放射線撮像装置
【課題】電力消費を抑えつつ、高画質の放射線画像を取得することが可能になると共に、放射線変換パネルの曝射線量に応じたAD変換を可能とする。
【解決手段】放射線画像撮影装置(20A)は、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネル(52)と、前記放射線変換パネル(52)から出力される前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換するAD変換器(90)と、前記放射線変換パネル(52)に照射される前記放射線の曝射線量に基づいて、前記AD変換器(90)におけるAD変換のサンプリング回数を決定するサンプリング回数決定部(108)とを備える。
【解決手段】放射線画像撮影装置(20A)は、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネル(52)と、前記放射線変換パネル(52)から出力される前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換するAD変換器(90)と、前記放射線変換パネル(52)に照射される前記放射線の曝射線量に基づいて、前記AD変換器(90)におけるAD変換のサンプリング回数を決定するサンプリング回数決定部(108)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルと、前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換するAD変換器とを備えた放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野において、被写体を透過した放射線を検出することにより該被写体の放射線画像を撮像する放射線撮像装置(以下、電子カセッテともいう。)が用いられている。電子カセッテでは、可搬性を向上させるために、バッテリ等の蓄電手段を含む電源部を内蔵すると共に、前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換してデジタルデータを得ている。
【0003】
ところで、可搬型の電子カセッテにおいても、例えば、特許文献1の技術を適用し、放射線を出力する放射線源の管電圧及び管電流、被写体の厚み及び撮像領域等の撮像条件に基づき、放射線画像に対してオーバサンプリング方式によるAD変換を行うことにより、ランダムノイズを低減した高画質の放射線画像(デジタルデータ)を取得してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−275235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オーバサンプリング方式によるAD変換では、サンプリング時間が長くなって電力消費が早くなるので、可搬型の電子カセッテでは、放射線画像の高画質化と電力消費との間にはトレードオフの関係がある。また、実際の撮影では、撮像メニューに応じた線量の放射線が被写体を介して放射線変換パネルに照射されるので、該放射線変換パネルの曝射線量に応じたサンプリング(AD変換)を行うことも必要である。
【0006】
本発明は、上記の課題を解消するためになされたものであり、電力消費を抑えつつ、高画質の放射線画像を取得することが可能になると共に、放射線変換パネルの曝射線量に応じたAD変換が可能となる放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る放射線撮像装置は、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルと、前記放射線変換パネルから出力される前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換するAD変換器と、前記放射線変換パネルに照射される前記放射線の曝射線量に基づいて前記AD変換器におけるAD変換のサンプリング回数を決定するサンプリング回数決定部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、前記放射線変換パネルに照射される前記放射線の曝射線量に基づいて前記AD変換器におけるAD変換のサンプリング回数が決定されるので、前記AD変換器が前記サンプリング回数に従って前記画像信号に対するAD変換を行えば、前記曝射線量に応じたAD変換が可能になると共に、電力消費を抑えつつ、高画質の放射線画像を取得することも可能となる。
【0009】
ここで、前記放射線撮像装置は、前記放射線変換パネルから前記画像信号を読み出す信号読出部と、前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射開始から前記信号読出部による前記画像信号の読み出しまでの間に、前記放射線変換パネルから漏れ出すリーク信号を検出するリーク信号検出部とをさらに備え、前記サンプリング回数決定部は、前記リーク信号検出部が検出した前記リーク信号の信号レベルに基づいて前記曝射線量を推定し、推定した前記曝射線量に基づいて前記サンプリング回数を決定する。
【0010】
前記リーク信号は、前記信号読出部が前記画像信号を読み出す前に、前記画像信号の信号レベルに応じて前記放射線変換パネルから漏れ出る信号であり、前記曝射線量に応じた前記画像信号の信号レベルが大きいほど、前記リーク信号の信号レベルも大きくなる。従って、前記リーク信号の信号レベルより前記曝射線量を推定し、推定した前記曝射線量に基づいて前記サンプリング回数を決定すれば、該曝射線量に適したAD変換を実行することができる。
【0011】
そのため、前記サンプリング回数決定部は、前記リーク信号の信号レベルが比較的低い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を行うように前記AD変換器を制御し、一方で、前記リーク信号の信号レベルが比較的高い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を解除することも可能となる。
【0012】
すなわち、前記リーク信号の信号レベルが低ければ、前記画像信号の信号レベルが低く、前記曝射線量が小さい。この場合には、前記オーバサンプリング方式により前記画像信号に対するAD変換を行うことでランダムノイズを低減させることができる。
【0013】
一方、前記リーク信号の信号レベルが高ければ、前記画像信号の信号レベルが高く、前記曝射線量が大きい。従って、前記画像信号に対するランダムノイズのレベルは相対的に低くなる。この場合には、前記オーバサンプリング方式によるAD変換を行わなくても、ノイズレベルの低い放射線画像を得ることができるので、前記オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すればよい。これにより、不用意に電力が消費されることを回避することができる。
【0014】
そして、前記放射線変換パネルは、前記放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を前記画像信号に変換する光電変換層とから構成される。この場合、前記光電変換層には、前記可視光を前記画像信号に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子から前記画像信号を前記信号読出部に出力するためのスイッチング素子とが行列状に配置されると共に、前記各スイッチング素子をオンするための制御信号が供給される複数の走査線と、該各走査線と交差し且つ前記各画像信号が出力される複数の信号線とが配列され、前記各走査線及び前記各信号線には複数の前記スイッチング素子が接続されている。
【0015】
次に、前記リーク信号を検出するための本発明の具体的構成(1)〜(4)について説明する。
【0016】
(1)前記リーク信号は、前記スイッチング素子がオフ状態である場合に、前記光電変換素子から前記スイッチング素子及び前記信号線を介して前記信号読出部に漏れ出る信号である。そこで、前記リーク信号検出部は、前記各信号線から前記信号読出部に漏れ出た前記リーク信号を検出し、前記各信号線の並び方向に沿った前記リーク信号の信号レベルの変化を示すプロファイルを作成し、前記サンプリング回数決定部は、前記プロファイルに基づいて前記サンプリング回数を決定すればよい。
【0017】
前記画像信号は、前記各信号線を介して前記信号読出部に読み出されるので、前記プロファイルに従って前記サンプリング回数を決定し、決定した前記サンプリング回数に従って、読み出された前記画像信号に対するAD変換を行えば、ランダムノイズを確実に低減させることができ、この結果、高画質の放射線画像を確実に取得することができる。
【0018】
また、前記サンプリング回数決定部は、前記プロファイルにおける前記信号レベルの最大値と最小値とのレベル差を算出し、算出した前記レベル差に基づいて前記サンプリング回数を決定してもよい。前記各信号線毎に前記画像信号の信号レベルが異なる場合もあり得るので、前記レベル差に基づいて前記サンプリング回数を決定し、決定した前記サンプリング回数に従って、読み出された前記画像信号に対するAD変換を行えば、高画質の放射線画像を精度よく取得することができる。
【0019】
また、前記信号読出部は、前記各信号線と前記AD変換器との間に介挿される増幅器をさらに有し、前記増幅器は、前記各信号線から前記信号読出部に前記リーク信号が漏れ出る場合に、前記画像信号を増幅する際のゲインよりも高いゲインで前記リーク信号を増幅可能な可変ゲイン増幅器であることが望ましい。
【0020】
前記リーク信号は、前記画像信号と比較して信号レベルが相対的に低いため、該リーク信号の取得時に、前記可変ゲイン増幅器のゲインを大きくして、前記リーク信号を増幅すれば、前記サンプリング回数を精度よく決定することが可能となる。
【0021】
(2)前記放射線変換パネルの製造時等に、スイッチング機能が正常に動作しない(常時オン状態)のスイッチング素子が一部形成される場合がある。この場合、当該スイッチング素子に接続される光電変換素子及び信号線は、前記画像信号の検出及び読み出しに寄与しない構成要素(欠陥部分)となるため、通常、これらの構成要素は、使用されることはない。
【0022】
そこで、本発明では、このような欠陥部分が発生した場合、前記リーク信号検出部は、当該スイッチング素子に接続される信号線から前記信号読出部に漏れ出るリーク信号のみを検出してもよい。
【0023】
すなわち、上記の欠陥部分を前記リーク信号の検出専用の構成要素とすることにより、前記放射線変換パネルを無駄なく使用することが可能になると共に、該リーク信号の検出専用の構成要素を別途形成することが不要となる。
【0024】
(3)前記可視光を電気信号に変換する他の光電変換素子と、前記他の光電変換素子から前記電気信号をリーク信号として前記信号読出部に出力するリーク信号出力線とを前記光電変換層に形成し、前記リーク信号検出部は、前記リーク信号出力線から前記信号読出部に出力された前記リーク信号のみ検出すればよい。
【0025】
すなわち、(2)の場合とは異なり、(3)の場合には、前記リーク信号を検出して読み出すための光電変換素子及びリーク信号出力線(専用線)を前記光電変換層に積極的に形成する。この場合、前記リーク信号の検出専用の構成要素を別途形成することになるが、前記画像信号の読み出しとは関係なく、前記リーク信号を検出することが可能となる。
【0026】
(4)前記放射線撮像装置は、前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、前記バイアス線を介して前記各光電変換素子に前記バイアス電圧を印加するバイアス電源と、前記バイアス線を流れるバイアス電流を検出する電流検出部とをさらに有してもよい。この場合、前記リーク信号検出部は、前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射時に発生する前記バイアス電流の変化を、前記リーク信号の信号レベルの変化として検出する。
【0027】
前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射によって前記バイアス電流が変化することに着目し、該バイアス電流の変化を前記リーク信号の信号レベルの変化とみなして検出することで、前記リーク信号を効率よく検出することができる。
【0028】
また、前記各走査線と交差するように複数の前記バイアス線を前記光電変換層に配列し、1つの前記バイアス線に対して1つの前記電流検出部を接続し、前記リーク信号検出部は、前記各電流検出部がそれぞれ検出した前記各バイアス線を流れる前記バイアス電流の変化を、前記各リーク信号の信号レベルの変化として検出してもよい。
【0029】
これにより、前記各バイアス線毎に前記リーク信号が検出されるので、この場合でも、前記画像信号に対するランダムノイズの低減を精度よく行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、放射線変換パネルに照射される放射線の曝射線量に基づいてAD変換器におけるAD変換のサンプリング回数が決定されるので、前記AD変換器が前記サンプリング回数に従って画像信号に対するAD変換を行えば、前記曝射線量に応じたAD変換が可能になると共に、電力消費を抑えつつ、高画質の放射線画像を取得することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係る電子カセッテが適用される放射線撮像システムの構成図である。
【図2】図1の電子カセッテの斜視図である。
【図3】図1の電子カセッテのブロック図である。
【図4】図1の電子カセッテを用いた被写体の撮像を説明するためのフローチャートである。
【図5】放射線の照射から放射線画像の読み取りまでの流れを説明するためのタイムチャートである。
【図6】信号線の並び方向に沿ったリーク信号のプロファイルを示す説明図である。
【図7】第2実施形態に係る電子カセッテのブロック図である。
【図8】第3実施形態に係る電子カセッテのブロック図である。
【図9】第4実施形態に係る電子カセッテのブロック図である。
【図10】図9の電流検出部が検出したバイアス電流に応じた電圧値の時間的変化を示すタイムチャートである。
【図11】第5実施形態に係る電子カセッテの一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る放射線撮像装置の好適な実施形態について、図1〜図11を参照しながら以下詳細に説明する。
【0033】
[第1実施形態に係る放射線撮像装置の構成の説明]
図1は、第1実施形態に係る放射線撮像装置としての電子カセッテ20Aが適用される放射線撮像システム10の構成図である。
【0034】
放射線撮像システム10は、ベッド等の撮影台12に横臥した被写体14である患者に対して、放射線16を照射する放射線装置18と、被写体14を透過した放射線16を検出して放射線画像に変換する電子カセッテ20Aと、画像処理装置として機能すると共に放射線撮像システム10全体を制御するシステムコントローラ24と、ユーザの入力操作を受け付けるコンソール26と、撮像した放射線画像等を表示する表示装置28とを備える。
【0035】
システムコントローラ24と、電子カセッテ20Aと、表示装置28との間には、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.60.a/b/g/n等の無線LAN(Local Area Network)、又は、ミリ波等を用いた無線通信により信号の送受信が行われる。なお、ケーブルを用いた有線通信により信号の送受信を行ってもよい。
【0036】
システムコントローラ24には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)30が接続され、RIS30には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)32が接続されている。
【0037】
放射線装置18は、放射線16を照射する放射線源34と、放射線源34を制御する放射線制御装置36と、放射線スイッチ38とを備える。放射線源34は、電子カセッテ20Aに対して放射線16を照射する。放射線源34が照射する放射線16は、X線、α線、β線、γ線、電子線等であってもよい。放射線スイッチ38は、2段階のストロークを持つように構成され、放射線制御装置36は、放射線スイッチ38がユーザによって半押されると放射線16の照射準備を行い、全押されると放射線源34から放射線16を照射させる。放射線制御装置36は、図示しない入力装置を有し、ユーザは、前記入力装置を操作することで、放射線16の照射時間、管電圧、管電流等の値を設定することができる。放射線制御装置36は、設定された照射時間等に基づいて、放射線源34から放射線16を照射させる。
【0038】
図2は、図1に示す電子カセッテ20Aの斜視図である。
【0039】
電子カセッテ20Aは、撮影台12と被写体14との間に配置されるパネル部40と、該パネル部40上に配置された制御部42とを備える可搬型の電子カセッテである。なお、パネル部40の厚みは、制御部42の厚みよりも薄く設定されている。
