説明

放射線撮影装置およびその制御方法、並びに放射線撮影システム

【課題】手間を掛けずに常に最適な線量で撮影を行う。
【解決手段】X線撮影システムでは、一回のX線撮影をプレ撮影と本撮影のセットで行う。プレ撮影では被検体を透過したX線の線量を検出画素65で検出して、線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、積算値が照射停止閾値に達したらX線の照射を停止させる自動露出制御を電子カセッテのAEC部67で行う。プレ撮影時の照射時間あるいは管電流時間積、プレ撮影時に検出画素65で検出された線量、および本撮影で必要な線量に基づき、本撮影条件決定部で本撮影の照射時間あるいは管電流時間積を決定する。本撮影では決定された照射時間あるいは管電流時間積でX線を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断に供する放射線画像を撮影する本撮影と、本撮影に先立って本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とを行う放射線撮影装置およびその制御方法、並びに放射線撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、放射線、例えばX線を利用したX線撮影システムが知られている。X線撮影システムは、X線を発生するX線発生装置と、X線を受けてX線画像を撮影するX線撮影装置とからなる。X線発生装置は、X線を被検体に向けて照射するX線源、X線源の駆動を制御する線源制御装置、およびX線の照射開始指示を入力するための照射スイッチを有している。X線撮影装置は、被検体を透過したX線を受けてX線画像を検出するX線画像検出装置、およびX線画像検出装置の駆動を制御するとともにX線画像に各種画像処理を施すコンソールを有している。
【0003】
最近のX線撮影システムの分野では、X線フイルムやイメージングプレート(IP)に代わり、フラットパネルディテクタ(FPD;flat panel detector)を検出パネルとして用いたX線画像検出装置が普及している。FPDには、X線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する画素がマトリックス状に配列されている。FPDは、画素毎に信号電荷を蓄積し、蓄積した信号電荷を信号処理回路で電圧信号に変換することで、被検体の画像情報を表すX線画像を検出し、これをデジタルな画像データとして出力する。
【0004】
FPDを直方体形状の筐体に内蔵した電子カセッテ(可搬型のX線画像検出装置)も実用化されている。電子カセッテは、撮影台に据え付けられて取り外し不可なタイプと違って、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台や専用の撮影台に着脱可能に取り付けて使用される他、据え付け型では撮影困難な部位を撮影するためにベッド上に置いたり被検体自身に持たせたりして使用される。また、自宅療養中の高齢者や、事故、災害等による急病人を撮影するため、撮影台の設備がない病院外に持ち出して使用されることもある。
【0005】
FPDではノイズの影響を最小にするために電荷を掃き出すリセット動作を定期的に行っている。従って一般的にFPDを有するX線画像検出装置の場合、X線の照射タイミングと、リセット動作を終了して蓄積動作を開始するタイミングとの同期をとる必要があり、例えば線源制御装置とX線画像検出装置の間に通信I/Fを設け、線源制御装置がX線の照射を開始するタイミングを照射開始信号として電子カセッテに送り、電子カセッテでは照射開始信号をトリガに蓄積動作に移行する処理が行われる。
【0006】
また、被検体を透過したX線の線量を検出する線量検出センサを設けて、線量検出センサで検出した線量の積算値が予め設定した閾値に達したら、X線源によるX線の照射を停止させる自動露出制御(AEC;Automatic Exposure Control)を行っている。
【0007】
線源制御装置側のX線の照射停止の処理が遅れるとX線画像の画質が劣化するうえに患者が無用な被曝に晒されるため、X線の照射停止の処理は迅速に行わなければならない。例えば胸部撮影においてはX線を照射開始してから停止するまでの時間が50ms程度と極めて短時間であり、電子カセッテの線量検出センサでX線の照射を検出して十分な値となったことを確認してから線源側で曝射が実際に止まるまでの処理を極めて迅速に行わなくてはならない。しかし、実際には線源制御装置とX線画像検出装置の間で遣り取りする信号の遅延等によりX線の照射停止の処理が遅れるおそれがあり、この問題に対処する必要があった。
【0008】
そこで、AECを用いることなく所望のX線画像を得られるタイミングで確実にX線の照射を停止させる方法として、X線撮影をプレ撮影と本撮影の二回に分けて行い、プレ撮影の結果を踏まえて本撮影のX線の照射時間を決定する技術が提案されている。
【0009】
特許文献1には、測定した乳房厚みや乳房圧迫圧力に基づきプレ撮影に必要な線量を算出し、さらに線量検出センサで検出したプレ撮影での線量に基づき本撮影に必要な線量を算出して、算出した各々の線量に応じた管電流でプレ撮影と本撮影を行う放射線画像撮影装置が開示されている。特許文献2には、プレ撮影で得られたX線画像の指標値(乳房領域の画素値の合計)と予め設定された基準値との差分、および差分と管電流時間積の関係を示すテーブルに基づいて、本撮影の撮影条件(管電流時間積)を決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−022536号公報
【特許文献2】特開2007−236804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1は乳房厚みや乳房圧迫圧力を測定するので手間が掛かる。特許文献2も同様に、指標値を算出するためにプレ撮影で画像を出力してその解析を行わなければならないので手間が掛かる。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、手間を掛けずに常に最適な線量で撮影を行うことができる放射線撮影装置およびその制御方法、並びに放射線撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の放射線撮影装置は、放射線源から照射されて被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、被検体を透過した放射線の線量を検出する線量検出センサと、前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御を行う自動露出制御手段とを備え、前記放射線画像検出装置で診断に供する放射線画像を撮影する本撮影と、本撮影に先立って本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とを行う放射線撮影システムにおいて、前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量、および前記放射線画像の画質を確保するために前記本撮影で必要な線量に基づいて、前記本撮影の撮影条件である放射線の照射時間あるいは管電流時間積を決定する本撮影条件決定手段とを備え、前記プレ撮影では前記線量検出センサおよび前記自動露出制御手段による前記自動露出制御を行い、前記本撮影では前記本撮影条件決定手段で決定した照射時間あるいは管電流時間積で放射線を照射することを特徴とする。
