるγ線源として点線源を用いた場合にはこれらは顕著である。図1に示すように点線源を用いた撮像領域は斜線部分になり、E計測で被験者を移動させずに収集できる撮像範囲すべてのT計測を収集できない。データが欠如した部分のT計測を行おうとしても、頭部用専用PET装置では開口径が小さいため、被験者の肩が開口と干渉してしまい、それ以上奥に挿入できないためT計測は行えない。T収集が行えない領域は、E収集が可能であっても画像化することができないため、そもそも十分な範囲のPETができなくなってしまう。他の画像診断装置、たとえばMRIを用いて減弱補正用のデータを画像処理によって作成する方法であっても、MRI画像が主に画像化しているものはプロトン分布であり、γ線の減弱分布ではない。そのため減弱分布に変換するためにはMRI画像を領域分割し減弱係数として既知の値をあてはめているが、減弱分布値にも個体差があるため真の減弱分布値を求めることはできない。このようにT収集できないことによる撮像領域の問題はPET撮像において重要な課題である。
【0025】
一般にPET装置もしくはPET/CT装置において、体内の放射性薬剤分布および放射性薬剤量を取得するE画像情報は、減弱補正を行わない限り正しい分布およびその量を画像化することはできない。つまりE画像情報の定量性を向上させるためには、減弱補正用のデータであるT画像情報の精度を向上させることは重要であり、逆にT画像情報の精度を向上することで、E画像情報の精度を向上することが可能である。上記PET装置もしくはPET/CT装置では、T画像情報収集するために外部放射線源として、γ線源もしくはX線源を用いている。T画像情報の精度は、これら外部放射線源から放射強度を上げることで向上することが可能である。しかし、特にX線源ではしばしば被検体に対する被爆量が多いことが問題視されている。特に経過観察のような複数回のPET撮像を行うときには、被爆回数が増えてしまう。したがって、外部放射線源による被ばく量を低減することは不可欠である。
【0026】
本発明者らは、経過観察のように同一の被験者を複数回PET撮像するような場合、毎回高放射線強度でT画像情報を取得する必要はなく、一度高精度なT画像情報を取得し、それ以降のT画像情報は被験者の体輪郭と位置を取得し、そのT画像情報を高精度なT画像情報で補正することで、毎回高精度なT画像情報を取得でき、被験者の被爆量を低減できるのではないかと考えた。
【0027】
図2に画像データ処理の流れを示す。同一被験者を同一画像診断装置もしくは異なる画像診断装置で複数回撮像し、それぞれ得られる減弱補正用データである画像A,画像Bに対して、上記の手段を実施するための形態は次のようになる。同一被験者を同一画像診断装置であっても異なる時点、もしくは異なる画像診断装置で撮像した場合には、撮像範囲や画像内での被検体の位置は異なるため、これらを一般的な線形変換による画像位置合わせ方法、もしくは非線形の位置合わせ方法を用いて画像A,画像Bとの位置合わせを行う。この位置合わせは、画像表示装置に両方の画像を表示して、人によって位置を調整しても良い。また、位置調整が必要無い様にするため、様々な種類の装置で撮像された画像の位置と大きさを予め定めた一定範囲内に入るように規格を設けておいて、それぞれの画像をその規格に合わせて保存しておけば、位置調整は必要ない。
【0028】
位置合わせした画像A,画像Bにおいて、どちらかの画像について二つ以上の領域に分割する(ここでは画像Bを領域分割する例で説明する)。尚、分割は必ずしも必要ではないが、分割することにより共通領域と共通しない領域が正しいか確認することができる。
【0029】
図3に領域分割による比較画像の対応分類を示す。画像Aと上記分割した各領域が対応する画像Bでの領域が画像上でどのように対応しているかは、以下の3種類の状態の概要である画像上のプロフィールに分類できる。但し、この分類は必ずしも必要ではない。
【0030】
プロフィール(1) 画像A,画像B共に同一の領域として識別可能
プロフィール(2) 画像Aでは領域として識別可能だが、画像Bでは識別不可
プロフィール(3) 画像Aでは領域として識別不可だが、画像Bでは識別可能