【0040】
パネル部40は、放射線16を透過可能な材料からなる略矩形状の筐体44を有し、被写体14が横臥する筐体44の上面は、放射線16が照射される照射面46とされている。照射面46には、被写体14の撮像領域及び撮像位置を示すガイド線48が形成され、ガイド線48の外枠は、放射線16の最大照射範囲(照射野)を示す撮像可能領域50とされている。また、ガイド線48の中心位置(十字状に交差する2本のガイド線48の交点)は、該撮像可能領域50の中心位置である。
【0041】
筐体44内には、被写体14を透過して筐体44内に入射した放射線16を放射線画像に変換する放射線変換パネル52が収容されている。放射線変換パネル52は、放射線16を可視光等の他の波長の電磁波に変換するシンチレータ54と、該シンチレータ54により変換された電磁波を電気信号に変換する光電変換層56とから構成された、いわゆる間接変換型の放射線検出器である。
【0042】
なお、図2では、放射線16の照射方向に沿って光電変換層56とシンチレータ54との順に配置された表面読取方式としてのISS(Irradiation Side Sampling)方式の放射線検出器を図示しているが、放射線16の照射方向に沿ってシンチレータ54と光電変換層56との順に配置された、裏面読取方式であるPSS(Penetration Side Sampling)方式の放射線検出器であってもよい。また、シンチレータ54としては、例えば、ヨウ化セシウム(CsI)又はガドリニウム・オキサイド・サルファ(GOS)から構成されるシンチレータを用いればよい。さらに、第1実施形態では、上述した間接変換型の放射線検出器に代えて、シンチレータ54を用いずに放射線16を電気信号に直接変換する、いわゆる直接変換型の放射線検出器を使用することも可能である。以下の説明では、図2のISS方式の放射線変換パネル52を用いた場合について説明する。
【0043】
一方、制御部42は、放射線16を透過しない材料からなる略矩形状の筐体58を有し、筐体44における撮像可能領域50以外の箇所に配置されている。なお、筐体58は、放射線16が照射されることのない箇所に配置できればよいので、撮像可能領域50内であっても、放射線16が照射されず且つ被写体14にとり邪魔にならない箇所に配置してもよい。また、筐体44の一部を突出させて、その突出部分を制御部42として構成してもよい。
【0044】
図3は、電子カセッテ20Aのブロック構成図である。
【0045】
前述の制御部42は、電子カセッテ20A全体を制御するカセッテ制御部60と、システムコントローラ24及び放射線装置18との間で無線通信により信号の送受信を行う通信部62と、電子カセッテ20A全体の電源である電源部64と、光電変換層56を駆動させるためのバイアス電源66とを有する。
【0046】
光電変換層56は、放射線16を電荷に変換して蓄積可能なpin型のフォトダイオードやフォトトランジスタ等の光電変換素子68と、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(Thin Film Transitor;TFT)70とを有する。なお、図3では、光電変換素子68がpin型のフォトダイオードである場合を図示している。
【0047】
この場合、光電変換層56では、ガラス又は樹脂からなる基板の一面に複数の信号線72とゲート線(走査線)74とを互いに交差させるように配設し、各ゲート線74と各信号線72とにより区画された小領域に光電変換素子68とTFT70とをそれぞれ設けることで、前記基板に複数の光電変換素子68及び複数のTFT70を二次元マトリクス状に配列させている。また、1つの光電変換素子68には1本のバイアス線76が接続され、各バイアス線76は、バイアス電源66と接続された1本の結線78に接続されている。
【0048】
ここで、光電変換素子68のアノード電極は、バイアス線76に接続され、カソード電極は、TFT70のソース電極Sに接続されている。一方、TFT70のゲート電極Gは、ゲート線74を介してゲート駆動回路80に接続され、ドレイン電極Dは、信号線72を介して信号読出回路(信号読出部)82に接続されている。
【0049】
バイアス電源66は、結線78及び各バイアス線76を介して各光電変換素子68に逆方向にバイアス電圧(逆バイアス電圧)を印加する。なお、図3では、pin型の光電変換素子68のp層側にアノード電極を介してバイアス線76が接続されているので、バイアス電源66からは、光電変換素子68のアノード電極に結線78及びバイアス線76を介して逆バイアス電圧として負の電圧(カソード電極よりも所定電圧以上低い電圧であればよい。)が印加されるようになっている。なお、光電変換素子68のpin型の積層順を逆に形成して(光電変換素子68の極性が逆となるように形成して)カソード電極にバイアス線76を接続する場合には、バイアス電源66からはカソード電極に逆バイアス電圧として正の電圧(アノード電極よりも所定電圧以上高い電圧であればよい。)が印加される。その場合には、図3における光電変換素子68のバイアス電源66に対する接続の向きが逆向きになる。
【0050】
ゲート駆動回路80からゲート線74を介してTFT70のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧(制御信号)が印加されると、TFT70のゲートが開き、光電変換素子68に蓄積された電荷、すなわち、電気信号(画像信号)が、TFT70のソース電極Sを介してドレイン電極Dから信号線72に読み出される。
【0051】
信号読出回路82では、各信号線72に対して、増幅器84、サンプルホールド回路86、マルチプレクサ88及びAD変換器90が順に接続されている。従って、各信号線72を介して読み出された電気信号は、チャージアンプからなる可変ゲイン型の増幅器84によって増幅され、サンプルホールド回路86によってサンプリングされた後、マルチプレクサ88を介してAD変換器90に順次供給され、デジタル信号(デジタル値)に変換される。AD変換器90は、デジタル値に変換された各光電変換素子68の電気信号をカセッテ制御部60に順次出力する。
【0052】
電源部64は、電源回路92と電源(蓄電部)94とを有する。電源94は、バッテリ又はキャパシタ等の蓄電手段である。また、電源回路92は、電源94の電圧を所望の電圧に変換して電子カセッテ20A内の各部に供給可能なDC/DCコンバータ等の電力変換回路である。
【0053】
カセッテ制御部60は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、図示しないCPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能を実現する。
【0054】
具体的に、カセッテ制御部60は、画像メモリ100、オーバサンプリング動作制御部(サンプリング回数決定部)108、記憶部110及びリーク量検出部(リーク信号検出部)114を有する。
【0055】
画像メモリ100は、放射線変換パネル52から取得した放射線画像を記憶する。記憶部110は、電子カセッテ20Aを特定するためのカセッテID情報を記憶する。
【0056】
リーク量検出部114は、被写体14に対する放射線16の照射(撮像)開始、すなわち、放射線変換パネル52への放射線16の入射開始から、信号読出回路82による電気信号の読み出し開始までの間に、放射線変換パネル52から漏れ出るリーク電流(以下、リーク信号ともいう。)を検出する。
【0057】
リーク電流(リーク信号)とは、全てのTFT70がオフ状態である放射線変換パネル52に対して放射線16が入射する場合に、各光電変換素子68に蓄積された電荷の一部が、TFT70及び信号線72を介して信号読出回路82に漏れ出る電流(信号)をいう。
【0058】
ここで、放射線変換パネル52に入射される放射線16の曝射線量が大きければ、各光電変換素子68に蓄積される電荷量が大きくなる。一方、放射線16の曝射線量が小さければ、各光電変換素子68に蓄積される電荷量が小さくなる。また、TFT70では、スイッチング抵抗(ソース電極Sとドレイン電極Dとの間の電気抵抗)の値が高い場合にオフ状態となる一方で、低い場合にオン状態となる。
【0059】
このように、TFT70のオンオフは、スイッチング抵抗の値によって決まるので、例えスイッチング抵抗の値が高くTFT70がオフ状態であっても、各光電変換素子68に蓄積される電荷量が大きければ、各光電変換素子68から信号読出回路82に漏れ出るリーク信号の信号レベル(リーク電流量)が大きくなる。また、各光電変換素子68に蓄積される電荷量が小さければ、各光電変換素子68から信号読出回路82に漏れ出るリーク信号の信号レベルは小さくなる。
【0060】
前述のように、各光電変換素子68に蓄積される電荷量は、放射線16の曝射線量に応じた電荷量となるため、リーク信号の信号レベルも前記曝射線量に応じたレベルとなる。但し、リーク信号は、TFT70がオフ状態において、信号読出回路82に漏れ出る信号であるため、TFT70がオン状態のときに信号読出回路82に読み出される電気信号の信号レベルと比較して、そのレベルは極めて小さい。
【0061】
そこで、リーク量検出部114は、放射線変換パネル52に対する放射線16の入射開始から信号読出回路82による電気信号の読み出し開始までの時間帯において、増幅器84のゲインを電気信号の読み出し時のゲインよりも大きく設定する。これにより、大きく増幅されたリーク信号がサンプルホールド回路86においてサンプルホールドされ、その後、AD変換器90においてAD変換される。この結果、リーク量検出部114は、信号レベルが大きく増幅されたリーク信号(のデジタルデータ)を容易に検出することが可能となる。
【0062】
なお、各信号線72には複数のTFT70を介して複数の光電変換素子68がそれぞれ接続されているため、1本の信号線72からは、該複数の光電変換素子68からのリーク信号が合成されて信号読出回路82に漏れ出す。そのため、リーク量検出部114は、各信号線72毎に信号読出回路82に漏れ出す(合成の)リーク信号の信号レベルを検出する。また、各信号線72毎にリーク信号の信号レベルを検出した後、リーク量検出部114は、各光電変換素子68からの電気信号の読み出しに備えるため、増幅器84のゲインを元のゲイン(電気信号の読み出し時のゲイン)に変更する。
【0063】
オーバサンプリング動作制御部108は、リーク量検出部114が検出したリーク信号の信号レベルから放射線16の曝射線量を推定し、推定した曝射線量に基づいて、AD変換器90でのAD変換のサンプリング回数を決定し、決定したサンプリング回数で電気信号に対するAD変換を行うようにAD変換器90を制御する。すなわち、オーバサンプリング動作制御部108は、推定した曝射線量に基づいて、オーバサンプリング方式によるAD変換を行うか、又は、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除するかの判定処理を行い、その判定結果に応じたサンプリング回数を決定する。
【0064】
[第1実施形態に係る放射線撮像装置の動作]
次に、第1実施形態に係る電子カセッテ20Aを含む放射線撮像システム10の動作について、図4のフローチャートと、図5のタイムチャートとに従って説明する。なお、この動作説明では、必要に応じて、図1〜図3も参照しながら説明する。
【0065】
先ず、ユーザは、放射線源34と放射線変換パネル52との間の距離をSID(線源受像画間距離)に調整すると共に、照射面46に被写体14を配置させて、該被写体14の撮像部位が撮像可能領域50に入り、且つ、該撮像部位の中心位置が撮像可能領域50の中心位置と略一致するように、該被写体14のポジショニングを行う。
【0066】
次に、ユーザは、コンソール26を操作して被写体14の撮像部位を選択する。システムコントローラ24は、ユーザにより選択された撮像部位に応じた撮像条件を設定する。なお、システムコントローラ24が撮像部位の画像を表示装置28に予め表示させることにより、ユーザが前記画像を見ながら被写体14の撮像部位を選択することも可能である。また、ユーザが撮像部位を選択した場合、システムコントローラ24は、選択された撮像部位と撮像条件とを表示装置28に表示させて、前記撮像条件の内容をユーザに視認させてもよい。
【0067】
次に、システムコントローラ24は、図示しない自身の通信部を介して電子カセッテ20Aの通信部62に起動信号を送信する。この場合、電子カセッテ20Aの電源部64は、カセッテ制御部60及び通信部62に対しては常時電力供給を行っており、通信部62が前記起動信号を受信すると、カセッテ制御部60は、バイアス電源66にも電力供給を行うように電源部64を制御する。これにより、バイアス電源66は、逆バイアス電圧を各光電変換素子68に印加し、該各光電変換素子68は、電荷蓄積が可能な状態に至る。なお、被写体14に対して複数枚の撮像を行う場合には、起動信号と共に、複数枚の撮像を指示するための指示信号を通信部62に送信してもよい。
【0068】
また、ユーザは、設定した撮像条件で放射線源34から放射線16が照射されるようにするために、放射線制御装置36に設けられた図示しない入力装置を操作して、システムコントローラ24側で設定した撮像条件と同一の撮像条件を放射線制御装置36にも設定させる。
【0069】
次に、図4のステップS1(図5の時刻t1から時刻t2の時間帯)において、カセッテ制御部60(のリーク量検出部114)は、ゲート駆動回路80を制御して、全てのTFT70をオフ状態とし、ステップS2において、各増幅器84のゲインA1を後述する電気信号の読み出し時(ステップS6)のゲインA2よりも高く設定する(A1>A2)。
【0070】
この状態で、ユーザにより放射線スイッチ38が押されると、放射線源34は、撮像条件に従った所定の線量からなる放射線16を所定の曝射時間だけ被写体14に照射する(図4のステップS3、及び、図5の時刻t2から時刻t3までの時間帯)。これにより、放射線16は、被写体14を透過して筐体44内の放射線変換パネル52に至り、シンチレータ54は、放射線16の強度に応じた強度の可視光を発光し、光電変換層56を構成する各光電変換素子68は、可視光を電気信号に変換し、電荷として蓄積する。蓄積された電荷の一部は、オフ状態のTFT70のゲートを介して信号線72に漏れ出す。
【0071】
放射線16の照射中(図5の時刻t2から時刻t3までの時間帯)、各光電変換素子68に蓄積される電荷量は、時間経過に伴って増加し、放射線16の照射完了から電気信号の読み出し開始までの時間帯(図5の時刻t3から時刻t6までの時間帯)では、放射線16の曝射線量に応じた所定量の電荷が蓄積される。
【0072】
従って、各光電変換素子68からTFT70を介して信号線72に漏れ出すリーク信号(リーク電流)は、図5に示すように、放射線16の照射開始から時間経過に伴って増加し、放射線16の照射完了から電気信号の読み出し開始までの時間帯では一定レベルを維持する。また、1本の信号線72には、複数のTFT70を介して複数の光電変換素子68がそれぞれ接続されているので、各信号線72毎に、各光電変換素子68からのリーク信号が合成されて信号読出回路82に漏れ出す。
【0073】
そこで、リーク量検出部114は、時刻t3から時刻t4までの時間帯において、信号読出回路82を制御して、大きなゲインA1に設定された各増幅器84により信号レベルが極端に小さいリーク信号を増幅させ、増幅後のリーク信号を各サンプルホールド回路86によりサンプリングさせ、マルチプレクサ88を介してAD変換器90に順次供給させる。AD変換器90は、オーバサンプリング方式によるサンプリング回数よりも少ないサンプリング回数で、順次供給されたリーク信号に対するAD変換を行うことによりデジタル信号に変換し、カセッテ制御部60のリーク量検出部114に出力する。
【0074】
ステップS4において、リーク量検出部114は、各信号線72毎のリーク信号のデジタルデータを用いて、図6に示すような、各信号線72の並び方向に沿ったリーク信号の信号レベルの変化を示すプロファイルを作成し、作成したプロファイルを記憶部110に記憶する。その後、リーク量検出部114は、各増幅器84のゲインA1を電気信号の読み出し時のゲインA2に戻す。
【0075】
なお、図6では、一例として、放射線変換パネル52の中央部を通る信号線72から漏れ出るリーク信号の信号レベル(リーク量)が大きく、放射線変換パネル52の両端側の信号線72から漏れ出るリーク信号の信号レベル(リーク量)が小さい場合を図示している。
【0076】
ステップS5(図5の時刻t4)において、オーバサンプリング動作制御部108は、各光電変換素子68から電荷(電気信号)を読み出して該電気信号に応じた放射線画像を取得する際に、オーバサンプリング方式によるAD変換をAD変換器90に実行させるべきか否かを、リーク量検出部114で検出されたリーク信号の信号レベルに基づき判定する。
【0077】
ここで、オーバサンプリング動作制御部108では、例えば、下記のような判定処理を行えばよい。
【0078】
(1)記憶部110には、リーク信号の信号レベルと、各光電変換素子68に蓄積される電荷量及び放射線16の曝射線量との関係を示すテーブルが格納されている。