【0014】
前記プレ撮影時の放射線の照射時間を計時する計時手段を備えることが好ましい。前記本撮影条件決定手段は、前記計時手段の計時結果、前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量、および前記放射線画像の画質を確保するために前記本撮影で必要な線量に基づいて、前記本撮影の撮影条件である放射線の照射時間あるいは管電流時間積を決定する。
【0015】
前記放射線画像検出装置は、前記プレ撮影で前記画素に発生した電荷を前記画素から掃き出さずに蓄積したまま前記本撮影に移行し、前記本撮影終了後、前記プレ撮影と前記本撮影とで前記画素に蓄積された電荷に応じた電気信号を出力する。
【0016】
前記本撮影条件決定手段は、前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量の積算値を前記プレ撮影時の照射時間あるいは管電流時間積で除算して単位時間あるいは単位管電流時間積当たりの線量を求め、前記本撮影で必要な線量から前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量の積算値を減算した結果を前記単位時間あるいは単位管電流時間積当たりの線量で除算することで前記本撮影の照射時間あるいは管電流時間積を算出する。
【0017】
前記線量検出センサは、前記検出パネルの撮像面の略全面に満遍なく散らばるよう複数配置されており、前記照射停止閾値と積算値を比較する前記線量検出センサを撮影部位に応じて選択する採光野選択手段を備えることが好ましい。
【0018】
もしくは、前記線量検出センサは、前記検出パネルの撮像面の局所に集中して複数配置されており、前記照射停止閾値と積算値を比較する前記線量検出センサを撮影部位に応じて選択する採光野選択手段を備えることが好ましい。
【0019】
前記画素には、放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力する通常画素と、信号線にスイッチング素子を介さず直接接続された検出画素とがあり、前記検出画素を前記線量検出センサとして用いる。
【0020】
もしくは、前記画素には、放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力する通常画素と、前記通常画素とは別に駆動するスイッチング素子が設けられた検出画素とがあり、前記検出画素を前記線量検出センサとして用いる。
【0021】
また、前記放射線画像検出装置は、前記検出パネルが可搬型の筐体に収納された電子カセッテである。
【0022】
また、本発明は、診断に供する放射線画像を撮影する本撮影と、本撮影に先立って本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とを行う放射線撮影装置の制御方法において、前記プレ撮影では、被検体を透過した放射線の線量を線量検出センサで検出して、前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら放射線の照射を停止させる自動露出制御を行い、前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量、および前記放射線画像の画質を確保するために前記本撮影で必要な線量に基づいて、前記本撮影の撮影条件である放射線の照射時間あるいは管電流時間積を決定し、前記本撮影では決定された照射時間あるいは管電流時間積で前記放射線を照射することを特徴とする。
【0023】
本発明の放射線撮影システムは、放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、被検体を透過した放射線の線量を検出する線量検出センサと、前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御を行う自動露出制御手段とを備え、前記放射線画像検出装置で診断に供する放射線画像を撮影する本撮影と、本撮影に先立って本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とを行う放射線撮影システムにおいて、前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量、および前記放射線画像の画質を確保するために前記本撮影で必要な線量に基づいて、前記本撮影の撮影条件である放射線の照射時間あるいは管電流時間積を決定する本撮影条件決定手段とを備え、前記プレ撮影では前記線量検出センサおよび前記自動露出制御手段による前記自動露出制御を行い、前記本撮影では前記本撮影条件決定手段で決定した照射時間あるいは管電流時間積で放射線を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、プレ撮影では自動露出制御を行って、本撮影ではプレ撮影の結果を踏まえて決定した照射時間あるいは管電流時間積で撮影を行うので、手間を掛けずに常に最適な線量で撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】X線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】線源制御装置の内部構成と線源制御装置と他の装置との接続関係を示す図である。
【図3】X線の到達線量の瞬時値と時間の関係を表すグラフである。
【図4】電子カセッテの内部構成を示すブロック図である。
【図5】電子カセッテのFPDの検出画素の配置を説明するための図である。
【図6】電子カセッテのAEC部および通信部の内部構成を示すブロック図である。
【図7】コンソールに設定された撮影条件を示す図である。
【図8】コンソールの内部構成を示すブロック図である。
【図9】コンソールの機能および情報の流れを示すブロック図である。
【図10】X線撮影の手順を示すフローチャートである。
【図11】検出画素の別の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1において、X線撮影システム2は、X線を放射するX線管を内蔵したX線源10と、X線源10の動作を制御する線源制御装置11と、X線の照射開始を指示するための照射スイッチ12と、被検体を透過したX線を検出してX線画像を出力する電子カセッテ13と、電子カセッテ13の動作制御やX線画像の画像処理を担うコンソール14と、被検体を立位姿勢で撮影するための立位撮影台15と、臥位姿勢で撮影するための臥位撮影台16とを有する。X線源10、線源制御装置11、および照射スイッチ12はX線発生装置2a、電子カセッテ13、およびコンソール14はX線撮影装置2bをそれぞれ構成する。この他にもX線源10を所望の方向および位置にセットするための線源移動装置(図示せず)等が設けられている。
【0027】
X線撮影システム2では、一回のX線撮影をプレ撮影と本撮影のセットで行う。プレ撮影では、所望のX線画像を得るために必要な本撮影の撮影条件を決めるため、本撮影よりも少ない線量のX線を被検体に照射する。本撮影では、プレ撮影によって決定された撮影条件にて被検体にX線を照射する。