これら各画像の対応する各領域において、各画像の対応画素値を対応情報として算出し、保持する。また各画像において、同一画素値でかつ連続している分布を求め、各画像の連続領域分布とその対応を対応情報として算出し、保持する。さらに画像A,画像Bが同一の撮像範囲でなく、広い撮像範囲での減弱補正データを取得したい場合には、上記で求めた対応情報と広い撮像範囲を持つ画像の非共通部分のデータを用いて不足分の減弱補正データを作成する。
【0031】
図4に、比較する画像の持つ特徴が同一の場合の処理手順および画像の共通領域,非共通領域からのμ−Map推定のやり方を示す。上記図2及び図3に示した画像データ処理の方法を実際の画像情報を用いて以下に詳細に説明する。まずPET装置もしくはPET/CT装置の外部放射線源を用いて上記画像A,画像Bが取得された場合を例として図4に示す。外部放射線源としてγ線源を用いて画像A,画像Bを取得した場合、まず画像A,画像Bを位置合わせ、領域分割を行う。画像A,画像Bは同一の情報を持った画像であるため、画像A,画像Bにおける共通部分の領域対応の分類は上記プロフィール(1)〜(3)のうち、プロフィール(1)のみである。この場合、どちらか統計精度の高い画像データの画素値を用いて新たな減弱補正データを作成することができる。また画像Bと同様の撮像領域を取得したい場合でも、領域として不足した領域をそのまま用いることで減弱補正データを作成することができる。これらはX線源を用いた場合にも同様である。また画像A,画像Bの一方をγ線源、他方をX線源とした場合でも、放射線源を用いているため得られる画像の持つ性質は共通であり、上記の方法により高精度な減弱補正データを取得可能である。尚、減弱補正データの他、体内散乱の補正情報を用いても良い。
【0032】
このように、放射線撮像装置が、第一放射線による画像と第一放射線とは異なるエネルギーの第二放射線による画像を記録し、複数の第二放射線からの画像のうち共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、他方の第二放射線による画像に適用し、共通な領域とは異なる領域から得られる情報を用いて前記第一放射線による画像を補正し、補正した画像を表示する画像情報作成方法により、高精度,広撮像範囲のデータを取得可能である。また、PET画像を用いた経過観察において、高精度,広撮像視野のデータを収集でき、経過観察に耐え得るエミッション画像を取得することができる。
【0033】
図5に、比較する画像の持つ特徴が異なる場合の本発明による処理手順および画像の共通領域,非共通領域からのμ−Map推定のやり方を示す。次に一方をPET装置もしくはPET/CT装置の外部放射線源を、他方を別画像診断装置(例えばMRI)により、それぞれ画像A,画像Bを取得した場合を例として図5に示す。ただし画像A,画像Bは共通の撮像領域を含んでいる必要がある。MRIによる画像は、形態画像であり、略体輪郭情報を持つ画像である。画像Aと画像Bを位置合わせ、領域分割する。画像A,画像Bがそれぞれ持つ画像情報は同一の性質ではないため、共通領域での画素値の特徴は上記(1)〜(3)のいずれかに分類される。これら画像Aと画像Bの共通領域から領域の対応画素値,連続領域の情報を取得し、それらを図5に示したようなデータとして保持する。図5のデータは画像Aと画像Bのデータがあればそれが入力される。データが無い場合は、データの不足している部分を画面に表示して、人により画像AとBを参照しながらデータが入力される。一方、画像Bにのみ含まれている非共通領域では、上記共通領域にて取得した対応画素値,連続領域の情報を用いて、連続領域であればその対応画素値を当てはめることができる。連続領域の情報を用いることで非共通領域に適用する情報の適切さが増し、画像の精度が向上する。連続領域でない場合にも、上記共通領域にて取得した情報を用いて、画像Bの画素値と対応する画像Aの画素値が存在する場合はその対応を用いて推定することが可能である。非共通部分における画像Bの画素値に対応する画像Aの画素値が存在せず推定が困難な場合には、予め決められた画素値を設定することによりμ−Mapを作成し、その後補正可能とする。
【0034】