【0079】
オーバサンプリング動作制御部108は、前記テーブルを参照して、記憶部110に記憶されたプロファイルにおける信号レベルの最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量を推定する。次に、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が比較的小さければ、電気信号の信号レベルが小さいため、オーバサンプリング方式によるサンプリング回数よりも少ないサンプリング回数でAD変換を行えば、ノイズが重畳した放射線画像が取得されると判断し、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0080】
また、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が比較的大きければ、電気信号の信号レベルが大きいため、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施しなくても、ノイズ成分の少ない放射線画像が取得されると判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除(オーバサンプリング方式によるAD変換の実施を中止)すると共に、オーバサンプリング方式でのサンプリング回数未満のサンプリング回数でAD変換を実施することを決定する。
【0081】
(2)オーバサンプリング動作制御部108は、プロファイルにおける信号レベルの最大値Lmaxと最小値Lminとの差ΔL(=Lmax−Lmin)を算出し、前記テーブルを参照して、算出した差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差を推定する。次に、オーバサンプリング動作制御部108は、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差が比較的小さければ、小線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0082】
また、オーバサンプリング動作制御部108は、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差が比較的大きければ、大線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すると共に、オーバサンプリング方式でのサンプリング回数未満のサンプリング回数でAD変換を実施することを決定する。
【0083】
なお、(2)の判定処理の場合、リーク信号が略0レベルであった信号線72のデータ、すなわち、放射線16が照射されていないと判断される光電変換素子68に接続された信号線72のデータを除外した上で、最大値Lmaxと最小値Lminとの差ΔLを算出する。そのため、差ΔLが小さい場合には、最大値Lmaxも最小値Lminに近い信号レベルであり、従って、オーバサンプリング動作制御部108は、放射線変換パネル52全体として小線量の放射線16が照射されたと判定することができる。
【0084】
また、前述した差ΔLが比較的小さい場合には、放射線画像の階調が低く、従って、前記放射線画像に対して階調補正等の画像処理を行って階調を伸張すれば、ノイズが増加する(ノイズが目立つ)可能性があるので、その観点からも、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することが望ましい。
【0085】
(3)オーバサンプリング動作制御部108は、上述した(1)及び(2)の判定処理を組み合わせた処理を実行する。
【0086】
すなわち、オーバサンプリング動作制御部108は、先ず、差ΔLを算出し、前記テーブルを参照して、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量と、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差とを推定する。次に、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が小さく、且つ、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差も比較的小さければ、小線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0087】
また、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が小さく、且つ、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差が比較的大きい場合には、小線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0088】
さらに、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が大きく、且つ、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差も比較的大きければ、大線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すると共に、オーバサンプリング方式でのサンプリング回数未満のサンプリング回数でAD変換を実施することを決定する。
【0089】
さらにまた、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が大きく、且つ、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差が比較的小さい場合には、大線量での放射線16の照射ではあるが、差ΔLが小さいために放射線画像の階調が低く、従って、前記放射線画像に対して階調補正等の画像処理を行って階調を伸張すれば、ノイズが増加する(ノイズが目立つ)可能性があると判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0090】
このように、(3)の判定処理では、(1)及び(2)の判定処理を組み合わせて判定を行っているので、放射線16の曝射線量に基づくサンプリング回数の決定をより正確に行うことが可能となる。
【0091】
このようにして、オーバサンプリング動作制御部108においてサンプリング回数が設定された後のステップS6において、カセッテ制御部60(のオーバサンプリング動作制御部108)は、ゲート駆動回路80を制御して、ゲート駆動回路80から1本のゲート線74に信号読み出し用の電圧を印加させる。これにより、該ゲート線74にゲート電極Gが接続されている全てのTFT70のゲートが開き、これらのTFT70が接続されている各光電変換素子68に蓄積された電荷(図3のpin型の光電変換素子68では電子)が、電気信号として各信号線72にそれぞれ読み出される。各増幅器84は、読み出された電気信号を増幅し、各サンプルホールド回路86は、増幅後の電気信号をサンプリングし、マルチプレクサ88を介してAD変換器90に順次供給する。
【0092】
この場合、AD変換器90では、オーバサンプリング動作制御部108によって決定されたサンプリング回数に従って、順次供給された電気信号に対するAD変換を行い、デジタル信号に変換する(ステップS7)。デジタル信号に変換された電気信号に応じた放射線画像は、カセッテ制御部60の画像メモリ100に一旦記憶される(ステップS8)。
【0093】
このようにして、1本のゲート線74に接続された各光電変換素子68に対する電気信号(に応じた放射線画像)の読み出しの完了後、カセッテ制御部60は、ゲート駆動回路80を制御して、信号読み出し用の電圧を印加するゲート線74を順次切り替え、切り替えたゲート線74に接続された各光電変換素子68に対する電気信号の読み出しを順次行う。従って、電子カセッテ20Aでは、全てのゲート線74に接続された各光電変換素子68からの放射線画像の読み出しが完了するまで(ステップS9:YES)、ステップS6〜S9の処理を繰り返し行う(図5の時刻t5後の時刻t6から時刻t7までの時間帯)。
【0094】
このようにして、全ての光電変換素子68からの放射線画像の読み出しが完了し、被写体14の放射線画像が画像メモリ100に記憶された後のステップS10において、カセッテ制御部60は、画像メモリ100に記憶された放射線画像と、記憶部110に記憶されたカセッテID情報とを共に通信部62を介して無線通信によりシステムコントローラ24に送信する。システムコントローラ24は、受信した放射線画像に対して所定の画像処理を行い、画像処理後の放射線画像を無線通信により表示装置28に送信する。表示装置28は、受信した放射線画像を表示する。
【0095】
そして、ステップS11において、被写体14に対する撮像が完了した場合(ステップS11:YES)、被写体14を解放して撮像を終了させる。一方、被写体14に対して複数枚の撮像を行う場合であって、全ての撮像が完了していない場合には(ステップS11:NO)、ステップS1の処理に戻る。
【0096】
[第1実施形態に係る放射線撮像装置の効果]
以上説明したように、第1実施形態に係る電子カセッテ20Aによれば、放射線変換パネル52に照射される放射線16の曝射線量に基づいてAD変換器90におけるAD変換のサンプリング回数が決定されるので、AD変換器90がサンプリング回数に従って電気信号に対するAD変換を行えば、曝射線量に応じたAD変換が可能になると共に、電力消費を抑えつつ、高画質の放射線画像を取得することも可能となる。
【0097】
また、曝射線量に応じた電気信号の信号レベルが大きいほど、リーク信号の信号レベルも大きくなるので、リーク信号の信号レベルより曝射線量を推定し、推定した曝射線量に基づいてサンプリング回数を決定すれば、該曝射線量に適したAD変換を実行することができる。
【0098】
そのため、オーバサンプリング動作制御部108は、リーク信号の信号レベルが比較的低い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を行うようにAD変換器90を制御し、一方で、リーク信号の信号レベルが比較的高い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を解除することも可能となる。
【0099】
すなわち、リーク信号の信号レベルが低ければ、電気信号の信号レベルが低く、曝射線量が小さいので、この場合には、オーバサンプリング方式により電気信号に対するAD変換を行うことでランダムノイズを低減させることができる。
【0100】
一方、リーク信号の信号レベルが高ければ、電気信号の信号レベルが高く、曝射線量が大きいので、電気信号に対するランダムノイズのレベルは相対的に低くなる。この場合には、オーバサンプリング方式によるAD変換を行わなくても、ノイズレベルの低い放射線画像を得ることができるので、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すればよい。これにより、不用意に電力が消費されることを回避することができる。このように、曝射線量に応じて電力消費量を調整することにより、サンプリング時間を短くして電源94の持ち時間を長くすることも可能となる。
【0101】
また、電気信号は、各信号線72を介して信号読出回路82に読み出されるので、各信号線72の並び方向に沿ったリーク信号のプロファイルに従ってサンプリング回数を決定し、決定したサンプリング回数に従って、電気信号に対するAD変換を行えば、ランダムノイズを低減させることができ、この結果、高画質の放射線画像を確実に取得することができる。
【0102】
さらに、各信号線72毎に電気信号の信号レベルが異なる場合もあり得るので、差ΔLに基づいてサンプリング回数を決定し、決定したサンプリング回数に従って、読み出された電気信号に対するAD変換を行えば、高画質の放射線画像を精度よく取得することができる。
【0103】
さらにまた、リーク信号は、電気信号と比較して信号レベルが相対的に低いため、該リーク信号の取得時に、増幅器84のゲインを大きくして、リーク信号を増幅すれば、サンプリング回数を精度よく決定することが可能となる。
【0104】
なお、本実施形態において、シンチレータ54がCsIであれば、放射線16を低線量にしても被写体14に対する撮像が可能となる。この場合、放射線16の曝射線量に応じて電気信号の信号レベルが低くなるため、オーバサンプリング方式によるAD変換を行うことにより、CsIのシンチレータ54を用いた場合でも、高画質の放射線画像を確実に取得することができる。
【0105】
また、本実施形態では、リーク信号の信号レベルに応じた放射線16の曝射線量に基づいて、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施するか否かを判定するため、静止画撮影、動画撮影、又は、エネルギサブトラクション撮影のように、撮影の種類毎に放射線16の線量が異なる場合でも、これらの撮影も考慮しつつ、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施するか否かを判定すればよい。すなわち、静止画撮影又はエネルギサブトラクション撮影の場合には、曝射線量が大きいので、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すればよい。一方、動画撮影では曝射線量が小さいので、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施すればよい。
【0106】
このように、第1実施形態では、撮像メニューや電子カセッテ20Aの状態に応じたサンプリングを行うことも可能である。
【0107】
[第2実施形態に係る放射線撮像装置の説明]
次に、第2実施形態に係る電子カセッテ20Bについて、図7を参照しながら説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて、その詳細な説明を省略し、以下同様とする。
【0108】
第2実施形態に係る電子カセッテ20Bは、図7に示すように、放射線変換パネル52の製造時等に、スイッチング機能が正常に動作しない(常時オン状態)のTFT70dが一部形成(図7では1列分形成)され、増幅器84、84dが可変ゲインアンプではなく、前述したゲインA2に固定されたアンプである点で、第1実施形態に係る電子カセッテ20A(図1〜図6参照)とは異なる。
【0109】
なお、第2実施形態では、常時オン状態のTFT70dに接続される光電変換素子及び信号線をそれぞれ光電変換素子68d及び信号線72dと称すると共に、該光電変換素子68dからTFT70d及び信号線72dを介して漏れ出るリーク信号に対する増幅器及びサンプルホールド回路をそれぞれ増幅器84d及びサンプルホールド回路86dと称する。
【0110】
この場合、各TFT70dに接続される各光電変換素子68d及び信号線72dは、電気信号の検出及び読み出しに寄与しない構成要素(欠陥部分)となるため、通常、これらの構成要素は、被写体14に対する放射線16の撮像に使用されることはない。
【0111】
しかしながら、第2実施形態においては、このような欠陥部分が放射線変換パネル52に発生している場合、リーク量検出部114は、各TFT70dに接続される信号線72dから信号読出回路82に漏れ出るリーク信号のみを検出する。
【0112】
すなわち、上記の欠陥部分をリーク信号の検出専用の構成要素とすることにより、電子カセッテ20Bの全ての構成要素を無駄なく使用することが可能になると共に、該リーク信号の検出専用の構成要素を別途形成することが不要となる。
【0113】
また、各TFT70dが常時オン状態であるため、放射線16が放射線変換パネル52に照射された場合、各光電変換素子68dにおいて可視光から変換された電荷は、そのまま、各TFT70d及び信号線72dを介してリーク信号として信号読出回路82に漏れ出す(図4のステップS12)。従って、1本の信号線72dを介して増幅器84dに出力されるリーク信号の信号レベルは、1本の信号線72を介して増幅器84に出力される電気信号の信号レベル程度となり、第1実施形態における1本の信号線72でのリーク信号と比較しても、極めて大きなレベルとなる。
【0114】
そのため、第2実施形態において、増幅器84、84dは可変ゲインアンプである必要はなく、従って、リーク量検出部114は、信号線72dを漏れ出るリーク信号を精度よく検出することができる。すなわち、第2実施形態では、図4のステップS2の処理を行わなくてもよい。
【0115】
なお、前述のように、前記欠陥部分は、被写体14に対する放射線16の撮像に使用されることはないため、各光電変換素子68dは、放射線画像中、欠落画素となる。この場合、例えば、システムコントローラ24は、周囲の画素である光電変換素子68に応じたデジタルデータを用いて公知の画像補正処理を行えばよい。
【0116】