【0028】
X線源10は、X線を放射するX線管と、X線管が放射するX線の照射野を限定する照射野限定器(コリメータ)とを有する。X線管は、熱電子を放出するフィラメントからなる陰極と、陰極から放出された熱電子が衝突してX線を放射する陽極(ターゲット)とを有している。照射野限定器は、例えば、X線を遮蔽する複数枚の鉛板を井桁状に配置し、X線を透過させる照射開口が中央に形成されたものであり、鉛板の位置を移動することで照射開口の大きさを変化させて、照射野を限定する。
【0029】
図2に示すように、線源制御装置11は、トランスによって入力電圧を昇圧して高圧の管電圧を発生し、高電圧ケーブルを通じてX線源10に供給する高電圧発生器20と、X線源10が照射するX線のエネルギースペクトルを決める管電圧、単位時間当たりの照射量を決める管電流、およびX線の照射時間を制御する制御部21と、コンソール14との主要な情報、信号の送受信を媒介する通信I/F22とを備える。
【0030】
制御部21には照射スイッチ12とメモリ23とタッチパネル24が接続されている。照射スイッチ12は、プレ撮影開始時に放射線技師等のオペレータによって操作される例えば二段階押しのスイッチであり、一段階押しでX線源10のウォームアップを開始させるためのウォームアップ開始信号を発生し、二段階押しでX線源10に照射を開始させるための照射開始信号を発生する。これらの信号は信号ケーブルを通じて線源制御装置11に入力される。制御部21は、照射スイッチ12から照射開始信号を受けたときに高電圧発生器20からX線源10への電力供給を開始させる。なお、本撮影は、照射スイッチ12の操作を待たずにプレ撮影終了後直ちに自動的に開始される。
【0031】
メモリ23は、管電圧、管電流といった撮影条件を予め数種類格納している。撮影条件はタッチパネル24を通じてオペレータにより手動で設定される。プレ撮影、本撮影ともに同じ管電圧、管電流が設定される。プレ撮影のX線の照射時間は、目標線量に達して電子カセッテ13のAEC部67(図4および図6参照)による照射停止の判断がされる前にX線の照射が終了して線量不足に陥ることを防ぐため、最大値が設定される。一方、本撮影の照射時間はプレ撮影を踏まえて決定された値が設定される。プレ撮影時、線源制御装置11は設定された管電圧、管電流、照射時間(最大値)でX線を照射しようとする。AEC部67はこれに対して本撮影の撮影条件を決定するために必要十分な線量に到達したことを検出すると、線源制御装置11側で照射しようとしていた照射時間以下であってもX線の照射を停止するように機能する。なお、プレ撮影で設定される照射時間(最大値)は、撮影部位に応じた値とすることが好ましい。
【0032】
プレ撮影で必要な線量は本撮影と比べて極めて低いため、線源制御装置11では照射時間に最大値が設定されるものの、実際には照射時間が最大値になるまでX線照射は継続されず、その前にX線照射が停止される。図3に実線で示すように、同じ管電圧、管電流でX線を照射した場合、例えば被検体厚が比較的厚い場合は被検体を透過してFPD35の撮像面36(ともに図4参照)に到達する単位時間当たりのX線の線量(瞬時値)が少なくなるため、必要な線量に到達するための照射時間T1は長くなり、逆に被検体厚が薄い場合は点線で示すように短くなる(照射時間T2)。また、体内組織の密度が比較的高い場合もX線の透過率が低下するため照射時間が長くなり、低い場合は短くなる。但し照射時間は異なるがいずれの場合も到達線量の積算値(台形で囲まれる部分の面積)はプレ撮影で必要な線量と等しい。
【0033】
照射信号I/F25は、電子カセッテ13の検出画素65(図4および図5参照)の出力を元にプレ撮影時のX線の照射停止タイミングを規定するために電子カセッテ13と接続される。この場合、制御部21は、照射スイッチ12からウォームアップ開始信号を受けたときに、照射信号I/F25を介して問い合わせ信号を電子カセッテ13に送信させる。電子カセッテ13は問い合わせ信号を受信するとリセット動作の完了や蓄積動作開始処理等の準備処理を行う。そして、電子カセッテ13から問い合わせ信号の応答である照射許可信号を照射信号I/F25で受け、さらに照射スイッチ12から照射開始信号を受けたときに高電圧発生器20からX線源10への電力供給を開始させる。また、制御部21は、電子カセッテ13から発せられる照射停止信号を照射信号I/F25で受けたときに、高電圧発生器20からX線源10への電力供給を停止させ、X線の照射を停止させる。制御部21は、照射停止信号の受信を契機にX線の照射を停止させる機能だけでなく、設定された照射時間となったらX線の照射を停止させるためのタイマー26を内蔵している。
【0034】
図4において、電子カセッテ13は、周知の如くFPD35とFPD35を収容する可搬型の筐体(図示せず)とからなる。電子カセッテ13の筐体は略矩形状で偏平な形状を有し、平面サイズはフイルムカセッテやIPカセッテ(CRカセッテとも呼ばれる)と同様の大きさ(国際規格ISO4090:2001に準拠した大きさ)である。このため、フイルムカセッテやIPカセッテ用の既存の撮影台にも取り付け可能である。
【0035】
電子カセッテ13はX線撮影システム2が設置される撮影室一部屋に複数台、例えば立位撮影台15、臥位撮影台16用に二台配備される。電子カセッテ13は、FPD35の撮像面36がX線源10と対向する姿勢で保持されるよう、立位撮影台15、臥位撮影台16のホルダ15a、16a(図1参照)に着脱自在にセットされる。電子カセッテ13は、立位撮影台15や臥位撮影台16にセットするのではなく、被検体が仰臥するベッド上に置いたり被検体自身に持たせたりして単体で使用することも可能である。
【0036】
電子カセッテ13にはアンテナ37、およびバッテリ38が内蔵されており、コンソール14との無線通信が可能である。アンテナ37は、無線通信のための電波をコンソール14との間で送受信する。バッテリ38は、電子カセッテ13の各部を動作させるための電力を供給する。バッテリ38は、薄型の電子カセッテ13内に収まるよう比較的小型のものが使用される。また、バッテリ38は、電子カセッテ13から外部に取り出して専用のクレードルにセットして充電することも可能である。バッテリ38を無線給電可能な構成としてもよい。
【0037】
電子カセッテ13には、アンテナ37に加えてソケット39が設けられている。ソケット39はコンソール14と有線接続するために設けられており、バッテリ38の残量不足等で電子カセッテ13とコンソール14との無線通信が不可能になった場合に使用される。ソケット39にコンソール14からのケーブルを接続した場合、コンソール14との有線通信が可能になる。この際、コンソール14から電子カセッテ13に給電してもよい。
【0038】
アンテナ37およびソケット39は、通信部40に設けられている。通信部40は、アンテナ37またはソケット39と制御部41、メモリ42間の画像データを含む各種情報、信号の送受信を媒介する。
【0039】
FPD35は、TFTアクティブマトリクス基板を有し、この基板上にX線の入射量に応じた信号電荷を蓄積する複数の画素45を配列してなる撮像面36を備えている。複数の画素45は、所定のピッチで二次元にn行(x方向)×m列(y方向)のマトリクス状に配列されている。