このように、放射線撮像装置が、第一放射線による画像、第一放射線とは異なるエネルギーの第二放射線による画像、および第二放射線による断層画像と少なくとも一部共通領域を撮像し、略体輪郭情報を持つ画像を記録し、第二放射線による画像と略体輪郭情報を持つ画像のうち共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、他方の画像に適用し、共通な領域とは異なる領域から得られる情報を用いて前記第一放射線による画像を補正し、補正した断画像を表示する画像情報作成方法により、高精度,広撮像範囲のデータを取得可能である。また、PET画像を用いた経過観察において、高精度,広撮像視野のデータを収集でき、経過観察に耐え得るエミッション画像を取得することができる。
【0035】
このように二つの画像A,画像Bにおいて、それらの画像情報が持つ性質が同一の場合,異なる場合、どちらであっても高精度でかつ広撮像領域のデータを取得可能である。
【実施例2】
【0036】
本発明の好適な一実施例である陽電子放出断層撮像装置(PET装置)を、図6を用いて説明する。図6は、本実施例のPET装置において同一の被験者を複数回撮像し、そこで得られたT画像情報を処理するデータフローを示している。図6のPET装置は、図4の画像処理を実行する。PETもしくはPET/CT装置1からE画像データおよびT画像データもしくはCT画像データを得るプロセスは、一般的なPET装置もしくはPET/CT装置と同様である。
【0037】
PET装置1は、被検者に放射線を照射する外部放射線源2と、複数の検出器を有する検出器リング3(複数の放射線検出器)と、被検者を寝せる寝台4と、PET装置1で撮像した画像を表示する画像表示装置5と、PET装置1で撮像し、画像表示装置に表示させるデータ処理装置6(PET装置のみ接続)を有する。
【0038】
PET装置1により第1撮像においてE1データ,T1データを得て、第2撮像においてE2データ,T2データを得る。T1データもしくはT2データは同等の統計精度である必要はなく、外部放射線源2の強度を低減する、撮像を短時間にすることにより被験者の被ばく量を低減することができる。上記T1データ,T2データを位置合わせ部により位置合わせする。領域分割部により、T1データをi通り、T2データをj通りに領域分割する(説明のためi=4通り,j=5通りに分割する)。この領域分割処理は、画像表示装置5より指定することも可能である。これによりT1データおよびT2データを構成する領域は以下のような集合で表すことができる。
【0039】
T1データ:{(共通)(V1[T1],V2[T1],V3[T1],V4[T1])}
T2データ:{(共通)(V1[T2],V2[T2],V3[T2],V4[T2])、
(非共通)(V1[T2],V2[T2],V3[T2],V5[T2])}
対応領域処理部は、T1データとT2データは同一の特徴を持つ画素値を持っているため、撮像範囲が共通な領域では画素値の対応は1対1であり、対応するどちらか一方統計制度の高い画素値を用いることで高精度なμ−Mapを求めることができる。また非共通領域においても、V1[T2],V2[T2],V3[T2]は共通部分からの連続領域であるため、そのまま前記値をμ−Mapに適用可能である。V5[T2]領域も独立した領域であるが、T1データ,T2データは同一の特徴を持っているためその画素値をそのまま利用することが可能である。これにより得られるμ−Mapの集合は以下のようになる(高精度なデータとしてT1データを採用した例を示す)。
【0040】
μ−Map:{V1[T1],V2[T1],V3[T1],V4[T1],V5[T2]}
尚、高精度なデータとしてT2データを採用しても良い。
【0041】
上述した様に、被検者を載せる寝台と、放射線の検出信号を出力する複数の放射線検出器と、放射線検出器と寝台の間にあって、放射線検出器の内周に沿って回転させられ、被検者から放出される第一放射線と異なるエネルギーを持つ第二放射線を放出する放射線発生手段と、第一放射線と第二放射線による画像を作成するデータ処理装置と、第一放射線と第二放射線による画像を表示する表示装置とを備え、データ処理装置は、複数の前記第二放射線による画像のうち共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、他方の第二放射線による画像に適用する対応領域処理部を備えた放射線撮像装置により、高精度,広撮像範囲のデータを取得可能である。また、PET画像を用いた経過観察において、高精度,広撮像視野のデータを収集でき、経過観察に耐え得るエミッション画像を取得することができる。