また、第2実施形態の説明では、製造時に前記欠陥部分が形成されてしまった場合について説明したが、この説明に限定されるものではなく、製造時に、前記欠陥部分を積極的に形成して、リーク信号の検出専用の構成要素としてもよいことは勿論である。
【0117】
[第3実施形態に係る放射線撮像装置の説明]
次に、第3実施形態に係る電子カセッテ20Cについて、図8を参照しながら説明する。
【0118】
第3実施形態に係る電子カセッテ20Cは、図8に示すように、複数の光電変換素子68の面積分の大きさの他の光電変換素子68eが光電変換層56に形成され、この光電変換素子68eのアノード側が結線78eを介してバイアス電源66に接続されると共に、カソード側が常時オン状態のTFT70e、信号線(リーク信号出力線)72e、ゲインがA2に固定された増幅器84e、及び、サンプルホールド回路86eを介してマルチプレクサ88に接続されている点で、第1及び第2実施形態に係る電子カセッテ20A、20Bとは異なる。
【0119】
この場合、リーク量検出部114は、信号線72eから信号読出回路82に漏れ出るリーク信号のみ検出すればよい(図4のステップS12)。すなわち、第2実施形態とは異なり、第3実施形態に係る電子カセッテ20Cでは、リーク信号の検出専用の結線78e、光電変換素子68e、TFT70e、信号線72e、増幅器84e、及び、サンプルホールド回路86eを電子カセッテ20Cに積極的に形成する。従って、リーク信号の検出専用の構成要素を別途形成することになるが、この場合でも、電気信号の読み出しとは関係なく、リーク信号を検出することが可能となる。また、光電変換素子68eが複数の光電変換素子68の面積分の大きさであるため、放射線16が照射された場合、該光電変換素子68eから漏れ出るリーク信号のレベルを容易に大きくすることができ、リーク量検出部114におけるリーク信号の検出を容易に行うことができる。
【0120】
なお、第3実施形態において、光電変換素子68e、TFT70e、信号線72e、増幅器84e及びサンプルホールド回路86eの動作は、第2実施形態の光電変換素子68d、TFT70d、信号線72d、増幅器84d及びサンプルホールド回路86dと略同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0121】
[第4実施形態に係る放射線撮像装置の説明]
次に、第4実施形態に係る電子カセッテ20Dについて、図9及び図10を参照しながら説明する。
【0122】
第4実施形態に係る電子カセッテ20Dは、図9に示すように、結線78を流れる電流(バイアス電流)を検出する電流検出部120が介挿されている点で、第1〜第3実施形態とは異なる。
【0123】
この場合、電流検出部120は、例えば、結線78に直列に接続された所定の抵抗値を有する抵抗器の両端の電圧を測定することにより、結線78を流れるバイアス電流を電圧値に変換して検出する。
【0124】
そして、第4実施形態では、下記のように、リーク量検出部114は、電流検出部120で検出された電圧値の変化を、放射線16の照射時に放射線変換パネル52から結線78に漏れ出る信号(リーク信号)の変化とみなし、オーバサンプリング動作制御部108は、この電圧値の変化に基づいて、AD変換器90でのAD変換のサンプリング回数を決定する。
【0125】
具体的に、第4実施形態では、図4のステップS1後、破線で示すように、ステップS3の放射線16の照射が行われ、さらに、ステップS12に示すように、電流検出部120による電流(に応じた電圧値)の検出が行われる。
【0126】
この場合、光電変換素子68のアノード電極に逆バイアス電圧(負の電圧)が印加されているので、光電変換素子68内に電位勾配が生じており、この状態で、可視光が入射されると、光電変換素子68には電子正孔対が発生する。電子正孔対のうち、電子は、電位勾配に従って高電位であるカソード電極側に移動するが、TFT70のゲートが閉じているため、カソード電極近傍に蓄積され、従って、光電変換素子68内には、可視光の量に応じた量の電子が蓄積される。
【0127】
一方、正孔は、電位勾配に従って低電位であるアノード電極側に移動し、アノード電極を通ってバイアス線76に流れ出る。この光電変換素子68から流れ出てバイアス線76及び結線78を流れる正孔が電流として電流検出部120で検出される。
【0128】
すなわち、可視光の量に応じて光電変換素子68内に蓄積された電子の量と同量の正孔がバイアス線76内を流れ、各バイアス線76を流れる電流は、結線78に集められ、結線78中を電流検出部120に向かって流れる。
【0129】
ところで、放射線16の照射前は、理想的には、バイアス線76や結線78内には電流は流れないが、実際には光電変換素子68で暗電流が発生し、電流検出部120で微量の電流が検出される。
【0130】
前述したように、第4実施形態では、電流検出部120は、結線78を流れる電流を電圧値に変換して出力するため、放射線16の照射前においても、図10における時刻ta(図5の時刻t1から時刻t2の間の時点)に示されるように、電流検出部120からカセッテ制御部60のリーク量検出部114に微量ではあるが、0ではない電圧値Vaが入力される。
【0131】
そして、放射線源34からの放射線16の照射が開始されると、各光電変換素子68内で電子正孔対が発生し、バイアス線76や結線78を通じて正孔が電流検出部120に運ばれる。そのため、図10における時刻tbに示されるように、電流検出部120から出力される電圧値Vが増加する。これにより、例えば、リーク量検出部114では、電流検出部120から出力される電圧値Vが大きく増加し始めたことを検出することで、放射線16の照射開始を検出することもできる。なお、電圧値Vの増加による放射線16の照射開始については、電圧値Vが所定の閾値Vthを越えた時刻tcに放射線照射が開始された判定してもよいし、あるいは、電圧値Vの時間微分値が所定の閾値を越えた時刻tdに放射線照射が開始されたと判定してもよい。
【0132】
また、放射線源34からの放射線16の照射が終了すると、今度は、各光電変換素子68内での電子正孔対の発生が停止し、バイアス線76に正孔が供給されなくなる。そのため、図10における時刻teに示されるように、電流検出部120から出力される電圧値Vが減少し始める。そこで、第4実施形態では、リーク量検出部114は、電流検出部120から出力される電圧値Vが減少したことを検出することで、放射線16の照射終了を検出してもよい。
【0133】
電圧値Vの減少による放射線16の照射終了については、電圧値Vが前述した所定の閾値Vthを下回った時刻tfに放射線照射が終了されたと判定してもよいし、また、電圧値Vの時間微分値が所定の負の値の閾値をより負側に越えた時刻tgに放射線照射が終了されたと判定してもよい。なお、以下、放射線16の照射開始時刻が時刻tcであり、放射線16の照射終了時刻が時刻tfであるものとして説明する。
【0134】
一方、前述したように、光電変換素子68に可視光の強度に比例して電子正孔対が発生し、入射した可視光の強度に応じた正孔が光電変換素子68からバイアス線76に流れ出るため、結線78を流れた電流値の総量を測ることで、放射線16の照射開始から照射終了までに電子カセッテ20Dに照射された放射線16の線量を算出することができる。
【0135】
そこで、第4実施形態において、オーバサンプリング動作制御部108は、リーク量検出部114での検出結果に基づいて、より簡単に放射線16の線量を算出するために、ピークホールド機能を有するように構成されている。すなわち、オーバサンプリング動作制御部108では、放射線16の照射の開始及び終了の時間間隔(tf−tc)と、電流検出部120で検出された結線78を流れる電流のピーク値とに基づいて、照射された放射線16の線量を算出するように構成される。
【0136】
具体的には、オーバサンプリング動作制御部108は、時刻tcから時刻tfまでに検出される電圧値のピーク値Vpを検出し、下記(1)式に従って、ピーク値Vpに、放射線16の照射開始から終了までの時間間隔(tf−tc)から定数αを減じた値を乗じた値に基づいて、電子カセッテ20Dに照射された放射線16の線量の近似値Mを算出するようになっている。なお、上記(1)式においてaは定数である。
M=a×Vp×(tf−tc−α) …(1)
【0137】
この放射線16の曝射線量の近似値Mは、図10における時刻tc以後の立ち上がり部分から時刻tf以前の立ち下がり部分までの電圧値Vを矩形状に近似してその面積に比例する値として求めるものであり、時刻tc及び時刻tfを検出し、ピーク値Vpを検出するだけで簡単に算出できるという利点を有するものである。
【0138】
なお、積分回路等を用いて、図10に示した時刻tcから時刻tfまでの電圧値V(あるいは電圧値Vからノイズに相当する一定値を減じた値)の積分値を算出して、電子カセッテ20Dに照射された放射線16の線量を算出するように構成することも可能である。このように構成すれば、より正確な放射線16の線量を算出することが可能となる。
【0139】
また、ノイズ成分をより的確に除去するため、積分回路等に、所定の範囲の周波数帯のデータのみを通過させて他の周波数のデータは減衰させて通さないバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)を構成し、電流検出部120から出力される電流値に相当する電圧値にバンドパスフィルタ処理を施して積分して放射線16の線量を算出するように構成することも可能である。
【0140】
そして、オーバサンプリング動作制御部108は、続いて、算出した放射線16の線量(近似値Mである場合を含む。)に基づいて、AD変換器90でのAD変換のサンプリング回数を決定し、決定したサンプリング回数で電気信号に対するAD変換を行うようにAD変換器90を制御する(図4のステップS5)。
【0141】
このように、第4実施形態に係る電子カセッテ20Dでは、リーク量検出部114が放射線変換パネル52に対する放射線16の照射時に発生する電流の変化(電圧値Vの変化)を、放射線変換パネル52から漏れ出す信号(リーク信号)のレベルの変化として検出する。すなわち、放射線変換パネル52に対する放射線16の照射によって電流が変化することに着目し、該電流(に応じた電圧値V)の変化をリーク信号の信号レベルの変化とみなして検出することで、電圧値Vを効率よく検出することができる。この場合でも、第1実施形態に係る電子カセッテ20Aの各効果を容易に得ることができる。
【0142】
[第5実施形態に係る放射線撮像装置の説明]
次に、第5実施形態に係る電子カセッテ20Eについて、図11を参照しながら説明する。
【0143】
第5実施形態に係る電子カセッテ20Eは、図11に示すように、光電変換素子68の列毎に1本の結線(バイアス線)78a〜78dが接続され、これらの結線78a〜78dに電流検出部120a〜120dがそれぞれ介挿されている点で、第4実施形態とは異なる。
【0144】
この場合、電流検出部120a〜120dによって各結線78a〜78d毎に図10の電圧値Vが検出されて、カセッテ制御部60に出力されるので、電気信号に対するランダムノイズの低減を精度よく行うことが可能となる。
【0145】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0146】
10…放射線撮像システム
16…放射線
20A〜20E…電子カセッテ
52…放射線変換パネル
56…光電変換層
60…カセッテ制御部
66…バイアス電源
68、68d、68e…光電変換素子
70、70d、70e…TFT
72、72d、72e…信号線
76…バイアス線
78、78a〜78e…結線
82…信号読出回路
84、84d、84e…増幅器
90…AD変換器
108…オーバサンプリング動作制御部
114…リーク量検出部
120、120a〜120d…電流検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルと、前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換するAD変換器とを備えた放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野において、被写体を透過した放射線を検出することにより該被写体の放射線画像を撮像する放射線撮像装置(以下、電子カセッテともいう。)が用いられている。電子カセッテでは、可搬性を向上させるために、バッテリ等の蓄電手段を含む電源部を内蔵すると共に、前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換してデジタルデータを得ている。
【0003】
ところで、可搬型の電子カセッテにおいても、例えば、特許文献1の技術を適用し、放射線を出力する放射線源の管電圧及び管電流、被写体の厚み及び撮像領域等の撮像条件に基づき、放射線画像に対してオーバサンプリング方式によるAD変換を行うことにより、ランダムノイズを低減した高画質の放射線画像(デジタルデータ)を取得してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−275235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オーバサンプリング方式によるAD変換では、サンプリング時間が長くなって電力消費が早くなるので、可搬型の電子カセッテでは、放射線画像の高画質化と電力消費との間にはトレードオフの関係がある。また、実際の撮影では、撮像メニューに応じた線量の放射線が被写体を介して放射線変換パネルに照射されるので、該放射線変換パネルの曝射線量に応じたサンプリング(AD変換)を行うことも必要である。
【0006】
本発明は、上記の課題を解消するためになされたものであり、電力消費を抑えつつ、高画質の放射線画像を取得することが可能になると共に、放射線変換パネルの曝射線量に応じたAD変換が可能となる放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る放射線撮像装置は、放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルと、前記放射線変換パネルから出力される前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換するAD変換器と、前記放射線変換パネルに照射される前記放射線の曝射線量に基づいて前記AD変換器におけるAD変換のサンプリング回数を決定するサンプリング回数決定部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、前記放射線変換パネルに照射される前記放射線の曝射線量に基づいて前記AD変換器におけるAD変換のサンプリング回数が決定されるので、前記AD変換器が前記サンプリング回数に従って前記画像信号に対するAD変換を行えば、前記曝射線量に応じたAD変換が可能になると共に、電力消費を抑えつつ、高画質の放射線画像を取得することも可能となる。
【0009】
ここで、前記放射線撮像装置は、前記放射線変換パネルから前記画像信号を読み出す信号読出部と、前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射開始から前記信号読出部による前記画像信号の読み出しまでの間に、前記放射線変換パネルから漏れ出すリーク信号を検出するリーク信号検出部とをさらに備え、前記サンプリング回数決定部は、前記リーク信号検出部が検出した前記リーク信号の信号レベルに基づいて前記曝射線量を推定し、推定した前記曝射線量に基づいて前記サンプリング回数を決定する。
【0010】
前記リーク信号は、前記信号読出部が前記画像信号を読み出す前に、前記画像信号の信号レベルに応じて前記放射線変換パネルから漏れ出る信号であり、前記曝射線量に応じた前記画像信号の信号レベルが大きいほど、前記リーク信号の信号レベルも大きくなる。従って、前記リーク信号の信号レベルより前記曝射線量を推定し、推定した前記曝射線量に基づいて前記サンプリング回数を決定すれば、該曝射線量に適したAD変換を実行することができる。
【0011】
そのため、前記サンプリング回数決定部は、前記リーク信号の信号レベルが比較的低い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を行うように前記AD変換器を制御し、一方で、前記リーク信号の信号レベルが比較的高い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を解除することも可能となる。
【0012】
すなわち、前記リーク信号の信号レベルが低ければ、前記画像信号の信号レベルが低く、前記曝射線量が小さい。この場合には、前記オーバサンプリング方式により前記画像信号に対するAD変換を行うことでランダムノイズを低減させることができる。
【0013】
一方、前記リーク信号の信号レベルが高ければ、前記画像信号の信号レベルが高く、前記曝射線量が大きい。従って、前記画像信号に対するランダムノイズのレベルは相対的に低くなる。この場合には、前記オーバサンプリング方式によるAD変換を行わなくても、ノイズレベルの低い放射線画像を得ることができるので、前記オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すればよい。これにより、不用意に電力が消費されることを回避することができる。