【0040】
FPD35はさらに、X線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体)を有し、シンチレータによって変換された可視光を画素45で光電変換する間接変換型である。シンチレータは、CsI(ヨウ化セシウム)やGOS(ガドリウムオキシサルファイド)等からなり、画素45が配列された撮像面36の全面と対向するように配置されている。なお、シンチレータとTFTアクティブマトリクス基板は、X線の入射する側からみてシンチレータ、基板の順に配置されるPSS(Penetration Side Sampling)方式でもよいし、逆に基板、シンチレータの順に配置されるISS(Irradiation Side sampling)方式でもよい。また、シンチレータを用いず、X線を直接電荷に変換する変換層(アモルファスセレン等)を用いた直接変換型のFPDを用いてもよい。
【0041】
画素45は、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生する光電変換素子であるフォトダイオード46、フォトダイオード46が発生した電荷を蓄積するキャパシタ(図示せず)、およびスイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)47を備える。
【0042】
フォトダイオード46は、電荷を発生する半導体層(例えばPIN型)とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。フォトダイオード46は、下部電極にTFT47が接続され、上部電極にはバイアス線48が接続されており、バイアス線48は撮像面36内の画素45の行数分(n行分)設けられて結線49に結束されている。結線49はバイアス電源50に繋がれている。結線49、バイアス線48を通じて、バイアス電源50からフォトダイオード46の上部電極にバイアス電圧Vbが印加される。バイアス電圧Vbの印加により半導体層内に電界が生じ、光電変換により半導体層内で発生した電荷(電子−正孔対)は、一方がプラス、他方がマイナスの極性を持つ上部電極と下部電極に移動し、キャパシタに電荷が蓄積される。
【0043】
TFT47は、ゲート電極が走査線51に、ソース電極が信号線52に、ドレイン電極がフォトダイオード46にそれぞれ接続される。走査線51と信号線52は格子状に配線されており、走査線51は撮像面36内の画素45の行数分(n行分)、信号線52は画素45の列数分(m列分)それぞれ設けられている。走査線51はゲートドライバ53に接続され、信号線52は信号処理回路54に接続される。
【0044】
ゲートドライバ53は、TFT47を駆動することにより、X線の入射量に応じた信号電荷を画素45に蓄積する蓄積動作と、画素45から信号電荷を読み出す読み出し(本読み)動作と、リセット(空読み)動作とを行わせる。制御部41は、ゲートドライバ53によって実行される上記各動作の開始タイミングを制御する。
【0045】
蓄積動作ではTFT47がオフ状態にされ、その間に画素45に信号電荷が蓄積される。読み出し動作では、ゲートドライバ53から同じ行のTFT47を一斉に駆動するゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、走査線51を一行ずつ順に活性化し、走査線51に接続されたTFT47を一行分ずつオン状態とする。画素45のキャパシタに蓄積された電荷は、TFT47がオン状態になると信号線52に読み出されて、信号処理回路54に入力される。
【0046】
信号処理回路54は、積分アンプ60、マルチプレクサ(MUX)61、およびA/D変換器(A/D)62等を備える。積分アンプ60は、各信号線52に対して個別に接続される。積分アンプ60は、オペアンプ60aとオペアンプ60aの入出力端子間に接続されたキャパシタ60bとからなり、信号線52はオペアンプ60aの一方の入力端子に接続される。オペアンプ60aのもう一方の入力端子はグランド(GND)に接続される。キャパシタ60bにはリセットスイッチ60cが並列に接続されている。積分アンプ60は、信号線52から入力される電荷を積算し、電圧信号D1〜Dmに変換して出力する。各列のオペアンプ60aの出力端子には、増幅器63、サンプルホールド(S/H)部64を介してMUX61が接続される。MUX61の出力側には、A/D変換器62が接続される。
【0047】
MUX61は、パラレルに接続される複数の積分アンプ60から順に一つの積分アンプ60を選択し、選択した積分アンプ60から出力される電圧信号D1〜DmをシリアルにA/D変換器62に入力する。A/D変換器62は、入力された電圧信号D1〜Dmをデジタルデータに変換して、電子カセッテ13に内蔵されるメモリ42に出力する。なお、MUX61とA/D変換器62の間に増幅器を接続してもよい。
【0048】
MUX61によって積分アンプ60から一行分の電圧信号D1〜Dmが読み出されると、制御部41は、積分アンプ60に対してリセットパルスRSTを出力し、リセットスイッチ60cをオンする。これにより、キャパシタ60bに蓄積された一行分の信号電荷が放電されてリセットされる。積分アンプ60がリセットされると、ゲートドライバ53から次の行のゲートパルスが出力され、次の行の画素45の信号電荷の読み出しを開始させる。これらの動作を順次繰り返して全行の画素45の信号電荷を読み出す。
【0049】
全行の読み出しが完了すると、一画面分のX線画像を表す画像データがメモリ42に記録される。この画像データはメモリ42から読み出され、通信部40を通じてコンソール14に出力される。こうして被検体のX線画像が検出される。
【0050】
フォトダイオード46の半導体層には、X線の入射の有無に関わらず暗電荷が発生する。この暗電荷はバイアス電圧Vbが印加されているために画素45のキャパシタに蓄積される。画素45において発生する暗電荷は、画像データに対してはノイズ成分となるので、これを除去するためにリセット動作が行われる。リセット動作は、画素45において発生する暗電荷を、信号線52を通じて掃き出す動作である。
【0051】
リセット動作は、例えば、一行ずつ画素45をリセットする順次リセット方式で行われる。順次リセット方式では、信号電荷の読み出し動作と同様、ゲートドライバ53から走査線51に対してゲートパルスG1〜Gnを順次発生して、画素45のTFT47を一行ずつオン状態にする。TFT47がオン状態になっている間、画素45から暗電荷が信号線52を通じて積分アンプ60のキャパシタ60bに流れる。リセット動作では、読み出し動作と異なり、MUX61によるキャパシタ60bに蓄積された電荷の読み出しは行われず、各ゲートパルスG1〜Gnの発生と同期して、制御部41からリセットパルスRSTが出力されてリセットスイッチ60cがオンされ、キャパシタ60bに蓄積された電荷が放電されて積分アンプ60がリセットされる。
【0052】
順次リセット方式に代えて、配列画素の複数行を一グループとしてグループ内で順次リセットを行い、グループ数分の行の暗電荷を同時に掃き出す並列リセット方式や、全行にゲートパルスを入れて全画素の暗電荷を同時に掃き出す全画素リセット方式を用いてもよい。並列リセット方式や全画素リセット方式によりリセット動作を高速化することができる。