【0042】
また、放射性薬剤に起因して被検体から放出される第1放射線を入力するときに被検体を乗せるベッドを取り囲んでいる複数の放射線検出器から出力される各第1放射線検出信号よりそれぞれ得られる各第1情報に基づいて第1断層画像情報を作成し、放射線源から放出される第2放射線を入力するときに被検体を乗せるベッドを取り囲んでいる複数の放射線検出器から出力される第2放射線検出信号から得られる第2情報に基づいて第2断層画像情報を作成し、第2断層画像情報を作成した同様の方法で被検体を異なる時点で撮像した第3断層画像情報、もしくは別装置にて撮像した第2断層画像情報と一部でも共通した撮像領域と類似した形態情報を保持した第3断層画像情報を画像保持装置より取得し、第2断層画像情報に対して第3断層画像情報を位置合わせし、第2断層画像情報と第3断層画像情報それぞれを一つ以上の領域に分割し、第2断層画像情報と位置合わせした第3断層画像情報との共通撮像領域において、各画像の領域に対応する部位に対して、第2断層画像情報と第3断層画像情報のどちらか精度の高い画像情報、もしくは第2断層画像情報と第3画像情報の両方から算出した画像情報(以下、高精度画像情報)を算出し、第2断層画像情報と位置合わせした上記第3画像情報との非共通領域において、どちらか広い撮像領域を持った断層画像情報を用いて、狭い撮像領域を持った断層画像情報の形態を補完することにより得られる広い撮像領域を持った画像情報(以下、広撮像領域画像情報)を算出し、補完された領域に対して高精度画像情報を適用し、高精度画像情報と広撮像領域画像情報を融合した第4断層画像情報を算出し、第1断層画像情報を第4画像情報にて減弱補正することにより、高定量性,広視野を確保した第1断層画像情報を取得することができる。高精度画像情報を用いてより精度の高い画像を作成することができる。
【実施例3】
【0043】
別の実施例について、図面を用いて説明する。
【0044】
以上述べた実施例は、PET装置もしくはPET/CT装置を用いたものであるが、PET装置と画像情報保持装置7との組み合わせにて実施することが可能である。その例を図7を用いて説明する。図7は、本実施例のPET装置において被験者を撮像したT画像情報と、本装置以外で撮像し(MRI画像情報等)画像情報保持装置7に保存された前記T画像情報とは異なる特徴をもつ画像情報(以下Mデータ)を処理するデータフローを示している。図7のPET装置は図5の画像処理を実行する。
【0045】
データ処理装置8はPET装置および画像情報保持装置7と接続され、PET装置1で撮像したデータを画像表示装置に表示させ、また、画像情報保持装置7の画像を画像表示装置に表示させる。
【0046】
前記方法と同様、PET装置1よりEデータ,Tデータを得て、画像情報保持装置7よりMデータを得る。ただしMデータの撮像領域は、Tデータの撮像範囲より広範囲のものとする。上記Tデータ,Mデータを位置合わせする。Tデータをi通り、Mデータをj通りに領域分割する(説明のためi=4通り、j=5通りに分割する)。これによりTデータおよびMデータを構成する領域は以下のような集合で表すことができる。
【0047】
Tデータ:{(共通)(V1[T],V2[T],V3[T],V4[T])}
Mデータ:{(共通)(V1[M],V2[M],V3[M],V4[M])、
(非共通)(V1[M],V2[M],V3[M],V5[M])}
TデータとMデータは異なる特徴を持つ画素値を持っているが、撮像範囲が共通な領域では、位置合わせがされているため画素値の対応は1対1であり、TデータとMデータの画素値対応情報を得ることができる。また非共通領域においても、V1[T],V2[T],V3[T]は共通部分からの連続領域であるため、そのまま前記値をμ−Mapに適用可能である。V5[M]領域も独立した領域は、画素値対応情報がないため、規定値として設定してあるV1[T]をμ−Mapに適用する。規定値として設定したV1[T]は、操作者が画像表示装置5で確認,修正可能な機能を有している。これにより得られるμ−Mapの集合は以下のようになる。
【0048】
μ−Map:{V1[T],V2[T],V3[T],V4[T]}
このように本発明を用いて広撮像範囲の減弱補正データを取得可能である。