【0014】
そして、前記放射線変換パネルは、前記放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を前記画像信号に変換する光電変換層とから構成される。この場合、前記光電変換層には、前記可視光を前記画像信号に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子から前記画像信号を前記信号読出部に出力するためのスイッチング素子とが行列状に配置されると共に、前記各スイッチング素子をオンするための制御信号が供給される複数の走査線と、該各走査線と交差し且つ前記各画像信号が出力される複数の信号線とが配列され、前記各走査線及び前記各信号線には複数の前記スイッチング素子が接続されている。
【0015】
次に、前記リーク信号を検出するための本発明の具体的構成(1)〜(4)について説明する。
【0016】
(1)前記リーク信号は、前記スイッチング素子がオフ状態である場合に、前記光電変換素子から前記スイッチング素子及び前記信号線を介して前記信号読出部に漏れ出る信号である。そこで、前記リーク信号検出部は、前記各信号線から前記信号読出部に漏れ出た前記リーク信号を検出し、前記各信号線の並び方向に沿った前記リーク信号の信号レベルの変化を示すプロファイルを作成し、前記サンプリング回数決定部は、前記プロファイルに基づいて前記サンプリング回数を決定すればよい。
【0017】
前記画像信号は、前記各信号線を介して前記信号読出部に読み出されるので、前記プロファイルに従って前記サンプリング回数を決定し、決定した前記サンプリング回数に従って、読み出された前記画像信号に対するAD変換を行えば、ランダムノイズを確実に低減させることができ、この結果、高画質の放射線画像を確実に取得することができる。
【0018】
また、前記サンプリング回数決定部は、前記プロファイルにおける前記信号レベルの最大値と最小値とのレベル差を算出し、算出した前記レベル差に基づいて前記サンプリング回数を決定してもよい。前記各信号線毎に前記画像信号の信号レベルが異なる場合もあり得るので、前記レベル差に基づいて前記サンプリング回数を決定し、決定した前記サンプリング回数に従って、読み出された前記画像信号に対するAD変換を行えば、高画質の放射線画像を精度よく取得することができる。
【0019】
また、前記信号読出部は、前記各信号線と前記AD変換器との間に介挿される増幅器をさらに有し、前記増幅器は、前記各信号線から前記信号読出部に前記リーク信号が漏れ出る場合に、前記画像信号を増幅する際のゲインよりも高いゲインで前記リーク信号を増幅可能な可変ゲイン増幅器であることが望ましい。
【0020】
前記リーク信号は、前記画像信号と比較して信号レベルが相対的に低いため、該リーク信号の取得時に、前記可変ゲイン増幅器のゲインを大きくして、前記リーク信号を増幅すれば、前記サンプリング回数を精度よく決定することが可能となる。
【0021】
(2)前記放射線変換パネルの製造時等に、スイッチング機能が正常に動作しない(常時オン状態)のスイッチング素子が一部形成される場合がある。この場合、当該スイッチング素子に接続される光電変換素子及び信号線は、前記画像信号の検出及び読み出しに寄与しない構成要素(欠陥部分)となるため、通常、これらの構成要素は、使用されることはない。
【0022】
そこで、本発明では、このような欠陥部分が発生した場合、前記リーク信号検出部は、当該スイッチング素子に接続される信号線から前記信号読出部に漏れ出るリーク信号のみを検出してもよい。
【0023】
すなわち、上記の欠陥部分を前記リーク信号の検出専用の構成要素とすることにより、前記放射線変換パネルを無駄なく使用することが可能になると共に、該リーク信号の検出専用の構成要素を別途形成することが不要となる。
【0024】
(3)前記可視光を電気信号に変換する他の光電変換素子と、前記他の光電変換素子から前記電気信号をリーク信号として前記信号読出部に出力するリーク信号出力線とを前記光電変換層に形成し、前記リーク信号検出部は、前記リーク信号出力線から前記信号読出部に出力された前記リーク信号のみ検出すればよい。
【0025】
すなわち、(2)の場合とは異なり、(3)の場合には、前記リーク信号を検出して読み出すための光電変換素子及びリーク信号出力線(専用線)を前記光電変換層に積極的に形成する。この場合、前記リーク信号の検出専用の構成要素を別途形成することになるが、前記画像信号の読み出しとは関係なく、前記リーク信号を検出することが可能となる。
【0026】
(4)前記放射線撮像装置は、前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、前記バイアス線を介して前記各光電変換素子に前記バイアス電圧を印加するバイアス電源と、前記バイアス線を流れるバイアス電流を検出する電流検出部とをさらに有してもよい。この場合、前記リーク信号検出部は、前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射時に発生する前記バイアス電流の変化を、前記リーク信号の信号レベルの変化として検出する。
【0027】
前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射によって前記バイアス電流が変化することに着目し、該バイアス電流の変化を前記リーク信号の信号レベルの変化とみなして検出することで、前記リーク信号を効率よく検出することができる。
【0028】
また、前記各走査線と交差するように複数の前記バイアス線を前記光電変換層に配列し、1つの前記バイアス線に対して1つの前記電流検出部を接続し、前記リーク信号検出部は、前記各電流検出部がそれぞれ検出した前記各バイアス線を流れる前記バイアス電流の変化を、前記各リーク信号の信号レベルの変化として検出してもよい。
【0029】
これにより、前記各バイアス線毎に前記リーク信号が検出されるので、この場合でも、前記画像信号に対するランダムノイズの低減を精度よく行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、放射線変換パネルに照射される放射線の曝射線量に基づいてAD変換器におけるAD変換のサンプリング回数が決定されるので、前記AD変換器が前記サンプリング回数に従って画像信号に対するAD変換を行えば、前記曝射線量に応じたAD変換が可能になると共に、電力消費を抑えつつ、高画質の放射線画像を取得することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係る電子カセッテが適用される放射線撮像システムの構成図である。
【図2】図1の電子カセッテの斜視図である。
【図3】図1の電子カセッテのブロック図である。
【図4】図1の電子カセッテを用いた被写体の撮像を説明するためのフローチャートである。
【図5】放射線の照射から放射線画像の読み取りまでの流れを説明するためのタイムチャートである。
【図6】信号線の並び方向に沿ったリーク信号のプロファイルを示す説明図である。
【図7】第2実施形態に係る電子カセッテのブロック図である。
【図8】第3実施形態に係る電子カセッテのブロック図である。
【図9】第4実施形態に係る電子カセッテのブロック図である。
【図10】図9の電流検出部が検出したバイアス電流に応じた電圧値の時間的変化を示すタイムチャートである。
【図11】第5実施形態に係る電子カセッテの一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る放射線撮像装置の好適な実施形態について、図1〜図11を参照しながら以下詳細に説明する。
【0033】
[第1実施形態に係る放射線撮像装置の構成の説明]
図1は、第1実施形態に係る放射線撮像装置としての電子カセッテ20Aが適用される放射線撮像システム10の構成図である。
【0034】
放射線撮像システム10は、ベッド等の撮影台12に横臥した被写体14である患者に対して、放射線16を照射する放射線装置18と、被写体14を透過した放射線16を検出して放射線画像に変換する電子カセッテ20Aと、画像処理装置として機能すると共に放射線撮像システム10全体を制御するシステムコントローラ24と、ユーザの入力操作を受け付けるコンソール26と、撮像した放射線画像等を表示する表示装置28とを備える。
【0035】
システムコントローラ24と、電子カセッテ20Aと、表示装置28との間には、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.60.a/b/g/n等の無線LAN(Local Area Network)、又は、ミリ波等を用いた無線通信により信号の送受信が行われる。なお、ケーブルを用いた有線通信により信号の送受信を行ってもよい。
【0036】
システムコントローラ24には、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する放射線科情報システム(RIS)30が接続され、RIS30には、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)32が接続されている。
【0037】
放射線装置18は、放射線16を照射する放射線源34と、放射線源34を制御する放射線制御装置36と、放射線スイッチ38とを備える。放射線源34は、電子カセッテ20Aに対して放射線16を照射する。放射線源34が照射する放射線16は、X線、α線、β線、γ線、電子線等であってもよい。放射線スイッチ38は、2段階のストロークを持つように構成され、放射線制御装置36は、放射線スイッチ38がユーザによって半押されると放射線16の照射準備を行い、全押されると放射線源34から放射線16を照射させる。放射線制御装置36は、図示しない入力装置を有し、ユーザは、前記入力装置を操作することで、放射線16の照射時間、管電圧、管電流等の値を設定することができる。放射線制御装置36は、設定された照射時間等に基づいて、放射線源34から放射線16を照射させる。
【0038】
図2は、図1に示す電子カセッテ20Aの斜視図である。
【0039】
電子カセッテ20Aは、撮影台12と被写体14との間に配置されるパネル部40と、該パネル部40上に配置された制御部42とを備える可搬型の電子カセッテである。なお、パネル部40の厚みは、制御部42の厚みよりも薄く設定されている。
【0040】
パネル部40は、放射線16を透過可能な材料からなる略矩形状の筐体44を有し、被写体14が横臥する筐体44の上面は、放射線16が照射される照射面46とされている。照射面46には、被写体14の撮像領域及び撮像位置を示すガイド線48が形成され、ガイド線48の外枠は、放射線16の最大照射範囲(照射野)を示す撮像可能領域50とされている。また、ガイド線48の中心位置(十字状に交差する2本のガイド線48の交点)は、該撮像可能領域50の中心位置である。
【0041】
筐体44内には、被写体14を透過して筐体44内に入射した放射線16を放射線画像に変換する放射線変換パネル52が収容されている。放射線変換パネル52は、放射線16を可視光等の他の波長の電磁波に変換するシンチレータ54と、該シンチレータ54により変換された電磁波を電気信号に変換する光電変換層56とから構成された、いわゆる間接変換型の放射線検出器である。
【0042】
なお、図2では、放射線16の照射方向に沿って光電変換層56とシンチレータ54との順に配置された表面読取方式としてのISS(Irradiation Side Sampling)方式の放射線検出器を図示しているが、放射線16の照射方向に沿ってシンチレータ54と光電変換層56との順に配置された、裏面読取方式であるPSS(Penetration Side Sampling)方式の放射線検出器であってもよい。また、シンチレータ54としては、例えば、ヨウ化セシウム(CsI)又はガドリニウム・オキサイド・サルファ(GOS)から構成されるシンチレータを用いればよい。さらに、第1実施形態では、上述した間接変換型の放射線検出器に代えて、シンチレータ54を用いずに放射線16を電気信号に直接変換する、いわゆる直接変換型の放射線検出器を使用することも可能である。以下の説明では、図2のISS方式の放射線変換パネル52を用いた場合について説明する。
【0043】
一方、制御部42は、放射線16を透過しない材料からなる略矩形状の筐体58を有し、筐体44における撮像可能領域50以外の箇所に配置されている。なお、筐体58は、放射線16が照射されることのない箇所に配置できればよいので、撮像可能領域50内であっても、放射線16が照射されず且つ被写体14にとり邪魔にならない箇所に配置してもよい。また、筐体44の一部を突出させて、その突出部分を制御部42として構成してもよい。
【0044】
図3は、電子カセッテ20Aのブロック構成図である。
【0045】
前述の制御部42は、電子カセッテ20A全体を制御するカセッテ制御部60と、システムコントローラ24及び放射線装置18との間で無線通信により信号の送受信を行う通信部62と、電子カセッテ20A全体の電源である電源部64と、光電変換層56を駆動させるためのバイアス電源66とを有する。
【0046】
光電変換層56は、放射線16を電荷に変換して蓄積可能なpin型のフォトダイオードやフォトトランジスタ等の光電変換素子68と、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(Thin Film Transitor;TFT)70とを有する。なお、図3では、光電変換素子68がpin型のフォトダイオードである場合を図示している。
【0047】
この場合、光電変換層56では、ガラス又は樹脂からなる基板の一面に複数の信号線72とゲート線(走査線)74とを互いに交差させるように配設し、各ゲート線74と各信号線72とにより区画された小領域に光電変換素子68とTFT70とをそれぞれ設けることで、前記基板に複数の光電変換素子68及び複数のTFT70を二次元マトリクス状に配列させている。また、1つの光電変換素子68には1本のバイアス線76が接続され、各バイアス線76は、バイアス電源66と接続された1本の結線78に接続されている。
【0048】
ここで、光電変換素子68のアノード電極は、バイアス線76に接続され、カソード電極は、TFT70のソース電極Sに接続されている。一方、TFT70のゲート電極Gは、ゲート線74を介してゲート駆動回路80に接続され、ドレイン電極Dは、信号線72を介して信号読出回路(信号読出部)82に接続されている。
【0049】
バイアス電源66は、結線78及び各バイアス線76を介して各光電変換素子68に逆方向にバイアス電圧(逆バイアス電圧)を印加する。なお、図3では、pin型の光電変換素子68のp層側にアノード電極を介してバイアス線76が接続されているので、バイアス電源66からは、光電変換素子68のアノード電極に結線78及びバイアス線76を介して逆バイアス電圧として負の電圧(カソード電極よりも所定電圧以上低い電圧であればよい。)が印加されるようになっている。なお、光電変換素子68のpin型の積層順を逆に形成して(光電変換素子68の極性が逆となるように形成して)カソード電極にバイアス線76を接続する場合には、バイアス電源66からはカソード電極に逆バイアス電圧として正の電圧(アノード電極よりも所定電圧以上高い電圧であればよい。)が印加される。その場合には、図3における光電変換素子68のバイアス電源66に対する接続の向きが逆向きになる。
【0050】
ゲート駆動回路80からゲート線74を介してTFT70のゲート電極Gに信号読み出し用の電圧(制御信号)が印加されると、TFT70のゲートが開き、光電変換素子68に蓄積された電荷、すなわち、電気信号(画像信号)が、TFT70のソース電極Sを介してドレイン電極Dから信号線72に読み出される。
【0051】
信号読出回路82では、各信号線72に対して、増幅器84、サンプルホールド回路86、マルチプレクサ88及びAD変換器90が順に接続されている。従って、各信号線72を介して読み出された電気信号は、チャージアンプからなる可変ゲイン型の増幅器84によって増幅され、サンプルホールド回路86によってサンプリングされた後、マルチプレクサ88を介してAD変換器90に順次供給され、デジタル信号(デジタル値)に変換される。AD変換器90は、デジタル値に変換された各光電変換素子68の電気信号をカセッテ制御部60に順次出力する。
【0052】
電源部64は、電源回路92と電源(蓄電部)94とを有する。電源94は、バッテリ又はキャパシタ等の蓄電手段である。また、電源回路92は、電源94の電圧を所望の電圧に変換して電子カセッテ20A内の各部に供給可能なDC/DCコンバータ等の電力変換回路である。
【0053】
カセッテ制御部60は、マイクロコンピュータを含む計算機であり、図示しないCPUがROMに記録されているプログラムを読み出し実行することで各種機能を実現する。
【0054】
具体的に、カセッテ制御部60は、画像メモリ100、オーバサンプリング動作制御部(サンプリング回数決定部)108、記憶部110及びリーク量検出部(リーク信号検出部)114を有する。