【0053】
制御部41は、線源制御装置11の制御部21からの問い合わせ信号を受信したタイミングで、FPD35にリセット動作を行わせて線源制御装置11に照射許可信号を返信する。そして、照射開始信号を受信したタイミングでFPD35の動作をリセット動作から蓄積動作へ移行させる。
【0054】
FPD35は、上述のようにTFT47を介して信号線52に接続された通常の画素45の他に、TFT47を介さず信号線52に短絡して接続された検出画素65を同じ撮像面36内に複数備えている。検出画素65は、被検体Mを透過して撮像面36に入射するX線の線量を検出するために利用される画素であり、照射停止検出センサおよびAECセンサとして機能する。検出画素65は撮像面36内の画素45の数%程度を占める。
【0055】
図5(A)に示すように、検出画素65は、撮像面36内で局所的に偏ることなく撮像面36内に満遍なく散らばるよう、撮像面36の中心に関して左右対称な点線で示す波形の軌跡66に沿って設けられている。検出画素65は、同じ信号線52が接続された画素45の列に一個ずつ設けられ、検出画素65が設けられた列は、検出画素65が設けられない列を例えば二〜三列挟んで設けられる。検出画素65の位置はFPD35の製造時に既知であり、FPD35は全検出画素65の位置(座標)を不揮発性のメモリ(図示せず)に予め記憶している。なお、ここで示した検出画素65の配置は一例であり、検出画素65を局所に集中して配置してもよく、適宜変更可能である。例えば乳房を撮影対象とするマンモグラフィ装置では、(B)に示すように胸壁側に集中して検出画素65を配置するとよい。
【0056】
検出画素65は信号線52との間にTFT47が設けられておらず、信号線52に直に接続されているので、検出画素65で発生した信号電荷は、直ちに信号線52に読み出される。同列にある通常の画素45がTFT47をオフ状態とされ、信号電荷を蓄積する蓄積動作中であっても同様である。このため検出画素65が接続された信号線52上の積分アンプ60のキャパシタ60bには、検出画素65で発生した電荷が常に流入する。蓄積動作時、キャパシタ60bに蓄積された検出画素65からの電荷は、所定のサンプリング周期でMUX61を介して電圧値としてA/D変換器62に出力される。
【0057】
図4において、AEC部67は、制御部41により駆動制御され、プレ撮影時のみ機能する。AEC部67は、検出画素65が接続された信号線52からの電圧値(AEC検出信号という)をA/D変換器62を介して取得する。
【0058】
図6において、AEC部67は、採光野選択回路75、積分回路76、比較回路77、および閾値発生回路78を有する。採光野選択回路75は、コンソール14からの採光野の情報に基づき、撮像面36内に散らばった複数の検出画素65のうち、どの検出画素65のAEC検出信号をAECに用いるかを選択する。積分回路76は、採光野選択回路75で選択された検出画素65からのAEC検出信号の平均値、最大値、最頻値、または合計値を積算する。比較回路77は、X線の照射開始が検出されたときに積分回路76からのAEC検出信号の積算値のモニタリングを開始する。そして、積算値と閾値発生回路78から与えられる照射停止閾値とを適宜のタイミングで比較する。積算値が閾値に達したとき、比較回路77は照射停止信号を出力する。
【0059】
AEC部67には、この他にも本撮影時に検出画素65からのAEC検出信号と予め設定された閾値との比較によりX線の照射停止を検出する照射停止検出回路が設けられている。
【0060】
通信部40には、上述のアンテナ37とソケット39の他に照射信号I/F80が設けられている。照射信号I/F80には線源制御装置11の照射信号I/F25が接続される。照射信号I/F80は、問い合わせ信号の受信、問い合わせ信号に対する照射許可信号の送信、照射開始信号の受信、比較回路77の出力、すなわち照射停止信号の送信を行う(照射停止信号の送信のみ図示)。
【0061】
照射信号I/F80には計時回路81が設けられている。計時回路81は、プレ撮影時に照射信号I/F80で照射開始信号を受信してから照射停止信号を送信するまでの時間、すなわちプレ撮影のX線の照射時間を計時する。計時回路81の計時結果は制御部41に送られ、制御部41から通信部40経由でコンソール14のカセッテ制御部98(図9参照)に送られる。また、照射停止信号を送信したときの積分回路76によるAEC検出信号の積算値も同様にカセッテ制御部98に送られる。なお、線源制御装置11側でプレ撮影のX線の照射時間を計時し、これを通信I/F22、通信部40経由でカセッテ制御部98に送ってもよい。
【0062】
コンソール14は、有線方式や無線方式により電子カセッテ13と通信可能に接続されており、電子カセッテ13の動作を制御する。具体的には、電子カセッテ13に対して撮影条件を送信して、AECやFPD35の信号処理の条件(蓄積される信号電荷に応じた電圧を増幅するアンプのゲイン等)を設定させるとともに、電子カセッテ13の電源のオンオフ、省電力モードや撮影準備状態へのモード切り替え等の制御を行う。
【0063】
コンソール14は、電子カセッテ13から送信されるX線画像データに対してオフセット補正やゲイン補正、欠陥補正等の各種画像処理を施す。欠陥補正では、検出画素65がある列の画素値を隣り合う検出画素65がない列の画素値で補間する。画像処理済みのX線画像はコンソール14のディスプレイ89(図8参照)に表示される他、そのデータがコンソール14内のストレージデバイス87やメモリ86(ともに図8参照)、あるいはコンソール14とネットワーク接続された画像蓄積サーバといったデータストレージに記憶される。なお、上記の各種画像処理を電子カセッテ13で行ってもよい。
【0064】
コンソール14は、患者の性別、年齢、撮影部位、撮影目的といった情報が含まれる検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイ89に表示する。検査オーダは、HIS(病院情報システム)やRIS(放射線情報システム)といった患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システムから入力されるか、オペレータにより手動入力される。検査オーダには、頭部、胸部、腹部等の撮影部位、正面、側面、斜位、PA(X線を被検体の背面から照射)、AP(X線を被検体の正面から照射)といった撮影方向が含まれる。オペレータは、検査オーダの内容をディスプレイ89で確認し、その内容に応じた撮影条件をコンソール14の操作画面を通じて入力する。
【0065】
図7に示すように、コンソール14では撮影部位毎に撮影条件を設定可能である。撮影条件には、管電圧、管電流、検出画素65の採光野、プレ撮影時に検出画素65のAEC検出信号の積算値と比較してX線の照射停止を判断するための照射停止閾値、および本撮影で必要なX線の線量である必要線量等が記憶されている。撮影条件の情報はストレージデバイス87に格納されている。線源制御装置11の撮影条件は、オペレータがこのコンソール14の撮影条件を参照して同様の撮影条件を手動設定する。
【0066】