【0049】
減弱補正部は、得られたμ−Mapデータを用いてE1データとE2データに減弱補正を行い、補正済みのE1データとE2データを作成する。これら補正済みのE1データとE2データは画像表示装置5に出力される。
【0050】
上述した、陽電子放出型断層撮像装置により、PET画像を用いた経過観察において、高精度,広撮像視野の減弱補正データを収集でき、経過観察に耐え得るエミッション画像を取得することができる。また経過観察の過程で被験者の被ばく量を低減することができる。
【0051】
上述した様に、被検者を載せる寝台と、放射線の検出信号を出力する複数の放射線検出器と、放射線検出器と寝台の間にあって、放射線検出器の内周に沿って回転させられ、被検者から放出される第一放射線と異なるエネルギーを持つ第二放射線を放出する放射線発生手段と、第一放射線と第二放射線による画像を作成するデータ処理装置と、第一放射線と第二放射線による画像を表示する表示装置と、第二放射線による断層画像と少なくとも一部共通領域を撮像し、略体輪郭情報を持つ画像を取り込む手段を備え、データ処理装置は、第二放射線による画像と前記取り込む手段からの画像のうち共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、他方の画像に適用する対応領域処理部を備えた放射線撮像装置により、高精度,広撮像範囲のデータを取得可能である。また、PET画像を用いた経過観察において、高精度,広撮像視野のデータを収集でき、経過観察に耐え得るエミッション画像を取得することができる。
【0052】
以上述べた各実施例は、μ−Mapデータについて、共通領域のデータを非共通領域のデータへ対応領域処理部で処理したが、他のデータでも同様に、共通領域のデータを非共通領域のデータへ適用することができる。
【0053】
以上述べた各実施例は、PET装置もしくはPET/CT装置を用いたが、その他PET装置とMRI装置を組み合わせたPET/MRI装置でもよい。また、画像保存装置より取得する画像は、実際に撮像された画像を用いたが、一般的な人体をモデル化したデジタルデータを用いてもよい。
【0054】
また、以上述べた各実施例は、PET装置もしくはPET/CT装置を用いたが、PET装置に替えてSPECT装置でも良いし、平面像を撮像するガンマカメラなどでも良く、放射線撮像装置へ広く適用できる。また、上述した実施例は減弱係数を用いて説明したが、体内散乱の補正情報を共通領域から非共通領域へ適用する等しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】外部放射線源として点線源を用いた場合の撮像領域。
【図2】本実施例による画像データ処理の流れ。
【図3】本実施例による領域分割による比較画像の対応分類。
【図4】比較する画像の持つ特徴が同一の場合の本実施例による処理手順および画像の共通領域,非共通領域からのμ−Map推定。
【図5】比較する画像の持つ特徴が異なる場合の本発明による処理手順および画像の共通領域,非共通領域からのμ−Map推定。
【図6】比較する画像の持つ特徴が同一の場合の本発明によるシステム構成。
【図7】比較する画像の持つ特徴が異なる場合の本発明によるシステム構成。
【符号の説明】
【0056】
1 PET装置またはPET/CT装置
2 外部放射線源
3 検出器リング
4 寝台
5 画像表示装置
6,8 データ処理装置
7 画像情報保持装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者を載せる寝台と、
放射線の検出信号を出力する複数の放射線検出器と、
前記放射線検出器と前記寝台の間にあって、前記放射線検出器の内周に沿って回転させられ、前記被検者から放出される第一放射線と異なるエネルギーを持つ第二放射線を放出する放射線発生手段と、
第一放射線と第二放射線による画像を作成するデータ処理装置と、
第一放射線と第二放射線による画像を表示する表示装置とを備え、
前記データ処理装置は、複数の前記第二放射線による画像で共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、他方の前記第二放射線による画像に適用する対応領域処理部を備えたことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