【0055】
画像メモリ100は、放射線変換パネル52から取得した放射線画像を記憶する。記憶部110は、電子カセッテ20Aを特定するためのカセッテID情報を記憶する。
【0056】
リーク量検出部114は、被写体14に対する放射線16の照射(撮像)開始、すなわち、放射線変換パネル52への放射線16の入射開始から、信号読出回路82による電気信号の読み出し開始までの間に、放射線変換パネル52から漏れ出るリーク電流(以下、リーク信号ともいう。)を検出する。
【0057】
リーク電流(リーク信号)とは、全てのTFT70がオフ状態である放射線変換パネル52に対して放射線16が入射する場合に、各光電変換素子68に蓄積された電荷の一部が、TFT70及び信号線72を介して信号読出回路82に漏れ出る電流(信号)をいう。
【0058】
ここで、放射線変換パネル52に入射される放射線16の曝射線量が大きければ、各光電変換素子68に蓄積される電荷量が大きくなる。一方、放射線16の曝射線量が小さければ、各光電変換素子68に蓄積される電荷量が小さくなる。また、TFT70では、スイッチング抵抗(ソース電極Sとドレイン電極Dとの間の電気抵抗)の値が高い場合にオフ状態となる一方で、低い場合にオン状態となる。
【0059】
このように、TFT70のオンオフは、スイッチング抵抗の値によって決まるので、例えスイッチング抵抗の値が高くTFT70がオフ状態であっても、各光電変換素子68に蓄積される電荷量が大きければ、各光電変換素子68から信号読出回路82に漏れ出るリーク信号の信号レベル(リーク電流量)が大きくなる。また、各光電変換素子68に蓄積される電荷量が小さければ、各光電変換素子68から信号読出回路82に漏れ出るリーク信号の信号レベルは小さくなる。
【0060】
前述のように、各光電変換素子68に蓄積される電荷量は、放射線16の曝射線量に応じた電荷量となるため、リーク信号の信号レベルも前記曝射線量に応じたレベルとなる。但し、リーク信号は、TFT70がオフ状態において、信号読出回路82に漏れ出る信号であるため、TFT70がオン状態のときに信号読出回路82に読み出される電気信号の信号レベルと比較して、そのレベルは極めて小さい。
【0061】
そこで、リーク量検出部114は、放射線変換パネル52に対する放射線16の入射開始から信号読出回路82による電気信号の読み出し開始までの時間帯において、増幅器84のゲインを電気信号の読み出し時のゲインよりも大きく設定する。これにより、大きく増幅されたリーク信号がサンプルホールド回路86においてサンプルホールドされ、その後、AD変換器90においてAD変換される。この結果、リーク量検出部114は、信号レベルが大きく増幅されたリーク信号(のデジタルデータ)を容易に検出することが可能となる。
【0062】
なお、各信号線72には複数のTFT70を介して複数の光電変換素子68がそれぞれ接続されているため、1本の信号線72からは、該複数の光電変換素子68からのリーク信号が合成されて信号読出回路82に漏れ出す。そのため、リーク量検出部114は、各信号線72毎に信号読出回路82に漏れ出す(合成の)リーク信号の信号レベルを検出する。また、各信号線72毎にリーク信号の信号レベルを検出した後、リーク量検出部114は、各光電変換素子68からの電気信号の読み出しに備えるため、増幅器84のゲインを元のゲイン(電気信号の読み出し時のゲイン)に変更する。
【0063】
オーバサンプリング動作制御部108は、リーク量検出部114が検出したリーク信号の信号レベルから放射線16の曝射線量を推定し、推定した曝射線量に基づいて、AD変換器90でのAD変換のサンプリング回数を決定し、決定したサンプリング回数で電気信号に対するAD変換を行うようにAD変換器90を制御する。すなわち、オーバサンプリング動作制御部108は、推定した曝射線量に基づいて、オーバサンプリング方式によるAD変換を行うか、又は、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除するかの判定処理を行い、その判定結果に応じたサンプリング回数を決定する。
【0064】
[第1実施形態に係る放射線撮像装置の動作]
次に、第1実施形態に係る電子カセッテ20Aを含む放射線撮像システム10の動作について、図4のフローチャートと、図5のタイムチャートとに従って説明する。なお、この動作説明では、必要に応じて、図1〜図3も参照しながら説明する。
【0065】
先ず、ユーザは、放射線源34と放射線変換パネル52との間の距離をSID(線源受像画間距離)に調整すると共に、照射面46に被写体14を配置させて、該被写体14の撮像部位が撮像可能領域50に入り、且つ、該撮像部位の中心位置が撮像可能領域50の中心位置と略一致するように、該被写体14のポジショニングを行う。
【0066】
次に、ユーザは、コンソール26を操作して被写体14の撮像部位を選択する。システムコントローラ24は、ユーザにより選択された撮像部位に応じた撮像条件を設定する。なお、システムコントローラ24が撮像部位の画像を表示装置28に予め表示させることにより、ユーザが前記画像を見ながら被写体14の撮像部位を選択することも可能である。また、ユーザが撮像部位を選択した場合、システムコントローラ24は、選択された撮像部位と撮像条件とを表示装置28に表示させて、前記撮像条件の内容をユーザに視認させてもよい。
【0067】
次に、システムコントローラ24は、図示しない自身の通信部を介して電子カセッテ20Aの通信部62に起動信号を送信する。この場合、電子カセッテ20Aの電源部64は、カセッテ制御部60及び通信部62に対しては常時電力供給を行っており、通信部62が前記起動信号を受信すると、カセッテ制御部60は、バイアス電源66にも電力供給を行うように電源部64を制御する。これにより、バイアス電源66は、逆バイアス電圧を各光電変換素子68に印加し、該各光電変換素子68は、電荷蓄積が可能な状態に至る。なお、被写体14に対して複数枚の撮像を行う場合には、起動信号と共に、複数枚の撮像を指示するための指示信号を通信部62に送信してもよい。
【0068】
また、ユーザは、設定した撮像条件で放射線源34から放射線16が照射されるようにするために、放射線制御装置36に設けられた図示しない入力装置を操作して、システムコントローラ24側で設定した撮像条件と同一の撮像条件を放射線制御装置36にも設定させる。
【0069】
次に、図4のステップS1(図5の時刻t1から時刻t2の時間帯)において、カセッテ制御部60(のリーク量検出部114)は、ゲート駆動回路80を制御して、全てのTFT70をオフ状態とし、ステップS2において、各増幅器84のゲインA1を後述する電気信号の読み出し時(ステップS6)のゲインA2よりも高く設定する(A1>A2)。
【0070】
この状態で、ユーザにより放射線スイッチ38が押されると、放射線源34は、撮像条件に従った所定の線量からなる放射線16を所定の曝射時間だけ被写体14に照射する(図4のステップS3、及び、図5の時刻t2から時刻t3までの時間帯)。これにより、放射線16は、被写体14を透過して筐体44内の放射線変換パネル52に至り、シンチレータ54は、放射線16の強度に応じた強度の可視光を発光し、光電変換層56を構成する各光電変換素子68は、可視光を電気信号に変換し、電荷として蓄積する。蓄積された電荷の一部は、オフ状態のTFT70のゲートを介して信号線72に漏れ出す。
【0071】
放射線16の照射中(図5の時刻t2から時刻t3までの時間帯)、各光電変換素子68に蓄積される電荷量は、時間経過に伴って増加し、放射線16の照射完了から電気信号の読み出し開始までの時間帯(図5の時刻t3から時刻t6までの時間帯)では、放射線16の曝射線量に応じた所定量の電荷が蓄積される。
【0072】
従って、各光電変換素子68からTFT70を介して信号線72に漏れ出すリーク信号(リーク電流)は、図5に示すように、放射線16の照射開始から時間経過に伴って増加し、放射線16の照射完了から電気信号の読み出し開始までの時間帯では一定レベルを維持する。また、1本の信号線72には、複数のTFT70を介して複数の光電変換素子68がそれぞれ接続されているので、各信号線72毎に、各光電変換素子68からのリーク信号が合成されて信号読出回路82に漏れ出す。
【0073】
そこで、リーク量検出部114は、時刻t3から時刻t4までの時間帯において、信号読出回路82を制御して、大きなゲインA1に設定された各増幅器84により信号レベルが極端に小さいリーク信号を増幅させ、増幅後のリーク信号を各サンプルホールド回路86によりサンプリングさせ、マルチプレクサ88を介してAD変換器90に順次供給させる。AD変換器90は、オーバサンプリング方式によるサンプリング回数よりも少ないサンプリング回数で、順次供給されたリーク信号に対するAD変換を行うことによりデジタル信号に変換し、カセッテ制御部60のリーク量検出部114に出力する。
【0074】
ステップS4において、リーク量検出部114は、各信号線72毎のリーク信号のデジタルデータを用いて、図6に示すような、各信号線72の並び方向に沿ったリーク信号の信号レベルの変化を示すプロファイルを作成し、作成したプロファイルを記憶部110に記憶する。その後、リーク量検出部114は、各増幅器84のゲインA1を電気信号の読み出し時のゲインA2に戻す。
【0075】
なお、図6では、一例として、放射線変換パネル52の中央部を通る信号線72から漏れ出るリーク信号の信号レベル(リーク量)が大きく、放射線変換パネル52の両端側の信号線72から漏れ出るリーク信号の信号レベル(リーク量)が小さい場合を図示している。
【0076】
ステップS5(図5の時刻t4)において、オーバサンプリング動作制御部108は、各光電変換素子68から電荷(電気信号)を読み出して該電気信号に応じた放射線画像を取得する際に、オーバサンプリング方式によるAD変換をAD変換器90に実行させるべきか否かを、リーク量検出部114で検出されたリーク信号の信号レベルに基づき判定する。
【0077】
ここで、オーバサンプリング動作制御部108では、例えば、下記のような判定処理を行えばよい。
【0078】
(1)記憶部110には、リーク信号の信号レベルと、各光電変換素子68に蓄積される電荷量及び放射線16の曝射線量との関係を示すテーブルが格納されている。
【0079】
オーバサンプリング動作制御部108は、前記テーブルを参照して、記憶部110に記憶されたプロファイルにおける信号レベルの最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量を推定する。次に、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が比較的小さければ、電気信号の信号レベルが小さいため、オーバサンプリング方式によるサンプリング回数よりも少ないサンプリング回数でAD変換を行えば、ノイズが重畳した放射線画像が取得されると判断し、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0080】
また、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が比較的大きければ、電気信号の信号レベルが大きいため、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施しなくても、ノイズ成分の少ない放射線画像が取得されると判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除(オーバサンプリング方式によるAD変換の実施を中止)すると共に、オーバサンプリング方式でのサンプリング回数未満のサンプリング回数でAD変換を実施することを決定する。
【0081】
(2)オーバサンプリング動作制御部108は、プロファイルにおける信号レベルの最大値Lmaxと最小値Lminとの差ΔL(=Lmax−Lmin)を算出し、前記テーブルを参照して、算出した差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差を推定する。次に、オーバサンプリング動作制御部108は、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差が比較的小さければ、小線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0082】
また、オーバサンプリング動作制御部108は、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差が比較的大きければ、大線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すると共に、オーバサンプリング方式でのサンプリング回数未満のサンプリング回数でAD変換を実施することを決定する。
【0083】
なお、(2)の判定処理の場合、リーク信号が略0レベルであった信号線72のデータ、すなわち、放射線16が照射されていないと判断される光電変換素子68に接続された信号線72のデータを除外した上で、最大値Lmaxと最小値Lminとの差ΔLを算出する。そのため、差ΔLが小さい場合には、最大値Lmaxも最小値Lminに近い信号レベルであり、従って、オーバサンプリング動作制御部108は、放射線変換パネル52全体として小線量の放射線16が照射されたと判定することができる。
【0084】
また、前述した差ΔLが比較的小さい場合には、放射線画像の階調が低く、従って、前記放射線画像に対して階調補正等の画像処理を行って階調を伸張すれば、ノイズが増加する(ノイズが目立つ)可能性があるので、その観点からも、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することが望ましい。
【0085】
(3)オーバサンプリング動作制御部108は、上述した(1)及び(2)の判定処理を組み合わせた処理を実行する。
【0086】
すなわち、オーバサンプリング動作制御部108は、先ず、差ΔLを算出し、前記テーブルを参照して、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量と、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差とを推定する。次に、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が小さく、且つ、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差も比較的小さければ、小線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0087】
また、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が小さく、且つ、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差が比較的大きい場合には、小線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0088】
さらに、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が大きく、且つ、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差も比較的大きければ、大線量での放射線16の照射が行われたものと判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すると共に、オーバサンプリング方式でのサンプリング回数未満のサンプリング回数でAD変換を実施することを決定する。
【0089】
さらにまた、オーバサンプリング動作制御部108は、最大値Lmaxに応じた電荷量及び曝射線量が大きく、且つ、差ΔLに応じた電荷量の差及び曝射線量の差が比較的小さい場合には、大線量での放射線16の照射ではあるが、差ΔLが小さいために放射線画像の階調が低く、従って、前記放射線画像に対して階調補正等の画像処理を行って階調を伸張すれば、ノイズが増加する(ノイズが目立つ)可能性があると判断し、次に、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施することを決定すると共に、そのサンプリング回数を決定する。
【0090】
このように、(3)の判定処理では、(1)及び(2)の判定処理を組み合わせて判定を行っているので、放射線16の曝射線量に基づくサンプリング回数の決定をより正確に行うことが可能となる。
【0091】
このようにして、オーバサンプリング動作制御部108においてサンプリング回数が設定された後のステップS6において、カセッテ制御部60(のオーバサンプリング動作制御部108)は、ゲート駆動回路80を制御して、ゲート駆動回路80から1本のゲート線74に信号読み出し用の電圧を印加させる。これにより、該ゲート線74にゲート電極Gが接続されている全てのTFT70のゲートが開き、これらのTFT70が接続されている各光電変換素子68に蓄積された電荷(図3のpin型の光電変換素子68では電子)が、電気信号として各信号線72にそれぞれ読み出される。各増幅器84は、読み出された電気信号を増幅し、各サンプルホールド回路86は、増幅後の電気信号をサンプリングし、マルチプレクサ88を介してAD変換器90に順次供給する。