採光野はAECに用いる検出画素65の領域を示し、撮影部位毎に診断時に最も注目すべき関心領域にあたり、且つAEC検出信号を安定して得られる部分が設定されている。例えば撮影部位が胸部の場合は、図5(A)に点線で囲んだa、bで示すように肺野の部分が採光野として設定されている。採光野はxy座標で表されており、本例のように採光野が矩形の場合は例えば対角線で結ぶ二点のxy座標が記憶されている。xy座標は、電子カセッテ13の画素45(検出画素65も含む)の撮像面36内における位置と対応しており、走査線51に平行な方向をx軸、信号線52に平行な方向をy軸とし、左上の画素45の座標を原点(0、0)において表現する。
【0067】
AEC検出信号にノイズが乗ってS/N比が悪い場合は、これを元に決定する本撮影の撮影条件の信頼性が低くなるため、信頼性を確保するためにはプレ撮影の照射時間は長くとったほうがよい。しかし、一方では被検体への被曝を低減するためにプレ撮影の照射時間はできるだけ短くすることが必要である。従って照射停止閾値は、AEC検出信号に乗る様々なノイズの影響を受けずに確度の高い本撮影の撮影条件を決定することができる最小のAEC検出信号の積算値に設定されている。
【0068】
必要線量は、本撮影で得られるX線画像が診断に供する良好な画質となるためのAEC検出信号の積算値である。
【0069】
図8において、コンソール14を構成するコンピュータは、CPU85、メモリ86、ストレージデバイス87、通信I/F88、ディスプレイ89、および入力デバイス90を備えている。これらはデータバス91を介して相互接続されている。
【0070】
ストレージデバイス87は、例えばHDD(Hard Disk Drive)である。ストレージデバイス87には、制御プログラムやアプリケーションプログラム(以下、APという)92が記憶される。AP92は、検査オーダやX線画像の表示処理、X線画像に対する画像処理、撮影条件の設定等、X線撮影に関する様々な機能をコンソール14に実行させるためのプログラムである。
【0071】
メモリ86は、CPU85が処理を実行するためのワークメモリである。CPU85は、ストレージデバイス87に記憶された制御プログラムをメモリ86へロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。通信I/F88は、RIS、HIS、画像蓄積サーバ、電子カセッテ13等の外部装置との無線または有線による伝送制御を行うネットワークインターフェースである。入力デバイス90は、キーボードやマウス、あるいはディスプレイ89と一体となったタッチパネル等である。
【0072】
図9において、コンソール14のCPU85は、AP92を起動すると、格納・検索処理部95、入出力制御部96、および主制御部97として機能する。格納・検索処理部95は、各種データのストレージデバイス87への格納処理、およびストレージデバイス87に記憶された各種データの検索処理を実行する。入出力制御部96は、入力デバイス90の操作に応じた描画データをストレージデバイス87から読み出し、読み出した描画データに基づいたGUIによる各種操作画面をディスプレイ89に出力する。また、入出力制御部96は、操作画面を通じて入力デバイス90からの操作指示の入力を受け付ける。主制御部97は、電子カセッテ13の動作制御を担うカセッテ制御部98と本撮影の撮影条件を決定する本撮影条件決定部99とを有し、コンソール14の各部の動作を統括的に制御する。なお、この他にも上述のオフセット補正、ゲイン補正、欠陥補正等の各種画像処理を行う画像処理部や、線源制御装置11、電子カセッテ13との間の通信を媒介する通信部がCPU85に構築される。なお、本例のように各部の機能をソフトウェアで実現するのではなく、各部を専用のハードウェアで構成してもよい。
【0073】
カセッテ制御部98は、設定された撮影条件に応じた採光野の情報と照射停止閾値の情報を格納・検索処理部95から受け取り、これらを電子カセッテ13に提供する。
【0074】
本撮影条件決定部99は、設定された撮影条件に応じた必要線量の情報を格納・検索処理部95から受け取る。また、本撮影条件決定部99は、計時回路81によるプレ撮影のX線の照射時間と、プレ撮影のX線の到達線量の積算値に相当する、照射停止信号を送信したときの積分回路76によるAEC検出信号の積算値とをカセッテ制御部98から得る。
【0075】
本撮影条件決定部99は、これら必要線量、照射時間、およびAEC検出信号の積算値から本撮影の撮影条件である照射時間を決定する。具体的には、AEC検出信号の積算値を照射時間で除算してプレ撮影の単位時間当たりのAEC検出信号(到達線量の瞬時値)を求める。プレ撮影によって既に所定量のX線が照射されているため、必要線量からAEC検出信号の積算値を減算する。そして、この減算結果を単位時間当たりのAEC検出信号で除算する。本撮影条件決定部99は、こうして決定された照射時間の情報を線源制御装置11に送信する。この際、照射時間そのものを送信してもよいし、決定した照射時間をプレ撮影の照射時間で除算した結果(プレ撮影の照射時間に対する倍率)を送信してもよい。
【0076】
本撮影の撮影条件として照射時間の代わりに管電流時間積を決定してもよい。この場合も照射時間を決定する際と同様に、AEC検出信号の積算値をプレ撮影の管電流時間積で除算してプレ撮影の単位管電流時間積当たりのAEC検出信号(到達線量の瞬時値)を求める。そして必要線量からAEC検出信号の積算値を減算し、この減算結果を単位管電流時間積当たりのAEC検出信号で除算する。決定した管電流時間積の情報を線源制御装置11に送信する。この場合も管電流時間積そのもの、またはプレ撮影の管電流時間積に対する倍率のいずれを送信してもよい。
【0077】
次に、図10のフローチャートを参照して、X線撮影システム2においてプレ撮影と本撮影をセットとするX線撮影を行う場合の手順を説明する。
【0078】
まず、被検体を立位撮影台15の前の所定の位置に立たせるか臥位撮影台16に仰臥させ、立位または臥位のいずれかの撮影台15、16にセットされた電子カセッテ13の高さや水平位置を調節して、被検体の撮影部位と位置を合わせる。また、電子カセッテ13の位置および撮影部位の大きさに応じて、X線源10の高さや水平位置、照射野の大きさを調整する。次いで電子カセッテ13の電源を投入し、入力デバイス90で撮影条件を入力して、カセッテ制御部98を介して電子カセッテ13に撮影条件およびそれに応じた採光野、照射停止閾値等を出力する。同様に線源制御装置11にも撮影条件を設定する。
【0079】
撮影準備が完了すると、オペレータによって照射スイッチ12が一段階押しされる。これにより線源制御装置11にウォームアップ開始信号が送信されて、X線源10のウォームアップが開始される。所定時間経過後に照射スイッチ12が二段階押しされて線源制御装置11に照射開始信号が送信され、プレ撮影のX線の照射が開始される(S10)。
【0080】
X線の照射が開始される前、電子カセッテ13のFPD35ではリセット動作が行われている。線源制御装置11から照射開始信号を受信したときにリセット動作から蓄積動作に移行される。
【0081】
電子カセッテ13ではFPD35の蓄積動作と同時にAEC部67で検出画素65の出力に基づくAECが行われている。採光野選択回路75は、コンソール14から与えられた採光野の情報に基づき、A/D変換器62から入力される複数の検出画素65のAEC検出信号のうち、採光野に存在する検出画素65からのAEC検出信号を選別し、選別したAEC検出信号を積分回路76に出力する(S11)。積分回路76ではAEC検出信号が積算される(S12)。