被検者を載せる寝台と、
放射線の検出信号を出力する複数の放射線検出器と、
前記放射線検出器と前記寝台の間にあって、前記放射線検出器の内周に沿って回転させられ、前記被検者から放出される第一放射線と異なるエネルギーを持つ第二放射線を放出する放射線発生手段と、
第一放射線と第二放射線による画像を作成するデータ処理装置と、
第一放射線と第二放射線による画像を表示する表示装置と、
第二放射線による画像と少なくとも一部共通領域を撮像し、略体輪郭情報を持つ画像を取り込む手段を備え、
前記データ処理装置は、前記第二放射線による画像と前記取り込む手段からの画像のうち共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、他方の画像に適用する対応領域処理部を備えたことを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の放射線撮像装置において、
複数の前記第二放射線による画像を位置合わせする位置合わせ手段と、複数の前記第二放射線の画像で共通な領域と前記共通な領域とは異なる領域に領域を分割する領域分割手段とを有することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
請求項2に記載の放射線撮像装置において、
前記第二放射線による画像と前記取り込む手段からの画像を位置合わせする位置合わせ手段と、前記共通な領域と前記共通な領域とは異なる領域に領域を分割する領域分割手段とを有することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の放射線撮像装置において、
前記対応領域処理部は、前記共通な領域と前記共通な領域とは異なる領域とが連続していることを示す連続領域の情報を用いて、前記共通な領域とは異なる領域の画像に共通な領域から得られる情報を適用することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項6】
第一放射線による画像と前記第一放射線とは異なるエネルギーの第二放射線による画像を記録し、
複数の前記第二放射線からの画像のうち共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、他方の前記第二放射線による画像に適用し、前記共通な領域とは異なる領域から得られる情報を用いて前記第一放射線による画像を補正し、補正した画像を表示することを特徴とする放射線撮像装置による画像情報作成方法。
【請求項7】
第一放射線による画像,前記第一放射線とは異なるエネルギーの第二放射線による画像、および第二放射線による画像と少なくとも一部共通領域を撮像し、略体輪郭情報を持つ画像を記録し、
前記第二放射線による画像と前記略体輪郭情報を持つ画像のうち共通な領域とは異なる領域から得られる情報を、前記他方の画像に適用し、前記共通な領域とは異なる領域から得られる情報を用いて前記第一放射線による画像を補正し、補正した画像を表示することを特徴とする放射線撮像装置による画像情報作成方法。
【請求項8】
請求項6に記載の画像情報作成方法において、
複数の前記第二放射線による画像を位置合わせし、
前記共通な領域と前記共通な領域とは異なる領域に領域を分割することを特徴とする画像情報作成方法。
【請求項9】
請求項7に記載の画像情報作成方法において、
前記第二放射線による画像と前記略体輪郭情報を持つ画像を位置合わせする位置合わせし、前記共通な領域と前記共通な領域とは異なる領域に領域を分割することを特徴とする画像情報作成方法。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の画像情報作成方法において、
前記共通な領域と前記共通な領域とは異なる領域とが連続していることを示す連続領域の情報を用いて、前記共通な領域とは異なる領域の画像に共通な領域から得られる情報を適用することを特徴とする画像情報作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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