【0092】
この場合、AD変換器90では、オーバサンプリング動作制御部108によって決定されたサンプリング回数に従って、順次供給された電気信号に対するAD変換を行い、デジタル信号に変換する(ステップS7)。デジタル信号に変換された電気信号に応じた放射線画像は、カセッテ制御部60の画像メモリ100に一旦記憶される(ステップS8)。
【0093】
このようにして、1本のゲート線74に接続された各光電変換素子68に対する電気信号(に応じた放射線画像)の読み出しの完了後、カセッテ制御部60は、ゲート駆動回路80を制御して、信号読み出し用の電圧を印加するゲート線74を順次切り替え、切り替えたゲート線74に接続された各光電変換素子68に対する電気信号の読み出しを順次行う。従って、電子カセッテ20Aでは、全てのゲート線74に接続された各光電変換素子68からの放射線画像の読み出しが完了するまで(ステップS9:YES)、ステップS6〜S9の処理を繰り返し行う(図5の時刻t5後の時刻t6から時刻t7までの時間帯)。
【0094】
このようにして、全ての光電変換素子68からの放射線画像の読み出しが完了し、被写体14の放射線画像が画像メモリ100に記憶された後のステップS10において、カセッテ制御部60は、画像メモリ100に記憶された放射線画像と、記憶部110に記憶されたカセッテID情報とを共に通信部62を介して無線通信によりシステムコントローラ24に送信する。システムコントローラ24は、受信した放射線画像に対して所定の画像処理を行い、画像処理後の放射線画像を無線通信により表示装置28に送信する。表示装置28は、受信した放射線画像を表示する。
【0095】
そして、ステップS11において、被写体14に対する撮像が完了した場合(ステップS11:YES)、被写体14を解放して撮像を終了させる。一方、被写体14に対して複数枚の撮像を行う場合であって、全ての撮像が完了していない場合には(ステップS11:NO)、ステップS1の処理に戻る。
【0096】
[第1実施形態に係る放射線撮像装置の効果]
以上説明したように、第1実施形態に係る電子カセッテ20Aによれば、放射線変換パネル52に照射される放射線16の曝射線量に基づいてAD変換器90におけるAD変換のサンプリング回数が決定されるので、AD変換器90がサンプリング回数に従って電気信号に対するAD変換を行えば、曝射線量に応じたAD変換が可能になると共に、電力消費を抑えつつ、高画質の放射線画像を取得することも可能となる。
【0097】
また、曝射線量に応じた電気信号の信号レベルが大きいほど、リーク信号の信号レベルも大きくなるので、リーク信号の信号レベルより曝射線量を推定し、推定した曝射線量に基づいてサンプリング回数を決定すれば、該曝射線量に適したAD変換を実行することができる。
【0098】
そのため、オーバサンプリング動作制御部108は、リーク信号の信号レベルが比較的低い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を行うようにAD変換器90を制御し、一方で、リーク信号の信号レベルが比較的高い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を解除することも可能となる。
【0099】
すなわち、リーク信号の信号レベルが低ければ、電気信号の信号レベルが低く、曝射線量が小さいので、この場合には、オーバサンプリング方式により電気信号に対するAD変換を行うことでランダムノイズを低減させることができる。
【0100】
一方、リーク信号の信号レベルが高ければ、電気信号の信号レベルが高く、曝射線量が大きいので、電気信号に対するランダムノイズのレベルは相対的に低くなる。この場合には、オーバサンプリング方式によるAD変換を行わなくても、ノイズレベルの低い放射線画像を得ることができるので、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すればよい。これにより、不用意に電力が消費されることを回避することができる。このように、曝射線量に応じて電力消費量を調整することにより、サンプリング時間を短くして電源94の持ち時間を長くすることも可能となる。
【0101】
また、電気信号は、各信号線72を介して信号読出回路82に読み出されるので、各信号線72の並び方向に沿ったリーク信号のプロファイルに従ってサンプリング回数を決定し、決定したサンプリング回数に従って、電気信号に対するAD変換を行えば、ランダムノイズを低減させることができ、この結果、高画質の放射線画像を確実に取得することができる。
【0102】
さらに、各信号線72毎に電気信号の信号レベルが異なる場合もあり得るので、差ΔLに基づいてサンプリング回数を決定し、決定したサンプリング回数に従って、読み出された電気信号に対するAD変換を行えば、高画質の放射線画像を精度よく取得することができる。
【0103】
さらにまた、リーク信号は、電気信号と比較して信号レベルが相対的に低いため、該リーク信号の取得時に、増幅器84のゲインを大きくして、リーク信号を増幅すれば、サンプリング回数を精度よく決定することが可能となる。
【0104】
なお、本実施形態において、シンチレータ54がCsIであれば、放射線16を低線量にしても被写体14に対する撮像が可能となる。この場合、放射線16の曝射線量に応じて電気信号の信号レベルが低くなるため、オーバサンプリング方式によるAD変換を行うことにより、CsIのシンチレータ54を用いた場合でも、高画質の放射線画像を確実に取得することができる。
【0105】
また、本実施形態では、リーク信号の信号レベルに応じた放射線16の曝射線量に基づいて、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施するか否かを判定するため、静止画撮影、動画撮影、又は、エネルギサブトラクション撮影のように、撮影の種類毎に放射線16の線量が異なる場合でも、これらの撮影も考慮しつつ、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施するか否かを判定すればよい。すなわち、静止画撮影又はエネルギサブトラクション撮影の場合には、曝射線量が大きいので、オーバサンプリング方式によるAD変換を解除すればよい。一方、動画撮影では曝射線量が小さいので、オーバサンプリング方式によるAD変換を実施すればよい。
【0106】
このように、第1実施形態では、撮像メニューや電子カセッテ20Aの状態に応じたサンプリングを行うことも可能である。
【0107】
[第2実施形態に係る放射線撮像装置の説明]
次に、第2実施形態に係る電子カセッテ20Bについて、図7を参照しながら説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて、その詳細な説明を省略し、以下同様とする。
【0108】
第2実施形態に係る電子カセッテ20Bは、図7に示すように、放射線変換パネル52の製造時等に、スイッチング機能が正常に動作しない(常時オン状態)のTFT70dが一部形成(図7では1列分形成)され、増幅器84、84dが可変ゲインアンプではなく、前述したゲインA2に固定されたアンプである点で、第1実施形態に係る電子カセッテ20A(図1〜図6参照)とは異なる。
【0109】
なお、第2実施形態では、常時オン状態のTFT70dに接続される光電変換素子及び信号線をそれぞれ光電変換素子68d及び信号線72dと称すると共に、該光電変換素子68dからTFT70d及び信号線72dを介して漏れ出るリーク信号に対する増幅器及びサンプルホールド回路をそれぞれ増幅器84d及びサンプルホールド回路86dと称する。
【0110】
この場合、各TFT70dに接続される各光電変換素子68d及び信号線72dは、電気信号の検出及び読み出しに寄与しない構成要素(欠陥部分)となるため、通常、これらの構成要素は、被写体14に対する放射線16の撮像に使用されることはない。
【0111】
しかしながら、第2実施形態においては、このような欠陥部分が放射線変換パネル52に発生している場合、リーク量検出部114は、各TFT70dに接続される信号線72dから信号読出回路82に漏れ出るリーク信号のみを検出する。
【0112】
すなわち、上記の欠陥部分をリーク信号の検出専用の構成要素とすることにより、電子カセッテ20Bの全ての構成要素を無駄なく使用することが可能になると共に、該リーク信号の検出専用の構成要素を別途形成することが不要となる。
【0113】
また、各TFT70dが常時オン状態であるため、放射線16が放射線変換パネル52に照射された場合、各光電変換素子68dにおいて可視光から変換された電荷は、そのまま、各TFT70d及び信号線72dを介してリーク信号として信号読出回路82に漏れ出す(図4のステップS12)。従って、1本の信号線72dを介して増幅器84dに出力されるリーク信号の信号レベルは、1本の信号線72を介して増幅器84に出力される電気信号の信号レベル程度となり、第1実施形態における1本の信号線72でのリーク信号と比較しても、極めて大きなレベルとなる。
【0114】
そのため、第2実施形態において、増幅器84、84dは可変ゲインアンプである必要はなく、従って、リーク量検出部114は、信号線72dを漏れ出るリーク信号を精度よく検出することができる。すなわち、第2実施形態では、図4のステップS2の処理を行わなくてもよい。
【0115】
なお、前述のように、前記欠陥部分は、被写体14に対する放射線16の撮像に使用されることはないため、各光電変換素子68dは、放射線画像中、欠落画素となる。この場合、例えば、システムコントローラ24は、周囲の画素である光電変換素子68に応じたデジタルデータを用いて公知の画像補正処理を行えばよい。
【0116】
また、第2実施形態の説明では、製造時に前記欠陥部分が形成されてしまった場合について説明したが、この説明に限定されるものではなく、製造時に、前記欠陥部分を積極的に形成して、リーク信号の検出専用の構成要素としてもよいことは勿論である。
【0117】
[第3実施形態に係る放射線撮像装置の説明]
次に、第3実施形態に係る電子カセッテ20Cについて、図8を参照しながら説明する。
【0118】
第3実施形態に係る電子カセッテ20Cは、図8に示すように、複数の光電変換素子68の面積分の大きさの他の光電変換素子68eが光電変換層56に形成され、この光電変換素子68eのアノード側が結線78eを介してバイアス電源66に接続されると共に、カソード側が常時オン状態のTFT70e、信号線(リーク信号出力線)72e、ゲインがA2に固定された増幅器84e、及び、サンプルホールド回路86eを介してマルチプレクサ88に接続されている点で、第1及び第2実施形態に係る電子カセッテ20A、20Bとは異なる。
【0119】
この場合、リーク量検出部114は、信号線72eから信号読出回路82に漏れ出るリーク信号のみ検出すればよい(図4のステップS12)。すなわち、第2実施形態とは異なり、第3実施形態に係る電子カセッテ20Cでは、リーク信号の検出専用の結線78e、光電変換素子68e、TFT70e、信号線72e、増幅器84e、及び、サンプルホールド回路86eを電子カセッテ20Cに積極的に形成する。従って、リーク信号の検出専用の構成要素を別途形成することになるが、この場合でも、電気信号の読み出しとは関係なく、リーク信号を検出することが可能となる。また、光電変換素子68eが複数の光電変換素子68の面積分の大きさであるため、放射線16が照射された場合、該光電変換素子68eから漏れ出るリーク信号のレベルを容易に大きくすることができ、リーク量検出部114におけるリーク信号の検出を容易に行うことができる。
【0120】
なお、第3実施形態において、光電変換素子68e、TFT70e、信号線72e、増幅器84e及びサンプルホールド回路86eの動作は、第2実施形態の光電変換素子68d、TFT70d、信号線72d、増幅器84d及びサンプルホールド回路86dと略同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0121】
[第4実施形態に係る放射線撮像装置の説明]
次に、第4実施形態に係る電子カセッテ20Dについて、図9及び図10を参照しながら説明する。
【0122】
第4実施形態に係る電子カセッテ20Dは、図9に示すように、結線78を流れる電流(バイアス電流)を検出する電流検出部120が介挿されている点で、第1〜第3実施形態とは異なる。
【0123】
この場合、電流検出部120は、例えば、結線78に直列に接続された所定の抵抗値を有する抵抗器の両端の電圧を測定することにより、結線78を流れるバイアス電流を電圧値に変換して検出する。
【0124】
そして、第4実施形態では、下記のように、リーク量検出部114は、電流検出部120で検出された電圧値の変化を、放射線16の照射時に放射線変換パネル52から結線78に漏れ出る信号(リーク信号)の変化とみなし、オーバサンプリング動作制御部108は、この電圧値の変化に基づいて、AD変換器90でのAD変換のサンプリング回数を決定する。
【0125】
具体的に、第4実施形態では、図4のステップS1後、破線で示すように、ステップS3の放射線16の照射が行われ、さらに、ステップS12に示すように、電流検出部120による電流(に応じた電圧値)の検出が行われる。
【0126】
この場合、光電変換素子68のアノード電極に逆バイアス電圧(負の電圧)が印加されているので、光電変換素子68内に電位勾配が生じており、この状態で、可視光が入射されると、光電変換素子68には電子正孔対が発生する。電子正孔対のうち、電子は、電位勾配に従って高電位であるカソード電極側に移動するが、TFT70のゲートが閉じているため、カソード電極近傍に蓄積され、従って、光電変換素子68内には、可視光の量に応じた量の電子が蓄積される。
【0127】
一方、正孔は、電位勾配に従って低電位であるアノード電極側に移動し、アノード電極を通ってバイアス線76に流れ出る。この光電変換素子68から流れ出てバイアス線76及び結線78を流れる正孔が電流として電流検出部120で検出される。
【0128】
すなわち、可視光の量に応じて光電変換素子68内に蓄積された電子の量と同量の正孔がバイアス線76内を流れ、各バイアス線76を流れる電流は、結線78に集められ、結線78中を電流検出部120に向かって流れる。
【0129】
ところで、放射線16の照射前は、理想的には、バイアス線76や結線78内には電流は流れないが、実際には光電変換素子68で暗電流が発生し、電流検出部120で微量の電流が検出される。
【0130】
前述したように、第4実施形態では、電流検出部120は、結線78を流れる電流を電圧値に変換して出力するため、放射線16の照射前においても、図10における時刻ta(図5の時刻t1から時刻t2の間の時点)に示されるように、電流検出部120からカセッテ制御部60のリーク量検出部114に微量ではあるが、0ではない電圧値Vaが入力される。
【0131】
そして、放射線源34からの放射線16の照射が開始されると、各光電変換素子68内で電子正孔対が発生し、バイアス線76や結線78を通じて正孔が電流検出部120に運ばれる。そのため、図10における時刻tbに示されるように、電流検出部120から出力される電圧値Vが増加する。これにより、例えば、リーク量検出部114では、電流検出部120から出力される電圧値Vが大きく増加し始めたことを検出することで、放射線16の照射開始を検出することもできる。なお、電圧値Vの増加による放射線16の照射開始については、電圧値Vが所定の閾値Vthを越えた時刻tcに放射線照射が開始された判定してもよいし、あるいは、電圧値Vの時間微分値が所定の閾値を越えた時刻tdに放射線照射が開始されたと判定してもよい。
【0132】
また、放射線源34からの放射線16の照射が終了すると、今度は、各光電変換素子68内での電子正孔対の発生が停止し、バイアス線76に正孔が供給されなくなる。そのため、図10における時刻teに示されるように、電流検出部120から出力される電圧値Vが減少し始める。そこで、第4実施形態では、リーク量検出部114は、電流検出部120から出力される電圧値Vが減少したことを検出することで、放射線16の照射終了を検出してもよい。
【0133】
電圧値Vの減少による放射線16の照射終了については、電圧値Vが前述した所定の閾値Vthを下回った時刻tfに放射線照射が終了されたと判定してもよいし、また、電圧値Vの時間微分値が所定の負の値の閾値をより負側に越えた時刻tgに放射線照射が終了されたと判定してもよい。なお、以下、放射線16の照射開始時刻が時刻tcであり、放射線16の照射終了時刻が時刻tfであるものとして説明する。
【0134】
一方、前述したように、光電変換素子68に可視光の強度に比例して電子正孔対が発生し、入射した可視光の強度に応じた正孔が光電変換素子68からバイアス線76に流れ出るため、結線78を流れた電流値の総量を測ることで、放射線16の照射開始から照射終了までに電子カセッテ20Dに照射された放射線16の線量を算出することができる。