【0082】
閾値発生回路78は、カセッテ制御部98から与えられた照射停止閾値を発生し、これを比較回路77に出力する。比較回路77は、積分回路76からのAEC検出信号の積算値と閾値発生回路78からの照射停止閾値とを比較(S13)し、積算値が閾値に達したとき(S14でYES)に照射停止信号を出力する。比較回路77から出力された照射停止信号は照射信号I/F80を介して線源制御装置11の照射信号I/F25に向けて送信される(S15)。
【0083】
照射信号I/F25で照射停止信号を受けた場合、線源制御装置11では、制御部21により高電圧発生器20からX線源10への電力供給が停止され、これによりプレ撮影のX線の照射が停止される(S16)。FPD35では蓄積動作が続行される。
【0084】
計時回路81ではプレ撮影のX線の照射時間が計時されている(S10およびS15)。この計時結果および照射停止信号を送信したときの積分回路76によるAEC検出信号の積算値はカセッテ制御部98に送信される。
【0085】
本撮影条件決定部99は、格納・検索処理部95から受け取った必要線量、カセッテ制御部98から得たプレ撮影のX線の照射時間、照射停止信号を送信したときの積分回路76によるAEC検出信号の積算値に基づき、本撮影のX線の照射時間を決定する(S17)。決定された照射時間は線源制御装置11に送信される。
【0086】
線源制御装置11では、照射スイッチ12の操作を待たずして、タイマー26の時間を本撮影条件決定部99で決定した値に設定して本撮影のX線の照射が自動的に開始される(S18)。そして、照射時間が本撮影条件決定部99で決定した値となった時点(S19でYES)でX線の照射が停止される(S20)。
【0087】
FPD35ではプレ撮影から引き続いて蓄積動作が行われている。本撮影のX線の照射停止をAEC部67の照射停止検出回路で検出したときに蓄積動作が読み出し動作に移り、これにより画像データが出力される。読み出し動作後、FPD26はリセット動作を再開する。
【0088】
FPD35から出力された画像データは、通信部40を介してコンソール14に送信されて各種画像処理が施され、入出力制御部96によりX線画像としてディスプレイ89に表示される(S21)。
【0089】
以上説明したように、本発明によれば、本撮影の撮影条件を決定するために必要な線量が照射されるまでプレ撮影を行い、このプレ撮影で検出画素65により検出したAEC検出信号の積算値、計時回路81で計時した照射時間、および必要線量に基づいて本撮影の撮影条件である照射時間を決定するので、被検体の体型や体内組織の密度等の個体差によらず常に適正な撮影条件で本撮影を行うことができる。
【0090】
オペレータ自ら被検体毎にプレ撮影の撮影条件を調整したり、プレ撮影を踏まえて決定した本撮影の撮影条件の妥当性に疑いがありプレ撮影をやり直したりする手間を省くことができる。また、プレ撮影で得たX線画像の解析や被検体厚の検出といった面倒なことをせずに、単純な計算で素早く本撮影の撮影条件を決定することができる。このため従来よりも撮影時間を短縮することができる。
【0091】
AECはプレ撮影時のみ行うので、本撮影で照射停止信号の遅延の問題は起こらない。従ってX線画像の画質が劣化したり患者が無用な被曝に晒されたりすることもない。
【0092】
プレ撮影で読み出し動作を行わずプレ撮影開始から本撮影終了まで蓄積動作を続行し、画像出力なしで検出画素65のAEC検出信号のみに基づき本撮影の撮影条件を決定するので、プレ撮影で照射したX線が無駄にならずに済む。結果として従来よりも被検体への被曝量を低減することができる。
【0093】
なお、プレ撮影のX線照射の停止時にリセット動作を行ってプレ撮影で蓄積された電荷を棄て、本撮影のX線照射の開始時に改めて蓄積動作を再開してもよい。この場合は必要線量からAEC検出信号の積算値を減算せずに、必要線量を単位時間当たりのAEC検出信号の積算値で除算することで本撮影の照射時間を求める。
【0094】
上記実施形態では、AECセンサとしてTFT47を介さず信号線52に短絡して接続された検出画素65を用いているが、例えば図11に示す検出画素105のように、通常の画素45とは別のゲートドライバ106および走査線107で駆動するTFT108を接続し、通常の画素45とは独立して蓄積電荷を読み出すことが可能な構成としてもよい。また、各画素45にバイアス電圧Vbを供給するバイアス線48に画素45で発生する電荷に基づく電流が流れることを利用して、ある特定の画素45に繋がるバイアス線48の電流をモニタリングして線量を検出してもよく、全てのTFT47をオフ状態にしたときに画素45から漏れるリーク電荷に基づき線量を検出してもよい。さらに画素45とは別に構成が異なり出力が独立したAEC用の検出画素を撮像面36と同一平面に設けてもよい。
【0095】
電子カセッテ13の検出画素65に不具合が発生したり、線源制御装置11と電子カセッテ13の間の通信が配線断等で撮影中に途絶えたりすると、照射停止信号が正しく送受信されず、AECが効かなくなる場合も考えられる。特に線源制御装置11側は撮影条件として照射時間の最大値が設定されるため、AECが効かなくなると患者への被曝量が上限値以上になってしまうおそれもある。そこで、電子カセッテ13にテストモードを設け、設置直後や一日の撮影前にコンソール14がもつ全撮影条件にてテスト撮影を行わせる。そして、電子カセッテ13が照射停止信号を線源制御装置11に送信してからも検出画素65でX線の検出を続行し、所定時間内にX線の照射停止が検出された場合は正常にAECが行われていると判断し、検出されなかった場合は何らかの故障が発生したと判断してコンソール14のディスプレイ89に警告メッセージを表示する。
【0096】
上記実施形態では、コンソール14と電子カセッテ13が別体である例で説明したが、コンソール14は独立した装置である必要はなく、電子カセッテ13にコンソール14の機能を搭載してもよい。例えば上記実施形態のカセッテ制御部98や本撮影条件決定部99の機能を電子カセッテ13にもたせ、電子カセッテ13で本撮影のX線の照射時間を決定してもよい。同様に線源制御装置11とコンソール14を一体化した装置としてもよい。逆にカセッテ制御部98等の機能をもつ専用の撮影制御装置を電子カセッテとコンソールの間に接続し、コンソールでは撮影条件の入力とX線画像の表示といった簡易的な作業を行うのみとしてもよい。また、可搬型のX線画像検出装置である電子カセッテに限らず、撮影台に据え付けるタイプのX線画像検出装置に適用してもよい。
【0097】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
2 X線撮影システム
2b X線撮影装置
10 X線源
11 線源制御装置
13 電子カセッテ
14 コンソール
21 制御部
26 タイマー
35 FPD
40 通信部
41 制御部
45 画素
65、105 検出画素
67 AEC部
75 採光野選択回路
76 積分回路
77 比較回路
78 閾値発生回路
81 計時回路
85 CPU
87 ストレージデバイス
89 ディスプレイ