【0135】
そこで、第4実施形態において、オーバサンプリング動作制御部108は、リーク量検出部114での検出結果に基づいて、より簡単に放射線16の線量を算出するために、ピークホールド機能を有するように構成されている。すなわち、オーバサンプリング動作制御部108では、放射線16の照射の開始及び終了の時間間隔(tf−tc)と、電流検出部120で検出された結線78を流れる電流のピーク値とに基づいて、照射された放射線16の線量を算出するように構成される。
【0136】
具体的には、オーバサンプリング動作制御部108は、時刻tcから時刻tfまでに検出される電圧値のピーク値Vpを検出し、下記(1)式に従って、ピーク値Vpに、放射線16の照射開始から終了までの時間間隔(tf−tc)から定数αを減じた値を乗じた値に基づいて、電子カセッテ20Dに照射された放射線16の線量の近似値Mを算出するようになっている。なお、上記(1)式においてaは定数である。
M=a×Vp×(tf−tc−α) …(1)
【0137】
この放射線16の曝射線量の近似値Mは、図10における時刻tc以後の立ち上がり部分から時刻tf以前の立ち下がり部分までの電圧値Vを矩形状に近似してその面積に比例する値として求めるものであり、時刻tc及び時刻tfを検出し、ピーク値Vpを検出するだけで簡単に算出できるという利点を有するものである。
【0138】
なお、積分回路等を用いて、図10に示した時刻tcから時刻tfまでの電圧値V(あるいは電圧値Vからノイズに相当する一定値を減じた値)の積分値を算出して、電子カセッテ20Dに照射された放射線16の線量を算出するように構成することも可能である。このように構成すれば、より正確な放射線16の線量を算出することが可能となる。
【0139】
また、ノイズ成分をより的確に除去するため、積分回路等に、所定の範囲の周波数帯のデータのみを通過させて他の周波数のデータは減衰させて通さないバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)を構成し、電流検出部120から出力される電流値に相当する電圧値にバンドパスフィルタ処理を施して積分して放射線16の線量を算出するように構成することも可能である。
【0140】
そして、オーバサンプリング動作制御部108は、続いて、算出した放射線16の線量(近似値Mである場合を含む。)に基づいて、AD変換器90でのAD変換のサンプリング回数を決定し、決定したサンプリング回数で電気信号に対するAD変換を行うようにAD変換器90を制御する(図4のステップS5)。
【0141】
このように、第4実施形態に係る電子カセッテ20Dでは、リーク量検出部114が放射線変換パネル52に対する放射線16の照射時に発生する電流の変化(電圧値Vの変化)を、放射線変換パネル52から漏れ出す信号(リーク信号)のレベルの変化として検出する。すなわち、放射線変換パネル52に対する放射線16の照射によって電流が変化することに着目し、該電流(に応じた電圧値V)の変化をリーク信号の信号レベルの変化とみなして検出することで、電圧値Vを効率よく検出することができる。この場合でも、第1実施形態に係る電子カセッテ20Aの各効果を容易に得ることができる。
【0142】
[第5実施形態に係る放射線撮像装置の説明]
次に、第5実施形態に係る電子カセッテ20Eについて、図11を参照しながら説明する。
【0143】
第5実施形態に係る電子カセッテ20Eは、図11に示すように、光電変換素子68の列毎に1本の結線(バイアス線)78a〜78dが接続され、これらの結線78a〜78dに電流検出部120a〜120dがそれぞれ介挿されている点で、第4実施形態とは異なる。
【0144】
この場合、電流検出部120a〜120dによって各結線78a〜78d毎に図10の電圧値Vが検出されて、カセッテ制御部60に出力されるので、電気信号に対するランダムノイズの低減を精度よく行うことが可能となる。
【0145】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0146】
10…放射線撮像システム
16…放射線
20A〜20E…電子カセッテ
52…放射線変換パネル
56…光電変換層
60…カセッテ制御部
66…バイアス電源
68、68d、68e…光電変換素子
70、70d、70e…TFT
72、72d、72e…信号線
76…バイアス線
78、78a〜78e…結線
82…信号読出回路
84、84d、84e…増幅器
90…AD変換器
108…オーバサンプリング動作制御部
114…リーク量検出部
120、120a〜120d…電流検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルと、
前記放射線変換パネルから出力される前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換するAD変換器と、
前記放射線変換パネルに照射される前記放射線の曝射線量に基づいて、前記AD変換器におけるAD変換のサンプリング回数を決定するサンプリング回数決定部と、
を備えることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記放射線変換パネルから前記画像信号を読み出す信号読出部と、
前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射開始から、前記信号読出部による前記画像信号の読み出しまでの間に、前記放射線変換パネルから漏れ出すリーク信号を検出するリーク信号検出部と、
をさらに備え、
前記サンプリング回数決定部は、前記リーク信号検出部が検出した前記リーク信号の信号レベルに基づいて前記曝射線量を推定し、推定した前記曝射線量に基づいて前記サンプリング回数を決定することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記サンプリング回数決定部は、前記リーク信号の信号レベルが比較的低い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を行うように前記AD変換器を制御し、一方で、前記リーク信号の信号レベルが比較的高い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を解除することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の装置において、
前記放射線変換パネルは、前記放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を前記画像信号に変換する光電変換層とから構成され、
前記光電変換層には、前記可視光を前記画像信号に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子から前記画像信号を前記信号読出部に出力するためのスイッチング素子とが行列状に配置されると共に、前記各スイッチング素子をオンするための制御信号が供給される複数の走査線と、該各走査線と交差し、且つ、前記各画像信号が出力される複数の信号線とが配列され、
前記各走査線及び前記各信号線には、複数の前記スイッチング素子が接続されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記リーク信号は、前記スイッチング素子がオフ状態である場合に、前記光電変換素子から前記スイッチング素子及び前記信号線を介して前記信号読出部に漏れ出る信号であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記リーク信号検出部は、前記各信号線から前記信号読出部に漏れ出た前記リーク信号を検出し、前記各信号線の並び方向に沿った前記リーク信号の信号レベルの変化を示すプロファイルを作成し、
前記サンプリング回数決定部は、前記プロファイルに基づいて前記サンプリング回数を決定することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記サンプリング回数決定部は、前記プロファイルにおける前記信号レベルの最大値と最小値とのレベル差を算出し、算出した前記レベル差に基づいて前記サンプリング回数を決定することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置において、
前記信号読出部は、前記各信号線と前記AD変換器との間に介挿される増幅器をさらに有し、
前記増幅器は、前記各信号線から前記信号読出部に前記リーク信号が漏れ出る場合に、前記画像信号を増幅する際のゲインよりも高いゲインで前記リーク信号を増幅可能な可変ゲイン増幅器であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
請求項4記載の装置において、
前記リーク信号検出部は、常時オン状態のスイッチング素子が存在する場合に、該スイッチング素子に接続される信号線から前記信号読出部に漏れ出るリーク信号のみを検出することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項10】
請求項4記載の装置において、
前記光電変換層には、前記可視光を電気信号に変換する他の光電変換素子と、前記他の光電変換素子から前記電気信号を前記リーク信号として前記信号読出部に出力するリーク信号出力線とが形成され、
前記リーク信号検出部は、前記リーク信号出力線から前記信号読出部に出力された前記リーク信号のみを検出することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項11】
請求項4記載の装置において、
前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、
前記バイアス線を介して前記各光電変換素子に前記バイアス電圧を印加するバイアス電源と、
前記バイアス線を流れるバイアス電流を検出する電流検出部と、
をさらに有し、
前記リーク信号検出部は、前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射時に発生する前記バイアス電流の変化を、前記リーク信号の信号レベルの変化として検出することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、
前記光電変換層には、前記各走査線と交差するように複数の前記バイアス線が配列され、
1つの前記バイアス線に対して1つの前記電流検出部が接続され、
前記リーク信号検出部は、前記各電流検出部がそれぞれ検出した前記各バイアス線を流れる前記バイアス電流の変化を、前記各リーク信号の信号レベルの変化として検出することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項1】
放射線を放射線画像に変換する放射線変換パネルと、
前記放射線変換パネルから出力される前記放射線画像に応じた画像信号をAD変換するAD変換器と、
前記放射線変換パネルに照射される前記放射線の曝射線量に基づいて、前記AD変換器におけるAD変換のサンプリング回数を決定するサンプリング回数決定部と、
を備えることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記放射線変換パネルから前記画像信号を読み出す信号読出部と、
前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射開始から、前記信号読出部による前記画像信号の読み出しまでの間に、前記放射線変換パネルから漏れ出すリーク信号を検出するリーク信号検出部と、
をさらに備え、
前記サンプリング回数決定部は、前記リーク信号検出部が検出した前記リーク信号の信号レベルに基づいて前記曝射線量を推定し、推定した前記曝射線量に基づいて前記サンプリング回数を決定することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記サンプリング回数決定部は、前記リーク信号の信号レベルが比較的低い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を行うように前記AD変換器を制御し、一方で、前記リーク信号の信号レベルが比較的高い場合にはオーバサンプリング方式によるAD変換を解除することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の装置において、
前記放射線変換パネルは、前記放射線を可視光に変換するシンチレータと、前記可視光を前記画像信号に変換する光電変換層とから構成され、
前記光電変換層には、前記可視光を前記画像信号に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子から前記画像信号を前記信号読出部に出力するためのスイッチング素子とが行列状に配置されると共に、前記各スイッチング素子をオンするための制御信号が供給される複数の走査線と、該各走査線と交差し、且つ、前記各画像信号が出力される複数の信号線とが配列され、
前記各走査線及び前記各信号線には、複数の前記スイッチング素子が接続されていることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記リーク信号は、前記スイッチング素子がオフ状態である場合に、前記光電変換素子から前記スイッチング素子及び前記信号線を介して前記信号読出部に漏れ出る信号であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記リーク信号検出部は、前記各信号線から前記信号読出部に漏れ出た前記リーク信号を検出し、前記各信号線の並び方向に沿った前記リーク信号の信号レベルの変化を示すプロファイルを作成し、
前記サンプリング回数決定部は、前記プロファイルに基づいて前記サンプリング回数を決定することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記サンプリング回数決定部は、前記プロファイルにおける前記信号レベルの最大値と最小値とのレベル差を算出し、算出した前記レベル差に基づいて前記サンプリング回数を決定することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置において、
前記信号読出部は、前記各信号線と前記AD変換器との間に介挿される増幅器をさらに有し、
前記増幅器は、前記各信号線から前記信号読出部に前記リーク信号が漏れ出る場合に、前記画像信号を増幅する際のゲインよりも高いゲインで前記リーク信号を増幅可能な可変ゲイン増幅器であることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項9】
請求項4記載の装置において、
前記リーク信号検出部は、常時オン状態のスイッチング素子が存在する場合に、該スイッチング素子に接続される信号線から前記信号読出部に漏れ出るリーク信号のみを検出することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項10】
請求項4記載の装置において、
前記光電変換層には、前記可視光を電気信号に変換する他の光電変換素子と、前記他の光電変換素子から前記電気信号を前記リーク信号として前記信号読出部に出力するリーク信号出力線とが形成され、
前記リーク信号検出部は、前記リーク信号出力線から前記信号読出部に出力された前記リーク信号のみを検出することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項11】
請求項4記載の装置において、
前記各光電変換素子にバイアス電圧を供給するバイアス線と、
前記バイアス線を介して前記各光電変換素子に前記バイアス電圧を印加するバイアス電源と、
前記バイアス線を流れるバイアス電流を検出する電流検出部と、
をさらに有し、
前記リーク信号検出部は、前記放射線変換パネルに対する前記放射線の照射時に発生する前記バイアス電流の変化を、前記リーク信号の信号レベルの変化として検出することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、
前記光電変換層には、前記各走査線と交差するように複数の前記バイアス線が配列され、
1つの前記バイアス線に対して1つの前記電流検出部が接続され、
前記リーク信号検出部は、前記各電流検出部がそれぞれ検出した前記各バイアス線を流れる前記バイアス電流の変化を、前記各リーク信号の信号レベルの変化として検出することを特徴とする放射線撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−175396(P2012−175396A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35218(P2011−35218)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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