98 カセッテ制御部
99 本撮影条件決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射されて被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、
被検体を透過した放射線の線量を検出する線量検出センサと、
前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御を行う自動露出制御手段とを備え、
前記放射線画像検出装置で診断に供する放射線画像を撮影する本撮影と、本撮影に先立って本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とを行う放射線撮影システムにおいて、
前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量、および前記放射線画像の画質を確保するために前記本撮影で必要な線量に基づいて、前記本撮影の撮影条件である放射線の照射時間あるいは管電流時間積を決定する本撮影条件決定手段とを備え、
前記プレ撮影では前記線量検出センサおよび前記自動露出制御手段による前記自動露出制御を行い、
前記本撮影では前記本撮影条件決定手段で決定した照射時間あるいは管電流時間積で放射線を照射することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記プレ撮影時の放射線の照射時間を計時する計時手段を備え、
前記本撮影条件決定手段は、前記計時手段の計時結果、前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量、および前記放射線画像の画質を確保するために前記本撮影で必要な線量に基づいて、前記本撮影の撮影条件である放射線の照射時間あるいは管電流時間積を決定することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記放射線画像検出装置は、前記プレ撮影で前記画素に発生した電荷を前記画素から掃き出さずに蓄積したまま前記本撮影に移行し、
前記本撮影終了後、前記プレ撮影と前記本撮影とで前記画素に蓄積された電荷に応じた電気信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記本撮影条件決定手段は、前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量の積算値を前記プレ撮影時の照射時間あるいは管電流時間積で除算して単位時間あるいは単位管電流時間積当たりの線量を求め、
前記本撮影で必要な線量から前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量の積算値を減算した結果を前記単位時間あるいは単位管電流時間積当たりの線量で除算することで前記本撮影の照射時間あるいは管電流時間積を算出することを特徴とする請求項3に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記線量検出センサは、前記検出パネルの撮像面の略全面に満遍なく散らばるよう複数配置されており、
前記照射停止閾値と積算値を比較する前記線量検出センサを撮影部位に応じて選択する採光野選択手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記線量検出センサは、前記検出パネルの撮像面の局所に集中して複数配置されており、
前記照射停止閾値と積算値を比較する前記線量検出センサを撮影部位に応じて選択する採光野選択手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記画素には、放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力する通常画素と、
信号線にスイッチング素子を介さず直接接続された検出画素とがあり、
前記検出画素を前記線量検出センサとして用いることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記画素には、放射線を受けて信号電荷を蓄積し、スイッチング素子の駆動に応じて信号電荷を信号線に出力する通常画素と、
前記通常画素とは別に駆動するスイッチング素子が設けられた検出画素とがあり、
前記検出画素を前記線量検出センサとして用いることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記放射線画像検出装置は、前記検出パネルが可搬型の筐体に収納された電子カセッテであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
診断に供する放射線画像を撮影する本撮影と、本撮影に先立って本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とを行う放射線撮影装置の制御方法において、
前記プレ撮影では、被検体を透過した放射線の線量を線量検出センサで検出して、前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら放射線の照射を停止させる自動露出制御を行い、
前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量、および前記放射線画像の画質を確保するために前記本撮影で必要な線量に基づいて、前記本撮影の撮影条件である放射線の照射時間あるいは管電流時間積を決定し、
前記本撮影では決定された照射時間あるいは管電流時間積で前記放射線を照射することを特徴とする放射線撮影装置の制御方法。
【請求項11】
放射線を被検体に向けて照射する放射線源と、
被検体を透過した放射線を受ける複数の画素が配列された検出パネルを有する放射線画像検出装置と、
被検体を透過した放射線の線量を検出する線量検出センサと、
前記線量検出センサで検出された線量の積算値と予め設定した照射停止閾値を比較し、前記積算値が前記照射停止閾値に達したら前記放射線源による放射線の照射を停止させる自動露出制御を行う自動露出制御手段とを備え、
前記放射線画像検出装置で診断に供する放射線画像を撮影する本撮影と、本撮影に先立って本撮影の撮影条件を決定するためのプレ撮影とを行う放射線撮影システムにおいて、
前記プレ撮影時に前記線量検出センサで検出された線量、および前記放射線画像の画質を確保するために前記本撮影で必要な線量に基づいて、前記本撮影の撮影条件である放射線の照射時間あるいは管電流時間積を決定する本撮影条件決定手段とを備え、
前記プレ撮影では前記線量検出センサおよび前記自動露出制御手段による前記自動露出制御を行い、
前記本撮影では前記本撮影条件決定手段で決定した照射時間あるいは管電流時間積で放射線を照射することを特徴とする放射線撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−103002(P2013−103002A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249591(P2011−249591)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】